(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】タバコを燃焼させずに加熱する装置のためのバルク固体再構成植物組成物
(51)【国際特許分類】
A24B 15/14 20060101AFI20240820BHJP
A24B 15/167 20200101ALI20240820BHJP
【FI】
A24B15/14
A24B15/167
(21)【出願番号】P 2021532068
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(86)【国際出願番号】 EP2019083736
(87)【国際公開番号】W WO2020115166
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-11-04
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】518100443
【氏名又は名称】エスダブリュエム・ルクセンブルク
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ドリアーヌ・ビゴー
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・ビヨン
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・ジャルダン
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-529383(JP,A)
【文献】特公昭45-037080(JP,B1)
【文献】特開平06-046817(JP,A)
【文献】米国特許第04144894(US,A)
【文献】特表2017-518755(JP,A)
【文献】特表2018-515119(JP,A)
【文献】特表平11-503912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B 15/14
A24B 15/167
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 植物抽出物、
- 叩解植物繊維、及び
- エアロゾル発生剤
を含むバルク固体再構成植物組成物であって、
その密度が、200mg.cm
-3~250mg.cm
-3であり、
前記植物抽出物が、前記バルク固体再構成植物組成物の乾物の、15質量%~30%質量%を示し、
前記叩解植物繊維が、前記バルク固体再構成植物組成物の乾物の、50質量%~60%質量%を示し、
前記エアロゾル発生剤が、前記バルク固体再構成植物組成物の乾物の、12質量%~30質量%を示す、
バルク固体再構成植物組成物。
【請求項2】
前記植物繊維が、叩解されており、20°~90°のSR度を有する、請求項1に記載のバルク固体再構成植物組成物。
【請求項3】
前記エアロゾル発生剤が、ソルビトール、グリセロール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、乳酸、二酢酸グリセリル、三酢酸グリセリル、クエン酸トリエチル若しくはミリスチン酸イソプロピル、又はそれらの混合物である、請求項1又は2に記載のバルク固体再構成植物組成物。
【請求項4】
前記植物が、胞子産生植物、種子産生植物及びそれらの混合物から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のバルク固体再構成植物組成物。
【請求項5】
前記植物が、タバコ植物である、請求項1~4のいずれか一項に記載のバルク固体再構成植物組成物。
【請求項6】
前記植物が、ニンニク、コーヒー、ショウガ、カンゾウ、ルイボス、ステビア・レバウディアナ(Stevia rebaudiana)、茶、カカオノキ、カモミール、マテ、バジル、ウコン、クローブ、ゲッケイジュ、オレガノ、ミント、ローズマリー、セージ、タイム、ラベンダー、バラ、ユーカリノキ、イチョウ、ニンジン、サンカオウトウ、ペパーミント、ヤナギ、赤ブドウ、及びそれらの混合物から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のバルク固体再構成植物組成物。
【請求項7】
前記植物が、ルイボスである、請求項6に記載のバルク固体再構成植物組成物。
【請求項8】
前記植物が、コーヒーである、請求項6に記載のバルク固体再構成植物組成物。
【請求項9】
前記植物抽出物が、前記バルク固体
再構成植物組成物の乾物の25質量%~30質量%を示す、請求項1~8のいずれか一項に記載のバルク固体再構成植物組成物。
【請求項10】
請求項1~9に記載のバルク固体再構成植物組成物を製造する方法であって、以下の工程:
a)叩解植物繊維を植物抽出物及びエアロゾル発生剤と混合して、固体組成物を得る工程、
b)前記固体組成物を成形して、成形された固体組成物を得る工程、及び
c)前記成形された固体組成物を乾燥して、前記バルク固体再構成植物組成物を生成する工程
を含む、方法。
【請求項11】
前記乾燥する工程c)が、熱風乾燥、凍結乾燥、超低温凍結、凍結によって実行される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記叩解植物繊維及び前記植物抽出物が、以下の工程:
a1)1つ又は複数の植物の部分を溶媒と混合して、植物繊維から植物抽出物を抽出する工程、
a2)前記植物繊維から前記植物抽出物を分離して、前記植物抽出物を得る工程、及び
a3)前記植物繊維を叩解して、前記叩解植物繊維を得る工程
にしたがって得られる、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記溶媒が、水性溶媒である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程a1)の間の前記溶媒の温度が、10℃~100℃である、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
タバコを燃焼させずに加熱する装置における、請求項1~9のいずれか一項に記載のバルク固体再構成植物組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タバコを燃焼させずに加熱する装置の分野にあり、前記発明の主題は、バルク固体再構成植物組成物(bulk solid reconstituted plant composition)であり、その容積は、前記加熱装置に好適である。
【背景技術】
【0002】
タバコの燃焼中、有害成分の形成を回避するために、多数のタバコを燃焼させずに加熱する装置が開発されてきている。例として、WO2013/178769の番号で公開されている出願に言及できる。そのような装置では、エアロゾルを発生するために、エアロゾル発生剤を含むタバコスティックを熱風が通過する。発生したエアロゾルは、紙巻きタバコの煙の代わりとなり、タバコの芳香を含む。したがって、これによって喫煙者は、非常に著しく有害成分への曝露を減少させると同時に、タバコの芳香を吸入できる。
【0003】
再構成タバコは、これらの加熱装置にとって天然のタバコより好適であるが、なぜなら、天然のタバコと異なり、それは、エアロゾル発生剤を容易に吸収し放出することができ、したがって使用者とって満足な感覚受容特性を有するエアロゾルを容易に発生するからである。
【0004】
タバコを燃焼させずに加熱する装置のためのタバコスティックは、切り刻まれた再構成タバコの葉を囲む包み(紙、タバコ、アルミニウム等)を含む。したがってこれらのタバコスティックの製造は、非常に多くの工程が必要であるため、長時間かかり限定的である。
【0005】
更に、これらのスティックは、タバコを燃焼させずに加熱する装置に導入すること、及びそこから取り出すことが難しい場合がある。これは、これらのスティックが使用者に取り扱われ、装置で加熱される際に、これらのスティックが崩れる場合があり、又は崩壊しさえするためである。この難点は、装置の使用者に一定の欲求不満を引き起こしかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】The Agence Nationale de Securite du Medicament (ANSM) [French National Agency for Drug and Health Product Safety]、「French Pharmacopoeia」、2016年1月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、製造しやすく使用しやすいタバコスティックの必要性がある。
【0009】
これらの加熱装置の使用者に、タバコの芳香とは異なる芳香を届けることも有利であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、
- 植物抽出物、
- 叩解(refined)植物繊維、及び
- エアロゾル発生剤、
を含み、
その密度が、200mg.cm-3~550mg.cm-3であるバルク固体再構成植物組成物を開発した。
【0011】
有利には、本発明のバルク固体組成物は粘着性があり、熱風がその容積を通過することを可能にする。
【0012】
本発明のバルク固体組成物は、粘着性があるので、崩れず且つ崩壊せず、それ自体で直接的に使用できる。したがって、タバコを燃焼させずに加熱する装置の使用者が、非常に簡単に使用できる。
【0013】
理論に拘泥することは望まないが、本発明者らは、熱風が本発明のバルク固体組成物の容積を通過するように、叩解植物繊維が、バルク固体組成物内に粘着性があるチャネルのネットワークを創出するという意見を持っている。
【0014】
バルク固塊の容積を通過する熱風と接触すると、植物の芳香を含むエアロゾルが、有利にはバルク固体組成物の植物抽出物及びエアロゾル発生剤によって発生する。バルク固体組成物を変えることによって、使用者は、バルク固体組成物によって発生されるエアロゾルの芳香を簡単に変えることができる。
【0015】
更に、植物抽出物及びエアロゾル発生剤は、本発明によるバルク固体再構成植物組成物中に均一に分布している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本出願の目的で、「バルク固体組成物」という用語は固体組成物を指し、その形態は容積であり、すなわちその形態は三次元である。本出願の目的で、シートは二次元の形態であるため、容積ではない形態である。
【0017】
典型的には、バルク固体組成物の形態は、円錐、プリズム、ピラミッド、円柱又は球であり得る。典型的には、バルク固体組成物の形態は、円柱、又は立方体、直方体、底面が三角形の直角柱若しくは正三角柱から選択されるプリズムであってもよい。
【0018】
本発明によるバルク固体組成物は、200mg.cm-3、210mg.cm-3、215mg.cm-3、220mg.cm-3、225mg.cm-3、230mg.cm-3、235mg.cm-3、240mg.cm-3、245mg.cm-3の値から選択される密度の最小値Dmin、及び250mg.cm-3、275mg.cm-3、300mg.cm-3、325mg.cm-3、350mg.cm-3、375mg.cm-3、400mg.cm-3、425mg.cm-3、475mg.cm-3、500mg.cm-3、525mg.cm-3、550mg.cm-3の値から選択される密度の最大値Dmaxの密度を有することができる。
【0019】
一実施形態によると、本発明のバルク固体組成物は、200mg.cm-3~250mg.cm-3の密度、特に220mg.cm-3~240mg.cm-3の密度、最も特に230mg.cm-3~235mg.cm-3の密度を有することができる。
【0020】
本発明のバルク固体組成物の密度は、バルク固体組成物に含まれる叩解植物繊維の乾物の、質量による含有量に一部依存する。
【0021】
Spfは、バルク固体組成物中の叩解植物繊維の乾物の質量パーセントであるとして、Spfmin<SPf<Spfmaxであり、Spfmin及びSpfmaxパーセントは、互いにそれぞれ独立に選択され、Spfminは、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%及び50%の値から選択され、Spfmaxは、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%及び85%の値から選択される。
【0022】
典型的には、バルク固体組成物中の叩解植物繊維の乾物の質量パーセントは、15%~85%であり、特に25%~75%であり、特に50%~60%である。
【0023】
本発明によるバルク固体組成物の植物繊維は、叩解されている。したがってそれらは、ショッパーリグラー(SR)度を有し、ショッパーリグラー度の最小値SRminは、20°、30°、35°、40°、45°、50°、55°の値から選択され、ショッパーリグラー度の最大値SRmaxは、60°、65°、70°、75°、80°、85°、90°の値から選択される。
【0024】
一実施形態によると、叩解植物繊維は、20°~90°、特に40°~70°、特に55°~65°のショッパーリグラー度を有することができる。
【0025】
有利には、これらの値の範囲内のSR度を示す叩解植物繊維を有するバルク固体組成物を加熱することによって発生するエアロゾルの容積は、使用者にとって満足であり、快い感覚受容特性を有することができる。更に、バルク固体組成物の形態は、バルク固体組成物を容易に取り扱うことができるように保存し得る。これらの値の範囲内のSR度を示す叩解植物繊維を有するバルク固体組成物は、加熱装置の使用者にいかなる欲求不満も引き起こさない。
【0026】
本発明の目的で、「植物抽出物」は、すべての植物の水溶性製品を指す。有利には、植物抽出物は、バルク固体組成物を加熱することによって形成されるエアロゾルに、感覚受容特性及び/又は治療特性を付与する化合物を含む。
【0027】
バルク固体組成物を加熱することによって形成されるエアロゾルの感覚受容特性の強度及び/又は治療特性の効力は、本発明のバルク固体組成物に含まれる、植物抽出物の乾物の質量による含有量に依存する場合がある。
【0028】
Spは、バルク固体組成物中の植物抽出物の乾物の質量パーセントであるとして、SPmin<SP<SPmaxであり、SPmin及びSPmaxパーセントは、互いにそれぞれ独立に選択され、SPminは、5%、10%、15%、20%、25%、30%の値から選択され、SPmaxは、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%及び75%の値から選択される。
【0029】
典型的には、バルク固体組成物中の植物抽出物の乾物の質量パーセントは、5%~75%であり、特に15%~60%であり、特に25%~30%である。
【0030】
SPを測定するために、以下の方法を使用してもよい。
【0031】
分析すべきバルク固体組成物を、1mm以下の粒径を得るために粉砕する。粉砕されたバルク固体組成物を、次いですべての植物抽出物を抽出するために、45分間熱湯と混合する。SPを、分析すべきバルク固体組成物の試料の乾物の質量と、抽出後の繊維残渣の乾物の質量との差によって計算する。
【0032】
本出願の目的で、「エアロゾル発生剤」という用語は、例えば熱風と接触して加熱された際、エアロゾルの形成を可能にする化合物を指す。
【0033】
典型的には、エアロゾル発生剤は、ポリオール、非ポリオール、又はそれらの混合物であってもよい。典型的には、ポリオールである発生剤は、ソルビトール、グリセロール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、又はそれらの混合物であってもよい。典型的には、非ポリオールである発生剤は、乳酸、二酢酸グリセリル、三酢酸グリセリル、クエン酸トリエチル若しくはミリスチン酸イソプロピル、又はそれらの混合物であってもよい。
【0034】
一実施形態によると、エアロゾル発生剤は、グリセロール、プロピレングリコール、又はグリセロール及びプロピレングリコールの混合物であり、グリセロールが好ましい。
【0035】
SAGは、バルク固体組成物中のエアロゾル発生剤の乾物の質量パーセントであるとして、SAGmin<SAG<SAGmaxであり、SAGmin及びSAGmaxパーセントは、互いにそれぞれ独立に選択され、SAGminは、5%、10%、15%、20%、25%及び30%の値から選択され、SAGmaxは、30%、35%、40%、45%、50%の値から選択される。
【0036】
典型的には、バルク固体組成物中のエアロゾル発生剤の乾物の質量パーセントは、5%~50%であり、特に10%~40%であり、特に12%~30%である。
【0037】
有利には、バルク固体組成物を加熱することによって発生し、これらの値の範囲内のSAGを有するエアロゾルの容積は、満足なものである。したがって、バルク固体組成物は、加熱装置の使用者にいかなる欲求不満も引き起こさない。
【0038】
特定の一実施形態によると、Spfは25%~75%であり、SPは15%~60%であり、SAGは12%~30%であり、Spf、SP及びSAGの合計は、75%より大きく、特に90%より大きく、特に99%より大きい。
【0039】
典型的には、本発明のバルク固体組成物は、5%~30%、特に7.5%~25%、典型的には10%~20%の残水含有量を有することができる。
【0040】
有利には、そのような残水含有量は、水を装填した高温のエアロゾルを吸入することによって引き起こされる、口及び/又は咽頭を火傷させる現象(前記現象は、ホットパフ(hot puff)として公知である)を回避することを可能にする。
【0041】
叩解植物繊維及び植物抽出物は、胞子産生植物、種子産生植物、又はそれらの混合物より選択される植物から得ることができる。特に、植物は、タバコ植物、食用植物、芳香植物、よい香りの植物、薬用植物、及びそれらの混合物より選択される植物であってもよく、最も特に植物は、タバコ植物であってもよい。
【0042】
有利には、植物の混合物から得られる植物抽出物によって、広範なパネルの感覚受容特性を提供することが可能になる。また、植物の混合物によって、例えばタバコ植物、芳香植物、又はよい香りの植物等の、別の植物の快い感覚受容特性を伴う、例えば薬用植物等の植物の不快な感覚受容特性を相殺することが可能になる。
【0043】
有利には、植物を混合して叩解植物繊維を得ることによって、例えば密度又は容積等の本発明のバルク固体組成物の特定の特性に適合することが可能になる。
【0044】
植物がタバコ植物である場合、叩解タバコ繊維及びタバコ抽出物は、例えばバージニア種タバコ、バーレー種タバコ、空気乾燥(air-cured)タバコ、暗色空気乾燥(dark air-cured)タバコ、オリエント種タバコ、日干し乾燥(sun-cured)タバコ、火力乾燥(fire-cured)タバコ、又はそれらの混合物等の、任意のタバコ植物又はタバコの種類から得ることができる。
【0045】
典型的には、食用植物は、ニンニク、コーヒー、ショウガ、カンゾウ、ルイボス、ステビア・レバウディアナ(Stevia rebaudiana)、茶、カカオノキ、カモミール、マテである。
【0046】
典型的には、芳香植物は、バジル、ウコン、クローブ、ゲッケイジュ、オレガノ、ミント、ローズマリー、セージ、タイムである。
【0047】
典型的には、よい香りの植物は、ラベンダー、バラ、ユーカリノキである。
【0048】
典型的には、薬用植物とは、「伝統的に使用されている薬用植物のリストA」(『フランス薬局方』、Agence Nationale de Securite du Medicament(ANSM)[フランス医薬品・保健製品安全庁]、2016年1月出版)という文書で示されているもの、又は治療特性を有する化学化合物を含むことが公知の植物である。典型的には、列挙される薬用植物は、イチョウ、ニンジン、サンカオウトウ、ペパーミント、ヤナギ及び赤ブドウである。治療特性を有する化学化合物を含むことが公知の植物は、例えばユーカリノキ、アサ科の植物である。
【0049】
植物が薬用植物であれば、本発明のバルク固体組成物は、治療特性を有する。バルク固体組成物を加熱することによって発生するエアロゾルはまた、バルク固体組成物が治療処置に使用できるように、治療特性を有することができる。
【0050】
典型的には、本発明のバルク固体組成物の叩解植物繊維及び植物抽出物は、種々の植物の部分から得ることができ、植物の部分は植物の部分自体、又は種々の植物の部分を加工した結果もたらされるものである。典型的には、植物の部分は、植物のすべての部分、又は植物の部分を脱穀若しくは混合及び細断して生じるくずであってもよい。
【0051】
典型的には、叩解植物繊維は、ある植物から得てもよく、植物抽出物は別の植物から得てもよい。実際、ある植物の繊維は、バルク固体組成物の形成を可能にする機械特性を示さない場合があり、それにもかかわらず、この植物の抽出物は、エアロゾルに望ましい感覚受容特性及び/又は望ましい治療特性を付与する場合がある。反対に、ある植物の繊維は、バルク固体組成物の形成を可能にする機械特性を有する場合があるが、この植物の抽出物は、エアロゾルに望ましい感覚受容特性及び/又は望ましい治療特性を付与しない場合がある。
【0052】
典型的には、植物の部分は、感覚受容特性を担う芳香化学化合物に富む植物の部分から選択され得る。典型的には、これらの部分は、植物全体、花蕾、枝皮、幹皮、葉、花、果実及びその花柄、種子、花弁、頭状花等の植物の地上部、又は例えば鱗茎、根、根皮、根茎、若しくはそれらの混合物等の地下部であってもよい。植物の部分はまた、例えば豆脱粒法によって得られる、カカオ豆を保護する殻等の、1つ若しくは複数の植物の部分の、機械、化学又は機械・化学加工の結果もたらされてもよい。
【0053】
典型的には、タバコ植物の部分は、エアロゾルの感覚受容特性を担う芳香化学化合物に富む部分であり得る。典型的には、タバコ植物の部分は、場合により添加されたタバコ植物の茎を伴う柔組織(葉片)であってもよい。典型的には、タバコ植物の部分は、タバコ植物の葉、又はタバコ植物の葉及び葉脈を脱穀若しくは混合及び細断して、スカフェラティ(scaferlati)(刻みタバコ)にすることによって生じるくずであってもよい。
【0054】
食用植物のうちで、ニンニク鱗茎、コーヒーノキの果実、ショウガ根茎、カンゾウ根及びルイボス、ステビア・レバウディアナ、又は茶の葉を、例えば部分として選択できる。
【0055】
芳香植物のうちで、クローブ花蕾(クローブ)、バジル、ゲッケイジュ及びセージの葉、ミント、オレガノ、ローズマリー並びにタイムの葉及び頭状花、又はウコン根茎を、例えば部分として選択できる。
【0056】
典型的には、よい香りの植物のうちで、ラベンダーの花及び頭状花、又はバラの花蕾及び花弁を選択できる。
【0057】
『フランス薬局方』に列挙された薬用植物のうちで、イチョウ葉、ニンジンの地下部、サンカオウトウの果実の花柄(サクランボの茎)、ペパーミントの葉及び頭状花、ヤナギの幹皮及び葉、又は赤ブドウの葉を例えば選択できる。
【0058】
典型的には、バルク固体組成物はまた、叩解セルロース系植物繊維を含んでもよい。
【0059】
セルロース系植物繊維は、化学又は機械又は熱機械蒸解法によって得られる、木材パルプ、アサ、例えばアマ等の一年草等の繊維である。これらのセルロース系植物繊維の混合物も使用されてもよい。
【0060】
有利には、これらの叩解セルロース系植物繊維は、特にバルク固体組成物の叩解植物繊維の乾物の質量パーセントであるSPfが低い場合に、バルク固体組成物の粘着特性を改善できる。
【0061】
典型的には、本発明によるバルク固体組成物はまた、精油を含んでもよい。有利には、精油は広範なパネルの感覚受容特性を提供することができる。精油は、前記精油の快い感覚受容特性によって、例えば薬用植物等の植物の不快な感覚受容特性を相殺することを可能にできる。
【0062】
一実施形態によると、バルク固体組成物は、少なくとも1つの開放端の孔(open-ended hole)を含んでもよい。この開放端の孔は、熱風がバルク固体組成物を通過するのを容易にすることができる。
【0063】
本発明のバルク固体組成物は、
a)叩解植物繊維を植物抽出物及びエアロゾル発生剤と混合して、固体組成物を得る工程と、
b)前記組成物を成形して、成形された固体組成物を得る工程と、
c)成形された固体組成物を乾燥して、バルク固体再構成植物組成物を製造する工程と
を含む方法によって製造できる。
【0064】
タバコを燃焼させずに加熱する装置のためのタバコスティックを製造する方法とは反対に、本方法は、包みを製造する工程と、再構成タバコの葉を裁刻する工程と、包みを充填する工程とを必要としない。したがって実行するのが簡単である。また、非常に早い。
【0065】
典型的には、工程a)は、叩解植物繊維をミキサーに入れ、植物抽出物及びエアロゾル発生剤を添加し、次いで得られた調製物をミキサーで混合して、固体組成物を得ることによって実行できる。有利には、これによって植物抽出物及びエアロゾル発生剤が、固体組成物中で均一に分布することが可能になる。
【0066】
工程a)は、叩解植物繊維をミキサーに入れ、次いで繊維を混合して、固体前駆組成物を得ることによっても実行できる。植物抽出物及びエアロゾル発生剤は、次いで、含浸又は噴霧により固体前駆組成物に組み込んで、固体組成物を得る。
【0067】
典型的には、成形工程b)は、型を使用して、タバコを燃焼させずに加熱する装置のロッジング(lodging)の形状及び容積に合わせて、固体組成物を成形するが、このロッジングは、タバコを燃焼させずに加熱する装置を使用している間、バルク固体組成物を配置して保持することを意図している。
【0068】
当業者は、その形状及び容積が、タバコを燃焼させずに加熱する装置に合わせて調節されるバルク固体組成物を得るために、型であるダイス型を調節する一方で、バルク固体組成物を製造する方法の工程、特にバルク固体再構成植物組成物の形状及び容積に影響を及ぼし得る乾燥工程c)を考慮に入れる方法を知っているであろう。
【0069】
本発明のバルク固体組成物は、成形工程を含む方法によって得ることができる場合がある。
【0070】
典型的には、乾燥工程c)は熱風乾燥、凍結乾燥、超低温凍結(deep-freezing)、凍結によって実行することができ、特に熱風乾燥又は凍結乾燥によって実行することができる。
【0071】
熱風乾燥は、実施するのに簡単な技術であり、当業者に公知である。
【0072】
典型的には、熱風乾燥は、トンネル乾燥機、縦型乾燥機、流動層乾燥機、気流乾燥機によって実行することができ、特にトンネル乾燥機によって実行することができる。
【0073】
典型的には、熱風乾燥は、10分~120分、特に20分~60分、最も特に25分~35分の期間で実行することができ、熱風の温度は50℃~200℃であり、特に75℃~150℃であり、最も特に90℃~100℃である。
【0074】
有利には、凍結乾燥による乾燥によって容易に成形された固体組成物の形状を保存し、芳香化学化合物又は植物の治療特性を有する化学化合物を分解しないことが可能になる。
【0075】
一実施形態によると、叩解植物繊維及び植物抽出物は、
a1) 1つ又は複数の植物の部分を溶媒と混合して、植物繊維から植物抽出物を抽出する工程と、
a2)植物繊維から植物抽出物を分離する工程と、
a3)植物繊維を叩解する工程と
によって得られる。
【0076】
植物抽出物及び植物繊維は、したがって典型的には解離方法によって得られる。この方法の工程a1)の間、例えば抽出装置中で、1つ又は複数の植物の部分を溶媒と混合して、植物抽出物を抽出する。
【0077】
植物抽出物は、したがって溶媒に可溶であり、解離方法によって得られるすべての植物製品に一致する。
【0078】
典型的には、溶媒は無極性溶媒、非プロトン性極性溶媒、プロトン性極性溶媒、又はそれらの混合物でもよく、特に溶媒は、メタノール、ジクロメタン、エタノール、アセトン、ブタノール、水、又はそれらの混合物でもよく、特に溶媒は、エタノール、アセトン、水又はそれらの混合物である。
【0079】
特定の一実施形態によると、溶媒は、水性溶媒であり、最も特に溶媒は、水である。
【0080】
当業者は、工程a1)の間、溶媒の温度を植物、植物の部分及び、処理されるべき植物の部分に適合させる方法を知っているであろう。典型的には、根又は皮の処理をしている間の溶媒の温度は、葉又は花弁の処理をしている間の溶媒の温度よりも高いであろう。
【0081】
典型的には、工程a1)の間の溶媒の温度は、10℃~100℃でもよく、特に30℃~90℃でもよく、特に50℃~80℃でもよい。
【0082】
溶媒が水であり、植物がタバコである実施形態によると、水の温度は、典型的には30℃~80℃でもよい。典型的には、タバコ植物の茎を処理するための水の温度は、50℃~80℃でもよい。典型的には、タバコ植物の柔組織を処理するための水の温度は、30℃~70℃でもよい。
【0083】
工程a2)の間、植物抽出物は、次いで植物繊維から分離されるが、分離して、一方では植物繊維を、他方では植物抽出物を得るために、例えばスクリュープレス又は遠心分離機に通すことによってなされる。
【0084】
典型的には、実行される叩解工程a3)は、タバコ産業で一般的に使用されている工程である。当業者は、上記のSR度を有する叩解植物繊維を得るために、工程a3)の条件を適合させる方法を知っているであろう。
【0085】
典型的には、植物抽出物は、工程a)の間に、叩解植物繊維及びエアロゾル発生剤と混合する前に濃縮してもよい。真空蒸発装置等の装置を、植物抽出物を濃縮するために使用してもよい。
【0086】
典型的には、叩解植物繊維は濡れていてもよい。本発明の製造方法の工程a)の間、叩解植物繊維を植物抽出物及びエアロゾル発生剤と混合するのを容易にするために、叩解繊維は工程a)の間に混合される前に、乾燥され得る。この乾燥は、例えばプレス又は相分離によって実行できる。
【0087】
有利には、本発明の方法によって、バルク固体再構成植物組成物を製造することが可能となり、その形状及び容積は、タバコを燃焼させずに加熱する装置に好適であり、裁刻工程等の、タバコ産業で通常使用される後続の成形工程を伴わない。したがって、実施するのにより簡単であり、またより早い。
【0088】
本発明のバルク固体再構成植物組成物は、タバコを燃焼させずに加熱する装置に使用できる。
【0089】
本発明の目的で、「タバコを燃焼させずに加熱する装置」という用語は、消費者によって吸入されるためのエアロゾルの形成を可能にする、任意の装置を指す。エアロゾルが煙に取って代わり、それによって喫煙者は、非常に著しく有害成分への曝露を減少させながら、植物の芳香を吸入できる。
【0090】
典型的には、タバコを燃焼させずに加熱する装置は、空気流の方向に、空気入口、加熱部分、本発明のバルク固体再構成植物組成物を配置して保持するためのロッジング、及び使用者の口に導入するための空気出口を備える。空気入口、加熱部分、ロッジング、及び空気出口は、互いに流体接続されている。
【0091】
典型的には、タバコを燃焼させずに加熱する装置を使用する前に、バルク固体組成物が使用者によってロッジングに配置される。タバコを燃焼させずに加熱する装置が使用される際、空気入口を介して、空気が使用者によってタバコを燃焼させずに加熱する装置に吸入される。吸入された空気は、次いで加熱された空気を得るために加熱部分を通過する。ロッジングに保持されたバルク固体組成物と接触すると、エアロゾルが熱風によって形成され、次いで使用者によって吸入される。
【0092】
典型的には、タバコを燃焼させずに加熱する装置はまた、バルク固体組成物を配置して保持するためのロッジングと空気出口との間にフィルターを備える。フィルターによって、使用者がバルク固体組成物の粒子を吸入することを防止することが可能になる。
【0093】
植物抽出物が形成されたエアロゾルに含まれるので、前記エアロゾルはしたがって植物の感覚受容特性を有する。植物が薬用植物であれば、本発明のバルク固体組成物及び形成されたエアロゾルは、したがって治療特性を有することができる。
【0094】
更に、タバコを燃焼させずに加熱する装置がバルク固体組成物と共に使用されている際、前記バルク固体組成物は燃焼しない。使用者はしたがって、非常に著しく有害成分への曝露を減少させながら、植物の感覚受容特性から利益を得ることができる。
【実施例】
【0095】
例示された本発明によるバルク固体組成物
【0096】
叩解繊維のSR度が異なる3つのバルク固体組成物を、下記手順にしたがって製造した。
【0097】
バージニア、バーレー、オリエント種のタバコの葉片の混合物を、実験室にて40℃の水浴で、30分間手動撹拌しながら水と接触させる。タバコ抽出物を、機械式プレスで繊維から分離し、次いで真空濃縮して固体の濃度を51.5%にする。グリセロールを、タバコの可溶性水性画分に添加する。
【0098】
繊維を、ビーター-リファイナを使用して叩解する。バルク固体組成物は、叩解繊維のSR度によってそれぞれ異なるので、叩解は望ましいSR度に調節される。
【0099】
叩解繊維、タバコ抽出物、及びグリセロールを手動で混合し、ペーストを得る。このペーストを、次いで型で成形する。
【0100】
最後に、ペーストを95℃で30分間乾燥することによって、バルク固体組成物を得る。
【0101】
比較バルク固体組成物
【0102】
密度が620.7mg.cm-3の比較バルク固体組成物を、上記と同様の手順にしたがって製造した。
【0103】
バルク固体組成物の特徴
【0104】
下記Table 1(表1)は、4つのバルク固体組成物の特徴を列挙している。
【0105】
【0106】
例示された4つのバルク固体組成物の喫煙試験
【0107】
それらの形態によって、バルク固体組成物1~3及び比較バルク固体組成物は、Ploom Inc/Pax Labs Inc社のPax加熱システムの加熱ロッジングに容易に導入される。試験後、4つのバルク固体組成物は、加熱ロッジングから容易に取り出される。
【0108】
9パフの間、バルク固体組成物1~3によって発生されたエアロゾルの容積は、満足であると判定される。更に、組成物3によって発生されたエアロゾルの感覚受容特性は、使用者にとって最も満足である。
【0109】
比較バルク固体組成物によって発生されたエアロゾルの容積は、小さ過ぎるので満足であると判定されない。試験後、比較バルク固体組成物を2つの部分に開き、中心が加熱されなかったことが認められた。これにより、熱風が比較バルク固体組成物を通過できなかったことが立証された。