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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】医療用針の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20240820BHJP
   A61M 5/50 20060101ALI20240820BHJP
   A61M 5/158 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
A61M5/32 500
A61M5/50 530
A61M5/158 500B
A61M5/158 500H
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021548820
(86)(22)【出願日】2020-09-14
(86)【国際出願番号】 JP2020034754
(87)【国際公開番号】W WO2021060054
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2019172776
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】秋山 真洋
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-096852(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0178627(US,A1)
【文献】実開昭52-129192(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
A61M 5/50
A61M 5/158
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
針体と、前記針体の基端側に固定された中空状の針ハブと、前記針ハブに装着された状態で前記針体の先端側を覆う中空状のキャップと、を備える医療用針の製造方法であって、
凸部が設けられた前記針ハブを成形する針ハブ成形工程と、
前記針ハブ成形工程で成形された前記針ハブに前記針体の基端側を接合する針体接合工程と、
前記キャップを成形するキャップ成形工程と、
前記針体接合工程で前記針体が接合された前記針ハブに対して前記キャップ成形工程で成形された前記キャップを装着する装着工程と、を有し、
前記装着工程では、前記凸部を前記キャップの基端面に圧入することにより前記キャップの基端面に凹部を形成し、
前記キャップは、前記キャップ及び前記針ハブの前記針体の周方向への相対回転によって開封し、
前記凹部及び前記凸部の少なくともいずれかは、前記キャップを開封する際に前記キャップ及び前記針ハブの前記相対回転により不可逆的に形状が変化する、医療用針の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用針の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2017-12638号公報には、針体と、針体の基端側に固定された中空状の針ハブと、針ハブに装着された状態で針体の先端側を覆うキャップ(プロテクタ)とを備えた医療用針が開示されている。キャップは、キャップの中間部とキャップの基端部とを互いに接続するとともに周方向に間隔を空けて複数配置された破壊部を有し、これら破壊部をユーザが捩じ切ることにより開封される。
【発明の概要】
【0003】
しかしながら、上述した従来技術では、一度開封したキャップを針ハブに再装着するとともに破壊部のうち中間部側の切断部位と基端部側の切断部位との位置を合わせた場合、外見上、破壊部が破壊されていないように見えることがある。この場合、キャップの未開封状態と開封済み状態とを容易に判別することができないおそれがある。
【0004】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、キャップの未開封状態と開封済み状態とを容易に判別することができる医療用針の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の態様は、針体と、前記針体の基端側に固定された中空状の針ハブと、前記針ハブに装着された状態で前記針体の先端側を覆う中空状のキャップと、を備える医療用針の製造方法であって、凸部が設けられた前記針ハブを成形する針ハブ成形工程と、前記針ハブ成形工程で成形された前記針ハブに前記針体の基端側を接合する針体接合工程と、前記キャップを成形するキャップ成形工程と、前記針体接合工程で前記針体が接合された前記針ハブに対して前記キャップ成形工程で成形された前記キャップを装着する装着工程と、を有し、前記装着工程では、前記凸部を前記キャップの基端面に圧入することにより前記キャップの基端面に凹部を形成し、前記キャップは、前記キャップ及び前記針ハブの前記針体の周方向への相対回転によって開封し、前記凹部及び前記凸部の少なくともいずれかは、前記キャップを開封する際に前記キャップ及び前記針ハブの前記相対回転により不可逆的に形状が変化する、医療用針の製造方法である。
【0007】
本発明によれば、キャップを一度開封すると、凹部及び凸部の少なくともいずれかの形状が不可逆的に変化する。そのため、一度開封したキャップを針ハブに再装着した場合であっても、凹部及び凸部の少なくともいずれかの変化した形状を視認することにより、キャップの未開封状態と開封済み状態とを容易に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る医療用針の斜視図である。
図2図1の医療用針の分解斜視図である。
図3図1の医療用針の縦断面図である。
図4図3の医療用針の一部拡大図である。
図5図1の医療用針の製造方法を説明するフローチャートである。
図6図6Aは、装着工程の第1説明図であり、図6Bは、装着工程の第2説明図である。
図7図7Aは、図1の医療用針のプロテクタの開封動作の第1説明図であり、図7Bは、図1の医療用針のプロテクタの開封動作の第2説明図である。
図8】一度開封したプロテクタを針ハブに再装着した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る医療用針の製造方法について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0010】
本発明の一実施形態に係る医療用針10は、生体内(静脈)から血液を採取するための採血針として構成されている。ただし、医療用針10は、採血針に限定されず、例えば、輸液を体内に注入するための留置針であってもよい。
【0011】
医療用針10に関する以下の説明では、図3の左側を「先端」、右側を「基端」という。図1図3に示すように、医療用針10は、先端に鋭利な針先11を有する管状の針体12と、針体12の基端側に設けられた樹脂製の針ハブ14と、針ハブ14に装着された状態で針体12を覆う樹脂製のプロテクタ16(キャップ)とを備える。
【0012】
針体12の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム或いはアルミニウム合金、チタン或いはチタン合金のような金属材料が挙げられる。図2及び図3において、針体12は、血液等の体液又は輸液等の流路となる内腔12a(図3参照)を有する円管状の部材である。針体12の先端部には、針体12の軸線方向に対して傾斜する刃面12bが形成されている。刃面12bには、液体の出入口として機能する開口12cが形成されている。
【0013】
針ハブ14は、針体12の基端側が挿入される針挿入孔17が形成された針保持部材18と、針保持部材18の基端部に設けられた中空状の操作部材20とを有する。
【0014】
針保持部材18は、樹脂材料によって一体的に射出成形された単一部材(一体成形品)である。針保持部材18は、針体12の接合性(接着性)が良好な樹脂材料により構成されるのが好ましい。具体的に、針保持部材18の構成材料は、ポリカーボネート(PC)又はポリプロピレン(PP)が好ましい。
【0015】
操作部材20は、樹脂材料によって一体的に射出成形された単一部材(一体成形品)である。操作部材20は、ユーザの手指が滑り難い樹脂材料により構成されるのが好ましい。また、操作部材20は、基端部に接続されるチューブ100(図3参照)の構成材料と同じ樹脂材料により構成されるのが好ましい。具体的に、操作部材20の構成材料は、ポリ塩化ビニル(PVC)が好ましい。
【0016】
針保持部材18及び操作部材20のそれぞれの構成材料は、互いに同じ樹脂材料により構成されてもよい。この場合、針ハブ14は、樹脂材料によって一体的に射出成形された単一部材(一体成形品)であってもよい。また、針保持部材18及び操作部材20のそれぞれの構成材料は、上述したものに限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリアセタール等であってもよい。
【0017】
図2図4に示すように、針保持部材18は、円筒状に形成されている。針保持部材18は、プロテクタ16の未開封状態でプロテクタ16の内腔16aに挿入される第1装着部22及び第2装着部24と、第2装着部24の基端部に設けられた中間部26と、中間部26から基端方向に突出した基端凸部28とを含む。
【0018】
第1装着部22は、針保持部材18の先端部を形成する。第2装着部24は、第1装着部22の基端部に設けられている。第2装着部24の外径は、第1装着部22の外径よりも大きい。第2装着部24の外周面には、プロテクタ16を開封する際にプロテクタ16及び針ハブ14を針体12の周方向に相対回転させるための回転機構30が設けられている。
【0019】
図2において、回転機構30は、第2装着部24の周方向に向かって基端方向に傾斜した2つのねじ状突起32(ねじ山)を有する。各ねじ状突起32は、第2装着部24の径方向外方に向かって幅狭に形成されている(図4参照)。すなわち、各ねじ状突起32は、横断面が三角形状に形成されている。
【0020】
2つのねじ状突起32は、第2装着部24の周方向に180°ずれて位置している。2つのねじ状突起32は、針ハブ14の軸線方向に互いに重ならないように位置している。各ねじ状突起32は、両端に向かって幅狭に形成されている(図2及び図6B参照)。
【0021】
中間部26は、プロテクタ16の未開封状態でプロテクタ16の外側に露出する(図1参照)。図2及び図4において、中間部26の外径は、第2装着部24の外径よりも大きい。すなわち、中間部26には、先端方向を指向する先端側段差面34が形成されている。先端側段差面34は、プロテクタ16の未開封状態で、プロテクタ16の基端面に対向する対向面である。
【0022】
先端側段差面34には、先端方向に突出した1つの凸部36が設けられている。凸部36は、第2装着部24の外周面に一体的に連結している。凸部36は、中間部26の外周面側から見て、正方形状(又は長方形状)に形成されている。
【0023】
凸部36の厚さ寸法(中間部26の径方向に沿った寸法)は、第2装着部24に対する中間部26の段差(第2装着部24の外周面と中間部26の外周面との間隔)と同じ寸法である。凸部36の厚さ寸法は、針ハブ14の軸線方向に沿った全長に亘って同じである。凸部36の幅寸法(中間部26の周方向に沿った寸法)は、凸部36の厚さ寸法と略同じである。ただし、凸部36の形状及び大きさは、適宜変更が可能である。
【0024】
凸部36と刃面12bとは、針体12の周方向の位置が互いに一致している(図2参照)。すなわち、医療用針10は、凸部36を上向きにすると刃面12bが上向きになるように構成されている。換言すれば、凸部36は、刃面12bの向きを示すマーカとして機能する。
【0025】
図4において、基端凸部28の外径は、中間部26の外径よりも小さい。すなわち、中間部26には、基端方向を指向する基端側段差面38が形成されている。基端側段差面38は、操作部材20の先端面に当接している。針挿入孔17は、針保持部材18の全長に亘って延在している。針挿入孔17を形成する壁面には、針体12の基端側が図示しない接着剤(例えば、紫外線硬化性樹脂)によって接着されている。
【0026】
図2及び図3に示すように、操作部材20は、医療用針10を使用する際に、ユーザが手指で保持する部分を形成する。操作部材20の外形は、円形状(真円形状)に形成されている。ただし、操作部材20の外形は、楕円形状、多角形状(三角形状、四角形状等)に形成されてもよい。
【0027】
操作部材20の外周面には、凹凸状の滑り止め部42が形成されている。具体的に、滑り止め部42は、操作部材20の軸線方向に沿って延びた溝44と突起46とが周方向に交互に設けられることによって形成されている。滑り止め部42の構成は、適宜変更可能である。
【0028】
図3において、操作部材20の先端面には、針保持部材18の基端部(基端凸部28)が嵌合する先端側凹部48が形成されている。具体的に、針保持部材18と操作部材20との熱収縮差によって、先端側凹部48を形成する内周面は、基端凸部28の外周面に強固に固着している。ただし、基端凸部28は、先端側凹部48に圧入されてもよい。また、基端凸部28は、先端側凹部48を形成する内周面に対して図示しない接着剤によって接着されてもよい。操作部材20の基端面には、チューブ100が挿入される基端側凹部50が形成されている。
【0029】
操作部材20は、先端側凹部48に基端凸部28を嵌合するとともに基端側凹部50にチューブ100を挿入した状態で、針体12の内腔12aとチューブ100の内腔100aとを互いに連通する連通孔51が形成されている。
【0030】
プロテクタ16は、先端が閉塞するとともに基端が開口した筒状部材である。プロテクタ16は、樹脂材料によって一体的に射出成形された単一部材(一体成形品)である。プロテクタ16は、針保持部材18よりも軟質な樹脂材料で構成されている。すなわち、凸部36は、プロテクタ16よりも高硬度である。プロテクタ16の構成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、オレフィン系エラストマー、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリアセタール等が挙げられる。
【0031】
プロテクタ16の内腔16aは、針体12の先端側が挿入される先端孔52と、先端孔52の基端側に連通する第1装着孔54と、第1装着孔54の基端側に連通する第2装着孔56とを含む。図3において、第1装着孔54の孔径は、先端孔52の孔径よりも大きい。プロテクタ16の未開封状態で、第1装着孔54には、第1装着部22が挿入されている。第2装着孔56は、プロテクタ16の基端に開口している。
【0032】
第2装着孔56の孔径は、第1装着孔54の孔径よりも大きい。第2装着孔56を形成する内周面には、2つのねじ状突起32が食い込むことにより、2つのねじ状溝58が形成されている。プロテクタ16の未開封状態で、第2装着孔56には、第2装着部24が挿入されている。
【0033】
図1及び図4に示すように、プロテクタ16の基端面には、針ハブ14の凸部36が食い込むことにより凹部60が形成されている。凹部60は、凸部36の形状に対応した形状を有する。すなわち、凹部60は、正方形状(長方形状)に形成されている。凹部60を形成する2つの側面60a、60bは、プロテクタ16の軸線方向に沿って延在している(図6B参照)。
【0034】
次に、上述した医療用針10の製造方法について説明する。図5に示すように、医療用針10の製造方法は、針ハブ成形工程、針体接合工程、プロテクタ成形工程(キャップ成形工程)、装着工程を有する。
【0035】
針ハブ成形工程(図5のステップS1)では、凸部36を有した針保持部材18と操作部材20とを別々に射出成形し、操作部材20の先端側凹部48に針保持部材18の基端凸部28を嵌合する。針体接合工程(図5のステップS2)では、針挿入孔17を形成する壁面に針体12の基端側を接着剤によって接着する。プロテクタ成形工程(図5のステップS3)では、プロテクタ16を射出成形する。この際、プロテクタ16には、上述した凹部60及びねじ状溝58が形成されていない。
【0036】
なお、針ハブ成形工程、針体接合工程及びプロテクタ成形工程の後、針体12、針ハブ14及びプロテクタ16に対して高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)が行われる。この際、操作部材20の構成材料の熱収縮率が針保持部材18の構成材料の熱収縮率よりも大きいため、先端側凹部48を形成する内周面が基端凸部28の外周面に対して強固に固定される。
【0037】
その後、装着工程(図5のステップS4)では、針体12をプロテクタ16の内腔16aに挿入するとともに針ハブ14に対して装着する。具体的に、図6A及び図6Bに示すように、針ハブ14の凸部36をプロテクタ16の基端面に圧入により食い込ませる。これにより、プロテクタ16の基端面には、凸部36の形状に対応した形状の凹部60が形成される。
【0038】
また、第2装着部24の外周面に設けられたねじ状突起32は、第2装着孔56を形成する内周面に食い込む(図4参照)。そのため、第2装着孔56を形成する内周面には、ねじ状突起32の形状に対応した形状のねじ状溝58が形成される。さらに、プロテクタ16の基端面は、針ハブ14の先端側段差面34に接触又は近接する。これにより、医療用針10が製造される。
【0039】
続いて、未開封状態の医療用針10のプロテクタ16の開封動作について説明する。図4に示すように、プロテクタ16の未開封状態で、ねじ状突起32は、第2装着孔56を形成する内周面に食い込んでいる。そのため、ユーザは、プロテクタ16を針ハブ14に対して先端側に引っ張ったとしてもプロテクタ16は開封しないようになっている。
【0040】
医療用針10のプロテクタ16を開封する場合、図7Aに示すように、ユーザは、針ハブ14とプロテクタ16とを針体12の周方向に相対回転させる。そうすると、プロテクタ16のねじ状突起32が針ハブ14の第2装着孔56を形成する内周面に対して回転する。
【0041】
また、針ハブ14とプロテクタ16との相対回転に伴って、凹部60を形成する片方の側面60bが凸部36によって周方向に押し広げられるように塑性変形する。つまり、側面60bは、プロテクタ16の基端方向に向かって周方向に傾斜するように延在する。そして、凸部36が凹部60から離脱するとともにねじ状突起32が第2装着孔56から離脱すると、ユーザは、プロテクタ16を針ハブ14に対して先端方向に引き抜く(図7B参照)。これにより、プロテクタ16が開封され、針体12がプロテクタ16から露出される。
【0042】
プロテクタ16が開封されると、凹部60の形状が変形する。つまり、プロテクタ16の凹部60の形状は、正方形(又は長方形)から台形へと変化する。換言すれば、凹部60を形成する側面60bの向き(位置)が変化する。そのため、図8に示すように、一度開封されたプロテクタ16を針ハブ14に再装着した場合、凸部36が凹部60に挿入された状態で三角形状の隙間Sが形成されることになる。そのため、ユーザは、プロテクタ16の未開封状態と開封済み状態とを容易に判別することができる。つまり、医療用針10は、良好なタンパープルーフ性を備える。
【0043】
この場合、本実施形態に係る医療用針10及び医療用針10の製造方法は、以下の効果を奏する。
【0044】
医療用針10において、プロテクタ16は、プロテクタ16及び針ハブ14の針体12の周方向への相対回転によって開封する。針ハブ14には、凸部36が設けられ、プロテクタ16には、プロテクタ16が針ハブ14に装着された未開封状態で凸部36が挿入する凹部60が設けられている。凹部60は、プロテクタ16を開封する際にプロテクタ16及び針ハブ14の相対回転により不可逆的に形状が変化する。
【0045】
このような構成によれば、プロテクタ16を一度開封すると、凹部60の形状が不可逆的に変化する。そのため、一度開封したプロテクタ16を針ハブ14に再装着した場合であっても、凹部60の変化した形状を視認することにより、プロテクタ16の未開封状態と開封済み状態とを容易に判別することができる。
【0046】
凹部60を形成する壁面(側面60b)は、プロテクタ16及び針ハブ14の相対回転により塑性変形する。
【0047】
このような構成によれば、凹部60を形成する壁面(側面60b)が塑性変形するため、凸部36が破損して針ハブ14から分離することを抑制できる。これにより、異物の発生を抑えることができる。
【0048】
凸部36は、プロテクタ16よりも高硬度である。
【0049】
このような構成によれば、凸部36によって凹部60を形成する壁面(側面60b)を効果的に塑性変形させることができる。
【0050】
針ハブ14には、未開封状態で、プロテクタ16の基端面に対向する先端側段差面34が設けられ、凸部36は、先端側段差面34から先端方向に突出し、凹部60は、プロテクタ16の基端面に形成されている。
【0051】
このような構成によれば、プロテクタ16及び針ハブ14の構成を簡素化することができる。
【0052】
針体12の先端部には、針体12の軸線方向に対して傾斜する刃面12bが形成され、凸部36及び凹部60は、1つずつ設けられ、針ハブ14に設けられた凸部36と刃面12bとは、針体12の周方向の位置が互いに一致している。
【0053】
このような構成によれば、針ハブ14に設けられた凸部36によって刃面12bの向きを容易に知ることができる。
【0054】
医療用針10の製造方法は、凸部36が設けられた針ハブ14を成形する針ハブ成形工程と、針ハブ成形工程で成形された針ハブ14に針体12の基端側を接合する針体接合工程と、プロテクタ16を成形するプロテクタ成形工程と、針体接合工程で針体12が接合された針ハブ14に対してプロテクタ成形工程で成形されたプロテクタ16を装着する装着工程と、を有する。装着工程では、凸部36をプロテクタ16の基端面に圧入することによりプロテクタ16の基端面に凹部60を形成する。プロテクタ16は、プロテクタ16及び針ハブ14の針体12の周方向への相対回転によって開封し、凹部60は、プロテクタ16を開封する際にプロテクタ16及び針ハブ14の相対回転により不可逆的に形状が変化する。
【0055】
このような方法によれば、上述した医療用針10と同様の効果を奏する。
【0056】
医療用針10は、上述した構成に限定されない。凸部36は、プロテクタ16を開封する際にプロテクタ16及び針ハブ14の相対回転により塑性変形してもよい。また、凸部36は、プロテクタ16を開封する際に凹部60を形成する壁面(側面60b)に当たり破損して針ハブ14から分離してもよい。この場合、凹部60を形成する壁面(側面60b)は、塑性変形してもしなくてもよい。このような構成によれば、プロテクタ16の未開封状態と開封済み状態とを一層容易に判別することができる。凹部60及び凸部36は、複数組設けられてもよい。
【0057】
医療用針10の製造方法では、プロテクタ成形工程においてプロテクタ16の基端面に凹部60を形成しておき、装着工程において、プロテクタ16の凹部60に針ハブ14の凸部36を圧入するようにしてもよい。また、プロテクタ成形工程では、第2装着孔56の内周面にねじ状突起32が螺合するねじ状溝58を形成しておいてもよい。
【0058】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
【0059】
本発明に係る医療用針は、プロテクタの基端面に基端方向に突出する凸部を設けるとともに針ハブに当該凸部が挿入される凹部を設けてもよい。この場合、凹部を形成する壁面及び凸部の少なくともいずれかは、プロテクタを開封する際にプロテクタ及び針ハブの相対回転により塑性変形する。
【0060】
以上の実施形態をまとめると、以下のようになる。
【0061】
上記実施形態は、針体(12)と、前記針体の基端側に固定された中空状の針ハブ(14)と、前記針ハブに装着された状態で前記針体の先端側を覆う中空状のキャップ(16)と、を備える医療用針(10)であって、前記キャップは、前記キャップ及び前記針ハブの前記針体の周方向への相対回転によって開封し、前記針ハブ及び前記キャップのいずれか一方には、凸部(36)が設けられ、前記針ハブ及び前記キャップのいずれか他方には、前記キャップが前記針ハブに装着された未開封状態で前記凸部が挿入する凹部(60)が設けられ、前記凹部及び前記凸部の少なくともいずれかは、前記キャップを開封する際に前記キャップ及び前記針ハブの相対回転により不可逆的に形状が変化する、医療用針を開示している。
【0062】
上記の医療用針において、前記針ハブには、前記凸部が設けられ、前記キャップには、前記凹部が形成されてもよい。
【0063】
上記の医療用針において、前記凹部を形成する壁面は、前記キャップ及び前記針ハブの前記相対回転により塑性変形してもよい。
【0064】
上記の医療用針において、前記凸部は、前記キャップよりも高硬度であってもよい。
【0065】
上記の医療用針において、前記針ハブには、前記未開封状態で、前記キャップの基端面に対向する対向面が設けられ、前記凸部は、前記対向面から先端方向に突出し、前記凹部は、前記キャップの基端面に形成されてもよい。
【0066】
上記の医療用針において、前記針体の先端部には、前記針体の軸線方向に対して傾斜する刃面(12b)が形成され、前記凸部及び前記凹部は、1つずつ設けられ、前記針ハブに設けられた前記凸部又は前記凹部と前記刃面とは、前記針体の周方向の位置が互いに一致してもよい。
【0067】
上記実施形態は、針体と、前記針体の基端側に固定された中空状の針ハブと、前記針ハブに装着された状態で前記針体の先端側を覆う中空状のキャップと、を備える医療用針の製造方法であって、凸部が設けられた前記針ハブを成形する針ハブ成形工程と、前記針ハブ成形工程で成形された前記針ハブに前記針体の基端側を接合する針体接合工程と、前記キャップを成形するキャップ成形工程と、前記針体接合工程で前記針体が接合された前記針ハブに対して前記キャップ成形工程で成形された前記キャップを装着する装着工程と、を有し、前記装着工程では、前記凸部を前記キャップの基端面に圧入することにより前記キャップの基端面に凹部を形成し、前記キャップは、前記キャップ及び前記針ハブの前記針体の周方向への相対回転によって開封し、前記凹部及び前記凸部の少なくともいずれかは、前記キャップを開封する際に前記キャップ及び前記針ハブの前記相対回転により不可逆的に形状が変化する、医療用針の製造方法を開示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8