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特許7540928電力管理装置、電力管理システム、及び電力管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】電力管理装置、電力管理システム、及び電力管理方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20240820BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20240820BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240820BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20240820BHJP
   G06Q 50/06 20240101ALI20240820BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/00 180
H02J3/32
H02J3/38 180
H02J3/14
G06Q50/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020162289
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022054977
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】合川 真史
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/084392(WO,A1)
【文献】特開2013-027136(JP,A)
【文献】特開2018-057231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
H02J 3/32
H02J 3/38
H02J 3/14
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定時間以内における系統からの電力購入計画値に対する電力購入実績値の差分であるインバランスが目標範囲値以内となるように、電池の充放電を制御する電力管理装置であって、
前記蓄電池の動作状態を制御する制御部と、
災害情報及び前記蓄電池の蓄電量を取得可能な通信部と、を有し、
前記制御部は、通常モード時において、前記目標範囲値が通常基準値となるように、前記蓄電池の動作状態を制御し、
前記災害情報及び前記蓄電量に基づいて、前記目標範囲値を設定する、電力管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力管理装置において、
前記制御部は、前記通信部が、現在時刻から災害予報時間以内に災害の発生が予測される旨の情報を含む前記災害情報を取得した場合に、前記蓄電池の動作状態を前記通常モード時よりも前記蓄電池の放電を抑制する停電準備モードに設定する、電力管理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力管理装置において、
前記制御部は、前記蓄電量が所定の閾値を下回る場合に、前記目標範囲値を、前記通常基準値よりも大きい値として設定する、電力管理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電力管理装置において、
前記制御部は、前記現在時刻から災害予報時間以内に前記蓄電量が所定の蓄電量を超えるように、前記目標範囲値を設定する、電力管理装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の電力管理装置において、
前記通信部は、さらに前記蓄電の充電速度を取得し、
前記制御部は、前記蓄電量及び前記蓄電池の充電速度に基づいて、前記目標範囲値を設定する、電力管理装置。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の電力管理装置において、
前記制御部は、前記蓄電量が前記所定の閾値を上回る場合に、前記目標範囲値を、前記通常基準値として設定する、電力管理装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の電力管理装置において、
前記制御部は、前記通信部が停電情報を取得した場合に、前記蓄電池の動作状態を前記系統から解列された自立運転に切替える、電力管理装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の電力管理装置において、
前記制御部は、前記通信部が、災害の終了に関する情報を含む災害情報を取得した場合に、前記蓄電池の動作状態を前記通常モードに設定する、電力管理装置。
【請求項9】
蓄電池と、所定時間以内における系統からの電力購入計画値に対する電力購入実績値の差分であるインバランスが目標範囲値以内となるように、前記蓄電池の充放電を制御する電力管理装置と、を備える電力管理システムであって、
前記電力管理装置は、
前記蓄電池の動作状態を制御する制御部と、
災害情報及び前記蓄電池の蓄電量を取得可能な通信部と、を備え、
前記制御部は、通常モード時において、前記目標範囲値が通常基準値となるように、前記蓄電池の動作状態を制御し、
前記災害情報及び前記蓄電量に基づいて、前記目標範囲値を設定する、電力管理システム。
【請求項10】
所定時間以内における系統からの電力購入計画値に対する電力購入実績値の差分であるインバランスが目標範囲値以内となるように、電池の充放電を制御する電力管理方法であって、
通常モード時において、前記目標範囲値が通常基準値となるように、前記蓄電池の動作状態を制御するステップと、
災害情報及び前記蓄電池の蓄電量を取得するステップと、
前記災害情報及び前記蓄電量に基づいて、前記目標範囲値を設定するステップと、を含む、電力管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力管理装置、電力管理システム、及び電力管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、災害情報に応じて、需要家毎に設けられる電力管理装置によって、需要家に設けられる負荷や需要家に設けられる分散電源などを制御する技術が知られている。例えば特許文献1には、警報情報を取得し、用途に応じて蓄電池に準備される電力量を変更することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-220975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
警報が発令された地域では、蓄電装置を備える需要家であれば停電に備えて充電量を増加させることが考えられる。一方、電力管理装置は、系統安定化のために、通常時において電力の需要量と供給量との調整を行うインバランス制御を行っている。そのため、インバランス制御下においては、急な災害に備えて充電量を確保することが困難なため、災害情報を取得した場合における蓄電装置の制御について改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点による電力管理装置は、所定時間以内における系統からの電力購入計画値に対する電力購入実績値の差分であるインバランスが目標範囲値以内となるように、前記蓄電池の充放電を制御する電力管理装置であって、前記蓄電池の動作状態を制御する制御部と、災害情報及び前記蓄電池の蓄電量を取得可能な通信部と、を有する。前記制御部は、通常モード時において、前記目標範囲値が通常基準値となるように、前記蓄電池の動作状態を制御し、前記災害情報及び前記蓄電量に基づいて、前記目標範囲値を設定する。
【0006】
第2の観点による電力管理システムは、蓄電池と、所定時間以内における系統からの電力購入計画値に対する電力購入実績値の差分であるインバランスが目標範囲値以内となるように、前記蓄電池の充放電を制御する電力管理装置と、を備える。前記電力管理装置は、前記蓄電池の動作状態を制御する制御部と、災害情報及び前記蓄電池の蓄電量を取得可能な通信部と、を有する。前記制御部は、通常モード時において、前記目標範囲値が通常基準値となるように、前記蓄電池の動作状態を制御し、前記災害情報及び前記蓄電量に基づいて、前記目標範囲値を設定する。
【0007】
第3の観点による電力管理方法は、所定時間以内における系統からの電力購入計画値に対する電力購入実績値の差分であるインバランスが目標範囲値以内となるように、前記蓄電池の充放電を制御する。前記電力管理方法は、通常モード時において、所定時間以内における、前記目標範囲値が通常基準値となるように、前記蓄電池の動作状態を制御するステップと、災害情報及び前記蓄電池の蓄電量を取得するステップと、前記災害情報及び前記蓄電量に基づいて、前記目標範囲値を設定するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態に係る電力管理装置、電力管理システム、及び電力管理方法によれば、インバランスの目標範囲値及び蓄電池の蓄電量に従って蓄電池の充電を行うことができ
るため、系統の安定化を考慮しつつ、災害に備えた充電量を確保することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る電力管理システムの構成を示す図である。
図2】一実施形態に係る電力管理装置の動作例を示す図である。
図3】一実施形態に係る電力管理装置の動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態に係る電力管理装置、電力管理システム、及び電力管理方法について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る電力管理システム1の構成例を示す図である。
【0012】
図1に示すように、電力管理システム1は、電力管理装置100と蓄電池200を有する。また、電力管理システム1は、外部サーバ20と電力メータ300を有してもよい。また、電力管理システム1は、その他種々の機器を有してもよい。機器とは、例えば、電力を出力する分散電源及び電力を消費する負荷のうち少なくとも1つを含んでよい。なお、機器の数は単一であってもよいし、複数であってもよい。
【0013】
図1において、実線は電力線を、破線は通信線を示している。
【0014】
電力管理装置100及び蓄電池200は、ネットワーク30に接続されている。ネットワーク30は、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、及びイ
ンターネットのうち少なくとも1つを含む。
【0015】
電力管理装置100は、所定の地域内における電力を制御するAEMS(Area Energy Management System)を構成する。所定の地域とは例えば、市町村単位であってもよいし
、予め定められた区画であってもよく、物理的に離れた2以上の区画を含んでいればよい。
【0016】
電力管理装置100は、電力管理システム1が有する種々の機器の電力状態や運転状態を管理若しくは制御してもよい。
【0017】
蓄電池200は、例えば、リチウムイオン電池またはニッケル水素電池、鉛蓄電池などである。蓄電池200は、充電された電力を放電することにより、電力を負荷に供給可能である。また、蓄電池200は、系統10などから供給された電力を充電可能である。
【0018】
蓄電池200は、電力管理装置100から送信される制御指示に従い、充放電可能である。
【0019】
本実施形態では、電力管理装置100は、所定時間以内における系統10からの電力購入計画値に対する電力購入実績値の差分が、目標範囲値以内となるように、蓄電池200の充放電を制御するものとして説明する。
【0020】
外部サーバ20は、ネットワーク30に接続されており、政府等機関及び民間等機関のうち少なくとも一つ以上の情報源から災害情報及び気象情報を取得及び蓄積可能である。また、外部サーバ20は、電力広域機関から、電力管理システム1が管轄する地域の電力購入計画を取得及び蓄積可能である。
【0021】
電力メータ300は、電力管理システム1が管轄する地域における系統10からの電力
購入実績値を取得する。また、電力メータ300は、電力管理システム1が管轄する地域における系統10からの需要家毎の電力購入実績値を取得してもよい。なお本実施形態では、電力メータ300は、系統10と蓄電池200との間の電力線に設けられている電流センサとして説明するが、電力購入実績値を取得可能な機器であれば、電力メータ300に限られない。
【0022】
なお、本実施形態では、電力管理システム1は、分散電源として、蓄電池200を有するものとして説明するが、これに限られない。電力管理システム1は、蓄電池200に加え、その他の分散電源を設けてもよい。分散電源として、太陽電池及び燃料電池のうち少なくとも1つを含んでもよい。分散電源は、異なる種類の電源の組み合わせであってもよい。
【0023】
太陽電池は、シリコン系多結晶太陽電池、シリコン系単結晶太陽電池、又はCIGS等薄膜系太陽電池等、光電変換可能なものであればその種類は制限されない。一実施形態において、太陽電池は、電力を供給するために太陽光発電を行う機能を有するものであれば、任意の電源を採用してよい。
【0024】
燃料電池は、例えば、水素を用いて空気中の酸素との化学反応により直流の電力を発電するセルと、その他補機類とを備えてよい。燃料電池は、例えば、固体酸化物型燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)、固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:PEFC)、リン酸形燃料電池(Phosphoric Acid Fuel Cell:PAFC)、
又は溶融炭酸塩形燃料電池(Molten Carbonate Fuel Cell:MCFC)などのような燃料電池のセルスタックを含んで構成してもよい。
【0025】
次に、一実施形態に係る電力管理装置100について説明する。
【0026】
図1に示すように、電力管理装置100は、制御部110と、通信部120と、を有する。また、電力管理装置100は、記憶部130を有してもよい。また、電力管理装置100は、蓄電池200から供給される電力により稼働してもよいし、電力管理システム1の備えるその他の電力供給手段により稼働してもよいし、電力管理システム1の管轄外である電力供給手段により稼働してもよい。
【0027】
記憶部130は、制御部110が実行する情報処理に用いる各種情報を記憶してよい。記憶部130は、地域に設けられている分散電源の種類、負荷の種類、負荷の消費電力を記憶していてもよい。記憶部130は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の補助記憶装置を含む。制御部110は、記憶部130に情報を記憶させたり、記憶部130に記憶された情報を更新してよい。
【0028】
制御部110は、電力管理装置100の各機能をはじめとして電力管理システム1の全体を制御するプロセッサである。制御部110は、蓄電池200の動作状態を制御する。動作状態とは、蓄電池200の時間当たりの充放電量の制御のように、所定のプログラムに従って蓄電池200が制御されるあらゆる状態であってもよいし、プログラムに基づかず直接制御される状態であってもよい。なお、状態をモードと称してもよい。なお、制御部110が蓄電池200の動作状態を制御するとは、通信部120が蓄電池200に対して、蓄電池200の動作状態を制御する制御信号を送信するように、制御部110が通信部120を制御することであってもよい。
【0029】
通信部120は、無線通信をはじめとする各種の通信機能を有する通信インタフェースである。通信部120は、例えば、LTE(Long Term Evolution)などの種々の通信方
式により通信を実現する。また、通信部120は、通信部120の機能を有していてもよ
い。通信部120は、例えば、ITU-T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector)において通信方式が標準化されたモデムを含んでよい。通信部120は、WiFi(Wireless Fidelity)またはBluetooth
(登録商標)などの種々の方式により無線通信を実現してよい。通信部120は、電波を送受信するためのアンテナおよび適当なRF(Radio Frequency)部などを含めて構成し
てよい。通信部120は、無線通信を行うための既知の技術により構成することができるため、より詳細なハードウェアの説明は省略する。
【0030】
通信部120は、ネットワーク30を介して、蓄電池200と通信する。また、通信部120は、外部サーバ20と通信してもよい。また、通信部120は、電力メータ300から、電力購入実績値を、ネットワーク30を介して取得してもよいし、ネットワーク30を介さずに取得してもよい。また、通信部120は、電力メータ300から所定の時間間隔で電力購入実績値を取得してもよい。また、通信部120は、ある時刻における瞬時値としての電力購入実績値を取得してもよいし、所定の時間内における積算値としての電力購入実績値を取得してもよい。
【0031】
また、通信部120は、災害情報を取得してもよい。本実施形態において、災害情報は、災害が必ず発生するというものに限らず、将来、例えば、現在時刻から所定時間(以下、災害予報時間とも称する)以内に、災害が発生する蓋然性がある旨の情報を含むものであるとして説明する。よって、災害情報は、現在時刻から災害予報時間以内に災害の発生が予測される旨の情報を含む災害情報を含んでもよい。また、災害情報は、現在時刻から少なくとも災害予報時間以内の間においては災害が発生しない旨の情報を含んでもよい。また、災害情報は、災害の終了に関する情報を含んでもよい。災害とは、例えば、地震、台風、大雨、大雪等、様々なものが挙げられるが、これらに限られない。災害の終了に関する情報とは、災害が終了した旨の情報であってもよいし、災害の終了が予測される旨の情報であってもよい。
【0032】
なお、災害予報時間は、例えば、数時間オーダーや数分オーダーの時間を表してもよい。
【0033】
また、通信部120は、停電情報を取得してもよい。停電情報は停電が発生した旨の情報である。なお、停電情報は、電力管理システム1が管轄する地域に対する停電に限らず、電力管理システム1が管轄する地域に隣接する地域における停電に関する情報であってもよい。
【0034】
なお、本実施形態において、災害情報と停電情報は因果関係のある関連した情報であってもよく、独立した異なる情報であってもよい。つまり、通信部120は、災害情報を取得した場合に、関連する停電情報を取得してもよい。また、通信部120は、災害情報を取得した場合であっても、停電情報を取得しなくてもよい。例えば、災害の予報はあるが、実際には災害が発生せずに停電にもならなかった場合等である。また、通信部120は、災害情報を取得しない場合であっても、停電情報を取得してもよい。例えば、将来の災害の予報が困難で、災害が突発的に発生し得る場合等である。
【0035】
また、通信部120は、ネットワーク30を介して、蓄電池200の蓄電量及び充電速度のうち少なくともいずれか1つを含む情報を取得してよい。蓄電量の値は、SOC(State Of Charge)で表されてもよいし、SOH(State Of Health)で表されてもよい。充電速度の値は、C-Rate(Capacity Rate)あるいは蓄電池200の出力を用いて表されてもよい。
【0036】
制御部110は、通信部120が取得した災害情報及び蓄電池200の蓄電量に基づい
て、蓄電池200の動作状態を制御する。なお、蓄電池200の動作状態の制御には電力状態の制御が含まれていてもよい。蓄電池200の電力状態の制御とは、例えば、電力を出力(放電)させる制御、電力を充電させる制御である。
【0037】
制御部110は、所定時間以内における、系統10からの電力購入計画値に対する電力購入実績値の差分(以下、インバランスとも称する)が、予め定められたインバランスを許容する割合(以下、目標範囲値とも称する)以内になるように制御してよい。言い換えれば、制御部110は、所定時間以内における系統10からの電力購入計画値に対する電力購入実績値の差分であるインバランスが、目標範囲値以内となるように、蓄電池200の動作状態を制御してもよい(以下、インバランス制御とも称する)。例えば、所定時間以内における、電力購入実績値が、電力購入計画値の103%の値である場合、目標範囲値は、+3%であるとされる。つまり、この場合、所定時間以内における電力購入実績値の値は、電力購入計画値よりも、電力購入計画値の3%分大きい値となる。このように、目標範囲値は1つの値として決められてもよいし、+2~3%のように幅を許容する値として定められてもよい。また、例えば、所定時間以内における、電力購入実績値が、電力購入計画値の97%の値である場合、目標範囲値は、-3%であるとされる。つまり、この場合、所定時間以内における電力購入実績値の値は、電力購入計画値よりも、電力購入計画値の3%分小さい値となる。このように、目標範囲値は1つの値として決められてもよいし、-2~3%のように幅を許容する値として定められてもよい。また、目標範囲値は±3%のように正負の値で幅をとってもよい。
【0038】
インバランス制御による需要家に対する経済的な影響について説明する。エリアを管理する需要家は、電力購入計画時に、電力購入量を計画し、当該電力購入量に対しては所定の単価で電力を購入する。使用不足が生じており差分が-3%を下回っているとき、需要家は電力供給者(例えば、一般電気事業者、PPS(Power Producer and Supplier)等
)に第1の単価(例えば0円)で発電電力を売却可能である。また、使用不足が生じており差分が-3~0%のとき、需要家は第1の単価よりも高い第2の単価(例えば7.83円/kWh)で発電電力を売却可能である。したがって、計画した電力購入量に対して実際の使用量の過剰分が所定の範囲である場合、需要家に経済的なメリットが付与される。
【0039】
また、使用超過が生じており差分が0~3%のとき、需要家は第2の単価よりも高い第3の単価(例えば11.66円/kWh)で電力供給者から発電電力を購入しなければならず、差分が3%を上回るとき、需要家は第3の単価よりも高い第4の単価(例えば32.42~40.69円/kWh)で発電電力を購入しなければならない。したがって、計画した電力購入量に対して実際の電力購入量の不足分が大きくなる程、需要家に経済的なペナルティが付与される。
【0040】
インバランスの平準化は、電力購入計画で定めた電力購入量(電力購入計画値)と実際に需要家が消費する電力使用量(電力購入実績値)との差分を、蓄電池200に吸収させることによって実行される。例えば、制御部110は、電力購入計画値に対して電力購入実績値が多いときに蓄電池200に放電させて電力不足を補い、電力購入計画値に対して電力購入実績値が少ないときに蓄電池200に充電させて電力過剰分を消費することによって、インバランスを解消する。
【0041】
なお、インバランスは、同一時刻における、系統10からの電力購入計画値に対する電力購入実績値の瞬時値の差分であってもよい。また、インバランスにおける所定時間は、例えば、数秒オーダーや数分オーダーの時間を表してもよく、この場合、インバランスは、同一の所定時間以内における、系統10からの電力購入計画の積算値に対する電力購入実績値の積算値の差分であってもよい。
【0042】
目標範囲値が正の値である場合には、電力購入計画と比べて、電力購入を促す、つまり、系統10から蓄電池200への電力の充電を促す制御に相当するため、目標範囲値の値が、0%の場合に比べて、蓄電池200が充電されやすくなる。つまり、目標範囲値が正の値である場合の制御は、蓄電池200の放電を抑制する制御であると言える。
【0043】
一方、目標範囲値が負の値である場合には、電力購入計画と比べて、電力購入を抑制する、つまり、系統10から蓄電池200への電力の充電を抑制する制御に相当するため、目標範囲値が、0%の場合に比べて、蓄電池200が放電しやすくなる。つまり、目標範囲値の値が負の値である場合の制御は、蓄電池200の充電を抑制する制御であると言える。
【0044】
このように、制御部110は、目標範囲値を、-∞%~+∞%の範囲で設定可能である。また、目標範囲値は災害の種類及び蓄電池200の蓄電量に応じてもよいし、応じなくてもよい、また、目標範囲値は、災害の種類及び蓄電池200の蓄電量に応じて、一時的に設定されるものであってもよい。
【0045】
また、制御部110は、通常モード時において、目標範囲値を通常基準値となるように、蓄電池200の動作状態を制御してもよい。通常基準値とは、例えば、目標範囲値が0%である状態を指すが、これに限られない。例えば、通常基準値は、+1%であってもよい。また、制御部110は、災害情報及び蓄電池200の蓄電量に基づいて、目標範囲値を設定してもよい。これにより、制御部110は、災害が発生した場合であっても、蓄電池200の蓄電量に基づいてインバランスを考慮した蓄電池200の制御をすることができる。よって、蓄電池200の蓄電量に応じて、インバランスが生じる程度を適宜考慮しつつ、災害による停電発生に備えて、蓄電池200に充電することができる。
【0046】
制御部110は、通信部120が、現在時刻から災害予報時間以内に災害の発生が予測される旨の情報を含む災害情報を取得した場合、蓄電池200の動作状態を、通常モード時よりも蓄電池200の放電を抑制する停電準備モードに設定してもよい。停電準備モードは、蓄電池200の動作状態として、インバランス制御を実行しながら、停電に備えるモードであってよい。このように、蓄電池200の動作モードとして、将来の停電に備えるのみならず、インバランス制御を実行しつつも停電に備える旨のモードを予め設定することで、制御部110は、災害が発生した場合であっても、災害発生時までに蓄えられた蓄電池200の電力を用いて、防災電源として使うことができる。また、停電準備モードは、通常モード時よりも蓄電池200の放電を抑制するモードであるため、放電により失われる蓄電池200の蓄電量をより低減できる。その結果、本実施形態では、災害による停電発生に備えて、より効率的に蓄電池200の充電をすることができる。
【0047】
制御部110は、蓄電池200の蓄電量が所定の閾値を下回る場合に、目標範囲値を通常基準値よりも大きい値として設定してもよい。例えば、通常モード時において、目標範囲値が通常基準値として0%に設定されている場合に、通信部120が、災害予報時間以内に災害が発生する情報及び蓄電池200の蓄電量を取得し、蓄電池200の蓄電量が少ない場合には、目標範囲値を3%といった値に設定することができる。これにより、単位時間内での電力供給が電力需要よりも多くなる頻度が多くなり、蓄電池200に供給可能な電力量を増やすことが可能になる。その結果、本実施形態では、より効率的に蓄電池200の充電をすることができる。
【0048】
制御部110は、現在時刻から災害予報時間以内に蓄電池200の蓄電量が所定の蓄電量を超えるように目標範囲値を設定してもよい。例えば、現在時刻から3時間以内に満充電まで充電する場合は、目標範囲値を3%に設定し、現在時刻から1時間以内に満充電まで充電する場合は、目標範囲値を5%に設定してもよい。このように、蓄電池200を所
定時間までに充電する時間が短いほど、目標範囲値が大きい値となるように設定することで、蓄電池200に供給可能な電力量をより増やすことが可能になり、短時間に効率的に充電することができる。
【0049】
制御部110は、蓄電池200の蓄電量及び蓄電池200の充電速度に基づいて目標範囲値を設定してもよい。蓄電池200の充電速度は、単位時間当たりの充電の速度を表している。一般に蓄電池の充電速度は、使用期間、劣化状態等によって異なる値となる。このような各蓄電池固有の充電速度に基づいて、制御部110が、目標範囲値を設定することで、より災害による停電発生に備えて、蓄電池200に充電することができる。本実施形態において、蓄電池200の充電速度は、記憶部130が記憶していてもよい。
【0050】
例えば、3時間以内に満充電まで充電する場合、通信部120が、記憶部130から蓄電池200の充電速度を取得し、制御部110は、その充電速度の値に基づいて、3時間以内に蓄電池200の蓄電量を満充電にするには、現在時刻から何時間後に、目標範囲値を大きくするかを判断してよい。
【0051】
また、制御部110は、所定時間ごとに段階的に目標範囲値を大きくしてもよい。これにより、停電発生が予想される時刻に近づくに連れて、蓄電池200が充電されやすくなるため、より災害による停電発生に備えて、より効率的に蓄電池200の充電をすることができる。
【0052】
また、制御部110は、蓄電池200の蓄電量が所定の閾値を上回る場合に、目標範囲値を通常基準値に設定してもよい。これにより、停電に備えて所定の充電量を確保しつつ、インバランスの発生を低減させることができる。
【0053】
制御部110は、通信部120が停電情報を取得した場合に、蓄電池200の動作状態を系統10から解列された自立運転に切替えてもよい。これにより、停電により系統10から電力が供給されない場合においても、蓄電池200から負荷に電力を供給することができる。
【0054】
なお、自立運転時においては、蓄電池200は系統10から解列しているため、インバランス制御は行われずに、蓄電池200は、負荷の消費電力に追従する負荷追従モードで動作することになる。
【0055】
また、通信部120が停電情報を取得しない場合には、制御部110は、蓄電池200の動作状態を停電準備モードとして維持してよい。
【0056】
制御部110は、通信部120が、災害が終了した旨の情報を含む災害情報を取得した場合、蓄電池200の動作状態を通常モードに設定してもよい。これにより、制御部110は、今後災害が発生しないと判断できるため、経済性の高い通常モードに再設定し、コストメリットが得られる。なお、制御部110は、蓄電池200が負荷追従モードである場合、停電準備モードである場合のいずれにおいても、通信部120が、災害が終了した旨の情報を含む災害情報を取得した場合には、蓄電池200の動作状態を通常モードに設定してよい。
【0057】
なお、本実施形態では、インバランスにおける所定時間は、災害予報時間よりも短いものとして、言い換えれば、災害予報時間は、インバランスにおける所定時間よりも長いものとして説明したが、実施形態はこれに限られない。災害予報時間は、インバランスにおける所定時間よりも短くてもよい。災害予報時間が、インバランスにおける所定時間よりも短い場合とは、例えば、災害が突発的に発生し得る場合である。この場合には、通信部
120が災害情報を取得しなくてもよい。
【0058】
次に、電力管理システム1の電力管理方法における動作例についてフローチャートを用いて説明する。
【0059】
図2に示すように、ステップS310において、電力管理装置100は、蓄電池200から蓄電池200の蓄電量を取得する。この取得は、所定時間間隔に行われてもよいし、継続して行われてもよい。なお、蓄電池200の動作状態は通常モードであるものとして説明する。
【0060】
ステップS320において、電力管理装置100は、災害が発生する蓋然性がある旨の災害情報を取得したか否かを判定する。電力管理装置100は、災害が発生する蓋然性がある旨の災害情報を取得したと判定した場合(S320:Yes)、ステップS330に進む。なお、電力管理装置100は、災害情報を取得していないと判定した場合、あるいは、災害が発生する蓋然性がある旨の災害情報を取得していないと判定した場合(S320:No)、ステップS340に進む。
【0061】
ステップS330において、電力管理装置100は、蓄電池200の動作状態を停電準備モードに設定し、ステップS340に進む。
【0062】
ステップS340において、電力管理装置100は、停電情報を取得したか否かを判定する。電力管理装置100は、停電情報を取得したと判定した場合(S340:Yes)、ステップS340に進む。なお、電力管理装置100は、停電情報を取得していないと判定した場合(S340:No)、ステップS350に進む。
【0063】
ステップS350において、電力管理装置100は、蓄電池200の動作状態を系統10から解列された自立運転に切替え、ステップS370に進む。
【0064】
ステップS360において、電力管理装置100は、災害予報時間を経過したか否かを判定する。電力管理装置100は、災害予報時間を経過したと判定した場合(S360:Yes)、ステップS380に進む。なお、電力管理装置100は、災害予報時間を経過していないと判定した場合(S360:No)、ステップS340に再度戻る。
【0065】
ステップS370において、電力管理装置100は、災害の終了に関する情報を取得したか否かを判定する。なお、電力管理装置100は、災害の終了に関する情報を含む災害情報を取得したか否かを判定してもよい。電力管理装置100は、災害の終了に関する情報を取得したと判定した場合(S370:Yes)、ステップS380に進む。なお、電力管理装置100は、災害の終了に関する情報を取得していないと判定した場合(S370:No)、ステップS370に再度戻る。
【0066】
ステップS380において、電力管理装置100は、蓄電池200の動作状態を通常モードに設定し、終了する。具体的には、電力管理装置100は、蓄電池200の動作状態を停電準備モード若しくは自立運転から、通常モードに切替える。なお、ステップS380では、蓄電池200の動作状態を通常モードに設定するとしているが、電力管理装置100は、外部サーバ20から災害情報及び停電情報のいずれも取得しない場合には、蓄電池200の動作状態を通常モードとして維持しているものとする。
【0067】
次に、電力管理装置100の停電準備モード設定(ステップS330)の動作例について説明する。
【0068】
図3に示すように、ステップS331において、電力管理装置100は、蓄電池200の蓄電量の値が所定の蓄電量未満であるか判定する。電力管理装置100は、蓄電量の値が所定の蓄電量未満であると判定した場合(S331:Yes)、ステップS332に進む。なお、電力管理装置100は、蓄電量の値が所定の蓄電量未満ではないと判定した場合、(S331:No)、ステップS333に進む。
【0069】
ステップS332において、電力管理装置100は、蓄電池200に送信する制御命令を生成する。具体的には、電力管理装置100は、蓄電池200の目標範囲値を通常基準値よりも大きい値として設定し、設定された目標範囲値に従って蓄電池200の動作状態を制御するように、蓄電池200を制御する。
【0070】
ステップS333において、電力管理装置100は、蓄電池200に送信する制御命令を生成する。具体的には、制御部110は、蓄電池200の目標範囲値を通常基準値として設定し、設定された目標範囲値に従って蓄電池200の動作状態を制御するように、蓄電池200を制御する。
【0071】
つまり、本実施形態における電力管理装置100の電力管理方法は、所定時間以内における系統10からの電力購入計画値に対する電力購入実績値の差分であるインバランスが目標範囲値以内となるように、蓄電池200の充放電を制御する電力管理方法であってよい。
【0072】
また、本実施形態における電力管理装置100の電力管理方法は、通常モード時において、電力購入計画値に対する電力購入実績値の差分である目標範囲値が通常基準値となるように、蓄電池200の動作状態を制御するステップを有してもよい。
【0073】
また、本実施形態における電力管理装置100の電力管理方法は、災害情報及び蓄電池200の蓄電量を取得するステップと、災害情報及び蓄電池200の蓄電量に基づいて、目標範囲値を設定するステップと、を含んでもよい。これにより、電力管理装置100の電力管理方法は、災害が発生した場合であっても、蓄電池200の蓄電量に基づいてインバランスを考慮した蓄電池200の制御をすることができる。
【0074】
各ステップで設定した目標範囲値は、記憶部130が記憶してもよい。記憶部130が記憶した目標範囲値は、制御部110が目標範囲値を設定する際に参照してもよい。例えば、前回の停電準備モードにおいて、目標範囲値を+3%と設定していた場合、+3%という値を参照して目標範囲値を設定してもよい。
【0075】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部やステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、本発明について装置を中心に説明してきたが、本発明は装置が備えるプロセッサにより実行される方法、プログラム、又はプログラムを記憶した記憶媒体としても実現し得るものであり、本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。また、この場合、記憶媒体には、ハードディスク装置、光ディスク、CD-ROM、CD-R、メモリカード、ROM等を用いることができる。
【0076】
2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」がある。一実施形態に係る
電力管理装置、電力管理システム、及び電力管理方法は、このSDGsの17の目標のう
ち、例えば「7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」、及び「11.「住み続けられるまちづくりを」の目標などの達成に貢献し得る。
【符号の説明】
【0077】
1 電力管理システム
10 系統
20 外部サーバ
30 ネットワーク
100 電力管理装置
110 制御部
120 通信部
130 記憶部
200 蓄電池
300 電力メータ
図1
図2
図3