(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】低電圧電池セルの異物位置検出装置およびそれを用いた分析方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20240820BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H02J7/00 Q
(21)【出願番号】P 2023541793
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(86)【国際出願番号】 KR2022019876
(87)【国際公開番号】W WO2023121069
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2023-07-10
(31)【優先権主張番号】10-2021-0184656
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ミン・チョン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ヒ・キム
(72)【発明者】
【氏名】サン・ス・アン
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-132855(JP,A)
【文献】特開2009-048971(JP,A)
【文献】特開2018-195535(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0075294(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0006920(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
漏洩電流の測定のために、評価対象電池セルの正極上に配置される第1測定電極および負極上に配置される第2測定電極と、
漏洩電流を測定する電流測定器と、
測定された漏洩電流データを処理するデータ処理部と、を含み、
前記第1測定電極および前記第2測定電極は、それぞれ、座標情報が付与された複数の単位電極が集合された構造であり、
前記電流測定器は、同じ座標情報を有し電気的に連結された前記第1測定電極の単位電極と前記第2測定電極の単位電極とを通って流れる漏洩電流を測定し、
前記データ処理部は、前記漏洩電流データから、漏洩電流が大きい単位電極の座標情報に基づいて異物の位置を確認する、低電圧電池セルの異物位置検出装置。
【請求項2】
第1治具および第2治具をさらに含み、
前記第1治具および前記第2治具は、前記第1治具と前記第2治具の間に、前記第1測定電極、前記第2測定電極および前記評価対象電池セルの積層体が介在した状態で、前記積層体を両面から加圧するように構成された、請求項1に記載の低電圧電池セルの異物位置検出装置。
【請求項3】
前記評価対象電池セルは、低電圧不良が確認されたモノセルであって、正極/分離膜/負極という構造のモノセルである、請求項1に記載の低電圧電池セルの異物位置検出装置。
【請求項4】
前記単位電極は、横方向および縦方向に行列をなして整列されており、前記行列に応じた座標情報を有する、請求項1に記載の低電圧電池セルの異物位置検出装置。
【請求項5】
前記単位電極は、体積および形状がいずれも同一であり、直六面体状または正六面体状である、請求項1に記載の低電圧電池セルの異物位置検出装置。
【請求項6】
同じ座標情報を有する前記第1測定電極の単位電極と前記第2測定電極の単位電極は1つの電流回路を構成し、
前記電流測定器は、前記座標情報の個数に対応する複数電流回路の各漏洩電流を同時に測定するように構成された、請求項1に記載の低電圧電池セルの異物位置検出装置。
【請求項7】
前記座標情報の個数に対応する複数の電流回路が構成するプリント回路基板をさらに含む、請求項6に記載の低電圧電池セルの異物位置検出装置。
【請求項8】
前記プリント回路基板はフレキシブルプリント回路基板である、請求項7に記載の低電圧電池セルの異物位置検出装置。
【請求項9】
漏洩電流を増幅する増幅器をさらに含む、請求項1に記載の低電圧電池セルの異物位置検出装置。
【請求項10】
前記第1測定電極の単位電極と前記第2測定電極の単位電極とを含む電流回路に外部電力を印加する電源をさらに含む、請求項1に記載の低電圧電池セルの異物位置検出装置。
【請求項11】
複数のモノセルを含む電池セルにおいて、低電圧を引き起こした低電圧モノセルを選別する低電圧モノセル選別段階、および
請求項1から10のいずれか一項に記載の低電圧電池セルの異物位置検出装置を用いて、選別された前記低電圧モノセルの漏洩電流を測定し、異物の位置を特定する段階を含む、低電圧電池セルの異物位置検出方法。
【請求項12】
前記低電圧モノセル選別段階は、
低電圧電池セルの負極部位を開放し、負極タブの溶接部を切断し、各負極間に絶縁フィルムを挿入する絶縁フィルム挿入段階、
各負極の初期開回路電圧(OCV1)を測定する初期電圧測定段階、
前記低電圧電池セルを加圧する加圧段階、および
時間の経過による各負極の開回路電圧をモニタリングし、低電圧モノセルを選別する選別段階を含む、請求項11に記載の低電圧電池セルの異物位置検出方法。
【請求項13】
複数のモノセルを含む電池セルにおいて、低電圧を引き起こした低電圧モノセルを選別する低電圧モノセル選別段階、
請求項1から10のいずれか一項に記載の低電圧電池セルの異物位置検出装置を用いて、選別された低電圧モノセルの漏洩電流を測定し、異物の位置を特定する段階、および
前記特定された異物位置の周辺をサンプリングして異物の種類を分析する段階を含む、低電圧不良電池セルの異物分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2021年12月22日に出願した韓国特許出願第10-2021-0184656号に基づく優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は、低電圧電池セルにおいて、異物質の位置を正確に確認可能な分析装置およびそれを用いて低電圧電池セルの異物質を分析する方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
化石燃料の枯渇によるエネルギー源の価格が上昇し、環境汚染に対する関心が増幅されることから、環境にやさしい代替エネルギー源に対する要求が未来生活のための必要不可欠な要因となっている。特に、モバイル機器に対する技術開発と需要が増加することにより、エネルギー源としての二次電池に対する需要が急激に増加している。
【0004】
代表的に電池の形状面では、薄い厚さで携帯電話などのような製品に適用され得る角型二次電池とパウチ型二次電池に対する需要が高く、材料面では高いエネルギー密度、放電電圧、出力安定性のリチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池などのようなリチウム二次電池に対する需要が高い。
【0005】
二次電池は、正極、負極および上記正極と負極との間に介在した分離膜の構造の電極組立体がどのような構造からなっているかによって分類される。代表的には、長いシート状の正極と負極を分離膜が介在した状態で巻取した構造のジェリーロール(巻取型)電極組立体、所定のサイズの単位で切り取った多数の正極と負極を分離膜が介在した状態で順次的に積層したスタック型(積層型)電極組立体、所定の単位の正極と負極を分離膜が介在した状態で積層したバイセル(Bi-cell)またはフルセル(Full cell)などの単位セルを巻取した構造のスタック-フォールディング型電極組立体などが挙げられる。
【0006】
また、二次電池は、電極組立体が電池容器に収容された状態で液体電解質である電解液を注入し、電池容器をシーリングすることにより製造される。
【0007】
製造が完了した二次電池は、組み立て工程、製造工程、または使用中に多様な原因によって多様な不良が発生し得る。このうち、製造が完了した電池が自己放電率以上の電圧降下挙動を示す現象を低電圧という。
【0008】
このような低電圧不良現象は代表的に電池の内部に位置する異物に起因する場合が多く、代表的に正極内に金属異物が存在することになると、金属異物は負極でデンドライト(dendrite)に成長することになり、このようなデンドライトは二次電池の内部短絡(ショート)を引き起こす。結果的に、二次電池の内部短絡は、二次電池の故障、損傷、発火などの原因となる。
【0009】
このような低電圧不良を引き起こす異物質の種類を把握するためには、低電圧不良電池セルにおいて、異物質をサンプリングしてFE-SEM-EDSでイメージおよび元素分析を行うことになる。従来は低電圧を引き起こす異物質をサンプリングするために、低電圧電池セルにおいてモノセル単位で開回路電圧(OCV)をモニタリングし、電圧降下量が自家放電量を超えるモノセルを選別し、当該モノセルとそれに隣接するモノセルに対して肉眼で異物を確認し、サンプリングした。しかしながら、このような従来の方法は、肉眼で異物を探さなければならないため、多くの時間がかかり、それに伴い長時間を行うことによる分析疲労度が累積され、実際の漏洩電流を誘発する異物発見の確率が低いという問題があった。
【0010】
また、異物質をサンプリングする他の方法として、ハイポット(HI-POT)検査がある。ハイポット検査は、液体窒素下で電解液を冷凍させた後に、高電圧を印加し、潜在された短絡の位置に電流を集中させることでバーニング(Burning)を誘発し、電池セルを分解してバーント(burnt)されたモノセルの位置を確認した後に、それをサンプリングする方法であり、高電圧印加による爆発力により、サンプリングされた試片の情報損失の懸念が大きいという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためのものであって、目視検査による異物質の位置探索時に、長時間所要による分析疲労度の問題と異物の発見確率が高い低電圧電池セルの異物位置検出装置および検出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る低電圧電池セルの異物位置検出装置は、漏洩電流の測定のために、評価対象電池セルの正極上に配置される第1測定電極および負極上に配置される第2測定電極と、漏洩電流を測定する電流測定器と、測定された漏洩電流データを処理するデータ処理部と、を含み、上記第1測定電極および第2測定電極は、それぞれ、座標情報が付与された複数の単位電極が集合された構造であり、上記電流測定器は、同じ座標情報を有し電気的に連結された第1測定電極の単位電極と第2測定電極の単位電極とを通って流れる漏洩電流を測定し、上記データ処理部は、漏洩電流データから、漏洩電流が大きい単位電極の座標情報に基づいて異物の位置を確認する。
【0013】
本発明の一実施形態に係る低電圧電池セルの異物位置検出装置は、第1治具および第2治具をさらに含み、上記第1治具および第2治具は、第1治具と第2治具の間に、上記第1測定電極、第2測定電極および評価対象電池セルの積層体が介在した状態で、上記積層体を両面から加圧する。
【0014】
本発明の一実施形態において、上記電池セルは、低電圧不良が確認されたモノセルであって、正極/分離膜/負極という構造のモノセルである。
【0015】
本発明の一実施形態において、上記単位電極は、横方向および縦方向に行列をなして整列されており、行列に応じた座標情報を有する。
【0016】
本発明の一実施形態において、上記単位電極は、体積および形状がいずれも同一であり、直六面体状または正六面体状である。
【0017】
本発明の一実施形態において、同じ座標情報を有する第1測定電極の単位電極と第2測定電極の単位電極は1つの電流回路を構成し、上記電流測定器は、上記座標情報の個数に対応する電流回路の各漏洩電流を同時に測定する。
【0018】
本発明の一実施形態において、上記座標情報の個数に対応する複数の電流回路が構成するプリント回路基板(PCB)をさらに含む。
【0019】
本発明の一実施形態において、上記プリント回路基板はフレキシブルプリント回路基板(FPCB)である。
【0020】
本発明の一実施形態に係る低電圧電池セルの異物位置検出装置は、漏洩電流を増幅する増幅器をさらに含む。
【0021】
本発明の一実施形態に係る低電圧電池セルの異物位置検出装置は、上記第1測定電極の単位電極と第2測定電極の単位電極とを含む電流回路に外部電力を印加する電源をさらに含む。
【0022】
本発明の一実施形態に係る低電圧電池セルの異物位置検出方法は、複数のモノセルを含む電池セルにおいて、低電圧を引き起こした低電圧モノセルを選別する低電圧モノセル選別段階、および上記異物位置検出装置を用いて、選別された低電圧モノセルの漏洩電流を測定し、異物の位置を特定する段階を含む。
【0023】
本発明の一実施形態において、上記低電圧モノセル選別段階は、低電圧電池セルの負極部位を開放し、負極タブの溶接部を切断し、各負極間に絶縁フィルムを挿入する絶縁フィルム挿入段階、各負極の初期開回路電圧(OCV1)を測定する初期電圧測定段階、低電圧電池セルを加圧する加圧段階、および時間の経過に伴って各負極の開回路電圧をモニタリングし、低電圧モノセルを選別する選別段階を含む。
【0024】
本発明の一実施形態に係る低電圧不良電池セルの異物分析方法は、複数のモノセルを含む電池セルにおいて、低電圧を引き起こした低電圧モノセルを選別する低電圧モノセル選別段階、請求項1に記載の検出装置を用いて、選別された低電圧モノセルの漏洩電流を測定し、異物の位置を特定する段階、および上記特定された異物位置の周辺をサンプリングして異物の種類を分析する段階を含む。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る低電圧電池セルの異物位置検出装置および検出方法は、座標情報を有する複数の単位電極を通る漏洩電流を測定し、漏洩電流が大きい単位電極の座標情報から異物の位置を迅速かつ正確に見つけることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る低電圧電池セルの異物位置検出装置の側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る低電圧電池セルの異物位置検出装置の上部図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る低電圧電池セルの異物位置検出方法のフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態に係る低電圧モノセル選別段階のフローチャートである。
【
図5】本発明の分析装置によって測定された漏洩電流を出力した図面である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る低電圧不良電池セルの異物分析方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、多様な変換を加えることができ、様々な実施形態を有し得るので、特定の実施形態を例示し、詳細な説明に詳細に説明する。しかしながら、これは本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変換、均等物または代替物を含むものとして理解されるべきである。
【0028】
本発明において使用した用語は、単に特定の実施形態を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味がない限り、複数の表現を含む。本発明において、「含む」や「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものとして理解されるべきである。
【0029】
以下、本発明に係る低電圧電池セルの異物位置検出装置について詳細に説明する。
【0030】
図1は本発明の一実施形態に係る低電圧電池セルの異物位置検出装置の側面図であり、
図2は本発明の一実施形態に係る低電圧電池セルの異物位置検出装置の上部図である。これらの図面を参照すると、本発明に係る低電圧電池セルの異物位置検出装置100は、漏洩電流の測定のために、評価対象電池セル10の正極11上に配置される第1測定電極110および負極12上に配置される第2測定電極120と、漏洩電流を測定する電流測定器150と、測定された漏洩電流データを処理するデータ処理部160と、を含む。
【0031】
第1測定電極110と第2測定電極120との間には電池セル10が介在し、第1測定電極110は上記電池セル10の正極11に、第2測定電極120は電池セル10の負極12にそれぞれ対面する。
【0032】
上記電池セルはモノセル(monocell)であり得、このようなモノセルは正極/分離膜/負極が積層された構造を有する。本発明の異物位置検出装置は、低電圧不良電池セルにおいて異物の位置を探すためのものであるので、上記モノセルは、低電圧不良が確認されたモノセルである。
【0033】
第1測定電極110と第2測定電極120とは電気的に連結されており、これら第1測定電極110と第2測定電極120の間に介在した低電圧電池セルと直接接触することにより、低電圧電池セルに漏洩電流が誘発される場合に、第1測定電極と第2測定電極に漏洩電流が流れることになる。そして、上記電流測定器150は、第1測定電極と第2測定電極とを通って流れる漏洩電流を測定する。
【0034】
低電圧電池セルにおいて漏洩電流を誘発する異物質の位置を検出するために、上記第1測定電極110と第2測定電極120は、それぞれ座標情報が付与された複数の単位電極111、121が集合された構造を有する。第1単位電極を構成する複数の単位電極111は、横方向(X軸方向)および縦方向(Y軸方向)に沿って行列をなして整列されており、行列に応じた座標情報を有する。これにより、座標情報は、第1測定電極と第2測定電極における異物の位置情報を徴表するのである。
【0035】
図2を参照すると、第1測定電極110は、縦方向(Y軸方向)および横方向(X軸方向)に沿って、複数の単位電極111が行列をなして配列されており、第2測定電極120も同様に、縦方向(Y軸方向)および横方向(X軸方向)に沿って、複数の単位電極121が行列をなして配列されている。
【0036】
例えば、第1測定電極を構成する単位電極111は、縦方向に沿ってa、b、c、dの行をなし、横方向に沿って1、2、3…10列をなし、a行1列に位置した単位電極にはa1の座標情報を、d行10列に位置した単位電極にはd10の座標情報が付与され得る。第2測定電極を構成する単位電極121に座標情報が付与される方式は上記と同じである。
【0037】
そして、同じ座標情報を有する第1測定電極の単位電極と、第2測定電極の単位電極とは電気的に連結され、1つの電流回路を構成することになり、電流測定器は、同じ座標情報を有する第1測定電極の単位電極と第2測定電極の単位電極とを通って流れる漏洩電流を測定する。
【0038】
具体的に、第1測定電極のa1の単位電極と第2測定電極のa1の単位電極とがペアをなして電気的に連結され、第1測定電極のb1の単位電極と第2測定電極のb2の単位電極とがペアをなして電気的に連結されており、
図2にはすべて図示しないが、残りの座標情報が付与された単位電極もこのような方式で対をなして電気的に連結されている。これにより、座標情報の個数に対応する複数の電流回路が構成され、電流測定器は、これらの複数の電流回路にそれぞれ流れる漏洩電流を同時に測定し、座標情報に応じた漏洩電流の測定が可能となる。
【0039】
このような座標情報に従って異物の位置を探さなければならないので、座標情報が付与された複数の単位電極は、体積および形状がいずれも同一であることが好ましい。単位電極の体積および形状が互いに同一でないと、これらの要素によって漏洩電流が影響を受けるので、漏洩電流の単純比較による異物位置の検出が難しくなり得るからである。
【0040】
上記データ処理部160は、上記電流測定器が測定した漏洩電流データから、漏洩電流が大きい単位電極の座標情報に基づいて異物の位置を確認する。異物が存在する位置の単位電極が構成する電流回路で測定される漏洩電流は、他の単位電極が構成する電流回路で測定される漏洩電流と比較して大きく現れる。
【0041】
図5は、本発明の分析装置によって測定された漏洩電流を出力した図面である。データ処理部160は、電流測定器150が測定した複数の漏洩電流値を、座標情報に応じて処理して
図5のように出力することができる。それにより、漏洩電流が大きい座標情報を確認し、当該座標情報の位置に異物があると判断することができる。
【0042】
これにより、本発明の低電圧電池セルの異物位置検出装置は、検査の対象となる低電圧電池セルにおいて、座標情報が付与された単位電極を介して、漏洩電流を誘発する位置を正確に検出し得るので、従来の目視検査による異物位置検査方法に比べて、疑わしい異物を探したり、疑わしい位置に対する様々なサンプリングを行ったりするときに、業務負荷を画期的に改善しながらも、時間および分析正確度が画期的に向上される効果がある。
【0043】
一つの具体例において、本発明の低電圧電池セルの異物位置検出装置は、第1治具130および第2治具140をさらに含み得る。上記第1治具130および第2治具140は、これら第1治具130と第2治具140の間に、上記第1測定電極110、第2測定電極120および評価対象電池セル10の積層体が介在した状態で、上記積層体を両面から加圧するように構成され得る。
【0044】
上記第1測定電極110、第2測定電極120および評価対象電池セル10の積層体を両面加圧することは、漏洩電流を最大限に誘発させるためである。上記積層体を加圧することになると、加圧により異物がある位置で正極と負極が通電され、評価対象電池セルは、電圧を維持するために電流を必要とするため、漏洩電流が発生するのである。そして、このように発生した漏洩電流は、正極および負極に接触している第1測定電極および第2測定電極を通って流れることになり、電流測定器によって漏洩電流の測定が可能である。
【0045】
上記第1治具130および第2治具140の構造は、上記第1測定電極110、第2測定電極120および評価対象電池セル10の積層体を加圧し得る構造であれば、その構造や形態に制限がない。
【0046】
一つの具体例において、上記第1治具130および第2治具140は長方形のプレート形状であり得、加圧面のサイズは上記第1測定電極110、第2測定電極120および評価対象電池セル10の積層体の対面面積と対応するサイズであり得る。
【0047】
一つの具体例において、本発明に係る低電圧電池セルの異物位置検出装置は、漏洩電流を増幅する増幅器をさらに含み得る。これは、漏洩電流値が低い場合に漏洩電流値の弁別力を高めるためである。
【0048】
また、他の具体例に係る低電圧電池セルの異物位置検出装置は、上記第1測定電極の単位電極と第2測定電極の単位電極とを含む電流回路に外部電力を印加する電源を含み得る。これもまた、漏洩電流値が低いときに漏洩電流値の弁別力を高めるために追加するものである。
【0049】
一つの具体例において、本発明に係る低電圧電池セルの異物位置検出装置は、上記座標情報の個数に対応する電流回路が集合されたプリント回路基板(PCB;Printed Circuit Board)を含み得る。これにより、第1測定電極の単位電極と第2測定電極の単位電極との電気的連結のための電線が不要であり、これらの回路が安定化され、均一性と信頼性が高まる。そして、上記プリント回路基板は、フレキシブルプリント回路基板(FPCB;Flexibe Printed Circuit Board)であり得る。フレキシブルプリント回路基板は、三次元配線が可能であり、小型化と軽量化が可能であるという利点がある。
【0050】
以下、本発明に係る低電圧電池セルの異物位置検出方法について詳細に説明する。
【0051】
図3は本発明の一実施形態に係る低電圧電池セルの異物位置検出方法のフローチャートである。
図3を参照すると、本発明に係る低電圧電池セルの異物位置検出方法は、複数のモノセルを含む電池セルにおいて、低電圧を引き起こした低電圧モノセルを選別する低電圧モノセル選別段階(S10)、および上記異物位置検出装置を用いて、選別された低電圧モノセルの漏洩電流を測定し、異物の位置を特定する段階(S20)を含む。
【0052】
スタック型またはスタック/フォールディング型電池セルは、正極/分離膜/負極という構造を有するモノセルが複数積層された構造を有するところ、上記低電圧モノセル選別段階(S10)は、低電圧電池セルにおいて異物が位置したモノセルを選別する段階である。
【0053】
図4は本発明の一実施形態に係るモノセル選別段階のフローチャートである。
図4を参照すると、本発明に係るモノセル選別段階(S10)は、低電圧電池セルの負極部位を開放し、負極タブの溶接部を切断し、各負極間に絶縁フィルムを挿入する絶縁フィルム挿入段階(S11)、各負極の初期開回路電圧(OCV1)を測定する初期電圧測定段階(S12)、低電圧電池セルを加圧する加圧段階(S13)、および時間の経過に伴って各負極の開回路電圧をモニタリングし、低電圧モノセルを選別する選別段階(S14)を含む。
【0054】
上記絶縁フィルム挿入段階(S11)は、複数のモノセルにおいて、個別のモノセル単位で開回路電圧(OCV)を測定するために、モノセルとモノセルとの間を絶縁する絶縁フィルムを挿入することである。
【0055】
初期電圧測定段階(S12)は、電圧降下量を比較するために測定することである。低電圧電池セルは、電圧降下量が自家放電量を超える電池セルであって、時間の経過に伴って電圧降下量が大きい電池セルを低電圧モノセルとして選別するが、電圧降下量の比較のために、初期電圧を測定して記録し、その後時間の経過に伴って電圧との差(電圧降下量)を計算して低電圧モノセルを選別する。このとき、すべての負極に対して開回路電圧を測定する。
【0056】
初期開回路電圧を測定した後には、電池セルを加圧する加圧段階(S13)を行う。上記加圧段階は電圧降下を加速化するためのことである。上記加圧手段は、電圧降下を加速化し得るものであれば特に限定されず、具体的な一例として、電池セルの両面を加圧し得る一対の加圧プレートを含む加圧治具であり得る。上記加圧段階で電解液が漏出され得るので、加圧段階を行う前に電池を密閉し得る包装材に入れて密封することが好ましい。このような包装材としては、電解液の漏液を防止し得る素材であれば特に限定されず、具体的にはビニル包装材であり得る。
【0057】
上記選別段階(S14)は、時間の経過に伴う各負極の開回路電圧を測定しながら電圧降下量を計算し、電圧降下量が大きく現れる負極を含むモノセルを低電圧電池セルとして選別する段階である。
【0058】
このように、低電圧電池セルにおいて、低電圧を引き起こした低電圧モノセルを選別した後には、上記モノセルに対して、上述した異物位置検出装置を用いて漏洩電流を測定することにより、漏洩電流を発生させる異物の位置を確認する段階(S20)を行う。
【0059】
上述した異物位置検出装置は、漏洩電流を測定するための第1測定電極および第2測定電極がそれぞれ、座標情報が付与された複数の単位電極が集合された構造であり、同じ座標を有する第1測定電極と第2測定電極とが構成する電流回路に対して漏洩電流を測定し、漏洩電流が大きく現れる座標情報による異物の位置を検出するため、本発明に係る異物位置検出方法は、低電圧を引き起こす異物の位置を迅速かつ正確に検出する効果がある。
【0060】
以下、本発明に係る低電圧電池セルの異物分析方法について説明する。
【0061】
図6は本発明の一実施形態に係る低電圧不良電池セルの異物分析方法のフローチャートである。
図6を参照すると、本発明に係る低電圧電池セルの異物分析方法は、複数のモノセルを含む電池セルにおいて、低電圧を引き起こしたモノセルを選別する低電圧モノセル選別段階(S31)、請求項1に記載の検出装置を用いて、選別された低電圧モノセルの漏洩電流を測定し、異物の位置を特定する段階(S32)、および上記特定された異物位置の周辺をサンプリングして異物の種類を分析する段階(S33)を含む。
【0062】
上記モノセル選別段階(S31)および異物の位置を特定する段階(S32)の具体的な内容は先に上述したので、これ以上の説明は省略する。
【0063】
上記異物の種類を分析する段階(S33)は、特定された異物位置の周辺をサンプリングし、サンプリングした試片で異物の種類を分析する段階であり、具体的にはFE-SEM-EDS分析方法を用いることができる。ここでサンプリングとは、特定された異物が含まれるように試片を製作することを意味する。
【0064】
FE-SEM-EDS分析方法は、高解像度および高倍率、低損傷表面分析のために活用する装備を用いて、微細構造分析、morphology、断面分析、粒度分析などが可能であり、EDS装備で未知試料の定性、定量分析が可能である。本発明の分析方法は、サンプリングされた試片に低電圧を引き起こした異物質が含まれる確率が非常に高いので、分析正確度が向上される効果がある。
【0065】
以上では、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明したが、当該技術分野の熟練した当業者または当該技術分野に通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された本発明の思想および技術領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正および変更させることができることを理解し得るであろう。
【0066】
したがって、本発明の技術的範囲は、明細書の発明の概要に記載された内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって定められるべきである。
【符号の説明】
【0067】
10:電池セル(モノセル)
100:低電圧電池セルの異物位置検出装置
110:第1測定電極
120:第2測定電極
130:第1治具
140:第2治具
150:電流測定器
160:データ処理部
170:プリント回路基板
111、121:単位電極
a1~a10、b1~b10、c1~c10、d1~d10:座標情報