(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】架橋性電気活性フッ素化ポリマー
(51)【国際特許分類】
C08F 8/30 20060101AFI20240820BHJP
C08F 214/22 20060101ALI20240820BHJP
C08F 214/24 20060101ALI20240820BHJP
C08L 27/22 20060101ALI20240820BHJP
C08L 27/14 20060101ALI20240820BHJP
C09D 127/22 20060101ALI20240820BHJP
C09D 127/16 20060101ALI20240820BHJP
G03F 7/012 20060101ALI20240820BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
C08F8/30
C08F214/22
C08F214/24
C08L27/22
C08L27/14
C09D127/22
C09D127/16
G03F7/012 501
G03F7/20 521
G03F7/20 501
(21)【出願番号】P 2019568385
(86)(22)【出願日】2018-07-16
(86)【国際出願番号】 FR2018051791
(87)【国際公開番号】W WO2019016454
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-07-12
(32)【優先日】2017-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(73)【特許権者】
【識別番号】514058706
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ボルドー
(73)【特許権者】
【識別番号】513277212
【氏名又は名称】アンスティチュ ポリテクニーク ドゥ ボルドー
(73)【特許権者】
【識別番号】311016455
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アドジオアヌー,ジョルジュ
(72)【発明者】
【氏名】クルテ,エリク
(72)【発明者】
【氏名】ブロション,シリル
(72)【発明者】
【氏名】トウオー,ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】カリトシス,コンスタンティノス
(72)【発明者】
【氏名】ドミンゲス・ドス・サントス,ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】スレスタン,ティボー
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104987631(CN,A)
【文献】特表2015-500910(JP,A)
【文献】特表2012-500322(JP,A)
【文献】国際公開第2017/072427(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F、C08L、C09D、G03F7
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化ビニリデンモノマー及びトリフルオロエチレンモノマーから得られる単位、及び、二重結合と塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される脱離基とを含むフルオロモノマーXから得られる単位を含むコポリマーであって、前記脱離基が、前記コポリマー内においてアジド基で部分的に置換されており、前記フルオロモノマーXが、クロロトリフルオロエチレン及びクロロフルオロエチレンから選択される、コポリマー。
【請求項2】
フッ化ビニリデンモノマーから得られる単位及びトリフルオロエチレンモノマーから得られる単位の両方を含む、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
フルオロモノマーXから得られる単位の総量が、1~20モル%を構成する、請求項1又は2に記載のコポリマー。
【請求項4】
コポリマー内のアジド基で置換された脱離基のモル割合が、5~90%である、請求項1~3のいずれかに記載のコポリマー。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のコポリマーを含む組成物であって、液体ビヒクル中の前記コポリマーの溶液又は分散体である、組成物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載のコポリマーを調製するための方法であって、
-フッ化ビニリデンモノマー及びトリフルオロエチレンモノマーから得られる単位と、前記フルオロモノマーXから得られる単位とを含む開始コポリマーを供給することと、
-アジド基を含む化合物に前記開始コポリマーを接触させることと
を含む方法。
【請求項7】
前記アジド基を含む化合物がアジ化ナトリウムである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記接触させることが、溶媒中で実施される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
-フッ化ビニリデンモノマー及び/又はトリフルオロエチレンモノマーから得られる単位、及び、二重結合と塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される脱離基とを含むフルオロモノマーX’から得られる単位を含む第1のコポリマーと、
-フッ化ビニリデンモノマー及びトリフルオロエチレンモノマーから得られる単位、及び、二重結合と塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される脱離基とを含むフルオロモノマーXから得られる単位を含む第2のコポリマーであって、該第2のコポリマー内の前記脱離基の一部がアジド基で置換されている第2のコポリマーと
を含み、
前記フルオロモノマーXが、クロロトリフルオロエチレン及びクロロフルオロエチレンから選択される、
組成物。
【請求項10】
前記フルオロモノマーX’が、クロロトリフルオロエチレン及びクロロフルオロエチレンから選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記第1の
コポリマーが、フッ化ビニリデンモノマーから得られる単位及びトリフルオロエチレンモノマーから得られる単位の両方を含み、且つ、前記第2のコポリマーが、フッ化ビニリデンモノマーから得られる単位及びトリフルオロエチレンモノマーから得られる単位の両方を含む、請求項9又は10に記載の組成物。
【請求項12】
前記第1のコポリマーが、1~20モル%のフルオロモノマーXから得られる単位の総量を含み、且つ/又は、前記第2のコポリマーが、1~20モル%のフルオロモノマーX’から得られる単位の総量を含む、請求項9~11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
5~95重量%の前記第1のコポリマー及び5~95重量%の前記第2のコポリマーを含む(ただし、前記分量は、前記第1のコポリマー及び前記第2のコポリマーの合計に対して表されている)、請求項9~12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
液体ビヒクル中の前記第1のコポリマー及び前記第2のコポリマーの溶液又は分散体である、請求項9~13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
請求項9~14のいずれかに記載の組成物を製造するための方法であって、
-前記第1のコポリマーを供給することと、
-前記第2のコポリマーを供給することと、
-前記第1のコポリマーと前記第2のコポリマーとを混合することと
を含む方法。
【請求項16】
前記第2のコポリマーを供給することが、この第2のコポリマーを調製することを含み、
当該第2のコポリマーを調製することが、
-フッ化ビニリデンモノマー及びトリフルオロエチレンモノマーから得られる単位と前記フルオロモノマーXから得られる単位とを含む開始コポリマーを供給することと、
-アジド基を含む化合物に前記開始コポリマーを接触させることと
を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アジド基を含む化合物がアジ化ナトリウムである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記接触させることが、溶媒中で実施される、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
膜を製造するための方法であって、
-請求項1~4のいずれかに記載のコポリマー又は請求項5及び9~14のいずれかに記載の組成物を基板に塗布することと、
-前記コポリマー又は前記組成物を架橋することと
を含む、方法。
【請求項20】
前記架橋が、所定のパターンに従って実施され、前記方法が、溶媒と接触させることによる、コポリマー又は組成物の架橋されなかった部分の除去を続けて含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項19又は20に記載の方法によって得られる膜。
【請求項22】
請求項21に記載の膜を備える電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋性電気活性フルオロポリマー、それを調製するための方法及びそれから製造された膜に関する。
【背景技術】
【0002】
電気活性フルオロポリマー又はEAFPは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)の主要な誘導体である。上記に関しては、Soulestin et al.による論説Vinylidene fluoride-and trifluoroethylene-containing fluorinated electroactive copolymer.How does chemistry impact properties? Prog.Polym.Sci.2017所収(DOI:10.1016/j.progpolymsci.2017.04.004)を参照されたい。このポリマーは、特に興味深い誘電特性及び電気機械的特性を示す。フッ化ビニリデン(VDF)モノマー及びトリフルオロエチレン(TrFE)モノマーから形成されたフッ素化コポリマーは、その圧電特性、焦電特性及び強誘電特性のために特に興味深い。特に、フッ素化コポリマーは、力学的エネルギー若しくは熱エネルギーを電気エネルギーに、又は電気エネルギーを力学的エネルギー若しくは熱エネルギーに変換することを可能にする。
【0003】
このフッ素化コポリマーのいくつかはまた、塩素又は臭素又はヨウ素の置換基及び特にクロロトリフルオロエチレン(CTFE)又はクロロフルオロエチレン(CFE)を有する他のモノマーから得られる単位も含んでいる。このようなコポリマーは、一組の有用な特性、すなわち、(温度の関数としての電媒定数の極大値が、ブロードであり、しかも電場の周波数に依存することで特徴づけられる)リラクサ強誘電体の性質、高い電媒定数、高い飽和分極及び半結晶性モルホロジーを示す。
【0004】
電気活性フルオロポリマーは、通常、いわゆるインク調合物の塗布によって、膜に成形される。電気活性デバイスの製造中に、所定のパターンに従って膜の一部又は全部を不溶にすることが必要となる場合がある。この理由は、多くの場合、所望のデバイスを製造するためには、ポリマー膜の上に他の層を塗布することが必要となるためである。この他の層の塗布には、多くの場合、溶媒の使用を伴う。電気活性フルオロポリマーが架橋していない場合、他の層の塗布中に、この溶媒により電気活性フルオロポリマーが劣化する可能性がある。
【0005】
フルオロポリマーを架橋するための多くの方法が提案されている。
【0006】
Desheng et al.によるFerroelectrics 2001(pp.21-26)の論説、Mandal et al.によるAppl.Surf.Sci.2012(pp.209-213)の論説及びYang et al.によるPolymer 2013(pp.1709-1728)の論説は、X線又は電子ビームの照射を用いるフルオロポリマーの架橋を記載している。
【0007】
上述の照射は、エネルギーが高く、それゆえ、ポリマー鎖の構造に影響を与える二次的な化学反応を発生させる可能性がある。
【0008】
Tan et al.によるJ.Mat.Chem.A 2013(pp.10353-10361)の論説は、過酸化物化合物との反応によるP(VDF-TrFE)コポリマーの架橋について記載している。
【0009】
Shin et al.によるAppl.Mater.Inter.2011(pp.582-589)の論説は、他の架橋剤、すなわち2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミンとの反応によるP(VDF-TrFE)コポリマーの架橋について記載している。
【0010】
文献US2007/01666838は、ビス-アジド光開始剤の存在下において紫外線照射によりフルオロポリマーを架橋するための方法を記載している。
【0011】
同様の技術は、van Breemen et al.によるAppl.Phys.Lett.2011(no.183302)の論説及びChen et al.によるMacromol.Rapid.Comm.2011(pp.94-99)の論説において記載されている。
【0012】
上記の文献のいずれにおいても、架橋には、架橋剤並びにポリマーの存在が必要とされる。この薬剤を添加すると、ポリマー膜の調製がより複雑化し、しかも電気活性特性を劣化させる可能性がある。ポリマー膜を調製するための調合に使用する成分数の低減は、一般的な要望である。
【0013】
文献WO2013/087500は、VDFと、TrFEと、アジド基を含有する第3のモノマーとを重合することにより調製されるフルオロポリマーを記載している。このフルオロポリマーは、その後に、好ましくは、架橋剤の存在下において、架橋することができる。
【0014】
文献WO2013/087501は、VDFと、TrFEと、アジド基を含む架橋剤とから得られる単位を含むフルオロポリマーを含む組成物に関する。
【0015】
文献WO2015/128337は、VDFと、TrFEと、(メタ)アクリル系の第3のモノマーとを重合することにより調製されるフルオロポリマーを記載している。このフルオロポリマーは、その後に、好ましくは、架橋剤の存在下において、架橋することができる。
【0016】
文献WO2010/021962は、アジド基を含むフルオロポリマーを記載しているが、これはフルオロポリマーをアジド化合物と反応させるか、又はアジド化合物の存在下においてモノマーを重合することにより得ることができる。この文献中で与えられているフルオロポリマーの例は、VDF及びHFP(ヘキサフルオロプロピレン)系のコポリマー、又はアジ化ナトリウムと反応する末端ヨウ素化ポリマー(PVDF-I及び1-ヨードペルフルオロオクタン)である。
【0017】
上記の文献のいずれもが、上述した有用な特性、特に、高い電媒定数を示す電気活性ポリマーを提供していない。電気活性ポリマーの有用な特性は、本質的に架橋後に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】米国特許出願公開第2007/01666838号明細書
【文献】国際公開第2013/087500号
【文献】国際公開第2013/087501号
【文献】国際公開第2015/128337号
【文献】国際公開第2010/021962号
【非特許文献】
【0019】
【文献】Soulestin et al.,Vinylidene fluoride-and trifluoroethylene-containing fluorinated electroactive copolymer.How does chemistry impact properties?Prog.Polym.Sci.2017(DOI:10.1016/j.progpolymsci.2017.04.004)
【文献】Desheng et al.,Ferroelectrics 2001(pp.21-26)
【文献】Mandel et al.,Appl.Surf.Sci.2012(pp.209-213)
【文献】Yang et al.,Polymer 2013(pp.1709-1728)
【文献】Tan et al.,J.Mat.Chem.A 2013(pp.10353-10361)
【文献】Shin et al.,Appl.Mater.Inter.2011(pp.582-589)
【文献】van Breemen et al.,Appl.Phys.Lett.2011(no.183302)
【文献】Chen at al.,Macromol.Rapid.Comm.2011(pp.94-99)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、主として、フッ化ビニリデンモノマー及び/又はトリフルオロエチレンモノマーから得られる単位、及び二重結合と塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される脱離基とを含むフルオロモノマーXから得られる単位を含むコポリマーに関する。脱離基は、コポリマー内においてアジド基で部分的に置換されている。
【0021】
いくつかの実施形態において、フルオロモノマーXは、クロロトリフルオロエチレン及びクロロフルオロエチレンから選択される。
【0022】
いくつかの実施形態において、コポリマーは、フッ化ビニリデンモノマーから得られる単位及びトリフルオロエチレンモノマーから得られる単位の両方を含み、トリフルオロエチレンモノマーから得られる単位の割合は、フッ化ビニリデンモノマーから得られる単位及びトリフルオロエチレンモノマーから得られる単位の合計に対して、好ましくは15~55モル%である。
【0023】
いくつかの実施形態において、コポリマーは、フルオロモノマーXから得られる単位の総量が、1~20モル%、好ましくは2~15モル%を構成する。
【0024】
いくつかの実施形態において、コポリマー内のアジド基で置換された脱離基のモル割合は、5~90%、好ましくは10~75%、さらに好ましくは、15~40%である。
【0025】
いくつかの実施形態において、組成物は、液体ビヒクル中のコポリマーの溶液又は分散体である。
【0026】
本発明はまた、上述したコポリマーを調製するための方法に関し、
-フッ化ビニリデンモノマー及び/又はトリフルオロエチレンモノマーから得られる単位と、前記フルオロモノマーXから得られる単位とを含む開始コポリマーを供給することと、
-アジド基を含む化合物に開始コポリマーを接触させることと
を含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、アジド基を含む化合物はアジ化ナトリウムである。
【0028】
いくつかの実施形態において、接触させることは、ジメチルホルムアミド;ジメチルアセトアミド;ジメチルスルホキシド;ケトン、特にアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロペンタノン;フラン、特にテトラヒドロフラン;エステル、特に酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート;カーボネート、特に炭酸ジメチル;並びにホスフェート、特にリン酸トリエチルから好ましくは選択される溶媒中で実施される。
【0029】
本発明はまた、
-フッ化ビニリデンモノマー及び/又はトリフルオロエチレンモノマーから得られる単位、及び二重結合と塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される脱離基とを含むフルオロモノマーX’から得られる単位を含む第1のコポリマーと、
-フッ化ビニリデンモノマー及び/又はトリフルオロエチレンモノマーから得られる単位、及び二重結合と塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される脱離基とを含むフルオロモノマーXから得られる単位を含む第2のコポリマーであって、第2のコポリマー内の脱離基の一部又は全部がアジド基で置換されている第2のコポリマーと
を含む組成物に関する。
【0030】
特定の実施形態において、フルオロモノマーXは、クロロトリフルオロエチレン及びクロロフルオロエチレンから選択され、且つ/又は、フルオロモノマーX’は、クロロトリフルオロエチレン及びクロロフルオロエチレンから選択され、且つ、好ましくは、フルオロモノマーXとフルオロモノマーX’とは同一である。
【0031】
いくつかの実施形態において、第1のポリマーは、フッ化ビニリデンモノマーから得られる単位及びトリフルオロエチレンモノマーから得られる単位の両方を含み、トリフルオロエチレンモノマーから得られる単位の割合は、フッ化ビニリデンモノマーから得られる単位及びトリフルオロエチレンモノマーから得られる単位の合計に対して、好ましくは15~55モル%であり、且つ/又は、第2のコポリマーは、フッ化ビニリデンモノマーから得られる単位及びトリフルオロエチレンモノマーから得られる単位の両方を含み、トリフルオロエチレンモノマーから得られる単位の割合は、フッ化ビニリデンモノマーから得られる単位及びトリフルオロエチレンモノマーから得られる単位の合計に対して、好ましくは15~55モル%である。
【0032】
いくつかの実施形態において、第1のコポリマーが1~20モル%、好ましくは、2~15モル%のフルオロモノマーXから得られる単位の総量を含み、且つ/又は、第2のコポリマーが1~20モル%、好ましくは、2~15モル%のフルオロモノマーX’から得られる単位の総量を含む。
【0033】
特定の実施形態において、組成物は、5~95重量%の第1のコポリマー及び5~95重量%の第2のコポリマー、好ましくは30~70重量%の第1のコポリマー及び30~70重量%の第2のコポリマーを含む(ただし、分量は、第1のコポリマー及び第2のコポリマーの合計に対して表されている)。
【0034】
特定の実施形態において、組成物は、液体ビヒクル中の第1のコポリマー及び第2のコポリマーの溶液又は分散体である。
【0035】
本発明はまた、上述した組成物を製造するための方法に関し、この方法は、
-第1のコポリマーを供給することと、
-第2のコポリマーを供給することと、
-第1のコポリマーと第2のコポリマーとを、好ましくは液体ビヒクル中で混合することと
を含む。
【0036】
いくつかの実施形態において、第2のコポリマーを供給することは、この第2のコポリマーを調製することを含み、この第2のコポリマーを調製することは、
-フッ化ビニリデンモノマー及び/又はトリフルオロエチレンモノマーから得られる単位と、前記フルオロモノマーXから得られる単位とを含む開始コポリマーを供給することと、
-アジド基を含む化合物に開始コポリマーを接触させることと
を含む。
【0037】
いくつかの実施形態において、アジド基を含む化合物はアジ化ナトリウムである。
【0038】
いくつかの実施形態において、接触させることは、ジメチルホルムアミド;ジメチルアセトアミド;ジメチルスルホキシド;ケトン、特にアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロペンタノン;フラン、特にテトラヒドロフラン;エステル、特に酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート;カーボネート、特に炭酸ジメチル;並びにホスフェート、特にリン酸トリエチルから好ましくは選択される溶媒中で実施される。
【0039】
本発明はまた、膜を製造するための方法に関し、この方法は、
-上述したコポリマー又は上述した組成物を基板に塗布することと、
-コポリマー又は組成物を架橋することと
を含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、架橋は、所定のパターンに従って実施され、この方法は、溶媒と接触させることによる、コポリマー又は組成物の架橋されなかった部分の除去を続けて含む。
【0041】
本発明はまた、上述した方法によって得られる膜に関する。
【0042】
本発明はまた、上述した膜を備える電子デバイスに関する。電子デバイスは、電界効果トランジスタ、メモリデバイス、コンデンサ、センサ、アクチュエータ、微小電気機械システム、電気熱量デバイス及びハプティックデバイスから好ましくは選択される。
【0043】
本発明により、従来技術の欠点を克服することが可能になる。本発明は、特に、架橋性電気活性ポリマーと、架橋性電気活性ポリマーを含む組成物とを提供する。本発明により、架橋後に、所定のパターンを有するとともに、以下の特性:半結晶性モルホロジー、高い電媒定数、高い飽和分極及びキュリー転移のうちの1つ以上(好ましくは、全て)を示す不溶性ポリマー膜を入手することが可能になる。
【0044】
さらに、本発明により、過剰の照射エネルギーを用いることなく、しかも、架橋剤を添加することもなく、架橋を実施することができる。
【0045】
本発明は、VDFモノマー及び/又はTrFEモノマー並びに脱離基(Br、Cl、若しくはI)を含むモノマーから得られるビルディングブロック(この明細書では、構造単位、又は単に単位とも呼ばれる)を含むコポリマーの使用に基づいている。脱離基の一部は、アジド基で置換されており、これは架橋を可能にする。この置換は、ポリマーをアジ化ナトリウムのようなアジド化合物と反応させることにより容易に実施することができる。脱離基の他の部分は、上述した有利な特性をポリマー膜に付与するために保持される。
【0046】
本発明の他の利点は、合成法が十分に習得された既存のポリマーの領域から架橋性ポリマーを入手することを可能にする点にある。それゆえ新規の重合化工程の開発を必要としない。
【0047】
本発明を実現するために二つの主要な実施形態を考えることができる。
【0048】
-一方の可能性は、一種類のフルオロポリマーを使用して、脱離基を部分的にアジド基で置換するように単一のフルオロポリマーをアジド化合物で処理し、次いで、このフルオロポリマーを架橋することである。
【0049】
-もう一方の可能性は、フルオロポリマーの混合物を使用して、そのうちの一種類のみがアジド基で置換される脱離基を有し、次いで、フルオロポリマーのこの混合物を架橋することである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】(実施例1による)本発明によるポリマー及び対照ポリマーの赤外吸収スペクトルを示すグラフである。横軸は波長を示す。
【
図2】(実施例2による)本発明によるポリマー膜の光学顕微鏡で得られる写真である。横目盛りは、500μmに対応している。
【
図3】(実施例2による)本発明による膜の架橋前、架橋後及び現像後の電媒定数を表す。横軸に周波数を、縦軸に電媒定数を示す。
【
図4】(実施例2による)本発明による膜の架橋前、架橋後及び現像後の分極曲線を表すグラフである。横軸に電場を、縦軸に分極を示す。
【
図5】(実施例3による)本発明によるポリマーの架橋前及び架橋後の赤外吸収スペクトルを表すグラフである。横軸は波長を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明は、以下の記載において、より詳細に説明されるが、本発明を限定するものではない。
【0052】
本発明は、以下PFポリマーと呼称されるフルオロポリマーの使用に基づいている。このPFポリマーは、アジド基(-N3)を用いてグラフト化のために改変されて開始ポリマーとして使用することができる。このように改変されたフルオロポリマーは、以下において、PFMポリマーと呼称される。
【0053】
PFポリマー
本発明によれば、PFポリマーは、VDFモノマー及び/又はTrFEモノマーから得られる単位、並びに二重結合とCl、Br及びIから選択される脱離基とを含む少なくとも1種の他のフルオロモノマーXから得られる単位を含む。
【0054】
いくつかの変形形態において、PFポリマーは、P(VDF-X)コポリマーである。
【0055】
いくつかの変形形態において、PFポリマーは、P(TrFE-X)コポリマーである。
【0056】
いくつかの好ましい実施形態において、PFポリマーは、P(VDF-TrFE-X)ターポリマーである。
【0057】
別の変形形態において、複数の異なるフルオロモノマーXから得られる単位が、PFポリマー内に存在してもよい。
【0058】
別の変形形態において、上述したモノマーに付け加えて、1種以上の追加のモノマーから得られる単位が、PFポリマー内に存在してもよい。
【0059】
PFポリマーは、好ましくは、VDFから得られる単位とTrFEから得られる単位の両方を含む。
【0060】
TrFEから得られる単位の割合は、好ましくは、VDFから得られる単位及びTrFEから得られる単位の合計に対して、5~95モル%、特に、5~10モル%、又は10~15モル%、又は15~20モル%、又は20~25モル%、又は25~30モル%、又は30~35モル%、又は35~40モル%、又は40~45モル%、又は45~50モル%、又は50~55モル%、又は55~60モル%、又は60~65モル%、又は65~70モル%、又は70~75モル%、又は75~80モル%、又は80~85モル%、又は85~90モル%、又は90~95モル%である。15~55モル%の範囲が、特に好ましい。
【0061】
フルオロモノマーXは、少なくとも1個のフッ素原子を含む。
【0062】
フルオロモノマーXは、好ましくは、5個以下の炭素原子、より好ましくは、4個以下の炭素原子、さらにより好ましくは、3個以下の炭素原子を含み、さらにより好ましくは、フルオロモノマーXは、2個の炭素原子を含む。
【0063】
フルオロモノマーXの化学式は、好ましくは、CX1CX2=CX3X4であり、X1、X2、X3及びX4の各基は、独立して、H、F、Cl、I、若しくはBrの原子、又はF、Cl、I及びBrから選択される1個以上の置換基を任意選択で含有するC1-C3(好ましくは、C1-C2)のアルキル基を表す。
【0064】
いくつかの実施形態において、X1、X2、X3及びX4の各基は、独立して、H、F、Cl、I、若しくはBrの原子、又はF、Cl、I及びBrから選択される1個以上の置換基を任意選択で含有するメチル基を表す。
【0065】
いくつかの実施形態において、X1、X2、X3及びX4の各基は、独立して、H原子、F原子、Cl原子、I原子、又はBr原子を表す。
【0066】
いくつかの実施形態において、X1、X2、X3及びX4のうちの1つの基のみが、Cl原子、I原子、又はBr原子を表し、X1、X2、X3及びX4の他の基は、独立して、H原子若しくはF原子、又は任意選択で1個以上のフッ素置換基を含有するC1-C3のアルキル基、好ましくは、H原子若しくはF原子、又は任意選択で1個以上のフッ素置換基を含有するC1-C2のアルキル基、より好ましくは、H原子若しくはF原子、又は任意選択で1個以上のフッ素置換基を含有するメチル基を表す。
【0067】
特に好ましくは、フルオロモノマーXは、ブロモトリフルオロエチレン、クロロフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン及びクロロトリフルオロプロペンから選択される。クロロフルオロエチレンは、1-クロロ-1-フルオロエチレン、又は1-クロロ-2-フルオロエチレンを指すことができる。1-クロロ-1-フルオロエチレンの異性体が好ましい。クロロトリフルオロプロペンは、好ましくは、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、又は2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンである。
【0068】
最も好ましいフルオロモノマーXは、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)及びクロロフルオロエチレン、特に1-クロロ-1-フルオロエチレン(CFE)である。
【0069】
PFポリマー内のフルオロモノマーXから得られる単位の(単位の全体に対する)割合は、例えば、0.5~1モル%、又は1~2モル%、又は2~3モル%、又は3~4モル%、又は4~5モル%、又は5~6モル%、又は6~7モル%、又は7~8モル%、又は8~9モル%、又は9~10モル%、又は10~12モル%、又は12~15モル%、又は15~20モル%、又は20~25モル%、又は25~30モル%、又は30~40モル%、又は40~50モル%で変化してもよい。1~20モル%、好ましくは、2~15モル%の範囲が、特に適切である。
【0070】
PFポリマー内の単位のモル組成は、赤外分光法又はラマン分光法のような様々な手段により定量化することができる。X線蛍光分光法などの、炭素、フッ素及び塩素又は臭素又はヨウ素の元素の元素分析の従来の方法は、ポリマーの質量組成を明確に算出することが可能になり、質量組成からモル組成が導出される。
【0071】
適切に重水素化された溶媒中のポリマー溶液の分析に際して、多核核磁気共鳴の手法、特に、プロトン(1H)及びフッ素(19F)核磁気共鳴の手法を使用することもできる。磁気共鳴スペクトルは、多核プローブを搭載したフーリエ変換核磁気共鳴分光計に記録される。次いで、様々なモノマーによって与えられる特異的な信号が、どちらか一方の核により生成されたスペクトル中で特定される。かくて、例えば、TrFE由来の単位は、プロトン核磁気共鳴法において、CFH基に特異的な信号特性を(5ppm付近に)与える。VDFのCH2基についても同様である(3ppmを中心とするブロードな分解されていないピーク)。二つの信号の相対積分値は、二つのモノマーの相対存在率、すなわち、VDF/TrFEのモル割合を与える。
【0072】
同様にして、TrFEの-CFH基は、例えば、フッ素核磁気共鳴法において、特徴的な、しかも十分に単離された信号を与える。プロトン核磁気共鳴法及びフッ素核磁気共鳴法で得られる様々な信号の相対積分値の組合せにより、方程式系がもたらされ、この方程式系の解が、様々なモノマー由来の単位のモル濃度を与える。
【0073】
最終的に、例えば、塩素、又は臭素、又はヨウ素のようなヘテロ原子の元素分析と核磁気共鳴分析とを組み合わせることができる。それゆえ、CTFE由来の単位の含有量は、例えば、元素分析による塩素含有量の測定により定量化することができる。
【0074】
したがって、当業者は、曖昧さを伴うことなく、しかも必要な精度をもって、PFポリマーの組成を定量化することのできる広範な方法又は方法の組合せを利用することができる。
【0075】
PFポリマーは、好ましくは、ランダムであり、しかも線状である。
【0076】
PFポリマーは、有利には熱可塑性であり、(フルオロエラストマーとは対照的に)エラストマー性ではない、又はエラストマー性は強くない。
【0077】
PFポリマーは、均一であっても、不均一であってもよい。均一なポリマーは、一様な鎖状構造を有し、様々なモノマー由来の単位の統計的分布は、各鎖間でほとんど変動しない。不均一なポリマーでは、鎖は、マルチモーダル型又はスプレッドアウト型の様々なモノマーから得られる単位の分布を有する。したがって、不均一ポリマーは、所与の単位が多い鎖と所与の単位が少ない鎖とを含む。不均一ポリマーの一例は、文献WO2007/080338において見ることができる。
【0078】
PFポリマーは、電気活性ポリマーである。
【0079】
特に、好ましくは、電気活性ポリマーは、0~150℃、好ましくは、10~140℃に、誘電率の極大値を示す。強誘電性ポリマーの場合、この極大値は、「キュリー温度」と呼ばれ、強誘電相から常誘電相への転移に対応する。この温度の極大値、又は転移温度は、示差走査熱量測定法又は誘電分光分析法により測定することができる。
【0080】
ポリマーは、好ましくは、90~180℃、特に、100~170℃の融解温度を有する。融解温度は、ASTM D3418規格に準拠して示差走査熱量測定法により測定することができる。
【0081】
PFポリマーの製造
PFポリマーは、乳化重合、懸濁重合及び溶液重合のようないずれかの公知の方法を用いて製造することができるが、WO2010/116105に記載された方法を使用することが好ましい。この方法により、分子量の大きいポリマー及び適切に構造化されたポリマーを得ることができる。
【0082】
要約すると、好ましい方法は、以下のステップ、
-VDF及び/又はTrFEのみを含有する(フルオロモノマーXが不在の)初期混合物を、水を含有する、撹拌中のオートクレーブに投入するステップと、
-前記オートクレーブを、重合温度に近い所定の温度に加熱するステップと、
-VDFモノマー及び/又はTrFEモノマーの懸濁物が水中に形成するように、オートクレーブ内部の圧力を、好ましくは、少なくとも80バールに到達させるために、前記オートクレーブ内部に水と混合したラジカル重合開始剤を注入するステップと、
-VDF及び/又はTrFE並びにX(及び、もしあれば、任意選択で追加のモノマー)の第2の混合物を前記オートクレーブに注入するステップと、
-重合反応が開始したら直ちに、前記圧力を本質的に一定のレベル、好ましくは、少なくとも80バールに維持するために、前記第2の混合物を前記オートクレーブ反応器に連続的に注入するステップと
を含む。
【0083】
ラジカル重合開始剤は、特に、ペルオキシジカーボネート系の有機過酸化物とすることができる。それは、通常、モノマーの全投入量の1キログラム当たり、0.1~10g使用される。使用量は、好ましくは、0.5~5g/kgである。
【0084】
初期混合物は、有利には、所望の最終ポリマーの割合と等しい割合のVDF及び/又はTrFEのみを含む。
【0085】
第2の混合物は、有利には、初期混合物及び第2の混合物を含むオートクレーブに導入されるモノマーの全組成が、所望の最終ポリマーの組成に等しい、又はほぼ等しくなるように調整された組成を有する。
【0086】
初期混合物に対する第2の混合物の重量比は、好ましくは、0.5~2、より好ましくは、0.8~1.6である。
【0087】
この方法を初期混合物及び第2の混合物を用いて実施すると、この方法は、反応の初期段階に依存しないようになる。多くの場合予測不能である。このようにして得られるポリマーは、外皮又は表皮のない粉末の形態である。
【0088】
オートクレーブ内部の圧力は、好ましくは、80~110バールであり、温度は、好ましくは、40℃~60℃のレベルに維持される。
【0089】
第2の混合物は、オートクレーブに連続的に注入することができる。第2の混合物は、オートクレーブに注入する前に、例えば、一台の圧縮機又は連結した2台の圧縮機を用いて、通常、オートクレーブ内部の圧力よりも高い圧力に圧縮することができる。
【0090】
合成後に、ポリマーを洗浄及び乾燥することができる。
【0091】
ポリマーの重量平均モル質量Mwは、好ましくは、少なくとも100,000g mol-1、好ましくは、少なくとも200,000g mol-1、より好ましくは、少なくとも300,000g mol-1、又は少なくとも400,000g mol-1である。ポリマーの重量平均モル質量Mwは、反応器内部の温度などの特定の工程パラメータを修正することにより、又は移動剤を添加することにより、調整することができる。
【0092】
空隙率が漸増する3本のカラムのセットを有し、ジメチルホルムアミド(DMF)を溶離剤とするSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)によって、分子量分布を推定することができる。固定相は、スチレン-DVBゲルである。検出方法は、屈折率の測定に基づき、較正は、ポリスチレン標準を用いて実施する。試料をDMF中に0.5g/Lで溶解し、0.45μmのナイロンフィルタを通して濾過する。
【0093】
PFMポリマー
PFMポリマーは、アジド化合物との反応により、PFポリマーから製造することができる。
【0094】
PFMポリマーは、好ましくは、C-C(X)N3-C-の単位の形態でポリマー鎖に組み込まれたアジド基を含み、Xは、水素原子若しくはハロゲン原子、又は置換された、若しくは未置換のアルキル基を表し、好ましくは、Xは、H又はFを表す。
【0095】
反応を可能にするアジド化合物は、化学式M(N3)nの化合物を含み、Mは、1価若しくは多価のカチオン、又はH若しくはハロゲン(I、Br、若しくはCl)、又は擬ハロゲン(特にCN)を表し、nは整数を表す。好ましくは、Nは、カチオンであり、nは、カチオンの価数に対応する。
【0096】
Mは、特に、金属カチオン又はアンモニウムカチオン(若しくはテトラアルキルアンモニウムカチオンのような誘導体)とすることができる。1価(例えば、カリウム若しくはナトリウム)又は2価(例えば、カルシウム若しくはマグネシウム)の金属カチオンが好ましい。
【0097】
アジド化合物は、好ましくは、アジ化ナトリウムNaN3及びアジ化カリウムKN3から選択される。アジ化ナトリウムが特に好ましい。
【0098】
PFポリマーは、PFポリマーとアジド化合物を、PFポリマーが溶解した溶媒中で化合させることによりPFMポリマーに変換することができる。
【0099】
使用される溶媒は、特に、ジメチルホルムアミド;ジメチルアセトアミド;ジメチルスルホキシド;ケトン、特にアセトン、メチルエチルケトン(又は、ブタン-2-オン)、メチルイソブチルケトン及びシクロペンタノン;フラン、特にテトラヒドロフラン;エステル、特に酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート;カーボネート、特に炭酸ジメチル;並びにホスフェート、特にリン酸トリエチルであり得る。上記の化合物の混合物も使用することができる。
【0100】
反応混合物に導入されるPFポリマーの濃度は、例えば、1~200g/L、好ましくは、5~100g/L、より好ましくは、10~50g/Lとすることができる。
【0101】
反応混合物に導入されるアジド化合物の分量は、アジド基で置換される脱離基の所望の程度に応じて調整することができる。したがって、この分量は、(PFポリマー内に存在する脱離基に対して、反応混合物に導入されるアジド基の)0.1~0.2モル当量、又は0.2~0.3モル当量、又は0.3~0.4モル当量、又は0.4~0.5モル当量、又は0.5~0.6モル当量、又は0.6~0.7モル当量、又は0.7~0.8モル当量、又は0.8~0.9モル当量、又は0.9~1.0モル当量、又は1.0~1.5モル当量、又は1.5~2モル当量、又は2~5モル当量、又は5~10モル当量、又は10~50モル当量とすることができる。
【0102】
反応は、好ましくは、撹拌下に実施される。
【0103】
反応は、好ましくは、20~80℃の温度、より好ましくは、30~70℃の温度、特に、40~65℃の温度で実施される。
【0104】
反応時間は、例えば、15分~48時間、好ましくは、1時間~36時間、より好ましくは、2~24時間とすることができる。
【0105】
所望の反応時間に到達したときに、PFMポリマーを、例えば脱イオン水のような非溶媒から沈殿させることができる。その後に、PFMポリマーを濾過及び乾燥してもよい。
【0106】
PFMポリマーの組成は、上述のような元素分析及び核磁気共鳴法、並びに赤外分光法により特徴づけることができる。特に、アジド官能基の原子価振動の特性吸収帯は、約2150cm-1において観測される。PFMポリマーのアジド基の組成は、示差走査熱量測定による、好ましくは変調を伴う、最初の温度上昇期間中のアジド基の発熱反応エンタルピーを、元素分析及び/又は核磁気共鳴法の結果と相関させることにより特性評価することができる。
【0107】
いくつかの実施形態において、PFMポリマー内では、開始PFポリマー内の脱離基の全てが、アジド基-N3で置換されている。
【0108】
別の(好ましい)実施形態において、PFMポリマー内では、開始PFポリマー内の脱離基は部分的にのみ、アジド基で置換されている。
【0109】
したがって、アジド基で置換された脱離基(例えば、CTFE又はCFEを用いた場合のCl基)のモル割合は、5~10モル%、又は10~20モル%、又は20~30モル%、又は30~40モル%、又は40~50モル%、又は50~60モル%、又は60~70モル%、又は70~80モル%、又は80~90モル%、又は90~95モル%、又は95モル%超であり得る。
【0110】
したがって、PFMポリマー内における脱離基(Cl又はBr又はI)を含有する残留構造単位の割合は、例えば、0.1~0.5モル%、又は0.5~1モル%、又は1~2モル%、又は2~3モル%、又は3~4モル%、又は4~5モル%、又は5~6モル%、又は6~7モル%、又は7~8モル%、又は8~9モル%、又は9~10モル%、又は10~12モル%、又は12~15モル%、又は15~20モル%、又は20~25モル%、又は25~30モル%、又は30~40モル%、又は40~50モル%であり得る。1~15モル%、好ましくは、2~10モル%の範囲が、特に好ましい。
【0111】
したがってまた、PFMポリマー内において、アジド基を含有する構造単位の割合は、例えば、0.1~0.5モル%、又は0.5~1モル%、又は1~2モル%、又は2~3モル%、又は3~4モル%、又は4~5モル%、又は5~6モル%、又は6~7モル%、又は7~8モル%、又は8~9モル%、又は9~10モル%、又は10~12モル%、又は12~15モル%、又は15~20モル%、又は20~25モル%、又は25~30モル%、又は30~40モル%、又は40~50モル%であり得る。1~15モル%、好ましくは、2~10モル%の範囲が、特に好ましい。
【0112】
膜の調製
本発明によるフルオロポリマー膜は、1種以上のPFMポリマーのみ、又は少なくとも1種のPFポリマー及び少なくとも1種のPFMポリマーを基板に塗布することにより調製することができる。後者の場合、PFポリマーを製造するために使用される脱離基を含有するモノマーは、好ましくは、PFMポリマーを製造するために使用される脱離基を含有するモノマーとは同一である。
【0113】
1種以上のPFMポリマーのみを使用する場合、脱離基の一部のみをアジド基で置換するのが望ましい。少なくとも1種のPFポリマーを少なくとも1種のPFMポリマーと組み合わせて使用する場合、PFMポリマーの脱離基の一部のみ、又は全部を、アジド基で置換しておくことができる。
【0114】
少なくとも1種のPFポリマーを少なくとも1種のPFMポリマーと組み合わせる場合、PFポリマー及びPFMポリマーの全体に対する1種又は複数種のPFポリマーの質量比は、特に、5~10%、又は10~20%、又は20~30%、又は30~40%、又は40~50%、又は50~60%、又は60~70%、又は70~80%、又は80~90%、又は90~95%とすることができる。
【0115】
膜の製造は、架橋するステップの前に、PFM(又は、PFM及びPF)ポリマーを基板に塗布するステップを含むことができる。
【0116】
PFM(又は、PFM及びPF)ポリマーはまた、1種以上の他のポリマー、特に、フルオロポリマー、例えば、特に、P(VDF-TrFE)コポリマーと組み合わせることができる。
【0117】
基板は、特に、ガラス表面、シリコン表面、ポリマー材料表面又は金属表面とすることができる。
【0118】
塗布を実施するために、1つの好ましい方法は、液体ビヒクル中に1種又は複数種のポリマーを溶解又は懸濁させて、「インク」組成物を形成することを伴い、この「インク」組成物はその後に、基板に塗布される。液体ビヒクルは、好ましくは、溶媒である。この溶媒は、好ましくは、ジメチルホルムアミド;ジメチルアセトアミド;ジメチルスルホキシド;ケトン、特にアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロペンタノン;フラン、特にテトラヒドロフラン;エステル、特に酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート;カーボネート、特に炭酸ジメチル;並びにホスフェート、特にリン酸トリエチルから選択される。上記の化合物の混合物も使用することができる。
【0119】
液体ビヒクル中のポリマーの全質量濃度は、特に、0.1~30%、好ましくは、0.5~20%とすることができる。
【0120】
インクは、表面張力調整剤、レオロジー調整剤、耐劣化調整剤、接着調整剤、顔料若しくは染料、又は(ナノフィラーを含む)充填剤から特に選択される1種以上の添加剤を任意選択で含むことができる。好ましい添加剤は、特に、インクの表面張力を調整する共溶媒である。特に、溶液の場合、化合物は、使用する溶媒と混和性のある有機化合物とすることができる。インク組成物はまた、1種又は複数種のポリマーの合成に使用した1種以上の添加剤を含むことができる。
【0121】
いくつかの実施形態において、インク組成物は、少なくとも1種の架橋助剤、好ましくは、光開始剤及び/又は架橋剤を含むことができる。
【0122】
光開始剤は、例えば、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパンプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2,4-ジエチルチオキサントンジエチルチオキサントン、その誘導体及びその混合物から選択することができる。
【0123】
架橋剤は、例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、ジ(メタ)アクリル化合物、又はポリ(メタ)アクリル化合物、ポリブタジエンのような、少なくとも2個の反応性二重結合を持つ分子、オリゴマー及びポリマー;トリプロパルギルアミンのような、少なくとも2個の炭素-炭素間、又は炭素-窒素間の反応性三重結合を持つ化合物;その誘導体及びその混合物から選択することができる。
【0124】
別の(好ましい)実施形態において、光開始剤又は架橋剤のような架橋助剤は、基板に塗布するインク中には存在しない。
【0125】
塗布は、特に、スピンコーティング、スプレーコーティング、バーコーティング、ディップコーティング、ロールツーロール印刷、スクリーン印刷、直刷平版印刷、又はインクジェット印刷により実施することができる。
【0126】
液体ビヒクルは、塗布後に蒸発させる。
【0127】
このようにして構成されたフルオロポリマー層は、特に、50nm~50μm、好ましくは、100nm~5μm、より好ましくは、150nm~1μm、より好ましくは、200nm~500nmの厚さを有することができる。
【0128】
架橋するステップは、特に、加熱処理及び/又は紫外線照射により実施することができる。所定のパターンに従って、ポリマー膜の一部のみ架橋させる必要のある場合には、紫外線照射が、特に有利である。というのは、この場合には、架橋しないように意図した膜の一部を、マスクを用いて保護することができるためである。
【0129】
いずれかの理論に束縛されることを望むものではないが、架橋するステップの期間中に、アジド基は、分解してニトレン官能基を形成する傾向があると考えられている。ニトレン官能基は、C-F基又はC-H基と反応することができて、1種又は複数種のポリマーの架橋をもたらす。
【0130】
加熱処理は、膜を、例えば、換気式炉内又はホットプレート上で、例えば、50~150℃、好ましくは、60~130℃の温度に供することにより実施することができる。加熱処理時間は、特に、1分~1時間、好ましくは、2~15分間とすることができる。
【0131】
紫外線照射とは、200~650nm、好ましくは、220~500nmの波長の電磁放射線を照射することを指す。250~450nmの波長が、特に好ましい。放射線は、単色であっても、多色であってもよい。
【0132】
紫外線照射の全線量は、好ましくは、40J/cm2以下、より好ましくは、20J/cm2以下、より好ましくは、10J/cm2以下、より好ましくは、5J/cm2以下、より好ましくは、3J/cm2以下である。膜の表面の劣化を回避するためには、低線量が有利である。
【0133】
この処理は、好ましくは、本質的に酸素の不在下に実施されるが、やはり、膜の劣化を防止するのが目的である。例えば、この処理は、真空下、若しくは不活性雰囲気中、又は酸素を通さない物理的障壁(例えば、ガラス板若しくはポリマー膜)を用いて周囲の空気から膜を保護して実施することができる。
【0134】
本発明の一変形形態によれば、紫外線照射前及び/又は紫外線照射後に、前加熱処理及び/又は後加熱処理を実施することができる。
【0135】
前加熱処理及び後加熱処理は、特に、40~80℃、好ましくは、50~70℃の温度、例えば、約60℃において、30分未満の時間、好ましくは、15分未満の時間実施することができる。
【0136】
この処理は、架橋反応の効果を高める(膜厚の損失を低下させ、紫外線の所要線量を低減し、膜の粗さを向上させる)。
【0137】
架橋が膜の全体に実施されなかった場合、膜の架橋されなかった部分を除去し、所望の幾何学的パターンを膜に出現させるために、現像のステップをその後に実施することができる。現像は、膜を、溶媒に接触させることによって、好ましくは、溶媒浴に液浸することによって実施することができる。この溶媒は、好ましくは、ジメチルホルムアミド;ジメチルアセトアミド;ジメチルスルホキシド;ケトン、特にアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロペンタノン;フラン、特にテトラヒドロフラン;エステル、特に酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート;カーボネート、特に炭酸ジメチル;ホスフェート、特にリン酸トリエチルから選択することができる。上記の化合物の混合物も使用することができる。
【0138】
この溶媒に、好ましくは、溶媒及び非溶媒の全量に対して50質量%~80質量%の特定の分量の非溶媒液体を添加することができる。非溶媒液体は、特に、以下の溶媒、すなわち、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ケトン、フラン、エステル、カーボネート、ホスフェート以外のいずれかの溶媒とすることができる。非溶媒液体は、特に、プロトン性溶媒とすることができる。プロトン性溶媒とは、O原子又はN原子と結合した少なくとも1個のH原子を含む溶媒のことである。好みにより、(エタノール若しくはイソプロパノールのような)アルコール又は脱塩水を使用することができる。非溶媒の混合物を使用することもできる。溶媒と組み合わせた非溶媒の存在により、非溶媒を濯ぎ段階でのみ使用すると仮定した場合よりも、得られるパターンの画成をさらに向上させることができる。
【0139】
現像は、好ましくは、10~100℃の温度、好ましくは、15~80℃の温度、より好ましくは、20~60℃の温度で実施することができる。現像時間は、好ましくは、15分未満、より好ましくは、10分未満である。
【0140】
現像後に、フルオロポリマーに対して非溶媒である液体を用いて、膜を濯ぐことができる。非溶媒液体は、特に、プロトン性溶媒とすることができる。プロトン性溶媒とは、O原子又はN原子と結合した少なくとも1個のH原子を含む溶媒のことである。好みにより、(エタノール若しくはイソプロパノールのような)アルコール又は脱塩水を使用することができる。非溶媒の混合物を使用することもできる。この濯ぎのステップは、膜のパターンの画成を向上させる。
【0141】
濯ぎは、特に、架橋させたPFM膜に非溶媒を噴霧することにより実施することができる。濯ぎはまた、非溶媒浴に液浸することにより実施することができる。濯ぎの期間中の温度は、好ましくは、5~80℃、より好ましくは、10~70℃、特に15~35℃の周囲温度とすることができる。濯ぎステップの時間は、好ましくは、10分未満、より好ましくは、5分未満、特に、1分未満である。
【0142】
任意選択の濯ぎの後に、膜を空気中で乾燥させることができ、任意選択で、例えば、30~150℃、好ましくは、50~140℃の範囲の温度に曝露することにより架橋後の加熱処理を施してもよい。
【0143】
本発明による膜は、1kHz及び25℃における、好ましくは、10以上、より好ましくは、15以上、より好ましくは、20以上、より好ましくは、25以上の電媒定数(又は、比誘電率)によって特徴づけられる。
【0144】
電媒定数は、幾何学的寸法(厚さ及び対向面積)を知った上で、材料の静電容量を測定可能なインピーダンス計を用いて測定することができる。前記材料は、二つの導電性電極の間に配置される。
【0145】
電子デバイスの製造
本発明による膜は、電子デバイス内の層として使用することができる。
【0146】
したがって、本発明の膜を備えた基板に、それ自体公知の方法で、一層以上の追加の層、例えば、ポリマー、半導体材料、又は金属の一層以上を塗布することができる。
【0147】
「電子デバイス」という用語は、単一の電子部品、又は一組の電子部品を意味することが意図される。これは電子回路において1つ以上の機能を実現することができる。
【0148】
特定の変形形態によれば、電子デバイスは、特に、光電子デバイス、すなわち、電磁放射線を放出、検出又は制御することのできるデバイスである。
【0149】
本発明が関連する電子デバイスの例、又は光電子デバイスが適用される場合としては、トランジスタ(特に、電界効果トランジスタ)、チップ、電池、太陽電池セル、発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、センサ、アクチュエータ、変圧器、ハプティックデバイス、微小電気機械システム、電気熱量デバイス及び検出器が挙げられる。
【0150】
1つの好ましい変形形態によれば、本発明の膜は、誘電層の層又は誘電層の一部として、電界効果トランジスタ、特に有機電界効果トランジスタに使用することができる。
【0151】
電子デバイス及び光電子デバイスは、テレビ、携帯電話、硬質スクリーン又はフレキシブルスクリーン、薄膜太陽電池モジュール、照明用光源、エネルギー変換器及びセンサなどの、多数の電子サブアセンブリ、装置又は機器の品目、並びに多数のオブジェクト及びアプリケーションに使用され、それらに組み込まれている。
【実施例】
【0152】
以下の実施例は、本発明を説明するが、本発明を制限するものではない。
【0153】
[実施例1]-本発明による改変ポリマーの製造
使用される開始材料は、P(VDF-TrFE-CTFE)ターポリマーである。このターポリマーは、VDFから得られる単位を61.8モル%、TrFEから得られる単位を30.4モル%、CTFEから得られる単位を7.8モル%含有する。
【0154】
1.2gのターポリマー粉末を50mLのジメチルホルムアミドに溶解する。その後に、39mg(CTFEのモル数に対して0.5モル当量)のNaN3を反応混合物に添加する。反応を55℃で12時間維持する。脱イオン水から沈殿させた後に、生成物を回収する。その後に、生成物を濾過し、減圧下40℃で24時間乾燥する。
【0155】
次いで、CTFEのモル数に対して0.1モル当量又は10モル当量のNaN3を用いて、実験を繰り返す。
【0156】
様々なポリマーの赤外スペクトルを、ATR(反射)モードのフーリエ変換赤外(FTIR)分光計をポリマー膜上に直接用いて取得する。
【0157】
結果を以下の表記を用いて
図1に示す:
-A:未改変の開始ターポリマー、
-B:0.1モル当量のNaN
3を用いて改変したターポリマー、
-C:0.5モル当量のNaN
3を用いて改変したターポリマー、
-D:10モル当量のNaN
3を用いて改変したターポリマー
アジド官能基の原子価振動の特性吸収帯は、2150cm
-1に観測され、鎖内のC=C二重結合の特性吸収帯は、1710cm
-1に観測される。
【0158】
[実施例2]-本発明による膜の紫外線照射を用いた製造
CTFEから得られる単位7.8モル%を含有する未改変のP(VDF-TrFE-CTFE)ターポリマーと、CTFEから得られる単位12.7モル%を最初に含有し、実施例1と同じように0.5当量のNaN3を用いて改変した別のP(VDF-TrFE-CTFE)ターポリマーとを50:50の質量比で混合することにより、ブタン-2-オン中の7質量%の調合物を取得する。
【0159】
上記で得られる調合物から、250nmの膜を、スピンコーター上のシリコン基板上に製造する。得られる膜は、その後に、60℃で5分間乾燥させる。
【0160】
膜は、所定のパターンに従って、(300~400nmの主波長を有する)紫外線照射により架橋される。施される線量は、20J/cm2である。膜は、その後、シクロペンタノン中で、周囲温度において1分間濯ぐことにより現像される。
【0161】
得られるパターンは、
図2の写真に見ることができる。暗い領域は、ポリマーが存在する領域である。パターンは、高精細を呈している。
【0162】
次いで、未改変ポリマーと改変ポリマーとの混合を質量比で80:20とすること以外は、同じ方法により、もう1つの膜を、製造する。誘電分光測定は、
-A:未架橋膜
-B:架橋後の膜
-C:架橋及び現像後の膜
に対して実施する。
【0163】
この結果は、
図3及び
図4のグラフに見ることができる。
図3のグラフは、工程の経過中における膜の誘電特性の安定性を示している。
図4のグラフは、膜を製造する様々な段階における分極曲線の変化を示している。架橋及び現像後の膜Cに高い飽和分極が観察される。
【0164】
[実施例3]-本発明による膜の加熱処理による製造
実施例1の(0.5モル当量のNaN3を用いて得られる)改変ポリマーを用いて、このポリマーから膜を製造する。
【0165】
膜は、2μmの厚さを有する。膜は、スピンコーター上で製造され、60℃で5分間乾燥される。
【0166】
架橋の前後で、膜の赤外スペクトルを測定する。125℃で20分間加熱して、架橋を実施する。
【0167】
この結果は、
図5のグラフに見ることができる。上側のスペクトルは、架橋前の膜のスペクトルであり、下側のスペクトルは、架橋後の膜のスペクトルである。消滅が観測された吸収帯は、アジド官能基に特徴的な2150cm
-1の吸収帯と、鎖内のC=C二重結合に特徴的な1710cm
-1の吸収帯である。