(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】多価不飽和脂肪酸を生産する微生物及び多価不飽和脂肪酸の製造法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/21 20060101AFI20240820BHJP
C12P 7/64 20220101ALI20240820BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240820BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240820BHJP
C12N 15/60 20060101ALN20240820BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20240820BHJP
【FI】
C12N1/21 ZNA
C12P7/64
C12N1/15
C12N1/19
C12N15/60
C12N15/31
(21)【出願番号】P 2020535919
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(86)【国際出願番号】 JP2019031649
(87)【国際公開番号】W WO2020032258
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2018151233
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【微生物の受託番号】IPOD FERM BP-11524
(73)【特許権者】
【識別番号】308032666
【氏名又は名称】協和発酵バイオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】大利 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 康治
(72)【発明者】
【氏名】林 祥平
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 泰志
(72)【発明者】
【氏名】氏原 哲朗
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/025920(WO,A1)
【文献】特開2017-184690(JP,A)
【文献】特表2011-516045(JP,A)
【文献】HAYASHI, S., et al.,Enhanced production of polyunsaturated fatty acids by enzyme engineering of tandem acyl carrier proteins,Scientific Reports,2016年10月18日,6, 35441,pp. 1-10,DOi: 10.1038/srep35441
【文献】KEATINGE-CLAY, A.,Crystal Structure of the Erythromycin Polyketide Synthase Dehydratase,Journal of Molecular Biology,2008年10月11日,Vol. 384,p. 941-953
【文献】HAYASHI, S., et al.,Control Mechanism for Carbon‐Chain Length in Polyunsaturated Fatty‐Acid Synthases,Angewandte Chemie, International Edition,2019年03月04日,Vol. 58,p. 6605-6610,DOI: 10.1002/anie.201900771
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00
C12P 7/00
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価不飽和脂肪酸(以下、PUFAという。)代謝経路を有する微生物において、該微生物内におけるポリケチドシンターゼデヒドラターゼ(以下、PS-DHという。)ドメインの3-ヒドロキシヘキサノイル アシルキャリアー蛋白質(以下、3-hydroxyhexanoyl ACPという。)への反応性が、内在のFabA様β-ヒドロキシアシル-ACPデヒドラターゼ(以下、FabA-DHという。)ドメインと比較して高くなるよう、PS-DHドメインを
有する蛋白質をコードする遺伝子が導入された、ω6PUFAを生産し得る微生物
であって、
前記PS-DHドメインを有する蛋白質をコードする遺伝子が、下記[4]~[6]に記載の遺伝子から選択される少なくとも1つである、ω6PUFAを生産し得る微生物。
[4]配列番号58、66、74、84又は138で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質をコードする遺伝子
[5]配列番号58、66、74、84又は138で表されるアミノ酸配列において、1~20個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を有する変異蛋白質をコードする遺伝子
[6]配列番号58、66、74、84又は138で表されるアミノ酸配列と95%以上の同一性を有し、かつ、3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を有する相同蛋白質をコードする遺伝子
【請求項2】
PUFA代謝経路を有する微生物がω3PUFA代謝経路を有する微生物である、請求項1に記載の微生物。
【請求項3】
PUFA代謝経路を有する微生物がエイコサペンタエン酸(以下、EPAという。)又はドコサヘキサエン酸(以下、DHAという。)代謝経路を有する微生物であり、生産し得るω6PUFAがアラキドン酸(以下、ARAという。)又はドコサペンタエン酸(以下、DPAという。)である、請求項1又は2に記載の微生物。
【請求項4】
PUFA代謝経路を有する微生物がシュワネラ(Shewanella)属、フォトバクテリウム(Photobacterium)属、モリテラ(Moritella)属、コルウェリア(Colwellia)属、オーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)属、スラウストキトリウム(Thraustochytrium)属、ウルケニア(Ulkenia)属、パリエチキトリウム(Parietichytrium)属、ラビリンチュラ(Labyrinthula)属、アプラノキトリウム(Aplanochytrium)属、オブロンギキトリウム(Oblongichytrium)属、又はシゾキトリウム(Schizochytrium)属に由来する請求項1~3のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項5】
PUFA代謝経路を有さない微生物に、PUFAを合成する活性(以下、PUFA-PKS活性という。)を有する下記(a)~(j)に記載の各ドメインをコードする遺伝子が導入された、ω6PUFAを生産し得る微生物であって、PS-DHドメインを
有する蛋白質をコードする遺伝子が二つ以上導入されており、
少なくとも1つの前記PS-DHドメインを有する蛋白質をコードする遺伝子が下記[4]~[6]に記載の遺伝子から選択される少なくとも1つであって、PS-DHドメインがFabA-DHドメインよりも高い3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を示す微生物。
(a)β-ケトアシル-ACPシンターゼ(以下、KSという。)ドメイン
(b)マロニル-CoA:ACPアシルトランスフェラーゼ(以下、MATという。)ドメイン
(c)ACPドメイン
(d)ケトレダクターゼ(以下、KRという。)ドメイン
(e)PS-DHドメイン
(f)鎖伸長因子(以下、CLFという。)ドメイン
(g)アシルトランスフェラーゼ(以下、ATという。)ドメイン
(h)FabA-DHドメイン
(i)エノイルACP-レダクターゼ(以下、ERという。)ドメイン
(j)ホスホパンテテイントランスフェラーゼ(以下、PPTという。)ドメイン
[4]配列番号58、66、74、84又は138で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質をコードする遺伝子
[5]配列番号58、66、74、84又は138で表されるアミノ酸配列において、1~20個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を有する変異蛋白質をコードする遺伝子
[6]配列番号58、66、74、84又は138で表されるアミノ酸配列と95%以上の同一性を有し、かつ、3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を有する相同蛋白質をコードする遺伝子
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載のω6PUFAを生産し得る微生物が有するPUFA合成系遺伝子を全て有する請求項5に記載の微生物。
【請求項7】
生産し得るω6PUFAがARA又はDPAである請求項5又は6に記載の微生物。
【請求項8】
PUFA代謝経路を有さない微生物がエシェリヒア(Escherichia)属、バチルス(Bacillus)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ヤロウィア(Yarrowia)属、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、カンジダ(Candida)属、又はピキア(Pichia)属に属する微生物である請求項5~7のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項9】
前記PS-DHドメインが下記[1]~[3]に記載の蛋白質
から選択される少なくとも1つである、請求項1~4及び5~8のいずれか一項に記載の微生物。
[1]配列番号2、13、24、35又は137で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質
[2]配列番号2、13、24、35又は137で表されるアミノ酸配列において、1~20個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を有する変異蛋白質
[3]配列番号2、13、24、35又は137で表されるアミノ酸配列と95%以上の同一性を有し、かつ、3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を有する相同蛋白質
【請求項10】
前記PS-DHドメインをコードする遺伝子が下記[7]~[10]
に記載のDNAから選択される少なくとも1つである、請求項9に記載の微生物。
[7]上記[1]~[3]のいずれか1の蛋白質をコードするDNA
[8]配列番号136又は配列番号139で表される塩基配列を含むDNA
[9]前記[7]又は[8]に記載のDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を有する相同蛋白質をコードするDNA
[10]前記[7]又は[8]に記載のDNAの塩基配列と95%以上の同一性を有し、かつ、3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を有する相同蛋白質をコードするDNA
【請求項11】
前記PS-DHドメインを有する蛋白質をコードする遺伝子が、下記[11]~[14]
に記載のDNAから選択される少なくとも1つである、請求項
1~8のいずれか1項に記載の微生物。
[11]上記[4]~[6]のいずれか1の蛋白質をコードするDNA
[12]配列番号57、65、73、83又は140で表される塩基配列を含むDNA
[13]前記[11]又は[12]に記載のDNAの塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を有する相同蛋白質をコードするDNA
[14]前記[11]又は[12]記載のDNAの塩基配列と95%以上の同一性を有し、かつ、3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を有する相同蛋白質をコードするDNA
【請求項12】
前記PS-DHドメイン
を有する蛋白質をコードする遺伝子のうちの1つが、配列番号58で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質をコードする遺伝子である、請求項1~
11のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか1項に記載の微生物を培地に培養し、培養物中にω6PUFA又はω6PUFA含有組成物を生成、蓄積させ、該培養物からω6PUFA又はω6PUFA含有組成物を採取する、ω6PUFA又はω6PUFA含有組成物の製造法。
【請求項14】
下記(I)又は(II)のPUFAを生産し得る微生物を用いるω6PUFA又はω6PUFA含有組成物の製造法。
(I)PUFA代謝経路を有する微生物において、該微生物内におけるPS-DHドメインの3-hydroxyhexanoyl ACPへの反応性が、内在のFabA-DHドメインと比較して高くなるよう、PS-DHドメインを
有する蛋白質をコードする遺伝子が導入された、ω6PUFAを生産し得る微生物
であって、
前記PS-DHドメインを有する蛋白質をコードする遺伝子が、下記[4]~[6]に記載の遺伝子から選択される少なくとも1つである、ω6PUFAを生産し得る微生物。
(II)PUFA代謝経路を有さない微生物に、PUFA-PKS活性を有する下記(a)~(j)に記載の各ドメインをコードする遺伝子が導入された、ω6PUFAを生産し得る微生物であって、PS-DHドメインを
有する蛋白質をコードする遺伝子が二つ以上導入されており、
少なくとも1つの前記PS-DHドメインを有する蛋白質をコードする遺伝子が下記[4]~[6]に記載の遺伝子から選択される少なくとも1つであって、PS-DHドメインがFabA-DHドメインよりも高い3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を示す微生物。(a)KSドメイン
(b)MATドメイン
(c)ACPドメイン
(d)KRドメイン
(e)PS-DHドメイン
(f)CLFドメイン
(g)ATドメイン
(h)FabA-DHドメイン
(i)ERドメイン
(j)PPTドメイン
[4]配列番号58、66、74、84又は138で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質をコードする遺伝子
[5]配列番号58、66、74、84又は138で表されるアミノ酸配列において、1~20個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を有する変異蛋白質をコードする遺伝子
[6]配列番号58、66、74、84又は138で表されるアミノ酸配列と95%以上の同一性を有し、かつ、3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を有する相同蛋白質をコードする遺伝子
【請求項15】
下記反応条件により反応させたHPLCピークの高さについて、2-trans-hexenoyl ACPを基質とした場合の産物についてのHPLCピークの高さがcrotonyl ACPを基質とした場合の産物についてのHPLCピークの高さの1.5倍以上である、請求項1又は5に記載の微生物。
(反応条件)
Tris-HCl 80mM、NaCl 80mM、MgCl2 25mM、基質となるACP 100μM、Sfp 20μM、アシル-CoA 300μMを混合し、20℃にて10分間反応させた系に、請求項1又は5に記載の微生物が含有するPS-DHドメイン及びFabA-DHドメインを含む蛋白質を1μMまたは5μM添加して、20℃にて反応させる。反応開始から1、5、10、30、60分後にサンプルを回収し、LC/MS分析を行い、HPLCピークの高さを解析する。前記Sfpとは、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)由来の4’-phosphopantetheinyl transferaseを意味する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多価不飽和脂肪酸(PUFA)を生産する微生物及び該微生物を用いてPUFAを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドコサヘキサエン酸(以下、DHAという。)、エイコサペンタエン酸(以下、EPAという。)、アラキドン酸(以下、ARAという。)、ドコサペンタエン酸(以下、DPAという。)等、分子内に不飽和結合を複数有する長鎖脂肪酸のことを多価不飽和脂肪酸(以下、PUFAという。)という。PUFAは、動脈硬化や高脂血症の予防等様々な生理機能を有することが知られている(非特許文献1及び非特許文献2)。
【0003】
PUFAは、分子中のメチル末端からの二重結合の位置により、DHAやEPAのようなω3脂肪酸、DPAやARAのようなω6脂肪酸、9番目の炭素に最初に二重結合が導入されているω9脂肪酸、11番目の炭素に最初に二重結合が導入されているω11脂肪酸等に分類することができる。
【0004】
PUFAの生合成経路としては、好気経路と多価不飽和脂肪酸ポリケチドシンターゼ(以下、PUFA-PKSという。)による嫌気経路の二種類が知られている。好気経路は、脂肪酸合成酵素によって合成されたパルミチン酸等の長鎖脂肪酸に、複数の不飽和化酵素による二重結合の導入や鎖伸長酵素による炭素鎖の伸長がなされることによりPUFAが合成される経路で、多くの生物が有する古くから知られている合成経路である(非特許文献3)。一方、PUFA-PKSによる嫌気経路は、アセチル-CoAやマロニル-CoAからPUFAを合成する経路で、一部の海洋性細菌やラビリンチュラ類真核生物がDHAやEPAを生産する経路として有することが知られている(非特許文献4及び非特許文献5)。また、ARA生産系としては、例えばAureispira marinaのARA生産系が知られている(非特許文献6)。
【0005】
PUFA-PKSは、複数の蛋白質から構成される複合酵素(以下、蛋白質複合体ともいう。)であり、各蛋白質にはPUFAの合成に関わる複数の機能ドメインが存在している。
【0006】
PUFA-PKSに存在する機能ドメインとしては、マロニル-ACPとアシル-ACPの縮合に関わるとされているβ-ケトアシル-アシルキャリアー蛋白質シンターゼドメイン(以下、KSドメインという。)、ホスホパンテテイニル基を介してチオエステル結合によりアシル基と結合し、脂肪酸合成の場として機能するとされているアシルキャリアー蛋白質ドメイン(以下、ACPドメインという。)、縮合により生成するカルボニル基を還元するとされているケトレダクターゼドメイン(以下、KRドメインという。)、KRドメインにより生成した水酸基を脱水して二重結合を形成するとされているDHドメイン、炭素鎖の伸長に関わるとされている鎖伸長因子ドメイン(以下、CLFドメインという。)、得られた二重結合を還元するとされているエノイルレダクターゼドメイン(以下、ERドメインという。)、アシル基の転移に関わるとされているアシルトランスフェラーゼドメイン(以下、ATドメインという。)及びマロニル-CoA:アシルトランスフェラーゼドメイン(以下、MATドメインという。)、並びにACPドメインを活性化するとされているホスホパンテテイントランスフェラーゼドメイン(以下、PPTドメインという。)があり、これら複数のドメインが協働して働くことで脂肪酸の炭素鎖が伸長すると考えられている。
【0007】
ARAの工業的な生産方法としては、カビのバイオマスから単離する方法(特許文献1)が知られているが、目的以外の不飽和脂肪酸の副生が多いという課題があり、効率的なARAの生産方法が求められていた。
【0008】
PUFA-PKSは、その種類によって生産するPUFAの種類が異なることが知られている。例えば、Schizochytrium sp.、Aurantiochytrium sp.及びMoritella marina由来のPUFA-PKSではDHAが、Shewanella oneidensis及びPhotobacterium profundum由来のPUFA-PKSではEPAが、Aureispira marina由来のPUFA-PKSではARAが主要な産物として生産され、他のPUFAはほとんど生産されないか、生産されるとしても主生産物に比べると少量である。
【0009】
このように、PUFA-PKSは高い生産物特異性を有するが、これまでにPUFA-PKSの機能解析を目的とした多くの研究がなされている。
【0010】
非特許文献4及び7では、Shewanella属細菌やストラメノパイル類真核生物からPUFA-PKS遺伝子をクローニングして異種生物中で発現させ、PUFAを生産させる検討がなされている。
【0011】
非特許文献8では、DHAを生産するMoritella marina由来のPUFA-PKSの構成遺伝子であるpfaB遺伝子と、EPAを生産するShewanella pneumatophori由来のPUFA-PKSを構成するpfaB遺伝子とを用いた研究により、ATドメインをコードするpfaB遺伝子が生産されるPUFAの種類に関与することが開示されている。
【0012】
非特許文献9では、大腸菌にThraustochytrium属由来のPUFA-PKSのDHドメインを導入すると、脂肪酸の生産量が増加し、かつ不飽和脂肪酸の割合が増加することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】日本国特開2006-219528号公報
【文献】国際公開第2008/144473号
【非特許文献】
【0014】
【文献】Annu.Nutr.Metabol.,1991,35,128-131
【文献】J.Am.Clin.Nutr.,1994,13,658-664
【文献】Ann.Rev.Biochem.,1983,52,537-579
【文献】Science,2001,293,290-293
【文献】PLoS One,2011,6,e20146
【文献】Scientific Reports volume 6, Article number:35441(2016)、Fig.5
【文献】Plant Physiol.Biochem.,2009,47,472-478
【文献】FEMS Microbiol.Lett.,2009,295,170-176
【文献】Appl.Microbiol.Biotechnol.,2018,847-856
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来のPUFA生産性微生物によるPUFA生産系として、例えば非特許文献6に記載の微生物によるARA生産系があるが、該ARA生産系によるARAの生産性は工業的レベルにおいては十分ではない。また、特許文献1に記載の方法のようにカビのバイオマスからARAを単離する方法では、目的以外の不飽和脂肪酸の副生が多いという課題がある。
【0016】
したがって、本発明は、効率的にPUFAを生産する微生物及び該微生物を用いたPUFAの製造法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、ω3PUFAを生産し得る微生物において、PUFA生産系における脂肪酸基質である3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性の強さがFabA-DHドメインよりも高いPS-DHドメインの遺伝子を導入することにより、本来の産物であるω3PUFAではなく、PUFAにおける末端の炭素原子から数えてω6位の位置に最初の二重結合が形成されたω6PUFAを効率良く生産できることを見出し、本発明を完成させた。
【0018】
1.PUFAという代謝経路を有する微生物に、3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性が、内在のFabA-DHドメインよりも高い、外来のPS-DHドメインをコードする遺伝子が導入された、PUFAを生産し得る微生物。
2.PUFA代謝経路を有する微生物がω3PUFA代謝経路を有する微生物であり、生産し得るPUFAがω6PUFAである、前記1に記載の微生物。
3.PUFA代謝経路を有する微生物がEPA又はDHA代謝経路を有する微生物であり、生産し得るPUFAがARA又はDPAである、前記1又は2に記載の微生物。
4.PUFA代謝経路を有する微生物がシュワネラ(Shewanella)属、フォトバクテリウム(Photobacterium)属、モリテラ(Moritella)属、コルウェリア(Colwellia)属、オーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)属、スラウストキトリウム(Thraustochytrium)属、ウルケニア(Ulkenia)属、パリエチキトリウム(Parietichytrium)属、ラビリンチュラ(Labyrinthula)属、アプラノキトリウム(Aplanochytrium)属、オブロンギキトリウム(Oblongichytrium)属、又はシゾキトリウム(Schizochytrium)属に由来する前記1~3のいずれか1に記載の微生物。
5.PUFA代謝経路を有さない微生物に、PUFA-PKS活性を有する下記(a)~(j)に記載の各ドメインをコードする遺伝子が導入された、PUFAを生産し得る微生物であって、PS-DHドメインがFabA-DHドメインよりも高い3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を示す微生物。
(a)KSドメイン
(b)MATドメイン
(c)ACPドメイン
(d)KRドメイン
(e)PS-DHドメイン
(f)CLFドメイン
(g)ATドメイン
(h)FabA-DHドメイン
(i)ERドメイン
(j)PPTドメイン
6.前記1~4のいずれか1に記載のPUFAを生産し得る微生物が有するPUFA合成系遺伝子を全て有する前記5に記載の微生物。
7.生産し得るPUFAがω6PUFAである前記5又は6に記載の微生物。
8.生産し得るPUFAがARA又はDPAである前記5~7のいずれか1に記載の微生物。
9.PUFA代謝経路を有さない微生物がエシェリヒア(Escherichia)属、バチルス(Bacillus)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ヤロウィア(Yarrowia)属、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、カンジダ(Candida)属、又はピキア(Pichia)属に属する微生物である前記5~8のいずれか1に記載の微生物。
10.PS-DHドメインが、Aureispira marina由来のAraBのPS-DHドメインである、前記1~9のいずれか1に記載の微生物。
11.前記1~10のいずれか1に記載の微生物を培地に培養し、培養物中にPUFA又はPUFA含有組成物を生成、蓄積させ、該培養物からPUFA又はPUFA含有組成物を採取する、PUFA又はPUFA含有組成物の製造法。
12.下記(I)又は(II)のPUFAを生産し得る微生物を用いるPUFA又はPUFA含有組成物の製造法。
(I)PUFA代謝経路を有する微生物に、3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性が内在のFabA-DHドメインよりも高いPS-DHドメインをコードする遺伝子が導入された、PUFAを生産し得る微生物。
(II)PUFA代謝経路を有さない微生物に、PUFA-PKS活性を有する下記(a)~(j)に記載の各ドメインをコードする遺伝子が導入された、PUFAを生産し得る微生物であって、PS-DHドメインがFabA-DHドメインよりも高い3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を示す微生物。
(a)KSドメイン
(b)MATドメイン
(c)ACPドメイン
(d)KRドメイン
(e)PS-DHドメイン
(f)CLFドメイン
(g)ATドメイン
(h)FabA-DHドメイン
(i)ERドメイン
(j)PPTドメイン
【発明の効果】
【0019】
本発明の微生物は、PUFAを生産し得る微生物において、脂肪酸基質である3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性の強さが、FabA-DHドメインよりも高いPS-DHドメインの遺伝子が導入されていることにより、該微生物内におけるPS-DHドメインの3-hydroxyhexanoyl ACPに対する反応性がFabA-DHドメインと比較して相対的に高く、目的とするPUFA又はPUFA含有組成物を効率良く製造することができる。本発明の製造法によれば、低コスト且つ高効率でPUFAを生産することができ、PUFAの工業的レベルでの生産に適用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、各種微生物におけるPUFA-PKSを構成する蛋白質及びそのドメイン構造の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明において、「多価不飽和脂肪酸(PUFA)」とは、炭素鎖長が18以上で不飽和結合数が2以上の長鎖脂肪酸をいう。また、本明細書において「ドメイン」とは、蛋白質中の連続するアミノ酸配列からなる一部分であって、当該蛋白質において、特定の生物学的活性又は機能を有する領域である。
【0022】
本発明において、「PUFA-PKS」とはPUFA synthaseと同義である。PUFA synthaseは、マロニル-CoA等を炭素源として用いて特異的な長鎖の不飽和脂肪酸を合成する酵素群であり、KS、MAT、ACP、KR、PS-DH、CLF、AT、FabA-DH、ER、PPTaseの各ドメインを含有するものをいう(ACOS Lipid Library:PUFA synthase;Science,2001,293,290-293;PLoS One,2011,6,e20146等)。
【0023】
KSドメインとは、PUFA-PKS活性を有する蛋白質複合体を構成する蛋白質が有するドメインであり、マロニルACPとアシルACPの縮合に関わるドメインをいう。
【0024】
MATドメイン、ATドメインとは、PUFA-PKS活性を有する蛋白質複合体を構成する蛋白質が有するドメインであり、アシル基の転移に関わるドメインのことをいう。
【0025】
ACPドメインとは、PUFA-PKS活性を有する蛋白質複合体を構成する蛋白質が有するドメインであり、ホスホパンテテイニル基を介してチオエステル結合によりアシル基と結合し、脂肪酸合成の場として機能する、PUFA-PKS活性に必須のドメインをいう。
【0026】
KRドメインとは、PUFA-PKS活性を有する蛋白質複合体を構成する蛋白質が有するドメインであり、縮合により生成するケトン基の還元に関わるドメインをいう。
【0027】
DHドメインである、PS-DHドメイン及びFabA-DHドメインは、PUFA-PKS活性を有する蛋白質複合体を構成する蛋白質が有するドメインであり、ケトン基を還元することによって生じた水酸基の脱水に関わるドメインのことをいう。
【0028】
CLFドメインとは、PUFA-PKS活性を有する蛋白質複合体を構成する蛋白質が有するドメインであり、炭素鎖の伸長に関わるドメインのことをいう。
【0029】
ERドメインとは、アシル転移酵素ドメイン、マロニル-CoA:ACPアシル転移酵素ドメインとは、PUFA-PKS活性を有する蛋白質複合体を構成する蛋白質が有するドメインであり、アシル基の転移に関わるドメインのことをいう。
【0030】
PPTaseとは、PUFA-PKS活性を有する蛋白質複合体を構成する酵素であり、ACPドメインの活性化に関わる酵素のことをいう。
【0031】
本明細書において「協働する」とは、ある蛋白質を他の蛋白質と共存させたとき、一体となって特定の反応を行うことであり、特に本明細書では、PUFA-PKS活性に必要な複数のドメインを共存させたとき、他のドメインと一体となってPUFA-PKS活性を示すことをいう。
【0032】
本明細書において「外来の」とは内在性ではなく、異種由来のものをいい、形質転換前の宿主生物が、本発明により導入されるべき遺伝子を有していない場合、該遺伝子によりコードされる蛋白質が実質的に発現しない場合、及び異なる遺伝子により当該蛋白質のアミノ酸配列をコードしているが、形質転換後に内因性蛋白質の活性を発現しない場合において、本発明に基づく遺伝子を宿主生物に導入することを意味するために用いられる。
【0033】
本明細書において、「宿主生物」とは、遺伝子改変及び形質転換等の対象となる元の生物のことをいう。遺伝子導入による形質転換の対象となる元の生物が微生物の場合は、親株、宿主株ともいう。
【0034】
〔微生物〕
本発明の微生物としては、下記(1)又は(2)の微生物が挙げられる。
(1)PUFA代謝経路を有する微生物に、3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性が、FabA-DHドメインよりも高い、外来のPS-DHドメインをコードする遺伝子が導入された、PUFAを生産し得る微生物。
(2)PUFA代謝経路を有さない微生物に、PUFA-PKS活性を有するKS、MAT、ACP、KR、PS-DH、CLF、AT、FabA-DH、ER、PPTaseの各ドメインをコードする遺伝子が導入された、PUFAを生産し得る微生物であって、PS-DHドメインがFabA-DHドメインよりも高い3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を示す微生物。
【0035】
PUFA代謝経路を有する微生物とは、生来的にPUFA生産能を有する微生物をいう。PUFA代謝経路を有する微生物としては、シュワネラ(Shewanella)属、フォトバクテリウム(Photobacterium)属、モリテラ(Moritella)属、コルウェリア(Colwellia)属、オーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)属、スラウストキトリウム(Thraustochytrium)属、ウルケニア(Ulkenia)属、パリエチキトリウム(Parietichytrium)属、ラビリンチュラ(Labyrinthula)属、アプラノキトリウム(Aplanochytrium)属、オブロンギキトリウム(Oblongichytrium)属、又はシゾキトリウム(Schizochytrium)属が挙げられる。
【0036】
PUFA代謝経路を有する微生物としては、ω3PUFA代謝経路を有する微生物が好ましく、例えば、DHA代謝経路を有する微生物、EPA代謝経路を有する微生物が挙げられる。
【0037】
DHA代謝経路を有する微生物としては、例えば、モリテラ(Moritella)属、コルウェリア(Colwellia)属、オーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)属、スラウストキトリウム(Thraustochytrium)属、シゾキトリウム属(Schizochytrium)の微生物が挙げられる。好ましくはモリテラ・マリナ(Moritella marina)、コルウェリア・サイクレリスラエア(Colwellia psychrerythraea)、オーランチオキトリウム・リマシナム(Aurantiochytrium・limacinum)、スラウストキトリウム・アウレウム(Thraustochytrium aureum)等が挙げられるがDHA代謝経路を有する限り、これらに限定されない。
【0038】
DHA代謝経路を有する微生物としては、オーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)属に属する微生物が好ましく、例えばオーランチオキトリウム エスピー OH4株(受託番号FERM BP-11524)などが挙げられ、さらにその変異株であってDHA生産能を有する微生物を用いてもよい。
【0039】
前記のオーランチオキトリウム エスピー OH4株は、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地中央第6(郵便番号305-8566)に所在する、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の特許微生物寄託センターに寄託された。受領日(寄託日)は平成25年(西暦2013年)1月11日であり、受託番号はFERM BP-11524である。
【0040】
EPA代謝経路を有する微生物としては、例えば、シュワネラ(Shewanella)属、フォトバクテリウム(Photobacterium)属、ビブリオ(Vibrio)属の微生物が挙げられる。好ましくはシュワネラ・オネイデンシス(Shewanella oneidensis)、シュワネラ・リビングストネンシス(Shewanella livingstonensis)、シュワネラ・バルティカ(Shewanella baltica)、シュワネラ・ペアレアナ(Shewanella pealeana)、フォトバクテリウム・プロフンダム(Photobacterium profundum)等が挙げられるがEPA代謝経路を有する限り、これらに限定されない。
【0041】
PUFA代謝経路を有さない微生物とは、生来的にPUFA生産能を有さない微生物をいう。PUFA代謝経路を有さない微生物としては、例えば、細菌、微細藻類、真菌、原生生物、原生動物が挙げられる。
【0042】
細菌としては、例えば、エシェリヒア(Escherichia)属、セラチア(Serratia)属、バチルス(Bacillus)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、及びオーレオスピラ(Aureispira)属からなる群より選ばれる属に属する微生物が挙げられる。これらの中でも、Escherichia coli XL1-Blue、Escherichia coli XL2-Blue、Escherichia coli DH1、Escherichia coli MC1000、Escherichia coli KY3276、Escherichia coli W1485、Escherichia coli JM109、Escherichia coli HB101、Escherichia coli No.49、Escherichia coli W3110、Escherichia coli NY49、Escherichia coli BL21 codon plus(ストラタジーン社製)、Serratia ficaria、Serratia fonticola、Serratia liquefaciens、Serratia marcescens、Bacillus subtilis、Bacillus amyloliquefaciens、Brevibacterium immariophilum ATCC14068、Brevibacterium saccharolyticum ATCC14066、Corynebacterium ammoniagenes、Corynebacterium glutamicum ATCC13032、Corynebacterium glutamicum ATCC14067、Corynebacterium glutamicum ATCC13869、Corynebacterium acetoacidophilum ATCC13870、Microbacterium ammoniaphilum ATCC15354、Pseudomonas sp.D-0110及びAureispira marina JCM23201からなる群より選ばれる微生物が好ましい。
【0043】
微細藻類としては、例えば、ユーグレナ藻綱(Euglenophyceae)[例えば、ユーグレナ(Euglena)属 およびペラネマ(Peranema)属]、緑藻綱(Chrysophyceae)[例えば、オクロモナス(Ochromonas)属]、サヤツナギ綱(Dinobryaceae)[例えば、サヤツナギ(Dinobryon)属、プラチクリシス(Platychrysis)属およびクリソクロムリナ(Chrysochromulina)属]、渦鞭毛藻綱(Dinophyceae)[例えば、クリプセコディニウム(Crypthecodinium)属、ギムノジニウム(Gymnodinium)属、ペリジリウム(Peridinium)属、セラチウム(Ceratium)属、ギロジニウム(Gyrodinium)属およびオキシルリス(Oxyrrhis)属]、クリプト藻綱(Cryptophyceae)[例えば、クリプトモナス(Cryptomonas)属およびロドモナス(Rhodomonas)属]、黄緑藻綱(Xanthophyceae)[例として、オリストディスカス(Olisthodiscus)属][かつ、鞭毛虫リゾクロリス類(Rhizochloridaceae)ならびにアファノカエテパシェリ(Aphanochaete pascheri)、ブミレリアスティゲオクロニウム(Bumilleria stigeoclonium)およびバウケリアゲミナタ(Vaucheria geminata)の遊走子/配偶子においてのようなアメーバ状期を生じる藻類の品種を含む]、真正眼点藻綱(Eustigmatophyceae)およびプリムネシウム藻綱(Prymnesiopyceae)[例えば、プリムネシウム(Prymnesium)属およびディアクロネマ(Diacronema)属を含む]が挙げられる。
【0044】
これらの属内の好ましい種は、特に限定されないが、Nannochloropsis oculata、Crypthecodinium cohnii、Euglena gracilisが挙げられる。
【0045】
真菌としては、例えば、サッカロマイセス(Saccharomyces)属[例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)]を含む酵母、もしくはヤロウィア(Yarrowia)属、カンジダ(Candida)属、ピキア(Pichia)属、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)属のような他の酵母、又は他の真菌、例えば、アスペルギルス(Aspergillus)属、ノイロスポラ(Neurospora)属、ペニシリウム(Penicillium)属のような繊維状真菌などが挙げられる。
【0046】
微生物(2)としては、上記した微生物(1)が有するPUFA合成系遺伝子が全て導入された微生物、すなわち上記した微生物(1)が有するPUFA合成系遺伝子を全て有する微生物であることが好ましい。
【0047】
本発明において「3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性」とは、3-hydroxyhexanoyl ACPに対して優先的に作用する活性であり、より詳しくは3-hydroxyhexanoyl ACPに対する反応性(親和性)をいう。3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性はデヒドラターゼの逆反応(水酸化反応)を評価する手法により測定できる。
【0048】
前記手法としては、例えば、基質となるcrotonyl ACP又は2-trans-hexenoyl ACPが調製される条件において、FabA-DHドメイン又はPS-DHドメインを含む蛋白質を添加して得られた生産物をHPLCで分析し、ピークの高さを比較することにより生成物の量(crotonyl ACPを基質とした場合の産物:3-hydroxy-butyryl-ACP、2-trans-hexenoyl ACPを基質とした場合の産物:3-hydroxy-hexanoyl-ACP)を比較する。そして、crotonyl ACPを基質とした場合の産物の量が2-trans-hexenoyl ACPを基質とした場合の産物の量よりも少ない場合に、PS-DHドメインの3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性がFabA-DHドメインの該活性より高い、と判断する。
【0049】
本発明において、「PS-DHドメインがFabA-DHドメインよりも高い3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を示す」とは、具体的には例えば、下記反応条件により反応させたHPLCピークの高さについて、2-trans-hexenoyl ACPを基質とした場合の産物についてのHPLCピークの高さがcrotonyl ACPを基質とした場合の産物についてのHPLCピークの高さの1.5倍以上であることが好ましく、より好ましくは2倍以上、さらに好ましくは5倍以上である。
【0050】
(反応条件)
Tris-HCl 80mM、NaCl 80mM、MgCl2 25mM、基質となるACP 100μM、Sfp 20μM、アシル-CoA 300μMを混合し、20℃にて10分間反応させた系に、PS-DHドメイン及びFabA-DHドメインを含む蛋白質を1μMまたは5μM添加して、20℃にて反応させる。反応開始から1、5、10、30、60分後にサンプルを回収し、LC/MS分析を行い、HPLCピークの高さを解析する。前記Sfpとは、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)由来の4’-phosphopantetheinyl transferaseを意味する。
【0051】
具体的には、例えば、上記した微生物(1)の場合、PUFA代謝経路を有する微生物における内在のPS-DHドメインの3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性が内在のFabA-DHドメインと比較して同程度以下であるところ、内在のFabA-DHドメインよりも該活性が高い、PS-DHドメインをコードする外来の遺伝子を該微生物に導入することにより、該微生物内におけるPS-DHドメインの3-hydroxyhexanoyl ACPへの反応性がFabA-DHドメインと比較して相対的に高い微生物となる。
【0052】
また、例えば、上記した微生物(2)の場合、PUFA代謝経路を有さない微生物に遺伝子を導入して発現させたPUFA-PKS活性を有する各ドメインのうち、PS-DHドメインがFabA-DHドメインよりも高い3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を有することにより、該微生物内におけるPS-DHドメインの3-hydroxyhexanoyl ACPへの反応性がFabA-DHドメインと比較して相対的に高い微生物となる。
【0053】
微生物内におけるPS-DHドメインの3-hydroxyhexanoyl ACPへの反応性がFabA-DHドメインと比較して相対的に高いことにより、該微生物のPUFA代謝経路においてFabA-DHドメインよりもPS-DHドメインが優先的に3-hydroxyhexanoyl ACPに反応し、PS-DHドメインが機能するPUFAの生合成経路によりPUFAが生産される。
【0054】
FabA-DHドメインが機能するPUFA生合成経路及びPS-DHドメインが機能するPUFA生合成経路として、FabA-DHドメインが機能するω3PUFAの生合成経路とPS-DHドメインが機能するω6PUFAの生合成経路が挙げられる。
【0055】
FabA-DHドメインが機能するPUFA生合成経路で得られるPUFAにおける、末端の炭素原子から数えた二重結合の位置をω(α)位(例えば、ω3位)とすると、PS-DHドメインが機能するPUFAの生合成経路で得られるPUFAは、該末端の炭素原子から数えた二重結合の位置がω(α+3)位(例えば、ω6位)となる。
【0056】
したがって、例えば、内在のFabA-DHドメインがPS-DHドメインよりも高い3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を有するω3PUFAの代謝経路を有する微生物に対し、該内在のFabA-DHドメインよりも高い3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を有する外来のPS-DHドメインをコードする遺伝子を導入することにより、該微生物内におけるPS-DHドメインの3-hydroxyhexanoyl ACPへの反応性がFabA-DHドメインと比較して相対的に高くなる。その結果、3-hydroxyhexanoyl ACPに対し、FabA-DHドメインよりもPS-DHドメインが優先的に作用し、ω6PUFAを最終産物として生産し得る微生物となる。
【0057】
本発明において、PS-DHドメインとしては、Aureispira marina由来のAraB上のPS-DHドメイン[配列番号2で表されるアミノ酸配列(配列番号136で表される塩基配列によりコードされる)を有する蛋白質]、又はPsychroflexus torquis由来のpfaB上のPS-DHドメイン[配列番号137で表されるアミノ酸配列(配列番号139で表される塩基配列によりコードされる)を有する蛋白質]が挙げられ、Aureispira marina由来のaraB上のPS-DHドメインが好ましい。これらの配列は公知であり、適宜使用することができる。また、公知の配列を利用して、内在のFabA-DHドメインよりも高い3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を有するPS-DHドメインをコードする遺伝子を得ることができる。
【0058】
より具体的には、本発明で使用するPS-DHドメインとしては、好ましくは、以下が挙げられる。
[1]配列番号2又は配列番号137で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質
[2]配列番号2又は配列番号137で表されるアミノ酸配列において、1~20個、好ましくは1~10個、最も好ましくは1~5個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を有する変異蛋白質
[3]配列番号2又は配列番号137で表されるアミノ酸配列と少なくとも95%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有し、かつ、3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を有する相同蛋白質
【0059】
PS-DHドメインをコードする遺伝子は、PS-DHドメインを有する蛋白質をコードする遺伝子を微生物に導入することにより微生物に導入してもよい。PS-DHドメインを有する蛋白質としては、Aureispira marina由来のAraB[配列番号58で表されるアミノ酸配列(配列番号57で表される塩基配列によりコードされる)を有する蛋白質]、Psychroflexus torquis由来のPfaB[配列番号138で表されるアミノ酸配列(配列番号140で表される塩基配列によりコードされる)を有する蛋白質]が挙げられる。
【0060】
より具体的には、本発明で使用するPS-DHドメインを有する蛋白質としては、好ましくは、以下が挙げられる。
[4]配列番号58又は配列番号138で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質
[5]配列番号58又は配列番号138で表されるアミノ酸配列において、1~20個、好ましくは1~10個、最も好ましくは1~5個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を有する変異蛋白質
[6]配列番号58又は配列番号138で表されるアミノ酸配列と少なくとも95%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有し、かつ、3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を有する相同蛋白質
【0061】
配列番号58で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質は801アミノ酸残基からなる蛋白質であり、N末端側から、531~790残基にPS-DHドメインを有する。
【0062】
変異蛋白質とは、元となる蛋白質中のアミノ酸残基を人為的に欠失、置換、又は該蛋白質中にアミノ酸残基を付加して得られる蛋白質をいう。上記の変異蛋白質において、アミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたとは、同一配列中の任意の位置において、1~20個、好ましくは1~10個、最も好ましくは1~5個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されていてもよい。
【0063】
欠失、置換又は付加されるアミノ酸は天然型と非天然型とを問わない。天然型アミノ酸としては、L-アラニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-グルタミン、L-グルタミン酸、グリシン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-アルギニン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-スレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、L-バリン、L-システインが挙げられる。
【0064】
以下に、相互に置換可能なアミノ酸の例を示す。同一群に含まれるアミノ酸は相互に置換可能である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2-アミノブタン酸、メチオニン、O-メチルセリン、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2-アミノアジピン酸、2-アミノスベリン酸
C群:アスパラギン、グルタミン
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4-ジアミノブタン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸
E群:プロリン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン
F群:セリン、スレオニン、ホモセリン
G群:フェニルアラニン、チロシン
【0065】
相同蛋白質とは、元となる蛋白質と構造及び機能が類似することにより、その蛋白質をコードする遺伝子が進化上の起源を元の蛋白質をコードする遺伝子と同一にすると考えられる蛋白質であって、自然界に存在する生物が有する蛋白質をいう。
【0066】
アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST[Pro.NATドメインl.Acad.Sci.USA,90,5873(1993)]やFASTA[Methods Enzymol.,183,63(1990)]を用いて決定することができる。このアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTNやBLASTXとよばれるプログラムが開発されている[J.Mol.Biol.,215,403(1990)]。BLASTに基づいてBLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメータは例えばScore=100、wordlength=12とする。また、BLASTに基づいてBLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメータは例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である。
【0067】
本発明で使用するPS-DHドメインをコードする遺伝子とは、3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を有する蛋白質をコードする遺伝子であれば限定されないが、好ましくは、以下のいずれか1のDNAを有する遺伝子が挙げられる。
[7]上記[1]~[3]のいずれか1の蛋白質をコードするDNA
[8]配列番号136又は配列番号139で表される塩基配列を含むDNA
[9]前記[7]又は[8]に記載のDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を有する相同蛋白質をコードするDNA
[10]前記[7]又は[8]に記載のDNAの塩基配列と少なくとも95%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有し、かつ、3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を有する相同蛋白質をコードするDNA
【0068】
また、PS-DHドメインを有する蛋白質をコードする遺伝子としては、好ましくは、以下のいずれか1のDNAを有する遺伝子が挙げられる。
[11]上記[4]~[6]のいずれか1の蛋白質をコードするDNA
[12]配列番号57又は配列番号140で表される塩基配列を含むDNA
[13]前記[11]又は[12]に記載のDNAの塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を有する相同蛋白質をコードするDNA
[14]前記[11]又は[12]記載のDNAの塩基配列と少なくとも95%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有し、かつ、3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を有する相同蛋白質をコードするDNA
【0069】
ハイブリダイズするとは、特定の塩基配列を有するDNA又は該DNAの一部が他のDNAと相補的に複合体を形成することをいう。したがって、該特定の塩基配列を有するDNA又は該DNAの一部の塩基配列は、ノーザン又はサザンブロット解析のプローブとして有用であるか、又はPCR解析のオリゴヌクレオチドプライマーとして使用できる長さのDNAであってもよい。プローブとして用いるDNAとしては、少なくとも100塩基以上、好ましくは200塩基以上、より好ましくは500塩基以上のDNAを挙げることができ、プライマーとして用いられるDNAとしては、少なくとも10塩基以上、好ましくは15塩基以上のDNAを挙げることができる。
【0070】
DNAのハイブリダイゼーション実験の方法はよく知られており、例えばモレキュラー・クローニング第2版、第3版(2001年)、Methods for GenERドメインal and Molecular BactEriology,ASM Press(1994)、Immunology methods manual,Academic Press(Molecular)に記載の他、多数の他の標準的な教科書に従ってハイブリダイゼーションの条件を決定し、実験を行うことができる。
【0071】
また、市販のハイブリダイゼーションキットに付属した説明書に従うことによっても、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを取得することができる。市販のハイブリダイゼーションキットとしては、例えばランダムプライム法によりプローブを作製し、ストリンジェントな条件でハイブリダイゼーションを行うランダムプライムドDNAラベリングキット(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)などを挙げることができる。
【0072】
ストリンジェントな条件とは、例えばDNAを固定化したフィルターとプローブDNAとを50%ホルムアミド、5×SSC(750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%の硫酸デキストラン、及び20μg/lの変性させたサケ精子DNAを含む溶液中で42℃にて一晩、インキュベートした後、例えば約65℃の0.2×SSC溶液中で該フィルターを洗浄する条件を挙げることができる。
【0073】
上記した様々な条件は、ハイブリダイゼーション実験のバックグラウンドを抑えるために用いるブロッキング試薬を添加、又は変更することにより設定することもできる。上記したブロッキング試薬の添加は、条件を適合させるために、ハイブリダイゼーション条件の変更を伴ってもよい。
【0074】
上記したストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能なDNAとしては、例えば上記したBLAST及びFASTA等のプログラムを用いて、上記パラメータに基づいて計算したときに、対象となるDNAの塩基配列と少なくとも95%以上、好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNAを挙げることができる。
【0075】
微生物(2)に導入されるPUFA-PKS活性を有する各ドメインとしては、KSドメイン、MATドメイン、ACPドメイン、KRドメイン、CLFドメイン、ATドメイン、DHドメインであるFabA-DHドメイン、ERドメイン及びPPTドメインが挙げられる。各ドメインは、協働してアセチルCoAを出発基質としてPUFAを生産する限りにおいて限定されないが、例えば、既知のPUFA-PKSが有する各ドメインを挙げることができる。
【0076】
微生物(2)に導入されたPUFA-PKS活性を有する各ドメインが協働して示すPUFA-PKS活性は、PUFA-PKSの各ドメインをコードする遺伝子で形質転換した微生物を造成し、該微生物を培地に培養し、培養物中にPUFAを生成、蓄積させ、該培養物中に蓄積したPUFAをガスクロマトグラフィーで測定することにより、確認することができる。
【0077】
本明細書において「既知のPUFA-PKS」とは、好ましくは、シュワネラ属(Shewanella)、コルウェリア属(Colwellia)、デサルファチバチルム属(Desulfatibacillum)、サイクロフレクサス属(Psychroflexus)、シゾキトリウム属(Schizochytrium)、ノストック属(Nostoc)、ミクロシスティス属(Microcystis)、サッカロポリスポラ属(Saccharopolyspora)、ジオバクター属(Geobacter)、プランクトマイセス属(Planctomyces)、デサルフォコッカス属(Desulfococcus)、ソランギウム属(Sorangium)、レニバクテリウム属(Renibacterium)、チチノファガ属(Chitinophaga)、グレオバクター属(Gloeobacter)、アゾトバクター属(Azotobacter)、ロドコッカス属(Rhodococcus)、ソリバクター属(Solibacter)、デサルフォバクテリウム属(Desulfobacterium)、クロストリジウム属(Clostridium)、スラウストキトリウム(Thraustochytrium)属、ウルケニア(Ulkenia)属、ジャポノチトリウム(Japonochytrium)属、オーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)属、モリテラ(Moritella)属からなる群より選ばれる属に属する微生物が元来有しているPUFA-PKSを、より好ましくは、Shewanella pealeana ATCC 700345、Shewanella oneidensis MR-1、Colwellia psychrerythraea 34H、Desulfatibacillum alkenivoransAK-01、Psychroflexus torquisATCC 700755、Schizochytrium sp. ATCC 20888、Nostoc punctiformePCC 73102、Microcystis aeruginosaNIES-843、Saccharopolyspora erythraea NRRL 2338、Geobacter bemidjiensis Bem、Planctomyces limnophilus DSM3776、Desulfococcus oleovorans Hxd3、Sorangium cellulosum ‘Soce 56’、 Renibacterium salmoninarum ATCC 33209、Chitinophaga pinensisDSM 2588、Gloeobacter violaceusPCC 7421、Azotobacter vinelandiiDJ、Rhodococcus erythropolisPR4、Candidatus Solibacter usitatusEllin6076、Desulfobacterium autotrophicumHRM2、Clostridium thermocellumATCC 27405、Schizochytrium minutum、Schizochytrium sp. S31 ATCC 20888、Schizochytrium sp. S8 ATCC 20889、Schizochytrium sp. LC-RM ATCC 18915、Schizochytrium sp. SR21、Schizochytrium aggregatum ATCC 28209、Schizochytrium limacinum IFO 32693、Thraustochytrium sp.23B ATCC 20891、Thraustochytrium striatum ATCC 24473、Thraustochytrium aureum ATCC 34304、Thraustochytrium roseum ATCC 28210、Ulkenia sp.BP-5601、及びJaponochytrium sp.L1 ATCC 28207からなる群より選ばれる微生物が、元来有しているPUFA-PKSを、最も好ましくは、Shewanella pealeana ATCC 700345、Shewanella oneidensis MR-1、Colwellia psychrerythraea 34H、Moritella marina MP-1、Schizochytrium sp.ATCC 20888からなる群より選ばれる微生物が、元来有しているPUFA-PKSを挙げることができる[FEMS Microbiol.Lett.(2009),Vol.295,p170-176;PLoS ONE(2011),Vol.6(5),art.no.e20146]。
【0078】
表1に、後述する実施例で用いたPUFA-PKSを構成する蛋白質が有する各ドメインのアミノ酸配列、および既知のPUFA-PKSを構成する蛋白質が有する各ドメインのアミノ酸配列の例を示す。
【0079】
【0080】
PUFA-PKS活性を有する蛋白質複合体及び該蛋白質複合体を構成する蛋白質は、当該蛋白質複合体がPUFA-PKS活性を有する限りにおいて、相互に物理的に結合していてもよく、分離していてもよい。
【0081】
PUFA-PKS活性を有する蛋白質複合体を構成する蛋白質としては、他の蛋白質と協働してPUFA-PKS活性を有する蛋白質であれば野生型蛋白質、相同蛋白質及び変異蛋白質のいずれであってもよい。
【0082】
図1に各種微生物由来のPUFA-PKSを構成する蛋白質及びそのドメイン構造を示す。また、表2に各種微生物におけるPUFA-PKSを構成する蛋白質のアミノ酸配列及び塩基配列の例を示す。
【0083】
【0084】
PUFA-PKS活性を有する蛋白質複合体を構成する蛋白質をコードする塩基配列としては、他の蛋白質と協働してPUFA-PKS活性を有する蛋白質をコードする塩基配列であれは特に制限されず、例えば表2に示す塩基配列、該塩基配列と少なくとも95%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有し、かつ、該塩基配列によりコードされる蛋白質が他の蛋白質と協働してPUFA-PKS活性を有する蛋白質をコードする塩基配列が挙げられる。
【0085】
協働してPUFA-PKS活性を有する蛋白質複合体を構成する蛋白質の組合せとしては、蛋白質複合体がPUFA-PKS活性を有し、且つPS-DHドメインがFabA-DHドメインよりも高い3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を示す限り特に制限されず、例えば下記組合せが挙げられる。下記(i)~(iv)において、各蛋白質のアミノ酸配列は表2に示す通りである。
(i)PhoA、PhoB、PhoC、PhoD、EpaE、AraB
(ii)EpaA、PhoB、PhoC、PhoD、EpaE、AraB
(iii)EpaA、AraB、AraC、AraD、EpaE
(iv)PhoA、AraB、AraC、AraD、EpaE
【0086】
〔微生物の造成方法〕
微生物(1)は、PUFA代謝経路を有する微生物を宿主生物として、3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性が、内在のFabA-DHドメインよりも高い、外来のPS-DHドメインをコードする遺伝子、又は該PS-DHドメインを有する蛋白質をコードする遺伝子を導入して形質転換することにより得られる。
【0087】
微生物(2)は、PUFA代謝経路を有さない微生物を宿主生物として、PUFA-PKS活性を有する各ドメインをコードする遺伝子、又はPUFA-PKSを構成する蛋白質をコードする遺伝子を導入し、該遺伝子の導入によって宿主生物において発現するPUFA-PKS活性を有する各ドメインのうち、PS-DHドメインをFabA-DHドメインと比較して高い3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を示すドメインとすることにより得られる。
【0088】
PS-DHドメインをコードする遺伝子の導入としては、自律複製可能なプラスミドとして当該宿主細胞中に存在する場合、宿主細胞中の置換対象の遺伝子を対応する外来の遺伝子に置換する場合、外来のPS-DHドメインをコードする遺伝子を当該宿主細胞中の染色体DNA中のPUFA-PKSをコードする遺伝子とは別の領域に組み込む場合を含む。本発明において遺伝子を導入する際には、宿主となる微生物のコドン使用頻度を参考に、配列の至適化を行うことが好ましい。
【0089】
また、PUFA-PKSを構成する各ドメインをコードする遺伝子、又はPUFA-PKSを構成する蛋白質をコードする遺伝子は、それぞれ単独で導入してもよいし、複数を組み合わせて導入してもよく、最終的にPUFA-PKS活性を有する蛋白質複合体を発現し、且つFabA-DHドメインよりも高い3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を示すPS-DHドメインを有する微生物が得られればよい。
【0090】
本明細書において、「遺伝子」とは、蛋白質のコーディング領域に加え、転写調節領域、プロモーター領域及びターミネーター領域などを含んでもよいDNAをいう。宿主生物に細菌などの原核生物を親株として用いる場合は、該DNAとしては、リボソーム結合領域であるシャイン-ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6~18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。該DNAにおいては、該DNAの発現に転写終結因子は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。
【0091】
宿主生物に導入する遺伝子は、例えば、適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入した組換え遺伝子とすることにより、宿主細胞に導入することができる。発現ベクターには、プロモーター、転写終結シグナル、形質転換体を選択するための選択マーカー遺伝子(例えば、カナマイシン耐性遺伝子、ストレプトマイシン耐性遺伝子、カルボキシン耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子等の薬剤耐性遺伝子、ロイシン、ヒスチジン、メチオニン、アルギニン、トリプトファン、リジン等のアミノ酸要求変異を相補する遺伝子等、ウラシル、アデニン等の核酸塩基要求性変異を相補する遺伝子等)も含むことができる。ウラシル要求株の場合、マーカー遺伝子として、オロチジン-5’-リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(ura3遺伝子)、又はオロチジル酸ピロホスホリラーゼ遺伝子(ura5遺伝子)を使用することができる。
【0092】
プロモーターとして、構造性プロモーターであるか調節プロモーターであるかに拘わらず、RNAポリメラーゼをDNAに結合させ、RNA合成を開始させるDNAの塩基配列と定義される。強いプロモーターとはmRNA合成を高頻度で開始させるプロモーターであり、好適に使用される。lac系、trp系、TAC又はTRC系、λファージの主要オペレーター及びプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、解糖系酵素(例えば、3-ホスホグリセレートキナーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素)、グルタミン酸デカルボキシラーゼA、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼに対するプロモーター等が、その宿主細胞の性質等に応じて利用可能である。
【0093】
プロモーター及びターミネーター配列のほかに、他の調節エレメントとして、例えば、選択マーカー、増幅シグナル、複製起点などが挙げられる。好ましい調節配列としては、例えば、”Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185”、Academic Press(1990)に記載されている配列が挙げられる。
【0094】
ベクターとして、目的とする遺伝子を発現させることができれば、特に限定されない。ベクターを構築するための試薬類、例えば制限酵素又はライゲーション酵素等の種類についても特に限定されず、市販品を適宜用いることができる。
【0095】
宿主生物として、ラビリンチュラ類微生物を用いる場合のプロモーターとしては、ラビリンチュラ類微生物の細胞中で機能するプロモーターであれば特に限定されず、例えば、アクチンプロモーター、チューブリンプロモーター、Elongation factor Tuプロモーター、解糖系遺伝子の発現プロモーターが挙げられる。
【0096】
親株にエシェリヒア属に属する微生物を用いる場合は、発現ベクターとして、例えば、pColdI(タカラバイオ社製)、pET21a、pCOLADuet-1、pACYCDuet-1、pCDF-1b、pRSF-1b(いずれもノバジェン社製)、pMAL-c2x(ニューイングランドバイオラブス社製)、pGEX-4T-1(ジーイーヘルスケアバイオサイエンス社製)、pTrcHis(インビトロジェン社製)、pSE280(インビトロジェン社製)、pGEMEX-1(プロメガ社製)、pQE-30(キアゲン社製)、pET-3(ノバジェン社製)、pTrc99A(ジーイーヘルスケアバイオサイエンス社製)、pKYP10(日本国特開昭58-110600号公報)、pKYP200[Agric.Biol.Chem.,48,669(1984)]、pLSA1[Agric.Biol.Chem.,53,277(1989)]、pGEL1[Proc.Natl.Acad.Sci., USA,82,4306(1985)]、pBluescriptII SK(+)、pBluescriptII KS(-)(ストラタジーン社製)、pTrS30[エシェリヒア・コリ JM109/pTrS30(Ferm BP-5407)より調整]、pTrS32[エシェリヒア・コリ JM109/pTrS32(Ferm BP-5408)より調整]、pTK31[APPLIED AND ENVIRONMENTAL MICROBIOLOGY、2007、Vol.73、No.20、p6378-6385]、pPAC31(国際公開第98/12343号)、pUC19[Gene,33,103(1985)]、pSTV28(タカラバイオ社製)、pUC118(タカラバイオ社製)、pPA1(日本国特開昭63-233798号公報)、pHSG298(タカラバイオ社製)、pUC18(タカラバイオ社製)が挙げられる。
【0097】
上記発現ベクターを用いる場合のプロモーターとしては、エシェリヒア属に属する微生物の細胞中で機能するプロモーターであれば特に限定されないが、例えば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター(Plac)、PLプロモーター、PRプロモーター、PSEプロモーター、T7プロモーター等の、エシェリヒア・コリやファージ等に由来するプロモーターを用いることができる。また、Ptrpを2つ直列させたプロモーター、tacプロモーター、trcプロモーター、lacT7プロモーター、letIプロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーターも用いることができる。
【0098】
親株にコリネ型細菌を用いる場合は、発現ベクターとしては、例えば、pCG1(日本国特開昭57-134500号公報)、pCG2(日本国特開昭58-35197号公報)、pCG4(日本国特開昭57-183799号公報)、pCG11(日本国特開昭57-134500号公報)、pCG116、pCE54、pCB101(いずれも日本国特開昭58-105999号公報)、pCE51、pCE52、pCE53[いずれもMolecular and General Genetics,196,175(1984)]等を挙げることができる。
【0099】
前記発現ベクターを用いる場合のプロモーターとしては、コリネ型細菌の細胞中で機能するプロモーターであれば特に限定されないが、例えば、P54-6プロモーター[Appl.Microbiol.Biotechnol.,53,674-679(2000)]を用いることができる。
【0100】
親株に酵母菌株を用いる場合には、発現ベクターとしては、例えば、YEp13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)、YCp51(ATCC37419)、pHS19、pHS15等が挙げられる。
【0101】
前記発現ベクターを用いる場合のプロモーターとしては、酵母菌株の細胞中で機能するプロモーターであれば特に限定されないが、例えば、PH05プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、gal 1プロモーター、gal 10プロモーター、ヒートショックポリペプチドプロモーター、MFα1プロモーター、CUP1プロモーター等のプロモーターが挙げられる。
【0102】
導入する遺伝子を宿主生物の染色体に組み込む方法としては、相同組換え法を用いることができる。相同組換え法としては、例えば、導入したい親株内では自律複製できない薬剤耐性遺伝子を有するプラスミドDNAと連結して作製できる相同組換え系を利用して、組換え遺伝子を導入する方法を挙げることができる。エシェリヒア・コリで頻用される相同組換えを利用した方法としては、ラムダファージの相同組換え系を利用して、組換え遺伝子を導入する方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97,6641-6645(2000)]を挙げることができる。
【0103】
さらに、導入する遺伝子と共に染色体上に組み込まれた枯草菌レバンシュークラ―ゼによって大腸菌がシュークロース感受性となることを利用した選択法や、ストレプトマイシン耐性の変異rpsL遺伝子を有する大腸菌に野生型rpsL遺伝子を組み込むことによって大腸菌がストレプトマイシン感受性となることを利用した選択法[Mol.Microbiol.,55,137(2005)、Biosci.Biotechnol.Biochem.,71,2905(2007)]等を用いて、親株の染色体DNA上の目的の領域が組換え体DNAに置換された微生物を取得することができる。
【0104】
また、相同組換え法としては、例えば、アグロバクテリウムを介したATMT法[Appl.Environ.Microbiol.,(2009),vol.75,p.5529-5535]が挙げられる。さらに、目的の形質を安定して保持する形質転換体を得ることができれば、ATMT法の改良法等を含み、これらに限定されない。
【0105】
導入する遺伝子を宿主生物において自律複製可能なプラスミドとして導入させる方法としては、例えば、カルシウムイオンを用いる方法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,69,2110(1972)]、プロトプラスト法(日本国特開昭63-248394号公報)、エレクトロポレーション法[Nucleic Acids Res.,16,6127(1988)]等の方法を挙げることができる。
【0106】
上記方法により取得した微生物が目的の微生物であることは、該微生物を培養し、その培養物に蓄積されたPUFAをガスクロマトグラフィーで検出するとともに、上記した方法によりPS-DHドメインがFabA-DHドメインよりも高い3-hydroxyhexanoyl ACPに対する活性を示すか否かを評価することにより、確認することができる。
【0107】
〔PUFA又はPUFA含有組成物の製造法〕
本発明は、上記造成された微生物を培地に培養し、培養物中にPUFA又はPUFA含有組成物を生成、蓄積させ、該培養物からPUFA又はPUFA含有組成物を採取することを特徴とする、PUFA又はPUFA含有組成物の製造法を含む。
【0108】
PUFA、又はPUFA含有組成物に含有されるPUFAは、ω6PUFAが好ましく、例えばDPA又はARAを挙げることができる。PUFA含有組成物は、例えば、PUFA含有油脂又はPUFA含有リン脂質を、好ましくはPUFA含有油脂を挙げることができる。該微生物の培養物は、該微生物を適当な培地に接種して、常法にしたがって培養することにより得ることができる。
【0109】
培地としては、炭素源、窒素源及び無機塩等を含む公知の培地をいずれも使用できる。例えば、炭素源としてはグルコース、フルクトース、ガラクトース等の炭水化物の他、オレイン酸、大豆油などの油脂類や、グリセロール、酢酸ナトリウムなどが挙げられる。これらの炭素源は、例えば、培地1リットル当たり20~300gの濃度で使用できる。特に好ましい態様によれば、初発の炭素源を消費した後に、炭素源をフィードすることにより引き続き培養できる。このような条件で培養することにより、消費させる炭素源の量を増大させて、PUFA含有組成物の生産量を向上できる。
【0110】
また、窒素源としては、例えば、酵母エキス、コーンスティープリカー、ポリペプトン、グルタミン酸ナトリウム、尿素等の有機窒素、又は酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、アンモニア等の無機窒素が挙げられる。無機塩としては、リン酸カリウム等を適宜組み合わせて使用できる。
【0111】
上記の各成分を含有する培地は、適当な酸又は塩基を加えることによりpHを4.0~9.5の範囲内に調整した後、オートクレーブにより殺菌して使用することが好ましい。培養温度は、一般的には10~45℃であり、好ましくは20~37℃である。培養温度は、PUFA含有組成物を生産しうる培養温度に制御することが好ましい。培養時のpHは、一般的には3.5~9.5であり、好ましくは4.5~9.5である。特に好ましいpHは目的によって異なり、油脂を多く生産するためには、pH5.0~8.0である。
【0112】
培養時間は、例えば2~7日間とすることができ、通気攪拌培養等で培養を行うことができる。培養物から培養液と微生物とを分離する方法は、当業者により公知の常法により行うことができ、例えば、遠心分離法や濾過等により行うことができる。上記の培養物から分離した微生物を、例えば超音波やダイノミルなどによって破砕した後、例えば、クロロホルム、ヘキサン、ブタノール等による溶媒抽出を行うことにより、PUFA含有組成物を得ることができる。
【0113】
上記の製造法で製造されるPUFA含有組成物は、例えば、低温溶媒分別法[高橋是太郎,油化学,40:931-941(1991)]、又はリパーゼ等の加水分解酵素で短鎖の脂肪酸を遊離除去する方法[高橋是太郎,油化学,40:931-941(1991)]等の方法により、PUFA含有組成物を濃縮して、PUFA含量が高いPUFA含有組成物を得ることができる。
【0114】
PUFA含有組成物からPUFAを分離して採取することにより、PUFAを製造できる。例えば、加水分解法によりPUFA含有組成物からPUFAを含有する混合脂肪酸を調整した後、例えば、尿素付加法、冷却分離法、高速液体クロマトグラフィー法又は超臨界クロマトグラフィー法などにより、PUFAを分離して採取することにより、PUFAを製造できる。
【0115】
また、PUFA含有組成物からPUFAアルキルエステルを分離して採取することにより、PUFAアルキルエステルを製造できる。PUFAアルキルエステルは、PUFAアルキルエステルであれば特に限定されないが、好ましくは、PUFAエチルエステルが挙げられる。
【0116】
PUFA含有組成物からPUFAアルキルエステルを分離して採取するには、例えばアルコーリシス法によりPUFA含有組成物からPUFAアルキルエステルを含有する混合脂肪酸アルキルエステルを調整した後、例えば、尿素付加法、冷却分離法、高速液体クロマトグラフィー法又は超臨界クロマトグラフィー法等により、PUFAアルキルエステルを分離して採取することにより行うことができる。
【実施例】
【0117】
以下に実施例を示すが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0118】
[実施例1]
ARAの製造法-1
1.各発現プラスミドの造成
[pET-phoAの造成]
常法により抽出したPhotobacterium profundum SS99(ATCC BAA-1252)株のゲノムDNAを鋳型に、配列番号107及び108で表わされるプライマーを用いてPCRを行い、PhoA蛋白質をコードするDNA(配列番号65で表わされる塩基配列からなるDNA)の3’末端領域(633番目の塩基から停止コドンまで)を増幅した。
【0119】
得られたDNA断片を制限酵素BamHI及びEagIで処理し、同一の制限酵素処理を行った大腸菌ベクターpBluescript II SK(+)(アジレント・テクノロジー社製)とライゲーションすることにより、pBlue-PhoA-C-terminalを得た。
【0120】
次に、常法により抽出したPhotobacterium profundum SS99株のゲノムDNAを鋳型に、配列番号109及び110で表わされるプライマーを用いてPCRを行い、PhoA蛋白質をコードするDNAの5’末端領域(開始コドンから633番目の塩基まで)を増幅した。
【0121】
得られたDNA断片及び大腸菌ベクターpET21a(メルクミリポア社製)を制限酵素NdeI及びEagIでそれぞれ処理し、得られた制限酵素処理断片をライゲーションすることにより、pET-phoA-N-terminalを得た。
【0122】
続いて、pBlue-PhoA-C-terminal及びpET-phoA-N-terminalを制限酵素EagI及びXhoIでそれぞれ処理し、得られた制限酵素処理断片をライゲーションすることにより、pET-phoAを得た。
【0123】
[pACYC-SopfaEの造成]
林ら(Sci.Rep.,2016,6,35441)と同様の方法により、Shewanella oneidensis MR-1(ATCC BAA-1096)株由来のEpaE蛋白質をコードするDNA(配列番号81で表わされる塩基配列からなるDNA)を有する発現プラスミドpACYC-SopfaEを得た。
【0124】
[pCOLA-phoD-phoBの造成]
常法により抽出したPhotobacterium profundum SS99株のゲノムDNAを鋳型に、配列番号111及び112で表わされるプライマーを用いてPCRを行い、PhoD蛋白質をコードするDNA(配列番号71で表わされる塩基配列からなるDNA)を有するDNA断片を増幅した。
【0125】
得られたDNA断片を制限酵素NdeI及びBamHIで処理し、NdeI及びBglIIで制限酵素処理を行った大腸菌ベクターpCOLADuet-1(メルクミリポア社製)とライゲーションすることにより、pCOLA-phoDを得た。
【0126】
常法により抽出したPhotobacterium profundum SS99株のゲノムDNAを鋳型に、配列番号113及び114で表わされるプライマーを用いてPCRを行い、PhoB蛋白質をコードするDNA(配列番号67で表わされる塩基配列からなるDNA)を有するDNA断片を増幅した。
【0127】
得られたDNA断片を制限酵素NdeI及びBamHIで処理し、NdeI及びBglIIで制限酵素処理を行ったpACYC-SopfaEとライゲーションすることにより、pACYC-epaE-phoBを得た。
【0128】
pACYC-epaE-phoBを鋳型に、配列番号114及び115で表わされるプライマーを用いてPCRを行い、PhoB蛋白質をコードするDNAを有するDNA断片を得た。また、大腸菌ベクターpCOLADuet-1 (メルクミリポア社製)を鋳型に、配列番号116及び117で表わされるプライマーを用いてPCRを行い、T7プロモーター領域のDNA断片を増幅した。
【0129】
得られた2つのDNA断片をオーバーラップエクステンションPCRにてアッセンブルした。得られたDNA断片及びpCOLA-phoDを制限酵素ApaI及びBamHIでそれぞれ処理し、得られた制限酵素処理断片をライゲーションすることにより、pCOLA-phoD-phoBを得た。
【0130】
[pCDF-phoCの造成]
常法により抽出したPhotobacterium profundum SS99株のゲノムDNAを鋳型に、配列番号118及び119で表わされるプライマーを用いてPCRを行い、PhoC蛋白質をコードするDNA(配列番号69で表わされる塩基配列からなるDNA)の5’末端領域(開始コドンから993番目の塩基まで)を増幅した。
【0131】
得られたDNA断片及び大腸菌ベクターpUC18(タカラバイオ社製)を制限酵素NdeI及びXbaIでそれぞれ処理し、得られた制限酵素処理断片をライゲーションした。次に、得られたプラスミド及びpCDF-orfB(Sci.Rep.,2016,6,35441)を制限酵素NdeI及びBamHIで処理し、得られた制限酵素処理断片をライゲーションすることにより、pCDF-phoC-N-terminalを得た。
【0132】
続いて、常法により抽出したPhotobacterium profundum SS99株のゲノムDNAを鋳型に、配列番号120及び121で表わされるプライマーを用いてPCRを行い、PhoC蛋白質をコードするDNAの3’末端領域(933番目の塩基から停止コドンまで)を増幅した。得られたDNA断片及びpCDF-phoC-N-terminalを制限酵素NcoI及びBamHIで処理し、得られた制限酵素処理断片をライゲーションすることにより、pCDF-phoCを得た。
【0133】
[pET-epaAの造成]
常法により抽出したShewanella oneidensis MR-1(ATCC BAA-1096)株のゲノムDNAを鋳型に、配列番号122及び123で表わされるプライマーを用いてPCRを行い、EpaA蛋白質をコードするDNA(配列番号73で表わされる塩基配列からなるDNA)を有するDNA断片を増幅した。
【0134】
得られたDNA断片及び大腸菌ベクターpET21a(メルクミリポア社製)を制限酵素EcoRI及びXhoIで処理し、得られた制限酵素処理断片をライゲーションすることにより、pET-epaA’を得た。
【0135】
次に、pET-epaA’を鋳型に、配列番号124、125、126及び127で表わされるプライマーを用いてオーバーラップエクステンションPCRを行い、5’末端のHis-tag遺伝子を除いたEpaA遺伝子を増幅した。
【0136】
得られたDNA断片及びpET-epaA’を制限酵素ApaI及びSalIで処理し、得られた制限酵素処理断片をライゲーションすることにより、pET-epaAを得た。
【0137】
[pET-araAの造成]
pSTV29-Plac-pfaAB[FEBS Lett.,2014,588(21),4032-4036]を鋳型に、配列番号128及び129で表わされるプライマーを用いてPCRを行い、AraA蛋白質をコードするDNA(配列番号55で表わされる塩基配列からなるDNA)を有するDNA断片を増幅した。
【0138】
得られたDNA断片及び大腸菌ベクターpET21a(メルクミリポア社製)を制限酵素NdeI及びBamHIで処理し、得られた制限酵素処理断片をライゲーションすることにより、pET-araAを得た。
【0139】
[pACYC-epaE-araBの造成]
pSTV29-Plac-pfaAB(FEBS Lett.,2014,588(21),4032-4036)を鋳型に、配列番号130及び131で表わされるプライマーを用いてPCRを行い、AraB蛋白質をコードするDNA(配列番号57で表わされる塩基配列からなるDNA)を有するDNA断片を増幅した。
【0140】
得られたDNA断片を制限酵素NdeI及びBamHIで処理し、NdeI及びBglIIで処理したpACYC-SopfaEとライゲーションすることにより、pACYC-epaE-araBを得た。
【0141】
[pCDF-araCの造成]
pMW219-Plac-pfaCD[FEBS Lett.,2014,588(21),4032-4036]を鋳型に、配列番号132及び133で表わされるプライマーを用いてPCRを行い、AraC蛋白質をコードするDNA(配列番号59で表わされる塩基配列からなるDNA)を有するDNA断片を増幅した。
【0142】
得られたDNA断片及びpCDF-orfB(Sci.Rep.,2016,6,35441)を制限酵素NdeI及びBamHIで処理し、得られた制限酵素処理断片をライゲーションすることにより、pCDF-araCを得た。
【0143】
[pCOLA-araDの造成]
pMW219-Plac-pfaCD[FEBS Lett.,2014,588(21),4032-4036]を鋳型に、配列番号134及び135で表わされるプライマーを用いてPCRを行い、AraD蛋白質をコードするDNA(配列番号61で表わされる塩基配列からなるDNA)を有するDNA断片を増幅した。
【0144】
得られたDNA断片を制限酵素NdeI及びBamHIで処理し、NdeI及びBglIIで制限酵素処理を行った大腸菌ベクターpCOLADuet-1 (メルクミリポア社製)とライゲーションすることにより、pCOLA-araDを得た。
【0145】
2.ARAの製造-1
林ら(Sci.Rep.,2016,6,35441)と同様の方法で、アシル-CoAデヒドロゲナーゼFadE(配列番号106で表わされるアミノ酸配列からなる蛋白質)をコードする遺伝子が欠失した大腸菌BLR(DE3)ΔfadE株を造成した。
【0146】
〈1〉pET-phoA、pCDF-phoC、pCOLA-phoD-phoB及びpACYC-SopfaE、又は〈2〉pET-phoA、pCDF-phoC、pCOLA-phoD-phoB及びpACYC-epaE-araBで大腸菌BLR(DE3)ΔfadE株を形質転換した。
【0147】
得られた大腸菌を、アンピシリン100mg/L、カナマイシン20mg/L、クロラムフェニコール30mg/L、ストレプトマイシン20mg/Lを含むTerrific Broth培地(べクトン・ディッキンソンアンドカンパニー社製)2mLへ植菌し、30℃にて16時間振とう培養を行った。
【0148】
得られた培養液1mLを、新たに調製した、アンピシリン100mg/L、カナマイシン20mg/L、クロラムフェニコール30mg/L、ストレプトマイシン20mg/L、1mM IPTGを含むTerrific Broth培地(べクトン・ディッキンソンアンドカンパニー社製)20mLが入った200mL羽根つきフラスコに植菌し、230rpm、20℃にて48時間培養した。
【0149】
培養後、培養液を採取し、Bligh―Dyer法[Bligh,e.G.and Dyer,W.J.(1959)Can.J.Biochem.Physiol.37,911-917]にて脂質抽出した後、三フッ化ホウ素・メタノール溶液にて脂肪酸をメチル化し、ガスクロマトグラフィー質量分析法にて分析した。
【0150】
培養液中のARA、EPA、ジホモ-γ-リノレン酸(以下、DGLAという。)及びエイコサテトラエン酸(以下、ETAという。)を測定した結果を表3に示す。
【0151】
【0152】
表3に示すとおり、PhoA蛋白質、PhoB蛋白質、PhoC蛋白質、PhoD蛋白質及びEpaE蛋白質を生産する大腸菌は主にEPAを生産しARAを生産しなかったのに対し、PhoA蛋白質、PhoB蛋白質、PhoC蛋白質、PhoD蛋白質及びEpaE蛋白質に加えてAraB蛋白質も生産する大腸菌はEPAと同等量のARAを生産した。
【0153】
これより、EPA生産型のPUFA-PKSに由来するPhoA蛋白質、PhoB蛋白質、PhoC蛋白質及びPhoD蛋白質に加えてAraB蛋白質を生産する大腸菌を用いることにより、効率的にω6脂肪酸であるARAを製造できることがわかった。
【0154】
3.ARAの製造-2
〈3〉pET-epaA、pCDF-phoC、pCOLA-phoD-phoB及びpACYC-SopfaE、又は〈4〉pET-epaA、pCDF-phoC、pCOLA-phoD-phoB及びpACYC-epaE-araBで大腸菌BLR(DE3)ΔfadE株を形質転換した。
【0155】
得られた大腸菌を、アンピシリン100mg/L、カナマイシン20mg/L、クロラムフェニコール30mg/L、ストレプトマイシン20mg/Lを含むTerrific Broth培地(べクトン・ディッキンソンアンドカンパニー社製)2mLへ植菌し、30℃にて16時間振とう培養を行った。
【0156】
得られた培養液1mLを、新たに調製した、アンピシリン100mg/L、カナマイシン20mg/L、クロラムフェニコール30mg/L、ストレプトマイシン20mg/L、1mM IPTGを含むTerrific Broth培地(べクトン・ディッキンソンアンドカンパニー社製)20mLが入った200mL羽根つきフラスコに植菌し、230rpm、20℃にて48時間培養した。
【0157】
培養後、培養液を採取し、Bligh―Dyer法にて脂質抽出した後、三フッ化ホウ素・メタノール溶液にて脂肪酸をメチル化し、ガスクロマトグラフィー質量分析法にて分析した。
【0158】
培養液中のARA、EPA、DGLA及びETAを測定した結果を表4に示す。
【0159】
【0160】
表4に示すとおり、EpaA蛋白質、PhoB蛋白質、PhoC蛋白質、PhoD蛋白質及びEpaE蛋白質を生産する大腸菌は主にEPAを生産しARAを生産しなかったのに対し、EpaA蛋白質、PhoB蛋白質、PhoC蛋白質、PhoD蛋白質及びEpaE蛋白質に加えてAraB蛋白質も生産する大腸菌はEPAと同等以上のARAを生産した。
【0161】
これより、EPA生産型のPUFA-PKSに由来するEpaA蛋白質、PhoB蛋白質、PhoC蛋白質及びPhoD蛋白質に加えてAraB蛋白質を生産する大腸菌を用いることにより、効率的にω6脂肪酸であるARAを製造できることがわかった。
【0162】
4.ARAの製造-3
〈5〉pET-araA、pCDF-araC、pCOLA-araD及びpACYC-epaE-araB、〈6〉pET-epaA、pCDF-araC、pCOLA-araD及びpACYC-epaE-araB、又は〈7〉pET-phoA、pCDF-araC、pCOLA-araD及びpACYC-epaE-araBで大腸菌BLR(DE3)ΔfadE株を形質転換した。
【0163】
得られた大腸菌を、アンピシリン100mg/L、カナマイシン20mg/L、クロラムフェニコール30mg/L、ストレプトマイシン20mg/Lを含むTerrific Broth培地(べクトン・ディッキンソンアンドカンパニー社製)2mLへ植菌し、30℃にて16時間振とう培養を行った。
【0164】
得られた培養液1mLを、新たに調製した、アンピシリン100mg/L、カナマイシン20mg/L、クロラムフェニコール30mg/L、ストレプトマイシン20mg/L、1mM IPTGを含むTerrific Broth培地(べクトン・ディッキンソンアンドカンパニー社製)20mLが入った200mL羽根つきフラスコに植菌し、230rpm、20℃にて48時間培養した。
【0165】
培養後、培養液を採取し、Bligh―Dyer法にて脂質抽出した後、三フッ化ホウ素・メタノール溶液にて脂肪酸をメチル化し、ガスクロマトグラフィー質量分析法にて分析した。
【0166】
培養液中のARA、EPA、DGLA及びETAを測定した結果を表5に示す。
【0167】
【0168】
表5に示すとおり、AraA蛋白質、AraB蛋白質、AraC蛋白質、AraD蛋白質及びEpaE蛋白質を生産する大腸菌はいずれのPUFAも検出限界以下であったのに対し、EpaA蛋白質、AraB蛋白質、AraC蛋白質、AraD蛋白質及びEpaE蛋白質を生産する大腸菌、並びにPhoA蛋白質、AraB蛋白質、AraC蛋白質、AraD蛋白質及びEpaE蛋白質を生産する大腸菌は、著量のARAを生産した。
【0169】
これより、EpaA蛋白質又はPhoA蛋白質、並びにAraB蛋白質、AraC蛋白質及びAraD蛋白質を生産する大腸菌を用いることにより、既知のARA生産型のPUFA-PKSを構成する蛋白質であるAraA蛋白質、AraB蛋白質、AraC蛋白質及びAraD蛋白質を生産する大腸菌を用いた場合と比べ、効率的にω6脂肪酸であるARAを製造できることがわかった。
【0170】
[実施例2]
DPAの製造法
1.各発現プラスミドの造成
[pET-orfA]
林ら(Sci.Rep.,2016,6,35441)と同様の方法により、Shizochytorium sp.(ATCC20888)株由来のOrfA蛋白質をコードするDNA(配列番号83で表わされる塩基配列からなるDNA)を有する発現プラスミドpET-orfAを得た。
【0171】
[pCDF-orfB]
林ら(Sci.Rep.,2016,6,35441)と同様の方法により、Shizochytorium sp.(ATCC20888)株由来のOrfB蛋白質をコードするDNA(配列番号85で表わされる塩基配列からなるDNA)を有する発現プラスミドpCDF-orfBを得た。
【0172】
[pCOL92]
林ら(Sci.Rep.,2016,6,35441)と同様の方法により、Shizochytorium sp.(ATCC20888)株由来のOrfC蛋白質をコードするDNA(配列番号87で表わされる塩基配列からなるDNA)を有する発現プラスミドpET-orfAを得た。
【0173】
2.DPAの製造
〈8〉pET-orfA、pCDF-orfB、pCOL92及びpACYC-SopfaE、又は〈9〉pET-orfA、pCDF-orfB、pCOL92及びpACYC-epaE-araBで大腸菌BLR(DE3)ΔfadE株を形質転換した。
【0174】
得られた大腸菌を、アンピシリン100mg/L、カナマイシン20mg/L、クロラムフェニコール30mg/L、ストレプトマイシン20mg/Lを含むTerrific Broth培地(べクトン・ディッキンソンアンドカンパニー社製)2mLへ植菌し、30℃にて16時間振とう培養を行った。
【0175】
得られた培養液1mLを、新たに調製した、アンピシリン100mg/L、カナマイシン20mg/L、クロラムフェニコール30mg/L、ストレプトマイシン20mg/L、1mM IPTGを含むTerrific Broth培地(べクトン・ディッキンソンアンドカンパニー社製)20mLが入った200mL羽根つきフラスコに植菌し、230rpm、20℃にて48時間培養した。
【0176】
培養後、培養液を採取し、Bligh―Dyer法にて脂質抽出した後、三フッ化ホウ素・メタノール溶液にて脂肪酸をメチル化し、ガスクロマトグラフィー質量分析法にて分析した。
【0177】
培養液中のDPA、DHA、EPA及びETAを測定した結果を表6に示す。
【0178】
【0179】
表6に示すとおり、OrfA蛋白質、OrfB蛋白質、OrfC蛋白質及びEpaE蛋白質を生産する大腸菌は主にDHAを生産したのに対し、OrfA蛋白質、OrfB蛋白質、OrfC蛋白質及びEpaE蛋白質に加えてAraB蛋白質も生産する大腸菌はDHAと同等以上のDPAを生産した。
【0180】
これより、DHA生産型のPUFA-PKSに由来するOrfA蛋白質、OrfB蛋白質及びOrfC蛋白質に加えてAraB蛋白質も生産する大腸菌を用いることにより、効率的にω6脂肪酸であるDPAを製造できることがわかった。
【0181】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2018年8月10日付けで出願された日本特許出願(特願2018-151233)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【配列表】