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特許7540887接着剤、感熱スクリーンマスター及び感熱スクリーンマスターの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】接着剤、感熱スクリーンマスター及び感熱スクリーンマスターの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20240820BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20240820BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240820BHJP
   B41N 1/24 20060101ALI20240820BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240820BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20240820BHJP
   B32B 27/04 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J4/02
C09J11/06
B41N1/24 102
B32B27/00 Z
B32B27/40
B32B27/04 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019232530
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021100991
(43)【公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】冨永 大貴
(72)【発明者】
【氏名】寺中 智子
(72)【発明者】
【氏名】岩本 真博
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-178279(JP,A)
【文献】特開2010-189797(JP,A)
【文献】特開2013-213175(JP,A)
【文献】特開2019-006854(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0086712(US,A1)
【文献】国際公開第2016/002388(WO,A1)
【文献】特表2008-512271(JP,A)
【文献】特開2010-214635(JP,A)
【文献】特開2020-104368(JP,A)
【文献】特開2011-174089(JP,A)
【文献】米国特許第4961377(US,A)
【文献】特開2018-165002(JP,A)
【文献】特表2005-509721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
B41N 1/00- 99/00
C09J 1/00ー 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンプレポリマー及びポリオールからなる群から選択される少なくとも1種と、ポリイソシアネートと、重合性(メタ)アクリレート化合物と、光重合開始剤とを含み、
前記ウレタンプレポリマー及びポリオールからなる群から選択される少なくとも1種(A)と前記ポリイソシアネート(B)の質量比(A:B)が50:50~5:95であり、
前記ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネートを含み、
前記重合性(メタ)アクリレート化合物の量は、接着剤全量に対して、1~40質量%である、接着剤。
【請求項2】
前記ウレタンプレポリマー及びポリオールからなる群から選択される少なくとも1種(A)と前記ポリイソシアネート(B)の質量比(A:B)が35:65~5:95である、請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
前記脂肪族ポリイソシアネートが、脂肪族ポリイソシアネートの変性体を含む、請求項1又は2に記載の接着剤。
【請求項4】
前記脂肪族ポリイソシアネートが、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート変性体を含む、請求項1又は2に記載の接着剤。
【請求項5】
スクリーン紗と、接着剤を含む接着剤層と、熱可塑性樹脂フィルムとをこの順で備える積層体に、活性エネルギー線を照射することを含み、
前記接着剤は、ウレタンプレポリマー及びポリオールからなる群から選択される少なくとも1種と、ポリイソシアネートと、重合性(メタ)アクリレート化合物と、光重合開始剤とを含み、
前記ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネートを含み、
前記重合性(メタ)アクリレート化合物の量は、前記接着剤全量に対して、1~40質量%である、
感熱スクリーンマスターの製造方法。
【請求項6】
スクリーン紗と、接着剤を用いて形成された層と、熱可塑性樹脂フィルムとを含み、
前記接着剤は、ウレタンプレポリマー及びポリオールからなる群から選択される少なくとも1種と、ポリイソシアネートと、重合性(メタ)アクリレート化合物と、光重合開始剤とを含み、
前記ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネートを含み、
前記重合性(メタ)アクリレート化合物の量は、前記接着剤全量に対して、1~40質量%である、
感熱スクリーンマスター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、接着剤、感熱スクリーンマスター及び感熱スクリーンマスターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂フィルムを多孔性支持体に貼り合わせてなる感熱孔版マスターの熱可塑性樹脂フィルムを、サーマルヘッドにより選択的に加熱して溶融穿孔させることにより、画像に対応する穿孔部を形成して、スクリーン印刷等の孔版印刷用の版を作製する製版方法は、感熱製版と呼ばれている。感熱孔版マスターとしては、例えば、多孔性支持体としてスクリーン紗を用いた感熱スクリーンマスター等を用いることができる。
【0003】
特許文献1は、ポリウレタンを含有する主剤とトリレンジイソシアネート及びウレタン樹脂を含有する硬化剤を配合した接着剤を用いて熱可塑性合成樹脂フィルムとスクリーン印刷用紗体とを張り合わせてなるスクリーン印刷用孔版原紙を記載している。
【0004】
特許文献2は、スクリーン紗と熱可塑性樹脂フィルムとを貼り合わせてなる感熱スクリーンマスターを記載し、接着剤として、紫外線硬化型接着剤を例示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-214635号公報
【文献】特開2018-165002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は、接着強度に優れ、かつ、これを用いて表面のシワの少ない物品を製造することができる接着剤、及び、これを用いて得られた感熱スクリーンマスターを提供することを一目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、ウレタンプレポリマー及びポリオールからなる群から選択される少なくとも1種と、ポリイソシアネートと、重合性(メタ)アクリレート化合物と、光重合開始剤とを含む接着剤に関する。
本発明の他の実施形態は、スクリーン紗と、上記接着剤を含む接着剤層と、熱可塑性樹脂フィルムとをこの順で備える積層体に、活性エネルギー線を照射することを含む感熱スクリーンマスターの製造方法に関する。
本発明の他の実施形態は、スクリーン紗と、上記の接着剤を用いて形成された層と、熱可塑性樹脂フィルムとを含む感熱スクリーンマスターに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態により、接着強度に優れ、かつ、これを用いて表面のシワの少ない物品を製造することができる接着剤、及び、これを用いて得られた感熱スクリーンマスターを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を詳しく説明するが、本発明がこれらの実施形態に限定されることはなく、様々な修正や変更を加えてもよいことはいうまでもない。
【0010】
<接着剤>
実施形態の接着剤は、ウレタンプレポリマー及びポリオールからなる群から選択される少なくとも1種(以下、「成分A」という場合もある。)と、ポリイソシアネート(以下、「成分B」という場合もある。)と、重合性(メタ)アクリレート化合物(以下、「成分C」という場合もある。)と、光重合開始剤(以下、「成分D」という場合もある。)とを含む。
【0011】
ウレタン系接着剤は、一般に、熱及び湿気等により硬化する。ウレタン系接着剤は良好な接着強度を得やすい傾向を有するが、一般に、硬化までの時間が比較的長い傾向がある。このような接着剤を用いて感熱スクリーンマスター等の物品を製造する際、接着剤を用いて2つの層が貼り合わされた積層体を、接着剤が硬化する前に接着剤の粘度が低い状態でラミネーター等の製造装置上で搬送することにより、得られた物品の表面にラミネーター等の製造装置に由来するシワが発生する場合があり、これが、歩留まりの低下の一因となり得る。
また、紫外線硬化型接着剤は、紫外線を照射することで、比較的短時間で硬化させることができる傾向を有する。一方、接着剤として紫外線硬化型接着剤のみを用いる場合には、接着剤が硬くなりすぎて上層と下層との密着性が低下して接着強度が低下する場合がある。
【0012】
本実施形態の接着剤は、ウレタンプレポリマー及びポリオールからなる群から選択される少なくとも1種(成分A)と、ポリイソシアネート(成分B)とを含み、さらに、重合性(メタ)アクリレート化合物(成分C)と、光重合開始剤(成分D)とを含む。成分C及び成分Dを含むことにより、紫外線等の活性エネルギー線により成分Dから発生するラジカルによって成分Cの重合を開始することができ、成分Cを硬化させることができる。このため、接着剤を付与した後に、まず、紫外線等の活性エネルギー線照射により成分Cを硬化させて接着剤の粘度を高めることができ、これにより、ラミネーター等の製造装置上での物品の表面のシワ発生を低減させることができる。また、この接着剤は、成分A及びBを含むことにより、熱及び湿気環境で硬化させることで、優れた接着強度を得ることができる。
【0013】
この接着剤の用途はとくに限定されないが、例えば、感熱スクリーンマスター用の接着剤として好ましく用いることができる。
【0014】
接着剤は、成分Aとして、ウレタンプレポリマー、ポリオール、又は、ウレタンプレポリマーとポリオールとの組み合わせを含んでもよい。
【0015】
成分Aとしては、成分Bと相溶することができるものを用いることができる。成分Aは、23℃で液体であることが好ましい。
【0016】
ウレタンプレポリマーは、ポリオール成分とイソシアネート成分の反応により得ることができ、末端官能基として、水酸基(-OH)、イソシアネート基(-NCO)、またはそれらの両者を含んでよい。
【0017】
ウレタンプレポリマーは、23℃で液体であることが好ましい。
【0018】
ウレタンプレポリマーの重量平均分子量は特に限定されないが、2,000~10,000が好ましく、3,000~8,000がより好ましい。ウレタンポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、ポリスチレン換算で得られた値である。
ウレタンプレポリマーの25℃、せん断速度500/sにおける粘度は200,000mPa・s以下であることが好ましい。より好ましくは100,000mPa・s以下であり、特に好ましくは80,000mPa・s以下である。また、状態が液状であれば、下限値は特に限定されるものではないが、ウレタンプレポリマーの25℃、せん断速度500/sにおける粘度は、例えば、5,000mPa・s以上であってよい。
【0019】
ウレタンプレポリマーの市販品としては、例えば、三井化学株式会社製「タケラックA-666」、「タケラックA-695」(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0020】
ウレタンプレポリマーは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
ポリオールは、23℃で液体であることが好ましい。
【0022】
ポリオールとしては、2個以上の水酸基を有するものであれば特に限定されないが、両末端に水酸基を有するものが好ましい。
ポリオールとしては、例えば、ポリウレタン樹脂の原材料として通常用いられるものを使用することができる。
ポリオールの例としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリブタジエン等のポリオレフィンポリオール等が挙げられ、両末端に水酸基を有するポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が好ましい。
【0023】
ポリオールの市販品としては、例えば、AGC株式会社製「エクセノール750ED」(ポリエーテルポリオール)、株式会社ADEKA製「アデカニューエース#50」(ポリエステルポリオール)、旭化成株式会社製「デュラノールG3452」(ポリカーボネートポリオール)等が挙げられる。
【0024】
ポリオールは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
成分Aは、接着強度の向上の観点から、接着剤全量に対して、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。接着強度の向上の観点から、成分Aは、接着剤全量に対して、例えば、30質量%以上または50質量%以上であってもよい。
一方、成分Aは、接着剤全量に対して、80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
成分Aは、例えば、接着剤全量に対して、5~80質量%であることが好ましく、5~60質量%であることがより好ましく、10~40質量%であることがさらに好ましく、10~30質量%であることがさらに好ましい。
接着剤が後述する溶剤を含む場合、成分Aの量は、例えば、接着剤の全量に対して上記の数値範囲内であってもよく、例えば、接着剤の全質量から溶剤の質量を除いた質量に対して、上記数値範囲内であってもよい。
【0026】
成分Aは、接着強度の向上の観点から、成分Aと成分Bとの合計量に対して、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。接着強度の向上の観点から、成分Aは、成分Aと成分Bとの合計量に対して、例えば、40質量%以上または60質量%以上であってもよい。
【0027】
接着剤は、成分Bとして、ポリイソシアネートを含むことができる。
【0028】
ポリイソシアネートとしては、イソシアネート基を2個以上有するものであればとくに限定されないが、末端にイソシアネート基を有するものが好ましい。ポリイソシアネートとしては、成分Aと相溶することができるものを用いることができる。ポリイソシアネートは、23℃で液体であることが好ましい。
【0029】
ポリイソシアネートとしては、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等のいずれであってもよい。
【0030】
ポリイソシアネートの具体例としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(1、6-ジイソシアネートヘキサン)(HDI)、1、3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4-ジイソシアナート、メタキシレンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)等のジイソシアネート;1-メチルベンゼン-2,4,6-トリイルトリイソシアナート、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン等のトリイソシアネート;ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられ、さらにこれらのポリイソシアネートの変性体等も挙げることができる。
【0031】
例えば、主溶媒が揮発性有機溶剤であるソルベントインク(溶剤系インク)を用いて印刷を行うと、製版したマスターを印刷に用いた後に、印刷後のマスターに残ったソルベントインクの溶剤が蒸発して、固形分が固まりとなって残りやすい。このような固化物を溶剤で拭き取る際に、熱可塑性樹脂フィルムとスクリーン紗とを接着している接着剤が溶剤に溶けて熱可塑性樹脂フィルムがスクリーン紗から剥がれてしまう場合がある。製版したマスターを繰り返し使用するためには、接着剤が、ふき取りに用いる溶剤に溶けにくいことが望ましい。このため、接着剤の耐溶剤性の向上の観点から、ポリイソシアネートとしては、ポリイソシアネートの変性体がより好ましい。ポリイソシアネートの変性体としては、例えば、ポリイソシアネートのイソシアヌレート変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体、オキサジアジントリオン変性体等が挙げられる。耐溶剤性の向上の観点から、ポリイソシアネートのイソシアヌレート変性体、ポリイソシアネートのビウレット変性体が好ましく、ポリイソシアネートのイソシアヌレート変性体がより好ましい。
【0032】
ポリイソシアネートのイソシアヌレート変性体は、N-C結合の回転の自由度が低く、硬い塗膜を生成しやすいため、溶剤が侵入しにくい。
【0033】
ポリイソシアネートの変性体としては、耐溶剤性の向上の観点から、脂肪族ポリイソシアネートの変性体が好ましく、脂肪族ジイソシアネートの変性体がより好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートの変性体がさらに好ましい。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット変性体が好ましく、耐溶剤性の向上の観点から、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体がより好ましい。
【0034】
ポリイソシアネートの市販品としては、旭化成株式会社製「TPA-100」(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体)、「24A-100」(ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット変性体)、BASF INOACポリウレタン株式会社製「ルプラネートMI」(4,4’-メチレンビス(フェニレンイソシアネート))、「ルプラネートTDI」(トリレンジイソシアネート)等が挙げられる。
【0035】
ポリイソシアネートは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
イソシアネート基同士の反応による架橋密度を高め、これにより耐溶剤性を向上させる観点、及び/又は、成分Bと成分Cとの相溶性を高めることで、紫外線照射された際に効率よく接着剤粘度を高めることができ、これにより、接着剤を用いて得られる物品表面のシワの発生をさらに低減させる観点から、成分Bは、接着剤全量に対して、10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。
一方、成分Bは、接着剤全量に対して、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましい。
成分Bは、例えば、接着剤全量に対して、10~90質量%であることが好ましく、30~90質量%であることがより好ましく、40~90質量%であることがさらに好ましく、50~85質量%であることがさらに好ましく、60~85質量%であることがさらに好ましい。
接着剤が後述する溶剤を含む場合、成分Bの量は、例えば、接着剤全量に対して、上記の数値範囲内であってもよく、例えば、接着剤の全質量から溶剤の質量を除いた質量に対して、上記の数値範囲内であってよい。
【0037】
耐溶剤性を向上させる観点、及び/又は、シワの発生をさらに低減させる観点から、成分Bは、成分Aと成分Bとの合計量に対して、10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、65質量%以上であることがさらに好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
成分Aと成分Bとの合計量に対して成分Bの比率を増加させると、成分Bと成分Cは相溶性が高いため、紫外線照射された際に効率よく接着剤粘度を高めることができ、これにより、より効果的にシワの発生を低減させることができる傾向がある。成分Cの量を低減させると、成分Aと成分Bとの量とを増加させることができ、これにより、接着強度及び耐溶剤性をさらに向上させ得る。
【0038】
成分Aと成分Bとは、質量比(A:B)が90:10~5:95であることが好ましく、耐溶剤性を向上させる観点、及び/又は、接着剤を用いて得られる物品の表面のシワの発生をさらに低減させる観点から70:30~5:95であることがより好ましく、35:65~5:95であることがさらに好ましく、30:70~10:90であることがさらに好ましい。成分Aと成分Bとは、例えば、80:20~36:64、または、80:20~40:60であってもよい。
【0039】
接着剤は、成分Cとして、重合性(メタ)アクリレート化合物を含むことができる。
【0040】
重合性(メタ)アクリレート化合物としては、 (メタ)アクリロイル基を1個以上有するものを用いることができる。重合性(メタ)アクリレート化合物としては、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能化合物が好ましい。
【0041】
重合性(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートオリゴマー、またはその両者等を用いることができる。(メタ)アクリレートは、メタクリレート、アクリレートまたはその両者をいう。(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基、メタクリロイル基、またはその両者をいう。
【0042】
単官能の(メタ)アクリレートモノマーの例としては、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、フェノールEO変性アクリレート(「EO変性」はエチレンオキサイド変性を意味する。)、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性アクリレート、フルオレンジアクリレート等が挙げられる。多官能(メタ)アクリレートモノマーの例としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、N - アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート等が挙げられる。
【0043】
(メタ)アクリレートモノマーの市販品としては、例えば、共栄社化学株式会社製「ライトエステルHOP-A(N)」(商品名)、東亞合成株式会社製「アロニックスM-102」、「アロニックスM-350」(いずれも商品名)、新中村化学工業株式会社製「NKエステルA-200」、「NKエステルA-DPH」(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0044】
(メタ)アクリレートオリゴマーの例としては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0045】
ウレタン(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイル基とウレタン結合とを含む。
【0046】
ウレタン(メタ)アクリレートの例としては、フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。
【0047】
ウレタン(メタ)アクリレートの市販品の例としては、共栄社化学株式会社製「AH-600」、「UA-306H」、「UA-306T」、「UA-306I」、「UA-510H」(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0048】
エポキシ(メタ)アクリレートとしては、アクリル酸またはメタクリル酸のカルボキシル基とエポキシ基を有する化合物のエポキシ基とが反応して得られた構造を含む化合物を用いることができる。
【0049】
エポキシ(メタ)アクリレートの市販品の例としては、例えば、共栄社化学株式会社製「エポキシエステル80MFA」(商品名)等が挙げられる。
【0050】
ポリエステル(メタ)アクリレートの市販品の例としては、例えば、東亞合成株式会社製「アロニックスM-7100」、「アロニックスM-6100」(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0051】
これらの重合性(メタ)アクリル化合物は1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0052】
接着剤を用いて得られる物品の表面のシワの発生をさらに低減する観点、及び/又は、成分Cの硬化により接着剤の粘度を高め、接着剤をはさむ上層と下層の接着箇所のずれの発生を低減させて、これにより接着強度をさらに向上させる観点から、成分Cは、接着剤全量に対して、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、6質量%以上がさらに好ましい。
一方、接着強度のさらなる向上の観点から、成分Cは、40質量%以下が好ましく、30質量%以下が好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。
【0053】
成分Cの量は、例えば、接着剤全量に対して、1~40質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましく、3~30質量%がさらに好ましく、6~30質量%がさらに好ましく、6~15質量%がさらに好ましい。
【0054】
接着剤は、成分Dとして、光重合開始剤を含むことができる。
光重合開始剤としては、紫外線等の活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生させて成分Cの重合反応を開始させるものであれば、とくに限定されない。
【0055】
光重合開始剤としては、例えば、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チオキサントン系化合物、アセトフェノン系化合物及びベンゾフェノン系化合物等が挙げられる。
【0056】
アシルフォスフィンオキサイド系化合物としては、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィネート及びビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0057】
チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1-クロロ-4-プロピルチオキサントン、3-[3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサントン-2-イル-オキシ]-2-ヒドロキシプロピル-N,N,N―トリメチルアンモニウムクロライド及びフルオロチオキサントン等が挙げられる。
【0058】
アセトフェノン系化合物としては、例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパノン}及び2-ヒドロキシ-1-{4-〔4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]1-ブタノン等が挙げられる。
【0059】
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルファイド及び1-[4-(4-ベンゾイルフェニル)チオ]フェニル]-2-メチル-2-[(4-メチルフェニル)スルホニル]-1-プロパノン等が挙げられる。
【0060】
これらの光重合開始剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
成分Dは、成分Cと成分Dとの合計量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることが好ましい。一方、成分Dは、成分Cと成分Dとの合計量に対して、10質量%以下であること好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。成分Dは、成分Cと成分Dとの合計量に対して、例えば、0.1~10質量%であることが好ましく、1~5質量%であることがより好ましい。
成分Dは、接着剤全量に対して、例えば、0.05~5質量%であることが好ましく、0.1~2質量%であることがより好ましい。
【0061】
接着剤は、例えば、希釈剤として溶剤を含んでよい。溶剤としては、有機溶剤が好ましい。
【0062】
接着剤は、必要に応じて、帯電防止剤、滑剤、粘着付与剤、充填剤、レベリング剤、着色剤等の添加剤を含有してもよい。
【0063】
接着剤は、たとば、1液型、2液型又は3液型等の接着剤であってよい。例えば、成分Aと成分Bとが別々に保管され、成分Aと成分Bとが、使用の際に混合されることでもよい。この場合、成分A及び成分B以外の他の成分は、成分A及び/又は成分Bとともに保管されてもよい。また、例えば、成分A、成分Bと、成分C及びDとが別々に保管され、これらが、使用の際に混合されることでもよい。この場合、成分A、成分B、成分C及び成分D以外の他の成分は、これらのいずれかとともに保管されてもよい。
【0064】
<感熱スクリーンマスター>
実施形態の感熱スクリーンマスターは、スクリーン紗と、上記の接着剤を用いて形成された層と、熱可塑性樹脂フィルムとを含む。
【0065】
感熱スクリーンマスターは、好ましくは、スクリーン紗と熱可塑性樹脂フィルムが、上記の接着剤を用いて貼り合わされたものである。感熱スクリーンマスターは、例えば、スクリーン紗と、接着剤を用いて形成された層と、熱可塑性樹脂フィルムとをこの順で備えることが好ましい。好ましくは、感熱スクリーンマスターにおいて、スクリーン紗と接着剤を用いて形成された層とが互いに接し、接着剤を用いて形成された層と熱可塑性樹脂フィルムとが互いに接している。
【0066】
スクリーン紗としては、サーマルヘッドの加熱によって実質的に穿孔されず、印刷においてインクを通過させることができるものであればよく、例えば、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、ステンレス、絹、綿等の繊維から作られた紗を用いることができる。
【0067】
スクリーン紗の厚さは、通常40~270μmであり、好ましくは50~150μmである。
スクリーン紗のメッシュ数(1インチあたりの繊維の本数)は、通常40~500であり、好ましくは50~350メッシュである。縦方向と横方向のメッシュ数は、上記メッシュ数の範囲内である限り、同一であってもよく、また異なっていてもよい。
【0068】
熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリ塩化ビニリデン系樹脂フィルム等を使用することができる。これらのうち、ポリエステル系樹脂フィルム等を好ましく使用することができる。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート/エチレンイソフタレート共重合体、ブチレンテレフタレート/エチレンテレフタレート共重合体、ブチレンテレフタレート/ヘキサメチレンテレフタレート共重合体、ヘキサメチレンテレフタレート/1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート共重合体、エチレンテレフタレート/エチレン-2,6-ナフタレート共重合体等が挙げられる。熱可塑性樹脂フィルムは、必要に応じて、顔料、粘度調整剤、分散剤、染色剤、潤滑剤、架橋剤、可塑剤などの各種添加剤を含んでもよい。
【0069】
熱可塑性樹脂フィルムの厚さは、感熱デジタルスクリーン製版が可能な厚さであればよいが、通常0.5~10μmであり、好ましくは1~5μmである。
【0070】
熱可塑性樹脂フィルムは、感熱デジタルスクリーン製版によって容易に溶融穿孔されるに適した収縮性を備えることが好ましく、適宜一軸または二軸延伸されたものであってもよい。
【0071】
感熱スクリーンマスターは、その他の層を含んでよい。例えば、熱可塑性樹脂フィルムのサーマルヘッドと接触する側に、サーマルヘッドへの熱可塑性樹脂フィルムの融着の防止、又はサーマルヘッドと熱可塑性樹脂フィルムとの摩擦の低減等のためにオーバーコート層を設けてもよい。
【0072】
感熱スクリーンマスターの製造方法はとくに限定されない。
感熱スクリーンマスターは、例えば、スクリーン紗と、上記の接着剤を含む接着剤層と、熱可塑性樹脂フィルムとをこの順で備える積層体(以下、積層体Lという場合もある。)に、活性エネルギー線を照射すること(以下、「活性エネルギー線照射工程」という場合もある。)を含む方法により製造することができる。
【0073】
積層体Lに含まれる接着剤層は、上記の接着剤を含む層であり、上記の接着剤を用いて得ることができる。例えば、スクリーン紗と熱可塑性樹脂フィルムとの間に接着剤を付与することで接着剤層を形成することができる。
【0074】
積層体Lは、例えば、スクリーン紗と熱可塑性樹脂フィルムとの間に接着剤を付与する工程を含む方法で製造することができる。スクリーン紗と熱可塑性樹脂フィルムとの間に接着剤を付与する工程により、スクリーン紗と、接着剤を含む接着剤層と、熱可塑性樹脂フィルムとをこの順で配置することができる。積層体Lは、その他層を含んでよい。
【0075】
接着剤は、あらかじめ、各成分を混合してもよく、使用の直前に、各成分が混合されてもよい。
【0076】
スクリーン紗と熱可塑性樹脂フィルムとの間に接着剤を付与する方法は特に限定されない。具体的には、例えば、ロールコータ等を用いて接着剤を付与し、スクリーン紗と熱可塑性樹脂フィルムとを貼り合わせてもよい。
【0077】
接着剤の付与量は通常0.05~10.0g/mの範囲である。接着強度の観点から、付与量は0.05g/m以上が好ましい。インク通過性や良好な穿孔の観点から、塗布量は10.0g/m以下が好ましい。
【0078】
積層体Lに活性エネルギー線を照射する方法はとくに限定されない。
活性エネルギー線としては、紫外線、X線、電子線、可視光等が挙げられるが、なかでも紫外線が好ましい。
活性エネルギー線を照射する工程では、例えば、紫外線を照射する光源を用いて紫外線を積層体Lに照射してもよい。紫外線を照射する光源としては、紫外線を出射するUV-LED、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を挙げることができる。
【0079】
活性エネルギー線は、例えば、積層体Lのスクリーン紗側から照射してもよく、熱可塑性樹脂フィルム側から照射してもよい。
【0080】
感熱スクリーンマスターの製造方法は、活性エネルギー線照射工程のほかに、他の工程を含んでよい。
感熱スクリーンマスターの製造方法は、活性エネルギー線照射工程の前に、積層体Lを製造する工程を含んでもよい。
感熱スクリーンマスターの製造方法は、例えば、活性エネルギー線照射工程の後に、得られた積層体をロール状に巻き取る工程を含むことが好ましい。
【0081】
感熱スクリーンマスターの製造方法は、例えば、活性エネルギー線照射工程の後に、得られた積層体を乾燥させる乾燥工程を含むことが好ましい。乾燥工程における乾燥温度としては、30℃~60℃(例えば、50℃)が好ましい。乾燥時間としては、1~5日(例えば3日)が好ましい。湿度を調整してもよく、湿度を70~90%(例えばRH80%)としてもよい。
【0082】
乾燥は、条件を変えて多段階で行ってもよい。例えば、温度40~70℃(例えば60℃)で一段目の乾燥を行い、その後、例えば、多湿状態(例えば、RH70~90%)で二段目の乾燥を行ってもよい。多湿状態の際、温度は、25~35℃程度であってもよい。一段目の乾燥及び二段目の乾燥時間はとくに限定されず、それぞれ1~2日程度であってよい。
【0083】
感熱スクリーンマスターの製造方法は、例えば、活性エネルギー線照射工程の後に、得られた積層体をロール状に巻き取る工程、及び、乾燥工程をこの順に含んでもよい。
【0084】
この感熱スクリーンマスターは、サーマルヘッドを用いた感熱製版装置等で製版して、孔版印刷用の版として使用することができる。
この感熱スクリーンマスターを製版して得られた版を用いて、孔版印刷を行うことができる。印刷に使用するインクとしては、例えば、スクリーン印刷等の孔版印刷に使用することができるインクを使用することができる。かかるインクは、油性インク、ソルベントインク、水性インク、油中水(W/O)型エマルジョンインク、水中油(O/W)型エマルジョンインク、プラスチゾルインクの何れであってもよい。
【実施例
【0085】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断らない限り、「%」は「質量%」である。表中の各材料の配合量も「質量%」で示す。
【0086】
1.接着剤
表1及び2に、各実施例及び比較例の接着剤の組成を示す。表1及び2中の各成分の配合量は質量%で示す。各実施例及び比較例の接着剤は、表1及び2に示す材料を表1及び2に示す割合で混合して用いた。
【0087】
表1及び2に記載の各材料の詳細を下記に示す。
タケラックA-666:ウレタンプレポリマー(三井化学株式会社製)
エクセノール750ED:ポリエーテルポリオール(AGC株式会社製)
TPA-100:ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート変性体(旭化成株式会社製)
UA-306H:ウレタン(メタ)アクリレート(ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー)(共栄社化学株式会社製)
エポキシエステル80MFA:エポキシ(メタ)アクリレート(エポライト80MF(グリセリンジグリシジルエーテル)アクリル酸付加物)(共栄社化学株式会社製)
Omnirad907:光重合開始剤(2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン)(IGM Resin社)
【0088】
2.感熱スクリーンマスターの作製
ラミネーターを用いて、厚さ73μmのポリエステル製スクリーン紗(メッシュ数#200、線径48μm)(日本特殊織物株式会社製「79/200-48」)と、厚さ2μmの二軸延伸ポリエステルフィルムとを上記した接着剤で貼り合せて積層体を得た。接着剤は、ロールコータを用いて付与量3.0g/mで付与した。
この積層体に、紫外線を照射し、得られた積層体を巻き取り、60℃の恒温器で1日乾燥後、30℃80%RHの恒温器で1日乾燥させて、感熱スクリーンマスターを作製した。
【0089】
3.評価
上記のようにして得られた各実施例及び比較例の接着剤又は感熱スクリーンマスターを用いて、下記のようにしてシワ発生数、接着強度、及び耐溶剤性の評価を行った。結果を表1~3に示す。
【0090】
<シワ発生数>
各実施例及び比較例の感熱スクリーンマスターの1m×100mの範囲内のシワの発生数をカウントし、下記の評価基準で評価した。
S:1m×100mの範囲内のシワの発生数0個
A:1m×100mの範囲内のシワの発生数1~4個
B:1m×100mの範囲内のシワの発生数5~10個
S:1m×100mの範囲内のシワの発生数10個超
【0091】
<接着強度>
各実施例及び比較例の感熱スクリーンマスターを用いて接着強度を評価した。具体的には、感熱スクリーンマスターの熱可塑性樹脂フィルム側に粘着テープを貼り付け、端部のスクリーン紗と熱可塑性樹脂フィルムを剥離した後、株式会社東洋精機製作所製「ストログラフVGS05-D」にてラミネート剥離強度を測定し、得られた結果を下記の評価基準に基づいて評価した。
【0092】
S:120gf/25mm以上
A:100gf/25mm以上120gf/25mm未満
B:60gf/25mm以上100gf/25mm未満
C:60gf/25mm未満
【0093】
<耐溶剤性>
各実施例及び比較例の接着剤を用いて耐溶剤性を評価した。具体的には、上記した接着剤を、厚さ125μmのPETフィルム上に、塗布厚さ5μmのバーコータにて塗布し、60℃の恒温器にて1日乾燥後、30℃80%RHの恒温器にて1日乾燥させた。
得られた塗膜をトルエンに15分間浸漬し、トルエン浸漬前後の塗膜の重量変化率を測定し、その絶対値を下記の評価基準に基づいて評価した。
【0094】
S:0.5%以下
A:0.5%超2.0%以下
B:2.0%超5.0%以下
C:5.0%超
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
表に示すように、実施例1~7は、シワ発生数及び接着強度のいずれにおいても優れた結果が得られた。
これに対して、成分C及び成分Dがいずれも接着剤に含まれていない比較例1及び2では、いずれもシワ発生数が多かった。成分A及び成分Bがいずれも接着剤に含まれていない比較例3では、接着強度に劣っていた。