(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】減速機、駆動ユニット、及び、操舵補助装置
(51)【国際特許分類】
F16H 1/32 20060101AFI20240820BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
F16H1/32 A
B62D5/04
(21)【出願番号】P 2020146279
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】中井 悠人
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-46730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置から動力を受けて回転する入力回転体と、
前記入力回転体を回転可能に支持するベースブロックと、
前記入力回転体の回転を減速する減速機構部と、
前記減速機構部と前記ベースブロックの外周側を覆い前記ベースブロックに相対回転可能に組付けられた筒状ケースと、を備え、
前記減速機構部で減速された回転が前記筒状ケースと前記ベースブロックのいずれか一方から出力される減速機であって、
前記ベースブロックには、前記筒状ケースの径方向内側領域から前記筒状ケースの外周面よりも径方向外側に延びる固定用フランジが一体に形成され、
前記ベースブロックは、前記筒状ケースの径方向内側に配置される基板部と前記固定用フランジの間に、軸方向に向かって開口する環状溝を有し、
前記環状溝内には、前記筒状ケースの軸方向の一端部が収容され、
前記環状溝の内周面と前記筒状ケースの外周面の間には、前記ベースブロックと前記筒状ケースの間を密閉するシール部材が配置され、
前記環状溝の外周面と前記筒状ケースの内周面の間には軸受が配置され、
前記シール部材と前記軸受とは、前記環状溝内において、
径方向視で軸方向位置がラップするように配置されている減速機。
【請求項2】
偏心回転部を有し駆動装置から動力を受けて回転するクランク軸と、
前記クランク軸を回転可能に支持するベースブロックと、
前記クランク軸の前記偏心回転部の偏心回転を受けて揺動回転する揺動歯車と、
前記揺動歯車の外歯と異なる歯数の内歯を有し、前記揺動歯車と前記ベースブロックの外周側を覆った状態で前記ベースブロックに回転可能に組付けられた筒状ケースと、を備え、
前記揺動歯車の揺動回転に伴って減速された回転が前記筒状ケースと前記ベースブロックのいずれか一方から出力される減速機であって、
前記ベースブロックには、前記筒状ケースの径方向内側領域から前記筒状ケースの外周面よりも径方向外側に延びる固定用フランジが一体に形成され、
前記ベースブロックは、前記筒状ケースの径方向内側に配置される基板部と前記固定用フランジの間に、軸方向に向かって開口する環状溝を有し、
前記環状溝内には、前記筒状ケースの軸方向の一端部が収容され、
前記環状溝の内周面と前記筒状ケースの外周面の間には、前記ベースブロックと前記筒状ケースの間を密閉するシール部材が配置され、
前記環状溝の外周面と前記筒状ケースの内周面の間には軸受が配置され、
前記シール部材と前記軸受とは、前記環状溝内において、
径方向視で軸方向位置がラップするように配置されている減速機。
【請求項3】
回転動力を出力する駆動装置と、
前記駆動装置から動力を受けて入力回転を減速する減速機と、を備え、
前記減速機は、
駆動装置から動力を受けて回転する入力回転体と、
前記入力回転体を回転可能に支持するベースブロックと、
前記入力回転体の回転を減速する減速機構部と、
前記減速機構部と前記ベースブロックの外周側を覆い前記ベースブロックに相対回転可能に組付けられた筒状ケースと、を備え、
前記減速機構部で減速された回転が前記筒状ケースと前記ベースブロックのいずれか一方から出力されるものであって、
前記ベースブロックには、前記筒状ケースの径方向内側領域から前記筒状ケースの外周面よりも径方向外側に延びる固定用フランジが一体に形成され、
前記ベースブロックは、前記筒状ケースの径方向内側に配置される基板部と前記固定用フランジの間に、軸方向に向かって開口する環状溝を有し、
前記環状溝内には、前記筒状ケースの軸方向の一端部が収容され、
前記環状溝の内周面と前記筒状ケースの外周面の間には、前記ベースブロックと前記筒状ケースの間を密閉するシール部材が配置され、
前記環状溝の外周面と前記筒状ケースの内周面の間には軸受が配置され、
前記シール部材と前記軸受とは、前記環状溝内において、
径方向視で軸方向位置がラップするように配置されている駆動ユニット。
【請求項4】
回転動力を出力する駆動装置と、
前記駆動装置から動力を受けて入力回転を減速する減速機と、
前記減速機で減速された動力を受けて動作する操舵機構と、を備え、
前記減速機は、
駆動装置から動力を受けて回転する入力回転体と、
前記入力回転体を回転可能に支持するベースブロックと、
前記入力回転体の回転を減速する減速機構部と、
前記減速機構部と前記ベースブロックの外周側を覆い前記ベースブロックに相対回転可能に組付けられた筒状ケースと、を備え、
前記減速機構部で減速された回転が前記筒状ケースと前記ベースブロックのいずれか一方から出力されるものであって、
前記ベースブロックには、前記筒状ケースの径方向内側領域から前記筒状ケースの外周面よりも径方向外側に延びる固定用フランジが一体に形成され、
前記ベースブロックは、前記筒状ケースの径方向内側に配置される基板部と前記固定用フランジの間に、軸方向に向かって開口する環状溝を有し、
前記環状溝内には、前記筒状ケースの軸方向の一端部が収容され、
前記環状溝の内周面と前記筒状ケースの外周面の間には、前記ベースブロックと前記筒状ケースの間を密閉するシール部材が配置され、
前記環状溝の外周面と前記筒状ケースの内周面の間には軸受が配置され、
前記シール部材と前記軸受とは、前記環状溝内において、
径方向視で軸方向位置がラップするように配置されている操舵補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速機、駆動ユニット、及び、操舵補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の操舵系の装置として、油圧や電動モータの力によって運転者のステアリング操作をアシストする操舵補助装置が知られている。操舵補助装置は、ステアリング部(ステアリングホイール)の操作に応じて車輪を操舵する操舵機構と、ステアリング部に加わる操舵力に応じたアシスト力を操舵機構に出力する駆動ユニットと、を備えている。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
上記の操舵補助装置で用いられる駆動ユニットは、電動モータ等の駆動装置と、駆動装置の出力を減速する減速機と、を備えている。減速機は、駆動装置から動力を受けて回転する入力回転体と、入力回転体の回転を減速する減速機構部と、減速機構部で減速された動力を受けて回転する出力回転体と、を備え、出力回転体の回転を操舵機構に伝達し得る構成とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
操舵補助装置等で用いられる減速機として、入力回転体と、入力回転体を回転可能に支持するベースブロックと、入力回転体の回転を減速する減速機構部と、減速機構部とベースブロックの外周側を覆いベースブロックに回転可能に組付けられた筒状ケースと、を備えたものがある。この減速機では、ベースブロックが車体取付部等の外部の固定部材に取り付けられるときには、筒状ケースが出力回転体として回転する。また、逆に筒状ケースが車体取付部等の外部の固定部材に取り付けられるときには、ベースブロックが出力回転体として回転する。
【0006】
この種の減速機では、ベースブロックを外部の固定部材に取り付けるために、ベースブロックの軸方向の端面に固定用のフランジ部材を取り付け、フランジ部材を固定部材に対してボルト締結等によって取り付ける。つまり、この減速機は、ベースブロックの軸方向の端面に、固定用の別体のフランジ部材が重ねて取り付けられた構造とされている。
【0007】
このため、この減速機では、別体のフランジ部材がベースブロックの端面に重ねられて取り付けられる分、減速機全体の軸長が長くなり、減速機全体の小型化の要望に対応することがむずかしい。また、減速機全体の部品点数も増大にしてしまう。
【0008】
本発明は、部品点数の削減と軸長の短縮化を図ることができる減速機、駆動ユニット、及び、操舵補助装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る減速機は、駆動装置から動力を受けて回転する入力回転体と、前記入力回転体を回転可能に支持するベースブロックと、前記入力回転体の回転を減速する減速機構部と、前記減速機構部と前記ベースブロックの外周側を覆い前記ベースブロックに相対回転可能に組付けられた筒状ケースと、を備え、前記減速機構部で減速された回転が前記筒状ケースと前記ベースブロックのいずれか一方から出力される減速機であって、前記ベースブロックには、前記筒状ケースの径方向内側領域から前記筒状ケースの外周面よりも径方向外側に延びる固定用フランジが一体に形成され、前記ベースブロックは、前記筒状ケースの径方向内側に配置される基板部と前記固定用フランジの間に、軸方向に向かって開口する環状溝を有し、前記環状溝内には、前記筒状ケースの軸方向の一端部が収容され、前記環状溝の内周面と前記筒状ケースの外周面の間には、前記ベースブロックと前記筒状ケースの間を密閉するシール部材が配置され、前記環状溝の外周面と前記筒状ケースの内周面の間には軸受が配置され、前記シール部材と前記軸受とは、前記環状溝内において、径方向視で軸方向位置がラップするように配置されている。
【0012】
本発明の他の態様に係る減速機は、偏心回転部を有し駆動装置から動力を受けて回転するクランク軸と、前記クランク軸を回転可能に支持するベースブロックと、前記クランク軸の前記偏心回転部の偏心回転を受けて揺動回転する揺動歯車と、前記揺動歯車の外歯と異なる歯数の内歯を有し、前記揺動歯車と前記ベースブロックの外周側を覆った状態で前記ベースブロックに回転可能に組付けられた筒状ケースと、を備え、前記揺動歯車の揺動回転に伴って減速された回転が前記筒状ケースと前記ベースブロックのいずれか一方から出力される減速機であって、前記ベースブロックには、前記筒状ケースの径方向内側領域から前記筒状ケースの外周面よりも径方向外側に延びる固定用フランジが一体に形成され、前記ベースブロックは、前記筒状ケースの径方向内側に配置される基板部と前記固定用フランジの間に、軸方向に向かって開口する環状溝を有し、前記環状溝内には、前記筒状ケースの軸方向の一端部が収容され、前記環状溝の内周面と前記筒状ケースの外周面の間には、前記ベースブロックと前記筒状ケースの間を密閉するシール部材が配置され、前記環状溝の外周面と前記筒状ケースの内周面の間には軸受が配置され、前記シール部材と前記軸受とは、前記環状溝内において、径方向視で軸方向位置がラップするように配置されている。
【0013】
本発明の一態様に係る駆動ユニットは、回転動力を出力する駆動装置と、前記駆動装置から動力を受けて入力回転を減速する減速機と、を備え、前記減速機は、駆動装置から動力を受けて回転する入力回転体と、前記入力回転体を回転可能に支持するベースブロックと、前記入力回転体の回転を減速する減速機構部と、前記減速機構部と前記ベースブロックの外周側を覆い前記ベースブロックに相対回転可能に組付けられた筒状ケースと、を備え、前記減速機構部で減速された回転が前記筒状ケースと前記ベースブロックのいずれか一方から出力されるものであって、前記ベースブロックには、前記筒状ケースの径方向内側領域から前記筒状ケースの外周面よりも径方向外側に延びる固定用フランジが一体に形成され、前記ベースブロックは、前記筒状ケースの径方向内側に配置される基板部と前記固定用フランジの間に、軸方向に向かって開口する環状溝を有し、前記環状溝内には、前記筒状ケースの軸方向の一端部が収容され、前記環状溝の内周面と前記筒状ケースの外周面の間には、前記ベースブロックと前記筒状ケースの間を密閉するシール部材が配置され、前記環状溝の外周面と前記筒状ケースの内周面の間には軸受が配置され、前記シール部材と前記軸受とは、前記環状溝内において、径方向視で軸方向位置がラップするように配置されている。
【0014】
本発明の一態様に係る操舵補助装置は、回転動力を出力する駆動装置と、前記駆動装置から動力を受けて入力回転を減速する減速機と、前記減速機で減速された動力を受けて動作する操舵機構と、を備え、前記減速機は、駆動装置から動力を受けて回転する入力回転体と、前記入力回転体を回転可能に支持するベースブロックと、前記入力回転体の回転を減速する減速機構部と、前記減速機構部と前記ベースブロックの外周側を覆い前記ベースブロックに相対回転可能に組付けられた筒状ケースと、を備え、前記減速機構部で減速された回転が前記筒状ケースと前記ベースブロックのいずれか一方から出力されるものであって、前記ベースブロックには、前記筒状ケースの径方向内側領域から前記筒状ケースの外周面よりも径方向外側に延びる固定用フランジが一体に形成され、前記ベースブロックは、前記筒状ケースの径方向内側に配置される基板部と前記固定用フランジの間に、軸方向に向かって開口する環状溝を有し、前記環状溝内には、前記筒状ケースの軸方向の一端部が収容され、前記環状溝の内周面と前記筒状ケースの外周面の間には、前記ベースブロックと前記筒状ケースの間を密閉するシール部材が配置され、前記環状溝の外周面と前記筒状ケースの内周面の間には軸受が配置され、前記シール部材と前記軸受とは、前記環状溝内において、径方向視で軸方向位置がラップするように配置されている。
【発明の効果】
【0015】
上述の減速機では、筒状ケースの径方向内側領域から筒状ケースの外周面よりも径方向外側に延びる固定用フランジがベースブロックに一体に形成されている。このため、別体の固定用のフランジ部材をベースブロックの端面に取り付ける場合に比較して部品点数を削減できるとともに、固定用のフランジが減速機の軸方向を大きく占有するのを回避することができる。したがって、本減速機を採用した場合には、部品点数の削減と軸長の短縮化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態の操舵補助装置の模式的な概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
<操舵補助装置>
図1は、本実施形態の駆動ユニット10を採用した車両の操舵補助装置1の概略構成図である。
操舵補助装置1は、ステアリングホイール2と、ステアリングシャフト3と、操舵伝達部を兼ねる駆動ユニット10と、駆動ユニット10を通して操舵される操舵機構6と、を備えている。ステアリングホイール2は、車両の運転席の前方に配置され、運転者によって回転操作される。ステアリングシャフト3は、ステアリングホイール2に一体に連結され、ステアリングホイール2と一体に回転する。
【0019】
駆動ユニット10は、操舵アシスト用の駆動装置であるモータ8と、モータ8の回転を減速して操舵機構6に伝達する減速機11(111,211,311,411)と、を備えている。駆動ユニット10は、ステアリングシャフト3の下端に連結されている。ステアリングホイール2からステアリングシャフト3に伝達された操舵トルクは、図示しない歯車機構を介して減速機11の入力部に入力される。減速機11の入力部は、入力された操舵トルクとモータ8によるアシストトルクを合成し、その合成トルクを減速機構部に伝達する。したがって、減速機11の出力部側(操舵機構6側)には、合成された操舵トルクとアシストトルクが所定の減速比に減速されて出力される。
【0020】
ステアリングシャフト3には、図示しないトルクセンサが設けられいる。トルクセンサによって検出されたトルクは、モータ8を制御するための図示しないコントローラに入力される。コントローラは、トルクセンサからの入力信号に基づいてモータ8の出力を制御する。運転者によるステアリングホイール2の操舵は、コントローラで制御されたモータ8のトルクによってアシストされる。
【0021】
減速機11の出力部側には、後述する出力アーム27が設けられている。出力アーム27の先端部は、車両の操舵機構6に連結されている。操舵機構6は、出力アーム27から操作力を受ける操作アーム
6bと、操作アーム
6bの操作によって車両の前輪Wを転舵するタイロッド
6aと、を備えている。
以下で説明する各実施形態の減速機11,111,211,311,411は、
図1に示す操舵補助装置1で使用することができる。
【0022】
<第1実施形態>
図2は、第1実施形態の減速機11の縦断面を示す図である。
減速機11は、車両に固定設置されるベースブロック12と、ベースブロック12に回転可能に支持される複数(例えば、三つ)のクランク軸13(入力回転体)と、各クランク軸13の二つの偏心回転部13bとともに揺動回転する第1揺動歯車14A、及び、第2揺動歯車14Bと、第1揺動歯車14A、及び、第2揺動歯車14Bの径方向の外側を覆うようにベースブロック12の外周面に回転可能に支持された筒状ケース15と、を備えている。
【0023】
ベースブロック12は、全体が短軸円柱状に形成されている。
以下では、説明の便宜上、ベースブロック12の中心軸線o1に沿う方向を軸方向と称し、中心軸線o1を中心とした放射方向を径方向と称す。また、軸方向に関して、対象物の内側に向く側を軸方向内側と称し、その逆側を軸方向外側と称する。これらの呼称は、他の実施形態の説明においても同様に使用する。
【0024】
ベースブロック12は、軸方向の一端側に配置される第1ベースブロック12Aと、軸方向の他端側に配置される第2ベースブロック12Bと、を備えている。
第1ベースブロック12Aは、円板状の基板部12Aaと、基板部12Aaの外周部から径方向外側に張り出す固定用フランジ12Abと、を有する。固定用フランジ12Abは、鋳造等によって第1ベースブロック12Aの基板部12Aaと一体に形成されている。固定用フランジ12Abは、筒状ケース15の外周面よりも径方向外がに延びている。
【0025】
また、第1ベースブロック12Aは、基板部12Aaと固定用フランジ12Abの間に軸方向の他端側(第2ベースブロック12B側)に向かって開口する円環状の環状溝60を有する。固定用フランジ12Abは、環状溝60の底壁を成す薄肉の中継部12Ab-1と、中継部12Ab-1の径方向外側に位置されるフランジ本体部12Ab-2とを有する。フランジ本体部12Ab-2は基板部12Aaと同厚みに形成されている。環状溝60は、基板部12Aaの外周面と、固定用フランジ12Abの中継部12Ab-1及びフランジ本体部12Ab-2とに囲まれて形成されている。
【0026】
フランジ本体部12Ab-2には、当該フランジ本体部12Ab-2を軸方向に貫通するボルト挿入孔40が形成されている。ボルト挿入孔40には、図示しない車体固定用のボルトが挿入される。また、中継部12Ab-1には、軸方向の一端側(モータ8の配置される側)に円筒状に突出する筒状壁61が形成されている。筒状壁61の端部には、モータ8のケース部8aがボルト62によって固定されている。
【0027】
第2ベースブロック12Bは、第1ベースブロック12Aの基板部12Aaと略同外径の円板状の基板部12Baと、基板部12Baの端面から第1ベースブロック12Aの方向に向かって延びる複数の連結支柱12Bbと、を有する。連結支柱12Bbは、基板部12Baの端面のうちの、中心軸線o1を中心とした同心円上に複数(例えば、三つ)配置されている。
【0028】
第2ベースブロック12Bは、連結支柱12Bbの端面が第1ベースブロック12Aの基板部12Aaの端面に突き合わされ、各連結支柱12Bbが第1ベースブロック12Aにボルト16によって締結固定されている。なお、
図2中の符号17は、ボルト16による締結前に第1ベースブロック12Aを各連結支柱12Bbに位置決めするための位置決めピンである。
【0029】
第1ベースブロック12Aと第2ベースブロック12Bの基板部12Aa,12Ba間には、軸方向の隙間が確保されている。この隙間には、第1揺動歯車14Aと第2揺動歯車14Bが配置されている。第1揺動歯車14Aと第2揺動歯車14Bには、第1ベースブロック12Aの各連結支柱12Bbが貫通する複数の逃げ孔18が形成されている。逃げ孔18は、各連結支柱12Bbが第1揺動歯車14Aと第2揺動歯車14Bの揺動回転を妨げないように、連結支柱12Bbの外面形状よりも充分に大きく形成されている。
【0030】
筒状ケース15は、第1ベースブロック12Aの基板部12Aaの外周面と、第2ベースブロック12Bの基板部12Baの外周面とに跨って配置されている。筒状ケース15の軸方向の両側の縁部は、第1ベースブロック12Aと第2ベースブロック12Bの各基板部12Aa,12Baの外周面に軸受19を介して回転可能に支持されている。筒状ケース15の軸方向の一端側の縁部は、第1ベースブロック12Aの環状溝60内において、軸受19を介して基板部12Aaの外周面に支持されている。
なお、筒状ケース15の外周面には、
図1に示すように、径方向外側に延びる出力アーム27が一体に形成されている。
【0031】
また、筒状ケース15の軸方向の中央領域(第1揺動歯車14Aと第2揺動歯車14Bの外周面に対向する領域)の内周面には、第1,第2ベースブロック12A,12Bの中心軸線o1と平行に延びる複数のピン溝20が形成されている。各ピン溝20には、略円柱状の内歯ピン21が回転可能に収容されている。筒状ケース15の内周面に取り付けられた複数の内歯ピン21は、第1揺動歯車14Aと第2揺動歯車14Bの各外周面に対向している。
【0032】
第1揺動歯車14Aと第2揺動歯車14Bは、筒状ケース15の内径よりも若干小さい外径に形成されている。第1揺動歯車14Aと第2揺動歯車14Bの各外周面には、筒状ケース15の内周面に配置された複数の内歯ピン21に噛み合い状態で接触する外歯14Aa,14Baが形成されている。第1揺動歯車14Aと第2揺動歯車14Bの各外周面に形成された外歯14Aa,14Baの歯数は、内歯ピン21(ピン溝20)の数よりも僅かに少なく(例えば、一つ少なく)設定されている。
【0033】
複数のクランク軸13は、第1ベースブロック12Aと第2ベースブロック12Bの中心軸線o1を中心とした同一円周上に配置されている。各クランク軸13は、軸受22を介して第1ベースブロック12Aと第2ベースブロック12Bに回転可能に支持されている。各クランク軸13は、一対のジャーナル部13aが軸方向に離間して形成されており、その各ジャーナル部13aが軸受22に支持されている。各クランク軸13の一対のジャーナル部13aの間には、前述した二つの偏心回転部13bが配置されている。
【0034】
クランク軸13の軸方向の一方側(モータ8の配置される側)の端部には、ジャーナル部13aに隣接して歯車取付部13cが形成されている。歯車取付部13cは、第1ベースブロック12Aの基板部12Aaから軸方向外側に突出している。歯車取付部13cには、モータ8側の出力歯車23と噛み合うクランク歯車24が取り付けられている。
【0035】
クランク歯車24には、ステアリングシャフト3(
図1参照)側の図示しない歯車機構の歯車が噛み合っている。このため、運転者によるステアリングホイール2の操作力は、クランク歯車24を通してクランク軸13に入力され、このときモータ8からのアシスト力も同時にクランク歯車24を通してクランク軸13に入力される。
【0036】
また、第1揺動歯車14Aと第2揺動歯車14Bには、クランク軸13の各対応する偏心回転部13bが挿通される支持孔25が形成されている。第1揺動歯車14Aと第2揺動歯車14Bの各支持孔25部分は、偏心部軸受26(円筒ころ軸受)を介してクランク軸13の対応する偏心回転部13bに支持されている。
【0037】
減速機11は、ステアリングシャフト3とモータ8からトルクを受けて複数のクランク軸13が一方向に回転すると、クランク軸13の各偏心回転部13bが所定の半径で同方向に旋回し、それに伴って第1揺動歯車14Aと第2揺動歯車14Bが同じ半径で同方向に揺動回転する。このとき、第1揺動歯車14Aと第2揺動歯車14Bの各外歯14Aa,14Baは、筒状ケース15の内周に保持された複数の内歯ピン21に噛み合うように接触する。
【0038】
減速機11では、第1揺動歯車14Aと第2揺動歯車14Bの各外歯14Aa,14Baの歯数が、筒状ケース15側の内歯ピン21の数よりも僅かに少なく設定されているため、第1揺動歯車14Aと第2揺動歯車14Bが一揺動回転する間に、第1揺動歯車14Aと第2揺動歯車14Bの各外歯14Aa,14Baが筒状ケース15を同方向に所定ピッチでで押し動かす。この結果、クランク軸13の回転は所定の減速比に減速されて筒状ケース15の回転として出力される。
なお、本実施形態では、クランク軸13は、減速機11の入力回転体を構成している。また、第1揺動歯車14A、及び、第2揺動歯車14Bは、内歯ピン21等とともに減速機11における減速機構部を構成している。
【0039】
また、第1ベースブロック12A側の環状溝60内に挿入された筒状ケース15の軸方向の一端部は、その外周面と環状溝60の内周面との間がシール部材28によって密閉されている。シール部材28は、環状溝60内において、筒状ケース15の周壁を挟んで軸受19の径方向外側位置に配置されている。換言すれば、シール部材28と軸受19とは、環状溝60内において、径方向視で軸方向位置がラップするように配置されている。
一方、筒状ケース15の軸方向の一端部は、その内周面と第2ベースブロック12Bの基板部12Baの外周面との間が同様のシール部材28によって密閉されている。
筒状ケース15とベースブロック12に囲まれ、内部に減速機構部を配置される空間部内には、減速機構部等の機械動作部を潤滑するための潤滑液が充填されている。
【0040】
以上のように、本実施形態の減速機11は、筒状ケース15の径方向内側領域から筒状ケース15の外周面よりも径方向外側に延びる固定用フランジ12Abが第1ベースブロック12A(ベースブロック12)に一体に形成されている。このため、別体の固定用のフランジ部材をベースブロックの端面に取り付ける場合に比較して部品点数を削減できるとともに、固定用のフランジが減速機11の軸方向を大きく占有するのを回避することができる。したがって、本実施形態の減速機11を採用した場合には、部品点数の削減と軸長の短縮化を図ることができる。
【0041】
また、本実施形態の減速機11では、筒状ケース15の径方向内側に配置される第1ベースブロック12Aの基板部12Aaと固定用フランジ12Abの間に、軸方向に向かって開口する環状溝60が形成され、その環状溝60内に筒状ケース15の軸方向の一端部が収容されている。このため、本実施形態の減速機11を採用した場合には、筒状ケース15と固定用フランジ12Abの一部を軸方向にラップさせて配置することで、減速機11の軸長をより短縮化することができ、かつ、車体側に締結固定されるフランジ本体部12Ab-2の肉厚を充分に確保することができる。
【0042】
さらに、本実施形態の減速機11では、環状溝60の内周面と筒状ケース15の外周面の間に、第1ベースブロック12A(ベースブロック12)と筒状ケース15の間を密閉するシール部材28が配置されている。このため、第1ベースブロック12Aと筒状ケース15の間の密閉を、径方向視で軸受19と軸方向でラップする位置で行うことができる。したがって、本構成を採用した場合には、減速機11の軸長をより短縮化することができる。
【0043】
なお、上記の実施形態では、ベースブロック12が車体側に固定され、筒状ケース15が出力回転体とされているが、逆に、筒状ケース15を車体側に固定し、ベースブロック12側を出力回転体とすることも可能である。
【0044】
<第2実施形態>
以下で説明する各実施形態では、第1実施形態と共通部分に同一符号を付すものとする。
図3は、第2実施形態の減速機111の縦断面を示す図である。
本実施形態の減速機111は、車両に固定されるベースブロック12と、ベースブロック12に回転可能に支持される複数のクランク軸13(入力回転体)と、クランク軸13の回転を受けて揺動回転する第1揺動歯車14A、及び、第2揺動歯車14Bと、第1揺動歯車14A、及び、第2揺動歯車14Bの径方向の外側を覆う筒状ケース15と、を備えている。筒状ケース15の内周面にはピン溝20が形成されており、ピン溝20には内歯ピン21が保持されている。内歯ピン21は、第1揺動歯車14A、及び、第2揺動歯車14Bとともに、減速機構部を構成している。これらの基本構成は第1実施形態のものと同構成とされている。
【0045】
ベースブロック12は、軸方向の一端側に配置される第1ベースブロック12Aと、軸方向の他端側に配置される第2ベースブロック12Bと、を有する。第2ベースブロック12Bは、連結支柱12Bbが第1ベースブロック12Aの基板部12Aaに突き当てられ、その状態で連結支柱12Bbが基板部12Aaにボルト16によって固定されている。
【0046】
第1ベースブロック12Aの基板部12Aaから径方向外側に延びる固定用フランジ12Abは、筒状ケース15の外周面よりも径方向外側に延びている。固定用フランジ12Abには環状溝60が形成されている。環状溝60には、筒状ケース15の軸方向の一端部が収容されている。固定用フランジ12Abと筒状ケース15の一端部側の構造は、第1実施形態と同様とされている。
なお、減速機111の内部には、減速機構部等の機械動作部を潤滑するための潤滑液が充填されている。
【0047】
ここで、複数のクランク軸13のうちの一つは、他端側のジャーナル部13aを支持する軸受22よりも軸方向外側に突出している。第2ベースブロック12Bの基板部12Baには、このクランク軸13の突出部13dが収容される凹部65が形成されている。凹部65の内壁とクランク軸13の突出部13dとの間には、クランク軸13の回転状態(回転位置や回転速度)を検出するための回転検出装置41が設置されている。
【0048】
回転検出装置41は、クランク軸13の突出部13dの外周面に取り付けられた検出ターゲット42と、第2ベースブロック12Bの凹部65の内壁に取り付けられたターゲット検出部43と、を備えている。ターゲット検出部43は、クランク軸13の回転に応じた信号をコントローラ100に出力する。回転検出装置41としては、例えば、磁気式の検出装置や光学式の検出装置を用いることができる。回転検出装置41のターゲット検出部43は、検出面が検出ターゲット42と微小隙間を挟んで対峙するように、凹部65の内壁に取り付けられている。
【0049】
回転検出装置41からコントローラ100に入力された信号は、例えば、何等かの原因によってモータ8に対するアシスト信号(駆動信号)の出力が停止している状況をコントローラ100で把握して対処する場合や、モータ8の出力目標と実際の回転の乖離を修正する場合等に用いることができる。モータ8に対するアシスト信号(駆動信号)の出力が停止している状況をコントローラ100が把握した場合には、コントローラ100は、例えば、減速機111に作用するモータ8の反力を解除する。これにより、運転者によるステアリングの手動操作がモータ8の反力によって妨げられるのを避けることができる。
【0050】
また、クランク軸13の突出部13dの基部側領域の外周面と、第2ベースブロック12Bの凹部65の内周面との間には、クランク軸13と第2ベースブロック12Bの間を密閉するためのシール部材39が配置されている。第2ベースブロック12Bの凹部65の内部は、シール部材39によって回転検出装置41の配置される底部領域と、軸受22の配置される潤滑側領域とに隔て入られている。潤滑領域には、減速機111内の潤滑液が流入し、底部領域への潤滑液の流入はシール部材39によって阻止される。
【0051】
以上のように、本実施形態の減速機111は、筒状ケース15の径方向内側領域から筒状ケース15の外周面よりも径方向外側に延びる固定用フランジ12Abが第1ベースブロック12A(ベースブロック12)に一体に形成されている。このため、別体の固定用のフランジ部材をベースブロックの端面に取り付ける場合に比較して部品点数を削減できるとともに、固定用のフランジが減速機111の軸方向を大きく占有するのを回避することができる。したがって、本実施形態の減速機111を採用した場合には、部品点数の削減と軸長の短縮化を図ることができる。
【0052】
また、本実施形態の減速機111では、入力回転体であるクランク軸13の回転を検出する回転検出装置41がベースブロック12に配置されているため、モータ8の出力側の回転情報をスペース的に余裕のある減速機111の端部側で取得することができる。このため、モータ8の大型化を招くことなく、モータ8の出力側の回転情報をコントローラ100によって有効に利用することができる。
【0053】
また、本実施形態の減速機111では、第2ベースブロック12B(ベースブロック12)に凹部65が設けられ、その凹部65内に、クランク軸13の突出部13dの外周面と凹部65の内周面との間を密閉するシール部材39が配置されている。そして、回転検出装置41は、シール部材39によって潤滑液の流入部と仕切られた凹部65内に配置されている。このため、回転検出装置41の周域への潤滑液の流入を抑制することができる。したがって、本実施形態の減速機111を採用した場合には、回転検出装置41の耐久性を高めることができる。
【0054】
上記の第2実施形態から抽出し得る他の発明を以下に列記する。
(1) ベースブロック(例えば、ベースブロック12)と、
前記ベースブロックに回転可能に支持された状態で駆動装置(例えば、モータ8)から動力を受けて回転する入力回転体(例えば、クランク軸13)と、
前記入力回転体の回転を減速する減速機構部(例えば、第1揺動歯車14A、第2揺動歯車14B、内歯ピン21)と、
前記減速機構部で減速された動力を受けて回転する出力回転体(例えば、筒状ケース115)と、
前記ベースブロックに配置され、前記入力回転体の軸の回転状態を検出する回転検出装置(例えば、回転検出装置41)と、を備えている減速機。
【0055】
(2) 前記ベースブロックは、前記出力回転体の端部が収容される凹部(例えば、凹部65)を有し、
前記凹部の内部には、前記出力回転体の端部の外周面と前記凹部の周壁の間を密閉するシール部材(例えば、シール部材39)が配置され、
前記回転検出装置は、前記シール部材で仕切られた前記凹部の底部側に配置されている(1)に記載の減速機。
【0056】
(3) 回転動力を出力する駆動装置と、
前記駆動装置から動力を受けて入力回転を減速する減速機と、を備え、
前記減速機は、
ベースブロックと、
前記ベースブロックに回転可能に支持された状態で駆動装置から動力を受けて回転する入力回転体と、
前記入力回転体の回転を減速する減速機構部と、
前記減速機構部で減速された動力を受けて回転する出力回転体と、
前記ベースブロックに配置され、前記入力回転体の軸の回転状態を検出する回転検出装置と、を備えている減速機ユニット。
(4) 回転動力を出力する駆動装置と、
前記駆動装置から動力を受けて入力回転を減速する減速機と、
前記減速機で減速された動力を受けて動作する操舵機構と、を備え、
前記減速機は、
ベースブロックと、
前記ベースブロックに回転可能に支持された状態で駆動装置から動力を受けて回転する入力回転体と、
前記入力回転体の回転を減速する減速機構部と、
前記減速機構部で減速された動力を受けて回転する出力回転体と、
前記ベースブロックに配置され、前記入力回転体の軸の回転状態を検出する回転検出装置と、を備えている操舵補助装置。
【0057】
<第3実施形態>
図4は、第3実施形態の減速機211の縦断面を示す図である。
本実施形態の減速機211は、車両に固定されるベースブロック12と、ベースブロック12に回転可能に支持される複数のクランク軸13(入力回転体)と、クランク軸13の回転を受けて揺動回転する第1揺動歯車14A、及び、第2揺動歯車14Bと、第1揺動歯車14A、及び、第2揺動歯車14Bの径方向の外側を覆う筒状ケース15と、を備えている。筒状ケース15の内周面にはピン溝20が形成されており、ピン溝20には内歯ピン21が保持されている。内歯ピン21は、第1揺動歯車14A、及び、第2揺動歯車14Bとともに、減速機構部を構成している。これらの基本構成は第1実施形態のものと同構成とされている。
【0058】
ベースブロック12は、軸方向の一端側に配置される第1ベースブロック12Aと、軸方向の他端側に配置される第2ベースブロック12Bと、を有する。第1ベースブロック12Aの基板部12Aaから径方向外側に延びる固定用フランジ12Abは、筒状ケース15の外周面よりも径方向外側に延びている。固定用フランジ12Abには環状溝60が形成されている。環状溝60には、筒状ケース15の軸方向の一端部が収容されている。固定用フランジ12Abと筒状ケース15の一端部側の構造は、第1実施形態と同様とされている。
なお、減速機211の内部には、減速機構部等の機械動作部を潤滑するための潤滑液が充填されている。
【0059】
ここで、第1ベースブロック12Aの軸方向の一端部には、クランク歯車24と噛み合うアイドラギヤ64が配置されている。アイドラギヤ64のギヤ軸64aは、第1ベースブロック12A側の支持穴67と、モータ8のケース部8a側の支持孔68とに夫々軸受69,70(深溝玉軸受)を介して回転可能に支持されている。ケース部8a側の支持孔68とアイドラギヤ64のギヤ軸64aの間は、軸受70よりも軸方向の外側領域において、シール部材54によって密閉されている。
【0060】
モータ8側の支持孔68に支持される軸受70は、外輪70aが内輪70bよりも軸方向の一端側に長く延びている。外輪70aの軸方向の一端側に延びた部分と、それに対応するギヤ軸64aの外周面の間には、ギヤ軸64aの回転状態(回転位置や回転速度)を検出するための回転検出装置41が設置されている。
【0061】
回転検出装置41は、アイドラギヤ64のギヤ軸64aの外周面に取り付けられた検出ターゲット42と、軸受70の外輪70aの内周面に取り付けられたターゲット検出部43と、を備えている。ターゲット検出部43は、アイドラギヤ64のギヤ軸64aの回転に応じた信号をコントローラ100に出力する。回転検出装置41としては、例えば、磁気式の検出装置や光学式の検出装置を用いることができる。回転検出装置41のターゲット検出部43は、検出面が検出ターゲット42と微小隙間を挟んで対峙するように、軸受70の外輪70aに取り付けられている。
【0062】
回転検出装置41からコントローラ100に入力された信号は、例えば、何等かの原因によってモータ8に対するアシスト信号(駆動信号)の出力が停止している状況をコントローラ100で把握して対処する場合や、モータ8の出力目標と実際の回転の乖離を修正する場合等に用いることができる。モータ8に対するアシスト信号(駆動信号)の出力が停止している状況をコントローラ100が把握した場合には、コントローラ100は、例えば、減速機211に作用するモータ8の反力を解除する。これにより、運転者によるステアリングの手動操作がモータ8の反力によって妨げられるのを避けることができる。
【0063】
以上のように、本実施形態の減速機211は、筒状ケース15の径方向内側領域から筒状ケース15の外周面よりも径方向外側に延びる固定用フランジ12Abが第1ベースブロック12A(ベースブロック12)に一体に形成されている。このため、別体の固定用のフランジ部材をベースブロックの端面に取り付ける場合に比較して部品点数を削減できるとともに、固定用のフランジが減速機211の軸方向を大きく占有するのを回避することができる。したがって、本実施形態の減速機211を採用した場合には、部品点数の削減と軸長の短縮化を図ることができる。
【0064】
また、本実施形態の減速機211では、モータ8と連動して回転する歯車(アイドラギヤ64)の軸(ギヤ軸64a)を支持する軸受70に、歯車の軸の回転状態を検出する回転検出装置41が設置されている。このため、モータ8の出力側の回転情報を軸受70部分から取得することができる。そして、本実施形態の減速機211では、回転検出装置41のターゲット検出部43が軸受70の外輪70aに取り付けられ、歯車の軸の外周面に検出ターゲット42が取り付けられている。したがって、本実施形態の減速機211を採用した場合には、回転検出装置41を、大きな面積を占有することなく、容易に取り付けることができる。
【0065】
上記の第3実施形態から抽出し得る他の発明を以下に列記する。
(1) ベースブロック(例えば、ベースブロック12)と、
前記ベースブロックに回転可能に支持された状態で駆動装置(例えば、モータ8)から動力を受けて回転する入力回転体(例えば、クランク軸13)と、
前記入力回転体の回転を減速する減速機構部(例えば、第1揺動歯車14A、第2揺動歯車14B、内歯ピン21)と、
前記減速機構部で減速された動力を受けて回転する出力回転体(例えば、筒状ケース115)と、
前記駆動装置から動力を受けて回転する歯車軸(例えば、ギヤ軸64a)の軸受(例えば、軸受70)に設けられ、前記歯車軸の回転状態を検出する回転検出装置(例えば、回転検出装置41)と、を備えている減速機。
【0066】
(2) 回転動力を出力する駆動装置と、
前記駆動装置から動力を受けて入力回転を減速する減速機と、を備え、
前記減速機は、
ベースブロックと、
前記ベースブロックに回転可能に支持された状態で駆動装置から動力を受けて回転する入力回転体と、
前記入力回転体の回転を減速する減速機構部と、
前記減速機構部で減速された動力を受けて回転する出力回転体と、
前記駆動装置から動力を受けて回転する歯車軸の軸受に設けられ、前記歯車軸の回転状態を検出する回転検出装置と、を備えている駆動ユニット。
【0067】
回転動力を出力する駆動装置と、
前記駆動装置から動力を受けて入力回転を減速する減速機と、
前記減速機で減速された動力を受けて動作する操舵機構と、を備え、
前記減速機は、
ベースブロックと、
前記ベースブロックに回転可能に支持された状態で駆動装置から動力を受けて回転する入力回転体と、
前記入力回転体の回転を減速する減速機構部と、
前記減速機構部で減速された動力を受けて回転する出力回転体と、
前記駆動装置から動力を受けて回転する歯車軸の軸受に設けられ、前記歯車軸の回転状態を検出する回転検出装置と、を備えている操舵補助装置。
【0068】
<第4実施形態>
図5は、第4実施形態の減速機311の縦断面を示す図である。
本実施形態の減速機311は、車両に固定されるベースブロック12と、ベースブロック12に回転可能に支持される複数のクランク軸13(入力回転体)と、クランク軸13の回転を受けて揺動回転する第1揺動歯車14A、及び、第2揺動歯車14Bと、第1揺動歯車14A、及び、第2揺動歯車14Bの径方向の外側を覆う筒状ケース15と、を備えている。筒状ケース15の内周面にはピン溝20が形成されており、ピン溝20には内歯ピン21が保持されている。内歯ピン21は、第1揺動歯車14A、及び、第2揺動歯車14Bとともに、減速機構部を構成している。これらの基本構成は第1実施形態のものと同構成とされている。
【0069】
ベースブロック12は、軸方向の一端側に配置される第1ベースブロック12Aと、軸方向の他端側に配置される第2ベースブロック12Bと、を有する。第1ベースブロック12Aの基板部12Aaから径方向外側に延びる固定用フランジ12Abは、筒状ケース15の外周面よりも径方向外側に延びている。固定用フランジ12Abには環状溝60が形成されている。環状溝60には、筒状ケース15の軸方向の一端部が収容されている。固定用フランジ12Abと筒状ケース15の一端部側の構造は、第1実施形態と同様とされている。
減速機211の内部には、減速機構部等の機械動作部を潤滑するための潤滑液が充填されている。
【0070】
第1ベースブロック12Aの軸方向の一端部には、クランク歯車24と噛み合うアイドラギヤ64が配置されている。アイドラギヤ64のギヤ軸64aは、第1ベースブロック12A側の支持穴67と、モータ8のケース部8a側の支持孔68とに夫々軸受69を介して回転可能に支持されている。ケース部8a側の支持孔68とアイドラギヤ64のギヤ軸64aの間は、軸受70よりも軸方向の外側領域において、シール部材54によって密閉されている。
【0071】
アイドラギヤ64のギヤ軸64aのうちの、シール部材54よりも軸方向外側に突出する部分の外周面には、回転検出装置41の検出ターゲット42が取り付けられている。モータ8のケース部8aのうちの、支持孔68に臨む位置には、回転検出装置41のターゲット検出部43が取り付けられている。回転検出装置41の構成は、第3実施形態のものと同様の構成とされている。
【0072】
回転検出装置41からコントローラ100に入力された信号は、例えば、何等かの原因によってモータ8に対するアシスト信号(駆動信号)の出力が停止している状況をコントローラ100で把握して対処する場合や、モータ8の出力目標と実際の回転の乖離を修正する場合等に用いることができる。モータ8に対するアシスト信号(駆動信号)の出力が停止している状況をコントローラ100が把握した場合には、コントローラ100は、例えば、減速機211に作用するモータ8の反力を解除する。これにより、運転者によるステアリングの手動操作がモータ8の反力によって妨げられるのを避けることができる。
【0073】
以上のように、本実施形態の減速機311は、筒状ケース15の径方向内側領域から筒状ケース15の外周面よりも径方向外側に延びる固定用フランジ12Abが第1ベースブロック12A(ベースブロック12)に一体に形成されている。このため、別体の固定用のフランジ部材をベースブロックの端面に取り付ける場合に比較して部品点数を削減できるとともに、固定用のフランジが減速機311の軸方向を大きく占有するのを回避することができる。したがって、本実施形態の減速機311を採用した場合には、部品点数の削減と軸長の短縮化を図ることができる。
【0074】
また、本実施形態の減速機311では、アイドラギヤ64のギヤ軸64aの回転を検出する回転検出装置41を備え、モータ8の出力側の回転情報を、アイドラギヤ64のギヤ軸64aの支持部から取得することができる。したがって、本実施形態の減速機311を採用した場合には、アイドラギヤ64の回転状態を検出する回転検出装置41を、大きな面積を占有することなく、容易に取り付けることができる。
【0075】
<第5実施形態>
図6は、第5実施形態の減速機411の縦断面を示す図である。
本実施形態の減速機411は、第4実施形態の減速機311とほぼ同様の構成とされている。第4実施形態の減速機311との相違は、アイドラギヤ464の外径と歯数がモータ8側の出力歯車23と同じに設定されている点である。本実施形態の場合も、アイドラギヤ464のギヤ軸64aの回転状態が回転検出装置41によって検出される。
【0076】
本実施形態の減速機411は、第3実施形態と同様の基本構成とされているため、第3実施形態と同様の基本的な効果を得ることができる。
【0077】
ただし、本実施形態の減速機411では、アイドラギヤ464の外径と歯数がモータ8側の出力歯車23と同じに設定されているため、アイドラギヤ464のギヤ軸64aの回転状態を回転検出装置41によって検出することにより、コントローラ100においてモータ8の回転状態を直接把握することができる。このため、本構成を採用した場合には、回転検出装置41で検出した回転速度の信号をモータ8の制御にそのままフィードバックして使用することができる。したがって、本構成を採用した場合には、モータ8の回転速度を目標速度に合わせ込む制御を容易にすることができる。
【0078】
上記の第4実施形態と第5実施形態から抽出し得る他の発明を以下に列記する。
(1) ベースブロック(例えば、ベースブロック12)と、
前記ベースブロックに回転可能に支持された状態で駆動装置(例えば、モータ8)から動力を受けて回転する入力回転体(例えば、クランク軸13)と、
前記入力回転体の回転を減速する減速機構部(例えば、第1揺動歯車14A、第2揺動歯車14B、内歯ピン21)と、
前記減速機構部で減速された動力を受けて回転する出力回転体(例えば、筒状ケース115)と、
前記入力回転体に設けられた歯車と噛み合って回転するアイドラギヤ(例えば、アイドラギヤ64)と、
前記アイドラギヤのギヤ軸(例えば、ギヤ軸64a)の回転状態を検出する回転検出装置(例えば、回転検出装置41)と、を備えている減速機。
【0079】
(2)前記アイドラギヤは、前記モータの出力歯車(例えば、ギヤ軸64a)と外径と歯数が同じに設定されている(1)に記載の減速機。
【0080】
(3) 回転動力を出力する駆動装置と、
前記駆動装置から動力を受けて入力回転を減速する減速機と、を備え、
前記減速機は、
ベースブロックと、
前記ベースブロックに回転可能に支持された状態で駆動装置から動力を受けて回転する入力回転体と、
前記入力回転体の回転を減速する減速機構部と、
前記減速機構部で減速された動力を受けて回転する出力回転体と、
前記入力回転体に設けられた歯車と噛み合って回転するアイドラギヤと、
前記アイドラギヤのギヤ軸の回転状態を検出する回転検出装置と、を備えている駆動ユニット。
【0081】
(4)回転動力を出力する駆動装置と、
前記駆動装置から動力を受けて入力回転を減速する減速機と、
前記減速機で減速された動力を受けて動作する操舵機構と、を備え、
前記減速機は、
ベースブロックと、
前記ベースブロックに回転可能に支持された状態で駆動装置から動力を受けて回転する入力回転体と、
前記入力回転体の回転を減速する減速機構部と、
前記減速機構部で減速された動力を受けて回転する出力回転体と、
前記入力回転体に設けられた歯車と噛み合って回転するアイドラギヤと、
前記アイドラギヤのギヤ軸の回転状態を検出する回転検出装置と、を備えている操舵補助装置。
【0082】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1…操舵補助装置、6…操舵機構、8…モータ(駆動装置)、10…駆動ユニット、11…減速機、12…ベースブロック、12Aa…基板部、12Ab…固定用フランジ、13…クランク軸(入力回転体)、14A…第1揺動歯車(揺動歯車,減速機構部)、14B…第2揺動歯車(揺動歯車,減速機構部)、15…筒状ケース、21…内歯ピン(減速機構部)、28…シール部材、60…環状溝