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特許7540900カーシェアリング管理サーバおよびコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】カーシェアリング管理サーバおよびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/43 20240101AFI20240820BHJP
   G06Q 10/02 20120101ALI20240820BHJP
【FI】
G06Q50/43
G06Q10/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020093651
(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公開番号】P2021189692
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】591069086
【氏名又は名称】パーク二四株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113804
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 敏
(74)【代理人】
【識別番号】100101384
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 成夫
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 章
(72)【発明者】
【氏名】表原 徹
【審査官】上田 威
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-200984(JP,A)
【文献】特開2011-204177(JP,A)
【文献】特開2016-206699(JP,A)
【文献】特開2012-215921(JP,A)
【文献】特開2018-081576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーシェアリングの予約処理をするためのカーシェアリング管理サーバであって、
予め会員登録をした会員ユーザに係る通信端末から、当該会員ユーザが希望するカーシェアリング利用時間帯を特定するための予約希望データを受信する希望データ受信手段と、
予約内容が確定した予約済みデータを格納している予約済みデータベースおよびシェアカーが利用された実績に関する実績データを格納している実績データベースを備えた車両管理データベースと、
前記の希望データ受信手段が受信した予約希望データ、前記の車両管理データベースに格納された予約済みデータおよび実績データに基づいて予約内容を調整する予約調整データを作成する予約調整手段と、
前記の予約調整手段によって作成した予約調整データを前記の通信端末へ送信する調整データ出力手段と、
前記の調整データ出力手段にて送信された予約調整データを受信した前記の通信端末から予約確定データを受信するとともに受信した予約確定データを前記の予約済みデータベースへ格納する予約確定データ受信手段と、
を備え、
前記の予約希望データには、前記の通信端末の現在位置データを含み、
前記の予約調整手段は、前記の予約希望データに係るカーシェアステーションについて短時間の利用頻度および長時間の利用頻度を検証する長短時間頻度検証手段と、
その長短時間頻度検証手段によって長時間利用される頻度の高いカーシェアステーションであると判定された場合には、前記の予約希望データにおける利用時間帯が、前記の予約希望データに係るカーシェアステーションの実績データにおいて、長時間予約の妨げとなる確率が所定以上に高いか否かを検証する予約妨げ確率検証手段と、を含むことで、前記の予約調整データを作成することしたカーシェアリング管理サーバ。
【請求項2】
前記の予約希望データには、前記の予約希望データに係る項目の一つ以上を調整することに同意するか否かの意思表示データを含み、
前記の予約調整手段は、前記の意思表示データが同意である場合に限り、収益性が前記の予約希望データに係るカーシェアステーションに比べて低いカーシェアステーションを予約調整データの作成に用いることした
請求項1に記載のカーシェアリング管理サーバ。
【請求項3】
前記の予約希望データには、会員ユーザがシェアカーにて行く目的地の場所である目的地データを含み、
前記の予約調整手段は、前記の予約希望データに含まれる希望するカーシェアステーションである場所データおよび前記の目的地データに基づいて、公共交通機関の利用を含む予約調整データを作成することとした
請求項1または請求項2のいずれかに記載のカーシェアリング管理サーバ。
【請求項4】
前記の予約調整手段には、前記の会員ユーザが予約調整データを選択することの動機付けとなる合理的なインセンティブの内容を示すインセンティブデータを予約調整データに応じて算出するインセンティブ算出手段を含み、
前記のインセンティブ算出手段が算出したインセンティブデータは、前記の予約調整データに含めることとした
請求項1から請求項3のいずれかに記載のカーシェアリング管理サーバ。
【請求項5】
前記の予約調整手段が複数の予約調整データを作成した場合に、複数の予約調整データに所定基準による順位付けを実行する順位付け手段を備え、
前記の調整データ出力手段は、その順位付け手段によって実行された順位付けに基づいて前記の通信端末において出力されるように送信することとした
請求項1から請求項4のいずれかに記載のカーシェアリング管理サーバ。
【請求項6】
予約内容が確定した予約済みデータを格納している予約済みデータベースおよびシェアカーが利用された実績に関する実績データを格納している実績データベースを備え、カーシェアリングの予約処理をするためのカーシェアリング管理サーバを制御するコンピュータプログラムであって、
予め会員登録をした会員ユーザに係る通信端末から、当該会員ユーザが希望するカーシェアリング利用の状態を特定するための予約希望データを受信する希望データ受信手順と、
前記の希望データ受信手順にて受信した予約希望データ、前記の予約済みデータベースに格納された予約済みデータおよび実績データベースに格納された実績データに基づいて予約内容を調整する予約調整データを作成する予約調整手順と、
前記の予約調整手順によって作成した予約調整データを前記の通信端末へ送信する調整データ出力手順と、
前記の調整データ出力手順にて送信された予約調整データを受信した前記の通信端末から予約確定データを受信するとともに受信した予約確定データを前記の予約済みデータベースへ格納する予約確定データ受信手順と、
を前記のカーシェアリング管理サーバに実行させることとし、
前記の予約希望データには、前記の通信端末の現在位置データを含み、
前記の予約調整手順においては、前記の予約希望データに係るカーシェアステーションについて短時間の利用頻度および長時間の利用頻度を検証する長短時間頻度検証手順と、
その長短時間頻度検証手順によって長時間利用される頻度の高いカーシェアステーションであると判定された場合には、前記の予約希望データにおける利用時間帯が、前記の予約希望データに係るカーシェアステーションの実績データにおいて、長時間予約の妨げとなる確率が所定以上に高いか否かを検証する予約妨げ確率検証手順と、を含むことで、前記の予約調整データを作成することとしたコンピュータプログラム。
【請求項7】
前記の予約希望データには、前記の予約希望データに係る項目の一つ以上を調整することに同意するか否かの意思表示データを含み、
前記の予約調整手順においては、前記の意思表示データが同意である場合に限り、収益性が前記の予約希望データに係るカーシェアステーションに比べて低いカーシェアステーションを予約調整データの作成に用いることとした
請求項6に記載のコンピュータプログラム。
【請求項8】
前記の予約希望データには、会員ユーザがシェアカーにて行く目的地の場所である目的地データを含み、
前記の予約調整手順においては、前記の予約希望データに含まれる希望するカーシェアステーションである場所データおよび前記の目的地データに基づいて、公共交通機関の利用を含む予約調整データを作成することとした
請求項6または請求項7のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
【請求項9】
前記の予約調整手順には、前記の会員ユーザが予約調整データを選択することの動機付けとなる合理的なインセンティブの内容を示すインセンティブデータを予約調整データに応じて算出するインセンティブ算出手順を含むこととし、
前記のインセンティブ算出手順にて算出したインセンティブデータは、前記の予約調整データに含めることとした
請求項6から請求項8のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
【請求項10】
前記の予約調整手順において複数の予約調整データを作成した場合に、複数の予約調整データに所定基準による順位付けを実行する順位付け手順をも前記のカーシェアリング管理サーバに実行させることとし、
前記の調整データ出力手順においては、前記の順位付け手順によって実行された順位付けに基づいて前記の通信端末において出力されるように送信することとした
請求項6から請求項9のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーシェアリングの利便性を、ユーザおよび事業者の双方において高める情報通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
カーシェアリングをサービス事業として提供している事業体は、カーシェアリングに用いるシェアカー、そのシェアカーを駐車しておくためのカーシェア車室を提供している。加えて、予め会員登録をした会員がシェアカーを予約したり、シェアカーのドアロックの開閉をしたり、利用料金を支払ったりできる情報系インフラストラクチャーを備えている。
また、前述のカーシェア車室は、複数の車室がある駐車場に設けることしているのが一般的である。
【0003】
事業体が提供するシェアカーを利用したい会員がシェアカーの利用を開始しようという場面では、会員が予約の手続をすることが前提である。その予約は、シェアカーを利用する開始予定時刻、利用の終了予定時刻の他、シェアカーが確保されているカーシェア車室のある場所などを特定することを前提に検索し、予約可能な情報が返信される。
【0004】
一方、事業体を主体とせずに会員同士が車両を共有するタイプのカーシェアリングでは、インターネットなどを通じて車両(シェアカー)の利用状況の確認や利用を予約できる。会員となる利用者は、一人で車両を所有する場合に比べて、車両の購入費用、維持経費、及び駐車料金などの費用を削減することができる。
【0005】
さて、シェアカーを共有するタイプのカーシェアリングにおいては、シェアカーの貸し出し場所及び返却場所は、居住地の近辺の駐車場や駅の周辺など、会員が利用するにあたって便利な場所に選定されていることが多い。
【0006】
たとえば、特許文献1では、交通機関があまり充実していない地域において、シェアリングカー(「シェアカー」と同義)の所在位置へ移動するための交通手段、あるいは、そのような地域にあるシェアリングカーの返却場所から移動するための交通手段を提供する技術が開示されている。
【0007】
また、交通手段としてのタクシーについては、タクシーを利用したい依頼者からの電話を受けて乗務員に仕事を割り振る配車業務が、タクシー事業者において必須である。その配車業務は、小規模事業者にとって大きな負担となる。
そこで、特許文献2では、配車業務を複数のタクシー会社にて合理的に運用するための技術が開示されている。
【0008】
一方、事業体が運営するカーシェアリングを予約する際の一般的な手順について、図1を参照させながら説明する。
会員は、パソコンやスマートフォンを用いて、予約データをカーシェアリング管理サーバへ送信する。登録済みカードαのカード番号を併せて送信する必要があるが、カーシェアリング管理サーバから提供されているカーシェアリング専用のアプリケーションを用いれば、入力作業は簡易化される。
【0009】
予約データ(予約リクエスト、予約希望データ)には、会員を特定するためのデータ(会員カード番号、会員ID)、シェアカー車室のある場所(駐車場、カーシェアステーション)、利用日時、利用開始時刻、利用終了時刻、希望する車種などが含まれる。
【0010】
カーシェアリング管理サーバには、前述の会員に関する属性情報や、利用料金に関するデータなどを格納している会員データベース、シェアカーの利用状況、予約状況などのデータを格納している車両管理データベースが存在する。
【0011】
会員ユーザに係る通信端末から送信された予約データは、カーシェアリング管理サーバの予約データ受信手段が受信し、会員データベースおよび車両管理データベースを用いて、予約が可能か否か、予約可能判断手段が判断する。そして、予約の可否についての予約可否データを、予約可否出力手段が前記の通信端末へ返信する。
予約可能である旨の返信の後、会員ユーザが予約手続きを完了した場合、完了した予約データ(予約に係る会員情報、利用日時、利用時間など)を、予約に係るサービス対象車両(シェアカー)の車載機へ送信する。
【0012】
カーシェアリングに用いるサービス対象車両(シェアカー)は、複数の車室がある駐車場におけるいくつかの車室を、保管場所として確保しているのが一般的である。シェアカーが保管されている駐車場を、「カーポート」と称したり「カーシェアステーション」と称したりする。
前述の会員カードにはICチップが内蔵されており、短距離無線通信によってシェアカーの解錠施錠を実行する(事業者によっては、スマートフォンで会員カードを代用する方式もある)。
【0013】
特許文献3では、ユーザ(「会員」と同義)が車両(「シェアカー」と同義)の貸出を所望するカーポートに車両が存在しない場合や、ユーザが車両の返却を所望するカーポートに返却スペースがない場合に、車両の貸出または返却を行うことができないために車両予約が成立しない、という事態を未然に抑制する技術が開示されている。すなわち、ユーザが許容できる移動距離を許容移動距離として推定し、許容移動距離の圏内にある別のカーポートを予約候補として提示することで予約候補を増やす(結果として予約成立の確率を上昇させる)、という解決手段を採用している。
【0014】
特許文献4では、カーシェアステーション毎の稼働率と、利用予約が完了してから共用車両(「シェアカー」と同義)の利用が開始されるまでの利用待機時間とから、インセンティブ特典を算出してユーザに提供する、という技術を開示している。インセンティブ特典と引き替えにユーザに対して利用待機時間を短くする行動へ導き、結果として稼働率を上昇させることに寄与する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開2019-144654号公報
【文献】特許第6551689号公報
【文献】特許第6515649号公報
【文献】特許第6455196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前述した特許文献3、特許文献4に開示された技術は、シェアカーの稼働率の向上に寄与するであろうことが推測される。
しかし、特許文献3、特許文献4では解決しきれない課題として、以下のような点が挙げられる。
【0017】
特許文献3に開示された技術にて、許容移動距離の圏内にある別のカーポートを予約候補として提示した結果、ユーザが最初に所望したカーポートではなく、候補として提示された別のカーポートを予約したとする。しかし、ユーザが所望する利用時間が短い場合、その予約よりも後に長い利用時間を予定した予約を入れることができなくなるという事態が発生する。すなわち、事業者にとって収益性を下げることになる可能性が高い事態である。
【0018】
特許文献4に開示された技術にて、ユーザが最初に所望した予約内容よりも利用待機時間を短くする予約内容にて予約が成立したとする。しかし、利用待機時間が短くなったとしても、カーシェアステーションの稼働率が向上する確率を上昇させることにはなるが、必ず向上するとは限らない。
【0019】
カーシェアリング事業における収益を向上させるためには、より広範囲な複数のカーシェアステーションにおける最適化(理想的には全体最適化)が重要である一方、特許文献3、特許文献4では許容移動距離の圏内や予約対象となったカーシェアステーションを部分的に最適化しようという技術に過ぎない。
【0020】
なお、本願発明に関わる技術を調査するため、以下の検索式にて、特許文献を検索した。
検索式=現在*位置*予約*(ネット+ウェブ)
その結果、特許文献1,2を含む309件の特許文献を抽出した。
【0021】
また、以下の検索式でも、特許文献を検索した。
検索式=[稼働率/CL]*[カーシェア/SP]*[予約/CL]*[駐車場/SP]
その結果、特許文献3,4を含む3件の特許文献を抽出した。
しかし、予約対象や許容移動距離の圏内のカーシェアステーションといった狭い範囲ではなく、より広範な複数のカーシェアステーションにおける最適化に寄与するような技術を発見することができなかった。
【0022】
ところで、「シェアカー毎の稼働率」は、ユーザからの移動距離の近さに依存するものではない、ということが、本願発明者において統計的に把握できている。たとえば、車種によって稼働率が異なるし、同じ車種でも地域差がある。特定のシェアカーに常連のユーザが紐付いていると稼働率は上昇する。
また、カーシェアステーションがビル内なのか屋外なのか、によって稼働率が異なるし、地域によってビル内の稼働率が高い場合もあれば、屋外の稼働率が高い場合もある。同じような条件のカーシェアステーションであっても、シェアカーのカーポートが駐車場の出入り口に近いか否か、によっても稼働率は異なってくることも判明している。
【0023】
本発明が解決しようとする課題は、会員ユーザの予約希望データに則しつつ、できる限り広範な複数のカーシェアステーションにおける最適化させることに寄与する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
前述した課題を解決するため、事業としてのカーシェアリングの利用者(会員ユーザ)による予約希望データと、会員ユーザが移動を許容できる時間とに着目し、事業体における事業の最適化とを両立させる可能性を高める予約処理システムを案出した。
【0025】
(第一の発明)
第一の発明は、カーシェアリングの予約処理をするためのカーシェアリング管理サーバに係る。
すなわち、予め会員登録をした会員ユーザに係る通信端末から、希望するカーシェアリング利用の状態を特定するための予約希望データを受信する希望データ受信手段と、
予約内容が確定した予約済みデータを格納している予約済みデータベースおよびシェアカーが利用された実績に関する実績データを格納している実績データベースを備えた車両管理データベースと、
前記の希望データ受信手段が受信した予約希望データ、前記の車両管理データベースに格納された予約済みデータおよび実績データに基づいて予約内容を調整する予約調整データを作成する予約調整手段と、
前記の予約調整手段によって作成した予約調整データを前記の通信端末へ送信する調整データ出力手段と、
前記の調整データ出力手段にて送信された予約調整データを受信した前記の通信端末から予約確定データを受信するとともに受信した予約確定データを前記の予約済みデータベースへ格納する予約確定データ受信手段と、
を備え、
前記の予約希望データには、前記の通信端末の現在位置データを含み、
前記の予約調整手段は、前記の予約希望データに係るカーシェアステーションに比べて収益性が低いカーシェアステーションを前記の実績データを用いて抽出し、所定の時間内に前記の現在位置データから移動可能な範囲内に存在する前記の収益性が低いカーシェアステーションを予約調整データの作成に用いることとする(図2参照)。
【0026】
(用語説明)
「所定の時間内に現在位置データから移動可能な範囲」とは、具体的な道のりを徒歩で移動した場合に掛かる時間が典型的な例である。
たとえば、「所定の時間」を10分とし、現在位置とあるカーシェアステーションとの距離が350メートルであれば、登録ユーザは遅くとも分速35メートル以上の速度で歩けるであろうと推測できるので、そのカーシェアステーションは予約調整データとして候補となる。
なお、徒歩の分速を算出する際に、登録者の年齢を会員データベースから用いることで、40歳未満は分速70メートル、40~60歳が分速60メートル、といった換算をしてもよい。
【0027】
「所定の時間内に現在位置データから移動可能な範囲」は、公共交通機関を道のりの途中で利用した場合に掛かる時間であってもよい。この「所定の時間内」は、会員ユーザが許容できる移動時間であり、段階的に選択することとしても良い。
たとえば、現在位置データがある鉄道駅である場合に、5分間隔の運行にて3分で到着する隣駅から徒歩2分の位置にあるカーシェアステーションであれば、合計の所要(最大)時間が10分に収まるので、予約調整データとして候補となる(図10参照)。
【0028】
「収益性」とは、実績データベースへ格納された実績データを主に、可能であれば予約済みデータをも勘案して算出される。たとえば、稼働率が所定以下であるシェアカーがあるカーシェアステーションを含めた予約調整データとして作成する。また、会員ユーザが希望する利用時間が長時間化する傾向にあるカーシェアステーションでは、昼間の時間帯に短時間の予約が入ることを回避する、といった予約調整データを作成する。
【0029】
(作用)
予約内容が確定した予約済みデータを予約済みデータベースが格納し、シェアカーが利用された実績に関する実績データを実績データベースが格納している。
予め会員登録をした会員ユーザに係る通信端末から、希望するカーシェアリング利用の状態を特定するための予約希望データを、希望データ受信手段が受信する。
【0030】
受信した予約希望データ、前記の車両管理データベースに格納された予約済みデータおよび実績データに基づいて、予約内容を調整する予約調整データを、予約調整手段が作成する。
通信端末の現在位置データを含んでおり、予約調整手段は、所定の時間内に現在位置データから移動可能な範囲内に存在するカーシェアステーションを予約調整データの作成に用いる。
【0031】
予約希望データにおけるカーシェアステーションの位置は、それを発信する会員ユーザに係る通信端末の現在位置の近傍である確率が非常に高い、ということがカーシェアリング事業者において経験的に把握できている。また、会員ユーザにおいて、事前の検索作業を含め、予約希望データの作成作業の手間を軽減したいという潜在的なニーズも把握できている。
そのため、会員ユーザに対する予約希望データの入力作業を軽減し、且つ予定調整データによる移動時間という負担を抑えつつ、事業者としての収益性の向上に寄与することとなる。会員ユーザの予約希望データに則しつつ、所定の時間内に現在位置データから移動可能な範囲にあるカーシェアステーションが選択肢として広がることで、事業者としての収益性向上にも寄与する。
【0032】
(第一の発明のバリエーション1)
第一の発明は、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記の予約希望データには、前記の予約希望データに係る項目の一つ以上を調整することに同意するか否かの意思表示データを含み、
前記の予約調整手段は、前記の意思表示データが同意である場合に限り、収益性が前記の予約希望データに係るカーシェアステーションに比べて低いカーシェアステーションを予約調整データの作成に用いることとする(図2図8図9参照)。
【0033】
(用語説明)
「意思表示データ」は、会員ユーザが自らに係る通信端末を操作する際に選択ボタンのいずれかを選択することで特定されるようにすることが多い。また、「調整することに同意」とは、調整を条件として割引価格が適用される、ということに同意する、といったことも含む(図8参照)。
【0034】
(作用)
会員ユーザは、自らに係る通信端末を操作し、予約希望データを送信する際には、予約希望データに係る項目の一つ以上を調整することに同意するか否かの意思表示データを含ませる。意思表示データが同意である場合、予約調整手段は、予約希望データに係るカーシェアステーションに比べて収益性が低いカーシェアステーションを予約調整データとして作成する。
【0035】
予約調整データが会員ユーザによって選択された場合、予約希望データよりも収益性の低いカーシェアステーションなので、カーシェアリング事業全体としての収益性向上に寄与する可能性が高い。
【0036】
(第一の発明のバリエーション2)
第一の発明は、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記の予約希望データには、会員ユーザがシェアカーにて行く目的地の場所である目的地データを含み、
前記の予約調整手段は、前記の予約希望データに含まれる希望するカーシェアステーションである場所データおよび前記の目的地データに基づいて、公共交通機関の利用を含む予約調整データを作成することとする(図2図11参照)。
【0037】
(作用)
予約希望データに含まれる希望するカーシェアステーションである場所データおよび目的地データに基づいて、公共交通機関の利用を含む予約調整データを予約調整手段が作成する。
公共交通機関の利用によって、渋滞の緩和、二酸化炭素の排出量の抑制などに寄与する。渋滞を避けられる場合には、会員ユーザの心理的または経済的な負担の軽減にも寄与する。
【0038】
(第一の発明のバリエーション3)
第一の発明は、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記の予約調整手段には、前記の会員ユーザが予約調整データを選択することの動機付けとなる合理的なインセンティブの内容を示すインセンティブデータを予約調整データに応じて算出するインセンティブ算出手段を含み、
前記のインセンティブ算出手段が算出したインセンティブデータは、前記の予約調整データに含めることとする(図2図13参照)。
【0039】
(用語説明)
「インセンティブ」とは、サービス料金の割引、会員に対する金銭的価値のある「ポイント」、物理的な景品、本来ならば有償であるサービスの無償提供などである。
「合理的なインセンティブ」の算出には、たとえば、予約調整データによる会員ユーザによる移動時間、カーシェアステーションまたは個々のシェアカーの稼働率などに応じて換算テーブルなどを予め作成しておく(図13参照)。
【0040】
(作用)
インセンティブ算出手段は、予約調整データに応じた合理的なインセンティブデータを算出する。算出されたインセンティブデータは、予約調整データに含まれる。したがって、予約調整データを受信した会員ユーザは、そのインセンティブデータを参照させながら、予約調整データを選択する。
予約調整データが選択されれば、カーシェアリングの事業体としては、収益性の改善に繋がる。
【0041】
(第一の発明のバリエーション4)
第一の発明は、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記の予約調整手段が複数の予約調整データを作成した場合に、複数の予約調整データに所定基準による順位付けを実行する順位付け手段を備え、
前記の調整データ出力手段は、その順位付け手段によって実行された順位付けに基づいて前記の通信端末において出力されるように送信することとするのである(図3のS8、図11参照)。
【0042】
(用語説明)
順位付けを実行するための「所定基準」とは、たとえば、カーシェアステーションまでの移動時間の短い順、インセンティブ(たとえば、割引率)の大きい順、二酸化炭素の排出量の少ない順、などである。
なお、この「所定基準」は複数種類を用意してあることが一般的である。その場合、どの所定基準を採用するか、について会員ユーザによるリクエストに応じて変更可能としている。
【0043】
(作用)
予約調整手段が複数の予約調整データを作成する。作成された複数の予約調整データは、順位付け手段が所定基準によって順位付けをする。調整データ出力手段は、その順位付け手段によって実行された順位付けに基づき、会員ユーザの通信端末において出力されるように送信する。
会員ユーザは、複数の予約調整データを閲覧し、選択するのに便利である。
【0044】
(第二の発明)
第二の発明は、第一の発明に係るカーシェアリング管理サーバを制御するコンピュータプログラムに係る。
前記のカーシェアリング管理サーバには、予約内容が確定した予約済みデータを格納している予約済みデータベースおよびシェアカーが利用された実績に関する実績データを格納している実績データベースを備えている。
そして、第二の発明に係るコンピュータプログラムは、
予め会員登録をした会員ユーザに係る通信端末から、希望するカーシェアリング利用の状態を特定するための予約希望データを受信する希望データ受信手順と、
前記の希望データ受信手順にて受信した予約希望データ、前記の車両管理データベースに格納された予約済みデータおよび実績データに基づいて予約内容を調整する予約調整データを作成する予約調整手順と、
前記の予約調整手順によって作成した予約調整データを前記の通信端末へ送信する調整データ出力手順と、
前記の調整データ出力手順にて送信された予約調整データを受信した前記の通信端末から予約確定データを受信するとともに受信した予約確定データを前記の予約済みデータベースへ格納する予約確定データ受信手順と、
を前記のカーシェアリング管理サーバに実行させることとし、
前記の予約希望データには、前記の通信端末の現在位置データを含み、
前記の予約調整手段は、前記の予約希望データに係るカーシェアステーションに比べて収益性が低いカーシェアステーションを前記の実績データを用いて抽出し、所定の時間内に前記の現在位置データから移動可能な範囲内に存在する前記の収益性が低いカーシェアステーションを予約調整データの作成に用いることとする。
【0045】
(第二の発明のバリエーション1)
第二の発明に係るコンピュータプログラムは、以下のように形成してもよい。
すなわち、 前記の予約希望データには、前記の予約希望データに係る項目の一つ以上を調整することに同意するか否かの意思表示データを含み、
前記の予約調整手順においては、前記の意思表示データが同意である場合に限り、収益性が前記の予約希望データに係るカーシェアステーションに比べて低いカーシェアステーションを予約調整データの作成に用いることとするのである。
【0046】
(第二の発明のバリエーション2)
第二の発明に係るコンピュータプログラムは、以下のように形成してもよい。
すなわち、 前記の予約希望データには、会員ユーザがシェアカーにて行く目的地の場所である目的地データを含み、
前記の予約調整手順においては、前記の予約希望データに含まれる希望するカーシェアステーションである場所データおよび前記の目的地データに基づいて、公共交通機関の利用を含む予約調整データを作成することとするのである。
【0047】
(第二の発明のバリエーション3)
第二の発明に係るコンピュータプログラムは、以下のように形成してもよい。
すなわち、 前記の予約調整手順には、前記の会員ユーザが予約調整データを選択することの動機付けとなる合理的なインセンティブの内容を示すインセンティブデータを予約調整データに応じて算出するインセンティブ算出手順を含むこととし、
前記のインセンティブ算出手順にて算出したインセンティブデータは、前記の予約調整データに含めることとするのである。
【0048】
(第二の発明のバリエーション4)
第二の発明に係るコンピュータプログラムは、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記の予約調整手順において複数の予約調整データを作成した場合に、複数の予約調整データに所定基準による順位付けを実行する順位付け手順をも前記のカーシェアリング管理サーバに実行させることとし、
前記の調整データ出力手順においては、前記の順位付け手順によって実行された順位付けに基づいて前記の通信端末において出力されるように送信することとするのである。
【0049】
(第三の発明)
第三の発明は、カーシェアリングの予約処理をするためのカーシェアリング管理サーバと通信してカーシェアリングの利用予約の手続を遂行する通信端末で実行されるコンピュータプログラムに係る。
すなわち、希望するカーシェアリング利用の状態を特定するための予約希望データを予め会員登録した会員特定データとともに前記のカーシェアリング管理サーバへ送信する予約希望データ送信手順と、
送信した予約希望データにおける項目の一つ以上について前記のカーシェアリング管理サーバが変更した予約調整データを一つ以上受信する予約調整データ受信手順と、
受信した予約調整データまたは前記の予約希望データにおける項目の一つ以上を変更することで予約が可能となった予約確定データを前記のカーシェアリング管理サーバへ送信する予約確定データ送信手順と、
を前記の通信端末に実行させることとし、
前記の予約希望データには、前記の通信端末の現在位置データおよび前記の予約希望データに係る項目の一つ以上を調整することに同意するか否かの意思表示データを含むこととする(図9参照)。
【0050】
第三の発明は、通信端末にダウンロードして用いるコンピュータプログラム、および通信端末との双方向通信をしながらブラウザ上で実行するコンピュータプログラムが代表的な提供形態である。
【0051】
(第三の発明のバリエーション)
第三の発明は、以下のように形成してもよい。
すなわち、 前記の予約調整データが複数存在する場合において、その複数の予約調整データを所定の基準選択によって並べ替えて出力させるソート手順を含むこととするのである。
【0052】
第二および第三の発明に係るコンピュータプログラムを格納したコンピュータから、通信回線を通じて他の端末手段へ伝送することも可能である。
また、第二および第三の発明に係るコンピュータプログラムを記録媒体へ記憶させて提供することもできる。 ここで、「記録媒体」とは、それ自身では空間を占有し得ないプログラムを担持することができる媒体である。例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-R、DVD-R、USBメモリなどである。
【発明の効果】
【0053】
第一の発明によれば、できる限り広範な複数のカーシェアステーションにおける最適化させることに寄与するカーシェアリング管理サーバを提供することができた。
第二の発明によれば、できる限り広範な複数のカーシェアステーションにおける最適化させることに寄与するカーシェアリング管理サーバ用のプログラムを提供することができた。
第三の発明によれば、できる限り広範な複数のカーシェアステーションにおける最適化させることに寄与する予約用の通信端末のプログラムを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】一般のカーシェアリングにおける利用予約の手順を示す概念図である。
図2】本発明における第一の実施形態の概要を示すブロック図である。
図3】予約調整アルゴリズムの第一の例を示すフローチャートである。
図4】実績データベースおよび予約済データベースの構造を示す概念図である。
図5】調整の必要性を検討する第一の例を示すブロック図である。
図6】調整の必要性を検討する第二の例を示すブロック図である。
図7】調整の必要性を検討する第三の例を示すブロック図である。
図8】会員ユーザに係る通信端末の操作画面を示す概念図である。
図9】予約の調整を前提とした第二の実施形態を示すブロック図である。
図10】予約調整アルゴリズムの第二の例を示すフローチャートである。
図11】予約の調整を前提とした第三の実施形態を示すブロック図である。
図12】予約調整アルゴリズムの第三の例を示すフローチャートである。
図13】インセンティブの換算テーブルの例示である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明を図面および実施形態に基づいて、説明する。ここで使用する図面は、図2から図13である。実線の矢印は有線通信、二点破線の矢印は無線通信、点線は仮想線を示す。なお、図1は、従来技術を説明しており、必要に応じて参照する。
【0056】
本実施形態の前提として、「事業体における収益性向上」という課題を分析した。そして、会員による予約内容(日時、場所、車種など)を優先しすぎている、という点に着目した。すなわち、ある予約内容に重なる先約が存在すれば、その予約内容をNGとして処理してしまう予約システムは、全体の収益性を考えた場合に、柔軟性が欠如している、という一つの結論に至った。そして、解決のため、予約システムを柔軟化するという手段を選択した。
【0057】
図2
図2では、予め会員登録を済ませた会員ユーザが、会員カードに付された会員カード番号を自らに係る通信端末へ入力し、カーシェアリングの予約を入れるまでを示している。概要を示しており、詳細は他の図面に示している。
【0058】
カーシェアリングを事業として運営する事業体に係るカーシェアリング管理サーバと、その事業体が提供するサービスとしてのカーシェアリングを利用するために会員登録を予め済ませた会員ユーザに係る通信端末との関係を示している。
【0059】
カーシェアリング管理サーバには、会員登録したユーザに係るデータを蓄積している会員データベース、シェアカーの管理データを蓄積する車両管理データベースを備えている。車両管理データベースには、予約済みのデータを蓄積する予約済みデータベース、および予約が遂行された実績データを蓄積する実績データベースを備えている。
【0060】
会員ユーザは、自らに係る通信端末を用いてカーシェアリング管理サーバへアクセスすることで予約手続きを開始する。サーバが用意している専用ページで予約手続きをするほか、専用のアプリケーションソフトウェアを予めダウンロードしておいて、そのアプリケーションソフトウェアにて予約を実行することとしても良い。
【0061】
また、通信端末には、自らの位置データを取得するGPS機能を備えていなければならず、その位置データをカーシェアリング管理サーバへ提供可能である、という設定を済ませていなければならない。設定がされていない場合には、サーバの専用ページまたは専用アプリケーションが位置データの提供を許可する設定に変更するように促す。
【0062】
会員ユーザは、通信端末を操作し、まず会員カードのカード番号を用いて自らを特定する。なお、物理的な会員カードを発行せず、その通信端末に会員カードのデータ(カード番号など)をインストールしてある場合もある。
【0063】
次に、カーシェアリングを予約したい内容を特定するための予約希望データを入力する。シェアカーの利用を開始するカーシェアステーションの場所を示す場所データを入力する場合と、通信端末の位置データを送信することで入力の手間を省く場合とがある(図8の説明にて後述)。
【0064】
また、予約希望データにおける項目の一つ以上を調整することを受諾するか否かの意思表示を、予約希望データに含むこととしている(図8の説明にて後述するが、「割引予約」を選択すると『受諾』となる)。
【0065】
前述した場所データおよび意思表示に加え、予約希望データには、シェアカーの利用開始を希望する時刻(希望開始時刻)、利用を終了する時刻(希望終了時刻)、希望車種、目的地などの項目がある。
【0066】
予約希望データを通信端末から送信すると、カーシェアリング管理サーバにおける希望データ受信手段が受信する。そして、その予約希望データに含まれている会員カード番号を会員データベースにて確認する。
【0067】
受信した予約希望データが会員からの送信であることが確認できれば、予約希望データにおける意思表示が、「予約希望データにおける項目の一つ以上を調整することを受諾しない」という場合には、車両管理データベースから予約済みデータを抽出し、予約が可能かどうかを検証する。可能な場合には、予約確定データとして予約済みデータベースへ格納する手順となる(図中の破線にて表示しているが、実際には会員ユーザによる最終的な意思確認を経る)。
【0068】
予約希望データにおける意思表示が、「予約希望データにおける項目の一つ以上を調整することを受諾する」という場合には、車両管理データベースから予約済みデータおよび実績データを抽出して、調整の必要性について検証する。そして、実績データとの比較において予約調整データを作成する。加えて、会員ユーザがその予約調整データを選択してくれた場合のインセンティブを算出し、予約調整データに付加する。
【0069】
作成した予約調整データは、調整データ出力手段を介して会員ユーザに係る通信端末へ送信される。そして、会員ユーザが予約確定データを送信してきたら、それを予約確定データ受信手段が受信し、予約済みデータベースへ格納する。
【0070】
図3
予約調整アルゴリズムの一例を示すフローチャートである図3を用いて、前述してきた処理手順(予約希望データにおける意思表示が「予約希望データにおける項目の一つ以上を調整することを受諾する」という場合に限る)を補足する。
会員ユーザが予約希望データをカーシェアリング管理サーバへ送信すると、カーシェアリング管理サーバが予約希望データを受信する(S1)。その予約希望データに含まれる会員番号は、会員データベースを用いて照合する(S2)。
【0071】
予約希望データの各項目について、予約データベースとの照合合を実行する(S3)。そして、予約希望データに調整の必要性があるか否かを判断する(S4)。調整の必要性がなければ、(会員ユーザによる確認ステップを省略するが)予約希望データは予約データとして確定する(S5)。
【0072】
調整の必要性があれば、実績データベースの検索をして低実績の場所(カーシェアステーション)や低実績のシェアカーを抽出する(S6)。
カーシェアステーション全体の実績が低い、というのは、そのカーシェアステーションが新しくできた、などの環境にあるために認知度が低い、といった場合が多い。
【0073】
シェアカーの実績が(同じカーシェアステーションに複数種類のシェアカーが用意されているような場合において相対的に)低い、というのは、そのシェアカーの車種(または色)に人気がない、という場合が最も予想しやすい理由である。その他、地域特性に原因があるという場合など、様々な事情や理由が推定される。
【0074】
実績データベースから抽出した低実績の場所(カーシェアステーション)や低実績のシェアカーのデータを用いて、予約希望データに対する予約調整データを作成する(S7)。予約希望データにおけるカーシェアステーションの場所(位置データ)を基準として、会員ユーザが移動に要する時間が所定時間以内であることが、予約調整データの候補として抽出(演算)することとなる。
【0075】
予約調整データが複数作成できた場合には、その予約調整データを所定基準に従って順位付けをする(S8)。所定基準とは、たとえば、割引率(図8を用いて後述)の高い順に順位付けをし、その順位付けのデータを予約調整データに含ませておく。そのことで、会員ユーザに係る通信端末において出力される際に、その順位付けの順に出力されるようにするのである。
【0076】
作成された予約調整データは、カーシェアリング管理サーバから会員ユーザに係る通信端末へ送信される。なお、作成できた予約調整データが多数である場合、会員ユーザへ送信するのは、所定数の数に絞る(選択する)こととしている(S9)。
【0077】
会員ユーザは、通信端末に出力された予約調整データを選択し、カーシェアリング管理サーバへ送信し、カーシェアリング管理サーバにおいては選択された予約調整データを受信する(S9)。そして、予約を確定させるデータとして扱う(S5)。
【0078】
図4
図4は、カーシェアリング管理サーバにおける車両管理データベース(図2参照)の中にあることとして概念的に捉えられる実績データベースおよび予約済みデータベースのデータ構造を、概念的に示したものである。
【0079】
実績データベースに格納されている実績データは、過去のデータである。一方、予約済みデータベースに格納されている予約確定データは、未来のデータである。すなわち、予約確定データは、予約の時間帯が経過すると、実績データとして格納し直される。ファイル構造は、単なる例示であり、これに限られない。
【0080】
実績データは、たとえば、駐車場(α、β、γ、・・・)ごとにデータがファイルされており、更に、曜日毎(日付毎)にファイルされており、各日付のデータには、その駐車場に配備されている車両毎に、どの時間帯に利用実績があったか、が記録されている。
予約済みデータベースに格納されている予約確定データも、実績データと同様であるとして、図示は簡略化している。
【0081】
図5
図5は、予約調整手段の機能の一部である予約希望データの調整必要性を検討するアルゴリズムの一例を示している。
希望データ受信手段が受信した予約希望データにおける全ての項目について、予約済みデータベースのデータと照合する。予約希望データにおける項目とは、カーシェアステーションの場所(P)、シェアカーの利用開始を希望する時刻(T1)、シェアカーの利用終了の希望時刻(T2)、希望車種(C)などである。
【0082】
全ての項目で予約が可能であれば、調整不要であり、希望データは予約確定データとなる(予約確定データとするには、会員ユーザの確認ステップを経るのが一般的である)。
一方、項目の一つでも希望が叶えられない場合には、調整が必要となる。
【0083】
図6
図6もまた、予約調整手段の機能の一部である予約希望データの調整必要性を検討するアルゴリズムの一例を示している。
予約希望データにおけるカーシェアステーションの場所(P)の実績データが所定未満か否か、にて調整の必要性を判断している。会員ユーザが予約希望されているカーシェアステーションの実績データが所定未満であるということは、収益性が相対的に低いカーシェアステーションである。したがって、それを希望している場合には、調整不要と判断する。
【0084】
たとえば、予約希望データの駐車場αにおけるシェアカー稼働率が所定以上の場合、稼働率が所定以下の駐車場βのシェアカーにて予約調整データを作成し、会員ユーザの予約希望データに則しつつ、会員ユーザに対して提案する。
【0085】
図7
図7もまた、予約調整手段の機能の一部である予約希望データの調整必要性を検討するアルゴリズムの一例を示している。
予約希望データにおける利用時間帯(T1~T2)が、予約希望データにおけるカーシェアステーションの場所(P)の実績データにおいて、長時間予約の妨げになる確率として所定以上に高い場合には、調整が必要と判断するのである。
【0086】
実績データを検証することで、カーシェアステーション毎に、利用態様に傾向が見られることがある。その傾向とは、たとえば、短時間の利用頻度が高いカーシェアステーションなのか、長時間利用される頻度が高いカーシェアステーションなのか、といった態様の傾向である。長時間利用される頻度が高いカーシェアステーションに対して、短時間の予約希望データである場合、長時間利用を希望する予約希望の妨げとなり、結果としてカーシェアリング事業全体の収益性を低めてしまうこととなる可能性が高い。そうしたことから、この図に示す予約調整の必要性を検討する場合がある、ということを説明した。
【0087】
図8
図8は、会員ユーザに係る通信端末から、予約希望データを送信する画面を概念的に示したものである。この画面表示は、会員ユーザが予め専用のアプリケーションをダウンロードしておき、ダウンロードしたアプリケーションを起動させて表示される場合と、カーシェアリング管理サーバが提供する予約専用サイトにアクセスすることで表示される場合とがある。
【0088】
まず、会員カード番号の入力が求められる。会員ユーザは、会員となった際に入手した会員カードへ表示されている会員カード番号を入力する。
なお、物理的な会員カードが発行されず、通信端末が会員カードとして機能する態様のシステムにおいては、省略される。
【0089】
続いて、標準予約か割引予約か、について、会員ユーザの意思表示が要求される。図中の会員ユーザに係る通信端末では、「割引予約」を選択(チェックボックスとして用意されているラジオボタンをタッチ)している。
ここで、「割引予約」とは、予約希望データとして入力するカーシェアステーションの場所、利用の日時、車種などについて、希望と異ならせた場合に、標準料金よりも割り引かれたサービス料金にて予約ができるシステムのことである。サービス料金を直接割り引く場合の他、次回利用時に割引が適用されたり、貯めることで賞品などと交換できたりするいわゆる「ポイント還元」のシステムも含まれる。
【0090】
続いて、予約希望データにおけるカーシェアステーションの場所の入力が求められる。この入力は、現在の位置データにて代用入力とすることができる。「現在の位置データ」とは、通信端末に内蔵された位置データシステム(GPS機能)によって、取得される。GPS電波が到達しない、たとえば屋内で操作している通信端末の場合には、その通信端末が通信をしている基地局の位置データが用いられる。
【0091】
図中では、図中の会員ユーザに係る通信端末では「位置データを送信」を選択している。
「希望場所」の入力の場合には、カーシェアステーションを特定する入力の場合の他、地域名のみを入力する、といった場合もある。
【0092】
予約希望データにおける必須の入力項目とはしていない場合もあるが、この実施形態においては「目的地」の入力も要求されることとしている。「目的地」が入力されることで、予約調整データの種類が増えたり、会員ユーザに対する様々な情報提供が可能となったりする。
【0093】
図9
図9もまた、会員ユーザに係る通信端末から、予約希望データを送信する画面を概念的に示したものであり、図8とは異なる入力画面の一部を示している。
この入力画面の態様においては、会員ユーザの意思表示として、予約希望データにおいて変更しても良い項目を選択することとしているのである。
【0094】
ここでは、希望日、希望開始時刻、希望終了時刻は優先する(変更を希望しない)ものの、希望場所および希望車種を変更しても良い、として、チェックボックスに印を入力(ラジオボタンをタッチ)している。
【0095】
図10
図10は、図3に示した予約調整アルゴリズムとは異なる予約調整アルゴリズムを示すフローチャートである。図3と共通するステップについては、スペースの都合で省略している。
【0096】
S4で、予約希望データに調整の必要がある場合(あるいは図8にて「割引予約」を選択している場合)には、実績データベースを検索する。そして、図8にて「位置データを送信」を選択した場合であって、その通信端末の位置データと予約希望データにおけるカーシェアステーションの位置データとの移動時間(推定値)が所定値以下か否かを判断する。
【0097】
「通信端末の位置データと予約希望データにおけるカーシェアステーションの位置データとの移動時間」は、具体的な道のり(「距離」ではなく)と平均的な徒歩スピードとを用いて推定値として算出する。
「移動時間の所定値」は、予約希望データにおけるカーシェアステーション(またはそのカーシェアステーションが存在する地域)ごとに異ならせることが可能である。
【0098】
「通信端末の位置データと予約希望データにおけるカーシェアステーションの位置データとの移動時間」が「所定値」以下ではない場合、会員ユーザは、自らの現在位置として提供した通信端末の位置からカーシェアステーションの位置までに、所定(たとえば徒歩で15分)以上の時間が掛かる、ということである。その場合、会員ユーザがカーシェアステーションの選択において、会員ユーザが意図して選択している場合のみならず、合理的なカーシェアステーションを選択していない場合が含まれると推定される。
【0099】
そこで、通信端末の位置から希望するカーシェアステーションの位置までの移動プランを含んだ予約調整データの作成するのである(S22)。たとえば、公共交通機関を使って、通信端末の位置から希望するカーシェアステーションまでを移動するプランを含めた予約調整データとするのである。
【0100】
公共交通機関を使っての移動プランとは、たとえば、最寄りの地下鉄駅へ徒歩で移動して乗車し、所定の駅で降車したら徒歩でカーシェアステーションにたどり着く、といったプランである。代替プランとして、タクシーでの移動などが含まれていても良い。会員ユーザの選択肢を増やすことに意義がある。が気付いていなかった移動手段が提示できる可能性がある。
【0101】
公共交通機関を使っての移動プランを作成して会員ユーザへ提供することは、事業者としては、許容移動距離の圏内や予約対象となったカーシェアステーションを部分的に最適化するにとどまらず、広範囲にある複数のカーシェアステーションの効率的な運用に寄与する可能性がある。
【0102】
図11
図11では、予約希望データに、変更を容認しない目的地データが含まれている場合に、どのような予約調整データを作成するか、を概念的に示している。
【0103】
たとえば、この会員ユーザは、東京都江東区にあるカーシェアステーションにてシェアカーに乗車し、川崎市川崎区にある目的地へ運転して移動する、という予定であるということが、予約希望データから把握できる。しかし、この会員ユーザは、川崎市川崎区にある目的地にシェアカーにて移動できることができるならば、出発地が東京都江東区である必然性がない(または低い)可能性がある。
【0104】
そこで、予約調整手段は、JR線へ乗車してJR川崎駅まで移動し、JR川崎駅の近傍にある「川崎A駐車場」というカーシェアステーションにてシェアカーに乗車し、そこから川崎市川崎区へシェアカーにて移動するプラン1を、予約調整データとして作成し、会員ユーザに係る通信端末へ送信するのである。
【0105】
京浜急行線の川崎駅まで移動するといったプラン2、目的地である川崎市川崎区へのシェアカーでの移動がしやすいカーシェアステーションが別の駅にある場合には当該別の駅までの移動を提案するプラン3、など複数のプランを、予約調整データとして作成することが可能である。
【0106】
カーシェアリング管理サーバにおいては、複数のプラン(予約調整データ)を作成した場合、会員ユーザの実績を勘案して、複数のプランにおける優先順位を決定する。たとえば、そのユーザが時間に敏感な傾向にあるとすれば、移動時間が短い順に複数のプランをソート(順位付け)する。
【0107】
会員ユーザに係る通信端末においては、複数のプラン(予約調整データ)が提示された場合、優先順位の選択することで、並べ替えることができることとしている(詳細な図示は省略)。たとえば、調整データ出力手段として送信されてきた際には、移動時間が短い順に複数のプランが出力されていたとして、トータルの料金が安い順に並べ替えることができる。
【0108】
なお、カーシェアリング管理サーバが送信する予約調整データにおいて、並べ替えのためのデータを含めている場合には、会員ユーザに係る通信端末の内部で処理ができる。
並べ替えのためのデータが含まれていない場合には、会員ユーザに係る通信端末から並べ替えのリクエストがカーシェアリング管理サーバへ送信され、カーシェアリング管理サーバが複数のプランをリクエスト通りに並べ替え、会員ユーザに係る通信端末へ送信することとなる。
【0109】
図12
図12は、図3および図10に示した予約調整アルゴリズムとは異なる予約調整アルゴリズムを示すフローチャートである。図3と共通するステップについては、スペースの都合で省略している。
【0110】
S7で、希望するカーシェアステーションの場所、または時間帯などを変更した予約調整データを(複数)作成する。
作成した予約調整データは、会員ユーザが予約希望データの発信時に最も希望していた予約内容とは異なっているわけであり、会員ユーザが予約調整データを選択する動機付け(インセンティブ)が必要である。その動機付けが「割引」であるが、その割引率は、予約調整データ毎に異ならせるのが合理的である。そこで、予約調整データ毎に割引率を算出し、予約調整データに付加することとしている(S23)。
【0111】
図13
図13は、図12のS23におけるインセンティブとしての「割引率」を算出するために用いる換算テーブルの一例を示したものである。
【0112】
割引率は、稼働率が低いシェアカーを選択してもらう場合ほど大きくするのが合理的であり、現在位置からの移動時間が長くなるほど大きくするのが合理的である。そこで、稼働率(L)も現在位置からの移動時間(T)も四段階に分け、割引率の換算テーブルとした。
【0113】
移動時間の四段階とは、T1を5分未満、T2を5分以上8分未満、T3を8分以上15分未満、T4を15分以上としたが、これは一例であるし、カーシェアステーションの場所によって異なるのが合理的である。
シェアカーの稼働率についての四段階とは、L1を20%未満、L2を20%以上40%未満、L3を40%以上60%未満、L4を60%以上としたが、これも一例である。時期によって異ならせる必要があるし、カーシェアステーションの場所によって異なるのが合理的である。
【0114】
前述してきた実施形態については、カーシェアリング事業を継続して実施してきたことによって蓄積した実績データや、その実績に裏付けられて増えてきたカーシェアステーションが前提となっている。
【0115】
たとえば、土地オーナーの資産運用の一形態として新設される駐車場には、カーシェアステーションも新設されることとなる場合がある。そうした新設カーシェアステーションは、大通りに面していたり、大規模で目立つ駐車場の一角に設置されていたり、といった場合を除き、会員ユーザへの認知度は高くなく、認知度の急激な上昇も難しい。
【0116】
認知度が低いカーシェアステーションは、会員ユーザとしても予約場所として選択する候補として挙げにくく、認知度を上昇させるのはなかなか難しいということが、経験的に把握できている。
推測される原因は、以下の通りである。すなわち、会員ユーザが予約時にカーシェアステーションの場所を選定する際の画面に、新たなカーシェアステーションが表示されるというだけに留まる。会員ユーザとしては、利用した経験がない場所の表示は実感しにくく、予約を避ける傾向にあると推測されるのである。
【0117】
事業体が提供するカーシェアリングサービスの利用者(会員)は、予約を入れる時点で滞在している場所に近いカーシェア車室のある場所(駐車場)を特定して予約することが多い(傾向がある)。また、一度利用した(馴染みのある)駐車場を繰り返して利用する傾向もある。そのため、馴染みのある駐車場での希望時間帯の予約が取れないと、予約を諦める傾向があると予想されている。予約を諦められてしまうと、事業体としては機会損失となる。
予約調整データの作成、会員ユーザへの提示には、そうした機会損失を低減させる効果が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、カーシェアリングやレンタカーのサービス業、駐車場の運営業、駐車場の運営に必要な情報通信機器の製造業、カーシェアリング管理サーバにおいて用いられるアプリケーションプログラムを作成するソフトウェアサービス業、などにおいて、利用可能性を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13