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特許7540886駆動ユニット、及び、電動パワーステアリング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】駆動ユニット、及び、電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20240820BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20240820BHJP
   H02K 7/20 20060101ALI20240820BHJP
   F16D 27/11 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
F16H1/32 A
B62D5/04
H02K7/20
F16D27/11
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019211670
(22)【出願日】2019-11-22
(65)【公開番号】P2021081055
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-10-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100145481
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 昌邦
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】中村 江児
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】中井 悠人
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-43171(JP,A)
【文献】特開2007-125915(JP,A)
【文献】特開2008-30442(JP,A)
【文献】特許第5935906(JP,B2)
【文献】特開2014-43874(JP,A)
【文献】特開2003-170842(JP,A)
【文献】特開2017-109599(JP,A)
【文献】実開平4-5176(JP,U)
【文献】特開2015-227680(JP,A)
【文献】特開2002-349597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
B62D 5/04
H02K 7/20
F16D 27/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主駆動源のエネルギーを受けて回転する第1出力軸を有する主駆動装置と、
前記主駆動源または補助駆動源のエネルギーを受けて回転する第2出力軸を有する補助駆動装置と、
前記第1出力軸が連結される入力軸及び減速された回転を外部に出力する出力回転体を有する減速機と、
前記主駆動装置が故障したときに、前記補助駆動装置の前記第2出力軸を前記入力軸または前記第1出力軸に接続する接続装置と、
を備え、
前記第2出力軸の端面と前記入力軸または前記第1出力軸の端面の一方にはテーパ穴が設けられ、他方には前記テーパ穴の内周面と摩擦接続可能なテーパ面が設けられている駆動ユニット。
【請求項2】
前記減速機の前記入力軸は、前記減速機の減速機本体を軸方向に貫通して配置され、
前記主駆動装置は、前記減速機本体の軸方向の一端側に連結され、
前記補助駆動装置は、前記減速機本体の軸方向の他端側に前記接続装置を介して配置されている請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項3】
前記主駆動装置の前記第1出力軸は、前記主駆動装置の装置本体を軸方向に貫通して配置され、
前記減速機は、前記装置本体の軸方向の一端側に連結され、
前記補助駆動装置は、前記装置本体の軸方向の他端側に前記接続装置を介して配置されている請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項4】
主電源の電力を受けて回転する第1出力軸を有する主モータと、
前記主電源、または、補助電源の電力を受けて回転する第2出力軸を有する補助モータと、
前記第1出力軸が連結される入力軸、及び、減速された回転を外部に出力する出力回転体を有する減速機と、
前記主モータの故障を検出する故障検出センサと、
前記故障検出センサが前記主モータの故障を検出したときに、前記補助モータの前記第2出力軸を、前記入力軸または前記第1出力軸に接続する接続装置と、
を備え
前記第2出力軸の端面と前記入力軸または前記第1出力軸の端面の一方にはテーパ穴が設けられ、他方には前記テーパ穴の内周面と摩擦接続可能なテーパ面が設けられている駆動ユニット。
【請求項5】
前記接続装置は、前記補助電源の電力を受けて、磁力によって前記第2出力軸を、前記入力軸または前記第1出力軸に接続する電磁接続部と、前記電磁接続部の動作を受けて前記第2出力軸を、前記入力軸または前記第1出力軸に対して接続状態に維持する機械接続部と、を有する請求項4に記載の駆動ユニット。
【請求項6】
前記減速機は、
前記入力軸を回転可能に保持するケースブロックと、
前記ケースブロックに回転可能に支持され、内周に周方向等間隔に複数のピン溝を有する環状の前記出力回転体と、
前記出力回転体の前記ピン溝に回転可能に保持された複数の内歯ピンと、
前記ケースブロックに回転可能に支持され、前記入力軸の回転を受けて偏心領域が旋回するクランク軸と、
前記内歯ピンの個数よりも少ない数の外歯を有し、当該外歯で前記内歯ピンと噛み合いつつ、前記クランク軸の前記偏心領域から旋回力を受けて揺動回転する揺動歯車と、
を備えている請求項1~5のいずれか一項に記載の駆動ユニット。
【請求項7】
ステアリング部の操作に応じて車輪を操舵する操舵機構と、
ステアリング部に加わる操作力に応じた助勢力を前記操舵機構に出力する駆動ユニットと、を備え、
前記駆動ユニットは、
主電源の電力を受けて回転する第1出力軸を有する主モータと、
前記主電源、または、補助電源の電力を受けて回転する第2出力軸を有する補助モータと、
前記第1出力軸が連結される入力軸、及び、減速された回転を外部に出力する出力回転体を有する減速機と、
前記主モータの故障を検出する故障検出センサと、
前記故障検出センサが前記主モータの故障を検出したときに、前記補助モータの前記第2出力軸を、前記入力軸または前記第1出力軸に接続する接続装置と、
を備え、
前記第2出力軸の端面と前記入力軸または前記第1出力軸の端面の一方にはテーパ穴が設けられ、他方には前記テーパ穴の内周面と摩擦接続可能なテーパ面が設けられている電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置と減速機を備えた駆動ユニット、及び、電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の操舵装置として、油圧や電動モータの力によって運転者のステアリング操作を助勢するパワーステアリング装置が知られている。パワーステアリング装置は、ステアリング部(ステアリングホイール)の操作に応じて車輪を操舵する操舵機構と、ステアリング部に加わる操舵力に応じた助勢力を操舵機構に出力する駆動ユニットと、を備えている。
【0003】
電動パワーステアリング装置の場合、駆動ユニットは、電動式の駆動装置であるモータと、モータの出力を減速する減速機と、を備えている。減速機の入力軸は、モータの出力軸に連結され、減速機の出力回転体は、ラックアンドピニオン機構やピットマンアーム等を介して車輪操舵用のタイロッドに対して動力伝達可能とされている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-35475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のパワーステアリング装置等で用いられる駆動ユニットは、駆動装置の電力供給系統等に故障が生じると、操舵機構等の駆動対象の駆動を行えなくなる。このため、例えば、駆動ユニットをパワーステアリング装置で用いた場合には、駆動装置の故障が生じると、運転者によるステリング操作が急激に重くなってしまう。
【0006】
本発明は、主となる駆動装置や電源に故障が生じた場合にも、駆動対象に速やかに動力を伝達することができる駆動ユニット、及び、電動パワーステアリング装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の駆動ユニットは、主駆動源のエネルギーを受けて回転する第1出力軸を有する主駆動装置と、前記主駆動源または補助駆動源のエネルギーを受けて回転する第2出力軸を有する補助駆動装置と、前記第1出力軸が連結される入力軸及び減速された回転を外部に出力する出力回転体を有する減速機と、前記主駆動装置が故障したときに、前記補助駆動装置の前記第2出力軸を前記入力軸または前記第1出力軸に接続する接続装置と、を備え、前記第2出力軸の端面と前記入力軸または前記第1出力軸の端面の一方にはテーパ穴が設けられ、他方には前記テーパ穴の内周面と摩擦接続可能なテーパ面が設けられている。
【0008】
上記の構成により、主駆動装置が正常に作動する状況では、補助駆動装置の第2出力軸は減速機の入力軸に対して、遮断状態(動力伝達が不可能な状態)とされている。この状態では、主駆動装置の第1出力軸の回転が減速機の入力軸に入力され、その回転が減速されて出力回転体から外部に出力される。また、主駆動装置や電源に何等かの異常が生じると、接続装置が補助駆動装置の第2出力軸を減速機の入力軸、または、主駆動装置の第1出力軸に接続する。
【0009】
前記減速機の前記入力軸は、前記減速機の減速機本体を軸方向に貫通して配置され、前記主駆動装置は、前記減速機本体の軸方向の一端側に連結され、前記補助駆動装置は、前記減速機本体の軸方向の他端側に前記接続装置を介して配置されるようにしても良い。
【0010】
この場合、主駆動装置に何等かの故障が生じ、その故障が故障検出センサによって検出されると、接続装置が、補助駆動装置の第2出力軸を、軸方向中央の減速機の入力軸に接続する。これにより、補助駆動装置の駆動力は減速機に伝達可能とされる。
本構成を採用した場合、減速機の軸方向の両側に主駆動装置と補助駆動装置が動力伝達可能に配置されるため、駆動ユニット全体をコンパクに構成することが可能になる。また、本構成の場合、補助駆動装置の動力が減速機の入力軸に直接的に伝達されるため、補助駆動装置の動力を減速機に効率良く伝達することができる。
【0011】
前記主駆動装置の前記第1出力軸は、前記主駆動装置の装置本体を軸方向に貫通して配置され、前記減速機は、前記装置本体の軸方向の一端側に連結され、前記補助駆動装置は、前記装置本体の軸方向の他端側に前記接続装置を介して配置されるようにしても良い。
【0012】
この場合、主駆動装置に何等かの故障が生じ、その故障が故障検出センサによって検出されると、接続装置が、補助駆動装置の第2出力軸を、軸方向中央の主駆動装置の第1出力軸に接続する。これにより、補助駆動装置の駆動力は、主駆動装置の第1出力軸を通して減速機の入力軸に伝達されるようになる。
本構成を採用した場合、主駆動装置の軸方向の両側に減速機と補助駆動装置が動力伝達可能に配置されるため、駆動ユニット全体をコンパクに構成することが可能になる。また、本構成の場合、減速機の出力回転体の回転を外部に伝達するための構造を、駆動ユニットの軸方向の端部に配置することができる。このため、出力回転体と外部の動力伝達部品との配置の自由度が高まる。
【0013】
本発明の他の態様の駆動ユニットは、主電源の電力を受けて回転する第1出力軸を有する主モータと、前記主電源、または、補助電源の電力を受けて回転する第2出力軸を有する補助モータと、前記第1出力軸が連結される入力軸、及び、減速された回転を外部に出力する出力回転体を有する減速機と、前記主モータの故障を検出する故障検出センサと、前記故障検出センサが前記主モータの故障を検出したときに、前記補助モータの前記第2出力軸を、前記入力軸または前記第1出力軸に接続する接続装置と、を備え、前記第2出力軸の端面と前記入力軸または前記第1出力軸の端面の一方にはテーパ穴が設けられ、他方には前記テーパ穴の内周面と摩擦接続可能なテーパ面が設けられている。
【0014】
上記の構成により、主モータが正常に作動する状況では、補助モータの第2出力軸は減速機の入力軸に対して、遮断状態(動力伝達が不可能な状態)とされている。この状態では、主モータの第1出力軸の回転が減速機の入力軸に入力され、その回転が減速されて出力回転体から外部に出力される。
また、主モータの電力系統等に故障が生じ、その故障が故障検出センサによって検出されると、接続装置が補助モータの第2出力軸を減速機の入力軸、または、主モータの第1出力軸に接続する。補助モータの第2出力軸が減速機の入力軸に接続された場合には、補助モータの駆動力が減速機の入力軸に直接伝達される。また、補助モータの第2出力軸が主モータの第1出力軸に接続された場合には、補助モータの駆動力が主モータの第1出力軸を介して減速機の入力軸に伝達される。
【0015】
前記接続装置は、前記補助電源の電力を受けて、磁力によって前記第2出力軸を、前記入力軸または前記第1出力軸に接続する電磁接続部と、前記電磁接続部の動作を受けて前記第2出力軸を、前記入力軸または前記第1出力軸に対して接続状態に維持する機械接続部と、を有する構成としても良い。
【0016】
この場合、補助電源の電力を受けて電磁接続部が作動すると、その電磁接続部の動作を契機として、機械接続部が第2出力軸と入力軸を接続状態、または、第2出力軸と第1出力軸を接続状態に維持することになる。この結果、補助電源の電力が消耗した場合にも、補助駆動装置の動力を減速機に伝達することが可能になる。したがって、本構成を採用した場合には、補助電源の小型化も図ることができる。
【0017】
前記減速機は、前記入力軸を回転可能に保持するケースブロックと、前記ケースブロックに回転可能に支持され、内周に周方向等間隔に複数のピン溝を有する環状の前記出力回転体と、前記出力回転体の前記ピン溝に回転可能に保持された複数の内歯ピンと、前記ケースブロックに回転可能に支持され、前記入力軸の回転を受けて偏心領域が旋回するクランク軸と、前記内歯ピンの個数よりも少ない数の外歯を有し、当該外歯で前記内歯ピンと噛み合いつつ、前記クランク軸の前記偏心領域から旋回力を受けて揺動回転する揺動歯車と、を備える構成としても良い。
【0018】
この場合、入力軸に入力された回転を、精度良く減速して、出力回転体に出力することができる。
【0019】
本発明の一態様の電動パワーステアリング装置は、ステアリング部の操作に応じて車輪を操舵する操舵機構と、ステアリング部に加わる操作力に応じた助勢力を前記操舵機構に出力する駆動ユニットと、を備え、前記駆動ユニットは、主電源の電力を受けて回転する第1出力軸を有する主モータと、前記主電源、または、補助電源の電力を受けて回転する第2出力軸を有する補助モータと、前記第1出力軸が連結される入力軸、及び、減速された回転を外部に出力する出力回転体を有する減速機と、前記主モータの故障を検出する故障検出センサと、前記故障検出センサが前記主モータの故障を検出したときに、前記補助モータの前記第2出力軸を、前記入力軸または前記第1出力軸に接続する接続装置と、を備え、前記第2出力軸の端面と前記入力軸または前記第1出力軸の端面の一方にはテーパ穴が設けられ、他方には前記テーパ穴の内周面と摩擦接続可能なテーパ面が設けられている。
【0020】
上記の構成により、主モータが正常に作動する状況では、補助モータの第2出力軸は減速機の入力軸に対して、遮断状態(動力伝達が不可能な状態)とされている。この状態では、主モータの第1出力軸の回転が減速機の入力軸に入力され、その回転が減速されて出力回転体から操舵機構に助勢力として出力される。
また、主モータの電力系統等に故障が生じ、その故障が故障検出センサによって検出されると、接続装置が補助モータの第2出力軸を減速機の入力軸、または、主モータの第1出力軸に接続する。補助モータの第2出力軸が減速機の入力軸に接続された場合には、補助モータの回転が減速機の入力軸に直接伝達される。その回転は、減速機で減速されて、出力回転体から操舵機構に助勢力として出力される。また、補助モータの第2出力軸が主モータの第1出力軸に接続された場合には、補助モータの回転が主モータの第1出力軸を介して減速機の入力軸に伝達される。その回転は、減速機で減速されて、出力回転体から操舵機構に助勢力として出力される。
【発明の効果】
【0021】
上述の駆動ユニットは、主駆動装置の故障が故障検出センサに検出されると、補助駆動装置の動力が減速機の入力軸に伝達可能となるため、主駆動装置に故障が生じた場合にも、補助駆動装置の動力を駆動対象に速やか伝達することができる。
【0022】
上述の電動パワースアリング装置は、主モータの故障が故障検出センサに検出されると、補助モータの動力が減速機の入力軸に伝達可能となるため、主モータに故障が生じた場合にも、減速された補助モータの動力を助勢力として操舵機構に速やかに伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態の電動パワーステアリング装置の概略構成図。
図2】第1実施形態の駆動ユニットの断面図。
図3】第2実施形態の駆動ユニットの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
<電動パワーステアリング装置>
図1は、本実施形態の駆動ユニット10(110)を採用した車両の電動パワーステアリング装置1の概略構成図である。
電動パワーステアリング装置1は、ステアリングホイール2(ステアリング部)と、ステアリングシャフト3と、第1ギヤボックス4及び第2ギヤボックス5と、操舵機構6と、を備えている。ステアリングホイール2は、車両の運転席の前方に配置され、運転者によって回転操作される。ステアリングシャフト3は、ステアリングホイール2に一体に連結され、ステアリングホイール2と一体に回転する。
【0026】
第1ギヤボックス4は、ステアリングシャフト3の下端に連結され、減速されたステアリングシャフト3の回転を出力部4aから外部に出力する。第2ギヤボックス5は、駆動ユニット10(110)が内蔵され、駆動ユニット10(110)の回転を出力部5aから外部に出力する。操舵機構6は、車両の左右の車輪w(前輪)を操舵するタイロッド6aと、タイロッド6aに操作力を伝達する操作アーム6bと、を備えている。
【0027】
操作アーム6bは、ピットマンアーム等によって構成され、一端側が第1,第2ギヤボックス4,5の各出力部4a,5aに連結されるとともに、他端側がタイロッド6aに連結されている。操作アーム6bは、第1,第2ギヤボックス4,5の各出力部4a,5aから出力された操作力を、左右の車輪wを操舵する向きの力としてタイロッド6aに伝達する。
なお、本実施形態では、操作アーム6bやタイロッド6a等によって操舵機構6が構成されているが、操舵機構6はこの構成に限るものでなく、第1,第2ギヤボックス4,5の各出力部4a,5aの操作力を左右の車輪wの操舵部に伝達し得るものであれば他の構成であっても良い。
【0028】
第2ギヤボックス5内の駆動ユニット10(110)は、駆動装置である電動式のモータ(後述する主モータ11、及び、補助モータ12)を備えている。このモータは、図示しない制御装置からの制御信号を受けて、運転者によるステアリングホイール2の操作に応じたトルクを出力部5aを通して操作アーム6bに伝達する。ステアリングシャフト3には、運転者からステアリングホイール2に加わる操作力とその方向を検出するためのセンサが取り付けられている。制御装置は、そのセンサの信号を受けてステアリングホイール2の操作に応じた制御信号をモータに出力する。
【0029】
<第1実施形態の駆動ユニット>
図2は、第1実施形態の駆動ユニット10の断面を示す図である。
駆動ユニット10は、主モータ11(主駆動装置)と、補助モータ12(補助駆動装置)と、減速機13と、故障検出センサ14と、接続装置15と、を備えている。主モータ11は、車両のメインバッテリ7(主電源,主駆動源)の電力を受けて駆動される。主モータ11は、電力を受けて回転する第1出力軸11aを有する。補助モータ12は、メインバッテリ7、または、補助バッテリ8(補助電源)の電力を受けて駆動される。補助モータ12は、電力を受けて回転する第2出力軸12aを有する。
【0030】
減速機13は、主モータ11、若しくは、補助モータ12の出力回転を所定の減速比に減速して外部(第2ギヤボックス5の出力部5a)に出力する。減速機13は、主モータ11の第1出力軸11aが連結される入力軸16と、減速された回転を外部に出力する出力回転体17と、を有する。
【0031】
故障検出センサ14は、例えば、主モータ11の電力供給系統等の故障を検出する。故障検出センサ14の検出信号は、補助モータ12に対する電力の断接を制御する制御装置18に入力される。
【0032】
接続装置15は、通常時(故障検出センサ14によって主モータ11の故障が検出されないとき)には、補助モータ12の第2出力軸12aを、入力軸16に対して軸方向に離間させている。このとき、補助モータ12の第2出力軸12aは、減速機13の入力軸16に対して動力伝達が不可な状態とされている。また、接続装置15は、故障検出センサ14が主モータ11の故障を検出したときに、補助モータ12の第2出力軸12aを、減速機13の入力軸16に対して接続する。
【0033】
主モータ11は、図示しない制御装置によって第1出力軸11aの回転方向と出力とを制御される電動モータである。主モータ11は、ケースブロック11c内に図示しないステータとロータが収容されて成る装置本体11Bと、ケースブロック11c内のロータと一体に回転する第1出力軸11aと、を有する。第1出力軸11aは、装置本体11Bの軸方向の端部から減速機13の軸方向の一端側に向かって突出している。装置本体11Bから突出した第1出力軸11aの端部には、減速機13の入力軸16の一端部に回転不能に結合される嵌合穴19が形成されている。
【0034】
補助モータ12は、主モータ11と同様に、図示しない制御装置によって第2出力軸12aの回転方向と出力とを制御される電動モータである。補助モータ12は、ケースブロック12c内に図示しないステータとロータが収容されて成る装置本体12Bと、ケースブロック12c内のロータと一体に回転する第2出力軸12aと、を有する。第2出力軸12aは、装置本体12Bの軸方向の端部から減速機13の軸方向の他端側に向かって突出している。装置本体12Bから突出した第2出力軸12aの端面には、減速機13側の入力軸16の他端と接続可能なテーパ穴20が形成されている。
【0035】
減速機13は、第2ギヤボックス5内に固定される第1ケースブロック21A、及び、第2ケースブロック21Bと、第1ケースブロック21Aと第2ケースブロック21Bの軸心位置に回転可能に支持された入力軸16と、第1ケースブロック21Aと第2ケースブロック21Bの外周に軸受22を介して回転可能に支持された略円筒状の出力回転体17と、第1ケースブロック21Aと第2ケースブロック21Bに回転可能に支持された複数のクランク軸23と、各クランク軸23の二つの偏心領域23a,23bとともに旋回する第1揺動歯車24A、及び、第2揺動歯車24Bと、を備えている。
なお、本実施形態の場合、減速機13の減速機本体は、第1,第2ケースブロック21A,21B、クランク軸23、第1,第2揺動歯車24A,24B、出力回転体17等によって構成されている。
【0036】
第1ケースブロック21Aは、円板状の基板部21Aaと、基板部21Aaの軸方向外側の端部(主モータ11側の端部)から径方向外側に張り出した後に軸方向外側に円筒状に延びる連結フランジ部21Abと、を有する。第2ケースブロック21Bは、円板状の基板部21Baと、基板部21Baの軸方向内側の端面から第1ケースブロック21Aの方向に向かって延びる複数の支柱部21Bbと、を有する。第1ケースブロック21Aの基板部21Aaと第2ケースブロック21Bの基板部21Baとは同外径に形成されている。第2ケースブロック21Bは、複数の支柱部21Bbの端面が第1ケースブロック21Aの基板部21Aaの端面に重ねられ、当該支柱部21Bbが基板部21Aaにボルト25によって一体に結合されている。これにより、第1ケースブロック21Aと第2ケースブロック21Bは一体のケースブロックを構成している。
【0037】
また、第1ケースブロック21Aと第2ケースブロック21Bの軸心位置には、入力軸16が軸受35を介して回転可能に支持されている。入力軸16は、減速機本体を軸方向に貫通している。入力軸16の一端部は、第1ケースブロック21Aの基板部21Aaを貫通して主モータ11方向に突出している。入力軸16の他端部は、第2ケースブロック21Bの基板部21Baを貫通して補助モータ12方向に突出している。本実施形態では、主モータ11と補助モータ12が減速機13の両側に同軸に配置されている。
【0038】
第1ケースブロック21Aの基板部21Aaと第2ケースブロック21Bの基板部21Baの間には、複数の支柱部21Bbによって軸方向の隙間が確保されている。この隙間には、第1揺動歯車24Aと第2揺動歯車24Bが配置されている。
【0039】
なお、第1揺動歯車24Aと第2揺動歯車24Bには、第2ケースブロック21Bの各支柱部21Bbが貫通する逃げ孔26が形成されている。逃げ孔26は、各支柱部21Bbが第1揺動歯車24Aと第2揺動歯車24Bの旋回動作を妨げないように、支柱部21Bbに対して充分に大きな内径に形成されている。
【0040】
出力回転体17は、第1ケースブロック21Aの基板部21Aaの外周面と、第2ケースブロック21Bの基板部21Baの外周面とに跨って配置されている。出力回転体17の軸方向両側の端縁部分は、両基板部21Aa,21Baの外周面に軸受22を介して回転可能に支持されている。また、出力回転体17の軸方向の中央領域(第1揺動歯車24Aと第2揺動歯車24Bの外周面に対向する領域)の内周面には、出力回転体17の回転中心軸線と平行に延びる複数のピン溝27が形成されている。複数のピン溝27は、出力回転体17の内周面に円周方向に等間隔に離間して形成されている。各ピン溝27には、円柱状の内歯ピン28が回転可能に収容されている。
【0041】
第1揺動歯車24Aと第2揺動歯車24Bは、出力回転体の内径よりも若干小さい外径に形成されている。第1揺動歯車24Aと第2揺動歯車24Bの各外周面には、出力回転体17のピン溝27内に配置された複数の内歯ピン28と噛み合い状態で接触する外歯29が形成されている。第1揺動歯車24Aと第2揺動歯車24Bの各外歯29の歯数は、内歯ピン28の数(ピン溝27の数)よりも僅かに少なく(例えば、一つ少なく)設定されている。
【0042】
複数のクランク軸23は、第1ケースブロック21Aと第2ケースブロック21Bの中心軸線を中心とした同一円周上に配置されている。各クランク軸23は、軸受30を介して第1ケースブロック21Aと第2ケースブロック21Bとに回転可能に支持されている。各クランク軸23の偏心領域23a,23bは、第1揺動歯車24Aと第2揺動歯車24Bを貫通している。各偏心領域23a,23bは、第1揺動歯車24Aと第2揺動歯車24Bに形成された支持孔31に偏心部軸受32を介して回転可能に係合されている。
なお、各クランク軸23の二つの偏心領域23a,23bは、クランク軸23の軸線回りに位相が180°ずれるように偏心している。
【0043】
複数のクランク軸23が外力を受けて一方向に回転すると、クランク軸23の偏心領域23a,23bが所定の半径で同方向に旋回し、それに伴って第1揺動歯車24Aと第2揺動歯車24Bが同じ旋回半径で同方向に旋回する。このとき、第1揺動歯車24Aと第2揺動歯車24Bの各外歯29が、出力回転体17のピン溝27内に配置された複数の内歯ピンと噛み合うように接触する。
【0044】
本実施形態の減速機13では、第1揺動歯車24Aと第2揺動歯車24Bの各外歯29の歯数が、内歯ピン28の数(ピン溝27の数)よりも僅かに少なく設定されているため、第1揺動歯車24Aと第2揺動歯車24Bが一旋回する間に、出力回転体17が所定のピッチ分だけ旋回方向と同方向に押し回される。この結果、クランク軸23の回転は大きく減速されて出力回転体17の回転として出力される。
なお、本実施形態では、各クランク軸23の偏心領域23a,23bが軸線回りに相互に180°ずれるように偏心しているため、第1揺動歯車24Aと第2揺動歯車24Bの旋回位相は180°ずれることになる。
【0045】
また、各クランク軸23の主モータ11側の端部は、第1ケースブロック21Aの基板部21Aaを軸方向外側に貫通している。基板部21Aaから外側に突出したクランク軸23の端部にはクランク軸歯車33が取り付けられている。クランク軸歯車33の歯面は、主モータ11の第1出力軸11aの端部に設けられた出力ギヤ34と噛合されている。したがって、本実施形態の駆動ユニット10では、主モータ11の駆動力は、第1出力軸11aと入力軸16の連結部に設けられた出力ギヤ34を通してクランク軸23へと伝達される。
【0046】
主モータ11のケースブロック11cのうちの減速機13側の端部には、第1出力軸11aの周囲を取り囲むように第1接続ブロック36が取り付けられている。第1接続ブロック36は、減速機13の第1ケースブロック21Aのうちの連結フランジ部21Abの端面に連結されている。これにより、主モータ11と減速機13は、第1出力軸11aと入力軸16を連結した状態において一体に結合されている。また、第1接続ブロック36と連結フランジ部21Abは、この状態において、第1出力軸11a(減速機13の入力軸16)と出力ギヤ34の噛み合い部の周囲を覆っている。
【0047】
また、減速機13の第2ケースブロック21Bのうちの補助モータ12側の端部には、入力軸16の他端の周囲を取り囲むように第2接続ブロック37が取り付けられている。第2接続ブロック37は、中央に貫通孔38を備えた厚肉円板形状に形成されている。第2接続ブロック37の補助モータ12側の端面には、第2接続ブロック37の軸心と平行に延びる複数のガイド突起39が突設されている。補助モータ12のケースブロック12cの端面には、第2接続ブロック37側の各ガイド突起39が摺動自在に嵌合される複数の受穴40が形成されている。補助モータ12の装置本体12Bは、受穴40が対応するガイド突起39に嵌入することにより、減速機13に対して軸方向に進退変位可能とされている。
【0048】
補助モータ12のケースブロック12cの減速機13側の端部外周には、径方向外側に張り出す係止フランジ41が突設されている。これに対し、第2接続ブロック37の補助モータ12側の端部外周には、係止フランジ41の径方向外側を取り囲むように延びる円筒壁42が突設されている。第2接続ブロック37の補助モータ12側の端部のうちの円筒壁42の基端の径方向内側位置には、断面略L字状のクランプ爪43の基端(略L字形状の一端部)が回動可能に取り付けられている。クランプ爪43は、第2接続ブロック37の補助モータ12側の端部に複数取り付けられている。各クランプ爪43は、補助モータ12が第2接続ブロック37に対して軸方向に所定距離以上離間している間は、補助モータ12のケースブロック12cに対して非係止状態(非クランプ状態)とされている。これに対し、補助モータ12が第2接続ブロック37に対して軸方向に所定距離よりも接近すると、各クランプ爪43は基端を中心として回動し、ケースブロック12cの係止フランジ41の裏面に係止される(クランプ状態とされる)。なお、図2中の符号44は、クランプ爪43を係止方向に付勢するための付勢部材である。
【0049】
第2接続ブロック37とケースブロック12cの相互に対向する軸方向の端面の間には、補助モータ12を減速機13から離間する方向に付勢するための付勢部材45が介装されている。また、第2接続ブロック37のガイド突起39よりも径方向内側位置には、複数の電磁石46が埋設されている。これに対し、ケースブロック12cの端面のうちの複数の電磁石46と対向する位置には、電磁石46によって吸引される磁性体47が取り付けられている。本実施形態では、電磁石46が磁性体47を吸引することにより、補助モータ12を付勢部材45の付勢力に抗して減速機13の方向に変位させる。電磁石46は、補助バッテリ8の電力を受けて磁力を発生する。
【0050】
ここで、減速機13の入力軸16の補助モータ12側の端部の外周面には、延出方向の先端側に向かって先細り状に傾斜するテーパ面48が形成されている。このテーパ面48は、補助モータ12の第2出力軸12aに形成されたテーパ穴20の内周面と略平行に形成されている。入力軸16のテーパ面48は、補助モータ12が第2接続ブロック37に対して軸方向に所定距離以上離間している間は、第2出力軸12aのテーパ穴20の内周面に対して非接触状態とされている。このとき、補助モータ12の第2出力軸12aは、減速機13の入力軸16に対して非接続状態とされている。これに対し、電磁石46による吸引によって補助モータ12が第2接続ブロック37に対して軸方向に所定距離よりも接近すると、入力軸16のテーパ面48はテーパ穴20の内周面に摩擦接続される。このとき、補助モータ12の第2出力軸12aは、減速機13の入力軸16に対して接続状態とされる。
【0051】
また、電磁石46による吸引によって補助モータ12が第2接続ブロック37に対して軸方向に所定距離よりも接近すると、第2接続ブロック37に保持されているクランプ爪43が付勢部材44の付勢力を受けて回動し、クランプ爪43の先端部が補助モータ12側の係止フランジ41に係止される。これにより、第2出力軸12aと入力軸16は機械的に接続状態に維持される。
【0052】
本実施形態では、第2接続ブロック37に取り付けられた電磁石46は、接続装置15の電磁接続部15Aを構成している。また、第2接続ブロック37に取り付けられたクランプ爪43と補助モータ12側の係止フランジ41とは、接続装置15の機械接続部15Bを構成している。
【0053】
<第1実施形態の駆動ユニットの動作>
主モータ11が正常に作動する状況では、電磁石46の通電がオフ状態とされているため、補助モータ12の第2出力軸12aは減速機13の入力軸16に対して遮断状態(離間状態)とされている。この状態で制御装置による制御によって主モータ11に通電されると、主モータ11の第1出力軸11aが減速機13の入力軸16と一体に回転する。減速機13の入力軸16に入力された回転は、減速機13によって減速され、出力回転体17から第2ギヤボックス5の出力部5aに出力される。
【0054】
一方、主モータ11の故障が故障検出センサ14によって検出された場合には、制御装置18による制御によって補助バッテリ8の電力を電磁石46に供給する。これにより、電磁石46による吸引作用によって補助モータ12が減速機13方向に変位し、補助モータ12の第2出力軸12aが、テーパ穴20の内周面とテーパ面48との摩擦係合によって減速機13の入力軸16に結合される。このとき、接続装置15の機械接続部15Bが作動し、第2出力軸12aと入力軸16の連結状態が維持される。また、このとき補助モータ12は、メインバッテリ7または補助バッテリ8の電力を受けて作動する。具体的には、補助モータ12は、メインバッテリ7からの電力供給系に異常が無ければ、メインバッテリ7の電力を受けて作動し、メインバッテリ7からの電力供給系に異常がある場合には、補助バッテリ8の電力を受けて作動する。
【0055】
また、駆動ユニット10は、故障検出センサ14によって主モータ11の故障が検出されたときに、第2出力軸12aと入力軸16がテーパ穴20の内周面とテーパ面48との摩擦係合によって結合される。このため、駆動ユニット10が作動している最中に主モータ11が突然故障することがあっても、テーパ穴20の内周面とテーパ面48の間の滑りによって第2出力軸12aと入力軸16を円滑に接続することができる。
【0056】
<第1実施形態の効果>
本実施形態の駆動ユニット10は、主モータ11の故障が故障検出センサ14によって検出されると、補助モータ12の第2出力軸12aが減速機13の入力軸16に対して接続装置15によって接続される。このため、主モータ11に故障が生じた場合にも、補助モータ12の動力を駆動対象に速やか伝達することができる。
【0057】
また、本実施形態の駆動ユニット10では、減速機13の入力軸16が減速機本体を軸方向に貫通して配置され、主モータ11が減速機本体の軸方向の一端側に連結されるとともに、補助モータ12が減速機本体の軸方向の他端側に接続装置15を介して配置されている。駆動ユニット10全体をコンパクに構成することができる。また、本構成の場合、補助モータ12の動力が減速機13の入力軸に直接的に伝達されるため、補助モータ12の動力を減速機13に効率良く伝達することができる。
【0058】
また、本実施形態の駆動ユニット10は、第2出力軸12aを入力軸16に接続する接続装置15が電磁接続部15Aと、電磁接続部15Aの動作を契機に作動する機械接続部15Bと、を備えている。このため、電磁接続部15Aの動作時間を短くして補助バッテリ8の消耗を少なくすることができ、また、補助バッテリ8が消耗した場合にも、第2出力軸12aと入力軸16とを接続状態に維持することができる。さらに、本構成を採用した場合には、補助バッテリ8の消耗を少なくできるため、補助バッテリ8の小型化も図ることができる。
【0059】
さらに、本実施形態の駆動ユニット10は、主モータ11や補助モータ12の回転を減速する減速機13として、第1,第2ケースブロック21A,21B、出力回転体17、内歯ピン28、クランク軸23、第1,第2揺動歯車24A,24B等を備えた偏心揺動式の減速機を採用している。このため、入力軸16に入力された回転を、精度良く減速して、出力回転体17に出力することができる。
【0060】
また、本実施形態の電動パワーステアリング装置1は、主モータ11の故障が故障検出センサ14によって検出されると、接続装置15によって補助モータ12の第2出力軸12aが減速機13の入力軸16にされるため、主モータ11に故障が生じた場合にも、減速された補助モータ12の動力を助勢力として操舵機構6に速やかに伝達することができる。
【0061】
<第2実施形態の駆動ユニット>
図3は、第2実施形態の駆動ユニット110の断面を示す図である。なお、図3では、図2に示す第1実施形態と共通部分に同一符号を付してある。以下では、第1実施形態と共通部分については説明を省略するものとする。
本実施形態の駆動ユニット110は、主モータ111(主駆動装置)と、補助モータ12(補助駆動装置)と、減速機13と、故障検出センサ14と、接続装置15と、を備えているが、主モータ111、補助モータ12、減速機13の三者の配置が第1実施形態のものと異なっている。即ち、第1実施形態では、減速機13の軸方向の両側に主モータ11と補助モータ12が配置されていたが、第2実施形態の駆動ユニット110は、主モータ111の軸方向両側に減速機13と補助モータ12が配置されている。
【0062】
さらに詳細には、駆動ユニット110の第1出力軸111aは、主モータ111の装置本体11Bを軸方向に貫通して配置されている。減速機13は、主モータ111の装置本体11Bの軸方向の一端側に配置され、減速機13の複数のクランク軸歯車33は、主モータ111の第1出力軸111aの軸方向の一端部に常時噛み合い状態で噛合されている。また、補助モータ12は、主モータ111の装置本体11Bの軸方向の他端側に配置され、補助モータ12の第2出力軸12aは、主モータ111の第1出力軸111aの軸方向の他端部に対して、接続装置15を介して接続可能とされている。
なお、本実施形態の減速機13は、第1実施形態にある入力軸16を備えていない。本実施形態の減速機13では、クランク軸歯車33とクランク軸23が入力軸として機能している。
【0063】
<第2実施形態の駆動ユニットの動作>
主モータ11が正常に作動する状況では、電磁石46の通電がオフ状態とされているため、補助モータ12の第2出力軸12aは主モータ111の第1出力軸111aに対して遮断状態(離間状態)とされている。この状態で制御装置による制御によって主モータ111に通電されると、主モータ111の第1出力軸111aの回転が減速機13のクランク軸23に伝達される。減速機13のクランク軸23に入力された回転は、減速機13によって減速され、出力回転体17から外部の被駆動部材に出力される。
【0064】
主モータ11の故障が故障検出センサ14によって検出された場合には、制御装置18による制御によって補助バッテリ8の電力を電磁石46に供給する。これにより、電磁石46による吸引作用によって補助モータ12が主モータ111方向に変位し、補助モータ12の第2出力軸12aが、テーパ穴20の内周面とテーパ面48との摩擦係合によって主モータ111の第1出力軸111aに結合される。このとき、接続装置15の機械接続部15Bが作動し、第2出力軸12aと第1出力軸111aの連結状態が維持される。また、このとき補助モータ12は、メインバッテリ7または補助バッテリ8の電力を受けて作動する。
【0065】
こうして、補助モータ12の第2出力軸12aが主モータ111の第1出力軸111aに結合されると、第2出力軸12aの回転が主モータ111の第1出力軸111aを介して減速機13のクランク軸23に入力される。クランク軸23に入力された回転は、減速機13によって減速され、出力回転体17から外部の被駆動部材に出力される。
【0066】
<第2実施形態の効果>
本実施形態の駆動ユニット110は、主モータ111、補助モータ12、減速機13の三者の配置の点で第1実施形態のものと異なっているが、その他の基本構成や機能はほぼ同様となっている。このため、本実施形態の駆動ユニット110を採用した場合には、前述した第1実施形態とほぼ同様の基本的な効果を得ることができる。
【0067】
ただし、本実施形態の駆動ユニット110は、主モータ111の第1出力軸111aが、主モータ111の装置本体11Bを軸方向に貫通して配置され、減速機13が、主モータ111の装置本体11Bの軸方向の一端側に連結され、補助モータ12が、主モータ111の装置本体11Bの軸方向の他端側に接続装置15を介して配置されている。このため、駆動ユニット110全体をコンパクに構成することができる。また、本実施形態の駆動ユニット110の場合、減速機13の出力回転体17の回転を外部に伝達するための構造を、駆動ユニット110の軸方向の端部に配置することができる。このため、出力回転体17と被駆動部品との配置の自由度を高めることができる。
【0068】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、上記の各実施形態では、補助モータ12を変位させる接続装置15として、電磁石46を用いた電磁接続部15Aと、クランプ爪43を用いた機械接続部15Bを備えたものを採用している。しかし、接続装置15の形態は、これに限るものではなく、その他の各種の形態のものを採用することができる。また、上記の実施形態では、接続装置15が補助モータ12全体を軸方向に変位させるようにしているが、補助モータ12の第2出力軸12aのみを軸方向に変位させるようにしても良い。
【0069】
また、上記の各実施形態の減速機13は、クランク軸23を回転可能に支持するブロック(第1,第2ケースブロック21A,21B)が固定され、内周に内歯ピン28を保持する円筒部材が出力回転体17とされているが、逆に、内周に内歯ピン28を保持する円筒部材を固定し、クランク軸23を回転可能に支持するブロックを出力回転体としても良い。
【0070】
さらに、上記の各実施形態では、主駆動装置と補助駆動装置として電動式のモータを採用しているが、主駆動装置と補助駆動装置は、油圧等の電気以外の駆動源のエネギーを用いるものを採用することも可能である。
また、可動ユニットの適用は、電動パワーステアリング装置に限定されるものでなく、電動パワーステアリング装置以外の各種の可動装置にも採用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1…電動パワーステアリング装置
2…ステアリングホイール(ステアリング部)
6…操舵機構
7…メインバッテリ(主電源、主駆動源)
8…補助バッテリ(補助電源、補助駆動源)
10,110…駆動ユニット
11…主駆動モータ(主駆動装置)
11a…第1出力軸
11B…装置本体
12…補助モータ(補助駆動装置)
12a…第2出力軸
13…減速機
14…故障検出センサ
15…接続装置
15A…電磁接続部
15B…機械接続部
16…入力軸
17…出力回転体
21A…第1ケースブロック(ケースブロック)
21B…第2ケースブロック(ケースブロック)
23…クランク軸
23a,23b…偏心領域
24A…第1揺動歯車(揺動歯車)
24B…第2揺動歯車(揺動歯車)
図1
図2
図3