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特許7540850蒸気タービンの動翼のエロージョン量管理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】蒸気タービンの動翼のエロージョン量管理装置
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/00 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
F01D25/00 V
F01D25/00 W
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023045646
(22)【出願日】2023-03-22
【審査請求日】2023-03-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「2020年度~2022年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/次世代火力発電基盤技術開発/石炭火力の負荷変動対応技術開発/タービン発電設備次世代保守技術開発」」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 泰輝
(72)【発明者】
【氏名】竹内 司
(72)【発明者】
【氏名】佃 知彦
(72)【発明者】
【氏名】小野 泰規
(72)【発明者】
【氏名】牧野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】市川 裕之
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-025354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンの作動蒸気から生成される水滴に起因する動翼のエロージョン量を管理する蒸気タービンの動翼のエロージョン量管理装置であって、
計測された情報に基づいて算出された過去から現在までの前記蒸気タービンの前記動翼の過去エロージョン量に関する情報を示す過去エロージョン量関連情報と、ユーザインタフェース画面を用いた操作において入力された将来の運転条件および前記過去エロージョン量関連情報に基づいて算出された将来における前記動翼の将来エロージョン量に関する情報を示す将来エロージョン量関連情報とを前記ユーザインタフェース画面の表示部に表示させる表示情報を生成する表示情報生成部を備え
前記将来の運転条件は、複数に区分された前記蒸気タービンの負荷ごとの1日における運転時間と、年間における前記蒸気タービンの稼働率とを含むことを特徴とする蒸気タービンの動翼のエロージョン量管理装置。
【請求項2】
前記表示情報生成部は、
前記過去エロージョン量に関する情報および前記将来エロージョン量に関する情報の双方を時系列で前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1記載の蒸気タービンの動翼のエロージョン量管理装置。
【請求項3】
前記表示情報生成部は、
所定時間おきに、前記過去エロージョン量関連情報を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1記載の蒸気タービンの動翼のエロージョン量管理装置。
【請求項4】
前記表示情報生成部は、
前記将来の運転条件が入力されるごとに、前記将来エロージョン量関連情報を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1記載の蒸気タービンの動翼のエロージョン量管理装置。
【請求項5】
前記表示情報生成部は、
前記将来エロージョン量に基づいて算出された、新たな動翼の準備を開始することが推奨されるエロージョン量を示す準備閾値に係る情報を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1記載の蒸気タービンの動翼のエロージョン量管理装置。
【請求項6】
前記表示情報生成部は、
前記将来エロージョン量に基づいて算出された、新たな動翼の準備を開始することが推奨される準備推奨時期を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1記載の蒸気タービンの動翼のエロージョン量管理装置。
【請求項7】
前記表示情報生成部は、
前記将来エロージョン量に基づいて算出された、前記動翼を交換することが推奨される交換推奨時期を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1記載の蒸気タービンの動翼のエロージョン量管理装置。
【請求項8】
前記表示情報生成部は、
前記ユーザインタフェース画面を用いた操作において入力された第2の将来の運転条件および前記過去エロージョン量関連情報に基づいて算出された将来における前記動翼の第2の将来エロージョン量に関する情報を示す第2の将来エロージョン量関連情報をさらに前記表示部に表示させる前記表示情報を生成し、
前記第2の将来の運転条件は、複数に区分された前記蒸気タービンの負荷ごとの1日における第2の運転時間と、年間における前記蒸気タービンの第2の稼働率とを含むことを特徴とする請求項1記載の蒸気タービンの動翼のエロージョン量管理装置。
【請求項9】
前記表示情報生成部は、
前記第2の将来エロージョン量に基づいて算出された、新たな動翼の準備を開始することが推奨されるエロージョン量を示す第2の準備閾値に係る情報を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項8記載の蒸気タービンの動翼のエロージョン量管理装置。
【請求項10】
前記表示情報生成部は、
前記第2の将来エロージョン量に基づいて算出された、新たな動翼の準備を開始することが推奨される第2の準備推奨時期を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項8記載の蒸気タービンの動翼のエロージョン量管理装置。
【請求項11】
前記表示情報生成部は、
前記第2の将来エロージョン量に基づいて算出された、前記動翼を交換することが推奨される第2の交換推奨時期を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項8記載の蒸気タービンの動翼のエロージョン量管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蒸気タービンの動翼のエロージョン量管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンにおける低圧のタービン段落では、蒸気の一部が凝縮して水滴となることがある。この水滴は、蒸気タービンの動翼に衝突することで動翼を浸食する。低圧のタービン段落の中でも最終段の動翼は、水滴による浸食が進展しやすい。
【0003】
この水滴による動翼の浸食、いわゆるエロージョンは、数年ごとに定期的に検査されている。この定期検査において、エロージョンにおける浸食量(エロージョン量)が動翼を製造するメーカが定める基準値を超えた場合、その動翼の交換が推奨される。
【0004】
近年、発電設備において、二酸化炭素(CO)の排出量を削減する対策として再生可能エネルギの導入が加速されている。再生可能エネルギを利用した発電においては、天候などによって発電量が変化する。そのため、近年では、火力発電設備は、再生可能エネルギを利用した発電における不安定な電力供給を補うため、調整火力を中心とした運用に移行している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭61-207804号公報
【文献】特許第4575176号公報
【文献】特開2002-297710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、蒸気タービンを備える火力発電設備では、定格負荷を中心とした運用から調整火力を中心とした運用に移行しているため、蒸気タービンにおいてエロージョンが一層進展するリスクがある。
【0007】
火力発電設備における蒸気タービンを管理するユーザは、定期検査において動翼のエロージョン量を知ることができる。しかしながら、従来の蒸気タービンの管理システムにおいて、ユーザは、過去の定期検査から現在までの動翼のエロージョン量を予測した情報や、実機の将来の運転条件に基づいて動翼の将来のエロージョン量を予測した情報を知ることができない。また、従来の蒸気タービンの管理システムにおいて、ユーザは、将来においてエロージョン量が動翼を交換すべき閾値に到達する時期などの情報を知ることができない。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、運転データに基づいて予測された過去から現在までのエロージョン量および将来の運転条件に基づいて予測された将来のエロージョン量を時系列で認識することができる蒸気タービンの動翼のエロージョン量管理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の蒸気タービンの動翼のエロージョン量管理装置は、蒸気タービンの作動蒸気から生成される水滴に起因する動翼のエロージョン量を管理する。このエロージョン量管理装置は、計測された情報に基づいて算出された過去から現在までの前記蒸気タービンの前記動翼の過去エロージョン量に関する情報を示す過去エロージョン量関連情報と、ユーザインタフェース画面を用いた操作において入力された将来の運転条件および前記過去エロージョン量関連情報に基づいて算出された将来における前記動翼の将来エロージョン量に関する情報を示す将来エロージョン量関連情報とを前記ユーザインタフェース画面の表示部に表示させる表示情報を生成する表示情報生成部を備える。そして、前記将来の運転条件は、複数に区分された前記蒸気タービンの負荷ごとの1日における運転時間と、年間における前記蒸気タービンの稼働率とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施の形態のエロージョン量管理装置を備えた蒸気タービン設備の構成を模式的に示す系統図である。
図2】第1の実施の形態のエロージョン量管理装置の機能構成を示すブロック図である。
図3】第1の実施の形態のエロージョン量管理装置におけるユーザインターフェースに表示させる将来の運転条件の入力画面の一例を示す図である。
図4】第1の実施の形態のエロージョン量管理装置に対してエロージョンに関する定期検査結果を入力する入力画面の一例を示す図である。
図5】第1の実施の形態のエロージョン量管理装置の定周期エロージョン演算部における過去エロージョン量の演算の流れを説明するためのフローチャートである。
図6】第1の実施の形態のエロージョン量管理装置の将来エロージョン演算部における将来エロージョン量の演算の流れを説明するためのフローチャートである。
図7】第1の実施の形態のエロージョン量管理装置の将来エロージョン演算部における交換推奨時期、準備推奨時期および準備閾値の算出方法を説明するための図である。
図8】第1の実施の形態のエロージョン量管理装置の将来エロージョン演算部における交換推奨時期、準備推奨時期および準備閾値の算出方法を説明するための図である。
図9】第1の実施の形態のエロージョン量管理装置の導入日時点において表示情報が表示された表示画面の一例を示す図である。
図10】第1の実施の形態のエロージョン量管理装置における定周期エロージョン演算処理方法を説明するためのフローチャートである。
図11】第1の実施の形態のエロージョン量管理装置における将来エロージョン演算処理方法を説明するためのフローチャートである。
図12】第2の実施の形態のエロージョン量管理装置における将来エロージョン演算処理方法を説明するためのフローチャートである。
図13】第2の実施の形態のエロージョン量管理装置における将来エロージョン演算処理方法を説明するためのフローチャートである。
図14】第2の実施の形態のエロージョン量管理装置における表示画面の一例を示す図である。
図15】第2の実施の形態のエロージョン量管理装置におけるユーザインターフェースに表示させる比較演算結果を選択する選択画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0012】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態のエロージョン量管理装置18を備えた蒸気タービン設備1の構成を模式的に示す系統図である。なお、エロージョン量管理装置18は、蒸気タービンの動翼のエロージョン量管理装置として機能する。
【0013】
図1に示すように、蒸気タービン設備1は、ボイラ10と、高圧タービン11と、再熱器12と、中圧タービン13と、低圧タービン14と、発電機15と、復水器16と、給水ポンプ17と、エロージョン量管理装置18とを備える。ここで、低圧タービン14の動翼は、エロージョン量管理装置18においてエロージョン量が管理される蒸気タービンの動翼として機能する。
【0014】
低圧タービン14の中でも、蒸気温度および蒸気圧力が低い下流のタービン段落において水滴による浸食が進展しやすい。そのため、エロージョン量管理装置18は、例えば、低圧タービン14の最終段の動翼におけるエロージョン量を管理する。なお、エロージョン量管理装置18は、最終段の動翼以外にも、水滴による浸食を受ける他のタービン段落の動翼におけるエロージョン量を管理してもよい。
【0015】
蒸気タービン設備1は、蒸気タービンにおける動翼のエロージョン量を算出して管理するためのエロージョン量管理システムとして、エロージョン量管理装置18と、蒸気温度検知器30と、出力検知器31とを備える。
【0016】
ボイラ10は、給水を加熱して蒸気を発生させ、その蒸気を主蒸気管20に導出する。高圧タービン11は、主蒸気管20から導入された蒸気によって回動され、その蒸気を低温再熱蒸気管21に排出する。再熱器12は、低温再熱蒸気管21から導入された蒸気を再熱して、その蒸気を高温再熱蒸気管22に導出する。
【0017】
中圧タービン13は、高温再熱蒸気管22から導入された蒸気によって回動され、その蒸気をクロスオーバー管23に排出する。低圧タービン14は、クロスオーバー管23から導入された蒸気によって回動され、その蒸気を排気管24に排出する。発電機15は、高圧タービン11、中圧タービン13および低圧タービン14により駆動されることによって発電を行う。発電機15は、例えば、高圧タービン11、中圧タービン13および低圧タービン14と同一軸上に連結される。
【0018】
復水器16は、排気管24から導入された蒸気を凝縮させて復水とする。給水ポンプ17は、復水器16の復水を給水として給水管25を介してボイラ10に供給する。
【0019】
エロージョン量管理装置18は、蒸気タービンにおける動翼のエロージョン量を算出して管理するための装置である。なお、エロージョン量管理装置18の詳細については、後述する。
【0020】
蒸気温度検知器30は、中圧タービン13に導入される蒸気の温度を検知し、その検知信号をエロージョン量管理装置18に出力する。蒸気温度検知器30は、図1に示すように、例えば、高温再熱蒸気管22に備えられ、中圧タービン13の入口における温度を検知する。蒸気温度検知器30は、例えば、熱電対などで構成される。なお、中圧タービン13の入口とは、初段のタービン段落の入口をいう。
【0021】
出力検知器31は、発電機15の電気出力を検知し、その検知信号をエロージョン量管理装置18に出力する。
【0022】
次に、エロージョン量管理装置18について説明する。
【0023】
図2は、第1の実施の形態のエロージョン量管理装置18の機能構成を示すブロック図である。エロージョン量管理装置18は、例えば、実機の運転データに基づいて過去から現在までのエロージョン量、および将来想定する運転条件に基づいて将来のエロージョン量を予測して管理する装置である。また、エロージョン量管理装置18は、例えば、エロージョン量などの予測結果を表示部に表示させるための表示情報を生成する。
【0024】
図2に示すように、エロージョン量管理装置18は、計測データ取得部40と、ユーザインターフェース50と、記憶部60と、演算部70とを備える。
【0025】
計測データ取得部40は、蒸気温度検知器30から出力された蒸気温度に係る検知信号と、出力検知器31から出力された電気出力に係る検知信号とを取得するインターフェースである。計測データ取得部40は、所定時間間隔でこれらの検知信号を取得する。計測データ取得部40は、例えば、1時間間隔で検知信号を取得する。
【0026】
計測データ取得部40は、取得した蒸気温度に係る検知信号および電気出力に係る検知信号に基づいてそれぞれを蒸気温度情報および電気出力情報に変換する機能を有する。計測データ取得部40は、変換した蒸気温度情報および電気出力情報を記憶部60の計測データ記憶部62に出力する。
【0027】
ユーザインターフェース50は、各種情報をユーザ(管理者)に対して表示する表示部と、ユーザが各種情報を入力する入力装置とを備える。表示部は、例えば、ディスプレイなどで構成される。また、表示部は、表示用の画面の機能を備えるとともに、画面に直接入力可能な入力装置としての機能を備えるタッチパネルで構成されてもよい。入力装置は、例えば、キーボードやマウスなどで構成される。
【0028】
記憶部60は、入力情報記憶部61と、計測データ記憶部62と、プログラム記憶部63と、演算結果記憶部64と、テンプレート記憶部65と、表示情報記憶部66とを備える。記憶部60は、例えば、ハードディスクドライブ、不揮発性メモリ装置などにより実現される。記憶部60は、エロージョン量管理装置18と物理的に一体ではなく図示しないネットワークを介して接続される形態とされてもよい。
【0029】
入力情報記憶部61は、ユーザインターフェース50を介して入力された、例えば、将来の運転条件、各種設定条件などを記憶する。また、入力情報記憶部61は、エロージョン量管理装置18を製造するメーカにおける入力装置から入力された、例えば、各種設定条件、管理対象の動翼の設計情報、エロージョン量に係る定期検査結果の情報などを記憶する。
【0030】
ここで、将来の運転条件は、将来のエロージョン量を予測する演算に使用される。将来の運転条件は、蒸気タービン設備1における将来の運転条件である。将来の運転条件には、区分された各負荷に対する1日(24時間)における運転時間と、年間における稼働率とが含まれる。将来の運転条件として、例えば、予め設定されたデフォルト運転モード、区分負荷ごとの運転時間および年間稼働率をユーザが任意に設定するカスタマイズ運転モードなどが例示される。ここで、区分負荷とは、蒸気タービンの負荷範囲(例えば、0%負荷から100%負荷の範囲)を所定の負荷単位(例えば、10%負荷単位)で区分した負荷をいう。例えば、0%負荷から100%負荷の蒸気タービンの負荷範囲を10%負荷単位で区分した場合、区分負荷は、10%負荷、20%負荷、30%負荷、40%負荷、50%負荷、60%負荷、70%負荷、80%負荷、90%負荷、100%負荷となる。
【0031】
図3は、第1の実施の形態のエロージョン量管理装置18におけるユーザインターフェース50に表示させる将来の運転条件の入力画面80の一例を示す図である。
【0032】
図3において、デフォルト運転モードとして、例えば、過去運用実績モード(Same as specific year)82、ベースロード運用モード(Base load)83と、ピークロード運用モード(Peak load)84とが設定されている。カスタマイズ運転モードとして、詳細運転設定モード(Detailed operation plan setting)85が設定されている。
【0033】
図3に示した入力画面80は、ユーザインターフェース50を介してユーザが選択および入力した画面の一例である。図3の上段の選択パターン81において、ユーザは、年ごとに選択する運用モードの欄の白丸を選択して黒丸とする。図3に示した入力画面80では、2024年に過去運用実績モード82、2025年および2026年にベースロード運用モード83、2027年および2028年にピークロード運用モード84、2029年-2032年に詳細運転設定モード85が選択されている。
【0034】
なお、図3には、2032年までの期間が示されているが、この期間に限られない。期間として、例えば、2040年などのさらに先の期間が設定されてもよい。
【0035】
過去運用実績モード82は、選択された年の運転パターンと同じ運転パターンで運転するモードである。過去運用実績モード82では、選択された年の1月から12月まで運転データから算出された、10%負荷単位の区分負荷および各区分負荷における運転時間に基づいて運転モードが設定される。また、過去運用実績モード82では、選択された年の稼働率(Availability factor)に基づいて運転モードが設定される。なお、図3では、2021年の運転パターンが選択されている。
【0036】
ここで、稼働率は、各年の1年間で蒸気タービン設備1を稼働する日数の割合である。すなわち、稼働率は、1年間で蒸気タービン設備1を稼働する日数を365日で除して100分率で示した値である。
【0037】
ベースロード運用モード83は、例えば、70%負荷から100%負荷の範囲の高負荷で運転するモードである。ベースロード運用モード83では、例えば、70%負荷から100%負荷を10%負荷単位で区分した区分負荷が設定される。また、ベースロード運用モード83では、年ごとに稼働率が設定されている。
【0038】
なお、ベースロード運用モード83は、デフォルト値であるが、例えば、蒸気タービン設備1における過去の運転データを参照して設定される。ベースロード運用モード83は、例えば、年単位で設定される。
【0039】
表1は、ベースロード運用モード83の一例を示している。
【0040】
【表1】
【0041】
表1には、2024年から2032年の各年において、区分負荷ごとに1日(24時間)における運転時間が設定された一例が示されている。表1に示すように、例えば、2024年のベースロード運用モード83として、100%負荷(定格負荷):3時間、90%負荷:10時間、80%負荷:9時間、70%負荷:2時間の設定がされている。また、稼働率は、89%に設定されている。
【0042】
なお、ここでは、ベースロード運用モード83として、100%負荷から70%負荷の負荷範囲を10%負荷単位で区分した一例を示しているが、この設定に限られない。ベースロード運用モード83における負荷範囲は、上記した一例の範囲よりも広く設定されてもよいし、狭く設定されてもよい。また、負荷単位は、10%負荷単位よりも広く設定されてもよいし、狭く設定されてもよい。また、設定される年数は、表1に設定された年数よりも少なくてもよいし、多くてもよい。
【0043】
ピークロード運用モード84は、低負荷から定格負荷(100%負荷)の範囲で負荷変動を伴って運転するモードである。ピークロード運用モード84では、例えば、100%負荷から20%負荷の負荷範囲を10%負荷単位で区分した区分負荷が設定される。ピークロード運用モード84は、年単位で設定される。表2は、ピークロード運用モード84の一例を示している。
【0044】
【表2】
【0045】
表2には、2024年から2032年の各年において、区分負荷ごとに1日(24時間)における運転時間が設定されている。例えば、2024年のピークロード運用モード84として、100%負荷(定格負荷):1時間、90%負荷:5時間、80%負荷:2時間、70%負荷:1時間、60%負荷:1時間、50%負荷:1時間、40%負荷:4時間、30%負荷:8時間、20%負荷:1時間の設定がされている。また、稼働率は、89%に設定されている。
【0046】
なお、ピークロード運用モード84は、デフォルト値であるが、例えば、蒸気タービン設備1における過去の運転データを参照して設定される。また、ここでは、ピークロード運用モード84として、100%負荷から20%負荷の負荷範囲を10%負荷単位で区分した一例を示しているが、この設定に限られない。ピークロード運用モード84における負荷範囲は、上記した一例の範囲よりも広く設定されてもよいし、狭く設定されてもよい。また、負荷単位は、10%負荷単位よりも広く設定されてもよいし、狭く設定されてもよい。また、設定される年数は、表2に設定された年数よりも少なくてもよいし、多くてもよい。
【0047】
詳細運転設定モード85では、図3の下段のオペレーションデータ86の欄に示された区分負荷ごとに1日(24時間)における運転時間が任意に設定される。また、稼働率も任意に設定される。ユーザは、詳細運転設定モード85の年の欄の区分負荷ごとに運転時間を入力する。図3では、詳細運転設定モード85が設定された2029年-2032年の欄に運転時間が入力されている。
【0048】
また、ここでは、詳細運転設定モード85のオペレーションデータ86として、100%負荷から20%負荷の負荷範囲を10%負荷単位で区分した一例を示しているが、この設定に限られない。詳細運転設定モード85における負荷範囲は、上記した一例の範囲よりも広く設定されてもよいし、狭く設定されてもよい。また、負荷単位は、10%負荷単位よりも広く設定されてもよいし、狭く設定されてもよい。
【0049】
ここで、上記した将来の運転条件を入力したユーザは、図3のSaveボタン87を押す。ユーザインターフェース50は、Saveボタン87からの入力を受け、将来の運転条件に係る情報を入力情報記憶部61に出力する。入力情報記憶部61は、将来の運転条件に係る情報を入力して記憶する。
【0050】
また、入力情報記憶部61は、将来の運転条件における区分負荷に対応させて、ヒートバランスに基づいて設定された、中圧タービン13入口の蒸気温度情報および発電機15の電気出力情報の対応テーブルを記憶している。これによって、例えば、将来の運転条件の区分負荷ごとに、蒸気温度情報および電気出力情報が記憶されているため、将来エロージョン演算部72は、これらの蒸気温度情報および電気出力情報に基づいて将来のエロージョン量を演算できる。
【0051】
また、入力情報記憶部61は、エロージョン量に係る定期検査結果の情報などを記憶する。ここで、図4は、第1の実施の形態のエロージョン量管理装置18に対してエロージョンに関する定期検査結果を入力する入力画面90の一例を示す図である。なお、定期検査結果は、例えば、メーカが入力する。図4に示された入力画面90は、例えば、メーカにおける入力装置の操作画面に表示される。そして、メーカにおける入力装置からの定期検査結果に係る情報を入力情報記憶部61に出力する。入力情報記憶部61は、定期検査結果に係る情報を入力して記憶する。なお、メーカにおける入力装置は、エロージョン量管理装置18にアクセス可能に設定されている。
【0052】
図4の入力画面90に示された「X1:Theoretical Chord Length」は、新品動翼の翼弦長である。新品動翼の翼弦長は、翼の仕様などによっても異なる。そのため、新品動翼の翼弦長に関する情報は、翼の仕様などに基づいてメーカが入力して入力情報記憶部61に記憶させている。インプットされた翼弦長は、X1の値を示す数値欄91に表示される。
【0053】
「X2:Inspected Chord Length」は、定期検査において計測された翼弦長である。「X3:Inspected Notch Depth」は、入力画面90に示されるように、エロージョン部のV字状の凹凸の最も突出した部分と最も窪んだ部分との距離である。「X3:Inspected Notch Depth」は、定期検査において計測される。「Y:Amount of erosion」は、定期検査において得られたエロージョン量である。「Y:Amount of erosion」は、「X1-(X2-X3)」を演算することで得られる。
【0054】
X2、X3の数値欄92、93には、定期検査結果に基づいた数値が入力される。X2、X3の数値の入力後、Yの数値欄94には、エロージョン量が表示される。
【0055】
そして、メーカにおける入力装置は、Uploadボタン95からの入力を受け、定期検査結果に係る情報を入力情報記憶部61に出力する。入力情報記憶部61は、定期検査結果に係る情報を入力して記憶する。なお、メーカにおける入力装置は、All Deleteボタン96からの入力を受け、例えば、X2、X3、Yの数値欄92、93、94の数値を削除する。
【0056】
なお、ここでは、定期検査結果をメーカが入力する一例を示したが、ユーザが入力可能に設定してもよい。この場合、図4に示された入力画面90は、ユーザインターフェース50の表示部に表示される。ユーザが定期検査結果を入力する場合、ユーザは、定期検査結果を入力した後、Uploadボタン95を押す。そして、ユーザインターフェース50は、Uploadボタン95からの入力を受け、定期検査結果に係る情報を入力情報記憶部61に出力する。入力情報記憶部61は、定期検査結果に係る情報を入力して記憶する。なお、入力画面90のBackボタン97は、Uploadボタン95を押さずに、後述する表示画面100に戻る場合に押すボタンである。
【0057】
なお、最新の定期検査結果に係る情報は、例えば、定周期エロージョン演算部71においてエロージョン量を演算する際のエロージョン初期値となる。
【0058】
入力情報記憶部61は、動翼を交換すべきエロージョン量である交換閾値を記憶する。ここで、エロージョン量が交換閾値に達した動翼は、交換されることが推奨される。交換閾値は、例えば、動翼の仕様などに基づいて設定されるデフォルト値である。そのため、交換閾値は、入力情報記憶部61に予め記憶されている。なお、メーカは、予め入力情報記憶部61に交換閾値を記憶させる。
【0059】
入力情報記憶部61は、エロージョン量管理装置18の導入時において、後述する準備推奨時期を定めるための準備期間を初期値として記憶している。準備期間は、新しい動翼を準備するために必要な期間である。なお、ユーザは、メーカに依頼することで準備期間を初期値から所定の期間に変更可能である。この場合、変更された準備期間に係る情報は、メーカにおける入力装置からエロージョン量管理装置18の入力情報記憶部61に出力される。そして、入力情報記憶部61は、変更された準備期間に係る情報を記憶する。
【0060】
計測データ記憶部62は、計測データ取得部40から出力された、蒸気温度情報および電気出力情報を記憶する。計測データ記憶部62は、例えば、1時間おきに計測データ取得部40から出力される蒸気温度情報および電気出力情報を記憶する。
【0061】
プログラム記憶部63は、エロージョン量管理装置18において、エロージョン量などの算出やエロージョン量の管理を実行するためのプログラム、エロージョン量などを算出するための各種演算式や各種パラメータなどを記憶する。
【0062】
演算結果記憶部64は、演算部70で演算された結果を記憶する。演算結果記憶部64は、例えば、定周期エロージョン演算部71で演算された、過去から現在までのエロージョン量に関する情報を記憶する。ここで、演算結果記憶部64は、過去から現在までのエロージョン量に関する情報として、例えば、過去から現在におけるエロージョン量の演算結果などを記憶する。なお、この情報は、過去エロージョン量関連情報として機能する。
【0063】
演算結果記憶部64は、例えば、将来エロージョン演算部72で演算された、将来のエロージョン量に関する情報を記憶する。演算結果記憶部64は、将来エロージョン演算部72の演算によって算出される将来のエロージョン量が交換閾値に達する交換推奨時期を記憶する。なお、交換推奨時期は、年月日で特定される。交換推奨時期の算出方法は後述する。
【0064】
ここで、交換推奨時期から所定の準備期間前の時期を準備推奨時期とする。準備推奨時期とは、交換推奨時期が特定された動翼に対して新しい動翼の準備を始めることを推奨する時期をいう。なお、準備推奨時期も、交換推奨時期と同様に、年月日で特定される。例えば、交換推奨時期が2040年6月1日、準備期間が3年の場合、準備推奨時期は、2037年6月1日となる。準備期間は、前述したように、入力情報記憶部61に記憶されている。
【0065】
また、演算結果記憶部64は、将来エロージョン演算部72によって演算された、準備推奨時期における将来のエロージョン量を準備閾値として記憶する。すなわち、準備推奨時期におけるエロージョン量は、準備閾値である。準備閾値の算出方法は後述する。
【0066】
演算結果記憶部64は、将来のエロージョン量に関する情報として、例えば、将来のエロージョン量、準備閾値、準備推奨時期、交換推奨時期などの演算結果を記憶する。なお、これらの情報は、将来エロージョン量関連情報として機能する。
【0067】
テンプレート記憶部65は、演算結果記憶部64に記憶された演算結果を表示する画面の基となるテンプレート画面に係る情報を記憶する。ユーザインターフェース50の表示部に表示させる各種テンプレート画面に係る情報は、予めテンプレート記憶部65に記憶されている。
【0068】
表示情報記憶部66は、演算部70の表示情報生成部73で生成された表示部に表示するための表示情報を記憶する。
【0069】
演算部70は、定周期エロージョン演算部71と、将来エロージョン演算部72と、表示情報生成部73とを備える演算ブロックである。演算部70は、ユーザインターフェース50からのユーザの実行開始入力に応じて、プログラム記憶部63からエロージョン量管理装置18を実行するためのプログラムを読み出す。これによって、定周期エロージョン演算部71、将来エロージョン演算部72および表示情報生成部73それぞれの機能が実行可能となる。
【0070】
定周期エロージョン演算部71は、プログラム記憶部63からエロージョン量を算出するための演算式やパラメータを読み出し、計測データ記憶部62に記憶された蒸気温度情報および電気出力情報に基づいて、定周期におけるエロージョン量を算出する演算ブロックである。定周期エロージョン演算部71は、算出したエロージョン量に係る情報を演算結果記憶部64に出力する。
【0071】
ここで、定周期とは、過去の所定日から現在までの、例えば、1時間周期をいう。定周期エロージョン演算部71は、過去の所定日の定期検査において計測されたエロージョン量を初期値として、蒸気温度情報および電気出力情報に基づいて、定周期おきに(例えば、1時間おきに)エロージョン量を算出する。そして、現在におけるエロージョン量は、過去の所定日の定期検査において計測されたエロージョン量に、過去の所定日から現在までに進行したエロージョン量を加算することで算出される。なお、定周期エロージョン演算部71によって算出される過去の所定日から現在までに進行したエロージョン量は、予測値である。
【0072】
また、定周期エロージョン演算部71は、入力情報記憶部61に記憶された交換閾値に基づいて、算出したエロージョン量が交換閾値に達しているか否かを判定する。また、定周期エロージョン演算部71は、入力情報記憶部61に記憶された準備閾値に基づいて、算出したエロージョン量が準備閾値に達しているか否かを判定する。なお、定周期エロージョン演算部71におけるこの判定に関する動作については後述する。
【0073】
将来エロージョン演算部72は、プログラム記憶部63からエロージョン量を算出するための演算式やパラメータを読み出し、入力情報記憶部61に記憶された将来の運転条件に基づいて、将来のエロージョン量を算出する演算ブロックである。将来エロージョン演算部72は、算出したエロージョン量に係る情報を演算結果記憶部64に出力する。
【0074】
ここで、将来とは、現在から将来の運転条件として設定された将来の年までをいう。将来エロージョン演算部72は、定周期エロージョン演算部71において算出された現在のエロージョン量を初期値として、入力情報記憶部61に記憶された将来の運転条件に基づいて、所定年ごと(例えば、1年ごと)の将来のエロージョン量を算出する。なお、将来エロージョン演算部72によって算出される将来のエロージョン量は、予測値である。
【0075】
また、将来エロージョン演算部72は、入力情報記憶部61に記憶された交換閾値および算出した将来のエロージョン量に基づいて、将来のエロージョン量が交換閾値に達しているか否かを判定する。将来エロージョン演算部72は、将来のエロージョン量が交換閾値に達していると判定した場合、将来エロージョン演算部72は、将来のエロージョン量が交換閾値に達する交換推奨時期を算出する。
【0076】
さらに、将来エロージョン演算部72は、将来のエロージョン量が交換閾値に達していると判定した場合、前述した準備期間に基づいて、準備推奨時期および準備閾値を算出する。
【0077】
ここで、説明の便宜上、定周期エロージョン演算部71によって演算された過去から現在までのエロージョン量を過去エロージョン量と称し、将来エロージョン演算部72によって演算された現在から将来の所定日までのエロージョン量を将来エロージョン量と称する。
【0078】
表示情報生成部73は、ユーザインターフェース50の表示部に表示させる表示情報を生成する演算ブロックである。表示情報生成部73は、演算結果記憶部64およびテンプレート記憶部65に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する。なお、表示情報生成部73は、例えば、定周期エロージョン演算部71、将来エロージョン演算部72の演算結果を直接入力し、テンプレート記憶部65に記憶された情報に基づいて表示情報を生成してもよい。
【0079】
表示情報生成部73は、生成した表示情報を表示情報記憶部66に出力する。また、表示情報生成部73は、生成した表示情報をユーザインターフェース50に出力する。
【0080】
ここで、上記したエロージョン量管理装置18は、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶装置、HDD(Hard Disk Drive)、CD(Compact Disc)ドライブ装置などの外部記憶装置、ディスプレイなどの表示装置、キーボードやマウスなどの入力装置などを備えたコンピュータ装置などで構成することが可能である。
【0081】
(定周期エロージョン演算部71および将来エロージョン演算部72における演算)
ここで、定周期エロージョン演算部71および将来エロージョン演算部72における演算の流れを説明する。
【0082】
図5は、第1の実施の形態のエロージョン量管理装置18の定周期エロージョン演算部71における過去エロージョン量の演算の流れを説明するためのフローチャートである。図6は、第1の実施の形態のエロージョン量管理装置18の将来エロージョン演算部72における将来エロージョン量の演算の流れを説明するためのフローチャートである。
【0083】
まず、図5を参照して、定周期エロージョン演算部71における過去エロージョン量の演算の流れを説明する。
【0084】
図5に示すように、定周期エロージョン演算部71は、計測データ記憶部62からタービン入口の蒸気温度および発電機15の電気出力を読み出す(ステップS1)。ここで、タービン入口の蒸気温度および発電機15の電気出力は、過去エロージョン量を演算するための計測された情報として機能する。ここでは、タービン入口の蒸気温度として、例えば、中圧タービン13に導入される蒸気の温度が使用される。なお、ステップS1を実行する際には、定周期エロージョン演算部71は、プログラム記憶部63から過去エロージョン量の演算を実行するためのプログラム、過去エロージョン量を算出するための演算式やパラメータ、入力情報記憶部61から管理対象の動翼の設計情報などを読み出している。
【0085】
そして、定周期エロージョン演算部71は、蒸気温度情報および電気出力情報に基づいて、低圧タービン14の最終段動翼入口における蒸気の流量、湿り度、圧力および流速を演算する(ステップS2)。なお、定周期エロージョン演算部71に流体解析または一次元蒸気計算のプログラムを格納しておいて、定周期エロージョン演算部71は、蒸気温度情報および電気出力情報を読み出して、最終段動翼入口の流量、湿り度、圧力および流速は算出してもよい。
【0086】
続いて、定周期エロージョン演算部71は、最終段動翼入口の流量、湿り度、圧力および流速に基づいて、最終段動翼入口における蒸気中の水量(水滴個数)、水滴径および水滴衝突速度を演算する(ステップS3)。
【0087】
定周期エロージョン演算部71は、流量および湿り度に基づいて水量を算出する。定周期エロージョン演算部71は、圧力ρ、流速Wおよびウェーバー数Weσを用いて以下の式(1)によって、水滴径Dを算出する。

D=Weσ/(ρW) …式(1)
【0088】
ウェーバー数Weσは、蒸気の慣性力と水滴の表面張力との比を表す無次元数である。水滴径Dは、圧力ρが高くなるとともに小さくなる。
【0089】
定周期エロージョン演算部71は、流速Wと水滴径Dから水滴の軌道計算によって水滴の衝突速度を算出する。水滴径が大きいほど蒸気によって水滴が加速されにくくなり、蒸気と水滴の速度差が大きくなる。そのため、水滴の動翼への衝突速度は、大きくなる。なお、定周期エロージョン演算部71は、水滴の軌道解析プログラムを格納して水滴の衝突速度を算出してもよい。
【0090】
次に、定周期エロージョン演算部71は、最終段動翼のエロージョン率を演算する(ステップS5)。ここで、エロージョン率がある一定値となる安定期間におけるエロージョン量Eは、時間tに対して線形変化する特性として、以下の式(2)によって示される。

E=a+bt …式(2)
【0091】
ここで、aは材料特性である。式(2)を時間微分することにより、単位時間当たりのエロージョン量Eであるエロージョン率dE/dtは、以下の式(3)で示される。

dE/dt=b …式(3)
【0092】
ここで、bは、通常、水滴の衝突速度V、水滴径D、水量(水滴個数N)および材料特性の関数であり、以下の式(4)で表される。

b=C1×Vp1×Dq1×N …式(4)
【0093】
ここで、C1、p1、およびq1は、材料定数である。
【0094】
最終段動翼の材料特性および補正係数は、入力情報記憶部61に予め記憶されている。式(3)によってエロージョン率を演算する際、定周期エロージョン演算部71は、入力情報記憶部61から材料特性および補正係数を読み出してエロージョン率の演算に用いる(ステップS4)。なお、補正係数は、式(2)全体にかかる傾きや切片であり、式(2)によって決まるグラフ形状を微調整することに使用される。
【0095】
続いて、定周期エロージョン演算部71は、ある一定の時間範囲Δtにおけるエロージョン量ΔEを以下の式(5)によって演算する(ステップS6)。

ΔE=dE/dt×Δt …式(5)
【0096】
このようにエロージョン量Eは、エロージョン率dE/dtに基づいて算出される。具体的には、定周期エロージョン演算部71は、式(5)を用いて演算したΔEを蒸気タービンプラントの運転時間(過去の所定日から現在まで)にわたって積算することで、エロージョン量Eを算出する。
【0097】
ここで、定周期エロージョン演算部71は、上記演算によって算出されたエロージョン量Eに過去の所定日の定期検査において計測されたエロージョン量を加算することで、過去エロージョン量を算出する。これによって、低圧タービン14の運用が反映された最終段の過去エロージョン量が得られる。
【0098】
なお、定周期エロージョン演算部71は、演算結果を演算結果記憶部64に出力する。上記した定周期エロージョン演算部71における過去エロージョン量の演算は、例えば、1時間おきに実行される。最も直近に算出された過去エロージョン量は、現在のエロージョン量に相当する。
【0099】
次に、図6を参照して、将来エロージョン演算部72における将来エロージョン量の演算の流れを説明する。
【0100】
将来エロージョン演算部72の演算の流れにおいて、図6に示すステップS10およびステップS11以外は、定周期エロージョン演算部71の演算の流れと基本的に同じである。すなわち、将来エロージョン演算部72の演算におけるステップS12-ステップS16の処理は、定周期エロージョン演算部71の演算におけるステップS2-ステップS6の処理と基本的に同じである。そのため、ここでは、将来エロージョン演算部72の演算におけるステップS10およびステップS11の処理について主に説明する。
【0101】
図6に示すように、将来エロージョン演算部72は、入力情報記憶部61から将来の運転条件を読み出す(ステップS10)。なお、ステップS10を実行する際には、将来エロージョン演算部72は、プログラム記憶部63から将来エロージョン量の演算を実行するためのプログラムや将来エロージョン量を算出するための演算式やパラメータ、入力情報記憶部61から管理対象の動翼の設計情報などを読み出している。
【0102】
続いて、将来エロージョン演算部72は、将来の運転条件に基づいて、区分負荷に対応させて予め設定された、中圧タービン13の入口の蒸気温度情報および発電機15の電気出力情報を入力情報記憶部61から読み出す(ステップS11)。なお、この演算において、入力情報記憶部61からから読み出された蒸気温度情報および電気出力情報は、前述した定周期エロージョン演算部71の演算において計測データ記憶部62から読み出されたタービン入口の蒸気温度情報および発電機15の電気出力情報と同様に取り扱われる。
【0103】
そして、将来エロージョン演算部72は、定周期エロージョン演算部71の演算と同様に、蒸気温度情報および電気出力情報に基づいて、低圧タービン14の最終段動翼入口における蒸気の流量、湿り度、圧力および流速を演算する(ステップS12)。
【0104】
将来エロージョン演算部72は、ステップS12からステップS15の処理を実行してエロージョン量Eを算出する。ここで、ステップS16において、将来エロージョン演算部72は、式(5)を用いて演算したΔEを蒸気タービンプラントの運転時間(現在から将来の所定日まで)にわたって積算してエロージョン量Eを算出する。
【0105】
将来エロージョン演算部72は、算出した現在から将来の所定日までに進行するエロージョン量Eに、定周期エロージョン演算部71によって算出された最も直近の過去エロージョン量を加算することで、将来の所定日における将来エロージョン量を算出する。これによって、低圧タービン14における将来の運用が反映された最終段の将来エロージョン量が得られる。
【0106】
なお、将来エロージョン演算部72は、演算結果を演算結果記憶部64に出力する。上記した将来エロージョン演算部72における将来エロージョン量の演算結果は、将来の運転条件として設定された1年周期ごとに得られる。すなわち、将来エロージョン演算部72における演算結果は、1年単位で得られる。
【0107】
(交換推奨時期、準備推奨時期および準備閾値の算出)
ここで、交換推奨時期、準備推奨時期および準備閾値の算出方法について説明する。図7および図8は、第1の実施の形態のエロージョン量管理装置18の将来エロージョン演算部72における交換推奨時期、準備推奨時期および準備閾値の算出方法を説明するための図である。図7および図8において、横軸は時間(年)を示し、縦軸はエロージョン量比を示す。なお、ここでは、横軸の年における想定月日は、1月1日とする。
【0108】
ここでは、エロージョン量は、エロージョン量比として示されている。エロージョン量比は、交換閾値のエロージョン量を1としたときのエロージョン量比である。エロージョン量比が1.0よりも小さいときは、エロージョン量は交換閾値を下回っている。エロージョン量比が1.0よりも大きいときは、エロージョン量は交換閾値を超えている。
【0109】
まず、図7を参照して、準備閾値に到達するときが将来の場合について説明する。
【0110】
図7に示すように、2032年におけるエロージョン量比は1よりも小さく、2033におけるエロージョン量比は1.0よりも大きい。そのため、エロージョン量比は、2032年と2033年との間で1.0に達している。すなわち、交換推奨時期は、2032年と2033年との間に存在する。
【0111】
将来エロージョン演算部72は、2032年と2033年の間において、時間とエロージョン量比の関係を1次関数で表す。そして、将来エロージョン演算部72は、エロージョン量比が1.0となる月日を算出する。
【0112】
図7に示した一例では、2032年におけるエロージョン量比は0.95であり、2033年におけるエロージョン量比は1.05である。将来エロージョン演算部72は、1次関数に基づいて、エロージョン量比が1.0となる交換推奨時期を算出する。図7に示した一例では、演算の結果、2032年の7月1日が交換推奨時期となる。
【0113】
続いて、将来エロージョン演算部72は、交換推奨時期および準備期間に基づいて、準備推奨時期を算出する。ここで、準備期間を3年とした場合、準備推奨時期は、交換推奨時期よりも3年前の2029年の7月1日となる。
【0114】
続いて、将来エロージョン演算部72は、2029年と2030年の間において、時間とエロージョン量比の関係を1次関数で表す。そして、将来エロージョン演算部72は、2029年の7月1日におけるエロージョン量比を算出する。図7に示した一例では、演算の結果、2029年の7月1日におけるエロージョン量比は0.75となる。この結果から、準備推奨時期におけるエロージョン量比である準備閾値は0.75となる。
【0115】
そして、将来エロージョン演算部72は、上記した、交換推奨時期、準備推奨時期および準備閾値の演算結果を演算結果記憶部64に出力する。演算結果記憶部64は、交換推奨時期、準備推奨時期および準備閾値の演算結果を入力して記憶する。
【0116】
次に、図8を参照して、準備閾値に到達するときが過去の場合について説明する。
【0117】
図8に示すように、エロージョン量比が1.0に達するのは、2032年と2033年との間である。すなわち、交換推奨時期は、2032年と2033年との間に存在する。そのため、準備推奨時期は、現在(2031年)よりも過去となる。
【0118】
図8に示すように、図7を参照して説明したときと同様に、将来エロージョン演算部72は、2032年と2033年の間において、時間とエロージョン量比の関係を1次関数で表してエロージョン量比が1.0となる月日を算出する。
【0119】
図8に示した一例では、2032年におけるエロージョン量比は0.95であり、2033年におけるエロージョン量比は1.05である。図8に示した一例では、演算の結果、2032年の7月1日が交換推奨時期となる。
【0120】
続いて、将来エロージョン演算部72は、交換推奨時期および準備期間に基づいて、準備推奨時期を算出する。ここで、準備期間を3年とした場合、準備推奨時期は、交換推奨時期よりも3年前の2029年の7月1日となる。
【0121】
続いて、将来エロージョン演算部72は、演算結果記憶部64から2029年の7月1日におけるエロージョン量を読み出し、エロージョン量比を算出する。この算出されたエロージョン量比は、準備閾値である。
【0122】
ここで、2029年の7月1日におけるエロージョン量は、定周期エロージョン演算部71によって演算された結果である。そのため、演算結果記憶部64は、この日の演算結果として、1時間おきの複数のデータを記憶している。そこで、2029年の7月1日におけるエロージョン量として、将来エロージョン演算部72は、例えば、2029年の7月1日におけるエロージョン量のデータの中の最大のエロージョン量を参照する。
【0123】
そして、将来エロージョン演算部72は、上記した、交換推奨時期、準備推奨時期および準備閾値の演算結果を演算結果記憶部64に出力する。演算結果記憶部64は、交換推奨時期、準備推奨時期および準備閾値の演算結果を入力して記憶する。
【0124】
ここで、将来エロージョン量の演算の結果、将来の演算指定期間の間においてエロージョン量比が1.0に達しない場合には、交換推奨時期、準備推奨時期および準備閾値は得られない。
【0125】
(導入時におけるエロージョン量管理装置18について)
ここで、まず、導入時におけるエロージョン量管理装置18の状態について説明する。
【0126】
エロージョン量管理装置18の導入時において、表示情報記憶部66は、導入日時点での、過去エロージョン量および将来エロージョン量に関する表示情報を記憶している。すなわち、導入時におけるエロージョン量管理装置18は、ユーザインターフェース50の表示部に、導入日時点での、過去エロージョン量および将来エロージョン量を表示可能な状態である。
【0127】
すなわち、表示情報記憶部66は、演算結果記憶部64に記憶された定周期エロージョン演算部71および将来エロージョン演算部72で演算された演算結果、およびテンプレート記憶部65に記憶されたテンプレート画面に係る情報に基づいて、表示情報生成部73によって生成された導入日時点での表示情報を記憶している。
【0128】
なお、メーカは、導入日時点において上記した状態となるようにエロージョン量管理装置18を処理している。
【0129】
ここで、図9は、第1の実施の形態のエロージョン量管理装置18の導入日時点において表示情報が表示された表示画面100の一例を示す図である。
【0130】
図9に示すように、表示画面100には、定周期エロージョン演算部71によって演算された過去エロージョン量の結果(破線)、および将来エロージョン演算部72によって演算された将来エロージョン量の結果(実線)が時系列で示されている。これらのエロージョン量の結果を示すグラフ101では、横軸に年月日、縦軸にエロージョン量比が示されている。なお、ここでは、2024年1月1日を現在としている。なお、グラフ101では、エロージョン量は、エロージョン量比として示されている。エロージョン量比は、前述したとおりである。
【0131】
図9では、2014年1月1日から2034年1月1日までの時間軸を示している。この時間軸の範囲は、表示画面100の時間軸設定部102の設定値を選択することで設定される。ここでは、時間軸設定部102の設定値として、5年、10年、15年、20年が設定された一例を示している。なお、図9では、10年が選択されている。
【0132】
時間軸は、現在から設定値分の過去、現在から設定値分の将来が示される。例えば、図9に示すように設定値として10年が選択された場合、現在(2024年1月1日)から2014年1月1日までの過去10年分の時間範囲および現在(2024年1月1日)から2034年1月1日までの将来10年分の時間範囲が時間軸として表示される。
【0133】
このように、ユーザは、時間軸設定部102の設定値を選択することで時間軸の範囲を任意に変更することができる。
【0134】
なお、図9において、エロージョン量として、2016年1月1日から2032年1月1日までの演算結果が示されている。この場合、2016年1月1日から2024年1月1日までのエロージョン量比は、過去エロージョン量に基づくエロージョン量比であり、2024年1月1日から2032年1月1日までのエロージョン量比は、将来エロージョン量に基づくエロージョン量比である。
【0135】
ここで、2016年1月1日におけるエロージョン量比は、図4に示した入力画面90から入力された定期検査結果に基づいて示されている。表示画面100のグラフ101において、その定期検査結果に基づくエロージョン量比は、黒丸で示されている。なお、例えば、最新の定期検査よりも前の演算結果を有する場合においても、表示画面100には、最新の定期検査以降の演算結果が示され、最新の定期検査よりも前の演算結果は表示されない。
【0136】
また、表示画面100には、交換閾値が「Threshold 2」として一点鎖線で示され、準備閾値が「Threshold 1」として二点鎖線で示されている。なお、グラフ101において、交換閾値のエロージョン量は、エロージョン量比1として示されている。また、グラフ101において示された準備閾値は、交換閾値のエロージョン量を1としたときのエロージョン量比で示されている。
【0137】
表示画面100には、アラーム表示103が表示される。アラーム表示103は、将来エロージョン量または過去エロージョン量が交換閾値を超える場合に表示される。
【0138】
なお、交換閾値は、初期値として入力情報記憶部61に記憶されたデフォルト値であるため、「Threshold 2」は、表示画面100に常に表示されている。また、将来エロージョン量が交換閾値に達していない場合、準備閾値、交換推奨時期および準備推奨時期は、算出されない。そのため、表示画面100にアラーム表示103は、表示されない。
【0139】
アラーム表示103として、交換推奨時期および準備推奨時期が示されている。また、図9には、現在から交換推奨時期までの日数、および現在から準備推奨時期までの日数が示されたアラーム表示103の一例が示されている。なお、アラーム表示103は、少なくとも、交換推奨時期および準備推奨時期を含む。なお、交換閾値、準備閾値、交換推奨時期および準備推奨時期は、前述したとおりである。
【0140】
図9に示すように、ユーザインターフェース50の表示画面100には、過去エロージョン量および将来エロージョン量の時間経過に伴う変化が一つのグラフ101上に表示される。また、将来エロージョン量が交換閾値を超える場合、準備閾値、交換推奨時期および準備推奨時期は、表示画面100に表示される。
【0141】
(定周期エロージョン演算処理)
次に、第1の実施の形態のエロージョン量管理装置18における定周期エロージョン演算処理について説明する。
【0142】
図10は、第1の実施の形態のエロージョン量管理装置18における定周期エロージョン演算処理方法を説明するためのフローチャートである。
【0143】
図10に示すように、定周期エロージョン演算部71は、例えば、計測データ記憶部62に記憶された情報に基づいて、蒸気タービン設備1が運転している否かを判定する(ステップS20)。定周期エロージョン演算部71は、例えば、蒸気温度情報および電気出力情報に基づいて、蒸気タービン設備1が運転している否かを判定する。
【0144】
ステップS20の判定において、蒸気タービン設備1が運転していないと判定した場合(ステップS20のNo)、定周期エロージョン演算処理を終了する。
【0145】
ステップS20の判定において、蒸気タービン設備1が運転していると判定した場合(ステップS20のYes)、定周期エロージョン演算部71は、プログラム記憶部63から過去エロージョン量の演算を実行するためのプログラム、過去エロージョン量を算出するための演算式やパラメータ、入力情報記憶部61から管理対象の動翼の設計情報、計測データ記憶部62に記憶されたタービン入口の蒸気温度および発電機15の電気出力を読み出す(ステップS21)。
【0146】
続いて、定周期エロージョン演算部71は、図5を参照して説明した演算方法で、過去エロージョン量の演算し、演算結果を演算結果記憶部64に出力する(ステップS22)。演算結果記憶部64は、その演算結果を記憶する。
【0147】
表示情報生成部73は、演算結果記憶部64に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部65に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS23)。そして、表示情報生成部73は、生成した表示情報を表示情報記憶部66およびユーザインターフェース50に出力する。表示情報記憶部66は、その表示情報を記憶する。
【0148】
ユーザインターフェース50は、表示情報生成部73から出力された表示情報を図9に示すように表示部に表示する(ステップS24)。
【0149】
ここで、表示情報生成部73は、1時間おきに、演算結果に基づく表示情報を表示情報記憶部66およびユーザインターフェース50に出力する。そのため、表示部に表示される過去エロージョン量に関する演算結果を示すグラフ101は、1時間おきに更新される。定周期エロージョン演算部71は、例えば、過去エロージョン量の演算後、1時間おきにステップS20-ステップS24の処理を繰り返す。
【0150】
また、定周期エロージョン演算部71は、ステップS22の処理後、演算結果記憶部64を参照して準備閾値が記憶されているか否かを判定する(ステップS25)。
【0151】
ここで、例えば、エロージョン量管理装置18の導入日時点における将来エロージョン量の演算において、将来の演算指定期間内で将来エロージョン量が交換閾値に達している場合には、演算結果記憶部64に準備閾値が記憶されている。また、エロージョン量管理装置18の導入後における将来エロージョン量の演算において、将来の演算指定期間内で将来エロージョン量が交換閾値に達している場合には、演算結果記憶部64に準備閾値が記憶されている。
【0152】
一方、エロージョン量管理装置18の導入日時点における将来エロージョン量の演算において、将来の演算指定期間内で将来エロージョン量が交換閾値に達しない場合には、演算結果記憶部64に準備閾値は記憶されていない。また、エロージョン量管理装置18の導入後における将来エロージョン量の演算において、将来の演算指定期間内で将来エロージョン量が交換閾値に達しない場合には、演算結果記憶部64に準備閾値が記憶されていない。
【0153】
ステップS25の判定において、準備閾値が記憶されていないと判定した場合(ステップS25のNo)、定周期エロージョン演算部71は、再度ステップS25の処理を実行する。
【0154】
ステップS25の判定において、準備閾値が記憶されていると判定した場合(ステップS25のYes)、定周期エロージョン演算部71は、ステップS22の演算結果に基づいて、過去エロージョン量が準備閾値に達しているか否かを判定する(ステップS26)。
【0155】
ステップS26の判定において、過去エロージョン量が準備閾値に達していないと判定した場合(ステップS26のNo)、定周期エロージョン演算部71は、再度ステップS25の処理を実行する。
【0156】
ステップS26の判定において、過去エロージョン量が準備閾値に達していると判定した場合(ステップS26のYes)、定周期エロージョン演算部71は、ステップS22の演算結果に基づいて、過去エロージョン量が交換閾値に達しているか否かを判定する(ステップS27)。
【0157】
ここで、過去エロージョン量が準備閾値に達する場合とは、過去エロージョン量が、将来エロージョン演算部72によって算出された将来予測に基づく準備閾値に達することを示している。
【0158】
ステップS27の判定において、過去エロージョン量が交換閾値に達していないと判定した場合(ステップS27のNo)、定周期エロージョン演算部71は、過去エロージョン量が準備閾値に達した年月日に関する情報(準備推奨時期に係る情報)を演算結果記憶部64に出力する。演算結果記憶部64は、この情報を記憶する。
【0159】
表示情報生成部73は、演算結果記憶部64に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部65に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS28)。そして、表示情報生成部73は、生成した表示情報を表示情報記憶部66およびユーザインターフェース50に出力する。表示情報記憶部66は、表示情報を記憶する。
【0160】
ユーザインターフェース50は、表示情報生成部73から出力された表示情報に基づいて、表示画面を更新する(ステップS29)。この更新によって、図9に示したアラーム表示103における準備推奨時期の情報が更新される。
【0161】
ステップS27の判定において、過去エロージョン量が交換閾値に達していると判定した場合(ステップS27のYes)、定周期エロージョン演算部71は、過去エロージョン量が交換閾値に達した年月日に関する情報(交換推奨時期に係る情報)を演算結果記憶部64に出力する。演算結果記憶部64は、その情報を記憶する。
【0162】
表示情報生成部73は、演算結果記憶部64に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部65に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS30)。そして、表示情報生成部73は、生成した表示情報を表示情報記憶部66およびユーザインターフェース50に出力する。表示情報記憶部66は、表示情報を記憶する。
【0163】
ユーザインターフェース50は、表示情報生成部73から出力された表示情報に基づいて、表示画面を更新する(ステップS31)。この更新によって、図9に示したアラーム表示103における交換推奨時期の情報が更新される。
【0164】
ここで、定周期エロージョン演算部71における過去エロージョン量の演算は、例えば、1時間おきに実行される。そのため、表示画面100の過去エロージョン量に関する情報は、1時間おきに更新される。なお、横軸の時間の範囲が同じ場合、時間の経過に伴って、図9のグラフ101における過去エロージョン量に関する情報は増加する。
【0165】
上記した定周期エロージョン演算処理によって、図9に示した表示画面100における過去エロージョン量に関する情報が更新される。また、過去エロージョン量が準備閾値に達している場合、過去エロージョン量が交換閾値に達している場合には、アラーム表示103における情報が更新される。
【0166】
(将来エロージョン演算処理)
次に、第1の実施の形態のエロージョン量管理装置18における将来エロージョン演算処理について説明する。
【0167】
図11は、第1の実施の形態のエロージョン量管理装置18における将来エロージョン演算処理方法を説明するためのフローチャートである。
【0168】
ここで、エロージョン量管理装置18の導入日時点において、図3に示す将来の運転条件は、初期設定されている。ユーザは、導入後、ユーザインターフェース50における図3に示す入力画面80から将来の運転条件を1年単位で入力する。
【0169】
例えば、図9に示した表示画面100における選択表示部104の選択ボタン105を押すことで、図示されていないが、選択表示部104に将来の運転条件の入力画面80の選択項目が表示される。選択表示部104において入力画面80の選択項目が選択されると、ユーザインターフェース50の表示部の画面は、図3に示す将来の運転条件の入力画面80に切り替わる。この際、表示情報生成部73は、ユーザインターフェース50からの入力画面80の選択に係る情報を入力し、ユーザインターフェース50に入力画面80を表示させるための表示情報を出力する。
【0170】
そして、ユーザは、将来の運転条件を入力後、図3のSaveボタン87を押す。ユーザインターフェース50は、Saveボタン87からの入力を受け、将来の運転条件に係る情報を入力情報記憶部61に出力する。入力情報記憶部61は、将来の運転条件に係る情報を記憶する。なお、入力画面80のBackボタン88は、Saveボタン87を押さずに表示画面100に戻る場合に押すボタンである。
【0171】
また、将来エロージョン演算部72は、Saveボタン87が押されたことに伴うユーザインターフェース50からの情報を受け、将来の運転条件の入力がされたと判定する。
【0172】
図11に示すように、将来エロージョン演算部72は、将来の運転条件の入力がされたか否かを判定する(ステップS40)。
【0173】
ステップS40の判定において、将来の運転条件の入力がされていないと判定した場合(ステップS40のNo)、将来エロージョン演算部72は、再度ステップS40の処理を実行する。
【0174】
ステップS40の判定において、将来の運転条件の入力がされたと判定した場合(ステップS40のYes)、将来エロージョン演算部72は、プログラム記憶部63から将来エロージョン量の演算を実行するためのプログラム、将来エロージョン量を算出するための演算式やパラメータ、入力情報記憶部61から管理対象の動翼の設計情報、入力情報記憶部61に記憶された将来の運転条件を読み出す(ステップS41)。
【0175】
続いて、将来エロージョン演算部72は、将来の運転条件を参照して詳細運転モード設定があるか否かを判定する(ステップS42)。
【0176】
ステップS42の判定において、詳細運転モード設定があると判定した場合(ステップS42のYes)、将来の運転条件における区分負荷ごとの運転時間および稼働率を読み出す(ステップS43)。
【0177】
続いて、将来エロージョン演算部72は、図6を参照して説明した演算方法で、将来エロージョン量を演算し、演算結果を演算結果記憶部64に出力する(ステップS44)。演算結果記憶部64は、演算結果を記憶する。
【0178】
表示情報生成部73は、演算結果記憶部64に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部65に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS45)。そして、表示情報生成部73は、生成した表示情報を表示情報記憶部66およびユーザインターフェース50に出力する。表示情報記憶部66は、表示情報を記憶する。
【0179】
ユーザインターフェース50は、表示情報生成部73から出力された表示情報を図9に示すように表示部に表示する(ステップS46)。
【0180】
ここで、表示情報生成部73は、将来エロージョン演算部72において将来エロージョン量の演算処理が実行されるごとに、演算結果に基づく表示情報を表示情報記憶部66およびユーザインターフェース50に出力する。そのため、表示部に表示される将来エロージョン量に関する演算結果を示すグラフ101は、将来エロージョン演算部72において将来エロージョン量の演算処理が実行されるごとに更新される。換言すると、将来エロージョン量に関する演算結果を示すグラフ101は、将来の運転条件の入力画面80におけるSaveボタン87が押されたことに伴う情報を受けるごとに更新される。
【0181】
また、将来エロージョン演算部72は、ステップS44の処理後、ステップS44の演算結果に基づいて、将来エロージョン量が交換閾値に達しているか否かを判定する(ステップS47)。
【0182】
ステップS47の判定において、将来エロージョン量が交換閾値に達していないと判定した場合(ステップS47のNo)、将来エロージョン演算部72は、交換推奨時期に関する情報を演算結果記憶部64に出力する。すなわち、将来エロージョン演算部72は、交換推奨時期が無いことに関する情報を演算結果記憶部64に出力する。ここで、演算結果記憶部64において所定の交換推奨時期が記憶されている場合には、演算結果記憶部64は、交換推奨時期に関する情報を新たに入力された交換推奨時期が無いことに関する情報に更新して記憶する。
【0183】
表示情報生成部73は、演算結果記憶部64に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部65に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS48)。表示情報生成部73は、図9に示した表示画面100からアラーム表示103が削除された表示情報を生成する。また、表示情報生成部73は、図9に示した表示画面100のグラフ101から準備閾値を示すライン(図9の二点鎖線)が削除された表示情報を生成する。
【0184】
そして、表示情報生成部73は、生成した表示情報を表示情報記憶部66およびユーザインターフェース50に出力する。表示情報記憶部66は、表示情報を記憶する。
【0185】
ユーザインターフェース50は、表示情報生成部73から出力された表示情報に基づいて、表示画面を更新する(ステップS49)。この更新によって、表示画面100からアラーム表示103が削除される。さらに、グラフ101から準備閾値を示すライン(図9の二点鎖線)が削除される。
【0186】
ステップS47の判定において、将来エロージョン量が交換閾値に達していると判定した場合(ステップS47のYes)、将来エロージョン演算部72は、図7および図8を参照して説明した方法によって交換推奨時期および準備推奨時期を算出し、算出結果を演算結果記憶部64に出力する(ステップS50)。演算結果記憶部64は、交換推奨時期および準備推奨時期を記憶する。
【0187】
続いて、将来エロージョン演算部72は、図7および図8を参照して説明した方法によって準備閾値を算出し、準備閾値を演算結果記憶部64に出力する(ステップS51)。演算結果記憶部64は、準備閾値を記憶する。
【0188】
表示情報生成部73は、演算結果記憶部64に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部65に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS52)。表示情報生成部73は、図9に示した表示画面100において、アラーム表示103の更新およびグラフ101への準備閾値のライン(図9の二点鎖線)の表示をするための表示情報を生成する。
【0189】
そして、表示情報生成部73は、生成した表示情報を表示情報記憶部66およびユーザインターフェース50に出力する。表示情報記憶部66は、表示情報を記憶する。
【0190】
ユーザインターフェース50は、表示情報生成部73から出力された表示情報に基づいて、表示画面を更新する(ステップS53)。この更新によって、表示画面100には、今回の計算結果に基づく、交換推奨時期および準備推奨時期を備えるアラーム表示103が表示される。さらに、グラフ101には、今回の計算結果に基づく、準備閾値を示すライン(図9の二点鎖線)が表示される。
【0191】
上記した将来エロージョン演算部72における将来エロージョン量の演算結果は、将来の運転条件として設定された1年周期ごとに得られる。すなわち、将来エロージョン演算部72における演算結果は、1年単位で得られる。
【0192】
将来エロージョン演算処理では、将来の運転条件の入力画面80におけるSaveボタン87が押されたことに伴う情報を受けるごとにステップS41-ステップS53の処理を繰り返す。そして、表示画面100の将来エロージョン量に関する情報は、将来の運転条件の入力画面80におけるSaveボタン87が押されたことに伴う情報を受けるごとに更新される。
【0193】
上記した将来エロージョン演算処理によって、図9に示した表示画面100における将来エロージョン量に関する情報が更新される。将来の運転条件によって、例えば、グラフ101に示される将来エロージョン量に関する情報が変化する。また、将来の運転条件によって、交換推奨時期、準備推奨時期および準備閾値も変化する。
【0194】
上記した第1の実施の形態のエロージョン量管理装置18によれば、ユーザインターフェース50の表示部に、実機の運転データに基づいて予測された過去から現在までの過去エロージョン量、および将来想定する運転条件に基づいて予測された将来エロージョン量を時系列でグラフ101に表示することができる。これによって、ユーザは、エロージョン量の時間に伴う変化を目視で確認することできる。
【0195】
また、エロージョン量管理装置18において、表示画面100のグラフ101に、交換閾値および準備閾値のラインを表示することができる。これによって、ユーザは、交換推奨時期および準備推奨時期を目視で確認することできる。
【0196】
さらに、エロージョン量管理装置18において、表示画面100にアラーム表示103として交換推奨時期および準備推奨時期を表示することができる。これによって、ユーザは、交換推奨時期および準備推奨時期を具体的に認識することができる。そしてユーザは、準備推奨時期を具体的に認識することで、交換する動翼の製作依頼を的確に行うことができる。
【0197】
エロージョン量管理装置18では、将来の運転条件の入力画面80において入力された運転条件に基づく将来エロージョン量の演算結果を表示することができる。そのため、ユーザは、将来の運転条件の入力画面80において運転条件を変更することで、運転条件による将来エロージョン量の違いを表示画面100のグラフ101において目視で確認することできる。また、ユーザは、将来の運転条件による交換推奨時期および準備推奨時期の違いを表示画面100のアラーム表示103において目視で確認することできる。
【0198】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、ユーザインターフェース50の表示部に表示される将来エロージョン量に関する情報の他の一例を説明する。
【0199】
図12および図13は、第2の実施の形態のエロージョン量管理装置18における将来エロージョン演算処理方法を説明するためのフローチャートである。なお、図面の構成上、フローチャートを一図で示すことができないため、図12のステップS40のNoに続くフローチャートを図13に示す。図14は、第2の実施の形態のエロージョン量管理装置18における表示画面100Aの一例を示す図である。なお、第2の実施の形態において、第1の実施の形態のエロージョン量管理装置18の構成をと同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。
【0200】
第2の実施の形態では、エロージョン量の演算結果を示す表示画面100Aにおいて、他の将来の運転条件における演算結果を同時に表示できる点が第1の実施の形態におけるエロージョン量管理装置18と異なる。ここでは、この異なる構成について主に説明する。なお、第2の実施の形態においける定周期エロージョン演算処理は、第1の実施の形態における定周期エロージョン演算処理と同様である。
【0201】
図12および図13に示す第2の実施の形態における将来エロージョン演算処理では、第1の実施の形態における将来エロージョン演算処理に、ステップS60からステップS65の処理が追加されている。
【0202】
ここで、ユーザは、将来の運転条件を入力後、図3のSaveボタン87を押す。第2の実施の形態における将来エロージョン演算処理において、第1の実施の形態における将来エロージョン演算処理と同様に、ユーザインターフェース50は、Saveボタン87からの入力を受け、将来の運転条件に係る情報を入力情報記憶部61に出力する。入力情報記憶部61は、将来の運転条件に係る情報を記憶する。
【0203】
また、将来エロージョン演算部72は、Saveボタン87が押されたことに伴うユーザインターフェース50からの情報を受け、将来の運転条件の入力がされたと判定する。
【0204】
図12に示すように、将来エロージョン演算部72は、将来の運転条件の入力がされたか否かを判定する(ステップS40)。
【0205】
ステップS40の判定において、将来の運転条件の入力がされたと判定した場合(ステップS40のYes)、前述したように、ステップS41からステップS46の処理が実行される。そして、前述したように、ステップS46の処理の後、ステップS40の処理が実行される。
【0206】
一方、ステップS40の判定において、将来の運転条件の入力がされていないと判定した場合(ステップS40のNo)、図13に示すように、表示情報生成部73は、他の将来の運転条件で演算した結果(比較演算結果)の表示要求があるか否かを判定する(ステップS60)。比較演算結果は、他の将来の運転条件に基づいてすでに予測された演算結果であり、演算結果記憶部64に記憶されている。なお、他の将来の運転条件は、第2の将来の運転条件として機能し、比較演算結果は、第2の将来エロージョン量関連情報として機能する。
【0207】
ここで、図15は、第2の実施の形態のエロージョン量管理装置18におけるユーザインターフェース50に表示させる比較演算結果を選択する選択画面110の一例を示す図である。
【0208】
例えば、図9に示した表示画面100における選択表示部104の選択ボタン105を押すことで、図示されていないが、選択表示部104に選択画面110の選択項目が表示される。そして、選択表示部104において選択画面110の選択項目が選択されると、ユーザインターフェース50の表示部の画面は、図15に示す選択画面110に切り替わる。この際、表示情報生成部73は、ユーザインターフェース50からの選択画面110の選択に係る情報を入力し、ユーザインターフェース50に選択画面110を表示させるための表示情報を出力する。
【0209】
図15の選択画面110には、演算結果記憶部64に記憶されているすでに演算された演算結果のリストがリスト表示部111に表示される。また、ここでは、演算結果記憶部64に記憶された日時も表示するリスト表示部111の一例が示されている。リスト表示部111には、例えば、演算結果記憶部64に記憶された日時の新しい順に5つの演算結果のファイル名が表示される。なお、リスト表示部111に表示される構成は、これに限られない。リスト表示部111には、すでに演算された演算結果のリストが表示されればよい。
【0210】
ここで、図15には、過去1時間以内に将来の運転条件に基づいて演算された比較演算結果の一例が示されている。これらの比較演算結果を表示画面100Aのグラフ101に表示させる場合、最新の将来のエロージョン量が更新されない状態で比較演算結果を比較することができる。すなわち、これらの比較演算結果のいずれをグラフ101に表示させても、比較演算結果における将来のエロージョン量比を示すラインの起点は、図15に示すように、最新の将来のエロージョン量比を示すラインの起点と一致する。
【0211】
なお、比較演算結果は、1時間よりも前に演算された結果であってもよい。例えば、数日前に演算された比較演算結果を選択する場合、比較演算結果における将来のエロージョン量比を示すラインの起点は、最新の将来のエロージョン量比を示すラインの起点からずれることになる。このようにそれぞれの起点がずれた場合においても、将来におけるエロージョン量比の変化傾向は比較することができる。
【0212】
ユーザは、リスト表示部111に表示されたリストの中から比較演算結果として図9に示した表示画面100に表示させたい演算結果のファイル名を選択する。そして、ユーザは、Loadボタン112を押す。ユーザがLoadボタン112を押すと、画面が図14に示す演算結果を示す表示画面100Aに切り替わる。
【0213】
なお、Backボタン114は、Loadボタン112またはResetボタン113を押さずに表示画面100に戻る場合に押すボタンである。
【0214】
表示情報生成部73は、ユーザインターフェース50からのLoadボタン112が押されたことに基づく信号を受け、ステップS60において比較演算結果の表示要求があると判定する。
【0215】
ステップS60の判定において、比較演算結果の表示要求があると判定した場合(ステップS60のYes)、表示情報生成部73は、演算結果記憶部64に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部65に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS61)。ここでは、表示情報生成部73は、演算結果記憶部64に記憶された将来の運転条件に基づく演算結果および選択された比較演算結果の双方を読み出す。そして、表示情報生成部73は、生成した表示情報を表示情報記憶部66およびユーザインターフェース50に出力する。表示情報記憶部66は、表示情報を記憶する。
【0216】
ユーザインターフェース50は、表示情報生成部73から出力された表示情報を図14に示すように表示部に表示する(ステップS62)。図14に示すように表示画面100Aには、将来エロージョン量として、将来の運転条件に基づく演算結果および比較演算結果の双方が表示される。
【0217】
具体的には、将来エロージョン量として、それぞれの演算結果におけるエロージョン量比が時系列で示されるとともに、それぞれの演算結果における準備閾値のラインが示される。なお、比較演算結果におけるエロージョン量比は、破線で示され、比較演算結果における準備閾値のラインは、二点鎖線(間隔が狭い方の二点鎖線)で示されている。また、アラーム表示103としてそれぞれの演算結果における交換推奨時期および準備推奨時期が表示される。なお、図14に示すように、過去エロージョン量におけるエロージョン量比も時系列で示されている。
【0218】
なお、比較演算結果における準備閾値は、第2の準備閾値として機能し、比較演算結果における交換推奨時期は、第2の交換推奨時期として機能し、比較演算結果における準備推奨時期は、第2の準備推奨時期として機能する。
【0219】
ステップS60の判定において、比較演算結果の表示要求がないと判定した場合(ステップS60のNo)、表示情報生成部73は、比較演算結果の表示削除要求があるか否かを判定する(ステップS63)。
【0220】
ここで、ユーザは、図15の選択画面110において、Resetボタン113を押すことで、図14の表示画面100Aに示されている比較演算結果を削除することができる。表示情報生成部73は、ユーザインターフェース50からのResetボタン113が押されたことに基づく信号を受け、ステップS63において比較演算結果の表示削除要求があると判定する。なお、ユーザがResetボタン113を押すと、画面が演算結果を示す表示画面に切り替わる。
【0221】
ステップS63の判定において、比較演算結果の表示削除要求があると判定した場合(ステップS63のYes)、表示情報生成部73は、演算結果記憶部64に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部65に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS64)。ここでは、表示情報生成部73は、演算結果記憶部64に記憶された将来の運転条件に基づく演算結果を読み出す。そして、表示情報生成部73は、生成した表示情報を表示情報記憶部66およびユーザインターフェース50に出力する。表示情報記憶部66は、表示情報を記憶する。
【0222】
ユーザインターフェース50は、表示情報生成部73から出力された表示情報を図9に示すように表示部に表示する(ステップS65)。すなわち、図9に示すように表示画面100には、比較演算結果が削除され、将来の運転条件に基づく演算結果のみが表示される。
【0223】
ステップS63の判定において、比較演算結果の表示削除要求がないと判定した場合(ステップS63のNo)、ステップS40の処理に戻る。
【0224】
また、図12に示すように、将来エロージョン演算部72は、ステップS44の処理後、前述したように、ステップS44の演算結果に基づいてエロージョン量が交換閾値に達しているか否かを判定する(ステップS47)。そして、前述したように、ステップS47からステップS53の処理が実行される。
【0225】
表示画面100Aの将来エロージョン量に関する情報は、将来の運転条件の入力画面80におけるSaveボタン87、および比較演算結果の選択画面110におけるLoadボタン112またはResetボタン113が押されたことに伴う情報を受けるごとに更新される。
【0226】
なお、ここでは、比較演算結果として一つの演算結果を選択する一例を示したが、複数の比較演算結果を選択できるように設定されてもよい。
【0227】
上記した第2の実施の形態のエロージョン量管理装置18によれば、第1の実施の形態のエロージョン量管理装置18における作用効果と同様の作用効果が得られる。
【0228】
さらに、第2の実施の形態のエロージョン量管理装置18によれば、表示画面100Aに、将来エロージョン量として、将来の運転条件に基づいて予測された演算結果および比較演算結果の双方を表示することができる。
【0229】
これによって、ユーザは、将来の運転条件に基づく演算結果におけるエロージョン量と比較演算結果におけるエロージョン量との違いを表示画面100Aのグラフ101において目視で確認することできる。また、ユーザは、将来の運転条件に基づく演算結果における交換推奨時期および準備推奨時期と比較演算結果における交換推奨時期および準備推奨時期との違いを表示画面100Aのアラーム表示103において目視で確認することできる。
【0230】
以上説明した実施形態によれば、運転データに基づいて予測された過去から現在までのエロージョン量および将来の運転条件に基づいて予測された将来のエロージョン量を時系列で認識することが可能となる。
【0231】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0232】
1…蒸気タービン設備、10…ボイラ、11…高圧タービン、12…再熱器、13…中圧タービン、14…低圧タービン、15…発電機、16…復水器、17…給水ポンプ、18…エロージョン量管理装置、20…主蒸気管、21…低温再熱蒸気管、22…高温再熱蒸気管、23…クロスオーバー管、24…排気管、25…給水管、30…蒸気温度検知器、31…出力検知器、40…計測データ取得部、50…ユーザインターフェース、60…記憶部、61…入力情報記憶部、62…計測データ記憶部、63…プログラム記憶部、64…演算結果記憶部、65…テンプレート記憶部、66…表示情報記憶部、70…演算部、71…定周期エロージョン演算部、72…将来エロージョン演算部、73…表示情報生成部、80、90…入力画面、81…選択パターン、82…過去運用実績モード、83…ベースロード運用モード、84…ピークロード運用モード、85…詳細運転設定モード、86…オペレーションデータ、87…Saveボタン、91、92、93、94…数値欄、95…Uploadボタン、96…Deleteボタン、97、114…Backボタン、100、100A…表示画面、101…グラフ、102…時間軸設定部、103…アラーム表示、104…選択表示部、105…選択ボタン、110…選択画面、111…リスト表示部、112…Loadボタン、113…Resetボタン。
【要約】
【課題】運転データに基づいて予測された過去から現在までのエロージョン量および将来の運転条件に基づいて予測された将来のエロージョン量を時系列で認識することができる蒸気タービンの動翼のエロージョン量管理装置を提供する。
【解決手段】実施形態のエロージョン量管理装置18は、計測された情報に基づいて算出された過去から現在までの蒸気タービンの動翼の過去エロージョン量に関する情報を示す過去エロージョン量関連情報と、ユーザインタフェース画面を用いた操作において入力された将来の運転条件および過去エロージョン量関連情報に基づいて算出された将来における動翼の将来エロージョン量に関する情報を示す将来エロージョン量関連情報とを表示部に表示させる表示情報を生成する表示情報生成部73を備える。
【選択図】図2
図1
図2
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図15