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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/16 20060101AFI20240820BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240820BHJP
   H02G 3/30 20060101ALI20240820BHJP
   H02G 3/22 20060101ALI20240820BHJP
   H05K 7/00 20060101ALI20240820BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
H02G3/16
B60R16/02 620C
H02G3/30
H02G3/22
H05K7/00 F
H01B7/00 301
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020160891
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2022053971
(43)【公開日】2022-04-06
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧野 崇
(72)【発明者】
【氏名】井上 広道
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-122055(JP,A)
【文献】実開平06-051013(JP,U)
【文献】特開2002-359447(JP,A)
【文献】特開2007-243029(JP,A)
【文献】実開平06-045869(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
B60R 16/02
H02G 3/30
H02G 3/22
H05K 7/00
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標準部と複数の専用部とを備えて構成され、
前記標準部は、一方の構造体に設けられる接続相手に対し電気的に接続される第一コネクタと、他方の構造体に取り付けられる分岐接続箱と、前記第一コネクタ及び前記分岐接続箱を電気的に繋ぐ回路体とを備えて構成されるとともに、前記分岐接続箱に電気的接続部分としての複数の第二コネクタが設けられ、
前記複数の専用部は、前記他方の構造体に設けられる複数の部品、及び、該複数の部品に対応する前記複数の第二コネクタ、を電気的に接続するための部材になるように構成され
前記標準部の前記回路体は、平形のフレキシブルプリント基板が用いられ、該フレキシブルプリント基板の一側の端部である基板端部の片面又は両面には電子部品が実装され、該電子部品が実装された前記基板端部は、前記分岐接続箱の他側の端から一側の端部まで前記分岐接続箱内に引き込まれるように収納されており、前記基板端部の一側の端は、前記分岐接続箱内にて前記複数の第二コネクタに接続されている、
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤハーネスにおいて、
前記複数の専用部のそれぞれは、柔軟な組電線を含んで構成される
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項3】
請求項又はに記載のワイヤハーネスにおいて、
前記標準部は、前記回路体を覆うグロメットを更に備えて構成される
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項4】
請求項に記載のワイヤハーネスにおいて、
前記一方の構造体は車両ボディであり、前記他方の構造体は車両ドアである
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における二つの構造体に跨って配索されるワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車両ボディと車両ドアとに跨って配索されるワイヤハーネスとしては、下記特許文献1に開示されたものが知られる。このワイヤハーネスは、車両ドアの側に設けられる分岐接続箱を備えて構成される。下記特許文献1の図1を見ると分かるが、分岐接続箱は、このケース上側壁及びケース下側壁が平行に形成される。また、ケース左側壁及びケース右側壁も平行に形成される。ケース右側壁は、ケース左側壁に比べて上下方向に短く形成される。このようなケース右側壁と、ケース上側壁及びケース下側壁との間には、斜めとなる第一斜め側壁及び第二斜め側壁が形成される。分岐接続箱は、上記の如くケース上側壁、ケース下側壁、ケース左側壁、ケース右側壁、第一斜め側壁、及び第二斜め側壁が形成されて、これら各側壁にコネクタ部がそれぞれ形成される。
【0003】
ケース左側壁のコネクタ部には、車両ボディの側にのびる第一サブハーネスが接続される。また、ケース上側壁のコネクタ部には、分岐接続箱の直上に配置されるドアミラーの電装品に対し接続される真っ直ぐな第二サブハーネスが接続される。この真っ直ぐな第二サブハーネスは、ドアミラーの電装品と分岐接続箱とを最短距離で接続するように形成される。また、ケース下側壁のコネクタ部には、分岐接続箱の直下に配置されるスピーカーに対し接続される真っ直ぐな第三サブハーネスが接続される。この真っ直ぐな第三サブハーネスは、スピーカーと分岐接続箱とを最短距離で接続するように形成される。また、ケース右側壁のコネクタ部には、ドアロックの電装品及びパワーウィンドウスイッチに対し接続される真っ直ぐな第四サブハーネスが接続される。この真っ直ぐな第四サブハーネスは、パワーウィンドウスイッチ及びドアロックの電装品と、分岐接続箱とを最短距離で接続するように形成される。また、第一斜め側壁のコネクタ部には、パワーウィンドウの電装品に対し接続される真っ直ぐな第五サブハーネスが接続される。この真っ直ぐな第五サブハーネスは、パワーウィンドウの電装品と分岐接続箱とを最短距離で接続するように形成される。また、第二斜め側壁のコネクタ部には、カーテシランプに対し接続される真っ直ぐな第六サブハーネスが接続される。この真っ直ぐな第六サブハーネスは、カーテシランプと分岐接続箱とを最短距離で接続するように形成される。車両ボディの側にのびる第一サブハーネス、及び、車両ドアの側に配索される第二サブハーネス~第六サブハーネスは、それぞれフラットケーブルを含んで全体が直線形状に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-122055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のワイヤハーネスにあっては、分岐接続箱を中心にして第一サブハーネス~第六サブハーネスが接続される。このようなワイヤハーネスによれば、車種やグレード毎に上記電装品等の配置が異なることもあり、また、電装品等の設定の有無もあることから、一点一様のワイヤハーネスになって、分岐接続箱やサブハーネスの設計工数が掛かってしまうという問題点を有する。
【0006】
この他、上記従来のワイヤハーネスにあっては、車両ドアの側の第二サブハーネス~第六サブハーネスがそれぞれフラットケーブルを含んで形成される。第二サブハーネス~第六サブハーネスは、最短距離での接続を実現しようとするために全体が直線形状になるが、曲げ方向が規制されてしまう形状であることから、配索作業に関しては作業性が良いと言えないのが実情であり、これが問題点になってしまう。また、上記従来のワイヤハーネスにあっては、第一サブハーネス~第六サブハーネスがフラットケーブルを含んで形成されることから、一般的なワイヤハーネス製造工程を流用して製造することが困難になり、結果、専用の製造設備が必要になってしまうという問題点も有する。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、車種やグレード毎に例えば電装品等の部品の配置が異なったとしても設計工数を掛けずに対応することが可能な汎用性のあるワイヤハーネスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の本発明のワイヤハーネスは、標準部と複数の専用部とを備えて構成され、前記標準部は、一方の構造体に設けられる接続相手に対し電気的に接続される第一コネクタと、他方の構造体に取り付けられる分岐接続箱と、前記第一コネクタ及び前記分岐接続箱を電気的に繋ぐ回路体とを備えて構成されるとともに、前記分岐接続箱に電気的接続部分としての複数の第二コネクタが設けられ、前記複数の専用部は、前記他方の構造体に設けられる複数の部品、及び、該複数の部品に対応する前記複数の第二コネクタ、を電気的に接続するための部材になるように構成され、前記標準部の前記回路体は、平形のフレキシブルプリント基板が用いられ、該フレキシブルプリント基板の一側の端部である基板端部の片面又は両面には電子部品が実装され、該電子部品が実装された前記基板端部は、前記分岐接続箱の他側の端から一側の端部まで前記分岐接続箱内に引き込まれるように収納されており、前記基板端部の一側の端は、前記分岐接続箱内にて前記複数の第二コネクタに接続されていることを特徴とする。
【0009】
このような請求項1の特徴を有する本発明によれば、標準部と複数の専用部とを備えて構成されるワイヤハーネスになることから、車種やグレード毎に電装品等の部品の配置が異なったとしても、また、部品の設定の有無があったとしても、標準部はそのままで対応することができる。従って、設計工数を極力掛けずに上記相違に対応することができる。
更に、標準部を構成する回路体が平形のフレキシブルプリント基板であり、このフレキシブルプリント基板の基板端部に電子部品が実装されて、基板端部が分岐接続箱の一部として構成されることから、標準部を一つの大きな部品として提供することができる。また、本発明によれば、電子部品が実装された基板端部が分岐接続箱の一部として構成されることから、部品点数を抑えて標準部を提供することができる。
【0010】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のワイヤハーネスにおいて、前記複数の専用部のそれぞれは、柔軟な組電線を含んで構成されることを特徴とする。
【0011】
このような請求項2の特徴を有する本発明によれば、柔軟な組電線を含んで専用部が構成されることから、部品の配置までの経路が直線でなくても配索することができる。また、本発明によれば、柔軟な組電線を含むことから、一般的なワイヤハーネス製造工程を流用して製造することもできる。
【0016】
請求項に記載の本発明は、請求項又はに記載のワイヤハーネスにおいて、前記標準部は、前記回路体を覆うグロメットを更に備えて構成されることを特徴とする。
【0017】
このような請求項の特徴を有する本発明によれば、回路体を覆うグロメットを更に備えて標準部が構成されることから、防水機能を持たせたワイヤハーネスを提供することができる。
【0018】
請求項に記載の本発明は、請求項に記載のワイヤハーネスにおいて、前記一方の構造体は車両ボディであり、前記他方の構造体は車両ドアであることを特徴とする。
【0019】
このような請求項の特徴を有する本発明によれば、車両ボディから車両ドアにかけて配索されるワイヤハーネスを提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、車種やグレード毎に例えば電装品等の部品の配置が異なったとしても設計工数を掛けずに対応することが可能な汎用性のあるワイヤハーネスを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のワイヤハーネスの一実施形態を示す構成図である(実施例1)。
図2図1の分岐接続箱の拡大図である。
図3図1のA-A線断面図である。
図4】車両ドアに配索されるワイヤハーネスの斜視図である。
図5】本発明のワイヤハーネスの他の実施形態を示す構成図である(実施例2)。
図6図5の分岐接続箱の拡大図である。
図7図5のB-B線断面図である。
図8】車両ドアに配索されるワイヤハーネスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ワイヤハーネスは、自動車の車両ボディと車両ドアとに跨って配索される。このようなワイヤハーネスは、標準部と複数の専用部とを備えて構成される。標準部は、車両ボディに設けられる接続相手に対し電気的に接続される第一コネクタと、車両ドアに取り付けられる分岐接続箱と、第一コネクタ及び分岐接続箱を電気的に繋ぐ回路体とを備えて構成される。また、標準部は、分岐接続箱に電気的接続部分としての複数の第二コネクタが設けられる。複数の専用部は、車両ドアに設けられる複数の部品、及び、この複数の部品に対応する複数の第二コネクタ、を電気的に接続するための部材になる。複数の専用部のそれぞれは、柔軟な組電線を含んで構成される。
【実施例1】
【0023】
以下、図面を参照しながら実施例1を説明する。図1は本発明のワイヤハーネスの一実施形態を示す構成図である。また、図2図1の分岐接続箱の拡大図、図3図1のA-A線断面図、図4は車両ドアに配索されるワイヤハーネスの斜視図である。
【0024】
<実施例1のワイヤハーネス1について>
図1ないし図4において、ワイヤハーネス1は、自動車における一方の構造体と他方の構造体とに跨って配索され、この二つの構造体の間の電気的な接続を行うものとして備えられる。本実施例では、一方の構造体が車両ボディ2、他方の構造体が車両ドア3であるとしてワイヤハーネス1が配索される。尚、上記二つの構造体は公知の構造であり、詳細な説明は省略するものとする。この他、一方の構造体を車両ボディ2とした時に、上記に限らず他方の構造体はルーフやバックドア等であってもよいものとする。
【0025】
ワイヤハーネス1は、図1のS1で示す範囲の標準部4と、図1のS2で示す範囲の複数の専用部5とを備えて構成される。以下、これら標準部4及び複数の専用部5について説明をする。
【0026】
<標準部4、第一コネクタ6、回路体7、及びグロメット8について>
図1ないし4において、標準部4は、車種やグレードが変わっても基本的に変更のない標準的な一つの装置として位置付けられる。このような標準部4は、第一コネクタ6と、回路体7と、グロメット8と、分岐接続箱9とを備えて構成される。第一コネクタ6は、車両ボディ2に設けられる接続相手10に対し電気的に接続されるコネクタであって、絶縁性を有する樹脂製のコネクタハウジングと、図示しない複数の端子金具とを備えて構成される。複数の端子金具は、回路体7の一端に設けられる。回路体7は、本実施例において、平形となる公知のフレキシブルフラットケーブル11(FFC:Flexible Flat Cable )が採用される。フレキシブルフラットケーブル11は、所望の長さで真っ直ぐのびる形状に形成される。このような回路体7の他端(フレキシブルフラットケーブル11の他端)は、分岐接続箱9の内部に配置される(これについては後述するものとする)。グロメット8は、回路体7であるフレキシブルフラットケーブル11を覆うゴム製の防水部材であって、本実施例においては蛇腹部12と、ストレート部13とを有して図示形状に形成される。ストレート部13には、車両ドア3のウェザーストリップ14の配置に合わせて止水構造部15が形成される。止水構造部15は、ウェザーストリップ14と共に水分の浸入を規制するための部分であって、リップ形状に形成される。尚、グロメット8に関し、本実施例では必要な部材であるが、構造体によっては設定が任意になるものとする。
【0027】
<標準部4の分岐接続箱9について>
図1ないし図4において、分岐接続箱9は、車両ボディ2側から供給される電力を分配したり信号を制御したりするために備えられる。分岐接続箱9は、本体ケース及びカバーからなる矩形の筐体16と、この筐体16の内部に収容される矩形の基板17と、複数の第二コネクタ18とを備えて構成される。筐体16には、回路体7の他端(フレキシブルフラットケーブル11の他端)を引き込むための部分が形成される。また、筐体16には、車両ドア3に対する図示しない固定部も形成される。基板17は、この表面又は両面に電子部品19等が実装される。基板17の一側部には、回路体7の他端(フレキシブルフラットケーブル11の他端)が例えば半田により直接接続される(従来のようなコネクタ部を用いての接続ではないものとする。部品点数の削減に寄与するのは勿論である)。尚、引用符号20は直接接続部分を示すものとする。複数の第二コネクタ18(18a~18i)は、基板17の他側部(直接接続部分20の反対側)に設けられる。複数の第二コネクタ18は、各コネクタ嵌合部が筐体16の外側に突出して複数の専用部5との電気的な接続が可能に形成される。尚、複数の第二コネクタ18の配置は一例であるものとする。例えば図1及び図2の紙面垂直方向に各コネクタ嵌合部が突出するような配置であってもよいものとする。以上のような複数の第二コネクタ18は、最大の接続数(車両ドア3に設けられる接続対象となる部品数)に合わせて設けられる。
【0028】
<複数の専用部5について>
図1図2、及び図4において、複数の専用部5は、車両ドア3に設けられる複数の部品21(21a~21g)の一つ一つ、及び、この一つ一つの部品21(21a~21g)に対応する複数の第二コネクタ18(18b~18h)を選んで、これらを一対一で電気的に接続するための部材になるように構成される。複数の専用部5は、図から分かるように、途中で分岐線が生じないものに形成される(本実施例ではこれが好ましいが、分岐線を完全に除くという意味のものではないものとする)。尚、複数の部品21(21a~21g)は、電装品やスイッチ、センサーなど様々なものが含まれるものとする。複数の専用部5は、本実施例において、柔軟な組電線22と、この組電線22の両端にそれぞれ設けられる第三コネクタ23とを備えて構成される。組電線22は、導体24及び絶縁体25からなる二本の電線26、又はこれ以上の本数の電線26で構成される。組電線22を含む複数の専用部5は、一般的なワイヤハーネス製造工程を流用して製造される。第三コネクタ23は、組電線22の一端側のものが第二コネクタ18のコネクタ嵌合部に挿入されて電気的に接続される。また、他端側のものは、部品21にコネクタ接続される(このコネクタ接続は一例であるものとする。接続に関しては特に限定されないものとする)。
【0029】
<ワイヤハーネス1の配索状態について>
図3及び図4において、ワイヤハーネス1は、分岐接続箱9が車両ドア3の所定位置に固定される。また、ワイヤハーネス1は、グロメット8に覆われた回路体7(フレキシブルフラットケーブル11)の部分が車両ドア3の溝部27に沿って配索される。グロメット8に覆われた回路体7の部分は、保持板28及びボルト29にて溝部27に保持される。分岐接続箱9と、複数の部品21(21a~21g)は、複数の専用部5にて電気的に接続される。尚、車種やグレードに応じて複数の専用部5の接続数が変わってくるのは勿論である。
【0030】
<ワイヤハーネス1の効果について>
以上、図1ないし図4を参照しながら説明してきたように、本発明の一実施形態であるワイヤハーネス1によれば、標準部4と複数の専用部5とを備えて構成されることから、車種やグレード毎に部品21(21a~21g)の配置が異なったとしても、また、部品21(21a~21g)の設定の有無があったとしても、標準部4はそのままで対応することができる。従って、ワイヤハーネス1を採用すれば、設計工数を極力掛けずに上記相違に対応することができる。また、ワイヤハーネス1によれば、柔軟な組電線22を含んで専用部5が構成されることから、例えば部品21(21a~21g)の配置までの経路が従来のように直線でなくても配索することができる。また、ワイヤハーネス1によれば、回路体7であるフレキシブルフラットケーブル11が基板17に対し直接接続(直接接続部分20)されることから、部品点数を抑えて標準部4を提供することができる。
【実施例2】
【0031】
以下、図面を参照しながら実施例2を説明する。図5は本発明のワイヤハーネスの他の実施形態を示す構成図である。また、図6図5の分岐接続箱の拡大図、図7図5のB-B線断面図、図8は車両ドアに配索されるワイヤハーネスの斜視図である。尚、上記実施例1と基本的に同じ構成部材には同一の符号を付すものとする。
【0032】
<実施例2のワイヤハーネス1について>
図5ないし図8において、実施例2のワイヤハーネス1は、実施例1と同様に、車両ボディ2(一方の構造体)と車両ドア3(他方の構造体)とに跨って配索される。ワイヤハーネス1は、図5のS1で示す範囲の標準部4と、図5のS2で示す範囲の複数の専用部5とを備えて構成される。以下、これら標準部4及び複数の専用部5について説明をする。
【0033】
<実施例2の標準部4、第一コネクタ6、回路体7、及びグロメット8について>
図5ないし8において、標準部4は、車種やグレードが変わっても基本的に変更のない標準的な一つの装置として位置付けられる。このような標準部4は、第一コネクタ6と、回路体7と、グロメット8と、分岐接続箱9とを備えて構成される。第一コネクタ6は、車両ボディ2に設けられる接続相手10に対し電気的に接続されるコネクタであって、絶縁性を有する樹脂製のコネクタハウジングと、図示しない複数の端子金具とを備えて構成される。複数の端子金具は、回路体7の一端に設けられる。回路体7は、本実施例において、平形となる公知のフレキシブルプリント基板30(FPC:Flexible Printed Circuit )が採用される。フレキシブルプリント基板30は、所望の長さで真っ直ぐのびる形状に形成される。このような回路体7の他端(フレキシブルプリント基板30の基板端部31)は、分岐接続箱9の内部に配置される(これについては後述するものとする)。基板端部31は、この部分だけが矩形でリジッドに形成される。基板端部31は、この表面又は両面に電子部品19等が実装される。グロメット8は、回路体7であるフレキシブルプリント基板30を覆うゴム製の防水部材であって、本実施例においては蛇腹部12と、ストレート部13とを有して図示形状に形成される。ストレート部13には、車両ドア3のウェザーストリップ14の配置に合わせて止水構造部15が形成される。止水構造部15は、ウェザーストリップ14と共に水分の浸入を規制するための部分であって、リップ形状に形成される。尚、グロメット8に関し、本実施例では必要な部材であるが、構造体によっては設定が任意になるものとする。
【0034】
<実施例2の標準部4の分岐接続箱9について>
図5ないし図8において、分岐接続箱9は、車両ボディ2側から供給される電力を分配したり信号を制御したりするために備えられる。分岐接続箱9は、本体ケース及びカバーからなる矩形の筐体16と、この筐体16の内部に収容される基板端部31と、複数の第二コネクタ18とを備えて構成される。筐体16には、回路体7の他端(フレキシブルプリント基板30の基板端部31)を引き込むための部分が形成される。また、筐体16には、車両ドア3に対する図示しない固定部も形成される。基板端部31は、実施例1の基板17(図1及び図2参照)に相当する部分に形成される。すなわち、基板端部31の表面又は両面には、上記の如く電子部品19等が実装される。尚、実施例1では基板17とフレキシブルフラットケーブル11の他端とが直接接続されて直接接続部分20が形成されていたが、実施例2ではそのような部分がないため更に部品点数の削減に寄与することができる。複数の第二コネクタ18(18a~18i)は、各コネクタ嵌合部が筐体16の外側に突出して複数の専用部5との電気的な接続が可能に形成される。尚、複数の第二コネクタ18の配置は一例であるものとする。例えば図5及び図6の紙面垂直方向に各コネクタ嵌合部が突出するような配置であってもよいものとする。以上のような複数の第二コネクタ18は、最大の接続数(車両ドア3に設けられる接続対象となる部品数)に合わせて設けられる。
【0035】
<複数の専用部5について>
図5図6、及び図8において、複数の専用部5は、車両ドア3に設けられる複数の部品21(21a~21g)の一つ一つ、及び、この一つ一つの部品21(21a~21g)に対応する複数の第二コネクタ18(18b~18h)を選んで、これらを一対一で電気的に接続するための部材になるように構成される。複数の専用部5は、図から分かるように、途中で分岐線が生じないものに形成される(本実施例ではこれが好ましいが、分岐線を完全に除くという意味のものではないものとする)。尚、複数の部品21(21a~21g)は、電装品やスイッチ、センサーなど様々なものが含まれるものとする。複数の専用部5は、本実施例において、柔軟な組電線22と、この組電線22の両端にそれぞれ設けられる第三コネクタ23とを備えて構成される。組電線22は、導体24及び絶縁体25からなる二本の電線26、又はこれ以上の本数の電線26で構成される。組電線22を含む複数の専用部5は、一般的なワイヤハーネス製造工程を流用して製造される。第三コネクタ23は、組電線22の一端側のものが第二コネクタ18のコネクタ嵌合部に挿入されて電気的に接続される。また、他端側のものは、部品21にコネクタ接続される(このコネクタ接続は一例であるものとする。接続に関しては特に限定されないものとする)。
【0036】
<ワイヤハーネス1の配索状態について>
図7及び図8において、ワイヤハーネス1は、分岐接続箱9が車両ドア3の所定位置に固定される。また、ワイヤハーネス1は、グロメット8に覆われた回路体7(フレキシブルプリント基板30)の部分が車両ドア3の溝部27に沿って配索される。グロメット8に覆われた回路体7の部分は、保持板28及びボルト29にて溝部27に保持される。分岐接続箱9と、複数の部品21(21a~21g)は、複数の専用部5にて電気的に接続される。尚、車種やグレードに応じて複数の専用部5の接続数が変わってくるのは勿論である。
【0037】
<ワイヤハーネス1の効果について>
以上、図5ないし図8を参照しながら説明してきたように、本発明の他の実施形態であるワイヤハーネス1によれば、実施例1と同様のことができる。すなわち、標準部4と複数の専用部5とを備えて構成されることから、車種やグレード毎に部品21(21a~21g)の配置が異なったとしても、また、部品21(21a~21g)の設定の有無があったとしても、標準部4はそのままで対応することができる。従って、ワイヤハーネス1を採用すれば、設計工数を極力掛けずに上記相違に対応することができる。また、ワイヤハーネス1によれば、柔軟な組電線22を含んで専用部5が構成されることから、例えば部品21(21a~21g)の配置までの経路が従来のように直線でなくても配索することができる。また、ワイヤハーネス1によれば、回路体7であるフレキシブルプリント基板30の基板端部31に電子部品19等が実装されて、この基板端部31が分岐接続箱9の一部として構成されることから、実施例1よりも更に部品点数を抑えて標準部4を提供することができる。
【0038】
この他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
1…ワイヤハーネス、 2…車両ボディ(一方の構造体)、 3…車両ドア(他方の構造体)、 4…標準部、 5…専用部、 6…第一コネクタ、 7…回路体、 8…グロメット、 9…分岐接続箱、 10…接続相手、 11…フレキシブルフラットケーブル、 12…蛇腹部、 13…ストレート部、 14…ウェザーストリップ、 15…止水構造部、 16…筐体、 17…基板、 18…第二コネクタ、 19…電子部品、 20…直接接続部分、 21…部品、 22…組電線、 23…第三コネクタ、 24…導体、 25…絶縁体、 26…電線、 27…溝部、 28…保持板、 29…ボルト、 30…フレキシブルプリント基板、 31…基板端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8