(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】アクリルゴム、架橋性ゴム組成物及びゴム硬化物
(51)【国際特許分類】
C08F 220/12 20060101AFI20240820BHJP
C08L 33/08 20060101ALI20240820BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20240820BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240820BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240820BHJP
F16L 11/04 20060101ALI20240820BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20240820BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20240820BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
C08F220/12
C08L33/08
C08K5/00
C08K3/013
C08K3/04
F16L11/04
F16J15/10 Y
C09K3/10 E
F16F15/08 D
(21)【出願番号】P 2021551154
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2020036021
(87)【国際公開番号】W WO2021065669
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2019178882
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】神戸 祐哉
(72)【発明者】
【氏名】宮内 俊明
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-070713(JP,A)
【文献】国際公開第2009/099113(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/078167(WO,A1)
【文献】米国特許第05191050(US,A)
【文献】特開2001-192420(JP,A)
【文献】国際公開第2018/143101(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F220/10-220/70
C08F210/02
C08F222/16
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
C09K 3/10
F16J 15/08- 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸アルキルエステル単位と、架橋席モノマー単位と、下記式(A-1)で表される二官能モノマーの単位と、エチレン単位と、を有し、
前記アクリル酸アルキルエステル単位が、炭素数1~3のアルキル基を有する第一のアクリル酸アルキルエステル単位と、炭素数4~8のアルキル基を有する第二のアクリル酸アルキルエステル単位と、を含有し、
前記アクリル酸アルキルエステル単位の総量基準で、前記第一のアクリル酸アルキルエステル単位の含有量が60~95質量%であり、前記第二のアクリル酸アルキルエステルの含有量が5~40質量%であり、
トルエン不溶分が4~40質量%である、アクリルゴム。
【化1】
[式中、nは1~9を示し、R
1は水素原子又はメチル基を示し、R
2は炭素数2~4のアルカンジイル基を示す。]
【請求項2】
前記二官能モノマーの単位の含有量が、前記アクリル酸アルキルエステル単位100質量部に対して0.1~5質量部である、請求項
1に記載のアクリルゴム。
【請求項3】
前記架橋席モノマー単位の含有量が、前記アクリル酸アルキルエステル単位100質量部に対して0.5~10質量部である、請求項
1又は2に記載のアクリルゴム。
【請求項4】
前記エチレン単位の含有量が、前記アクリル酸アルキルエステル単位100質量部に対して0.1~10質量部である、請求項1~
3のいずれか一項に記載のアクリルゴム。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載のアクリルゴムと、架橋剤と、充填材と、を含有する、架橋性ゴム組成物。
【請求項6】
前記充填材が、カーボンブラックを含む、請求項
5に記載の架橋性ゴム組成物。
【請求項7】
請求項
5又は
6に記載の架橋性ゴム組成物の硬化物である、ゴム硬化物。
【請求項8】
請求項
7に記載のゴム硬化物を含む、ホース部品。
【請求項9】
請求項
7に記載のゴム硬化物を含む、シール部品。
【請求項10】
請求項
7に記載のゴム硬化物を含む、防振ゴム部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリルゴム、架橋性ゴム組成物及びゴム硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリルゴムは、耐熱性・耐油性に優れるゴム材料として知られており、アクリルゴムを含有するゴム組成物を硬化した硬化物は、自動車部品等の多様な用途に好適に用いられている(例えば、特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-265737号公報
【文献】特開2010-70713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、排ガス規制対策、エンジンの高出力化等により、自動車用ゴム部品には更なる耐熱性が求められている。特に、長時間に亘って高温環境下に保持された場合でもその特性を維持できるゴム材料が求められている。
【0005】
本発明は、長時間に亘って高温環境下に保持された場合でも、高い引張強度を維持することが可能なゴム硬化物を提供することを目的とする。また、本発明は、上記ゴム硬化物を実現可能なアクリルゴム、及び当該アクリルゴムを含有する架橋性ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、アクリル酸アルキルエステル単位と、架橋席モノマー単位と、下記式(A-1)で表される二官能モノマーの単位と、エチレン単位と、を有し、トルエン不溶分が4~40質量%である、アクリルゴムに関する。
【化1】
[式中、nは1~9を示し、R
1は水素原子又はメチル基を示し、R
2は炭素数2~4のアルカンジイル基を示す。]
【0007】
一態様において、上記アクリル酸アルキルエステル単位は、炭素数1~3のアルキル基を有する第一のアクリル酸アルキルエステル単位と、炭素数4~8のアルキル基を有する第二のアクリル酸アルキルエステル単位と、を含有していてよい。
【0008】
一態様において、上記アクリル酸アルキルエステル単位の総量基準で、上記第一のアクリル酸アルキルエステル単位の含有量は60~95質量%であってよく、上記第二のアクリル酸アルキルエステルの含有量は5~40質量%であってよい。
【0009】
一態様において、上記二官能モノマーの単位の含有量は、上記アクリル酸アルキルエステル単位100質量部に対して0.1~5質量部であってよい。
【0010】
一態様において、上記架橋席モノマー単位の含有量は、上記アクリル酸アルキルエステル単位100質量部に対して0.5~10質量部であってよい。
【0011】
一態様において、上記エチレン単位の含有量は、上記アクリル酸アルキルエステル単位100質量部に対して0.1~10質量部であってよい。
【0012】
本発明の他の一側面は、上記アクリルゴムと、架橋剤と、充填材と、を含有する、架橋性ゴム組成物に関する。
【0013】
一態様において、上記充填材は、カーボンブラックを含んでいてよい。
【0014】
本発明の更に他の一側面は、上記架橋性ゴム組成物の硬化物である、ゴム硬化物に関する。
【0015】
本発明は更に、上記ゴム硬化物を含む、ホース部品、シール部品及び防振ゴム部品にも関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、長時間に亘って高温環境下に保持された場合でも、高い引張強度を維持することが可能なゴム硬化物が提供される。また、本発明によれば、上記ゴム硬化物を実現可能なアクリルゴム、及び当該アクリルゴムを含有する架橋性ゴム組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
(アクリルゴム)
本実施形態に係るアクリルゴムは、アクリル酸アルキルエステル単位と、架橋席モノマー単位と、下記式(A-1)で表される二官能モノマーの単位(以下「二官能モノマー単位」ともいう)と、エチレン単位と、を有する。
【化2】
【0019】
式(A-1)中、nは1~9を示し、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は炭素数2~4のアルカンジイル基を示す。
【0020】
本実施形態に係るアクリルゴムは、2つの(メタ)アクリロイル基が特定の連結鎖で結合された二官能モノマーに由来する構造単位を有している。この二官能モノマーによって、アクリルゴムに運動性の高いポリエーテル鎖を含む特定の架橋構造が構築されるため、本実施形態に係るアクリルゴムによれば、長時間に亘って高温環境下に保持された場合でも、高い引張強度を維持可能なゴム硬化物が実現できる。
【0021】
アクリル酸アルキルエステル単位は、アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位である。アクリル酸アルキルエステルは、例えば、炭素数1~12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルであってよく、好ましくは炭素数1~8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルである。
【0022】
アクリル酸アルキルエステル単位は、炭素数1~3のアルキル基を有する第一のアクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位(第一のアクリル酸アルキルエステル単位)と、炭素数4~8のアルキル基を有する第二のアクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位(第二のアクリル酸アルキルエステル単位)と、を含有していてよい。
【0023】
第一のアクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル等が挙げられる。
【0024】
第二のアクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ペンチル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸2-メチルペンチル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。
【0025】
第一のアクリル酸アルキルエステル単位の含有量は、アクリル酸アルキルエステル単位の総量基準で、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である。これにより、ゴム硬化物の耐油性がより向上する。また、第一のアクリル酸アルキルエステル単位の含有量は、アクリル酸アルキルエステル単位の総量基準で、好ましくは95質量%以下、より好ましくは93質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である。これにより、ゴム硬化物の耐寒性がより向上する。
【0026】
第二のアクリル酸アルキルエステル単位の含有量は、アクリル酸アルキルエステル単位の総量基準で、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは10質量%以上である。これにより、ゴム硬化物の耐寒性がより向上する。また、第二のアクリル酸アルキルエステル単位の含有量は、アクリル酸アルキルエステル単位の総量基準で、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。これにより、ゴム硬化物の耐油性がより向上する。
【0027】
アクリルゴム中のアクリル酸アルキルエステル単位の含有量は、アクリルゴムの総量基準で、例えば80質量%以上であってよく、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは93質量%以上である。また、アクリルゴム中のアクリル酸アルキルエステル単位の含有量は、アクリルゴムの総量基準で、例えば99質量%以下であってよく、好ましくは97質量%以下であり、より好ましくは95質量%以下である。
【0028】
架橋席モノマー単位は、架橋席モノマーに由来する構成単位である。なお、架橋席モノマーとは、架橋席(架橋点)を形成する官能基を有するモノマーを意味する。架橋席を形成する官能基としては、例えば、ハロゲノ基、エポキシ基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0029】
ハロゲノ基を有する架橋席モノマーとしては、例えば2-クロロエチルビニルエーテル、2-クロロエチルアクリレート、ビニルベンジルクロライド、ビニルクロロアセテート、アリルクロロアセテート等が挙げられる。
【0030】
エポキシ基を有する架橋席モノマーとしては、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、メタアリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0031】
カルボキシル基を有する架橋席モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2-ペンテン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ブテン二酸モノブチルエステル、桂皮酸等が挙げられる。
【0032】
架橋席モノマー単位の含有量は、アクリル酸アルキルエステル単位100質量部に対して、例えば0.3質量部以上であってよく、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上である。これにより、ゴム硬化物の引張強度がより向上する傾向がある。また、架橋席モノマー単位の含有量は、アクリル酸アルキルエステル単位100質量部に対して、例えば15質量部以下であってよく、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。これにより、ゴム硬化物がゴム弾性により優れたものとなる傾向がある。
【0033】
二官能モノマー単位は、式(A-1)で表される二官能モノマー由来の構成単位である。
【化3】
【0034】
nは、1~9の整数である。長時間に亘って高温環境下に保持された場合の、伸びの低下がより抑制される観点からは、nは、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~4の整数である。
【0035】
R1は、水素原子又はメチル基を示し、好ましくはメチル基である。
【0036】
R2は、炭素数2~4のアルカンジイル基を示し、好ましくは炭素数2~3のアルカンジイル基である。アルカンジイル基としては、エチレン基、1,2-プロパンジイル基、1,3-プロパンジイル基等が挙げられる。R2は、好ましくは、エチレン基又は1,2-プロパンジイル基である。
【0037】
二官能モノマー単位の含有量は、アクリル酸アルキルエステル単位100質量部に対して、例えば0.05質量部以上であってよく、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは0.7質量部以上である。これにより、架橋性ゴム組成物のスコーチタイムがより短くなる傾向がある。また、二官能モノマー単位の含有量は、アクリル酸アルキルエステル単位100質量部に対して、例えば10質量部以下であってよく、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2.5質量部以下である。これにより、長時間に亘って高温環境下に保持された場合でも、良好な伸び特性が維持されやすくなる傾向がある。
【0038】
エチレン単位は、エチレンに由来する構成単位である。アクリルゴムがエチレン単位を有することで、ゴム硬化物の耐寒性が向上する。
【0039】
エチレン単位の含有量は、アクリル酸アルキルエステル単位100質量部に対して、例えば0.1質量部以上であってよく、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上である。これにより、ゴム硬化物の耐寒性がより向上する。エチレン単位の含有量は、アクリル酸アルキルエステル単位100質量部に対して、例えば10質量部以下であってよく、好ましくは8質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。これにより、ゴム硬化物の耐油性がより向上する。
【0040】
アクリルゴムは、上記以外の他のモノマーに由来する構成単位を更に有していてもよい。他のモノマーとしては、例えば、メチルビニルケトン等のアルキルビニルケトン;ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル;アリルメチルエーテル等のアリルエーテル;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン等のビニル芳香族化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル;アクリルアミド、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、エチレン、プロピオン酸ビニル等のエチレン性不飽和化合物;などがある。
【0041】
他のモノマー単位の含有量は、アクリル酸アルキルエステル単位100質量部に対して10質量部以下であってよく、好ましくは5質量部以下、より好ましくは1質量部以下であり、0質量部(すなわち、アクリルゴムが他のモノマー単位を含まない)であってもよい。
【0042】
アクリル酸アルキルエステル単位、架橋席モノマー単位、二官能モノマー単位、及びエチレン単位の合計含有量は、アクリルゴムの総量基準で、例えば、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、又は99質量%以上であってよく、100質量%以上(すなわち、アクリルゴムが上記の単位のみからなる)であってもよい。
【0043】
アクリルゴムのトルエン不溶分は、例えば4質量%以上であってよく、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。トルエン不溶分が4質量%未満であると、二官能モノマーによる耐熱性向上効果が十分に得られない場合がある。また、アクリルゴムのトルエン不溶分は、例えば40質量%以下であってよく、好ましくは38質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。トルエン不溶分が40質量%を超えると、アクリルゴムの押出加工性が悪化する傾向がある。なお、トルエン不溶分は、アクリルゴム0.2gを100mlのトルエンに浸漬させ、23℃で24時間放置後、200メッシュ金網を用いてろ過し、ろ物を120℃で1時間乾燥させ、得られた乾燥固形分(トルエン不溶分:x(g))を秤量し、次式から算出した値である。
トルエン不溶分(質量%)=(x/0.2)×100
【0044】
アクリルゴムは、上述の各モノマー単位に対応するモノマーを重合させて得ることができる。重合方法及び重合条件は特に限定されず、公知の方法を適宜選択してよい。例えば、アクリルゴムは、上述のモノマーを、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合等の公知の方法により共重合させて得られるものであってよい。
【0045】
(架橋性ゴム組成物)
本実施形態に係る架橋性ゴム組成物は、上述のアクリルゴムと、架橋剤と、充填材と、を含有する。
【0046】
架橋剤は、アクリルゴムを架橋できる架橋剤であればよい。架橋剤としては、架橋席モノマー単位が有する官能基を架橋点として架橋可能な公知の架橋剤を、特に制限なく用いることができる。
【0047】
例えば、架橋席モノマーとしてカルボキシル基を有するモノマーを使用する場合は、架橋剤としてはポリアミン化合物(より好ましくはグアニジン系化合物を加えた架橋系)が好適に用いられる。また、架橋席モノマーとしてエポキシ基を有するモノマーをしようする場合は、架橋剤としてはイミダゾール化合物が好適に用いられる。
【0048】
ポリアミン化合物としては、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-2,2-ジメチルプロパン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフォン、ビス(4-3-アミノフェノキシ)フェニルサルフォン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンズアニリド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン等の芳香族ポリアミン化合物;ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、N,N′-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族ポリアミン化合物などが挙げられる。
【0049】
グアニジン系化合物としては、グアニジン、テトラメチルグアニジン、ジブチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、ジ-o-トリルグアニジン等が挙げられる。
【0050】
イミダゾール化合物としては、1-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-メチル-2-エチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-エチルイミダゾール、1-ベンジル-2-エチル-5-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール・トリメリット酸塩、1-アミノエチルイミダゾール、1-アミノエチル-2-メチルイミダゾール、1-アミノエチル-2-エチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾ-ル、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾールトリメリテート、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾールトリメリテート、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾールトリメリテート、1-シアノエチル-2-ウンデシル-イミダゾールトリメリテート、2,4-ジアミノ-6-〔2’-メチルイミダゾリル-(1)’〕エチル-s-トリアジン・イソシアヌール酸付加物、1-シアノエチル-2-フェニル-4,5-ジ-(シアノエトキシメチル)イミダゾール、N-(2-メチルイミダゾリル-1-エチル)尿素、N,N’-ビス-(2-メチルイミダゾリル-1-エチル)尿素、1-(シアノエチルアミノエチル)-2-メチルイミダゾール、N,N’-〔2-メチルイミダゾリル-(1)-エチル〕-アジボイルジアミド、N,N’-〔2-メチルイミダゾリル-(1)-エチル〕-ドデカンジオイルジアミド、N,N’-〔2-メチルイミダゾリル-(1)
-エチル〕-エイコサンジオイルジアミド、2,4-ジアミノ-6-〔2’-メチルイミダゾリル-(1)’〕-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-〔2’-ウンデシルイミダゾリル-(1)’〕-エチル-s-トリアジン、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、1,3-ジベンジル-2-メチルイミダゾリウムクロライド等が挙げられる。
【0051】
架橋剤の含有量は、アクリルゴム100質量部に対して、例えば0.1質量部以上であってよく、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上である。これにより、架橋密度が上がり、ゴム硬化物の引張強度がより向上する傾向がある。また、架橋剤の含有量は、アクリルゴム100質量部に対して、例えば10質量部以下であってよく、好ましくは5質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。これにより、ゴム硬化物の破断時伸びが向上する傾向がある。
【0052】
充填材は、例えば、補強材としての機能を有するものであってよい。充填材としては、例えば、カーボンブラック、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム等が挙げられる。充填材は、好ましくはカーボンブラックである。カーボンブラックの種類としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、黒鉛化カーボンブラック等が挙げられる。
【0053】
充填材の含有量は、アクリルゴム100質量部に対して、例えば20質量部以上であってよく、好ましくは30質量部以上、より好ましくは40質量部以上である。これにより、ゴム硬化物の引張強度及び硬度がより向上する傾向がある。また、カーボンブラックの含有量は、アクリルゴム100質量部に対して、例えば100質量部以下であってよく、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下である。これにより、ゴム硬化物の破断時伸び及び耐熱性がより向上する傾向がある。
【0054】
架橋性ゴム組成物は、上記以外の他の成分を更に含有していてもよい。他の成分としては、例えば、滑剤、架橋促進剤、老化防止剤、可塑剤、安定剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0055】
滑剤としては、例えば、流動パラフィン、ステアリン酸、ステアリルアミン、プロセスオイル等が挙げられる。
【0056】
滑剤の含有量は、アクリルゴム100質量部に対して、例えば0.1質量部以上であってよく、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。これにより、架橋性ゴム組成物が成形機、金型等から容易に離型可能となる傾向がある。また、滑剤の含有量は、アクリルゴム100質量部に対して、例えば10質量部以下であってよく、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。これにより、ゴム硬化物の耐油性及び耐熱性が向上する傾向がある。
【0057】
架橋促進剤としては、架橋剤の種類等に応じて公知の架橋促進剤を適宜選択して使用することができる。架橋促進剤としては、例えば、エポキシ樹脂用の硬化剤を用いてよい。架橋促進剤の具体例としては、熱分解アンモニウム塩、有機酸、酸無水物、アミン類、硫黄、硫黄化合物等が挙げられる。
【0058】
架橋促進剤の含有量は、アクリルゴム100質量部に対して、例えば0.4質量部以上であってよく、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.6質量部以上である。これにより、架橋性ゴム組成物のスコーチタイムが減少する傾向がある。また、架橋促進剤の含有量は、アクリルゴム100質量部に対して、例えば5質量部以下であってよく、好ましくは4質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。これにより、同一時間での架橋トルクが小さくなる傾向がある。
【0059】
老化防止剤としては、アクリルゴム系のゴム組成物に配合される公知の老化防止剤を適宜選択して使用することができる。老化防止剤としては、例えば、アミン系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、カルバミン酸金属塩、フェノール系老化防止剤、ワックス等が挙げられる。
【0060】
老化防止剤の含有量は、アクリルゴム100質量部に対して、例えば0.1質量部以上であってよく、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。これのより、耐熱性が向上する傾向がある。また、老化防止剤の含有量は、アクリルゴム100質量部に対して、例えば20質量部以下であってよく、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。これにより、耐油性が向上する傾向がある。
【0061】
(ゴム硬化物)
本実施形態に係るゴム硬化物は、上述の架橋性ゴム組成物を熱硬化することで得ることができる。
【0062】
架橋性ゴム組成物の硬化条件は、特に限定されない。硬化温度は、例えば150~200℃であってよく、好ましくは170~190℃であってよい。また、硬化時間は、例えば5分間~1時間であってよく、好ましくは10分間~30分間であってよい。
【0063】
本実施形態に係るゴム硬化物は、高温(例えば175℃)下で長時間(例えば500時間以上)保持された場合でも高い引張強度が維持される。このため、本実施形態に係るゴム硬化物は、高温下に長時間晒されるゴム部材として、好適に用いることができる。
【0064】
本実施形態に係るゴム硬化物は、例えば、ホース部品(ゴムホース);ガスケット、パッキング等のシール部品;防振ゴム部品;などの用途に好適に用いることができる。
【0065】
ホース部品としては、例えば、自動車、建設機械、油圧機器等のトランスミッションオイルクーラーホース、エンジンオイルクーラーホース、エアダクトホース、ターボインタークーラーホース、ホットエアーホース、ラジエターホース、パワーステアリングホース、燃料系統用ホース、ドレイン系統用ホース等が挙げられる。
【0066】
ホース部品は、ゴム硬化物から構成された単層のホースであってよく、ゴム硬化物から構成された層に、例えば、フッ素ゴム、フッ素変性アクリルゴム、ヒドリンゴム、ニトリルゴム、水素添加ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレン-プロピレンゴム、シリコーンゴム、クロルスルホン化ポリエチレンゴム等を内層、中間層あるいは外層として組み合わせた多層のホースであってもよい。また、一般的に行われているように、ホース部品において、補強糸又はワイヤーをゴムホースの中間又は最外層に設けたものであってもよい。
【0067】
シール部品としては、例えば、エンジンヘッドカバーガスケット、オイルパンガスケット、オイルシール、リップシールパッキン、O-リング、トランスミッションシールガスケット、クランクシャフト、カムシャフトシールガスケット、バルブステム、パワーステアリングシールベルトカバーシール、等速ジョイント用ブーツ材、ラックアンドピニオンブーツ材等が挙げられる。
【0068】
防振ゴム部品としては、例えば、ダンパープーリー、センターサポートクッション、サスペンションブッシュ等が挙げられる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0070】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0071】
[実施例A-1]
<アクリルゴムの作製>
以下の方法でアクリルゴムを作製した。
内容量40リットルの耐圧反応槽に、部分けん化ポリビニルアルコールの水溶液17kg(濃度:4質量%)及び酢酸ナトリウム22gを投入し、攪拌機であらかじめよく混合し、均一懸濁液を作製した。槽内上部の空気を窒素で置換した後、エチレンを槽内上部に圧入し、圧力を50kg/cm2に調整した。槽内を55℃に保持した後、投入口よりエチルアクリレート9.0kg、n-ブチルアクリレート2.2kg、ブテン二酸モノブチル445g、二官能モノマーであるポリエチレングリコールジメタクリレート(東京化成社製)82g、及びt-ブチルヒドロペルオキシド水溶液(濃度:0.25質量%)2.0kgを投入して重合を開始させた。反応中、槽内温度を55℃に保ち、6時間で反応を終了した。反応後の重合液にホウ酸ナトリウム水溶液(濃度:0.3質量%)20kgを添加して重合体を固化し、脱水及び乾燥を行ってアクリルゴムを得た。このアクリルゴムは、エチレン単位2質量部と、ブテン二酸モノブチル単位(MBM単位、架橋席モノマー単位)1.8質量部と、エチルアクリレート単位(EA単位)78質量部と、n-ブチルアクリレート単位(BA単位)16質量部と、ポリエチレングリコールジメタクリレート単位(二官能モノマー単位)0.7質量部との共重合体組成であり、トルエン不溶分は7.6質量%であった。
【0072】
<架橋性ゴム組成物の作製>
上記方法で得られたアクリルゴム100質量部、カーボンブラック(東海カーボン社製、商品名「シーストSO」)50質量部、流動パラフィン(滑剤、カネダ社製、商品名「ハイコールK―230」)1質量部、ステアリン酸(滑剤、日油社製、商品名「ステアリン酸 つばき」)0.5質量部、ステアリルアミン(滑剤、花王社製、ファーミン#80)1質量部、アミン系老化防止剤(大内新興化学工業社製、商品名「ノクラックCD」)1.6質量部、イミダゾール系老化防止剤(大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック810NA」)0.3質量部、架橋剤(ヘキサメチレンジアミンカーバイト、Dupont社製、商品名「Diak#1」)0.4質量部、及び、架橋促進剤(ランクセス社製、商品名「Rhenogran XLA-60)1.6質量部を、8インチオープンロールにより混練し、架橋性ゴム組成物を得た。
【0073】
得られた架橋性ゴム組成物を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0074】
・スコーチタイムの測定
架橋性ゴム組成物から切り出した試験片を用い、JIS K6300に従ってスコーチタイム(t5)の測定を行った。測定条件は125℃とした。
【0075】
・Δトルクの測定
架橋性ゴム組成物から切り出した試験片を用い、JIS K6300に従って、架橋時間とトルクとの関係を示す曲線(架橋曲線)を求めた。次いで、当該架橋曲線から、最大トルク値-最小トルク値を計算することによりΔトルクを求めた。なお、測定条件は170℃とした。
【0076】
<ゴム硬化物の作製>
上記方法で得られた架橋性ゴム組成物を、熱プレスにて180℃で20分間加熱処理して一次架橋物とした後、熱空気(ギヤーオーブン)にて185℃で3時間加熱処理してゴム硬化物を得た。
【0077】
得られたゴム硬化物を以下の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0078】
・100%モジュラス、引張強度及び破断時伸びの測定
JIS K6251に従って、100%モジュラス、引張強度及び破断時伸びを測定した。
【0079】
・硬度の測定
JIS K6253に従って、デュロメータ硬さ計を用いて硬度を測定した。
【0080】
・耐熱試験(1)
JIS K6257に従って、175℃で504時間の熱処理を行い、その後、JIS K6251に従って引張強度、破断時伸び及び硬度を測定した。熱処理前の試験片の引張強度及び破断時伸びと、熱処理後の試験片の引張強度及び破断時伸びとから、下記式により、引張強度の保持率及び破断時伸びの保持率を求めた。
保持率(%)=100×(熱処理後の測定値)/(熱処理前の測定値)
【0081】
・耐熱試験(2)
JIS K6257に従って、190℃で94時間の熱処理を行い、その後、JIS K6251に従って引張強度、破断時伸び及び硬度を測定した。熱処理前の試験片の引張強度及び破断時伸びと、熱処理後の試験片の引張強度及び破断時伸びとから、上記式により、引張強度の保持率及び破断時伸びの保持率を求めた。
【0082】
・耐寒性試験
JIS K6261に従って、凍結温度から室温までの温度範囲にわたり、ねじりワイヤを介して試験片をねじり、ねじれ角を測定することによってねじり剛性を求めた。比モジュラスは、23±2℃でのモジュラスに対する値であり、下記式によって算出した。比モジュラスの値に対する温度と温度-ねじれ角曲線から、比モジュラスが10になる温度を求めることができる。比モジュラス10に相当する角度を選び、試験で得られた温度-ねじれ角曲線からこの角度に相当する温度をT10とした。
比モジュラス(-)=((180-測定温度でのねじれ角)/測定温度でのねじれ角)/((180-23±2℃でのねじれ角)/23±2℃でのねじれ角)
【0083】
[実施例A-2]
二官能モノマーの投入量を164gに変更したこと以外は、実施例A-1と同様にしてアクリルゴムの作製、架橋性ゴム組成物の作製、及び、ゴム硬化物の作製を行った。また、実施例A-1と同様にして、架橋性ゴム組成物の評価、及び、ゴム硬化物の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。なお、実施例A-2のアクリルゴムの共重合体組成は、エチレン単位2質量部、ブテン二酸モノブチル単位1.8質量部、エチルアクリレート単位78質量部、n-ブチルアクリレート単位16質量部、ポリエチレングリコールジメタクリレート単位1.5質量部であった。また、実施例A-2のアクリルゴムのトルエン不溶分は12.8質量%であった。
【0084】
[実施例A-3]
二官能モノマーの投入量を329gに変更したこと以外は、実施例A-1と同様にしてアクリルゴムの作製、架橋性ゴム組成物の作製、及び、ゴム硬化物の作製を行った。また、実施例A-1と同様にして、架橋性ゴム組成物の評価、及び、ゴム硬化物の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。なお、実施例A-3のアクリルゴムの共重合体組成は、エチレン単位2質量部、ブテン二酸モノブチル単位1.8質量部、エチルアクリレート単位78質量部、n-ブチルアクリレート単位16質量部、ポリエチレングリコールジメタクリレート単位2.9質量部であった。また、実施例A-3のアクリルゴムのトルエン不溶分は33.1質量%であった。
【0085】
[比較例a-1]
二官能モノマーを用いなかったこと以外は、実施例A-1と同様にしてアクリルゴムの作製、架橋性ゴム組成物の作製、及び、ゴム硬化物の作製を行った。また、実施例A-1と同様にして、架橋性ゴム組成物の評価、及び、ゴム硬化物の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。なお、比較例a-1のアクリルゴムの共重合体組成は、エチレン単位2質量部、ブテン二酸モノブチル単位1.8質量部、エチルアクリレート単位79質量部、n-ブチルアクリレート単位17質量部であった。また、比較例a-1のアクリルゴムのトルエン不溶分は1.0質量%であった。
【0086】
[比較例a-2]
二官能モノマーの投入量を768gに変更したこと以外は、実施例A-1と同様にして、アクリルゴムの作製、及び、架橋性ゴム組成物の作製を図った。結果を表1及び表2に示す。なお、比較例a-2のアクリルゴムの共重合体組成は、エチレン単位2質量部、ブテン二酸モノブチル単位1.8質量部、エチルアクリレート単位75質量部、n-ブチルアクリレート単位14質量部、ポリエチレングリコールジメタクリレート単位7質量部であった。また、比較例a-2で得られたポリマーのトルエン不溶分は65.3質量%であった。比較例a-2では、押出し工程を経てアクリルゴムとして得ることが困難であったため、架橋性ゴム組成物の評価及びゴム硬化物の作製が不可能であった。
【0087】
[比較例a-3]
二官能モノマーの投入量を5.5gにそれぞれ変更したこと以外は、実施例A-1と同様にして、アクリルゴムの作製、架橋性ゴム組成物、及び、ゴム硬化物の作製を行った。結果を表1及び表2に示す。なお、比較例a-3のアクリルゴムの共重合体組成は、エチレン単位2質量部、ブテン二酸モノブチル単位1.8質量部、エチルアクリレート単位79質量部、n-ブチルアクリレート単位17質量部、ポリエチレングリコールジメタクリレート単位1.8質量部であった。また、比較例a-3のアクリルゴムのトルエン不溶分は1.8質量%であった。
【0088】
【0089】
【0090】
[実施例B-1]
<アクリルゴムの作製>
以下の方法でアクリルゴムを作製した。
内容量40リットルの耐圧反応槽に、部分けん化ポリビニルアルコールの水溶液17kg(濃度:4質量%)及び酢酸ナトリウム22gを投入し、攪拌機であらかじめよく混合し、均一懸濁液を作製した。槽内上部の空気を窒素で置換した後、エチレンを槽内上部に圧入し、圧力を50kg/cm2に調整した。槽内を55℃に保持した後、投入口よりエチルアクリレート9.0kg、n-ブチルアクリレート2.2kg、ブテン酸モノブチル390g、二官能モノマーであるエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)98g、及びt-ブチルヒドロペルオキシド水溶液(濃度:0.25質量%)2.0kgを投入して重合を開始させた。反応中、槽内温度を55℃に保ち、6時間で反応を終了した。反応後の重合液にホウ酸ナトリウム水溶液(濃度:0.3質量%)20kgを添加して重合体を固化し、脱水及び乾燥を行ってアクリルゴムを得た。このアクリルゴムはエチレン単位2質量部と、ブテン二酸モノブチル単位(MBM単位、架橋席モノマー単位)1.5質量部と、エチルアクリレート単位(EA単位)78質量部と、n-ブチルアクリレート単位(BA単位)16質量部と、エチレングリコールジメタクリレート単位(二官能モノマー単位)1.2質量部との共重合体組成であり、トルエン不溶分は24.3質量%であった。
【0091】
<架橋性ゴム組成物の作製>
上記方法で得られたアクリルゴム100質量部、カーボンブラック(東海カーボン社製、商品名「シーストSO」)50質量部、流動パラフィン(滑剤、カネダ社製、商品名「ハイコールK―230」)1質量部、ステアリン酸(滑剤、日油社製、商品名「ステアリン酸 つばき」)1質量部、ステアリルアミン(滑剤、花王社製、商品名「ファーミン#80」)0.3質量部、アミン系老化防止剤(大内新興化学工業社製、商品名「ノクラックCD」)0.5質量部、イミダゾール系老化防止剤(大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック810NA」)1.6質量部、架橋剤(Dupont社製、商品名「Diak#1」)0.4質量部、及び、架橋促進剤(ランクセス社製、商品名「Rhenogran XLA-60)0.8質量部を、8インチオープンロールにより混練し、架橋性ゴム組成物を得た。得られた架橋性ゴム組成物は、実施例A-1と同様の方法で評価した。結果を表3に示す。
【0092】
<ゴム硬化物の作製>
上記方法で得られた架橋性ゴム組成物を、熱プレスにて180℃で20分間加熱処理して一次架橋物とした後、熱空気(ギヤーオーブン)にて185℃で3時間加熱処理してゴム硬化物を得た。得られたゴム硬化物は、実施例A-1と同様の方法で評価した。結果を表4に示す。
【0093】
[実施例B-2]
二官能モノマーとして、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)に代えて、ジエチレングリコールジメタクリレート(DEGDM)120gを投入したこと以外は、実施例B-1と同様にしてアクリルゴムの作製、架橋性ゴム組成物の作製、及び、ゴム硬化物の作製を行った。また、実施例B-1と同様にして、架橋性ゴム組成物の評価、及び、ゴム硬化物の評価を行った。なお、実施例B-2のアクリルゴムの共重合体組成は、エチレン単位2質量部、ブテン二酸モノブチル単位1.5質量部、エチルアクリレート単位78質量部、n-ブチルアクリレート単位16質量部、ジエチレングリコールジメタクリレート単位1.4質量部であった。また、実施例B-2のアクリルゴムのトルエン不溶分は17.3質量%であった。
【0094】
[実施例B-3]
二官能モノマーとして、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)に代えて、ポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDM)(東京化成工業株式会社製、n=約4)164gを投入したこと以外は、実施例B-1と同様にしてアクリルゴムの作製、架橋性ゴム組成物の作製、及び、ゴム硬化物の作製を行った。また、実施例B-1と同様にして、架橋性ゴム組成物の評価、及び、ゴム硬化物の評価を行った。なお、実施例B-3のアクリルゴムの共重合体組成は、エチレン単位2質量部、ブテン二酸モノブチル単位1.5質量部、エチルアクリレート単位78質量部、n-ブチルアクリレート単位16質量部、ポリエチレングリコールジメタクリレート単位2質量部であった。また、実施例B-3のアクリルゴムのトルエン不溶分は28.8質量%であった。
【0095】
[実施例B-4]
二官能モノマーとして、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)に代えて、ポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDM)(ALDLICH社製、n=約9)273gを投入したこと以外は、実施例B-1と同様にしてアクリルゴムの作製、架橋性ゴム組成物の作製、及び、ゴム硬化物の作製を行った。また、実施例B-1と同様にして、架橋性ゴム組成物の評価、及び、ゴム硬化物の評価を行った。なお、実施例B-4のアクリルゴムの共重合体組成は、エチレン単位2質量部、ブテン二酸モノブチル単位1.5質量部、エチルアクリレート単位78質量部、n-ブチルアクリレート単位16質量部、ポリエチレングリコールジメタクリレート単位3.3質量部であった。また、実施例B-4のアクリルゴムのトルエン不溶分は33.4質量%であった。
【0096】
[比較例b-1]
エチレンを圧入しなかったこと以外は、実施例B-3と同様にして、アクリルゴムの作製、架橋性ゴム組成物の作製、及び、ゴム硬化物の作製を行った。また、実施例B-1と同様にして、架橋性ゴム組成物の評価、及び、ゴム硬化物の評価を行った。なお、比較例b-1のアクリルゴムの共重合体組成は、ブテン二酸モノブチル単位1.5質量部、エチルアクリレート単位79質量部、n-ブチルアクリレート単位17質量部、ポリエチレングリコールジメタクリレート単位2質量部であった。また、比較例b-1のアクリルゴムのトルエン不溶分は20.4質量%であった。
【0097】
[比較例b-2]
ブテン二酸モノブチルを投入しなかったこと以外は、実施例B-3と同様にして、アクリルゴムの作製、及び、架橋性ゴム組成物の作製を行った。また、実施例B-1と同様にして、架橋性ゴム組成物の評価を行った。なお、比較例b-2のアクリルゴムの共重合体組成は、エチレン単位2質量部、エチルアクリレート単位79質量部、n-ブチルアクリレート単位17質量部、ポリエチレングリコールジメタクリレート単位2質量部であった。また、比較例b-2のアクリルゴムのトルエン不溶分は24.7質量%であった。比較例a-2の架橋性ゴム組成物では、加硫トルクが上昇せず架橋しなかったため、架橋性ゴム組成物の評価及びゴム硬化物の作製が困難となった。
【0098】
【0099】