(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】研磨パッド及び研磨パッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/013 20120101AFI20240820BHJP
B24B 37/26 20120101ALI20240820BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240820BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20240820BHJP
B24B 37/24 20120101ALI20240820BHJP
【FI】
B24B37/013
B24B37/26
H01L21/304 622F
C08J7/04 Z
B24B37/24 Z
(21)【出願番号】P 2020164766
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100168631
【氏名又は名称】佐々木 康匡
(72)【発明者】
【氏名】立野 哲平
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓介
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0164482(US,A1)
【文献】特開2018-162431(JP,A)
【文献】特開2019-048912(JP,A)
【文献】特表2008-546167(JP,A)
【文献】特表2007-506280(JP,A)
【文献】特開2005-175464(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0266771(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00 - 37/34
H01L 21/304
C08J 7/00 - 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性部材及び研磨層を有する研磨パッドであって、
前記研磨層は、被研磨物を研磨するための研磨面を備え、前記研磨パッドは前記研磨面からその反対面へと貫通している貫通孔を有しており、
前記透光性部材は、研磨パッドの研磨面側から研磨パッド厚さ方向に見た場合に、貫通孔内に透光性部材が存在するように配置されており、
前記研磨面を上面としその反対面を下面とした場合に、前記透光性部材の最上部が前記研磨面よりも低く、
前記透光性部材の研磨面側の表面が、親水性樹脂でコーティングされて
おり、
前記親水性樹脂が、イオン結合性の親水基を有する樹脂であり、
前記イオン結合性の親水基を有する樹脂は、イオン結合性の親水基のカチオン部が樹脂を構成するモノマーと共有結合しており且つイオン結合性の親水基のアニオン部とイオン結合しており、且つ
前記研磨層が、複数の涙形状気泡を含み且つ当該気泡の一部又は全部が連通孔によりつながった連続気泡を有するポリウレタンシートで構成されている、
前記研磨パッド。
【請求項2】
前記イオン結合性の親水基を有する樹脂が、イオン結合性の親水基を側鎖に有する樹脂である、請求項
1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記イオン結合性の親水基が、アンモニウムカチオンを含む、請求項
1又は2に記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記樹脂でコーティングされた透光性部材の研磨面側の表面が、50度以下の水接触角を有する、請求項1~
3のいずれか1項に記載の前記研磨パッド。
【請求項5】
前記研磨面が溝を有する、請求項1~
4のいずれか1項に記載の研磨パッド。
【請求項6】
前記溝がエンボス溝である、請求項
5に記載の研磨パッド。
【請求項7】
前記研磨面を上面としその反対面を下面とした場合に、前記樹脂でコーティングされた透光性部材の最上部が前記溝の最下部と同じ位置にあるかそれよりも低い、請求項
5又は
6に記載の研磨パッド。
【請求項8】
研磨パッドの研磨面側から研磨パッド厚さ方向に見た場合の前記貫通孔の形状が円形である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の研磨パッド。
【請求項9】
前記研磨層が有する貫通孔を第1貫通孔とするとき、前記研磨パッドは、前記第1貫通孔よりも小さい円相当径を有する第2貫通孔を有する他の層を更に含み、
前記他の層は、前記研磨層の研磨面とは反対側に位置しており、
前記研磨パッドを研磨表面側から厚さ方向に見た場合に、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とが少なくとも部分的に重なっており、
研磨パッドの研磨面側から研磨パッド厚さ方向に見た場合に、前記透光性部材が前記第1貫通孔内に存在するように前記透光性部材が配置されている、請求項1~
8のいずれか1項に記載の研磨パッド。
【請求項10】
少なくとも一面が親水性樹脂でコーティングされている透光性部材と、研磨層とを用意する工程、
研磨層に貫通孔を設ける工程、及び
研磨パッドの研磨面側から研磨パッド厚さ方向に見た場合に、前記透光性部材が貫通孔内に存在するように前記透光性部材を配置する工程、ここで前記透光性部材のコーティング面が研磨面側になるように配置されている、
を含む、請求項1~
9のいずれか1項に記載の研磨パッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッド及びその製造方法に関し、特に光透過領域を有する化学機械研磨(CMP)用研磨パッド及びその製造方法に関する。より具体的には、光学的に研磨終点が検出可能な終点検出用窓を備えた研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程(特に、多層配線形成工程における層間絶縁膜の平坦化、金属プラグ形成、又は、埋め込み配線形成)において化学機械研磨(以下、「CMP」という)法が利用されている。CMPは、ウエハの被研磨面を研磨パッドの研磨面に押し付けた状態で、砥粒が分散されたスラリーを用いて研磨する技術である。CMPに用いる研磨パッドは、硬質研磨パッドと軟質研磨パッドに大別され、硬質研磨パッドはウレタンプレポリマーを含む硬化性組成物を金型に注型し硬化させる乾式成形法が、軟質研磨パッドはウレタン樹脂溶液を凝固浴で成膜し乾燥する湿式成膜法が主流である。近年、被研磨物の低欠陥性、段差解消性が高度に要求されるようになり、仕上げ研磨工程等に軟質研磨パッドを利用するケースが増えている。
近年、半導体素子の多層化、高精細化が飛躍的に進み、半導体素子の歩留まり及びスループット(収量)の更なる向上が要求され、研磨パッドに対してはディフェクトフリーとともに、ディッシングのない高平坦化性が要望されている。これらの要求を満たして高精度のCMPを行うためには、研磨終点の判定が必要となり、希望の表面特性や平面状態に到達した時点を検知しなければならず、光学的測定による終点の検出が行われてきている。
【0003】
光学的測定は、研磨パッドに設けた測定用の窓を通して、ウエハの表面を観測する方法である。光学的測定のために研磨パッドに測定用の窓を設ける場合、研磨パッドは一般的に透明でないため、窓とする部分に研磨パッドとは材質の異なる透明材料を配置する必要がある。この透明材料は、研磨中に表面が傷ついたり、スラリーが研磨領域と透明材料との隙間から漏れ出すことで透明材料の裏面が結露したりと、様々な要因によって光透過率が低下する。このため、研磨初期から研磨終盤まで研磨終点の判定を高精度に維持することが困難となる。また、仕上げ研磨工程等に軟質研磨パッドを使用した場合、ウエハに研磨パッドを押し付けると窓が研磨表面に突出してしまい、この突出した研磨能力を持たない窓がウエハに当たることで、研磨傷を引き起こす可能性もある。
【0004】
光透過率の低下の問題を解決するための研磨パッドとして、特許文献1には、光透過領域の裏面を親水化処理することで、スラリーが研磨領域と光透過領域との継ぎ目から光透過領域の裏面側に漏れ出した場合でも、スラリー由来の水分が光透過領域の裏面に結露するのを防止し、光透過率の低下を防ぐ研磨パッドが提案されている。
また、特許文献2には、スラリーによって窓部材表面が粗面化して光が散乱して光透過率が低下するという問題を解決するための研磨パッドとして、ガラスなどの無機透明材料からなる窓部材の表面を撥水化した研磨パッドが提案されている。
さらに、特許文献3には、窓部材がスラリーの保持や排出能力を有さないことにより研磨性能が低下するという問題を解決する研磨パッドとして、窓を構成するマトリックス材中に水溶性物質を分散・含有させた研磨パッドが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-221367号公報
【文献】特開2003-285257号公報
【文献】特開2004-327974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の研磨パッドは、透光性部材の裏面に漏れ出して生じる結露の問題を解決することに焦点を当てたものであり、透光性部材の表面にスラリーが存在するか否かに起因する光透過率のバラツキには着目していない。
特許文献2の研磨パッドは、スラリーによって窓部材表面が削れて粗面化することに起因する光透過率の低下を解決するため、窓部材としてガラスを採用したものである。窓部材は研磨層と比較して硬いため、窓部材表面が研磨層表面より下に位置するように窓部材を配されることに起因して、窓部材表面と被研磨物表面との間にスラリーが介在しやすくなる。そのスラリーを排出するため、窓部材表面を撥水化することによって当該問題を解決するものであるが、研磨液の供給が連続的に行われる研磨中において、透光性部材の表面に介在するスラリーをゼロにすることは難しく、少量存在するスラリーが撥水化によって液滴状となり、光透過率のバラツキの原因となる恐れがある。
特許文献3の研磨パッドは、窓を構成するマトリックス中に水溶性物質を分散させることにより、使用時に水溶性物質が水と接触して遊離し、スラリーを保持するための空孔を形成し、これによりスラリーの保持や排出能力が得られるものであり、マトリックス材全体に水溶性物質が分散されていることが前提となっている。特許文献3は、特許文献1と同様に、透光性部材の表面にスラリーが存在するか否かに起因する光透過率のバラツキには着目していない。また、特許文献3の方法でマトリックス材に親水性物質を練り込んだ場合、マトリックス材と親水性物質とが混在し、窓全体が親水性を有するため、スラリーによって窓が膨潤・変形し、研磨領域から剥がれ落ちたり、スラリー漏れを引き起こしたりする恐れもある。
【0007】
本発明は、以上に鑑みてなされたものであり、透光性部材の表面にスラリーが存在することに起因する光透過率のバラツキを抑えることができる研磨パッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、透光性部材の表面にスラリーが存在する場合と存在しない場合で光透過率が異なり、これが光透過率にバラツキをもたらし、高精度な研磨終点判定を難しくしていることを見出し、透光性部材の研磨面側の表面に親水性樹脂をコーティングすることによって当該問題を解決し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下を提供する。
【0009】
〔1〕 透光性部材及び研磨層を有する研磨パッドであって、
前記研磨層は、被研磨物を研磨するための研磨面を備え、前記研磨パッドは前記研磨面からその反対面へと貫通している貫通孔を有しており、
前記透光性部材は、研磨パッドの研磨面側から研磨パッド厚さ方向に見た場合に、貫通孔内に透光性部材が存在するように配置されており、且つ
前記透光性部材の研磨面側の表面が、親水性樹脂でコーティングされている、前記研磨パッド。
〔2〕 前記親水性樹脂が、イオン結合性の親水基を有する樹脂である、〔1〕に記載の研磨パッド。
〔3〕 前記イオン結合性の親水基を有する樹脂が、イオン結合性の親水基を側鎖に有する樹脂である、〔2〕に記載の研磨パッド。
〔4〕 前記イオン結合性の親水基を有する樹脂は、イオン結合性の親水基のカチオン部が樹脂を構成するモノマーと共有結合しており且つイオン結合性の親水基のアニオン部とイオン結合している、〔2〕又は〔3〕に記載の研磨パッド。
〔5〕 前記イオン結合性の親水基が、アンモニウムカチオンを含む、〔2〕~〔4〕のいずれか1項に記載の研磨パッド。
〔6〕 前記樹脂でコーティングされた透光性部材の研磨面側の表面が、50度以下の水接触角を有する、〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の前記研磨パッド。
〔7〕 前記研磨面が溝を有する、〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の研磨パッド。
〔8〕 前記溝がエンボス溝である、〔7〕に記載の研磨パッド。
〔9〕 前記研磨面を上面としその反対面を下面とした場合に、前記樹脂でコーティングされた透光性部材の最上部が前記溝の最下部と同じ位置にあるかそれよりも低い、〔7〕又は〔8〕に記載の研磨パッド。
〔10〕 研磨パッドの研磨面側から研磨パッド厚さ方向に見た場合の前記貫通孔の形状が円形である、〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載の研磨パッド。
〔11〕 前記研磨層が有する貫通孔を第1貫通孔とするとき、前記研磨パッドは、前記第1貫通孔よりも小さい円相当径を有する第2貫通孔を有する他の層を更に含み、
前記他の層は、前記研磨層の研磨面とは反対側に位置しており、
前記研磨パッドを研磨表面側から厚さ方向に見た場合に、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とが少なくとも部分的に重なっており、
研磨パッドの研磨面側から研磨パッド厚さ方向に見た場合に、前記透光性部材が前記第1貫通孔内に存在するように前記透光性部材が配置されている、〔1〕~〔10〕のいずれか1項に記載の研磨パッド。
〔12〕 少なくとも一面が親水性樹脂でコーティングされている透光性部材と、研磨層とを用意する工程、
研磨層に貫通孔を設ける工程、及び
研磨パッドの研磨面側から研磨パッド厚さ方向に見た場合に、前記透光性部材が貫通孔内に存在するように前記透光性部材を配置する工程、ここで前記透光性部材のコーティング面が研磨面側になるように配置されている、
を含む、〔1〕~〔11〕のいずれか1項に記載の研磨パッドの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光透過率のバラツキを抑えることができる研磨パッドを提供することができる。これにより、研磨終点判定を高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一態様の研磨パッドの研磨面より厚さ方向に見た斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の一態様の研磨パッドの厚さ方向略断面(切断部端面)図である。
【
図3】
図3は、本発明の一態様の研磨パッドの厚さ方向略断面(切断部端面)図である。
【
図4】
図4は、本発明の一態様の研磨パッドの厚さ方向略断面(切断部端面)図である。
【
図5】
図5は、本発明の一態様の研磨パッドの厚さ方向略断面(切断部端面)図である。
【
図6】
図6は、本発明の一態様の研磨パッドの厚さ方向略断面(切断部端面)図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0013】
<<研磨パッド>>
本発明の研磨パッドは、前記研磨層は、被研磨物を研磨するための研磨面を備え、前記研磨パッドは前記研磨面からその反対面へと貫通している貫通孔を有しており、前記透光性部材は、研磨パッドの研磨面側から研磨パッド厚さ方向に見た場合に、貫通孔内に透光性部材が存在するように配置されており、且つ前記透光性部材の研磨面側の表面が、親水性樹脂でコーティングされている、前記研磨パッドである。
【0014】
本明細書及び特許請求の範囲において、研磨層とは、半導体デバイスなどの被研磨物を研磨する際に被研磨物と接触して研磨を行う表面(研磨面)を有する層である。被研磨物に特に制限はなく、例えば、複数のメモリダイまたはプロセッサダイを含む製品基板、試験基板、ベア基板、及びゲート基板などが挙げられる。基板は、集積回路製造の様々な段階のものとすることができ、たとえば、基板はベアウエハとすることができ、あるいは1つまたは複数の堆積層及び/又はパターン形成層とすることができる。
本明細書において、親水性樹脂でコーティングされた透光性部材の研磨面側の表面とは、透光性部材の研磨面側の表面にあるコーティング面を指す。
また、本明細書において、親水性樹脂でコーティングされた透光性部材の研磨面側の表面を、「透光性部材の表面」又は「透光性部材の研磨面側の表面」などと略記することがある。
また、本明細書において、親水性樹脂でコーティングされた透光性部材の最上部とは、研磨面を上面としその反対面を下面とした場合における、透光性部材4の研磨面側の表面にあるコーティング部9の上面を指す。
【0015】
<透光性部材>
本発明の研磨パッドは、透光性部材、即ち窓部材を有する。透光性部材を通して被研磨物に光を照射することにより、被研磨物が希望の表面特性や平面状態に到達した時点を検出することができる。光学的終点検出には、可視光(白色光)のレーザーやランプ等を用いる。
透光性部材は、研磨パッドの研磨面側から研磨パッド厚さ方向に見た場合に、貫通孔内に透光性部材が存在するように配置されている。ここで、「研磨パッドの研磨面側から研磨パッド厚さ方向に見た場合に、貫通孔内に透光性部材が存在するように配置されている」とは、研磨パッドの研磨面から厚さ方向に貫通孔内を見た場合に、透光性部材が確認できるように配置されていることを意図したものであり、(1)
図2~3のように透光性部材が研磨層に設けられた貫通孔の側面(側壁)に接する(又は接着する)ようにして配置されている場合や、(2)
図4のように研磨層の下層に研磨層の有する貫通孔の円相当径よりも小さい円相当径を有する貫通孔を有する他の層を設け、研磨層の貫通孔と他の層の貫通孔のサイズの差から生じる露出部7上に透光性部材を配置する場合や、(3)
図5のように透光性部材を研磨層と他の層との間に挟み込み、透光性部材の一部が貫通孔内に露出するように配置されている場合や、(4)
図6のように研磨層と他の層の両方に貫通孔を設け、そのいずれか又は両方の貫通孔の側面と接する(又は接着する)ようにして透光性部材が配置されている場合を含む概念である。これらの中でも、(1)、(2)又は(4)が好ましく、(1)又は(2)がより好ましく、(2)がさらにより好ましい。
【0016】
透光性部材としては、透明樹脂部材であることが好ましい。透明樹脂部材としては、光を透過させる程度の透明性を備えている限り特に制限はなく、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、及びアクリル樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース系樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ハロゲン系樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、ポリスチレン樹脂、及びオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)などの熱可塑性樹脂、ブタジエンゴムやイソプレンゴムなどのゴム、紫外線や電子線などの光により硬化する光硬化性樹脂、及び感光性樹脂などを用いることが出来る。これらの中でも、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂が好ましく、アクリル樹脂がより好ましい。
【0017】
<親水性樹脂によるコーティング>
透光性部材は、研磨面側の表面が、親水性樹脂でコーティングされていることが好ましい。透光性部材は、研磨面側の表面だけではなく、研磨面とは反対側の面(裏面)や側面も親水性樹脂でコーティングされていてもよいが、裏面や側面をもコーティングすることはコストの増加につながる一方で、裏面や側面の親水化は本発明の効果と関係がないため、研磨面側の表面のみが、親水性樹脂でコーティングされていることが好ましい。研磨面側の表面を親水性樹脂でコーティングすることにより、透光性部材の表面にスラリーが存在するか否かに起因する光透過率のバラツキを抑えることができる。これにより、より高精度な研磨終点の判定が可能となる。
【0018】
親水性樹脂は、平面にコーティングした場合に80度以下の水接触角を示す樹脂であることが好ましく、50度以下の水接触角を示す樹脂であることがより好ましい。
親水性樹脂としては、イオン結合性の親水基を有する樹脂であることが好ましい。イオン結合性の親水基を有する樹脂は、カチオンとアニオンからなるイオン結合性の親水基を含む樹脂である。カチオンとアニオンは有機カチオン又は有機アニオンであることが好ましく、有機カチオンと有機アニオンからなることがより好ましい。さらに、カチオン又はアニオンの一方が樹脂を構成する原子と共有結合していることが好ましい。樹脂を構成する原子と共有結合していることで、イオン結合性の親水基を含む樹脂からのイオン結合性の親水基の溶出を抑制し、研磨液の汚染を防止することができる。
イオン結合性の親水基を有する樹脂は、式:A+B-(A+はカチオンであり、B-はアニオンである。)で表されるイオン結合性の親水基を含む樹脂であることが好ましく、-A+B-又は-B-A+で表されるイオン結合性の親水基を含む樹脂であることがより好ましい。イオン結合性の親水基は、例えば、イオン性結合性の親水基を含むモノマー又はオリゴマーを、必要に応じて他のモノマーやオリゴマーなどとともに重合することにより樹脂中に付与してもよく、コーティング用のポリマーの側鎖とイオン結合性の親水基とを共有結合することにより樹脂中に付与してもよい。
これらの中でもイオン結合性の親水基を含む樹脂は、樹脂を構成する構成単位(モノマー)の一部又は全部がイオン性結合性の親水基を有することが好ましい。
樹脂を構成するモノマーがイオン性結合性の親水基を有する場合、(UV照射前の)当該モノマーは側鎖に不飽和二重結合を有する官能基を有することが好ましく、エチレン性不飽和結合を有する官能基(例えば、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等)を有することが好ましい。樹脂を構成するモノマーがその側鎖に不飽和二重結合を有することにより、当該樹脂はUV照射によって硬化することができる。
イオン結合性の親水基を含むモノマーは、合成してもよく、市販のものを用いてもよい。市販のイオン結合性の親水基を含むモノマーとしては、例えば、アミノイオン(日本乳化剤(株)製)等が挙げられる。
【0019】
イオン結合性の親水基を含む樹脂は、イオン結合性の親水基のカチオン部が樹脂を構成するモノマー(好ましくはモノマーの側鎖)と共有結合しており且つイオン結合性の親水基のアニオン部とイオン結合している(好ましくは、-A+B-の構造を側鎖末端に有する)ものであってもよく、或いはイオン結合性の親水基のアニオン部が樹脂を構成するモノマー(好ましくはモノマーの側鎖)と共有結合しており且つイオン結合性の親水基のカチオン部とイオン結合している(好ましくは、-B-A+の構造を側鎖末端に有する)ものであってもよい。好ましくは、イオン結合性の親水基を含む樹脂は、イオン結合性の親水基のカチオン部が樹脂を構成するモノマーと共有結合しており且つイオン結合性の親水基のアニオン部とイオン結合している。
イオン結合性の親水基を含む樹脂としては、イオン結合性の親水基を側鎖に有する樹脂であることが好ましい。
【0020】
イオン結合性の親水基の種類に特に制限はなく、例えば、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオンを含む親水基などが挙げられる。これらの中でも、好ましくはアンモニウムカチオンを含む親水基であり、-A+B-(A+はアンモニウムカチオンであり、B-はアニオンである。)がより好ましく、-NR3
+B-(Rは水素原子やアルキル基などの置換基を表す)がさらにより好ましい。
-A+B-のイオン結合性の親水基としては、-NR3
+X-で示す親水基が好ましい(式中、Rはそれぞれ独立して水素原子又は置換若しくは非置換のアルキル基を表し、X-はアニオンを表す)。
また、X-は特に限定はされないが、アルキルを有する硫酸アニオンやスルホン酸アニオン(例えば、アルキル硫酸イオン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸イオン、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸イオン、アルキルスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン等)を含むことが好ましい。これらのイオン構造は、親水性を有しながらも末端基が疎水性を有するため、樹脂から溶出しにくくなるものと推測される。
【0021】
イオン結合性の親水基を有するモノマーの例としては、例えば、特許第6209639号に示される下記のモノマー(構成単位)を挙げることができる。
(式中、R
b1は水素原子またはメチル基であり、R
b2は水素原子または置換もしくは非置換のC
1-6アルキル基であり、nbは1~6の整数であり、Y
b
-は下記式(2’)で表されるアニオンである。)
(式中、R’は置換もしくは非置換のC
12-14の直鎖状のアルキル基であり、A’はC
2-4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、mはA’Oの平均付加モル数であって2~50である。)
その具体例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系単量体と、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステルとの塩等を挙げることができる。
【0022】
親水性樹脂としては、イオン結合性の親水基を含む樹脂が好ましく、アンモニウムカチオンを含む親水基を有する樹脂がより好ましく、アンモニウムカチオンとアニオンからなる親水基(-NR3
+X-)を含む樹脂がさらにより好ましく、アンモニウムカチオンとアニオンからなる親水基を含むアクリル系樹脂がさらにより好ましい。また、アンモニウムカチオンとアニオンからなる親水基を含む光硬化性樹脂も好ましく、アンモニウムカチオンとアニオンからなる親水基を含む光硬化性アクリル系樹脂も好ましい。
イオン結合性の親水基を含む樹脂の例としては、アンモニウムカチオンを含む光硬化性ポリマーであるアクリット 8WX(変性アクリレートポリマー、大成ファインケミカル(株)製)などが挙げられる。
【0023】
親水性樹脂によるコーティングの方法に特に制限はなく、例えば、親水性樹脂によるコーティングは、親水性の光硬化型樹脂、好ましくはイオン結合性の親水基を含む光硬化型樹脂と光重合開始剤とを混合し、透光性部材の表面に塗布した後、紫外線などを照射して硬化させることにより行うことが出来る。このとき、親水性の光硬化性樹脂に加えて、バインダーとなる光硬化性樹脂を混合してもよい。
また、イオン結合性の親水基を含むモノマーを、必要に応じて他のモノマー(好ましくはアクリル系モノマー)とともに、常法により重合(溶液重合・光重合)することによっても行うことができる。溶液重合を用いる場合には、重合後の溶液を終点検出窓表面に塗布し、乾燥することでコーティングを得ることができる。光重合を用いる場合には、モノマー溶液を終点検出窓表面に塗布し、紫外線照射をすることでコーティングを得ることができる。
バインダーとなる光硬化型樹脂としては、特に制限はなく、従来から知られている光硬化型樹脂を用いることができる。例えば、1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物を挙げることができ、市販品としては、NKエステル(新中村化学工業(株)製)、アロニックス(東亞合成(株)製)、KAYARAD(日本化薬(株)製)、ファンクリル(日立化成(株)製)等を挙げることができる。光硬化型樹脂は、その硬化後に光が透過できる程度の透明性を有するものであることが好ましい。
光重合開始剤としては、紫外線や電子線などの照射により光硬化型樹脂を硬化させることが出来るものであれば特に制限はなく、従来から知られている光重合開始剤を用いることができる。例えば、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、アニオン重合開始剤等を挙げることができ、市販品としては、イルガキュア(IGM Resin B.V.製)等を挙げることができる。
【0024】
<透光性部材の配置>
本発明の研磨パッドは、研磨面を上面としその反対面を下面とした場合に、親水性樹脂でコーティングされた透光性部材の最上部が研磨面と同じ高さにあってもよく研磨面より低くてもよいが、研磨面よりも低いことが好ましい(
図2)。親水性樹脂でコーティングされた透光性部材の最上部が研磨面よりも低いことにより、研磨層よりも硬い透光性部材に起因する研磨傷の発生を防ぐことができる。また、透光性部材の最上部が研磨面よりも低いと、透光性部材と貫通孔の側面で囲まれた凹部にスラリーが入り込み、その多くは遠心力により貫通孔側面に移動し溝を介して排出されるため、少量のスラリーが透光性部材の表面に残っている場合と残っていない場合が生じやすくなる。しかしながら、従来の研磨パッドを用いた場合には、少量のスラリーが透光性部材の表面に残っている場合と残っていない場合とで光透過率に差が出るため、研磨終点を高精度に判定することが難しい。これに対し、本発明の研磨パッドは、透光性部材の研磨面側の表面を上記樹脂でコーティングすることでスラリーとの馴染みがよくなり、少量のスラリーが存在するような場合でも窓表面に均一に広がることで、研磨初期から終盤まで光透過率の変動が少なくなり、透光性部材の最上部が研磨面よりも低い位置にあっても、特に透光性部材の最上部4’が溝の最下部8’と同じ位置にあるかそれよりも低い位置にあっても、研磨終点を高精度に判定することができる。
【0025】
(水接触角)
本発明の研磨パッドは、親水性樹脂でコーティングされた透光性部材の研磨面側の表面の水接触角が50度以下であることが好ましく、30度以下であることがさらにより好ましく、20度以下であることがさらにより好ましく、5~20度であることがさらにより好ましい。水接触角が上記範囲内であると、透光性部材の表面にスラリーが存在するか否かに起因する光透過率のバラツキを抑えやすくなる。
透光性部材の裏面や側面の水接触角に特に制限はなく、裏面や側面の水接触角は50度超であってもよく、80度超であってもよい。すなわち、透光性部材の裏面や側面は、コーティング処理が施されていなくてもよい。従来の研磨パッドで使用されている窓部材は、一般に水接触角が80度超である。80度以下の親水性を持つ窓を用いた場合、スラリーによって窓が膨潤、変形し、研磨領域から剥がれ落ちたり、スラリー漏れを引き起こしたりする可能性がある。そのため、窓部材は水接触角が80度超の疎水性が好ましく、本発明ではその研磨面側の表面だけを水接触角が50度以下になるよう親水性樹脂でコーティングすることが好ましい。
【0026】
(透過率)
本発明の研磨パッドは、親水性樹脂でコーティングされた透光性部材の表面に水を付着させていないときの可視光線透過率(本明細書において、単に光透過率ということがある)と前記透光性部材の表面に水を付着させたときの可視光線透過率との差が、10%以内であることが好ましく、8%以内であることがより好ましく、6%以内であることがさらにより好ましく、5%以内であることがさらにより好ましい。光透過率の差が上記範囲内であることにより、前記樹脂でコーティングされた透光性部材の表面にスラリーがある場合とない場合との間で光透過率の差が生じにくくなり、研磨終点の判定を高精度に行うことが出来る。
本発明の研磨パッドは、親水性樹脂でコーティングされた透光性部材の表面に水を付着させたときの前記光透過率が、60%以上であることが好ましく、62%以上であることがより好ましく、65%以上であることがさらにより好ましく、70%以上がさらにより好ましく、75%以上であることがさらにより好ましく、80%以上であることがさらにより好ましい。
本発明の研磨パッドは、親水性樹脂でコーティングされた透光性部材の表面に水を付着させていないときの前記光透過率が、60%以上であることが好ましく、62%以上であることがより好ましく、65%以上であることがさらにより好ましく、70%以上がさらにより好ましく、75%以上であることがさらにより好ましく、80%以上であることがさらにより好ましく、85%以上であることがさらにより好ましい。
光透過率の測定は、分光光度計で波長300~1000nmの透過スペクトルを測定し、日本工業規格(JIS A5759:2008)の可視光線透過率(%)として求めることが出来る。すなわち、各波長380~780nmの範囲の各波長の透過率を測定し、CIE(国際照明委員会)昼光D65の分光分布、CIE明順応標準比視感度の波長分布及び波長間隔から得られる重価係数を各波長での透過率に乗じて加重平均することによって求められる透過率である。
また、親水性樹脂でコーティングされた透光性部材の表面に水を付着させたときの光透過率の測定は、スプレーにより十分量(例えば、9mm×50mmの大きさに切り出した透光性部材に対して、0.01~0.03mL程度)の水を透光性部材の研磨面側の表面全体に付着させた後、透光性部材を地面に対して垂直にして60秒間静置することで水切りを行った透光性部材を用いて行うことが出来る。
【0027】
(貫通孔)
貫通孔は、研磨パッドの研磨面側から研磨パッド厚さ方向に見た場合に、研磨面からその反対面へと貫通している孔である。貫通孔は、厚み方向に対して平行に又は研磨面に対して垂直に研磨層を貫通していることが好ましい。
貫通孔は研磨層中に1個設けられていてもよく、互いに離間し且つ独立している2個以上の貫通孔が設けられていてもよい。
研磨パッドの研磨面側から研磨パッド厚さ方向に見た場合の貫通孔の形状又は研磨面における貫通孔の形状としては、円形、楕円形、三角形、四角形、六角形、八角形等が挙げられる。或いは、同一又は異なる複数の上記形状が互いに部分的に重なり合った形状であってもよい。これらの中でも、研磨屑が溜りやすい隅部を形成しない円形が特に好ましい。
【0028】
(円相当径)
本明細書及び特許請求の範囲において、円相当径とは、測定対象の図形が有する面積に相当する、真円の直径のことである。
貫通孔の円相当径は、研磨パッドの研磨面側から研磨パッド厚さ方向に見たときの貫通孔の円相当径であり、研磨パッドの研磨面側から研磨パッド厚さ方向に見た時の貫通孔の形状が円形である場合は直径に相当する。
貫通孔の円相当径に特に制限はないが、5~40mmが好ましく、5~30mmがより好ましく、10~28mmがさらにより好ましい。
また、研磨面における貫通孔の面積は、研磨面の全面積に対して0.003~0.5%であることが好ましく、0.004~0.4%であることがより好ましく、0.005~0.3%であることがさらにより好ましい。
【0029】
(研磨層の構成)
研磨層を構成する樹脂としては、ポリウレタン、ポリウレタンポリウレア等のポリウレタン系樹脂;ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル等のアクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のビニル系樹脂;ポリサルホン、ポリエーテルサルホン等のポリサルホン系樹脂;アセチル化セルロース、ブチリル化セルロース等のアシル化セルロース系樹脂;ポリアミド系樹脂;及びポリスチレン系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、圧縮特性や柔軟性を考慮すれば、ポリウレタン樹脂がより好ましい。
研磨層は1種類の樹脂から構成されていてもよく、2種以上の樹脂から構成されていてもよい。
また、研磨層は連続気泡を有するものが好ましい。ここでいう連続気泡とは隣り合う気泡同士が互いに連通孔によりつながった空間を有する発泡を示す。具体的には湿式成膜法による樹脂や乾式成形、射出成形によるフォームでよい。好ましくは湿式成膜法によるもので、良好な屈伸運動が期待できる。
本明細書において、湿式成膜法による樹脂とは、湿式成膜法により成膜された樹脂(好ましくはポリウレタン樹脂)を意味する。湿式成膜法は、成膜する樹脂を有機溶媒に溶解させ、その樹脂溶液をシート状の基材に塗布後に凝固液中に通して樹脂を凝固させる方法である。湿式成膜された樹脂は、一般に、複数の涙形状(teardrop-shaped)気泡(異方性があり、研磨パッドの研磨面から底部に向けて径が大きい構造を有する形状)を有する。従って、湿式成膜された樹脂は、複数の涙形状気泡を有する樹脂と言い換えることもできる。複数の涙形状気泡は連続気泡の形態であることが好ましい。
本発明の研磨パッドを構成する研磨層は、湿式成膜法により成膜された樹脂シート(好ましくはポリウレタンシート)であることが好ましく、複数の涙形状気泡を含むポリウレタンシートであることがより好ましく、複数の涙形状気泡を含み且つ当該気泡の一部又は全部が連通孔によりつながった連続気泡を有するポリウレタンシートであることがさらにより好ましい。
【0030】
(溝)
本発明の研磨パッドは、研磨層の研磨面に溝が設けられていることが好ましい。溝は研磨層を貫通しておらず、貫通孔と区別することができる。
溝としては、研磨面にエンボス加工を施すことで得られるエンボス溝、切削工具により切削加工を施すことで得られる切削溝が挙げられる。これらの中でもエンボス溝が好ましい。エンボス溝などの溝を設けることにより、研磨面にバリが出にくく、仕上げ研磨に適した研磨パッドを得ることができる。
溝の深さは研磨層の厚みよりも小さい限り特に制限はないが、研磨層の厚みの50~90%であることが好ましく、60~80%であることがより好ましい。被研磨物の研磨により溝が消失すると研磨スラリーの流排出性が失われ研磨性能が低下するため研磨パッドは寿命となることから、溝深さは深いことが好ましい。他方、エンボス溝の溝深さを大きくするためには加工圧力を上げる、或いは加工温度を上げる必要があり、それにより研磨層裏面の基材(PET)が変形したり、研磨層表面が劣化したりする可能性がある。溝の深さが上記範囲内であると、これらの問題が生じにくい。
溝の断面形状は特に限定されず、円弧状であってもよく、U字状、V字状、矩形状、台形状及びその他の多角形状であってもよく、これら2種以上の形状の組み合わせであってもよい。また、溝の数や形状も特に制限はなく、研磨パッドの使用目的などに合わせて適宜溝数や形状を調整すればよい。形状としては、格子状、放射状、同心円状、ハニカム状などが挙げられ、それらを組み合わせてもよい。
また、本発明の研磨パッドは、研磨層の表面を研削(バフ処理)により開口していてもよく、スライスしていてもよい。
【0031】
本発明の研磨パッドは、研磨面を上面としその反対面を下面とした場合に、親水性樹脂でコーティングされた透光性部材の最上部4’(すなわち、コーティング部9の上面)が溝の最下部8’より高い位置にあっても、最下部8’と同じ位置にあっても、最下部8’より低い位置にあってもよいが、溝の最下部8’と同じ位置にあるかそれよりも低い位置にあることが好ましく、前記透光性部材の最上部4’が溝の最下部8’よりも低い位置にあることがより好ましい。研磨パッドは、一般に研磨面に設けられた溝がなくなるまで研磨するとその寿命を終えるが、前記透光性部材の最上部が溝の最下部と同じ位置にあるかそれよりも低いと、溝がなくなるまで研磨パッドを使用することができる。
また、従来の研磨パッドは、透光性部材の最上部4’を溝の最下部8’と同じ位置にあるかそれよりも低い位置にすると、スラリーや研磨屑が溝から排出されにくくなるため、経時的に光透過率が低下するという問題が生じ得る。これに対し、本発明の一態様の研磨パッド(
図4の研磨パッド)は、第1貫通孔内の凹部に入り込んだスラリーや研磨屑が研磨加工中の遠心力により第1貫通孔の側面に移動し、円相当径の小さい第2貫通孔からは見えにくくなるため、光透過率の低下を防ぐことが出来る。さらに、大部分のスラリーが凹部の側面に移動した後、少量のスラリーのみが透光性部材の表面に存在していたとしても、スラリーによる光透過率の低下が生じにくいため、安定した光検出が可能となる。
【0032】
(ショアA硬度)
本明細書において、ショアA硬度とは、日本工業規格(JIS K7311)に準じて測定した値を意味する。
本発明の研磨パッドは、研磨層のショアA硬度が、5~70度(°)であることが好ましく、8~65度であることがより好ましい。研磨層のショアA硬度が上記範囲内であると、研磨屑が被研磨物に過度に接触されることが抑制されるため、スクラッチが発生しにくくなる。
また、本発明の研磨パッドは、研磨層が透光性部材よりも軟質であることが好ましく、透光性部材よりもショアA硬度が低いことがより好ましい。
【0033】
(圧縮率及び圧縮弾性率)
本明細書において、圧縮率とは、軟らかさの指標であり、圧縮弾性率とは、圧縮変形に対する戻りやすさの指標である。
圧縮率及び圧縮弾性率は、日本工業規格(JIS L1021)に従い、ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を使用して求めることが出来る。具体的には、以下の通りである。
無荷重状態から初荷重を30秒間かけた後の厚さt0を測定し、次に、厚さt0の状態から最終荷重を5分間かけた後の厚さt1を測定する。次に、厚さt1の状態から全ての荷重を除き、5分間放置(無荷重状態とした)後、再び初荷重を30秒間かけた後の厚さt0’を測定する。
圧縮率は、圧縮率(%)=100×(t0-t1)/t0の式で算出することができる(なお、初荷重は100g/cm2、最終荷重は1120g/cm2である)。
圧縮弾性率は、圧縮弾性率(%)=100×(t0’-t1)/(t0-t1)の式で算出することが出来る(なお、初荷重は100g/cm2、最終荷重は1120g/cm2である)。
研磨層の圧縮率は、1~60%が好ましく、3~50%がより好ましい。研磨層の圧縮弾性率は、50~100%であることが好ましく、60~98%であることがより好ましい。圧縮率及び圧縮弾性率が上記範囲内であると、貫通孔上を被研磨物が通過する際に研磨層が圧縮され、また、被研磨物によって押し込まれた後の回復性に優れるため、研磨層の屈伸運動により貫通孔内部でスラリーの流れができ、貫通孔内にスラリーが留まることなく循環し、スラリーと共に貫通孔内に入った研磨屑が圧縮・回復の動作で貫通孔外に排出されやすくなる。これにより、貫通孔内に研磨屑が堆積することが防ぎやすくなる。
【0034】
(厚み)
厚みは、日本工業規格(JIS K6505)に従い、ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を使用して求めることが出来る。具体的には、以下の通りである。
縦、横10cm角の試料を準備する。試料の表面を上にして測定器に載せる。荷重100g/cm2をかけた加圧面を試料上に下し、5秒後の厚さを測定する。1枚につき5ヶ所測定しその平均値を厚さとする。なお、10cm角の試料が取れない場合は5ヶ所の平均とする。
研磨層の厚みに特に制限はないが、0.5~2mmであることが好ましく、0.75~1.55mmがさらにより好ましい。
【0035】
(研磨層以外の層)
本発明の研磨パッドは、研磨層以外の層(他の層)を有していてもよい。他の層は、研磨層の研磨面とは反対側の面に1層または2層以上存在してもよい。他の層は、研磨層と同様に貫通孔を有する。
また、研磨層の貫通孔と他の層の貫通孔の形状は、同じであってもよく、異なっていてもよいが、研磨パッドを研磨面側から厚さ方向に見た場合に、研磨層の貫通孔と他の層の貫通孔とが少なくとも部分的に重なっていることが好ましい。これにより、透光性部材に光を照射した場合に光が透光性部材を透過する。
【0036】
本発明の1態様として、研磨パッドが他の層を有する場合、研磨層に存在する貫通孔(第1貫通孔)よりも小さい円相当径を有する貫通孔(第2貫通孔)を有する他の層を有していてもよい(
図4)。他の層は、研磨層の研磨面とは反対側に位置する層である。
この態様の研磨パッドは、研磨面側から厚さ方向に見た場合に、第1貫通孔と第2貫通孔とが少なくとも部分的に重なっていることが好ましい。また、研磨パッドの研磨面側から研磨パッド厚さ方向に見た場合に、透光性部材が第1貫通孔内に存在するように前記透光性部材が配置されていることが好ましい。
【0037】
この態様の研磨パッドは、研磨パッドの研磨面側から厚さ方向に見た場合に、第1貫通孔5の外周部が第2貫通孔6の外周部の一部又は全部を覆うようにして設けられていることが好ましく、第1貫通孔5の外周部が第2貫通孔6の外周部の全部を覆うようにして設けられていることがより好ましく、第1貫通孔5及び第2貫通孔6がともに円柱形状であり、第1貫通孔5の円柱中心軸と第2貫通孔6の円柱中心軸とが一致することがさらにより好ましい(
図4参照)。
【0038】
ここで、研磨面側から厚さ方向に見た場合に、第1貫通孔と第2貫通孔が少なくとも部分的に重なっているとは、研磨面側から厚さ方向に見た場合に、第1貫通孔の開孔位置と第2貫通孔の開孔位置とが少なくとも部分的に一致していることをいう。この態様の研磨パッドは、厚さ方向に見た場合に、第1貫通孔の開孔位置と第2貫通孔の開孔位置とが少なくとも部分的に一致しているため、第1貫通孔と第2貫通孔とが研磨パッドの厚さ方向につながっている。研磨面側から厚さ方向に見た場合に第1貫通孔と第2貫通孔の位置が少なくとも部分的に重なっていることにより、第1貫通孔内に設けられた透光性部材を介して第2貫通孔側から第1貫通孔側へと光を透過させることができ、研磨加工中の被研磨物の表面状態を光学的に検知することができる。
【0039】
この態様の研磨パッドは、研磨パッドの研磨面側から研磨パッド厚さ方向に見た場合に、透光性部材4が第1貫通孔5内に存在するように前記透光性部材が配置されていることが好ましい。また、透光性部材4は第1貫通孔5内に設けられていることが好ましい。
ここで、研磨パッドの研磨面側から研磨パッド厚さ方向に見た場合に、透光性部材が第1貫通孔内に存在するように前記透光性部材が配置されているとは、研磨パッドの研磨面側から研磨パッド厚さ方向に第1貫通孔内を見た場合に、透光性部材が確認できることをいう。
また、第1貫通孔5は、研磨パッド1を研磨面側から厚さ方向に見た場合に、他の層3の一部(以下、他の層の露出部7という)と第2貫通孔6の少なくとも一部とが露出されるように配置されることが好ましい。これにより、透光性部材4を、第1貫通孔5内であって且つ他の層3の第2貫通孔6及び露出部7上に配することができる。好ましくは、第1貫通孔5は、第1貫通孔5を研磨面側から見た場合に、他の層3の一部と第2貫通孔6の全てとが露出されるように配置される。また、透光性部材4は、第1貫通孔内5に設けられ、且つ他の層3の露出部7と接着されていることが好ましい。
図4を参照すると、本発明の研磨パッド1の厚さ方向断面において、第1貫通孔5は、第2貫通孔6と露出部7上にある研磨層2に設けられている。なお、露出部7を備える他の層3と研磨層2との間に更なる他の層を有していてもよく、この場合、更なる他の層に存在する貫通孔は研磨層2の貫通孔(第1貫通孔)と同一の断面形状(研磨面と水平方向の断面形状)を有し、研磨面から厚さ方向に見た場合に第1貫通孔5と完全に重なっていることが好ましい。透光性部材4は、第2貫通孔6と露出部7上であって且つ研磨層2の第1貫通孔5と更なる他の層の貫通孔の内部に配置されていることが好ましい。
【0040】
第2貫通孔は他の層中に1個設けられていてもよく、互いに離間し且つ独立している2個以上の貫通孔が設けられていてもよい。第1貫通孔の個数と第2貫通孔の個数は等しいことが好ましい。複数の第1貫通孔と複数の第2貫通孔が設けられている場合、各第1貫通孔は、他の層に設けられた各第2貫通孔とその露出部上に設けられていることが好ましい。
【0041】
第2貫通孔は、厚み方向に対して平行に又は研磨面に対して垂直に他の層を貫通していることが好ましい。
本発明の研磨パッドは、厚さ方向に対して垂直に切断した場合の第1貫通孔の断面形状と第2貫通孔の断面形状とが同じ形状を有していても異なる形状を有していてもよいが、同じ形状を有することが好ましい。
研磨パッドの研磨面側から研磨パッド厚さ方向に見た場合の第2貫通孔の形状、研磨パッドの厚さ方向に対して垂直に切断した場合の第2貫通孔の断面形状、及び/又は他の層表面における第2貫通孔の形状としては、円形、楕円形、三角形、四角形、六角形、八角形やこれらの形状が複合された形状等が挙げられる。或いは、同一又は異なる複数の上記形状が互いに部分的に重なり合った形状であってもよい。これらの中でも、円形が特に好ましい。
【0042】
(円相当径)
本明細書及び特許請求の範囲において、第2貫通孔の円相当径は、研磨パッドの研磨面側から研磨パッド厚さ方向に見たときの第2貫通孔の円相当径であり、研磨パッドの研磨面側から研磨パッド厚さ方向に見た時の第2貫通孔の形状が円形である場合は直径に相当する。
第1貫通孔の円相当径は第2貫通孔の円相当径より大きいことが好ましい。第1貫通孔の円相当径が第2貫通孔の円相当径より大きい限り第2貫通孔の円相当径に特に制限はないが、第2貫通孔の円相当径は1~20mmが好ましく、2~18mmがより好ましく、5~15mmがさらにより好ましい。また、第1貫通孔の円相当径と第2貫通孔の円相当径との差に特に制限はないが、第1貫通孔の円相当径が第2貫通孔の円相当径より5~30mm大きいことが好ましく、6~25mm大きいことがより好ましく、7~20mm大きいことがさらにより好ましい。
また、研磨パッドの研磨面側から厚さ方向に見た場合に、第1貫通孔の外周部が第2貫通孔の外周部の全部を覆うようにして設けられており、且つ第1貫通孔の円相当径が第2貫通孔の円相当径よりも5~30mm大きいことが好ましく、6~25mm大きいことがより好ましく、7~20mm大きいことがさらにより好ましく、8~20mm大きいことがさらにより好ましく、9~20mm大きいことがさらにより好ましく、10~20mm大きいことがさらにより好ましい。
また、研磨パッドの研磨面側から厚さ方向に見た場合に、第1貫通孔の外周部が第2貫通孔の外周部の全部を覆うようにして設けられており、且つ第1貫通孔の円相当径が、第2貫通孔の円相当径の1.5~4倍であることが好ましく、2~4倍であることがより好ましく、2.5~3倍であることがさらにより好ましい。
【0043】
また、研磨パッドの研磨面側から研磨パッド厚さ方向に見たときに、第2貫通孔の外周部と第1貫通孔の外周部との最短距離(すなわち、第2貫通孔の外周部の任意の点と第1貫通孔の外周部の任意の点との間の最短距離)が0より大きいことが好ましく、最短距離が2~15mmであることがより好ましく、最短距離が3~12mmであることがさらにより好ましく、最短距離が4~10mmであることがさらに好ましい。
第1貫通孔と第2貫通孔との大きさの違いが上記範囲内であると、第1貫通孔内の凹部に入り込んだスラリーや研磨屑は研磨加工中の遠心力により第1貫通孔の外周側に移動し、円相当径の小さい第2貫通孔からは見えにくくなるため、透光性部材に光を照射した際に研磨屑による光路の塞ぎを防ぐことが出来る。従って、優れた光透過率を維持することができ、研磨中に安定した終点検出の信号強度を得ることができる。また、露出部の面積が十分に広いため、透光性部材と他の層との接着強度を保つことができ、透光性部材の剥離を防止できる。
また、大部分のスラリーが凹部の側面に移動し、少量のスラリーのみが透光性部材の表面に存在していたとしても、本発明の研磨パッドはスラリーの有無による光透過率のバラツキが生じにくいため、安定した光検出が可能となる。
【0044】
また、他の態様として、本発明の研磨パッドが他の層を含む場合、シート状の透光性部材を研磨層と他の層との間に挟み込み、透光性部材の一部が貫通孔内に露出するように配置されていてもよい(
図5)。このとき、研磨面側から厚さ方向に見た場合に、他の層に存在する貫通孔(第2貫通孔)と研磨層に存在する貫通孔(第1貫通孔)とが少なくとも部分的に重なっていることが好ましく、完全に重なっていることがより好ましい。このとき、研磨層は、連通孔を持つ連続気泡を有することが好ましい。
研磨層が連通孔を持つ連続気泡を有すると、研磨層に設けた第1貫通孔の側面にも連続気泡が開くため、その一部が研磨表面又は溝領域まで連通する。これにより、研磨中に第1貫通孔内に入り込んだスラリーや研磨屑が、研磨加工時に発生する遠心力により第1貫通孔側面に移動し、連通孔を持つ連続気泡を通って研磨面や溝領域へと排出されるため、研磨屑が第1貫通孔内に蓄積することによる経時的な光透過率の低下を防ぐことができ、研磨パッドの長寿命化につながる。
【0045】
また、他の態様として、本発明の研磨パッドが他の層を含む場合、研磨層とその下層に設けた他の層の両方に貫通孔を設け、そのいずれか又は両方の貫通孔の側面(好ましくは他の層の側面)と接する(又は接着する)ようにして透光性部材を配置してもよい(
図6)。このとき、研磨面側から厚さ方向に見た場合に、他の層に存在する貫通孔(第2貫通孔)と研磨層に存在する貫通孔(第1貫通孔)とが少なくとも部分的に重なっていることが好ましく、完全に重なっていることがより好ましい。透光性部材は、第2貫通孔の側面に接着されていることが好ましい。また、透光性部材は、第1貫通孔内には存在しないことが好ましい。
透光性部材が他の層の第2貫通孔の側面に接着されていることにより、研磨に利用可能な研磨層の厚みが最大となり、ドレッシングや研磨中の摩耗により研磨面が削られても透光性部材が研磨面に突出することがなく、スクラッチの発生を低減することができる。一般に、研磨パッドの研磨層が軟質であればあるほど、研磨パッドがウエハに押し付けられることにより研磨パッドが沈み込み、透光性部材が突出してしまうリスクがあり、突出が生じた研磨パッドは被研磨物の研磨に用いることができなくなる。この態様の研磨パッドは、透光性部材の突出を防ぐことができるため、研磨パッドの長寿命化を図ることができる。また、透光性部材を研磨層に接合させず、第2貫通孔の側面に接着するように配置させると、第1貫通孔に入った研磨屑が溝や研磨表面に排出されやすくなるよう研磨層に伸縮機構を持たせたとしても、透光性部材の接着部で歪みが発生しにくく、これにより透光性部材の剥離を抑制することができる。
【0046】
(他の層の構成)
他の層を構成する材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系シート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系シート、塩化ビニル系シート、酢酸ビニル系シート、ポリイミド系シート、ポリアミド系シート、フッ素樹脂系シートや樹脂含浸不織布、不織布や織布等が挙げられる。また、他の層は、スラリーが内部に浸透しない非多孔質なシートであることが好ましい。これら中でも、スラリーが内部に浸透しない非多孔質なシートであって、物理的特性(例えば、寸法安定性、厚み精度、加工性、引張強度)、経済性等の観点から、他の層はポリエステル系シートがより好ましく、そのなかでもポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する。)製シートが特に好ましい。
他の層と研磨層とを貼り合わせる方法又は他の層と別の他の層とを貼り合わせる方法としては、例えば、片面又は両面に粘着剤を塗着したPETシート等のシートを他の層として用い、この粘着剤を介して他の層と研磨層又は別の他の層とを接着させることができる。粘着剤を塗着していないPETシート等のシートを他の層として用意し、これとは別に研磨層又は別の他の層と粘着剤とを用意して、粘着剤を介して他の層と研磨層又は別の他の層とを接着させることもできる。
【0047】
(利点)
本発明の研磨パッドは、親水性樹脂、好ましくはイオン結合性の親水基を含む樹脂で透光性部材の研磨面側の表面をコーティングすることにより、透光性部材の研磨面側の表面でのスラリーの有無によって光透過率がほとんど変わらない。これにより、研磨終点を高精度に判定することができる。
また、本発明の研磨パッドは、研磨面を上面としその反対面を下面とした場合に、樹脂でコーティングされた透光性部材の研磨面側の表面が研磨面と同じ高さにあっても、研磨面よりも低い位置にあってもその効果を発揮するが、特に透光性部材の研磨面側の表面が研磨面よりも低い位置にある場合にその効果をよりよく発揮する。すなわち、透光性部材の研磨面側の表面が研磨面よりも低い位置にある場合には、樹脂でコーティングされた透光性部材の表面と貫通孔の側面とで囲まれた凹部(例えば、円柱状の凹部)が存在し、ここにスラリーが入り込む。凹部内に入り込んだスラリーの多くは、遠心力の影響を受けて側面に移動しエンボス溝を介して排出されるため、経時的に透光性部材表面のレーザー光が透過する領域にスラリーが存在するタイミング(凹部内にスラリーが多く流入したタイミングや排出しきれなかったタイミング等)と存在しないタイミングが生じ得る。透光性部材表面の撥水性が高い場合、窓表面上でスラリーは馴染むことなく水滴状あるいは筋状に付着しているため、レーザー光が透過する領域にスラリーが存在しないときの平行光線透過率に対し、スラリーが存在するときの平行光線透過率は水滴状のスラリーによる光の散乱のために大幅に低下し、研磨加工時の光透過率にバラツキが生じやすい。本発明の研磨パッドは、透光性部材の研磨面側の表面を親水性樹脂、好ましくはイオン結合性の親水基を含む樹脂でコーティングすることにより、スラリーを水滴状にせず窓表面に濡れ広がらせることができるため、光の散乱を抑制し、スラリーが付着している場合と付着していない場合とで光透過率の変動を小さくすることができ、これにより研磨加工時の光透過率のバラツキを抑えることができる。
本発明の研磨パッドは、例えば、下記の方法により製造することができる。
【0048】
<<研磨パッドの製造方法>>
本発明の製造方法は、少なくとも一面が親水性樹脂でコーティングされている透光性部材と、研磨層とを用意する工程、研磨層に貫通孔を設ける工程、及び研磨パッドの研磨面側から研磨パッド厚さ方向に見た場合に、前記透光性部材が貫通孔内に存在するように前記透光性部材を配置する工程(ここで前記透光性部材のコーティング面が研磨面側になるように配置されている)を含む、研磨パッドの製造方法である。
各工程について説明する。
【0049】
<1.少なくとも一面が親水性樹脂でコーティングされている透光性部材と、研磨層とを用意する工程>
本工程において、少なくとも一面が親水性樹脂でコーティングされている透光性部材と、研磨層とを用意する。
研磨層、透光性部材及び親水性樹脂としては、それぞれ上記のものを用いることが出来る。研磨層及び透光性部材は、それぞれ市販のものを用いてもよく、製造したものを用いてもよい。市販の透光性部材としては、ポリエステル樹脂からなる三菱ケミカル株式会社製「ダイアホイルT910E」、「ダイアホイルT600E」、東洋紡株式会社製「コスモシャインA4300」、「コスモシャインA2330」、「コスモシャインTA017」、「コスモシャインTA015」、「コスモシャインTA042」、「コスモシャインTA044」、「コスモシャインTA048」、「ソフトシャインTA009」、ポリメチルメタクリレート樹脂からなる三菱ケミカル株式会社製「アクリプレンHBXN47」、「アクリプレンHBS010」、帝人化成株式会社製「パンライトフィルムPC-2151」、株式会社カネカ製「サンデュレンSD009」、「サンデュレンSD010」、ポリカーボネート樹脂からなる住友化学株式会社製「C000」、帝人化成株式会社製「ユーピロンH-3000」、アクリル樹脂/ポリカーボネート樹脂からなる住友化学株式会社製「C001」、アクリル樹脂からなる住友化学株式会社製「S000」、「S001G」、「S014G」、三菱ケミカル株式会社製「アクリプレンHBS006」、脂環式ポリオレフィン樹脂からなる日本ゼオン株式会社製「ゼオノアZF14」、「ゼオノアZF16」、JSR株式会社製「アートンフィルム」等を市販品として入手することができる。研磨層を製造する場合は、例えば、特許第5421635号、特許第5844189号を参照してポリウレタン樹脂を湿式成膜し、PET樹脂からなる可撓性シートと貼り合わせることで製造することができる。
【0050】
本発明の製造方法は、透光性部材の少なくとも一面(好ましくは研磨面側の表面のみ)を、親水性樹脂でコーティングする工程を更に有していてもよい。
透光性部材の少なくとも一面を親水性樹脂でコーティングする方法に特に制限はなく、例えば重合反応や光硬化反応などを利用して前記樹脂を透光性部材の表面にコーティングすることが出来る。
光硬化反応を利用する場合には、親水性樹脂を光硬化型樹脂及び光重合開始剤と混合し、透光性部材の表面に塗布した後、紫外線などを照射して硬化させればよい。光硬化型樹脂及び光重合開始剤としては、上記のものを挙げることができる。
【0051】
<2.研磨層に貫通孔を設ける工程>
本工程において、研磨層に貫通孔を設ける。貫通孔は、研磨層の研磨面からその反対面へと貫通している孔である。研磨層に貫通孔を設ける方法としては、例えば、円形、楕円形、多角形等の抜型(好ましくは円形の抜型)を用いて研磨層の厚さ方向に穴を開けることにより貫通孔を設けることができる。抜型を用いることにより、研磨パッドの研磨層を厚さ方向に対して垂直に切断して得られる任意の研磨層断面における貫通孔の円相当径が、他の任意の研磨層断面における貫通孔の円相当径と同一とすることができる。
【0052】
<3.研磨パッドの研磨面側から研磨パッド厚さ方向に見た場合に、透光性部材が貫通孔内に存在するように透光性部材を配置する工程>
本工程において、研磨パッドの研磨面側から研磨パッド厚さ方向に見た場合に、透光性部材が貫通孔内に存在するように透光性部材を配置する。このとき、透光性部材のコーティング面が研磨面側になるように配置される。
透光性部材が貫通孔内に存在するように透光性部材を配置する方法としては、例えば、(1)
図2~3のように透光性部材を研磨層に設けられた貫通孔の側面に接する(又は接着する)ようにして、透光性部材を配置する方法や、(2)
図4のように研磨層の下層により小さい円相当径の貫通孔を有する他の層を設け、研磨層の貫通孔と他の層の貫通孔のサイズの差から生じる露出部上に透光性部材を配置することにより、透光性部材が貫通孔内に見えるように透光性部材を配置する方法や、(3)
図5のように透光性部材を研磨層と他の層との間に挟み込み、透光性部材の一部分を貫通孔内に露出させる方法や、(4)
図6のように研磨層とその下層に設けた他の層の両方に同じ形状の貫通孔を設け、そのいずれか又は両方の貫通孔の側面と接する(又は接着する)ようにして透光性部材を配置する方法などが挙げられる。これらの中でも、(1)、(2)又は(4)が好ましく、(1)又は(2)がより好ましく、(2)がさらにより好ましい。
【0053】
本発明の製造方法は、研磨層以外の層を用意する工程を有してもよく、研磨層以外の層(他の層)と研磨層とを貼り合わせる工程を有していてもよい。他の層は、研磨層の貫通孔と同じ又は異なる貫通孔を有する。他の層における貫通孔は、他の層を研磨層と貼り合わせる前に設けてもよく、研磨層と貼り合わせた後に設けてもよい。他の層及び貫通孔としては、上記と同様のものが挙げられる。
また、本発明の製造方法は、研磨層が備える貫通孔(第1貫通孔)よりも小さい円相当径を有する第2貫通孔を他の層に設ける工程を有していてもよい。
【0054】
本発明の研磨パッドを使用するときは、研磨パッドを研磨層の研磨面が被研磨物と向き合うようにして研磨機の研磨定盤に取り付ける。そして、スラリーを供給しつつ、研磨定盤を回転させて、被研磨物の加工表面を研磨する。
本発明の研磨パッドにより加工される被研磨物としては、ベアシリコン、半導体デバイスが挙げられる。中でも、本発明の研磨パッドは、半導体デバイスの研磨、特に仕上げ研磨に適しており好ましい。
スラリーとしては、水を含むスラリー(水性スラリー)であれば特に制限なく用いることが出来る。例えば、コロイダルシリカスラリー、酸化セリウムスラリーなどが挙げられる。
【0055】
本発明の研磨パッドを用いて、例えば、CMP研磨工程中に光ビームを貫通孔内の透光性部材を通して研磨パッド越しにウエハに照射し、その反射によって発生する干渉信号をモニターすることにより、被研磨物を研磨しつつ、半導体ウエハ等の被研磨物の表面特性や平面状態に到達した時点を光学的に検知することができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0057】
[実施例1]
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(新中村化学工業(株)製、NKエステルA-DPH)90重量部、イオン結合性の親水基(アンモニウムカチオンを含む基)を有するアクリレートポリマー(大成ファインケミカル(株)製 アクリット 8WX-030(40%溶液))25重量部(すなわち、DPHAと8WX-030の固形分の合計に対して10質量%の8WX-030)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IGM Resin B.V.製、イルガキュア184)3重量部を配合し、不揮発分が30%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈し、塗工液を調製した(※8WXを10%添加)。得られた塗工液を、アクリル樹脂シート(三菱ケミカル(株)製、アクリプレンHBS006、厚み150μm)にバーコーターで塗工し、80℃で1分間の予備乾燥を行った。次に、空気下で高圧水銀灯を用いて紫外線照射を行い、アクリル樹脂シート上に膜厚5μmの塗膜を作製した。得られた塗膜付きのアクリル樹脂シートを終点検出窓として用いた。
【0058】
[比較例1]
市販のアクリル樹脂シート(三菱ケミカル(株)製、アクリプレンHBS006、厚み150μm)を終点検出窓として用いた。
【0059】
[実施例2]
DPHA 50質量部、8WX-030 125質量部(すなわち、DPHAと8WX-030の固形分の合計に対して50質量%の8WX-030)に変更した以外、実施例1と同様にして塗膜付きのアクリル樹脂シートを作製し、終点検出窓として用いた。
【0060】
[実施例3]
DPHA 30質量部、8WX-030 175質量部(すなわち、DPHAと8WX-030の固形分の合計に対して70質量%の8WX-030)に変更した以外、実施例1と同様にして塗膜付きのアクリル樹脂シートを作製し、終点検出窓として用いた。
【0061】
[実施例4]
DPHA 100質量部、8WX-030 0質量部(すなわち、DPHAと8WX-030の固形分の合計に対して0質量%の8WX-030)に変更した以外、実施例1と同様にして塗膜付きのアクリル樹脂シートを作製し、終点検出窓として用いた。
【0062】
<水接触角測定>
接触角計(協和界面科学(株)製、DropMaster500)を用い、注射針から水滴1滴(2μL)を滴下し、3秒後の接触角を測定した。
【0063】
上記の方法で表面の水接触角を測定し、水接触角が20度以下のものを◎、20度より大きく50度以下のものを〇、50度より大きく80度以下であるものを△、80度より大きいものを×と評価した。その結果を、表1に示す。
【0064】
<光透過率測定>
実施例1~4及び比較例1の透光性部材の可視光線透過率を、紫外可視近赤外分光光度計V-770(日本分光(株)製)を用いて以下の方法で測定した。
1.水が付着している場合の測定
(1)石英ガラスセルを入れてブランクを測定する。
(2)実施例1~4、比較例1の透光性部材を9mm×50mmの大きさに切り出す。
(3)透光性部材を紙ウエス(キムタオル、日本製紙クレシア(株)製)上に置き、20cm離れた位置から透光性部材の表面(実施例1~4についてはコーティング処理した表面のみ、比較例1については一面のみ)にスプレー(容量50mL、PP製ボトル)にて精製水を3回噴霧する(1回あたりの散布量:0.160~0.165mL、透光性部材表面への水付着量:0.01~0.03mL)。噴霧後、透光性部材を垂直状態にして60秒間静置した。水を噴霧していない表面と石英ガラスセル内面とが触れるようにして石英ガラスセル内に透光性部材を設置する。
(3)石英ガラスセルの内壁に、透光性部材の塗膜が付いた面が光源と反対面になる向きで、透光性部材を石英セルの光源側に全面接触させるように配置する。
(4)紫外可視近赤外分光光度計V-770(日本分光(株)製)を用い、250~1000nmの光に対する直進透過率を測定する。
(5)JIS A5759:2008に基づき380~780nmの波長に対する可視光線透過率を算出する。
【0065】
2.水が付着していない場合の測定
(1)石英ガラスセルを入れてブランクを測定する。
(2)実施例1~4、比較例1の透光性部材を9mm×50mmの大きさに切り出す。
(3)石英ガラスセルの内壁に、透光性部材の塗膜が付いた面が光源と反対面になる向きで、透光性部材を石英セルの光源側に全面接触させるように配置する。
(4)紫外可視近赤外分光光度計V-770(日本分光(株)製)を用い、250~1000nmの光に対する直進透過率を測定する。
(5)JIS A5759:2008に基づき380~780nmの波長に対する可視光線透過率を算出する。
【0066】
以上の方法により、実施例1~4及び比較例1の透光性部材について、表面に水が付着している場合の可視光線透過率と水が付着していない場合の可視光線透過率の差(水付着無しの可視光線透過率-水付着ありの可視光線透過率)を求め、光透過率の差が5%以下のものを◎、5%より大きく10%以下のものを〇、10%より大きく15%以下であるものを△、15%より大きいものを×と評価した。その結果を、表1に示す。
【0067】
【0068】
試験の結果、研磨面側の表面をコーティング処理していない比較例1では、表面に水がある場合と水がない場合との間で可視光線透過率に大きな差が生じていた。これに対し、研磨面側の表面を親水性樹脂でコーティングした実施例1~4では、比較例1に比べて表面に水がある場合と水がない場合の光透過率の差が低減した。さらに、実施例1~3の透光性部材は、研磨面側の表面をイオン結合性の親水基を有する樹脂でコーティングしたため、表面に水がある場合と水がない場合との間で可視光線透過率にほとんど差が生じなかった。従って、実施例1~4、特に実施例1~3の透光性部材を含む研磨パッドは、スラリーが表面に存在する場合と存在しない場合とで可視光線透過率にバラツキが生じず、研磨終点の判定をより高精度に行うことができる。
【0069】
<製造例1>
100%モジュラス7.8MPaのポリエステル系ポリウレタン樹脂(30質量部)及びDMF(70質量部)を含む溶液100質量部に、別途DMF60質量部、水5質量部を添加し、混合することにより樹脂含有溶液を得た。
得られた樹脂含有溶液を、濾過することにより、不溶成分を除去した。前記溶液をポリエステルフィルム上にナイフコータを用いて塗布厚みが0.8mmとなるようキャストした。その後、樹脂含有溶液をキャストしたポリエステルフィルムを凝固浴(凝固液は水)に浸漬し、前記樹脂含有溶液を凝固させた後、ポリエステルフィルムを剥離し洗浄・乾燥させて、内部に涙型形状の複数の気泡を有し且つ当該複数の気泡が互いに繋がり合って連通しているポリウレタン樹脂フィルムを得た。得られたポリウレタン樹脂フィルムの表面をバフ処理し厚みを0.73mmとしたのち、バフ処理面と反対面側に厚み0.188μmのPET製の樹脂基材を接着剤で貼り合わせ、ポリウレタン樹脂フィルムの表面側からエンボス加工を施し、表面に溝幅を1mm、溝間隔を4mm、溝深さを0.45mmとした断面矩形状で格子パターンの溝を設けた。溝処理面側の研磨パッドの中心となる位置から研磨パッドの半径の1/2となる位置の同心円上に、直径18mmの円形抜型で等間隔に3か所穴を開け、第1貫通孔を設けた。樹脂基材のポリウレタン樹脂フィルムが貼り合わされていない面側に片側に離型紙を有する両面テープを接着し、直径18mmの第1貫通孔に直径9mmの円形抜型を嵌め込み、両面テープと離型紙を貫通させるよう第2貫通孔を開けた。この時、第1貫通孔の中心と第2貫通孔の中心が略同一となるよう穴あけを行った。透光性部材として、実施例1の塗膜付きアクリル樹脂シートを用意し、直径17mmとなるよう3枚切り出し、第1貫通孔内にリング状に露出した両面テープと透光性部材を、透光性部材の塗膜が付いた側が研磨面側になるように接着させ研磨パッドを製造した。
【0070】
<製造例2>
100%モジュラス7.8MPaのポリエステル系ポリウレタン樹脂(30質量部)及びDMF(70質量部)を含む溶液100質量部に、別途DMF60質量部、水5質量部を添加し、混合することにより樹脂含有溶液を得た。
得られた樹脂含有溶液を、濾過することにより、不溶成分を除去した。前記溶液をポリエステルフィルム上にナイフコータを用いて塗布厚みが0.8mmとなるようキャストした。その後、樹脂含有溶液をキャストしたポリエステルフィルムを凝固浴(凝固液は水)に浸漬し、前記樹脂含有溶液を凝固させた後、ポリエステルフィルムを剥離し洗浄・乾燥させて、内部に涙型形状の複数の気泡を有し且つ当該複数の気泡が互いに繋がり合って連通しているポリウレタン樹脂フィルムを得た。得られたポリウレタン樹脂フィルムの表面をバフ処理し厚みを0.73mmとしたのち、バフ処理面と反対面側に厚み0.188μmのPET製の樹脂基材を接着剤で貼り合わせ、ポリウレタン樹脂フィルムの表面側からエンボス加工を施し、表面に溝幅を1mm、溝間隔を4mm、溝深さを0.45mmとした断面矩形状で格子パターンの溝を設けた。樹脂基材のポリウレタン樹脂フィルムが貼り合わされていない面側に、片側に離型紙を有する厚さ約0.1mmの両面テープ(PET基材厚み0.023mm、PET基材の表面及び裏面における粘着性成分厚みは共に0.04mm)を接着した。溝処理面側の研磨パッドの中心となる位置から研磨パッドの半径の1/2となる位置の同心円上に、両面テープの離型紙まで貫通させるよう、直径20mmの円形抜型で等間隔に3か所穴を開け、第1貫通孔を設けた。両面テープの離型紙を剥がし、透光性部材として、実施例1の塗膜付きアクリル樹脂シートを用意し、両面テープの粘着部と透光性部材の塗膜が付いた面側とを貼り合わせた。他の層として片面に離型紙を有する厚さ約0.1mmの両面テープ(PET基材厚み0.023mm、PET基材の表面及び裏面における粘着性成分厚みは共に0.04mm)を用意し、厚さ方向に見た場合に第1貫通孔と重なる位置に3か所穴を開けることで第2貫通孔を設け、アクリル樹脂フィルム透光性部材の塗膜が付いていない面側に接着させることで研磨パッドを製造した。
【0071】
<製造例3>
100%モジュラス7.8MPaのポリエステル系ポリウレタン樹脂(30質量部)及びDMF(70質量部)を含む溶液100質量部に、別途DMF60質量部、水5質量部を添加し、混合することにより樹脂含有溶液を得た。
得られた樹脂含有溶液を、濾過することにより、不溶成分を除去した。前記溶液をポリエステルフィルム上にナイフコータを用いて塗布厚みが0.8mmとなるようキャストした。その後、樹脂含有溶液をキャストしたポリエステルフィルムを凝固浴(凝固液は水)に浸漬し、前記樹脂含有溶液を凝固させた後、ポリエステルフィルムを剥離し洗浄・乾燥させて、内部に涙型形状の複数の気泡を有し且つ当該複数の気泡が互いに繋がり合って連通しているポリウレタン樹脂フィルムを得た。得られたポリウレタン樹脂フィルムの表面をバフ処理し厚みを0.73mmとしたのち、バフ処理面と反対面側に厚み0.188μmのPET製の樹脂基材を接着剤で貼り合わせ、ポリウレタン樹脂フィルムの表面側からエンボス加工を施し、表面に溝幅を1mm、溝間隔を4mm、溝深さを0.45mmとした断面矩形状で格子パターンの溝を設けた。樹脂基材のポリウレタン樹脂フィルムが貼り合わされていない面側に、熱溶融性接着剤を介し他の層を貼り合わせた。他の層としては繊度2dtex、繊維長51mmのポリエステル繊維からニードルパンチ法により製造した不織布を用い、厚さは0.50mm、密度は0.35g/cm3であった。不織布のポリウレタン樹脂フィルムが貼り合わされていない面側に、片面に離型紙を有する両面テープを接着した。溝処理面側の研磨パッドの中心となる位置から研磨パッドの半径の1/2となる位置の同心円上に、研磨表面から両面テープまで貫通させるよう、直径20mmの円形抜型で等間隔に3か所穴を開け、第1貫通孔と第2貫通孔を設けた。透光性部材として、実施例1の塗膜付きアクリル樹脂シートを直径20mmとなるよう3枚切り出し、円形の透光性部材の側面にホットメルト接着剤を塗布し、第2貫通孔内の側面に透光性部材の透光性部材の塗膜が付いた側が研磨面側になるように接着させることで研磨パッドを製造した。
製造例1~3の研磨パッドは、水性スラリーの有無によって光透過率が大きく変動しないため、研磨終点を高精度に検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によれば、光透過率のバラツキを抑えることができる研磨パッドを提供することができる。よって、本発明の研磨パッドは、産業上極めて有用である。
【符号の説明】
【0073】
1…研磨パッド
2…研磨層
3…他の層
4…透光性部材
4’…透光性部材の最上部
5…貫通孔(第1貫通孔)
6…第2貫通孔
7…露出部
8…溝
8’…溝の最下部
9…コーティング部