(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用シリコン-黒鉛複合電極活物質、これを含む電極およびリチウム二次電池、ならびにシリコン-黒鉛複合電極活物質の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/587 20100101AFI20240820BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240820BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240820BHJP
C01B 32/21 20170101ALI20240820BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M4/36 E
C01B32/21
(21)【出願番号】P 2020552214
(86)(22)【出願日】2019-09-11
(86)【国際出願番号】 KR2019011870
(87)【国際公開番号】W WO2020235748
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】10-2019-0058161
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520315958
【氏名又は名称】リブエナジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ホン スー ジン
【審査官】森 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-125794(JP,A)
【文献】特開2016-134382(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0086870(KR,A)
【文献】特開2008-186732(JP,A)
【文献】特開2016-051557(JP,A)
【文献】特表2018-524774(JP,A)
【文献】特開2018-181791(JP,A)
【文献】特開2013-065547(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0118154(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0078176(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第106145096(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/38
H01M 4/587
H01M 4/36
C01B 32/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池に利用され得るシリコン-黒鉛複合電極活物質を製造する方法であって、
母材となる黒鉛素材を準備する黒鉛母材準備段階と、
前記黒鉛母材にシリコン層を形成するシリコン層形成段階と、
前記シリコン層が形成された黒鉛を球状化させてシリコンが黒鉛の内部にのみ位置するように機械的に組み立てる再組立段階を含
み、
前記シリコン層形成段階では化学的気相蒸着を通じて板状の黒鉛にシリコン層が薄膜層の形態で蒸着されて形成される、シリコン-黒鉛複合電極活物質の製造方法。
。
【請求項2】
前記シリコン層形成段階ではSiH
4、Si
2H
6、Si
3H
8、SiCl
4、SiHCl
3、Si
2Cl
6、SiH
2Cl
2、SiH
3Clのうち一つ以上を原料ガスとして利用してシリコン層を形成する、請求項
1に記載のシリコン-黒鉛複合電極活物質の製造方法。
【請求項3】
前記シリコン層形成段階では前記黒鉛母材に
20nm~500nm厚さのシリコン層が形成される、請求項
1に記載のシリコン-黒鉛複合電極活物質の製造方法。
【請求項4】
前記シリコン層形成段階では前記原料ガスが補助ガスとともに供給されながら前記黒鉛母材にシリコン層が蒸着される、請求項
2に記載のシリコン-黒鉛複合電極活物質の製造方法。
【請求項5】
前記補助ガスは炭素、窒素、ゲルマニウムのうち一つ以上を含む、請求項
4に記載のシリコン-黒鉛複合電極活物質の製造方法。
【請求項6】
前記再組立段階は、
前記シリコン層が形成された前記黒鉛母材を球状化装備内に投入した後、高速で回転させながらシリコン-黒鉛複合体を機械的に再組立するように構成される、
または、
前記シリコン層が形成された前記黒鉛母材を球状化装備内に投入して高速で回転させた後、追加の黒鉛素材をさらに投入して高速回転させながらシリコン-黒鉛複合体を機械的に再組立するように構成される、
請求項
5に記載のシリコン-黒鉛複合電極活物質の製造方法。
【請求項7】
前記再組立段階後には表面に外部コーティング層を形成する表面コーティング段階がさらに含まれる、請求項
6に記載のシリコン-黒鉛複合電極活物質の製造方法。
【請求項8】
前記黒鉛母材準備段階と前記シリコン層形成段階の間に前記黒鉛母材の表面を改質する表面改質段階がさらに含まれる、請求項
7に記載のシリコン-黒鉛複合電極活物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウム二次電池用電極活物質、これを含む電極および二次電池、ならびにシリコン-黒鉛複合電極活物質の製造方法に関し、より詳細には黒鉛とシリコンが複合されて高容量および高効率の充放電特性を提供できる電極活物質、これを含む電極および二次電池、ならびに電極活物質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の駆動用電源としてリチウム二次電池が注目を浴びており、このようなリチウム二次電池は携帯電話などのIT機器から電気車およびエネルギー貯蔵装置に至るまで、多様な分野で利用が大きく増加している趨勢である。
【0003】
リチウム二次電池の応用分野および需要が増加するにつれてリチウム二次電池の構造も多様に開発されており、電池の容量、寿命、性能、安全性などを向上させるための多様な研究開発が活発に行われている。
【0004】
一例として、従来にはリチウム二次電池の電極活物質(負極活物質)として黒鉛系の素材が主に利用されてきたが、黒鉛は単位質量当たりの容量が372mAh/g程度に過ぎないため高容量化に限界がある。そのため、二次電池の性能を十分に向上させるのに困難があり、最近ではシリコン(Si)、錫(Sn)、アンチモン(Sb)、アルミニウム(Al)等のように、リチウムと電気化学的な合金を形成する物質で黒鉛系の素材を代替しようとする研究が行われている。
【0005】
しかしながら、これらの物質はリチウムと電気化学的な合金を形成して充放電する過程で体積が膨張/収縮する特性を有しており、このような充放電による体積の変化は電極の体積の膨張を引き起こして二次電池のサイクル特性を低下させる問題がある。このため、これらの物質を利用して製造された電極活物質はまだ活発には商用化されていないのが実情である。
【0006】
例えば、黒鉛系素材を代替できる二次電池用電極活物質として最も注目されているシリコンは、シリコン一つ当たりにリチウムを4.4個まで吸収できるため高容量を提供することができるが、リチウムイオンを吸収する過程で体積が約4倍程度に膨張するため(因みに、従来に電極活物質として多く利用されている黒鉛は充放電時に約1.2倍程度の膨脹率を示す)、二次電池の充放電が続けられると電極の膨張が深化して二次電池のサイクル特性が急速に低下する問題がある。
【0007】
このような問題を解消するために、黒鉛などの炭素系素材にシリコンを混合して電極活物質を形成する技術が最近提案されている。例えば、特許文献1および特許文献2を参照すると、黒鉛などの炭素系素材にシリコン層を形成して二次電池の性能を改善する技術が開示されている。
【0008】
具体的には、特許文献1には、黒鉛などの炭素系素材の表面にシリコンコーティング層を形成することにより、黒鉛で形成されていた従来の電極活物質に比べて高い容量を確保するとともにシリコンの膨張/収縮による二次電池のサイクル性能の劣化を低減する方法が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示された電極活物質は、炭素系素材の外部表面にシリコン層が備えられる構造で形成されているため、外部のシリコン層が充放電過程で大きく膨張/収縮して、電極活物質が電極から電気的に短絡するか、電極活物質の表面が微粉化されて電解液との副反応が加速化するなどの問題で、二次電池の性能が低下する問題を依然として有している。
【0009】
一方、特許文献2には、黒鉛などの炭素系素材の内部にシリコンコーティング層を形成して電極活物質の性能を向上させる技術が開示されている。具体的には、特許文献2には、炭素系素材を球状化させて内部に空洞を形成した後、化学的気相蒸着(CVD;Chemical Vapor Deposition)を通じてシリコンコーティング層を蒸着することにより、炭素系素材の内部の空洞にシリコンコーティング層を形成する技術が開示されている。しかし、特許文献2に開示された技術の場合にも、球状化処理されて内部に空洞が形成された炭素系素材を反応チャンバーに入れ、原料ガスを注入してシリコンコーティング層を蒸着する過程で、炭素系素材の内部の空洞だけでなく炭素系素材の外部表面にも自然にシリコンコーティング層が蒸着されることになり、このように炭素系素材の外部表面に形成されたシリコンコーティング層は、充放電過程で膨張/収縮を繰り返すことにより、特許文献1と類似するように二次電池のサイクル特性を低下させる原因として作用することになる。
【0010】
このような問題点を改善するために、特許文献1および特許文献2には炭素系素材にシリコン層が形成された電極活物質の表面に炭素または伝導性コーティング層をさらに形成する構成が開示されているが、このような薄膜のコーティング層は電極を形成するために電極活物質を圧延する過程で破裂して、破裂した表面を通じてシリコンが露出するようになり、このように外部に露出したシリコンは電解液との副反応を加速化して二次電池の性能および寿命を低下させる原因として作用することになる。
【0011】
したがって、二次電池の分野では電池の容量を向上させるとともに、優秀なサイクル特性を確保できる、電極活物質およびその製造方法に対する開発が依然として要求されているのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】韓国特許第10-1628873号(登録日:2016.06.02.)
【文献】韓国特許第10-1866004号(登録日:2018.06.01.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は従来の二次電池用電極活物質の前述した問題点を解消するためのものであって、二次電池の容量を向上させるとともに優秀なサイクル特性を提供できる、二次電池用電極活物質、これを含む電極および二次電池、ならびに電極活物質を製造する製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した目的を達成するための本発明の代表的な構成は次の通りである。
【0015】
本発明の一態様によると、二次電池に利用され得るシリコン-黒鉛複合電極活物質が提供される。本発明の一態様に係るシリコン-黒鉛複合電極活物質は黒鉛素材にシリコンが混合されたシリコン-黒鉛複合体を単位粉末体として形成され、シリコン-黒鉛複合体は黒鉛素材の内部にシリコンが位置した形態で形成され、黒鉛素材の外部表面にはシリコンが露出しないように形成され得る。
【0016】
本発明の一態様によると、シリコン-黒鉛複合体に含まれるシリコンは、シリコンの全体重量の90%以上がシリコン-黒鉛複合体の外部表面から200nm以上の深さに位置するように構成され得る。
【0017】
本発明の一態様によると、シリコン-黒鉛複合体に含まれるシリコンは、すべてシリコン-黒鉛複合体の外部表面から200nm以上の深さに位置するように構成され得る。
【0018】
本発明の一態様によると、シリコン-黒鉛複合体に含まれるシリコンは、シリコン-黒鉛複合体の外部表面から1μm以上の深さに位置するように構成され得る。
【0019】
本発明の一態様によると、シリコン-黒鉛複合体に含まれるシリコンは、シリコン-黒鉛複合体の外部表面から3μm以上の深さに位置するように構成され得る。
【0020】
本発明の一態様によると、シリコン-黒鉛複合体に含まれるシリコンは、シリコン-黒鉛複合体の全体重量に対して10wt%を超過するように構成され得る。
【0021】
本発明の一態様によると、シリコン-黒鉛複合体に含まれるシリコンは、シリコン-黒鉛複合体の全体重量に対して15wt%を超過するように構成され得る。
【0022】
本発明の一態様によると、シリコンは、SiH4、Si2H6、Si3H8、SiCl4、SiHCl3、Si2Cl6、SiH2Cl2、SiH3Clのうち一つ以上を含む原料ガスを利用して黒鉛素材に蒸着され得る。
【0023】
本発明の一態様によると、シリコンは20nm~500nmの厚さの薄膜層で黒鉛素材に蒸着され得る。
【0024】
本発明の一態様によると、シリコンは、SiH4、Si2H6、Si3H8、SiCl4、SiHCl3、Si2Cl6、SiH2Cl2、SiH3Clのうち一つ以上を含む原料ガスが炭素、窒素、ゲルマニウムのうち一つ以上を含む補助ガスとともに供給されながら黒鉛素材に蒸着され得る。
【0025】
本発明の一態様によると、黒鉛素材に蒸着されるシリコン内には炭素、窒素、ゲルマニウムのうち一つ以上の元素がさらに含まれ得る。
【0026】
本発明の一態様によると、シリコン-黒鉛複合体に形成されるシリコン薄膜層は、非晶質または準結晶質のシリコン粒子で形成され得る。
【0027】
本発明の一態様によると、シリコン-黒鉛複合体の外周面に表面コーティング層がさらに形成され得る。
【0028】
本発明の一態様によると、前述したシリコン-黒鉛複合電極活物質を含むリチウム二次電池用負極が提供され得る。
【0029】
本発明の一態様によると、正極と、前述した負極と、正極と負極の間に位置する電解質を含む二次電池が提供され得る。
【0030】
本発明の一態様によると、二次電池に利用され得るシリコン-黒鉛複合電極活物質を製造する方法が提供される。本発明の一態様に係るシリコン-黒鉛複合電極活物質の製造方法は、母材となる黒鉛素材を準備する黒鉛母材準備段階と、黒鉛母材にシリコン層を形成するシリコン層形成段階と、シリコン層が形成された黒鉛を球状化させてシリコンが黒鉛の内部にのみ位置するように機械的に組み立てる再組立段階を含むことができる。
【0031】
本発明の一態様によると、シリコン層形成段階では、化学的気相蒸着を通じて板状の黒鉛にシリコン層が薄膜層の形態で蒸着されて形成され得る。
【0032】
本発明の一態様によると、シリコン層形成段階では、SiH4、Si2H6、Si3H8、SiCl4、SiHCl3、Si2Cl6、SiH2Cl2、SiH3Clのうち一つ以上を原料ガスとして利用してシリコン層を形成することができる。
【0033】
本発明の一態様によると、シリコン層形成段階では、母材黒鉛に20nm~500nm厚さのシリコン層が形成され得る。
【0034】
本発明の一態様によると、シリコン層形成段階では、原料ガスが補助ガスとともに供給されながら母材黒鉛にシリコン層が蒸着され得る。
【0035】
本発明の一態様によると、補助ガスは、炭素、窒素、ゲルマニウムのうち一つ以上を含むことができる。
【0036】
本発明の一態様によると、再組立段階は、シリコン層が形成された母材黒鉛を球状化装備内に投入した後、高速で回転させながらシリコン-黒鉛複合体を機械的に再組立するように構成され得る。
【0037】
本発明の一態様によると、再組立段階は、シリコン層が形成された母材黒鉛を球状化装備内に投入して高速で回転させた後、追加の黒鉛素材をさらに投入して高速回転させながらシリコン-黒鉛複合体を機械的に再組立するように構成され得る。
【0038】
本発明の一態様によると、再組立段階後には、表面に外部コーティング層を形成する表面コーティング段階がさらに含まれ得る。
【0039】
本発明の一態様によると、黒鉛母材準備段階とシリコン層形成段階の間に、黒鉛母材の表面を改質する表面改質段階がさらに含まれ得る。
【0040】
本発明の一態様によると、黒鉛母材準備段階で準備される母材黒鉛は、2μm~20μmの厚さを有する天然または人造の板状黒鉛であり得る。
【0041】
この他にも、本発明に係る電極活物質、これを含む電極(負極)および二次電池、電極活物質の製造方法には、本発明の技術的思想を害しない範囲で他の付加的な構成がさらに含まれ得る。
【発明の効果】
【0042】
本発明の一態様に係る電極活物質は、黒鉛素材にシリコンが含まれたシリコン-黒鉛複合体の構造で形成され、シリコン-黒鉛複合体に含まれるシリコンは黒鉛素材の内部にのみ位置し、黒鉛素材の外部表面には存在しないように構成されている。このため、電極活物質に含まれるシリコン素材によって二次電池の容量および性能が向上するとともに、シリコンの膨張/収縮による電極の体積膨張問題を減少させ、電極から電極活物質が電気的に短絡する危険を相当量抑制し、ひいては電極活物質の表面に露出したシリコンによって電解液との副反応が加速化する問題を減少させることによって、二次電池の寿命およびサイクル特性を大きく向上させる効果を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明の一実施形態に係る二次電池用電極活物質の走査電子顕微鏡(SEM)写真を例示する図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る二次電池用電極活物質の製造に利用され得る板状の黒鉛の走査電子顕微鏡(SEM)写真を例示する図である。
【
図3】
図2に図示された板状の黒鉛にシリコンコーティング層を形成した状態を例示する図である。
【
図4】シリコンコーティング層が形成された板状の黒鉛を球状化する過程中の電極活物質を例示する図である。
【
図5】表面改質工程前後の黒鉛の比表面積特性変化を例示する図である。
【
図6】球状化が完了した本発明の一実施形態に係るシリコン-黒鉛複合体を例示する図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るシリコン-黒鉛複合体(球状化が完了した状態)の断面構造を例示する図である。
【
図8】球状の黒鉛にシリコン層をコーティングした後、石油系ピッチで表面コーティングした従来のシリコン-黒鉛複合体[
図8(a)]と本発明の一実施形態に係るシリコン-黒鉛複合体[
図8(b)]の圧延後の極板の断面構造を例示する図である。
【
図9】従来のシリコン-黒鉛複合体と本発明の一実施形態に係るシリコン-黒鉛複合体の電気化学的性能試験結果を例示する図である。
【
図10】従来のシリコン-黒鉛複合体と本発明の一実施形態に係るシリコン-黒鉛複合体の電気化学的性能試験結果を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、添付した図面を参照して本発明の好ましい実施形態について本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるほど詳細に説明する。
【0045】
本発明を明確に説明するために本発明と関わらない部分に対する具体的な説明は省略し、明細書全体を通じて同じ構成要素に対しては同じ参照符号を付して説明する。また、図面に図示された各構成要素の形状および大きさは説明の便宜のために任意に図示されたものであって、本発明は必ずしも図示された形状および大きさに限定されるものではない。すなわち、明細書に記載されている特定の形状、構造および特性は、本発明の思想および範囲を逸脱することなく一実施形態から他の実施例に変形されて具現され得、個別構成要素の位置または配置も本発明の思想および範囲を逸脱することなく変更され得るものと理解されるべきである。したがって、後述する詳細な説明は限定的な意味で行われるものではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲の請求項が請求する範囲およびそれと均等なすべての範囲を包括するものと理解されるべきである。
【0046】
〔本発明に係る電極活物質とこれを含む電極および二次電池〕
本発明の一実施形態によると、黒鉛素材にシリコンが混合されたシリコン-黒鉛複合電極活物質(負極活物質)が提供され得る。
【0047】
前述した通り、従来に二次電池用電極活物質として利用されていた黒鉛素材は、容量の限界および高速充電時に出力特性が低下するなどの問題があり、シリコン素材は電気伝導度が低く、充放電時に相当な体積の膨張を起こして電極活物質および極板に深刻な損傷を発生させるため、二次電池のサイクル特性を大きく低下させる問題がある。
【0048】
これに対し、本発明の一実施形態に係る電極活物質は、黒鉛素材にシリコンが混合された複合構造で形成されているため黒鉛で作られた通常の電極活物質に比べて電池の容量を大きく改善することができる。後述するように電極活物質に含まれるシリコンは、黒鉛素材の外部表面には露出せずにすべて黒鉛素材の内側に位置するように(より好ましくは、黒鉛素材の内部に相当に深く位置するように)構成されているため、圧延工程を通じて電極活物質で電極を形成する過程でシリコンが電解液に露出して副反応を起こす問題を防止し、シリコンが黒鉛素材の内部でのみ膨張/収縮してシリコンの体積の膨張によって二次電池の寿命および性能が低下する問題を抑制できるように構成されている。
【0049】
具体的には、本発明の一実施形態に係る電極活物質は、黒鉛素材にシリコン素材が混合されたシリコン-黒鉛複合体(
図1に拡大図示された粉末の塊)を利用して形成されるように構成され得る。
【0050】
このようなシリコン-黒鉛複合体は二次電池の電極活物質を形成する単位粉末体の機能をし、黒鉛素材にシリコンが薄膜層などで形成されるように構成され得、このようなシリコン-黒鉛複合体は二次電池の容量により多数が集まって電極活物質を形成することになる。
【0051】
本発明の一実施形態によると、シリコンは化学的気相蒸着(CVD;Chemical Vapor Deposition)等の方法で黒鉛素材に蒸着されて形成されるように構成され得、シリコンは黒鉛素材の外部表面には露出せず、すべてが黒鉛素材の内部に位置するように構成され得る。
【0052】
このように、電極活物質を形成する単位粉末体の機能を発揮するシリコン-黒鉛複合体を、シリコン-黒鉛複合体の外部表面にはシリコンが露出しないように、すべてのシリコンを黒鉛素材の内部に位置させるように構成すると、外部に露出したシリコンの膨張/収縮によって極板が損傷することを抑制することができ、外部に露出したシリコンが電解液と接触して副反応が加速化することを防止できるため、二次電池の性能および寿命を大きく向上させることができる。
【0053】
本発明の一実施形態によると、電極活物質を構成するシリコン-黒鉛複合体に含まれるシリコンはシリコン-黒鉛複合体の全体重量に対して10wt%を超過するように、より好ましくは15wt%を超過するように構成され得る。シリコンは黒鉛に比べて大きな容量を提供できるため、電極活物質にシリコンが多く含まれるほど二次電池はさらに高容量化され得るが、電極活物質に含まれるシリコンは充放電時に発生する膨張によって二次電池のサイクル特性を大きく低下させ得るため、電極活物質に追加されるシリコンの量を増加させるのに限界があり得る。
例えば、従来に知られていたシリコン-黒鉛複合電極活物質はシリコンの膨張/収縮による二次電池のサイクル特性の低下問題によって、少ない量のシリコンのみ電極活物質に含まれるように構成されていた。しかしながら、本発明の一実施形態係る電極活物質はシリコンがすべて黒鉛素材の内部に位置し、黒鉛の外部には露出しないように構成されるため、10wt%を超過する(より好ましくは15wt%を超過する)シリコンを電極活物質に含ませてもシリコンの膨張/収縮による表面の亀裂を抑制できるため、より多くのシリコンをシリコン-黒鉛複合体に混合させて二次電池の容量をさらに向上させることができる。
【0054】
本発明の一実施形態によると、電極活物質を構成するシリコン-黒鉛複合体に含まれるシリコンは非晶質または準結晶質のシリコン粒子を有するように形成され得る。非晶質または準結晶質のシリコンは結晶質シリコンとは異なって、リチウムが吸収される方向性がないため均一に体積が膨張することができ、リチウムの移動速度が高く結晶質シリコンに比べてリチウムの吸収や脱離にストレスやストレインが小さくかかるため、安定的に構造を維持できる長所を有する。したがって、シリコンを非晶質または準結晶質の粒子で形成すると、より多量のシリコンが電極活物質に含まれてもシリコンの膨張によって二次電池が損傷する問題を防止することができる。
【0055】
本発明の一実施形態によると、電極活物質を構成するシリコン-黒鉛複合体で黒鉛素材内に位置するシリコンは、全体のシリコンの重量の90%以上がシリコン-黒鉛複合体の外部表面から少なくとも200nm以上の深さに位置するように、より好ましくはすべてのシリコンが外部の表面から少なくとも200nm以上の深さに位置するように構成され得る。
【0056】
このように、電極活物質を形成するシリコン-黒鉛複合体においてシリコンを黒鉛素材の内側により深く位置させると、シリコンが外部表面に露出して電解液と接触して副反応が発生することを効果的に防止できることで、二次電池の性能および寿命をさらに大きく向上させることができる。
【0057】
このような効果をさらに最大化できるように、本発明の一実施形態に係るシリコン-黒鉛複合体はシリコン-黒鉛複合体の表面から1μm、より好ましくは3μm以上の深さに位置するように構成され得る。
【0058】
さらに、本発明の一実施形態に係る電極活物質は、シリコン-黒鉛複合体の中心部から最外側のシリコンまでの厚さまたは距離より最外側のシリコンとシリコン-黒鉛複合体の外部表面間の厚さまたは距離がさらに大きく形成されるように構成されてもよい。このような構造によると、本発明の一実施形態に係る電極活物質は電極活物質がシリコンと黒鉛が混合されたコアの周囲を黒鉛物質が囲むコア-シェル(core-shell)形状の構造で形成され得るため、シリコンが黒鉛の内部の奥深い位置に安定的に位置して機能することができる。
【0059】
本発明の一実施形態によると、電極活物質を構成するシリコン-黒鉛複合体の外周面には表面コーティング層がさらに含まれ得る。シリコン-黒鉛複合体の外周面に形成される表面コーティング層は電子の伝達経路を提供して電気伝導度を向上させ、充放電時にシリコンの体積変化を抑制して極板の安定性を向上させる機能をすることができる。
【0060】
本発明の一実施形態によると、シリコン-黒鉛複合体の外周面に形成される表面コーティング層は、シリコン-黒鉛複合体を構成する黒鉛とは異なる異種の炭素素材(例えば、コールタールピッチ、石油系ピッチ、エポキシ樹脂、フェニル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、エチレン、アセチレン、メタンのうち一つ以上の炭素素材)で形成され得る。
【0061】
ただし、表面コーティング層は必ずしも備えられるべきものではなく、表面コーティング層を省略して電極活物質を形成してもよく、前述した炭素素材の表面コーティング層に加えて追加のコーティング層(導電性コーティング層など)を形成してもよい。
【0062】
一方、本発明の一実施形態によると、前述した電極活物質を含む電極(負極)および二次電池が提供され得る。
【0063】
具体的には、本発明の一実施形態に係る電極および二次電池は前述したシリコン-黒鉛複合体で形成された電極活物質を含むことができ、電極活物質を形成するシリコン-黒鉛複合体は前述した通り、黒鉛素材の内部にシリコンが混合された構造で形成され得る。
【0064】
このような構成によると、シリコンが黒鉛素材の内側に位置して混合された構造でシリコン-黒鉛複合体が形成され得るため、シリコンによる電池の容量増大を図りつつ、シリコンの体積膨張および電解液との接触による電極および二次電池の性能/寿命低下の問題を効果的に抑制することができる。
【0065】
一方、本発明の一実施形態に係る電極活物質は単独で二次電池の電極の形成に利用され得るだけでなく、従来の電極活物質(例えば、黒鉛系素材で形成された電極活物質)とともに混合して二次電池用電極活物質を形成するように構成されてもよい。
【0066】
本発明の一実施形態に係る電極活物質は前述した通り、シリコンの体積膨張による電極の損傷などの問題を安定的に制御できるため、従来と比べてより多量のシリコンを電極活物質に含ませて十分に電池容量を拡大することができる。そのため、通常の電極活物質と混合して使用しても従来と比べて十分に向上した容量改善効果を提供することができ、かえって黒鉛系素材で形成された電極活物質のような通常の電極活物質の混合によってシリコンによる体積膨張の問題がさらに効果的に制御され得る。
【0067】
〔本発明に係る電極活物質の製造方法〕
本発明の一実施形態によると、黒鉛素材にシリコンが追加されたシリコン-黒鉛複合電極活物質(具体的には、電極活物質を構成するシリコン-黒鉛複合体)の製造方法が提供される。
【0068】
本発明の一実施形態によると、電極活物質(電極活物質を構成するシリコン-黒鉛複合体)の製造方法は(i)黒鉛素材(例えば、板状の黒鉛)を準備する母材黒鉛準備段階、(ii)準備された母材黒鉛にシリコンを形成するシリコン層形成段階、(iii)シリコン層が形成された黒鉛を球状化させてシリコンが黒鉛の内部にのみ位置するように機械的に組み立てる再組立段階を含むことができる。
【0069】
母材黒鉛準備段階は、本発明の一実施形態に係るシリコン-黒鉛複合体の基本素材となる黒鉛母材を準備する段階であって、母材は板状の構造を有する天然あるいは人造黒鉛であり得、例えば2μm~20μmの粒度のサイズを有する素材で形成され得る。
【0070】
シリコン層形成段階は、電極活物質の高容量化のためにシリコン素材を板状の黒鉛母材に被覆する段階であって、シリコン層の形成は化学的気相蒸着等を通して遂行され得る。
【0071】
具体的には、シリコン層はシリコンを含有する原料ガスを高温の反応室に注入して母材黒鉛に蒸着する方式で遂行され得、400℃~700℃の温度に昇温された反応室にSiH4、Si2H6、Si3H8、SiCl4、SiHCl3、Si2Cl6、SiH2Cl2、SiH3Clなどの原料ガスを注入して板状の黒鉛素材にシリコンコーティング層を蒸着する方式で遂行され得る。
【0072】
このような方法によると、相対的に低温(400℃~700℃の温度範囲)で黒鉛素材にシリコン層を形成できるため、シリコンコーティング層を結晶質ではない非晶質または準結晶質のシリコン粒子で形成することができる。
【0073】
一方、シリコンコーティング層の形成は、前述した原料ガスとともに炭素、窒素、ゲルマニウムなどを含有する補助ガスを共に注入しながら遂行され得る。このように、炭素、窒素、ゲルマニウムなどの物質を含む補助ガスを共に供給しながらシリコンの蒸着を遂行すると、黒鉛素材に形成されるシリコン層に炭素、窒素、ゲルマニウムなどの物質が含まれるようになり、シリコン蒸着層に含まれるこのような物質は、シリコン-黒鉛複合体に含まれるシリコン原子が固まってシリコンが粗大に形成されることを防止するためシリコンの膨張を効果的に抑制することができ、電気伝導度および/またはリチウムイオン伝導度を向上させて二次電池の電極の損傷および寿命の短縮をさらに低減する機能を遂行することができる。
【0074】
本発明の一実施形態によると、電極活物質を形成するシリコン-黒鉛複合体に含まれるシリコンは、シリコン-黒鉛複合体の全体重量に対して10wt%を超過するように、より好ましくは15wt%を超過するように形成され得、20nm~500nm範囲の厚さを有する薄膜層の形態で形成され得る。
【0075】
再組立段階はシリコン層が形成された黒鉛を球状化する段階であって、再組立段階を通じて母材黒鉛に蒸着されたシリコン層は黒鉛の内部の位置に移動して機械的に再組立されることによって、シリコン層が外部表面の外に露出しないシリコン-黒鉛複合体が形成され得る。
【0076】
本発明の一実施形態によると、再組立段階は(i)シリコン層が形成された母材黒鉛を球状化装備内に投入した後、高速で回転させながらシリコン-黒鉛複合体を形成するか、(ii)まずシリコン層が形成された母材黒鉛を球状化装備内に投入して高速で回転させた後、所定の時間が経過した後に追加の黒鉛素材を投入して共に球状化を進める方式で遂行され得、このような工程過程を通じてシリコン層が黒鉛素材の内部にのみ位置し外部表面には露出しないシリコン-黒鉛複合体が形成されるように構成され得る。
【0077】
一方、本発明の一実施形態によると、母材黒鉛を準備した後、母材黒鉛にシリコンコーティング層を形成する前に母材黒鉛素材の表面を改質する表面改質段階がさらに含まれ得る。表面改質は、母材黒鉛に形成されている微細気孔を埋めてシリコンが膨張する空間が確保され難い微細気孔にシリコンが流入することを防止するようにする段階であって、表面改質工程を遂行すると、母材黒鉛に形成された50nm以下の微細気孔は異種の非晶質または結晶質炭素で満たされることになって母材黒鉛素材の比表面積が減少し得るようになり[表面改質工程を経ると、母材黒鉛は内部の微細気孔が異種の非晶質あるいは結晶質炭素で満たされて、
図5に図示された通り、比表面積が2~10m
2/gから1~5m
2/gに小さくなることができるようになる]、これによってシリコン層は母材黒鉛の内部に存在する大きな空洞と黒鉛の外部にのみ形成され得る。微細気孔に形成されるシリコンコーティング層はシリコンの膨張に必要な空間が十分に提供されないため母材黒鉛に亀裂を誘発し得るが、表面改質工程を経ると、このような微細気孔にシリコンコーティング層が形成されることを防止するためこのような母材黒鉛の損傷を抑制することができる。
【0078】
本発明の一実施形態によると、表面改質工程は石油系ピッチ、石炭系ピッチ、レジン、アスファルト、メタン、エチレン、アセチレンなどの前駆体を母材黒鉛の表面に被覆する方式で遂行され得る。例えば、石油系ピッチ、石炭系ピッチ、レジン、アスファルトなどの前駆体は回転炉または雰囲気炉などを利用して母材黒鉛に被覆され得、N2、Arなどの不活性ガスの雰囲気で600℃~1,000℃の温度範囲で材料を2時間以上維持させることによって被覆が進行され得る。一方、メタン、エチレン、アセチレンなどの前駆体は気相蒸着装置または回転炉などを利用して母材黒鉛に被覆され得、800℃~1,000℃の温度で板状の黒鉛に対して前駆体を分当り3L~8Lの流量で流すことによって表面に被覆され得る。
【0079】
このような方式で製造された本発明の一実施形態に係るシリコン-黒鉛電極活物質は、シリコンが黒鉛素材の内部に安定的に位置した状態(より好ましくは黒鉛素材の内部に奥深く位置した状態)で形成されるため、シリコンが電解液と接触して副反応を起こす危険を減少させ、電極および二次電池の性能および寿命をさらに向上させることができる。
【0080】
例えば、黒鉛素材の表面にシリコン層が蒸着された従来のシリコン-黒鉛複合体は、
図8(a)に図示された通り、電極活物質を圧延して電極を形成する過程で活物質の組織が大きくつぶれて破裂するのに対し、本発明の一実施形態に係るシリコン-黒鉛複合体は
図8(b)に図示された通り、圧延工程後にも組織の構造が堅固に維持されてシリコンが外部に露出せずに黒鉛素材の内部に維持されていることを確認することができる。
【0081】
本発明の一実施形態によると、再組立段階後には不活性の雰囲気で熱処理を遂行して機械的に再組立されたシリコン-黒鉛複合体が一つの構造体にさらに一体化するように構成され得る。このような熱処理は、反応チャンバー内に真空の環境を造成した後、Ar、N2等の不活性ガスを注入した状態でチャンバーの内部を800℃以上の高温に昇温させて熱処理を遂行した後、空冷などで冷却する方式で遂行され得る。
【0082】
本発明の一実施形態によると、前述した過程を通じて完成されたシリコン-黒鉛複合体の表面に外部コーティング層を形成する表面コーティング段階がさらに遂行され得る。このような表面コーティングは電気伝導性を向上させて本発明の一実施形態に係る電極活物質とこれを具備する電極/二次電池の性能および寿命を向上させる機能を遂行することができる。
【0083】
本発明の一実施形態によると、表面コーティングは電極活物質を形成するシリコン-黒鉛複合体の表面に炭素素材(例えば、シリコン-黒鉛複合体の基本素材となる板状の黒鉛と異なる異種の炭素素材;コールタールピッチ、石油系ピッチ、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、エチレン、アセチレン、メタンなど)で構成され得る。ただし、表面コーティング層は必ずしも備えられるべきものではなく、表面コーティング層を省略して電極活物質を形成してもよく、前述した炭素素材の表面コーティング層に加えて追加のコーティング層(導電性コーティング層など)を形成してもよい。
【0084】
〔本発明に係る電極活物質(シリコン-黒鉛複合体)の具体的な実施例〕
(1)実施例1(GPS-1)
まず、4μmの平均粒度を有する板状の黒鉛材料を準備する。次に、黒鉛10gを回転炉に投入して回転炉の内部を窒素雰囲気に真空置換した後、純度99.999%の窒素を流しながら580℃まで昇温させる。580℃の温度に到達した後には純度99.999%のSiH4を約17分間流し、純度99.999%の窒素を流しながら空冷して板状の黒鉛にシリコンコーティング層を塗布する。以降はシリコンコーティング層が蒸着された板状の黒鉛を球状化装備に入れて再組立を進行する。再組立は、シリコンコーティング層が蒸着された板状の黒鉛を球状化装備に投入し、16,000RPMの回転速度で10分間機械研磨を進めた後、追加の黒鉛素材を装備に投入して7,000rpmの回転速度で回転させながらシリコンコーティング層が黒鉛素材の内部に移動して位置するようにシリコン-黒鉛複合体を機械的に再組立するように行う。再組立後には再組立されたシリコン-黒鉛複合体を反応チャンバーに入れてチャンバーを真空および不活性ガス環境で900℃に昇温させて熱処理をし、空冷を遂行する。
【0085】
(2)実施例2(GPS-2)
まず、4μmの平均粒度を有する板状の黒鉛材料を準備する。次に、黒鉛10gを回転炉に投入して回転炉の内部を窒素雰囲気に真空置換した後、純度99.999%の窒素を流しながら580℃まで昇温させる。580℃の温度に到達した後には純度99.999%のSiH4を約20分間流し、純度99.999%の窒素を流しながら空冷して板状の黒鉛にシリコンコーティング層を塗布する。以降はシリコンコーティング層が蒸着された板状の黒鉛を球状化装備に入れて再組立を進行する。再組立は、シリコンコーティング層が蒸着された板状の黒鉛を球状化装備に投入し、16,000RPMの回転速度で10分間機械研磨を進めた後、追加の黒鉛素材を装備に投入して7,000rpmの回転速度で回転させながらシリコンコーティング層が黒鉛素材の内部に移動して位置するようにシリコン-黒鉛複合体を機械的に再組立するように行う。再組立後には再組立されたシリコン-黒鉛複合体を反応チャンバーに入れてチャンバーを真空および不活性ガス環境で900℃に昇温させて熱処理をし、空冷を遂行する。
【0086】
(3)実施例3(GPS-3)
まず、4μmの平均粒度を有する板状の黒鉛材料を準備する。次に、黒鉛10gを回転炉に投入して回転炉の内部を窒素雰囲気に真空置換した後、純度99.999%の窒素を流しながら580℃まで昇温させる。580℃の温度に到達した後には純度99.999%のSiH4を約25分間流し、純度99.999%の窒素を流しながら空冷して板状の黒鉛にシリコンコーティング層を塗布する。以降はシリコンコーティング層が蒸着された板状の黒鉛を球状化装備に入れて再組立を進行する。再組立は、シリコンコーティング層が蒸着された板状の黒鉛を球状化装備に投入し、16,000RPMの回転速度で10分間機械研磨を進めた後、追加の黒鉛素材を装備に投入して7,000rpmの回転速度で回転させながらシリコンコーティング層が黒鉛素材の内部に移動して位置するようにシリコン-黒鉛複合体を機械的に再組立するように行う。再組立後には再組立されたシリコン-黒鉛複合体を反応チャンバーに入れてチャンバーを真空および不活性ガス環境で900℃に昇温させて熱処理をし、空冷を遂行する。
【0087】
(4)比較例(PS)
比較例は特許文献1に開示された実施例の工程条件により製造されたシリコン-黒鉛複合体であって、球状の黒鉛を原材料として、その上にSiH4を分解させてシリコンコーティング層を蒸着した後、表面に石油系ピッチをコーティングしてシリコン-黒鉛複合体を形成した。
【0088】
図9および
図10を参照すると、本発明の一実施形態により製造された電極活物質(シリコン-黒鉛複合体;実施例1~3)と比較例との間の性能が比較されて整理されている。
図9に図示された通り、本発明の一実施形態に係るシリコン-黒鉛複合体は、高い容量を確保するとともに優秀なサイクル特性を提供することを確認することができる。本発明の一実施形態に係るシリコン-黒鉛複合体は、
図10のグラフで確認できるように(容量の向上のために黒鉛素材にシリコンを追加したにもかかわらず)、充放電を繰り返してもシリコンの膨張/収縮によって電池の寿命が大きく減少されず、高い電池性能を維持していることを確認することができる[例えば、
図10(b)に図示された通り、95%以上の50周期循環維持率を示し、
図10(c)に図示された通り、より優秀な律速特性を示す]。
【0089】
以上では、本発明を具体的な構成要素などのような特定の事項と限定された実施例および図面を通じて説明したが、これは本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたものに過ぎず、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者であればこのような記載から多様な修正および変形を図ることができるであろう。
【0090】
したがって、本発明の思想は前述した実施例に限定されて定められてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなくこれと均等にまたは等価的に変形されたすべてのものは本発明の思想の範疇に属するものと解釈されるべきである。