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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】検出装置および検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20240820BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20240820BHJP
   G01N 24/10 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G01N33/543 525C
G01N33/543 541A
G01N33/543 595
G01N21/64 Z
G01N24/10 510S
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021074310
(22)【出願日】2021-04-26
(65)【公開番号】P2022168681
(43)【公開日】2022-11-08
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸田 裕司
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0048084(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0062957(US,A1)
【文献】特表2020-529595(JP,A)
【文献】特開2018-017701(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0191139(US,A1)
【文献】Dawid Nidzworski,A rapid-response ultrasensitive biosensor for influenza virus detection using antibody modified boron-doped diamond,Scientific Reports,2017年11月16日,7: 15707,pp.1-10,DOI:10.1038/s41598-017-15806-7
【文献】D. R. Glenn,Single cell magnetic imaging using a quantum diamond microscope,Nat Methods.,2015年08月,12(8),pp.736-738,doi:10.1038/nmeth.3449
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48~33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体基板と、
前記誘電体基板の表面の一部を覆い、表面に一次抗体が固定化された薄膜とを有する検出基板と、
前記検出基板と、二次抗体が固定化された磁気ビーズとを有する検出ユニットと、
ダイヤモンド結晶と、
導波体と、
光ピックアップと、
を備え、
前記ダイヤモンド結晶は、ある一面にNVセンタを形成し、
前記導波体は、前記ダイヤモンド結晶の表面のうち、前記NVセンタが形成される表面と反対側の面に位置し、
前記光ピックアップは、前記検出ユニットが備える前記検出基板へ前記ダイヤモンド結晶を透過した光を照射する光源と、前記検出基板の蛍光を検出する検出器を備え、
前記誘電体基板の薄膜が位置する表面で、前記一次抗体と結合した検体に対して結合する、二次抗体が固定化された磁気ビーズを、NVセンタを形成するダイヤモンド結晶を対向させて検出し、
前記二次抗体が固定化された磁気ビーズは、前記誘電体基板の前記薄膜が位置する表面の一端に位置し、検体液の滴下によって移動する、
検出装置。
【請求項2】
前記薄膜は、前記誘電体基板の前記表面上に複数配置される
請求項に記載の検出装置
【請求項3】
誘電体基板と、
前記誘電体基板の表面の一部を覆い、表面に一次抗体が固定化された薄膜とを有する検出基板と、
前記検出基板と、二次抗体が固定化された磁気ビーズとを有する検出ユニットと、
ダイヤモンド結晶と、
導波体と、
光ピックアップと、
を備える検出装置による検出方法であって、
前記ダイヤモンド結晶は、ある一面にNVセンタを形成し、
前記導波体は、前記ダイヤモンド結晶の表面のうち、前記NVセンタが形成される表面と反対側の面に位置し、
前記光ピックアップは、前記検出ユニットが備える前記検出基板へ前記ダイヤモンド結晶を透過した光を照射する光源と、前記検出基板の蛍光を検出する検出器を備え、
前記誘電体基板の薄膜が位置する表面で、前記一次抗体と結合した検体に対して結合する、二次抗体が固定化された磁気ビーズを、NVセンタを形成するダイヤモンド結晶を対向させて検出し、
前記二次抗体が固定化された磁気ビーズは、前記誘電体基板の前記薄膜が位置する表面の一端に位置し、検体液の滴下によって移動する、
検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検出装置および検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、検体と二次抗体とを含む水溶液を一次抗体が固定化された基板へ滴下し、一次抗体と二次抗体とにサンドイッチされた検体を、二次抗体と結合した色素や蛍光物質によって検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-230221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、検体の量が不十分である場合、色素の変化を確認することが難しく、正しく検出されないおそれがある。このように、検出精度には改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの態様に係る検出基板は、誘電体基板と、前記誘電体基板の表面の一部を覆い、マイクロ波を照射する導波体と、前記誘電体基板の前記導波体が位置する表面側に位置し、前記導波体と接触する面と反対側の表面にNVセンタが形成されるダイヤモンド結晶と、前記ダイヤモンド結晶の前記NVセンタが形成される表面を覆い、前記表面に一次抗体が固定化された薄膜とを備え、前記ダイヤモンド結晶の前記NVセンタが形成される表面で、前記一次抗体を結合した検体に対して結合する、二次抗体が固定化された磁気ビーズを検出する。
【0006】
1つの態様に係る検出ユニットは、上記の検出基板と、第2誘電体基板と、前記二次抗体が固定化された磁気ビーズとを有する検出ユニットであって、前記第2誘電体基板は、前記検出基板が嵌るように位置する凹部を有し、前記第2誘電体基板の上面は、前記検出基板の上面と平坦になるように接続され、前記二次抗体が固定化された磁気ビーズは、前記第2誘電体基板の上面に配置され、検体液の滴下によって移動する。
【0007】
1つの態様に係る検出装置は、上記の検出ユニットと、光ピックアップとを有する検出装置であって、前記光ピックアップは、前記検出ユニットが備える前記検出基板へ光を照射する光源と、前記検出基板の蛍光を検出する検出器とを備える。
【0008】
1つの態様に係る検出基板は、誘電体基板と、前記誘電体基板の表面の一部を覆い、表面に一次抗体が固定化された薄膜とを備え、前記誘電体基板の薄膜が位置する表面で、前記一次抗体と結合した検体に対して結合する、二次抗体が固定化された磁気ビーズを、NVセンタを形成するダイヤモンド結晶を対向させて検出する。
【0009】
1つの態様に係る検出ユニットは、上記の検出基板と、前記二次抗体が固定化された磁気ビーズとを有する検出ユニットであって、前記二次抗体が固定化された磁気ビーズは、前記誘電体基板の前記薄膜が位置する表面の一端に位置し、検体液の滴下によって移動する。
【0010】
1つの態様に係る検出装置は、上記の検出ユニットと、前記ダイヤモンド結晶と、導波体と、光ピックアップとを有する検出装置であって、前記ダイヤモンド結晶は、ある一面にNVセンタを形成し、前記導波体は、前記ダイヤモンド結晶の表面のうち、前記NVセンタが形成される表面と反対側の面に位置し、前記光ピックアップは、前記検出ユニットが備える前記検出基板へ光を照射する光源と、前記検出基板の蛍光を検出する検出器を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示の1つの態様に係る検出装置および検出方法によれば、検体の量によらず、高精度に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1実施形態に係る検出基板の断面図である。
図2図2は、第1実施形態に係る検出基板における薄膜の配置の一例を説明する概略図である。
図3図3は、第1実施形態に係る検出ユニットの断面図である。
図4図4は、第1実施形態に係る検出装置を使用した検出工程を説明する図である。
図5図5は、第1実施形態に係る検出装置を使用した検出工程を説明する図である。
図6図6は、第1実施形態に係る検出装置を使用した検出工程を説明する図である。
図7図7は、第2実施形態に係る検出装置の断面図である。
図8図8は、第2実施形態の変形例に係る検出装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に第1実施形態に係る検出装置および検出方法について説明する。検出装置および検出方法は、検体を検出するためのものである。
【0014】
[第1実施形態]
(検出基板)
図1は、第1実施形態に係る検出基板10の断面図である。図1に示すように、検出基板10は、検体である検体液Xに含まれる抗原Yの一次抗体17が配置された基板である。検出基板10は、テストラインを構成する。検出基板10は、誘電体基板11と、アンテナ導体12と、導波体13と、ダイヤモンド結晶14と、薄膜16とを備える。
【0015】
誘電体基板11は、表面11aにアンテナ導体12と導波体13とが形成される。誘電体基板11は、例えばSiO、ガラス材料、セラミックス材料、ガラスエポキシなどの樹脂系材料で形成される。誘電体基板11は、板状に形成される。
【0016】
アンテナ導体12は、ダイヤモンド結晶14のNVセンタ15に照射するマイクロ波を伝送する。アンテナ導体12は、誘電体基板11の表面11aと、ダイヤモンド結晶14の面14bとの間に介在する。アンテナ導体12は、誘電体基板11の表面11aの法線方向視(以下、「平面視」という。)において、例えばリング状である。
【0017】
導波体13は、高周波線路導体である。導波体13は、誘電体基板11の表面11aの一部を覆い、ダイヤモンド結晶14のNVセンタ15にマイクロ波を照射する。導波体13は、誘電体基板11の表面11aとダイヤモンド結晶14の面14bとの間に介在する。導波体13は、アンテナ導体12によって伝送されるマイクロ波が伝送される。導波体13は、例えばSiO、ガラス材料、セラミックス材料、ガラスエポキシなどの樹脂系材料で形成される。
【0018】
ダイヤモンド結晶14は、いわゆるダイヤモンドセンサである。ダイヤモンド結晶14は、誘電体基板11の導波体13が位置する表面11a側に位置する。ダイヤモンド結晶14は、導波体13と接触する面14bと反対側の表面14a側にNVセンタ15が形成される。表面14aには、一次抗体17が固定化される。
【0019】
ダイヤモンド結晶14は、1辺の長さd11が例えば200μmである。ダイヤモンド結晶14は、厚さd12が例えば100μmである。
【0020】
NVセンタ15は、ダイヤモンド結晶14の表面14a側に単一で配置されていても、複数を配列してもよい。本実施形態では、図1等においては、NVセンタ15が複数を配列される状態を図示している。
【0021】
NVセンタ15は、ダイヤモンド結晶14において、本来は炭素が存在するべきところが窒素で置換され、隣接する位置に空孔がある複合欠陥である。NVセンタ15は、縮退する共有電子対の一部が欠損する。NVセンタ15は、ゼロ磁場においてm=0とm=±1の2つの準位の軌道角運動量を持った電子を有する。m=±1の電子は磁気モーメントを持つため外部磁場の影響を受け、m=±1の縮退も解け、さらに2つのエネルギー準位を有する。これらに起因する電子スピン共鳴を光波およびマイクロ波を用いて検知することにより外部磁場の強度を検出可能である。
【0022】
NVセンタ15の電子は、532nmの波長の光で励起され、緩和の過程で638nmの波長の蛍光を放出する。この蛍光過程は電子スピン共鳴周波数においては起こりにくい。そのため、この性質を用いることにより、m=±1の電子の状態を観測することができる。ダイヤモンド結晶14のNVセンタ15では、ゼロ磁場における電子スピン共鳴周波数が約2.87GHzと知られている。この共鳴点の周波数(共鳴周波数)のマイクロ波が照射されたときに638nmの波長の蛍光が消光する。また、外部磁場の大きさ等に応じたm=±1の電子の状態の変化により、マイクロ波の共鳴周波数が変化する。そして、この変化を蛍光強度の周波数変化により捉えることで、磁場を検出可能である。
【0023】
薄膜16は、ダイヤモンド結晶14のNVセンタ15が形成される表面14aを覆う。薄膜16は、周縁部の少なくとも一部がダイヤモンド結晶14の表面14aに隣接する。薄膜16は、例えば矩形状、円形状及び多角形状など様々な形状にすることが可能である。薄膜16は、例えばAu、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、酢酸ビニルとビニルアミンコポリマー、セルロースとその誘導体、多糖類、コラーゲン、ポリアミノ酸等の親水性ポリマーで形成される。
【0024】
図2は、第1実施形態に係る検出基板10における薄膜16の配置の一例を説明する概略図である。図2は、検出基板10を平面視した図である。図2に示すように、薄膜16は、ダイヤモンド結晶14の表面14a上に1つ以上が配置される。薄膜16は、表面14a上に周期的に配置されていてもよい。本実施形態では、薄膜16は、表面14a上に格子状に配置される。検出基板10の各辺の方向において、ダイヤモンド結晶14の表面14aと薄膜16とが交互に露出している。本実施形態では、表面14a上に10×10個の薄膜16が配置される。薄膜16は、1辺の長さd21が例えば1μmである。検出基板10の各辺の方向において隣接する薄膜16の間隔は、例えば1μmである。
【0025】
一次抗体17は、抗原Yの一次抗体である。一次抗体17は、1つの薄膜16上に1個以上1000個以下が配置される。一次抗体17は、薄膜16上の全面を覆ってもよい。一次抗体17は、後述する磁気ビーズ23及び二次抗体22とは離れて配置される。
【0026】
このように形成された検出基板10は、ダイヤモンド結晶14のNVセンタ15が形成される表面14aにおいて、一次抗体17を結合した検体(図3に示す、検体液X中の抗原Y)に対して結合する、二次抗体22が固定化された磁気ビーズ23を検出する。
【0027】
(検出ユニット)
図3は、第1実施形態に係る検出ユニット20の断面図である。検出ユニット20は、後述する検出装置40のプレパラートとして機能する。検出ユニット20は、検出基板10と、第2誘電体基板21と、二次抗体22が固定化された磁気ビーズ23とを有する。第2誘電体基板21は、検出基板10が嵌るように位置する凹部24を有する。第2誘電体基板21の上面である表面21aは、検出基板10の上面と平坦になるように接続される。
【0028】
第2誘電体基板21は、検出基板10を支持する支持基板である。第2誘電体基板21は、検出基板10にマイクロ波信号を伝送する導波体と導波体に接続されるアンテナ導体とが含まれる。第2誘電体基板21は、板状に形成される。第2誘電体基板21の表面21aの中央部に検出基板10が配置される。第2誘電体基板21は、例えばSiO、ガラス材料、セラミックス材料、ガラスエポキシなどの樹脂系材料で形成される。第2誘電体基板21は、板状に形成される。第2誘電体基板21は、誘電体基板11と一体に形成されていてもよい。
【0029】
第2誘電体基板21の表面21aの一端側には、二次抗体22が位置する。二次抗体22は、抗原Yの二次抗体である。二次抗体22は、第2誘電体基板21の表面21a上に配置された磁気ビーズ23に固定される。
【0030】
磁気ビーズ23は、第2誘電体基板21の表面21aの一端に配置される。磁気ビーズ23は、検体液Xの滴下によって他端方向に移動する、二次抗体22が固定化される。1つの磁気ビーズ23の表面には、二次抗体22が1個以上固定化される。磁気ビーズ23は、粒径が例えば30nm以上60nm以下である。磁気ビーズ23は、表面が親水性ポリマーによりコーティングされたFe、Feなどの酸化鉄である。
【0031】
凹部24は、第2誘電体基板21の表面21aに凹状に形成される。凹部24には、検出基板10が嵌る。凹部24は、第2誘電体基板21の表面21aの中間部に配置される。凹部24は、二次抗体22及び磁気ビーズ23が配置された位置から離れている。
【0032】
吸収パッド25は、第2誘電体基板21の表面21aの他端に配置される。吸収パッド25は、第2誘電体基板21の表面21a上を流れ着いた、検体液X及び磁気ビーズ23に固定化された二次抗体22を吸収する。吸収パッド25は、検出基板10の一次抗体17と結合しなかった、検体液X及び磁気ビーズ23に固定化された二次抗体22を吸収する。吸収パッド25は、凹部24から離れて配置される。
【0033】
第2誘電体基板21の表面21aにおいて、凹部24を挟んで、磁気ビーズ23に固定化された二次抗体22と、吸収パッド25とが配置される。二次抗体22が固定化された磁気ビーズ23は、第2誘電体基板21の表面21aに配置され、検体液Xの滴下によって移動する。
【0034】
(検出装置)
検出装置40は、検体液Xに含まれる抗原Yを検出する。図3に示すように、検出装置40は、検出ユニット20と、光ピックアップ30とを有する。
【0035】
光ピックアップ30は、検出基板10に向かい合って配置される。光ピックアップ30は、ダイヤモンド結晶14のNVセンタ15に光を入出力する。光ピックアップ30は、検出基板10の磁気を検出する。本実施形態では、光ピックアップ30は、検出基板10上を走査しながら検出する。光ピックアップ30は、光源である発光素子31と、検出器である受光素子32とを有する。光ピックアップ30は、図示しない制御回路によって制御される。制御回路は、発光素子31における発光を制御する。制御回路は、受光素子32における受光を制御する。制御回路は、受光素子32が受光した赤色蛍光の信号を処理する。制御回路は、結果として磁場の強度を出力する。
【0036】
発光素子31は、検出ユニット20が備える検出基板10へ光を照射する。発光素子31は、レーザダイオードである。発光素子31は、制御回路の制御に基づいて、例えば波長527nmのレーザ光を発光する。発光素子31は、緑色の励起光を発光する。発光素子31は、ダイヤモンド結晶14を照射する励起光を発光する。
【0037】
受光素子32は、検出基板10の蛍光を検出する。受光素子32は、フォトダイオードである。受光素子32は、制御回路の制御に基づいて、ダイヤモンド結晶14のNVセンタ15の蛍光を受光する。受光素子32は、蛍光を受光する。受光素子32は、励起光により発する蛍光を、ダイヤモンド結晶14から受光する。
【0038】
(検出方法)
図4ないし図6を参照して、検出ユニット20を使用した、ウィルス等の抗原Yの検出方法について説明する。図4は、第1実施形態に係る検出装置40を使用した検出工程を説明する図である。図5は、第1実施形態に係る検出装置40を使用した検出工程を説明する図である。図6は、第1実施形態に係る検出装置40を使用した検出工程を説明する図である。まず、図4に示すように、第2誘電体基板21上の磁気ビーズ23及び二次抗体22に、ウィルス等の抗原Yの検体液Xを滴下する。
【0039】
図5に示すように、検体液Xは、抗原Yの一部が二次抗体22と結合する。滴下された検体液Xは、抗原Yの一部が二次抗体22と結合した状態で、第2誘電体基板21上で拡散する。これにより、検出基板10の複数の薄膜16上に磁気ビーズ23が付着する。検体液Xは、検出基板10を経由して、吸収パッド25側へと流れる。
【0040】
図6に示すように、二次抗体22と結合した抗原Yは、一次抗体17とサンドイッチ状に結合して、結合部Qが形成される。結合部Qは、抗原Yが一次抗体17と二次抗体22とによって挟まれる。結合部Qは、第2誘電体基板21に近い順に、一次抗体17、抗原Y、二次抗体22、磁気ビーズ23の順番で配置される。結合部Qは、第2誘電体基板21から最も離れた位置に磁気ビーズ23が位置する。結合部Qでは、検体液Xにおける抗原Yの濃度に応じた数の磁気ビーズ23が結合する。
【0041】
抗原Yと結合しなかった磁気ビーズ23は、第2誘電体基板21において、薄膜16上に留まらず、検体液Xを滴下した位置とは反対側の端部に位置する吸収パッド25へ向かって移動する。
【0042】
一次抗体17が固定されていた位置に、検出用プローブである光ピックアップ30を近接または当接させる。それ以前に、磁気ビーズ23に磁場が印加される。磁気ビーズ23は、磁気を帯びている。磁気ビーズ23の磁界が、NVセンタ15に作用する。より詳しくは、磁気ビーズ23の磁界は、薄膜16に隣接して配置された、ダイヤモンド結晶14の表面14aが露出した部分のNVセンタ15に作用する。光ピックアップ30は、ダイヤモンド結晶14の表面14aが露出した部分のNVセンタ15の電子スピン共鳴信号を蛍光で受光する。これにより、光ピックアップ30は、被測定物である結合部Qの磁気ビーズ23の磁荷を検出する。光ピックアップ30によって、磁気ビーズ23の数に応じて濃度が検出される。制御装置は、光ピックアップ30の検出結果である信号から、磁場の強度を算出し結果として出力する。
【0043】
(効果)
以上により、本実施形態では、ダイヤモンド結晶14の表面14a上に配置された薄膜16には、一次抗体17が配置される。本実施形態では、ダイヤモンド結晶14の表面14aで、一次抗体17を結合した検体に対して結合する、二次抗体22が固定化された磁気ビーズ23を検出する。本実施形態によれば、NVセンタ15を用いることにより、微弱な磁界を検出できる。このように、本実施形態は、検体の量が少なくても高精度に検出できる。
【0044】
本実施形態では、ダイヤモンド結晶14が検出基板10に一体化される。本実施形態は、検出装置40の構成を簡素化できる。
【0045】
本実施形態では、検出基板10は、第2誘電体基板21の凹部24に嵌っている。本実施形態では、第2誘電体基板21上に磁気ビーズ23及び二次抗体22が固定化される。本実施形態によれば、ダイヤモンド結晶14を用いる領域を低減できる。
【0046】
本実施形態は、光ピックアップ30によって、検出基板10へ光を照射し、検出基板10の蛍光を検出する。本実施形態は、検体の量が少なくても高精度に検出できる。
【0047】
本実施形態では、薄膜16は、ダイヤモンド結晶14の表面14a上に複数配置される。本実施形態では、薄膜16は、ダイヤモンド結晶14の表面14a上に例えば周期的に配置される。本実施形態によれば、検体の量が少ない場合でも、いずれかの薄膜16上で、抗原Yが一次抗体17と二次抗体22とにサンドイッチ状に結合する可能性を高めることができる。これにより、本実施形態は、検体の量が少なくても高精度に検出できる。また、本実施形態では、複数の薄膜16において結合部Qに付着する抗原Yの量の検出結果を平均化することにより、再現性よく安定して定量できる。本実施形態は、結合部Qに付着した検体液Xに含まれる抗原Yの数を容易かつ正確に定量できる。
【0048】
本実施形態では、薄膜16は、ダイヤモンド結晶14の表面14a上に格子状に配置される。本実施形態は、薄膜16に隣接して、ダイヤモンド結晶14の表面14aが露出している。言い換えると、本実施形態は、結合部Qに隣接して、ダイヤモンド結晶14の表面14aが露出している。本実施形態は、結合部QとNVセンタ15との距離を小さくできる。本実施形態は、NVセンタ15へ、結合部Qに含まれる磁気ビーズ23の磁界を効率的に作用させることができる。本実施形態は、露出しているダイヤモンド結晶14の表面14aから、NVセンタ15へ光を入出力できる。本実施形態では、結合部QがNVセンタ15に隣接しているので、1つの磁気ビーズ23による磁界のような微弱な磁界でも検出できる。本実施形態によれば、高精度に検出できる。
【0049】
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態に係る検出装置40の断面図である。図7は、誘電体基板11の中間部を図示する。本実施形態では、第2誘電体基板21を有していない点と、ダイヤモンド結晶14の配置とが、第一実施形態と異なる。
【0050】
(検出基板)
検出基板10は、誘電体基板11と、薄膜16とを備える。検出基板10には、ダイヤモンド結晶14を含まない。
【0051】
誘電体基板11は、下側誘電体基板11Aと上側誘電体基板11Bとを備える。本実施形態では、誘電体基板11は、第一実施形態の誘電体基板11及び第2誘電体基板21として機能する。より詳しくは、誘電体基板11の中間部に薄膜16が配置され、一端に二次抗体22が固定化された磁気ビーズ23が配置され、他端に吸収パッド25が配置される。
【0052】
下側誘電体基板11Aは、第一実施形態の誘電体基板11と同様に構成される。
【0053】
上側誘電体基板11Bは、アンテナ導体12を挟んで下側誘電体基板11Aと対向する。上側誘電体基板11Bは、第一実施形態のダイヤモンド結晶14に替えて配置される。上側誘電体基板11Bは、例えばSiO、ガラス材料、セラミックス材料、ガラスエポキシなどの樹脂系材料で形成される。上側誘電体基板11Bは、板状に形成される。
【0054】
アンテナ導体12は、下側誘電体基板11Aと上側誘電体基板11Bとの間に位置する。
【0055】
導波体13は、下側誘電体基板11Aと上側誘電体基板11Bとの間に位置する。
【0056】
薄膜16は、上側誘電体基板11Bの表面11Baの中間部の一部を覆っている。薄膜16は、表面11Baに一次抗体17が固定化される。薄膜16は、上側誘電体基板11Bの表面11Ba上に1つ以上が配置される。薄膜16は、上側誘電体基板11Bの表面11Ba上に周期的に配置される。
【0057】
(検出ユニット)
検出ユニット20は、検出基板10と、二次抗体22が固定化された磁気ビーズ23とを有する。
【0058】
上側誘電体基板11Bの表面11Baの一端側には、二次抗体22が位置する。二次抗体22は、上側誘電体基板11Bの表面11Ba上に配置された磁気ビーズ23に固定される。
【0059】
磁気ビーズ23は、上側誘電体基板11Bの表面11Baの一端に配置される。
【0060】
吸収パッド25は、上側誘電体基板11Bの表面11Baの他端に配置される。吸収パッド25は、上側誘電体基板11Bの表面11Ba上を流れ着いた、検体液X及び磁気ビーズ23に固定化された二次抗体22を吸収する。
【0061】
(検出装置)
検出装置40は、検出ユニット20と、ダイヤモンド結晶14と、光ピックアップ30とを有する。
【0062】
ダイヤモンド結晶14は、薄膜16と対向する。ダイヤモンド結晶14は、薄膜16に近接または密着させる。本実施形態では、ダイヤモンド結晶14と薄膜16との間に、結合部Qが形成される。ダイヤモンド結晶14は、薄膜16と対向する面14b側にNVセンタ15が配置される。
【0063】
光ピックアップ30は、ダイヤモンド結晶14のNVセンタ15の真上から光を入力する。光ピックアップ30は、検出ユニット20が備える検出基板10へ光を照射する光源である発光素子31と、検出基板10の蛍光を検出する検出器である受光素子33とを備える。
【0064】
(検出方法)
上記のように構成された検出ユニット20が備える検出基板10の上側誘電体基板11Bの表面11Ba上の磁気ビーズ23及び二次抗体22に、ウィルス等の抗原Yの検体液Xを滴下する。そして、上側誘電体基板11Bの薄膜16が位置する表面11Baで、一次抗体17と結合した検体に対して結合する、二次抗体22が固定化された磁気ビーズ23を、NVセンタ15を形成するダイヤモンド結晶14を対向させて検出する。
【0065】
(効果)
以上により、本実施形態は、ダイヤモンド結晶14は、薄膜16に近接または密着する。これにより、本実施形態は、結合部Qの磁気ビーズ23は、第一実施圭太に比べてNVセンタ15のより近くに位置する。本実施形態は、強度の弱い磁界も検出しやすくできる。本実施形態によれば、より高精度な検出ができる。
【0066】
本実施形態では、検体液Xは、検出基板10の上側誘電体基板11Bの表面11Ba上に滴下される。本実施形態では、ダイヤモンド結晶14には検体液Xが付着しない。本実施形態によれば、磁界検出においてダイヤモンド結晶14を再度使用できる。
【0067】
[変形例]
図8は、第2実施形態の変形例に係る検出装置40の変形例の断面図である。検出装置40は、基本的な構成は第二実施形態と同様である。本実施形態は、誘電体基板11の構成と、アンテナ導体12がダイヤモンド結晶14に配置される点とで、第二実施形態と異なる。
【0068】
誘電体基板11は、1枚の板状である。
【0069】
アンテナ導体12は、ダイヤモンド結晶14の表面のうち、NVセンタ15が形成される表面14bと反対側の表面14aに位置する。本実施形態では、アンテナ導体12は、リング状に形成される。
【0070】
導波体13は、ダイヤモンド結晶14の表面のうち、NVセンタ15が形成される表面14bと反対側の表面14aに位置する。
【0071】
以上により、変形例では、第一実施形態と同様に、ダイヤモンド結晶14のNVセンタ15の近くに位置する導波体13から、NVセンタ15にマイクロ波を照射できる。変形例によれば、検出基板10および検出ユニット20を簡素化できる。
【0072】
本出願の開示する実施形態は、発明の要旨及び範囲を逸脱しない範囲で変更できる。さらに、本出願の開示する実施形態及びその変形例は、適宜組み合わせることができる。
【0073】
添付の請求項に係る技術を完全かつ明瞭に開示するために特徴的な実施形態に関し記載してきた。しかし、添付の請求項は、上記実施形態に限定されるべきものでなく、本明細書に示した基礎的事項の範囲内で当該技術分野の当業者が創作しうるすべての変形例及び代替可能な構成を具現化するように構成されるべきである。
【符号の説明】
【0074】
10 検出基板
11 誘電体基板
11a 表面
12 アンテナ導体
13 導波体
14 ダイヤモンド結晶
14a 表面
14b 面
15 NVセンタ
16 薄膜
17 一次抗体
20 検出ユニット
21 第2誘電体基板
21a 表面
22 二次抗体
23 磁気ビーズ
24 凹部
25 吸収パッド
30 光ピックアップ
31 発光素子
32 受光素子
40 検出装置
X 検体液
Y 抗原
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8