(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】眼線維症および血管新生のための併用処置
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20240820BHJP
A61K 38/18 20060101ALI20240820BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240820BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240820BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240820BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240820BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240820BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20240820BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240820BHJP
C12N 15/115 20100101ALN20240820BHJP
【FI】
A61K47/68
A61K38/18
A61K39/395 D
A61K39/395 M
A61K39/395 N
A61P1/16
A61P9/00
A61P13/12
A61P27/02 ZNA
A61P27/06
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61P43/00 121
C12N15/115 Z
(21)【出願番号】P 2020560274
(86)(22)【出願日】2019-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2019060772
(87)【国際公開番号】W WO2019207122
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-04-14
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】507229331
【氏名又は名称】ベーリンガー・インゲルハイム・インターナショナル・ゲーエムベーハー
【住所又は居所原語表記】Binger Strasse 173,55216 Ingelheim Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】クック,スチュアート・アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー,セバスチャン
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/103108(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/208989(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/087812(WO,A1)
【文献】特表2016-504416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストと、血管新生因子のアンタゴニストとを含む、眼における線維症の処置または防止用医薬組成物であって、前記IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストが、抗IL-11抗体もしくは抗IL-11抗体の抗原結合性断片、または抗IL-11Rα抗体もしくは抗IL-11Rα抗体の抗原結合性断片であり、前記血管新生因子のアンタゴニストがアフリベルセプトであ
り、前記眼における線維症が、(a)網膜上線維症、網膜線維症、特発性黄斑前線維症、網膜下線維症、角膜線維症、術後線維症、結膜線維症および結膜下線維症から選択されるか、または(b)グレーブス眼症、滲出型加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病性網膜症、緑内障および地図状位縮から選択される疾患もしくは状態に関連している、組成物。
【請求項2】
眼における線維症を処置または防止する方法における使用のための、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストと、血管新生因子のアンタゴニストとの組合せ
医薬であって、前記IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストが、抗IL-11抗体もしくは抗IL-11抗体の抗原結合性断片、または抗IL-11Rα抗体もしくは抗IL-11Rα抗体の抗原結合性断片であり、前記血管新生因子のアンタゴニストがアフリベルセプトであ
り、前記眼における線維症が、(a)網膜上線維症、網膜線維症、特発性黄斑前線維症、網膜下線維症、角膜線維症、術後線維症、結膜線維症および結膜下線維症から選択されるか、または(b)グレーブス眼症、滲出型加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病性網膜症、緑内障および地図状位縮から選択される疾患もしくは状態に関連している、使用のための組合せ
医薬。
【請求項3】
前記線維症が脈絡膜血管新生と関連している、請求項1に記載の組成物、または請求項2に記載の使用のための組合せ医薬。
【請求項4】
前記IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストが、IL-11のIL-11受容体への結合を防止する、または低減することができる薬剤である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物、または使用のための組合せ
医薬。
【請求項5】
眼における線維症を処置または予防する方法における使用のための医薬の製造における、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストおよび血管新生因子のアンタゴニストの使用であって、前記IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストが、抗IL-11抗体もしくは抗IL-11抗体の抗原結合性断片、または抗IL-11Rα抗体もしくは抗IL-11Rα抗体の抗原結合性断片であり、前記血管新生因子のアンタゴニストがアフリベルセプトであ
り、前記眼における線維症が、(a)網膜上線維症、網膜線維症、特発性黄斑前線維症、網膜下線維症、角膜線維症、術後線維症、結膜線維症および結膜下線維症から選択されるか、または(b)グレーブス眼症、滲出型加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病性網膜症、緑内障および地図状位縮から選択される疾患もしくは状態に関連している、使用。
【請求項6】
前記線維症が脈絡膜血管新生と関連している、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストが、IL-11のIL-11受容体への結合を防止する、または低減することができる薬剤である、請求項5または6に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年4月27日に出願されたGB1806918.7からの優先権を主張し、その内容および要素は、あらゆる目的に関して参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、IL-11媒介性シグナル伝達の拮抗作用および血管新生の拮抗作用による、線維症および/または血管新生(特に、眼における)の診断、処置および予防に関する。
【背景技術】
【0003】
血管新生は、必須プロセスであり、創傷治癒プロセスの重要部分である。異常な血管新生は、重篤な状態および合併症をもたらすことが多い;破局的な視力低下を引き起こす多くの疾患は、組織虚血、炎症または代謝的摂動に応答することが多い、異常な血管新生および創傷治癒の結果としてそうする。
【0004】
抗VEGF療法などの抗血管新生療法は、網膜の黄斑下での新血管形成を低減することができる増え続ける医薬群である。これらの薬剤によって処置される状態としては、加齢黄斑変性、糖尿病性眼疾患および一部のがんが挙げられる。
【0005】
線維症は、創傷治癒の重要部分である必須プロセスである。過度の線維症は多くの稀で一般的な疾患状態において共通しており、疾患発症において重要である。過度の線維症を特徴とする疾患としては、限定されるものではないが、全身性硬化症、強皮症、肥大型心筋症、拡張型心筋症(DCM)、心房細動、心室細動、心筋炎、肝硬変、腎臓病、喘息、眼の疾患、嚢胞性線維症、関節炎および特発性肺線維症が挙げられる。ヒトの健康に対する大きな影響にも拘わらず、線維症に対する治療および診断手法は、依然として満たされない医学的要求がある。
【発明の概要】
【0006】
第1の態様では、本発明は、対象における線維症を処置または防止する方法であって、対象に、治療または予防有効量のIL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストおよび血管新生因子のアンタゴニストを投与するステップを含む、方法を提供する。
【0007】
第2の態様では、本発明は、線維症を処置または防止する方法における使用のための、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストと、血管新生因子のアンタゴニストとの組合せを提供する。
【0008】
別の態様では、本発明は、線維症を処置または防止する方法における使用のための医薬の製造における、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストおよび血管新生因子のアンタゴニストの使用に関する。
【0009】
本明細書に開示される態様のいずれかにおいて、線維症は、好ましくは眼における線維症である。
【0010】
一部の実施形態では、線維症は、グレーブス眼症、網膜上線維症、網膜線維症、特発性黄斑前線維症、網膜下線維症(例えば、網膜剥離もしくは黄斑変性(例えば、滲出型加齢黄斑変性(AMD)と関連する)、糖尿病性網膜症、緑内障、地図状萎縮、角膜線維症、術後線維症(例えば、白内障手術後の後嚢の、もしくは緑内障の線維柱帯切除術後のブレブの)、結膜線維症、または結膜下線維症から選択される。
【0011】
一部の実施形態では、線維症は、網膜線維症である。一部の実施形態では、線維症は、網膜上線維症である。一部の実施形態では、線維症は、網膜下線維症である。
【0012】
本明細書に開示される態様の一部の実施形態では、線維症は、心臓、肝臓、または腎臓の線維症である。一部の実施形態では、線維症は、肝臓におけるものであり、慢性肝疾患または肝硬変と関連する。一部の実施形態では、線維症は、腎臓におけるものであり、慢性腎臓病と関連する。一部の実施形態では、線維症は、心臓におけるものであり、心臓の筋肉組織もしくは電気特性の機能障害、または心臓の壁もしくは弁の肥厚と関連する。
【0013】
本明細書に開示される態様の一部の実施形態では、血管新生因子のアンタゴニストは、血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、および血小板由来成長因子(PDGF)から選択される血管新生因子のアンタゴニストである。
【0014】
一部の実施形態では、血管新生因子は、VEGFである。一部の実施形態では、VEGFは、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-Cおよび/またはVEGF-Dのうちの1つまたは複数である。一部の実施形態では、VEGFは、VEGF-Aである。
【0015】
一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストは、IL-11のIL-11受容体への結合を防止する、または低減することができる薬剤である。一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストは、IL-11:IL11Rα複合体のgp130への結合を防止する、または低減することができる薬剤である。一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストは、IL-11:IL11Rα transシグナル伝達複合体のgp130への結合を防止する、または低減することができる薬剤である。一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストは、IL11Rαのgp130への結合を防止する、または低減することができる薬剤である。一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストは、IL-11のIL-11への結合を防止する、または低減することができる薬剤である。
【0016】
一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストは、IL-11またはIL-11の受容体に結合することができる薬剤である。一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストは、抗体もしくはその抗原結合性断片、ポリペプチド、ペプチド、オリゴヌクレオチド、アプタマーまたは低分子からなる群から選択される。一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストは、抗IL-11抗体または抗IL-11Rα抗体である。一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストは、デコイIL-11受容体である。
【0017】
一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストは、IL-11またはIL-11の受容体の発現を低減させることができる。一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストは、オリゴヌクレオチドまたは低分子である。
【0018】
一部の実施形態では、血管新生因子のアンタゴニストは、血管新生因子の、血管新生因子の相互作用パートナーへの結合を防止する、または低減することができる薬剤である。一部の実施形態では、血管新生因子のアンタゴニストは、血管新生因子または血管新生因子の相互作用パートナーに結合することができる薬剤である。
【0019】
一部の実施形態では、血管新生因子のアンタゴニストは、血管新生因子の、血管新生因子の受容体への結合を防止する、または低減することができる薬剤である。
【0020】
一部の実施形態では、血管新生因子のアンタゴニストは、血管新生因子または血管新生因子の受容体に結合することができる薬剤である。一部の実施形態では、血管新生因子のアンタゴニストは、抗体もしくはその抗原結合性断片、ポリペプチド、ペプチド、オリゴヌクレオチド、アプタマーまたは低分子からなる群から選択される。一部の実施形態では、血管新生因子のアンタゴニストは、抗血管新生因子抗体または抗血管新生因子受容体抗体である。一部の実施形態では、血管新生因子のアンタゴニストは、抗VEGF抗体または抗VEGF受容体抗体である。一部の実施形態では、血管新生因子のアンタゴニストは、デコイ血管新生因子受容体である。一部の実施形態では、血管新生因子のアンタゴニストは、デコイVEGF受容体である。一部の実施形態では、血管新生因子のアンタゴニストは、アフリベルセプト(配列番号24)である。
【0021】
一部の実施形態では、血管新生因子のアンタゴニストは、血管新生因子または血管新生因子の受容体の発現を低減させることができる薬剤である。一部の実施形態では、血管新生因子のアンタゴニストは、オリゴヌクレオチドまたは低分子である。
【0022】
本明細書に記載の方法、使用のための組合せ、または使用の一部の実施形態では、線維症を処置または防止する方法は、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストおよび血管新生因子のアンタゴニストを、IL-11またはIL-11の受容体の発現が上方調節されていると決定された対象に投与するステップを含む。一部の実施形態では、血管新生因子または血管新生因子の受容体の発現は、上方調節されると決定されている。
【0023】
本明細書に記載の方法、使用のための組合せ、または使用の一部の実施形態では、処置または防止する方法は、IL-11またはIL-11の受容体の発現が、対象において上方調節されているかどうかを決定するステップと、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストおよび血管新生因子のアンタゴニストを、IL-11またはIL-11の受容体の発現が上方調節されている対象に投与するステップとを含む。
【0024】
別の態様では、本発明は、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストおよび血管新生因子のアンタゴニストを用いた線維症の処置または防止に関する対象の適性を決定する方法を提供する。一部の実施形態では、方法は、必要に応じて、in vitroで、インターロイキン11(IL-11)、インターロイキン11受容体(IL-11R)、血管新生因子、または血管新生因子受容体の発現が、対象において上方調節されているかどうかを決定するステップを含む。一部の実施形態では、方法は、必要に応じて、in vitroで、血管新生因子または血管新生因子の受容体の発現が、対象において上方調節されているかどうかを決定するステップを含む。
【0025】
別の態様では、本発明は、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストおよび血管新生因子のアンタゴニストを用いた線維症の処置または防止のために対象を選択する方法を提供する。一部の実施形態では、方法は、必要に応じて、in vitroで、インターロイキン11(IL-11)、インターロイキン11受容体(IL-11R)、血管新生因子、または血管新生因子受容体の発現が、対象において上方調節されているかどうかを含む。一部の実施形態では、方法は、必要に応じて、in vitroで、血管新生因子または血管新生因子の受容体の発現が、対象において上方調節されているかどうかを決定するステップを含む。
【0026】
別の態様では、本発明は、対象における線維症または線維症を発症するリスクを診断する方法を提供する。一部の実施形態では、方法は、必要に応じて、in vitroでの、対象から得られた試料中のインターロイキン11(IL-11)、インターロイキン11受容体(IL-11R)、血管新生因子、または血管新生因子受容体の上方調節を含む。一部の実施形態では、方法は、必要に応じて、in vitroで、血管新生因子または血管新生因子の受容体の発現が、対象において上方調節されているかどうかを決定するステップを含む。一部の実施形態では、方法は、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストおよび血管新生因子のアンタゴニストを用いた処置のための対象を選択するステップを含む。
【0027】
別の態様では、本発明は、線維症を有する、または有すると疑われる対象の予後診断を提供する方法と、その決定に基づいて、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストおよび血管新生因子のアンタゴニストを用いた対象の処置に関する予後診断を提供する方法とを提供する。一部の実施形態では、方法は、必要に応じて、in vitroでの、対象から得られた試料中のインターロイキン11(IL-11)、インターロイキン11受容体(IL-11R)、血管新生因子、または血管新生因子受容体が上方調節されているかどうかを決定するステップを含む。一部の実施形態では、方法は、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストおよび血管新生因子のアンタゴニストを用いた処置のためにインターロイキン11(IL-11)、インターロイキン11受容体(IL-11R)、血管新生因子、または血管新生因子受容体の発現が上方調節されていると決定された対象を選択するステップを含む。
【0028】
さらに別の態様では、本発明は、対象における線維症または線維症を発症するリスクを診断する方法であって、必要に応じてin vitroで、対象中の1つまたは複数の遺伝因子を決定するステップと、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストおよび血管新生因子のアンタゴニストを用いた処置のため対象を選択するステップとを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、1つまたは複数の遺伝因子は、インターロイキン11(IL-11)もしくはインターロイキン11受容体(IL-11R)発現の上方調節、またはIL-11もしくはIL-11R活性の上方調節を予測する。一部の実施形態では、1つまたは複数の遺伝因子は、血管新生因子もしくは血管新生因子受容体発現の上方調節、または血管新生因子もしくは血管新生因子受容体活性の上方調節を予測する。一部の実施形態では、1つまたは複数の遺伝因子は、血管新生因子もしくは血管新生因子受容体発現の上方調節、または血管新生因子もしくは血管新生因子受容体活性の上方調節を予測する。
【0029】
一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストは、抗IL-11抗体であり、血管新生因子のアンタゴニストは、VEGFデコイ受容体である。好ましい実施形態では、VEGFデコイ受容体は、アフリベルセプトである。
【0030】
また、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストと、血管新生因子のアンタゴニストとを含む組合せも提供される。また、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストと、血管新生因子のアンタゴニストとを含む医薬組成物も提供される。また、所定量のIL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストおよび血管新生因子のアンタゴニスト、本明細書に記載の組合せ、または本明細書に記載の医薬組成物を含む要素のキット(kit of parts)も提供される。
【0031】
一部の実施形態では、血管新生因子は、血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、および血小板由来成長因子(PDGF)から選択される。一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストは、IL-11のIL-11受容体への結合を防止する、または低減することができる薬剤であり、必要に応じて、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストは、例えば、本明細書に記載のような、IL-11またはIL-11の受容体に結合することができる薬剤である。一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストは、IL-11またはIL-11の受容体の発現を低減させることができ、例えば、本明細書に記載の薬剤である。一部の実施形態では、血管新生因子のアンタゴニストは、血管新生因子の、血管新生因子の相互作用パートナーへの結合を防止する、または低減することができる薬剤である。血管新生因子のアンタゴニストは、本明細書に記載のような、血管新生因子または血管新生因子の相互作用パートナーに結合することができる薬剤であってもよい。血管新生因子のアンタゴニストは、アフリベルセプトであってもよい。血管新生因子のアンタゴニストは、血管新生因子の相互作用パートナー、例えば、本明細書に記載のアンタゴニストの発現を低減することができてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、血管新生因子のアンタゴニストと、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストとの併用療法が、線維症、特に、眼における線維症の処置における優れた治療効果を提供するという予想外の知見に基づく。さらに、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストが眼における線維症を処置することができる、およびIL-11媒介性シグナル伝達の拮抗作用が、併用処置における血管新生の拮抗作用の効能を改善することができるという予想外の知見が、本明細書で証明される。データはまた、脈絡膜血管新生(CNV)に対するIL-11媒介性シグナル伝達の拮抗作用の驚くべき処置効果を示す。
【0033】
インターロイキン11およびIL-11の受容体
脂質生成阻害因子としても知られる、インターロイキン11(IL-11)は、多面的なサイトカインであり、IL-6、IL-11、IL-27、IL-31、オンコスタチン、白血病阻害因子(LIF)、カルジオトロフィン-1(CT-1)、カルジオトロフィン様サイトカイン(CLC)、毛様体神経栄養因子(CNTF)およびニューロポエチン(NP-1)を含むIL-6ファミリーのサイトカインのメンバーである。
【0034】
インターロイキン11(IL-11)は、様々な間葉細胞型において発現される1。IL-11のゲノム配列は、第19染色体および第7染色体のセントロメア領域上にマッピングされており1、細胞からの効率的な分泌を確保する古典的シグナルペプチドと共に転写される。IL-11のアクチベータタンパク質複合体、そのプロモーター配列内に位置するcJun/AP-1は、IL-11の基本的転写調節にとって重要である1。未成熟型のヒトIL-11は、199アミノ酸のポリペプチドであるが、成熟型のIL-11は、178アミノ酸残基のタンパク質をコードする(GarbersおよびScheller、Biol.Chem.2013;394(9):1145~1161頁)。ヒトIL-11アミノ酸配列は、UniProt受託番号P20809(P20809.1 GI:124294;配列番号1)の下で入手可能である。組換えヒトIL-11(オプレルベキン)も商業的に入手可能である。マウス、ラット、ブタ、ウシ、いくつかの種の硬骨魚および霊長類などの他の種に由来するIL-11も、クローニングおよび配列決定されている。
【0035】
本明細書では、「IL-11」とは、任意の種に由来するIL-11を指し、任意の種に由来するIL-11のアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログを含む。好ましい実施形態では、種はヒト(ホモ・サピエンス)である。IL-11のアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログは、必要に応じて、所与の種、例えば、ヒトに由来する未成熟または成熟IL-11のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、好ましくは、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のうちの1つのアミノ酸配列同一性を有することを特徴としてもよい。IL-11のアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログは、必要に応じて、IL-11Rα(好ましくは、同じ種に由来する)に結合し、IL-11Rαおよびgp130を発現する細胞中でシグナル伝達を刺激する能力を特徴としてもよい(例えば、Curtisら、Blood、1997、90(11);またはKarpovichら、Mol.Hum.Reprod.2003 9(2):75~80頁に記載されたように)。IL-11の断片は、任意の長さ(アミノ酸の数で)のものであってよいが、必要に応じて、成熟IL-11の長さの少なくとも25%であってもよく、成熟IL-11の長さの50%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のうちの1つの最大の長さを有してもよい。IL-11の断片は、10アミノ酸の最小の長さ、および15、20、25、30、40、50、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または195アミノ酸のうちの1つの最大の長さを有してもよい。
【0036】
IL-11は、遍在的に発現される糖タンパク質130(gp130;糖タンパク質130、IL-6ST、IL-6-ベータまたはCD130としても知られる)のホモ二量体を介してシグナル伝達する。gp130は、IL-6受容体ファミリーとI型サイトカイン受容体の1つのサブユニットを形成する膜貫通タンパク質である。シグナル伝達に直接関与しない個々のインターロイキン11受容体サブユニットアルファ(IL-11Rα)を介して特異性が得られるが、α-受容体への初期のサイトカイン結合事象は、gp130との最終的な複合体形成をもたらす。
【0037】
ヒトgp130(22アミノ酸シグナルペプチドを含む)は、918アミノ酸のタンパク質であり、成熟型は、597アミノ酸の細胞外ドメイン、22アミノ酸の膜貫通ドメイン、および277アミノ酸の細胞内ドメインを含む866アミノ酸である。このタンパク質の細胞外ドメインは、gp130のサイトカイン結合モジュール(CBM)を含む。gp130のCBMは、gp130のIg様ドメインD1、ならびにフィブロネクチンIII型ドメインD2およびD3を含む。ヒトgp130のアミノ酸配列は、UniProt受託番号P40189-1(配列番号2)の下で入手可能である。
【0038】
ヒトIL-11Rαは、422アミノ酸のポリペプチド(UniProt Q14626;配列番号3)であり、マウスIL-11Rαとの約85%のヌクレオチドおよびアミノ酸配列同一性を有する(DuおよびWilliams、Blood Vol,89、No,11、June 1、1997)。細胞質ドメインが異なるIL-11Rαの2つのアイソフォームが報告されている(DuおよびWilliams、上掲)。IL-11受容体α鎖(IL-11Rα)は、IL-6受容体α鎖(IL-6Rα)との多くの構造的および機能的類似性を有する。細胞外ドメインは、特徴的な保存されたTrp-Ser-X-Trp-Ser(WSXWS)モチーフを含む24%のアミノ酸同一性を示す。短い細胞質ドメイン(34アミノ酸)は、JAK/STATシグナル伝達経路の活性化に必要とされるBox1および2領域を欠く。
【0039】
マウスIL-11上の受容体結合部位はマッピングされており、3つの部位(部位I、IIおよびIII)が同定されている。gp130への結合は、部位II領域中の置換および部位III領域中の置換によって低減される。部位III変異体は、検出可能なアゴニスト活性を示さず、IL-11Rαアンタゴニスト活性を有する(Cytokine Inhibitors Chapter 8;Gennaro CilibertoおよびRocco Savino(編)、Marcel Dekker,Inc.2001)。
【0040】
本明細書では、IL-11受容体/IL-11の受容体(IL-11R)は、IL-11に結合することができるポリペプチドまたはポリペプチド複合体を指す。一部の実施形態では、IL-11受容体は、IL-11に結合し、その受容体を発現する細胞中でシグナル伝達を誘導することができる。
【0041】
IL-11受容体は、任意の種に由来するものであってよく、任意の種に由来するIL-11受容体のアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログを含む。好ましい実施形態では、種はヒト(ホモ・サピエンス)である。
【0042】
一部の実施形態では、IL-11受容体(IL-11R)は、IL-11Rαであってもよい。一部の実施形態では、IL-11の受容体は、IL-11Rαを含むポリペプチド複合体であってもよい。一部の実施形態では、IL-11受容体は、IL-11Rαとgp130とを含むポリペプチド複合体であってもよい。一部の実施形態では、IL-11受容体は、gp130またはIL-11が結合するgp130を含む複合体であってもよい。
【0043】
IL-11Rαのアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログは、必要に応じて、所与の種、例えば、ヒトに由来するIL-11Rαのアミノ酸配列に対して少なくとも70%、好ましくは、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のうちの1つのアミノ酸配列同一性を有することを特徴としてもよい。IL-11Rαのアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログは、必要に応じて、IL-11(好ましくは、同じ種に由来する)に結合し、IL-11Rαおよびgp130を発現する細胞中でシグナル伝達を刺激する能力を特徴としてもよい(例えば、Curtisら、Blood、1997、90(11);またはKarpovichら、Mol.Hum.Reprod.2003 9(2):75~80頁に記載されたように)。IL-11受容体の断片は、任意の長さ(アミノ酸の数で)のものであってよいが、必要に応じて、成熟IL-11Rαの長さの少なくとも25%であってよく、成熟IL-11Rαの長さの50%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のうちの1つの最大の長さを有してもよい。IL-11受容体断片の断片は、10アミノ酸の最小の長さ、および15、20、25、30、40、50、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、400、または415アミノ酸のうちの1つの最大の長さを有してもよい。
【0044】
IL-11シグナル伝達
IL-11は、低い親和性(約10nmol/LのKd)でIL-11Rαに結合し、これらの結合パートナー間の相互作用だけでは、生体シグナルを伝達するには不十分である。シグナル伝達を可能にする高親和性の受容体(約400~800pmol/LのKd)の生成には、IL-11Rαとgp130との同時発現が必要である(Curtisら、Blood 1997 Dec 1;90(11):4403~12頁;Hiltonら、EMBO J 13:4765頁、1994;Nandurkarら、Oncogene 12:585頁、1996)。IL-11の、細胞表面IL-11Rαへの結合は、主に、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)カスケードおよびJanusキナーゼ/シグナル伝達因子および転写(Jak/STAT)経路のアクチベータを介して、gp130のヘテロ二量体化、チロシンリン酸化、活性化ならびに下流のシグナル伝達を誘導する(GarbersおよびScheller、上掲)。
【0045】
原理的には、可溶型IL-11Rαも、IL-11との生物活性可溶型複合体を形成することができ(Pflanzら、1999、FEBS Lett、450、117~122頁)、IL-6と同様、IL-11が一部の例では、細胞表面gp130に結合する前に可溶型IL-11Rαに結合することができる可能性を上昇させる(GarbersおよびScheller、上掲)。Curtisら(Blood 1997 Dec 1;90(11):4403~12頁)は、可溶型マウスIL-11受容体アルファ鎖(sIL-11R)の発現を記載し、gp130を発現する細胞中でのシグナル伝達を検査した。膜貫通型IL-11Rではなく、gp130の存在下で、sIL-11Rは、膜貫通型IL-11Rによるシグナル伝達と同様、M1白血病細胞のIL-11依存的分化およびBa/F3細胞中での増殖ならびにgp130、STAT3およびSHP2のリン酸化を含む初期の細胞内事象を媒介した。可溶型IL-11Rアルファに結合したIL-11による細胞膜結合型gp130を介するシグナル伝達の活性化が、最近証明された(Lokauら、2016、Cell Reports 14、1761~1773頁)。IL-11Rαの発現は、比較的小さいサブセットの細胞型に限定されるが、gp130は様々な細胞型上で発現されるため、このいわゆるIL-11のtransシグナル伝達は、IL-11媒介性シグナル伝達の非常に重要な成分であり、最も一般的な形態のIL-11媒介性シグナル伝達でさえあってよい。
【0046】
本明細書で使用される場合、「IL-11のtransシグナル伝達」は、IL-11Rαに結合したIL-11の、gp130への結合によって誘発されるシグナル伝達を指す。IL11は、非共有複合体としてIL-11Rαに結合してもよい。gp130は、膜結合型であり、シグナル伝達がIL-11:IL-11Rα複合体のgp130への結合後に起こる細胞によって発現される。一部の実施形態では、IL-11Rαは、可溶型IL-11Rαであってもよい。一部の実施形態では、可溶型IL-11Rαは、IL-11Rαの可溶型(分泌型)アイソフォーム(例えば、膜貫通ドメインを欠く)である。一部の実施形態では、可溶型IL-11Rαは、細胞膜に結合したIL-11Rαの細胞外ドメインのタンパク質分解的切断の遊離産物である。一部の実施形態では、IL-11Rαは、細胞膜結合型であってよく、gp130を介するシグナル伝達は、細胞膜結合型IL-11Rαに結合したIL-11の結合によって誘発され、「IL-11のcisシグナル伝達」と呼ばれる。
【0047】
IL-11媒介性シグナル伝達は、造血および血小板産生を刺激する、破骨細胞活性を刺激する、神経発生を刺激する、脂肪生成を阻害する、炎症性サイトカイン発現を低減する、細胞外マトリックス(ECM)代謝をモジュレートする、および消化管上皮細胞の正常な増殖制御を媒介することが示されている1。
【0048】
インターロイキン11(IL-11)の生理学的役割は、依然として不明である。IL-11は、造血細胞の活性化および血小板産生と最も強く関連しているが、炎症促進性ならびに抗炎症性であり、血管新生促進性であることが見出され、新生物形成にとって重要であることも示唆されている。TGFβ1または組織傷害は、IL-11発現を誘導することができることが知られている(Zhu,M.ら、PLOS ONE 10(2015);Yashiro,R.ら、J.Clin.Periodontol.33、165~71頁(2006);Obana,M.ら、Circulation 121、684~91頁(2010);Tang,W.ら、J.Biol.Chem.273、5506~13頁(1998))。
【0049】
IL-11は、TGFβ媒介性シグナル伝達の重要な転写後モジュレーターである。TGFβ1は、IL-11のAP-1プロモーター領域を刺激することが示されており、IL-11のTGFβ誘導性分泌は、腸筋線維芽細胞中のERK p42/44およびp38 MAPキナーゼの活性化を誘導することが示された(Bambaら、Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol.(2003)285(3):G529~38頁)。MAPキナーゼ阻害剤は、TGFβ誘導性IL-11分泌を有意に減少させることができ、mRNAのp38 MAPキナーゼ媒介性安定化は、IL-11のTGFβ誘導性分泌にとって重要であることが示されている。
【0050】
本明細書で使用される場合、「IL-11シグナル伝達」および「IL-11媒介性シグナル伝達」とは、IL-11、または成熟IL-11分子の機能を有するその断片の、IL-11の受容体への結合によって媒介されるシグナル伝達を指す。
【0051】
抗体および抗原結合性断片
一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達を阻害することができる、または血管新生因子媒介性シグナル伝達を阻害することができる薬剤は、抗体、またはその抗原結合性断片である。
【0052】
「抗体」は、本明細書で最も広い意味で使用され、それらが関連する標的分子への結合を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一特異性および多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ならびに抗体断片を包含する。
【0053】
モノクローナル抗体技術と関連する今日の技術を考慮すると、多くの抗原に対する抗体を調製することができる。抗原結合部分は、抗体の一部(例えば、Fab断片)または合成抗体断片(例えば、一本鎖Fv断片[ScFv])であってもよい。選択された抗原に対するモノクローナル抗体を、公知の技術、例えば、「Monoclonal Antibodies:A manual of techniques」、H Zola(CRC Press、1988)および「Monoclonal Hybridoma Antibodies:Techniques and Applications」、J G R Hurrell(CRC Press、1982)に開示されたものによって調製することができる。キメラ抗体は、Neubergerら(1988、8th International Biotechnology Symposium Part 2、792~799頁)によって考察されている。モノクローナル抗体(mAb)は、本発明の方法において特に有用であり、抗原上の単一のエピトープを特異的に標的化する抗体の均一な集団である。
【0054】
ポリクローナル抗体も、本発明の方法において有用である。単一特異性ポリクローナル抗体が好ましい。好適なポリクローナル抗体を、当業界で周知の方法を使用して調製することができる。
【0055】
抗体および抗体断片を遺伝子操作することができるため、FabおよびFab2断片などの抗体の抗原結合性断片を使用/提供することもできる。抗体の可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)ドメインは、抗原認識に関与し、初期プロテアーゼ消化実験によって初めて認識された事実である。さらなる確認は、齧歯類抗体の「ヒト化」によって見出される。得られる抗体が齧歯類親抗体の抗原特異性を保持するように、齧歯類起源の可変ドメインを、ヒト起源の定常ドメインに融合することができる(Morrisonら(1984)Proc.Natl.Acad.Sd.USA 81、6851~6855頁)。
【0056】
本開示による抗体および抗原結合性断片は、関連する標的分子、すなわち、IL-11、IL-11含有複合体、IL-11の受容体、血管新生因子、血管新生因子含有複合体または血管新生因子の受容体に結合することができる抗体の相補性決定領域(CDR)を含む。
【0057】
抗体は一般に、6つのCDRを含む;軽鎖可変領域(VL)中の3つ:LC-CDR1、LC-CDR2、LC-CDR3、および重鎖可変領域(VH)中の3つ:HC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含む。6つのCDRは一緒になって、標的分子に結合する抗体の部分である、抗体のパラトープを規定する。Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991)、Chothiaら、J.Mol.Biol.196:901~917頁(1987)に記載されたもの、およびRetterら、Nucl.Acids Res.(2005)33(suppl 1):D671~D674頁に記載されたようなVBASE2などの、抗体CDRを定義するためのいくつかの異なる慣例がある。
【0058】
本開示による抗体および抗原結合性断片を、関連する標的分子に結合することができるモノクローナル抗体(mAb)の配列を使用して設計および調製することができる。一本鎖可変断片(scFv)、FabおよびFab2断片などの抗体の抗原結合領域を使用/提供することもできる。「抗原結合領域」は、所与の抗体が特異的である標的に結合することができる抗体の任意の断片である。
【0059】
一部の実施形態では、抗体/断片は、血管新生因子、血管新生因子含有複合体、または血管新生因子の受容体に結合することができる抗体のVLおよびVH領域を含む。抗体の抗原結合領域のVLおよびVH領域は、一緒になってFv領域を構成する。一部の実施形態では、抗体/断片は、血管新生因子、血管新生因子含有複合体、または血管新生因子の受容体に結合することができる抗体のFv領域を含むか、またはそれからなる。Fv領域を、一本鎖として発現させることができるが、VHおよびVL領域は、例えば、可撓性オリゴペプチドによって共有的に連結される。したがって、抗体/断片は、血管新生因子、血管新生因子含有複合体、または血管新生因子の受容体に結合することができる抗体のVLおよびVH領域を含むscFvを含んでもよいか、またはそれからなってもよい。
【0060】
抗体の抗原結合領域のVLおよび軽鎖定常(CL)領域、ならびにVH領域および重鎖定常1(CH1)領域は、一緒になってFab領域を構成する。一部の実施形態では、抗体/断片は、血管新生因子、血管新生因子含有複合体、または血管新生因子の受容体に結合することができる抗体のFab領域を含むか、またはそれからなる。
一部の実施形態では、抗体/断片は、血管新生因子、血管新生因子含有複合体、または血管新生因子の受容体に結合することができる全抗体を含むか、またはそれからなる。「全抗体」とは、免疫グロブリン(Ig)の構造と実質的に類似する構造を有する抗体を指す。様々な種類の免疫グロブリンおよびその構造が、例えば、SchroederおよびCavacini J Allergy Clin Immunol.(2010)125(202):S41~S52頁に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。G型の免疫グロブリン(すなわち、IgG)は、2つの重鎖と2つの軽鎖とを含む約150kDaの糖タンパク質である。N末端からC末端に向かって、重鎖は、VH、次いで、3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)を含む重鎖定常領域を含み、同様に軽鎖は、VL、次いで、CLを含む。重鎖に応じて、免疫グロブリンを、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgA(例えば、IgA1、IgA2)、IgD、IgE、またはIgMと分類することができる。軽鎖は、カッパ(κ)またはラムダ(λ)であってもよい。
【0061】
Fab、Fv、ScFvおよびdAb抗体断片を全て、大腸菌(E.coli)中で発現させ、それから分泌させ、かくして、大量の前記断片の容易な産生を可能にすることができる。
【0062】
全抗体、およびF(ab’)2断片は、「二価」である。「二価」とは、前記抗体およびF(ab’)2断片が2つの抗原結合部位を有することを意味する。対照的に、Fab、Fv、ScFvおよびdAb断片は、ただ1つの抗原結合部位を有する一価である。血管新生因子、血管新生因子含有複合体、または血管新生因子の受容体に結合することができる合成抗体を、当業界で周知のファージディスプレイ技術を使用して作製することもできる。
【0063】
抗体を、非改変親抗体と比較して、抗体の抗原に対する親和性が改善された、改変抗体が生成される親和性成熟のプロセスによって産生することができる。親和性成熟抗体を、当業界で公知の手順、例えば、Marksら、Rio/Technology 10:779~783頁(1992);Barbasら、Proc Nat.Acad.Sci.USA 91:3809~3813頁(1994);Schierら、Gene 169:147~155頁(1995);Yeltonら、J.Immunol.155:1994~2004頁(1995);Jacksonら、J.Immunol.154(7):331 0-15 9(1995);およびHawkinsら、J.Mol.Biol.226:889~896頁(1992)に記載の手順によって産生することができる。
【0064】
抗体/断片は、多重特異性抗体が2つ以上の型の抗原に結合するように、例えば、2つ以上の異なる抗体の断片から構成される多重特異性(例えば、二重特異性)抗体を含む。一部の実施形態では、二重特異性抗体は、血管新生因子、血管新生因子含有複合体、または血管新生因子の受容体、IL-11、IL-11含有複合体、またはIL-11の受容体に結合することができる本明細書に記載の抗体/断片を含む。一部の実施形態では、二重特異性抗体は、(i)血管新生因子、血管新生因子含有複合体に結合することができる本明細書に記載の抗体/断片、および(ii)IL-11、IL-11含有複合体、またはIL-11の受容体に結合することができる本明細書に記載の抗体/断片を含む。抗体は、任意の所望の抗原であってもよい、第2の抗原に対する親和性を有する異なる断片を含有してもよい。
【0065】
二重特異性抗体の調製のための技術は、当業界で周知であり、例えば、Mueller,D.ら、(2010 Biodrugs 24(2):89~98頁)、Wozniak-Knopp G.ら、(2010 Protein Eng Des 23(4):289~297頁)、Baeuerle,PA.ら、(2009 Cancer Res 69(12):4941~4944頁)を参照されたい。二重特異性抗体および二重特異性抗原結合性断片を、全体が参照により本明細書に組み込まれるKontermann MAbs 2012、4(2):182~197頁に記載された形式などの任意の好適な形式で提供することができる。例えば、二重特異性抗体または二重特異性抗原結合性断片は、二重特異性抗体コンジュゲート(例えば、IgG2、F(ab’)
2もしくはCovX-Body)、二重特異性IgGもしくはIgG様分子(例えば、IgG、scFv
4-Ig、IgG-scFv、scFv-IgG、DVD-Ig、IgG-sVD、sVD-IgG、2 in 1-IgG、mAb
2、もしくはTandemab common LC)、非対称性二重特異性IgGもしくはIgG様分子(例えば、kih IgG、kih IgG common LC、CrossMab、kih IgG-scFab、mAb-Fv、チャージペアもしくはSEED-body)、低分子二重特異性抗体(例えば、ダイアボディ(Db)、dsDb、DART、scDb、tandAb、タンデムscFv(taFv)、タンデムdAb/VHH、トリプルボディ、トリプルヘッド、Fab-scFv、もしくはF(ab’)
2-scFv
2)、二重特異性FcおよびC
H3融合タンパク質(例えば、taFv-Fc、ジ-ダイアボディ、scDb-C
H3、scFv-Fc-scFv、HCAb-VHH、scFv-kih-Fc、もしくはscFv-kih-C
H3)、または二重特異性融合タンパク質(例えば、scFv
2-アルブミン、scDb-アルブミン、taFv-トキシン、DNL-Fab
3、DNL-Fab
4-IgG、DNL-Fab
4-IgG-サイトカイン
2)であってもよい。特に、Kontermann MAbs 2012、4(2):182~19頁の
図2を参照されたい。
【0066】
二重特異性抗体を産生するための方法は、例えば、SegalおよびBast、2001.Production of Bispecific Antibodies.Current Protocols in Immunology.14:IV:2.13:2.13.1~2.13.16(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されたように、抗体または抗体断片を、例えば、還元性ジスルフィドまたは非還元性チオエーテル結合と化学的に架橋するステップを含む。例えば、N-スクシンイミジル-3-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオン酸(SPDP)を使用して、例えば、ヒンジ領域SH-基を介してFab断片を化学的に架橋して、ジスルフィド結合した二重特異性F(ab)2ヘテロ二量体を創出することができる。
【0067】
二重特異性抗体を産生するための他の方法は、例えば、D.M.およびBast,B.J.2001.Production of Bispecific Antibodies.Current Protocols in Immunology.14:IV:2.13:2.13.1~2.13.16に記載されたように、抗体産生ハイブリドーマを、例えば、ポリエチレングリコールと融合して、二重特異性抗体を分泌することができるクアドローマ細胞を産生するステップを含む。
【0068】
二重特異性抗体および二重特異性抗原結合性断片を、例えば、Antibody Engineering:Methods and Protocols、第2版(Humana Press、2012)、Chapter 40:Production of Bispecific Antibodies:Diabodies and Tandem scFv(Horning and Farber-Schwarz)、またはFrench、How to make bispecific antibodies、Methods Mol.Med.2000;40:333~339頁に記載されたように、例えば、抗原結合分子のためのポリペプチドをコードする核酸構築物からの発現によって、組換え産生することもできる。
【0069】
例えば、2つの抗原結合ドメインのための軽鎖および重鎖可変ドメイン(すなわち、血管新生因子、血管新生因子含有複合体、または血管新生因子の受容体に結合することができる抗原結合ドメインのための軽鎖および重鎖可変ドメイン、ならびに別の標的タンパク質に結合することができる抗原結合ドメインのための軽鎖および重鎖可変ドメイン)をコードし、抗原結合ドメイン間に好適なリンカーまたは二量体化ドメインをコードする配列を含むDNA構築物を、分子クローニング技術によって調製することができる。その後、組換え二重特異性抗体を、好適な宿主細胞(例えば、哺乳動物宿主細胞)中での構築物の発現(例えば、in vitroでの)によって産生させた後、発現された組換え二重特異性抗体を、必要に応じて精製することができる。
【0070】
アプタマー
一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達を阻害することができる、または血管新生因子媒介性シグナル伝達を阻害することができる薬剤は、アプタマーである。
【0071】
核酸/ペプチドリガンドとも呼ばれるアプタマーは、高い特異性および高い親和性で標的分子に結合する能力を特徴とする核酸またはペプチド分子である。今まで同定されたほぼ全てのアプタマーは、天然には存在しない分子である。
【0072】
所与の標的(例えば、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11の受容体、血管新生因子、血管新生因子含有複合体または血管新生因子の受容体)に対するアプタマーを、Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment(SELEX(商標))の方法によって、またはSOMAmers(遅い解離速度の修飾アプタマー)(Gold Lら(2010)PLoS ONE 5(12):e15004)を開発することによって同定および/または産生することができる。アプタマーおよびSELEXは、TuerkおよびGold、Science(1990)249(4968):505~10頁、およびWO91/19813に記載されている。SELEXおよびSOMAmer技術の適用は、例えば、アプタマーの化学的多様性を拡張するためにアミノ酸側鎖を模倣する官能基を付加することを含む。結果として、標的のための高親和性アプタマーを富化し、同定することができる。
【0073】
アプタマーは、DNAまたはRNA分子であってもよく、一本鎖または二本鎖であってもよい。アプタマーは、例えば、糖および/またはリン酸および/または塩基が化学的に修飾された、化学的に修飾された核酸を含んでもよい。そのような修飾は、アプタマーの安定性を改善するか、またはアプタマーを、分解に対してより耐性にしてもよく、リボースの2’位に修飾を含んでもよい。
【0074】
アプタマーを、当業者には周知の方法によって合成することができる。例えば、アプタマーを、例えば、固相支持体上で化学的に合成することができる。固相合成は、ホスホロアミダイト化学を使用してもよい。簡単に述べると、固相支持されたヌクレオチドを脱トリチル化した後、好適に活性化されたヌクレオシドホスホロアミダイトとカップリングさせて、亜リン酸トリエステル結合を形成させる。次いで、キャッピングを行った後、酸化剤、典型的には、ヨウ素を用いた亜リン酸トリエステルの酸化を行うことができる。次いで、サイクルを繰り返して、アプタマーを集合させることができる(例えば、Sinha,N.D.;Biernat,J.;McManus,J.;Koster,H.Nucleic Acids Res.1984、12、4539頁;およびBeaucage,S.L.;Lyer,R.P.(1992).Tetrahedron 48(12):2223頁を参照されたい)。
【0075】
好適な核酸アプタマーは、必要に応じて、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40ヌクレオチドのうちの1つの最小の長さを有してもよい。好適な核酸アプタマーは、必要に応じて、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、または80ヌクレオチドのうちの1つの最大の長さを有してもよい。好適な核酸アプタマーは、必要に応じて、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、または80ヌクレオチドのうちの1つの長さを有してもよい。
【0076】
アプタマーは、特定の標的分子に結合するように選択および操作されたペプチドであってもよい。ペプチドアプタマーならびにその生成および同定のための方法は、Reverdattoら、Curr Top Med Chem.(2015)15(12):1082~101頁に概説されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。ペプチドアプタマーは、必要に応じて、2、3、4、5、6、7、8、9または10アミノ酸のうちの1つの最小の長さを有してもよい。ペプチドアプタマーは、必要に応じて、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50アミノ酸のうちの1つの最大の長さを有してもよい。好適なペプチドアプタマーは、必要に応じて、2~30、2~25、2~20、5~30、5~25または5~20アミノ酸のうちの1つの長さを有してもよい。
【0077】
アプタマーは、nMまたはpM範囲、例えば、500nM、100nM、50nM、10nM、1nM、500pM、100pM未満のうちの1つのKdを有してもよい。
【0078】
因子または受容体の発現を低減させることができる薬剤
本発明の態様では、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストおよび/または血管新生因子のアンタゴニストは、1つまたは複数の標的の発現を防止する、または低減させることができる。
【0079】
発現は、遺伝子またはタンパク質発現であってもよい。
【0080】
当業者には公知の様々な手段によって、例えば、定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)によって、またはリポーターに基づく方法によってmRNAレベルを測定することによって、遺伝子発現を測定することができる。同様に、当業界で周知の様々な方法によって、例えば、抗体に基づく方法によって、例えば、ウェスタンブロット、免疫組織化学分析、免疫細胞化学分析、フローサイトメトリー、ELISA、ELISPOT、またはリポーターに基づく方法によって、タンパク質発現を測定することができる。発現は、対象の細胞/組織/臓器/臓器系によるものであってもよい。
【0081】
一部の実施形態では、薬剤は、限定されるものではないが、shRNAまたはsiRNAを含む、アンチセンスまたは低分子干渉RNAなどの阻害的核酸であってもよい。
【0082】
オリゴヌクレオチド分子、特に、RNAを用いて、遺伝子発現を調節することができる。これらのものは、オリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA(siRNA)によるmRNAの標的化された分解、転写後遺伝子サイレンシング(PTG)、マイクロRNA(miRNA)によるmRNAの発生調節された配列特異的翻訳抑制、および標的化された転写遺伝子サイレンシングを含む。
【0083】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的オリゴヌクレオチド、例えば、mRNAを相補的配列結合によって標的化し、それに結合する、好ましくは一本鎖のオリゴヌクレオチドである。標的オリゴヌクレオチドがmRNAである場合、アンチセンスのmRNAへの結合は、mRNAの翻訳および遺伝子産物の発現をブロックする。アンチセンスオリゴヌクレオチドを、センスゲノム核酸に結合し、標的ヌクレオチド配列の転写を阻害するように設計することができる。
【0084】
ヘテロクロマチン複合体の標的化および特定の染色体遺伝子座でのエピジェネティックな遺伝子サイレンシングにおけるRNAi機構および低分子RNAの役割は証明されている。RNA干渉(RNAi)としても知られる、二本鎖RNA(dsRNA)依存的転写後サイレンシングは、dsRNA複合体が短期間でサイレンシングのための特定の相同遺伝子を標的化することができる現象である。それは、配列同一性を有するmRNAの分解を促進するためのシグナルとして作用する。20ntのsiRNAは、一般には遺伝子特異的サイレンシングを誘導するには十分に長いが、宿主応答を回避するには十分に短い。標的遺伝子産物の発現の減少は、広範囲に及んでもよく、90%のサイレンシングが少ないsiRNA分子によって誘導される。RNAiに基づく治療剤は、いくつかの適応症のための第I、IIおよびIII相臨床試験に進行している(Nature 2009 Jan 22;457(7228):426~433頁)。
【0085】
当業界では、これらのRNA配列は、その起源に応じて、「短い、または低分子干渉RNA」(siRNA)または「マイクロRNA」(miRNA)と呼ばれる。両方の型の配列を使用して、相補的RNAに結合し、mRNA除去を誘発する(RNAi)またはタンパク質へのmRNA翻訳を停止させることによって、遺伝子発現を下方調節することができる。siRNAは、長い二本鎖RNAのプロセッシングによって誘導され、天然に見出される場合、典型的には、外因性起源のものである。マイクロ干渉RNA(miRNA)は、短いヘアピンのプロセッシングによって誘導される、内因性にコードされた低分子非コードRNAである。siRNAとmiRNAは両方とも、RNAを切断することなく、部分的に相補的な標的配列を担持するmRNAの翻訳を阻害し、完全に相補的な配列を担持するmRNAを分解することができる。
【0086】
siRNAリガンドは、典型的には、二本鎖であり、標的遺伝子の機能のRNA媒介性下方調節の有効性を最適化するためには、siRNA分子の長さは、mRNA標的のsiRNAによる認識を媒介するRISC複合体によるsiRNAの正確な認識を確保するように選択され、したがって、siRNAは宿主応答を低減させるのに十分に短いのが好ましい。
【0087】
miRNAリガンドは、典型的には、一本鎖であり、部分的に相補的であり、リガンドがヘアピンを形成するのを可能にする領域を有する。miRNAは、DNAから転写されるが、タンパク質には翻訳されないRNA遺伝子である。miRNA遺伝子をコードするDNA配列は、miRNAよりも長い。このDNA配列は、miRNA配列および近似逆相補体を含む。このDNA配列が一本鎖RNA分子に転写される場合、miRNA配列およびその逆相補体は、塩基対を形成して、部分的二本鎖RNAセグメントを形成する。マイクロRNA配列の設計は、Johnら、PLoS Biology、11(2)、1862~1879頁、2004に考察されている。
【0088】
典型的には、siRNAまたはmiRNAの効果を模倣するように意図されたRNAリガンドは、10~40個のリボヌクレオチド(またはその合成アナログ)、より好ましくは、17~30個のリボヌクレオチド、より好ましくは、19~25個のリボヌクレオチド、最も好ましくは、21~23個のリボヌクレオチドを有する。二本鎖siRNAを用いる本発明の一部の実施形態では、分子は、例えば、1または2個の(リボ)ヌクレオチドの、典型的には、dTdT3’突出部のUUの、対称性3’突出部を有してもよい。本明細書に提供される開示に基づいて、当業者であれば、例えば、Ambion siRNAファインダーなどの資源を使用して、好適なsiRNAおよびmiRNA配列を容易に設計することができる。siRNAおよびmiRNA配列を合成的に産生し、外因的に付加して、遺伝子下方調節を引き起こすか、または発現系(例えば、ベクター)を使用して産生することができる。好ましい実施形態では、siRNAは、合成される。
【0089】
より長い二本鎖RNAを、細胞中でプロセッシングして、siRNAを産生してもよい(例えば、Myers(2003)Nature Biotechnology 21:324~328頁を参照されたい)。より長いdsRNA分子は、例えば、1もしくは2個の(リボ)ヌクレオチドの、対称性3’もしくは5’突出部を有してもよいか、または平滑末端を有してもよい。より長いdsRNA分子は、25ヌクレオチドまたはそれより長くてもよい。好ましくは、より長いdsRNA分子は、25~30ヌクレオチド長である。より好ましくは、より長いdsRNA分子は、25~27ヌクレオチド長である。最も好ましくは、より長いdsRNA分子は、27ヌクレオチド長である。30ヌクレオチド以上の長さのdsRNAを、ベクターpDECAP(Shinagawaら、Genes and Dev.、17、1340~5頁、2003)を使用して発現させることができる。
【0090】
別の選択肢は、細胞中での短いヘアピンRNA分子(shRNA)の発現である。shRNAは、合成siRNAよりも安定である。shRNAは、小さいループ配列によって隔てられた短い逆方向反復からなる。1つの逆方向反復は、遺伝子標的と相補的である。細胞中で、shRNAはDICERによって、標的遺伝子のmRNAを分解し、発現を抑制するsiRNAにプロセッシングされる。好ましい実施形態では、shRNAは、ベクターからの転写によって内因的に(細胞内で)産生される。ヒトH1もしくは7SKプロモーターなどのRNAポリメラーゼIIIプロモーターまたはRNAポリメラーゼIIプロモーターの制御下で、shRNA配列をコードするベクターを細胞にトランスフェクトすることによって、shRNAを細胞内で産生させることができる。あるいは、shRNAを、ベクターからの転写によって外因的に(in vitroで)合成することができる。次いで、shRNAを、細胞中に直接導入することができる。好ましくは、shRNA配列は、40~100塩基長、より好ましくは、40~70塩基長である。ヘアピンのステムは、好ましくは、19~30塩基対の長さである。ステムは、ヘアピン構造を安定化するためのG-U対を含有してもよい。
【0091】
siRNA分子、より長いdsRNA分子またはmiRNA分子を、好ましくは、ベクター内に含有される核酸配列の転写によって組換え的に作製することができる。好ましくは、siRNA分子、より長いdsRNA分子またはmiRNA分子は、標的因子または受容体の部分配列を含む。
【0092】
一実施形態では、siRNA、より長いdsRNAまたはmiRNAは、ベクターからの転写によって内因的に(細胞内で)産生される。ベクターは、当業界で公知の任意の方法で細胞中に導入してもよい。必要に応じて、RNA配列の発現を、組織特異的(例えば、心臓、肝臓、腎臓または眼特異的)プロモーターを使用して調節することができる。さらなる実施形態では、siRNA、より長いdsRNAまたはmiRNAは、ベクターからの転写によって外因的(in vitroで)産生される。
【0093】
好適なベクターは、抑制することができるオリゴヌクレオチド剤を発現するように構成されたオリゴヌクレオチドベクターであってもよい。そのようなベクターは、ウイルスベクターまたはプラスミドベクターであってもよい。治療的オリゴヌクレオチドを、ウイルスベクターのゲノム中に組み込み、調節配列、例えば、その発現を駆動するプロモーターに作動可能に連結することができる。用語「作動可能に連結されている」は、選択されたヌクレオチド配列および調節ヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の発現を、調節配列の影響または制御下に置くような方法で共有的に連結される状況を含んでもよい。かくして、調節配列が、選択されたヌクレオチド配列の一部または全部を形成するヌクレオチド配列の転写を行うことができる場合、調節配列は選択されたヌクレオチド配列に作動可能に連結されている。
【0094】
プロモーターにより発現されるsiRNA配列をコードするウイルスベクターは、当業界で公知であり、治療的オリゴヌクレオチドの長期的発現の利益を有する。例としては、レンチウイルス(Nature 2009 Jan 22;457(7228):426~433頁)、アデノウイルス(Shenら、FEBS Lett 2003 Mar 27;539(1~3)111~4頁)およびレトロウイルス(BartonおよびMedzhitov、PNAS November 12、2002、vol.99、no.23、14943~14945頁)が挙げられる。
【0095】
他の実施形態では、ベクターを、発現の抑制が必要とされる部位への治療的オリゴヌクレオチドの送達を補助するように構成することができる。そのようなベクターは、典型的には、オリゴヌクレオチドを、正に荷電したベクター(例えば、カチオン性細胞透過性ペプチド、カチオン性ポリマーおよびデンドリマー、ならびにカチオン性脂質)と複合体化すること;オリゴヌクレオチドを、低分子(例えば、コレステロール、胆汁酸、および脂質)、ポリマー、抗体、およびRNAとコンジュゲートすること;またはオリゴヌクレオチドを、ナノ粒子製剤中に封入すること(Wangら、AAPS J.2010 Dec;12(4):492~503頁)を含む。
【0096】
一実施形態では、RNAとして発現された場合、センスおよびアンチセンスセクションが会合して二本鎖RNAを形成するように、ベクターは、センス配向とアンチセンス配向の両方の核酸配列を含んでもよい。
【0097】
あるいは、siRNA分子を、当業界で公知である標準的な固相または液相合成技術を使用して合成することができる。ヌクレオチド間の連結は、ホスホジエステル結合であってもよく、またはあるいは、例えば、式P(O)S、(チオエート);P(S)S、(ジチオエート);P(O)NR’2;P(O)R’;P(O)OR6;CO;もしくはCONR’2(式中、RはH(もしくは塩)またはアルキル(1~12C)であり、R6はアルキル(1~9C)である)の連結基が、-O-もしくは-S-を介して隣接するヌクレオチドに連結される。
【0098】
修飾ヌクレオチド塩基を、天然に存在する塩基に加えて使用してもよく、それらは、それらを含有するsiRNA分子に対して有利な特性を付与してもよい。
【0099】
例えば、修飾塩基は、siRNA分子の安定性を増大させることによって、サイレンシングにとって必要とされる量を低減することができる。修飾塩基の提供はまた、多かれ少なかれ、非修飾siRNAよりも安定であるsiRNA分子を提供することもできる。
【0100】
用語「修飾ヌクレオチド塩基」は、共有的に修飾された塩基および/または糖を有するヌクレオチドを包含する。例えば、修飾ヌクレオチドは、3’位でヒドロキシル基以外および5’位でリン酸基以外の低分子量有機基に共有的に結合される糖を有するヌクレオチドを含む。かくして、修飾ヌクレオチドはまた、2’-O-メチル-;2’-O-アルキル;2’-O-アリル;2’-S-アルキル;2’-S-アリル;2’-フルオロ-;2’-ハロまたはアジド-リボースなどの2’置換された糖、炭素環式糖アナログ、a-アノマー糖;アラビノース、キシロースまたはリキソースなどのエピマー糖、ピラノース糖、フラノース糖、およびセドヘプツロースを含んでもよい。
【0101】
修飾ヌクレオチドは、当業界で公知であり、アルキル化プリンおよびピリミジン、アシル化プリンおよびピリミジン、ならびに他の複素環を含む。これらのクラスのピリミジンおよびプリンは、当業界で公知であり、シュードイソシトシン、N4,N4-エタノシトシン、8-ヒドロキシ-N6-メチルアデニン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6-イソペンチル-アデニン、1-メチルアデニン、1-メチルシュードウラシル、1-メチルグアニン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-メチルアデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、D-マンノシルケオシン、5-メトキシカルボニルメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、シュードウラシル、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5メチルウラシル、N-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル5-オキシ酢酸、ケオシン、2-チオシトシン、5-プロピルウラシル、5-プロピルシトシン、5-エチルウラシル、5エチルシトシン、5-ブチルウラシル、5-ペンチルウラシル、5-ペンチルシトシン、および2,6ジアミノプリン、メチルシュードウラシル、1-メチルグアニン、1-メチルシトシンが挙げられる。
【0102】
C.elegans、Drosophila、植物、および哺乳動物において遺伝子をサイレンシングするためのRNAiの使用に関する方法は、当業界で公知である(Fire A.ら、1998 Nature 391:806~811頁;Fire,A.Trends Genet.15、358~363頁(1999);Sharp,P.A.RNA interference 2001、Genes Dev.15、485~490頁(2001);Hammond,S.M.ら、Nature Rev.Genet.2、110~1119頁(2001);Tuschl,T.Chem.Biochem.2、239~245(2001);Hamilton,A.ら、Science 286、950~952頁(1999);Hammond,S.M.ら、Nature 404、293~296(2000);Zamore,P.D.ら、Cell 101、25~33頁(2000);Bernstein,E.ら、Nature 409、363~366頁(2001);Elbashir,S.M.ら、Genes Dev.15、188~200頁(2001);WO0129058;WO9932619、およびElbashir S M.ら、2001、Nature 411:494~498頁)。
【0103】
核酸は、二本鎖siRNAであってもよい(当業者であれば理解できるように、また、以下でさらに説明されるように、siRNA分子は、短い3’DNA配列をも含んでもよい)。
【0104】
本発明の核酸と標的配列との完全な同一性/相補性が好ましいが、必須ではないと予想される。したがって、本発明の核酸は、標的のmRNAと比較して単一のミスマッチを含んでもよい。しかしながら、単一のミスマッチの存在であっても、効率の低下をもたらす可能性があるため、ミスマッチは存在しないのが好ましいと予想される。存在する場合、3’突出部を、ミスマッチの数の考慮から除外してもよい。
【0105】
用語「相補性」は、天然に存在するリボおよび/またはデオキシリボヌクレオチドからなる核酸間の従来の塩基対形成に限定されないだけでなく、mRNAと、非天然ヌクレオチドを含む本発明の核酸との塩基対形成も含む。
【0106】
二本鎖RNAを形成する鎖は、DNAまたはRNAであってもよい、短い3’ジヌクレオチド突出部を有してもよい。3’DNA突出部の使用は、3’ RNA突出部と比較してsiRNA活性に対する効果を有しないが、核酸鎖の化学合成の費用を低減する(Elbashirら、2001c)。この理由から、DNAジヌクレオチドが好ましい場合がある。
【0107】
存在する場合、ジヌクレオチド突出部は、互いに対称的であってよいが、これは必須ではない。実際、センス(上)鎖の3’突出部は、mRNAの認識および分解には参画しないため、RNAi活性とは無関係である(Elbashirら、2001a、2001b、2001c)。
【0108】
DrosophilaにおけるRNAi実験は、アンチセンス3’突出部がmRNAの認識および標的化に参画し得ることを示すが(Elbashirら、2001c)、3’突出部は哺乳動物細胞中でのsiRNAのRNAi活性にとって必要ではないと考えられる。3’突出部の不正確なアニーリングは、したがって、哺乳動物細胞においてはほとんど効果がないと考えられる(Elbashirら、2001c;Czaudernaら、2003)。
【0109】
したがって、任意のジヌクレオチド突出部を、siRNAのアンチセンス鎖において使用することができる。それにも拘わらず、ジヌクレオチドは、好ましくは、-UUまたは-UG(または突出部がDNAである場合、-TTまたはTG)、より好ましくは、-UU(または-TT)である。-UU(または-TT)ジヌクレオチド突出部は、最も有効であり、転写シグナル(終結シグナルはTTTTTである)のRNAポリメラーゼIII末端と一致する(すなわち、その一部を形成することができる)。したがって、このジヌクレオチドが最も好ましい。ジヌクレオチドAA、CCおよびGGを使用してもよいが、有効性が低く、結果として、あまり好ましくはない。
【0110】
さらに、3’突出部を、siRNAから完全に省略してもよい。
【0111】
本発明はまた、好ましくは、3’突出部を有するが、必要に応じて、有しない、上記二本鎖核酸の一方の成分鎖からそれぞれなる一本鎖核酸(本明細書では、一本鎖siRNAと称する)も提供する。本発明はまた、in vitroで互いにハイブリダイズして、上記二本鎖siRNAを形成した後、細胞中に導入することができるそのような一本鎖核酸の対を含有するキットも提供する。
【0112】
相補部分は一般に、2つの相補部分を互いにハイブリダイズさせる好適な長さおよび配列を有するスペーサーによって連結されると予想される。2つの相補(すなわち、センスおよびアンチセンス)部分を、いずれかの順序で5’-3’に連結することができる。スペーサーは、典型的には、約4~12ヌクレオチド、好ましくは、4~9ヌクレオチド、より好ましくは、6~9ヌクレオチドの短い配列と予想される。
【0113】
好ましくは、スペーサーの5’末端(上流の相補部分のすぐ3’側)は、ヌクレオチド-UU-または-UG-、再び好ましくは、-UU-からなる(しかし再度、これらの特定のジヌクレオチドの使用は必須ではない)。OligoEngine(Seattle、Washington、USA)のpSuper系における使用のために推奨される好適なスペーサーは、UUCAAGAGAである。この場合およびその他の場合、スペーサーの末端は、互いにハイブリダイズし、例えば、少数(例えば、1または2個)の塩基対によって標的の正確な配列を超えて二本鎖モチーフを伸長させることができる。
【0114】
同様に、転写されるRNAは、好ましくは、下流の相補部分に由来する3’突出部を含む。再度、これは、好ましくは、-UUまたは-UG、より好ましくは、-UUである。
【0115】
次いで、そのようなshRNA分子を、DICER酵素によって哺乳動物細胞中で切断して、ハイブリダイズしたdsRNAの一方またはそれぞれの鎖が3’突出部を含む、上記の二本鎖siRNAを得ることができる。
【0116】
本発明の核酸の合成のための技術は、勿論、当業界で周知である。
【0117】
当業者であれば、周知の技術および市販の材料を使用して、本発明のDNAのための好適な転写ベクターを構築することができる。特に、DNAを、プロモーターおよび転写終結配列を含む制御配列と結合させる。
【0118】
特に好適なものは、OligoEngine(Seattle、Washington、USA)の市販のpSuperおよびpSuperior系である。これらのものは、ポリメラーゼ-IIIプロモーター(H1)および転写物の3’末端で2個のU残基に寄与するT5転写終結配列を使用する(DICERプロセッシング後、siRNAの一方の鎖の3’UU突出部を提供する)。
【0119】
別のポリメラーゼ-IIIプロモーター(U6)を使用する、別の好適な系は、Shinら(RNA、2009 May;15(5):898~910頁)に記載されている。
【0120】
本発明はさらに、1つまたは複数の薬学的に許容される担体と混合した、本発明の二本鎖siRNAまたは本発明の転写ベクターを含む組成物を提供する。好適な担体は、細胞膜の透過を補助することができる、親油性担体またはベシクルを含む。
【0121】
本発明のsiRNA二重鎖およびDNAベクターの投与にとって好適な材料および方法は、当業界で周知であり、RNAi技術の潜在能力を考慮した、改善された方法が開発中である。
【0122】
一般に、多くの技術が、核酸を哺乳動物細胞中に導入するために利用可能である。技術の選択は、核酸が、in vitroで培養細胞中に、またはin vivoで患者の細胞中に移入されるかどうかに依存すると予想される。in vitroでの核酸の哺乳動物細胞への移入にとって好適な技術としては、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE、デキストランおよびリン酸カルシウム沈降の使用が挙げられる。in vivoでの遺伝子移入技術としては、ウイルス(典型的には、レトロウイルス)ベクターおよびウイルスコートタンパク質-リポソーム媒介性トランスフェクション(Dzauら(2003)Trends in Biotechnology 11、205~210頁)が挙げられる。
【0123】
特に、in vitroとin vivoの両方での本発明の核酸の細胞投与のための好適な技術は、以下の論文に開示されている:
【0124】
一般的概説:Borkhardt,A.2002.Blocking oncogenes in malignant cells by RNA interference-new hope for a highly specific cancer treatment?Cancer Cell.2:167~8頁。Hannon,G.J.2002.RNA interference.Nature.418:244~51頁。McManus,M.T.およびP.A.Sharp.2002.Gene silencing in mammals by small interfering RNAs.Nat Rev Genet.3:737~47頁。Scherr,M.、M.A.Morgan、およびM.Eder.2003b.Gene silencing mediated by small interfering RNAs in mammalian cells.Curr Med Chem.10:245~56頁。Shuey,D.J.、D.E.McCallus、およびT.Giordano.2002.RNAi:gene-silencing in therapeutic intervention.Drug Discov Today.7:1040~6頁。
【0125】
リポソームを使用する全身送達:Lewis,D.L.、J.E.Hagstrom,A.G.Loomis,J.A.Wolff、およびH.Herweijer.2002.Efficient delivery of siRNA for inhibition of gene expression in postnatal mice.Nat Genet.32:107~8頁。Paul,C.P.、P.D.Good、I.Winer、およびD.R.Engelke.2002.Effective expression of small interfering RNA in human cells.Nat Biotechnol.20:505~8頁。Song,E.、S.K.Lee、J.Wang、N.Ince、N.Ouyang、J.Min、J.Chen、P.Shankar、およびJ.Lieberman.2003.RNA interference targeting Fas protects mice from fulminant hepatitis.Nat Med.9:347~51頁。Sorensen,D.R.、M.Leirdal、およびM.Sioud.2003.Gene silencing by systemic delivery of synthetic siRNAs in adult mice.J Mol Biol.327:761~6頁。
【0126】
ウイルス媒介性移入:Abbas-Terki,T.、W.Blanco-Bose、N.Deglon、W.Pralong、およびP.Aebischer.2002.Lentiviral-mediated RNA interference.Hum Gene Ther.13:2197~201頁。Barton,G.M.、およびR.Medzhitov.2002.Retroviral delivery of small interfering RNA into primary cells.Proc Natl Acad Sci USA.99:14943~5頁。Devroe,E.、およびP.A.Silver.2002.Retrovirus-delivered siRNA.BMC Biotechnol.2:15頁。Lori,F.、P.Guallini、L.Galluzzi、およびJ.Lisziewicz.2002.Gene therapy approaches to HIV infection.Am J Pharmacogenomics.2:245~52頁。Matta,H.、B.Hozayev,R.Tomar、P.Chugh、およびP.M.Chaudhary.2003.Use of lentiviral vectors for delivery of small intergering RNA.Cancer Biol Ther.2:206~10頁。Qin,X.F.、D.S.An、I.S.Chen、およびD.Baltimore.2003.Inhibiting HIV-1 infection in human T cells by lentiviral-mediated delivery of small interfering RNA against CCR5.Proc Natl Acad Sci USA.100:183~8頁。Scherr,M.、K.Battmer、A.Ganser、およびM.Eder.2003a.Modulation of gene expression by lentiviral-mediated delivery of small interfering RNA.Cell Cycle.2:251~7頁。Shen,C.、A.K.Buck、X.Liu、M.Winkler、およびS.N.Reske.2003.Gene silencing by adenovirus-delivered siRNA.FEBS Lett.539:111~4頁。
【0127】
ペプチド送達:Morris,M.C.、L.Chaloin、F.Heitz、およびG.Divita.2000.Translocating peptides and proteins and their use for gene delivery.Curr Opin Biotechnol.11:461~6頁。Simeoni,F.、M.C.Morris、F.Heitz、およびG.Divita.2003.Insight into the mechanism of the peptide-based gene delivery system MPG:implications for delivery of siRNA into mammalian cells.Nucleic Acids Res.31:2717~24頁。siRNAの標的細胞への送達にとって好適であり得る他の技術は、米国特許第6,649,192B号および第5,843,509B号に記載されたものなどのナノ粒子またはナノカプセルに基づく。
【0128】
血管新生および血管新生因子
血管新生は、新しい血管が元々存在する血管から形成する生理学的プロセスである。それは、増殖、創傷治癒、および悪性腫瘍における不可欠なプロセスである。血管新生の上方調節は、眼の疾患、特に、網膜の新生血管疾患における共通の特徴である。血管系の発達および維持は、全ての実質組織の正常な機能にとって重要であり、その欠陥は、疾患および臓器不全、特に、本明細書に記載の眼疾患をもたらす。多くの新生血管性網膜疾患は、線維症をもたらす。
【0129】
血管内皮増殖因子(VEGF)ファミリーのメンバー、アンギオポエチン、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、血小板由来成長因子、腫瘍壊死因子-α、インターロイキンおよび線維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリーのメンバーを含む、血管新生のいくつかの誘導因子が同定されている。血管新生の細胞および分子メカニズムは、Adams & Alitalo、Nature Reviews Molecular Cell Biology volume 8、464~478頁(2007)、およびOtrockら、Understanding the biology of angiogenesis:Review of the most important molecular mechanisms、Blood Cells,Molecules,and Diseases、Volume 39、Issue 2、2007、212~220頁に記載されており、それらはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0130】
本明細書で使用される場合、「血管新生因子」とは、血管新生を誘導/強化/促進することができる任意の因子(例えば、ペプチド/ポリペプチド、糖タンパク質、リポタンパク質、グリカン、糖脂質、脂質、核酸またはその断片)を指す。血管新生を誘導/強化/促進することができる因子を、例えば、血管新生のin vitroまたはin vivoでのアッセイにおける分析によって同定することができる。血管新生の分析のための好適なアッセイとしては、内皮細胞遊走アッセイ、内皮細胞増殖アッセイ、および内皮管形成アッセイが挙げられる。血管新生アッセイは、Adair TH、Montani JP、Angiogenesis.San Rafael(CA):Morgan & Claypool Life Sciences;2010、Chapter 2、Angiogenesis Assaysに詳細に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0131】
一部の実施形態では、血管新生因子は、血管新生を誘導/促進することができるポリペプチドまたはポリペプチド複合体である。血管新生因子は、可溶型または膜結合型であってもよく、ポリペプチドもしくはポリペプチド複合体リガンド、またはそのようなリガンドのためのポリペプチドもしくはポリペプチド複合体受容体であってもよい。血管新生因子は、任意の種に由来するものであってよく、任意の種に由来する血管新生因子のアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログを含む。好ましい実施形態では、種はヒト(ホモ・サピエンス)である。血管新生因子のアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログは、必要に応じて、所与の種、例えば、ヒトに由来する未成熟または成熟血管新生因子のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、好ましくは、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のうちの1つのアミノ酸配列同一性を有することを特徴としてもよい。血管新生因子のアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログは、必要に応じて、血管新生因子の相互作用パートナー(例えば、血管新生因子の受容体、もしくは血管新生因子のリガンド)に結合する能力および/または血管新生を誘導/促進する能力を特徴としてもよい。例えば、血管新生因子は、VEGF、VEGF受容体、FGF、FGF受容体、PDGF、もしくはPDGF受容体、またはVEGF、VEGF受容体、FGF、FGF受容体、PDGF、もしくはPDGF受容体の断片、バリアント、アイソフォームもしくはホモログであってもよい。
【0132】
血管新生因子のポリペプチドの断片は、任意の長さ(アミノ酸の数で)のものであってよいが、必要に応じて、成熟血管新生因子の長さの少なくとも25%であってもよく、成熟血管新生因子の長さの50%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のうちの1つの最大の長さを有してもよい。血管新生因子は、ヘテロまたはホモ二量体などの、1つまたは複数のサブユニットを含む複合体であってもよい。
【0133】
本明細書で使用される場合、「血管新生因子の相互作用パートナー」とは、血管新生因子と相互作用する(例えば、それに結合する)ことができる任意の因子(例えば、ポリペプチドまたはポリペプチド複合体)を指す。相互作用は、非共有的会合であってもよい。
【0134】
血管新生因子と、血管新生因子の相互作用パートナーとは、好ましくは、会合して、生物学的に機能的な複合体、例えば、シグナル伝達(例えば、血管新生促進性シグナル伝達)を開始/促進することができる受容体:リガンド複合体を形成する。血管新生因子の相互作用パートナーは、例えば、血管新生因子の受容体、または血管新生因子のリガンドであってもよい。一部の実施形態では、血管新生因子の相互作用パートナーと、血管新生因子との相互作用は、血管新生促進性シグナル伝達および/または血管新生を誘導/促進する。例えば、VEGFのVEGF受容体への結合は、VEGF受容体を発現する細胞による細胞内シグナル伝達を誘発し、血管新生プロセスを誘導/促進することができる。
【0135】
例えば、血管新生因子の相互作用パートナーは、血管新生因子受容体であってもよい。一部の実施形態では、血管新生因子受容体は、VEGF、FGF、PDGF、またはVEGF、FGF、もしくはPDGFの断片、バリアント、アイソフォームもしくはホモログに結合することができるポリペプチドまたはポリペプチド複合体であってもよい。血管新生因子受容体は、例えば、VEGF受容体、FGF受容体、およびPDGF受容体を含む。血管新生因子受容体は、本開示による血管新生因子であることが理解されると予想される。例えば、VEGFRは、血管新生因子(すなわち、血管新生を誘導/強化/促進することができる因子)と、血管新生因子受容体(すなわち、VEGFの受容体)との両方である。
【0136】
同様に、血管新生因子の相互作用パートナーは、血管新生因子受容体のリガンドであってもよい。一部の実施形態では、血管新生因子受容体のリガンドは、VEGF受容体、FGF受容体、PDGF受容体、またはVEGF受容体、FGF受容体、もしくはPDGF受容体の断片、バリアント、アイソフォームもしくはホモログに結合することができるポリペプチドまたはポリペプチド複合体であってもよい。血管新生因子リガンドとしては、例えば、VEGF、FGF、およびPDGFが挙げられる。血管新生因子リガンドは、本開示による血管新生因子であることが理解されると予想される。例えば、VEGFは、血管新生因子(すなわち、血管新生を誘導/強化/促進することができる因子)と、血管新生因子受容体のリガンド(すなわち、VEGF受容体のリガンド)との両方である。
【0137】
一部の実施形態では、本明細書に提供される任意の方法または組成物を、線維症の状況またはその他の状況において、血管新生を処置/防止するために使用することができる。
【0138】
血管内皮増殖因子(VEGF)
本明細書における一部の実施形態では、血管新生因子は、VEGFである。VEGFは、胎盤増殖因子(PIGF、AAD30179.1 GI:4809334)、VEGF-A(AAP86646.1 GI:32699990)、VEGF-B(AAC50721.1 GI:1488259)、VEGF-C(CAA63907.1 GI:1182005)、VEGF-D(BAA24264.1 GI:2766190)、およびorfウイルスによりコードされるVEGF-E(ABA00650.1 GI:74230845)を含む遺伝子ファミリーによってコードされる増殖因子である。一部の実施形態では、VEGFは、VEGF-Aである。エクソンスプライシングの差異は、それぞれ、シグナル配列の切断後に121、165、189、および206アミノ酸を有する、4つの主なVEGF-Aアイソフォーム: VEGF121、VEGF165、VEGF189、およびVEGF206の生成をもたらす[65]。VEGF165は、ドミナントアイソフォームであると考えられる。
【0139】
VEGFは、動脈、静脈、およびリンパ系に由来する血管内皮細胞の増殖、ならびに様々なin vivoモデルにおける血管新生の誘導(すなわち、薄い壁の内皮の内側構造の形成)、微小血管透過性の急速な上昇の誘導を刺激する[66~68]。
【0140】
本明細書では、「VEGF」は、任意の種に由来するVEGF(例えば、VEGF-A、B、C、DまたはE)を指し、任意の種に由来するVEGFのアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログを含む。好ましい実施形態では、種はヒト(ホモ・サピエンス)である。VEGFの断片は、任意の長さ(アミノ酸の数で)のものであってよいが、必要に応じて、成熟VEGFの長さの少なくとも25%であってもよく、成熟VEGFの長さの50%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のうちの1つの最大の長さを有してもよい。VEGFの断片は、10アミノ酸の最小の長さ、および15、20、25、30、40、50、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220または225アミノ酸のうちの1つの最大の長さを有してもよい。
【0141】
VEGFは、3つの受容体-VEGFR1(AAH39007.1 GI:24660372)、VEGFR2(P35968.2 GI:9087218)およびVEGFR3(AAA85215.1 GI:1150991)への結合によってその生物学的効果を発揮する。それぞれの受容体は、VEGFのための細胞外結合ドメイン、膜貫通配列および細胞内チロシンキナーゼ部分を有する。細胞外受容体ドメインに結合するVEGFは、受容体を二量体化させ、細胞内チロシンキナーゼ部分のリン酸化をもたらす。
【0142】
本明細書では、「VEGFの受容体」または「VEGF受容体」は、VEGFに結合することができるポリペプチドまたはポリペプチド複合体を指す。一部の実施形態では、VEGF受容体は、VEGFに結合し、その受容体を発現する細胞中でシグナル伝達を誘導することができる。一部の実施形態では、「VEGFの受容体」は、VEGFRを指す。本明細書では、別途記述しない限り、「VEGFR」は、VEGFR1、VEGFR2および/またはVEGFR3を指す。
【0143】
VEGFRは、必要に応じて、所与の種、例えば、ヒトに由来するVEGFRのアミノ酸配列に対して少なくとも70%、好ましくは、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のうちの1つのアミノ酸配列同一性を有することを特徴としてもよい。VEGFRのアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログは、必要に応じて、VEGF(好ましくは、同じ種に由来する)に結合し、VEGFRを発現する細胞中でシグナル伝達を刺激する能力を特徴としてもよい。VEGF受容体の断片は、任意の長さ(アミノ酸の数で)のものであってよいが、必要に応じて、成熟VEGFRの長さの少なくとも25%であってもよく、成熟VEGFRの長さの50%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のうちの1つの最大の長さを有してもよい。VEGF受容体断片の断片は、10アミノ酸の最小の長さ、および20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1010、1020、1030、1040、1050、1060、1070、1080、1090、1100、1110、1120、1130、1140、1150、1160、1170、1180、1190、1200、1210、1220、1230、1240、1250、1260、1270、1280、1290、1300、1310、1320、1330、1340、1350、1360、1370、1380、1390、1400、1410、1420、1430、1440、1450、1460、1470、1480、1490、1500、1510、1520、1530、1540、1550、1560、1570、1580、1590、1600、1610、1620、1630、1640、1650、1660、1670、1680、1690、1700、1710、1720、1730、1740、1750、1760、1770、1780、1790、または1795アミノ酸のうちの1つの最大の長さを有してもよい。
【0144】
線維芽細胞増殖因子(FGF)
酸性および塩基性の線維芽細胞増殖因子、それぞれ、aFGFおよびbFGFは、血管新生において重要な役割を果たすと考えられるヘパリン結合タンパク質マイトジェンである。22種の異なるFGFおよび4種の異なるチロシンキナーゼ受容体(FGFR)が存在する。FGFおよびその受容体は、Prestaら、Fibroblast growth factor/fibroblast growth factor receptor system in angiogenesis,Cytokine Growth Factor Rev.、16(2005)、159~178頁に概説されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0145】
本明細書で使用される場合、「FGF」とは、任意の種に由来するaFGFまたはbFGFを指し、そのアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログを含む。例えば、FGFは、FGF1(AAH32697.1 GI:21595687)、FGF2(P09038.3 GI:261260095)、FGF3(P11487.1 GI:122748)、FGF4(NP_001998.1 GI:4503701)、FGF5(P12034.4 GI:85700417)、FGF6(P10767.4 GI:1169676)、FGF7(P21781.1 GI:122756)、FGF8(NP_001193318.1 GI:329755303)、FGF9(NP_002001.1 GI:4503707)、FGF10(CAG46466.1 GI:49456291)、FGF11(Q92914.1 GI:2494457)、FGF12(P61328.1 GI:47117683)、FGF13(Q92913.1 GI:2494461)、FGF14(NP_001308867.1 GI:1013165743)、FGF15(AAO13811.1 GI:27448228)、FGF16(NP_003859.1 GI:4503691)、FGF17(AAQ89228.1 GI:37182856)、FGF18(AAQ89954.1 GI:37222209)、FGF19(NP_005108.1 GI:4826726)、FGF20(AAH98339.1 GI:68226699)、FGF21(AAQ89444.1 GI:37183289)、もしくはFGF22(Q9HCT0.1 GI:13626689)、またはそのアイソフォーム、断片、バリアントもしくはホモログであってもよい。「FGF受容体」とは、FGF、およびそのアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログに結合することができるポリペプチドまたはポリペプチド複合体を指す。FGF受容体は、FGFR1(AAH15035.1 GI:21955340)、FGFR2(AAA61188.1 GI:3397110)、FGFR3(P22607.1 GI:120050)、およびFGFR4(AAH11847.1 GI:15080148)、ならびにそのアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログを含む。一部の実施形態では、FGF受容体は、FGFに結合し、FGF受容体を発現する細胞中でシグナル伝達を誘導することができる。
【0146】
血小板由来成長因子
血小板由来成長因子(PDGF)は、最初は血小板から精製され、次いで、線維芽細胞、星状細胞、ケラチノサイト、上皮細胞および他の細胞型において同定された。PDGFは、A鎖(P04085.1 GI:129719)およびB鎖(CAG46606.1 GI:49456571)から構成されるヘテロ二量体(PDGF-AB)またはホモ二量体(PDGF-AAもしくは-BB)として存在する。それぞれ、異なる遺伝子によってコードされる、2つの形態のPDGF-R、アルファ(P16234.1 GI:129892)およびベータ(P09619.1 GI:129890)が存在する。どの増殖因子が結合するかに応じて、PDGF-Rは、ホモまたはヘテロ二量体化する。PDGFおよびその受容体は、Rossら、The Biology of Platelet-Derived Growth Factor、Cell、Vol.46、155~169頁、July 18、1986に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0147】
本明細書で使用される場合、「PDGF」とは、任意の種に由来するPDGF-A、PDGF-B、PDGF-AB、PDGF-AA、PDGF-BA、またはPDGF-BBを指し、そのアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログを含む。「PDGF受容体」とは、PDGF、またはそのアイソフォーム、断片、バリアントもしくはホモログに結合することができるポリペプチドまたはポリペプチド複合体を指す。一部の実施形態では、PDGF受容体は、PDGF-Rアルファ、PDGF-Rベータ、PDGF-Rアルファ-アルファホモ二量体、PDGF-Rベータ-ベータホモ二量体、またはPDGF-Rアルファ-ベータヘテロ二量体である。一部の実施形態では、PDGF受容体は、PDGFに結合し、PDGF受容体を発現する細胞中でシグナル伝達を誘導することができる。
【0148】
他の血管新生因子としては、アンギオゲニン(NP_001091046.1 GI:148277046)、アンギオポエチン(AAD19608.1 GI:4378598)、インテグリン(例えば、NP_001004439.1 GI:52485853、NP_002194.2 GI:116295258、NP_002195.1 GI:4504747、NP_000876.3 GI:67191027、NP_002196.4 GI:1017029567、NP_001303235.1 GI:937834186、NP_001138468.1 GI:222418613、NP_003629.2 GI:612407851、NP_002198.2 GI:52485941、NP_001273304.1 GI:556503454、NP_001004439.1 GI:52485853、NP_001305114.1 GI:970949440、NP_001273304.1 GI:556503454、NP_002200.2 GI:167466215、NP_001139280.1 GI:224831239、NP_002201.1 GI:4504763、EAW51597.1 GI:119571982、NP_001273304.1 GI:556503454、NP_391988.1 GI:19743819、NP_001120963.2 GI:735367803、NP_000203.2 GI:47078292、NP_000204.3 GI:54607035、NP_001341694.1 GI:1269208512、NP_001269282.1 GI:538916664、NP_000880.1 GI:4504777、NP_002205.1 GI:4504779から選択される)、およびTNFα(AQY77150.1 GI:1159611449)が挙げられる。本発明における使用にとって好適なTNFαの阻害剤としては、抗体であるインフリキシマブが挙げられる。
【0149】
線維症
本明細書で使用される場合、「線維症」とは、細胞外マトリックス成分、例えば、コラーゲンの過剰な蓄積の結果としての過剰な線維性結合組織の形成を指す。
【0150】
線維性結合組織は、高いコラーゲン含量を有する細胞外マトリックス(ECM)を有することを特徴とする。コラーゲンを、不規則に配置されていてもよい、または整列されていてもよい、鎖または線維中で提供することができる。線維性結合組織のECMはまた、グリコサミノグリカンを含んでもよい。
【0151】
本明細書で使用される場合、「過剰の線維性結合組織」とは、所与の位置(例えば、所与の組織もしくは臓器、または所与の組織もしくは臓器の一部)での、線維症の非存在下、例えば、正常な非病状下のその位置に存在する結合組織の量よりも多い、結合組織の量を指す。本明細書で使用される場合、「細胞外マトリックス成分の過剰な蓄積」とは、線維症の非存在下、例えば、正常な非病状下での蓄積のレベルよりも高い、1つまたは複数の細胞外マトリックス成分の蓄積のレベルを指す。
【0152】
線維症の細胞および分子メカニズムは、Wynn,J.Pathol.(2008)214(2):199~210頁、ならびにWynnおよびRamalingam、Nature Medicine(2012)18:1028~1040頁に記載されており、それらはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0153】
線維症の重要な細胞エフェクターは、コラーゲンに富む細胞外マトリックスを産生する、筋線維芽細胞である。
【0154】
組織傷害に応答して、損傷した細胞および白血球は、TGFβ、IL-13およびPDGFなどの線維症促進因子を産生し、線維芽細胞を、αSMAを発現する筋線維芽細胞に活性化し、筋線維芽細胞を傷害部位に動員する。筋線維芽細胞は、大量の細胞外マトリックスを産生し、創傷の拘縮および閉鎖を助ける際の重要なメディエータである。しかしながら、持続感染の状態下で、または慢性炎症中に、筋線維芽細胞の過剰活性化および動員、かくして、細胞外マトリックス成分の過剰産生が存在し、過剰の線維性結合組織の形成をもたらし得る。
【0155】
一部の実施形態では、線維症は、TGFβ1などの線維症促進因子の産生をもたらす病状、例えば、状態、感染または疾患状態によって誘発され得る。一部の実施形態では、線維症は、物理的傷害/刺激、化学的傷害/刺激または環境的傷害/刺激によって引き起こされ得る。物理的傷害/刺激は、外科手術中に、例えば、医原性の原因で起こり得る。化学的傷害/刺激は、例えば、ブレオマイシン、シクロホスファミド、アミオダロン、プロカインアミド、ペニシラミン、金およびニトロフラントインなどの薬物の慢性投与後の薬物誘導性線維症を含んでもよい(Dabaら、Saudi Med J 2004 Jun;25(6):700~6頁)。環境的傷害/刺激は、アスベスト繊維またはシリカへの曝露を含んでもよい。
【0156】
線維症は、身体の多くの組織において生じ得る。例えば、線維症は、肝臓(例えば、肝硬変)、肺、腎臓、心臓、血管、眼、皮膚、膵臓、腸、脳、および骨髄において生じ得る。線維症はまた、複数の臓器に同時に生じることもある。
【0157】
一部の実施形態では、線維症は、例えば、肝臓、小腸、大腸、または膵臓の消化管系の臓器に影響を与えてもよい。一部の実施形態では、線維症は、呼吸器系の臓器、例えば、肺に影響を与えてもよい。一部の実施形態では、線維症は、心血管系の臓器、例えば、心臓または血管に影響を与えてもよい。一部の実施形態では、線維症は、皮膚に影響を与えてもよい。一部の実施形態では、線維症は、神経系の臓器、例えば、脳に影響を与えてもよい。一部の実施形態では、線維症は、泌尿器系の臓器、例えば、腎臓に影響を与えてもよい。一部の実施形態では、線維症は、骨格筋系の臓器、例えば、筋肉組織に影響を与えてもよい。
【0158】
一部の実施形態では、線維症は、心臓もしくは心筋の線維症、肝線維症、または腎線維症であってもよい。一部の実施形態では、心臓または心筋の線維症は、心臓の筋肉組織もしくは電気特性の機能障害、または心臓の弁の壁の肥厚と関連する。一部の実施形態では、線維症は、心臓の心房および/または心室のものである。心房または心室の線維症の処置または防止は、心房細動、心室細動、または心筋梗塞のリスクまたは開始を低減するのに役立ち得る。一部の実施形態では、肝線維症は、慢性肝臓病または肝硬変と関連する。一部の実施形態では、腎線維症は、慢性腎臓病と関連する。
【0159】
一部の実施形態では、線維症は、血管新生と関連してもよい。一部の実施形態では、線維症を処置または防止する方法、そのような処置/防止のための対象の適合性を決定する方法および本明細書に記載の線維症を診断/予後診断する方法はまた、血管新生の処置/防止/診断/予後診断にも適用可能であり、その逆も可能である。
【0160】
本発明による線維症を特徴とする疾患/状態としては、限定されるものではないが、グレーブス眼症、網膜上線維症、網膜線維症、特発性黄斑前線維症、網膜下線維症(例えば、網膜剥離もしくは黄斑変性(例えば、滲出型加齢黄斑変性(AMD)と関連する)、脈絡膜血管新生(CNV)、糖尿病性網膜症、緑内障、地図状萎縮(萎縮型加齢黄斑変性(AMD))、角膜線維症、術後線維症(例えば、白内障手術後の後嚢の、もしくは緑内障の線維柱帯切除術後のブレブの)、結膜線維症、または結膜下線維症などの眼の疾患;肺線維症、嚢胞性線維症、特発性肺線維症、進行性塊状線維症、強皮症、閉塞性細気管支炎、Hermansky-Pudlak症候群、石綿症、珪肺症、慢性肺高血圧、AIDS関連肺高血圧、サルコイドーシス、肺疾患における腫瘍間質、および喘息などの呼吸器状態;慢性肝臓病、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、住血吸虫性肝疾患、肝硬変;肥大型心筋症、拡張型心筋症(DCM)、心房の線維症、心房細動、心室の線維症、心室細動、心筋線維症、ブルガダ症候群、心筋炎、心内膜心筋線維症、心筋梗塞、線維性血管疾患、高血圧性心疾患、不整脈源性右室心筋症(ARVC)、尿細管間質および糸球体線維症、アテローム性動脈硬化症、静脈瘤、脳梗塞などの心血管状態;グリオーシスおよびアルツハイマー病などの神経学的状態;デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)またはベッカー型筋ジストロフィー(BMD)などの筋ジストロフィー;クローン病、顕微鏡的大腸炎および原発性硬化性胆管炎(PSC)などの消化管状態;強皮症、腎性全身性線維症および真皮ケロイドなどの皮膚状態;関節線維症;デュピュイトラン拘縮;縦隔線維症;後腹膜線維化症;骨髄線維症;ペイロニー病;癒着性関節包炎;腎臓病(例えば、腎線維症、腎炎症候群、アルポート症候群、HIV関連腎症、多発性嚢胞腎、ファブリー病、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、全身性エリテマトーデスを伴う腎炎);全身性進行性硬化症(PSS);慢性移植片対宿主疾患;関節炎;線維性前新生物および線維性新生物疾患;ならびに化学的または環境刺激(例えば、がん化学療法、殺虫剤、放射線/がん放射線療法)により誘導される線維症が挙げられる。
【0161】
上に列挙された多くの疾患/状態は相互に関連すると理解されると予想される。例えば、心室の線維症は、心筋梗塞後に生じることがあり、DCM、HCMおよび心筋炎と関連する。
【0162】
眼の線維症
一部の実施形態では、本発明は、眼における線維症を処置または防止する方法、方法における使用の組合せ、または方法における組成物の使用に関する。眼の線維症は、Friedlander、Fibrosis and diseases of the eye、J Clin Invest.2007 Mar 1;117(3):576~586頁に詳細に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0163】
眼の線維症は、炎症、虚血、および変性疾患に対する応答を含む、機械的創傷または様々な代謝機能障害の結果生じ得る。眼の線維症は、前眼部における、または後眼部(すなわち、網膜)内の創傷治癒または疾患事象を指してもよい。
【0164】
眼の線維症は、網膜、網膜上または網膜下線維症であってもよい。それは、虚血性網膜症の結果であってもよいか、またはそれと関連してもよい。眼の線維症は、網膜表面上での虚血および/または新血管形成と関連する線維症であってもよい。眼の線維症は、網膜下新血管形成、例えば、脈絡毛細管枝を起源とする新血管形成と関連してもよい。線維症は、例えば、網膜の線維血管瘢痕化と関連してもよい。眼の線維症は、脈絡膜血管新生(CNV)と関連してもよい。
【0165】
眼の線維症はまた、前眼部において生じてもよい。例えば、線維症は、角膜、または小柱網(眼内液が眼から離れる管)に影響してもよい。線維症は、角膜の表面上での線維血管増殖、例えば、瞼裂斑および翼状片を特徴としてもよい。
【0166】
眼の線維症は、炎症または虚血障害などの疾患/障害と関連してもよい。そのような疾患/障害としては、グレーブス眼症、網膜上線維症、網膜線維症、特発性黄斑前線維症、網膜下線維症(例えば、網膜剥離もしくは黄斑変性(例えば、滲出型加齢黄斑変性(AMD)と関連する)、糖尿病性網膜症、緑内障、地図状萎縮(萎縮型加齢黄斑変性(AMD))、角膜線維症、術後線維症(例えば、白内障手術後の後嚢の、もしくは緑内障の線維柱帯切除術後のブレブの)、結膜線維症、または結膜下線維症が挙げられる。
【0167】
本発明による線維症の処置、防止または軽減は、IL-11の上方調節、例えば、線維症が生じる、もしくは生じ得る細胞もしくは組織中でのIL-11の上方調節、または細胞外IL-11もしくはIL-11Rの上方調節と関連する線維症のものであってもよい。
【0168】
線維症の処置または軽減は、線維症の進行を防止する、例えば、線維症の状態の悪化を防止する、または線維症の発達の速度を遅らせるのに有効であってもよい。一部の実施形態では、処置または軽減は、線維症の改善、例えば、蓄積したコラーゲン線維の量の低減をもたらしてもよい。
【0169】
線維症の防止とは、線維症の状態の悪化の防止または線維症の発達の防止、例えば、初期状態の線維症の、後期の慢性状態への発達の防止を指してもよい。
【0170】
IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニスト
本発明の態様は、IL-11媒介性シグナル伝達の拮抗作用(すなわち、阻害)を含む。
【0171】
ここで、「阻害」とは、対照状態と比較した低減、減少または低下を指す。例えば、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストによるIL-11の作用の阻害とは、薬剤の非存在下での、および/または適切な対照薬剤の存在下での、IL-11媒介性シグナル伝達の程度の低減、減少または低下を指す。
【0172】
阻害は、本明細書では、中和または拮抗作用を指してもよい。IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニスト(例えば、IL-11またはIL-11含有複合体によって媒介される活性のアンタゴニスト)は、関連する機能またはプロセスに関して「中和」または「アンタゴニスト」剤であると言ってもよい。例えば、IL-11媒介性シグナル伝達を阻害することができる薬剤は、IL-11媒介性シグナル伝達を中和することができる薬剤と呼んでもよく、またはIL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストと呼んでもよい。
【0173】
IL-11シグナル伝達経路は、IL-11シグナル伝達の阻害のための複数の経路を提供する。IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストは、例えば、IL-11の受容体を介するシグナル伝達に関与する、またはそれにとって必要な1つまたは複数の因子の作用を阻害することによって、IL-11の作用を阻害することができる。
【0174】
例えば、IL-11シグナル伝達の阻害を、IL-11(またはIL-11含有複合体、例えば、IL-11とIL-11Rαとの複合体)と、IL-11の受容体(例えば、IL-11Rα、IL-11Rαを含む受容体複合体、gp130またはIL-11Rαとgp130とを含む受容体複合体)との相互作用を破壊することによって達成することができる。一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達の阻害は、例えば、IL-11、IL-11Rαおよびgp130のうちの1つまたは複数の遺伝子またはタンパク質発現を阻害することによって達成される。
【0175】
実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達の阻害は、IL-11媒介性transシグナル伝達を破壊するのではなく、IL-11媒介性cisシグナル伝達を破壊することによって達成され、例えば、IL-11媒介性シグナル伝達の阻害は、膜結合型IL-11Rαを含むgp130媒介性cis複合体を阻害することによって達成される。実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達の阻害は、IL-11媒介性cisシグナル伝達を破壊するのではなく、IL-11媒介性transシグナル伝達を破壊することによって達成され、すなわち、IL-11媒介性シグナル伝達の阻害は、可溶型IL-11Rαに結合したIL-11または可溶型IL-6Rに結合したIL-6などのgp130媒介性transシグナル伝達複合体を阻害することによって達成される。実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達の阻害は、IL-11媒介性cisシグナル伝達およびIL-11媒介性transシグナル伝達を破壊することによって達成される。本明細書に記載される任意の薬剤を使用して、IL-11媒介性cisおよび/またはtransシグナル伝達を阻害することができる。
【0176】
他の例では、IL-11シグナル伝達の阻害は、IL-11/IL-11Rα/gp130の下流のシグナル伝達経路を破壊することによって達成することができる。
【0177】
一部の実施形態では、本発明の方法は、JAK/STATシグナル伝達を阻害することができる薬剤を用いる。一部の実施形態では、JAK/STATシグナル伝達を阻害することができる薬剤は、JAK1、JAK2、JAK3、TYK2、STAT1、STAT2、STAT3、STAT4、STAT5A、STAT5Bおよび/またはSTAT6の作用を阻害することができる。例えば、薬剤は、JAK/STATタンパク質の活性化を阻害する、JAKもしくはSTATタンパク質と、細胞表面受容体、例えば、IL-11Rαもしくはgp130との相互作用を阻害する、JAKタンパク質とSTATタンパク質との相互作用を阻害する、STATタンパク質のリン酸化を阻害する、STATタンパク質の二量体化を阻害する、STATタンパク質の細胞核への移行を阻害する、STATタンパク質のDNAへの結合を阻害する、ならびに/またはJAKおよび/もしくはSTATタンパク質の分解を促進することができてもよい。一部の実施形態では、JAK/STAT阻害剤は、ルキソリチニブ(Jakafi/Jakavi;Incyte)、トファシチニブ(Xeljanz/Jakvinus;NIH/Pfizer)、オクラシチニブ(Apoquel)、バリシチニブ(Olumiant;Incyte/Eli Lilly)、フィルゴチニブ(G-146034/GLPG-0634;Galapagos NV)、ガンドチニブ(LY-2784544;Eli Lilly)、レスタウルチニブ(CEP-701;Teva)、モメロチニブ(GS-0387/CYT-387;Gilead Sciences)、パクリチニブ(SB1518;CTI)、PF-04965842(Pfizer)、ウパダシチニブ(ABT-494;AbbVie)、ペフィシチニブ(ASP015K/JNJ-54781532;Astellas)、フェドラチニブ(SAR302503;Celgene)、ククルビタシンI(JSI-124)およびCHZ868から選択される。
【0178】
一部の実施形態では、本発明の方法は、MAPK/ERKシグナル伝達を阻害することができる薬剤を用いる。一部の実施形態では、MAPK/ERKシグナル伝達を阻害することができる薬剤は、ERK p42/44を阻害することができる。一部の実施形態では、ERK阻害剤は、SCH772984、SC1、VX-11eおよびDEL-22379から選択される。一部の実施形態では、MAPK/ERKシグナル伝達を阻害することができる薬剤は、GRB2の作用を阻害する、RAFキナーゼの作用を阻害する、MEKタンパク質の作用を阻害する、MAP3K/MAP2K/MAPKおよび/もしくはMycの活性化を阻害する、ならびに/またはSTATタンパク質のリン酸化を阻害することができる。一部の実施形態では、ERK阻害剤は、ソラフェニブ(Nexavar;Bayer/Onyx)、SB590885、PLX4720、XL281、RAF265(Novartis)、エンコラフェニブ(LGX818/Braftovi;Array BioPharma)、ダブラフェニブ(Tafinlar;GSK)、ベムラフェニブ(Zelboraf;Roche)、コビメチニブ(Cotellic;Roche)、CI-1040、PD0325901、ビニメチニブ(MEK162/MEKTOVI;Array BioPharma)、セルメチニブ(AZD6244;Array/AstraZeneca)およびトラメチニブ(GSK1120212/Mekinist;Novartis)から選択される。
【0179】
結合剤
一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達を阻害することができる薬剤は、IL-11に結合してもよい。一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達を阻害することができる薬剤は、IL-11の受容体(例えば、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含有する複合体)に結合してもよい。そのような薬剤の結合は、IL-11がIL-11の受容体に結合する能力を低減させる/防止することによって、下流のシグナル伝達を阻害することにより、IL-11媒介性シグナル伝達を阻害することができる。そのような薬剤の結合は、IL-11がIL-11の受容体、例えば、IL-11Rαおよび/またはgp130に結合する能力を低減させる/防止することによって、下流のシグナル伝達を阻害することにより、IL-11媒介性cisおよび/またはtransシグナル伝達を阻害することができる。薬剤は、IL-11および可溶型IL-11Rαなどのtransシグナル伝達複合体に結合し、gp130媒介性シグナル伝達を阻害することができる。
【0180】
IL-11/IL-11含有複合体またはIL-11の受容体に結合することができる薬剤は、任意の種類のものであってもよいが、一部の実施形態では、薬剤は、抗体、その抗原結合性断片、ポリペプチド、ペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、アプタマーまたは低分子であってもよい。薬剤を、単離もしくは精製された形態で提供するか、または医薬組成物もしくは医薬として製剤化することができる。
【0181】
IL-11結合剤の特性
本発明によるIL-11/IL-11含有複合体またはIL-11の受容体に結合することができる薬剤は、以下の特性のうちの1つまたは複数を示してもよい:
・IL-11/IL-11含有複合体またはIL-11の受容体への特異的結合;
・10μM以下、好ましくは、5μM以下、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下または100pM以下のうちの1つのKDでの、IL-11/IL-11含有複合体、またはIL-11の受容体への結合;
・IL-11とIL-11Rαとの相互作用の阻害;
・IL-11とgp130との相互作用の阻害;
・IL-11とIL-11Rα:gp130受容体複合体との相互作用の阻害;
・IL-11:IL-11Rα複合体とgp130との相互作用の阻害;
・IL-11とIL-11との相互作用の阻害。
【0182】
これらの特性を、関連薬剤の性能の、好適な対照薬剤との比較を含んでもよい好適なアッセイにおける前記薬剤の分析によって決定することができる。当業者であれば、所与のアッセイに関する適切な対照条件を同定することができる。
【0183】
例えば、試験抗体/抗原結合性断片がIL-11/IL-11含有複合体/IL-11の受容体に結合する能力の分析のための好適な陰性対照は、非標的タンパク質に対する抗体/抗原結合性断片(すなわち、IL-11/IL-11含有複合体/IL-11の受容体に特異的ではない抗体/抗原結合性断片)であってもよい。好適な陽性対照は、既知の、検証された(例えば、市販の)IL-11またはIL-11受容体に結合する抗体であってもよい。対照は、分析される推定IL-11/IL-11含有複合体/IL-11受容体結合抗体/抗原結合性断片と同じアイソタイプのものであってよく、例えば、同じ定常領域を有してもよい。
【0184】
一部の実施形態では、薬剤は、IL-11またはIL-11含有複合体、またはIL-11の受容体(例えば、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含有する複合体)に特異的に結合することができてもよい。所与の標的分子に特異的に結合する薬剤は、好ましくは、それが他の非標的分子に結合するよりも高い親和性、および/または長い持続期間で標的に結合する。
【0185】
一部の実施形態では、薬剤は、IL-6サイトカインファミリーの1つまたは複数の他のメンバー(例えば、IL-6、白血病阻害因子(LIF)、オンコスタチンM(OSM)、カルジオトロフィン-1(CT-1)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、およびカルジオトロフィン様サイトカイン(CLC))に結合する親和性よりも高い親和性でIL-11またはIL-11含有複合体に結合してもよい。一部の実施形態では、薬剤は、IL-6受容体ファミリーの1つまたは複数の他のメンバーに結合する親和性よりも高い親和性でIL-11の受容体(例えば、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含有する複合体)に結合してもよい。一部の実施形態では、薬剤は、IL-6Rα、白血病阻害因子受容体(LIFR)、オンコスタチンM受容体(OSMR)および毛様体神経栄養因子受容体アルファ(CNTFRα)のうちの1つまたは複数に結合する親和性よりも高い親和性でIL-11Rαに結合してもよい。
【0186】
一部の実施形態では、結合剤の非標的への結合の程度は、例えば、ELISA、SPR、バイオレイヤー干渉法(BLI)、マイクロスケール熱泳動法(MST)、またはラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定された場合、薬剤の標的への結合の約10%未満である。あるいは、結合特異性は、結合剤が、別の非標的分子に対するKDよりも少なくとも0.1桁高い(すなわち、0.1x10n(式中、nは桁を表す整数である))KDで、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11の受容体に結合する場合、結合親和性を単位として反映されてもよい。これは、必要に応じて、少なくとも0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、または2.0のうちの1つであってもよい。
【0187】
所与の結合剤の、その標的に対する結合親和性は、その解離定数(KD)を単位として記載されることが多い。結合親和性は、ELISA、表面プラズモン共鳴(SPR;例えば、Heartyら、Methods Mol Biol(2012)907:411~442頁;またはRichら、Anal Biochem.2008 Feb 1;373(1):112~20頁を参照されたい)、バイオレイヤー干渉法(例えば、Ladら(2015)J Biomol Screen 20(4):498~507頁;もしくはConcepcionら、Comb Chem High Throughput Screen.2009 Sep;12(8):791~800頁を参照されたい)、マイクロスケール熱泳動(MST)分析(例えば、Jerabek-Willemsenら、Assay Drug Dev Technol.2011 Aug;9(4):342~353頁を参照されたい)、または放射標識抗原結合アッセイ(RIA)などの、当業界で公知の方法によって測定することができる。
【0188】
一部の実施形態では、薬剤は、50μM以下、好ましくは、10μM以下、5μM以下、4μM以下、3μM以下、2μM以下、1μM、500nM以下、100nM以下、75nM以下、50nM以下、40nM以下、30nM以下、20nM以下、15nM以下、12.5nM以下、10nM以下、9nM以下、8nM以下、7nM以下、6nM以下、5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下、1nM以下、500pM以下、400pM以下、300pM以下、200pM以下、または100pM以下のうちの1つのKDでIL-11またはIL-11含有複合体、またはIL-11の受容体に結合することができる。
【0189】
一部の実施形態では、薬剤は、EC50=10,000ng/ml以下、好ましくは、5,000ng/ml以下、1000ng/ml以下、900ng/ml以下、800ng/ml以下、700ng/ml以下、600ng/ml以下、500ng/ml以下、400ng/ml以下、300ng/ml以下、200ng/ml以下、100ng/ml以下、90ng/ml以下、80ng/ml以下、70ng/ml以下、60ng/ml以下、50ng/ml以下、40ng/ml以下、30ng/ml以下、20ng/ml以下、15ng/ml以下、10ng/ml以下、7.5ng/ml以下、5ng/ml以下、2.5ng/ml以下、または1ng/ml以下のうちの1つの結合の親和性(例えば、ELISAによって決定された場合)で、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11の受容体に結合する。そのようなELISAを、例えば、Antibody Engineering、vol.1(第2版)、Springer Protocols、Springer(2010)、Part V、657~665頁に記載のように実施することができる。
【0190】
一部の実施形態では、薬剤は、IL-11またはIL-11含有複合体の受容体、例えば、gp130またはIL-11Rαへの結合にとって重要である領域中でIL-11またはIL-11含有複合体に結合することによって、IL-11もしくはIL-11含有複合体と、IL-11の受容体との相互作用、および/または受容体を介するシグナル伝達を阻害する。一部の実施形態では、薬剤は、IL-11またはIL-11含有複合体への結合にとって重要である領域中でIL-11の受容体に結合することによって、IL-11もしくはIL-11含有複合体と、IL-11の受容体との相互作用を阻害する、および/または受容体を介するシグナル伝達を阻害する。
【0191】
所与の結合剤(例えば、IL-11/IL-11含有複合体またはIL-11の受容体に結合することができる薬剤)が2つのタンパク質間の相互作用を阻害する能力を、例えば、結合剤の存在下での、または相互作用パートナーの一方もしくは両方の、結合剤とのインキュベーション後の相互作用の分析によって決定することができる。所与の結合剤が2つの相互作用パートナー間の相互作用を阻害することができるかどうかを決定するための好適なアッセイの例は、競合ELISAである。
【0192】
所与の相互作用(例えば、IL-11とIL-11Rαとの間、またはIL-11とgp130との間、またはIL-11とIL-11Rα:gp130との間、またはIL-11:IL-11Rαとgp130との間)を阻害することができる結合剤は、結合剤の非存在下(または適切な対照結合剤の存在下)での相互作用レベルと比較して、結合剤の存在下での、または相互作用パートナーの一方もしくは両方の、結合剤とのインキュベーション後の相互作用パートナー間の相互作用レベルの低下/減少の観察によって同定される。好適な分析を、例えば、組換え相互作用パートナーを使用して、または相互作用パートナーを発現する細胞を使用して、in vitroで実施することができる。相互作用パートナーを発現する細胞は、内因的にそうするか、または細胞中に導入された核酸からそうしてもよい。そのようなアッセイのために、相互作用パートナーおよび/または結合剤の一方または両方を、相互作用レベルを検出および/または測定するために検出可能な実体で標識するか、またはそれと共に使用することができる。例えば、薬剤を、放射性原子または着色された分子または蛍光分子または任意の他の方法で容易に検出することができる分子で標識することができる。好適な検出可能分子としては、蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、酵素基質、および放射標識が挙げられる。結合剤を、検出可能な標識で直接標識するか、またはそれを間接的に標識することができる。例えば、結合剤は未標識であってもよく、それ自体、標識されている別の結合剤によって検出することができる。あるいは、第2の結合剤は、それにビオチンを結合されていてもよく、標識されたストレプトアビジンのビオチンへの結合を使用して、第1の結合剤を間接的に標識することができる。
【0193】
結合剤が2つの結合パートナー間の相互作用を阻害する能力を、そのような相互作用の下流の機能的結果、例えば、IL-11媒介性シグナル伝達の分析によって決定することもできる。例えば、IL-11とIL-11Rα:gp130との間またはIL-11:IL-11Rαとgp130との間の相互作用の下流の機能的結果は、例えば、IL-11によって媒介されるプロセス、線維芽細胞からの筋線維芽細胞の生成、分泌平滑筋細胞(SMC)による増殖もしくは遊走、または例えば、コラーゲンもしくはIL-11の遺伝子/タンパク質発現を含んでもよい。
【0194】
結合剤が、IL-11またはIL-11含有複合体と、IL-11の受容体との相互作用を阻害する能力を、例えば、線維芽細胞をTGFβ1で刺激すること、結合剤の存在下で細胞をインキュベートすること、および規定の期間後にαSMA陽性表現型を有する細胞の割合を分析することによって分析することができる。そのような例では、IL-11またはIL-11含有複合体と、IL-11の受容体との相互作用の阻害を、細胞が、結合剤の非存在下(もしくは適切な対照結合剤の存在下)で、または適切な対照結合剤の存在下でTGFβ1で処理される陽性対照状態と比較した、αSMA陽性表現型を有する細胞のより低い割合の観察によって同定することができる。そのようなアッセイはまた、結合剤がIL-11媒介性シグナル伝達を阻害する能力を分析するのに好適である。また、IL-11またはIL-11含有複合体と、IL-11の受容体との相互作用の阻害を、例えば、Curtisら、Blood、1997、90(11)およびKarpovichら、Mol.Hum.Reprod.2003、9(2):75~80頁に記載されたものなどの3H-チミジン取込みおよび/またはBa/F3細胞増殖アッセイを使用して分析することもできる。Ba/F3細胞は、IL-11Rαとgp130とを同時発現する。
【0195】
一部の実施形態では、結合剤は、結合剤の非存在下(または適切な対照結合剤の存在下)でのIL-11とIL-11Rαとの相互作用レベルの100%未満、例えば、99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下のうちの1つでIL-11とIL-11Rαとの相互作用を阻害することができてもよい。一部の実施形態では、結合剤は、結合剤の非存在下(または適切な対照結合剤の存在下)でのIL-11とIL-11Rαとの相互作用レベルの1倍未満、例えば、0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下、0.1倍以下のうちの1つでIL-11とIL-11Rαとの相互作用を阻害することができてもよい。
【0196】
一部の実施形態では、結合剤は、結合剤の非存在下(または適切な対照結合剤の存在下)でのIL-11とgp130との相互作用レベルの100%未満、例えば、99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下のうちの1つでIL-11とgp130との相互作用を阻害することができてもよい。一部の実施形態では、結合剤は、結合剤の非存在下(または適切な対照結合剤の存在下)でのIL-11とgp130との相互作用レベルの1倍未満、例えば、0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下、0.1倍以下のうちの1つでIL-11とgp130との相互作用を阻害することができてもよい。
【0197】
一部の実施形態では、結合剤は、結合剤の非存在下(または適切な対照結合剤の存在下)でのIL-11とIL-11Rα:gp130との相互作用レベルの100%未満、例えば、99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下のうちの1つでIL-11とIL-11Rα:gp130との相互作用を阻害することができてもよい。一部の実施形態では、結合剤は、結合剤の非存在下(または適切な対照結合剤の存在下)でのIL-11とIL-11Rα:gp130との相互作用レベルの1倍未満、例えば、0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下、0.1倍以下のうちの1つでIL-11とIL-11Rα:gp130との相互作用を阻害することができてもよい。
【0198】
一部の実施形態では、結合剤は、結合剤の非存在下(または適切な対照結合剤の存在下)でのIL-11:IL-11Rα複合体とgp130との相互作用レベルの100%未満、例えば、99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下のうちの1つでIL-11:IL-11Rα複合体とgp130との相互作用を阻害することができてもよい。一部の実施形態では、結合剤は、結合剤の非存在下でのIL-11:IL-11Rα複合体とgp130との相互作用レベルの1倍未満、例えば、0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下、0.1倍以下のうちの1つでIL-11:IL-11Rα複合体とgp130との相互作用を阻害することができてもよい。
【0199】
一部の実施形態では、結合剤は、結合剤の非存在下(または適切な対照結合剤の存在下)でのIL-11とIL-11との相互作用レベルの100%未満、例えば、99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下のうちの1つでIL-11とIL-11との相互作用を阻害することができてもよい。一部の実施形態では、結合剤は、結合剤の非存在下でのIL-11とIL-11との相互作用レベルの1倍未満、例えば、0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下、0.1倍以下のうちの1つでIL-11とIL-11との相互作用を阻害することができてもよい。
【0200】
抗体および抗原結合性断片
一部の実施形態では、IL-11/IL-11含有複合体またはIL-11の受容体に結合することができる薬剤は、抗体、またはその抗原結合性断片である。一部の実施形態では、IL-11/IL-11含有複合体またはIL-11の受容体に結合することができる薬剤は、ポリペプチド、例えば、デコイ受容体分子である。一部の実施形態では、IL-11/IL-11含有複合体またはIL-11の受容体に結合することができる薬剤は、アプタマーであってもよい。
【0201】
一部の実施形態では、IL-11/IL-11含有複合体またはIL-11の受容体に結合することができる薬剤は、抗体、またはその抗原結合性断片である。IL-11に結合することができる抗体としては、例えば、Bockhornら、Nat.Commun.(2013)4(0):1393頁において使用された、例えば、モノクローナルマウス抗ヒトIL-11抗体クローン#22626;カタログ番号MAB218(R&D Systems、MN、USA)、クローン6D9A(Abbiotec)、クローンKT8(Abbiotec)、クローンM3103F11(BioLegend)、クローン1F1(Abnova Corporation)、クローン3C6(Abnova Corporation)、クローンGF1(LifeSpan Biosciences)、クローン13455(Source BioScience)ならびにUS2009/0202533A1、WO99/59608A2およびWO2018/109174A2に開示された抗IL-11抗体が挙げられる。
【0202】
IL-11Rαに結合することができる抗体としては、モノクローナル抗体クローン025(Sino Biological)、クローンEPR5446(Abcam)、クローン473143(R&D Systems)、例えば、US2014/0219919A1に記載されたクローン8E2および8E4、Blancら(J.Immunol Methods.2000 Jul 31;241(1~2);43~59頁)に記載されたモノクローナル抗体、WO2014121325A1およびUS2013/0302277A1に開示された抗体、ならびにUS2009/0202533A1、WO99/59608A2およびWO2018/109170A2に開示された抗IL-11Rα抗体が挙げられる。
【0203】
抗体/断片は、IL-11の生物活性を阻害する、または低減させるアンタゴニスト抗体/断片であってもよい。抗体/断片は、IL-11の生物学的効果、例えば、IL-11受容体による産生シグナル伝達を刺激するその能力を中和する、中和抗体であってもよい。中和活性を、T11マウス形質細胞腫細胞系(Nordan,R.P.ら(1987)J.Immunol.139:813頁)においてIL-11誘導性増殖を中和する能力によって測定することができる。
【0204】
デコイ受容体
IL-11またはIL-11含有複合体に結合することができるペプチドまたはポリペプチドベースの薬剤は、IL-11受容体、例えば、IL-11受容体のIL-11結合断片に基づくものであってもよい。
【0205】
一部の実施形態では、結合剤は、IL-11Rα鎖のIL-11結合断片を含んでもよく、好ましくは、可溶型であってよい、および/または膜貫通ドメインの1つもしくは複数、または全部を含まなくてもよい。一部の実施形態では、結合剤は、gp130のIL-11結合断片を含んでもよく、好ましくは、可溶型であってよい、および/または膜貫通ドメインの1つもしくは複数、または全部を含まなくてもよい。そのような分子は、デコイ受容体と記載することができる。そのような薬剤の結合は、IL-11がIL-11の受容体、例えば、IL-11Rαまたはgp130に結合する能力を低減させる/防止することによって、下流のシグナル伝達を阻害することにより、IL-11媒介性cisおよび/またはtransシグナル伝達を阻害することができる。
【0206】
Curtisら(Blood 1997 Dec 1;90(11):4403~12頁)は、可溶型マウスIL-11受容体アルファ鎖(sIL-11R)が、膜貫通型IL-11Rおよびgp130を発現する細胞上で試験した場合、IL-11の活性と拮抗することができたと報告している。彼らは、sIL-11Rによる観察されたIL-11拮抗作用が、膜貫通型IL-11Rを既に発現している細胞上のgp130分子数の限定に依存すると提唱した。
【0207】
シグナル伝達の阻害および治療介入のための基礎としての可溶型デコイ受容体の使用は、他のシグナル伝達分子:受容体対、例えば、VEGFとVEGF受容体についても報告されている(De-Chao Yuら、Molecular Therapy(2012);20 5、938~947頁;KonnerおよびDupont Clin Colorectal Cancer 2004 Oct;4 Suppl 2:S81~5頁)。
【0208】
そのため、一部の実施形態では、結合剤は、デコイ受容体、例えば、IL-11および/またはIL-11含有複合体の可溶型受容体であってもよい。デコイ受容体によって提供されるIL-11および/またはIL-11含有複合体の競合は、IL-11アンタゴニスト作用をもたらすと報告されている(Curtisら、上掲)。デコイIL-11受容体は、WO2017/103108A1およびWO2018/109168A1にも記載されており、それらはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0209】
デコイIL-11受容体は、好ましくは、IL-11および/またはIL-11含有複合体に結合し、それによって、これらの種が、gp130、IL-11Rαおよび/またはgp130:IL-11Rα受容体に結合できないようにする。そのため、それらは、エタネルセプトがTNFαのデコイ受容体として作用するのとほぼ同じ方法で、IL-11およびIL-11含有複合体のための「デコイ」受容体として作用する。IL-11媒介性シグナル伝達は、デコイ受容体の非存在下でのシグナル伝達のレベルと比較して低減する。
【0210】
デコイIL-11受容体は、好ましくは、1つまたは複数のサイトカイン結合モジュール(CBM)を介してIL-11に結合する。CBMは、天然に存在するIL-11の受容体分子のCBMであるか、またはそれから誘導されるか、またはそれと相同である。例えば、デコイIL-11受容体は、gp130および/またはIL-11RαのCBMに由来する、それから誘導される、またはそれと相同である1つまたは複数のCBMを含むか、またはそれからなってもよい。
【0211】
一部の実施形態では、デコイIL-11受容体は、gp130のサイトカイン結合モジュールに対応するアミノ酸配列を含んでもよい、またはそれからなってもよい。一部の実施形態では、デコイIL-11受容体は、IL-11Rαのサイトカイン結合モジュールに対応するアミノ酸配列を含んでもよい。ここで、所与のペプチド/ポリペプチドの参照領域または配列に「対応する」アミノ酸配列は、参照領域/配列のアミノ酸配列に対して少なくとも60%、例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性のうちの1つを有する。
【0212】
一部の実施形態では、デコイ受容体は、例えば、少なくとも100μM以下、必要に応じて、10μM以下、1μM以下、100nM以下、または約1~100nMのうちの1つの結合親和性で、IL-11に結合することができてもよい。一部の実施形態では、デコイ受容体は、IL-11結合ドメインの全部または一部を含んでもよく、必要に応じて、膜貫通ドメインの全部または一部を欠いてもよい。デコイ受容体を、必要に応じて、免疫グロブリン定常領域、例えば、IgG Fc領域に融合することができる。
【0213】
阻害剤
本発明は、IL-11、IL-11含有複合体、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含有する複合体に結合し、IL-11媒介性シグナル伝達を阻害することができる阻害剤分子の使用を企図する。
【0214】
一部の実施形態では、薬剤は、IL-11に基づくペプチドまたはポリペプチドベースの結合剤、例えば、IL-11の変異体、バリアントまたは結合断片である。好適なペプチドまたはポリペプチドベースの薬剤は、シグナル伝達の開始をもたらさない、または最適でないシグナル伝達をもたらす様式で、IL-11の受容体(例えば、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含有する複合体)に結合してもよい。この種類のIL-11変異体は、内因性IL-11の競合的阻害剤として作用してもよい。
【0215】
例えば、W147Aは、IL-11のいわゆる「部位III」を破壊する、アミノ酸147がトリプトファンからアラニンに突然変異されたIL-11アンタゴニストである。この変異体は、IL-11Rαに結合することができるが、gp130ホモ二量体の咬合が失敗し、IL-11シグナル伝達の効率的な遮断をもたらす(Underhill-Dayら、2003;Endocrinology 2003 Aug;144(8):3406~14頁)。Leeら(Am J respire Cell Mol Biol.2008 Dec;39(6):739~746頁)も、IL-11のIL-11Rαへの結合を特異的に阻害することができるIL-11アンタゴニスト変異体(「変異タンパク質」)の生成を報告している。IL-11変異タンパク質は、WO2009/052588A1にも記載されている。
【0216】
Menkhorstら(Biology of Reproduction May1、2009、vol.80、no.5、920~927頁)は、メスのマウスにおけるIL-11作用を阻害するのに有効である、PEG化されたIL-11アンタゴニスト、PEGIL11A(CSL Limited、Parkvill、Victoria、Australia)を記載している。
【0217】
Pasqualiniら、Cancer(2015)121(14):2411~2421頁は、IL-11Rαに結合することができる、リガンド指向性のペプチド模倣薬、骨転移標的化ペプチド模倣体-11(BMTP-11)を記載している。
【0218】
一部の実施形態では、IL-11の受容体に結合することができる結合剤を、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含有する複合体のうちの1つの低分子阻害剤の形態で提供することができる。一部の実施形態では、結合剤を、IL-11またはIL-11含有複合体の低分子阻害剤、例えば、Layら、Int.J.Oncol.(2012);41(2):759~764頁(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されたIL-11阻害剤の形態で提供することができる。
【0219】
アプタマー
一部の実施形態では、IL-11/IL-11含有複合体またはIL-11の受容体(例えば、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含有する複合体)に結合することができる薬剤は、アプタマーである。
【0220】
IL-11またはIL-11受容体の発現を低減させることができる薬剤
本発明の態様では、IL-11、IL-11Rαまたはgp130のうちの1つまたは複数の発現を防止する、または低減させることができるIL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストを提供することができる。
【0221】
発現は、遺伝子またはタンパク質発現であってもよく、本明細書に記載のように決定することができる。発現は、対象の細胞/組織/臓器/臓器系によるものであってもよい。例えば、発現を、平滑筋細胞中で防止する/低減させることができる。
【0222】
好適な薬剤は、任意の種類のものであってもよいが、一部の実施形態では、IL-11、IL-11Rαまたはgp130のうちの1つまたは複数の発現を防止するか、または低減することができる薬剤は、低分子またはオリゴヌクレオチドであってもよい。
【0223】
IL-11、IL-11Rαまたはgp130のうちの1つまたは複数の発現を防止する、または低減することができる薬剤は、例えば、IL-11、IL-11Rαもしくはgp130をコードする遺伝子の転写を阻害すること、IL-11、IL-11Rαもしくはgp130をコードするRNAの転写後プロセッシングを阻害すること、IL-11、IL-11Rαもしくはgp130をコードするRNAの安定性を低減すること、IL-11、IL-11Rαもしくはgp130をコードするRNAの分解を促進すること、IL-11、IL-11Rαもしくはgp130ポリペプチドの翻訳後プロセッシングを阻害すること、IL-11、IL-11Rαもしくはgp130ポリペプチドの安定性を低減すること、またはIL-11、IL-11Rαもしくはgp130ポリペプチドの分解を促進することによって、そうしてもよい。
【0224】
Takiら、Clin Exp Immunol(1998)Apr;112(1):133~138頁は、インドメタシン、デキサメタゾンまたはインターフェロン-ガンマ(IFNγ)を用いた処置時のリウマチ滑膜細胞中でのIL-11の発現の低減を報告した。
【0225】
本発明は、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現を防止する/低減するためのアンチセンス核酸の使用を企図する。一部の実施形態では、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現を防止する、または低減することができる薬剤は、RNA干渉(RNAi)による発現の低減を引き起こし得る。
【0226】
一部の実施形態では、薬剤は、限定されるものではないが、shRNA、dsRNA、miRNAまたはsiRNAを含む、アンチセンスまたは低分子干渉RNAなどの阻害的核酸であってもよい。
【0227】
一部の実施形態では、阻害的核酸は、ベクター中に提供される。例えば、一部の実施形態では、薬剤は、IL-11、IL-11Rαまたはgp130のうちの1つまたは複数のためのshRNAをコードするレンチウイルスベクターであってもよい。
【0228】
IL-11、IL-11Rαおよびgp130のための既知の核酸配列(例えば、受託番号BC012506.1 GI:15341754(ヒトIL-11)、BC134354.1 GI:126632002(マウスIL-11)、AF347935.1 GI:13549072(ラットIL-11)、NM_001142784.2 GI:391353394(ヒトIL-11Rα)、NM_001163401.1 GI:254281268(マウスIL-11Rα)、NM_139116.1 GI:20806172(ラットIL-11Rα)、NM_001190981.1 GI:300244534(ヒトgp130)、NM_010560.3 GI:225007624(マウスgp130)、NM_001008725.3 GI:300244570(ラットgp130)の下でGenBankから入手可能な既知のmRNA配列)を考慮して、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現を抑制するか、またはサイレンシングするようにオリゴヌクレオチドを設計することができる。
【0229】
そのようなオリゴヌクレオチドは、任意の長さを有してもよいが、好ましくは、短い、例えば、100ヌクレオチド未満、例えば、10~40ヌクレオチド、または20~50ヌクレオチドであってよく、標的オリゴヌクレオチド、例えば、IL-11、IL-11Rαまたはgp130 mRNA中の対応する長さのヌクレオチドの配列に対して完全な相補性または近い相補性(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の相補性)を有するヌクレオチド配列を含んでもよい。ヌクレオチド配列の相補領域は、任意の長さを有してもよいが、好ましくは、少なくとも5、必要に応じて、50以下のヌクレオチド長、例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50ヌクレオチドのうちの1つである。
【0230】
IL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現の抑制は、好ましくは、細胞/組織/臓器/臓器系/対象によって発現されるIL-11、IL-11Rαまたはgp130の量の減少をもたらすと予想される。例えば、所与の細胞中での、好適な核酸の投与によるIL-11、IL-11Rαまたはgp130の抑制は、未処理の細胞と比較して、その細胞によって発現されるIL-11、IL-11Rαまたはgp130の量の減少をもたらすと予想される。抑制は、部分的であってもよい。好ましい抑制の程度は、少なくとも50%、より好ましくは、少なくとも60%、70%、80%、85%または90%のうちの1つである。90%~100%の抑制のレベルは、発現または機能の「サイレンシング」と考えられる。
【0231】
別の選択肢は、細胞中での短いヘアピンRNA分子(shRNA)の発現である。好ましくは、shRNA分子は、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の部分配列を含む。好ましくは、shRNA配列は、40~100塩基長、より好ましくは、40~70塩基長である。ヘアピンのステムは、好ましくは、19~30塩基対の長さである。ステムは、ヘアピン構造を安定化するためのG-U対を含有してもよい。
【0232】
siRNA分子、より長いdsRNA分子またはmiRNA分子を、好ましくは、ベクター内に含有される核酸配列の転写によって組換え的に作製することができる。好ましくは、siRNA分子、より長いdsRNA分子またはmiRNA分子は、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の部分配列を含む。
【0233】
一実施形態では、siRNA、より長いdsRNAまたはmiRNAは、ベクターからの転写によって内因的に(細胞内で)産生される。好適なベクターは、IL-11、IL-11Rαまたはgp130を抑制することができるオリゴヌクレオチド剤を発現するように構成されたオリゴヌクレオチドベクターであってもよい。
【0234】
他の実施形態では、ベクターを、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現の抑制が必要とされる部位への治療的オリゴヌクレオチドの送達を補助するように構成することができる。
【0235】
他の実施形態では、本発明は、そうでなければIL-11、IL-11Rαまたはgp130を発現する哺乳動物、例えば、ヒトの細胞内に好適に導入されるか、またはその中で発現される場合、RNAiによるIL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現を抑制することができる核酸を提供する。
【0236】
IL-11、IL-11Rαおよびgp130のための核酸配列(例えば、受託番号BC012506.1 GI:15341754(ヒトIL-11)、BC134354.1 GI:126632002(マウスIL-11)、AF347935.1 GI:13549072(ラットIL-11)、NM_001142784.2 GI:391353394(ヒトIL-11Rα)、NM_001163401.1 GI:254281268(マウスIL-11Rα)、NM_139116.1 GI:20806172(ラットIL-11Rα)、NM_001190981.1 GI:300244534(ヒトgp130)、NM_010560.3 GI:225007624(マウスgp130)、NM_001008725.3 GI:300244570(ラットgp130)の下でGenBankから入手可能な既知のmRNA配列)のオリゴヌクレオチドを、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現を抑制するか、またはサイレンシングするように設計することができる。
【0237】
核酸は、例えば、GenBank受託番号NM_000641.3 GI:391353405(IL-11)、NM_001142784.2 GI:391353394(IL-11Rα)、NM_0011909891.1 GI:300244534(gp130)に定義された、IL-11、IL-11Rαもしくはgp130 mRNAの一部または前記mRNAに対する相補配列に対する実質的な配列同一性を有してもよい。
【0238】
核酸は、二本鎖siRNAであってもよい(当業者であれば理解できるように、また、以下でさらに説明されるように、siRNA分子は、短い3’DNA配列をも含んでもよい)。
【0239】
あるいは、核酸は、哺乳動物細胞中で転写された場合、相補部分が互いにハイブリダイズする場合にRNAがヘアピンの形態を採るような、スペーサーを介して連結された2つの相補部分を有するRNAをもたらす、DNA(通常は二本鎖DNA)であってもよい。哺乳動物細胞中では、ヘアピン構造は、DICER酵素によって分子から切断され、2つの異なるが、ハイブリダイズしたRNA分子をもたらしてもよい。
一部の好ましい実施形態では、核酸は、配列番号4~7(IL-11)の1つまたは配列番号8~11(IL-11Rα)の1つの配列に対して全体として標的化される。
【0240】
mRNA転写物の一本鎖(すなわち、非自己ハイブリダイズ)領域のみが、RNAiのための好適な標的であると予想される。したがって、配列番号4~7または8~11の1つによって表される配列に、IL-11またはIL-11Rα mRNA転写物中の非常に近い他の配列も、RNAiのための好適な標的であり得ると提唱される。そのような標的配列は、好ましくは、15~21ヌクレオチド長であり、好ましくは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18または全部で19ヌクレオチドが、配列番号4~7または8~11の1つと重複する(配列番号4~7または8~11の1つのいずれかの末端で)。
【0241】
したがって、本発明は、そうでなければIL-11またはIL-11Rαを発現する哺乳動物細胞内に好適に導入されるか、またはその中で発現される場合、RNAiによるIL-11またはIL-11Rα発現を抑制することができる核酸であって、配列番号4~7または8~11の1つの配列に全体として標的化される、核酸を提供する。
【0242】
「全体として標的化された」核酸は、配列番号4~7または8~11と重複する配列を標的としてもよい。特に、核酸は、配列番号4~7または8~11の1つよりもわずかに長いか、または短いが、その他は配列番号4~7または8~11の1つと同一である、ヒトIL-11またはIL-11RαのmRNA中の配列(好ましくは、17~23ヌクレオチド長)を標的としてもよい。
【0243】
本発明の核酸と標的配列との完全な同一性/相補性が好ましいが、必須ではないと予想される。したがって、本発明の核酸は、IL-11またはIL-11RαのmRNAと比較して単一のミスマッチを含んでもよい。しかしながら、単一のミスマッチの存在であっても、効率の低下をもたらす可能性があるため、ミスマッチは存在しないのが好ましいと予想される。存在する場合、3’突出部を、ミスマッチの数の考慮から除外してもよい。
【0244】
一実施形態では、核酸(本明細書では二本鎖siRNAと呼ばれる)は、配列番号12~15に示される二本鎖RNA配列を含む。別の実施形態では、核酸(本明細書では二本鎖siRNAと呼ばれる)は、配列番号16~19に示される二本鎖RNA配列を含む。
【0245】
しかしながら、IL-11またはIL-11Rα mRNAの同じ領域を指向するわずかにより短いか、またはより長い配列も有効であることも予想される。特に、17~23bpの長さの二本鎖配列も有効であると予想される。
【0246】
本発明はまた、哺乳動物細胞中で転写された場合、自己ハイブリダイズして、例えば、配列番号12~15もしくは16~19からなる群から選択される配列または単一の塩基対置換によって上記配列のいずれか1つと異なる配列を含む、二本鎖モチーフを産生することができる2つの相補部分を有するRNA(本明細書では、shRNAとも呼ばれる)をもたらすDNAも提供する。
【0247】
相補部分を、2つの相補部分を互いにハイブリダイズさせる好適な長さおよび配列を有するスペーサーによって連結することができる。好ましくは、スペーサーの5’末端(上流の相補部分のすぐ3’側)は、ヌクレオチド-UU-または-UG-、再び好ましくは、-UU-からなる(しかし再度、これらの特定のジヌクレオチドの使用は必須ではない)。OligoEngine(Seattle、Washington、USA)のpSuper系における使用のために推奨される好適なスペーサーは、UUCAAGAGAである。この場合およびその他の場合、スペーサーの末端は、互いにハイブリダイズし、例えば、少数(例えば、1または2個)の塩基対によって配列番号12~15または16~19の正確な配列を超えて二本鎖モチーフを伸長させることができる。
【0248】
本発明の二本鎖siRNAを、以下に記載されるような、公知の技術を使用してin vitroまたはin vivoで哺乳動物細胞中に導入して、IL-11またはIL-11の受容体の発現を抑制することができる。
【0249】
同様に、本発明のDNAを含有する転写ベクターを、RNAの一過的な、または安定な発現のために、以下に記載されるような、公知の技術を使用してin vitroまたはin vivoで腫瘍細胞中に導入して、再度、IL-11またはIL-11の受容体の発現を抑制することができる。
【0250】
したがって、本発明はまた、哺乳動物、例えば、ヒトの細胞中でIL-11またはIL-11の受容体の発現を抑制する方法であって、前記細胞に、本発明の二本鎖siRNAまたは本発明の転写ベクターを投与するステップを含む、方法も提供する。
【0251】
同様に、本発明は、血管新生が病理学的に関与している疾患/状態を処置する方法であって、対象に、IL-11シグナル伝達のアンタゴニストと共に、本発明の二本鎖siRNAまたは本発明の転写ベクターを投与するステップを含む、方法をさらに提供する。
【0252】
本発明は、IL-11シグナル伝達のアンタゴニストと組み合わせた処置の方法における使用のための、本発明の二本鎖siRNAおよび本発明の転写ベクターをさらに提供する。
【0253】
本発明は、IL-11シグナル伝達のアンタゴニストと組み合わせた疾患/状態の処置のための医薬の調製における、本発明の二本鎖siRNAおよび本発明の転写ベクターの使用をさらに提供する。
【0254】
IL-11媒介性シグナル伝達の阻害
本発明の実施形態では、IL-11の作用を阻害することができる薬剤は、以下の機能特性のうちの1つまたは複数を有してもよい:
・IL-11によって媒介されるシグナル伝達の阻害;
・IL-11のIL-111Rα:gp130受容体複合体への結合によって媒介されるシグナル伝達の阻害;
・IL-11:IL-11Rα複合体のgp130への結合によって媒介されるシグナル伝達(すなわち、IL-11 transシグナル伝達)の阻害;
・IL-11によって媒介されるプロセスの阻害;
・筋線維芽細胞生成の阻害;
・SMC増殖/遊走の阻害;
・コラーゲンまたはIL-11の遺伝子/タンパク質発現の阻害。
【0255】
これらの特性を、関連薬剤の性能の、好適な対照薬剤との比較を含んでもよい好適なアッセイにおける前記薬剤の分析によって決定することができる。当業者であれば、所与のアッセイに関する適切な対照条件を同定することができる。
【0256】
IL-11媒介性シグナル伝達および/またはIL-11によって媒介されるプロセスは、IL-11の断片およびIL-11またはその断片を含むポリペプチド複合体によって媒介されるシグナル伝達を含む。IL-11媒介性シグナル伝達は、ヒトIL-11および/またはマウスIL-11によって媒介されるシグナル伝達であってもよい。IL-11によって媒介されるシグナル伝達は、IL-11またはIL-11含有複合体の、IL-11または前記複合体が結合する受容体への結合後に起こってもよい。
【0257】
一部の実施形態では、薬剤は、IL-11またはIL-11含有複合体の生物活性を阻害することができてもよい。
【0258】
一部の実施形態では、薬剤は、IL-11Rαおよび/またはgp130を含む受容体、例えば、IL-11Rα:gp130を介するシグナル伝達によって活性化される1つまたは複数のシグナル伝達経路のアンタゴニストである。一部の実施形態では、薬剤は、IL-11Rαおよび/またはgp130を含む1つまたは複数の免疫受容体複合体、例えば、IL-11Rα:gp130を介するシグナル伝達を阻害することができる。本発明の様々な態様では、本明細書で提供される薬剤は、IL-11媒介性cisおよび/またはtransシグナル伝達を阻害することができる。
【0259】
一部の実施形態では、薬剤は、薬剤の非存在下(または適切な対照薬剤の存在下)でのシグナル伝達のレベルの100%未満、例えば、99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下のうちの1つでIL-11媒介性シグナル伝達を阻害することができてもよい。一部の実施形態では、薬剤は、薬剤の非存在下(または適切な対照薬剤の存在下)でのシグナル伝達のレベルの1倍未満、例えば、0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下、0.1倍以下のうちの1つでIL-11媒介性シグナル伝達を低減させることができる。
【0260】
一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達は、IL-11のIL-11Rα:gp130受容体への結合によって媒介されるシグナル伝達であってもよい。そのようなシグナル伝達を、例えば、IL-11Rαおよびgp130を発現する細胞をIL-11で処理することによって、またはIL-11Rαおよびgp130を発現する細胞中でIL-11産生を刺激することによって分析することができる。
【0261】
IL-11媒介性シグナル伝達の阻害のための薬剤のIC50を、例えば、ヒトIL-11および薬剤の存在下でIL-11Rαおよびgp130を発現するBa/F3細胞を培養すること、ならびにDNA中への3Hチミジンの取込みを測定することによって決定することができる。一部の実施形態では、薬剤は、そのようなアッセイにおいて、10μg/ml以下、好ましくは、5μg/ml以下、4μg/ml以下、3.5μg/ml以下、3μg/ml以下、2μg/ml以下、1μg/ml以下、0.9μg/ml以下、0.8μg/ml以下、0.7μg/ml以下、0.6μg/ml以下、または0.5μg/ml以下のうちの1つのIC50を示してもよい。
【0262】
一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達は、IL-11:IL-11Rα複合体のgp130への結合によって媒介されるシグナル伝達であってもよい。一部の実施形態では、IL-11:IL-11Rα複合体は、可溶型の、例えば、IL-11RαとIL-11の細胞外ドメインの複合体、または可溶型IL-11Rαアイソフォーム/断片と、IL-11との複合体であってもよい。一部の実施形態では、可溶型IL-11Rαは、IL-11Rαの可溶型(分泌型)アイソフォームであるか、または細胞膜に結合したIL-11Rαの細胞外ドメインのタンパク質分解的切断の遊離産物である。
【0263】
一部の実施形態では、IL-11:IL-11Rα複合体は、細胞に結合した、例えば、細胞膜に結合したIL-11RαとIL-11との複合体であってもよい。IL-11:IL-11Rα複合体のgp130への結合によって媒介されるシグナル伝達を、IL-11:IL-11Rα複合体、例えば、IL-11Rαの細胞外ドメインにペプチドリンカーによって連結されたIL-11を含む組換え融合タンパク質(例えば、本明細書に記載されるハイパーIL-11)と共にgp130を発現する細胞を処理することによって分析することができる。
【0264】
一部の実施形態では、薬剤は、IL-11:IL-11Rα複合体のgp130への結合によって媒介されるシグナル伝達を阻害することができてもよく、また、IL-11のIL-11Rα:gp130受容体への結合によって媒介されるシグナル伝達を阻害することもできる。
【0265】
一部の実施形態では、薬剤は、例えば、TGFβ1による刺激後に、IL-11によって媒介されるプロセスを阻害することができてもよい。IL-11によって媒介されるプロセスは、例えば、線維芽細胞からの筋線維芽細胞の生成、SMCの増殖/遊走、ならびに例えば、コラーゲンおよびIL-11の遺伝子/タンパク質発現を含み、in vitroまたはin vivoのいずれかにおいて評価することができる。
【0266】
一部の実施形態では、薬剤は、例えば、線維芽細胞の、線維化促進因子(例えば、TGFβ1)への曝露後に、線維芽細胞からの筋線維芽細胞の生成を阻害することができてもよい。線維芽細胞からの筋線維芽細胞の生成を、筋線維芽細胞マーカーのための分析によって精査することができる。
【0267】
線維芽細胞は、肝臓、肺、腎臓、心臓、血管、眼、皮膚、膵臓、脾臓、腸(例えば、大腸または小腸)、脳、および骨髄を含む任意の組織に由来するものであってもよい。特定の実施形態では、線維芽細胞は、心臓線維芽細胞(例えば、心房線維芽細胞)、皮膚線維芽細胞、肺線維芽細胞、腎臓線維芽細胞または肝臓線維芽細胞であってもよい。線維芽細胞は、COL1A、ACTA2、プロリル-4-ヒドロキシラーゼ、MAS516、およびFSP1のうちの1つまたは複数の遺伝子またはタンパク質発現を特徴としてもよい。筋線維芽細胞マーカーは、αSMA、ビメンチン、パラディン、コフィリンまたはデスミンの増加の1つまたは複数を含んでもよい(同等の線維芽細胞(例えば、同じ組織に由来する線維芽細胞)による発現レベルと比較した場合)。
【0268】
線維芽細胞からの筋線維芽細胞の生成を、線維芽細胞のTGFβ1による刺激後にOperetta High-Content Imaging Systemを使用してαSMAタンパク質発現レベルを測定することによって分析することができる;例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2017/103108A1を参照されたい。
【0269】
一部の実施形態では、薬剤は、薬剤の非存在下(または適切な対照薬剤の存在下)での線維芽細胞からの筋線維芽細胞生成のレベルの100%未満、例えば、99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下のうちの1つで線維芽細胞からの筋線維芽細胞生成を阻害することができてもよい。一部の実施形態では、薬剤は、薬剤の非存在下(または適切な対照薬剤の存在下)での線維芽細胞からの筋線維芽細胞生成のレベルの1倍未満、例えば、0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下、0.1倍以下のうちの1つで線維芽細胞からの筋線維芽細胞生成を低減させることができる。
【0270】
一部の実施形態では、薬剤は、例えば、TGFβ1による刺激後に、SMC(例えば、分泌SMC)の増殖を阻害することができてもよい。SMC増殖を、例えば、本明細書に記載されるような3H-チミジン取込み、CFSE希釈またはEdU取込みアッセイを使用して測定することができる。
【0271】
一部の実施形態では、薬剤は、薬剤の非存在下(または適切な対照薬剤の存在下)での増殖のレベルの100%未満、例えば、99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下のうちの1つでSMCの増殖を阻害することができてもよい。一部の実施形態では、薬剤は、薬剤の非存在下(または適切な対照薬剤の存在下)での増殖のレベルの1倍未満、例えば、0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下、0.1倍以下のうちの1つでSMCの増殖を阻害することができる。
【0272】
一部の実施形態では、薬剤は、例えば、TGFβ1による刺激後に、SMC(例えば、分泌SMC)の遊走を阻害することができてもよい。SMC遊走を、例えば、実施例9およびLiangら、Nat Protoc.(2007)2(2):329~33頁に記載されたようなスクラッチアッセイを使用して、または実施例9およびChen、Methods Mol Biol.(2005)294:15~22頁に記載されたようなBoydenチャンバーアッセイを使用して測定することができる。
【0273】
一部の実施形態では、薬剤は、薬剤の非存在下(または適切な対照薬剤の存在下)での遊走のレベルの100%未満、例えば、99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下のうちの1つでSMCの遊走を阻害することができてもよい。一部の実施形態では、薬剤は、薬剤の非存在下(または適切な対照薬剤の存在下)での遊走のレベルの1倍未満、例えば、0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下、0.1倍以下のうちの1つでSMCの遊走を阻害することができる。
【0274】
一部の実施形態では、薬剤は、コラーゲンまたはIL-11の遺伝子/タンパク質発現を阻害することができてもよい。遺伝子および/またはタンパク質発現を、本明細書に記載のように測定することができる。
【0275】
一部の実施形態では、薬剤は、薬剤の非存在下(または適切な対照薬剤の存在下)での発現のレベルの100%未満、例えば、99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下のうちの1つでコラーゲンまたはIL-11の遺伝子/タンパク質発現を阻害することができてもよい。一部の実施形態では、薬剤は、薬剤の非存在下(または適切な対照薬剤の存在下)での発現のレベルの1倍未満、例えば、0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下、0.1倍以下のうちの1つでコラーゲンまたはIL-11の遺伝子/タンパク質発現を阻害することができる。
【0276】
血管新生因子のアンタゴニスト
本発明の態様は、例えば、1つまたは複数の血管新生因子の拮抗作用による、血管新生の拮抗作用(すなわち、阻害)を含む。
【0277】
ここで、「阻害」とは、対照状態と比較した低減、減少または低下を指す。例えば、血管新生シグナル伝達のアンタゴニストによる血管新生因子の作用の阻害とは、薬剤の非存在下での、および/または適切な対照薬剤の存在下での、血管新生シグナル伝達の程度の低減、減少または低下を指す。
【0278】
阻害は、本明細書では、中和または拮抗作用を指してもよい。血管新生シグナル伝達のアンタゴニスト(例えば、血管新生因子によって媒介される活性のアンタゴニスト)は、関連する機能またはプロセスに関して「中和」または「アンタゴニスト」剤であると言ってもよい。例えば、血管新生シグナル伝達を阻害することができる薬剤は、血管新生シグナル伝達を中和することができる薬剤と呼んでもよく、または血管新生シグナル伝達のアンタゴニストと呼んでもよい。
【0279】
血管新生シグナル伝達経路は、シグナル伝達の阻害のための複数の経路を提供する。血管新生シグナル伝達のアンタゴニストは、その因子の受容体を介するシグナル伝達に関与する、またはそれにとって必要な1つまたは複数の因子の作用を阻害することによって、血管新生因子の作用を阻害することができる。
【0280】
例えば、血管新生因子(例えば、VEGF)と、その因子の受容体(例えば、VEGFR1、2または3)との相互作用を破壊することによって、阻害を達成することができる。一部の実施形態では、血管新生シグナル伝達の阻害は、例えば、VEGF、VEGFR1、VEGFR2、およびVEGFR3のうちの1つまたは複数の遺伝子またはタンパク質発現を阻害することによって達成される。
【0281】
一部の実施形態では、血管新生の拮抗作用(すなわち、阻害)は、線維症の拮抗作用、阻害または低減をもたらす。
【0282】
結合剤
一部の実施形態では、血管新生因子媒介性シグナル伝達を阻害することができる薬剤は、血管新生因子に結合することができる。一部の実施形態では、血管新生因子媒介性シグナル伝達を阻害することができる薬剤は、血管新生因子の受容体(例えば、VEGFのためのVEGFR1、VEGFR2またはVEGFR3)に結合してもよい。そのような薬剤の結合は、血管新生因子リガンドが、受容体に結合する能力を低減させる/防止することによって、下流のシグナル伝達を阻害することにより、血管新生因子媒介性シグナル伝達を阻害することができる。
【0283】
血管新生因子または血管新生因子の相互作用パートナーに結合することができる薬剤は、任意の種類のものであってもよいが、一部の実施形態では、薬剤は、抗体、その抗原結合性断片、ポリペプチド、ペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、アプタマーまたは低分子であってもよい。薬剤を、単離もしくは精製された形態で提供するか、または医薬組成物もしくは医薬として製剤化することができる。
【0284】
血管新生因子結合剤の特性
本発明による血管新生因子/血管新生因子を含む複合体または所与の血管新生因子の相互作用パートナーに結合することができる薬剤は、以下の特性のうちの1つまたは複数を示してもよい:
・血管新生因子/血管新生因子を含む複合体または血管新生因子の相互作用パートナーへの特異的結合;
・10μM以下、好ましくは、5μM以下、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下または100pM以下のうちの1つのKDでの、血管新生因子/血管新生因子を含む複合体または血管新生因子の相互作用パートナーへの結合;
・血管新生因子と、血管新生因子の相互作用パートナーとの相互作用の阻害。
【0285】
これらの特性を、関連薬剤の性能の、好適な対照薬剤との比較を含んでもよい好適なアッセイにおける前記薬剤の分析によって決定することができる。当業者であれば、所与のアッセイに関する適切な対照条件を同定することができる。本明細書で説明されるように、血管新生因子の相互作用パートナーは、例えば、血管新生因子のリガンド(例えば、血管新生因子が受容体である場合、例えば、VEGF受容体、FGF受容体もしくはPDGF受容体)であってよいか、または血管新生因子の受容体(例えば、血管新生因子がリガンドである場合、例えば、VEGF、FGFもしくはPDGF)であってもよい。
【0286】
例えば、試験抗体/抗原結合性断片が血管新生因子/血管新生因子を含む複合体/血管新生因子の相互作用パートナーに結合する能力の分析のための好適な陰性対照は、非標的タンパク質(すなわち、血管新生因子/血管新生因子を含む複合体/血管新生因子の相互作用パートナーに特異的ではない)に対する抗体/抗原結合性断片であってもよい。好適な陽性対照は、既知の、検証された(例えば、市販の)血管新生因子または相互作用パートナーに結合する抗体であってもよい。対照は、分析される推定血管新生因子/血管新生因子を含む複合体/相互作用パートナーに結合する抗体/抗原結合性断片と同じアイソタイプのものであってよく、例えば、同じ定常領域を有してもよい。
【0287】
一部の実施形態では、薬剤は、血管新生因子または血管新生因子を含む複合体、または血管新生因子の相互作用パートナーに特異的に結合することができてもよい。所与の標的分子に特異的に結合する薬剤は、好ましくは、それが他の非標的分子に結合するよりも高い親和性、および/または長い持続期間で標的に結合する。
【0288】
一部の実施形態では、結合剤の非標的への結合の程度は、例えば、ELISA、SPR、バイオレイヤー干渉法(BLI)、マイクロスケール熱泳動法(MST)、またはラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定された場合、薬剤の標的への結合の約10%未満である。あるいは、結合特異性は、結合剤が、別の非標的分子に対するKDよりも少なくとも0.1桁高い(すなわち、0.1x10n(式中、nは桁を表す整数である))KDで、血管新生因子、血管新生因子を含む複合体または血管新生因子の相互作用パートナーに結合する場合、結合親和性を単位として反映されてもよい。これは、必要に応じて、少なくとも0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、または2.0のうちの1つであってもよい。
【0289】
所与の結合剤の、その標的に対する結合親和性は、その解離定数(KD)を単位として記載されることが多い。結合親和性は、ELISA、表面プラズモン共鳴(SPR;例えば、Heartyら、Methods Mol Biol(2012)907:411~442頁;またはRichら、Anal Biochem.2008 Feb 1;373(1):112~20頁を参照されたい)、バイオレイヤー干渉法(例えば、Ladら(2015)J Biomol Screen 20(4):498~507頁;もしくはConcepcionら、Comb Chem High Throughput Screen.2009 Sep;12(8):791~800頁を参照されたい)、マイクロスケール熱泳動(MST)分析(例えば、Jerabek-Willemsenら、Assay Drug Dev Technol.2011 Aug;9(4):342~353頁を参照されたい)、または放射標識抗原結合アッセイ(RIA)などの、当業界で公知の方法によって測定することができる。
【0290】
一部の実施形態では、薬剤は、50μM以下、好ましくは、10μM以下、5μM以下、4μM以下、3μM以下、2μM以下、1μM、500nM以下、100nM以下、75nM以下、50nM以下、40nM以下、30nM以下、20nM以下、15nM以下、12.5nM以下、10nM以下、9nM以下、8nM以下、7nM以下、6nM以下、5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下、1nM以下、500pM以下、400pM以下、300pM以下、200pM以下、または100pM以下のうちの1つのKDで血管新生因子または血管新生因子を含む複合体、または血管新生因子の相互作用パートナーに結合することができる。
【0291】
一部の実施形態では、薬剤は、EC50=10,000ng/ml以下、好ましくは、5,000ng/ml以下、1000ng/ml以下、900ng/ml以下、800ng/ml以下、700ng/ml以下、600ng/ml以下、500ng/ml以下、400ng/ml以下、300ng/ml以下、200ng/ml以下、100ng/ml以下、90ng/ml以下、80ng/ml以下、70ng/ml以下、60ng/ml以下、50ng/ml以下、40ng/ml以下、30ng/ml以下、20ng/ml以下、15ng/ml以下、10ng/ml以下、7.5ng/ml以下、5ng/ml以下、2.5ng/ml以下、または1ng/ml以下のうちの1つの結合の親和性(例えば、ELISAによって決定された場合)で、血管新生因子、血管新生因子を含む複合体または血管新生因子の相互作用パートナーに結合する。そのようなELISAを、例えば、Antibody Engineering、vol.1(第2版)、Springer Protocols、Springer(2010)、Part V、657~665頁に記載のように実施することができる。
【0292】
一部の実施形態では、薬剤は、血管新生因子の相互作用パートナーまたは血管新生因子を含む複合体への結合にとって重要である領域中で、血管新生因子または血管新生因子を含む複合体に結合し、それによって、血管新生因子または血管新生因子を含む複合体と、血管新生因子の相互作用パートナーとの相互作用(例えば、血管新生因子受容体を介するシグナル伝達)を阻害する。一部の実施形態では、薬剤は、血管新生因子または血管新生因子を含む複合体への結合にとって重要である領域中で、血管新生因子の相互作用パートナーに結合し、それによって、血管新生因子または血管新生因子を含む複合体と、血管新生因子の相互作用パートナーとの相互作用(例えば、血管新生因子受容体を介するシグナル伝達)を阻害する。
【0293】
所与の結合剤(例えば、血管新生因子/血管新生因子を含む複合体または血管新生因子の相互作用パートナーに結合することができる薬剤)が2つのタンパク質間の相互作用を阻害する能力を、例えば、結合剤の存在下での、または相互作用パートナーの一方もしくは両方の、結合剤とのインキュベーション後の相互作用の分析によって決定することができる。所与の結合剤が2つの相互作用パートナー間の相互作用を阻害することができるかどうかを決定するための好適なアッセイの例は、競合ELISAである。
【0294】
所与の相互作用(例えば、VEGFと、VEGFR1~3のうちの1つまたは複数との間などの、血管新生因子と血管新生因子の相互作用パートナーとの間)を阻害することができる結合剤は、結合剤の非存在下(または適切な対照結合剤の存在下)での相互作用レベルと比較して、結合剤の存在下での、または相互作用パートナーの一方もしくは両方の、結合剤とのインキュベーション後の相互作用パートナー間の相互作用レベルの低下/減少の観察によって同定される。好適な分析を、例えば、組換え相互作用パートナーを使用して、または相互作用パートナーを発現する細胞を使用して、in vitroで実施することができる。相互作用パートナーを発現する細胞は、内因的にそうするか、または細胞中に導入された核酸からそうしてもよい。そのようなアッセイのために、相互作用パートナーおよび/または結合剤の一方または両方を、相互作用レベルを検出および/または測定するために検出可能な実体で標識するか、またはそれと共に使用することができる。例えば、薬剤を、放射性原子または着色された分子または蛍光分子または任意の他の方法で容易に検出することができる分子で標識することができる。好適な検出可能分子としては、蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、酵素基質、および放射標識が挙げられる。結合剤を、検出可能な標識で直接標識するか、またはそれを間接的に標識することができる。例えば、結合剤は未標識であってもよく、それ自体、標識されている別の結合剤によって検出することができる。あるいは、第2の結合剤は、それにビオチンを結合されていてもよく、標識されたストレプトアビジンのビオチンへの結合を使用して、第1の結合剤を間接的に標識することができる。
【0295】
結合剤が2つの結合パートナー間の相互作用を阻害する能力を、そのような相互作用の下流の機能的結果、例えば、血管新生因子媒介性シグナル伝達の分析によって決定することもできる。
【0296】
一部の実施形態では、結合剤は、結合剤の非存在下(または適切な対照結合剤の存在下)での血管新生因子と血管新生因子の相互作用パートナーとの相互作用レベルの100%未満、例えば、99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下のうちの1つで血管新生因子と血管新生因子の相互作用パートナーとの相互作用を阻害することができてもよい。一部の実施形態では、結合剤は、結合剤の非存在下(または適切な対照結合剤の存在下)での血管新生因子と血管新生因子の相互作用パートナーとの相互作用レベルの1倍未満、例えば、0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下、0.1倍以下のうちの1つで血管新生因子と血管新生因子の相互作用パートナーとの相互作用を阻害することができてもよい。
【0297】
抗体および抗原結合性断片
一部の実施形態では、血管新生因子または血管新生因子の相互作用パートナーに結合することができる薬剤は、抗体、またはその抗原結合性断片である。一部の実施形態では、血管新生因子または血管新生因子の相互作用パートナーに結合することができる薬剤は、ポリペプチド、例えば、デコイ受容体分子である。一部の実施形態では、血管新生因子または血管新生因子の相互作用パートナーに結合することができる薬剤は、アプタマーであってもよい。
【0298】
一部の実施形態では、血管新生因子または血管新生因子の相互作用パートナーに結合することができる薬剤は、抗体、またはその抗原結合性断片である。血管新生因子に結合することができる例示的な抗体としては、VEGFに結合することができる抗体、例えば、ベバシズマブおよびラニビズマブが挙げられる。
【0299】
抗体/断片は、血管新生因子の生物活性を阻害する、または低減させるアンタゴニスト抗体/断片であってもよい。抗体/断片は、血管新生因子の生物学的効果、例えば、血管新生因子受容体による産生シグナル伝達を刺激するその能力を中和する、中和抗体であってもよい。
【0300】
デコイ受容体
血管新生因子または血管新生因子を含む複合体に結合することができるペプチドまたはポリペプチドベースの薬剤は、血管新生因子受容体、例えば、血管新生因子受容体の血管新生因子結合断片に基づくものであってよい。
【0301】
一部の実施形態では、結合剤は、受容体細胞外ドメインの血管新生因子結合断片を含んでもよく、好ましくは、可溶型であってよい、および/または膜貫通ドメインの1つもしくは複数、または全部を含まなくてもよい。そのような分子は、デコイ受容体と記載することができる。
【0302】
一部の実施形態では、結合剤は、ヒトIgG1の定常領域(Fc)に融合された、VEGFR-1の第2の免疫グロブリン(Ig)ドメインと、VEGFR-2の第3のIgドメインとの組換え融合タンパク質を含んでもよい。例示的な血管新生デコイ受容体は、アフリベルセプト(Eylea、配列番号24)である。
【0303】
そのため、一部の実施形態では、結合剤は、デコイ受容体、例えば、血管新生因子および/または血管新生因子を含む複合体の可溶型受容体であってもよい。
【0304】
デコイ血管新生因子受容体は、好ましくは、血管新生因子および/または血管新生因子を含む複合体に結合し、それによって、これらの種を、その受容体への結合に利用できなくする。そのため、それらは、「デコイ」受容体として作用し、血管新生シグナル伝達は、デコイ受容体の非存在下でのシグナル伝達のレベルと比較して低減する。
【0305】
一部の実施形態では、デコイ受容体は、例えば、少なくとも100μM以下、必要に応じて、10μM以下、1μM以下、100nM以下、または約1~100nMのうちの1つの結合親和性で、血管新生因子に結合することができてもよい。一部の実施形態では、デコイ受容体は、血管新生因子結合ドメインの全部または一部を含んでもよく、必要に応じて、膜貫通ドメインの全部または一部を欠いてもよい。デコイ受容体を、必要に応じて、免疫グロブリン定常領域、例えば、IgG Fc領域に融合することができる。
【0306】
阻害剤
本発明は、血管新生因子、血管新生因子を含む複合体、または血管新生因子の相互作用パートナーのうちの1つまたは複数に結合し、血管新生シグナル伝達を阻害することができる阻害剤分子の使用を企図する。
【0307】
一部の実施形態では、薬剤は、血管新生因子に基づくペプチドまたはポリペプチドベースの結合剤、例えば、血管新生因子の変異体、バリアントまたは結合断片である。好適なペプチドまたはポリペプチドベースの薬剤は、シグナル伝達の開始を誘導しない、または最適でないシグナル伝達をもたらす様式で血管新生因子の受容体(例えば、VEGFR1、2および/または3)に結合してもよい。この種類の変異体は、内因性血管新生因子の競合的阻害剤として作用してもよい。
【0308】
一部の実施形態では、血管新生因子の拮抗作用を行うことができる結合剤は、低分子阻害剤の形態を採ってもよい。
【0309】
血管新生の低分子阻害剤は、チロシンキナーゼ阻害剤であってもよい。複数の低分子チロシンキナーゼ阻害剤が開発されている。血管新生経路成分の機能的冗長性を考慮すると、これらの薬物は、VEGFRなどの複数のキナーゼを標的とする。それらのものとしては、VEGF、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)、およびKITの阻害剤であるパゾパニブ(Votrient(登録商標));VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3、PDGFR-β、およびRAF1の阻害剤であるソラフェニブ(Nexavar(登録商標));VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3、PDGFR-β、およびRETの阻害剤であるスニチニブ(Sutent(登録商標));VEGFRおよび上皮成長因子受容体の阻害剤であるバンデタニブ(Caprelsa(登録商標));METおよびVEGFR2の阻害剤であるカボザンチニブ(Cometriq(登録商標));VEGFR-1、VEGFR-2およびVEGFR-3の阻害剤であるアキシチニブ(Inlyta(登録商標));既知のVEGF受容体、ならびに血小板由来成長因子受容体-ベータおよびc-kitの阻害剤であるが、VEGFR-2について最も選択的であるバタラニブ;ならびにVEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3、TIE2、PDGFR、線維芽細胞増殖因子受容体、KIT、RET、およびRAFfの阻害剤であるレゴラフェニブ(Stivarga(登録商標))が挙げられる。
【0310】
血管新生の他の低分子阻害剤としては、アネコルタブ酢酸エステル、および乳酸スクアラミンが挙げられる。
【0311】
アプタマー
一部の実施形態では、血管新生因子/血管新生因子を含む複合体または血管新生因子の相互作用パートナーに結合することができる薬剤は、アプタマーである。
【0312】
血管新生因子の例示的なアプタマー阻害剤は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるWO9818480A1に記載された抗VEGFアプタマーであるペガプタニブである。
【0313】
血管新生因子または血管新生因子受容体の発現を低減させることができる薬剤
本発明の態様では、1つまたは複数の血管新生因子、または血管新生因子の相互作用パートナーの発現を防止するか、または低減させることができる、血管新生因子媒介性シグナル伝達のアンタゴニストが提供され得る。
【0314】
発現は、遺伝子またはタンパク質発現であってもよく、本明細書に記載のように決定することができる。発現は、対象の細胞/組織/臓器/臓器系によるものであってもよい。
【0315】
好適な薬剤は、任意の種類のものであってよいが、一部の実施形態では、1つまたは複数の血管新生因子、または血管新生因子の相互作用パートナーの発現を防止するか、または低減させることができる薬剤は、低分子またはオリゴヌクレオチドであってもよい。
【0316】
1つまたは複数の血管新生因子、または血管新生因子の相互作用パートナーの発現を防止する、または低減させることができる薬剤は、例えば、血管新生因子、もしくは血管新生因子の相互作用パートナーをコードする遺伝子の転写を阻害すること、血管新生因子、もしくは血管新生因子の相互作用パートナーをコードするRNAの転写後プロセッシングを阻害すること、血管新生因子、もしくは血管新生因子の相互作用パートナーをコードするRNAの安定性を低減させること、血管新生因子、もしくは血管新生因子の相互作用パートナーをコードするRNAの分解を促進すること、血管新生因子、もしくは血管新生因子の相互作用パートナーの翻訳後プロセッシングを阻害すること、血管新生因子、もしくは血管新生因子の相互作用パートナーの安定性を低減させること、または血管新生因子、もしくは血管新生因子の相互作用パートナーの分解を促進することによってそうしてもよい。
【0317】
本発明は、血管新生因子、または血管新生因子の相互作用パートナーの発現を防止する/低減させるためのアンチセンス核酸の使用を企図する。一部の実施形態では、血管新生因子、または血管新生因子の相互作用パートナーの発現を防止する、または低減させることができる薬剤は、RNA干渉(RNAi)によって発現の低減を引き起こしてもよい。
【0318】
一部の実施形態では、薬剤は、限定されるものではないが、shRNA、dsRNA、miRNAまたはsiRNAを含む、アンチセンスまたは低分子干渉RNAなどの阻害的核酸であってもよい。
【0319】
一部の実施形態では、阻害的核酸は、ベクター中に提供される。例えば、一部の実施形態では、薬剤は、1つまたは複数の血管新生因子、または血管新生因子の相互作用パートナーのためのshRNAをコードするレンチウイルスベクターであってもよい。
【0320】
血管新生因子およびその相互作用パートナーの既知の核酸配列(例えば、受託番号AY047581.1 GI:15422108(ヒトVEGF-A)、AF317892.1 GI:12802453(マウスVEGF)、AY033508.1 GI:15822724(ラットVEGF)、NM_002253.3 GI:1333881084(ヒトVEGF受容体)、NM_025809.5 GI:237512936(マウスVEGF受容体)、NM_019306.2 GI:828178218(ラットVEGF受容体)の下でGenBankから入手可能な既知のmRNA配列)を考慮して、血管新生因子、または血管新生因子受容体の発現を抑制する、またはサイレンシングするようにオリゴヌクレオチドを設計することができる。
【0321】
そのようなオリゴヌクレオチドは、任意の長さを有してもよいが、好ましくは、短い、例えば、100ヌクレオチド未満、例えば、10~40ヌクレオチド、または20~50ヌクレオチドであってよく、標的オリゴヌクレオチド、例えば、血管新生因子のmRNA、または血管新生因子の相互作用パートナーのmRNA中の対応する長さのヌクレオチドの配列に対して完全な相補性または近い相補性(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の相補性)を有するヌクレオチド配列を含んでもよい。ヌクレオチド配列の相補領域は、任意の長さを有してもよいが、好ましくは、少なくとも5、必要に応じて、50未満のヌクレオチド長、例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50ヌクレオチドのうちの1つである。
【0322】
血管新生因子、または血管新生因子の相互作用パートナーの発現の抑制は、好ましくは、細胞/組織/臓器/臓器系/対象によって発現される血管新生因子、または血管新生因子の相互作用パートナーの量の減少をもたらすと予想される。例えば、所与の細胞中での、好適な核酸の投与による血管新生因子、または血管新生因子の相互作用パートナーの抑制は、未処理の細胞と比較して、その細胞により発現される血管新生因子、または血管新生因子の相互作用パートナーの量の減少をもたらすと予想される。抑制は、部分的であってもよい。好ましい抑制の程度は、少なくとも50%、より好ましくは、少なくとも60%、70%、80%、85%または90%のうちの1つである。90%~100%の抑制のレベルは、発現または機能の「サイレンシング」と考えられる。
【0323】
別の選択肢は、細胞中での短いヘアピンRNA分子(shRNA)の発現である。好ましくは、shRNA分子は、血管新生因子、または血管新生因子の相互作用パートナーの部分配列を含む。好ましくは、shRNA配列は、40~100塩基長、より好ましくは、40~70塩基長である。ヘアピンのステムは、好ましくは、19~30塩基対の長さである。ステムは、ヘアピン構造を安定化するためのG-U対を含有してもよい。
【0324】
siRNA分子、より長いdsRNA分子またはmiRNA分子を、好ましくは、ベクター内に含有される核酸配列の転写によって組換え的に作製することができる。好ましくは、siRNA分子、より長いdsRNA分子またはmiRNA分子は、血管新生因子、または血管新生因子の相互作用パートナーの部分配列を含む。
【0325】
一実施形態では、siRNA、より長いdsRNAまたはmiRNAは、ベクターからの転写によって内因的に(細胞内で)産生される。好適なベクターは、血管新生因子、または血管新生因子の相互作用パートナーを抑制することができるオリゴヌクレオチド剤を発現するように構成されたオリゴヌクレオチドベクターであってもよい。そのようなベクターは、ウイルスベクターまたはプラスミドベクターであってもよい。
【0326】
他の実施形態では、本発明は、そうでなければ血管新生因子、または血管新生因子受容体を発現する哺乳動物、例えば、ヒト細胞内に好適に導入されたか、または発現された場合、RNAiによる血管新生因子、または血管新生因子の相互作用パートナーの発現を抑制することができる核酸を提供する。
【0327】
血管新生因子およびその相互作用パートナーの既知の核酸配列(例えば、受託番号AF437895.1 GI:16660685(ヒトVEGF)、U41383.1 GI:1134964(マウスVEGF)、NM_001287107.1 GI:560186576(ラットVEGF)、NM_002253.3 GI:1333881084(ヒトVEGF受容体)、NM_001001183.1 GI:47564089(マウスVEGF受容体)、NM_019306.2 GI:828178218(ラットVEGF受容体)の下でGenBankから入手可能な既知のmRNA配列)を考慮して、血管新生因子、または血管新生因子受容体の発現を抑制する、またはサイレンシングするようにオリゴヌクレオチドを設計することができる。
【0328】
核酸は、例えば、GenBank受託番号M32977.1 GI:181970(VEGF)、BC131822.1 GI:124297527(VEGF受容体)に定義された血管新生因子、または血管新生因子の相互作用パートナーのmRNAの一部、または前記mRNAに対する相補配列に対する実質的な配列同一性を有してもよい。
【0329】
核酸は、二本鎖siRNAであってもよい(当業者であれば理解できるように、また、以下でさらに説明されるように、siRNA分子は、短い3’DNA配列をも含んでもよい)。
【0330】
あるいは、核酸は、哺乳動物細胞中で転写された場合、相補部分が互いにハイブリダイズする場合にRNAがヘアピンの形態を採るような、スペーサーを介して連結された2つの相補部分を有するRNAをもたらす、DNA(通常は二本鎖DNA)であってもよい。哺乳動物細胞中では、ヘアピン構造は、DICER酵素によって分子から切断され、2つの異なるが、ハイブリダイズしたRNA分子をもたらしてもよい。
【0331】
本発明はまた、哺乳動物細胞中で転写された場合、自己ハイブリダイズして、例えば、配列番号14~17もしくは18~21からなる群から選択される配列または単一の塩基対置換によって上記配列のいずれか1つと異なる配列を含む、二本鎖モチーフを産生することができる2つの相補部分を有するRNA(本明細書では、shRNAとも呼ばれる)をもたらすDNAも提供する。
【0332】
相補部分は一般に、2つの相補部分を互いにハイブリダイズさせる好適な長さおよび配列を有するスペーサーによって連結されると予想される。好ましくは、スペーサーの5’末端(上流の相補部分のすぐ3’側)は、ヌクレオチド-UU-または-UG-、再び好ましくは、-UU-からなる(しかし再度、これらの特定のジヌクレオチドの使用は必須ではない)。OligoEngine(Seattle、Washington、USA)のpSuper系における使用のために推奨される好適なスペーサーは、UUCAAGAGAである。この場合およびその他の場合、スペーサーの末端は、互いにハイブリダイズし、例えば、少数(例えば、1または2個)の塩基対によって配列番号14~17または18~21の正確な配列を超えて二本鎖モチーフを伸長させることができる。
【0333】
本発明の二本鎖siRNAを、以下に記載されるような公知の技術を使用してin vitroまたはin vivoで哺乳動物細胞中に導入して、血管新生因子または血管新生因子の相互作用パートナーの発現を抑制することができる。
【0334】
同様に、本発明のDNAを含有する転写ベクターを、RNAの一過的な、または安定な発現のために、以下に記載されるような、公知の技術を使用してin vitroまたはin vivoで腫瘍細胞中に導入して、再度、血管新生因子または血管新生因子の相互作用パートナーの発現を抑制することができる。
したがって、本発明はまた、哺乳動物、例えば、ヒトの細胞中で血管新生因子または血管新生因子の相互作用パートナーの発現を抑制する方法であって、前記細胞に、本発明の二本鎖siRNAまたは本発明の転写ベクターを投与するステップを含む、方法も提供する。
【0335】
同様に、本発明は、線維症および/または血管新生が病理学的に関与している疾患/状態を処置する方法であって、対象に、血管新生因子のアンタゴニストと共に、本発明の二本鎖siRNAまたは本発明の転写ベクターを投与するステップを含む、方法をさらに提供する。
【0336】
本発明は、血管新生のアンタゴニストと組み合わせた処置方法、好ましくは、線維症および/または血管新生が病理学的に関与する疾患/状態を処置する方法における使用のための、本発明の二本鎖siRNAおよび本発明の転写ベクターをさらに提供する。
【0337】
本発明は、線維症および/または血管新生が病理学的に関与する疾患/状態の処置のための医薬の調製における、血管新生因子のアンタゴニストと組み合わせた、本発明の二本鎖siRNAおよび本発明の転写ベクターの使用をさらに提供する。
【0338】
血管新生因子媒介性シグナル伝達の阻害
本発明の実施形態では、血管新生因子の作用を阻害する(すなわち、拮抗する)ことができる薬剤は、以下の機能特性のうちの1つまたは複数を有してもよい:
・血管新生因子によって媒介されるシグナル伝達の阻害;
・血管新生因子の、血管新生因子の相互作用パートナーへの結合によって媒介されるシグナル伝達の阻害;
・血管新生因子によって媒介されるプロセスの阻害;
・腸重積症の阻害;
・毛細血管増殖の阻害;
・浮腫の阻害。
【0339】
これらの特性を、関連薬剤の性能の、好適な対照薬剤との比較を含んでもよい好適なアッセイにおける前記薬剤の分析によって決定することができる。当業者であれば、所与のアッセイに関する適切な対照条件を同定することができる。
【0340】
血管新生因子媒介性シグナル伝達および/または血管新生因子によって媒介されるプロセスは、血管新生因子の断片および血管新生因子またはその断片を含むポリペプチド複合体によって媒介されるシグナル伝達を含む。血管新生因子媒介性シグナル伝達は、ヒト血管新生因子および/またはマウス血管新生因子によって媒介されるシグナル伝達であってもよい。血管新生因子によって媒介されるシグナル伝達は、血管新生因子または血管新生因子含有複合体の、血管新生因子または前記複合体が結合する相互作用パートナー(例えば、受容体またはリガンド)への結合後に起こってもよい。
【0341】
一部の実施形態では、薬剤は、血管新生因子または血管新生因子を含む複合体の生物活性を阻害することができてもよい。
【0342】
一部の実施形態では、薬剤は、血管新生因子受容体を含む受容体を介するシグナル伝達によって活性化される1つまたは複数のシグナル伝達経路のアンタゴニストである。
【0343】
一部の実施形態では、薬剤は、薬剤の非存在下(または適切な対照薬剤の存在下)でのシグナル伝達のレベルの100%未満、例えば、99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下のうちの1つで血管新生因子媒介性シグナル伝達を阻害することができてもよい。一部の実施形態では、薬剤は、薬剤の非存在下(または適切な対照薬剤の存在下)でのシグナル伝達のレベルの1倍未満、例えば、0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下、0.1倍以下のうちの1つで血管新生因子媒介性シグナル伝達を低減させることができる。
【0344】
一部の実施形態では、血管新生因子媒介性シグナル伝達は、血管新生因子の、血管新生因子の相互作用パートナー(例えば、血管新生因子の受容体またはリガンド)への結合によって媒介されるシグナル伝達であってもよい。そのようなシグナル伝達を、例えば、血管新生因子の相互作用パートナーを発現する細胞を、血管新生因子で処理することによって、または血管新生因子の相互作用パートナーを発現する細胞中での血管新生因子の産生を刺激することによって分析することができる。
【0345】
血管新生因子媒介性シグナル伝達の阻害に関する薬剤のIC50を、例えば、血管新生因子および薬剤の存在下で血管新生因子受容体の相互作用パートナーを発現する細胞を培養することと、血管新生因子によって媒介されるシグナル伝達の機能的結果を測定することとによって決定することができる。例えば、血管新生因子によって媒介される細胞増殖のアッセイでは、DNAへの3Hチミジンの取込みを分析することができる。一部の実施形態では、薬剤は、そのようなアッセイにおいて、10μg/ml以下、好ましくは、5μg/ml以下、4μg/ml以下、3.5μg/ml以下、3μg/ml以下、2μg/ml以下、1μg/ml以下、0.9μg/ml以下、0.8μg/ml以下、0.7μg/ml以下、0.6μg/ml以下、または0.5μg/ml以下のうちの1つのIC50を示してもよい。
【0346】
一部の実施形態では、薬剤は、血管新生因子によって媒介されるプロセス(例えば、VEGFによる刺激後)を阻害することができてもよい。血管新生因子によって媒介されるプロセスは、例えば、腸重積症、毛細血管増殖、ならびに例えば、コラーゲンおよび血管新生因子の遺伝子/タンパク質発現を含み、in vitroまたはin vivoのいずれかで評価することができる。
【0347】
一部の実施形態では、血管新生因子のアンタゴニストは、エンドスタチン(NP_569711.2 GI:206597445)、プロラクチン(CAA38264.1 GI:531103)、T2-TrpRS(全体が参照により本明細書に組み込まれるOtani Aら、A fragment of human TrpRS as a potent antagonist of ocular angiogenesis Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America.2002;99(1):178~183頁に記載のような)、またはバソスタチン(AAL13126.1 GI:16151097)、またはその断片、アイソフォーム、ホモログもしくはバリアントから選択される血管新生阻害剤である。
【0348】
治療および予防方法
本発明は、IL-11媒介性シグナル伝達の拮抗作用および血管新生の拮抗作用による線維症(特に、眼の線維症)の処置/防止のための方法および組成物を提供する。また、IL-11媒介性シグナル伝達の拮抗作用および血管新生の拮抗作用による血管新生の処置/防止のための方法および組成物も提供される。
【0349】
一部の実施形態では、本発明に従って処置/防止される疾患/状態は、例えば、該疾患/状態によって影響される臓器/組織(例えば、疾患/状態の症状が現れる臓器/組織)中でのIL-11媒介性シグナル伝達および/または血管新生のレベルの増大を特徴とする。
【0350】
一部の実施形態では、処置/防止される疾患/状態は、例えば、正常な(すなわち、非疾患)臓器/組織/対象と比較して、疾患によって影響される臓器/組織/対象における以下のもののうちの1つまたは複数の増加を特徴としてもよい:IL-11、IL-11Rα、TGFβ、VEGF、FGF、PDGF、VEGFR、FGFRまたはPDGFR。
【0351】
処置は、疾患/状態の進行を防止する、例えば、疾患/状態の悪化を低減する/遅延させる/防止する、または疾患/状態の発達を低減する/遅延させる/防止するのに有効であってよい。一部の実施形態では、処置は、疾患/状態の改善、例えば、疾患/障害の重症度の低減、および/または疾患/障害の症状の逆転をもたらしてもよい。一部の実施形態では、処置は、生存を増加させてもよい。防止とは、疾患/状態の発達の防止、および/または疾患/状態の悪化の防止、例えば、疾患/状態の、後期段階または慢性段階への進行の防止を指してもよい。
【0352】
一部の実施形態では、処置/防止される疾患/状態は、脈絡膜血管新生(CNV)および/または加齢黄斑変性(AMD)、例えば、「滲出型」AMDである。
【0353】
投与
本開示による薬剤の投与は、好ましくは、「治療有効」または「予防有効」量にあり、これは対象に対して利益を示すのに十分なものである。
【0354】
投与される実際の量、ならびに投与の速度および時間経過は、疾患/状態の性質および重症度ならびに薬剤の性質に依存すると予想される。処置の処方、例えば、用量に関する決定などは、一般開業医および他の医師の責任の範囲内にあり、典型的には、処置しようとする疾患/状態、個々の対象の状態、送達部位、投与方法および医師にとって公知の他の因子を考慮に入れる。上記の技術およびプロトコールの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第20版、2000、pub.Lippincott,Williams & Wilkinsに見出すことができる。
【0355】
治療適用においては、IL-11媒介性シグナル伝達に拮抗することができる薬剤および血管新生因子に拮抗することができる薬剤は、好ましくは、限定されるものではないが、薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤、希釈剤、充填剤、緩衝剤、保存剤、抗酸化剤、滑沢剤、安定剤、可溶化剤、界面活性剤(例えば、湿潤剤)、マスキング剤、着色剤、香味剤、および甘味剤を含む、当業者には周知の1つまたは複数の他の薬学的に許容される成分と一緒に医薬または薬剤として製剤化される。
【0356】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容される」は、正当な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/危険比に見合う、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症なしに、問題の対象(例えば、ヒト)の組織との接触における使用にとって好適である、化合物、成分、材料、組成物、剤形などに関する。それぞれの担体、アジュバント、賦形剤などはまた、製剤の他の成分と適合する意味で「許容される」ものでなければならない。
【0357】
好適な担体、アジュバント、賦形剤などは、標準的な薬学の教科書、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing Company、Easton,Pa.、1990;およびHandbook of Pharmaceutical Excipients、第2版、1994に見出すことができる。
【0358】
製剤を、製薬業界における周知の任意の方法によって調製することができる。そのような方法は、活性化合物を、1つまたは複数の補助成分を構成する担体と会合させるステップを含む。一般に、製剤は、活性化合物を、担体(例えば、液体担体、微細に分割された固体担体など)と均一かつ密接に会合させること、次いで、必要に応じて、生成物を形状化することによって調製される。
【0359】
製剤を、処置しようとする疾患/状態にとって好適な投与のために調製することができる。例えば、製剤を、注射を含んでもよい、局所、非経口、全身、静脈内、動脈内、筋肉内、髄腔内、眼内、眼局部(例えば、結膜下、硝子体内、眼球後方、前房内)、結膜内、皮下、経口、または経皮投与経路のために製剤化することができる。注射製剤は、滅菌または等張媒体中に選択された薬剤を含んでもよい。特定の実施形態では、製剤は、眼投与のために製剤化される。
【0360】
本発明の態様は、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストおよび血管新生因子のアンタゴニストを含む/用いる組成物および方法を含む。
【0361】
本明細書で言及される「組合せ」は、組合せの成分を含む生成物および組成物(例えば、医薬組成物)を包含する。「組合せ」はまた、組合せの成分を用いる治療レジメンも包含する。
【0362】
一部の実施形態では、組合せの成分は、別々の組成物中に提供される。一部の実施形態では、組合せの1より多い成分は、組成物中に提供される。一部の実施形態では、組合せの成分は、1つの組成物中に提供される。
【0363】
同様に、一部の実施形態では、組合せの成分は、別々に投与される。一部の実施形態では、組合せの成分は、組合せの別の成分と共に投与される。一部の実施形態では、組合せの成分は、一緒に投与される。
【0364】
例示として、アンタゴニスト抗IL-11抗体およびアンタゴニスト抗VEGF抗体を含む組合せの例では、抗IL-11抗体および抗VEGF抗体を一緒に投与するか、または別々に(例えば、続けて)投与することができる。
【0365】
組合せの成分が一緒に投与される場合、投与は同時投与であってもよい。組合せの成分が別々に投与される場合、投与は同時投与または連続投与であってもよい。
【0366】
線維症および/または血管新生を処置する、または防止する方法であって、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストと、血管新生因子のアンタゴニストとの、対象への別々の、または同時の投与を含む方法における使用のためのIL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストが本明細書で提供される。
【0367】
また、線維症および/または血管新生を処置する、または防止する方法であって、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストと、血管新生因子のアンタゴニストとの、対象への別々の、または同時の投与を含む方法における使用のための血管新生因子のアンタゴニストも本明細書で提供される。
【0368】
また、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストと、血管新生因子のアンタゴニストとの、対象への別々の、または同時の投与を含む方法における使用のための医薬の製造におけるIL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストの使用も提供される。
【0369】
また、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストと、血管新生因子のアンタゴニストとの、対象への別々の、または同時の投与を含む方法における使用のための医薬の製造における血管新生因子のアンタゴニストの使用も提供される。
【0370】
同時投与とは、例えば、薬剤を含有する医薬組成物(すなわち、組合せ調製物)としての、一緒の、または互いに直後の、必要に応じて、同じ投与経路を介する、例えば、同じ動脈、静脈もしくは他の血管を介する、薬剤の投与を指す。特定の実施形態では、腫瘍溶解ウイルスおよび免疫調節因子をコードする核酸を含むウイルスを、組合せ調製物中で同時に投与することができる。ある特定の実施形態では、同時投与の際に、2つ以上の薬剤を、異なる投与経路を介して投与することができる。一部の実施形態では、同時投与とは、同じ時間での、または例えば、1h、2h、3h、4h、5h、6h、8h、12h、24h、36hもしくは48h以内の投与を指す。
【0371】
連続投与とは、1つまたは複数の薬剤の投与、次いで、所与の時間間隔後、別の薬剤の別々の投与を指す。2つの薬剤が同じ経路によって投与される必要はないが、これは一部の実施形態では当てはまる。時間間隔は、時間、日、週、月、または年を含む任意の時間間隔であってよい。一部の実施形態では、連続投与とは、少なくとも10min、30min、1h、6h、8h、12h、24h、36h、48h、3日、4日、5日、6日、1週、2週、3週、1ヶ月、6週、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月または6ヶ月のうちの1つの時間間隔によって隔てられた投与を指す。
【0372】
一部の実施形態では、処置は、他の治療または予防介入、例えば、外科手術をさらに含んでもよい。そのような他の治療または予防介入は、本開示によって包含される療法の前、間および/または後に行ってもよく、他の治療または予防介入の送達は、本開示の療法と同じか、または異なる投与経路によって行ってもよい。
【0373】
本開示の複数用量の薬剤(IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニスト、血管新生因子のアンタゴニスト、組成物、組合せなど)を提供することができる。1つもしくは複数の、またはそれぞれの用量に、別の治療剤の同時または連続投与を伴ってもよい。
【0374】
複数の用量は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、もしくは31日、または1、2、3、4、5、もしくは6ヶ月のうちの1つであると選択することができる所定の時間間隔で隔てられていてもよい。例えば、用量を、7、14、21または28日(プラスまたはマイナス3、2または1日)毎に1回与えることができる。
【0375】
併用処置の機能特性
本開示の組合せおよび方法を、1つまたは複数の機能特性および/または効果を参照することによって定義することができ、例えば、実験例に記載される分析によって、そのような特性/効果について評価することができる。
【0376】
一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストと、血管新生因子のアンタゴニストとの組合せは、1つまたは複数の以下の機能特性を有してもよい:
・単独で使用されるいずれかの成分による線維症(例えば、網膜線維症)を低減する能力と比較した、線維症(例えば、網膜線維症)を低減する能力の改善。
・単独で使用される成分による線維症(例えば、網膜線維症)を低減する能力と比較した、相乗的である(すなわち、優加法的である)線維症(例えば、網膜線維症)を低減する能力。
・用量依存的様式で線維症(例えば、網膜線維症)を低減する能力。
・単独で使用されるいずれかの成分による線維症(例えば、網膜線維症)を防止する能力と比較した、線維症(例えば、網膜線維症)を防止する能力の改善。
・単独で使用されるいずれかの成分による血管新生を低減する能力と比較した、血管新生を低減する能力の改善。
・単独で使用される成分による血管新生を低減する能力と比較した、相乗的である(すなわち、優加法的である)血管新生を低減する能力。
・用量依存的様式で血管新生を低減する能力。
・単独で使用されるいずれかの成分による血管新生を防止する能力と比較した、血管新生を防止する能力の改善。
・単独で使用されるいずれかの成分による網膜下血管新生(例えば、脈絡膜血管新生(CNV))を低減する能力と比較した、網膜下血管新生(例えば、脈絡膜血管新生(CNV))を低減する能力の改善。
・単独で使用される成分による網膜下血管新生(例えば、脈絡膜血管新生(CNV))を低減する能力と比較した、相乗的である(すなわち、優加法的である)網膜下血管新生(例えば、脈絡膜血管新生(CNV))を低減する能力。
・用量依存的様式で網膜下血管新生(例えば、脈絡膜血管新生(CNV))を低減する能力。
・単独で使用されるいずれかの成分による網膜下血管新生(例えば、脈絡膜血管新生(CNV))を防止する能力と比較した、網膜下血管新生(例えば、脈絡膜血管新生(CNV))を防止する能力の改善。
【0377】
線維症、血管新生および/または網膜下血管新生を低減/防止する能力の分析は、例えば、in vivoで、実験例に記載される分析によって評価することができる。例えば、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストと、血管新生因子のアンタゴニストとの組合せは、フルオレセイン蛍光眼底造影(FFA)および/または後眼部光コヒーレンストモグラフィー(PS-OCT)により評価された場合、脈絡膜血管新生(CNV)を低減することができる。組合せはまた、組織病理学的検査または免疫蛍光染色検査により観察された場合、網膜の線維化領域の減少をもたらすこともできる。一部の実施形態では、組合せは、単独で使用されるいずれかの成分による血管漏出を低減する能力と比較して、血管漏出を低減する能力の改善を有する。
【0378】
一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストは、血管新生因子のアンタゴニストの効能を改善することができる。一部の実施形態では、血管新生因子のアンタゴニストは、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストの効能を改善することができる。
【0379】
組成物/生成物/キット
本開示はまた、本明細書に記載のIL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストと、本明細書に記載の血管新生因子のアンタゴニストとを含む組成物も提供する。本開示の組合せは、単一の組成物中で提供してもよいか、または組合せの成分を含む複数の組成物として提供してもよい。
【0380】
本開示はまた、本明細書に記載のIL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストと、本明細書に記載の血管新生因子のアンタゴニストと、または本開示による組成物を含む要素のキットも提供する。
【0381】
一部の実施形態では、キットは、所定量の本明細書に記載のIL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニスト、本明細書に記載の血管新生因子のアンタゴニスト、または本開示による組成物を有する少なくとも1つの容器を有してもよい。キットは、本開示の組合せの個々の成分を含有する容器を有してもよいか、または本開示の組合せの成分の組合せを含有する容器を有してもよい。
【0382】
キットは、線維症(例えば、眼の線維症)を処置するための患者への投与のための指示書と共に、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニスト、血管新生因子のアンタゴニスト、または組成物を提供してもよい。IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニスト、血管新生因子のアンタゴニスト、または組成物を、眼投与にとって好適となるように製剤化することができる。
【0383】
対象
対象は、動物またはヒトであってもよい。対象は、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。対象は、非ヒト哺乳動物であってよいが、より好ましくは、ヒトである。対象は、雄性または雌性であってもよい。対象は、患者であってもよい。患者は、本明細書に記載の疾患/状態を有してもよい。対象は、処置を要する疾患/状態と診断されていてもよく、そのような疾患/状態を有すると疑われてもよく、またはそのような疾患/状態を発症するリスクがあってもよい。
【0384】
本発明による実施形態では、対象は、好ましくはヒト対象である。一部の実施形態では、本発明の治療または予防方法に従って処置される対象は、本明細書に記載の疾患/状態を有する、または発症するリスクがある対象である。本発明による実施形態では、対象を、そのような疾患/障害のある特定のマーカーに関する特性評価に基づく方法による処置のために選択することができる。対象は、処置を要する疾患もしくは障害と診断されていてもよいか、またはそのような疾患もしくは障害を有すると疑われていてもよい。
【0385】
配列同一性
2つ以上のアミノ酸または核酸配列間の同一性パーセントを決定するためのペアワイズおよびマルチ配列アラインメントを、例えば、ClustalOmega(Soding,J.2005、Bioinformatics 21、951~960頁)、T-coffee(Notredameら、2000、J.Mol.Biol.(2000)302、205~217頁)、Kalign(LassmannおよびSonnhammer、2005、BMC Bioinformatics、6(298))およびMAFFT(KatohおよびStandley、2013、Molecular Biology
【0386】
and Evolution、30(4)、772~780頁)ソフトウェアなどの公共的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当業者には公知の様々な方法で達成することができる。そのようなソフトウェアを使用する場合、好ましくは、例えば、ギャップペナルティおよび伸長ペナルティに関するデフォルトパラメータが使用される。
【0387】
【0388】
番号付きの陳述
以下の番号付きの段落は、本発明の特定の態様および実施形態を記載する:
1.対象における線維症を処置または防止する方法であって、対象に、治療または予防有効量のIL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストおよび血管新生因子のアンタゴニストを投与するステップを含む、方法。
2.線維症を処置または防止する方法における使用のための、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストと、血管新生因子のアンタゴニストとの組合せ。
3.線維症を処置または防止する方法における使用のための医薬の製造における、IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストおよび血管新生因子のアンタゴニストの使用。
4.線維症が、眼における線維症である、段落1に記載の方法、段落2に記載の使用のための組合せ、または段落3に記載の使用。
5.線維症が、グレーブス眼症、網膜上線維症、網膜線維症、特発性黄斑前線維症、網膜下線維症(例えば、網膜剥離もしくは黄斑変性(例えば、滲出型加齢黄斑変性(AMD)と関連する)、糖尿病性網膜症、緑内障、地図状萎縮、角膜線維症、術後線維症(例えば、白内障手術後の後嚢の、もしくは緑内障の線維柱帯切除術後のブレブの)、結膜線維症、または結膜下線維症から選択される、段落1~4のいずれか1つに記載の方法、使用のための組合せ、または使用。
6.線維症が、網膜線維症、網膜上線維症、または網膜下線維症である、段落1~5のいずれか1つに記載の方法、使用のための組合せ、または使用。
7.線維症が心臓、肝臓、または腎臓の線維症である、段落1に記載の方法、段落2に記載の使用のための組合せ、または段落3に記載の使用。
8.線維症が、
肝臓におけるものであり、慢性肝臓病または肝硬変と関連する;
腎臓におけるものであり、慢性腎臓病と関連する;または
心臓におけるものであり、心臓の筋肉組織もしくは電気特性の機能障害、または心臓の壁もしくは弁の肥厚と関連する、
段落7に記載の方法、使用のための組合せ、または使用。
9.血管新生因子が、血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、および血小板由来成長因子(PDGF)から選択される、段落1~8のいずれか1つに記載の方法、使用のための組合せ、または使用。
10.血管新生因子がVEGFである、段落1~9のいずれか1つに記載の方法、使用のための組合せ、または使用。
11.IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストが、IL-11のIL-11受容体への結合を防止する、または低減することができる薬剤である、段落1~10のいずれか1つに記載の方法、使用のための組合せ、または使用。
12.IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストが、IL-11またはIL-11の受容体に結合することができる薬剤である、段落1~11のいずれか1つに記載の方法、使用のための組合せ、または使用。
13.IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストが、抗体もしくはその抗原結合性断片、ポリペプチド、ペプチド、オリゴヌクレオチド、アプタマーまたは低分子からなる群から選択される、段落12に記載の方法、使用のための組合せ、または使用。
14.IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストが、抗IL-11抗体または抗IL-11Rα抗体である、段落13に記載の方法、使用のための組合せ、または使用。
15.IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストが、デコイIL-11受容体である、段落13に記載の方法、使用のための組合せ、または使用。
16.IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストが、IL-11またはIL-11の受容体の発現を低減することができる、段落1~10のいずれか1つに記載の方法、使用のための組合せ、または使用。
17.IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストが、オリゴヌクレオチドまたは低分子である、段落16に記載の方法、使用のための組合せ、または使用。
18.血管新生因子のアンタゴニストが、血管新生因子の、血管新生因子の相互作用パートナーへの結合を防止するか、または低減することができる薬剤である、段落1~17のいずれか1つに記載の方法、使用のための組合せ、または使用。
19.血管新生因子のアンタゴニストが、血管新生因子または血管新生因子の相互作用パートナーに結合することができる薬剤である、段落1~18のいずれか1つに記載の方法、使用のための組合せ、または使用。
20.血管新生因子のアンタゴニストが、抗体もしくはその抗原結合性断片、ポリペプチド、ペプチド、オリゴヌクレオチド、アプタマーまたは低分子からなる群から選択される、段落19に記載の方法、使用のための組合せ、または使用。
21.血管新生因子のアンタゴニストが、抗VEGF抗体または抗VEGF受容体抗体である、段落20に記載の方法、使用のための組合せ、または使用。
22.血管新生因子のアンタゴニストが、デコイVEGF受容体である、段落20に記載の方法、使用のための組合せ、または使用。
23.血管新生因子のアンタゴニストが、アフリベルセプトである、段落22に記載の方法、使用のための組合せ、または使用。
24.血管新生因子のアンタゴニストが、血管新生因子または血管新生因子の相互作用パートナーの発現を低減することができる、段落1~17のいずれか1つに記載の方法、使用のための組合せ、または使用。
25.血管新生因子のアンタゴニストが、オリゴヌクレオチドまたは低分子である、段落24に記載の方法、使用のための組合せ、または使用。
26.IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストと、血管新生因子のアンタゴニストとを含む組合せ。
27.IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストと、血管新生因子のアンタゴニストとを含む医薬組成物。
28.所定量のIL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストおよび血管新生因子のアンタゴニスト、段落26に記載の組合せまたは段落27に記載の医薬組成物を含む要素のキット。
29.血管新生因子が、血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、および血小板由来成長因子(PDGF)から選択される、段落26に記載の組合せ、段落27に記載の医薬組成物、または段落28に記載の要素のキット。
30.血管新生因子がVEGFである、段落26~29のいずれか1つに記載の組合せ、医薬組成物または要素のキット。
31.IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストが、IL-11のIL-11受容体への結合を防止する、または低減することができる薬剤である、段落26から30のいずれか1つに記載の組合せ、医薬組成物または要素のキット。
32.IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストが、IL-11またはIL-11の受容体に結合することができる薬剤である、段落26~31のいずれか1つに記載の組合せ、医薬組成物または要素のキット。
33.IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストが、抗体もしくはその抗原結合性断片、ポリペプチド、ペプチド、オリゴヌクレオチド、アプタマーまたは低分子からなる群から選択される、段落32に記載の組合せ、医薬組成物または要素のキット。
34.IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストが、抗IL-11抗体または抗IL-11Rα抗体である、段落33に記載の組合せ、医薬組成物または要素のキット。
35.IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストが、デコイIL-11受容体である、段落33に記載の組合せ、医薬組成物または要素のキット。
36.IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストが、IL-11またはIL-11の受容体の発現を低減することができる、段落26~30のいずれか1つに記載の組合せ、医薬組成物または要素のキット。
37.IL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストが、オリゴヌクレオチドまたは低分子である、段落36に記載の組合せ、医薬組成物または要素のキット。
38.血管新生因子のアンタゴニストが、血管新生因子の、血管新生因子の相互作用パートナーへの結合を防止するか、または低減することができる薬剤である、段落26~37のいずれか1つに記載の組合せ、医薬組成物または要素のキット。
39.血管新生因子のアンタゴニストが、血管新生因子または血管新生因子の相互作用パートナーに結合することができる薬剤である、段落26~38のいずれか1つに記載の組合せ、医薬組成物または要素のキット。
40.血管新生因子のアンタゴニストが、抗体もしくはその抗原結合性断片、ポリペプチド、ペプチド、オリゴヌクレオチド、アプタマーまたは低分子からなる群から選択される、段落39に記載の組合せ、医薬組成物または要素のキット。
41.血管新生因子のアンタゴニストが、抗VEGF抗体または抗VEGF受容体抗体である、段落40に記載の組合せ、医薬組成物または要素のキット。
42.血管新生因子のアンタゴニストが、デコイVEGF受容体である、段落40に記載の組合せ、医薬組成物または要素のキット。
43.血管新生因子のアンタゴニストが、アフリベルセプトである、段落42に記載の組合せ、医薬組成物または要素のキット。
44.血管新生因子のアンタゴニストが、血管新生因子の相互作用パートナーの発現を低減することができる、段落26~37のいずれか1つに記載の組合せ、医薬組成物または要素のキット。
45.血管新生因子のアンタゴニストが、オリゴヌクレオチドまたは低分子である、段落44に記載の組合せ、医薬組成物または要素のキット。
【0389】
本発明は、記載される態様および好ましい特徴の組合せが明確に容認できないか、または明示的に回避される場合を除いて、そのような組合せを含む。
【0390】
本明細書で使用されるセクションの見出しは、構成のみを目的とするものであり、記載される主題を限定すると解釈されるべきではない。
【0391】
ここで、本発明の態様および実施形態を、例えば、添付の図面を参照して例示する。さらなる態様および実施形態は、当業者には明らかと予想される。本文に記載される全ての文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0392】
以下の特許請求の範囲を含む、本明細書を通じて、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単語「含む(comprise)」ならびに「含む(comprises)」および「含む(comprising)」などの変形は、任意の他の整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群の排除ではなく、記述される整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群の含有を意味すると理解されると予想される。
【0393】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、本文が別途明確に記述しない限り、複数の指示対象を含むことに留意する必要がある。範囲は、本明細書では、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までと表すことができる。そのような範囲が表される場合、別の実施形態は、一方の特定の値から、および/または他方の特定の値までを含む。同様に、値が近似値として表される場合、先行詞「約」の使用により、特定の値は別の実施形態を形成することが理解されると予想される。
【0394】
核酸配列が本明細書に開示される場合、その逆相補体も明示的に企図される。
【0395】
本明細書に記載される方法は、好ましくは、in vitroで実施することができる。用語「in vitro」は、培養物中の細胞を用いて実施される手順を包含することが意図されるが、用語「in vivo」は、無傷の多細胞生物を用いて/その上での手順を包含することが意図される。
【0396】
ここで、本発明の原理を例示する実施形態および実験を、添付の図面を参照して考察する。
【図面の簡単な説明】
【0397】
【
図1】抗VEGF抗体と抗IL-11抗体との併用処置の実験的概略。
【
図2】ブルッフ膜のレーザー誘導破壊の7および28日後にin vivoでモニタリングしたレーザー生成脈絡膜血管新生(CNV)のフルオレセイン蛍光眼底造影(FFA)分析。(a)測定値は、抗VEGFおよび抗IL-11の硝子体内注射(IVT)の前後でのCNVの程度を示し、データは平均±semである;(b)aからの抗体処置後の漏出面積をプロットし、本発明者らはEyleaと共にCNVを低減する抗IL-11抗体の用量依存的効果を観察する;(c)7および28日での対照(EYLEA+IGG)、高用量(2μg)および低用量(0.5μg)のEylea+抗IL-11併用療法のFFA画像。
【
図3】対照(EYLEA+IGG)、高用量(2μg)または低用量(0.5μg)のEylea+抗IL-11併用療法を受けている対象の後眼部光コヒーレンストモグラフィー(PS-OCT)による網膜構造のイメージング。
【
図4】実験の28日目での線維症の組織学的画像。(a)レーザー傷害が線維性瘢痕をもたらし、抗IL-11抗体処置によってサイズが有意に低減したこと、およびこの効果が併用処置においてより顕著であることを示す、線維症の代表的な組織学的画像。(b)線維症の面積を、ImageJソフトウェアを使用して定量した;両側Dunnett検定;箱髭プロットは、中央値(中央の線)、第一四分位数~第三四分位数(箱)および10~90パーセンタイル(髭)を示す。
【
図5】レーザー傷害が線維性瘢痕をもたらし、抗IL-11抗体処置によってサイズが有意に低減したこと、およびこの効果が併用処置においてより顕著であることを示す、実験の28日目での線維症の免疫蛍光(アルファ-SMA、DAPI)染色画像(40倍)。(a)それぞれ、Eylea+IgG対照、低用量併用療法および高用量併用療法を受けている個体1~3からの画像。(b)それぞれ、Eylea+IgG対照、低用量併用療法および高用量併用療法を受けている個体4~6からの画像。
【
図6】レーザー傷害が線維性瘢痕をもたらし、抗IL-11抗体処置によってサイズが有意に低減したこと、およびこの効果が併用処置においてより顕著であることを示す、実験の28日目での線維症の定量的アルファ-SMA染色画像(40倍)。(a)それぞれ、Eylea+IgG対照、低用量併用療法および高用量併用療法を受けている個体1~3からの画像;下パネルは、線維症の領域のみを示すために切り取られた上パネルを示す。(b)それぞれ、Eylea+IgG対照、低用量併用療法および高用量併用療法を受けている個体4~6からの画像;下パネルは、線維症の領域のみを示すために切り取られた上パネルを示す。
【実施例】
【0398】
実施例1
材料および方法
C57BL/6J野生型(WT)マウスを、InVivos(Singapore)から購入した。動物を、食餌および水を自由裁量で供給しながら、12時間の明/12時間の暗サイクルで飼育した。全ての動物の取り扱いおよび世話は、SingHealth Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC、Singapore)によって認可された指針に従って実施され、動物実験に関するAssociation for Research in Vision and Ophthalmology(ARVO)の推奨に従って行われる。
【0399】
レーザー誘導性CNV:
4つのレーザー光凝固部位を、両眼の視神経頭の周囲に同心円状に置いて、CNVを誘導した。ダイオードレーザー(810nm)を、120mWの相対効力スケール、0.05秒の曝露時間、および50μmのスポットサイズで使用した。レーザースポットを、クリスタルカバーを用いて集中させて、レーザービームの分散を回避した。気泡形成により、ブルッフ膜の破壊を確認した。
【0400】
硝子体内注射(IVT):
動物を麻酔した後、結膜嚢に1%キシロカインの液滴を置くことによって眼を局部麻酔した。5%ポビドンヨード溶液を、結膜嚢に入れた。硝子体内注射を、32ゲージ針を使用して実施した。試験される化合物を、右眼にIVT注射で投与した。全ての動物に対して毎日の症状観察を実施して、任意の眼の異常を含む健康不良の臨床兆候についてモニタリングした。
【0401】
レーザー後、8日目および16日目にIVT経路によって以下の処置を投与した:
Eylea+IgG:抗VEGF剤EyleaおよびIgG(アイソタイプ対照)。注射1回あたりの総容量=1μl。
Eylea+抗IL-11(低用量):Eyleaと抗IL-11抗体(1μl中に0.5μg)との組合せ。注射1回あたりの総容量=1μl。
Eylea+抗IL-11(高用量):Eyleaと抗IL-11抗体(1μl中に2μg)との組合せ。注射1回あたりの総容量=1μl。
【0402】
潜在的な有害事象の兆候について1日2回、および食餌消費の定性評価について1日1回、動物を観察した。レーザー傷害のための動物選択時、および残りの試験を通じて毎週、動物の体重を記録した。
【0403】
28日目に、血液および組織収集のために、過剰用量のペントバルビタールによって動物を安楽死させた。
【0404】
フルオレセイン蛍光眼底造影:
フルオレセイン蛍光眼底造影(FFA)を、MICRON IV眼底カメラ(Phoenix Laboratories USA)を使用して画像化した。FFAのために、動物に、5~6g体重あたり0.01mlの用量で10%フルオレセインナトリウムを腹腔内注射した。
【0405】
後眼部光コヒーレンストモグラフィー(PS-OCT)によって、網膜構造をリアルタイムにモニタリングした。
【0406】
組織病理学および免疫組織化学
全マウス眼(28日、n=10)を摘出し、4%パラホルムアルデヒド(PFA)(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)の混合物中で24時間にわたって固定した。次いで、全マウス眼を、増大する濃度のエタノール中で脱水し、キシレン中で清浄し、パラフィン中で包埋した(Leica-Surgipath、Leica Biosystems Richmond,Inc.)。5μmの切片を、回転式ミクロトーム(RM2255、Leica Biosystems Nussloch GmbH、Germany)で切断し、POLYSINE(商標)顕微鏡ガラススライド(Gerhard Menzel、Thermo Fisher Scientific、Newington、CT)上に収集した。切片を、37℃のオーブン中で少なくとも24時間にわたって乾燥させた。組織病理学および免疫組織化学検査のための切片を調製するために、切片を60℃の加熱プレート上で加熱し、キシレン中で脱パラフィン化し、減少する濃度のエタノール中で再水和した。 Massonのトリクロム染色のための推奨された手順(26367-Series、Electron Microscopy Sciences)も実施して、結合組織と筋肉病理の両方を試験した。光学顕微鏡(Axioplan 2;Carl Zeiss Meditec GmbH、Oberkochen、Germany)を使用して、スライドを検査し、画像を捕捉した。
【0407】
同時に、免疫蛍光染色を実施した。95~100℃で20分間、クエン酸ナトリウム緩衝液(10mMクエン酸ナトリウム、0.05%Tween20、pH6.0)中で切片をインキュベートすることにより、熱誘導性抗原回復を実施した。次いで、RTで20分間、クエン酸ナトリウム緩衝液中で切片を冷却し、1X PBSでそれぞれ5分間、3回洗浄した。非特異的部位を、加湿チャンバー中、室温で1時間、0.1%Triton X-100および1XPBS中の5%ウシ血清アルブミン(BSA)のブロッキング溶液でブロックした。次いで、スライドを1XPBSで簡単に洗浄した。表1に示される特定の一次抗体を適用し、ブロッキング溶液中で調製された加湿チャンバー中、4℃で一晩インキュベートした。それぞれ10分間、1XPBSで2回および0.1%Tweenを含む1XPBSで1回洗浄した後、表1に示されるAlexa Fluro(登録商標)594コンジュゲート化フルオレセイン標識二次抗体(Invitrogen-Molecular Probes、Eugene、OR)を、ブロッキング溶液中、1:1000の濃度で適用し、RTで90分間インキュベートした。次いで、スライドを1XPBSで2回および0.1%Tweenを含む1XPBSで1回、それぞれ5分間洗浄し、スライドを、Prolong Diamond Anti-fade DAPI5 Mounting Media(Invitrogen-Molecular Probes、Eugene、OR)を含むスライド上に載せて、細胞核を可視化した。陰性対照のために、一次抗体を省いた。
【0408】
蛍光顕微鏡(Axioplan 2;Carl Zeiss Meditec GmbH、Oberkochen、Germany)を使用して、スライドを検査し、画像を捕捉した。実験を、抗体について二度繰り返した。
【0409】
【0410】
実施例2
フルオレセイン蛍光眼底造影(FFA)
対象動物を、3つのコホート(10匹の動物/コホート)に割り当てた。1群あたり10匹の動物において、眼あたり4つの熱傷スポットを使用して、レーザー傷害を0日目に誘導した。
【0411】
3つのコホートに、以下のようにレーザー後8日目および16日目に硝子体内(IVT)経路により注射される以下の処置をそれぞれ投与した:
Eylea+IgG 抗VEGF剤EyleaとIgG(アイソタイプ対照)とを、硝子体内(IVT)経路、0.5μgの1μl用量のレーザー後1週、2週および3週で3回注射により注射した。
Eylea+抗IL-11(低用量) Eyleaと抗IL-11抗体(1μl中の0.5μg)との組合せを、硝子体内(IVT)経路、1μl用量のレーザー後8日目および16日目に2回の注射により注射した。
Eylea+抗IL-11(高用量) Eyleaと抗IL-11抗体(1μl中の2μg)との組合せを、硝子体内(IVT)経路、1μl用量のレーザー後8日目および16日目に2回の注射により注射した。
【0412】
レーザー傷害後であるが、処置前(7日目)に、および療法の終わり(28日目)に、フルオレセイン蛍光眼底造影(FFA)を使用して、脈絡膜血管新生(CNV)を評価した。
【0413】
フルオレセイン蛍光眼底造影(FFA)を、MICRON IV眼底カメラ(Phoenix Laboratories USA)を使用して画像化した。FFAのために、動物に、5~6g体重あたり0.01mlの用量で10%フルオレセインナトリウムを腹腔内注射した。
【0414】
FFAの結果を
図2に見ることができる。漏出の面積は、3つ全ての処置群において7日目よりも28日目において小さかった(
図2a)が、この効果は、Eylea+抗IL-11の併用療法群についてより顕著であった。さらに、本発明者らは、Eyleaと共にCNVを低減する抗IL-11抗体の用量依存的効果を観察する(
図2b)。レーザー傷害は、3つ全ての処置群において28日目までに漏出の低減を示した。この効果は、IgG対照よりもEylea+抗IL-11(低用量)群についてより顕著であり、Eylea+抗IL-11(高用量)は、28日後に最も高い治癒率を示した。
図2aおよび
図2bは、CNVの処置におけるIL-11媒介性シグナル伝達の拮抗作用と血管新生因子の拮抗作用との相乗効果を示す。
【0415】
また、レーザー傷害後7日目および28日目での後眼部光コヒーレンストモグラフィー(PS-OCT)により、網膜構造をリアルタイムでモニタリングした。結果を
図3に見ることができ、これは用量依存的様式で併用療法コホートにおける脈絡膜血管新生の減少を示す。
【0416】
実施例3
線維症面積
線維症面積を、組織病理学検査により上記の動物について処置の終わり(28日目)に測定した。コラーゲンを、Massonのトリクロム染色を用いて染色し、線維症の面積を定量したが、その結果を
図4に見ることができる。Eylea+IgG対照コホートと比較して、低用量および高用量併用療法コホートの両方について、より小さい線維症面積が見られたが、これらの差異は統計的に有意であった。低用量併用療法コホートは、Eylea+IgGコホートよりも小さい線維症面積を示したが、この効果は、高用量コホートについてより顕著であった。したがって、組織病理データは、併用療法が単剤療法のみよりも有効であり、この効果が用量依存的であることを示す。
【0417】
免疫蛍光染色を同時に実施し、その結果を
図5および
図6に見ることができ、これらは併用処置コホートにおける線維症面積の減少の観察を確認するものであった。
【0418】
実施例4
比較調査
動物を、以下のように4つのコホートに割り当てた:
(i)未処置対照
(ii)Eyleaで処置
(iii)抗IL-11抗体で処置
(iv)Eylea+抗IL-11抗体で処置。
【0419】
1群あたり10匹の動物において、眼あたり4つの熱傷スポットを使用して、レーザー傷害を0日目に誘導した。
【0420】
動物に、それらの割り当てられた処置を投与し、レーザー後8日目および16日目に硝子体内(IVT)経路により注射した。
【0421】
レーザー傷害後であるが、処置前(7日目)に、および療法の終わり(28日目)に、フルオレセイン蛍光眼底造影(FFA)を使用して、脈絡膜血管新生(CNV)を評価した。線維症面積を28日目に測定した。
【0422】
その結果、
・未処置対照コホートと比較して、全ての処置コホートにおいて28日目にCNVおよび線維症面積の低下
・単剤療法処置コホートと比較して、Eylea+抗IL-11抗体を用いた処置を受けているコホートにおいて28日目にCNVおよび線維症面積の低下
・相乗的(すなわち、優加法的)効果が観察され、Eylea+抗IL-11抗体を用いた処置を受けているコホートにおけるCNVおよび線維症面積の改善は、合わせた場合の単剤療法コホートにおいて観察された効果の合計よりも大きかったことが示された。
【0423】
まとめ
本明細書における結果は、IL-11アンタゴニスト療法が網膜線維症を劇的に低減することを示す(
図3)。さらに、IL-11アンタゴニストを用いた抗線維症療法はまた、Eyleaの抗血管新生特性に対する有益な効果を有すると考えられる(
図2)。したがって、抗線維症療法は、抗線維症単剤療法を受けているものと比較した、併用療法の網膜線維症と脈絡膜血管新生との両方の顕著な改善によって示されるように、抗血管新生療法との相乗効果を有することが明らかである。
【0424】
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