(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】LIDARシステムにおける時間的ジッタ
(51)【国際特許分類】
G01S 7/484 20060101AFI20240820BHJP
G01S 7/4865 20200101ALI20240820BHJP
G01S 7/497 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G01S7/484
G01S7/4865
G01S7/497
(21)【出願番号】P 2021564442
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(86)【国際出願番号】 US2020030856
(87)【国際公開番号】W WO2020223561
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2023-04-25
(32)【優先日】2019-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519064609
【氏名又は名称】アウスター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】パカラ アンガス
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-056567(JP,A)
【文献】特開昭61-149879(JP,A)
【文献】特開平07-325152(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0253404(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LIDARシステムであって、
トリガパルスに応答して複数のショットの各々の間に光パルスを放出するエミッタを有する光伝送モジュールと、
光を受信するための少なくとも1つの光センサチャネルを有し、前記トリガパルスに応答して、タイムビンのシーケンスについての時間の関数としての受信した光強度のヒストグラムを生成するように構成された光感知モジュールと、
前記光伝送モジュール及び前記光感知モジュールに結合され、トリガパルスのシーケンスを生成してショットごとの前記光伝送モジュール及び前記光感知モジュールの動作を同期させるように構成されたタイミングコントローラと、
前記ヒストグラムを分析してクロストークが存在するか否かを判定し、クロストークが存在するとの判定に応答して、前記ショットごとのジッタを適応的に修正するように構成されたプロセッサと、
を備え、
各ショットは、前記光パルスと、後続のデータ収集期間と、を含む時間であり、
前記光感知モジュールは、前記複数のショットに亘って前記ヒストグラムを蓄積するように構成された第1メモリ回路をさらに有しており、
前記タイミングコントローラは、ショットごとのジッタを各トリガパルスに適用するようにさらに構成されており、
前記ショットごとのジッタは、異なるショットによって異なり、
前記複数のショットにおける前記ショットのうちの少なくとも幾つかについて、前記ショットごとのジッタが1つのタイムビンよりも大きい
ことを特徴とするLIDARシステム。
【請求項2】
前記ショットごとのジッタは、等エネルギーサンプリング技法を使用して、ジッタ値の所定のレンジ内で選択される
ことを特徴とする請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項3】
前記ジッタ値の所定のレンジは、前記ヒストグラムにおけるタイムビンの総数の0~20%であることを特徴とする請求項2に記載のLIDARシステム。
【請求項4】
前記ジッタ値の所定のレンジは、前記ヒストグラムにおけるタイムビンの総数の0~120%である
ことを特徴とする請求項2に記載のLIDARシステム。
【請求項5】
あるジッタ値のレンジに亘って均等に分布されたジッタ値のシーケンスを含むマスタジッタシーケンスを格納するように構成された第2メモリ回路
を更に備え、
前記タイミングコントローラは、前記マスタジッタシーケンスに従って、各トリガパルスのための前記ショットごとのジッタを選択するようにさらに構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項6】
システム起動動作中に前記マスタジッタシーケンスにおける開始位置をランダムに選択するための制御ロジック
を更に備えたことを特徴とする請求項5に記載のLIDARシステム。
【請求項7】
前記ヒストグラムを分析してクロストークが存在するか否かを判定することが、
前記ヒストグラムの1または複数のタイムビンを、当該1または複数のタイムビンの光子の数がしきい値を超えることに基づいて、ピークタイムビンとして識別すること、
前記ピークタイムビン以外のタイムビンについて光子カウント統計を計算することであって、当該光子カウント統計とは、タイムビン当たりのグローバル平均光子カウント、及び、タイムビン当たりの光子カウントの標準偏差、を含むこと、
前記ピークタイムビン以外のタイムビンについてタイムビン当たりのローカル平均光子カウントを決定すること、及び、
前記ローカル平均光子カウントを前記グローバル平均光子カウントと比較して、前記ローカル平均光子カウントと前記グローバル平均光子カウントとの間の差が、ノイズの自然変動の尺度に対して定義されるしきい値に基づいて有意差であるか否かを判定すること、
を含むように、前記プロセッサが更に構成されており、
クロストークは、前記差が前記有意差であるか否かに基づいて、推測される
ことを特徴とする請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項8】
前記エミッタは、各ショット中に1または複数の光パルスからなる光パルス列を放出し、
前記光パルス列の前記光パルスは、互いに対して固定された時間的関係を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項9】
前記光伝送モジュールは、複数のエミッタを含み、
前記光感知モジュールは、複数の光センサチャネルを含み、
前記タイミングコントローラは、同一のショットごとのジッタが前記複数のエミッタの各々及び前記複数の光センサチャネルの各々に適用される、というように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項10】
LIDARシステムを動作させる方法であって、
複数のショットを捕捉する工程
を備え、
前記複数のショットにおける各ショットを捕捉する工程は、
ショットごとのジッタを決定する工程と、
前記LIDARシステムのタイミングコントローラにおいて、前記ショットごとのジッタに少なくとも部分的に基づいて決定される時間にトリガパルスを生成する工程と、
前記LIDARシステムの光伝送モジュールを動作させて、前記トリガパルスと同期された光パルスを放出する工程と、
前記トリガパルスと同期して前記LIDARシステムの光感知モジュールを動作させて、光を受信し、時間の関数として受信した光強度のヒストグラムを蓄積する工程と、
を含み、
前記ヒストグラムは、一連のタイムビンを規定し、
前記ヒストグラムは、前記複数のショットに亘って蓄積され、
前記複数のショットにおける前記ショットのうちの少なくとも幾つかについて、前記ショットごとのジッタが1つのタイムビンよりも大きく、
当該方法は、更に、
前記複数のショットを捕捉した後に、前記ヒストグラムに少なくとも部分的に基づいて、測距情報を計算する工程と、
前記ヒストグラムを分析して、クロストークが存在するか否かを判定する工程と、
クロストークが存在するとの判定に応答して、前記ショットごとのジッタを適応的に修正する工程と、
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項11】
各ショットのために前記ショットごとのジッタを決定する工程は、等エネルギーサンプリング技法を使用して、ジッタ値の所定のレンジ内で前記ショットごとのジッタを選択する工程を含む
ことを特徴とする請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記ジッタ値の所定のレンジは、前記ヒストグラムにおけるタイムビンの総数の0~20%である
ことを特徴とする請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記ジッタ値の所定のレンジは、前記ヒストグラムにおけるタイムビンの総数の0~120%である
ことを特徴とする請求項
11に記載の方法。
【請求項14】
各ショットのために前記ショットごとのジッタを決定する工程は、前記LIDARシステムのメモリ内に格納されたマスタジッタシーケンス内の連続する位置にアクセスする工程を含む
ことを特徴とする請求項
10に記載の方法。
【請求項15】
各ショットのために前記ショットごとのジッタを決定する工程は、前記マスタジッタシーケンスにおける開始位置をランダムに選択する工程を含む
ことを特徴とする請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記ヒストグラムを分析してクロストークが存在するか否かを判定する工程は、
前記ヒストグラムの1または複数のタイムビンを、当該1または複数のタイムビンの光子の数がしきい値を超えることに基づいて、ピークタイムビンとして識別する工程と、
前記ピークタイムビン以外のタイムビンについて光子カウント統計を計算する工程であって、当該光子カウント統計とは、タイムビン当たりのグローバル平均光子カウント、及び、タイムビン当たりの光子カウントの標準偏差、を含む工程と、
前記ピークタイムビン以外のタイムビンについてタイムビン当たりのローカル平均光子カウントを決定する工程と、
前記ローカル平均光子カウントを前記グローバル平均光子カウントと比較して、前記ローカル平均光子カウントと前記グローバル平均光子カウントとの間の差が、ノイズの自然変動の尺度に対して定義されるしきい値に基づいて有意差であるか否かを判定する工程と、
を含み、
クロストークは、前記差が前記有意差であるか否かに基づいて、推測される
ことを特徴とする請求項
10に記載の方法。
【請求項17】
前記LIDARシステムの前記光伝送モジュールを動作させる工程は、単一のエミッタを動作させて、各ショット中に1または複数の光パルスからなる光パルス列を放出する工程を含み、
前記光パルス列の前記光パルスは、互いに対して固定された時間的関係を有する
ことを特徴とする請求項
10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示は、概して、光撮像、検出及び測距(LIDAR)システムに関し、特にLIDARシステムにおけるクロストーク及びレンジエイリアシングを低減するための時間的ランダムジッタの使用に関する。
【0002】
LIDARシステムは、ターゲットにパルスレーザ光を照射し、センサで反射パルスを測定することによって、ターゲットまでの距離を測定する。次いで、飛行時間測定を使用して、ターゲットのデジタル三次元(3D)表現を作製することができる。LIDARシステムは、とりわけ、考古学、地理学、地質学、林学、地図作成、建設、医療撮像、セキュリティ、及び軍事用途を含む、3D深度画像が有用である様々な用途に使用することができる。ほんの一実施例として、自律車両は、障害物の検出及び回避、ならびに車両運行のためにLIDARを使用することができる。別の実施例として、セキュリティシステムは、LIDARを使用して、制限区域内のあり得る侵入者の3D位置及び移動を検出することができる。
【発明の概要】
【0003】
本明細書で説明される発明の特定の実施形態は、ショットごとのジッタを適用して、連続するエミッタパルス間の間隔に変化を生じさせるLIDARシステムに関する。検出器の動作はエミッタの動作と同期し、これによって、一定の飛行時間測定がジッタに関係なく一定の距離に対応する。ショットごとのジッタを適用することにより、他のパルス光源からのクロストークの影響を低減することができ、レンジエイリアシング効果を低減することもできる。クロストーク及び/またはレンジエイリアシングの効果を低減することにより、測距動作の精度を改善することができる。
【0004】
幾つかの実施形態では、LIDARシステムは、光伝送モジュール、光感知モジュール、及び光伝送モジュールと光感知モジュールに結合されたタイミングコントローラを含むことができる。光伝送モジュールは、トリガパルスに応答して、複数のショットの各々の間に光パルスを放出するエミッタであってもよい。光感知モジュールは、光を受信するための少なくとも1つの光センサチャネルを有することができ、トリガパルスに応答して、タイムビンのシーケンスについての時間の関数として受信された光の強度のヒストグラムを生成するように構成されてもよい。光感知モジュールはまた、複数のショットに亘ってヒストグラムを蓄積するように構成された第1メモリ回路を有することができる。タイミングコントローラは、トリガパルスのシーケンスを生成して、ショットごとに光伝送モジュール及び光感知モジュールの動作を同期させるように構成されてもよく、さらに、各トリガパルスにショットごとのジッタを適用するように構成されてもよい。ショットごとのジッタは、異なるショットによって異なることがあり、複数のショットにおけるショットのうちの少なくとも幾つかについて、ショットごとのジッタが、1つのタイムビンよりも大きくなることがある。
【0005】
ショットごとのジッタは、様々な方法で、例えば、等エネルギーのサンプリング技法を使用して選択されてもよい。ジッタ値は、所定のレンジ内(例えば、ヒストグラムにおけるタイムビンの総数の最大20%、50%、100%、120%、またはその他の割合)で選択されてもよい。幾つかの実施形態では、第2メモリ回路は、ジッタ値のレンジに亘って均等に分布したジッタ値のシーケンスを含むマスタジッタシーケンスを格納することができ、タイミングコントローラは、マスタジッタシーケンスに従ってトリガパルスごとにショットごとのジッタを選択するようにさらに構成されてもよい。幾つかの実施形態では、制御ロジックを使用して、システム起動動作中にマスタジッタシーケンスの開始位置をランダムに選択してもよい。
【0006】
幾つかの実施形態では、LIDARシステムはまた、ヒストグラムを分析してクロストークが存在するかどうかを判定し、クロストークが存在すると判定することに応答して、ショットごとのジッタを適応的に修正するように構成されたプロセッサを含むことができる。幾つかの実施形態では、他の動作挙動もまた適応的に修正されてもよく、例えば、パルス列を使用してパルス符号化スキームを導入または変更してもよい。幾つかの実施形態では、修正が、クロストークに関連付けられた方向に選択的に適用されてもよい。
【0007】
幾つかの実施形態では、同じショットごとのジッタが、LIDARアレイのすべてのエミッタ及びセンサチャネルに適用されてもよい。他の実施形態では、異なるショットごとのジッタが、異なるエミッタ及びセンサチャネルに適用されてもよい。
【0008】
幾つかの実施形態では、LIDARシステムを動作させる方法は、幾つかのショットをキャプチャすることと、ショットをキャプチャした後に、ヒストグラムに少なくとも部分的に基づいて測距情報を計算することを含んでもよい。各ショットをキャプチャすることは、ショットごとのジッタを決定することと、LIDARシステムのタイミングコントローラにおいて、ショットごとのジッタに少なくとも部分的に基づいて決定された時間にトリガパルスを生成することと、LIDARシステムの光伝送モジュールを動作させて、トリガパルスと同期した光パルスを放出することと、トリガパルスと同期してLIDARシステムの光感知モジュールを動作させて、光を受信し、時間の関数として受信された光強度のヒストグラムを蓄積することであって、ヒストグラムが一連のタイムビンを定義する、蓄積することと、を含んでもよい。ヒストグラムは、すべてのショットに亘って蓄積することができ、ショットのうちの少なくとも一部について、ショットごとのジッタが1つのタイムビンより大きくなることがある。
【0009】
以下の詳細な説明は、特許請求された発明の性質及び利点のより良い理解を提供するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本明細書で説明される幾つかの実施形態に関連して使用され得るLIDARシステムの自動車用途の実施例を示す。
【
図1B】本明細書で説明される幾つかの実施形態に関連して使用され得るLIDARシステムの自動車用途の実施例を示す。
【0011】
【
図2】幾つかの実施形態による例示的なLIDARシステムのブロック図を示す。
【0012】
【
図3】幾つかの実施形態による、光測距デバイスの部品の簡略化された側面図を示す。
【0013】
【
図4】単一の「ショット」の時間の関数としてのLIDARシステムのLIDARチャネルの動作の実施例を示す。
【0014】
【
図5A】システム間クロストークが存在する場合のタイムビン当たりの光子カウントのヒストグラムを蓄積する実施例を示す。
【
図5B】システム間クロストークが存在する場合のタイムビン当たりの光子カウントのヒストグラムを蓄積する実施例を示す。
【
図5C】システム間クロストークが存在する場合のタイムビン当たりの光子カウントのヒストグラムを蓄積する実施例を示す。
【
図5D】システム間クロストークが存在する場合のタイムビン当たりの光子カウントのヒストグラムを蓄積する実施例を示す。
【0015】
【
図6】本発明の幾つかの実施形態によるショットごとのジッタを示す。
【0016】
【
図7A】本発明の幾つかの実施形態による、ショットごとのジッタを伴うタイムビン当たりの光子カウントのヒストグラムを蓄積する実施例を示す。
【
図7B】本発明の幾つかの実施形態による、ショットごとのジッタを伴うタイムビン当たりの光子カウントのヒストグラムを蓄積する実施例を示す。
【
図7C】本発明の幾つかの実施形態による、ショットごとのジッタを伴うタイムビン当たりの光子カウントのヒストグラムを蓄積する実施例を示す。
【
図7D】本発明の幾つかの実施形態による、ショットごとのジッタを伴うタイムビン当たりの光子カウントのヒストグラムを蓄積する実施例を示す。
【0017】
【
図8】本発明の幾つかの実施形態による、例示的なマスタジッタシーケンスのグラフ表示を示す。
【0018】
【
図9】本発明の幾つかの実施形態による、LIDARチャネルを動作させるためのプロセスのフロー図を示す。
【0019】
【
図10】ヒストグラムデータからクロストーク源の存在を推測するために、幾つかの実施形態において使用され得るプロセスのフロー図を示す。
【0020】
【
図11】バックグラウンドモードを使用して収集されたヒストグラムデータからクロストーク源の存在を推測するために、幾つかの実施形態において使用され得るプロセスのフロー図を示す。
【0021】
【
図12】幾つかの実施形態による、LIDARシステムにおけるクロストークを検出し、LIDARシステムの動作を適応的に修正して、クロストークの影響を低減するためのプロセスのフロー図である。
【0022】
【
図13】ジッタが存在しない場合に発生し得るレンジエイリアシングを示す時間線図を示す。
【0023】
【
図14】本発明の幾つかの実施形態による、ショットごとのジッタを適用することによるレンジエイリアシングの除去を示す時間線図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1.LIDARシステムの概要
本明細書で説明される幾つかの実施形態は、指定された時間に光のパルスを放出し、パルスを放出してからパルスからの反射光を検出するまでの時間を使用して測距データを生成するLIDARシステムにおけるクロストークを低減するための技法に関する。開示される技法の理解を容易にするために、LIDARシステム及び動作の実施例が記載されている。特許請求される発明の実施形態が、具体的に記載される例示的なシステムに限定されないが、多くの異なるLIDARシステムにおいて実現され得ることを理解されたい。
【0025】
1.1.例示的なLIDARシステム
図1A及び
図1Bは、本明細書で説明される幾つかの実施形態に関連して使用され得るLIDARシステムの自動車用途の実施例を示している。自動車用途は、ここでは単に例示のために選択されたものであり、本明細書で説明されるセンサは、他のタイプの車両、例えば、ボート、航空機、列車など、ならびに3D深度画像が有用である多様な他の用途、例えば、医療撮像、測地学、ジオマティクス、考古学、地理学、地質学、地形学、地震学、林学、大気物理学、セキュリティシステム、レーザ誘導、空中レーザスワスマッピング(ALSM)、及びレーザ高度計において、採用されてもよい。
【0026】
図1Aは、自動車用途における角度スキャン式(例えば、回転またはスピニング)LIDARシステム100の実施例を示している。幾つかの実施形態によれば、スキャン式LIDARシステム100は、図示されるように車両105の屋根に取り付けることができる。他の実施形態では、1つ以上のLIDARセンサ及び/または撮像センサを、車両の前部もしくは後部、車両の側部、及び/または車両のコーナを含むがこれらに限定されない車両の他の場所に取り付けることができる。
【0027】
スキャン式LIDARシステム100は、レーザパルスを放出するための光伝送モジュール(光Txモジュールとも呼ばれる)102、及び/またはセンサアレイを組み込み、光Txモジュール102によって放出されたレーザパルスからの反射光を感知することができる光受信モジュール(光Rxモジュールとも呼ばれる)104、を組み込むことができる。幾つかの実施形態では、光Txモジュール102は、光Rxモジュール104と同じハウジング内に配設されてもよい。
【0028】
LIDARシステム100は、スキャンアーキテクチャを採用することができ、光Txモジュール102及び光Rxモジュール104の配向が、外部範囲または車両105の外部にあるシーン内の1つ以上の視野110(例えば、幾つかの実施形態では360度場)の周りでスキャンされてもよい。スキャンアーキテクチャの場合、LIDARシステム100が周囲環境をスキャンしている間に、放出光112をパルス化することができる。例えば、光Txモジュール102は、1つ以上のパルス出力ビームを放出することができ、スキャン式LIDARシステム100は、スキャンされ、回転されて、車両の周りのシーンの異なる部分を異なる時間に照射することができる。幾つかの実施形態では、回転矢印115によって表されるスキャンは、機械的手段、例えば、光エミッタ及びセンサを回転柱または回転プラットフォームに取り付けることによって実施することができる。幾つかの実施形態では、スキャンは、検流計の使用などの他の機械的手段を通じて実施することができる。例えば、1つ以上のMEMSベースの反射器、例えば、デジタルマイクロミラー(DMD)デバイス、デジタル光処理(DLP)デバイスなどを採用するマイクロチップを使用することによって、チップベースの操縦技法を採用することもできる。幾つかの実施形態では、スキャンは、非機械的手段を介して、例えば、電子信号を使用して1つ以上の光フェーズドアレイを操縦することにより達成することができる。
【0029】
動作中、光Txモジュール102は、スキャン式LIDARシステム100が特定の配向にある間、既知の時間に光ビーム112などのパルス光ビームを生成するように動作することができる。シーン内の物体(例えば、物体110)は、光Txモジュール102から放出される光パルスの一部分を反射することができる。次いで、1つ以上の反射部分は、スキャン式LIDARシステム100に戻り、光Txモジュール104によって検出することができる。例えば、光パルス112は、物体110で反射されて、反射部分114を生成することができる。反射部分114は、光Rxモジュール104によって検出することができる。加えて、他の光源からの外部光116もまた、光Rxモジュール104によって検出され得る。以下に説明されるように、外部光116は、スキャン式LIDARシステム100を使用して行われる測距測定に影響を及ぼし得る。幾つかの実施形態では、LIDARシステム100は、測距測定に対する外部光116の影響を低減するように意図されたように動作させることができる。
【0030】
図1Bは、静的LIDARシステム152a、152bが道路車両155の上部に実装される実装150を示している。各静的LIDARシステム152a、152bは、(場合によって、ユニット間で部分的に重なる及び/または重ならない視野を有する)異なる方向を向くことができ、それにより、各ユニットがそれ自体でキャプチャすることができるよりも大きい複合視野をキャプチャすることができる。例えば、LIDARシステム152aは、視野157aをキャプチャすることができ、LIDARシステム152bは、視野157bをキャプチャすることができる。幾つかの実装形態では、静的LIDARシステムの数、静的LIDARシステムの配置、及び各静的LIDARシステムの視野を選択して、車両を囲む環境の360度視野の、全体ではないにしても、大部分を求めることができる。
【0031】
実施例として静的LIDARシステム152aを参照すると、各静的LIDARシステムは、光伝送モジュール(光Txモジュールとも呼ばれる)154及び光受信モジュール(光Rxモジュールとも呼ばれる)156を含むことができる。光Txモジュール154及び光Rxモジュール156は、
図1Aのスキャン式LIDARシステム100の光Txモジュール102及び光Rxモジュール104と類似または同一であり得る。例えば、光Txモジュール154を動作させて、既知の時間に、光ビーム162などのパルス光ビームを生成することができる。シーン内の物体(例えば、物体160)は、光Txモジュール154から放出される光パルスの一部分を反射することができる。次いで、1つ以上の反射部分は、静的LIDARシステム152aに戻り、光Txモジュール156によって検出することができる。例えば、光ビーム162は、物体160で反射されて、反射部分164を生成することができる。反射部分164は、光Rxモジュール156によって検出することができる。加えて、他の光源からの外部光166もまた、光Rxモジュール156によって検出され得る。以下に説明されるように、外部光156は、静的LIDARシステム152aを使用して行われる測距測定に影響を与え得る。
【0032】
幾つかの実施形態では、静的LIDARシステム152a、152bの各々は、それの視野全体(それぞれ、領域157a及び157bとして示される)を一度に撮像することができる。他の実施形態では、静的LIDARシステム152a、152bは、シーンを電子的にスキャンして、シーンの画像をキャプチャすることができる。本明細書で使用される場合、「電子スキャン」は、センサアレイの物理的移動(例えば、再配向)を伴わずに、異なる時間にシーンの異なる部分のデータを収集することを指し、したがって、電子スキャンは、上記の回転/スピニング動作とは区別される。電子スキャンは、例えば、光Txモジュール154内のLIDARエミッタアレイの異なる部分及び光Rxモジュール156内のLIDARセンサチャネルのアレイの対応するサブセットを異なる時間にアクティブ化することによって、またはチップベースのビーム操縦技法などの他の手段によって、例えば、光が光Rxモジュール156のセンサアレイの異なる部分に異なる時間に反射するように、デジタルマイクロミラー(DMD)デバイス、デジタル光処理(DLP)デバイスなどの1つ以上のMEMSベースの反射器を採用して、Txモジュール154からの光を操縦するマイクロチップを使用することによって、実施することができる。したがって、静的LIDARシステム152aは、ポイント160と170の間を電子的にスキャンして、領域157aの範囲内の物体をキャプチャすることができ、LIDARシステム152b及び領域157bについても同様である。
【0033】
図1A及び
図1Bに示されるシステムは例示的なものであり、所望に応じて修正され得る。例えば、
図1A及び
図1Bは、車両の屋根に取り付けられたLIDARシステムを示しているが、当業者は、静的またはスキャン式LIDARシステムを、屋根に加えて、または屋根の代わりに、車両の他の部分に取り付けることができることを理解するであろう。例えば、静的またはスキャン式LIDARシステムは、車両の外縁部、例えば、フロントフェンダ及びバックフェンダの近くに取り付けることができる。1台の車両は、静的LIDARシステムとスキャン式LIDARシステムの組み合わせ、例えば、屋根上にスキャン式LIDARシステム、及びフロントフェンダとバックフェンダ付近に静的LIDARシステム、を搭載してもよい。
【0034】
LIDARシステムのための自動車の実装形態は、本明細書では単に例示のために選択されており、本明細書で説明されるシステムは、他のタイプの車両、例えば、ボート、航空機、列車などにおいて、ならびに上述の用途のいずれかなど、3D深度画像が有用である様々な他の用途において採用され得る。静的及びスキャン式LIDARシステムが共に使用することができ、幾つかのLIDARシステムが、静的モードでの動作またはスキャンモードでの動作を選択可能なように構成され得ることも理解されたい。
【0035】
図2は、幾つかの実施形態による、例示的なLIDARシステム200のブロック図を示している。LIDARシステム200は、
図1AのLIDARシステム100などのスキャン式LIDARシステム、または
図1BのLIDARシステム152aもしくは152bなどの静的LIDARシステムを実装することができる。
【0036】
LIDARシステム200は、光測距デバイス202及びユーザインターフェース250を含むことができる。光測距デバイス202は、測距システムコントローラ204、光伝送モジュール206、及び光感知モジュール208を含むことができる。測距データは、1つ以上の光パルスを光伝送モジュール206から光測距/撮像デバイス202の外部の視野内に伝送することによって、光測距デバイス202によって生成され得る。視野は、光伝送モジュール206及び光感知モジュール208から可変距離にある1つ以上の光反射物体を含み得る。伝送された光の反射部分が、いくらかの遅延時間の後に、光感知モジュール208によって検出される。遅延時間に基づいて、反射面までの距離が決定され得る。幾つかの実施形態では、遅延時間及び反射面までの距離は、以下に説明されるようにヒストグラム技法を使用して決定され得る。例えば、連続波、光復調、ドップラーなどの他の測距法も採用することができる。
【0037】
光伝送(Tx)モジュール206(例えば、
図1Aの光Txモジュール102または
図1Bの光Txモジュール152aもしくは152bに対応し得る)は、光エミッタ(例えば、赤外線レーザ)の一次元アレイまたは二次元アレイであり得るエミッタアレイ214、及びエミッタアレイ214と合わせると光放出システム238を形成し得るTx光学システム216を含み、光放出システム238の例示的な実装形態が以下に説明される。光Txモジュール206は、任意選択のプロセッサ218及びメモリ220をさらに含むことができるが、幾つかの実施形態では、これらのコンピューティングリソースは測距システムコントローラ204に組み込むことができる。幾つかの実施形態では、メモリ220(または測距システムコントローラ204のメモリ232)は、光パルスがいつ伝送されるべきかを示す情報及び/またはプロセッサ218(または測距システムコントローラ204のプロセッサ230)によって実行可能なプログラムコードを格納し、光パルスがいつ伝送されるべきかを決定する。光パルスがいつ送信されるべきかを決定するための具体的な実施例が以下に説明される。
【0038】
光感知(Rx)モジュール208(例えば、
図1Aの光Rxモジュール104または
図1Bの光Rxモジュール154aまたは154bに対応し得る)は、光伝送モジュール206から伝送された光の反射された部分を検出することができる光センサを含み得るセンサアレイ226、及びセンサアレイ226と合わせると光検出システム236を形成し得るRx光学システム228を含むことができ、光検出システム236の例示的な実装形態が以下に説明される。光Rxモジュール208は、プロセッサ222及びメモリ224をさらに含むことができる。(代替的な実装形態では、これらのコンピューティングリソースは、測距システムコントローラ204に組み込むことができる。)
【0039】
幾つかの実施形態では、光測距デバイス202は、電子スキャンモードで動作することができ、一度にエミッタのサブセットのみをアクティブ化することによって、及びエミッタの起動と同期してLIDARセンサチャネルの対応するサブセットのみを読み出すことによって、シーンのLIDAR画像がキャプチャされる。エミッタの異なるサブセットが異なる時間にアクティブ化されると同時にLIDARチャネルの対応するサブセットはエミッタのアクティブ化と同期して読み出され得、最終的にすべてのエミッタがアクティブ化され得、センサアレイ内のすべてのLIDARチャネルが1つのショットを通して読み出され得る。例として、エミッタアレイは、各放出サイクルで左から右に順番に1列ずつアクティブ化することで光を放出することができるが、センサアレイは、対応するシーケンスで対応するLIDARチャネルを読み出すように構成することができる。代替的に、すべてのエミッタ及びすべてのセンサを一度にアクティブ化することもできる。
【0040】
光測距デバイス202の幾つかの実施形態は、光の放出と感知を同期させるための1つ以上の部品を含むことができ、電子スキャンのサポートが含まれる。幾つかの実施形態では、光検出システム236は、センサアレイ226に結合され、センサアレイ226の動作を制御するように構成されたセンサコントローラ225を含むことができる。センサコントローラ225は、ASIC、マイクロコントローラ、FPGA、またはマルチプレクサなどの選択回路に結合された他の任意の適切なプロセッサなど、1つ以上の光センサを選択して光を感知できる任意の適切な部品または部品グループであり得る。同様に、光放出システム238は、エミッタアレイ214に結合され、エミッタアレイ214の動作を制御するように構成されたエミッタコントローラ215を含むことができる。エミッタコントローラ215はまた、センサコントローラ225について上述した任意の適切なプロセッサであってもよく、エミッタアレイ214を動作させるための1つ以上の駆動部品を含むことができる。
【0041】
幾つかの実施形態では、センサコントローラ225及びエミッタコントローラ215が同期され、それにより、エミッタアレイ214の光放出がセンサアレイ226内の光センサの読み出しと同期する。実施例として、センサコントローラ225及びエミッタコントローラ215の両方をタイミングコントローラ217に結合することができ、それにより、両方のコントローラが同じタイミングスキームに基づいて動作することができる。タイミングコントローラ217は、デジタル回路の作動を調整するために特定の速度でハイ状態とロー状態の間で振動するクロック信号を生成するクロック回路219を含むことができ、クロック回路の実施例は当技術分野でよく知られている。以下に説明される様々な時間間隔が、クロック信号を参照して定義され得、タイミングコントローラ217は、クロック信号をエミッタコントローラ215及びセンサコントローラ225に提供することができる。幾つかの実施形態では、タイミングコントローラ217はまた、制御ロジック(ASIC、マイクロコントローラ、FPGA、または任意の他の適切なプロセッサなど)を含み、エミッタコントローラ215及びセンサコントローラ225への追加のタイミング制御信号を生成することができる。例えば、タイミングコントローラ217は、エミッタコントローラ215がエミッタアレイ214内のエミッタのアクティブ化をいつ開始すべきかを示すトリガパルス信号、及びセンサコントローラ225がセンサアレイ226からのデータの収集をいつ開始及び終了すべきかを示すセンサパルス信号を生成するように構成することができる。幾つかの実施形態では、トリガパルス信号及びセンサパルス信号は、同じ信号であってもよく、またはトリガパルス信号及びセンサパルス信号は、一定の時間だけ互いにオフセットされてもよい。加えて、以下に説明されるように、タイミングコントローラ217は、トリガパルスを生成する間隔を変化させることによって、連続するショット間にジッタを導入することができる。幾つかの実施形態では、センサコントローラ225、エミッタコントローラ215、及びタイミングコントローラ217は、すべて同じ集積回路デバイス内に製作することができ、エミッタアレイ214及びセンサアレイ216も同じデバイス内に製作して、コンパクトなLIDARアレイを提供することができる。
【0042】
幾つかのさらなる実施形態では、センサコントローラ225及びエミッタコントローラ215の代替に、またはそれに追加して、測距システムコントローラ204は、光感知モジュール208及び光伝送モジュール206の動作を同期させるように構成することができ、それにより、エミッタアレイ214内のエミッタによる光放出は、センサアレイ226による光センサの読み出しと同期する。例えば、測距コントローラ204は、光伝送モジュール206のエミッタアレイ214に命令して(任意の所与の時間に1つ以上のエミッタから)光を放出させ、それに対応して、光感知モジュール208内のセンサアレイ226に命令して(1つ以上の光検出器チャネルを使用して)光を感知させる。このような実施形態では、測距/撮像システムコントローラ204は、光感知モジュール208及び光伝送モジュール206への命令の基礎となる、それ自身のクロック信号を有することができる。
【0043】
上記または他の同期技法のいずれかを使用して、エミッタアレイ214内のエミッタの異なるサブセットが異なる時間にトリガされ、センサアレイ226内の光センサの異なるサブセットが特定のエミッタのトリガと同期した時間にトリガされる電子スキャンの動作モードを実装することができる。光の放出及び検出のための他の形態のシーケンスが想定されており、電子スキャンは必要とされないことを理解されたい。
【0044】
幾つかの実施形態では、光感知モジュール208のプロセッサ222及びメモリ224は、信号処理動作を実行することができる。信号処理の実施例として、光センサ、または光センサのグループごとに、メモリ224は、連続するタイムビンに亘って検出された光子のカウント(または、他の光強度測定)を蓄積することができ、これらのタイムビンを合わせて使用して、反射光パルスの時系列(例えば、光子のカウント対時間)を再作成することができる。この時系列の蓄積された光子カウント(または、他の光強度の測定)は、本明細書では強度ヒストグラム(または、単にヒストグラム)と呼ばれる。加えて、プロセッサ222は、フォトダイオードの飽和及び消光に起因して発生し得るパルス形状歪みの影響を受けにくい、光子時系列を回復するのを助けるための、整合フィルタリングなどの特定の信号処理技法を適用することができる。幾つかの実施形態では、プロセッサ222は、信号処理技術、例えば、雑音を低減するため、及び/または強度測定値におけるチャネル間の変化量を補償するための較正ベースの補正を適用することができる。
【0045】
幾つかの実施形態では、光感知モジュール208のプロセッサ222からの出力は、さらなる処理のために測距システムコントローラ204に送信される。測距システムコントローラ204は、例えば、ASICまたはASICの一部分としてのFPGAなどのプログラマブルロジックデバイスを使用すること、プロセッサ230をメモリ232とともに使用すること、または上記の幾つかの組み合わせによって、を含む、複数の方法で実現することができる。測距システムコントローラ204は、光検出を開始及び停止するためのコマンド、及び光検出器パラメータを調整するためのコマンドを含むコマンドを送信することによって、光感知モジュール208を制御することができる。同様に、測距/撮像システムコントローラ204は、光放出を開始及び停止するためのコマンド、ならびに(波長同調のための)エミッタ温度制御、エミッタ駆動電力及び/または電圧などの他の光エミッタパラメータを調整するためのコマンドを含むコマンドを送信することによって、光伝送モジュール206を制御することができる。幾つかの実施形態では、測距システムコントローラ204の1つ以上の部品を、センサアレイ226、プロセッサ222、及びメモリ224と同じASICに統合することもでき、それによって、物理的に別個の測距コントローラモジュールの必要性がなくなる。
【0046】
エミッタアレイ214が複数の独立した駆動回路を有する場合は、例えば、測距システムコントローラ204によって、適切に順序付けられ得る複数のオン/オフ信号が存在してもよい。同様に、エミッタアレイがアレイ内の異なるエミッタを異なるように調節するために複数の温度制御回路を含む場合、トランスミッタパラメータは複数の温度制御信号を含むことができる。幾つかの実施形態では、測距システムコントローラ204は、光感知モジュール208及び光伝送モジュール206とデータを交換するための1つ以上の有線インターフェースまたはコネクタ(例えば、回路基板のトレース)を有する。他の実施形態では、測距システムコントローラ204は、光学通信リンクなどの無線相互接続を介して、光感知モジュール208及び光伝送モジュール206と通信する。
【0047】
ユーザインターフェース250は、ハードウェア部品及びソフトウェア部品、例えば、モニタ、キーボード、マウス、CPU及びメモリを有するコンピュータシステム、(例えば、自動車のダッシュボード上の)コンソールに取り付けられたタッチスクリーン、タッチスクリーンを有するハンドヘルドデバイス、またはその他の適切なユーザインターフェースデバイスを含むことができる。ユーザインターフェース250の部品は、LIDARシステム200が取り付けられている物体に対してローカルにあってもよいが、LIDARシステム200を遠隔で動作させる異なる物理システム内にあってもよい。例えば、LIDARシステム200への/からのコマンド及びデータは、セルラネットワーク(LTEなど)、パーソナルエリアネットワーク(Bluetooth、Zigbeeなど)、ローカルエリアネットワーク(WiFi、IRなど)、またはインターネットなどのワイドエリアネットワークを通じてルーティングされてもよい。
【0048】
ユーザインターフェース250は、光測距デバイス202からのLIDARデータをユーザに提示することができ、及び/またはユーザまたは上位のプログラムが1つ以上のコマンドで光測距デバイス202を制御することを可能にする。例示的なコマンドは、光測距デバイス202をアクティブ化または非アクティブ化し、光検出器の露出レベル、バイアス、サンプリング継続時間、及び他の動作パラメータ(例えば、放出パルスパターン及び信号処理)を指定し、輝度などの光エミッタパラメータを指定するコマンドなどを含むことができる。加えて、コマンドは、ユーザまたは上位のプログラムが、結果を表示または解釈するための方法を選択することを可能にし得る。ユーザインターフェースはLIDARシステムの結果を表示することができ、これには、例えば、単一フレームのスナップショット画像、絶えず更新されるビデオ画像、及び/または一部もしくはすべてのピクセルもしくはチャネルについての他の測定の表示が含まれてもよい。ピクセルまたはセンサチャネルについての他の測定の実施例には、周囲雑音強度、戻り信号強度、較正されたターゲット反射率、ターゲット分類(ハードターゲット、拡散ターゲット、再帰反射ターゲット)、距離、信号対雑音比、ターゲット径方向速度、戻り信号時間パルス幅などが含まれる。幾つかの実施形態では、ユーザインターフェース250は、車両からの物体の距離(近接度)を示す情報を提供及び追跡することができる。このような情報を使用して、例えば、視野内の物体を識別及び追跡し、場合によっては、ユーザに警告を提供するか、または測距データを活用する任意の他の動作を実行することができ、これには自律車両制御が含まれるが、限定されない。
【0049】
幾つかの実施形態では、光測距デバイス202は、他のシステムまたはデバイスと通信することができる。例えば、幾つかの自動車用途では、光測距デバイス202は、自動車両制御ユニット(図示せず)と通信することができ、これにより、光測距デバイス202から受信したデータに基づいて車両の制御に関連付けられた1つ以上のパラメータを修正することができる。例えば、完全自律車両では、光測距デバイス202は、車を取り巻く環境のリアルタイム深度画像を提供して、運行を支援することができる。他の自動車用途では、光測距デバイス202は、先進運転者支援システム(ADAS)の一部分として、または、例えば、任意の数の異なるシステム(例えば、適応走行制御、自動駐車、運転者眠気監視、死角監視、衝突回避システムなど)に深度画像データを提供することができる安全システムの一部分として、採用されてもよい。車両制御ユニットが光測距デバイス202に通信可能に結合されていると、警報を運転者に提供することができ、または物体の近接を追跡及び/もしくは表示することができる。
【0050】
光測距システム200はまた、
図2に示されていない他の部品を含むことができる。例えば、スキャン式LIDARシステム(例えば、
図1Aのスキャン式LIDARシステム100)の幾つかの実装形態では、光測距システム200は、プログラム可能及び/または固定機能ロジック回路に実装された制御ロジックとともに、回転アクチュエータ、電気モータ、磁気モータ、回転エンコーダなどの、エミッタアレイ214及びセンサアレイ226を収容するハウジングを回転させるための適切なハードウェア部品を含むことができる。他のスキャン式の実装形態では、光測距システム200は、MEMSミラーなどの光操縦部品及び適切な制御ロジックを含み、電子スキャンをサポートすることができる。
【0051】
幾つかの実施形態では、光測距デバイス202は、回転式測距システムを実装することができ、この回転式測距システムは、連続的に(例えば、10~30Hzの速度で)回転することができ、現在の回転角度に基づいて、データ収集をいつ開始及び停止するかを決定することができる。例えば、光測距デバイス202は、センサアレイ226の角度位置を(例えば、回転エンコーダを使用して)追跡することができ、均一に離間された角度位置に対応する一組のM「測定角度」φi(i=1、2、...M)を定義することができる。センサアレイ226は、(測距デバイス202の他の部品とともに)均一な角速度で連続的に回転することができ、センサチャネルは、連続的に信号を生成することができる。メモリ224は、連続するタイムビンに亘って検出された光子のカウントを蓄積することができ、これを使用して、以下に説明されるように強度ヒストグラムを作成することができる。コントローラ(例えば、測距システムコントローラ204)は、エンコーダ位置が測定角φiのうちの1つに対応するときを示す信号を受信することができる。この信号は、「マーカ」信号とも呼ばれ、センサチャネルの連続する測定期間の間の境界をマーク付けすることができる。この信号に応答して、メモリ224に収集されたヒストグラムデータは、分析のためにデジタル信号プロセッサ(DSP)(例えば、プロセッサ222またはプロセッサ230)に送信することができ、これには、例えば、ヒストグラムデータにフィルタを適用して、反射されたLIDARパルスの受信の正確な時間を決定することを含むことができる。同じ信号に応答して、メモリ224は、次のヒストグラムのためにデータの累積を開始することができる。幾つかの実施形態では、メモリ224は、光子カウントを格納するための専用の2つ(またはそれ以上)のバンクを含むことができ、代替の測定期間からの光子カウントデータを、代替のバンクに格納することができる。連続回転は、必須ではないことも理解されたい。幾つかの実施形態では、回転式測距システムは、回転し、段階的にデータを収集することができ、例えば、第1の測定角度に回転し、測定期間の間にデータを収集し、次いで次の測定角度に回転し、データ収集を繰り返すことができる。さらに、上記のように、LIDARシステムは、回転部品なしで動作する静的システムとすることができ、測定期間は、任意の所望のタイミングで開始されてもよい。
【0052】
LIDARシステム200は例示的なものであり、変形及び修正が可能であることが理解されよう。例えば、特定のプロセッサ、コントローラ、及びメモリが、LIDARシステム200内の異なるモジュールに関連付けられて示されているが、幾つかの実施形態は、異なる配置を提供してもよく、例えば、1つのプロセッサ及びメモリが、光伝送モジュール及び光感知モジュールの両方に動作制御及びサポートを提供する。すべてのプロセッサは、従来のデジタルロジック回路などを使用して実装することができ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、FPGA、ASICなどを含む。すべてのメモリは、SRAM、DRAM、フラッシュRAMなど従来の半導体ベースのメモリ回路を使用して実装できる。他の実装形態も可能である。
【0053】
図3は、本発明の実施形態による、光測距デバイス300の部品の簡略化された側面図を示している。光測距デバイス300は、
図2の光測距デバイス202の実装形態であリ得る。光測距デバイス300は、光伝送(Tx)モジュール306(例えば、光伝送モジュール206を実装する)及び光感知(Rx)モジュール308(例えば、光感知モジュール208を実装する)を含む。
【0054】
図3に示されるように、Txモジュール306は、Tx側マイクロ光学素子パッケージ312及びバルク光学素子314を含むことができる。Tx側マイクロ光学素子パッケージ312は、幾つかの光エミッタ316(例えば、
図2のエミッタアレイ214を実装する)を含み、任意選択的に、マイクロレンズ層318及び開口層320を含む。エミッタ316は、トランスミッタチャネルの一次元アレイまたは二次元アレイ、例えば、ボックス領域に示されたチャネル325に配置され得る。トランスミッタチャネルの各チャネルは、狭帯域光を放出することができる1つ以上の光エミッタ316、例えば近赤外線(NIR)垂直キャビティ半導体レーザ(VCSEL)などと、任意選択的にレンズ層318からのマイクロレンズ及び開口層320からの開口と、を有する。
【0055】
Rxモジュール308は、Rx側バルク撮像光学モジュール330及びRx側センサパッケージ332を含むことができる。Rx側センサパッケージ332は、幾つかの光感知チャネル334を含み(例えば、
図2のセンサアレイ226を実装する)、任意選択的に、マイクロレンズ層336及び開口層338を含む。光感知チャネル334は、一次元または二次元アレイに配置することができ、これは、Tx側マイクロ光学素子パッケージ312の配置と一致することができ、光感知チャネル334は、各マイクロ光学素子トランスミッタチャネル325に対応する。各光感知チャネル334は、コリメート光学系、拡散器など、所望に応じて、ならびに、対応するエミッタ316によって放出される波長を有する垂直入射光子を選択的に通過させるための狭帯域通過フィルタを含むことができる。各光感知チャネルはまた、狭帯域通過フィルタを通過する光子を受信するように配置された一組の1つ以上の光センサを含むことができる。各光センサは、例えば、1つ以上の標準フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード(APD)、単一光子アバランシェダイオード(SPAD)、RCP(共振空洞フォトダイオード)、光学ナノアンテナ、マイクロボロメータ、またはその他の好適な光検出器で作製された検出器アクティブ領域で光子を検出することが可能な光センサであり得る。単一の光感知チャネル334は、単一の大きな光子検出領域と比較して、通常、より高いダイナミックレンジ、より速い応答時間、または他の有益な特性を有する単一のセンサとして作動するように協働する複数の感光領域(例えば、複数のSPAD)を含むことができることを理解されたい。他の構造を提供して、検出効率を改善し、隣接するセンサチャネルとのクロストークを低減することもできる。
【0056】
動作中、Txモジュール306は、例えば、10nm、2nm、1nm、0.5nm、0.25nm以下のスペクトル幅を有する、例えば、NIR光のパルスを、1つ以上の視野に伝送することによって、LIDARシステム300の周囲の領域内の物体にアクティブな照射を提供することができる。エミッタ316のうちの1つから放出された光は、Tx側マイクロ光学レンズ層318のマイクロ光学系のうちの1つに接近するにつれて発散する。マイクロレンズ層318内のマイクロレンズは、発散された光をキャプチャし、それを、マイクロレンズのアレイ及びエミッタ316のアレイの位置に対応する開口のアレイを含み得る開口層320内の開口と一致する焦点面に再集束させる。開口層320は、システム内のクロストークを低減することができる。開口を出射した後に、集束した光は再び円錐の形態で発散し、次いでTx側バルク撮像光学モジュール314に衝突する。幾つかの実施形態では、マイクロレンズ層318とTx側バルク撮像光学モジュール314との間の分離は、それらの焦点距離の合計に等しく、それにより、開口アレイ320で集束された光は、Tx側バルク撮像光学モジュール314の出力においてコリメートされた光として現れ、各コリメートされた光線束は異なる主光線角度でTx側バルク撮像光学モジュール314を出射する。したがって、各エミッタからの光は、デバイスの前方の異なる視野に向けられる。幾つかの実施形態では、Tx側バルク撮像光学素子314は、レンズの(エミッタ側である)撮像側でテレセントリックであり、すなわち、バルク撮像光学素子314の画像側の主光線は、互いに実質的に平行であり、画像平面(エミッタ平面)上のあらゆる位置に対して画像平面に垂直である。この構成では、エミッタアレイは、テレセントリック光源として動作することができ、すなわち、光学系は、エミッタアレイによって生成される実質的にすべての光を、アレイの外縁部上のエミッタから放出される光でさえも、キャプチャする。
【0057】
光線340として示される、視野内の物体で反射する、Txモジュール306によって放出されたる光の部分は、複数の方向からRx側バルク撮像光学モジュール330に進入する。Rx側バルク撮像光学モジュール330は、光線340をRx側入力開口層338と一致する平面に集束させ、光が光センサチャネル334に進入することを可能にする、単一レンズまたは多重レンズ群を含むことができる。幾つかの実施形態では、Rxモジュール308は、各エミッタ316のための光感知チャネル334を含み、各個々の光感知チャネル334の視野は、それぞれのエミッタ316の視野と一致する。
【0058】
上述のLIDARシステムは例示的なものであり、変形及び修正が可能であることが理解されよう。異なる図を参照して説明されるLIDARシステムの部品は、同じLIDARシステム内で組み合わせることができる。幾つかの実施形態では、LIDARシステムは、同じASIC上に製作された光Txモジュール及び光Rxモジュールを有することができ、これもまた、プロセッサ及びメモリを組み込むことができる。ただし、特定の実装形態は必要とされない。LIDARシステムは、任意の数のチャネル(単一チャネルのみを含む)を有することができる。特定の光の波長、タイミングパラメータ、光学素子などは、所望に応じて変更することができる。特許請求される発明の特徴を組み込んだLIDARシステムは、測距データが有用である任意の用途で使用することができる。
【0059】
1.2.例示的なLIDAR動作
LIDARシステム300などのLIDARシステムは、幾つかのLIDARチャネルを有し、その各々は、エミッタ(例えば、エミッタチャネル325)及び対応する光センサチャネル(例えば、光センサチャネル334)を含む。LIDARシステム300(または他のLIDARシステム)を動作させて、エミッタチャネル325からの光パルスの放出と対応する光感知チャネル334による反射光の検出との間の時間に基づいて、視野内の物体までの距離を決定することができる。次に、単一のLIDARチャネルの動作の実施例が記載されるが、各LIDARチャネルが同様に動作することができることを理解されたい。
【0060】
動作中、エミッタチャネル325は、適宜アクティブ化され、光のパルスを放出することができ、光のパルスは特定の方向に環境内に移動する。光の一部は、環境内の物体で反射し、光感知チャネル334内の光センサによって検出することができる。測距アプリケーションをサポートするために、光感知チャネル334は、一組の短い時間間隔(タイムビンと呼ばれる)の各々の間に受信された光強度を測定することができる。例えば、上述のように、光感知チャネル334は、複数のSPADを含んでもよく、光子を信号伝達するSPADの数は、光強度の代用として使用することができる。光強度を測定することができる光子カウント検出器または他のタイプの検出器も使用することができる。タイムビンの継続時間は、所望に応じて選択することができ、様々な実施形態において、各タイムビンは、1ns、2ns、5nsなどとすることができる。
【0061】
図4は、単一の「ショット」の時間の関数としてのLIDARシステム300のLIDARチャネルの動作の簡略化された実施例を示している。線402は、エミッタチャネル325への電力を示している。時間t
1において、パルス403がエミッタチャネル325に印加され、エミッタチャネル325は、パルス403に応答して光のパルスを放出する。線404は、各タイムビンにおける光感知チャネル334内の光子カウントのヒストグラムを表している。この実施例における光感知チャネル334は、時間t
1で感知を開始する。(幾つかの実施形態では、データ収集は、t
1と同期して開始する、例えば、同時にまたは小さいが一定のオフセットで開始することができる。)最初に、ノイズが検出され得るが、本明細書で使用される場合、「ノイズ」は、環境内の周囲光の光子、またはLIDARシステム300の隣接チャネルからの迷光、ならびに電子ノイズ(すなわち、光子によって引き起こされない信号)を含むことがある。しばらくして、時間t
Rで、光子カウントにおいてピーク406が検出される。幾つかの実施形態では、ピーク406は、示されるようにしきい値N
minを使用して検出することができる。飛行時間は、t
R-t
1として計算することができ、反射物体までの距離は、c(t
R-t
1)/2として定義することができ、cは光速である。データ収集期間は、固定された継続時間t
sを有することができ、その後、次のパルスを生成することができる。
【0062】
幾つかの実施形態では、信号対ノイズ識別は、複数のショットに亘ってヒストグラム404を蓄積することによって改善することができる。異なるショット中に各ビンに追加された光子カウントが、ショットのパルス開始時間t1に対して同じ固定時間に対応する限り(かつ、総蓄積時間が環境内の物体の予想される移動速度に対して短い場合)、信号に対応するタイムビンは、ノイズに対応するタイムビンよりも速く光子を蓄積すると予想される。これにより、信号をノイズから区別するためのより高いしきい値が可能になり、測距決定の精度を改善することができる。
【0063】
信号とノイズとの間の識別を改善するための他の技法も使用することができ、フィルタリング技法が含まれる。例えば、各ショットにおいて、エミッタは(異なる継続時間を有し得る)2つ以上のパルスを有するパルス列を生成することができ、(ショットごとか、または複数のショットで構成される「サイクル」に亘ってヒストグラムを蓄積した後に)整合フィルタを生のヒストグラムデータに適用して、フィルタリングされたヒストグラムデータを生成することができる。フィルタリングされたヒストグラムデータを分析して、パルス列の放出パターンに対応するパターンを検出することができる。LIDARシステムにおける信号対ノイズ識別を改善するための蓄積、パルス列、整合フィルタリング、及び関連する技法の実施例は、同一出願人による米国特許出願公開第2018/0259645号に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。これら及び他の技法のいずれも、以下に説明されるように、ショットごとのジッタを実装するLIDARシステムに適用され得ることを理解されたい。
【0064】
2.外部パルス源からのクロストーク
LIDARセンサチャネル(例えば、上述のセンサチャネルのいずれか)は、特定の(典型的には狭い)周波数帯域内で、光子を検出し、及び/または別様に光強度を測定するように設計され得ることを理解されたい。このようなLIDARセンサチャネルは、LIDARエミッタから生じる光を、偶然にもLIDARエミッタと同じ波長の光を生成する何らかの他の光源から生じる光と区別できないことがある。「クロストーク」は、本明細書では、LIDARセンサチャネルが動作可能に結合されるLIDARエミッタ(またはLIDARエミッタアレイ)以外の何らかの光源から生じるLIDARセンサチャネルによって感知される光を指すために使用される。本発明の特定の実施形態は、このようなクロストークを識別、低減、及び/または除去するための技法に関する。
【0065】
このセクションでは、LIDARシステム300などのLIDARシステムが、光強度データ(例えば、特定の光感知チャネルにおける光子カウント)が(例えば、上述のように)複数のショットに亘って蓄積される「蓄積」モードで動作し、クロストーク源が、信号として誤認される得るヒストグラムにおいてクロストークピークを形成するように蓄積し得る規則的な間隔でパルスを放出していると仮定する。このタイプのクロストークの影響を低減するために使用可能な技法の実施例が次に説明される。実施例が、LIDARシステム300またはLIDARシステム200を参照して説明されるが、同じ技法が、上述のように、複数のショットに対応する光強度データが(例えば、ヒストグラムで)蓄積される任意のLIDARシステムに適用され得ることを理解されたい。
【0066】
2.1.クロストークピーク
ショットは、規則的な間隔で発生することができる。しかし、場合によっては、LIDARシステム300は、別のLIDARシステムの視野内で動作していてもよく、光感知チャネル334は、他のLIDARシステムからの光を感知してもよい。両方のLIDARシステム内のエミッタが同じショット周波数で動作している場合、LIDARシステム間のクロストークをもたらし得る。例示として、
図5A~
図5Dは、システム間クロストークの存在下でのタイムビン当たりの光子カウントのヒストグラムを蓄積する実施例を示している。
図5A~
図5Cは、3つの異なるショットからの代表的なヒストグラムを示し、
図5Dは、
図5A~
図5Cを含む一組のショットについてヒストグラムを蓄積した結果を示している。
図5Dでは、2つの別個のピーク504及び506はそれぞれ、しきい値N
minを超過している。この場合、ピーク504は、エミッタ316からの反射光に対応する「真の」ピークであり、一方、ピーク506は、外部パルス光源からの光に対応する「クロストーク」ピークである。ただし、LIDARシステム300は、真のピーク504をクロストークピーク506から区別することができないことがある。例えば、この実施例は、クロストークピーク506よりも高い最大光子カウントを有する真のピーク504を示しているが、これは常にそうであるとは限らない。
【0067】
2.2.クロストークを低減するショットごとのジッタ
特定の実施形態は、エミッタ316の連続パルスのタイミングにおいて、本明細書ではショットごとのジッタ(または単にジッタ)と呼ばれる、準ランダム変化を導入することによって、このタイプのクロストークを低減することができる。
図6は、本発明の実施形態による、ショットごとのジッタを示している。
図6は時間線図である。ショットは、イベントマーカ601、602、603、604によって示されるように、規則的な間隔(0、τ、2τ、3τなど)で開始する。しかし、各ショット(i)内では、イベントマーカ611、612、613、614によって示されるエミッタ316へのトリガパルスは、ショットの「開始」時間後にショット固有のジッタ(時間Δt
i)だけ遅延される。(この実施例では、Δt
2が偶然ゼロであることに留意されたい。)各ショットのデータ収集期間は、影付き矩形621、622、623、624によって示され、そのショットのトリガパルスと同期し、一定の継続時間(例えば、
図4を参照して上で定義されたt
s)である。
【0068】
各ショットのジッタは、様々な技法を使用して選択することができ、具体的な実施例が以下に説明される。ショット固有のジッタは、ヒストグラムのタイムビンより長くすることができ、例えば、ショットのデータ収集フェーズの総継続時間の最大20%、または所望に応じてより長くすることができる。異なるショットは、トリガパルスが規則的な間隔で発生しないように、異なるショット固有のジッタを有することが好ましい。
【0069】
光感知チャネル334は、各ショット中にトリガパルスと同期して(ショットの開始と同期せずに)データを記録し始め、それにより、複数のショットに亘って蓄積されたヒストグラムにおいて、LIDARシステム300から一定の距離にある物体からの反射光による光子カウントが同じタイムビンに蓄積される。クロストーク光源が同じショット固有のジッタで動作していない限り、異なるショットは、異なるタイムビンに蓄積するクロストークによる光子カウントを有することになる。したがって、クロストークのピークは、ヒストグラムの複数のビンに亘って「拡散」され得る。
図7A~
図7Dは、本発明の実施形態による、ショットごとのジッタを有するタイムビンごとの光子カウントのヒストグラムを蓄積する実施例を示している。
図7A~
図7Cは、3つの異なるショットからの代表的なヒストグラムを示し、
図7Dは、
図7A~
図7Cを含む一組のショットについてヒストグラムを蓄積した結果を示している。
図7A~
図7Cでは、クロストークピーク706a~706cは、ショットのデータ収集の開始に対して異なる時間に発生し、一方、真のピーク704a~704cは、ショットのデータ収集の開始に対して同時に発生する。結果として、
図7Dに示される蓄積ヒストグラムでは、クロストークピーク706dは、幾つかのタイムビンに亘って拡散されているが、真のピーク704dは、同様に拡散されていない。このように、適切なしきい値N
minは、真のピーク704dをクロストークピーク706dから確実に区別することができる。
【0070】
各ショットについてのショットごとのジッタは、所望に応じて選択することができ、ジッタは所望するだけ長くすることができる。クロストークピークを効果的に拡散するために、サイクル内の異なるショットに対して選択されたジッタは、幾つかのタイムビンにまたがるのに十分に大きい量だけ変化することができる。例えば、幾つかの実施形態では、各ショットは、1μsのデータ収集期間(すなわち、トリガパルスとヒストグラムの最後のタイムビンとの間の時間)を有し、各ショットのジッタ時間は、0~200ns(20%)のレンジで選択することができる。ショット間隔(すなわち、
図6に示されるような、1つのショットの開始から次のショットの開始までの時間τ)は、ジッタを考慮するのに十分長く、それにより、前のショットのためのデータ収集期間の終了前に次のショットが開始しないようにすることができる。例えば、データ収集期間が1μsであり、ジッタが最大200nsである場合、ショット間隔τは1.2μs(または、それ以上)とすることができる。
【0071】
幾つかの実施形態では、ショットごとのジッタΔtiはランダムに選択することができるが、ランダムな選択は「塊状」となり得(例えば、複数の連続するショットに対して同じ値が選択され得る)、これは、所望の拡散効果を低減し得る。したがって、幾つかの実施形態は、純粋にランダムではない等エネルギーサンプリング技法または他の技法を使用して、ショットごとのジッタの「塊状」シーケンスを回避する。例えば、ヒストグラムが20ショットに亘って蓄積され、ジッタに対して10個のあり得る値がある場合、各あり得るジッタ値は2回選択されるべきであり、より一般的には、ヒストグラムがM個のショットに亘って蓄積され、ジッタに対してJ個のあり得る値がある場合、各あり得るジッタ値はM/J回選択されるべきである(M/Jが整数でない場合は端数処理を受ける)。この制約を受けるランダムまたは疑似ランダム選択技法を使用することができる。
【0072】
幾つかの実施形態では、「マスタ」ジッタシーケンスは、(例えば、ジッタ時間値のシーケンスをデバイスファームウェアにロードすることによって)事前定義することができる。
図8は、本発明の実施形態による例示的なマスタジッタシーケンスのグラフ表示を示している。縦軸はショット数に対応し、横軸はショット数に割り当てられたショットごとのジッタΔt
iに対応する。幾つかの実施形態では、ショットごとのジッタΔt
iは、特定の時間量(例えば、0ns~200ns、または0μs~1.2μsのレンジ内)として表すことができる。他の実施形態では、ショットごとのジッタΔt
iは、データ収集期間の割合またはパーセンテージ(例えば、0~0.2または0~1.2)として表すことができ、それにより、同じマスタジッタシーケンスが、データ収集期間の長さ及び/またはショット間隔が調整可能なパラメータであるシステムにおいて使用されることを可能にする。
【0073】
この実施例では、ヒストグラムが40ショットの「サイクル」に亘って蓄積されると仮定している。サイクル内で、各ショットに使用されるジッタ値のシーケンスが、等エネルギーサンプリングを使用して作成される。例えば、ジッタ値は、1つのタイムビンまたはその倍数(例えば、1ns、2ns、5nsなど)の幅の増分で、0~200nsのレンジで割り当てることができる。ジッタ値の異なるシーケンスを異なるサイクルに割り当てることができ、例えば、
図8のサイクル1及びサイクル2は、異なるジッタシーケンスを有する。任意の数Cのサイクルについてのジッタシーケンスを定義することができる(例えば、数百サイクル)。幾つかの実施形態では、異なるサイクルについてのジッタシーケンスは、同じ一組のあり得るジッタ値の異なる順列とすることができる。ジッタシーケンスは、動作に先立って(例えば、デバイスファームウェアの一部として)生成され、例えば、サイクル内のサイクル番号及びショット番号によってインデックス付けされたジッタアレイとして、LIDARシステム200のメモリに格納することができる。幾つかの実施形態では、LIDARシステム200のすべてのインスタンスは、それらのそれぞれのジッタアレイ内に同じコンテンツを有する。起動時に、LIDARシステム200は、開始サイクル番号をランダムに(または疑似ランダムに)選択し、対応するジッタシーケンスを使用し、次いで、サイクル番号をインクリメントして、次のサイクルのための異なるジッタシーケンスを選択することができる。マスタジッタシーケンスの終了に到達すると、LIDARシステム200は開始にループバックすることができる。これにより、偶然互いに近接しているLIDARシステム200の2つの異なるインスタンスが、同時にマスタジッタシーケンス内の同じポイントに偶然存在する可能性が低くなる。LIDARシステム200の2つのインスタンスが任意の所与の時間に異なるジッタ値を適用している限り、それらの間のクロストークは、いずれのシステムにおいてもスプリアス信号ピークを生成する可能性は低い。
【0074】
幾つかの実施形態では、マスタジッタシーケンスは、(例えば、上述のように)多数のサイクルに亘って生成され、次いでマスタジッタシーケンスの長さがサイクル当たりのショット数の整数倍ではないように、(例えば、最後のサイクルの1つのショットを除外することによって)切り詰められ得る。この場合、LIDARシステム200は、マスタジッタシーケンス内の任意の個々のエントリを開始ポイントとしてランダムに(または疑似ランダムに)選択し、そのポイントからシーケンスを通してインクリメントし始め、終了ポイントに到達するたびにループすることができる。これにより、偶然互いに近接しているLIDARシステム200の2つの異なるインスタンスが、同時にマスタジッタシーケンスの同じポイントに偶然存在する確率をさらに低減することができ、それらの間のクロストークが、いずれのシステムにおいてもスプリアス信号ピークを生成する可能性がさらに低くなる。
【0075】
マスタジッタシーケンスの使用をさらに示すために、
図9は、本発明の実施形態によるLIDARチャネルを動作させるためのプロセス900のフロー図である。プロセス900は、例えば、タイミングコントローラ217及び/またはプロセッサ230を使用して、
図2のLIDARシステム200に実装することができる。
【0076】
プロセス900は、LIDARシステム200が初期化されて測距動作の実行を開始するときに開始することができる。例えば、プロセス900は、LIDARシステム200のシステム起動中に(例えば、システムの電源投入に応答して)、または測距動作を開始するためのユーザ入力コマンドに応答して開始することができる。ブロック902において、プロセス900はシードを取得することができる。シードは様々な方法で取得することができる。例えば、シードは、当技術分野で知られている技法を使用して、システムクロックに基づいて生成することができる。他の技法も使用することができる。必須ではないが、プロセス900が開始するたびに異なるシードを取得することができると仮定する。ブロック904において、プロセス900は、シードに基づいて、マスタジッタシーケンス(例えば、
図8を参照して上述したシーケンス)中の開始位置を選択することができる。例えば、マスタジッタシーケンスは、メモリ232(またはタイミングコントローラ217のメモリ)内にアレイとして格納することができ、シードを使用して、アレイ内の場所を選択することができる。
【0077】
ブロック906において、測距サイクルが開始する。上述のように、測距サイクルは、固定数のショット(例えば、20ショット、40ショット、または何らかの他の数のショット)を含むことができ、ブロック908において、測距サイクル内のショットを開始することができる。
【0078】
ブロック910において、プロセス900は、マスタジッタシーケンスから次のジッタ値を選択する。第1のショットについて、選択されたジッタ値は、ブロック904において選択された開始位置に対応するジッタ値とすることができる。ブロック912において、プロセス900は、選択されたジッタ値に基づくオフセット時間で(少なくとも1つのエミッタチャネルのための)トリガパルスを生成する。ブロック914において、プロセス900は、対応するエミッタチャネルへのトリガパルスと同期して、光感知チャネルによるデータ収集を開始する。トリガパルスの時間とデータ収集の開始時間との間の任意のオフセットが(1つのタイムビン内で)一定に保たれる限り、データ収集はトリガパルスと同時に開始する必要はないことを理解されたい。ショットのデータ収集は、タイムビン当たりの光子カウントのヒストグラムを生成するまたはインクリメントすることなどを含むことができる。ブロック916において、プロセス900は、ショットのデータ収集が完了するまで待機することができる。待機の継続時間は、データ収集期間tsの長さに依存し、これは、特定のLIDARシステムの最大レンジに依存し得る。
【0079】
ブロック918において、プロセス900は、サイクルが完了したかどうかを判定する。上記のように、各測距サイクルは、固定数のショットを含むことができ、カウンタまたは同様の構造を使用して、固定数のショットが完了したかどうかを判定し得る。そうでない場合は、プロセス900はブロック908に戻り、次のショットを開始する。次のショットについて、ブロック910において、プロセス900は、マスタジッタシーケンスの次の位置に進み、対応するジッタ値を選択することができ、マスタジッタシーケンスの終了に到達すると、プロセス900は、マスタジッタシーケンスの開始にループバックすることができる。
【0080】
ブロック918におけるサイクルの完了時に、プロセス900は、ブロック920に進み、蓄積されたヒストグラムを使用して、測距情報(例えば、環境内の物体までの距離)を決定することができる。測距情報及び/または他の情報、例えば、ヒストグラム内の生の光子カウントの一部またはすべて、ピークを特徴付ける情報(例えば、高さ及び/または幅)は、LIDARシステムによって提供される測距情報及び/または他の情報に基づいてグラフィック画像をレンダリングするレンダリングエンジン、データ収集及び記憶システム、データを表示するユーザインターフェース、または測距情報に応答して動作する自動制御システムなどの下流のデバイスまたはシステムに提供することができる。ブロック922において、プロセス900は、ブロック906に戻ることによって、新たなサイクルを開始することができる。新たなサイクルを開始することは、すべてのヒストグラムデータをリセットすることを含み得るが、マスタジッタシーケンス内の位置はリセットしない。このようにして、プロセス900は無期限に続けることができる。任意の時点で、これ以上サイクルを開始すべきではないと判定される場合、プロセス900はブロック930で終了することができる。
【0081】
プロセス900は例示的なものであり、変形及び修正が可能であることを理解されたい。特定の順序で説明される動作は、ロジックが許す限り、異なる順序で、または並行して実行することができ、一部の動作は省略することができ、他の動作は、修正または組み合わせることができる。
【0082】
例えば、上述の実施例では、所与のショットのジッタ値は、所定のマスタジッタシーケンスに従って選択される。所定のマスタジッタシーケンスを使用することにより、単純なランタイムロジックがシーケンスに従って進み、各ジッタ値を順に選択することが可能になる。別の実装形態は、例えば、リアルタイムまたはほぼリアルタイムで出力を生成する等エネルギーサンプリング技法を実装することによって、所与のショットのジッタ値がリアルタイム(またはほぼリアルタイム)で選択されることを可能にするが、これは、リアルタイム制御ロジックを複雑にし得る。
【0083】
上述の実施例では、プロセス900は、ショット当たり単一のパルスを提供する。当業者は、プロセス900が、各ショットが所定の間隔で離間された1つ以上のパルスのパルス列を含むLIDARシステムに適用され得、ジッタがパルス列の第1のパルスに適用され得、パルス列の後続のパルスが第1のパルスの時間に対して一定の時間に生成され得ることを理解するであろう。パルス列の使用は、様々なパルス符号化スキーム(例えば、Barker符号化)が様々な光源から生じるパルスを区別することを容易にすることを可能にするが、パルス列及び符号化技法の実施例が、上で参照した米国特許出願公開第2018/0259645号に記載されている。本発明の幾つかの実施形態では、上述のジッタを適用して、同じまたは類似のパルス符号化スキームを偶然使用する光源から生じるパルスを区別することができる。
【0084】
ジッタ値の特定の選択は変えることができる。上述のように、ジッタを使用して、ヒストグラム内の複数のタイムビン間でクロストークピークを拡散させることができ、したがって、ジッタは1つのタイムビンよりも大きくなければならない。幾つかの実施形態では、ジッタの最大量は、サンプリング期間の任意の割合として定義することができ、幾つかの実施形態では、割合は1より大きくすることができる。例えば、幾つかの実施形態は、データ収集の最大10倍のジッタ(例えば、1μsのサンプリング期間に対して最大10μsのジッタ)を可能にする。ジッタがデータ収集期間を超過する場合、それに応じて、スループット(または連続するショットのレート)を低減することができ、それにより、ショットはオーバーラップしない。さらに、上述の実施例は、ショット周期の名目上の開始に対してトリガパルスを遅延させる「正の」ジッタオフセットを割り当てるが、他の実装形態は、「負の」ジッタオフセットを使用し得、それにより、次のショットの第1のパルスの前に1つのショットのデータ収集が終了する限り、トリガパルスがショット周期の名目上の開始よりも早く発生する。ジッタは、少なくとも2つの点で、上で参照した米国特許出願公開第2018/0259645号に記載のパルスのスタガリングとは異なることに留意されたい。1つは、パルスのスタガリングは、エミッタとセンサのタイミングに変化を導入し、それにより、エミッタからの反射光の到着時間が移動されるが、対照的に、本明細書で説明されるジッタは、相対的エミッタ/センサタイミングを変化させない。もう1つは、ジッタは、蓄積プロセスにおいて複数のヒストグラムビンに亘ってクロストークパルスを拡散させるように意図され、この場合、スタガリングは通常、1つのタイムビン未満のタイムオフセットに制限される。とはいえ、ジッタ及びスタガリングの両方が同じLIDARシステムにおいて実装され得ることを理解されたい。
【0085】
さらに、上述では、エミッタ及び対応する光感知チャネルを有する単一のLIDARチャネルに言及している。上述のように、LIDARシステムは、複数のLIDARチャネルのアレイを含み得る。この場合、上記のように各チャネルにジッタを適用することができる。幾つかの実施形態では、所与のショットについてすべてのチャネルに同じジッタオフセットが適用される。他の実施形態では、ジッタオフセットをチャネルごとに選択することができ、それにより、同じアレイ内の異なるチャネルが異なるジッタオフセットを適用し、例えば、異なるチャネルが同じマスタジッタシーケンスの異なる位置から開始し得る。この任意選択は、同じLIDARシステム内のチャネル間のクロストークを低減することができるが、相互に対して異なる時間に異なるエミッタ(及び対応する検出器)をトリガするために、より複雑な制御回路を必要とし得る。
【0086】
3.クロストークを低減する適応動作
幾つかの実施形態では、LIDARシステム200などのLIDARシステムは、あり得るクロストークの存在を検出することができ、測距動作に対するクロストークの影響を低減し得るように、それ自体の動作を適応的に修正することができる。次に、クロストークを検出し、クロストークの検出に基づいてシステム動作を適応させる実施例について記載する。
【0087】
3.1.クロストークの検出
幾つかの実施形態では、LIDARシステム200などのLIDARシステムは、ヒストグラムデータ(ジッタの有無にかかわらず収集され得る)を分析して、クロストーク源の存在を推測することができる。
図10は、ヒストグラムデータからクロストーク源の存在を推測するために幾つかの実施形態で使用することができるプロセス1000のフロー図を示している。プロセス1000は、例えば、LIDARシステム200のプロセッサ230に実装することができる。プロセス1000は、1つ以上のセンサチャネルからのヒストグラムデータを使用することができ、このヒストグラムデータは、ショットごとのジッタの使用の有無にかかわらず、
図5A~
図5Dまたは
図7A~
図7Dを参照して上述したように収集することができる。例えば、プロセス900を使用して、ジッタを伴うヒストグラムデータを収集することができる。(ジッタを伴わないヒストグラムデータを収集するには、プロセス900と同様のプロセスを使用することができ、ショットごとのジッタの選択と適用に関連する動作は省略される。)
【0088】
プロセス1000は、サイクル(または、場合によっては単一のショット)のヒストグラムデータが収集された後に開始される。ブロック1002において、プロセス1000は、ヒストグラムの最も高いピークに対応するタイムビン、例えば、光子の数がしきい値を超えるピークタイムビンまたは隣接するタイムビンのグループを識別することができる。このしきい値は、(例えば、上述のように)測距動作の文脈においてピーク検出に使用されるのと同じしきい値または異なる値とすることができる。ブロック1002で識別されたタイムビンは、測距動作のために使用され得るが、プロセス1000の残りにおいては無視される。
【0089】
ブロック1004において、プロセス1000は、「非ピーク」タイムビン、すなわち、ブロック1002のピークに対応するものとして識別されていないタイムビンについて光子カウント統計を計算することができる。統計は、タイムビン当たりの「グローバル」平均光子カウント、タイムビン当たりの光子カウントの標準偏差、及び/または所望に応じて他の統計を含むことができる。
【0090】
ブロック1006において、プロセス1000は、非ピークタイムビンの「ローカル」平均光子カウントを決定することができる。幾つかの実施形態では、ローカル平均は、単一の非ピークタイムビンの光子カウントであり得る。他の実施形態では、ローカル平均は、連続するタイムビンの小さなグループ(例えば、3つのビン、5つのビンなど)にわたる平均光子カウントとすることができ、所望に応じて、ローカル平均は加重平均(例えば、グループ内の中央のビンに最も強く重み付けする)とすることができる。
【0091】
ブロック1008において、プロセス1000は、ブロック1006において計算されたローカル平均光子カウントをブロック1004において計算されたグローバル平均光子カウントと比較することができ、ブロック1010において、プロセス1000は、ローカル平均光子カウントとグローバル平均光子カウントとの差が有意であるかどうかを判定することができる。有意性を同定するための基準は、所望に応じて選択することができる。例えば、有意差は、グローバル平均から1標準偏差より大きい、グローバル平均から2標準偏差より大きい、または何らかの他のしきい値(標準偏差またはノイズの自然変動の他の尺度に対して定義することができる)より大きい差として定義することができる。有意差が見出される場合、ブロック1012において、プロセス1000は、あり得るクロストーク源が存在すると推測することができる。そうでない場合、ブロック1014において、プロセス1000は、クロストークの証拠が存在しないと推測することができる。
【0092】
幾つかの実施形態では、ブロック1006~1014は、非ピークタイムビンの一部またはすべてに対して別々に実行することができ、ローカル平均は、所望に応じて重複してもしなくてもよい。加えて、あり得るクロストーク源の推測は、グローバル平均とは有意に異なるローカル平均光子カウントを有する2つ以上のタイムビンに基づくことができる。例えば、幾つかの実施形態では、少なくとも最小数の連続するタイムビンが、グローバル平均とは有意に異なるローカル平均光子カウントを有する場合、あり得るクロストーク源が推測される。分析されているヒストグラムがショットごとのジッタを使用して収集された場合、複数のタイムビンを考慮することは、
図7dのピーク706dなどの不明瞭なクロストークピークを検出する可能性を高めることができる。
【0093】
プロセス1000に加えて、またはプロセス1000の代わりに、他のプロセスを使用することもできる。例えば、幾つかの実施形態では、LIDARシステム200などのLIDARシステムは、「バックグラウンド」モードで動作することができ、このモードでは、光検出チャネルは通常通りに動作するが、エミッタはアクティブ化されない。
図11は、バックグラウンドモードを使用して収集されたヒストグラムデータからクロストーク源の存在を推測するために、幾つかの実施形態で使用され得るプロセス1100のフロー図を示している。プロセス1100は、例えば、LIDARシステム200のプロセッサ230に実装することができる。ブロック1102において、データは、エミッタをアクティブ化することなく、1サイクルについて収集される。例えば、各光感知チャネルは、エミッタが光パルスを生成するようにアクティブ化されていない間に、上述のようにショットのシーケンスに基づいてヒストグラムを蓄積するように動作することができる。これらの条件下では、光検出チャネルによって検出される任意の光子は、外部源から来る(すなわち、LIDARシステムのエミッタからではない)と仮定することができる。
【0094】
ブロック1104において、ブロック1102中に蓄積されたヒストグラムを分析して、例えば、通常の測距動作中に使用されるのと同じピーク検出技法を使用して、任意のピークが検出されるかどうかを判定することができる。幾つかの実施形態では、他の分析も実行することができる。例えば、
図10を参照して上述の技法と同様の技法を使用して、バックグラウンドノイズの統計分析を実行し、バックグラウンドノイズのグローバル平均からの有意なローカル偏差を検出することができる。(分析中に検出されたいかなるピークも除外することができる。)
【0095】
ブロック1106において、プロセス1100は、ピークが検出されたかどうか、または幾つかの実施形態では、バックグラウンドノイズのグローバル平均からの有意なローカル偏差が検出されたかどうかを判定することができる。ピーク(または、グローバル平均からの他の有意なローカル偏差)が検出された場合、ブロック1108において、プロセス1100は、あり得るクロストーク源が存在すると推測することができる。そうでない場合、ブロック1110において、プロセス1100は、クロストークの証拠がないと推測することができる。
【0096】
プロセス1000及び1100は例示的なものであり、変形及び修正が可能であることが理解されよう。クロストークを検出するための特定の技法は、特定のLIDARシステムに適合させることができる。
【0097】
3.2.クロストーク検出への適応応答
幾つかの実施形態では、LIDARシステム200などのLIDARシステムは、プロセス1000またはプロセス1100などのプロセスを使用して、あり得るクロストークを検出し、あり得るクロストークの検出に応答してその動作を適応的に修正することができる。クロストークは様々なタイプの光源から生じ得ることを理解されたい。本明細書で「調和」クロストークと呼ばれることもある1つのタイプは、LIDARシステムにおけるショット間隔と調和する周期で周期的にパルスを発する光源によって生成される。調和クロストーク源のパルス周期は、ショット間隔と同じ、ショット間隔の倍数、またはショット間隔の調和分数(例えば、1/2、1/3、1/4など)とすることができ、それにより、調和クロストーク源の複数のパルスから生じる光は、少なくとも上述のようにジッタが存在しない場合に、同じヒストグラムビンに蓄積する。調和クロストーク源の例には、クロストークを受けるLIDARシステムと同様の動作特性を偶然有する他のLIDARシステム(例えば、同じ設計に従って製造された2つ以上のLIDARシステム)が含まれる。本明細書で「非調和」クロストークと呼ばれることもある別のタイプのクロストークは、クロストークを受けるLIDARシステムのサイクル中に単一の強いパルスを放出する光源によって生成され得る。非調和クロストーク源の例には、クロストークを受けるLIDARシステムのショット間隔と相関しないパルス周期で周期的にパルスを放出し得る異なる設計のLIDARシステムが含まれる。本開示にアクセスする当業者は、(例えば、
図10を参照して上述のような)ショット固有のジッタの適用が、調和クロストークに関連付けられたピークを低減することができるが、非調和クロストークに対していかなる影響も及ぼさないことがあることを理解するであろう。したがって、他の適応を適用することができる。
【0098】
図12は、本発明の実施形態による、LIDARシステムにおけるクロストークを検出し、LIDARシステムの動作を適応的に修正してクロストークの影響を低減するためのプロセス1200のフロー図である。プロセス1200は、例えば、
図2のLIDARシステム200、または本明細書で説明される任意のLIDARシステムを含む他のLIDARシステムにおいて実装することができる。
【0099】
ブロック1202において、LIDARシステムは、例えば、測距サイクルのヒストグラムデータを収集することができる。幾つかの実施形態では、LIDARシステムは、最初はジッタのないデフォルトモードで動作することができ、以下に説明されるように、ジッタを適応的に追加または修正することができる。ブロック1204において、LIDARシステムは、ヒストグラムデータを分析して、あり得るクロストークを推測することができる。例えば、
図10のプロセス1000及び/または
図11のプロセス1100を使用して、あり得るクロストークを推測することができる。ヒストグラムデータの分析は、例えば、LIDARシステム200のプロセッサ222またはプロセッサ230によって実行することができる。
【0100】
ブロック1206において、あり得るクロストークが推測されるかどうかが判定される。そうでない場合、ブロック1208において、LIDARシステムは、それの現在のモード(例えば、デフォルトモード)で動作し続けることができる。プロセス1200は、動作中に条件が変化し得るため、適宜(例えば、測距サイクルごとに、または規則的な間隔で、例えば、10、20、50、もしくは100の測距サイクルごとに1回、または他の定義された間隔で)繰り返すことができる。
【0101】
ブロック1206において、あり得るクロストークが推測される場合、ブロック1210において、LIDARシステムは、それの動作モードを修正することができる。例えば、LIDARシステムがジッタを伴わずに動作している場合、ブロック1210における動作モードの修正は、ジッタの追加を含むことができる。別の実施例として、LIDARシステムがジッタを伴って動作している場合、ブロック1210における動作モードの修正は、ジッタ値のレンジを増加させること、マスタジッタシーケンス内の新しい位置にスキップすること、または別様にジッタ特性を修正することなど、さらなる処置を含むことができる。さらに別の実施例として、LIDARシステムが符号化パルス(例えば、Barkerコード)をサポートする実施形態では、ブロック1210における動作モードの修正は、異なるサポートされるパルス符号化スキームへの変更を含むことができる。LIDARシステム200の実施形態では、プロセッサ230は、行われるべき修正を決定し、適切なコマンドを、タイミングコントローラ217、センサコントローラ225、及び/またはエミッタコントローラ215に送信することができる。
【0102】
幾つかの実施形態では、ブロック1210において動作モードを修正した後、プロセス1200はブロック1202に戻り、修正の効果を評価することができる。あり得るクロストークが依然として推測される場合は、クロストークがもはや推測されなくなるまで、または任意の推測されるクロストークが十分に低いレベルに達してクロストークのピークが信号検出しきい値に到達しないと予想されるまで、動作モードをさらに修正することができる。
【0103】
幾つかの実施形態では、ブロック1210におけるLIDARシステムの動作モードに対する修正は、推測されたクロストークの追加の分析に基づいて適応的に選択することができる。例えば、クロストークは、典型的には、LIDARシステムがクロストークパルス源に向けられているときに最も強くなる。スキャン式LIDARシステムの場合、クロストークはLIDARシステムの回転角に依存し得、静的LIDARシステムの場合、クロストークはアレイの異なる部分で異なり得る。したがって、幾つかの実施形態では、LIDARシステム200は、LIDARアレイに亘って収集された情報(例えば、視野内のどのピクセルがクロストークの兆候を示しているか)を使用して、クロストーク源の方向を推測することができる。LIDARシステム200は、例えば、測距動作におけるピークを検出するためのエミッタエネルギー(または強度)及びしきい値を増加させることによって、及び/または信号検出を強化するためにその方向に向けられたときに符号化パルス列を選択的に使用することによって、クロストーク源の方向に向けられたときのそれの挙動を修正することができる。ジッタがチャネルごとに(またはチャネルのグループごとに)制御可能である実施形態では、LIDARシステム200は、クロストーク源の方向に向けられたチャネルにジッタを選択的に適用することができる。
【0104】
LIDARシステムの動作モードを修正するための別の技法には、クロストーク源を特徴付けることを試みることが含まれ得る。例えば、幾つかの実施形態では、LIDARシステムは、(例えば、
図11を参照して上述したように)バックグラウンドサイクルを実行することができる。ピークがバックグラウンドサイクルで検出された場合、LIDARシステム200は、ピークを分析して、光源の特性を推測することができる。例えば、LIDARシステム200は、他のLIDARシステムなどの様々なタイプの光源から放出されるパルスを特徴付ける情報を有し得る。このような情報は、例えば、パルス符号化(パルスの数及びタイミング)、パルス形状(例えば、継続時間、ランプアップ及び/またはランプダウン挙動)などを含むことができる。ノイズサイクル中に観測されたパルスが特定のタイプの光源からのパルスの特性と十分な程度に一致する場合、LIDARシステム200は、パルスがおそらくそのタイプの光源からのものであると判定することができる。幾つかの実施形態では、この情報を使用して、実行する修正を選択することができる。例えば、クロストーク源が特定のパルス符号化を使用する場合、LIDARシステム200は、異なるパルス符号化を選択することができる。別の実施例として、LIDARシステム200は、ジッタ方式を選択し得、それにより、特定の光源タイプからのクロストークがピークに蓄積する可能性が低下する。
【0105】
プロセス1200は例示的なものであり、変形及び修正が可能であることが理解されよう。クロストークを検出し、システム特性を適応的に修正して、検出されたクロストークの影響を低減するための様々な技法を実装することができる。
【0106】
4.レンジエイリアシング
幾つかの実施形態では、上述のようなジッタを使用して、レンジエイリアシングの影響を低減することもできる。本明細書で使用される場合、「レンジエイリアシング」は、第1のショット中のエミッタからの光パルスが、反射光が次のショット(または任意の後続のショット)中のある時間までセンサに戻らないほど十分に離れた物体で反射するときに発生する。エミッタが規則的な間隔で光を放出し、センサチャネルがエミッタと同期して動作する場合、遅れて戻る光は、上述のクロストークピークと同様に、ヒストグラム内にスプリアスピークをもたらし得る。これらのスプリアスピークは、レンジ決定における誤差をもたらし得る。
図13は、ジッタが存在しない場合に生じ得るレンジエイリアシングの簡略図を示している。
図13は時間線図である。ショットは、イベントマーカ1301、1302、1303、及び1304によって示されるように、規則的な間隔(時間0、τ、2τ、3τなど)で開始する。トリガパルス(イベントマーカ1311、1312、1313、1314)は、各ショットの開始に対して規則的な間隔で発生し、すなわち、ショットごとのジッタは適用されない。データ収集期間は、影付きの矩形1321、1322、1323、1324によって示される。第1のトリガパルス(イベントマーカ1311)に応答して生成された光パルスからの反射光パルス1331は、第2のデータ収集期間(矩形1322)中に到着する。同様に、第2のトリガパルス及び第3のトリガパルス(イベントマーカ1312、1313)に応答して生成される光パルスからの反射光パルス1332は、それぞれ、第3のデータ収集期間及び第4のデータ収集期間(矩形1323、1324)中に到着する。反射パルス1331、1332、1333の到着時間は、それらが到着するデータ収集期間の開始に対して一定しており、その結果、ピークをヒストグラムに蓄積することができる。ただし、ピークが検出されたショットのエミッタパルスにピークが応答すると仮定する場合、測距情報は、実際の飛行時間よりも短い飛行時間に「エイリアス」される。
【0107】
本発明の幾つかの実施形態では、上述のように、ショットごとのジッタを適用することにより、レンジエイリアシングを低減することができる。
図14は、本発明の実施形態による、ショットごとのジッタを適用することによってレンジエイリアシングを除去する簡略化された図を示している。
図14は時間線図である。ショットは、イベントマーカ1401、1402、1403、及び1404によって示されるように、規則的な間隔(時間0、τ、2τ、3τなど)で開始する。トリガパルス(イベントマーカ1411、1412、1413、1414)は、各ショットの開始に対して様々な間隔で発生し、すなわち、ショットごとのジッタが適用される。影付きの矩形1421、1422、1423、1424によって示されるデータ収集期間は、
図6のようにトリガパルスと同期している。第1のトリガパルス(イベントマーカ1411)に応答して生成される光パルスからの反射光パルス1431は、第2のデータ収集期間(矩形1422)中に到着する。第2のトリガパルス(イベントマーカ1412)に応答して生成される光パルスからの反射光パルス1432は、第3のデータ収集期間(矩形1323)の直前に到着し、第3のトリガパルス(イベントマーカ1413)に応答して生成される光パルスからの反射光パルス1433は、第4のデータ収集期間(矩形624)中に到着する。ただし、ショットごとのジッタに起因して、反射パルスの(データ収集の開始に対する)到着時間は、ショットごとに異なる。結果的に、このような遅く到着するパルスは、蓄積されたヒストグラムにおいてピークを生成することは期待されず、代わりに、レンジエイリアシングピークはクロストークと同様に拡散される。この場合、ヒストグラムはいかなる有意なピークも有しないことがあり、これにより、この状況において、最も近い反射面がレンジ外であるという判定をもたらすことがある(これは所望の結果である)。したがって、クロストークの影響を低減することに加えて、本明細書で説明されるようにショットごとのジッタを適用することはまた、レンジエイリアシングを低減し、それによって、測距情報の精度をさらに改善することができる。
【0108】
5.追加の実施形態
本発明は、特定の実施形態を参照して説明されてきたが、本開示にアクセスできる当業者は、多数の変形及び修正が可能であることを理解するであろう。例えば、本明細書で説明される種類のLIDARアレイは、任意の数の行、及び行当たり任意の数の列を含むように製造することができる。(「行」及び「列」という用語は、特にスキャンモードで使用されるアレイの文脈において、センサアレイの2つの次元を区別するために使用され、アレイの任意の特定の空間的配向を暗示することを意図しない。)センサチャネル及びエミッタの特定の構造は、変化し得る。エミッタは、各ショット中に1つ以上のパルスのパルス列を放出することができ、ジッタを上述のように適用して、連続するショットのパルス列の開始時間を変化させることができる。反射光の識別は、パルス列のパターンに対応するヒストグラムの強度パターンを検出することに基づくことができる。
【0109】
LIDARセンサチャネル(及び/または他の深度感知チャネル)は、例えば、時間の関数としての光子カウントまたは信号強度のヒストグラムを使用して、様々な形式でタイミングデータを提供することができる。LIDARセンサチャネルは、近赤外線、短波赤外線(例えば、1600nm)、中波赤外線、及び/または長波赤外線(例えば、最大15μm)を含む様々な波長で動作することができる。
【0110】
本明細書で説明される種類のセンサアレイは、様々な感知システムに組み込むことができ、これには上述の特定のLIDARシステムが含まれるが、限定されない。LIDARシステムは、上述のように回転式及び/または静的プラットフォームを使用して実装することができ、測距データを収集することが望ましい任意の用途で使用することができる。本開示にアクセスする当業者は、本明細書で説明されるクロストークを検出及び/または低減するための技法のいずれかが、様々なLIDARシステムに適用でき、これには本明細書で説明される例示的なシステムのいずれかが含まれるが、限定されないことを理解するであろう。
【0111】
LIDARシステムによって生成されるデータは、データの任意の部分に対して動作する様々なコンピュータ実装アルゴリズムを使用して分析することができる。幾つかの実施形態では、データを使用して、ユーザに表示するための画像を生成することができ、これは、強度ヒストグラムから計算された強度データまたはレンジ測定を直接レンダリングすること、及び/またはデータからのアルゴリズム的推論に基づいてシーン(またはその一部分)の画像をレンダリングすること、を含むことができる。上述の幾つかの実施例は、車両運行及び/または運転者支援に関するが、本発明は、任意の特定のデータ分析またはLIDAR技術の任意の特定の用途に限定されない。
【0112】
本発明の例示的な実施形態の上記の説明は、例示及び説明の目的で提示されている。包括的であること、または本発明を説明された正確な形態に限定することは意図されず、多くの修正及び変更が、先の教示に鑑みて可能である。実施形態は、本発明の原理及びその実際の用途を説明するために選択及び説明され、それにより、当業者が、本発明を様々な実施形態で、企図される特定の使用に適するように様々な修正を加えて使用することを可能にする。したがって、本発明は、特定の実施形態を参照して説明されてきたが、本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定されると理解されるべきである。
本件出願の時点の特許請求の範囲は、以下の通りである。
[請求項1]
LIDARシステムであって、
トリガパルスに応答して複数のショットの各々の間に光パルスを放出するエミッタを有する光伝送モジュールと、
光を受信するための少なくとも1つの光センサチャネルを有し、前記トリガパルスに応答して、タイムビンのシーケンスについての時間の関数としての受信した光強度のヒストグラムを生成するように構成された光感知モジュールと、
前記光伝送モジュール及び前記光感知モジュールに結合され、トリガパルスのシーケンスを生成してショットごとの前記光伝送モジュール及び前記光感知モジュールの動作を同期させるように構成されたタイミングコントローラと、
を備え、
前記光感知モジュールは、前記複数のショットに亘って前記ヒストグラムを蓄積するように構成された第1メモリ回路をさらに有しており、
前記タイミングコントローラは、ショットごとのジッタを各トリガパルスに適用するようにさらに構成されており、
前記ショットごとのジッタは、異なるショットによって異なり、
前記複数のショットにおける前記ショットのうちの少なくとも幾つかについて、前記ショットごとのジッタが1つのタイムビンよりも大きい
ことを特徴とするLIDARシステム。
[請求項2]
前記ショットごとのジッタは、等エネルギーサンプリング技法を使用して、ジッタ値の所定のレンジ内で選択される
ことを特徴とする請求項1に記載のLIDARシステム。
[請求項3]
前記ジッタ値の所定のレンジは、前記ヒストグラムにおけるタイムビンの総数の0~20%であることを特徴とする請求項2に記載のLIDARシステム。
[請求項4]
前記ジッタ値の所定のレンジは、前記ヒストグラムにおけるタイムビンの総数の0~120%である
ことを特徴とする請求項2に記載のLIDARシステム。
[請求項5]
あるジッタ値のレンジに亘って均等に分布されたジッタ値のシーケンスを含むマスタジッタシーケンスを格納するように構成された第2メモリ回路
を更に備え、
前記タイミングコントローラは、前記マスタジッタシーケンスに従って、各トリガパルスのための前記ショットごとのジッタを選択するようにさらに構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のLIDARシステム。
[請求項6]
システム起動動作中に前記マスタジッタシーケンスにおける開始位置をランダムに選択するための制御ロジック
を更に備えたことを特徴とする請求項5に記載のLIDARシステム。
[請求項7]
前記ヒストグラムを分析して、クロストークが存在するか否かを判定するように構成されたプロセッサ
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載のLIDARシステム。
[請求項8]
前記プロセッサは、クロストークが存在するとの判定に応答して、前記ショットごとのジッタを適応的に修正するように更に構成されている
ことを特徴とする請求項7に記載のLIDARシステム。
[請求項9]
前記エミッタは、各ショット中に1または複数の光パルスからなる光パルス列を放出し、
前記光パルス列の前記光パルスは、互いに対して固定された時間的関係を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のLIDARシステム。
[請求項10]
前記光伝送モジュールは、複数のエミッタを含み、
前記光感知モジュールは、複数の光センサチャネルを含み、
前記タイミングコントローラは、同一のショットごとのジッタが前記複数のエミッタの各々及び前記複数の光センサチャネルの各々に適用される、というように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のLIDARシステム。
[請求項11]
LIDARシステムを動作させる方法であって、
複数のショットを捕捉する工程
を備え、
前記複数のショットにおける各ショットを捕捉する工程は、
ショットごとのジッタを決定する工程と、
前記LIDARシステムのタイミングコントローラにおいて、前記ショットごとのジッタに少なくとも部分的に基づいて決定される時間にトリガパルスを生成する工程と、
前記LIDARシステムの光伝送モジュールを動作させて、前記トリガパルスと同期された光パルスを放出する工程と、
前記トリガパルスと同期して前記LIDARシステムの光感知モジュールを動作させて、光を受信し、時間の関数として受信した光強度のヒストグラムを蓄積する工程と、
を含み、
前記ヒストグラムは、一連のタイムビンを規定し、
前記ヒストグラムは、前記複数のショットに亘って蓄積され、
前記複数のショットにおける前記ショットのうちの少なくとも幾つかについて、前記ショットごとのジッタが1つのタイムビンよりも大きく、
当該方法は、更に、
前記複数のショットを捕捉した後に、前記ヒストグラムに少なくとも部分的に基づいて、測距情報を計算する工程
を備えたことを特徴とする方法。
[請求項12]
各ショットのために前記ショットごとのジッタを決定する工程は、等エネルギーサンプリング技法を使用して、ジッタ値の所定のレンジ内で前記ショットごとのジッタを選択する工程を含む
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
[請求項13]
前記ジッタ値の所定のレンジは、前記ヒストグラムにおけるタイムビンの総数の0~20%である
ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
[請求項14]
前記ジッタ値の所定のレンジは、前記ヒストグラムにおけるタイムビンの総数の0~120%である
ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
[請求項15]
各ショットのために前記ショットごとのジッタを決定する工程は、前記LIDARシステムのメモリ内に格納されたマスタジッタシーケンス内の連続する位置にアクセスする工程を含む
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
[請求項16]
各ショットのために前記ショットごとのジッタを決定する工程は、前記マスタジッタシーケンスにおける開始位置をランダムに選択する工程を含む
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
[請求項17]
前記ヒストグラムを分析して、クロストークが存在するか否かを判定する工程
を更に備えたことを特徴とする請求項11に記載の方法。
[請求項18]
クロストークが存在するとの判定に応答して、前記ショットごとのジッタを適応的に修正する工程
を更に備えたことを特徴とする請求項17に記載の方法。
[請求項19]
前記LIDARシステムの前記光伝送モジュールを動作させる工程は、単一のエミッタを動作させて、各ショット中に1または複数の光パルスからなる光パルス列を放出する工程を含み、
前記光パルス列の前記光パルスは、互いに対して固定された時間的関係を有する
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。