(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】表示装置及び表示装置の駆動方法
(51)【国際特許分類】
G09G 3/3233 20160101AFI20240820BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20240820BHJP
H10K 59/12 20230101ALI20240820BHJP
【FI】
G09G3/3233
G09G3/20 670J
G09G3/20 641P
G09G3/20 623C
G09G3/20 642A
G09G3/20 611H
H10K59/12
(21)【出願番号】P 2020151350
(22)【出願日】2020-09-09
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】523290528
【氏名又は名称】JDI Design and Development 合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】岩内 栄二
(72)【発明者】
【氏名】澤 一樹
(72)【発明者】
【氏名】米田 和弘
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-109939(JP,A)
【文献】特開2018-107450(JP,A)
【文献】特開2012-141332(JP,A)
【文献】特開2020-020995(JP,A)
【文献】国際公開第2013/069236(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0333452(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00- 3/38
H10K 50/00-99/00
H05B 33/00-33/28
H05B 44/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ発光素子を有する複数の画素が、行列状に配置された表示画面を有する表示装置であって、
映像信号に含まれる輝度信号により示される入力階調値を補正する補正回路を備え、
前記補正回路は、
前記入力階調値を、対応する目標輝度値に変換する輝度変換部と、
前記発光素子の劣化度合いを表す指標である効率残存率であって前記発光素子の発光効率の残存率を示す効率残存率を用いて、前記目標輝度値から、前記入力階調値を補正した出力階調値を算出するとともに、前記出力階調値から、前記目標輝度値を補正した補正後輝度値を算出する補正演算部と、
前記補正後輝度値から算出される前記発光素子に対する電流ストレス量を、前記発光素子に第1基準電流を流したときの電流ストレス量を示す第1ストレス量に換算し、換算した前記第1ストレス量を累積した累積第1ストレス量を演算する電流ストレス演算部と、
前記発光素子に対するキャリアバランスによるストレス量を、前記発光素子に第2基準電流を流したときの電流ストレス量を示す第2ストレス量または前記発光素子に電流が供給された時間を示す通電時間で表される第2ストレス量に換算し、換算した前記第2ストレス量を累積した累積第2ストレス量を演算するCB(Carrier Balance)ストレス演算
部と、
演算された前記累積第1ストレス量及び前記累積第2ストレス量を用いて、前記効率残存率を更新する効率残存率算出部と、を有
し、
前記補正後輝度値から算出される電流ストレス量は、前記発光素子を前記補正後輝度値で発光させたときに前記発光素子に流れる第1電流におけるストレス量であり、
前記第1電流におけるストレス量は、前記発光素子に前記第1電流が流れた時間であり、
前記第1基準電流におけるストレス量は、前記発光素子に前記第1基準電流が流れた時間であり、
前記電流ストレス演算部は、
前記発光素子に前記第1電流が流れた時間を、前記発光素子に前記第1基準電流が流れた時間に換算することにより、前記補正後輝度値から算出される電流ストレス量を、前記第1ストレス量に換算し、
前記発光素子に対するキャリアバランスによるストレス量を、前記発光素子に第2基準
電流を流したときの電流ストレス量を示す第2ストレス量に換算する場合、
前記キャリアバランスによるストレス量は、前記補正後輝度値または前記発光素子を発光させるために電流が供給された時間を用いて算出され、
前記キャリアバランスによるストレス量は、前記発光素子を前記補正後輝度値で発光させたときに前記発光素子に第2電流が流れた時間であり、
前記第2基準電流におけるストレス量は、前記発光素子に前記第2基準電流が流れた時間であり、
前記電流ストレス演算部は、
前記発光素子に前記第2電流が流れた時間を、前記発光素子に前記第2基準電流が流れた時間に換算することにより、前記キャリアバランスによるストレス量を、前記第2ストレス量に換算する、
表示装置。
【請求項2】
前記効率残存率は、前記発光素子の初期の発光輝度に対する、前記発光素子の劣化後の発光輝度の割合で表され、
前記効率残存率算出部は、
前記発光素子の輝度と前記発光素子に前記第1基準電流が流れる累積時間との関係を用いて、前記累積第1ストレス量として算出した前記累積時間から、電流ストレス起因の新たな第1効率残存率を算出し、
前記発光素子の輝度と前記発光素子に前記第2基準電流が流れる累積時間との関係または前記発光素子の輝度と通電時間の累積時間との関係を用いて、前記累積第2ストレス量として算出した前記累積時間から、キャリアバランス起因の新たな第2効率残存率を算出し、
前記第1効率残存率と、前記第2効率残存率とから前記効率残存率を算出することで、前記効率残存率を更新する、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
それぞれ発光素子を有する複数の画素が、行列状に配置された表示画面を有する表示装置の駆動方法であって、
映像信号に含まれる輝度信号により示される入力階調値を補正する補正ステップを含み、
前記補正ステップでは、
前記入力階調値を、対応する目標輝度値に変換する輝度変換ステップと、
前記発光素子の劣化度合いを表す指標である効率残存率であって前記発光素子の発光効率の残存率を示す効率残存率を用いて、前記目標輝度値から、前記入力階調値を補正した出力階調値を算出するとともに、前記出力階調値から、前記目標輝度値を補正した補正後輝度値を算出する補正演算ステップと、
前記補正後輝度値から算出される前記発光素子に対する電流ストレス量を、前記発光素子に第1基準電流を流したときの電流ストレス量を示す第1ストレス量に換算し、換算した前記第1ストレス量を累積した累積第1ストレス量を演算する電流ストレス演算ステップと、
前記発光素子に対するキャリアバランスによるストレス量を、前記発光素子に第2基準電流を流したときの電流ストレス量を示す第2ストレス量に換算し、換算した前記第2ストレス量を累積した累積第2ストレス量を演算するCBストレス演算ステップと、
演算された前記累積第1ストレス量及び前記累積第2ストレス量を用いて、前記効率残存率を更新する効率残存率算出ステップとを含
み、
前記補正後輝度値から算出される電流ストレス量は、前記発光素子を前記補正後輝度値で発光させたときに前記発光素子に流れる第1電流におけるストレス量であり、
前記第1電流におけるストレス量は、前記発光素子に前記第1電流が流れた時間であり、
前記第1基準電流におけるストレス量は、前記発光素子に前記第1基準電流が流れた時間であり、
前記電流ストレス演算ステップでは、
前記発光素子に前記第1電流が流れた時間を、前記発光素子に前記第1基準電流が流れた時間に換算することにより、前記補正後輝度値から算出される電流ストレス量を、前記第1ストレス量に換算し、
前記発光素子に対するキャリアバランスによるストレス量を、前記発光素子に第2基準電流を流したときの電流ストレス量を示す第2ストレス量に換算する場合、
前記キャリアバランスによるストレス量は、前記補正後輝度値または前記発光素子を発光させるために電流が供給された時間を用いて算出され、
前記キャリアバランスによるストレス量は、前記発光素子を前記補正後輝度値で発光させたときに前記発光素子に第2電流が流れた時間であり、
前記第2基準電流におけるストレス量は、前記発光素子に前記第2基準電流が流れた時間であり、
前記電流ストレス演算ステップでは、
前記発光素子に前記第2電流が流れた時間を、前記発光素子に前記第2基準電流が流れた時間に換算することにより、前記キャリアバランスによるストレス量を、前記第2ストレス量に換算する、
駆動方法。
【請求項4】
前記効率残存率は、前記発光素子の初期の発光輝度に対する、前記発光素子の劣化後の発光輝度の割合で表され、
前記効率残存率算出ステップでは、
前記発光素子の輝度と前記発光素子に前記第1基準電流が流れる累積時間との関係を用いて、前記累積第1ストレス量として算出した前記累積時間から、電流ストレス起因の新たな第1効率残存率を算出し、
前記発光素子の輝度と前記発光素子に前記第2基準電流が流れる累積時間との関係または前記発光素子の輝度と通電時間の累積時間との関係を用いて、前記累積第2ストレス量として算出した前記累積時間から、キャリアバランス起因の新たな第2効率残存率を算出し、
前記第1効率残存率と、前記第2効率残存率とから前記効率残存率を算出することで、前記効率残存率を更新する、
請求項
3に記載の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示装置及び表示装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(Electro Luminescence)素子などの自発光素子では、自発光素子を構成する発光層が発光量、発光時間及び温度に応じて劣化することが知られている。
【0003】
発光層の劣化による輝度の低下が生じた場合、例えば残像または色あせなどの焼き付きが発生したり、ディスプレイに表示される画像に色ずれが発生したり、ディスプレイの一部の輝度が低下したりして、ディスプレイに表示ムラが発生することがある。
【0004】
このような問題を解決するために、映像信号を補正することで、表示ムラを低減する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、有機EL素子などの発光素子では、使用を開始してから例えば5000時間まで、具体的には1000時間~2000時間の期間は、輝度が劣化する初期(以下、劣化初期と称する)の期間においては、正孔(ホール)注入性と電子注入性とのキャリアバランスの崩れなどが生じることが知られている。なお、キャリアバランスとは、有機EL素子中の正孔電流と電子電流の割合である。
【0007】
このため、発光素子の劣化初期の期間では、キャリアバランスの崩れなどの理由から、上記の従来技術によって映像信号を補正しても十分な補正精度が得られず、結果として補正誤差が生じてしまい、ディスプレイに表示ムラが発生する場合がある。
【0008】
本開示は、上述の事情を鑑みてなされたもので、劣化初期の期間であっても、表示ムラを低減することができる表示装置及び表示装置の駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る表示装置は、それぞれ発光素子を有する複数の画素が、行列状に配置された表示画面を有する表示装置であって、映像信号に含まれる輝度信号により示される入力階調値を補正する補正回路を備え、前記補正回路は、前記入力階調値を、対応する目標輝度値に変換する輝度変換部と、前記発光素子の劣化度合いを表す指標である効率残存率であって前記発光素子の発光効率の残存率を示す効率残存率を用いて、前記目標輝度値から、前記入力階調値を補正した出力階調値を算出するとともに、前記出力階調値から、前記目標輝度値を補正した補正後輝度値を算出する補正演算部と、前記補正後輝度値から算出される前記発光素子に対する電流ストレス量を、前記発光素子に第1基準電流を流したときの電流ストレス量を示す第1ストレス量に換算し、換算した前記第1ストレス量を累積した累積第1ストレス量を演算する電流ストレス演算部と、前記発光素子に対するキャリアバランスによるストレス量を、前記発光素子に第2基準電流を流したときの電流ストレス量を示す第2ストレス量または前記発光素子に電流が供給された時間を示す通電時間で表される第2ストレス量に換算し、換算した前記第2ストレス量を累積した累積第2ストレス量を演算するCB(Carrier Balance)ストレス演算部と、演算された前記累積第1ストレス量及び前記累積第2ストレス量を用いて、前記効率残存率を更新する効率残存率算出部と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、劣化初期の期間であっても、表示ムラを低減することができる表示装置及び表示装置の駆動方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る表示装置の構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る画素の構成を示す回路図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る補正回路の構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る入力階調値を目標輝度値に変換する方法を説明するための図である。
【
図5A】
図5Aは、実施の形態に係る目標輝度値から補正後階調値を算出する方法を説明するための図である。
【
図5B】
図5Bは、実施の形態に係る補正後階調値から補正後輝度値を算出する方法を説明するための図である。
【
図6】
図6は、電流ストレスの経過時間と発光素子の劣化度合いとの関係を示す図である。
【
図7A】
図7Aは、実施の形態に係る補正後輝度値で発光素子に発光させる場合に流れる第1電流値を算出する方法を説明するための図である。
【
図7B】
図7Bは、実施の形態に係る発光素子に第1電流を流したときの電流ストレス量を発光素子に第1基準電流を流したときの電流ストレス量に換算する方法を説明するための図である。
【
図8】
図8は、実施の形態に係るキャリアバランスによる輝度効率の変化を、第2基準電流によるストレス量に換算する方法を説明するための図である。
【
図9A】
図9Aは、実施の形態に係る発光素子に第1基準電流を累積時間流したときの輝度の劣化度合いから、電流ストレス起因の第1効率残存率を算出する方法を説明するための図である。
【
図9B】
図9Bは、実施の形態に係る発光素子に第2基準電流を累積時間流したときの輝度効率から、キャリアバランス起因の第2効率残存率を算出する方法を説明するための図である。の図である。
【
図10】
図10は、実施の形態に係る表示装置の駆動方法の一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施の形態に係る補正回路の構成の別の一例を示すブロック図である。
【
図12】
図12は、実施の形態に係る発光素子への通電時間の累積時間と、発光素子の輝度効率との関係を示す図である。
【
図13】
図13は、実施の形態に係る輝度残存率が下振れする場合における発光素子への通電時間の累積時間と、発光素子の輝度効率との関係を示す図である。
【
図14】
図14は、指数関数を用いたモデルによる発光素子の使用時間と発光素子の輝度残存率の例とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本開示の一態様を得るに至った経緯)
図14は、指数関数を用いたモデルによる発光素子の使用時間と発光素子の輝度残存率の例とを示す図である。
【0013】
有機EL素子などの発光素子の寿命特性は、指数関数を用いて表現されたモデルにより予測できることが一般的に知られている。なお、モデルは、例えば指数関数を用いて表現される場合に限らない。しかし、有機EL素子などの発光素子の場合、特に劣化初期の期間においては、キャリアバランスの崩れなどの理由から、モデルから乖離する場合がある。劣化初期の期間において例えば指数関数を用いたモデルから乖離する場合、
図14に示すように、当該モデルより輝度残存率が上振れする場合と、当該モデルより輝度残存率が下振れする場合とがある。このように、寿命特性は、特に劣化初期の期間においては、モデルによる予測に沿わず、モデルにより予測できない。
【0014】
したがって、発光素子の使用を開始してから例えば5000時間まで、具体的には1000時間~2000時間の期間など劣化初期の期間では、上記の従来技術によって映像信号を補正しても十分な補正精度が得られず、結果として補正誤差が生じてしまい、ディスプレイに表示ムラが発生する場合がある。
【0015】
本開示の一態様に係る表示装置は、それぞれ発光素子を有する複数の画素が、行列状に配置された表示画面を有する表示装置であって、映像信号に含まれる輝度信号により示される入力階調値を補正する補正回路を備え、前記補正回路は、前記入力階調値を、対応する目標輝度値に変換する輝度変換部と、前記発光素子の劣化度合いを表す指標である効率残存率であって前記発光素子の発光効率の残存率を示す効率残存率を用いて、前記目標輝度値から、前記入力階調値を補正した出力階調値を算出するとともに、前記出力階調値から、前記目標輝度値を補正した補正後輝度値を算出する補正演算部と、前記補正後輝度値から算出される前記発光素子に対する電流ストレス量を、前記発光素子に第1基準電流を流したときの電流ストレス量を示す第1ストレス量に換算し、換算した前記第1ストレス量を累積した累積第1ストレス量を演算する電流ストレス演算部と、前記発光素子に対するキャリアバランスによるストレス量を、前記発光素子に第2基準電流を流したときの電流ストレス量を示す第2ストレス量または前記発光素子に電流が供給された時間を示す通電時間で表される第2ストレス量に換算し、換算した前記第2ストレス量を累積した累積第2ストレス量を演算するCB(Carrier Balance)ストレス演算部と、演算された前記累積第1ストレス量及び前記累積第2ストレス量を用いて、前記効率残存率を更新する効率残存率算出部と、を有する。
【0016】
この構成によれば、劣化初期の期間であっても、表示ムラを低減することができる。
【0017】
より具体的には、電流によるストレス量とキャリアバランスの崩れなどの理由によるストレス量とを独立に算出することにより、電流による累積ストレス量とキャリアバランスの崩れなどの理由による累積ストレス量とを精度よく演算できる。このため、劣化初期の期間であってもキャリアバランスの崩れなどの理由によるストレス量を考慮した効率残存率を精度よく算出し、更新できる。そして、更新した効率残存率を用いることで、劣化初期の期間であっても発光素子の劣化度合いを正確に予測できるので、発光素子の劣化度合いを考慮して補正した入力階調値すなわち出力階調値を精度よく算出することができる。これにより、各発光素子の劣化度合いによらず、各発光素子を一様な発光輝度に補正することができるので、表示ムラを低減することができる。
【0018】
また、前記効率残存率は、前記発光素子の初期の発光輝度に対する、前記発光素子の劣化後の発光輝度の割合で表され、前記効率残存率算出部は、前記発光素子の輝度と前記発光素子に前記第1基準電流が流れる累積時間との関係を用いて、前記累積第1ストレス量として算出した前記累積時間から、電流ストレス起因の新たな第1効率残存率を算出し、前記発光素子の輝度と前記発光素子に前記第2基準電流が流れる累積時間との関係または前記発光素子の輝度と通電時間の累積時間との関係を用いて、前記累積第2ストレス量として算出した前記累積時間から、キャリアバランス起因の新たな第2効率残存率を算出し、前記第1効率残存率と、前記第2効率残存率とから前記効率残存率を算出することで、前記効率残存率を更新してもよい。
【0019】
この構成によれば、電流ストレス起因の新たな第1効率残存率とキャリアバランスの崩れなどの理由によるストレス起因の新たな第2効率残存率とを独立に演算する。これにより、電流によるストレスに加えて、キャリアバランスの崩れなどの理由によるストレスを考慮した効率残存率を正確に算出できる。
【0020】
また、前記補正後輝度値から算出される電流ストレス量は、前記発光素子を前記補正後輝度値で発光させたときに前記発光素子に流れる第1電流におけるストレス量であり、前記第1電流におけるストレス量は、前記発光素子に前記第1電流が流れた時間であり、前記第1基準電流におけるストレス量は、前記発光素子に前記第1基準電流が流れた時間であり、前記電流ストレス演算部は、前記発光素子に前記第1電流が流れた時間を、前記発光素子に前記第1基準電流が流れた時間に換算することにより、前記補正後輝度値から算出される電流ストレス量を、前記第1ストレス量に換算してもよい。
【0021】
この構成によれば、電流ストレス量を、発光素子に第1基準電流が流れる時間で評価することで、電流によるストレス量を適切に算出することができ、電流による累積ストレス量を正確に演算できる。
【0022】
また、前記発光素子に対するキャリアバランスによるストレス量を、前記発光素子に第2基準電流を流したときの電流ストレス量を示す第2ストレス量に換算する場合、前記キャリアバランスによるストレス量は、前記補正後輝度値または前記発光素子を発光されるために電流が供給された時間を用いて算出され、前記キャリアバランスによるストレス量は、前記発光素子を前記補正後輝度値で発光させたときに前記発光素子に第2電流が流れた時間であり、前記第2基準電流におけるストレス量は、前記発光素子に前記第2基準電流が流れた時間であり、前記電流ストレス演算部は、前記発光素子に前記第2電流が流れた時間を、前記発光素子に前記第2基準電流が流れた時間に換算することにより、前記キャリアバランスによるストレス量を、前記第2ストレス量に換算してもよい。
【0023】
この構成によれば、キャリアバランスの崩れなどの理由によるストレス量を、第2基準電流が流れる時間で評価することで、キャリアバランスの崩れなどの理由によるストレス量を適切に算出することができ、キャリアバランスの崩れなどの理由による累積ストレス量を正確に演算できる。
【0024】
また、本開示の一態様に係る表示装置の駆動方法は、それぞれ発光素子を有する複数の画素が、行列状に配置された表示画面を有する表示装置の駆動方法であって、映像信号に含まれる輝度信号により示される入力階調値を補正する補正ステップを含み、前記補正ステップでは、前記入力階調値を、対応する目標輝度値に変換する輝度変換ステップと、前記発光素子の劣化度合いを表す指標である効率残存率であって前記発光素子の発光効率の残存率を示す効率残存率を用いて、前記目標輝度値から、前記入力階調値を補正した出力階調値を算出するとともに、前記出力階調値から、前記目標輝度値を補正した補正後輝度値を算出する補正演算ステップと、前記補正後輝度値から算出される前記発光素子に対する電流ストレス量を、前記発光素子に第1基準電流を流したときの電流ストレス量を示す第1ストレス量に換算し、換算した前記第1ストレス量を累積した累積第1ストレス量を演算する電流ストレス演算ステップと、前記発光素子に対するキャリアバランスによるストレス量を、前記発光素子に第2基準電流を流したときの電流ストレス量を示す第2ストレス量に換算し、換算した前記第2ストレス量を累積した累積第2ストレス量を演算するCBストレス演算ステップと、演算された前記累積第1ストレス量及び前記累積第2ストレス量を用いて、前記効率残存率を更新する効率残存率算出ステップとを含む。
【0025】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、装置、システム、方法、集積回路で実現されてもよく、装置、システム、方法、集積回路の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0026】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0027】
なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する。
【0028】
(実施の形態)
[表示装置の構成]
本開示に係る表示装置1は、それぞれ発光素子を有する複数の画素が、行列状に配置された表示画面を有する表示装置である。
【0029】
以下、本実施の形態に係る表示装置1の構成について説明する。
【0030】
図1は、本実施の形態に係る表示装置1の構成を示す概略図である。
【0031】
本実施の形態では、表示装置1は、
図1に示すように、表示画面3と、ゲートドライバ回路4と、ソースドライバ回路5と、補正回路10とを備えている。
【0032】
<表示画面3>
表示画面3は、外部から表示装置1に入力された映像信号に基づいて映像を表示する。ここで、映像信号は、輝度信号、垂直同期信号及び水平同期信号を少なくとも含む。なお、本実施の形態では、輝度信号は、表示画面3を構成する各画素のサブピクセル毎の輝度を階調値で示している。以下、輝度信号により示される階調値を入力階調値と称する。
【0033】
また、本実施の形態では、表示画面3は、
図1に示すように、行列状に配置された複数の画素2を有し、行状の走査線7と、列状のデータ線8とが配線されている。
【0034】
<画素2>
図2は、本実施の形態に係る画素2の構成を示す回路図である。
【0035】
複数の画素2のそれぞれは、走査線7及びデータ線8に電気的に接続されている。より具体的には、複数の画素2のそれぞれは、
図1に示すように、走査線7とデータ線8とが交差する位置に配置される。また、複数の画素2は、例えばN行M列に配置される。N、Mは、正の整数であり、表示画面3のサイズ及び解像度により異なる。
【0036】
本実施の形態では、画素2には、
図2に示すように、参照電源線Vrefと、ELアノード電源線Vtftと、ELカソード電源線Velと、初期化電源線Viniと、参照電圧制御線refと、初期化制御線iniと、イネーブル線enbとが配線されている。ここで、ELアノード電源線Vtftは、発光素子20に印加するアノード電圧を供給する。ELカソード電源線Velは、発光素子20に印加するカソード電圧を供給する。なお、ELカソード電源線Velは、接地されてもよい。初期化電源線Viniは、容量素子22を初期化するときの初期化電圧を供給する。
【0037】
また、本実施の形態では、画素2は、
図2に示すように、発光素子20と、容量素子22と、駆動用トランジスタ24aと、スイッチ用トランジスタ24b~24eとを備える。
【0038】
発光素子20は、カソードがELカソード電源線Velに接続されており、アノードが駆動用トランジスタ24aのソースに接続されている。発光素子20は、駆動用トランジスタ24aから供給される、映像信号(輝度信号)の信号電圧に対応した電流が流れることにより、当該信号電圧に応じた輝度で発光する。本実施の形態では、映像信号の信号電圧に対応する電流は、補正回路10により補正された映像信号の信号電圧に対応する電流である。詳細は後述するが、補正回路10により補正された映像信号の信号電圧に対応する電流は、映像信号に含まれる輝度信号が示す輝度の階調値であって補正回路10により補正された階調値(出力階調値)に対応する電流である。
【0039】
発光素子20は、例えばOLED(Organic Light Emitting Diode)などの有機EL素子である。なお、発光素子20は、有機EL素子に限らず、無機EL素子またはQLEDなどの自発光素子でもよいし、電流駆動で制御する素子であれば自発光素子でなくてもよい。
【0040】
駆動用トランジスタ24aは、ゲートが容量素子22の一方の電極等に接続され、ドレインがスイッチ用トランジスタ24eのソースに接続され、ソースが発光素子20のアノードに接続されている。
図2では、さらにソースが容量素子22の他方の電極等に接続されている。駆動用トランジスタ24aは、ゲート-ソース間に印加された信号電圧を、当該信号電圧に対応した電流(ドレイン-ソース間の電流と称する。)に変換する。そして、駆動用トランジスタ24aは、オン状態となることで、ドレイン-ソース間の電流を発光素子20に印加(供給)して発光素子20を発光させる。駆動用トランジスタ24aは、例えば、n型の薄膜トランジスタ(n型TFT)で構成される。
【0041】
スイッチ用トランジスタ24eは、ゲートがイネーブル線enbに接続され、ドレインがELアノード電源線Vtftに接続され、ソースが駆動用トランジスタ24aのドレインに接続されている。スイッチ用トランジスタ24eは、イネーブル線enbから供給される消光信号に応じてオン状態またはオフ状態となる。スイッチ用トランジスタ24eは、オン状態となることで駆動用トランジスタ24aをELアノード電源線Vtftに接続し、駆動用トランジスタ24aのドレイン-ソース間の電流を発光素子20に供給させる。スイッチ用トランジスタ24eは、例えば、n型の薄膜トランジスタ(n型TFT)で構成される。
【0042】
スイッチ用トランジスタ24bは、ゲートが走査線7に接続され、ドレインがデータ線8に接続され、ソースが容量素子22の一方の電極に接続されている。スイッチ用トランジスタ24bは、走査線7から供給される制御信号に応じてオン状態またはオフ状態となる。スイッチ用トランジスタ24bは、オン状態となることで、データ線8から供給される映像信号の信号電圧を容量素子22の電極に印加し、当該信号電圧に応じた電荷を容量素子22に蓄積させる。スイッチ用トランジスタ24bは、例えば、n型の薄膜トランジスタ(n型TFT)で構成される。
【0043】
スイッチ用トランジスタ24dは、ゲートが参照電圧制御線refに接続され、ドレインが参照電源線Vrefに接続され、ソースが容量素子22の一方の電極等に接続されている。スイッチ用トランジスタ24dは、参照電圧制御線refから供給される制御信号に応じてオン状態またはオフ状態となる。スイッチ用トランジスタ24dは、オン状態となることで、容量素子22の電極を参照電源線Vrefが供給する電圧に設定する。スイッチ用トランジスタ24dは、例えば、n型の薄膜トランジスタ(n型TFT)で構成される。
【0044】
スイッチ用トランジスタ24cは、ゲートが初期化制御線iniに接続され、ソース及びドレインの一方が駆動用トランジスタ24aのソースに接続され、ソース及びドレインの他方が初期化電源線Viniに接続されている。スイッチ用トランジスタ24cは、初期化制御線iniから供給される制御信号に応じてオン状態またはオフ状態となる。スイッチ用トランジスタ24cは、駆動用トランジスタ24aがオン状態であり、スイッチ用トランジスタ24eがオフ状態にあってELアノード電源線Vtftとの接続が遮断されている中で、オン状態となることで、発光素子20のアノードを初期化電源線Viniが供給する初期化電圧(基準電圧)に設定する。スイッチ用トランジスタ24cは、例えば、n型の薄膜トランジスタ(n型TFT)で構成される。
【0045】
容量素子22は、一方の電極が、駆動用トランジスタ24aのゲート及びスイッチ用トランジスタ24bのソース及びスイッチ用トランジスタ24dのソースに接続され、他方の電極が駆動用トランジスタ24aのソースに接続されたコンデンサである。容量素子22は、データ線8から供給された信号電圧に対応した電荷を蓄積する。容量素子22は、例えば、スイッチ用トランジスタ24b及びスイッチ用トランジスタ24dがオフ状態となった後に、駆動用トランジスタ24aのゲート-ソース間の電圧を安定的に保持する。このように、容量素子22は、スイッチ用トランジスタ24b及びスイッチ用トランジスタ24dがオフ状態のときに、蓄積された電荷による信号電位に応じて、駆動用トランジスタ24aのゲート・ソース間に電圧を印加する。
【0046】
これら構成により、画素2は、発光素子20に電流を安定して流すことができる。
【0047】
なお、画素2の構成は、
図2に示した構成に限らず、他の構成であってもよい。少なくとも画素2としての機能を果たすことができる最小の構成として、発光素子20と、容量素子22と、駆動用トランジスタ24aと、スイッチ用トランジスタ24bとを備えていればよい。
【0048】
走査線7は、複数の画素2の行ごとに配されている。走査線7の一端は、画素2に接続され、走査線7の他端は、ゲートドライバ回路4に接続されている。
図2に示す例では、走査線7は、画素2に配置されたスイッチ用トランジスタ24bのゲートに接続されている。
【0049】
データ線8は、複数の画素2の列ごとに配されている。データ線8の一端は、画素2に接続され、データ線8の他端は、ソースドライバ回路5に接続されている。
図2に示す例では、データ線8は、スイッチ用トランジスタ24bのドレインに接続されている。
【0050】
<ゲートドライバ回路4>
ゲートドライバ回路4には、走査線7が接続されており、走査線7に制御信号を出力することで、画素2が有する各トランジスタのオン及びオフを制御する。
図2に示す例では、ゲートドライバ回路4は、走査線7を介して画素2に配置されたスイッチ用トランジスタ24bのゲートに、走査信号を供給する。
【0051】
<ソースドライバ回路5>
ソースドライバ回路5には、データ線8が接続されており、補正回路10により補正された映像信号を、データ線8に出力することで、当該映像信号を各画素2に供給する。ソースドライバ回路5は、データ線8を通して、画素2の各々に対して映像信号により示される輝度を表現した出力階調値を電流値または電圧値の形で書き込む。
図2に示す例では、ソースドライバ回路5は、データ線8を介して、画素2に配置されたスイッチ用トランジスタ24bのドレインに入力された映像信号に対応した電圧を供給する。
【0052】
<補正回路10>
補正回路10は、外部より入力される映像信号を補正してソースドライバ回路5に出力する。より具体的には、補正回路10は、映像信号に含まれる輝度信号により示される入力階調値を補正し、出力階調値を出力する。これにより、出力階調値が、映像信号に含まれる輝度信号により示される階調として、ソースドライバ回路5に出力される。
【0053】
換言すると、補正回路10は、発光素子20に狙った輝度すなわち目標輝度値で発光するように、映像信号に含まれる輝度信号により示される輝度の階調値(入力階調値)の補正を行うための回路である。なお、目標輝度値は、劣化していない初期の発光素子20において、入力階調値に対応する発光輝度値に該当する。このため、発光素子20が劣化した場合、映像信号に含まれる輝度信号により示される入力階調値に対応する電流値を供給して発光素子20を発光させても、目標輝度値を達成することができない。そこで、補正回路10は、映像信号に含まれる輝度信号により示される入力階調値を、目標輝度値を達成できるように補正する。これにより、補正された入力階調値(出力階調値)に対応する電流を供給された発光素子20は、狙った輝度すなわち目標輝度値を達成することができる。
【0054】
以下、補正回路10の構成について説明する。
【0055】
[補正回路10の構成]
図3は、本実施の形態に係る補正回路10の構成の一例を示すブロック図である。
【0056】
補正回路10は、輝度変換部11と、輝度補正演算部12と、累積ストレス演算部13とを備える。補正回路10は、プロセッサがメモリを用いて所定のプログラムを実行することで実現され得る。以下、各構成要素について説明する。
【0057】
<輝度変換部11>
輝度変換部11は、入力階調値を、対応する目標輝度値に変換する。本実施の形態では、輝度変換部11は、表示装置1の外部より入力される映像信号に含まれる輝度信号により示される入力階調値を、対応する目標輝度値に変換する。
【0058】
【0059】
図4は、本実施の形態に係る入力階調値を目標輝度値に変換する方法を説明するための図である。
図4には、初期の発光素子20における階調値と、輝度値との関係を表す階調輝度特性が示されている。
【0060】
輝度変換部11は、
図4の階調輝度特性に表される関係を用いて、表示装置1の外部より入力される映像信号に含まれる輝度信号により示される入力階調値を、対応する目標輝度値に変換することができる。
【0061】
<輝度補正演算部12>
輝度補正演算部12は、発光素子20の劣化度合いを表す指標である効率残存率であって発光素子20の発光効率の残存率を示す効率残存率を用いて、目標輝度値から、入力階調値を補正した出力階調値を算出するとともに、算出した出力階調値から、目標輝度値を補正した補正後輝度値を算出する。ここで、効率残存率は、発光素子20の初期の発光輝度に対する、発光素子20の劣化後の発光輝度の割合で表される。
【0062】
本実施の形態では、輝度補正演算部12は、累積ストレス演算部13から得た、キャリアバランスの崩れなどの理由によるストレスを考慮した効率残存率を用いて、輝度変換部11より出力された目標輝度値から、出力階調値を算出する。ここで、出力階調値は、表示装置1の外部より入力される映像信号に含まれる輝度信号に示される入力階調値が補正された補正後階調値である。輝度補正演算部12は、算出した出力階調値を出力する。これにより、輝度補正演算部12は、算出した出力階調値を、映像信号に含まれる輝度信号により示される階調として、ソースドライバ回路5に出力することができる。
【0063】
また、輝度補正演算部12は、算出した出力階調値から、目標輝度値を補正した補正後輝度値を算出する。輝度補正演算部12は、算出した補正後輝度値を累積ストレス演算部13に出力する。
【0064】
以下、
図5A及び
図5Bを用いて出力階調値及び補正後輝度値の算出方法について説明する。
【0065】
図5Aは、本実施の形態に係る目標輝度値から補正後階調値を算出する方法を説明するための図である。
図5Bは、本実施の形態に係る補正後階調値から補正後輝度値を算出する方法を説明するための図である。
図5A及び
図5Bには、発光素子20の初期と劣化後とにおける階調値と輝度値との関係を表す階調輝度特性が示されている。劣化後における階調輝度特性は、初期における階調輝度特性に、効率残存率η_
xを乗じることで得ることができる。
【0066】
輝度補正演算部12は、
図5Aの劣化後における階調輝度特性に表される関係を用いて、輝度変換部11より出力された目標輝度値に対応する階調値を、映像信号に含まれる輝度信号により示される入力階調値を補正した補正後階調値として算出することができる。そして、輝度補正演算部12は、算出した補正後階調値を、出力階調値として出力する。これにより、表示装置1の外部より入力される映像信号に含まれる輝度信号に示される入力階調値が出力階調値に補正されて、ソースドライバ回路5に入力されることになる。
【0067】
また、輝度補正演算部12は、
図5Bの初期における階調輝度特性に表される関係を用いて、算出した補正後階調値に対応する輝度値を、輝度変換部11より出力された目標輝度値を補正した補正後輝度値として算出することができる。そして、輝度補正演算部12は、算出した補正後輝度値を、累積ストレス演算部13に出力する。
【0068】
<累積ストレス演算部13>
本実施の形態では、発光素子20の初期の劣化挙動(劣化初期の挙動)と、長期的な劣化挙動とは独立事象であるとして、個別に算出する。ここで、初期の劣化挙動は、キャリアバランスの崩れなどの理由による劣化であり、長期的な劣化挙動は、様々な電流による劣化である。つまり、累積ストレス演算部13は、様々な電流による劣化と、キャリアバランスの崩れなどの理由による劣化とを、個別に、電流による累積ストレス量として算出する。
【0069】
より具体的には、累積ストレス演算部13は、電流によるストレス量とキャリアバランスの崩れなどの理由によるストレス量を独立に算出することにより、電流及びキャリアバランスの崩れなどの理由による累積ストレス量を独立に演算する。そして、累積ストレス演算部13は、電流ストレス起因の第1効率残存率とキャリアバランス起因の第2効率残存率とを独立に算出することで、キャリアバランスの崩れなどの理由によるストレスを考慮した効率残存率を算出する。これにより、累積ストレス演算部13は、劣化初期の期間であっても、キャリアバランスの崩れなどの理由によるストレスを考慮した効率残存率を正確に算出できる。なお、以下では、キャリアバランスの崩れなどの理由によるストレスを、CB(Carrier Balance)ストレスと称する。
【0070】
さらに、累積ストレス演算部13は、輝度補正演算部12が用いた効率残存率を、新たに算出した効率残存率に更新する。
【0071】
[累積ストレス演算部13の詳細構成]
次に、本実施の形態に係る累積ストレス演算部13の詳細構成について説明する。
【0072】
本実施の形態では、累積ストレス演算部13は、
図3に示すように、電流ストレス演算部131と、CBストレス演算部132と、効率残存率算出部133とを備える。以下、これらの要素について詳述する。
【0073】
<電流ストレス演算部131>
電流ストレス演算部131は、補正後輝度値から算出される発光素子20に対する電流ストレス量を、発光素子20に第1基準電流を流したときの電流ストレス量を示す第1ストレス量に換算し、換算した第1ストレス量を累積した累積第1ストレス量を演算する。
【0074】
ここで、補正後輝度値から算出される電流ストレス量は、発光素子20を補正後輝度値で発光させたときに発光素子20に流れる第1電流におけるストレス量であり、発光素子20に第1電流が流れた時間である。同様に、第1基準電流における電流ストレス量は、発光素子20に第1基準電流が流れた時間である。
【0075】
このため、より詳細には、電流ストレス演算部131は、発光素子20に第1電流が流れた時間を発光素子20に第1基準電流が流れた時間に換算することにより、補正後輝度値から算出されたストレス量を、第1ストレス量に換算することができる。そして、電流ストレス演算部131は、換算した第1ストレス量を累積した累積第1ストレス量を演算する。
【0076】
このように、長期的な劣化は、様々な電流による劣化であるので、様々な電流による累積ストレスを用いて算出することができる。本実施の形態では、電流ストレス演算部131は、様々な電流による発光素子20に対する電流ストレス量を、第1基準電流による電流ストレス量に変換して累積する。
【0077】
図6は、電流ストレスの経過時間と発光素子の劣化度合いとの関係を示す図である。
【0078】
有機EL素子などの発光素子(自発光素子)では、上述したように、発光素子を構成する発光層が発光量、発光時間及び温度に応じて劣化することが知られている。
図6には、発光素子に印加される電流をストレス(電流ストレスと称する)として、発光素子に一定の電流を印加し続けた場合の経過時間における劣化度合いが示されている。電流ストレスAと電流ストレスBとは、発光素子に印加される電流の大きさが異なっており、電流ストレスA>電流ストレスBすなわち(電流ストレスAとして印加される電流)>(電流ストレスBとして印加される電流)である。
【0079】
図6に示されるように、発光素子に電流ストレスがかかると、時間の経過とともに、劣化が進行するのがわかる。また、発光素子に電流ストレスAがかかる場合の方が、発光素子に電流ストレスBがかかる場合よりも劣化が進行しているのがわかる。つまり、
図6の点線囲いで示されるように、経過時間が同一であっても、電流ストレスにより劣化の度合いが異なり、より大きな電流ストレスの方が劣化が進行することがわかる。
【0080】
なお、発光素子20に供給される電流の大きさは、映像信号に含まれる輝度信号により示される入力階調値によって異なるため(つまり一定でないため)、経過時間と発光素子20の劣化度合いとの関係を簡単に表すことは難しい。
【0081】
そこで、本実施の形態では、発光素子20の輝度の長期的な劣化の度合いを、発光素子20に対する電流ストレス量による劣化の度合いとして、発光素子20にある一定の電流(つまり基準電流)を供給したときの時間の累積時間(経過時間)による劣化の度合いで評価する。また、本実施の形態では、発光素子20に対する電流ストレス量を、発光素子20に印加(供給)される様々な電流(第1電流)の時間で評価し、さらに、発光素子20に基準電流が流れる時間に換算することで、電流ストレス量を算出する。そして、換算した時間を累積した累積時間を算出することで、発光素子20に累積した電流ストレス量を算出する。
【0082】
図7Aは、本実施の形態に係る補正後輝度値で発光素子20に発光させる場合に流れる第1電流値を算出する方法を説明するための図である。
図7Aには、初期の発光素子20において流れる電流値と輝度値との関係を表す曲線(初期特性)が示されている。
【0083】
電流ストレス演算部131は、
図7Aの曲線を用いて、輝度補正演算部12より出力された補正後輝度値から、当該補正後輝度値で発光素子20に発光させる場合に流れる第1電流を算出する。
【0084】
図7Bは、本実施の形態に係る発光素子20に第1電流を流したときの電流ストレス量を、発光素子20に第1基準電流を流したときの電流ストレス量に換算する方法を説明するための図である。
図7Bに示される曲線は、発光素子20に電流ストレスとして第1基準電流と第1電流とを流したときにおける、経過時間と発光素子20の輝度の劣化度合いとの関係を示している。なお、
図7Bでは、電流ストレスが全くかかっていない初期の発光素子20の輝度の劣化度合いが1に正規化されている。また、
図7Bに示される2つの曲線のそれぞれは、予め用意されている。
【0085】
電流ストレス演算部131は、第1電流が発光素子20に印加される場合の電流ストレス量と等価なストレス量となるように、第1電流が流れた時間を、発光素子20に第1基準電流が流れた時間に換算する。より詳細には、電流ストレス演算部131は、
図7Bに示される曲線を用いて、第1電流が発光素子20に時間T1だけ印加されたときの輝度の劣化度合いと等価な輝度の劣化度合いとなるように、第1電流が流れた時間T1を、第1基準電流が流れた時間T2に換算する。つまり、
図7Bに示されるように、発光素子20に第1電流を流した時間T1すなわち電流ストレスI1における時間T1は、発光素子20に第1基準電流を流した時間T2すなわち電流ストレスIrefにおける時間T2に換算できる。このようにして、電流ストレス演算部131は、補正後輝度値から算出される電流ストレス量を、第1ストレス量に換算できる。
【0086】
そして、電流ストレス演算部131は、第1ストレス量として取得した時間T2を、以前に取得して累積していた時間ΣT2にさらに加えることで、時間T2の累積時間ΣT2を第1累積ストレス量として演算する。
【0087】
<CBストレス演算部132>
CBストレス演算部132は、発光素子20に対するキャリアバランスによるストレス量(つまりCBストレス量)を、発光素子20に第2基準電流を流したときの電流ストレス量を示す第2ストレス量に換算し、換算した第2ストレス量を累積した累積第2ストレス量を演算する。なお、第2基準電流は、上記の第1基準電流とは異なる。
【0088】
ここで、発光素子20に対するCBストレス量を、発光素子20に第2基準電流を流したときの電流ストレス量を示す第2ストレス量に換算する場合、CBストレス量は、上記の補正後輝度値を用いて算出される。より具体的には、CBストレス量は、発光素子20を補正後輝度値で発光させたときに発光素子20に第2電流が流れた時間で評価でき、第2基準電流におけるストレス量は、発光素子20に第2基準電流が流れた時間で評価できる。
【0089】
このため、より詳細には、CBストレス演算部132は、発光素子20に第2電流が流れた時間を、発光素子20に第2基準電流が流れた時間に換算することにより、CBストレス量を、第2ストレス量に換算することができる。そして、CBストレス演算部132は、換算した第2ストレス量を累積した累積第2ストレス量を演算する。
【0090】
このように、初期の劣化、すなわちキャリアバランスの崩れなどの理由による劣化を、キャリアバランス起因の電流のストレスによる劣化とみなして、発光素子20に対するCBストレスの累積値を、電流ストレスの累積値として算出する。具体的には、CBストレス演算部132は、CBストレスとして電流による発光素子20に対する電流ストレス量を算出し、算出した電流ストレスを、第2基準電流による電流ストレス量に変換して累積する。
【0091】
図8は、本実施の形態に係るキャリアバランスによる輝度効率の変化を、第2基準電流によるストレス量に換算する方法を説明するための図である。「ストレス:C2」と示される曲線は、発光素子20にかかるCBストレスとして、第2電流が流れた時間(経過時間)と発光素子20の輝度効率との関係を示している。「CBストレス:Cref」と示される曲線は、発光素子20にかかるCBストレスとして、第2基準電流が流れた時間(経過時間)と発光素子20の輝度効率との関係を示している。なお、
図8では、CBストレスが全くかかっていない初期の発光素子20の輝度効率が1に正規化されている。また、
図8に示される2つの曲線のそれぞれは、予め用意されている。
【0092】
CBストレス演算部132は、発光素子20にかかるCBストレスとして評価される第2電流が発光素子20に印加される場合の電流ストレス量と、等価なストレス量となるように、第2電流が流れた時間を、発光素子20に第2基準電流が流れた時間に換算する。より詳細には、CBストレス演算部132は、
図8に示される曲線を用いて、第2電流が発光素子20に時間B1だけ印加されたときの輝度効率と等価な輝度効率となるように、第2電流が流れた時間B1を、第2基準電流が流れた時間B2に換算する。つまり、
図8に示されるように、発光素子20に第2電流を流した時間B1すなわち「ストレス:C2」における時間B1は、発光素子20に第2基準電流を流した時間B2すなわち「CBストレス:Cref」における時間B2に換算できる。このようにして、CBストレス演算部132は、補正後輝度値から算出される電流ストレス量を、第2ストレス量に換算できる。
【0093】
そして、CBストレス演算部132は、第2ストレス量として取得した時間B2を、以前に取得して累積していた時間ΣB2にさらに加えることで、時間B2の累積時間ΣB2を累積第2ストレス量として演算する。
【0094】
<効率残存率算出部133>
効率残存率算出部133は、演算された累積第1ストレス量及び累積第2ストレス量を用いて、効率残存率を更新する。より具体的には、効率残存率算出部133は、発光素子20の輝度と発光素子20に第1基準電流が流れる累積時間との関係を用いて、累積第1ストレス量として算出した累積時間から、電流ストレス起因の新たな第1効率残存率を算出する。また、効率残存率算出部133は、発光素子20の輝度と発光素子20に第2基準電流が流れる累積時間との関係を用いて、累積第2ストレス量として算出した累積時間から、キャリアバランス起因の新たな第2効率残存率を算出する。そして、効率残存率算出部133は、算出した第1効率残存率及び第2効率残存率とから新たな効率残存率を算出することで、効率残存率を更新する。
【0095】
本実施の形態では、効率残存率算出部133は、
図9Aに示される曲線を用いて、電流ストレス演算部131が演算した累積時間ΣT2から、電流ストレス起因の第1効率残存率η
_Irefを算出する。
【0096】
図9Aは、本実施の形態に係る発光素子20に第1基準電流を累積時間流したときの輝度の劣化度合いから、電流ストレス起因の第1効率残存率η
_Irefを算出する方法を説明するための図である。
図9Aに示される曲線は、発光素子20に電流ストレスとして第1基準電流を流したときにおける、経過時間(累積時間)と発光素子20の輝度の劣化度合いとの関係を示している。
【0097】
図9Aに示される曲線では、累積時間ΣT2が0である場合の発光輝度は劣化していないため、初期の発光素子20の発光輝度に相当する。このため、累積時間ΣT2における発光素子20の発光輝度は、発光素子20の初期の発光輝度に対する、発光素子20の劣化後の発光輝度の割合で表すことができる。つまり、効率残存率算出部133は、
図9Aに示される曲線を用いて、累積時間ΣT2から、第1効率残存率η
_Irefを算出することができる。なお、
図9Aでは、初期の発光素子20における劣化していない発光輝度は1に正規化されている。
【0098】
また、本実施の形態では、効率残存率算出部133は、
図9Bに示される曲線を用いて、CBストレス演算部132が演算した累積時間ΣB2から、キャリアバランス起因の第2効率残存率η
_Crefを算出する。
【0099】
図9Bは、本実施の形態に係る発光素子20に第2基準電流を累積時間流したときの輝度効率から、キャリアバランス起因の第2効率残存率η
_Crefを算出する方法を説明するための図である。
図9Bに示される曲線は、輝度残存率が上振れする場合において、CBストレスにおける、すなわち発光素子20に第2基準電流を流したとするときにおける、経過時間(累積時間)と発光素子20の輝度効率との関係を示している。
【0100】
図9Bに示される曲線では、累積時間ΣB2が0である場合の輝度効率は変化していないため、初期の発光素子20の発光輝度に相当する。このため、累積時間ΣB2における発光素子20の発光輝度は、発光素子20の初期の発光輝度に対する、発光素子20の劣化後(輝度効率の変化後)の発光輝度の割合で表すことができる。つまり、効率残存率算出部133は、
図9Bに示される曲線を用いて、累積時間ΣB2から、第2効率残存率η
_Crefを算出することができる。なお、
図9Bでも、初期の発光素子20における輝度効率が変化していない発光輝度は1に正規化されている。
【0101】
さらに、本実施の形態では、効率残存率算出部133は、個別(独立)に算出した電流ストレス起因の第1効率残存率η_Irefとキャリアバランス起因の第2効率残存率η_Crefとを用いて、電流ストレスとキャリアバランス起因のストレスとを考慮した効率残存率η_xを算出する。
【0102】
より具体的には、効率残存率算出部133は、下記の(式1)を用いて、個別(独立)に算出した第1効率残存率η_Irefと第2効率残存率η_Crefとから、効率残存率η_xを算出する。そして、効率残存率算出部133は、1つ前の効率残存率η_xを、算出した効率残存率η_xに更新する。
【0103】
【0104】
(式1)に示すように、電流ストレスとキャリアバランス起因のストレスとを考慮した効率残存率η
_xは、電流ストレス起因の第1効率残存率η
_Irefに加えて、キャリアバランス起因の第2効率残存率η
_Crefが加算された形で表すことができる。つまり、電流による発光素子20の劣化とキャリアバランス起因による発光素子20の劣化とは独立事象であるとし、発光素子20の劣化は、これらの事象を足しあわして表現できるとしている。そして、発光素子20の使用を開始してから例えば1000時間~2000時間といった劣化初期の期間において、キャリアバランス起因の第2効率残存率η
_Crefが上振りで効いてくることになる。つまり、
図14に示すようなモデルによる予測が成立しない劣化初期の期間であって当該モデルから乖離して輝度残存率が上振れする劣化初期の期間でも、精度のよい効率残存率η
_xを算出できる。
【0105】
[表示装置1の駆動方法]
次に、以上のように構成された表示装置1の駆動方法について説明する。
【0106】
図10は、本実施の形態に係る表示装置1の駆動方法の一例を示すフローチャートである。
図10には、表示装置1を構成する補正回路10の処理が表示装置1の駆動方法の一例として示されている。
【0107】
まず、補正回路10は、表示装置1の外部より入力される映像信号に含まれる輝度信号により示される入力階調値を、対応する目標輝度値に変換する(S10)。
【0108】
次に、補正回路10は、効率残存率を用いて、ステップS10で変換された目標輝度値から、入力階調値を補正した出力階調値を算出するとともに、出力階調値から、目標輝度値を補正した補正後輝度値を算出する(S11)。この効率残存率は、1つ前の処理などで累積ストレス演算部13により算出されたものである。
【0109】
次に、補正回路10は、ステップS11で算出された補正後輝度値から算出される電流ストレス量を、第1基準電流における電流ストレス量に換算し、換算した電流ストレス量を累積した累積第1ストレス量を演算する(S12)。より具体的には、補正回路10は、ステップS11で算出された補正後輝度値から算出される発光素子20に対する電流ストレス量を、発光素子20に第1基準電流を流したときの電流ストレス量を示す第1ストレス量に換算する。そして、補正回路10は、換算した第1ストレス量を累積した累積第1ストレス量を演算する。
【0110】
次に、補正回路10は、CBストレス量を、第2基準電流における電流ストレス量を示す第2ストレス量に換算し、換算した第2ストレス量を累積した累積第2ストレス量を演算する(S13)。より具体的には、補正回路10は、ステップS11で算出された補正後輝度値から、発光素子20にかかるCBストレス量を、発光素子20に第2基準電流を流したときの電流ストレス量を示す第2ストレス量に換算する。そして、補正回路10は、換算した第2ストレス量を累積した累積第2ストレス量を演算する。なお、ステップS12とステップS13の順番を変更してもよい。
【0111】
次に、補正回路10は、ステップS12及びステップS13で演算した累積第1ストレス量及び累積第2ストレス量を用いて、電流ストレス量に加えてキャリアバランスの崩れなどの理由によるストレス量を考慮した効率残存率を算出する(S14)。
【0112】
[効果等]
以上、本実施の形態に係る表示装置1によれば、劣化初期の期間であっても、表示ムラを低減することができる。
【0113】
より具体的には、上述したように発光素子20の初期の劣化挙動と、長期的な劣化挙動とは独立事象であるとして、個別に算出する。そして、初期の劣化(劣化初期)は、キャリアバランスの崩れなどの理由による劣化であるとして、電流による累積ストレス量として算出し、長期的な劣化は、様々な電流による劣化であり、電流による累積ストレス量として算出する。
【0114】
つまり、本実施の形態に係る表示装置1は、CBストレス量と電流によるストレス量とを独立に算出することにより、電流による累積ストレス量と、累積したCBストレス量を精度よく演算できる。このため、劣化初期の期間であっても、キャリアバランスの崩れなどの理由によるストレスを考慮した効率残存率を精度よく算出して、更新できる。そして、更新した効率残存率を用いることで、例えば指数関数を用いたモデルによる予測が成立せず当該モデルから乖離して上振れ(または下振れ)する劣化初期の期間でも発光素子20の劣化度合いを精度よく予測できる。これにより、発光素子20の劣化度合いを考慮して補正した入力階調値すなわち出力階調値を算出することができる。よって、モデルによる予測が成立せず当該モデルから乖離して上振れ(または下振れ)する劣化初期の期間でも、各発光素子20の劣化度合いによらず、各発光素子20を一様な発光輝度に補正することができるので、表示ムラを低減することができる。
【0115】
また、本実施の形態に係る表示装置1によれば、電流ストレス起因の第1効率残存率とキャリアバランス起因の第2効率残存率とを独立に演算することで、電流ストレスに加えてCBストレスを考慮した効率残存率を正確に算出して更新できる。
【0116】
ここで、本実施の形態に係る表示装置1は、初期の劣化と、長期的な劣化とは独立事象であるとして、電流による累積ストレス量と、キャリアバランスの崩れなどの理由による累積ストレス量とを個別に演算する。
【0117】
すなわち、初期の劣化を、キャリアバランスの崩れなどの理由によるストレス量の蓄積すなわちCBストレス量の蓄積であるとし、第2基準電流によるストレス量の累積値を用いて評価する。より具体的には、本実施の形態に係る表示装置1は、CBストレス量を、発光素子に第2基準電流が流れる時間で評価することで、CBストレス量を適切に算出するとともに、CBストレス量を累積させた累積第2ストレス量を演算する。
【0118】
また、長期的な劣化を、様々な電流のストレスによる劣化とし、第1基準電流によるストレス量の累積値を用いて評価する。より具体的には、本実施の形態に係る表示装置1は、電流ストレス量を、発光素子に第1基準電流が流れる時間で評価することで、電流によるストレス量を適切に算出するとともに、電流によるストレス量を累積させた累積第1ストレス量を演算する。
【0119】
以上、実施の形態及び実施例に係る表示装置1について説明したが、表示装置1は、上述した実施の形態に限定されるものではない。
【0120】
例えば、上述した補正回路10に、例えばゲイン演算部を設け、累積ストレス演算部で得られた効率残存率が小さい場合には、効率残存率をゲイン演算部で算出されたゲインにより増幅させてもよい。
【0121】
また、上述した補正回路10では、キャリアバランス起因におけるストレス量の蓄積すなわちCBストレス量の蓄積を、第2基準電流によるストレス量の累積値を用いて評価したが、これに限らない。CBストレス量を、発光素子20への通電時間で評価し、CBストレス量の蓄積を当該通電時間の累積時間として評価してもよい。
【0122】
図11は、本実施の形態に係る補正回路10の構成の別の一例を示すブロック図である。
図3と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0123】
図11に示す補正回路10は、
図3に示す補正回路10に対して、CBストレス演算部132Aの構成が異なる。以下、
図3と異なる点を中心に説明する。
【0124】
CBストレス演算部132Aは、発光素子20に対するキャリアバランスによるストレス量を、発光素子20に電流が供給された時間を示す通電時間で表される第2ストレス量に換算し、換算した第2ストレス量を累積した累積第2ストレス量を演算する。
【0125】
このように、キャリアバランスによるストレス量は、発光素子20を発光させるために発光素子20に電流が供給された時間すなわち通電時間で評価できるとして、キャリアバランスによるストレス量を、通電時間で表される第2ストレス量に換算してもよい。
【0126】
この場合、効率残存率算出部133は、発光素子20の輝度と通電時間の累積時間との関係を用いて、累積第2ストレス量として算出した累積時間から、キャリアバランス起因の新たな第2効率残存率を算出する。
【0127】
図12は、本実施の形態に係る発光素子20への通電時間の累積時間と、発光素子20の輝度効率との関係を示す図である。
図12には、輝度残存率が上振れする場合の関係が示されている。
【0128】
より具体的には、効率残存率算出部133は、
図12に示される曲線を用いて、CBストレス演算部132Aが演算した通電時間の累計(累積時間)から、キャリアバランス起因の第2効率残存率η
_Crefを算出することができる。
【0129】
以上のように構成された表示装置1もまた、劣化初期の期間であっても、表示ムラを低減することができる。
【0130】
なお、
図13は、実施の形態に係る輝度残存率が下振れする場合における発光素子への通電時間の累積時間と発光素子の輝度効率との関係を示す図である。
図13において、通電時間の累積時間に代えて、発光素子20に第2基準電流を流したとするときにおける、経過時間(累積時間)としてもよい。輝度残存率が下振れする場合も、
図9Bと
図12で説明したのと同様のことが言える。輝度残存率が下振れする場合についてのここでの説明は省略する。
【0131】
なお、本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本開示は、表示装置及び表示装置の駆動方法に利用でき、特に、自発光素子を有し大画面及び高解像度が要望される薄型テレビ及びパーソナルコンピュータのディスプレイなどの技術分野における表示装置及び表示装置の駆動方法に利用できる。
【符号の説明】
【0133】
1 表示装置
2 画素
3 表示画面
4 ゲートドライバ回路
5 ソースドライバ回路
7 走査線
8 データ線
10 補正回路
11 輝度変換部
12 輝度補正演算部
13 累積ストレス演算部
20 発光素子
22 容量素子
24a 駆動用トランジスタ
24b、24c、24d、24e スイッチ用トランジスタ
131 電流ストレス演算部
132、132A CBストレス演算部
133 効率残存率算出部