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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】口腔用製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/14 20170101AFI20240820BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240820BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240820BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240820BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 8/21 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 8/20 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 8/85 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20240820BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 33/16 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20240820BHJP
   A61K 33/42 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 31/505 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 31/4741 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 31/4425 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 31/541 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 31/51 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 31/4188 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 31/385 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 31/194 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 31/085 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 31/14 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 31/795 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 36/899 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 36/57 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 36/32 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 36/28 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 36/23 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
A61K47/14
A61K47/38
A61K47/10
A61K47/32
A61K47/44
A61K9/08
A61P1/02
A61K47/34
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/02
A61K8/21
A61K8/24
A61K8/20
A61K8/25
A61K8/73
A61K8/81
A61K8/85
A61K8/86
A61K8/37
A61K8/60
A61Q11/00
A61K9/70
A61K33/16
A61K33/24
A61K33/42
A61K31/505
A61K31/4741
A61K31/4425
A61K31/407
A61K31/541
A61K31/51
A61K31/4188
A61K31/519
A61K31/385
A61P3/02 102
A61P3/02 104
A61P3/02 107
A61P3/02 109
A61P31/04
A61P29/00
A61K31/194
A61K31/192
A61K31/085
A61K31/155
A61K31/14
A61K31/795
A61K36/899
A61K36/57
A61K36/32
A61K36/185
A61K36/28
A61K36/23
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023053873
(22)【出願日】2023-03-29
(62)【分割の表示】P 2021077632の分割
【原出願日】2017-01-12
(65)【公開番号】P2023073411
(43)【公開日】2023-05-25
【審査請求日】2023-04-10
(31)【優先権主張番号】10-2016-0004353
(32)【優先日】2016-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0012964
(32)【優先日】2016-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0029820
(32)【優先日】2016-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー・エイチアンドエイチ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】チ-ヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】チェ-ヒョン・アン
(72)【発明者】
【氏名】イン-ホ・イ
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-171301(JP,A)
【文献】特表2001-517624(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0111667(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯牙または歯牙周辺部付着用の製剤であって、
前記製剤は、薬効成分、相転移化合物、及び水不溶性でありながらエタノールに溶解される高分子を含み、前記製剤は溶剤としてエタノールを含み、
前記相転移化合物が、モノオレイン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル、モノアラキドン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリルまたはこれらの混合物より選択され、前記水不溶性でありながらエタノールに溶解される高分子が、エチルセルロース、メチルビニルエーテル/マレイン酸無水物共重合体のブチルエステル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアセテートフタレート、セラック、ロジン、メタクリル酸共重合体またはこれらの混合物であり、
前記製剤は液状であって、歯牙または歯牙周辺部に塗布され、口腔内の唾液によって相転移されて歯牙または歯牙周辺部への付着性を有する、歯牙または歯牙周辺部付着用の製剤。
【請求項2】
前記相転移化合物が、前記製剤の総重量に対して5~80重量%含まれることを特徴とする請求項1に記載の歯牙または歯牙周辺部付着用の製剤。
【請求項3】
水分と接触する前は常温で10,000cPs以下の粘性を有し、
歯牙または口腔内に塗布された後、歯牙または口腔内の組織への付着性を有するゲルまたは固体へ相転移する、請求項1に記載の歯牙または歯牙周辺部付着用の製剤。
【請求項4】
前記薬効成分が、フッ化ナトリウム、フッ化スズ、フッ化インジウム、フッ化アミン、モノフルオロリン酸ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムカリウム、ピロリン酸カリウム、酸性メタリン酸ナトリウム、酸性ポリリン酸ナトリウム、トリクロサン、クロルヘキシジン、アレキシジン、ヘキセチジン、サンギナリン、塩化ベンザルコニウム、サリチルアニリド、臭化ドミフェン、塩化セチルピリジニウム、塩化テトラデシルピリジニウム、アスピリン、ケトロラク、フルルビプロフェン、ピロキシカム、メクロフェナム酸、チアミン、リボフラビン、ニコチン酸、パントテン酸、ピリドキシン、ビオチン、葉酸、ビタミンB12、リポ酸、アスコルビン酸、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、トウモロコシ不けん化定量抽出物、厚朴抽出物、没薬、ラタニア、カモマイル、ポリクレスレン、センテラ定量抽出物、ニクズク抽出物、デクスパンテノール、β-シトステロール、アセチルサリチル酸、塩化亜鉛、リン酸カリウム、二リン酸カリウム、塩化カルシウム、シュウ酸、シュウ酸カリウム、シュウ酸鉄、またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の歯牙または歯牙周辺部付着用の製剤。
【請求項5】
前記水不溶性でありながらエタノールに溶解される高分子は、35~38℃の温度、pH7の条件において水に溶解されず、エタノールには溶解される高分子であることを特徴とする、請求項1に記載の歯牙または歯牙周辺部付着用の製剤。
【請求項6】
前記製剤を塗布した後、温度37℃及び湿度95%の条件で放置する場合、または唾液が1ml/分の速度で流れる条件で放置する場合、前記製剤が溶解されず、塗布された状態が少なくとも30分間維持されることを特徴とする、請求項1に記載の歯牙または歯牙周辺部付着用の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯牙または歯牙周辺部に付着して薬効成分を口腔内へ伝達できるマウスバンドに関し、より詳しくは、密着力が優秀であり、十分な付着時間を確保して口腔内へ薬効成分を効果的に伝達できるマウスバンドに関する。
【0002】
本出願は、2016年1月13日出願の韓国特許出願第10-2016-0004353号、2016年2月2日出願の韓国特許出願第10-2016-0012964号及び2016年3月11日出願の韓国特許出願第10-2016-0029820号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
口腔薬効成分を口腔内へ伝達するためには、薬効成分との接触時間及び伝達量が重要な役割を果たす。
【0004】
歯磨き粉のようなペースト剤形は、粘度が十分でなく溶解度が高いことにより、ターゲット部位に十分な接触時間を提供しにくいという短所があり、口腔内への薬物伝達を目的とするマウストレイは、異物感がひどく、形態の特性上、局所的薬物伝達が難しいという短所がある。パッチ形態またはストリップ形態は、薄いことから薬効成分が十分伝達され難く、柔軟性に劣り、歯牙の隙間、歯ぐきと歯牙との境界部位などへの密着が困難であるという短所がある。
【0005】
歯牙の隙間、歯ぐきと歯牙との境界部位などへの密着の問題を解決するために、韓国登録特許第10-0623859号は、用時ゲル化を用いた歯牙美白成分伝達システムを開示しているが、使用時、表面に塗布するに際して流動性が強くて別の支持層を備えて使用しなければならぬ短所があった。また、WO2003/037276は、初期粘度が低くてスプレー形態で口腔内に塗布する製剤を開示しているが、通常の保管温度(特に、夏)と口腔内の温度との差が少なくて、非常に薄く塗られなければ、速く相転移が起こらないため、除去が困難であるという問題があった。
【0006】
US5,989,569は、ストリップの表面に薬物を塗布し、圧力によって薬物を伝達する内容を開示しているが、ストリップの表面に薬物を塗布したままに歯牙に付着するため、薬効成分が一時的に放出される効果があり、歯牙周辺の歯ぐきなどに強い刺激を誘発し得るという問題があった。また、ストリップと塗布する薬物の物性、特に、柔軟性が異なり、歯牙の隙間への密着が難しいという短所があった。
【0007】
本発明の発明者は、使用が便利であり、かつ口腔内へ薬物を効果的に伝達できる新たな形態の製剤についての鋭意研究結果、本発明を完成するに至った。特に、歯牙の隙間や屈曲にまで密着力を向上させ、かつ口腔内という特殊条件における使用が容易な剤形を考慮するために努力した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国登録特許第10-0623859号
【文献】WO2003/037276
【文献】US5,989,569
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、口腔内の希望部位への付着が容易であり、十分な接触時間が確保可能な新しい形態の口腔付着用の製剤を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、使用前に形態を変形することができ、歯牙の隙間や歯牙と歯ぐきとの間に優秀に密着可能な形態の製剤を提供することを他の目的とする。
【0011】
本発明の製剤は、初期付着時、流れ落ちず、歯牙の表面、歯牙と歯ぐきとの境界のみならず、歯牙と歯牙との隙間にまで優秀に密着でき、薬物が充分放出した後、取り外す時点には刺激なく歯牙から除去できる新しい形態の製剤を提供する。
【0012】
本発明は、柔軟性を有しながらも流れ落ちず、便利に使用可能であり、ターゲット部位との接触時間を十分確保することができる新しい形態の口腔用製剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、歯牙または歯牙周辺部付着用の製剤を提供する。
【0014】
本発明の一実施例において、前記歯牙または歯牙周辺部付着用の製剤は、マウスバンドの形態として提供され得る。
【0015】
本発明の一実施例による歯牙または歯牙周辺部付着用の製剤は、合成シリカを含むスライムハイドロゲル(slime hydrogel)であって、口腔内に付着され得る。
【0016】
本発明において用いられた「マウスバンド」は、口腔内において、歯牙、歯ぐきまたは頬の内側(buccal)などに付着可能な剤形を意味し得る。一例で、帯のような形態で付着され得る。前記マウスバンドは、例えば、長方形、円形などの形態を有し得、目的とするターゲット部位との付着時間などを考慮して多様な形態として製作され得る。必要に応じて特定の形状なく粘土のような練り粉の形態としても提供され得る。
【0017】
本発明の発明者は、歯牙の隙間にまで薬物が伝達できるよう、小さい圧力によっても形態変形が容易であり、付着部位から流れ落ちないほどの接着力と形態維持力を有する口腔用製剤の剤形についての研究結果、本発明を完成した。
【0018】
本明細書において用いられた「スライムハイドロゲル(slime hydrogel)」とは、伸び率が優秀でよく伸びるハイドロゲルを意味するものとして用いられた。ハイドロゲルは、三次元高分子網目(polymeric network)を形成して膨潤性を有している。流体を吸収する能力を有しており、薬物を一定の濃度で放出できるという特徴があるが、前記ハイドロゲルは硬くて(stiff)歯牙の屈曲や隙間に密着しにくく、前記ハイドロゲルを伸ばす場合、よく切れ得る。
【0019】
スライムハイドロゲルは、ゼリーのように軟性が優秀でよく伸び、三次元高分子網目の構造をなしていることから、薬物の放出調節が卓越で、自由に形態変形が可能な新しい剤形である。
【0020】
本発明の一実施例において、スライムハイドロゲルは、PVAの-OH基と塩(例えば、ホウ酸塩)との水素結合によって、三次元ネットワークが形成された状態よりも弾力性があり、形態変形の可能性を有する状態を意味し得る。スライムハイドロゲルは、スライムよりは流動性が大きくなくて形態固定力があるが、ハイドロゲルよりは柔軟性が強く、よく伸びる性質を有する剤形であって、スライムとハイドロゲルとの中間程度の形態変形の可能性を有する。
【0021】
本発明の一実施例において、前記スライムハイドロゲル剤形は、合成シリカまたはアルジネート化合物によって達成できる。
【0022】
シリカは、無機増粘剤であって、非常に小さくて一定の大きさを有し、水不溶性であり、水溶液への分散力に優れている。水素結合の特性を有するため、揺変性(thixotropy)を向上させることができることから、スライムハイドロゲル剤形を達成するのに卓越であることを確認したが、本発明は、このような理論に制限されて解釈されない。
【0023】
前記合成シリカは、シリカ粉末、ヒュームドシリカ、沈殿シリカ、コロイドシリカ、エアロゲル、シリカゾルより選択されたいずれか一つ以上であり得、望ましくは、ヒュームドシリカを用い得る。前記ヒュームドシリカは、例えば、EVONIK社のAEROSIL(登録商標)類を用いることができる。例えば、AEROSIL(登録商標)200、AEROSIL(登録商標)300などを用いることができる。前記合成シリカは、歯牙または歯牙周辺部付着用の製剤の乾燥重量に対して0.1重量%~20重量%含まれ得、望ましくは、0.5重量%~10重量%含まれ得る。
【0024】
前記含量範囲内であるとき、剤形のレオロジー面で望ましい。
【0025】
本発明の一実施例において、前記スライムハイドロゲルは、ポリビニルアルコール(PVA)及び前記ポリビニルアルコールの-OH基と反応して水素結合を形成し得る。前記ポリビニルアルコールは、生体安定性が立証された高分子であって、薄膜の形成が可能なフィルム形成高分子である。前記ポリビニルアルコールが含む-OH基は、塩と水素結合によるブリッジ構造から、ゲルの形成時における伸縮性が優秀で、本発明の合成シリカとの使用によって本発明が目的とする剤形の特性を達成することができる。
【0026】
前記ポリビニルアルコールの-OH基と水素結合を形成する塩は、ホウ酸塩(borate)、リン酸塩(phosphate)またはこの混合物を用い得、前記ホウ酸塩には、ホウ酸カリウム、ホウ酸ナトリウムなどが挙げられ、前記リン酸塩には、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸カリウムなどが挙げられる。
【0027】
望ましくは、前記PVA、合成シリカとの相溶性などを考慮すれば、前記塩は、ホウ酸ナトリウムであり得る。
【0028】
本発明のまた他の実施例による製剤は、アルジネート化合物を含むスライムハイドロゲルとして口腔内に付着され得る。
【0029】
前記アルジネート化合物の水素結合特性がスライムハイドロゲルの形成に影響を及ぼし、スライムハイドロゲルに揺変性を付与する剤形を達成するのに卓越した効果を奏することを確認したが、本発明は、このような理論に制限されて解釈されない。望ましくは、前記アルジネート化合物は、製剤の乾燥重量に対して0.1重量%~20重量%含まれ得、望ましくは5重量%以下、より望ましくは2重量%以下、最も望ましくは0.5重量%以下であるとき、スライムハイドロゲルが均一に形成されるため、望ましい。
【0030】
前記アルジネート化合物は、カルシウムアルジネート、ポタシウムアルジネート、ナトリウムアルジネート、トリエタノールアミンアルジネート、またはこれらの混合物を含み得る。
【0031】
本発明の製剤は、口腔内へ伝達できる薬効成分を含むことができる。前記薬効成分としては、口腔内へ伝達できる薬効成分であれば、全て含まれ得、望ましくは、口腔内疾患の治療または予防、改善などを目的とする薬効成分を含み得る。
【0032】
前記薬効成分としては、例えば、歯牙美白成分、フッ素イオン供給源を含む虫歯予防成分、歯石生成抑制成分、抗炎症成分、抗菌成分、その他のビタミン、ミネラル成分などを含み得る。また、しみる歯の改善及び症状緩和成分などを含み得る。より具体的には、フッ化ナトリウム(sodium fluoride)、フッ化スズ(stannous fluoride)、フッ化インジウム(indium fluoride)、フッ化アミン(amine fluoride)、モノフルオロリン酸ナトリウム(sodium monofluorophosphate)からなる群より選択されたいずれか一種以上のフッ素イオン供給源;ヒドロキシアパタイト(hydroxyapatite)を含む再石灰化剤(remineralization agent);歯牙美白成分として過酸化水素(hydrogen peroxide)、過酸化カルバミド(carbamide peroxide)、過酸化カルシウム(calcium peroxide)、 過ホウ酸塩(perborate)、過炭酸塩(percarbonate)、ペルオキシ酸(peroxyacids)、過硫酸塩(persulfates)、亜塩素酸カルシウム(calcium chlorite)、亜塩素酸バリウム(barium chlorite)、亜塩素酸マグネシウム(magnesium chlorite)、亜塩素酸リチウム(lithium chlorite)、亜塩素酸ナトリウム(sodium chlorite)またはこれらの混合物を含み得、美白効果の向上のために縮合リン酸塩を過酸化物とともに使用可能であり、使用可能な縮合リン酸塩としては、ピロリン酸四ナトリウム(tetrasodium pyrophosphate,TSPP)、酸性ピロリン酸ナトリウム(sodium acid pyrophosphate,SAPP)、トリポリリン酸ナトリウム(sodium tripolyphosphate,STP)、ピロリン酸ナトリウムカリウム(sodium potassium pyrophosphate)、ピロリン酸カリウム(tetrapotassium pyrophosphate)、酸性メタリン酸ナトリウム(acidic sodium metaphosphate)、酸性ポリリン酸ナトリウム(acidic sodium polyphosphate)のうち一種または二種以上を前記過酸化物とともに用い得る。このような縮合リン酸塩は、歯石除去や歯石形成の抑制にも用いることができる。また、これらは、キレート化剤として、歯牙のステイン(stain)の形成に影響を及ぼす金属を除去することで、美白効果の向上にも寄与できる。トリクロサン(triclosan)、クロルヘキシジン(chlorhexidine)、アレキシジン(alexidine)、ヘキセチジン(hexetidine)、サンギナリン(sanguinarine)、塩化ベンザルコニウム(benzalkonium chloride)、サリチルアニリド(salicylanilide)、臭化ドミフェン(domiphen bromide)、塩化セチルピリジニウム(cetylpyridinium chloride,CPC)、塩化テトラデシルピリジニウム(tetradecylpyridinium chloride,TPC)、またはこれらの混合物を含む抗微生物剤;アスピリン(aspirin)、ケトロラク(ketorolac)、フルルビプロフェン(flurbiprofen)、ピロキシカム(piroxicam)、メクロフェナム酸(meclofenamic acid)、またはこれらの混合物を含む抗炎症剤;または、チアミン(thiamine)、リボフラビン(riboflavin)、ニコチン酸(nicotinic acid)、パントテン酸(pantothenic acid)、ピリドキシン(pyridoxine)、ビオチン(biotin)、葉酸(folic acid)、ビタミンB12(vitamin B12)、リポ酸(lipoic acid)、アスコルビン酸(ascorbic acid)、ビタミンA(vitamin A)、ビタミンD(vitamin D)、ビタミンE(vitamin E)、ビタミンK(vitamin K)またはこれらの混合物;もしくはこれらの混合物を含み得るが、これらに限定されない。また、歯周疾患の予防及び改善に効果的な薬物としては、トウモロコシ不けん化定量抽出物、厚朴抽出物、没薬、ラタニア、カモマイル、ポリクレスレン、センテラ定量抽出物、ニクズク抽出物、デクスパンテノール(dexpanthenol)、β-シトステロール(β-sitosterol)、アセチルサリチル酸(acetyl salicylic acid)などを単独でまたは一定比の混合物として含み得る。しみる歯の症状改善及び緩和成分としては、塩化亜鉛、リン酸カリウム、二リン酸カリウム、塩化カルシウム、シュウ酸、シュウ酸カリウム、シュウ酸鉄(ferric oxalat)などを単独でまたは二種以上を含み得る。
【0033】
前記薬効成分が製剤のスライムハイドロゲル内に均一または不均一に分散して存在し得る。
【0034】
本発明の一実施例による製剤は、スライムハイドロゲルの内部に分散した薬効成分の放出を助ける物質をさらに含み得、例えば、前記薬物放出を助ける物質として、剤形内にチャンネル構造や多孔性構造、または泡(foam)を形成するものであれば、用いることができる。例えば、i)酢酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸、アスコルビン酸などの酸、またはこれらの水溶性塩、例えば、 クエン酸ナトリウムと、ii)水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸水素ナトリウム(baking soda)、炭酸ナトリウムのような塩基(base)が入っている群より選択されたいずれか一種を含み得、望ましくは、酸は酢酸、塩基は炭酸水素ナトリウムであり得、より望ましくは、歯磨き粉に主に使われる酸と塩基であるクエン酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムであり得る。
【0035】
本発明の一実施例による製剤は、スライムハイドロゲル自体として存在し得、製剤に支持体(例えば、水不溶性フィルム膜)などをさらに付着した形態としても存在し得る。歯牙または歯牙周辺部への付着時、必要に応じて支持層(backing film)をさらに含み得る。
【0036】
前記支持層は、本発明の一実施例による製剤を付着するとき、希望しない部位への接触を防止する役割を果たすこともできる。前記支持層は、口腔用フィルムに通常使用される水不溶性高分子を含み得、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレンビニルアセテート(EVA)、セルロースアセテートフタレート、セラック(Shellac)、ポリビニルアセテート、エチルセルロース、ポリメチルメタクリレート、メタクリロイルエチルベタイン/メタクリレート共重合体(methacryloylethyl betain/methacrylate copolymer;Yukaformer,Mitsubishi社製)、メタクリル酸共重合体(methacrylic acid copolymer;Eudragit L 100,Eudragit L 12,5, Eudragit L 100-55, Eudragit L 30D-55)及びアミノアルキルメタクリレート共重合体(aminoalkyl methacrylate copolymer;Eudragit E 100,Eudragit E 12,5,Eudragit RL 100,Eudragit RL 30D)などを用い得る。
【0037】
本明細書で用いられた「歯牙周辺部」とは、通常、歯ぐきとして呼ばれる部位を含む概念であり、歯牙周辺の粘膜部位を全て含む意味として用いられ得る。また、「歯牙周辺部」とは、製剤の構造上、歯牙に製剤が塗布されるとき、歯牙のみならず、口腔内への伝達のための薬効成分が共に伝達される部位を包括する意味として用いられ得る。本明細書においては、歯牙または歯牙周辺部を「歯牙」と混用して記載することがあり、「歯牙」のみを記載していても、歯牙または歯牙周辺部を共に含む意味として本明細書において理解され得る。
【0038】
本発明の一実施例においては、製剤の薬物が放出されて歯牙から除去される時点に容易に取り外すことができ、表面に残余物をほとんど残さず除去することができる。本発明の一実施例による合成シリカを含む場合、ポリビニルアルコールとホウ酸ナトリウムとを混合して歯牙への密着力を向上させることができる。また、薬物が放出した後に除去するとき、歯牙の表面にべたつきを残すことなく簡便に除去することができる。
【0039】
本発明の他の実施例において、本発明は、相転移化合物と、前記相転移化合物と混合して相転移化合物の硬化速度を調節できる高分子と、を含む、歯牙または歯牙周辺部付着用の口腔製剤を提供する。前記製剤は、口腔内へ伝達できる薬効成分を含み得る。前記製剤を歯牙または歯牙周辺部に付着した後、前記製剤内に含まれた薬効成分は、口腔内の目的部位へ放出されて伝達される。
【0040】
通常、相転移剤形の場合、第1剤と第2剤とが混合されて相転移が起これば、固定された一つの固まりで存在するようになり、本発明の発明者は、本発明に用いられた相転移速度を調節する成分を共に用いる場合、相転移化合物の硬化速度を調節して薬物放出に効果的な新しい形態の製剤を提供することができるということを見出し、本発明を完成するに至った。
【0041】
本発明の発明者は、使用が便利で口腔内へ薬物を効果的に伝達できる新しい形態の製剤を開発するための長期間の研究結果、本発明を提案した。
【0042】
既存の相転移剤形の場合、通常、相転移完了後に一つの固まりになり、取り外し(peel-off)方式で除去する。本発明の一実施例による相転移速度調節物質を共に用いれば、除去時、一体の固まりではなく小さい固まりが弱い結合によって一つに固まっている構造を有するようになることによって、歯ブラシによる歯磨き(brush-off)によって除去することができる。即ち、歯磨きによって本発明の製剤を歯牙の表面から除去し、使用後、口腔内に綺麗さを与えることが特徴である。
【0043】
本明細書で用いられた「歯牙周辺部」とは、通常、歯ぐきとして呼ばれる部位を含む概念であり、歯牙周辺の粘膜部位を全て含む意味として用いられ得る。また、「歯牙周辺部」とは、製剤の構造上、歯牙に製剤が塗布されるとき、歯牙のみならず、口腔内への伝達のための薬効成分が共に伝達される部位を包括する意味として用いられ得る。本明細書においては、歯牙または歯牙周辺部を「歯牙」と混用して記載することがあり、「歯牙」のみを記載していても、歯牙または歯牙周辺部を共に含む意味として本明細書において理解され得る。
【0044】
本明細書で用いられた「製剤」とは、薬効成分の効果には影響を及ぼすことなく治療効果を十分発揮するように加工して作られた製品を意味する。
【0045】
本明細書で用いられた「歯牙に塗布される」という意味は、本発明の製剤を歯牙または歯牙周辺部に位置させた後、使用者が圧力を加えて歯牙に製剤を密着させる前までを含み得る。
【0046】
本発明の「製剤が歯牙に密着時」という意味は、歯牙に塗布してから一定時間の経過後に使用者が圧力を加えて、製剤を、歯牙屈曲、歯牙の隙間、歯牙と歯ぐきとの間に密着させる時点を意味し得る。
【0047】
本発明の「製剤を除去する時点」とは、歯牙または歯牙周辺組織に密着させた後、薬物が放出されてから口腔内から脱落させる時点を意味し得、製剤の目的及び用途、薬物の放出量に応じて2時間付着後に除去し得るが、使用の便利性の観点から、歯牙に密着させた後30分以内、より望ましくは10分以内に除去し得る。除去時点における製剤の硬度は、製剤が歯牙に塗布される時点および密着する時点に比べて増加し得る。
【0048】
本明細書で用いられた「相転移速度を調節する」とは、製剤の硬化速度、硬化程度を調節することと同一の意味で用いられ得、時間によって相転移による製剤の固まり程度を調節することができることを意味する。
【0049】
本発明の発明者は、口腔内に薬効成分を伝達できる薬物伝達システムについての研究を重ねた結果、新たな形態の薬物伝達システム、このようなシステムを用いて口腔内に薬効成分を伝達することができる新しい方法を提案するに至った。
【0050】
本発明の発明者は、薬効成分を効果的に口腔内の特定部位(例えば、歯牙美白が必要な部位、口腔内の炎症発生部位、歯周疾患発生部位など)に伝達できる新たな薬物伝達システムについて長期間研究した。その結果、歯牙または口腔内の粘膜部位に便利に塗布して、屈曲部位、歯牙の隙間にまでも優秀に密着して希望部位への薬物到達率を増加させることができる新しい形態の口腔用製剤を開発した。
【0051】
歯牙の隙間への薬物伝達に有利な剤形は、通常、液状であるか、流動性が高い形態として認識してきた。しかし、初期粘度が非常に低くてよく流れ落ち、使用が不便であるだけでなく、ターゲット部位への密着時間が少なくて十分な接触時間を確保できないという問題があった。
【0052】
このような問題を解決するために、練り粉のような形態として、歯牙と口腔内のターゲット部位に付着して初期密着力を向上させるながらも、流れ落ちにくい剤形を開発するに至った。ひいては、本発明の発明者は、特に、口腔内の歯ぐき及び歯牙への接着性が強く、かつ相転移メカニズムに関与する性質を有する高分子が、相転移化合物と混合して用いられれば、初期使用時の粘度と除去時の粘度との偏差が大きくないことから、付着は容易で刺激なく除去できることを実験によって確認し、新たな形態の製剤を開発した。
【0053】
本明細書で用いられた「歯牙に塗布される」という意味は、本発明の製剤を歯牙または歯牙周辺部に位置させた後、使用者が圧力を加えて歯牙に製剤を密着させる前までを含み得る。
【0054】
本発明の「製剤が歯牙に密着時」という意味は、歯牙に塗布してから一定時間の経過後に使用者が圧力を加えて、製剤を、歯牙屈曲、歯牙の隙間、歯牙と歯ぐきとの間に密着させる時点を意味し得る。
【0055】
本発明の「製剤を除去する時点」とは、歯牙または歯牙周辺組織に密着させた後、薬物が放出されてから口腔内から脱落させる時点を意味し得、製剤の目的及び用途、薬物の放出量に応じて2時間付着後に除去し得るが、使用の便利性の観点から、歯牙に密着させた後30分以内、より望ましくは10分以内に除去し得る。除去時点における製剤の硬度は、製剤が歯牙に塗布される時点および密着する時点に比べて増加し得る。
【0056】
本発明の一実施例で、本発明の製剤は、相転移化合物の硬化速度を調節する高分子を含み得る。本発明の一実施例による製剤は、前記相転移化合物の硬化速度を調節する高分子を含むことで、使用に便利な初期硬度を有し得、薬物が放出してから除去すべき時点には、硬度値が相対的に少なくて除去が容易となり、付着部位への刺激が軽減する口腔用製剤を提供することができる。
【0057】
例えば、相転移化合物のうちアルジネート粉末の場合、水分と接触すれば、初期に急激に固まり、時間の経過につれ硬度が相当増加してしまい、製剤内に分散した薬効成分の放出が円滑でないことがある。しかし、本発明の一実施例において、アルジネートと同一の反応基であるカルボキシル基を複数有している高分子、例えば、PVM/MA(Gantrez)高分子を混合して製造された製剤は、急激な硬度の変化なく薬物放出に有利である。
【0058】
本明細書において用いられた「硬度(hardness)」とは、製剤を圧縮するために必要な力の程度を意味し得る。本発明における製剤の硬度は、TA XT PLUS(ステーブルマイクロシステムズ社製)の圧縮テストモード(compression test mode)で測定した硬度である。50mLのビーカーに20gを入れた後、硬度測定のための直径20mmのアルミニウムプローブをセットし、テスト速度は1.5mm/s、ターゲットモードは距離、ディスタンスは10mmにして硬度を測定した。硬度は、算出される一回目のサイクルのピーク値として理解される。単位は、g(g force)で表す。
【0059】
前記相転移物質は、口腔組成物に粘性を誘発する物質として、カラギーナン(carrageenan)、ペクチン(pectin)、キシログルカン(xyloglucan)、ジェランガム(gellan gum)、アルギン酸アンモニウム(ammonium alginate)、アルギン酸マグネシウム(magnesium alginate)、アルギン酸カリウム(potassium alginate)、アルギン酸ナトリウム(sodium alginate)、アルギン酸リチウム(lithium alginate)、キトサン(chitosan)、ポリ(D,L-乳酸)(poly(D,L-lactic acid))、ポリ(DL-ラクチド-co-グリコライド)(poly(DL-lactide-co-glycolide))、ポリカプロラクトン(poly-caprolactone)、ポリアクリル酸(polyacrylic acid(carbopol))、ポリビニルアセタルジエチルアミノアセテート(polyvinylacetal diethyl aminoacetate(AEA))、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropylmethyl cellulose)、ポリ(メタクリル酸)-ポリ(エチレングリコール)(poly(methacrylic acid)-poly(ethylene glycol))、ポリ(D,L-ラクチド)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(D,L-ラクチド)(poly(D,L-lactide)-block-poly(ethylene glycol)-block-poly(D,L-lactide))、PEG-オリゴグリコリル-アクリレート(PEG-oligoglycolyl-acrylate)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(poly(N-isopropyl acrylamide))、スクロースアセテートイソブチレート(sucrose acetate isobutyrate)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、ポリビニルアセテート(polyvinyl acetate)、モノオレイン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル(glyceryl monolinoleate)、モノアラキドン酸グリセリル(glyceryl monoarachidonate)、モノステアリン酸グリセリル(glyceryl monostearate)などを単独でまたは二種以上を共に用い得、業界において相転移物質として使用可能な物質であれば、いずれも用いることができ、前記例示に限定されない。
【0060】
望ましくは、前記相転移化合物は、アルギン酸アンモニウム(ammonium alginate)、アルギン酸マグネシウム(magnesium alginate)、アルギン酸カリウム(potassium alginate)、アルギン酸ナトリウム(sodium alginate)、アルギン酸リチウム(lithium alginate)またはこれらの混合物を用いることができる。
【0061】
前記相転移化合物は、相転移化合物の硬化速度調節特性を有する高分子とともに製剤に含まれ得る。前記相転移化合物の硬化速度調節特性を有する高分子は、相転移化合物が含む作用基と同一の作用基(例えば、カルボキシル基)を有し得る。
【0062】
本発明の製剤に含まれる相転移化合物の硬化速度調節特性を有する高分子は、カルボキシル基、ヒドロキシ基など、相転移化合物の相転移メカニズムに関与する作用基を有する高分子より選択されたいずれか一種以上を含み得る。例えば、本発明の一実施例の製剤がアルギン酸とこの塩による相転移反応をする場合、前記高分子は、カルボキシル基を有する高分子、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボマー、カーボポール、アクリレートコポリマー(Eudragit L-100)、ポリクォタニウム-39、メチルビニルエーテル/マレイン酸無水物共重合体(PVM/MA copolymer)からなる群より選択されたいずれか一種以上の高分子であり得る。望ましくは、前記高分子は、メチルビニルエーテル/マレイン酸無水物共重合体の一つであるGantrezを用いることができ、最も望ましくは、水溶性でありながら口腔製品に適用可能な等級であるGantrez S-97を用いることができる。 前記高分子は、歯牙及び歯ぐきへの接着力も優秀で、本発明の目的に望ましく用いられる。これに対し、ポリビニルアルコールによる相転移反応である場合、ヒドロキシ基を有する高分子、例えば、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸塩、微結晶セルロースヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸、カラギーナンのうち一種以上を用いることができる。
【0063】
前記相転移化合物の硬化速度調節特性を有する高分子は、相転移化合物と水溶性カルシウムとの結合を妨害し、自身が含んでいるカルボキシル基(-COOH)が水溶性カルシウムと結合することで、相転移化合物の硬化を妨害することと考えられるが、このような理論に限定されることではない。
【0064】
望ましくは、前記相転移化合物の硬化速度調節特性を有する高分子は、水溶性でありながら、相転移化合物が含む作用基と同一の作用基を含み得る。例えば、PVM/MAが含んでいる-COOH基は、水溶性カルシウムと結合するようになり、アルジネートが水溶性カルシウムと結合することを妨害することで、硬化を遅延させることができる。
【0065】
前記相転移反応の速度を調節する特性を有する高分子は、製剤内の総重量に対して0.01重量%~10重量%含まれ得、望ましくは、0.05重量%~5重量%含まれ得る。前記範囲である場合、水と接触したときに本発明が目的とする硬度範囲を有することができ、優れた密着力を提供することができる。また、前記高分子の含量比率が前記範囲を超過する場合、相転移化合物との結合が強くなってしまい、分散した薬効成分の放出に影響を及ぼして薬効成分の放出を阻害する恐れがある。前記相転移化合物と、相転移反応の速度を調節する特性を有する高分子とは、相転移化合物:相転移反応の速度を調節する特性を有する高分子の混合比率が、5:0.01~0.07の重量比率であって、望ましくは5:0.03~0.05の重量比率で混合され得る。前記重量比率であるとき、目的とする製剤の硬度を達成することができる。
【0066】
前記薬効成分が口腔組成物内に均一に分散され得、分散がばらついている場合も、本発明の混合に含まれ得る。
【0067】
本発明の一実施例によれば、本発明の製剤は、半固体(semi-solid)特性を共に有していることから、屈曲や隙間に密着できる。
【0068】
本発明の製剤は、練り粉や粘土のような形態を有し得、軟膏形態で歯牙または歯牙周辺部位に塗布され得る。
【0069】
本発明の一実施例において、前記製剤は二剤形として用いてもよく、必要に応じて三剤形として用いてもよい。例えば、i)相転移化合物が含まれた第1剤と、相転移反応の速度を調節する高分子、水、薬効成分、その他の製剤に含まれ得る成分を含む第2剤と、を混合して用いることができ、ii)相転移化合物が含まれた第1剤と、相転移反応の速度を調節する高分子を含む第2剤と、 水、薬効成分、その他の製剤に含まれ得る成分を含む第3剤と、を混合して用いることができる。
【0070】
前記第1剤及び第2剤、または第1剤、第2剤及び第3剤は、混合(mixing)して歯牙または歯牙周辺部に塗布され得る。
【0071】
本発明のまた他の実施例によれば、相転移化合物と、前記相転移化合物と混合してから1分後の製剤の硬度が140g~350gに至り、前記相転移化合物と混合してから10分後の製剤の硬度が5,200g~13,000gに至る高分子とを含み、製剤内に含まれた薬効成分を口腔内へ伝達する歯牙または歯牙周辺部付着用の製剤を提供する。
【0072】
前記相転移化合物は、本明細書に含まれた粘性を誘発する物質であれば、制限なく用いることができ、望ましくは、カラギーナン(carrageenan)、ペクチン(pectin)、キシログルカン(xyloglucan)、ジェランガム(gellan gum)、アルギン酸アンモニウム(ammonium alginate)、アルギン酸マグネシウム(magnesium alginate)、アルギン酸カリウム(potassium alginate)、アルギン酸ナトリウム(sodium alginate)、アルギン酸リチウム(lithium alginate)、キトサン(chitosan)、ポリ(D,L-乳酸)(poly(D,L-lactic acid))、ポリ(DL-ラクチド-co-グリコライド)(poly(DL-lactide-co-glycolide))、ポリカプロラクトン(poly-caprolactone)、ポリアクリル酸(polyacrylic acid(carbopol))、ポリビニルアセタルジエチルアミノアセテート(polyvinylacetal diethyl aminoacetate(AEA))、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropylmethyl cellulose)、ポリ(メタクリル酸)-ポリ(エチレングリコール)(poly(methacrylic acid)-poly(ethylene glycol))、ポリ(D,L-ラクチド)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(D,L-ラクチド)(poly(D,L-lactide)-block-poly(ethylene glycol)-block-poly(D,L-lactide))、PEG-オリゴグリコリル-アクリレート(PEG-oligoglycolyl-acrylate)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(poly(N-isopropyl acrylamide))、スクロースアセテートイソブチレート(sucrose acetate isobutyrate)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、ポリビニルアセテート(polyvinyl acetate)、モノオレイン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル(glyceryl monolinoleate)、モノアラキドン酸グリセリル(glyceryl monoarachidonate)、モノステアリン酸グリセリル(glyceryl monostearate)などを、単独でまたは二種以上を共に用いることができ、当業界において相転移物質として用いられる物質であれば、いずれも用いることができ、前記例示に限定されない。望ましくは、前記相転移化合物は、アルギン酸またこの塩であり得、望ましくは、前記アルギン酸またはこの塩は、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸マグネシウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸リチウムまたはこれらの混合物を用いることができる。
【0073】
前記相転移化合物が含まれた製剤に含有された薬効成分の効果的な放出と、歯牙、歯牙の隙間または歯牙周辺組織部位への密着のために、前記製剤は、第1剤と第2剤とを混合してから1分間は、操作が容易な程度の粘性と硬度を有すべきであり、望ましくは、140g~350gの硬度を有することが容易となり得る。そして、製剤の成分を混合してから10分後は、薬物の放出が円滑に起こることができ、形態固定力と付着力を維持するために、5,200g~13,000gの硬度を有することが望ましい。本発明が目的とする製剤の硬度を提供するために、望ましくは、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボマー、カーボポール、アクリレートコポリマー(Eudragit L-100)、ポリクォタニウム-39、メチルビニルエーテル/マレイン酸無水物共重合体(PVM/MA copolymer)からなる群より選択されたいずれか一種以上の高分子であり得る。望ましくは、前記高分子は、メチルビニルエーテル/マレイン酸無水物共重合体であり得る。
【0074】
本発明の製剤によって達成できる形態固定力は、薬物の到達が必要な部位との十分な接触時間を確保可能にするため、目的とする効果達成にさらに有利である。
【0075】
本発明の一実施例による製剤は、混合してから1分後に測定した硬度と、10分後に測定した硬度との差が、5,000g~12,000g、望ましくは、6,000g~10,000gであり得る。前記硬度範囲の差であるとき、付着が容易で取り扱いやすく、薬物の放出に効果的であり、除去が容易となり、本発明の目的達成に有利である。
【0076】
本発明の製剤は、前記薬物放出を助ける物質をさらに含み得、前記薬物放出を助ける物質としては、剤形内にチャンネル構造や多孔性構造、または泡を形成するものであれば、用いることができる。例えば、第1剤と第2剤との二つの構成からなる場合、第1剤には酸(acid)が、第2剤には塩基(base)が入っており、二つの剤形が混合されて粘性のある形態を形成するとき、剤形内に泡が形成される。即ち、第1剤には、酢酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸、アスコルビン酸などの酸またはこれらの水溶性塩、例えば、クエン酸ナトリウムが入っており、第2剤には、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸水素ナトリウム(baking soda)、炭酸ナトリウムのような塩基が入っている群より選択されたいずれか一種を含み得、望ましくは、酸は酢酸、塩基は炭酸水素ナトリウムであり得、より望ましくは、歯磨き粉に主に使われる酸と塩基であるクエン酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムであり得る。
【0077】
本発明の製剤は、第1剤と第2剤とを混合して相転移化合物が水分と接触してから硬度が徐々に増加して歯牙への付着が容易となり、除去時点における硬度は、通常の相転移化合物と水とが接触したときに有する硬度範囲よりは硬くないながらも形態固定力があり、除去時に歯牙及び歯ぐきに刺激を誘発しない。
【0078】
本発明の他の実施例で提供する、歯牙または歯牙周辺部付着用の製剤は、i)薬効成分、ii)相転移化合物、及びiii)水不溶性でありながら、エタノールに溶解される高分子、を含む。本発明の製剤は、液状として歯牙または歯牙周辺部に塗布され、塗布後、口腔内の唾液と接触して相転移することで、歯牙または歯牙周辺部への付着性を有する。
【0079】
前記製剤を製造するための溶剤として、エタノールが用いられる。本発明の製剤は、水には一切溶解されないか、または、水には一定の条件(例えば、水とエタノールとの一定比率(例えば、エタノールと水との混合物においてエタノールの含量が80%以上)または一定のpH条件)でのみ溶解されながら、エタノールには溶解される高分子を含む。前記製剤は、前記水不溶性でありながらエタノールに溶解される高分子を含み得る。前記水不溶性でありながらエタノールに溶解される高分子は、35~38℃の温度、pH7の条件において水に溶解されず、エタノールには溶解される高分子を含み得る。
【0080】
前記製剤は、歯牙または歯牙周辺部への塗布時、広がりがよく、口腔内で一定時間が経過した後には、歯牙または歯牙周辺部への付着性を有する。
【0081】
本発明の発明者は、製剤内に含まれた成分が唾液と接触して相転移を誘導すると共に、水不溶性でありながらエタノールに溶解される高分子を一緒に用いることで、ターゲット部位に多い量をロード(loading)して厚く塗布されても、製剤が速く固まり、口腔内のターゲット部位に十分な付着時間を有することができることを実験によって確認した。
【0082】
本発明の製剤は、多湿な口腔内で製剤の溶解度に変化が起こり、即ち、製剤の溶媒であるエタノールには溶解されており、口腔内における多量のpH7以下の水(唾液)と接触しながら溶解度が減少することで、口腔内のターゲット部位に十分な時間留まり、希望する効果を得ることができる。
【0083】
本発明の製剤は、口腔内への塗布直後は流動性に優れた液状の形態であり、歯牙の隙間及び歯牙と歯ぐきとの境界部位によく染み込まれる。本発明の製剤は、塗布後、時間の経過につれ唾液と反応して製剤が徐々に固まってゲル化し、歯牙または歯牙周辺部に付着される。
【0084】
本明細書で用いられた「ゲル(gel)化」とは、ゾル(sol)がゲルへ変わる現象を含むのみならず、系の明らかな弾性増加または粘性の上昇を伴う現象を含む意味である。唾液と接触して液状が徐々に固まる現象を含み、ゲル化によって弾性や粘度がどのぐらい増加するかは、特に制限されない。
【0085】
前記相転移化合物は、モノオレイン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル、モノアラキドン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリルまたはこれらの混合物より選択されたいずれか一種のモノグリセリド(monoglycerides)を含み得、望ましくは、モノオレイン酸グリセリル、及び/またはモノリノール酸グリセリルを用い得る。
【0086】
前記相転移化合物は、水分と接触して相転移を誘導する本発明の目的上、モノオレイン酸グリセリルであることが望ましい。前記相転移化合物は、製剤の総重量に対して5~80重量%含まれ得る。前記含量範囲における少量の水または唾液との接触時、相転移の特徴を有するので、本発明の目的に望ましい。
【0087】
本発明の製剤は、エタノールのみに解け、水にはほとんど溶解されない高分子を共に用いて、前記エタノールのみに溶解される高分子も水との接触時、可溶性相(soluble phase)から不溶性相(insoluble phase)に転換される。そのため、前記エタノールのみに溶解される高分子も、他の意味の相転移が起こることから、前記のような含量範囲として製剤内に相転移化合物が含まれ得る。
【0088】
本発明の一実施例に含まれる水不溶性でありながらエタノールに溶解される高分子は、エタノールには溶解されるが、a)水には溶解されない高分子、またはb)通常は水に溶解されないが、口腔内のpH(pH7)よりも高いpHのような特定条件で水に溶解される高分子、例えば、酸性条件である胃、中性条件の剤形内では解けないが、塩基性条件である腸のみで溶ける通常の腸溶性コーティングポリマー(enteric coating polymer)を含み得る。例えば、b)通常は水に溶解されないが一般的な口腔のpHよりも高い条件のような特定条件では水に溶解される高分子は、エタノールに溶解されるながらもpH7以下の水には溶解されない高分子を含み得る。
【0089】
モノグリセリドは、温度と水分の含量によって相転移される特徴があり、相が変わることにつれ、構造的な形態及び物性が変わる特性を有する。前記モノグリセリドは、相転移が起これば、流動性のある構造から流動性なく付着性を有する固形構造となる。しかし、モノグリセリドが速く相転移するためには厚く塗ってはいけないため、スプレイタイプで可能な限り薄くターゲット部位に塗布することが特徴であった。モノグリセリドを用いた相転移製剤は、薄すぎる厚さから十分な量の薬物伝達には不適切であり、一部の口臭除去剤のように十分な付着時間による薬物伝達を必要としない製剤において一部のみが用いられていた。
【0090】
本発明は、このような問題を解決し、十分な付着時間を確保しながら薬物を効果的に伝達することができる方案を提示する。
【0091】
前記水には溶解されずエタノールに溶解される高分子は、エチルセルロース(ethyl cellulose)、メチルビニルエーテル/マレイン酸無水物共重合体のブチルエステル(Buthyl ester of PVM/MA copolymer)、ポリビニルアセテート(polyvinyl acetate)、ポリビニルアセテートフタレート(polyvinyl acetate phthalate)、セラック(shellac)、ロジン(rosin)、メタクリル酸共重合体(例えば、EUDRAGIT(登録商標) L100,L100-55)、またはこれらの混合物であり得、望ましくは、エチルセルロース、メチルビニルエーテル/マレイン酸無水物共重合体のブチルエステル、またはこの混合物であり得る。
【0092】
本発明の一実施例において、前記薬効成分は、水には溶解されにくく、エタノールのみに溶解される薬効成分が特に望ましく用いられ得る。また、他の実施例において、前記薬効成分としては、水に溶けにくく、水に均一に分散する薬効成分であるものが望ましく用いられ得る。
【0093】
本発明の他の実施例による製剤は、通常の流れ落ちる溶液やゲルの粘性に類似な粘性を有し得、例えば、ブルックフィールド粘度計によって、常温でRV6スピンドル、速度20で測定したとき、10,000以下、望ましくは5,000以下、より望ましくは100~10,000、さらに望ましくは500~5,000の粘性を有し得る。本発明は、実施例によって唾液と接触する前は前記粘度範囲を有し、歯牙または口腔内に塗布された後は、歯牙または口腔内組織への付着性を有するゲルまたは固体へ相転移する、歯牙または歯牙周辺部付着用の製剤を提供する。前記相転移は、望ましくは口腔内の温度条件、36~38℃の温度条件で測定し得る。
【0094】
前記粘性は、業界で通常使用されるブルックフィールド粘度計を用いて、RV6スピンドル、常温または口腔の温度条件で粘度を測定した結果として得ることができ、前記粘性は粘度を有する性質を意味し、粘性と粘度は混用して用いることがある。単位は、cPsとして表す。
【0095】
前記製剤は、本発明の水不溶性でありながらエタノールに溶解される高分子及び本発明の相転移化合物を含み得る。
【0096】
前記製剤は、一実施例で、モノオレイン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル、モノアラキドン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、またはこれらの混合物より選択された高分子;及びエチルセルロース、メチルビニルエーテル/マレイン酸無水物共重合体のブチルエステル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアセテートフタレート、セラック、ロジン、メタクリル酸共重合体、またはこれらの混合物より選択された高分子を共に含み得る。
【0097】
本明細書で用いられた「歯牙周辺部」とは、通常、歯ぐきとして呼ばれる部位を含む概念であり、歯牙周辺の粘膜部位を全て含む意味として用いられ得る。また、「歯牙周辺部」とは、製剤の構造上、歯牙に製剤が塗布されるとき、歯牙のみならず、口腔内への伝達のための薬効成分が共に伝達される部位を包括する意味として用いられ得る。本明細書においては、歯牙または歯牙周辺部を「歯牙」と混用して記載することがあり、「歯牙」のみを記載していても、歯牙または歯牙周辺部を共に含む意味として本明細書において理解され得る。
【0098】
本明細書で用いられた「製剤」とは、薬効成分の効果には影響を及ぼすことなく治療効果を十分発揮するように加工して作られた製品を意味する。
【0099】
本明細書で用いられた「歯牙に塗布される」という意味は、本発明の製剤を歯牙または歯牙周辺部の一部でも接触させる場合であれば、塗布の意味に含まれ得る。
【0100】
本発明の発明者は、口腔内に薬効成分を伝達できる薬物伝達システムについての研究を重ねた結果、新たな形態の薬物伝達システム、このようなシステムを用いて口腔内に薬効成分を伝達することができる新しい方法を提案するに至った。
【0101】
前記製剤は、歯牙または歯牙周辺部に付着するとき、必要に応じて支持層(backing film)をさらに含み得る。前記支持層は、本発明の一実施例による製剤が固まる時間が長い場合、歯ぐきなどの希望しない部位についてしまうことを防止する役割も果たす。前記支持層は、口腔用フィルムに通常使用される水不溶性高分子を含み得、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレンビニルアセテート(EVA)、セルロースアセテートフタレート、セラック(Shellac)、ポリビニルアセテート、エチルセルロース、ポリメチルメタクリレート、メタクリロイルエチルベタイン/メタクリレート共重合体(methacryloylethyl betain/methacrylate copolymer;Yukaformer,Mitsubishi社製)、メタクリル酸共重合体(methacrylic acid copolymer;Eudragit L 100,Eudragit L 12,5, Eudragit L 100-55, Eudragit L 30D-55)及びアミノアルキルメタクリレート共重合体(aminoalkyl methacrylate copolymer;Eudragit E 100,Eudragit E 12,5,Eudragit RL 100,Eudragit RL 30D)などを用い得る。
【0102】
本発明の一実施例では、製剤の薬物が放出されてから除去される時点で歯磨きをすることで容易に除去することができる。
【0103】
一使用例によれば、支持層に本発明の練り粉状態の製剤を塗布した後、口腔内のターゲット部位に付着し、一定時間が経過してから(ある程度固まって歯ぐきなどに付け出さないとき)支持体を除去することができる。支持体を除去した後、除去時点には普段使っていた歯ブラシで歯磨きをすることで本発明の製剤を除去することができる。取り外し(Peel-off)の形態で用いる場合、固まる過程で支持体を途中除去せず、除去時点で共に除去してもよい。
【0104】
本発明の製剤は、例えば、一定時間の経過後、歯牙または歯牙周辺部から除去する時点で、歯磨きによって除去(brush-off)することができる。通常の歯磨きのような外部刺激や圧力によって本発明の製剤は脱落可能である。 歯磨きによる除去のための道具としては、例えば、歯ブラシ、スポンジなどを用いることができるが、種類は特に制限されない。
【発明の効果】
【0105】
本発明の製剤は、歯牙の隙間や歯牙の屈曲にもかかわらず希望部位に高い密着力を付与することができる。
【0106】
除去時において、表面にべたつきを残すことなく容易に除去することができる。
【0107】
本発明の製剤は、ガムや練り粉のように自己回復(self-healing)できる凝集性に優れている。薬物の放出性を調節しながらも取扱いが容易である。
【0108】
付着後、流れ落ちるか、唾液によって希薄されないことから、薬物の到達部位と本発明の製剤との接触時間を充分確保することができ、目的とする効能の達成に有利である。
【0109】
歯牙への塗布時、流れ落ちなくて便利に使うことができる。
【0110】
初期付着時には、硬度が相対的に高くてよく流れ落ちず取扱いが容易であり、付着後、一定時間が経過した時点では、相対的に硬度の増加幅が少なくて除去が有利で付着部位の周辺に刺激を誘発しにくい。
【0111】
通常の相転移物質を含む口腔製剤は、付着部位との十分な接触時間が確保できないくらいの薄い厚さで塗布すべきであったが、本発明は、厚く塗布しても多湿な口腔内で製剤の溶解度が速く転換され(可溶性から不溶性へ転換)、十分な接触時間を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
図1】本発明の相転移化合物の硬化速度を調節することができる高分子の一例であるPVM/MAを示し(左側)、アルジネートカルシウム複合体が形成された構造を図式化して示した(右側)。
図2】製剤を混合してから1分後に確認された製剤の硬度変化を示す。縦軸の単位はgで表した。図2から確認することができるように、実施例の場合、製剤を混合した直後から1分まで硬度がさらに速く増加することが分かり、1分後の硬度は比較例に比べて実施例の方がより大きい値を有することが分かる。即ち、混合してから1分後の実施例の方が、比較例に比べて使用者が製剤を取り扱いやすいことを確認することができる。
図3】混合直前から10分経過した時点で確認した製剤の硬度変化を示す。図3から確認することができるように、実施例の場合、10分経過した時点における製剤の硬度が比較例に比べてさらに小さい値を有するということが分かる。即ち、付着後、一定時間が経過した後には比較例がさらに堅く固まることが分かる。
図4】本発明の実施例による製剤を歯牙に塗布して密着させた後、固まる過程を例示的に示す図である。図4から確認することができるように、歯牙の隙間にまでも本発明の製剤が到達できる。Tは、歯牙を示し、10は、歯牙または歯牙周辺部付着用の製剤を示す。
【発明を実施するための形態】
【0113】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて説明する。しかし、本発明による実施例は他の多くの形態に変形可能であり、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は、本発明の具体的な理解を助けるために例示的に提供されるものである。一方、特に言及しない限り、本願の明細書に記載の%は、重量%を意味する。
【0114】
[マウスバンド及び口腔用製剤の製造]
実施例及び比較例は、次のような方法によって製造した。
【0115】
下記の組成によって温度を50℃に合わせた後、メカニカルミキサーで混合しながら製造した。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【0118】
[歯牙隙間(interproximal)及び歯牙表面(buccal surface)の密着力評価]
1.歯間及び歯牙表面の密着力比較実験(人造歯面の細菌除去方法を応用)
(1)実験方法
-評価器機:ITPlus 4.0 Microcam
-評価方法:比較例及び実施例の付着前後における歯牙隙間及び歯牙表面部位の人造歯面細菌膜の除去力を面積で比較
【0119】
a)人造歯牙模型への人造歯面細菌膜のコーティング方法
顎態模型において、ブラシング(歯磨き)に適した上顎臼歯部の狭面をポリマー(Red Dye含有)に10秒間入れて取り出し、室温で60分乾燥した後、さらに乾燥室で60分乾燥することで、人造歯面細菌膜を製作した。
【0120】
b)歯間及び歯牙表面への密着力実験方法
実施例及び比較例に少量の水を噴射して多湿な口腔条件を形成した後、実験しようとする人造歯面細菌膜がコーティングされた人造歯牙に密着させ、10分後に除去した後、同一の条件下で、歯牙の隙間、歯牙の前表面部位の人造歯面細菌膜を除去した後、付着前後の歯間(interproximal)及び歯牙表面(buccal surface)の面積を測定して比較した。
【0121】
(2)実験結果
実施例及び比較例の使用による歯間(歯牙の隙間)、歯牙表面の人造歯面細菌膜を除去した面積を測定した。ここで、細菌膜の除去面積が大きいということは、その位置における密着力が高いことを意味する。
【0122】
【表3】
【0123】
前記表3から確認することができるように、実施例1及び2は、歯牙の隙間及び歯牙の表面のいずれも細菌膜の除去面積が大きく示された。前記結果から、実施例1及び2は、歯牙の隙間までの密着能力が卓越であることが分かり、流動性が強くなくて歯牙表面との十分な接触時間を確保することができ、歯牙表面の細菌膜の除去能力が優秀であることが分かる。
【0124】
[形態維持力及び長さ拡張力の比較実験]
1.形態維持力
上顎及び下顎から構成された口腔歯牙模型に、実施例及び比較例を付着した後、形態が維持できず流れ落ち始めた時間を記録し、使用時間の間に付着形態が維持可能な物理的強度があるかを評価した。歯牙模型を用いて上顎部位の3つ程度の歯牙と歯ぐきとの境界部位を覆うように付着しておき、10分後、下顎部位に流れ落ちるか、それとも付着状態を維持するかを観察し、5点尺度で、形態を初期と同一に維持すれば5点、少し流れ落ちるが、形態と位置をそのまま維持すれば4点、流れ落ちながら形態と位置が少し離脱すれば3点、大幅離脱すれば2点、付着部位から完全に離脱すれば1点として示した。
【0125】
【表4】
【0126】
2.ストレッチ性および可鍛性の比較実験
前記表4において、形態維持力に優れた実施例に対し、長さ拡張可能性をさらに実験した。
【0127】
PETシートに実施例を1g採って横縦1cm×1cmに位置させた後、その上に他のPETシートを載せて指で押し、破れるか穴があかないながら最大に拡張可能な長さを測定して比較した。
【0128】
【表5】
【0129】
前記表5から確認することができるように、実施例は、歯牙表面に付着されて形態維持力が優秀であるとともに長さ拡張力が優秀であることから、ストレッチ性(stretchable)を有することが分かる。特に、比較例4は、本発明の実施例と形態維持力面では大きい差がなかったが、押したとき、長さが拡張しない特性があった。このような差によって、比較例4の製剤は、歯牙の隙間まで完全に密着しにくかった。これに対し、本発明の製剤は、歯牙の屈曲や隙間まで完璧な密着力を有した。
【0130】
[人を対象にした使用の便利性についてのアンケート評価(接着力、形態維持力、密着力、除去力など)]
1)実験対象及び使い方:総10人の支援者を対象にして実施例1~3及び比較例1~4を各々交互に各々3回ずつ使うようにした後、5段階リッカート尺度でアンケート評価を実施した。
【0131】
2)尺度基準
5段階:非常に満足する。(5点)
4段階:比較的満足する。(4点)
3段階:普通(3点)
2段階:少し劣る。(2点)
1段階:多く劣る。(1点)
【0132】
ガイドラインとして、接着力の場合、希望位置に容易に付着され、希望の付着時間の間に付着位置にそのまま付いている場合を接着力が優秀であるとし、形態維持力については、希望位置に付着した後、流れ落ちず形態をよく維持する場合を形態維持力が優秀であるとし、密着力については、指で剤形を軽く押して歯牙の隙間や歯牙と歯ぐきとの境界部位によく密着する場合を密着力が優秀であるとし、除去力については、下記のように5段階リッカート尺度でアンケート評価を実施した。
【0133】
5:除去が非常に便利であり、歯牙残余物かない。
4:除去が便利であるが、残余物が少し残る。
3:除去が便利でなく、残余物が残って不便だ。
2:除去が不便であり、残余物が多く残る。
1:除去が非常に不便であり、残余物が非常に多く残る。
【0134】
3) 実験結果
【0135】
【表6】
【0136】
前記表6から確認することができるように、実施例の場合、接着力面で全般的に非常に優れた結果が得られた。即ち、付着してから流れ落ちるか、移動程度が比較例に比べて少なかった。
【0137】
また、密着力面で良い結果が得られ、形態維持面や接着力面で総合的に考慮するとき、実施例の場合、さらに優れた使用感の評価結果を得た。
【0138】
[人を対象にしたしみる歯または歯肉炎の改善に関わる臨床的アンケート評価]
1)実験対象及び使い方:実施例1~3及び比較例1~4を、一日1回、10分間、しみる歯または歯ぐきの痛症部位に付着した後、除去した。
【0139】
2)各群当り、しみる歯または歯ぐきの痛症を感じる15人の支援者を対象にして、1週間使用後、5段階リッカート尺度でアンケート評価を実施した。
【0140】
3)尺度基準
5段階:付着したしみる歯/歯ぐき痛症部位の全てにおいて、しみる歯/歯ぐき痛症の改善効果が一ヶ月持続した。(5点)
4段階:付着したしみる歯/歯ぐき痛症部位の全てにおいて、しみる歯/歯ぐき痛症の改善効果を確かに感じた。(4点)
3段階:付着したしみる歯/歯ぐき痛症部位の一箇所以上で、しみる歯/歯ぐき痛症の改善効果を確かに感じた。(3点)
2段階:使用前よりも冷たいものに対して、しみる歯または歯ぐき痛症の敏感度が低くなった。(2点)
1段階:しみる歯または歯ぐき痛症の改善効果が感じられない。(1点)
【0141】
下記のように実施例及び比較例の効能効果についてのアンケート結果を得た。
【0142】
【表7】
【0143】
前記表7から確認することができるように、実施例のマウスバンドは、比較例に比べて口腔内でさらに優れた効能を示した。実施例のマウスバンドは、口腔内のターゲット部位への密着力が優秀であり、歯牙の隙間にまで薬物を伝達することができ、目的とする効果達成に有利であった。また、十分な接触時間を確保することができ、薬物伝達に容易であった。
【0144】
[口腔用製剤の製造]
下記の組成を有する実施例及び比較例の口腔用製剤を製造または購入した。
【0145】
実施例及び比較例は、次のような方法によって製造した。
【0146】
下記の組成によって、第2剤は、温度を50℃に調整した後、メカニカルミキサーで混合しながら製造した。第2剤と混合するアルジネート粉末の含量は第2剤の100倍重量を用いた。
【0147】
【表8】
【0148】
[硬度(Hardness)比較実験(実験方法:テクスチャーアナライザーで測定)]
-評価器機:TA XT PLUS(ステーブルマイクロシステムズ社製)
-評価方法:比較例及び実施例の硬度をテクスチャーアナライザーで測定。
【0149】
硬度は、テクスチャーアナライザーであるTA XT PLUSの圧縮テストモード(compression test mode)で測定した。実施例及び比較例を50mLのビーカーに20g入れた後、硬度の測定のための直径20mmのアルミニウムプローブをセットし、テスト速度は1.5mm/s、ターゲットモードは距離、ディスタンスは10mmにして硬度を測定した。機器的に算出される硬度は、一回目のサイクルのピーク値である。
【0150】
-実験結果
表8に示した実施例及び比較例の第1剤と第2剤とを混合した後、時間による硬度比較の実験結果を下記の表9に示した。
【0151】
【表9】
【0152】
前記表9から確認することができるように、混合後の初期には、実施例の硬度値がより大きく示されたことから、歯牙への塗布や取扱いが容易であることが分かり、混合してから10分経過時点までの硬度変化が大きくないことから、刺激なく除去することができ、使用が便利であった。図2及び図3に、前記実施例及び比較例による硬度変化の結果をグラフで示した。
【0153】
[付着後の使用感テスト]
前記表8による組成を有する製剤を用いて、使用感をテストした。使用直前に第1剤と第2剤とを混合した後、支持層にこれらの混合物を塗布した。希望部位に支持層を用いて付着した後、密着するよう指で押した。支持層を除去しなくてもよいが、本実験では、付着してから2分経過した後、支持層を除去した。付着時間である10分経過後に除去した。
【0154】
1.密着力アンケート
30人の回答者は、比較例5~7及び実施例4~6の各剤形をグループによって上記使用方法のとおり使用するようにした。その後、各グループは製品を替えて使った後、歯牙の隙間への密着力についてのアンケートに回答した。
【0155】
-アンケート回答基準-
5点:指で軽く押して歯ぐき及び歯間によく密着し、除去が便利だ。
4点:指で軽く押して歯間には密着できるが、歯ぐきへの密着力は普通だ。
3点:指で軽く押して歯間には密着できるが、歯ぐきへの密着力は弱い。
2点:歯牙には強い接着力を示すが、歯間密着力は劣る。
1点:歯牙には強い接着力を示すが、歯ぐきへの密着力は劣る。
【0156】
2.除去力アンケート
30人の応答者は、比較例5~7及び実施例4~6の各剤形を、グループによって上記使用方法のとおり使用するようにした。その後、各グループは製品を替えて使った後、除去力についてのアンケートに回答した。
【0157】
-アンケート回答基準-
5:除去が非常に便利であり、歯牙残余物かない。
4:除去が便利であるが、残余物が少し残る。
3:除去が便利でなく、残余物が残って不便だ。
2:除去が不便であり、残余物が多く残る。
1:除去が非常に不便であり、残余物が非常に多く残る。
【0158】
[人を対象にしたしみる歯または歯ぐき痛症の改善に関わる臨床的アンケート評価]
1)実験対象及び使い方:実施例5及び比較例1を、一日1回、10分間、しみる歯または歯ぐきの痛症部位に付着した後、除去した。
【0159】
2)各群当り、しみる歯または歯ぐきの痛症を感じる15人の支援者を対象にして、1週間使用後、5段階リッカート尺度でアンケート評価を実施した。
【0160】
3)尺度基準
5段階:付着したしみる歯または歯ぐき痛症部位の全てにおいて、しみる歯または歯ぐき痛症の改善効果が一ヶ月持続した。(5点)
4段階:付着したしみる歯または歯ぐき痛症部位の全てにおいて、しみる歯または歯ぐき痛症の改善効果を確かに感じた。(4点)
3段階:付着したしみる歯または歯ぐき痛症部位の一箇所以上で、しみる歯または歯ぐき痛症の改善効果を確かに感じた。(3点)
2段階:使用前よりも冷たいものに対して、しみる歯の敏感度が低くなったか、または歯ぐきの痛症が減少したことを感じた。(2点)
1段階:しみる歯または歯ぐき痛症の改善効果が感じられない。(1点)
【0161】
4.人を対象にした美白効果体感に関わるアンケート評価
1)実験対象及び使い方:実施例1と4、比較例2を、一日1回、30分以上、上歯の中央6個の歯牙部位に付着した後、除去した。
【0162】
2)各群当り、普段に歯牙が変色したと思い歯牙美白の必要を感じる15人の支援者を対象にして、1週間使用後、付着しなかった下歯と比較して体感美白効果を5段階リッカート尺度でアンケート評価を実施した。
【0163】
3)尺度基準
5段階:使用前よりも付着しなかった下歯に比べ、5日以内に確実な美白効果を体感した。(5点)
4段階:使用前よりも付着しなかった下歯に比べ、5日以内に確実に明るくなったことを感じた。(4点)
3段階:使用前よりも付着しなかった下歯に比べ、一週間使用時、確実に明るくなったことを感じた。(3点)
2段階:使用前よりも付着しなかった下歯に比べ、少し明るくなったことを感じた。(2点)
1段階:使用前との差が分からない。(1点)
【0164】
5.測定結果
下記の表10は、比較例及び実施例の除去力及び密着力を示し、しみる歯の改善効果、歯肉炎の改善効果、及び美白効果の体感程度を表に示した。
【0165】
【表10】
【0166】
[薬物放出量の比較実験]
イ)操作
試験管に塩化ナトリウム0.9%溶液500mLを注ぎ、薬物放出試験中における試験液の温度を32±0.5℃に維持した。吸収、妨害、反応することなくシンカーとして使用可能なディスクの上面に、検体である実施例または比較例をターゲット付着面が外側を向けるように固定した後、検体が付着された面が上方を向けるように試験管に入れ、この瞬間から薬物放出時間を計算した。検体を付着したディスクは、試験管の底とパドルの刃に平行に合わせる。パドルの刃は、検体の面と25±2mmとなるように距離を調整し、分当り回転数(rpm)は25にした。検液の採取時は、一定の位置(パドルの刃の上方と試験液面との中間位置であって、試験管の壁面から1cm離れた位置)で実験を開始してから30分後、検液を100mL採取する。前記薬物放出実験は、通常の実験室の温度である25℃、相対湿度65%の条件で実施した。
【0167】
ロ)薬物分析方法
薬物または含量によって適した分析方法を選択する。例えば、過酸化物の場合は滴定法、金属塩の場合はICP分析、天然抽出物の場合はHPLCを選択して分析する。
【0168】
ハ)薬効成分放出の実験結果
【0169】
【表11】
【0170】
前記表11から確認することができるように、実施例の場合、付着してから10分経過時点で薬効成分の約70%が放出することを確認した。しかし、比較例の場合、急増した硬度によって薬物の放出が円滑でなく、これによって薬物放出の程度を測定することができなかった。
【0171】
[口腔用製剤の製造]
下記の組成を有する実施例及び比較例の口腔用製剤を製造または購入した。
【0172】
【表12】
【0173】
比較例11:パロドンタックスTM(GSK社製)
比較例12:メディアンインテンシブ美白ゲル(ポリビニルピロリドン、エタノール、水など)(Amorepacific社製)
比較例13:Sensi StopTM(P&G社製)
【0174】
前記表12の実施例及び比較例は、次のような方法によって製造した。
【0175】
エタノール溶媒を50℃付近に温度を高め、高分子の分散と溶解を助けるためにメカニカルかくはん器(mechanical stirrer)で一定のrpmで回転しながら高分子を溶かし、特に、多量が入っており溶解に時間が長くかかる高分子(例えば、モノオレイン酸グリセリル)を先に溶かしてから他の高分子も溶かし、他の成分及び薬効成分を入れて均一な溶液またはゲルにした。
【0176】
<溶解速度及び残存量の評価>
1.別途の物理力なく高温多湿な口腔条件による溶解度評価
高温多湿な口腔内における維持時間を評価するために、ヒドロキシアパタイトタブレット(hydroxyapatite tablet)(直径1cm)に製作した人造歯牙をシリコーンモールドで固定したものの上に、実施例7~9及び比較例8~12を各々0.5gずつロードして、温度37℃、湿度95%の恒温恒湿器に入れておいたとき、完全溶解する時間を測定した。比較例13は、パッチ形態であって別の溶解実験は行わなかった。
【0177】
2.流れる唾液のような物理力が作用するようにした人工唾液における溶解度評価
ヒドロキシアパタイトタブレット(直径1cm)で作った人造歯牙をシリコーンモールドで固定したものの上に、実施例7~9及び比較例8~12を各々1gずつロードして、唾液による維持時間を評価するために人工唾液を1ml/minの速度で上方から下方へ流したとき、完全溶解する時間を測定した。
【0178】
3.実験結果
別途の物理力なく高温多湿な条件による溶解度の評価結果、及び流れる唾液のような物理力を作用させた人工唾液における溶解度の評価結果を、下記の表13に示した。
【0179】
【表13】
【0180】
前記表13から確認することができるように、実施例の場合、30分が経過した時点でも完全に溶解しないことが確認された。これに対し、比較例の場合、実験結果、容易に溶解してしまうことが分かった。
【0181】
<パネル評価>
1.臨床的しみる歯または歯ぐき痛症改善に関わるアンケート評価
1)実験対象及び使い方:実施例7、9、及び比較例8、10~12を、一日1回、10分間、しみる歯または歯ぐきの痛症部位に塗布または付着した後、除去した。
【0182】
2)各群当り、しみる歯または歯ぐきの痛症を感じる15人の支援者を対象にして、1週間使用後、5段階リッカート尺度でアンケート評価を実施した。
【0183】
3)尺度基準
5段階:製品を適用したしみる歯または歯ぐき痛症部位の全てにおいて、痛症の改善効果が一ヶ月持続した。(5点)
4段階:製品を適用したしみる歯または歯ぐき痛症部位の全てにおいて、痛症の改善効果を確かに感じた。(4点)
3段階:製品を適用したしみる歯または歯ぐき痛症部位の一箇所以上で、痛症の改善効果を確かに感じた。(3点)
2段階:使用前よりも冷たいものに対して、しみる歯の敏感度が低くなったか、または歯ぐきの痛症が減少したことを感じた。(2点)
1段階:しみる歯または歯ぐき痛症の改善効果が感じられない。(1点)
【0184】
2.人を対象にした美白効果体感に関わるアンケート評価
1)実験対象及び使い方:実施例8、比較例9、12を、一日1回、30分以上、上歯の中央6個の歯牙部位に塗布した後、除去した。
【0185】
2)各群当り、普段に歯牙が変色したと思い歯牙美白の必要を感じる15人の支援者を対象にして、1週間使用後、付着していない下歯と比較して体感美白効果を5段階リッカート尺度でアンケート評価を実施した。
【0186】
3)尺度基準
5段階:使用前よりも付着しなかった下歯に比べ、5日以内に確実な美白効果を体感した。(5点)
4段階:使用前よりも付着しなかった下歯に比べ、5日以内に確実に明るくなったことを感じた。(4点)
3段階:使用前よりも付着しなかった下歯に比べ、一週間使用時、確実に明るくなったことを感じた。(3点)
2段階:使用前よりも付着しなかった下歯に比べ、少し明るくなったことを感じた。(2点)
1段階:使用前との差が分からない。(1点)
【0187】
3.評価結果
【0188】
【表14】
【0189】
前記表14から確認することができるように、本発明の実施例の組成を有する製剤は、薬効成分の伝達を容易にし、十分な付着時間を確保することで、優れた効能を有する。
【産業上の利用可能性】
【0190】
本発明は、歯牙または歯牙周辺部に付着して薬効成分を口腔内へ伝達できる口腔用製剤を提供することができる。本発明は、密着力に優れ、歯牙または歯牙周辺部への付着のための製剤である。
図1
図2
図3
図4