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特許7541033自己拡張チューブを展開するための送達システム、及び自己拡張チューブを展開する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】自己拡張チューブを展開するための送達システム、及び自己拡張チューブを展開する方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/966 20130101AFI20240820BHJP
   A61F 2/95 20130101ALN20240820BHJP
【FI】
A61F2/966
A61F2/95
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021566134
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 GB2020051332
(87)【国際公開番号】W WO2020249928
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】1908576.0
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519341935
【氏名又は名称】オックスフォード エンドバスキュラー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムーア、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】シェ、ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】キーブル、ダンカン
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/172792(WO,A1)
【文献】特表2014-509526(JP,A)
【文献】特表平09-503397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/966
A61F 2/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己拡張チューブを血管内へと展開するための送達システムであって、
前記血管内へと挿入するために構成されている管状部材と、
前記管状部材の管腔内で延伸する細長い本体と、
半径方向において前記管状部材と前記細長い本体との間に位置付けられている自己拡張チューブと
を備え、
前記送達システムが、展開モードにおいて動作するように構成されており、前記展開モードにおいて、前記自己拡張チューブと前記管状部材との間で作用する第1の長手方向係合力及び前記自己拡張チューブと前記細長い本体との間で作用する第2の長手方向係合力が、
使用時の前記自己拡張チューブの展開中に、長手方向において前記細長い本体と、前記細長い本体と係合したままである前記自己拡張チューブの任意の部分との間に相対運動が実質的になく、前記自己拡張チューブの展開が、前記細長い本体に対する前記管状部材の前記送達システムの近位端に向かう長手方向運動を含み、
前記自己拡張チューブの少なくとも一部分が展開された後に、使用時の前記細長い本体の後退中に、長手方向において前記細長い本体と、前記細長い本体と係合したままである前記自己拡張チューブの一部分との間に相対運動があり、前記細長い本体の後退が、前記管状部材に対する前記細長い本体の前記送達システムの近位端に向かう長手方向運動を含むようなものであり、
前記自己拡張チューブの一部分が前記管状部材から出て展開された後、前記自己拡張チューブがまったく前記管状部材から出て展開されていないときよりも、前記管状部材に対する前記自己拡張チューブの対向する後退に対して、前記第1の長手方向係合力がより大きくなっており、
前記管状部材に対する前記自己拡張チューブの対向する後退に対する、前記自己拡張チューブの少なくとも一部分が前記管状部材から出て展開された後の取得可能な最大の前記第1の長手方向係合力が、取得可能な最大の前記第2の長手方向係合力よりも大きくなるように構成されており、
取得可能な最大の前記第1の長手方向係合力は、前記自己拡張チューブと前記管状部材との間で作用する静止摩擦力であり、取得可能な最大の前記第2の長手方向係合力は、前記自己拡張チューブと前記細長い本体との間で作用する静止摩擦力である、送達システム。
【請求項2】
前記自己拡張チューブが、前記管状部材の長手方向軸に対する前記自己拡張チューブの長手方向縮小を含む過程において、半径方向収縮状態から半径方向拡張状態へと自己拡張するように構成されており、
前記自己拡張チューブの半径方向において拡張し、長手方向において収縮した部分が前記管状部材の遠位端と係合することによって、前記より大きい第1の長手方向係合力が達成される、請求項1に記載の送達システム。
【請求項3】
前記管状部材に対する前記自己拡張チューブの対向する展開に対する、取得可能な最大の前記第1の長手方向係合力が、取得可能な最大の前記第2の長手方向係合力よりも小さくなるように構成されている、請求項1または2に記載の送達システム。
【請求項4】
前記細長い本体の遠位端が、前記自己拡張チューブと取り外し可能に係合するように構成されている遠位係合部材を備える、請求項1から3までのいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項5】
前記遠位係合部材は、前記遠位係合部材が前記自己拡張チューブと係合したときに、取得可能な最大の前記第2の長手方向係合力が、取得可能な最大の前記第1の長手方向係合力よりも大きくなるように、さらに構成されている、請求項4に記載の送達システム。
【請求項6】
前記自己拡張チューブの長さの少なくとも50%にわたって、前記自己拡張チューブの少なくとも一部分が、外向きには前記管状部材と係合し、内向きには前記細長い本体と係合する、請求項1から5までのいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項7】
前記管状部材の内面の組成及び表面テクスチャのいずれか又は両方が、前記管状部材が前記自己拡張チューブと接触している長さにわたって均一になるように構成されている、請求項1から6までのいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項8】
前記細長い本体の外面の組成及び表面テクスチャのいずれか又は両方が、前記細長い本体が前記自己拡張チューブと接触している長さにわたって均一になるように構成されている、請求項1から7までのいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項9】
前記自己拡張チューブは、展開されたときに85%未満の有孔率を有する、請求項1から8までのいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項10】
前記自己拡張チューブは、動脈瘤嚢への開口部にわたって展開されるときに、血流を前記動脈瘤嚢から外方に方向転換するように構成されている、請求項1から9までのいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項11】
前記送達システムが、長手方向において前記自己拡張チューブの近位領域に保持力を加えるように構成されている保持部材をさらに備え、前記送達システムが、後退モードにおいて動作するようにさらに構成されており、前記後退モードにおいて、前記保持力を加えることによって、前記細長い本体に対する近位方向における前記自己拡張チューブの長手方向運動中に、長手方向において前記細長い本体と、前記細長い本体と係合したままである前記自己拡張チューブの一部分との間の相対運動が可能になる、請求項1から10までのいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項12】
前記自己拡張チューブが、半径方向に拡張しており長手方向に収縮している状態から、半径方向に収縮しており長手方向に拡張している状態へと可逆的に切り替え可能である細長いフレームを備え、前記細長い本体の遠位領域が、2つのエンド・マーカを備える、請求項1から11までのいずれか一項に記載の送達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、血流を動脈瘤嚢から外方に方向転換するのに使用するための、自己拡張チューブを展開するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
頭蓋内動脈瘤は、動脈壁の膨張又は肥大化が発生する可能性がある、脳内の動脈の壁内の脆弱な領域である。組織学的に、中膜、動脈の中間の筋層、及び内弾性板の減少は、構造欠陥を引き起こす。これらの欠陥は、血行力学的要因と組み合わさって、動脈瘤膨出をもたらす。頭蓋内動脈瘤は、剖検調査によれば、患者数が成人人口の間で1~5%に及ぶ、非常に一般的な疾患である。米国単独では、1千万人から1千2百万人が頭蓋内動脈瘤を患っている可能性がある。
【0003】
頭蓋内動脈瘤を処置するための現行の方法は、外科的クリッピング及び血管内コイリングを含む。外科的クリッピング法において、患者の頭蓋骨が切開され、動脈瘤嚢に血液が流入するのを止めるために、動脈瘤の頸部にわたって外科用クリップが配置される。特に高齢であるか又は医療的に困難な事情のある患者にとって、この方法の危険性は相対的に高い。血管内コイリングは、カテーテルを通じて送達される1つ以上のコイルを、動脈瘤嚢がコイルで完全にいっぱいになるまで動脈瘤内に配置することを含む、より侵襲性の低い方法である。これは、動脈瘤内で血栓を発生させるのを助ける。血管内コイリングは外科的クリッピングよりも安全であると考えられているが、それ自体の制限を有する。第一に、動脈瘤にコイルが充填された後、動脈瘤はその元のサイズのままである。結果として、動脈瘤によって周囲組織に加えられる圧力は取り除かれないことになる。第二に、この手技は、コイルが親血管へと突出する可能性が高い、頸部の広い動脈瘤にはそれほど効果的ではない。この問題は、コイル塞栓と組み合わせてステントを使用することによって軽減することができるが、この手技は困難で時間がかかる。
【0004】
ステントとして参照されることもある自己拡張チューブのみを使用して動脈瘤を処置することは、上述した問題を回避する有望な方法である。この方法において、相対的に有孔率の低い領域を有するチューブが、血流を動脈瘤嚢から外方に方向転換し、動脈瘤内で血栓の形成を発生させるように、動脈瘤頸部にわたって配置される。動脈瘤はそれ自体が自然に固化するため、動脈瘤が破裂する危険はより少ない。さらに、この方法はコイルを伴わないため、血栓が吸収されるにつれて、動脈瘤は徐々に縮小する。結果として、周囲組織に加わる圧力を取り除くことができる。しかしながら、これに関連して自己拡張チューブを最適に展開することは困難である。チューブは、血流を動脈瘤から外方に十分な程度まで方向転換するのに十分な被覆率(低い有孔率)を同時に提供しながら、脳内の非常に入り組んだ血管を通過し、その形状に適合するのに十分に可撓性でなければならない。チューブは、チューブ及び周囲組織への損傷の危険性を最小限に抑えながら、確実且つ制御可能に展開される必要がある。
【0005】
自己拡張チューブ又はステントを血管内に展開するためのいくつかの現行の方法は、カテーテル及びガイド・ワイヤを使用することを含み、ここで、ステントはカテーテル内部でガイド・ワイヤの周りに巻かれた圧縮形態にある。カテーテルが動脈瘤に対しておおよそ正しい位置に位置付けられると、カテーテルの端部を越えてガイド・ワイヤを延伸させることによって、ステントがカテーテルから展開される。
【0006】
展開されたステントは、その圧縮状態と比較して半径方向に拡張し、長手方向に収縮し、したがって、ガイド・ワイヤは典型的には、ステントの端部の最終的な位置よりもさら大きく、カテーテルの端部を越えて延伸されなければならない。これによって、特に、脳の非常に狭く入り組んだ血管内で使用される場合に、ガイド・ワイヤが、最終的なステント位置を大きく越えて延伸する場合、展開中に、血管を損傷し、又は、穿通枝血管を一時的に閉塞させる可能性がある危険性がもたらされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、特に、頭蓋内動脈瘤の処置に関連して、自己拡張チューブを展開する過程を改善するための装置及び方法を提供することである。特に、本発明の目的は、送達システムのガイド・ワイヤによる血管への損傷の危険性が低減されている、自己拡張チューブを展開するための装置及び方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、自己拡張チューブの血管内へのより正確な展開を可能にする装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、自己拡張チューブを血管内へと展開するための送達システムであって、血管内へと挿入されるように構成されている管状部材と、管状部材の管腔内に延伸する細長い本体と、半径方向において管状部材と細長い本体との間に位置付けられている自己拡張チューブとを備え、送達システムが、展開モードにおいて動作するように構成されており、展開モードにおいて、自己拡張チューブと管状部材との間で作用する第1の長手方向係合力及び自己拡張チューブと細長い本体との間で作用する第2の長手方向係合力が、使用時の自己拡張チューブの展開中に、長手方向において細長い本体と、細長い本体と係合したままである自己拡張チューブの任意の部分との間に相対運動が実質的になく、自己拡張チューブの展開が、細長い本体に対する管状部材の送達システムの近位端に向かう長手方向運動を含み、自己拡張チューブの少なくとも一部分が展開された後に、使用時の細長い本体の後退中に、長手方向において細長い本体と、細長い本体と係合したままである自己拡張チューブの一部分との間に相対運動があり、細長い本体の後退が、管状部材に対する細長い本体の送達システムの近位端に向かう長手方向運動を含むようなものである、送達システムが提供される。
【0009】
ガイド・ワイヤが後退されたときに細長い本体(ガイド・ワイヤ)が自己拡張チューブに対して動くことができるように、送達システムを構成することによって、ガイド・ワイヤが自己拡張チューブの展開中に送達システムの端部を越えて相当の距離にわたって延伸することが防止される、増分的展開方法が可能にされる。
【0010】
一実施例において、自己拡張チューブの一部分が管状部材から出て展開された後、自己拡張チューブがまったく管状部材から出て展開されていないときよりも、管状部材に対する自己拡張チューブの対向する後退に対して、第1の長手方向係合力がより大きい。この構成は、自己拡張チューブが展開前に遠位方向と近位方向の両方で容易に動かされることを可能にすることによって、自己拡張チューブが送達カテーテル内により容易に位置付けられることを可能にする。
【0011】
一実施例において、自己拡張チューブが、管状部材の長手方向軸に対する自己拡張チューブの長手方向縮小を含む過程において、半径方向収縮状態から半径方向拡張状態へと自己拡張するように構成されており、自己拡張チューブの半径方向において拡張し、長手方向において収縮した部分が管状部材の遠位端と係合することによって、より大きい第1の長手方向係合力が達成される。自己拡張チューブに対するガイド・ワイヤの動きが自己拡張チューブの一部分の展開によって可能にされるように送達システムを構成することによって、自己拡張チューブ及び細長い本体が、展開の開始前に管状部材の内部で近位方向及び遠位方向において前後に自由に動くことができることが保証される。
【0012】
一実施例において、細長い本体の遠位端が、自己拡張チューブと取り外し可能に係合するように構成されている遠位係合部材を備える。係合部材を提供することによって、自己拡張チューブの挿入を完全に中断する必要がある、展開又は展開手順中の他の事象における任意の誤りの場合に、自己拡張チューブが、実質的に展開された後でさえ、取り出されることが可能になる。
【0013】
一実施例において、自己拡張チューブの長さの少なくとも50%にわたって、自己拡張チューブの少なくとも一部分が、外向きには管状部材と係合し、内向きには細長い本体と係合する。自己拡張チューブの、その長さの大部分にわたる管状部材及び細長い本体との係合によって、より大きい長さにわたって自己拡張チューブに加えられる係合力が拡散する。これによって、チューブの小さい領域に大きすぎる力が加わることから生じる、自己拡張チューブへの損傷の機会が低減する。
【0014】
一実施例において、管状部材の内面の組成及び表面テクスチャのいずれか又は両方が、管状部材が自己拡張チューブと接触している長さにわたって均一である。一実施例において、細長い本体の外面の組成及び表面テクスチャのいずれか又は両方が、細長い本体が自己拡張チューブと接触している長さにわたって均一である。これらの実施例は、展開のすべての段階中に一貫した挙動を保証し、自己拡張チューブへの損傷の機会を低減する。
【0015】
一実施例において、自己拡張チューブは、展開されたときに85%未満の有孔率を有する。この実施例は、自己拡張チューブが、展開されると、実効的に、血流を動脈瘤から外方に方向転換することを可能にする。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、自己拡張チューブを血管内へと展開するための送達システムであって、血管内へと挿入されるように構成されている管状部材と、管状部材の管腔内に延伸する細長い本体と、半径方向において管状部材と細長い本体との間に位置付けられている自己拡張チューブと、長手方向において自己拡張チューブの近位領域に保持力を選択的に加えるように構成されている保持部材とを備え、送達システムが、後退モードにおいて動作するように構成されており、後退モードにおいて、保持力を加えることによって、長手方向において細長い本体と、細長い本体に対する近位方向における自己拡張チューブの長手方向運動中に細長い本体と係合したままである自己拡張チューブの一部分との間の相対運動が可能になる、送達システムが提供される。
【0017】
いくつかの状況において、例えば、自己拡張チューブが誤った位置に展開された場合に、自己拡張チューブが少なくとも部分的に展開された後に、自己拡張チューブを回収する必要があり得る。別の例は、自己拡張チューブが正確に配置されることを保証するために展開が再び開始されなければならないような、展開が開始された後に自己拡張チューブが血管内で実質的に動く場合である。そのような状況においては、送達システムに、細長い本体に対してスライドさせることによって管状部材内へと引き戻すために、自己拡張チューブに追加の力を加えることができる動作モードを提供することが有利である。これは、上述したもののような展開メカニズムの使用に起因して拡張チューブの展開位置下で細長い本体が完全に延伸していない場合であっても、自己拡張チューブを後退及び再展開することができることを意味する。
【0018】
一実施例では、後退モードにおいて、保持力を加えることは、使用時の管状部材に対する送達システムの近位端に向かう細長い本体の長手方向運動中に、長手方向において細長い本体と、細長い本体と係合したままである自己拡張チューブの任意の部分との間に相対運動が実質的にないようなものである。この実施例は、後退中のチューブと細長い本体との間の相対運動に起因して自己拡張チューブに損傷が発生する可能性を低減する。
【0019】
一実施例において、保持部材が、自己拡張チューブの近位領域と取り外し可能に係合するように構成されている。取り外し可能な保持部材を使用して追加の保持力を加えることによって、自己拡張チューブは、展開が首尾よく完了したときに、送達システムからより容易に解放することができる。
【0020】
一実施例において、自己拡張チューブの近位領域が、近位係合部材を備え、保持部材が、近位係合部材と取り外し可能に係合するように構成されている。この実施例は、保持力が自己拡張チューブに加えられるための簡便な方法を提供する。この実施例はまた、力が加えられるメカニズムに柔軟性を与える。
【0021】
一実施例において、保持部材が、半径方向において細長い本体と自己拡張チューブとの間に位置付けられる保持チューブを含み、自己拡張チューブの少なくとも一部分が、内向きには保持チューブと係合し、外向きには管状部材と係合する。係合チューブが、自己拡張チューブと係合するための簡便且つ容易に実装される方法である。保持チューブは送達システムの他の円筒形構成要素と係合されるため、係合チューブは、さらに不整合の可能性を低減する。
【0022】
一実施例において、近位領域の保持部材との係合は、近位領域が管状部材の遠位端を越えて展開されるときに、近位領域が保持部材から離れるようなものである。この実施例において、自己拡張チューブは、十分に大きく展開されたときに、保持部材から自動的に離される。これによって、自己拡張チューブの展開が完了したときに、送達システムの残りの部分からステントを解放する過程がさらに単純になる。
【0023】
本発明の第3の態様によれば、展開モードにおいて動作するように構成されている、自己拡張チューブを血管内へと展開するための送達システムであって、血管内へと挿入されるように構成されている管状部材と、管状部材の管腔内に延伸する細長い本体と、半径方向において管状部材と細長い本体との間に位置付けられている自己拡張チューブとを備え、自己拡張チューブが、半径方向に拡張しており長手方向に収縮している状態から、半径方向に収縮しており長手方向に拡張している状態へと可逆的に切り替え可能である細長いフレームを備え、細長い本体の遠位領域が2つのエンド・マーカを備える、送達システムが提供される。
【0024】
細長い本体上の2つのエンド・マーカは、自己拡張チューブの展開中に送達システムの操作者を案内するために使用することができる。エンド・マーカは、展開過程の一部である特性長に対応するように選択することができる、所定の距離だけ離間されている。これによって、操作者がより明確且つ精密にそのような距離を決定するためのin-situ距離測度が提供され、送達システムの操作が単純になり、操作者がより一貫した正確な結果を達成することが可能になる。
【0025】
一実施例において、エンド・マーカ間の距離は、半径方向に拡張し長手方向に収縮している状態における自己拡張チューブの長さの20%以内に等しい。展開過程における重要な測度は、自己拡張チューブの最終拡張長である。これは、自己拡張チューブが展開前はその長手方向に拡張している状態で保持されることに起因して、操作者によってin-situで決定することが容易でないことが多い。したがって、自己拡張チューブの最終的な長さに対応するか、又は、その分数に等しい所定の距離だけエンド・マーカを離間させることによって、操作者は、送達システムの操作中にこの距離をより容易に決定することが可能になる。
【0026】
一実施例において、自己拡張チューブは、自己拡張チューブの遠位端に位置するマーカを備える。ガイド・ワイヤ上にあるものに加えて、自己拡張チューブ上にマーカを含むことによって、自己拡張チューブを正確に位置付けし、細長い本体に対する自己拡張チューブの動き及び位置付けを判定する能力が改善される。
【0027】
一実施例において、管状部材は、管状部材の遠位端に位置するマーカを備える。管状部材上にマーカを含むことによってまた、管状部材に対する細長い本体及び/又は自己拡張チューブの位置がより容易に確認されることが可能になる。
【0028】
一実施例において、マーカは、放射線不透過性マーカを含む。放射線不透過性マーカは、患者内部で自己拡張チューブを展開している間にX線画像化を使用して容易に検出することができる、特に簡便な形態のマーカである。
【0029】
ここで例示のみを目的として、添付の図面を参照して本発明の実施例を説明する。図面において、対応する符号は対応する部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1の態様の一実施例による、自己拡張チューブを血管内へと展開するための送達システムの遠位部分の概略側面断面図である。
図2図1の送達システムの概略端面断面図である。
図3】管状部材が細長い本体に対して長手方向に後退されている、自己拡張チューブの展開の一段階を示す概略側面断面図である。
図4】細長い本体が管状部材に対して後退されている、図3に示す段階に後続する展開の一段階を示す概略側面断面図である。
図5】自己拡張チューブがほぼ完全に展開されている、図4に示す段階に後続する展開の一段階を示す図である。
図6】本発明の第2の態様の一実施例による、自己拡張チューブを血管内へと展開するための送達システムの遠位部分の概略側面断面図である。
図7】本発明の第3の態様の一実施例による、自己拡張チューブを血管内へと展開するための送達システムの遠位部分の概略側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示の実施例は、自己拡張チューブ6を血管内へと展開するための送達システム2を提供する。自己拡張チューブ6は、ステントとして参照される場合がある。好ましい実施例において、チューブ6は、血流を動脈瘤嚢から外方に方向転換するために、動脈瘤嚢の開口部にわたって位置付けられるように構成されている。血流の方向転換は、好ましくは、動脈瘤嚢内での血栓形成を促進するのに十分である。
【0032】
第1の態様の実施例によれば、送達システム2は、血管内へと挿入するために構成されている管状部材4を備える。管状部材4の遠位端が、図1及び図2に示されている。管状部材は、カテーテルとして参照される場合がある。そのような用途向けに構成されている管状部材4は、低侵襲手術の技術分野においてよく知られている。管状部材4は、典型的には、円筒形とされ、その遠位端を、身体内の処置される領域に運ぶことができるように寸法決めされる。脳動脈瘤の処置の場合、管状部材4は、脳の血管系内で動脈瘤嚢の開口部へと進むことができるように構成される。これは、典型的には、患者の血管系に一致するように屈曲又は撓曲することができる可撓性管状部材を提供することによって達成される。
【0033】
送達システム2は、管状部材4の管腔内で延伸する細長い本体8をさらに備える。細長い本体8は、中空又は中実であってもよい。一実施例において、細長い本体8はワイヤである。
【0034】
送達システム2によって展開される自己拡張チューブ6は、半径方向において管状部材4と細長い本体8との間に位置付けられる。チューブ6の自己拡張性によって、チューブ6は、外向きには、管状部材4に対して係合する(すなわち、圧迫する)。付加的に、少なくともチューブ6の規定の長さにわたって、チューブ6の少なくとも一部分が、内向きには細長い本体8と係合する。したがって、少なくともチューブ6の規定の長さにわたって、チューブ6の少なくとも一部分が、管状部材4と細長い本体8の両方と係合する(例えば、半径方向において直接的又は間接的に接触する)。一実施例において、規定の長さは、チューブ6の長さの50%、任意選択的に60%、任意選択的に70%、任意選択的に80%、任意選択的に90%、任意選択的に95%、任意選択的に全長又は実質的に全長である。
【0035】
送達システム2は、展開モードにおいて動作するように構成されており、展開モードにおいて、自己拡張チューブは管状部材から出て展開することができ、患者の血管内へと解放することができる。チューブ6の展開は、管状部材4を細長い本体8に対して長手方向に後退させること、又は、細長い本体8を管状部材4に対して長手方向に前進させることによって達成され、それによって、チューブ6は、細長い本体8から外向きに離れることによって外向きに自己拡張し、送達システム2を出ることが可能になる。管状部材4及び細長い本体8は、送達システム2の展開モードにおいて、自己拡張チューブ6と管状部材4との間で作用する第1の長手方向係合力及び自己拡張チューブ6と細長い本体8との間で作用する第2の長手方向係合力が、使用時の自己拡張チューブ6の展開中に、長手方向において細長い本体8と、細長い本体8と係合したままである自己拡張チューブ6の任意の部分との間に相対運動が実質的になく、自己拡張チューブ6の展開が、細長い本体8に対する管状部材4の送達システム2の近位端に向かう長手方向運動を含むように構成されている。
【0036】
必要とされる機能を達成するために、自己拡張チューブ6の対向する展開に対する、管状部材4と自己拡張チューブ6との間の第1の長手方向係合力は、自己拡張チューブ6の長さに沿った各位置において、自己拡張チューブ6と細長い本体8との間の第2の長手方向係合力よりも弱い。その最も単純な形態において、これは、自己拡張チューブ6と管状部材4との間に相対的に低い摩擦接続を提供し、自己拡張チューブ6と細長い本体8との間に相対的に高い摩擦接続を提供することによって実施することができる。代替的に又は付加的に、細長い本体8の外面に、複数の予備成形又は剛性突出部14が設けられてもよい。突出部14は、使用時に自己拡張チューブ6の隙間と係合し、以て、自己拡張チューブ6と細長い本体8との間に作用する長手方向係合力が増大する。予備成形突出部は、例えば、成型又はワイヤ成形によって形成されてもよい。一実施例において、細長い本体8の外面は、所定の温度を上回ったときに軟質である材料から形成され、チューブ6は、表面が軟質である間に細長い本体8に対して位置付けられ、以て、突出部が形成され、突出部が硬化し、剛性になる(自立する)まで、このアセンブリが冷却することが可能にされる。1つの例示的な実施例において、突出部14は、複数のリング要素12を介して提供され、リング要素12は各々、リング要素12の周に沿って一定の間隔で離間された突出部14を提供されている。しかしながら、多くの他の構成が使用されてもよいことが諒解されよう。
【0037】
一実施例において、管状部材4に対する自己拡張チューブ6の対向する展開に対する、取得可能な最大の第1の長手方向係合力は、取得可能な最大の第2の長手方向係合力よりも小さい。これによって、自己拡張チューブ6が展開中に管状部材4に対して滑らないことが保証される。
【0038】
本明細書に記載されている取得可能な最大の力は、要素が動いていないときの要素間の静止摩擦を参照する。送達システム2の要素が展開又は後退中に互いに対して動き始めると、静止摩擦は運動の速度及び加わる任意の他の力に依存して変化する。したがって、2つの要素間の取得可能な最大の力は、2つの要素が互いに対して静止している状態から、要素が互いに対して動いている状態への、送達システム2の状態の変化に対向する静的力を参照する。
【0039】
管状部材4と自己拡張チューブ6との間の係合は、これら2つの要素間の直接接触を介するか、又は、コーティング若しくは他の構造などの中間要素を介するものであり得る。自己拡張チューブ6と細長い本体8との間の係合は、これらの要素間の直接接触を介するか、又は、コーティング若しくは構造などの中間要素を介するものであり得る。
【0040】
管状部材4及び細長い本体8は、自己拡張チューブ6と管状部材4との間で作用する第1の長手方向係合力及び自己拡張チューブ6と細長い本体8との間で作用する第2の長手方向係合力が、自己拡張チューブ6の少なくとも一部分が展開された後に、長手方向において細長い本体8と、使用時の細長い本体8の後退中に細長い本体8と係合したままである自己拡張チューブ6の一部分との間に相対運動があり、細長い本体8の後退が、管状部材4に対する細長い本体8の送達システム2の近位端に向かう長手方向運動を含むようにさらに構成されている。
【0041】
これは、管状部材4に対する自己拡張チューブ6の対向する後退に対する、自己拡張チューブ6の少なくとも一部分が管状部材4から出て展開された後の取得可能な最大の第1の長手方向係合力が、取得可能な最大の第2の長手方向係合力よりも大きくなるように、送達システム2を構成することによって達成することができる。
【0042】
図3図5は、一実施例による送達システム2を使用した例示的な展開手順における複数の段階を示す。図3は、管状部材4が細長い本体8に対して長手方向に後退された(左への相対運動を示す矢印によって示す)後の、図1及び図2の送達システム2を示す。相対運動は、細長い本体8を静止したままにして管状部材4を後退させること、管状部材4を静止したままにして細長い本体8を前進させること、又は、これら2つの組み合わせによって可能にすることができる。管状部材4が後退されると、チューブ6の伸展する遠位領域はもはや半径方向において制約されなくなり、外向きに拡張する。チューブ6が外向きに拡張すると、チューブはまた、長手方向において短縮する。この結果として、細長い本体8の遠位端9は、最終的に、チューブ6の遠位端7よりも管状部材4からさらに突出する。
【0043】
細長い本体8が、展開されたチューブ6よりも前に突出することは、望ましくない場合がある。例えば、当該突出によって、細長い本体8が組織内へと不都合に前進し、傷害を引き起こす危険性がもたらされ得る。この危険性は、細長い本体8を相対的に軟質且つ曲げやすくなるように構成することによって軽減することができる。しかしながら、これによって、細長い本体8に使用することができる材料の範囲が限定される場合があり、そのため、このソリューションはすべての状況に適するとは限らない場合がある。
【0044】
図4は、送達システム2の一実施例を使用した例示的な展開手順における、図3に示す段階に後続する段階を示す。細長い本体8が突出する問題は、この実施例において、上述したように、送達システム2の展開モードにおいて、自己拡張チューブ6の少なくとも一部分が展開された後に、細長い本体8の後退中に、長手方向において細長い本体8と自己拡張チューブ6との間に相対運動があるように、第1の長手方向係合力及び第2の長手方向係合力を構成することによって対処される。以て、長手方向係合力は、細長い本体8と自己拡張チューブ6との間の相対運動の可能性が、自己拡張チューブ6の展開と細長い本体8の後退との間で非対称になるように構成される。細長い本体8が突出部14を備える実施例において、これは、非対称に成形された突出部を提供することによって達成され得る。さらに後述するように、代替的な実施例もまた可能である。
【0045】
自己拡張チューブ6の少なくとも一部分が展開された後に、細長い本体8の後退中に、長手方向において細長い本体8と自己拡張チューブ6との間に相対運動があるように、第1の長手方向係合力及び第2の長手方向係合力が構成されるという特徴によって、細長い本体8が後退されるときに細長い本体8又はガイド・ワイヤが自己拡張チューブ6に対して動くか又は滑ることが可能になり、結果、細長い本体8は、自己拡張チューブ6をも後退させることなく後退することができる。これによって、細長い本体8が管状部材4内へと引き戻され、細長い本体8の遠位端9が管状部材4の遠位端5を越えて所定の距離よりも突出することを防止することが可能になる。
【0046】
図4に示す展開の段階において、細長い本体8は、管状部材4の遠位端を越えて展開される自己拡張チューブ6の割合に実質的に影響を与えないままで、管状部材4に対して後退される。しかしながら、送達システム2の展開モードにおいて、細長い本体8の後退中に自己拡張チューブ6が後退されないことは必須ではない。細長い本体8が管状部材4に対して後退される距離が、自己拡張チューブ6が管状部材4に対して後退される距離よりも大きい限り、自己拡張チューブ6が部分的に後退されることは許容可能であり得る。これによって、細長い本体8が自己拡張チューブ6に対して近位方向に動くことが可能になる。
【0047】
細長い本体8が管状部材4及び自己拡張チューブ6に対して後退されることを可能にすることによって、細長い本体8が、自己拡張チューブ6が展開されている血管、又は任意の他の周囲組織に対する損傷を引き起こす可能性が実質的に低減される。
【0048】
図5に示すように、展開手順が継続するにつれて、自己拡張チューブ6のますます多くの部分が拡張状態に達する。しかしながら、上述したような第1の長手方向係合力及び第2の長手方向係合力に起因して、細長い本体8の遠位端9が管状部材6の遠位端5よりも前に突出する程度が、所定の閾値を超えて増大するのを防止することができる。
【0049】
一実施例において、自己拡張チューブ6の一部分が管状部材4から出て展開された後、自己拡張チューブ6がまったく管状部材4から出て展開されていないときよりも、管状部材4に対する自己拡張チューブ6の対向する後退に対して、第1の長手方向係合力がより大きい。自己拡張チューブ6の一部分が展開された後に第1の長手方向係合力を変化させることによって、送達システム2を取り扱うことができる方法により大きい柔軟性が与えられる。例えば、これによって、自己拡張チューブ6が、自己拡張チューブ6の一部分が展開される前に、管状部材4内で近位方向及び遠位方向において細長い本体とともに前後に自由に動かされることが可能になる。
【0050】
一実施例において、自己拡張チューブ6がまったく展開されていないときの、自己拡張チューブ6の対向する後退に対する第1の長手方向係合力は、第2の長手方向係合力よりも小さい。これによって、自己拡張チューブ6が、展開前に管状部材4内で容易に位置付けられることが可能になる。そのような実施例において、管状部材4及び細長い本体8の特性は、第1の長手方向係合力の変化が、自己拡張チューブ6の少なくとも一部分が展開された後で、ただし自己拡張チューブ6の少なくとも一部分が展開される前に、自己拡張チューブ6の展開と細長い本体8の後退との間で、自己拡張チューブ6に対する細長い本体8の運動の所望の非対称性が得られるようなものになるように、慎重に設計されなければならない。
【0051】
一実施例において、自己拡張チューブ6が、管状部材4の長手方向軸に対する自己拡張チューブ6の長手方向縮小を含む過程において、半径方向収縮状態から半径方向拡張状態へと自己拡張するように構成されており、自己拡張チューブ6の半径方向において拡張し、長手方向において収縮した部分が管状部材4の遠位端と係合することによって、より大きい第1の長手方向係合力が達成される。自己拡張チューブ6の管状部材4とのこの機械的係合は、自己拡張チューブ6と管状部材4との間の摩擦力の変化を引き起こす簡便な方法である。
【0052】
一実施例において、管状部材4に対する自己拡張チューブ6の対向する後退に対する、自己拡張チューブ6の少なくとも一部分が管状部材4から出て展開された後の取得可能な最大の第1の長手方向係合力は、取得可能な最大の第2の長手方向係合力よりも大きい。第1の長手方向係合力及び第2の長手方向係合力のこの構成によって、細長い本体8が自己拡張チューブ6に対して動くことが可能になる。
【0053】
一実施例において、細長い本体8の遠位端9が、自己拡張チューブ6と取り外し可能に係合するように構成されている遠位係合部材を備える。遠位係合部材は、例えば、自己拡張チューブ6が展開前にその半径方向に収縮した装填位置にあるままであることを保証するために使用することができる。
【0054】
加えて、一部の状況において、自己拡張チューブ6の少なくとも一部分が展開された後に、自己拡張チューブ6を後退させることが可能であることが望ましい場合がある。例えば、自己拡張チューブ6が展開中に予期せず動いた場合、又は、操作者が、自己拡張チューブ6の配置が不正確であると認識した場合である。したがって、一実施例において、遠位係合部材は、遠位係合部材が自己拡張チューブ6と係合したときに、取得可能な最大の第2の長手方向係合力が、取得可能な最大の第1の長手方向係合力よりも大きくなるように、さらに構成される。そのような実施例において、遠位係合部材は、自己拡張チューブ6が、管状部材4内へと戻され又は後退され、したがって、血管内から除去されることを可能にするために使用することができる。
【0055】
送達システム2は、好ましい実施例によれば、血流を動脈瘤嚢から外方に方向転換することを目的として、自己拡張チューブを血管内へと展開する方法の一部として使用することができる。そのような方法の一実施例において、自己拡張チューブ6を展開させることは、管状部材4を細長い本体8に対して送達システム2の近位端に向かって長手方向に動かすことによって自己拡張チューブ6の一部分を展開することと、細長い本体8を管状部材4に対して送達システム2の近位端に向かって長手方向に動かすことによって細長い本体8を後退させることと、自己拡張チューブ6の自己拡張によって自己拡張チューブ6が送達システム2から解放されるまで、自己拡張チューブ6の一部分を展開するステップ及び細長い本体8を後退させるステップを繰り返すこととを含む。
【0056】
上述したような送達システム2によって可能にされる、この増分的展開方法を使用することによって、細長い本体8が、自己拡張チューブ6の展開中の任意の時点において、遠位方向において管状部材4の遠位端を越えて所定の距離よりも突出することを防止されることが可能になる。
【0057】
方法の一実施例において、自己拡張チューブ6は、管状部材4の長手方向軸に対する自己拡張チューブ6の長手方向縮小を含む過程において、半径方向収縮状態から半径方向拡張状態へと自己拡張するように構成されており、自己拡張チューブ6の一部分を展開させるステップ及び細長い本体8を後退させるステップは、自己拡張チューブ6の展開中のいかなる時点においても、細長い本体8の遠位端9が、半径方向に拡張し長手方向に収縮した状態における自己拡張チューブ6の長さの2倍よりも大きい距離、任意選択的にその長さに等しい距離、任意選択的にその長さの半分の距離だけ、自己拡張チューブ6の遠位端5を越えて突出しないように実施される。
【0058】
本開示の実施例の送達システム2は、自己拡張状態において展開されるときに、低い有孔率、好ましくは85%未満、任意選択的に70%未満、任意選択的に60%未満、任意選択的に50%未満の有孔率を有する自己拡張チューブ6の展開に、特に適用可能である。そのような有孔率は、自己拡張チューブが動脈瘤嚢の開口部にわたって展開されるときに、血流を動脈瘤嚢から外方に方向転換するのに有効である。したがって、一実施例において、自己拡張チューブ6は、動脈瘤嚢への開口部にわたって展開されるときに、血流を動脈瘤嚢から外方に方向転換するように構成されている。
【0059】
有孔率ρという用語は、開放領域の表面積と、自己拡張チューブ6、例えば、相互接続アームのフレームの材料が占める総外表面積との比を指す。総外表面積は、開放領域の表面積と、フレームの材料が占める領域の表面積との和である。フレームが円筒形であるとき、総外表面積は単純に2π.R.Lであり、Rは円筒の半径であり、Lは円筒の長さである。
【0060】
自己拡張チューブ6は、細長いフレームを含んでもよい。フレームは、例えば、ニチノールなどの形状記憶合金を含んでもよい。代替的に、フレームは、ステンレス鋼、ポリマー又は他の生体適合性材料を含んでもよい。フレームは、相互接続アームのネットワークを含んでもよい。フレームは、例えば、中空管のレーザ切断、3D印刷、又は、そのような構造を製造するための当該技術分野において知られる他の技法によって形成されてもよい。相互接続アームのすべては、同じ半径で、半径方向において一切重なり合わずに提供され得る。
【0061】
半径方向において完全に拡張された状態において有孔率ρを有するフレームを考える。半径方向に完全に拡張した状態におけるフレームの半径及び長さがそれぞれR及びLである場合、有孔率がゼロになる状態によって規定される、フレームが半径方向収縮状態にいて達成することができる最小半径Rminは、以下の式によって統制される。
【数1】

式中、Lは、半径方向収縮状態におけるフレームの長さである。この関係は、フレームの要素が半径方向において互いに重なり合うことを可能にされないことを想定する。
【0062】
この関係は、フレームの長さが重大な程度まで一切変化することを可能にされない場合に、半径はρ倍しか低減し得ないことを示す。ρは非常に低くする必要があるため(例えば、少なくとも、使用時に動脈瘤嚢への開口部にわたって位置付けるように意図されている領域などの、低有孔率領域において80%未満)、これは、チューブを関心領域への送達のために狭窄することができる程度に対する重大な制限を表す。例えば、フレームの有孔率ρが20%であり、フレームの長さが半径方向収縮中に変化することが可能にされない、すなわち、L=Lである場合、フレームは半径の最大20%の低減しか達成することができない。半径方向収縮状態を採用するときに長手方向に拡張することができるフレームの提供は、この理解に基づき、半径のはるかに大きい低減が達成されることを可能にする。例えば、長さが2倍になる、すなわち、L=2.Lになることが可能にされる場合、フレームは、20%の有孔率について半径の60%の低減を達成することができる。
【0063】
一実施例において、自己拡張チューブ6の長手方向の短縮は、自己拡張チューブ6が(半径方向において)完全に管状部材4内にある状態と、自己拡張チューブ6が管状部材4を完全に出た(そして、拡張し切った)状態との間の、管状部材4の長手方向軸10に平行な方向における、少なくとも20%、任意選択的に少なくとも30%、任意選択的に少なくとも50%、任意選択的に少なくとも75%の短縮を含む。
【0064】
一部の状況において、自己拡張チューブの少なくとも一部分が患者の血管内へと展開された後に、自己拡張チューブ6を部分的に又は完全に戻す必要がある。これは、例えば、自己拡張チューブ6が最初に不正確に位置付けられたためであり得、又は、自己拡張チューブ6の展開した部分が展開手順中に動いてしまい、結果、展開が継続される場合に自己拡張チューブが不正確に位置付けられることになる場合であり得る。これらの状況は、送達システム2が正しく操作されている場合には稀であるが、自己拡張チューブ6の後退が可能であることは、難事の場合に安全措置を提供し、展開におけるいかなるミスもより容易に是正することができるという安心感を患者及び送達システム2の操作者に与える。
【0065】
第2の態様によれば、自己拡張チューブ6を血管内へと展開するための送達システム2であって、血管内へと挿入されるように構成されている管状部材4と、管状部材4の管腔内に延伸する細長い本体8と、半径方向において管状部材4と細長い本体8との間に位置付けられている自己拡張チューブ6と、長手方向において自己拡張チューブ6の近位領域に保持力を選択的に加えるように構成されている保持部材30とを備える、送達システム2が提供される。
【0066】
図6は、第2の態様の一実施例の概略側面図である。管状部材4、自己拡張チューブ6、及び細長い本体8は実質的に、上述したものと同じである。保持部材30は、追加の保持力が自己拡張チューブ6に加えられることを可能にする。以て、送達システム2は、後退モードにおいて動作するように構成され、後退モードにおいて、保持力を加えることによって、細長い本体8に対する近位方向における自己拡張チューブ6の長手方向運動中に、長手方向において細長い本体8と、細長い本体8と係合したままである自己拡張チューブ6の一部分との間の相対運動が可能になる。
【0067】
これによって、自己拡張チューブ6が、管状部材4に対して後退されることが可能になる。これには、によって、細長い本体8が管状部材4に対して近位方向に動くことが伴い得るが、これは必須ではなく、一部の実施例においては、細長い本体8及び管状部材4は、自己拡張チューブ6の後退中に互いに対して実質的に静止している。
【0068】
上述したように、後退モード及び保持部材30の特徴が、展開モードにおいて動作するように構成されている送達システム2と組み合わせて提供されるとき、展開モードと比較して、後退モードにおいて自己拡張チューブ6と細長い本体8との間で可能である相対運動の非対称性を逆にすることが可能である。これは、第1の長手方向係合力及び第2の長手方向係合力に対して保持部材30を使用して加えられる保持力の大きさを慎重に選択することによって達成される。保持力は、保持部材30によって近位方向において自己拡張チューブ6の近位領域に加えられる張力の形態をとることができる。
【0069】
一実施例では、後退モードにおいて、保持力を加えることは、使用時の管状部材4に対する送達システム2の近位端に向かう細長い本体8の長手方向運動中に、長手方向において細長い本体8と、細長い本体8と係合したままである自己拡張チューブ6の任意の部分との間に相対運動が実質的にないようなものである。
【0070】
そのような実施例において、自己拡張チューブ6に対して細長い本体8が動かないことによって、摩耗の結果として自己拡張チューブ6に損傷が発生する機会が減少し、又は、自己拡張チューブ6の任意の部分が意図しない様態で変形することが減少する。これによってまた、自己拡張チューブ6を近位方向に動かすために第1の長手方向係合力に加えて第2の長手方向係合力を克服する必要がなくなるため、保持部材30によって自己拡張チューブ6に加えなければならない保持力の大きさも減少する。これによって、自己拡張チューブ6に対する損傷の危険性がさらに低減する。
【0071】
一実施例において、後退モードにおいて、管状部材4に対する自己拡張チューブ6の対向する展開に対する、保持力と第1の長手方向係合力との和は、取得可能な最大の第2の長手方向係合力よりも大きい。
【0072】
この実施例は、後退モードにおいて細長い本体8が自己拡張チューブ6に対して遠位方向に動くことを可能にする。送達システム2が、細長い本体8が管状部材4の端部を越えて所定の距離よりも突出しないようにされているようなものである場合、自己拡張チューブ6及び細長い本体8をともに同じ速度で後退させる結果として、自己拡張チューブ6の一部分が管状部材4の内部で細長い本体8と係合されなくなり得る。これは、自己拡張チューブ6が、管状部材4内へと後退され、半径方向に収縮されるときに、長手方向に拡張することになるためである。自己拡張チューブ6が管状部材4の内部で細長い本体8によって支持されない結果として、自己拡張チューブ6が損傷する場合があり、これによって、チューブの患者への再展開が、患者にとって困難又は危険になる。細長い本体8がチューブ6に対して遠位方向に動くことが可能になることを利用して、細長い本体8が管状部材4の遠位端を越えて突出しすぎることが防止されるという利点を維持しながら、チューブ6が管状部材4の内部で細長い本体8と常に適切に係合されることを保証することができる。
【0073】
一実施例において、後退モードにおいて、管状部材4に対する自己拡張チューブ6の対向する後退に対する、取得可能な最大の第1の長手方向係合力は、保持力と、第2の長手方向係合力との和よりも小さい。この実施例は、上述したように、自己拡張チューブ6が、管状部材4に対して後退されることを可能にする、力の相対的な大きさの選択を表す。
【0074】
一実施例において、保持部材30が、自己拡張チューブ6の近位領域と取り外し可能に係合するように構成されている。この実施例は、自己拡張チューブ6の展開がより容易に完了されるという利点を提供する。取り外し可能な係合は、例えば、自己拡張チューブ6の構造と係合するように構成されている保持部材30上のフックなどの、任意の適切な手段を通じて提供されてもよい。他の代替形態は、自己拡張チューブ6が十分に展開されたのを受けて溶解することができる溶解可能金属要素を介して保持部材30及び自己拡張チューブ6が係合される、電解質付着を含む。
【0075】
一実施例において、自己拡張チューブ6の近位領域が、近位係合部材32を備え、保持部材30が、近位係合部材32と取り外し可能に係合するように構成されている。図6に示す特定の実例において、2つの近位係合部材32が提供されるが、一般に、任意の数の近位係合部材32が提供されてもよい。
【0076】
近位係合部材32は、任意の適切なメカニズムを介して保持部材30と係合されてもよい。例えば、図6の実施例において、近位係合部材32は、保持部材30内の凹部と係合する固形ブロックを含む。しかしながら、例えば、保持部材30上のループと係合するフック形状の近位係合部材、又はその逆など、他のメカニズムが可能である。近位係合部材32の保持部材30からの取り外しは、送達システム2の近位端において制御される作動メカニズムの提供を通じて、操作者によって直接的に制御することができる。代替的に、さらに後述するように、取り外しは、実質的に自動であってもよい。
【0077】
一実施例において、保持部材30が、半径方向において細長い本体8と自己拡張チューブ6との間に位置付けられる保持チューブを含み、自己拡張チューブ6の少なくとも一部分が、内向きには保持チューブと係合し、外向きには管状部材4と係合する。図6に示すように、保持チューブの形態の保持部材30を提供することによって、保持部材30が送達システム2の他の構成要素に対して堅固に且つ一貫して位置付けられるという利点がもたらされる。自己拡張チューブ6が内向きに保持チューブと係合することを保証することによって、保持部材30が自己拡張チューブ6と係合し、保持力を加える簡便な方法が提供される。
【0078】
一実施例において、自己拡張チューブ6の近位領域の保持部材30との係合は、近位領域が管状部材4の遠位端を越えて展開されるときに、近位領域が保持部材30から離れるようなものである。この実施例は、自己拡張チューブ6の展開を完了するために操作者による追加の動作が必要とされず、展開過程が単純になり、誤りの機会が低減することを意味するため、有利である。この特徴を提供するために、様々な異なるメカニズムが使用されてもよい。図6に示す実施例において、上述したような保持チューブは、近位係合部材32と組み合わせて、自己拡張チューブ6の近位領域が自己拡張して、自己拡張チューブの近位領域がもはや外向きに管状部材4によって制約されなくなると、近位係合部材32が保持部材30から離れることを意味する。代替的な実施例において、自己拡張チューブ6と保持部材30との間を接続する溶解可能要素が使用され、溶解可能要素は、血管の環境に曝露されると溶解し、自己拡張チューブ6を送達システム2から解放する。
【0079】
半径方向において拡張し長手方向に収縮した状態から半径方向に収縮し長手方向に拡張した状態に可逆的に切り替え可能である自己拡張チューブ6を使用するとき、展開中に、細長い本体8の単一の動作又は運動において自己拡張チューブ6をどれだけ展開するかを判定することが可能であることが有用である。これは、展開前に圧縮されていた自己拡張チューブ6の部分の長さが、展開を受けた同じ部分の長さに対応しないためである。これによって、単一の動作においてチューブ6がどれだけ展開されたかを追跡することが困難になっている。
【0080】
特に、細長い本体8が代替的に展開され、次いで自己拡張チューブ6に対して後退される、上述したもののような増分的展開メカニズムを使用するとき、2つのファクタの間でバランスを取る必要がある。第1のファクタは、細長い本体8を自己拡張チューブ6に対して再び後退させる前に、細長い本体8を、管状部材4の端部を越えて延伸させすぎないことである。細長い本体8を延伸させすぎると、前述のように、血管を損傷する危険性がある。第2のファクタは、各ステップにおいて細長い本体8が管状部材4の端部を越えて延伸する距離を短くしすぎないことであり、短くなりすぎる結果として、自己拡張チューブ6を展開するための展開/後退サイクルの数が多くなりすぎる。多数の展開/後退サイクルは展開手順の複雑度及び難度を増大させ、以てユーザ誤りの機会を増大させる。サイクルの各反復の最適な展開距離によって、これら2つのファクタの間のバランスが見出される。細長い本体8上にマーカを配置することによって、各展開/後退サイクルにおいて細長い本体8を展開する最適な距離のガイドを、操作者に提供することができる。
【0081】
細長い本体8上のマーカはまた、展開中の自己拡張チューブ6の適切な位置付けなど、他の目的に使用することもできる。操作者が、展開中に、動脈瘤の頸部を適切にカバーするために自己拡張チューブ6がどこに展開されるべきであるかを決定することが可能であることが有益である。多くの従来技術のデバイスにおいて、長手方向収縮の度合いは、半径方向拡張の度合いに依存し、半径方向拡張の度合い自体が、自己拡張チューブ6が展開される血管の正確なサイズ及び形状に依存するため、自己拡張チューブ6の最終的な長さを正確に予測することは可能ではない。これは、大部分がワイヤ・メッシュから構成される自己拡張チューブ6を使用するときに特に当てはまる。したがって、マーカが細長い本体8上に含まれる場合、それらのマーカは通常、展開過程の始まりにおける自己拡張チューブ6の遠位端の位置に対応する遠位端においてのみ、細長い本体8上に含まれる。遠位端の位置は近位端の最終的な位置の良好な指標ではなく、そのため、自己拡張チューブ6は安易に誤って配置され得、時間がかかり、場合によっては困難な、ステントの後退及び再展開が必要になるため、これによってユーザに与えられる自己拡張チューブ6を配置するための案内は、不十分であることが多い。
【0082】
しかしながら、本明細書に記載されているような自己拡張チューブ6の設計を使用するとき、展開時に発生する長手方向の収縮及び半径方向の拡張は、実質的に独立しており、チューブ6の最終的な長さはより一貫しており、予測可能である。これによって、自己拡張チューブ6の最終的な展開長を表す、細長い本体8上で一定距離だけ離間されたマーカを含むことが可能である。これらのマーカは、展開中に自己拡張チューブ6を位置付けるのを補助し、結果、自己拡張チューブ6が動脈瘤頸部を適切に、且つ自己拡張チューブ6を後に動かす危険性なしにカバーすることを保証することができる。
【0083】
図7は、自己拡張チューブ6を血管内へと展開するための送達システム2であって、血管内へと挿入されるように構成されている管状部材4と、管状部材4の管腔内に延伸する細長い本体8と、半径方向において管状部材4と細長い本体8との間に位置付けられている自己拡張チューブ6とを備え、自己拡張チューブ6が、半径方向に拡張しており長手方向に収縮している状態から、半径方向に収縮しており長手方向に拡張している状態へと可逆的に切り替え可能である細長いフレームを備え、細長い本体8の遠位領域が2つのエンド・マーカ20を備える、送達システム2を示す。
【0084】
一実施例において、エンド・マーカ20間の距離Lは、半径方向に拡張し長手方向に収縮している状態における自己拡張チューブ6の長さの20%以内、任意選択的に10%以内、任意選択的に5%以内に等しい。自己拡張チューブ6が展開時に長手方向に収縮するという事実に起因して、自己拡張チューブの展開前のエンド・マーカ20間の距離Lは、半径方向に収縮し長手方向に拡張した状態における自己拡張チューブ6の長さよりも実質的に小さい。この特徴は、展開中に自己拡張チューブ6の位置付けを助けることができる。一実施例において、単一の展開/後退サイクルの最適な展開距離は、長手方向に収縮し半径方向に拡張した状態における自己拡張チューブ6の最終的な長さの10%~90%、任意選択的に25%~75%である。
【0085】
一実施例において、エンド・マーカ20間の距離は、半径方向に拡張し長手方向に収縮している状態における自己拡張チューブ6の長さに対して2mm以内、任意選択的に1mm以内、任意選択的に0.5mm以内に等しい。自己拡張チューブ6が脳動脈瘤を処置するために使用される場合、これは、脳動脈瘤を処置するのに適した自己拡張チューブ6のサイズに対する適切な間隔を表す。
【0086】
図7に示すものなどの一実施例において、自己拡張チューブ6は、自己拡張チューブ6の遠位端7に位置するマーカ22を備える。一実施例において、自己拡張チューブ6は、自己拡張チューブ6の近位端に位置するマーカ24をさらに備える。これらのマーカ22、24が、操作者が、展開過程中に自己拡張チューブ6の端部がどこにあるかを判定するのをより容易にし、細長い本体8上のエンド・マーカ20と位置整合することができる。
【0087】
エンド・マーカ20の使用は、第1の長手方向係合力及び第2の長手方向係合力が、細長い本体8が自己拡張チューブ6に対して後退することができるように構成される、前述した送達システム2の実施例において特に有利である。これは、それらのマーカが、操作者が各展開/後退サイクルにおいて一貫した且つ/又は最適な長さの自己拡張チューブ6を延伸させることを可能にするための基準を提供するためである。一実施例において、管状部材4は、管状部材4の遠位端に位置するマーカを備える。管状部材4上のマーカは、各展開/後退サイクルにおいて、細長い本体8が管状部材4に対して同じ位置に後退され、管状部材4に対して同じ距離だけ展開されるような、細長い本体8上のマーカに対する基準として使用することができる。
【0088】
細長い本体8はまた、エンド・マーカ20を使用して、展開中の送達システム2の動きが自己拡張チューブ6の最終的な位置に影響を与えたか否かを監視することができるように、展開過程全体を通じて位置付けし直すこともできる。自己拡張チューブ6が1つ又は複数のマーカ22、24を備える実施例において、細長い本体8上のエンド・マーカ20は、自己拡張チューブ6上のマーカと位置整合することができ、自己拡張チューブ6の展開が自己拡張チューブを動脈瘤に対して正しく配置することをチェックするための物差しとして使用することができる。
【0089】
一実施例において、マーカ20、22、24は、放射線不透過性マーカを含む。ステントの血管内への展開を監視するためにX線画像化が一般的に使用され、そのため、放射線不透過性マーカは、そのような手順において使用するように設計されているデバイスに特に適している。さらに、展開中に操作者に対する送達システム2の視認性を改善するために、細長い本体8は、放射線不透過性ワイヤを含んでもよく、及び/又は、自己拡張チューブの少なくとも一部分は、放射線不透過性ワイヤから構成されてもよい。放射線不透過性ワイヤは、全体的に又は部分的に、画像化に使用される放射線のタイプに対するその不透過性について選択される材料から作成されるワイヤを含むことができる。
【0090】
マーカ20、22、24は、細長い本体8及び/又は自己拡張チューブ6の上又は内部に配置されているスポット又はバンドの形態であってもよい。代替的に、マーカは、細長い本体8又は自己拡張チューブ6の周を取り巻くリングを含んでもよい。リング形状のマーカを使用することは、送達システム2と、手順を監視するために使用される画像化システムとの相対的な向きに関係なく、マーカがより明瞭に見えることを可能にするのに有利であり得る。
【0091】
自己拡張チューブ6が、自己拡張チューブ6の近位端に位置するマーカ24を備える実施例において、マーカ24はまた、近位係合部材32として機能することもできる。
【0092】
エンド・マーカ20を備える送達システムは、自己拡張チューブ6を血管内へと展開する方法において使用するのに適しており、自己拡張チューブ6を展開させることは、管状部材4を細長い本体8に対して送達システム2の近位端に向かって長手方向に動かすことによって(又は同等に、細長い本体8を管状部材4に対する遠位方向において長手方向に動かすことによって)自己拡張チューブ6の一部分を展開することと、細長い本体8を管状部材4に対して送達システム2の近位端に向かって長手方向に動かすことによって細長い本体8を後退させることと、自己拡張チューブ6の自己拡張によって自己拡張チューブ6が送達システム2から解放されるまで、自己拡張チューブ6の一部分を展開するステップ及び細長い本体8を後退させるステップを繰り返すこととを含み、自己拡張チューブ6の一部分を展開するステップの少なくとも1回の反復中に、自己拡張チューブ6は、エンド・マーカ20間の距離に対して25%以内、任意選択的に15%以内、任意選択的に10%以内、任意選択的に5%以内に等しい距離だけ展開される。この方法において、エンド・マーカ20は、自己拡張チューブ6が一貫した距離だけ展開されるような、操作者のための基準として作用する機能を提供する。一実施例において、マーカ20間の距離Lは、最適な距離に対応するように選択される。最適な距離に対応するということは、上述した2つのファクタ、すなわち、展開ステップの各反復によって細長い本体8を管状部材4の遠位端を越えて延伸させすぎるのを回避することと、自己拡張チューブ6を展開させるのに必要である展開ステップの数が多くなりすぎるのを回避することとのバランスをとる距離に等しいこと、又は、例えばその距離の10%以内に等しいことを伴い得る。
【0093】
一実施例において、最適な距離は、半径方向に拡張し長手方向に収縮している状態における自己拡張チューブの長さに関連する。例えば、エンド・マーカ間の距離について上記で示唆したように、最適な距離は、半径方向に拡張し長手方向に収縮している状態における自己拡張チューブの長さの所定の割合、例えば、25%~75%以内に等しくてもよい。
【0094】
一実施例において、管状部材4の内面の組成及び表面テクスチャのいずれか又は両方が、管状部材4が自己拡張チューブ6と接触している長さにわたって均一であるか、又は、均一であるように構成される。任意選択的に、管状部材4の内面上に低摩擦コーティングが提供されてもよい。
【0095】
細長い本体8はまた、細長い本体8の外面の組成及び表面テクスチャのいずれか又は両方が、細長い本体8が自己拡張チューブ6と接触している長さにわたって均一であるように構成されてもよい。表面が均一である場合であっても、当業者が、例えば、適切な高摩擦コーティング又は粗面処理を提供することによって、自己拡張チューブ6と細長い本体8との間の摩擦係合力を、自己拡張チューブ6の対向する展開に対して管状部材4によって提供される摩擦係合力よりも高くなるように手配することは容易である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7