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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】乗客コンベアシステムと移動体
(51)【国際特許分類】
   B66B 31/00 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
B66B31/00 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023195010
(22)【出願日】2023-11-16
【審査請求日】2023-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 涼介
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/109822(WO,A1)
【文献】特開平7-144866(JP,A)
【文献】特開2012-210994(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0148300(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00-31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアと移動体を含む乗客コンベアシステムにおいて、
前記乗客コンベアは、
一方の乗降口から他方の乗降口まで前後方向に設けられた左右一対の欄干と、
左右一対の前記欄干の下部に前後方向に沿って設けられた左右一対のスカートガードと、
左右一対の前記スカートガードの間を一方の前記乗降口から他方の前記乗降口まで前後方向に移動する踏段と、
前記踏段を移動させる主制御部と、
を有し、
前記移動体は、
前記踏段に乗って移動する移動体本体と、
前記移動体本体に設けられ、かつ、一方の前記乗降口から他方の前記乗降口まで前記移動体本体が移動する間に、左側の前記スカートガードと前記踏段の上面の左側部との隙間を撮影する左カメラと、
前記移動体本体に設けられ、かつ、一方の前記乗降口から他方の前記乗降口まで前記移動体本体が移動する間に、右側の前記スカートガードと前記踏段の上面の右側部との隙間を撮影する右カメラと、
前記左カメラが撮影した左側の前記隙間の画像を時系列で記憶し、前記右カメラが撮影した右側の前記隙間の画像を時系列で記憶する移動体制御部と、
を有することを特徴とする乗客コンベアシステム。
【請求項2】
前記移動体制御部、前記主制御部、又は前記乗客コンベアの外部にある携帯端末は、
時系列の左側の前記隙間の画像に基づいて、一方の前記乗降口から他方の前記乗降口までの左側の前記隙間が予め定めた左基準値より狭いか否かを判断し、一方の前記乗降口から他方の前記乗降口までの左側の前記隙間の一部でも前記左基準値より狭いときは異常があると判断し、
時系列の右側の前記隙間の画像に基づいて、一方の前記乗降口から他方の前記乗降口までの右側の前記隙間が予め定めた右基準値より狭いか否かを判断し、一方の前記乗降口から他方の前記乗降口までの右側の前記隙間の一部でも前記右基準値より狭いときは異常があると判断する、
請求項1に記載の乗客コンベアシステム。
【請求項3】
前記移動体制御部、前記主制御部、又は前記乗客コンベアの外部にある携帯端末は、
左側の前記隙間が前記左基準値より狭い位置を、左側の前記隙間の画像の撮影時間と前記踏段の移動速度とから求め、
右側の前記隙間が前記右基準値より狭い位置を、右側の前記隙間の画像の撮影時間と前記踏段の移動速度とから求める、
請求項2に記載の乗客コンベアシステム。
【請求項4】
前記移動体本体は、
左側の前記スカートガードと前記踏段の上面の左側部との左側の前記隙間を照明する左ライトと、
右側の前記スカートガードと前記踏段の上面の右側部との右側の前記隙間を照明する右ライトと、
を有する請求項1に記載の乗客コンベアシステム。
【請求項5】
前記左ライトと前記右ライトは、連続して点灯するか、又は、点滅してストロボ光を発光する、
請求項4に記載の乗客コンベアシステム。
【請求項6】
前記移動体本体は、
前記移動体本体から左側に突出した左腕部と、
前記移動体本体から右側に突出した右腕部と、
を有し、
前記左腕部に前記左カメラが設けられ、
前記右腕部に前記右カメラが設けられている、
請求項1に記載の乗客コンベアシステム。
【請求項7】
前記左腕部は左右方向に伸縮自在であり、
前記右腕部は左右方向に伸縮自在である、
請求項6に記載の乗客コンベアシステム。
【請求項8】
乗客コンベアにおける一方の乗降口から他方の乗降口まで前後方向に設けられた左右一対の欄干の下部に前後方向に沿って設けられた左右一対のスカートガードの間を移動する踏段に乗って移動する移動体本体と、
前記移動体本体に設けられ、かつ、前記乗客コンベアにおける一方の乗降口から他方の乗降口まで前記移動体本体が移動する間に、左側の前記スカートガードと前記踏段の上面の左側部との隙間を撮影する左カメラと、
前記移動体本体に設けられ、かつ、一方の前記乗降口から他方の前記乗降口まで前記移動体本体が移動する間に、右側の前記スカートガードと前記踏段の上面の右側部との隙間を撮影する右カメラと、
前記左カメラが撮影した左側の前記隙間の画像を時系列で記憶し、前記右カメラが撮影した右側の前記隙間の画像を時系列で記憶する移動体制御部と、
を有することを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明の実施形態は、乗客コンベアシステムと移動体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エスカレータや動く歩道などの乗客コンベアにおいては、左右一対の欄干の下部それぞれには、衣服が踏段に巻き込まれるのを防止するスカートガードが設けられ、この左右一対のスカートガードの間を踏段が走行する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-210994号公報
【文献】国際公開2018/109822
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような乗客コンベアにおいて、スカートガードを構成するパネルと踏段との間には適切な隙間が存在するように設定されているが、スカートガードの変形などで、前記パネルと踏段との間に十分な隙間が確保されなかったり、前記パネルと踏段と接触したりする場合がある。このため、エスカレータの点検時において、保守員がスカートガードと踏段との隙間の間隔に異常がないかを目視で点検しているが、目視による点検では手間と時間がかかるという問題点があった。
【0005】
そこで本発明の実施形態は、上記問題点に鑑み、乗客コンベアにおけるスカートガードと踏段との隙間を移動体によって自動的に点検することができる乗客コンベアシステムと移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、乗客コンベアと移動体を含む乗客コンベアシステムにおいて、前記乗客コンベアは、一方の乗降口から他方の乗降口まで前後方向に設けられた左右一対の欄干と、左右一対の前記欄干の下部に前後方向に沿って設けられた左右一対のスカートガードと、左右一対の前記スカートガードの間を一方の前記乗降口から他方の前記乗降口まで前後方向に移動する踏段と、前記踏段を移動させる主制御部と、を有し、前記移動体は、前記踏段に乗って移動する移動体本体と、前記移動体本体に設けられ、かつ、一方の前記乗降口から他方の前記乗降口まで前記移動体本体が移動する間に、左側の前記スカートガードと前記踏段の上面の左側部との隙間を撮影する左カメラと、前記移動体本体に設けられ、かつ、一方の前記乗降口から他方の前記乗降口まで前記移動体本体が移動する間に、右側の前記スカートガードと前記踏段の上面の右側部との隙間を撮影する右カメラと、前記左カメラが撮影した左側の前記隙間の画像を時系列で記憶し、前記右カメラが撮影した右側の前記隙間の画像を時系列で記憶する移動体制御部と、を有することを特徴とする乗客コンベアシステムである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態のエスカレータの説明図である。
図2】踏段に移動体が乗っている状態を、下階側から見た縦断面図である。
図3】左カメラが撮影した左隙間画像と右隙間画像である。
図4】エスカレータと移動体のブロック図である。
図5】移動体が左隙間と右隙間を点検するときのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態の乗客コンベアシステムであるエスカレータ10と移動体100について図1図5を参照して説明する。
【0009】
(1)エスカレータ10
エスカレータ10の全体の構造について図1図2を参照して説明する。図1は、エスカレータ10を左側面から見た説明図である。但し、エスカレータ10の内部構造をわかりやすくするために、エスカレータ10の右側の部材の図示を省略している。なお、エスカレータ10の前後方向を説明するときは、下階から上階を見上げ、上階が前側、下階が後側であるものとする。
【0010】
図1に示すように、エスカレータ10の枠組みであるトラス12が、建屋1の上階と下階に跨がって、支持アングル2,3を用いて前後方向に支持されている。
【0011】
トラス12の上端部にある上階側の機械室14内部には、踏段30を走行させる駆動装置18、左右一対の踏段スプロケット24,24、不図示の左右一対のベルトスプロケットが設けられている。この駆動装置18は、モータ20と、減速機21と、この減速機21の出力軸に取り付けられた駆動小スプロケット19と、モータ20の回転を停止させ、かつ、停止状態を保持するディスク式の電磁ブレーキ23とを有している。左右一対の踏段スプロケット24,24には、同軸に駆動大スプロケット17が取り付けられ、駆動小スプロケット19との間に無端状の駆動チェーン22が架け渡されている。また、上階側の機械室14内部には、モータ20や電磁ブレーキ23などを制御する主制御部である制御装置50が設けられている。
【0012】
トラス12の下端部にある下階側の機械室16内部には、左右一対の従動スプロケット26,26が設けられている。上階側の左右一対の踏段スプロケット24,24と下階側の左右一対の従動スプロケット26,26との間には、左右一対の無端状の踏段チェーン28,28が架け渡されている。左右一対の踏段チェーン28,28の間には、複数の踏段30の左右一対の第1輪301,301が一定間隔毎に連結されている。モータ20が回転すると踏段30の第1輪301は、トラス12に固定された不図示の第1輪専用の案内レールを走行する。一方、踏段30の第2輪302は、トラス12に固定された第2輪専用の案内レール25を走行する。
【0013】
トラス12の上部の左右両側には、左右一対の欄干36,36が立設されている。この欄干36の上部には手摺りレール39が設けられ、この手摺りレール39に沿って無端状の手摺りベルト38が移動する。
【0014】
左右一対の欄干36の上階側の正面下部には上階側の正面スカートガード40が設けられ、下階側の正面下部には下階側の正面スカートガード42が設けられている。正面スカートガード40,42から手摺りベルト38の出入口であるインレット部46,48がそれぞれ突出している。
【0015】
図1に示すように、左右一対の欄干36の内側(踏段30側)の側面下部には、スカートガード44がそれぞれ設けられ、左右一対のスカートガード44,44の間を踏段30が走行する。スカートガード44は、下階側の正面スカートガード42から上階側の正面スカートガード40まで前後方向に沿って設けられている。図2に示すように、スカートガード44は、欄干36の内側の側面(踏段30側)の下部に一端部が取り付けられた斜めパネル68と、斜めパネル68の他端部から下方に鉛直に設けられた縦パネル70とよりなる。斜めパネル68は、欄干36の内側側面から下方に向かって傾斜している。縦パネル70の上端部は斜めパネル68の他端部に取り付けられ、縦パネル70の下部は図2においては不図示のトラス12に固定されている。そして、左右一対のスカートガード44の縦パネル70,70の間を踏段30が走行する。図2に示すように、左側の縦パネル70と踏段30の上面(クリート面)の左側部の間には、左側の隙間(以下、「左隙間」という)72が設けられ、右側の縦パネル70と踏段30の上面(クリート面)の右側部との間には、右側の隙間(以下、「右隙間」という)74が設けられている。左隙間72は予め設定された左基準値SL(例えば1mm)に設定され、右隙間74は予め設定された右基準値SR(例えば1mm)に設定されている。このように左隙間72と右隙間74を設けることにより、踏段30が走行するときに左右一対の縦パネル70,70と接触せずスムーズに走行できる。
【0016】
図1に示すように、手摺りベルト38は、不図示のベルトスプロケットが踏段スプロケット24と共に回転することにより踏段30と同期して移動する。
【0017】
上階側の左右一対の欄干36,36の間の乗降口である、機械室14の天井面には、上階側の乗降板32が水平に設けられている。下階側の左右一対の欄干36,36の間の乗降口である、機械室16の天井面には、下階側の乗降板34が水平に設けられている。上階側の乗降板32の先端には櫛歯状のコム60が設けられ、このコム60に踏段30が進入したり、引き出されたりする。また、下階側の乗降板34の先端にも櫛歯状のコム62が設けられている。
【0018】
(2)移動体100
次に、エスカレータ10の左右一対のスカートガード44と踏段30の左隙間72と右隙間74の点検を行うための移動体100について、図2を参照して説明する。この移動体100は、自立走行可能なロボットであり、その目的は無人でエスカレータ10の点検を行うことである。
【0019】
移動体100は、ほぼ立方体の移動体本体102を有し、この移動体本体102の大きさは、一段の踏段30に乗ることができる大きさに設計されている。その移動体本体102の内部には、コンピュータなどよりなる移動体制御部であるロボット制御部104が設けられている。移動体本体102の下部には、4個の車輪106が設けられ、この4個の車輪106は移動モータ108で回転する。ロボット制御部104は、移動モータ108の回転、停止、回転方向を制御することにより、移動体100を前進、後進、又は右若しくは左に回転させることができる。
【0020】
図2に示すように、移動体100の移動体本体102の上面から垂直に支持柱118が立設され、この支持柱118の上端から左に向かって左腕部120が水平に突出し、右から右腕部122が水平に突出している。移動体100を後方から見た場合に、左腕部120と右腕部122と支持柱118は、ほぼT字状をなしている。左腕部120の先端付近には、左側のカメラ(以下、「左カメラ」という)110が取り付けられている。また、右腕部122の先端付近にも、右側のカメラ(以下、「右カメラ」という)112が取り付けられている。左カメラ110と右カメラ112は下方を撮影でき、それぞれの画像はロボット制御部104に送られる。
【0021】
左腕部120における左カメラ110の位置は、左側のスカートガード44の縦パネル70と、踏段30の上面の左側部との間の左隙間72の真上に位置している。移動体本体102の左側面下部には、点検中連続して点灯する左ライト124が設けられ、左隙間72と、その周囲にあるスカートガード44と踏段30の上面とを斜め上方から照明し、左隙間72を周囲より強調する。そして、左カメラ110は、左ライト124で照明され、周囲より強調された左隙間72を真上から時系列に撮影することができる。以下、この撮影した画像を「左隙間画像」という(図3(a)参照)。
【0022】
右腕部122における右カメラ112の位置は、右側のスカートガード44の縦パネル70と、踏段30の上面の右側部との間の右隙間74の真上に位置している。移動体本体102の右側面下部には、点検中連続して点灯する右ライト126が設けられ、右隙間74と、その周囲にあるスカートガード44と踏段30の上面とを斜め上方から照明し、右隙間74を周囲より強調する。右カメラ112は、右ライト126で照明され、周囲より強調された右隙間74を真上から時系列に撮影することができる。以下、この撮影した画像を「右隙間画像」という(図3(b)参照)。
【0023】
移動体本体102の内部には、記憶部114が設けられ、左カメラ110が左隙間72を撮影した時系列の左隙間画像と、右カメラ112が右隙間74を撮影した時系列の右隙間画像を記憶することができる。この記憶部114に記憶された左隙間画像と右隙間画像は、ロボット制御部104がロボット通信部116を介して制御装置50に送信される。
【0024】
(3)エスカレータ10と移動体100の電気的構成
次に、エスカレータ10と移動体100の電気的構成について、図4のブロック図を参照して説明する。
【0025】
上階側の機械室14内部にある制御装置50には、移動体100の移動体通信部であるロボット通信部116や外部にある保守センタの監視装置200と連絡を取るための通信部64と、モータ20と電磁ブレーキ23を制御するための駆動回路66が接続されている。
【0026】
移動体100のロボット制御部104には、移動モータ108、左カメラ110、右カメラ112、記憶部114、通信部64と通信するロボット通信部116、左ライト124、右ライト126が接続されている。
【0027】
(4)移動体100による左隙間72と右隙間74の点検方法
次に、移動体100を用いて、左右一対のスカートガード44と踏段30との左隙間72と右隙間74を点検する方法について説明する。
【0028】
まず、ロボット制御部104が、移動モータ108を用いて、移動体100を下階側の乗降板34から最下段の踏段30の幅方向の中央部分に移動させる。このとき、左腕部120の左カメラ110が、左隙間72を撮影できるように位置させ、右腕部122の右カメラ112が、右隙間74を撮影できるように位置させる。また、左ライト124と右ライト126を点灯させる。この移動体100が移動した位置を以下では「起点」と呼ぶ。
【0029】
踏段30が上階側へ移動すると、移動体100もそれに伴って移動し(図1図2参照)、左カメラ110によって左隙間72を時系列的に撮影し、右カメラ112によって右隙間74も時系列的に撮影し、撮影した左隙間画像(図3(a)参照)と右隙間画像(図3(b)参照)を記憶部114に記憶していく。
【0030】
踏段30に乗った移動体100が最も上まで上昇して、踏段30から上階側の乗降板32に移動体100が到着すると、左カメラ110と右カメラ112の撮影を終了し、左隙間72と右隙間74の点検を終了する。この位置を以下では「終点」と呼ぶ。
【0031】
ロボット制御部104は、起点から終点までの時系列の左隙間画像(動画像)と、時系列の右隙間画像(動画像)を記憶部114からロボット通信部116を介して制御装置50の通信部64に送信する。
【0032】
制御装置50では、左隙間画像を解析し、左隙間72が、左基準値SLよりも狭くなっているときには、異常があることを示すフラグを立てる。また、その異常がある位置を起点からの距離JLとして記憶する。距離JLの求め方は次の通りである。まず、異常があるときの左隙間画像の撮影時間tを抽出する。但し、撮影時間tは、起点を撮影した時間をt=0としている。この撮影時間tと踏段30の速度vを乗算して、起点からの距離JLが求まる。これにより、起点から距離JLだけ離れた位置において、左隙間72が狭くなっていることとなる。なお、左隙間72が、予め定めた左基準値SLよりも狭くなっている位置が複数あるときは、それぞれの位置における距離JLを記憶する。
【0033】
また、制御装置50は、右隙間画像も同様に解析を行い、右隙間74が、予め定めた右基準値SRよりも狭くなっているときには、異常があることを示すフラグを立て、その異常がある位置を起点からの距離JRとして記憶する。
【0034】
制御装置50は、左隙間72又は右隙間74に異常がある場合には、監視装置200にその旨と距離JL又は距離JRを報知する。
【0035】
上記で説明した左隙間72と右隙間74の点検方法を図5のフローチャートに基づいてさらに説明する。
【0036】
ステップS1において、エスカレータ10が運転を開始し、踏段30が通常運転の場合はステップS2に進む。ここで、踏段30は、上昇しているものとする。
【0037】
ステップS2において、制御装置50は、不図示の乗客検出センサによってエスカレータ10の乗客が基準人数より少ないか多いか判断する。乗客が基準人数より少ない場合にはステップS3に進み(yの場合)、多い場合にはステップS2を続ける(nの場合)。このようにすることによって、乗客が多数存在しているときには、移動体100の存在が乗客の障害にならないようにする。
【0038】
ステップS3において、乗客が少ないと判断しているので、制御装置50は、ロボット制御部104を制御して、移動体100を、下階側の乗降板34から踏段30に乗せる。そしてステップS4に進む。
【0039】
ステップS4において、制御装置50は移動体100が最も下の踏段30に乗ったことを確認すると、起点に到着したとして左隙間72と右隙間74の撮影を開始する。そしてステップS5に進む。
【0040】
ステップS5において、移動体100が踏段30に乗って下階から上階に移動している間、ロボット制御部104は、左カメラ110と右カメラ112とで左隙間画像と右隙間画像を時系列に撮影する。そしてステップS6に進む。
【0041】
ステップS6において、移動体100が最も上にある踏段30から上階側の乗降板32に降りるとステップS7に進む。
【0042】
ステップS7において、移動体100が上階側の乗降板32に降りると終点に到着したとして、左カメラ110と右カメラ112の撮影を終了し、ステップS8に進む。
【0043】
ステップS8において、ロボット制御部104は、ロボット通信部116を介して制御装置50の通信部64に時系列の左隙間画像と右隙間画像をそれぞれ送信する。そしてステップS9に進む。
【0044】
ステップS9において、制御装置50は、時系列の左隙間画像と右隙間画像から、異常があるかないかを判断し、ステップS10に進む。
【0045】
ステップS10において、左隙間72又は右隙間74に異常がある場合にはステップS11に進み、異常がなければ左隙間72と右隙間74とは正常であるとして点検を終了する。
【0046】
ステップS11において、左隙間72又は右隙間74に異常である旨とその位置(距離JL又は距離JR)を、保守センターの監視装置200に送信する。そして点検を終了する。
【0047】
(5)効果
本実施形態によれば、作業員が目視によって左隙間72と右隙間74に異常があるかないかを点検する必要がなく、移動体100を踏段30に乗せて下階から上階に移動させるだけで点検できる。
【0048】
左隙間72又は右隙間74に異常がある場合には、その異常がある位置も確認することができる。
【0049】
左隙間72又は右隙間74に異常があるときは、監視装置200に送信するため、遠隔に居る保守員においても異常を確認することができる。
【0050】
左隙間72と右隙間74は左ライト124と右ライト126でそれぞれ照明されているため、暗部である隙間を浮き出させて、左カメラ110と右カメラ112で明確に撮影することができる。
【0051】
(6)変更例
次に、上記実施形態の変更例について説明する。
【0052】
上記実施形態では、移動体100を下階から上階に踏段30を移動させて左隙間72と右隙間74を点検したが、これに代えて上階から下階に下降させて点検してもよい。
【0053】
また、上記実施形態では制御装置50で、左隙間72又は右隙間74が異常であるか否かを解析したが、この解析をロボット制御部104で行ってもよい。また、エスカレータ10の保守員が所有するスマートフォンやタブレット端末などの携帯端末に時系列の左隙間画像と右隙間画像を送信し、その携帯端末で解析してもよく、さらに、携帯端末の画像表示装置で時系列の左隙間画像と右隙間画像を表示し、保守員が目視でさらに細かくチェックしてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、左ライト124と右ライト126は点検中連続して点灯して左隙間72と右隙間74を照明したが、これに代えて、左ライト124と右ライト126を点滅させてストロボ光を発光し、撮影時に暗部の浮き出す効果をより際立たせてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、スカートガード44は、斜めパネル68と縦パネル70から構成されていたが、欄干36の下部に縦パネル70のみが直接取り付けられた構造であってもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、踏段30の上面は、黄色のデマケーションラインがない場合で説明したが、これに代えて踏段の上面の左側部と右側部に黄色のデマケーションラインが形成されている場合は、左隙間72と右隙間74とがより明確に撮影できる。
【0057】
また、上記実施形態では、左腕部120と右腕部122の長さは一定であったが、左腕部120と右腕部122の左右方向の長さをそれぞれ伸縮できるようにしてもよい。これによって、踏段30の左右方向の長さが左腕部120と右腕部122の左右方向の長さと異なるエスカレータ10であっても、左腕部120と右腕部122を伸縮させることにより、左カメラ110と右カメラ112を常に左隙間72と右隙間74の上に位置させることができる。
【0058】
また、上記実施形態では、左腕部120と右腕部122が支持柱118から左右方向に突出した構造であったが、移動体本体102の左側面と右側面からそれぞれ左腕部120と右腕部122が突出した構造であってもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、エスカレータ10に適用して説明したが、これに代えて動く歩道に適用してもよい。なお、動く歩道では、踏段を「ステップ」という。
【0060】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
10・・・エスカレータ、30・・・踏段、36・・・欄干、44・・・スカートガード、50・・・制御装置、70・・・縦パネル、100・・・移動体、102・・・移動体本体、104・・・ロボット制御部、110・・・左カメラ、112・・・右カメラ、116・・・ロボット通信部、124・・・左ライト、126・・・右ライト
【要約】
【課題】乗客コンベアにおけるスカートガードと踏段との隙間を移動体によって自動的に点検することができる乗客コンベアシステムと移動体を提供する。
【解決手段】移動体100は、踏段30に乗って移動する移動体本体102と、移動体本体102に設けられ、かつ、一方の乗降口から他方の乗降口まで移動体本体102が移動する間に、左側のスカートガード44と踏段30の上面の左側部との隙間72を撮影する左カメラ110と、移動体本体102に設けられ、かつ、一方の乗降口から他方の乗降口まで移動体本体102が移動する間に、右側のスカートガード44と踏段30の上面の右側部との隙間74を撮影する右カメラ112と、左カメラ110が撮影した左側の隙間72の画像を時系列で記憶し、右カメラ112が撮影した右側の隙間74の画像を時系列で記憶するロボット制御部104とを有する。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5