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特許7540863OFDMベースの通信システムのための適応型ビームフォーミングアンテナを提供する方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】OFDMベースの通信システムのための適応型ビームフォーミングアンテナを提供する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/08 20060101AFI20240820BHJP
   H04L 27/26 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
H04B7/08 802
H04L27/26 112
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020083507
(22)【出願日】2020-05-11
(65)【公開番号】P2020188462
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-05-02
(31)【優先権主張番号】62/846,661
(32)【優先日】2019-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/703,764
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520078248
【氏名又は名称】マーベル アジア ピーティーイー、リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン スー チェオン
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-311800(JP,A)
【文献】国際公開第2018/128944(WO,A2)
【文献】特開2018-207538(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0176057(US,A1)
【文献】国際公開第2017/204511(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/070478(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/02 - 7/12
H04L 1/02 - 1/06
H04L 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信された直交周波数分割多重(OFDM)シンボルから、巡回プレフィックス値の行列(A)およびテール値の行列(B)を形成する段階と、
前記行列(A)および前記行列(B)から加算行列(S)および差分行列(D)を形成する段階と、
ビームフォーマプリセット行列(W)に、前記加算行列(S)および前記差分行列(D)を乗算して、行列(P)および行列(Q)を生成する段階と、
前記行列(P)および前記行列(Q)からアップリンク伝送の受信に最適なビームを特定するためにビーム識別子を判定する段階と
を備える、方法。
【請求項2】
選択されたビームパターンを形成すべく重み付けされる複数のアンテナ(N)において前記OFDMシンボルを受信する段階をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
OFDMシンボルのサブフレームにおいて前記OFDMシンボルを受信する段階をさらに備える、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記加算行列(S)を形成する前記段階の動作は、S=A+Bに従って前記加算行列を形成する段階を含む、請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記差分行列(D)を形成する前記段階の動作は、D=A-Bに従って前記差分行列を形成する段階を含む、請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ビームフォーマプリセット行列(W)を乗算する前記段階の動作は、
P=WSに従って前記行列(P)を生成する段階と、
Q=WDに従って前記行列(Q)を生成する段階と
を含む、請求項1から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ビーム識別子を判定する前記段階の動作は、
【数2】
に従って、M個の利用可能なプリセットの中からビームフォーマプリセット(m)を判定する段階を含み、L CP は前記巡回プレフィックス値の長さであり、w は前記ビームフォーマプリセット行列(W)のm番目の列ベクトルであり、s およびd はそれぞれ前記加算行列(S)および前記差分行列(D)のl番目の列ベクトルであり、p m,l は前記行列(P)のm番目の行およびl番目の列の要素であり、q m,l は前記行列(Q)のm番目の行およびl番目の列の要素である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ビーム識別子を判定する段階は、受信されたサブフレームのシンボルに基づいて実行される、請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
受信された直交周波数分割多重(OFDM)シンボルから巡回プレフィックス値の行列(A)を形成する第1行列形成回路と、
前記受信された直交周波数分割多重(OFDM)シンボルからテール値の行列(B)を形成する第2行列形成回路と、
前記行列(A)および前記行列(B)から加算行列(S)を形成する加算回路と、
前記行列(A)および前記行列(B)から差分行列(D)を形成する差分回路と、
ビームフォーマプリセット行列(W)に前記加算行列(S)および前記差分行列(D)を乗算して行列(P)および行列(Q)を生成する乗算回路と、
前記行列(P)および前記行列(Q)からアップリンク伝送の受信に最適なビームを特定するためにビーム識別子を判定する判定回路と
を備える、装置。
【請求項10】
選択されたビームパターンを形成すべく重み付けされる複数のアンテナ(N)において前記OFDMシンボルを受信するシンボル受信回路をさらに備える、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
シンボル受信回路は、OFDMシンボルのサブフレームにおいて前記OFDMシンボルを受信する、請求項9または10に記載の装置。
【請求項12】
前記加算回路は、S=A+Bに従って前記加算行列(S)を形成する、請求項9から11の何れか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記差分回路は、D=A-Bに従って前記差分行列(D)を形成する、請求項9に記載の装置。
【請求項14】
前記乗算回路は、
P=WSに従って前記行列(P)を生成し、
Q=WDに従って前記行列(Q)を生成するために動作する、
請求項9から13の何れか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記判定回路は、
【数3】
に従って、M個の利用可能なプリセットの中からビームフォーマプリセット(m)を判定し、L CP は前記巡回プレフィックス値の長さであり、w は前記ビームフォーマプリセット行列(W)のm番目の列ベクトルであり、s およびd はそれぞれ前記加算行列(S)および前記差分行列(D)のl番目の列ベクトルであり、p m,l は前記行列(P)のm番目の行およびl番目の列の要素であり、q m,l は前記行列(Q)のm番目の行およびl番目の列の要素である、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記ビーム識別子は、各受信されたサブフレームのシンボルに基づいて判定される、請求項9に記載の装置。
【請求項17】
受信された直交周波数分割多重(OFDM)シンボルから巡回プレフィックス値の行列(A)およびテール値の行列(B)を形成する手段と、
前記行列(A)および前記行列(B)から加算行列(S)および差分行列(D)を形成する手段と、
ビームフォーマプリセット行列(W)に前記加算行列(S)および前記差分行列(D)を乗算して、行列(P)および行列(Q)を生成する手段と、
前記行列(P)および前記行列(Q)からアップリンク伝送の受信に最適なビームを特定するためにビーム識別子を判定する手段と
を備える、装置。
【請求項18】
前記加算行列(S)を形成する前記手段は、S=A+Bに従って前記加算行列を形成する手段を含み、前記差分行列(D)を形成する前記手段は、D=A-Bに従って前記差分行列を形成する手段を含む、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記ビームフォーマプリセット行列(W)を乗算する前記手段は、
P=WSに従って前記行列(P)を生成する手段と、
Q=WDに従って前記行列(Q)を生成する手段と
を含む、請求項17に記載の装置。
【請求項20】
前記ビーム識別子を判定する前記手段は、
【数4】
に従って、M個の利用可能なプリセットの中からビームフォーマプリセット(m)を判定する手段を含み、L CP は前記巡回プレフィックス値の長さであり、w は前記ビームフォーマプリセット行列(W)のm番目の列ベクトルであり、s およびd はそれぞれ前記加算行列(S)および前記差分行列(D)のl番目の列ベクトルであり、p m,l は前記行列(P)のm番目の行およびl番目の列の要素であり、q m,l は前記行列(Q)のm番目の行およびl番目の列の要素である、請求項19に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2019年5月11日に出願された、「OFDMベースの通信システムに適応型ビームフォーミングアンテナを提供する方法及び装置」と題する米国仮出願第62/846,661号から優先権の利益を主張し、当該出願はその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の複数の例示的な実施形態は、通信ネットワークの設計および動作に関する。より具体的に、本発明の複数の例示的な実施形態は、無線通信ネットワークを介してデータストリームを受信および処理することに関する。
【背景技術】
【0003】
ロングタームエボリューション(LTE)または第5世代(5G)新無線(NR)セルラサービスなどの高速通信ネットワークを介するモバイルおよびリモートデータアクセスの急速な成長傾向も伴い、データストリームを正確に搬送および解読することはますます難易度が上がり、困難になっている。そのようなシステムは、大きなパスロスを有し得るマルチパス伝送を補償する必要がある。
【0004】
5GのNRシステムでは、ビームフォーマは超高周波数範囲において大きなパスロスを補償する最も現実的な方法のうち1つであるので、ビームフォーマの重要性が強調される。一般的に、ダウンリンクビームフォーマのためのビーム選択は、NR基地局(gNB)によって伝送される候補ビームのためのチャネル品質インジケータ(CQI)として受信されるユーザ機器(UE)フィードバックから取得される。リンクの相互関係が維持されるという考えに基づいて、ダウンリンクビーム選択はアップリンクビームに対しても同様に最適なビーム選択とみなされる。しかし、1または複数の干渉信号が存在する場合、リンクの相互関係は、アップリンク伝送を受信するための最適なビーム選択を提供しない可能性がある。
【発明の概要】
【0005】
様々な例示的な実施形態において、適応型ビーム選択のために方法及び装置が提供され、無線通信ネットワークにおいてアップリンク伝送を受信する。一実施形態において、OFDMシンボルの巡回プレフィックスおよびテール部は、伝送中に発生し得る差分のために比較される。差分は、アップリンク伝送の受信に用いられるプリセットビームパターンを識別するために処理される。実施形態は、OFDMシンボルの構造を利用し、ビームフォーマ選択に通常用いられる信号特徴を必要としない。
【0006】
一実施形態において、直交周波数分割多重(OFDM)シンボルから巡回プレフィックス値の行列(A)およびテール値の行列(B)を形成する段階と、行列Aおよび行列Bから加算行列(S)および差分行列(D)を形成する段階とを含む方法が提供される。また、方法は、ビームフォーマプリセット行列(W)に行列Sおよび行列Dを乗算する段階であって、行列(P)および行列(Q)を判定する、乗算する段階と、P行列およびQ行列からビーム識別子を判定する段階とを含む。
【0007】
一実施形態において受信された直交周波数分割多重(OFDM)シンボルから巡回プレフィックス値の行列(A)を形成する第1行列形成回路と、受信された直交周波数分割多重OFDM)シンボルからテール値の行列(B)を形成する第2行列形成回路とを備える装置が提供される。また、装置は、行列Aおよび行列Bから加算行列(S)を形成する加算回路と、行列Aおよび行列Bから差分行列(D)を形成する差分回路を備える。また、装置は、ビームフォーマプリセット行列(W)に行列Sおよび行列Dを乗算して行列(P)および行列(Q)を判定する乗算回路と、P行列およびQ行列からビーム識別子を判定する判定回路とを備える。
【0008】
本発明の(1または複数の)例示的な実施形態の追加的な特徴および利益は、以下に記載される詳細な説明、図面および請求項から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の例示的側面は、以下に与えられる詳細な説明から、および本発明の様々な実施形態の添付の図面からより完全に理解される。しかし、以下に挙げられる詳細な説明および本発明の様々な実施形態の添付の図面は、本発明を具体的な実施形態に限定するように解釈されるべきではなく、説明および理解のみを目的とする。
【0010】
図1】アップリンク通信を受信するためのビームパターンを選択するのに用いられる適応型ビーム選択器の例示的な実施形態を含むトランシーバを有する通信ネットワークを示す。
【0011】
図2図1に示される適応型ビーム選択器の例示的かつ詳細な実施形態を示す。
【0012】
図3図2に示される適応型ビーム選択器における使用のためのシンボルプロセッサの例示的かつ詳細な実施形態を示す。
【0013】
図4図2に示される適応型ビーム選択器における使用のためのシンボルプロセッサの例示的かつ詳細な実施形態を示す。
【0014】
図5】通信システムにおいてアップリンク伝送を受信するための適応型ビーム選択を実行するための例示的な方法を示す。
【0015】
図6】通信システムにおいてアップリンク伝送を受信するための適応型ビーム選択を実施する例示的な装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の詳細な説明の目的は、本発明の1または複数の実施形態の理解を提供することである。当業者であれば、以下の詳細な説明が単なる例示的なものに過ぎず、いかなる方法の限定も意図されていないことを認識するであろう。他の実施形態を、本開示および/または説明の利益を有するそのような当業者に示唆することは容易である。
【0017】
明確さのために、本明細書に説明される実装の一連の特徴の全てが図示および説明されているわけではない。もちろん、そのような実際の実装の進展において、応用およびビジネスに関する制約を順守するなど開発者の具体的な目的を実現すべく、多数の実装固有の決定がなされてよいことと、これらの具体的な目的は、実装および開発者によって変動することとが理解されるであろう。さらに、そのような開発の努力は複雑であり時間のかかることであり得るが、しかし本開示の(1または複数の)実施形態の利益を有する当業者にとってはエンジニアリングの日常的な作業であることが理解されるであろう。
【0018】
図面に示される本発明の様々な実施形態は、縮尺通りに描かれない可能性がある。むしろ、様々な特徴の寸法は、明確さのために拡大または縮小される可能性がある。加えて、一部の図面は明確さのために簡素化される可能性がある。従って、図面は、所与の装置(例えば、デバイス)または方法のコンポーネントの全てを示してはいない可能性がある。同じまたは類似の部分を参照すべく、図面および以下の詳細な説明を通じて同じ参照インジケータが用いられる。
【0019】
本明細書において、用語「システム」または「デバイス」は一般的に、任意の数のコンポーネント、要素、サブシステム、デバイス、パケット、スイッチ要素、パケットスイッチ、アクセススイッチ、ルータ、ネットワーク、モデム、基地局、eNB(eNodeB)、コンピュータおよび/もしくは通信のデバイスもしくはメカニズム、またはこれらのコンポーネントの組み合わせを説明するのに用いられる。用語「コンピュータ」は、命令を実行できるプロセッサ、メモリおよびバスを含む。コンピュータは、1つまたは一群のコンピュータ、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、メインフレーム、またはこれらのコンピュータの組み合わせを指す。
【0020】
直交周波数分割多重(OFDM)は、マルチパスの軽減および帯域幅の効率のために、デジタル無線ブロードキャストおよび屋内の無線データネットワークにおいて利用されている。無線環境において、性能の向上のために時空間的多様性が採用され得る。OFDMシステムに時空間的多様性を提供するブラインドアプローチを適用することによって、より高い帯域幅の効率を実現することもできる。無線アプリケーションは、速いチャネル適応およびトラッキング能力を有するチャネルイコライザを必要とするので、受信された信号統計の情報なく信号の構造を利用することがより有利である。様々な実施形態において、OFDMシステムにおいて巡回プレフィックスを用いるブラインド時空間的均等化アルゴリズムが提供される。受信された信号の統計を用いる代わりに、OFDMシンボルの信号/構造、すなわち巡回プレフィックスが利用される。最小二乗法を用いて、1つのOFDMシンボルフレームにおける受信された信号サンプルに時空間的イコライザが適用される。本発明の実施形態は、無線通信ネットワークにおける適応型ビーム選択のための方法および/または装置を開示する。
【0021】
図1は、アップリンク通信を受信するためのビームパターンを選択するのに用いられる適応型ビーム選択器(ABS)106の例示的な実施形態を含むMIMOトランシーバ102を有する通信ネットワーク100を示す。MIMOトランシーバ102は、複数のアンテナ104に結合される。ダウンリンク伝送中に、MIMOトランシーバ102は、1または複数の伝送ビームパターン108を用いて情報を伝送するようにアンテナ104を制御する。例えば、ダウンリンクビームパターン112は、ユーザ機器110にダウンリンク情報を伝送するように形成され得る。ユーザ機器110は、受信されたダウンリンク伝送の品質を示すチャネル品質情報で応答する。トランシーバは、チャネル品質情報を用いて、ダウンリンク伝送に用いられる適切なビームパターンを調整または選択する。
【0022】
しかし、アップリンク伝送の場合、ビームパターン112は最適な選択肢ではない可能性がある。例えば、ビームパターン112を利用することは、干渉伝送ソース114から干渉信号を受信する結果をもたらし得る。ソース114からの干渉信号を拒絶している間にユーザ機器110からアップリンク伝送を受信すべく、MIMOトランシーバ102は、干渉ソース114からの伝送を拒絶または弱化させつつユーザ機器110からアップリンク伝送を受信し得る異なるビームパターン(ビームパターン116など)を利用または選択する。従って、ネットワーク100は、アップリンク動作およびダウンリンク動作の両方において複数のビームパターンで動作する。最適なアップリンクビームパターンは最適なダウンリンクビームパターンと異なり得るので、アップリンク伝送に用いるための最適なビームパターンを選択する方法が必要である。
【0023】
例示的な実施形態において、MIMOトランシーバ102は、アップリンク伝送を受信する最適なビームを選択するABS106を含む。ABS106は、受信されたアップリンクシンボルの解析に基づいて、アップリンク伝送を受信するのに用いられる最適なビームパターンを判定または選択する。ABS106のより詳細な説明は以下に提供される。
【0024】
図2は、図1に示されているように、適応型ビーム選択器106を有するトランシーバ102の例示的かつ詳細な実施形態を示す。トランシーバ102は、ビームフォーマ202、サブフレーム受信器204、および適応型ビーム選択器106を有する。一実施形態において、ABS106は、シンボルプロセッサ206およびビームパターン選択器208を有する。ビームフォーマ202は、ビームプリセット重み信号214に従って、アンテナ104からの受信された信号に重みを適用し、アップリンク伝送を受信するのに用いられるプリセットビームパターンを形成する。一実施形態において、ビームパターン選択器208は、プリセットビーム218を記憶し、ビームプリセット重み信号214を出力する。
【0025】
動作中に、アップリンク伝送は、ビームフォーマ202によって受信および処理され、その結果の信号はサブフレーム受信器204に入力される。一実施形態において、ビームパターン選択器208は、ビームフォーマ202に、プリセットビームパターン218から選択されるプリセットビームパターンを実装させるビームプリセット重み信号214を出力する。ビームパターン選択器208は、受信されたシステム選択信号216に基づいて、プリセットビームを選択するように動作する。例えば、最初のビームパターンはシステム選択信号216を用いて選択され得る。サブフレーム受信器204は、サブフレームのシンボルを識別し、トランシーバ102における他のエンティティにサブフレームシンボル210を出力する。サブフレームシンボル210は、ABS106にも入力される。シンボルプロセッサ206は、サブフレームシンボル210を受信し、ビーム選択アルゴリズムに応じてこれらのシンボルを処理し、ビームパターン選択器208に入力されるプリセットビーム識別子212を判定する。ビームパターン選択器208は、プリセットビーム識別子212を用いてビームプリセット重み信号214を生成し、ビームフォーマ202にプリセットビームパターン218のうち1つを実装させる。従って、アップリンクビームパターンの選択は、受信されたシンボルに基づく。当該処理は、各サブフレームのシンボルに対して繰り返され、その結果適応型ビーム選択が実現される。
【0026】
図3は、図2に示される適応型ビーム選択器106における使用のためのシンボルプロセッサ206の例示的かつ詳細な実施形態を示す。一実施形態において、シンボルプロセッサ206は、バス310を介して全て結合され通信する、シンボル分析器302、メモリ304、シンボル受信器306および出力インターフェース308を備える。
【0027】
動作中に、シンボル受信器306は、ユーザ機器からのアップリンク伝送で受信されているシンボル210を受信する。例えば、ビームフォーマ202およびサブフレーム受信器204は、受信されたアップリンク伝送を処理して、受信されたシンボル210を生成する。当該シンボルは、シンボルを分析する場合にメモリ304を用いるシンボル分析器302に渡される。一実施形態において、メモリ304は、シンボル分析器によって用いられ、アップリンク伝送を受信するのに用いられるビームパターンを識別する、ビーム選択アルゴリズム318を記憶する。また、メモリ304は、ビームフォーマプリセット行列Wを記憶する。シンボル分析器302が選択されるべきプリセットビームを判定した後、出力インターフェース308は、プリセットビーム識別子212をビームパターン選択器208に出力する。ビーム選択アルゴリズム318のより詳細な説明は、以下に提供される。
【0028】
図3は、受信されたシンボル構造316も示す。シンボル構造は、テール部314を含む巡回プレフィックス部312および変調されたシンボル部322を有する。巡回プレフィックス部312は、x(k)からx(k)の値を含む。変調されたシンボル部322はxi+1からxH+i(k)の値を含み、テール部314はxH+1(k)からxH+i(k)の値を含む。
【0029】
テール部314および巡回プレフィックス部312は、伝送の前に同一である。伝送中の歪みおよび/または干渉は、巡回プレフィックス312とテール部314との間の差分をもたらし得る。様々な例示的な実施形態において、これらの差分は、適切なビーム選択を判定するのに用いられる。
【0030】
[ビーム選択アルゴリズム]
様々な実施形態において、ビーム選択アルゴリズムは、OFDM信号構造を利用し、UEおよび基地局の両方において実装され得る、5GのNRおよびLTEのための干渉拒絶ビーム選択のために提供される。
【0031】
OFDM通信ネットワークにおいて、CPは、テールの繰り返しまたはシンボルの端部を含むシンボル構造をプレフィックスすることを指す。受信器は概して、巡回プレフィックスサンプルを破棄する。巡回プレフィックスは、2つの機能、すなわち、(1)ガードインターバルを提供し、前のシンボルから信号干渉を解消する機能、および(2)CPは、シンボルの端部を繰り返す機能を果たす。その結果、周波数選択的マルチパスチャネルの線形畳み込みが、離散フーリエ変換(DFT)などの周波数領域を用いてモデル化され得る。当該アプローチは、チャネルの推定および均等化などの簡単な周波数領域処理を提供する。
【0032】
一実施形態において、シンボル分析器302はビーム選択アルゴリズム318を実行し、以下の動作を実施し、ここで、受信器はN個の要素のアンテナアレイと、M個の候補ビームフォーマプリセットと、を有し、受信器に伝送される必要な信号は、CPが追加されたOFDM(A)信号である。
【0033】
1.N個の複数のアンテナを用いてOFDM(A)シンボルを受信する。
以下のOFDM(A)シンボルの構造的事実およびその伝送は、ビーム選択アルゴリズムによって利用される。
A.巡回プレフィックスおよびその元の部分(例えば、OFDM(A)シンボルのテール)は、伝送の前に同一である。
B.シンボルは、より高い周波数帯域において非常に小さい時間分散性を受ける。
C.チャネル応答は、シンボル時間内に準静的である。
【0034】
2.CP行列(N×LCP)およびテール行列(N×LTL)の加算行列(S)を計算し、ここで、LCP=LTL(巡回プレフィックスの長さ)である。加算行列Sは、以下の特性を有する。
A.通常の受信された信号より3dB良いSNR。
B.当該SNRは、ビームファインディングの基準シンボルとして用いられ得る。
【0035】
3.CP行列およびテール行列の差分行列(D)を計算する。行列Dは、必要な信号と関連付けられないノイズおよび不要な信号部分を含む。
【0036】
4.ビームフォーマプリセット行列(W)(例えば、320)にS行列およびD行列の両方を乗算して、P行列およびQ行列を形成する。ビームフォーマプリセット行列Wは(N×M)で示得て、Mはプリセットビームの数である。従って、プリセットビーム(m)毎に、特定のプリセットビームパターンを形成するために受信アンテナに適用される重み(N)のセットがある。
A.P=WS(M×LCP)は必要な信号の受信を表す。
B.Q=WD(M×LCP)は不要な信号の受信を表す。
【0037】
5.以下に従って、M個の利用可能なプリセットの中から最適なビームフォーマプリセット(m)を判定する。
【数1】
ここで、sおよびdはそれぞれ、行列Sおよび行列Dのl番目の列のベクトルである(例えば、sm,lおよびdm,lは、行列Sおよび行列Dのm番目の行およびl番目の列の要素である)。
【0038】
様々な例示的な実施形態において、適応型ビーム選択方法及び装置は、以下の利点を提供する。
1)干渉信号の特徴を知ることなく、干渉拒絶ビームを判定する(ベースバンドモデムの外側の前端部において実装され得る)
2)候補ビームは、ベースバンド受信器においてさらに検証および精密化され得る。
3)既存のビームフォーミング技術と一緒に適用可能である。
4)リンクの相互関係が保証されていない場合にも適用可能である(例えば、FDDにおいて実装され得る)
5)基地局とユーザ機器との両方、およびビームフォーマを有する他のOFDMベースの通信システムに適用可能である。
【0039】
従って、様々な例示的な実施形態において、適応型ビーム選択アルゴリズムは、OFDM/SC‐FDMA信号構造(巡回プレフィックス)を利用してアップリンクビーム選択を判定し、OFDMAの場合、当該アルゴリズムは周波数選択的干渉拒絶ビームフォーミングをサポートする。
【0040】
図4は、図2に示される適応型ビーム選択器106における使用のためのシンボルプロセッサ400の例示的かつ詳細な実施形態を示す。一実施形態において、シンボルプロセッサ400は、シンボル受信回路402、行列A形成回路404、行列B形成回路406、加算回路408、差分回路410、乗算回路412、メモリ414および判定回路416を備える。一実施形態において、シンボルプロセッサ400の回路の各々は、プログラマブルアレイ、ディスクリート回路、メモリ、レジスタ、ロジック、制御回路、および/または他の適切なコンポーネントを含むコンポーネントから選択される、選択されたコンポーネントを含む。
【0041】
動作中に、シンボル受信回路402は、ユーザ機器からのアップリンク伝送で受信されているシンボル210を受信する。例えば、ビームフォーマ202およびサブフレーム受信器204は、受信されたアップリンク伝送を処理して、受信されたシンボル210を生成する。シンボルは、上記のように行列Aを形成する行列A形成回路404に入力される。また、シンボルは、上記のように行列Bを形成する行列B形成回路404に入力される。行列Aおよび行列Bは、加算回路408および差分回路410に入力され、それぞれ加算行列Sおよび差分行列Dを形成する。乗算回路412は、S行列およびD行列を受信し、メモリ414から取得されるビームフォーマプリセット行列W418によってS行列およびD行列を乗算する。上記のように、乗算回路412はP行列およびQ行列を生成する。判定回路416は、P行列およびQ行列を受信し、プリセットビーム識別子212として出力される、使用すべき光ビームパターンを判定する。従って、シンボルプロセッサ400は、受信されたシンボルを処理し、アップリンク通信の受信における使用のための最適なビームパターンを判定する。
【0042】
図5は、適応型ビーム選択器を操作してアップリンク伝送の受信に最適なビームを選択する例示的な方法500を示す。例えば、方法500は、図1および図2に示される適応型ビーム選択器106とともに使用するのに適切である。
【0043】
ブロック502において、OFDMシンボルの受信されたサブフレームは、適応型ビーム選択器に入力される。例えば、シンボル210のサブフレームは、適応型ビーム選択器106に入力され、シンボル受信器306によって受信される。シンボル受信器306は、シンボル分析器302にシンボルを渡す。
【0044】
ブロック505において、シンボル巡回プレフィックス値の行列(A)が、シンボルの受信されたサブフレームから形成される。例えば、シンボル分析器302は、ビーム選択アルゴリズム318を実行して、行列Aを形成する。
【0045】
ブロック506において、シンボルテール値の行列(B)が、シンボルの受信されたサブフレームから形成される。当該2つの行列は同一であるべきであるが、伝送中の歪みまたは干渉が原因で、当該2つの行列は、現在は異なる値を有する可能性がある。例えば、シンボル分析器302は、ビーム選択アルゴリズム318を実行して、行列Bを形成する。
【0046】
ブロック508において、加算(S)行列および差分(D)行列は、A行列およびB行列から計算される。例えば、S行列およびD行列は、上記にようにA行列およびB行列から形成される。例えば、シンボル分析器302は、ビーム選択アルゴリズム318を実行して、S行列およびD行列を形成する。
【0047】
上記のように、ブロック510において、ビームフォーマプリセット行列Wは、加算S行列および差分D行列によって乗算され、必要な信号を表す第1行列Pおよび不要な信号を表す第2行列Qを形成する。例えば、シンボル分析器302は、ビーム選択アルゴリズム318を実行して、P行列およびQ行列を形成する。
【0048】
ブロック512において、使用されるべき最適なプリセットビームは、P行列およびQ行列から判定される。例えば、上記のように、シンボル分析器302は、ビーム選択アルゴリズム318を実行して、選択すべき最適なプリセットビームを判定する。
【0049】
従って、方法500は、アップリンク伝送の受信に最適なビームを選択すべく動作する。方法500は例示的であり、限定的でなく、方法500の動作は、実施形態の範囲内で並べ替えられ、追加され、削除され、またはその他の方法で修正され得ることを留意されたい。
【0050】
図6は、アップリンク伝送の受信に最適なビームを選択する適応型ビーム選択器600の例示的な実施形態を示す。例えば、ABS600は、上記のように、ABS106としての使用に適切である。
【0051】
一実施形態において、ABS600は、直交周波数分割多重(OFDM)シンボルから巡回プレフィックス値の行列(A)およびテール値の行列(B)を形成する手段602を含み、当該手段は一実施形態において、シンボル分析器302または行列A形成回路404および行列B形成回路406を含む。また、ABS600は、行列Aおよび行列Bから加算行列(S)および差分行列(D)を形成する手段604を含み、当該手段は一実施形態において、シンボル分析器302または加算回路408および差分回路410を含む。また、ABS600は、ビームフォーマプリセット行列(W)に行列Sおよび行列Dを乗算して必要な信号行列(P)および不要な信号行列(Q)を判定する手段606を含み、当該手段は一実施形態において、シンボル分析器302または乗算回路412を含む。また、ABS600は、必要な行列Pおよび不要な行列Qに基づいて、選択されたビーム識別子を判定するための手段608を含む。
【0052】
本発明の具体的な実施形態が示され説明されているが、当業者には、本明細書の教示に基づいて、本発明のこの(1または複数の)例示的な実施形態およびそのより幅広い側面から逸脱することなく、変更および修正がなされ得ることが明らかであろう。従って、添付の特許請求の範囲は、本発明のこの(1または複数の)例示的な実施形態の本来の趣旨および範囲内にあるものとして、全てのそのような変更および修正をそれらの範囲内に包含することが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6