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特許7540903流路とコロイド粒子を用いた被検物質検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】流路とコロイド粒子を用いた被検物質検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20240820BHJP
   G01N 33/548 20060101ALI20240820BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G01N33/543 525W
G01N33/543 521
G01N33/543 541Z
G01N33/548 Z
G01N33/543 525U
G01N33/569 G
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020106399
(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公開番号】P2022001835
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 悠佑
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0136258(US,A1)
【文献】特表2020-507772(JP,A)
【文献】国際公開第2019/192978(WO,A1)
【文献】特開2009-287953(JP,A)
【文献】特開2009-085701(JP,A)
【文献】特開2008-292270(JP,A)
【文献】特表2015-524557(JP,A)
【文献】特表昭61-502214(JP,A)
【文献】特開平04-299262(JP,A)
【文献】特表2018-513983(JP,A)
【文献】特開2020-091285(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0229913(US,A1)
【文献】国際公開第2019/245744(WO,A1)
【文献】特開2000-019173(JP,A)
【文献】特開2008-064475(JP,A)
【文献】特表2014-515094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/543
G01N 33/548
G01N 33/569
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物質に親和性を有する物質を結合させたコロイド粒子を用い、担体上の流路上の検出部位において被検物質をイムノクロマトグラフィーの原理により検出する方法であって、直接結合粒子と、一種類又は多種類からなる間接結合粒子を用い、直接結合粒子は被検物質に結合する修飾物質を表面に結合させたコロイド粒子であり、間接結合粒子は直接結合粒子表面の修飾物質に結合する修飾物質、及び/又は他の間接結合粒子表面の修飾物質に結合する修飾物質を表面に結合させたコロイド粒子であり、直接結合粒子用流路を有する担体及び間接結合粒子用流路を有する担体が合流する担体であって、直接結合粒子用流路を有する担体及び間接結合粒子用流路を有する担体が合流点より上流で分岐している担体を用い、直接結合粒子を直接結合粒子用流路を有する担体の上流部にアプライし、間接結合粒子を間接結合粒子用流路を有する担体の上流部にアプライし、担体合流部において混合され、混合された状態で担体合流部の下流を流れ、被検物質:直接結合粒子:間接結合粒子(「:」は結合を示す)の複合体を形成させることにより感度を上昇させて検出する、被検物質検出方法。
【請求項2】
コロイド粒子表面に被検物質に対する親和性物質が結合していないコロイド粒子を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
コロイド粒子の少なくとも1つが親水性コロイドである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
コロイド粒子の少なくとも1つが疎水性コロイドである請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
異なる2種以上の被検物質を検出する請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
コロイド粒子の少なくとも1つが量子ドットである請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
平均流路径が1000μm以下である担体又は多孔性担体を流路の一部又は全部に用いた請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
直接結合粒子と間接結合粒子の混合後の流路が被検物質検出部位まで同じ担体である、請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
用いるコロイド粒子のうち少なくとも1つがラテックス粒子である請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
用いるコロイド粒子のうち少なくとも1つが金コロイド粒子である請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
被検物質が生物由来の物質である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
被検物質が感染性微生物由来の物質である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
感染性微生物がウイルスである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項13のいずれか1項に記載の方法に用いるための、イムノクロマト法用試験片および直接結合粒子及び間接結合粒子を含むキットであり、イムノクロマト法用試験片は、直接結合粒子用流路を有する担体及び間接結合粒子用流路を有する担体が合流する担体であって、直接結合粒子用流路を有する担体及び間接結合粒子用流路を有する担体が合流点より上流で分岐している担体を含み、直接結合粒子は被検物質に結合する修飾物質を表面に結合させたコロイド粒子であり、間接結合粒子は直接結合粒子表面の修飾物質に結合する修飾物質、及び/又は他の間接結合粒子表面の修飾物質に結合する修飾物質を表面に結合させたコロイド粒子であり直接結合粒子及び間接結合粒子担体上で複合体を形成するキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路を用いた被検物質の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1.被験物質の検出感度の上昇
被検物質の検出の際、被検物質に直接結合する試薬である検出試薬及び該検出試薬に結合する増感試薬を用いるとき、検出試薬を用いた後に洗浄工程を行い、未結合の検出試薬を除いた後、増感試薬を用いることが一般的である。しかし、手順が煩雑になったり、これを自動化する機器が必要になったりしていた。イムノクロマト法などの1ステップの簡易な検出手法においてこのように増感するためには特許文献1の様な流路を含めた構造の複雑化が必要であり、特許文献2の様に複数工程の自動化などのコストがかかる技術の採用が必要であった。
【0003】
本発明者は表面プラズモン共鳴を起こす粒子と起こさない粒子を併用することで、感度が上昇する現象を過去に発見した。このような粒子の組み合わせは被検物質検出感度に有利に作用する。
【0004】
2.S/N比の増加
1つの流路で2つ以上の関連する被検物質を同時に検出する方法がある。たとえば、上気道感染症に関連したイムノクロマト法であれば、インフルエンザA型とB型及びRSV(Respiratory syncytial virus)を同一キットで個別に(3種類それぞれのテストラインで)検出するキットが市販されている。また、たとえ試験項目が1つであっても、被検物質が複数種類で構成される場合がある。たとえば、被検物質がヒトなどの真核生物のバイオマーカータンパク質であればスプライジングバリアントが存在する場合があり、被検物質が微生物であれば、複数の血清型や遺伝子型で分類される場合がある。これらの場合、被検物質に対する親和性物質の結合部位をバリアントの共通領域に設計できないことがあるため、同一の検査項目でありながら複数の親和性物質が必要になることがある。バリアントを含む複数の被検物質に対する複数の親和性物質を用いるには、1つの粒子が複数種類の親和性物質と結合したり、各親和性物質が一種類ずつ結合したコロイド粒子を用いて被検物質の検出を行ったりすることができる。1つの粒子に複数の親和性物質を結合させる方法より、それぞれの粒子にそれぞれの親和性物質を結合させる方が、安定的な親和性物質結合粒子の作成などの観点から、好ましい。このように、被検物質が複数種類で構成される場合に、被検物質の一部の種類しか含まれないことがある。
【0005】
あるいは、たとえ被検物質が一種類であっても、検出用のコロイド粒子は、被検物質に対し過剰量含まれていることが多い。
【0006】
これらの条件下で反応に関与しない粒子によりバックグラウンドシグナル(検出部位以外の流路上に残ったコロイド粒子のシグナル)が上昇したり、その結果、被検物質の検出のS/N比が低下したりする。
【0007】
3.複数種類の粒子を用いた1段階の多角的な被検物質の検出方法
2つ以上の異なる種類の粒子それぞれを異なる方法で被験物質を検出できる。例えば、着色粒子と蛍光粒子の併用は目視と高感度化を実現できる。しかし、同一の被検物質に結合する際、これら粒子が互いに競合することがある。このため、多くの場合、一種類の粒子で行うよりも感度やS/N比が低下する。特許文献3のように、これら粒子の複合粒子を作製することも可能だが、作製コストの問題がある。また、構成する粒子のうち少なくとも1種類は単独で被検物質と結合した場合に比べS/N比が変わらないか低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2020/040159公報
【文献】特許第5610389号公報
【文献】特許第5288634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
流路と粒子を用いた低濃度の被検物質の検出法の提供を目的とし、以下の課題を解決する。
【0010】
1.被験物質の検出感度の上昇
従来よりも高感度な被検物質の検出を、従来と同程度の作業や時間で行う。
【0011】
2.バックグラウンドシグナルの減少とS/N比の増加
同一検出キット内で複数の被検物質を対応するそれぞれのコロイド粒子を用い検出する際、結合するそれぞれの粒子を用いる場合、必ずしもすべての被検物質がサンプル中に含まれない。コロイド粒子はその一部しか被検物質の検出に関与できず、反応に関与しない粒子により、検出時のS/N比が低下する。
【0012】
3.複数種類の粒子を用いた1段階の多角的な被検物質の検出方法
複数種類の粒子を用い、粒子の種類ごとにそれぞれの検出法を行う場合、これを1段階で行うこと困難であったり、検出時のS/N比が低下したりする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従来のイムノクロマト法(図4)等のコロイド粒子と流路を用いた被検物質の検出法は、コロイド粒子の表面修飾物質として被検物質に対する親和性物質を用いることが多い。本発明はコロイド粒子の表面修飾物質として被験物質に対する親和性物質だけでなくコロイド粒子同士を結合させる物質を一部又は全部のコロイド粒子表面に修飾することを特徴とする。このようなコロイド粒子を用いてイムノクロマト法などの流路を用いた被検物質の検出を行う。
【0014】
検出部位において被検物質に結合したコロイド粒子を被験検物質結合粒子と呼び、被検物質には直接結合せず、他のコロイド粒子を介して被検物質に結合しているコロイド粒子を粒子結合粒子と呼ぶ。従来のイムノクロマト法などの流路とコロイド粒子を用いた被検物質検出法は、主に被検物質結合粒子のシグナルを検出する。本発明は被検物質結合粒子と粒子結合粒子のシグナルをそれぞれ、あるいは併せて検出することにより、以下の1~3を達成する。
【0015】
1.被検物質の検出感度の上昇
発明者が既に発明したコロイド粒子同士の結合を用いる多段階増感方法(特願2019-213491)では増感工程を行う際、増感前に検出工程と洗浄工程が必要であった。これに対し本法では洗浄工程なしに検出工程と増感工程を合わせて1工程で行うことで、作業コストと時間コストを削減する。具体的には、イムノクロマト法等の担体流路を用いた被検物質検出方法において、被検物質結合粒子と粒子結合粒子が混ざった状態で流路上を流れ、被検物質:被検物質結合粒子:粒子結合粒子(:は結合を示す)の複合体を検出部位において検出する。
【0016】
2.S/N比の増加
複数の種類の被検物質を、それぞれの物質に対する親和性物質を結合させたコロイド粒子を用いて検出する場合、あるいは被検物質が1種類であっても、コロイド粒子数に対し、被検物質の量が相対的に少ない場合がある。このような場合に被検物質に結合できないコロイド粒子を有効に用いることでS/N比が増加する。具体的には被検物質に結合できないコロイド粒子が粒子結合粒子として間接的に被検物質に結合し、S/N比が上昇する。反応に関与しなかったコロイド粒子を他の粒子を介して複合体を形成させることで、高いS/N比で被検物質を検出する。
【0017】
3.複数種類の粒子を用いた1段階の多角的な被検物質の検出方法
二種類以上の検出方法に対応した粒子(例えば着色粒子と蛍光粒子)を用い、S/N比を低下させることなく、一段階の操作で被検物質の検出を行う。
【0018】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 担体上の流路上の検出部位において被検物質をコロイド粒子を用いて検出する方法であって、表面を修飾する物質を介して互いに結合しうるコロイド粒子同士を含み、これらコロイド粒子が担体上の流路の一部又は全部を混合された状態で流れ、検出部位においてコロイド粒子の一部が被検物質に対し、他のコロイド粒子を介して間接的に結合する被検物質検出方法。
[2] コロイド粒子表面に被検物質に対する親和性物質が結合していないコロイド粒子を含む[1]の方法。
[3] コロイド粒子の少なくとも1つが親水性コロイドである[1]又は[2]の方法。
[4] コロイド粒子の少なくとも1つが疎水性コロイドである[1]~[3]のいずれかの方法。
[5] 被検物質の検出の感度あるいはS/N比が上昇する[1]~[4]のいずれかの方法。
[6] 異なる2種以上の被検物質を検出する[1]~[5]のいずれかの方法。
[7] 被検物質に結合しなかった直接結合粒子が間接結合粒子と同様に機能する[1]~[6]のいずれかの方法。
[8] コロイド粒子の少なくとも1つが量子ドットである[1]~[7]のいずれかの方法。
[9] 2つ以上の流路が途中で合流する[1]~[8]のいずれかの方法。
[10] 流路が合流点より上流で分岐する[9]の方法。
[11] 被検物質に親和性を有する物質を結合させたコロイド粒子を用い、担体上の流路上の検出部位において被検物質を検出する方法であって、直接結合粒子と、一種類又は多種類からなる間接結合粒子を用い、直接結合粒子は被検物質に結合する修飾物質を表面に結合させたコロイド粒子であり、間接結合粒子は直接結合粒子表面の修飾物質に結合する修飾物質、及び/又は他の間接結合粒子表面の修飾物質に結合する修飾物質を表面に結合させたコロイド粒子であり、これらのコロイド粒子が担体上の流路の一部又は全部において混合された状態で流れ、被検物質:直接結合粒子:間接結合粒子(「:」は結合を示す)の複合体を形成させることにより感度を上昇させて検出する、被検物質検出方法。
[12] 平均流路径が1000μm以下である担体又は多孔性担体を流路の一部又は全部に用いた[11]の方法。
[13] 直接結合粒子、間接結合粒子及び被検物質をあらかじめ混合して担体にアプライする、[11]又は[12]の方法。
[14] 直接結合粒子用流路を有する担体及び間接結合粒子用流路を有する担体が合流する担体を用い、直接結合粒子を直接結合粒子用流路を有する担体の上流部にアプライし、間接結合粒子を間接結合粒子用流路を有する担体の上流部にアプライし、担体合流部において混合され、混合された状態で担体合流部の下流を流れる、[11]~[13]のいずれかの方法。
[15] 直接結合粒子と間接結合粒子の混合後の流路が被検物質検出部位まで同じ担体である、[11]~[14]のいずれかの方法。
[16] 担体がイムノクロマト法用試験片であり、イムノクロマトグラフィーの原理により被検物質を検出する、[1]~[15]のいずれかの方法。
[17] 用いるコロイド粒子のうち少なくとも1つがラテックス粒子である[1]~[16]のいずれかの方法。
[18] 用いるコロイド粒子のうち少なくとも1つが金コロイド粒子である[1]~[17]のいずれかの方法。
[19] 被検物質が生物由来の物質である、[1]~[18]のいずれかの方法。
[20] 被検物質がウイルスを含む感染性微生物由来の物質である、[1]~[19]のいずれかの方法。
[21] [11]~[20]のいずれかの方法に用いるための、少なくとも直接結合粒子及び間接結合粒子を含むキットであり、これら粒子が複合体を形成するキット。
[22] イムノクロマト法用キットである、[1]~[10]のいずれかの方法に用いるためのキット又は[21]のキット。
[23] 被検物質に親和性を有する物質を結合させたコロイド粒子を用いた、担体上の流路上の検出部位において被検物質を検出する方法において、被検物質検出の感度を上昇させる方法であって、直接結合粒子と、一種類又は多種類からなる間接結合粒子を用い、直接結合粒子は被検物質に結合する修飾物質を表面に結合させたコロイド粒子であり、間接結合粒子は直接結合粒子表面の修飾物質に結合する修飾物質、及び/又は他の間接結合粒子表面の修飾物質に結合する修飾物質を表面に結合させたコロイド粒子であり、これらのコロイド粒子が担体上の流路の一部又は全部において混合された状態で流れ、検出部位において被検物質:直接結合粒子:間接結合粒子(「:」は結合を示す)の複合体を形成させることにより、被検物質検出の感度を上昇させる方法。
【発明の効果】
【0019】
以下の1、2、3の少なくとも1つを流路と粒子を用いた従来の検出法と同程度の簡易な操作で達成できる。
1.被検物質の検出感度の上昇
被検物質結合粒子のシグナルと粒子結合粒子のシグナルとを併せて検出することで被検物質の検出感度が上昇する。
2.S/N比の増加
被検物質の検出に関与しなかった直接結合粒子が粒子結合粒子として被検物質に間接的に結合することでS/N比が上昇する。
3.複数種類の粒子を用いた1段階の多角的な被検物質の検出方法
複数の被検物質検出法を高いS/N比で簡易に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1-1】多段階増感方法の概要を示す図であり、2種類のコロイド粒子を用いる方法の概要を示す図である。
図1-2】1段階増感方法の概要を示す図であり、2種類のコロイド粒子を用いる方法の概要を示す図である。
図2】本発明のイムノクロマト法用試験片の一例を示す図である。
図3図2に記載のイムノクロマト法用試験片を用いたアッセイ方法の概略を示す図である。
図4】従来のイムノクロマト法用試験片の一例を示す図である。
図5】コンジュゲートパッドを2つの流路それぞれに用い、サンプルパッドを設置したイムノクロマト法用試験片の一例を示す図である。サンプルをサンプルパッドに滴加するのみで図3の方法と同等の被検物質検出感度が得られる。
図6】コンジュゲートパッドとメンブレンを2つの流路それぞれに用い、サンプルパッドを設置したイムノクロマト法用試験片の一例を示す図である。サンプルをサンプルパッドに滴加するのみで図3の方法と同等の被検物質検出感度が得られる。
図7】ビオチン化抗体を被検物質とし、被検物質結合粒子としてストレプトアビジン修飾粒子を用い、粒子結合粒子としてビオチン修飾粒子を用いた場合の検出感度の上昇を示す図である。
図8】コロイド粒子上の粒子結合用表面修飾物質の組成が感度やバックグラウンドシグナルに与える影響を示した図である。矢印の部位に検出阻害複合体の形成がみられる。対応粒子同士の結合にストレプトアビジンとビオチンを用い、ビオチン濃度により、感度(ドットの濃淡)と検出阻害複合体(矢印部位)の形成され具合が異なることを示す。
図9】第一及び第二間接結合粒子の併用が感度に与える影響を示す図である。
図10】Respiratory syncytial virus(RSV)に結合する2つの抗体を用いたサンドイッチによるラテラルフローイムノクロマト法に本増感法を用いた際の増感結果を示す図である(その1)。
図11】Respiratory syncytial virus(RSV)に結合する2つの抗体を用いたサンドイッチによるラテラルフローイムノクロマト法に本増感法を用いた際の増感結果を示す図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
被検物質に結合する修飾物質を表面に結合させたコロイド粒子を直接結合粒子と呼ぶ。被検物質に結合する修飾物質を表面に結合させたコロイド粒子は被検物質に結合するので、被検物質結合粒子と呼ぶこともできる。被検物質に結合する修飾物質が表面に結合しておらず、直接結合粒子表面の修飾物質に結合する修飾物質及び/又は他の間接結合粒子表面の修飾物質に結合する修飾物質を表面に結合させたコロイド粒子を間接結合粒子と呼ぶ。直接結合粒子表面の修飾物質に結合する修飾物質及び/又は他の間接結合粒子表面の修飾物質に結合する修飾物質を表面に結合させたコロイド粒子は他の粒子に間接的に結合するので、粒子結合粒子と呼ぶこともある。特定の粒子に結合しうる粒子を、その粒子に対する「対応粒子」と呼ぶ。逆に特定の粒子に結合できない粒子をその粒子に対する「非対応粒子」と呼ぶ。対応粒子同士はそれぞれの「コロイド粒子同士を結合させるための表面修飾物質」により結合する。これらの表面修飾物質について、それぞれの粒子の「コロイド粒子結合用表面修飾物質」と呼ぶ。1つのコロイド粒子上のコロイド粒子結合用表面修飾物質は1種類であっても多種類であってもよい。
【0022】
粒子結合粒子の効果を明示するため、本発明の実施例は主に粒子結合粒子として間接結合粒子を用いているが、直接結合粒子の組み合わせのみでも本発明は実施できる。つまり、被検物質に対する親和性物質を一部あるいはすべてのコロイド粒子の表面の一部あるいは全面に結合していてもよい。直接結合粒子の対応粒子である間接結合粒子を第一間接結合粒子、第一間接結合粒子の対応粒子である間接結合粒子を第二間接結合粒子と呼ぶ。
【0023】
流路上の検出部位において被検物質結合粒子のシグナルを検出する検出方法に、イムノクロマト法などがある。従来より用いられているイムノクロマト法に用いる試験片(デバイス)の代表的な構造を図4に示す。検出感度を上昇させるため、コロイド粒子はバックグラウンドシグナルに影響を与えない範囲でキット中に過剰量含まれている。被検物質濃度が比較的薄い場合、被検物質に結合できるコロイド粒子は全体の一部であり、被検物質に結合した被検物質結合粒子が発するシグナルにより、被検物質を検出する。逆にコロイド粒子の大部分は被験物質の検出に関与できず、バックグラウンドシグナルの上昇などでS/N比を低下させる。
【0024】
本発明では一段階の操作により、対応粒子同士が流路の一部又は全部を混合された状態で流れる。検出部位において、結合した被検物質結合粒子だけでなく、粒子結合粒子も被検物質の検出に寄与する。その結果、検出感度やS/N比が上昇したり、粒子の種類に応じた様々な検出方法が可能となったりする。
【0025】
コロイド粒子結合用表面修飾物質の一方を結合させたコロイド粒子は、対応粒子上のコロイド粒子結合用表面修飾物質とコロイド粒子結合用表面修飾物質同士の結合を介して結合する。
【0026】
被検物質結合粒子と表面修飾物質同士を介して結合している粒子結合粒子を第一粒子結合粒子と呼ぶ。第一粒子結合粒子に結合している粒子結合粒子を第二粒子結合粒子、同様に第n粒子結合粒子に結合している粒子結合粒子を第n+1粒子結合粒子(nは自然数)と呼ぶ。この時、被検物質結合粒子及び第n粒子結合粒子はそれぞれ1種類でも2種類以上の粒子で構成されていてもよい。
【0027】
流路上又は検出部位において、被検物質と第一のコロイド粒子が結合し被検物質結合粒子となる。被検物質結合粒子に第二のコロイド粒子が結合し、第一粒子結合粒子となる、さらに第一粒子結合粒子に第三のコロイド粒子が結合し、第二粒子結合粒子となる。対応粒子同士であれば互いに結合が可能であるため、第n+2粒子結合粒子(nは自然数)と第n粒子結合粒子は同じコロイド粒子であることがある。そのほかのコロイド粒子についても、対応粒子であれば結合しうる。直接的又は間接的に被検物質に結合した粒子はそれぞれ被検物質結合粒子又は粒子結合粒子である。これら被検物質結合粒子と粒子結合粒子が発するシグナルを、粒子の種類ごとに、あるいは併せて検出することができる。
【0028】
被検物質結合粒子のシグナルのみを検出する従来の方法にくらべ、本発明では粒子結合粒子のシグナルも検出できる。被検物質結合粒子からのシグナルと粒子結合粒子からのシグナルが同一、又は同じ種類のもの(例えば赤色に見える直径40nm程度の金コロイド粒子と赤色着色ラテックス粒子)を含む場合、これらのシグナルを合わせて検出することができる。その結果、従来の方法に比べ粒子数に応じ、被検物質の検出の感度やS/N比を上昇させうる。あるいは異なる複数種類のシグナルを発する場合、それぞれに対応する検出方法を用いて検出できる。
【0029】
粒子の一部について異なる種類のシグナルを発するコロイド粒子(例えば蛍光粒子と着色粒子)を用いることもでき、この場合、一度の検出で2つ以上のシグナルを検出でき、コストや必要な感度に応じた検出が可能となる。
【0030】
本発明は、任意の場所において上記の複合体が形成されうるデバイスを用いた検出方法に適用することができる。このような、デバイスとして、イムノクロマトグラフィー等のクロマトグラフィー用デバイス、ガラスや樹脂を材料とするマイクロ流路を有するマイクロチップ、キャピラリーが挙げられる。ここで、マイクロ流路とは、内径がマイクロメートルオーダーの流路をいい、そのような流路を有し、その流路を通ってコロイド粒子が移動し、被検体の検出を行うことができるデバイスをマイクロチップやマイクロキャピラリーと呼ぶ。これらのデバイスにおいては、コロイド粒子と被検物質を含む液体をデバイスに添加したときに、コロイド粒子と被検物質がデバイスを構成する担体上の流路を通って流れることにより移動し、任意の場所において複合体を形成する。例えば、イムノクロマトグラフィーの原理を利用したイムノクロマト法用デバイスの場合、多孔性担体を材料とするイムノクロマト法用試験片が流路となる。コロイド粒子や被検物質が流路を移動し、被検物質を結合し得る物質(例えば被検物質が抗原の場合、その抗原に結合する抗体)を固相化した検出部位において複合体が形成あるいは捕捉される。この複合体は被検物質と被検物質結合粒子、又は被検物質と被検物質結合粒子と粒子結合粒子により構成される。
【0031】
コロイド粒子のうち、対応粒子同士の一部は混合後、検出部位に到達するまでの間に複合体を形成することがある。被検物質の検出に影響を及ぼす多くの場合、このような複合体は検出時に検出部位まで到達しておらず、検出を阻害し得る。検出時に検出部位まで到達していない複合体を検出阻害複合体と呼ぶ。検出阻害複合体は複合体のサイズが大きくなることにより影響を及ぼすことが多い。検出阻害複合体は流路長を短くしたり、流路径を大きくしたり、間接結合粒子の種類数(第n間接結合粒子のnの最大値に相当)を増やしたり、直接結合粒子及び間接結合粒子の粒子数を最適化したり、コロイド粒子結合用表面修飾物質量を減らしたりすることにより、影響を縮小できる場合がある。
【0032】
本発明では、対応粒子同士をほぼ同時に流路上にアプライするが、それぞれの粒子が混合した状態で継続的(徐放的)に流れていることが好ましい。また、バックグラウンドシグナルの上昇に影響しない範囲で継続的にこれらコロイド粒子を追加することが好ましい。
【0033】
1. コロイド粒子
本発明で用いるコロイド粒子として、ラテックス粒子等の親水コロイド粒子や金属コロイド粒子、シリカコロイド粒子等の疎水コロイド粒子、又は量子ドットなどを含むコアシェル構造を持つ粒子などが挙げられる。疎水コロイド粒子には、保護コロイドが結合したものも含まれる。ここで、保護コロイドとは、親水コロイドであり、疎水コロイドを取り囲むことにより疎水コロイドを保護するコロイドをいう。保護により、加熱や塩類の添加等による溶液の変化に起因するコロイド粒子の凝析を防止することができる。疎水コロイドは電気的な反発力で分散を保っていることが多い。このため、本発明に用いるコロイド粒子は少なくとも1つが親水性コロイドであることがコロイド粒子同士の結合しやすさの面で好ましい。疎水コロイド粒子は、表面プラズモン共鳴を起こす粒子であってもよい。表面プラズモン共鳴を引き起こすことにより特定波長付近の光を吸収する。ラテックス粒子には、着色ラテックス粒子や蛍光色素を含むラテックス粒子等が含まれる。ラテックス粒子とは、コロイド状に水中に分散した乳濁液を形成する粒子をいう。粒子の材質は限定されないが、検査薬等の技術分野において抗体、抗原、リガンド、レセプター等のタンパク質を結合する固相担体の材料に用いられるものを用いることができる。例えば、ポリスチレン、スチレン-アクリル酸共重合体などのスチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリビニルトルエンなどの樹脂、シリカ、セルロース等が挙げられる。この中でも、スチレンをベースとする粒子が好ましい。スチレンをベースとする粒子とは、ポリスチレンやスチレン又はスチレンの誘導体と重合性不飽和カルボン酸や重合性不飽和スルホン酸等との共重合体を材料とする粒子をいう。スチレンの誘導体としては、クロロメチルスチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられ、重合性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられ、重合性不飽和スルホン酸としては、スチレンスルホン酸ソーダ等が挙げられる。本発明において、スチレンをベースとするラテックス粒子をポリスチレンラテックス粒子という。ラテックス粒子の直径は、数十~数百nm、好ましくは50~800nm、さらに好ましくは200~600nmである。金属コロイド粒子は、金属、合金、酸化金属、金属化合物等の種類、形状を問わないが、例えば、金コロイド粒子が挙げられる。また、金属コロイド粒子1つに一層シリカ等の材料によりコーティングされているコアシェル型のものも含む。さらに、粒子同士を様々な形で結合させた複合粒子も用い得る。金属コロイド粒子の直径は、10~200nm、好ましくは10~100nm、さらに好ましくは10~50nmである。どのようなコロイド粒子であっても、一般的なコロイド粒子結合用表面修飾物質分子及びこれとコロイド粒子を結合するリンカー分子を合わせたサイズと同程度あるいは十分に大きい粒子(抗体などの一般的な分子であれば粒子径が直径10nm以上)を用いることが、立体障害による未反応なコロイド粒子結合用表面修飾物質を残す上で好ましい。
【0034】
コロイド粒子のすべてが必ずしも検出方法に直接関与する必要はない。例えば、被検物質の検出に着色コロイド粒子のシグナルを検出する際、すべての粒子に着色コロイド粒子を用いた場合、検出阻害複合体の形成により、バックグラウンドシグナルが高くなることがある。そのため、一部の粒子に、例えば無着色のコロイド粒子を用いてS/N比を上昇させることができる(実施例4)。
【0035】
1つのコロイド粒子に対し1種類のコロイド粒子結合用表面修飾物質を結合させてもよいし、複数種類のコロイド粒子結合用表面修飾物質を結合させてもよい。
【0036】
互いに結合する2種類のコロイド粒子結合用表面修飾物質の組合せとして、抗原と抗体の組合せが挙げられるが、抗体と抗原の組合せだけでなく、例えば、リガンドとレセプター又はレセプターとリガンドの組合せであってもよい。そのような親和性物質として、被検物質に結合し得るポリペプチドやその他の化合物が挙げられる。具体的には、アビジンとビオチンなどの組合せがあげられる。コロイド粒子表面はコロイド粒子結合用表面修飾物質以外に、ブロッキング剤を結合させることにより非特異反応を抑制できる。また、ブロッキング剤がコロイド粒子結合用表面修飾物質を兼ねることができる。例えば、直接結合粒子にビオチン化BSAをブロッキング剤及びコロイド粒子結合用表面修飾物質として用い、第一粒子結合粒子のコロイド粒子結合用表面修飾物質としてストレプトアビジンを結合させることができる。
【0037】
対応粒子同士が結合するためのコロイド粒子結合用表面修飾物質は、互いに親和性のある物質の組み合わせを最低1種類用いる。コロイド粒子結合用表面修飾物質は1種類でも多種類でもよいが、1種類であることが好ましい。
【0038】
コロイド粒子への表面修飾物質の固定化方法は物理的結合、電気的結合、化学的結合などを用いることができる。
【0039】
コロイド粒子は液体中に分散させて用いる。この液体をコロイド粒子分散液と呼ぶ。
【0040】
2. 流路
本発明の方法において、コロイド粒子は担体上の流路を流れて移動する。
コロイド粒子や被検体が移動する多孔性担体の流路の孔の内径(担体流路径)はコロイド粒子径に比して十分に大きいことが必要である。本発明の方法を用いた際、検出阻害複合体により測定結果やバックグラウンドシグナルに影響を与えないことが好ましい。担体流路径は用いられるコロイド粒子径にもよるが、平均して1000μm以下であり、好ましくは500μm以下、さらに好ましくは200μm以下、さらに好ましくは100μm以下であり、100nmから100μm程度であることが好ましい。この点、流路を形成する担体としては多孔性担体が好ましく、その中でもニトロセルロースメンブレンが好ましい。さらに、流路径がニトロセルロースメンブレンと同程度のマイクロメートルオーダーである、マイクロ流路が好ましい。マイクロメートルオーダーの流路径を有する流路をマイクロ流路と呼ぶ。
【0041】
流路を有する担体は、コロイド粒子が流れることができれば何でもよい。例えば、一本ずつの流路から構成されるマイクロ流路を有する担体が挙げられる。また、特定の流路が形成されておらず、多数の流路から構成される多孔性担体なども挙げられる。担体の材料も流路として機能し検出感度・特異度に問題がなければ、なんでもよい。例えば、マイクロ流路を有する担体の場合、ガラスや樹脂が挙げられ、イムノクロマトグラフィーに用いる担体の場合、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ナイロン、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ガラス繊維、ポリオレフィン、セルロース、ポリスチレン等の天然、合成ポリマー、あるいはこれらの混合物からなる材料を挙げることができる。
【0042】
対応粒子同士は、流路上にアプライする前に混合することができる。流路上にアプライする前に混合する場合、混合後は速やかに流路にアプライされることが好ましい。
【0043】
あるいは、対応粒子同士は、流路の構造の工夫により流路上で混ぜることができる。例えば、直接結合粒子と第一間接結合粒子と第二間接結合粒子を流路上で混合する場合を考える(実施例3参照)。直接結合粒子と第一間接結合粒子は混合されるまで異なる流路を流れる。流路が合流する部位でこれら対応粒子同士が混合される。流路上で混合される場合、検出阻害複合体の形成を抑制できる。合流箇所に至る複数の流路のうち、少なくとも直接結合粒子が流れる流路を直接結合粒子用流路と呼ぶ。直接結合粒子用流路以外の流路を間接結合粒子用流路と呼ぶ。流路が合流し粒子が混合される部位を流路混合部と呼ぶ。混合後の流路を混合流路と呼ぶ。流路混合部より上流では、対応粒子同士は異なる流路を流れることが好ましい。逆に、非対応粒子は流路混合部より上流において異なる流路を流れても同じ流路を流れても検出阻害複合体の形成にあまり寄与しない。例えば、第二間接結合粒子は直接結合流路を流れても、第二間接結合粒子のみが流れる流路を流れても、検出阻害複合体の形成にあまり寄与しない。このように、非対応粒子同士が流路混合部より上流において同じ流路を流れることで、ストリップ構造を単純化できることがある(実施例3とこれに用いたストリップ構造である図2を参照)。
【0044】
レイノルズ数が低い層流中においては、拡散により粒子同士が流路上で結合して複合体を形成することは困難である。そのため、粒子同士の結合は主に検出部位などのコロイド粒子が固定化されうる部位で起きやすい。逆に、対応粒子同士が混合された後に、流路の材料や、流路の方向に変化がある場合はレイノルズ数が大きくなることが予想される。このような乱流形成によると考えられる検出阻害複合体の形成が促進されることがある。たとえば本発明を図4のような従来のラテラルフローイムノクロマトストリップで実施する場合、コロイド粒子がコンジュゲートパッド(CP)からメンブレンへ移行する際、検出阻害複合体の形成がみとめられることがある(実施例2参照)。この検出阻害複合体の形成により本来メンブレンへ移行するはずの粒子の多くが流路上に停滞する。検出阻害複合体の形成を抑制するため、混合流路を縮小したり、レイノルズ数が比較的小さい流路を用いることができる。また、臨界レイノルズ数を大きくするために、混合流路か検出部位まで同じ材質あるいは同じ特性(ポアサイズ、ポア形状、濡れ性等)を有する担体を用いることができる。また、流路全体において流速や流れの方向に大きな変化がない担体や材料を用いることが好ましい。例えば、メンブレンに直接的に粒子をアプライしたり(実施例1参照)、図5のような構造を用いたり(実施例4参照)することができる。このように、検出阻害複合体の形成を防ぐために、かつ、試験のコストを過大にしないためには、粒子同士の混合は、流路上において行うことが好ましい。例えば流路上の粒子同士の混合は、撹拌装置などの外力を用いることができる。あるいは複数の多孔性担体の合流あるいは複数の流路の合流などの構造の工夫を用いることによっても可能である。流路の構造上の工夫は撹拌装置を用いることに比べ、受動的であり、乱流を起こしにくいため、粒子混合方法として好ましい。拡散による層流中のコロイド粒子混合効率は流路混合部の流路径の2乗と反比例すると考えられる。コロイド粒子混合効率を上昇させるため、流路混合部の流路径、あるいは流路混合部の幅(2つの流路の接する面の幅)に対する厚み(直接結合粒子用流路と間接結合粒子用流路の重なりを合わせた厚み)が小さい流路を用いることができる。
【0045】
複数の多孔性担体を用い、それぞれの多孔性担体が接する、連結している、又は重なっていることで流路混合部を形成し、流路混合部より上流では対応粒子同士がそれぞれ別の多孔性担体を流れることができる。流路混合部において混合された対応粒子同士は、流路混合部より下流(検出部位を含む)において複合体を形成する。ラテラルフローイムノクロマトキットであれば、流路混合部をコンジュゲートパッド(図5)やメンブレン上(図6)に設定できる。特に、流路混合部が2枚のニトロセルロース膜等、幅に対し薄い流路である場合、流路の広い面が接触する形の流路混合部を設計できる。このような態様で混合される方法として、特許第4865664号公報に記載と同様の方法を用いることができる。具体的には2つの別々の担体が重ね合わさり流路混合部を形成し、合流した担体の下流に検出部位が存在する。第1の担体と第2の担体が二股を形成するように重ね合わされる。第1の担体に異なる方向に枝別れするような形状で第2の担体が重ね合わされていても良い。あるいは、第1の担体と第2の担体がフィルム等を挟むことにより互いに混ざらないような構造であれば枝分かれが同じ方向であっても、互いに接していても良い(図5及び6参照)。図5及び図6に構造を示す試験片は、コンジュゲートパッドを2つの流路それぞれに用い、サンプルパッドを設置したイムノクロマト法用試験片である。対応粒子同士の組み合わせを2つ以上の別のコンジュゲーションパッドにあらかじめ含ませておくことができる。
【0046】
複数のマイクロ流路の合流による混合は互いに層流に近いため本来極めて困難である。しかし、このような層流中での拡散による混合をレイノルズ数を大きく増加させずに行う方法が報告されている(Science,295(2002)647)。この混合方法を用いた場合でも流路混合部において混合された粒子同士は、流路混合部より下流(検出部位を含む)において複合体を形成する。このような対応粒子同士の結合により、粒子同士が結合する。その結果、被検物質捕捉部位において被検物質と被検物質結合粒子だけでなく、粒子結合粒子がさらに結合した複合体を検出することができる。
【0047】
3. 被検物質及び検体
被検物質は核酸、タンパク質、糖、その他の化合物など何でもよく、生物由来の物質であってもよい。また、これらの複合体、たとえば細菌やウイルスなどの病原性微生物、あるいは生体中あるいは環境中の物質などであってもよい。
【0048】
検体としては、主に水相の検体又は検体の緩衝液による希釈液等を用いることができる。検体としては、血清、血漿、血液、尿、唾液、組織液、髄液、咽頭若しくは鼻腔拭い液、咽頭若しくは鼻腔洗浄液、鼻腔吸引液等の体液等、糞便、糞便懸濁液、培養液などが挙げられる。
【0049】
本発明の方法は、被検物質にコロイド粒子あるいはコロイド粒子の複合体を次々に結合させ、さらに大きな複合体を形成させることにより反応を増感させる。これらの複合体からのシグナルを検出することにより被検物質を検出させる。
【0050】
第1番目のコロイド粒子と被検物質が結合する。ここで用いるコロイド粒子は直接的又は間接的に被検物質に結合することができればなんでもよい。ここで、被検物質とコロイド粒子を直接的に結合するとは、コロイド粒子表面に被検物質に親和性を有する物質が結合し、その物質が被検物質に結合することをいい、被検物質とコロイド粒子が間接的に結合するとは、コロイド粒子表面に結合した物質に他の物質を介して被検物質が結合することをいう。例えば、検体の前処理により被検物質に他の物質Aが結合し、該物質Aに親和性がある物質Bが結合したコロイド粒子と被検物質が結合する。好ましくは被検物質に対する親和性物質が表面に結合し修飾されたコロイド粒子を用いて直接的に結合する。すなわち、第1番目のコロイド粒子には、コロイド粒子同士が結合するためのコロイド粒子結合用表面修飾物質と被検物質と直接的又は間接的に結合する物質が結合している。コロイド粒子結合用表面修飾物質は被検物質と結合する物質と同一で、コロイド粒子結合用表面修飾物質が被検物質と結合する親和性物質を兼ねていてもよい。コロイド粒子に結合させる、被検物質に親和性を有する物質もコロイド粒子結合用表面修飾物質も表面修飾物質と呼ぶ。被検物質に対する親和性物質は、例えば、被検物質が抗原の場合、被検物質に対する抗体であり、被検物質が抗体の場合、その抗体が結合する抗原である。ただし、被検物質に対する親和性物質は、被検物質と結合する物質である限り限定されない。
【0051】
第2番目のコロイド粒子には第1番目のコロイド粒子のコロイド粒子結合用表面修飾物質と結合する他のコロイド粒子結合用表面修飾物質が結合している。第1番目のコロイド粒子と第2番目のコロイド粒子はコロイド粒子結合用表面修飾物質同士の結合により結合し、複合体を形成する。
【0052】
第3番目以降のコロイド粒子は第2番目のコロイド粒子と同様に他のコロイド粒子と結合する。つまり、第n+1番目(nは自然数)のコロイド粒子には第n番目のコロイド粒子のコロイド粒子結合用表面修飾物質と結合する他のコロイド粒子結合用表面修飾物質が結合している。第n番目のコロイド粒子と第n+1番目のコロイド粒子はコロイド粒子結合用表面修飾物質同士の結合により結合し、複合体を形成する。これらのn+1回の増感工程により、コロイド粒子の複合体のサイズをより大きくさせる。この増感方法は、増感を1段階で行うことも多段階で行うこともできる。1段階で行う場合、これらの反応は並行しておこる。つまり、個別にかつ順不同に結合反応が並行して起きる。第1番目のコロイド粒子と被検物質との結合する反応や不特定の第n番目のコロイド粒子と第n+1番目のコロイド粒子が結合し反応がおこり、複合体を形成する。さらにこの複合体と別のコロイド粒子あるいは複合体同士が結合する。粒子と複合体あるいは複合体同士の結合についても、不特定の第n番目のコロイド粒子と第n+1番目のコロイド粒子間の結合がこれらの結合を引き起こす。1段階で増感を行う場合、1段階結合様式と呼ぶ。多段階で増感を行う場合、被検物質に対し、第1番目のコロイド粒子が結合し、順に第2番目、第3番目のコロイド粒子が結合する。多段階で増感を行う場合、多段階結合様式と呼ぶ。1段階結合様式、多段階結合様式のいずれの場合においても、検出部位において被検物質がこれら複合体が発するシグナルが検出されるためには被検物質が検出部位に捕捉あるいは固定されており、これとコロイド粒子の複合体が結合している必要があり、複合体には最低でも第1番目のコロイド粒子である被験物質結合粒子が含まれている必要がある。コロイド粒子に結合しているコロイド粒子結合用表面修飾物質は種類が限定されない。不特定の第n番目のコロイド粒子に1種類あるいは2種類以上のコロイド粒子結合用表面修飾物質の構成を用いることができる。第n番目のコロイド粒子と第n+1番目のコロイド粒子間で同一あるいは異なる構成のコロイド粒子結合用表面修飾物質の組み合わせを用いることができる。
【0053】
同様に、コロイド粒子は1種類又は2種類以上のコロイド粒子を用いることができる。不特定の第n番目のコロイド粒子に1種類あるいは2種類以上のコロイド粒子の構成を用いることができる。また、不特定の第n番目のコロイド粒子と第n+1番目のコロイド粒子間を同一あるいは異なる構成で用いることができる。
【0054】
図1-1に多段階結合様式による、増感の原理を示す。各1種類ずつの修飾物質を結合させた2種類のコロイド粒子を用いている。また、被検物質2を検出するために、これに結合する物質を結合させた不溶性担体1を用いている。すなわち、図1-1は不溶性担体1上で被検物質2を捕捉し検出する例を示している。被検物質2を含む検体を添加すると、不溶性担体1上の被検物質2に結合する物質が被検物質2と結合しこれを捕捉する。図1-1において、コロイド粒子は、黒い円で表される第1番目のコロイド粒子と白い円で表される第2番目のコロイド粒子が用いられる。ここで、第n番目のコロイド粒子は、反応系にn番目に添加するコロイド粒子を意味する。図1-1に示す場合において、第1番目のコロイド粒子は、被検物質に対する親和性物質を結合させた直接結合粒子であるとともに、間接結合粒子としても用いられる。第1番目のコロイド粒子には、被検物質に結合する1種類の修飾物質(図1-1の表面修飾物質4)が結合している。図1-1の表面修飾物質4は被検物質に対する親和性物質と、図1-1の工程Bにおいて第2番目のコロイド粒子8と(コロイド粒子結合用表面修飾物質7を介して)結合するためのコロイド粒子結合用表面修飾物質を兼ねている。第2番目のコロイド粒子には、図1-1の表面修飾物質4に結合する物質に結合する物質(図1-1の表面修飾物質7)が結合している。図1-1の表面修飾物質7は、被検物質そのものでもよいし、被検物質に構造が類似した物質でもよい。被検物質に構造が類似した物質として、被検物質と共通の部分構造を有する物質が挙げられ、例えば、被検物質がポリペプチドやタンパク質であれば、被検物質の部分的アミノ酸配列と相同性の高いアミノ酸配列を有する物質が挙げられる。
【0055】
最初に工程Aにおいて、第1番目のコロイド粒子5が担体1上の物質に捕捉された被検物質2に結合する。このとき、被検物質2:第1番目のコロイド粒子5(「:」は結合を示す)で表される複合体が形成される。
【0056】
次いで工程Bにおいて、増感用修飾コロイド粒子である第2番目のコロイド粒子8を添加する。その結果、第1番目のコロイド粒子5に第2番目のコロイド粒子8が結合する。このコロイド粒子同士の結合は、第1番目のコロイド粒子のコロイド粒子結合用表面修飾物質4と第2番目のコロイド粒子8のコロイド粒子結合用表面修飾物質7(M(1))の結合を介して起こる。工程Bにおいて、第1番目のコロイド粒子5と第2番目のコロイド粒子8が結合した複合体が形成される。このとき、被検物質2:第1番目のコロイド粒子5:第2番目のコロイド粒子8(「:」は結合を示す)で表される複合体が形成される。
【0057】
次いで、工程Cにおいて第1番目のコロイド粒子5と同じコロイド粒子を増感用修飾コロイド粒子である第3番目のコロイド粒子11として添加する。さらに、工程Dにおいて、第2番目のコロイド粒子8と同じコロイド粒子を増感用修飾コロイド粒子である第4番目のコロイド粒子14として添加する。この結果、図1-1の工程Dに示すように、被検物質2:第1番目のコロイド粒子5:第2番目のコロイド粒子8:第3番目のコロイド粒子11:第4番目のコロイド粒子14(「:」は結合を示す)で表される、2種類のコロイド粒子を含む大きな複合体が形成される。コロイド粒子の数に応じたシグナルが発生し、そのシグナル強度を測定することにより、被検物質を検出することができる。一定量の被検物質に対して、増感工程数を増やすにつれ、複合体がより大きくなり、複合体に含まれるコロイド粒子の数が増加し、その結果発生するシグナルも大きくなるので、被検物質の測定感度が増強される。
【0058】
図1-1は、工程Dまで示してあるが、工程の繰返し回数は限定されない。図1-1に示す方法においては、工程Aで用いる第1番目のコロイド粒子と工程Cで用いるコロイド粒子は同じであり、工程Bで用いるコロイド粒子と工程Dで用いるコロイド粒子MCは同じである。
【0059】
さらに、図1-2に1段階結合様式による、増感の原理を示す。図1-2は図1-1と同じ材料を用いた例である。混合が拡散のみで(流れが層流で)あればあるほど、ほとんどが粒子間速度差が大きい(捕捉された粒子は停止しているとみなせる)検出部位にて粒子同士が結合する。このため、1段階結合様式は図1-1の多段階結合様式と経時的に同様の反応を示す。しかしながら、粒子の一部は検出部位に到達するまでに複合体を形成し、図1-2Bと図1-2Cのような反応を経て、図1-1の多段階結合様式のDのような複合体を形成する。図1-2Bは複合体形成過程において、様々な複合体が結合する可能性を示している。また、図1-2Cは、多段階増感法と同様に1段階でありながら、様々な複合体及び粒子が結合し、継続的に複合体中の粒子数が増えることを示している。
【0060】
本発明の方法において、コロイド粒子の種類数は限定されず、1種類又は2種類以上のコロイド粒子を用いることができる。これまでに本発明者は検出に用いるコロイド粒子に共鳴粒子(表面プラズモン共鳴を起こす粒子;金属コロイド粒子等)と保持粒子(共鳴粒子よりも大きい表面プラズモン共鳴を起こさない粒子;ラテックスコロイド粒子等)とを併用することでさらに感度が上昇することを示した。この感度の上昇は直接結合粒子及び/あるいは間接結合粒子の一部又は全部に応用ができる。共鳴粒子は保持粒子表面に結合する。共鳴粒子は表面プラズモン共鳴を起こすことにより特定波長付近の光を吸収する。同時に保持粒子からもシグナルを発するため、表面プラズモン共鳴によるシグナルと保持粒子からのシグナルを含めたトータルのシグナルを検出することができ、高感度な検出が可能になる。
【0061】
粒子結合粒子は、第n粒子結合粒子(nは任意の自然数)まで用いることができる。このnは流路中での粒子同士の反応速度や、バックグラウンドシグナルに対し最適化することができる。たとえば比較的流路が長い場合などで検出部位に到達するまでに検出阻害複合体が大きくなるとき、全体の粒子数を変えずにnを増やすことで、反応速度を小さくすることができる。逆に、粒子のサイズが担体ポアサイズに対し小さい場合などには、nを小さい数にすることができる。例えば、間接結合粒子(粒子結合粒子であることが明示的)を用いる場合、第二間接結合粒子まで用いたほうが検出感度に有利な場合がある。直接結合粒子と第一間接結合粒子、及び第一間接結合粒子と第二間接結合粒子は対応粒子である。この時、直接結合粒子と第二間接結合粒子は同様のメカニズムで第一間接結合粒子に結合することがある。多くの場合、直接結合粒子上よりも第二間接結合粒子上のほうが、粒子結合用表面修飾物質量を多く結合でき、第二間接結合粒子まで用いたほうが、検出感度が有利になる(実施例2参照)。
【0062】
複数の被検物質を同時に検出する被検物質検出キットでコロイド粒子と流路を用いたものが市販されている(たとえば、インフルエンザA型とB型を同じキット内で区別して検出するキット)。このようなキットを用いた検出では、被検サンプルに検出対象となる被検物質が必ずしもすべての種類含まれない。たとえば被検サンプルに被検物質Aが含まれ、A以外の被検物質Bが含まれない場合、Bを検出する直接結合粒子が全く反応に寄与せず、Aの検出に関しS/N比が低下する。このような場合に、それぞれの直接結合粒子が共通の第一粒子結合粒子と結合すれば(たとえば、間接結合粒子に結合するAとBのコロイド粒子結合用表面修飾物質に共通の物質を用いる)、Bの直接結合粒子が第二粒子結合粒子として機能する。逆に被検サンプルにAが含まれず、Bが含まれる場合にも同様に機能する。いずれの場合においても、感度やS/N比が改善されることがある。
【0063】
被検物質は不溶性担体に直接的、あるいは間接的に結合されていてもよい。不溶性担体として、他のコロイド粒子、樹脂、イムノクロマト法のイムノクロマト用試験片等が挙げられる。
【0064】
コロイド粒子が着色コロイド粒子の場合、コロイド粒子から発生するシグナルは特定の波長を含む反射光であり、光の強さを目視、デンシトメーター又は分光光度計等により測定することによりシグナルの強度を測定することができる。
【0065】
コロイド粒子が蛍光粒子である場合、コロイド粒子から発生するシグナルは特定の波長の蛍光であり、蛍光の強さを蛍光測定装置により測定することによりシグナルの強度を測定することができる。
【0066】
2種類のコロイド粒子を用い、それぞれのコロイド粒子が、蛍光共鳴エネルギー移動のエネルギー供与体及びエネルギー受容体を結合させたコロイド粒子である場合、コロイド粒子が複合体を形成し、コロイド粒子が密集することにより、蛍光共鳴エネルギー移動FRET)の変化が生じ、この変化をシグナルとして蛍光測定装置で測定することによりシグナルの強度を測定することができる。
【0067】
本発明の方法に用いる反応液は被検物質への直接結合粒子の結合やコロイド粒子表面修飾物質同士の反応が阻害されず、かつ特異的に起きれば何でもよく、緩衝液を使うことが好ましい。緩衝液に塩、界面活性剤、アルコール等を添加してもよい。
【0068】
本発明は、試薬やキットも包含する。該キットは、直接結合粒子だけでなく、間接結合粒子をも用いた試薬やキットである。該キットは例えば、イムノクロマトグラフィーの原理を利用したイムノクロマト法用キットであり、コロイド粒子に結合させた被検物質に結合する物質は、被検物質に抗原抗体反応により結合する抗体又は抗原である。該キットは、さらに、イムノクロマト法用の試験片、ブロッシャー、緩衝液等を含む。前記の被検物質に結合する物質を結合させたコロイド粒子は、イムノクロマト法用試験片とは別の試薬として含まれていてもよいし、イムノクロマト法用試験片の標識部位に含まれていてもよい。
【0069】
以下、本発明のイムノクロマト法の1例を説明する。以下の場合は、2つの別々の担体が重ね合わさり流路混合部を形成し、合流した担体の下流に検出部位が存在する担体として、第1の担体と第2の担体が二股を形成するように重ね合わさる担体を用いる場合である。また、被検物質に結合する物質を担体の検出部位に固定化する場合である。
【0070】
(1)イムノクロマト法用試験片
イムノクロマト法用試験片は、被検物質(抗原等)を捕捉する抗体等の物質が固定化された検出部位を有する支持体、検体をアプライする部位、展開された検体液を吸収する吸収帯、これら部材を1つに貼り合わせるためのバッキングシート等を具備する。
【0071】
支持体は、被検物質(抗原)を捕捉するための抗体を固定化する性能を持つ材料であり、かつ液体が水平方向に通行することを妨げない性能を持ち、セルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、ガラス繊維、ナイロン等でできている。支持体を単にメンブレンということもある。
【0072】
検出部位は、被検物質(抗原)を捕捉する抗体が固定化された支持体の一部の部位を指す。検出部位は、抗原を捕捉するための抗体を固定化した部位を少なくとも1つ設ける。検出部位は支持体に含まれていればよく、例えば、支持体上に抗体を固定化すればよい。
【0073】
検体をアプライするための部位にはアプライするための多孔性材料であるサンプルパッドを設けてもよい。サンプルパッドはイムノクロマト試験片の最も上流にある部位である。該材料には一般的に用いられる濾紙、ガラス繊維、不織布等を用いることができる。
【0074】
吸収帯は、支持体に供給され検出部位で反応に関与しなかった成分を吸収するための部材である。該材料には、一般的な天然高分子化合物、合成高分子化合物等からなる保水性の高い濾紙、スポンジ等を用いることができる。
【0075】
本発明の方法に用いるイムノクロマト法用試験片に、流路混合部を設計する場合、直接結合粒子用流路の担体と間接結合粒子用流路の担体の、少なくとも2つの担体が存在し、2つの担体は検出部の上流で重ね合わさり合流し、その担体合流部で流路混合部を形成する。2つのそれぞれの流路を有する2つの担体は、例えば第1の担体の検出部位の上流に検出部位を有しない第2の担体が重ね合せてあればよい。この場合、第1の担体は直接結合粒子用流路となり、第2の担体は間接結合粒子用流路として機能する。
【0076】
直接結合粒子及び間接結合粒子は、担体の上流にアプライしてもよいが、あらかじめ担体上に保持させておいてもよい。このような保持は、流路担体上に直接行っても良いが、ラテラルフローイムノクロマトストリップにおけるコンジュゲートパッドのように、それぞれの流路の上流部に別の材料による保持部位を持っていても良い。上の二股の担体を有するイムノクロマト法用試験片の場合、第1の担体上流のコンジュゲートパッドに直接結合粒子を含浸し乾燥させることにより固定化させておき、第2の担体上流のコンジュゲートパッドに間接結合粒子を含浸し乾燥させることにより固定化させておいてもよい。この方法を用いると、図5図6に示すような構造の試験片を用いることができ、サンプル液を一か所(たとえばサンプルパッド等)にアプライするのみで被検物質を検出可能となり、操作を簡便化できることがある。
【0077】
図2及び図4~6に本発明で用いるイムノクロマト試験片の例を示す。
【0078】
(2)アッセイ方法
(1)のイムノクロマト法用試験片を用いて以下のようにアッセイを行うことができる。
第1の担体の上流部に被検物質を含む検体と直接結合粒子の混合浮遊液をアプライし、第2の担体の上流部に間接結合粒子を含む浮遊液をアプライする。アプライは浮遊液をサンプルパッドに滴加することにより行うこともできるし、容器にアプライする浮遊液を入れそれにイムノクロマト法用試験片のサンプルパッドを浸すことにより行うこともできる。被検物質と直接結合粒子の混合液と間接結合粒子は、第1の担体と第2の担体が重ね合わさる部分で合流し、流路混合部を形成する。被検物質と直接結合粒子と間接結合粒子は混合した状態で、担体の検出領域に移動する。担体の検出領域で、被検物質と結合する物質:被検物質:直接結合粒子:間接結合粒子の複合体(「:」は結合を示す)が形成され、直接結合粒子及び間接結合粒子からのシグナルを検出することにより被検物質を測定することができる。
【0079】
個別の流路には非対応粒子同士であれば異なる粒子が流れても検出阻害複合体の形成は起こらない。また、被検物質を含む検体は、間接結合粒子と混合しておいてもよいし、直接結合粒子及び間接結合粒子の両方と混合しておいてもよい。
【0080】
図3図2に構造を示すイムノクロマト試験片のアッセイ方法の一例の概要を示す。図3に示す方法では、容器にアプライする浮遊液を入れそれにイムノクロマト法用試験片のサンプルパッドを浸すことによりサンプルを添加している。第1の担体16に直接結合粒子及び被検物質、あるいは直接結合粒子、被検物質及び第2間接結合粒子を含む浮遊液21をアプライし、第2の担体17に間接結合粒子を含む浮遊液22を含む浮遊液をアプライする。流路混合部において第1の担体にアプライした浮遊液と第2の担体にアプライした浮遊液が混ざり、支持体19に含まれる検出部位で捕捉された複合体を検出することができる。図3中、矢印Fは液が流れる方向を示す。
【0081】
なお、第1の担体及び第2の担体に垂直方向に外力を加えるのが好ましい。この外力により第1の担体を流れた粒子と第2の担体を流れた粒子が混合しやすくなる。外力は例えば、担体を上から押さえつけることにより加えることができる。
【0082】
図5~6に構造を示す試験片は、コンジュゲートパッドを2つの流路それぞれに用い、サンプルパッドを設置したイムノクロマト法用試験片である。図5~6の試験片を用いる場合、サンプルパッドに被検物質を含む検体をアプライし、試験片上を展開する液体(被験物質を含む)は、コンジュゲーションパッド1(24)及びコンジュゲーションパッド2(25)に分かれて流れる。コンジュゲーションパッド1(24)に直接結合粒子、あるいは直接結合粒子及び第2間接結合粒子を含み、コンジュゲーションパッド2(25)に間接結合粒子を含む(逆でもよい)。展開した液は試験片上で合流し混合され1液となる。検出部位19で捕捉された複合体を検出することができる。図4~6中、矢印Fは液が流れる方向を示す。
【実施例
【0083】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0084】
<実施例1>
試験方法
被検物質として、ビオチン/抗体のモル比率が5となるようにアミノ基ビオチン標識試薬(Thermo社)を用いて修飾したビオチン化マウス抗体を用いた。
【0085】
ニトロセルロースメンブレン上に各40, 10, 5, 2.5μg/mlのビオチン化マウス抗体1μlをドット状に含浸し乾燥させ固定化した。このストリップを用いてイムノクロマト法を行った。
【0086】
直接結合粒子であるストレプトアビジン修飾ラテックスコロイド粒子及び間接結合粒子であるビオチン修飾ラテックスコロイド粒子の混合液をメンブレンにアプライした。
【0087】
試験結果
直接結合粒子と間接結合粒子はメンブレン上を移動し、ビオチン化マウス抗体を固定化した検出領域上に集積した。図7に示す通り、間接結合粒子(ビオチン修飾粒子)を加えることで、各被検物質濃度において被検物質検出シグナルが増感された。直接結合粒子(ストレプトアビジン修飾粒子)及び間接結合粒子による呈色は、被検物質の濃度依存的に見られた。被検物質濃度が40μg/mlであっても、直接結合粒子がアプライされない場合、間接結合粒子によるシグナルは検出されなかった。流路状にコロイドの凝集によるライン形成やバックグラウンドシグナルの上昇は見られなかった。
【0088】
考察
直接結合粒子なしでは、間接結合粒子は被検物質によるシグナルが検出されず、間接結合粒子による増感効果が見られることから、間接結合粒子は直接結合粒子を介して間接的に被検物質に結合したと考えられる。被検物質:被検物質結合粒子:粒子結合粒子(:は結合を示す)の複合体の形成が示唆された。粒子がメンブレンに直接アプライされる場合、検出阻害複合体はあまり形成されないことが示唆された。
【0089】
<実施例2>
試験方法
サンプルパッド26、コンジュゲーションパッド24及び支持体19が直列に接触しており流路の枝分かれがない従来のイムノクロマト法用試験片である、図4の形状のストリップを用いて試験を行った。1mg/mlの被検物質捕捉物質(抗インフルエンザウイルス抗体)1μlをニトロセルロースメンブレンにブロット後、乾燥させた。被検物質(インフルエンザウイルス不活化抗原)、直接結合粒子(ビオチン/抗体のモル比率が1から16までの様々な個数のビオチンを付加した抗インフルエンザウイルス抗体修飾ラテックス)、第一粒子結合粒子(ストレプトアビジン修飾ラテックス)の混合液をサンプルパッド上にアプライした。表面修飾物質結合前の各ラテックス粒子には同一(赤色、直径400nm程度)のものを用いた。
【0090】
試験結果
図8に結果を示す。S1からS5へと感度が上昇した。S1からS4まではサンプルがコンジュゲーションパッドからメンブレンへの移行する部位(矢印の部位)にラテックスの停滞がみられたが、S5ではS1からS4に比べ減少した。
【0091】
考察
本発明者のこれまでの検討により、ビオチン数の増加によるアビジンとビオチンの結合反応とビオチン数の増加による抗原抗体反応の阻害はトレードオフの関係にあると考えられた。S1からS4までは、ビオチンの個数を減らすことで、ビオチン修飾による抗原抗体反応の阻害が抑制され、感度が上昇したと考えられる。S5は、検出阻害複合体の形成が抑制されていることから、アビジンとビオチンの反応のみを考慮した際のビオチンの最適個数より少なく、粒子結合粒子数が抑制されている可能性がある。しかし、検出阻害複合体が形成されにくくなり、多くのラテックス粒子が反応に関与することができたため、結果としてS4よりさらに感度が上昇したと考えられる。このように、コロイド粒子結合用表面修飾物質の量を最適化することで、S/N比が改善することがある。
【0092】
<実施例3>
試験方法
1mg/mlの被検物質捕捉物質(抗RSV (Respiratory syncytial virus)抗体)1μlをニトロセルロースメンブレンにブロット後、乾燥させた。被検物質(RSV不活化抗原)、直接結合粒子(ビオチン/抗体のモル比率が1となるようにビオチンを付加した抗RSV抗体修飾ラテックス)、第一間接結合粒子(ストレプトアビジン修飾ラテックス)及び第二間接結合粒子(直接結合粒子に比し、8倍量のビオチン分子が第二間接結合粒子に結合)をアプライし、それぞれの間接結合粒子の効果を検討した。表面修飾物質結合前の各ラテックス粒子には同一(赤色、直径400nm程度)のものを用いた。ストリップの構造は図2に示す構造を用い、図3のように枝分かれした2枚の各メンブレンの端よりそれぞれの浮遊液を含浸させた。具体的には被検物質、直接結合粒子及び第二間接結合粒子の混合液は同じ流路から、第一間接結合粒子は別の流路からアプライした。流路混合部には、特許第4865664号公報に記載の方法と同様の方法を用い、検出部位上流の直接結合粒子用流路であるニトロセルロースメンブレン上に、第一間接結合粒子用流路である別のニトロセルロースメンブレンをクリップではさむことにより圧接した。ネガティブコントロールには、RSV抗原を除いたものを用いた(Group-4)。
【0093】
試験結果
図9に示す通り、直接結合粒子のみの場合、非常に薄いドットが確認されたが(Group-1)、第一間接結合粒子を用いると、ドットが濃くなり、検出可能な程度にシグナルが増感された(Group-2)。第二間接結合粒子も合わせて用いると、さらにドットが濃くなった(Group-3)が、抗原が含まれない場合は、ドットが観察されなかった(Group-4)。
【0094】
考察
従来の直接結合粒子のみを用いる検出法では、被検物質が薄い場合、被検物質:直接結合粒子(「:」は結合を示す)の複合体のみが被検物質捕捉部位で検出されるため、検出シグナルは低い(Group-1)。これに対し、間接結合粒子を併せて用いた場合、被検物質:直接結合粒子の複合体だけでなく被検物質:被検物質結合粒子:粒子結合粒子の複合体が形成されていると考えられる。これら複合体が、被検物質捕捉部位において捕捉、あるいはさらに集積され、検出感度が上昇したと考えられる。第二間接結合粒子は直接結合粒子に比べ、粒子結合用表面修飾物質であるビオチンが多く結合している。このように、直接結合粒子表面の被検物質に対する親和性物質と粒子結合用表面修飾物質が別である場合、第二粒子結合粒子を用いることで、検出感度の上昇やS/N比を改善できることがある(Group-2とGroup-3の比較)。また、本法において適切な材料や流路設計を用いれば、直接結合粒子用流路と間接結合粒子用流路の担体を用いた合流が可能であることや、第二間接結合粒子以上の間接結合粒子を用いる際でも流路数を2流路に限定することが可能であることが示唆された。
【0095】
<実施例4>
試験方法
図5の形状のストリップ上に、2本のテストラインと1本のコントロールラインを形成した。2本のテストラインには1mg/mlの被検物質捕捉物質(抗RSV(Respiratory syncytial virus)抗体又はRSVには交差反応しない抗体)0.5μlをニトロセルロースメンブレンにブロットした。コントロールラインには抗マウス抗体をブロットした。これらのブロット後、メンブレンを乾燥させた。2種類の直接結合粒子(直接結合粒子A及び直接結合粒子 B;2種類とも赤色に着色した直径400nm程度のラテックスコロイド粒子)の被検物質に対する親和性物質にはマウス抗体を用いた。直接結合粒子Aは抗RSV抗体を修飾し、ビオチン/抗体のモル比率が1となるようにビオチンを付加した。直接結合粒子BはRSVには反応しないマウス抗体を修飾し、ビオチン/抗体のモル比率が1となるようにビオチンを付加した。直接結合粒子A及び直接結合粒子Bを図5に示すコンジュゲートパッド1に、第一粒子結合粒子(無着色のストレプトアビジン修飾ラテックスコロイド粒子)をコンジュゲートパッド2に、それぞれ塗布後、乾燥させた(Group-4)。粒子の塗布については、流路合流部である重なる先端部を避け、それぞれのコンジュゲートパッド中央部に細く塗布した。本発明の効果を調べるために、ビオチン化をしていない直接結合粒子を用いたストリップ(Group-1及びGroup-2)やビオチン化をしていない直接結合粒子の濃度を2倍にしたストリップ(Group-2)、又は間接結合粒子を塗布しないストリップ(Group-3)を併せて作製した。これらのストリップに被検物質(RSV不活化抗原)をアプライした。それぞれの間接結合粒子の効果を検討した。
【0096】
試験結果
図10に結果を示す。2本のテストラインのうち、RSV抗体をブロットしたライン位置を図に示す。直接結合粒子の総和が2倍になると、テストラインシグナルとバックグラウンドシグナルが増加した(Group-1とGroup-2の比較)。間接結合粒子を加えた場合、バックグラウンドシグナルが増加した(Group-4とGroup-3の比較)が、直接結合粒子の数を2倍にした際よりもテストラインシグナルが高くなった(Group-4とGroup-1の比較)。ビオチン修飾の有無では感度に差はなかった(Group-2とGroup-3の比較)。実施例3で見られたようなメンブレンへの移行部でのコロイド粒子の停滞はみられなかった。
【0097】
考察
2種類の直接結合粒子のみを用い、間接結合粒子を用いない場合、粒子結合用表面修飾物質(ビオチン)による修飾は必要ない。粒子結合用表面修飾物質は直接結合粒子の被検物質に対する結合を阻害する可能性があるが、粒子結合用表面修飾物質量を調整した結果、この阻害はみられなかった(Group-2とGroup-3の比較)。特定の被検物質に対する直接結合粒子の数は感度やバックグラウンドシグナルの濃さと相関する(Group-1とGroup-2の比較)。直接結合粒子Aは被検物質である不活化RSVに結合し、これを検出するが、直接結合粒子Bはこの検出に寄与しない。本実施例のように2つ以上の被検物質を同時に検出するキットに含まれる直接結合粒子の数は、検出感度を維持するため多くの場合、単独の被検物質を検出するキットより多くなる。このため、バックグラウンドシグナルが上昇しやすい(Group-1とGroup-2の比較)。間接結合粒子を用いると直接結合粒子の数を変えることなく、検出感度を上昇させることができる(Group-3とGroup-4の比較)。間接結合粒子には無着色のラテックスを用いているため、シグナルの増加は直接結合粒子によるものであると考えられる。間接結合粒子なしでは反応に寄与できなかった直接結合粒子Bや直接結合粒子Aの一部が粒子結合粒子としてシグナルの増加に寄与していると考えられる。以上より、2種類以上の被検物質を同時に検出する被検物質検出法において、本発明は検出感度やS/N比を上昇させるために有用であると考えられる。
【0098】
<実施例5>
試験方法
図5の形状のストリップ上に、2本のテストラインと1本のコントロールラインを形成した。2本のテストラインには1mg/mlの被検物質捕捉物質(抗インフルエンザウイルス抗体又はインフルエンザウイルスには交差反応しない抗体)0.5μlをニトロセルロースメンブレンにブロットした。コントロールラインには抗マウス抗体をブロットした。これらのブロット後、メンブレンを乾燥させた。直接結合粒子(ビオチン化抗インフルエンザウイルス抗体を結合させた直径40nmのBBI社製金コロイド)と間接結合粒子(青色のストレプトアビジン修飾ラテックスコロイド粒子;直径約400nm)と被検物質(不活化インフルエンザウイルス)とをサンプルパッドからアプライした(Group-2)。また、これ(Group-2)と間接結合粒子(Group-1)又は直接結合粒子(Group-3)をアプライしないものとを比較した。
【0099】
試験結果
図11に結果を示す。Group-2において紫色のテストライン及びコントロールラインが形成された。Group-1においては赤色のテストライン及びコントロールラインが形成され、Group-3においてはテストラインもコントロールラインも形成されなかった。
【0100】
考察
紫色のラインは対応粒子同士が結合していることを示す。金コロイドのような疎水性コロイドを用い、本発明を実施できることが示唆された。
【符号の説明】
【0101】
1 担体
2 被検物質
3 第1番目のコロイド粒子
4 コロイド粒子結合用表面修飾物質であって被検物質に対する親和性物質
5 表面修飾物質結合コロイド粒子
6 コロイド粒子C(1)
7 コロイド粒子結合用表面修飾物質M(1)
8 増感用修飾コロイド粒子MC(1)
9 コロイド粒子C(2)
10 コロイド粒子結合用表面修飾物質M(2)
11 増感用修飾コロイド粒子MC(2)
12 コロイド粒子C(3)
13 コロイド粒子結合用表面修飾物質M(3)
14 増感用修飾コロイド粒子MC(3)
15 イムノクロマト法用試験片
16 第1の担体
17 第2の担体
18 流路混合部
19 検出部位を含む支持体(メンブレン)
20 吸収パッド(濾紙)
21 直接結合粒子及び被検物質、あるいは直接結合粒子、被検物質及び第2間接結合粒子を含む浮遊液
22 間接結合粒子を含む浮遊液
23 フィルムなどの不透過膜
24 コンジュゲーションパッド1
25 コンジュゲーションパッド2
26 サンプルパッド
27 バッキングシート
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明により、様々な被検物質検出法について汎用的かつ簡便に感度上昇が可能である。
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11