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特許7541042ポリマー粒子及びC9~C22アルキル基を有する安定剤を含む油性分散体並びにこの油性分散体を使用してケラチン物質を処理するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】ポリマー粒子及びC9~C22アルキル基を有する安定剤を含む油性分散体並びにこの油性分散体を使用してケラチン物質を処理するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/04 20060101AFI20240820BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20240820BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
A61K8/04
A61K8/81
A61K8/31
A61Q1/00
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021577074
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2020068143
(87)【国際公開番号】W WO2020260659
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】1907113
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ミレイユ・アルノー-ルー
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・ポルタル
(72)【発明者】
【氏名】シモン・トパン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・イレクティ
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-501171(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第03014875(FR,A1)
【文献】特表2018-501240(JP,A)
【文献】特表2017-538742(JP,A)
【文献】特表2017-538737(JP,A)
【文献】特表2018-501236(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第03029786(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00- 90/00
C04B 2/00- 32/02
C04B 40/00- 40/06
C09D 1/00- 10/00
C09D 101/00-201/10
C09J 1/00- 5/10
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水である油性分散体(A)であって、
i)1つ又は複数の粒子であって、
a)(C~C)アルキル(C~C)(アルキル)アクリレートのエチレン系ホモポリマー;
b)b1)(C~C)アルキル(C~C)(アルキル)アクリレートと、b2)1種又は複数のカルボキシル基、無水物基、リン酸基、スルホン酸基及び/又はアリール基を含むエチレン系モノマーとのエチレン系コポリマー;
c)(C~C)アルキル(C~C)(アルキル)アクリレートのエチレン系コポリマー
から選択される1種又は複数のポリマーから得られるエチレン系ポリマーのコアと、
d)(C~C22)アルキル(C~C)(アルキル)アクリレートモノマーのエチレン系ホモポリマー;及び
e)(C~C22)アルキル(C~C)(アルキル)アクリレートモノマーと、(C~C)アルキル(C~C)(アルキル)アクリレートモノマーとのエチレン系コポリマー
から選択される1種又は複数のポリマー表面安定剤と
からなる1つ又は複数の粒子と;
iii)1種又は複数の炭化水素系液体脂肪性物質と;
iv)f)染料、g)顔料;h)ケラチン物質をケアするための活性剤、及びj)UV(A)及び/又は(B)遮蔽剤、並びにm)これらの混合物から選択される1種又は複数の化粧用活性剤と
を含む油性分散体(A)。
【請求項2】
前記粒子i)を構成する前記ポリマーは、式(I):
C=C(R)-C(O)-O-R’ (I)
(式(I)中、
- Rは、(C~C)アルキル基を表し、及び
- R’は、(C~C)アルキル基を表す)
の同一のモノマーの重合から得られるアクリレートエチレン系ホモポリマーc)から選択される、請求項1に記載の油性分散体(A)。
【請求項3】
前記粒子i)を構成する前記ポリマーは、
- 請求項2に記載の式(I)の少なくとも2種の異なるモノマー;及び
- 式(II)HC=C(R)-C(O)-O-H(式中、Rは、請求項2に記載の通りである)のモノマー
の重合から得られるアクリレートエチレン系コポリマーb)から選択される、請求項1に記載の油性分散体(A)。
【請求項4】
前記モノマーは、C~Cアルキル(メタ)アクリレートから選択される、請求項2または3に記載の油性分散体(A)。
【請求項5】
前記分散体に含有されるポリマーの総質量に対して60質量%~98質量%のモノマーa)~c)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の油性分散体。
【請求項6】
前記安定剤は、d)(C~C22)アルキル(C~C)(アルキル)アクリレートのエチレン系ホモポリマーから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の油性分散体(A)。
【請求項7】
前記安定剤は、イソデシル、ラウリル、ステアリル、ヘキサデシル又はベヘニル(メタ)アクリレートホモポリマー、及びイソデシル、ラウリル、ステアリル、ヘキサデシル又はベヘニル(メタ)アクリレートと、C~Cアルキル(メタ)アクリレートとの統計コポリマーから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の油性分散体(A)。
【請求項8】
前記安定剤は、e)(C~C22)アルキル(C~C)(アルキル)アクリレートと、(C~C)アルキル(C~C)(アルキル)アクリレートとのエチレン系コポリマーから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の油性分散体(A)。
【請求項9】
前記安定剤は、式(IV)のモノマーと、式(III)の2種の異なるモノマーとの重合から得られるエチレン系コポリマーe)から選択され、ここで、式(III)及び(IV)は:
C=C(R)-C(O)-O-R’ (III)及びHC=C(R)-C(O)-O-R’’ (IV)
(式(III)及び(IV)中、
- Rは、同一であるか又は異なり得、(C~C)アルキル基を表し、
- R’は、同一であるか又は異なり得、(C~C)アルキル基を表し、及び
- R’’は、(C~C22)アルキルを表す)
である、請求項1~5のいずれか一項に記載の油性分散体(A)。
【請求項10】
前記安定剤は、請求項9に記載の式(III)のモノマーと、請求項9に記載の式(IV)の2種の異なるモノマーとの重合から得られるエチレン系コポリマーe)から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の油性分散体(A)。
【請求項11】
前記分散体に含有されるポリマーの総質量に対して2質量%~40質量%の、前記炭化水素系液体iii)と共にd)又はe)に含まれる(C~C22)アルキル(C~C)(アルキル)アクリレートモノマーを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の油性分散体(A)。
【請求項12】
前記分散体(A)中に存在する前記安定剤と前記ポリマーのコアの質量比は、1:2~2:1である、請求項1~11のいずれか一項に記載の油性分散体(A)。
【請求項13】
前記分散体(A)中に存在する前記安定剤+前記ポリマーのコアの集合体は、前記分散体(A)の総質量に対して2質量%~40質量%を構成する、請求項1~12のいずれか一項に記載の油性分散体(A)。
【請求項14】
前記炭化水素系液体脂肪性物質iii)は、炭化水素、動物由来の油、植物由来の油、合成由来のグリセリド又はフッ素系油、脂肪アルコール、脂肪酸及び/又は脂肪アルコールのエステル、非シリコーンワックス並びにシリコーンから選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の油性分散体(A)。
【請求項15】
前記炭化水素系液体脂肪性物質iii)は、
- ポリオールの脂肪酸エステルによって形成される植物油;
- 6個を超える炭素原子を含有する直鎖状、分岐状又は環状エステル;
- 揮発性又は不揮発性の直鎖状、分岐状及び/又は環状のアルカン;
- 6~30個の炭素原子を含有するエーテル;
- 6~30個の炭素原子を含有するケトン;
- 炭化水素系鎖がいかなる置換基も含まない、6~30個の炭素原子を含有する脂肪族脂肪モノアルコール;
- 6~30個の炭素原子を含有するポリオール;及び
- これらの混合物
から選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の油性分散体(A)。
【請求項16】
前記炭化水素系液体脂肪性物質iii)は、前記分散体中において、前記分散体中に存在する前記炭化水素系液体脂肪性物質の総質量に対して60質量%~100質量%の範囲の含有量で存在し、及びシリコーン油は、0~40質量%である、請求項1~15のいずれか一項に記載の油性分散体(A)。
【請求項17】
前記化粧用活性剤iv)は、
- 一般に1種又は複数の酸化性塩基から選択される酸化染料;
- 単独での又は混合物の形態における、直接染料;(ポリ)メチン染料;カルボニル染料;アジン染料;ニトロ(ヘテロ)アリール染料;トリ(ヘテロ)アリールメタン染料;ポルフィリン染料;フタロシアニン染料及び天然の直接染料;及び
- 天然染料並びにまた前記天然染料を含有する抽出物又は煎出物
から選択されるf)染料から選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載の油性分散体(A)。
【請求項18】
前記化粧用活性剤iv)は、
- 有機顔料及び鉱物又は無機顔料
から選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載の油性分散体(A)。
【請求項19】
ケラチン物質を処理するための方法であって、前記物質に、請求項1~18のいずれか一項に記載の油性分散体(A)を適用することを含み、前記分散体(A)を前記ケラチン物質に適用した後、前記分散体(A)は、前記ケラチン物質上において、自然に又は美容に使用される加熱器具を用いてのいずれかで乾燥される、方法。
【請求項20】
幾つかの分離した区画を有するキット又は器具であって、
- 1つの区画における、請求項1~16のいずれか一項に記載の成分i)及びiii)を含む分散体(A)と、
- 1つ又は複数の異なる区画に分けられた以下の成分:請求項1、17又は18のいずれか一項に記載のf)染料、g)顔料;h)ケラチン物質をケアするための活性剤、並びにj)UV(A)及び/又は(B)遮蔽剤と
を含むキット又は器具。
【請求項21】
請求項1~18のいずれか一項に記載の分散体(A)を調製するための方法であって、以下のステップ:
- 第1のステップにおいて、前記安定剤が、前記ポリマーd)又はe)の前記モノマーをv)ラジカル開始剤と溶媒中で混合し、且つ前記モノマーを重合することによって調製されるステップ;
- 第2のステップにおいて、前記粒子i)の前記ポリマーの前記モノマーが、前記第1のステップで形成された前記安定剤に添加され、及び前記添加されたモノマーの重合が前記ラジカル開始剤の存在下で実施されるステップ
を含み;
- 非水性媒体が不揮発性の炭化水素系液体脂肪性物質iii)である場合、前記重合は、無極性有機溶媒中で実施され得、及び前記不揮発性の炭化水素系液体脂肪性物質は、その後、添加され、及び前記溶媒は、選択的に留去され得;
- 前記非水性媒体が揮発性の炭化水素系液体脂肪性物質iii)である場合、前記重合は、溶媒としても作用する前記揮発性の炭化水素系液体脂肪性物質中で直接実施され得;
- 前記選択された化粧用活性剤iv)は、前記第1のステップ中に添加され得るか、又は前記化粧用活性剤は、前記第2のステップ中若しくは前記第2のステップ後に添加され;
- 前記ポリマーd)又はe)の前記モノマー及び前記ラジカル開始剤v)は、前記溶媒に可溶であり、及び得られる前記ポリマー粒子は、それに不溶であることが理解される、方法。
【請求項22】
請求項1~18のいずれか一項に記載の油性分散体(A)の、ケラチン物質を処理するための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、i)エチレン系ポリマーからなる少なくとも1つの粒子と、ii)(C~C22)アルキル基を含む少なくとも1種のポリマー安定剤と、iii)20℃及び1気圧で液体である少なくとも1種の炭化水素系脂肪性物質とを含む油性分散体(A)に関する。本発明は、ケラチン物質、特に皮膚、毛髪又は睫毛などのヒトのケラチン物質を処理するための方法であって、前記物質に少なくとも1種の油性分散体(A)を適用することを伴う方法、油性分散体を調製するための方法及び成分i)~iii)を含む多区画キットにも関する。
【背景技術】
【0002】
老化の過程中、特に皮膚の構造及び機能の変化によって反映される、この老化に非常に特徴的な様々な徴候が皮膚上に現れる。皮膚の老化の主な臨床的徴候は、特に年齢と共に増加する小ジワ及び深いシワの出現である。
【0003】
このような老化の徴候を、老化に対抗することができるα-ヒドロキシ酸、β-ヒドロキシ酸、レチノイドなどの活性剤を含有する化粧用又は皮膚科用組成物を使用して処置する手法が知られている。このような活性剤は、死んだ皮膚細胞を除去し、且つ細胞が再生する過程を促進することによってシワに作用する。しかしながら、これらの活性剤は、特定の適用時間後にのみ、シワを処置するために有効になるという欠点を有する。現在、使用される活性剤を即時的に作用させ、それにより速やかにシワ及び小ジワを伸ばし、疲労の徴候を消失させることが一層求められている。
【0004】
化粧製品は、多くの場合、この製品が良好な美容的性質を有する堆積物をケラチン物質上に生成するように、被膜形成性ポリマーの使用を必要とする。特に、被膜を形成する堆積物が良好な持続性を有すること、特に堆積物が指又は衣類との接触中に移行しないこと及びまた水、特に雨との接触時若しくはシャワー浴中の良好な持続性又は代わりに堆積物が汗若しくは皮脂及びまた食事性脂肪、特に油などの食事性脂肪性物質に対して耐性を示すことが必要である。
【0005】
炭化水素系油などの有機媒体中にポリマー粒子を分散させた分散体を使用することは、既知の慣行である。ポリマーは、特にマスカラ、アイライナー、アイシャドウ、口紅などのメークアップ製品中で被膜形成剤として使用されている。(特許文献1)の実施例は、ポリスチレン/コポリ(エチレン-プロピレン)ジブロックコポリマーで安定化されたアクリル系ポリマーの炭化水素系油(流動パラフィン、イソドデカン)中分散体を記載している。この分散体を皮膚に適用した後に得られる被膜は、光沢が抑えられている。(特許文献2)も、炭化水素系油を含有する表面安定化ポリマー粒子の分散体の、口唇及び睫毛をメークアップするための使用を記載している。(特許文献3)は、安定化用ポリマーで安定化されたアクリル系ポリマーのイソドデカン中分散体を記載している。(特許文献2)は、炭化水素系油を含有する表面安定化ポリマー粒子の分散体の、口唇及び睫毛をメークアップするための使用を記載している。ケラチン繊維染色の分野において、非永久染色のために直接染料を、又は永久染色のために染料前駆体を使用して、種々の技法によりケラチン繊維を染色することは、既に公知の慣例である。
【0006】
非永久染色又は直接染色は、直接染料を含有する染料組成物によりケラチン繊維を染色することを含む。これらの染料は、ケラチン繊維と親和性を有する有色の着色性分子である。これらは、所望の着色を達成するのに必要な時間にわたってケラチン繊維に適用され、その後、洗い流される。
【0007】
使用される標準的な染料は、特にニトロベンゼン、アントラキノン、ニトロピリジン、アゾ、キサンテン、アクリジン、アジン若しくはトリアリールメタン系の染料又は天然染料である。
【0008】
これらの染料の幾つかは、明色化が行われる条件下で使用することができ、それにより暗色の毛髪上で認識できる着色が可能になる。
【0009】
酸化染色を用いてケラチン繊維を永久的に染色することも公知の慣行である。この染色技法は、酸化性塩基及びカプラーなどの染料前駆体を含有する組成物をケラチン繊維に適用することを含むこれらの前駆体は、酸化剤の作用下において、毛髪上で1種又は複数の有色物質を形成する。
【0010】
酸化性塩基及びカプラーとして使用される分子の多様性により、広範囲の色を得ることができ、それから生じる着色は、一般に、永久的であり、強く、外部の作用剤、特に光、悪天候、洗浄、発汗及び摩擦に対して耐性がある。
【0011】
暗色の毛髪上で認識できるようにするために、これらの2つの染色技法は、ケラチン繊維を予め又は同時に脱色することを必要とする。過酸化水素又は過酸塩などの酸化剤を使用して行われる脱色工程は、ケラチン繊維をかなり劣化させるため、美容性が損なわれる。その場合、毛髪は、硬くなり、絡まりが解きにくくなり、脆くなる傾向がある。
【0012】
他の染色方法は、顔料を使用することを含む。具体的には、ケラチン繊維の表面に顔料を使用すると、表面の顔料が繊維本来の色を隠すため、一般に暗色の毛髪上で認識できる着色を達成することが可能になる。ケラチン繊維を染色するための顔料の使用は、例えば、特許出願(特許文献4)に記載されており、この特許文献は、ケラチン繊維を一時的に染色するために、少なくとも1種の酸官能基を含む被膜形成性ポリマー粒子の少なくとも1種の分散体と、前記分散体の連続相中に分散された少なくとも1種の顔料とを含む組成物を使用することを推奨している。
【0013】
この染色方法により得られる着色は、まさに最初のシャンプー洗浄から除去されることになる。
【0014】
更に、ポリシロキサン/ポリウレアブロックコポリマー及び顔料を含む組成物を使用して毛髪の着色コーティングを実施することも、(特許文献5)から公知の慣行である。しかし、そのような組成物によって得られるコーティングは、場合により均質性に欠けることがあり、また毛髪の個別化が常に満足のいくものであるわけではない。
【0015】
(特許文献6)は、イソボルニル(メタ)アクリレートポリマー安定剤で表面が安定化されたC~Cアルキル(メタ)アクリレートポリマー粒子を、油を含有する非水性媒体中に分散させた分散体の使用を記載している。この技術を用いて得られる堆積物は、特に皮脂に対する耐性の点で常に満足のいくものであるわけではない。他方では、メタクリル酸イソボルニルなどの安定剤により惹起される匂いは、特に松の匂い又はカビ臭さが強いことがあるため、常に満足のいくものであるわけではない(例えば、(非特許文献1)を参照されたい)。したがって、特に安定剤が高濃度である場合、このような匂いがより分かりにくくなるようにマスキングすることが必要である。
【0016】
(特許文献7)は、Cアルキル(メタ)アクリルレートホモポリマー又はCアルキル(2-エチルヘキシル)(メタ)アクリレートと、C~Cアルキル(メタ)アクリレートとのコポリマーである少なくとも1種の安定剤で安定化されたポリマー粒子のメークアップ用分散体に焦点を当てている。このような分散体は、皮脂の脂肪性物質に対する耐性の点で常に満足のいくものであるわけではなく、そのため、例えばそれを口唇のメークアップに使用することが制限される場合がある。更に、これらの分散体は、ケラチン物質に適用した後、過度に「べたつく」と判断される感触を呈することがあり、これは、口唇又は睫毛のメークアップなどの特定の用途に許されない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】欧州特許第0749747号明細書
【文献】仏国特許第1362795号明細書
【文献】国際公開第2010/046229号パンフレット
【文献】仏国特許第2741530号明細書
【文献】仏国特許第2907678号明細書
【文献】仏国特許第3014875号明細書
【文献】仏国特許第3029786号明細書
【非特許文献】
【0018】
【文献】International Journal of Adhesion and Adhesives,78,182-188(2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、本発明の目的は、べたつかず、外部からの攻撃因子に対して良好な持続性を有し、経時的な滲出がなく、且つ汗、皮脂、食事性油などの油に耐性を示す、ケラチン物質、特に皮膚、好ましくはヒトの皮膚、より優先的には顔の皮膚を処理するための組成物を提供することである。更に、この分散体は、化粧用活性剤、例えば皮膚にハリを与える効果を得るため、身体、顔及び毛髪をケアするため、紫外線(UV)から保護するため又は顔、唇、睫毛、眉毛及び毛髪をメークアップするための化粧用活性剤を含むことができる。前記分散体は、特にケア及び/又はメークアップ、特に口唇のメークアップのために意図され得る。
【0020】
本発明の他の目的は、ケラチン繊維、特に毛髪、睫毛又は眉毛などのヒトのケラチン繊維を処理するための組成物であって、ブラッシングなどの攻撃因子に対して良好な耐性を示し、滲出が起こらず、汗、皮脂、光及び悪天候に耐性があり、シャンプー洗浄及び前記繊維が受け得る種々の攻撃因子に対する持続性があり、前記繊維を劣化させることなく、ケラチン繊維を完全に個別化したまま維持する、組成物を提供することである。他方では、粒子が化粧用配合物中に存在するため、強い匂いをマスキングすることに関連するあらゆる問題を回避するために、前記粒子の匂いは、可能な限り分かりにくいものにしなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この技術的課題は、ケラチン物質、特に毛髪、睫毛又は皮膚などのヒトのケラチン物質を処理するための油性分散体(A)を使用することにより解決され、油性分散体(A)は、好ましくは、無水であり、及び
i)1つ又は複数の粒子であって、
a)(C~C)アルキル(C~C)(アルキル)アクリレート、好ましくは(C~C)アルキル(メタ)アクリレートのエチレン系ホモポリマー;
b)b1)(C~C)アルキル(C~C)(アルキル)アクリレートと、b2)1種又は複数のカルボキシル基、無水物基、リン酸基、スルホン酸基及び/又はアリール基、例えばベンジルを含むエチレン系モノマーとのエチレン系コポリマーであって、特に、b2)は、(C~C)(アルキル)アクリル酸、より具体的には(C~C)アルキル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸とのコポリマーである、エチレン系コポリマー;
c)(C~C)アルキル(C~C)(アルキル)アクリレート、好ましくは(C~C)アルキル(メタ)アクリレートのエチレン系ホモポリマー
から選択される1種又は複数のポリマーを含む1つ又は複数の粒子と;
ii)1種又は複数のポリマー安定剤であって、
d)(C~C22)アルキル(C~C)(アルキル)アクリレートのエチレン系ホモポリマー、好ましくは(C~C22)アルキル(メタ)アクリレートのエチレン系ホモポリマー;及び
e)(C~C22)アルキル(C~C)(アルキル)アクリレートと、(C~C)アルキル(C~C)(アルキル)アクリレートとのエチレン系コポリマー、好ましくは(C~C22)アルキル(メタ)アクリレートと(C~C)アルキル(メタ)アクリレートとのコポリマー
から選択される1種又は複数のポリマー安定剤と;
iii)1種又は複数の炭化水素系液体脂肪性物質と;
iv)任意選択的に、f)染料、g)顔料;h)ケラチン物質、特に皮膚をケアするための活性剤、及びj)UV(A)及び/又は(B)遮蔽剤、並びにm)これらの混合物から選択される1種又は複数の化粧用活性剤と
を含む。
【0022】
より詳細には、本発明の主題は、上記で定義された油性分散体(A)の、ケラチン物質、特に毛髪、睫毛、眉毛又は皮膚などのヒトのケラチン物質を処理するため、好ましくは毛髪などのケラチン繊維を染色するため及び/若しくはケラチン繊維に形状付与するため又は皮膚をメークアップするための使用に関する。
【0023】
本発明の主題は、上記で定義された油性分散体(A)及びまたケラチン物質、特に毛髪、睫毛、眉毛又は皮膚などのヒトのケラチン物質を処理するための方法であって、上記で定義された油性分散体(A)を前記繊維に適用することを含む方法でもある。本発明の主題は、上記で定義された成分i)~iv)を含む幾つかの区画を含むキット又は器具でもある。
【0024】
上記で定義されたケラチン物質を処理するための油性分散体(A)及び方法は、特にシャンプー洗浄、皮脂、汗及び/又は水に対してのみならず、脂肪性物質、特に油などの食事性脂肪性物質にも耐性を示す、前記物質のための処理を得ることを可能にする。更に、この分散体は、組成物、特に化粧用組成物中で使用しやすく、製造が容易であり、長時間安定なままである。具体的には、本発明による油性分散体(A)を用いることにより、外部の攻撃因子、特に皮脂及び食品に含まれる脂肪性物質、特に液体脂肪性物質、例えば植物油、特にオリーブ油に対する耐性が非常に高い堆積物を得ることが可能になる。少なくとも1種の油性分散体(A)を用いて施されるメークアップ、特に口唇のメークアップは、特に液体脂肪性物質などの外部の攻撃因子に対する耐性、特にオリーブ油などの植物油に対する耐性を示すようである。更に、油性分散体(A)を用いた結果として得られるメークアップは、非常に美しく且つ光沢がある。更に、このポリマー粒子の分散体は、炭化水素系液体脂肪性物質iii)中の固形分含有量が高いことが見出された。本発明の油性分散体(A)をケラチン繊維に適用することにより、外部の攻撃因子(日光、水、シャンプー洗浄、汗、皮脂など)に対する持続性を示すコーティングを得ることが可能になるようである。
更に、本組成物が1種又は複数の染料及び/又は顔料を含む場合、着色されたケラチン物質は、ケラチン物質の物理的品質を保存すると同時に、石鹸、シャワージェル又はシャンプーに対して持続性を示す方法において、あらゆる種類の物質、特に暗色のケラチン物質上で認識することができる色を呈する。この種のコーティングは、特にケラチン物質、特に毛髪が曝され得るブロー乾燥及び発汗などの外的攻撃因子に耐性を示す。油性分散体(A)をケラチン物質上、特にケラチン繊維上で使用すると、滑らかであり且つ均質な堆積物を得ることが可能になる。更に、驚くべきことに、ケラチン繊維は、完全に個別化されたままであり、いかなる問題もなくスタイリングできることが認められた。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明による組成物(実施例10)から得られた膜は、先行技術による組成物仏国特許第3014875号明細書から得られた被覆と比較して、皮脂に対する耐性が高いことを示すグラフである。
図2図2は、本発明による組成物の乾燥中のべたつきは、仏国特許第3014875号明細書の組成物と比較して非常に低いことを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の目的に関して、別段の指定がない限り、以下の通りである。
- 「アルキル基」は、直鎖状又は分岐状飽和C~C、特にC~C、好ましくはC~C炭化水素系基、例えばメチル、エチル、イソプロピル及びtert-ブチルである;
- 「(C~C22)アルキル」基は、飽和C~C22、特にC10~C20、優先的にはC12~C18、より優先的にはC12~C16直鎖状又は分岐状炭化水素系基、例えばステアリル、ベヘニル、イソデシル、ラウリル、ヘキサデシル又はミリスチルであり;好ましくは「(C~C22)アルキル」又はC~C22、特にC10~C20、優先的にはC12~C18、より優先的にはC12~C16基は、直鎖状である;
- 「アルキレン基」は、直鎖状又は分岐状の2価の飽和C~C、特にC~C、好ましくはC~C炭化水素系基、例えばメチレン、エチレン又はプロピレンである;
- 「シクロアルキル」基は、1~3個の環、好ましくは2個の環を含み、3~13個の炭素原子、好ましくは5~10個の炭素原子を含む飽和環式炭化水素系基、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ノルボルニル又はイソボルニルであり、シクロアルキル基は、1個又は複数の(C~C)アルキル基、例えばメチルで置換され得;好ましくは、シクロアルキル基は、イソボルニル基である;
- 「環式」基は、1~3個の環、好ましくは1個の環を含み、3~10個の炭素原子を含む環式の飽和又は不飽和の芳香族又は非芳香族の炭化水素系基、例えばシクロヘキシル又はフェニルである;
- 「アリール」基は、6~12個の炭素原子を含む、単環又は二環式の縮合又は非縮合環式不飽和芳香族基であり;好ましくは、アリール基は、1個の環及び6個までの炭素原子を含み、例えばフェニルである;
- 「アリールオキシ」基は、アリール-オキシ、即ちアリール-O-基であり、アリールは、上記で定義された通りであり、好ましくはフェノキシである;
- 「アリール(C~C)アルコキシ」基は、アリール-(C~C)アルキル-O-基、好ましくはベンゾキシである;
- 「ケラチン繊維」という用語は、特にヒトの皮膚(角質化した上皮)及びヒトのケラチン繊維、例えば頭髪、睫毛、眉毛、体毛など、優先的には頭髪、眉毛及び睫毛、更に優先的には頭髪を意味する;
- 「個別化された」ケラチン繊維という用語は、組成物を適用して乾燥させた後に互いに固着せず(又は1本1本が全て互いに分離しており)、したがって繊維の固まりを形成しないケラチン繊維、特に毛髪を意味する;
- したがって、「不溶性モノマー」という用語は、そのホモポリマー又はコポリマーが可溶性形態でなく、即ち濃度が5質量%を超えると室温(20℃)で前記媒体中に完全に溶解しない、任意のモノマーを意味する。但し、不溶性モノマーは、モノマーとして炭化水素系液体脂肪性物質iii)に可溶性又は不溶性であり得、炭化水素系液体iii)中で重合した後に不溶性になると理解されたい;
- 「エチレン系ホモポリマー」という用語は、同一のモノマーの重合から誘導されるポリマーを意味する;
- 「エチレン系コポリマー」という用語は、異なるモノマー、特に少なくとも2種の異なるモノマーの重合から誘導されるポリマーを意味する。好ましくは、本発明のエチレン系コポリマーは、2種又は3種の異なるモノマーから、より優先的には2種の異なるモノマーから得られる;
- 「エチレン系モノマー」という用語は、重合可能な>C=C<型の1つ又は複数の共役又は非共役不飽和を含む有機化合物を意味する;
- 「可溶性モノマー」という用語は、そのホモポリマー又はコポリマー、好ましくはホモポリマーが分散体の炭化水素系液体脂肪性物質iii)中に20℃で少なくとも5質量%まで可溶である、任意のモノマーを意味する。ホモポリマーは、炭素系液体iii)において、目視では20℃で完全に溶解する、即ち視認できる堆積物、析出物若しくは凝集物又は不溶性の沈降物の徴候がない。但し、可溶性モノマーは、モノマーとして炭素系液体脂肪性物質iii)に可溶又は不溶であり得、炭化水素系液体iii)中で重合した後に可溶性になると理解されたい;
- 「脂肪性物質」という用語は、常温(25℃)及び大気圧(760mmHg)下で水に不溶である(溶解度が5%未満、好ましくは1%未満、より優先的には0.1%未満である)有機化合物を意味する。これらは、少なくとも6個の炭素原子又は少なくとも2個の連続したシロキサン基を含む、少なくとも1個の炭化水素系の鎖をその構造内に有する。加えて、脂肪性物質は、一般に、同じ温度及び圧力条件下で有機溶媒、例えばクロロホルム、エタノール、ベンゼン、液状ワセリン又はデカメチルシクロペンタシロキサンなどに可溶である。これらの脂肪性物質は、ポリオキシアルキレン化もポリグリセロール化もされていない。これらは、脂肪酸と異なり、なぜなら、塩を形成した脂肪酸は、一般に、水性媒体に可溶な石鹸を構成するためである;
- 「液体」脂肪性物質という用語は、特に25℃及び1気圧で液体である脂肪性物質を意味し、好ましくは、前記脂肪性物質は、20℃における粘度が7000センチポイズ以下である;
- 「炭化水素系」脂肪性物質という用語は、25℃で液体であり、ハンセン溶解度の空間に従う包括的溶解度パラメータが20(MPa)1/2以下である炭素系化合物又はこの種の化合物の混合物を、前記脂肪性物質の総質量に対して少なくとも50質量%、特に50質量%~100質量%、例えば60質量%~99質量%又は65質量%~95質量%、更に70質量%~90質量%含む脂肪性物質を意味する;
- ハンセン溶解度空間に従う包括的溶解度パラメータδは、書籍であるGrulke著“Polymer Handbook”,3rd Edition,Chapter VII,pages 519-559の記事“Solubility parameter values”において、δ=(d +d +d 1/2という関係式で定義されており、ここで、-dは、分子が影響し合うことにより誘起される双極子の形成により生じるロンドン分散力を特徴付けるものであり、-dは、永久双極子間のDebye相互作用力を特徴付けるものであり、-dは、特定の相互作用(水素結合、酸/塩基、供与体/受容体など)の力を特徴付けるものであり;ハンセン三次元溶解度空間内における溶媒の定義は、論文であるHansen著:The three-dimensional solubility parameters, J.Paint Technol.39,105(1967)に記載されている;
- 「油」という用語は、室温(25℃)及び大気圧下で液体である脂肪性物質を意味する;
- 「炭化水素系油」という用語は、炭素及び水素原子並びに任意選択的に酸素及び窒素原子から基本的に形成されているか又は更にそれらから構成され、ケイ素原子もフッ素原子も全く含まない油を意味する。これは、ヒドロキシ基、エステル基、エーテル基、カルボン酸基、アミン基及び/又はアミド基を含み得る;
- 「揮発性油」という用語は、ケラチン物質と接触すると、室温及び大気圧下において1時間未満で蒸発することが可能な油(又は非水性媒体)を意味する。揮発性油は、室温で液体であり、特に室温及び大気圧下で蒸気圧がゼロではなく、特に蒸気圧が0.13Pa~40000Pa(10-3~300mmHg)の範囲であり、好ましくは1.3Pa~13000Pa(0.01~100mmHg)の範囲であり、優先的には1.3Pa~1300Pa(0.01~10mmHg)の範囲である、揮発性化粧用油である。
- 「不揮発性油」という用語は、室温及び大気圧下で0.13Pa未満の蒸気圧を有する油を意味する;
- 「シリコーン油」という用語は、少なくとも1個のケイ素原子、特に少なくとも1個のSi-O基を含む油を意味する。シリコーン油は、揮発性又は不揮発性であり得る;
- 「分散剤」という用語は、分散している粒子の凝集又は軟凝集を防ぐことができる化合物を指す。この分散剤は、分散すべき粒子の表面に対して強力な親和性を有する1種又は複数の官能性を有する界面活性剤、オリゴマー、ポリマー又はこれらの幾つかの混合物であり得;特に、これらは、顔料の表面に物理的又は化学的に結合することができる。これらの分散剤は、連続媒体と混和性を有するか又は可溶性を示す少なくとも1種の官能基も含む。前記剤は、電荷を有し得る。これは、アニオン性、カチオン性、両イオン性又は中性であり得る;
- 「顔料」という用語は、ケラチン物質を着色する合成由来又は天然由来の任意の顔料を指し、顔料の、25℃及び大気圧(760mmHg)下における水への溶解度は、0.05質量%未満、好ましくは0.01%未満である;
- 「レーキ」という用語は、不溶性粒子上に吸着され、こうして得られた集合体が使用中に不溶なままとなる、染料を指す。染料を吸着させる無機基材は、例えば、アルミナ、シリカ、ホウケイ酸(カルシウム/ナトリウム)、ホウケイ酸(カルシウム/アルミニウム)及びアルミニウムである。有機染料の中でも、コチニールカルミンが挙げられ得る。
- 「染毛剤」という用語は、ケラチン繊維、特に毛髪などのヒトのケラチン繊維を染色するために使用される酸化染料及び直接染料を指す。
- 「無水」分散体又は組成物という用語は、水の含有量が2質量%未満であるか、又は更に水の含有量が0.5%未満である組成物、特に水を含まない分散体又は組成物を意味し;適切な場合、このような少量の水は、特に残留量を含み得る組成物の原料により持ち込まれた可能性がある;
- 「特殊効果を有する顔料」という用語は、一般に、均一でなく、観測条件(光、温度、観測角など)に応じて変化する有色の外観(特定の色合い、特定の精彩及び特定の輝度を特徴とする)をもたらす顔料を指す。したがって、これらは、不透明、半透明又は透明の標準的な均一な色合いを呈する白色又は有色顔料と異なる;
- 「サブミクロン」又は「サブミクロンの」という用語は、微粉化方法により微粉化された粒子径を有し、平均粒子径が1マイクロメートル(μm)未満、特に0.1~0.9μm、好ましくは0.2~0.6μmである顔料を指す。
【0027】
油性分散体(A):
本発明の油性分散体(A)は、iii)少なくとも1種の炭化水素系液体脂肪性物質も含有する、好ましくは無水である媒体中において、ii)少なくとも1種の安定剤で表面が安定化されたi)少なくとも1種のポリマーの1つ又は複数の粒子を含む。
【0028】
この種の分散体(A)を得るために、可溶な多量のii)部と、不溶な少量のi)部とを含む分散媒体、即ち炭化水素系液体脂肪性物質中において、ポリマーコアi)を形成することができる特定のモノマーを統計ポリマー安定剤ii)の存在下で重合させることが提案される。
【0029】
したがって、本発明による分散体は、無水媒体中の略球形である粒子及び少なくとも1種の表面が安定化されたポリマーからなる。好ましくは、前記粒子i)は、架橋していないか又は僅かに架橋している。
【0030】
ポリマー粒子i)
本発明の油性分散体(A)の粒子は、好ましくは、
a)(C~C)アルキル(C~C)(アルキル)アクリレートのエチレン系ホモポリマー、好ましくは(C~C)アルキル(メタ)アクリレートエチレン系ホモポリマー;
b)(C~C)アルキル(C~C)(アルキル)アクリレート、好ましくは(C~C)アルキル(メタ)アクリレートと、(C~C)(アルキル)アクリル酸とのエチレン系コポリマー、好ましくは(メタ)アクリル酸エチレン系コポリマー;
c)(C~C)アルキル(C~C)(アルキル)アクリレートのエチレン系コポリマー、好ましくは(C~C)アルキル(メタ)アクリレートエチレン系コポリマー
から選択される1種又は複数のポリマーからなる。
【0031】
好ましくは、粒子i)は、上記で定義されたホモポリマーa)又はコポリマーb)若しくはc)から誘導されたエチレン系ポリマーのコアからなる。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によれば、粒子i)を構成するポリマーは、式(I):
[化学式1]
C=C(R)-C(O)-O-R’ (I)
(式(I)中、
- Rは、水素原子又はメチルなどの(C~C)アルキル基を表し、及び
- R’は、メチル又はエチルなどの(C~C)アルキル基を表す)
の同一のモノマーの重合から得られるエチレン系アクリレートホモポリマーa)である。好ましくは、式(I)のモノマーは、メチルアクリレートなどのC~Cアルキルアクリレートである。
【0033】
本発明の特定の実施形態によれば、粒子i)を構成するポリマーは、
- 上記で定義された式(I)の少なくとも1種のモノマー、好ましくはメチルアクリレート及びエチルアクリレートなどのC~Cアルキルアクリレート;及び
- 式(II)
[化学式2]
C=C(R)-C(O)-O-H(II)
(式(II)中、Rは、上記で定義された通りであり、特に、式(II)のモノマーは、アクリル酸である)
のモノマー
の重合から得られるエチレン系アクリレートコポリマーb)である。
【0034】
この実施形態によれば、アクリル酸の量は、粒子i)のモノマーの質量に対して0.1質量%~15質量%の範囲であり、粒子i)のポリマーは、特に、アクリル酸と、特にメチル(メタ)アクリレート及びエチル(メタ)アクリレートから選択される1種又は複数のC~Cアルキル(メタ)アクリレートモノマーとの共重合から誘導されるコポリマーである。
【0035】
本発明の好ましい実施形態によれば、粒子i)を構成するポリマーは、
- 上記で定義された式(I)の少なくとも2種の異なるモノマー、好ましくはメチルアクリレート及びエチルアクリレートなどのC~Cアルキルアクリレート;及び
- 任意選択的に、上記で定義された式(II)のモノマー
の重合から誘導されるエチレン系アクリレートコポリマーb)である。
【0036】
本発明の特定の実施形態によれば、粒子i)のポリマーは、C~Cアルキル(メタ)アクリレートモノマーから誘導されるポリマーである。モノマーは、好ましくは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート及びtert-ブチル(メタ)アクリレートから選択され、より優先的にはメチル(メタ)アクリレート及びエチル(メタ)アクリレートから選択される。
【0037】
有利には、C~Cアルキルアクリレートモノマーが使用される。優先的には、モノマーは、メチルアクリレート及びエチルアクリレートから選択される。
【0038】
特に、C~Cアルキルメタクリレートモノマーも使用される。優先的には、モノマーは、メチルメタクリレート及びエチルメタクリレートから選択され、より具体的にはメチルメタクリレートである。
【0039】
本発明の特定の実施形態によれば、油性分散体(A)は、炭化水素系液体脂肪性物質iii)中において、前記分散体中に含まれるポリマーの総質量に対して2質量%~40質量%、特に4質量%~25質量%、特に5質量%~20質量%の、d)又はe)に含まれる(C~C22)アルキル(C~C)(アルキル)アクリレートモノマーを含む。
【0040】
本発明の有利な実施形態によれば、油性分散体(A)は、前記分散体に含まれるポリマーの総質量に対して60質量%~98質量%、特に75質量%~96質量%のモノマーa)~c)を含む。
【0041】
好ましくは、粒子i)のポリマーコアを形成することができるモノマーは、分散体(A)の炭化水素系液体脂肪性物質iii)に不溶なモノマーから選択される。この不溶性モノマーは、好ましくは、粒子のポリマーコアを形成するモノマーの総質量に対して100質量%を占める。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、粒子i)は、b1)(C~C)アルキル(C~C)(アルキル)アクリレートと、b2)1種又は複数のカルボキシル基、無水物基、リン酸基、スルホン酸基及び/又はアリール基、例えばベンジルを含むエチレン系モノマーとのb)エチレン系コポリマーを含む。
【0043】
より具体的には、1種又は複数のカルボキシル基、無水物基、リン酸基、スルホン酸基及び/又はアリール基を含むエチレン系モノマーは、(1)、(2)、(3)、(4)及び(5)から選択される:
(1)R(R)C=C(R)-酸(式中、R、R及びRは、水素原子又はCOH、HPO若しくはSOH基を表し、酸は、カルボキシル、リン酸又はスルホン酸、好ましくはカルボキシルを表し、R、R及びRは、同時に水素原子を表すことができないことが理解される);
(2)HC=C(R)-C(O)-N(R’)-Alk-酸(式中、R及びR’は、同一であるか又は異なり得、水素原子又は(C~C)アルキル基を表し;Alkは、上記で定義された酸及びヒドロキシルから選択される少なくとも1つの基で任意選択的に置換された(C~C)アルキレン基を表し;酸は、上記で定義された通りであり、好ましくはカルボキシル又はスルホン酸である);
(3)Ar-(R)C=C(R)-R(式中、R、R及びRは、同一であるか又は異なり得、水素原子又は(C~C)アルキル基を表し、Arは、少なくとも1個の酸基COH、HPO又はSOHで任意選択的に置換された、好ましくはCOH又はSOH基で置換されたアリール基、好ましくはベンジルを表す);
(4)式(4a)及び(4b):
[化学式3]
【化1】
(式(4a)及び(4b)中、R、R及びRは、同一であるか又は異なり得、水素原子又は(C~C)アルキル基を表し;好ましくは、R、R及びRは、水素原子を表す)
の無水マレイン酸。優先的には、本発明のエチレン系不飽和無水物モノマーは、式(4b)のものであり、より優先的には無水マレイン酸である;
(5)HC=C(R)-C(O)-O-H(式中、Rは、水素原子又はメチルなどの(C~C)アルキル基を表す)。
【0044】
好ましくは、b2)は、(C~C)(アルキル)アクリル酸であり、より具体的には、b)は、(C~C)アルキル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸とのコポリマーである。
【0045】
より優先的には、b2)は、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、スチレンスルホン酸、ビニル安息香酸、ビニルリン酸、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸、アクリルアミドグリコール酸及びこれらの塩から選択され;更に優先的には、b2)は、アクリル酸を表す。
【0046】
分散体(A)のポリマー粒子i)は、好ましくは、数平均径が5~500nmの範囲、特に10~400nmの範囲、より良好には20~300nmの範囲である。
【0047】
最終粒子径は、好ましくは、100nmを超える。特に、数平均径は、100nm~500nmの範囲、より具体的には150nm~400nmの範囲、更に具体的には160nm~300nmの範囲である。
【0048】
平均粒子径は、当業者に知られている標準的な方法によって測定することができる。マルバーン(Malvern)のブランドであるNanoZSモデルのレーザー粒子径解析装置(サブミクロンの分散体に特に適している)を用いることにより、これらの試料の粒子径分布を測定することができる。この種類の機器の動作原理は、準弾性光散乱(QELS)又は光子相関分光(PCS)としても知られる動的光散乱(DLS)に基づく。
【0049】
試料を、測定室に配置された使い捨てのプラスチックキュベット(4つの透明な面を有し、1辺の長さ1cm、容積4mL)に投影する。データを累積法に基づいて分析し、これに従って光強度平均粒子径d(nm)及び粒子径多分散指数Qにより特徴付けられる単峰性粒子径分布が得られる。結果は、D10;D50(メジアン)、D90及びモード径などの統計的データの形態で表すこともできる。
【0050】
他の粒子径技法、例えば個別粒子追跡による解析(ナノ粒子トラッキング解析法(NTA))、レーザー散乱(LS)、音波減衰分光(AES)、空間フィルタを用いるドップラー速度計測法又は画像解析などにより、この種の情報を得ることが可能である。
【0051】
安定剤ii)
本発明による分散体(A)は、1種又は複数の安定剤ii)も含む。好ましくは、本発明では1種のみの安定剤ii)が使用される。
【0052】
本発明の特定の実施形態によれば、安定剤ii)は、d)(C~C22)アルキル(C~C)(アルキル)アクリレートのエチレン系ホモポリマー、特に(C~C18)アルキル(C~C)(アルキル)アクリレートのエチレン系ホモポリマー、好ましくは(C~C22)アルキル(メタ)アクリレートのエチレン系ホモポリマー、より優先的には(C~C18)アルキル(メタ)アクリレートのエチレン系ホモポリマーから選択される。特に、(C~C22)アルキル基又は(C~C18)アルキル基は、直鎖状である。本発明の他の変形形態によれば、(C~C22)アルキル基又は(C~C18)アルキル基は、分岐状である。
【0053】
より具体的には、安定剤ii)は、d)式HC=C(R)-C(O)-O-R’’(式中、Rは、水素原子又はメチルなどの(C~C)アルキル基を表し、及びR’’は、(C~C22)アルキル、好ましくは(C~C18)アルキル基を表す)のモノマーの重合から得られるエチレン系ホモポリマーから選択されるエチレン系ポリマーからなる。好ましくは、R’’は、イソデシル、ラウリル、ステアリル、ヘキサデシル又はベヘニルを表す。本発明の一実施形態によれば、R’’は、直鎖状(C~C22)アルキル、好ましくは直鎖状(C~C18)アルキル基を表す。
【0054】
本発明の他の特定の実施形態によれば、安定剤ii)は、e)(C~C22)アルキル(C~C)(アルキル)アクリレートと、(C~C)アルキル(C~C)(アルキル)アクリレーとのエチレン系コポリマー、特に(C~C18)アルキル(C~C)(アルキル)アクリレートと、(C~C)アルキル(C~C)(アルキル)アクリレートとのコポリマー、好ましくは(C~C18)アルキル(メタ)アクリレートと、(C~C)アルキル(メタ)アクリレートとのコポリマーから選択される。
【0055】
より優先的には、安定剤ii)は、e)式(III)及び(IV):
[化学式4]
C=C(R)-C(O)-O-R’(III)
[化学式5]
C=C(R)-C(O)-O-R’’(IV)
(式(III)及び(IV)中、
- Rは、同一であるか又は異なり得、水素原子又はメチルなどの(C~C)アルキル基を表し、
- R’は、同一であるか又は異なり得、メチル又はエチルなどの(C~C)アルキル基を表し、及び
- R’’は、(C~C22)アルキル、好ましくは(C10~C20)アルキル、特に(C2n)アルキル基を表し、ここで、nは、5、6、7、8、9又は10に等しい整数である)
のエチレン系コポリマーから選択される。好ましくは、R’’は、イソデシル、ラウリル、ステアリル、ヘキサデシル又はベヘニルを表す。
【0056】
優先的には、安定剤ii)は、イソデシル、ラウリル、ステアリル、ヘキサデシル及びベヘニル(メタ)アクリレート並びにC~Cアルキル(メタ)アクリレート、好ましくはメチル(メタ)アクリレートから選択されるモノマーから誘導されるコポリマーから選択される。
【0057】
より優先的には、安定剤ii)は、イソデシル、ラウリル、ステアリル及びヘキサデシル(メタ)アクリレート並びにC~Cアルキル(メタ)アクリレート、好ましくはメチル(メタ)アクリレート又はエチル(メタ)アクリレートから選択されるモノマーから誘導されるコポリマーから選択される。
【0058】
特に、安定剤ii)は、イソデシル、ラウリル、ステアリル、ヘキサデシル又はベヘニル(メタ)アクリレートホモポリマー及びイソデシル、ラウリル、ステアリル、ヘキサデシル又はベヘニル(メタ)アクリレートとC~Cアルキル(メタ)アクリレートとの統計コポリマーであって、好ましくは4.5を超える、ラウリル、ステアリル、ヘキサデシル又はベヘニル(メタ)アクリレート/C~Cアルキル(メタ)アクリレートの質量比で存在する統計コポリマーから選択される。
【0059】
有利には、前記質量比は、5~15の範囲であり、より優先的には、前記質量比は、5.5~12の範囲である。
【0060】
他の実施形態によれば、安定剤ii)は、e)上記で定義された式(IV)のモノマー及び上記で定義された式(III)の2種の異なるモノマーの重合から誘導されるエチレン系コポリマーから選択される。
【0061】
優先的には、安定剤ii)は、イソデシル、ラウリル、ステアリル、ヘキサデシル及びベヘニル(メタ)アクリレートから選択される1種のモノマーと、2種の異なるC~Cアルキル(メタ)アクリレート、好ましくはメチルアクリレート及びエチルアクリレートとの重合から誘導されるコポリマーから選択される。特に、イソデシル、ラウリル、ステアリル、ヘキサデシル又はベヘニル(メタ)アクリレート/C~Cアルキル(メタ)アクリレートの質量比は、4を超える。有利には、前記質量比は、5~15の範囲であり、より優先的には、前記質量比は、5.5~11の範囲である。
【0062】
他の実施形態によれば、安定剤ii)は、e)上記で定義された式(III)のモノマー及び上記で定義された式(IV)の2種の異なるモノマーの重合から誘導されるエチレン系コポリマーから選択される。
【0063】
優先的には、安定剤ii)は、イソデシル、ラウリル、ステアリル、ヘキサデシル及びベヘニル(メタ)アクリレートから選択される2種の異なるモノマーと、1種のC~Cアルキル(メタ)アクリレートモノマー、好ましくはメチルアクリレート及びエチルアクリレートとの重合から誘導されるコポリマーから選択され;特に、イソデシル、ラウリル、ステアリル、ヘキサデシル又はベヘニル(メタ)アクリレート/C~Cアルキル(メタ)アクリレートの質量比は、4を超える。
【0064】
有利には、前記質量比は、4.5~10の範囲であり、より優先的には、前記質量比は、5~8の範囲である。
【0065】
本発明の特定の実施形態によれば、油性分散体(A)は、炭化水素系液体脂肪性物質iii)中において、前記分散体中に含まれるポリマーの総質量に対して2質量%~40質量%、特に4質量%~25質量%、特に5.5質量%~20質量%の、d)又はe)に含まれる(C~C22)アルキル(C~C)(アルキル)アクリレートモノマーを含む。
【0066】
本発明の一実施形態によれば、安定剤ii)は、イソデシル、ラウリル、ステアリル、ヘキサデシル及びベヘニル(メタ)アクリレートから選択される2種の異なるモノマーと、1種のC~Cアルキル(メタ)アクリレートモノマー、好ましくはメチルアクリレート及びエチルアクリレートとの重合から誘導されるコポリマーから選択され;特に、分散体(A)中のイソデシル、ラウリル、ステアリル、ヘキサデシル又はベヘニル(メタ)アクリレート/C~Cアルキル(メタ)アクリレートの質量比は、1未満である。特に、分散体(A)中の前記質量比は、0.05~0.5の範囲であり、より優先的には、前記質量比は、0.08~0.2の範囲である。
【0067】
これらの統計コポリマーの場合、ここに定義した質量比を用いることにより、特に室温で7日間保存した後でも安定なポリマー分散体を得ることが可能になる。
【0068】
有利には、分散体(A)中に存在するii)安定剤、及びi)ポリマー粒子の質量比は、0.5~2、好ましくは1である。
【0069】
特に、ii)安定剤、及びi)ポリマー粒子の質量比は、ポリマーの総質量に対して1未満である。
【0070】
本発明の特定の一実施形態によれば、安定剤ii)は、分散体(A)中に存在するポリマーの質量に対して2質量%~40質量%の範囲、特に3質量%~30質量%の範囲、好ましくは4質量%~25質量%の範囲の含有量で存在する。
【0071】
好ましくは、安定剤ii)及び粒子i)の数平均分子量(Mn)は、1000~1000000g/mol、特に5000~500000g/mol、更に良好には10000~300000g/molである。
【0072】
本発明による分散体(A)は、最終的に、比較的直径の大きい、即ち好ましくは100nmを超え、室温(25℃)下で脂肪性物質に耐性を示す、特にメークアップ用途に有利な光沢のある被膜形成性の堆積物となるポリマー粒子から形成される。
【0073】
炭化水素系液体脂肪性物質iii)
本発明によるポリマー粒子の分散体(A)は、前記粒子がその中に分散している、iii)1種又は複数の炭化水素系液体脂肪性物質も含む。
【0074】
炭化水素系液体脂肪性物質iii)は、特にC~C16炭化水素又は16個を超え、且つ60個までの炭素原子を有する、好ましくはC及びC16の炭化水素、特にアルカン、動物由来の油、植物由来の油、合成由来のグリセリド又はフッ素系油、脂肪アルコール、脂肪酸及び/又は脂肪アルコールエステル、非シリコーンワックス並びにシリコーンから選択される。
【0075】
本発明の目的に関して、脂肪アルコール、脂肪エステル及び脂肪酸は、より具体的には、特に1個又は複数(特に1~4個)のヒドロキシル基で任意選択的に置換されている、6~60個の炭素原子を含む1つ又は複数の直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の炭化水素系基を含むものが考えられる。これらが不飽和である場合、これらの化合物は、1~3個の共役又は非共役炭素-炭素二重結合を含み得る。
【0076】
~C16アルカンは、直鎖状又は分枝状であり、環状にもなり得る。その例として、ヘキサン、ドデカン及びイソパラフィン、例えばイソヘキサデカン、イソデカン及びイソデカンが挙げられ得る。16個を超える炭素原子を含む直鎖状又は分枝状の炭化水素は、流動パラフィン、ワセリン、液状ワセリン、ポリデセン及び水添ポリイソブテン、例えばParleam(登録商標)から選択することができる。
【0077】
ハンセン溶解度空間による包括的溶解度パラメータが20(MPa)1/2以下である炭化水素系液体脂肪性物質iii)の中でも、単独での又は混合物としての、任意選択的にフッ素化されており、任意選択的に分岐状である、天然又は合成の炭化水素系油から選択され得る油が挙げられ得る。
【0078】
非常に有利な実施形態によれば、本発明による分散体(A)は、1種又は複数の炭化水素系油である1種又は複数の液体脂肪性物質を含む。炭化水素系油は、揮発性又は不揮発性であり得る。
【0079】
本発明の好ましい実施形態によれば、液体炭化水素系油は、揮発性である炭化水素系油又は異なる揮発性油の混合物であり、より優先的にはイソドデカン及びオクチルドデカノールから選択される。
【0080】
他の特定の実施形態によれば、液体炭化水素系脂肪性物質iii)は、揮発性油及び不揮発性油の混合物である。
【0081】
言及され得る揮発性のシリコーン油としては、揮発性の直鎖状又は環状シリコーン油、特に粘度が8センチストークス(cSt)(8×10-6/s)以下であり、特に2~10個のケイ素原子、特に2~7個のケイ素原子を含むものが挙げられ、これらのシリコーンは、任意選択的に、1~10個の炭素原子を含むアルキル又はアルコキシ基を含む。本発明に使用することができる揮発性シリコーン油として、特に5及び6cStの粘度を有するジメチコン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘプタメチルヘキシルトリシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン及びドデカメチルペンタシロキサン並びにこれらの混合物が言及され得る。
【0082】
不揮発性シリコーン油としては、直鎖又は環状不揮発性ポリジメチルシロキサン(PDMS);側鎖であるか又はシリコーン鎖の末端にある、2~24個の炭素原子を含むアルキル基、アルコキシ基及び/又はフェニル基を含むポリジメチルシロキサン;フェニルシリコーン、例えばフェニルトリメチコン、フェニルジメチコン、フェニルトリメチルシロキシジフェニルシロキサン、ジフェニルジメチコン、ジフェニルメチルジフェニルトリシロキサン及び2-フェニルエチルトリメチルシロキシシリケート及びペンタフェニルシリコーン油が言及され得る。
【0083】
炭化水素系油は、以下から選択することができる:
- 8~14個の炭素原子を含む炭化水素系油、特に、
- 分岐状C~C14アルカン、例えば石油由来のC~C14イソアルカン(別名イソパラフィン)、例えばイソドデカン(2,2,4,4,6-ペンタメチルヘプタンとしても知られる)、イソデカン及び例えば商品名Isopar又はPermethylで販売されている油、
- 直鎖状アルカン、例えばSasolによりそれぞれの参照名Parafol 12-97及びParafol 14-97で販売されているn-ドデカン(C12)及びn-テトラデカン(C14)並びにこれらの混合物、ウンデカン-トリデカン混合物、Cognis社の特許出願である国際公開第2008/155059号パンフレットの実施例1及び2で得られるn-ウンデカン(C11)及びn-トリデカン(C13)の混合物並びにこれらの混合物、
- 酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、n-酢酸ブチルなどの短鎖エステル(全体で3~8個の炭素原子を含む)、
- グリセロールの脂肪酸エステルから構成されるトリグリセリドなどの植物由来の炭化水素系油であって、その脂肪酸がC~C24の鎖長を有し得、これらの鎖が場合により直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和であるもの;これらの油は、特にヘプタン酸又はオクタン酸トリグリセリド又は小麦胚芽油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ゴマ種子油、コーン油、アンズ油、ヒマシ油、シア脂油、アボカド油、オリーブ油、大豆油、アーモンド油、パーム油、ナタネ油、綿実油、ヘーゼルナッツ油、マカデミア油、ホホバ油、アルファルファ油、ケシ油、カボチャ油、マロー油、クロフサスグリ油、月見草油、アワ油、大麦油、キノア油、ライ麦油、紅花油、ククイ油、トケイソウ油及びモスカータバラ油;シア脂;又は他にカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、例えばStearinerie Dubois社から販売されているもの若しくはMiglyol 810(登録商標)、812(登録商標)及び818(登録商標)の名称でDynamit Nobel社から販売されているものである、
- 10~40個の炭素原子を含む合成エーテル、
- 鉱物又は合成由来の直鎖状又は分岐状炭化水素、例えばワセリン、ポリデセン、Parleam(登録商標)などの水添ポリイソブテン、スクアラン及び液状パラフィン並びにこれらの混合物;
- 式RC(O)-O-Rの油などのエステル(式中、R+R≧10を条件として、Rは、1~40個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状の脂肪酸残基を表し、Rは、1~40個の炭素原子を含む特に分岐状炭化水素系鎖を表す)、例えばpurcellin oil(オクタン酸セトステアリル)、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、C12~C15アルキルベンゾエート、ラウリン酸ヘキシル、アジピン酸ジイソプロピル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、イソステアリン酸イソステアリル、ラウリン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-オクチルデシル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、アルキル又はポリアルキルヘプタノエート、オクタノエート、デカノエート又はリシノレエート、例えばプロピレングリコールジオクタノエート;水素化されたエステル、例えば乳酸イソステアリル、リンゴ酸ジイソステアリル及び乳酸2-オクチルドデシル;ポリオールエステル及びペンタエリスリトールエーテル、
- 室温で液体であり、12~26個の炭素原子を含む分枝状及び/又は不飽和の炭素系鎖を有する脂肪アルコール、例えばオクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、2-ヘキシルデカノール、2-ブチルオクタノール及び2-ウンデシルペンタデカノール。
【0084】
分散体(A)は、液体炭化水素系脂肪性物質に加えて、シリコーン油を含み得る。シリコーン油が分散体(A)中に含まれる場合、その量は、好ましくは、分散体(A)の質量に対して10質量%を超えない量であり、より具体的には5%未満の量、優先的には2%である。
【0085】
特に、分散体(A)は、以下から選択される少なくとも1種の液体炭化水素系脂肪性物質iii)を含む:
- ポリオールの脂肪酸エステル、特にトリグリセリドにより形成されている植物油、例えばヒマワリ油、ゴマ油、ナタネ油、マカデミア油、大豆油、アーモンド油、テリハボク油、パーム油、ブドウ種子油、コーン油、アララ油、綿実油、アンズ油、アボカド油、ホホバ油、オリーブ油又は穀物胚芽油;
- 6個を超える炭素原子、特に6~30個の炭素原子を含む直鎖状、分岐状又は環状エステル;特にイソノナン酸イソノニル;
より具体的には式R-C(O)-O-Rのエステル(式中、Rは、7~19個の炭素原子を含む高級脂肪酸残基を表し、及びRは、3~20個の炭素原子を含む炭化水素系鎖を表す)、例えばパルミテート、アジペート、ミリステート及びベンゾエート、特にアジピン酸ジイソプロピル及びミリスチン酸イソプロピル;
- 炭化水素、特に揮発性又は不揮発性の直鎖状、分岐状及び/又は環状のアルカン、例えば任意選択的に揮発性であるC~C60イソパラフィン、例えばイソドデカン、Parleam(水添ポリイソブテン)、イソヘキサデカン、シクロヘキサン若しくはisopar;又は他の流動パラフィン、液状ワセリン若しくは水添ポリイソブチレン;
- 6~30個の炭素原子を含有するエーテル;
- 6~30個の炭素原子を含有するケトン;
- 炭化水素系鎖が置換基を含まない、6~30個の炭素原子を含む脂肪族脂肪モノアルコール、例えばオレイルアルコール、デカノール、ドデカノール、オクタデカノール、オクチルドデカノール及びリノレイルアルコール;
- 6~30個の炭素原子を含むポリオール、例えばヘキシレングリコール;及び
- これらの混合物。
【0086】
好ましくは、分散体(A)は、以下から選択される少なくとも1種の液体炭化水素系脂肪性物質iii)を含む:
- ポリオールの脂肪酸エステル、特にトリグリセリドによって形成される植物油、
- 式R-C(O)-O-R(式中、Rは、7~19個の炭素原子を含む高級脂肪酸残基を表し、及びRは、3~20個の炭素原子を含む炭化水素系鎖を表す)のエステル;
- 揮発性又は不揮発性直鎖状又は分岐状C~C16アルカン;
- 直鎖状又は分岐状非芳香族環式C~C12アルカン;
- 7~30個の炭素原子を含有するエーテル;
- 8~30個の炭素原子を含有するケトン;
- 炭化水素系鎖が置換基を含まない、12~30個の炭素原子を含む脂肪族脂肪モノアルコール;及び
- これらの混合物。
【0087】
有利には、本発明の液体炭化水素系脂肪性物質は、無極性であり、即ち炭素原子及び水素原子のみから形成される。
【0088】
液体炭化水素系脂肪性物質は、好ましくは、特に揮発性である、8~14個の炭素原子を含む炭化水素系油、より具体的には上に記載した無極性油から選択される。
【0089】
優先的には、本発明の液体炭化水素系脂肪性物質iii)は、イソドデカンである。
【0090】
本発明の他の有利な実施形態によれば、液体炭化水素系脂肪性物質は、不揮発性油及び揮発性油の混合物であり;好ましくは、この混合物は、揮発性油としてイソドデカンを含む。特に、この混合物中の不揮発性油は、フェニルシリコーン油であり、好ましくはペンタフェニルシリコーン油から選択される。
【0091】
分散体(A)の調製方法
一般に、本発明による分散体は、これらに限定されるものではないが、以下のように調製することができる:
- 形成される粒子を、上記で定義されたd)及びe)から選択される1種又は複数の安定剤ii)、好ましくは1種のみの安定剤ii)で保護しながら、非水性媒体中の分散体中において、即ち形成されるポリマーを析出させることによって重合が実施される。
- 第1のステップにおいて、安定化用ポリマー(又は安定剤ii))は、安定化用ポリマーd)又はe)の構成モノマーをv)ラジカル開始剤と、合成溶媒として知られる溶媒中で混合し、且つこれらのモノマーを重合することによって調製され;及び、次いで、
- 第2のステップにおいて、粒子i)のポリマーの構成モノマーは、先行するステップで形成された安定化用ポリマーに添加され、及びこれらの添加されたモノマーの重合は、ラジカル開始剤の存在下で実施される。
【0092】
非水性媒体が不揮発性液体炭化水素系脂肪性物質iii)である場合、重合が無極性有機溶媒(合成溶媒)中で実施され、その後、不揮発性液体炭化水素系脂肪性物質(これは、前記合成溶媒と混和性を有することが必要である)を添加し、且つ合成溶媒を選択的に留去し得る。f)染料及び/又は顔料;g)ケラチン物質、特に皮膚をケアするための活性剤、及びh)UV遮蔽剤、並びにまたj)これらの混合物から選択される化粧用活性剤は、第1のステップ中に添加され得る。他の変形形態によれば、化粧用活性剤は、第2のステップ中又は第2のステップ後に添加される。
【0093】
したがって、合成溶媒は、ポリマー安定剤ii)のモノマー及びラジカル開始剤v)がそれに可溶であり、且つ得られるポリマー粒子i)がそれに不溶であり、それによりこれらがその形成中に析出するように選択される。
【0094】
特に、選択される合成溶媒は、無極性の有機物質であり、好ましくはヘプタン、シクロヘキサン、イソドデカンなどのアルカンから選択され、好ましくはイソドデカンである。
【0095】
非水性媒体が揮発性炭化水素系液体脂肪性物質iii)である場合、重合は、前記油中で直接実施され得、したがって、これは、合成溶媒としても作用する。ラジカル開始剤と同様に、モノマーもそれに可溶性であることが必要であり、得られる粒子i)のポリマーは、それに不溶であることが必要である。
【0096】
モノマーは、好ましくは、重合前の合成溶媒中に15質量%~45質量%の比率で存在する。モノマーの全量が反応開始前に溶媒中に存在し得るか、又はモノマーの一部が重合反応の進行に従って徐々に添加され得る。
【0097】
重合は、好ましくは、v)過酸化物又はアゾ開始剤、酸化還元対、光化学的開始剤などの当業者に知られているラジカル重合用の任意の開始剤であり得る1種又は複数のラジカル開始剤の存在下で実施される。
【0098】
特に、以下の種類の化合物が挙げられ得る:
- 過酸化物、特にtert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート:Trigonox 21S;2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン:Trigonox 141;ペルオキシピバル酸tert-ブチル:AkzoNobelからのTrigonox 25C75から選択されるもの;又は
- アゾ、特にAIBN:アゾビスイソブチロニトリル;V50:2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリドから選択されるもの。
【0099】
重合は、好ましくは、70~110℃の範囲の温度及び大気圧下で実施される。
【0100】
ポリマー粒子i)は、重合中に形成されたとき、安定剤ii)によって表面が安定化される。
【0101】
安定化は、任意の公知の手段により、特に重合中に安定剤ii)を直接添加することにより実施することができる。
【0102】
安定剤ii)は、好ましくは、粒子i)のポリマーのモノマーを重合させる前にも存在する。しかしながら、特に粒子i)のモノマーも連続的に添加される場合、これを連続的に添加することも可能である。
【0103】
使用するモノマーの総質量(安定剤ii)+ポリマー粒子i))に対して4質量%~30質量%、好ましくは4.5質量%~20質量%の安定剤を使用することができる。
【0104】
ポリマー粒子分散体(A)は、有利には、前記分散体の総質量に対して30質量%~65質量%含み、好ましくは、前記分散体の総質量に対し40質量%~60質量%の固体を含む。
【0105】
本発明による組成物は、好ましくは、組成物(A)の総質量に対して10質量%~80質量%の範囲で含み、好ましくは組成物(A)の総質量に対して20質量%~60質量%の範囲、特に30質量%~50質量%の範囲で粒子i)のポリマー+分散用ポリマーii)の固形分(又は活性物質)を含む。
【0106】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明による分散体(A)は、無水組成物である。
【0107】
本発明の他の実施形態によれば、分散体(A)は、逆相エマルジョン、即ち油中水(W/O)型である。この場合、組成物は、好ましくは、非イオン性である1種又は複数の界面活性剤を含む。(A)の逆相エマルジョンは、好ましくは、分散体(A)がメークアップ用、特に睫毛及び/又は眉毛のメークアップが意図されている場合に選択される。
【0108】
1つの特定の調製方法において、安定化用統計ポリマーii)は、第1のステップにおいて調製される。この安定化用ポリマーは、イソドデカンなどのアルカン型の無極性有機溶媒に可溶である。
【0109】
次いで、第2のステップにおいて、安定化用ポリマーii)の存在下でポリマー粒子i)が合成される。
【0110】
優先的には、最終分散体を得るために、液体炭化水素系脂肪性物質iii)中の安定化用ポリマーii)の溶液が調製され、粒子のコアを形成するモノマーの重合は、安定剤ii)の存在下で実施される。
【0111】
安定化用ポリマーii)は、任意選択的に、上記で定義された重合開始剤v)の存在下でラジカル重合させることにより調製することができる。
【0112】
第2のステップにおいて、粒子i)のコアを形成するモノマーは、前記安定化用ポリマーii)の存在下で重合させることができる。この第2のステップは、従来のラジカル重合であり得る。
【0113】
分散体は、1種又は複数の液体炭化水素系脂肪性物質iii)の存在下において、好ましくは無極性有機溶媒、特にアルカン型のもの、例えばイソドデカン中で工業的に現実的な方法により調製される。
【0114】
このようにして、本発明による分散体は、最終的に、比較的直径の大きい(好ましくは100nmを超える)ポリマー粒子から形成され、観察温度(25℃)で脂肪性物質に耐性を示す、光沢のある被膜形成性の堆積物となる。
【0115】
更に、前記分散体は、油性媒体中にあることから、化粧品に慣用されている油性媒体をベースとする化粧用組成物中、特に無水媒体又はエマルジョンの脂肪性相中に配合することが容易になる。
【0116】
本発明によるポリマーは、化粧品分野、特にメークアップ分野、特に口紅、グロス(リップグロス)並びにアイシャドウ及びマスカラにおける非常に具体的な用途がある。
【0117】
化粧用活性剤iv)
本発明の特定の実施形態によれば、本発明の分散体(A)は、f)染料、g)顔料、h)ケラチン物質をケアするための活性剤、及びj)UV(A)及び/又は(B)遮蔽剤、並びにまたk)これらの混合物から選択される1種又は複数の化粧用活性剤を含む。
【0118】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明の化粧用活性剤は、f)顔料から選択される。
【0119】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明の化粧用活性剤は、h)ケラチン物質をケアするための活性剤、好ましくはスキンケア活性剤から選択される。
【0120】
本特許出願の特定の実施形態によれば、本発明の化粧用活性剤は、j)UV(A)及び/又はUV(B)遮蔽剤並びにこれらの混合物から選択される。
【0121】
本発明の特定の実施形態によれば、分散体(A)は、顔料から選択されるiv)1種又は複数の化粧用活性剤を含む。
【0122】
顔料は、より具体的には、分散体(A)の総質量に対して0.001質量%~10質量%、好ましくは、0.005質量%~5質量%を占める。
【0123】
顔料は、化粧品に通常採用される親水性及び親油性の液相に元々不溶であるか、又は適切であれば、レーキの形態を形成することにより不溶化されている白色又は有色の固体粒子である。より具体的には、顔料は、水性-アルコール性媒体に殆ど又は全く溶解しない。
【0124】
使用可能な顔料は、特に当技術分野において知られている、特にKirk-Othmer’s Encyclopedia of Chemical Technology and in Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistryに記載されている有機及び/又は鉱物顔料から選択される。顔料として、特にUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry“Pigment organics”,2005 Wiley-VCH Verlag GmbH&Co. KGaA,Weinheim 10.1002/14356007.a20 371及び同書中の“Pigments,Inorganic,1.General”2009 Wiley-VCH Verlag GmbH&Co.KGaA,Weinheim10.1002/14356007.a20_243.pub3に定義及び記載されているものなどの有機及び鉱物顔料などが挙げられ得る。
【0125】
これらの顔料は、顔料粉末形態又は顔料ペースト形態であり得る。これらは、被覆又は無被覆であり得る。
【0126】
顔料は、例えば、鉱物顔料、有機顔料、レーキ、真珠光沢剤又は光輝フレークなどの特殊効果を有する顔料及びこれらの混合物から選択され得る。
【0127】
顔料は、鉱物顔料であり得る。「鉱物顔料」という用語は、Ullmann’s encyclopediaの無機顔料に関する章の定義を満たす任意の顔料を指す。本発明に有用な鉱物顔料の中でも、酸化鉄、酸化クロム、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー、クロム水和物、フェリックブルー及び酸化チタンが言及され得る。
【0128】
顔料は、有機顔料であり得る。
【0129】
「有機顔料」という用語は、Ullmann’s encyclopediaの有機顔料に関する章の定義を満たす任意の顔料を指す。
【0130】
有機顔料は、特にニトロソ、ニトロ、アゾ、キサンテン、キノリン、アントラキノン、フタロシアニン、金属錯体型、イソインドリノン、イソインドリン、キナクリドン、ペリノン、ペリレン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、ジオキサジン、トリフェニルメタン及びキノフタロン化合物から選択され得る。
【0131】
特に、白色又は有色有機顔料は、カーマイン、カーボンブラック、アニリンブラック、アゾイエロー、キナクリドン、フタロシアニンブルー、カラーインデックスにおいてCI 42090、69800、69825、74100、74160の参照番号で分類される青色顔料、カラーインデックスにおいてCI 11680、11710、19140、20040、21100、21108、47000、47005の参照番号で分類される黄色顔料、カラーインデックスにおいてCI 61565、61570、74260の参照番号で分類される緑色顔料、カラーインデックスにおいてCI 11725、45370、71105の参照番号で分類される橙色顔料、カラーインデックスにおいてCI 12085、12120、12370、12420、12490、14700、15525、15580、15620、15630、15800、15850、15865、15880、26100、45380、45410、58000、73360、73915、75470の参照番号で分類される赤色顔料、仏国特許第2679771号明細書に記載されているインドール又はフェノール性誘導体の酸化重合により得られる顔料から選択することができる。
【0132】
有機顔料の顔料ペーストの例として、Hoechst社から以下の名称で販売されている製品なども挙げられ得る:
- Cosmenyl Yellow IOG:ピグメントイエロー3(CI 11710);
- Cosmenyl Yellow G:ピグメントイエロー1(CI 11680);
- Cosmenyl Orange GR:ピグメントオレンジ43(CI 71105);
- Cosmenyl Red R:ピグメントレッド4(CI 12085);
- Cosmenyl Carmine FB:ピグメントレッド5(CI 12490);
- Cosmenyl Violet RL:ピグメントバイオレット23(CI 51319);
- Cosmenyl Blue A2R:ピグメントブルー15.1(CI 74160);
- Cosmenyl Green GG:ピグメントグリーン7(CI 74260);
- Cosmenyl Black R:ピグメントブラック7(CI 77266)。
【0133】
本発明による顔料は、欧州特許第1184426号明細書に記載されているように複合顔料の形態でもあり得る。これらの複合顔料は、特に、無機物質であるコアと、有機顔料をコアに結合させる少なくとも1種の結合剤と、コアの少なくとも一部を覆う少なくとも1種の有機顔料とを含む粒子から構成されるものであり得る。
【0134】
有機顔料は、レーキでもあり得る。「レーキ」という用語は、不溶性粒子上に吸着され、こうして得られた集合体が使用中不溶なままとなる染料を意味する。
【0135】
染料を吸着させる無機基材は、例えば、アルミナ、シリカ、ホウケイ酸カルシウムナトリウム、ホウケイ酸カルシウムアルミニウム及びアルミニウムである。
【0136】
染料の中でもカルミン酸を挙げることができる。以下の名称で知られる染料も挙げられ得る:D&C Red 21(CI 45380)、D&C Orange 5(CI 45370)、D&C Red 27(CI 45410)、D&C Orange 10(CI 45425)、D&C Red 3(CI 45430)、D&C Red 4(CI 15510)、D&C Red 33(CI 17200)、D&C Yellow 5(CI 19140)、D&C Yellow 6(CI 15985)、D&C Green(CI 61570)、D&C Yellow 10(CI 77002)、D&C Green 3(CI 42053)、D&C Blue 1(CI 42090)。
【0137】
レーキの例として、以下の名称で知られる製品も挙げられ得る:D&C Red 7(CI 15850:1)。
【0138】
顔料は、特殊効果を有する顔料でもあり得る。「特殊効果を有する顔料」という用語は、一般に、不均一である、観測条件(光、温度、観測角など)に応じて変化する有色の外観(特定の色合い、特定の精彩及び特定の輝度を特徴とする)をもたらす顔料を意味する。したがって、これらは、不透明、半透明又は透明の標準的な均一な色合いを呈する有色顔料と異なる。
【0139】
特殊効果を有する幾つかの種類の顔料が存在する:低屈折率を有するもの、例えば蛍光又はフォトクロミック顔料及びより高い屈折率を有するもの、例えば真珠光沢剤、干渉顔料又は光輝フレーク。
【0140】
特殊効果を有する顔料の例として、真珠光沢顔料、例えばチタン又はオキシ塩化ビスマスで被覆された雲母、有色真珠光沢顔料、例えば酸化鉄を含む雲母チタン、酸化鉄で被覆された雲母、特にフェリックブルー又は酸化クロムを含む雲母チタン、上に述べた種類のものなどの有機顔料を含む雲母チタン並びにまたオキシ塩化ビスマスをベースとする真珠光沢顔料も挙げられ得る。真珠光沢顔料として、BASFから販売されているCellini真珠光沢剤(雲母-TiO2-レーキ)、Eckartから販売されているPrestige(雲母-TiO2)、Eckartから販売されているPrestige Bronze(雲母-Fe2O3)及びMerckから販売されているColorona(雲母-TiO2-Fe2O3)が挙げられ得る。
【0141】
金色真珠光沢剤、特にBASF社からBrilliant Gold 212G(Timica)、Gold 222C(Cloisonne)、Sparkle Gold(Timica)、Gold 4504(Chromalite)及びMonarch Gold 233X(Cloisonne)の名称で販売されているもの;青銅色真珠光沢剤、特にMerck社からBronze Fine(17384)(Colorona)及びBronze(17353)(Colorona)の名称において且つBASF社からSuper Bronze(Cloisonne)の名称で販売されているもの;橙色真珠光沢剤、特にBASF社からOrange 363C(Cloisonne)及びOrange MCR 101(Cosmica)の名称において且つMerck社からPassion Orange(Colorona)及びMatte Orange(17449)(Microna)の名称で販売されているもの;褐色真珠光沢剤、特にBASF社からNu-Antique Copper 340XB(Cloisonne)及びBrown CL4509(Chromalite)の名称で販売されているもの;銅色味を帯びた真珠光沢剤、特にBASF社からCopper 340A(Timica)の名称で販売されているもの;赤色味を帯びた真珠光沢剤、特にMerck社からSienna fine(17386)(Colorona)の名称で販売されているもの;黄色味を帯びた真珠光沢剤、特にBASF社からYellow(4502)(Chromalite)の名称で販売されているもの;金色味を帯びた赤色真珠光沢剤、特にBASF社からSunstone G012(Gemtone)の名称で販売されているもの;桃色真珠光沢剤、特にBASF社からTan opal G005(Gemtone)の名称で販売されているもの;金色味を帯びた黒色真珠光沢剤、特にBASF社からNu-Antique Bronze 240 AB(Timica)の名称で販売されているもの;青色真珠光沢剤、特にMerck社からMatte Blue(17433)(Microna)の名称で販売されているもの;銀色味を帯びた白色真珠光沢剤、特にMerck社からXirona Silverの名称で販売されているもの;並びに金緑色~桃色~橙色に変化する真珠光沢剤、特にMerck社からIndian Summer(Xirona)の名称で販売されているもの;並びにこれらの混合物も挙げられ得る。
【0142】
真珠光沢剤の更なる例としては、酸化チタンで被覆されたホウケイ酸塩基材を含む粒子も挙げられ得る。
【0143】
酸化チタンで被覆されたガラス基材を含む粒子は、特にToyal社からMetashine MC1080RYの名称で販売されている。
【0144】
最後に、他に挙げられ得る真珠光沢剤の例としては、ポリエチレンテレフタレートフレーク、特にSilver 1P 0.004X0.004(銀フレーク)の名称でMeadowbrook Inventions社から販売されているものが挙げられる。アルミナ、シリカ、ホウケイ酸ナトリウムカルシウム又はホウケイ酸カルシウムアルミニウム、アルミニウムなどの合成基材をベースとする多層顔料も想定され得る。
【0145】
特殊効果を有する顔料は、特に反射性粒子、即ちそのサイズ、構造、特にそれを構成している層の厚み、並びに物理的及び化学的性質、並びに表面状態に起因して入射光を反射することが可能な粒子から選択することもできる。この反射は、適切であれば、メークアップすべき支持体にそれを適用した場合、組成物又は混合物の表面に肉眼で視認することができる光輝点、即ち輝いて見えることにより周囲よりも目立つ輝度の高い点をもたらすのに十分な強度を有し得る。
【0146】
反射性粒子は、それと組み合わされる着色剤がもたらす呈色効果を大きく変化させないように、より具体的には演色性の観点でこの効果を最適化するように選択することができる。これらは、より具体的には、黄色、桃色、赤色、青銅色、橙色、褐色、金色及び/又は銅色の色彩又は色合いを有し得る。
【0147】
これらの粒子は、様々な形態を有し得、特に小板又は小球形態、特に球形態であり得る。
【0148】
その形態に関わらず、反射性粒子は、多層構造を有しても又は有しなくてもよく、多層構造の場合、例えば均一な厚みを有する、特に反射性材料の少なくとも1つの層を有し得る。
【0149】
反射性粒子が多層構造を有しない場合、それらは、金属酸化物、特に合成により得られた酸化チタン又は酸化鉄で構成され得る。
【0150】
反射性粒子が多層構造を有する場合、それらは、例えば、天然又は合成の基材、特に反射性材料、特に少なくとも1種の金属又は金属性の材料の少なくとも1つの層で少なくとも部分的に被覆された合成の基材を含み得る。基材は、1種又は複数の有機材料及び/又は鉱物材料から作製可能である。
【0151】
より具体的には、これは、ガラス、セラミック、グラファイト、金属酸化物、アルミナ、シリカ、シリケート、特にアルミノシリケート及びボロシリケート及び合成雲母並びにこれらの混合物から選択することができるが、この一覧に限定されるものではない。
【0152】
反射性材料は、金属又は金属性の材料の層を含み得る。
【0153】
反射性粒子は、特に特開平09-188830号公報、特開平10-158450号公報、特開平10-158541号公報、特開平07-258460号公報及び特開平05-017710号公報に記載されている。
【0154】
金属層で被覆された無機基材を含む反射性粒子の更なる例として、銀で被覆されたホウケイ酸塩基材を含む粒子も挙げられ得る。
【0155】
小板形態の銀被覆ガラス基材の粒子は、Toyal社からMicroglass Metashine REFSX 2025 PSの名称で販売されている。ニッケル/クロム/モリブデン合金で被覆されたガラス基材の粒子は、同社からCrystal Star GF550及びGF2525の名称で販売されている。
【0156】
銀、アルミニウム、鉄、クロム、ニッケル、モリブデン、金、銅、亜鉛、スズ、マグネシウム、鋼、青銅又はチタンなどの金属基材を含む粒子も利用することができ、前記基材は、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化セリウム、酸化クロム、酸化ケイ素及びこれらの混合物などの少なくとも1種の金属酸化物の少なくとも1つの層で被覆されている。
【0157】
その例として、Eckart社からVisionaireの名称で販売されている、SiOで被覆されたアルミニウム粉末、青銅粉末又は銅粉末が挙げられ得る。
【0158】
基材に結合していない、液晶(WackerからのHelicones HC)又はホログラム光輝フレーク(SpectratekからのGeometric Pigments又はSpectra f/x)などの干渉効果を示す顔料も挙げられ得る。特殊効果を有する顔料には、蛍光顔料(これらは、昼光下で蛍光を発する物質又は紫外蛍光を発する物質のいずれでもあり得る)、燐光顔料、フォトクロミック顔料、サーモクロミック顔料及び量子ドット、例えばQuantum Dots Corporation社から販売されているものも含まれる。
【0159】
本発明に使用できる顔料の多様性により広範囲の色を得ることが可能であり、金属効果又は干渉効果などの特定の光学効果を得ることも可能である。
【0160】
本発明による組成物に使用される顔料のサイズは、一般に、10nm~200μm、好ましくは20nm~80μm、より好ましくは30nm~50μmである。
【0161】
顔料は、組成物中に分散剤により分散させることができる。
【0162】
分散剤は、分散している粒子の凝集又は軟凝集を防ぐ役割を果たす。この分散剤は、分散すべき粒子の表面に対して強力な親和性を有する1種又は複数の官能性を有する、界面活性剤、オリゴマー、ポリマー又はこれらの幾つかの混合物であり得る。特に、これらは、顔料表面に物理的又は化学的に結合することができる。これらの分散剤は、連続媒体と混和性を有するか又は可溶性を示す少なくとも1種の官能基も含む。具体的には、特に12-ヒドロキシステアリン酸エステル及びグリセロール又はジグリセロールなどのポリオールのC~C20脂肪酸エステル、例えば分子量が約750g/molであるポリ(12-ヒドロキシステアリン酸)ステアレート、例えばSolsperse 21000の名称でAvecia社から販売されている製品、参照名Dehymyls PGPHでHenkel社から販売されているポリグリセリル-2ジポリヒドロキシステアレート(CTFA名)又は参照名Arlacel P100でUniqema社から販売されている製品などのポリヒドロキシステアリン酸及びこれらの混合物が使用される。
【0163】
本発明の組成物中に使用することができる他の分散剤として、重縮合した脂肪酸の4級アンモニウム誘導体、例えばAvecia社から販売されているSolsperse 17000及びポリジメチルシロキサン/オキシプロピレン混合物、例えばDow Corning社からDC2-5185及びDC2-5225 Cの参照名で販売されているものを挙げることができる。
【0164】
組成物に使用することができる顔料は、有機剤で表面処理されたものであり得る。
【0165】
したがって、本発明に関連して有用な予め表面処理された顔料は、本発明による組成物中に分散させる前に、特にCosmetics and Toiletries,February 1990,Vol.105,pages 53-64に記載されているものなどの有機剤により、化学的、電気的、電気化学的、機械化学的又は機械的な表面処理を全体的又は部分的に施した顔料である。これらの有機剤は、例えば、ロウ、例えばカルナウバロウ及びミツロウ;脂肪酸、脂肪アルコール及びこれらの誘導体、例えばステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、ステアリルアルコール、ヒドロキシステアリルアルコール及びラウリン酸並びにこれらの誘導体;アニオン性界面活性剤;レシチン;脂肪酸のナトリウム、カリウム、マグネシウム、鉄、チタン、亜鉛又はアルミニウム塩、例えばステアリン酸又はラウリン酸アルミニウム;金属アルコキシド;ポリエチレン;(メタ)アクリル酸ポリマー、例えばポリメチルメタクリレート;アクリレート単位を含むポリマー及びコポリマー;アルカノールアミン;シリコーン化合物、例えばシリコーン、特にポリジメチルシロキサン;有機フッ素化合物、例えばパーフルオロアルキルエーテル;フルオロシリコーン化合物から選択することができる。
【0166】
本組成物に有用な表面処理された顔料は、これらの化合物の混合物で処理され得、且つ/又は数回の表面処理を施され得る。
【0167】
本発明に関連して有用な表面処理された顔料は、当業者によく知られている表面処理技法に従って調製され得るか、又は商業的に入手可能な形態のままであり得る。
【0168】
好ましくは、表面処理された顔料は、有機層で被覆されている。
【0169】
顔料を処理する有機剤は、溶媒の蒸発、表面処理剤の分子との間の化学反応又は表面処理剤と顔料との間の共有結合の形成により、顔料上に堆積させることが可能である。
【0170】
したがって、表面処理は、例えば、表面処理剤と顔料表面とを化学反応させ、表面処理剤と顔料又は充填剤との間に共有結合を生成することにより実施することができる。この方法は、特に米国特許第4578266号明細書に記載されている。
【0171】
好ましくは、顔料と共有結合する有機剤が使用されるであろう。
【0172】
表面処理剤は、表面処理される顔料の総質量の0.1質量%~50質量%、好ましくは0.5質量%~30質量%、更に好ましくは1質量%~20質量%を占めることができる。
【0173】
好ましくは、顔料の表面処理剤は、以下の処理剤から選択される。
- PEG-シリコーン処理剤、例えばLCWから販売されているAQ表面処理剤;-メチコン処理剤、例えばLCWから販売されているSI表面処理剤;
- ジメチコン処理剤、例えばLCWから販売されているCovasil 3.05表面処理剤;
- ジメチコン/トリメチルシロキシシリケート処理剤、例えばLCWから販売されているCovasil 4.05表面処理剤;
- ミリスチン酸マグネシウム処理剤、例えばLCWから販売されているMM表面処理剤;
- ジミリスチン酸アルミニウム処理剤、例えば三好化成株式会社(Miyoshi)から販売されているMI表面処理剤;
- パーフルオロポリメチルイソプロピルエーテル処理剤、例えばLCWから販売されているFHC表面処理剤;
- セバシン酸イソステアリル処理剤、例えば三好化成株式会社から販売されているHS表面処理剤;
- パーフルオロアルキルホスフェート処理剤、例えば大東化成工業株式会社(Daito)から販売されているPF表面処理剤;
- アクリレート/ジメチコンコポリマー及びパーフルオロアルキルホスフェート処理剤、例えば大東化成工業株式会社から販売されているFSA表面処理剤;
- ポリメチルハイドロジェンシロキサン/パーフルオロアルキルホスフェート処理剤、例えば大東化成工業株式会社から販売されているFS01表面処理剤;
- アクリレート/ジメチコンコポリマー処理剤、例えば大東化成工業株式会社から販売されているASC表面処理剤;
- トリイソステアリン酸イソプロピルチタン処理剤、例えば大東化成工業株式会社から販売されているITT表面処理剤;
- アクリレートコポリマー処理剤、例えば大東化成工業株式会社から販売されているAPD表面処理剤;
- パーフルオロアルキルホスフェート/トリイソステアリン酸イソプロピルチタン処理剤、例えば大東化成工業株式会社から販売されているPF+ITT表面処理剤。
【0174】
本発明の特定の実施形態によれば、分散剤は、染料組成物中において、サブミクロンサイズの粒子状形態にある有機又は鉱物顔料と共に存在する。
【0175】
一実施形態によれば、分散剤及び顔料は、1:4~4:1、特に1.5:3.5~3.5:1、より良好には1.75:3~3:1の量(分散剤:顔料)で存在する。
【0176】
したがって、分散剤は、シリコーンポリエーテルなどのシリコーン主鎖を有し得、上に記載したアルコキシシラン以外のアミノシリコーン型の分散剤となり得る。好適な分散剤の中でも、以下のものが挙げられ得る:
- アミノシリコーン、即ち1個又は複数のアミノ基を含むシリコーン、例えばBYKからBYK LPX 21879、Genesee PolymersからGP-4、GP-6、GP-344、GP-851、GP-965、GP-967及びGP-988-1の名称及び参照名で販売されているもの、
- シリコーンアクリレート、例えばEvonikから販売されているTego(登録商標) RC 902、Tego(登録商標) RC 922、Tego(登録商標) RC 1041及びTego(登録商標) RC 1043、
- カルボキシル基を有するポリジメチルシロキサン(PDMS)シリコーン、例えば信越化学工業株式会社(Shin-Etsu)からのX-22162及びX-22370、エポキシシリコーン、例えばGenesee PolymersからのGP-29、GP-32、GP-502、GP-504、GP-514、GP-607、GP-682及びGP-695又はEvonikからのTego(登録商標) RC 1401、Tego(登録商標) RC1403、Tego(登録商標) RC 1412。
【0177】
特定の実施形態によれば、分散剤は、上に記載したアルコキシシラン以外のアミノシリコーン型のものであり、且つカチオン性のものである。
【0178】
好ましくは、顔料は、鉱物顔料、鉱物-有機混合顔料又は有機顔料から選択される。
【0179】
本発明の一変形形態において、本発明による顔料は、有機顔料、優先的にはシリコーン化合物から選択される有機剤で表面処理された有機顔料である。本発明の他の変形形態において、本発明による顔料は、鉱物顔料である。
【0180】
この組成物は、1種又は複数の直接染料も含み得る。
【0181】
「直接染料」という用語は、酸化染料以外の天然及び/又は合成染料を意味する。これらは、繊維上に表面的に拡散することになる染料である。
【0182】
これらは、イオン性又は非イオン性であり得、好ましくはカチオン性又は非イオン性である。
【0183】
好適な直接染料の例としては、単独での又は混合物の形態におけるアゾ直接染料;(ポリ)メチン染料、例えばシアニン、ヘミシアニン及びスチリル;カルボニル染料;アジン染料;ニトロ(ヘテロ)アリール染料;トリ(ヘテロ)アリールメタン染料;ポルフィリン染料;フタロシアニン染料、天然の直接染料が挙げられ得る。
【0184】
直接染料は、好ましくは、カチオン性直接染料である。以下の式(V)及び(VI)のヒドラゾノカチオン性染料並びに式(VII)及び(VIII)のアゾカチオン性染料が挙げられ得る。
[化学式6]
Het-C(R)=N-N(R)-Ar,Q (V)
[化学式7]
Het-N(R)-N=C(R)-Ar,Q- (VI)
[化学式8]
Het-N=N-Ar,Q- (VII)
[化学式9]
Ar-N=N-Ar’’,Q- (VIII)
式(V)~(VIII)において、
- Hetは、陽イオン性ヘテロアリール基、優先的には少なくとも1個のメチルなどの(C~C)アルキル基で任意選択的に置換された、優先的には環内カチオン電荷を有するイミダゾリウム、インドリウム又はピリジニウムなどを表し;
- Arは、環外カチオン電荷、優先的にはアンモニウム、特にトリメチルアンモニウムなどのトリ(C~C)アルキルアンモニウムを有する、フェニル又はナフチルなどのアリール基を表し;
- Arは、優先的には、1個又は複数の電子供与性基で任意選択的に置換されているアリール基、特にフェニル、例えばi)任意選択的に置換されている(C~C)アルキル、ii)任意選択的に置換されている(C~C)アルコキシ、iii)アルキル基がヒドロキシル基で任意選択的に置換されている(ジ)(C~C)(アルキル)アミノ、iv)アリール(C~C)アルキルアミノ、v)任意選択的に置換されているN-(C~C)アルキル-N-アリール(C~C)アルキルアミノを表すか、又は代わりにArは、ジュロリジン基を表し;
- Ar’’は、任意選択的に置換された(ヘテロ)アリール基、例えば優先的には1個又は複数の(C~C)アルキル、ヒドロキシル、(ジ)(C~C)(アルキル)アミノ、(C~C)アルコキシ又はフェニル基で任意選択的置換されたフェニル又はピラゾリルを表し;
- Ra及びRbは、同一であるか又は異なり得、水素原子を表すか、又は優先的にはヒドロキシル基で任意選択的に置換された(C~C)アルキル基を表すか;又は代わりに、
Het置換基を有する置換基Ra及び/又はAr置換基を有する置換基Rbは、それらを有する原子と一緒に、(ヘテロ)シクロアルキルを形成し;特に、Ra及びRbは、水素原子を表すか又はヒドロキシル基で任意選択的に置換された(C~C)アルキル基を表し、
- Q-は、ハロゲン化物又は硫酸アルキルなどの有機又は無機アニオン性対イオンを表す。
【0185】
特に、上記で定義された式(V)~(VIII)の環内カチオン性電荷を有するアゾ及びヒドラゾノ直接染料、より具体的には特許出願国際公開第95/15144号パンフレット、国際公開第95/01772号パンフレット及び欧州特許第714954号明細書に記載されている環内カチオン性電荷を有するカチオン性直接染料、優先的には以下の直接染料が挙げられ得る。
[化学式10]
【化2】
[化学式11]
【化3】
式(IX)及び(X)において、
- Rは、メチルなどの(C~C)アルキル基を表し;
- R及びRは、同一であるか又は異なり得、水素原子又はメチルなどの(C~C)アルキル基を表し;
- Rは、水素原子を表すか、又は電子供与性基、例えば任意選択的に置換された(C~C)アルキル、任意選択的に置換された(C~C)アルコキシ若しくはアルキル基が任意選択的にヒドロキシル基で置換された(ジ)(C~C)(アルキル)アミノを表し;特に、Rは、水素原子であり、
- Zは、CH基又は窒素原子、優先的にはCHを表し、
- Q-は、上記で定義されたアニオン性対イオン、特に塩化物などのハロゲン化物又は硫酸メチル若しくはメシルなどの硫酸アルキルである。
【0186】
特に、式(IX)及び(X)の染料は、Basic Red 51、Basic Yellow 87及びBasic Orange 31又はその誘導体から選択され、Q’は、上記で定義されたアニオン性対イオン、特に塩化物などのハロゲン化物又は硫酸メチル若しくはメシチルなどの硫酸アルキルである。
【0187】
本発明に従って使用することが可能な天然直接染料の中でも、ローソン、ジュグロン、アリザリン、プルプリン、カルミン酸、ケルメス酸、プルプロガリン、プロトカテクアルデヒド、インジゴ、イサチン、クルクミン、スピヌロシン、アピゲニジン及びオルセインが挙げられ得る。これらの天然染料を含む抽出物又は煎出物、特にヘンナ染料ベースの湿布又は抽出物を使用することも可能である。
【0188】
本発明の一実施形態によれば、染料は、脂溶性である。これらは、例えば、スダンレッド、D&C Red 17、D&C Green 6、β-カロテン、大豆油、スダンブラウン、D&C Yellow 11、D&C Violet 2、D&C Orange 5、キノリンイエロー及びアナトーから選択される。水溶性染料は、例えば、ビートルート液又はメチレンブルーである。
【0189】
好ましくは、化粧用活性剤iv)は、以下の顔料から選択される:カーボンブラック、特に黒色の酸化鉄、酸化鉄被覆雲母、赤色酸化鉄(酸化鉄(III)、酸化第二鉄とも称される)、トリアリールメタン顔料、特に青色及び紫色、例えばBlue 1 Lake、特に赤色のアゾ顔料、例えばD&C Red 7、リソールレッドのアルカリ金属塩、例えばリソールレッドBのカルシウム塩。
【0190】
本発明の特定の実施形態によれば、顔料の量は、それを含む分散体(A)の質量に対して0.5質量%~40質量%の範囲、好ましくは1質量%~20質量%の範囲である。
【0191】
本発明の特定の実施形態によれば、分散体(A)は、iv)染毛剤から選択される1種又は複数の化粧用活性剤を含む。
【0192】
染毛剤の中でも、以下が挙げられ得る:
- 一般に1種又は複数の酸化性塩基から選択される酸化染料であって、1種又は複数のカップリング剤と任意選択的に組み合わされる酸化染料。一例として、酸化性塩基は、パラ-フェニレンジアミン、ビス(フェニル)アルキレンジアミン、パラ-アミノフェノール、オルト-アミノフェノール、複素環式塩基及び対応する付加塩から選択され、任意選択的にカップリング剤、特にメタ-フェニレンジアミン、メタ-アミノフェノール、メタジフェノール、ナフタレンをベースとするカップリング剤及び複素環式カップリング剤に加えて対応する付加塩から選択されるものと組み合わされる。
- 直接染料、特に単独での又は混合物形態におけるアゾ直接染料;(ポリ)メチン染料、例えば、シアニン、ヘミシアニン及びスチリル;カルボニル染料;アジン染料;ニトロ(ヘテロ)アリール染料;トリ(ヘテロ)アリールメタン染料;ポルフィリン染料;フタロシアニン染料、天然の直接染料。直接染料は、アニオン性、カチオン性又は中性であり得る。
- 特にヘンノタンニン酸、ジュグロン、アリザリン、プルプリン、カルミン酸、ケルメス酸、プルプロガリン、プロトカテクアルデヒド、インジゴ、イサチン、クルクミン、スピヌロシン、アピゲニジン及びオルセインから選択される天然染料並びにまたこれらの天然染料を含む抽出物又は煎出物。
【0193】
染毛剤は、より具体的には、分散体(A)の総質量に対して0.001質量%~10質量%を占め、好ましくは分散体(A)の総質量に対して0.005質量%~5質量%を占める。
【0194】
好ましくは、本発明の顔料は、カーボンブラック、酸化鉄、特に赤色、褐色又は黒色酸化鉄並びに酸化鉄被覆雲母、トリアリールメタン顔料、特に青色及び紫色トリアリールメタン顔料、例えばBlue 1 Lake、アゾ顔料、特に赤色アゾ顔料、例えばD&C Red 7、リソールレッドのアルカリ土類金属塩、例えばリソールレッドBのカルシウム塩から選択され;より優先的には、使用される顔料は、赤色酸化鉄及びアゾ顔料、特に赤色アゾ顔料、例えばD&C Red 7から選択される。
【0195】
本発明の特定の一実施形態によれば、顔料の量は、それを含む組成物及び分散体(A)の質量に対して0.5質量%~40質量%の範囲、好ましくは1質量%~20質量%の範囲である。
【0196】
分散体(A)を用いてケラチン物質を処理するための方法
本発明の有利な変形形態によれば、ケラチン繊維、特にヒトのケラチン繊維、好ましくは毛髪を処理するための本発明の方法は、少なくとも1種の上記で定義された分散体(A)を前記繊維に適用することを含む。
【0197】
本発明の特定の実施形態によれば、分散体(A)をケラチン物質に適用した後、組成物は、前記ケラチン物質上において、自然に又はヘアドライヤーなど、美容に使用される加熱器具を用いて乾燥される。
【0198】
本発明の特定の実施形態によれば、ケラチン繊維を処理するための方法は、前記繊維に形状付与するための方法である。
【0199】
より具体的には、ケラチン繊維を処理するための方法は、少なくとも1つのステップ、特に、
- この方法の第1のステップにおいて、ケラチン繊維を、従来の形状付与手段、例えば特定の形状(円柱形)のローラー又はブラシを用いて形状付与することと、次いで、
- 第2のステップにおいて、分散体(A)を前記繊維に適用することであってし、適用方法は、好ましくは、噴霧によるものである、適用することと、次いで、
- 第3のステップにおいて、前記繊維を自然乾燥させるか、又は美容に使用される従来の器具を用いて乾燥させることと、次いで、
- 形状付与手段を前記繊維から取り外し、任意選択的に、続いて濯ぎステップ、シャンプー洗浄ステップを行い、次いで自然乾燥させるか又は標準的な器具を使用して乾燥させることと
を伴う。
【0200】
分散体(A)を適用した後、第3のステップ前に、任意選択的に濯ぎステップ又はシャンプー洗浄ステップを実施し得る。
【0201】
分散体(A)は、濡れた又は乾いた、好ましくは乾いたケラチン繊維に適用することができる。
【0202】
本発明のケラチン繊維を処理するための方法を介して、形状付与を行いながら、それと同時に、前記繊維に1種又は複数の化粧用活性剤を付与すること、例えば少なくとも1種の染料及び/若しくは顔料を適用することにより染色すること、並びに/又は前記繊維に少なくとも1種のUV(A)及び/若しくはUV(B)遮蔽剤を適用すること、並びに/又は少なくとも1種のケア活性剤を適用することも可能である。上記で定義されたように少なくとも1種の化粧用剤iv)を含む分散体(A)を適用するのみで十分である。更に、この付与された形状は、特にシャンプー洗浄の連続及び光線に対して持続性を示し、その上、適用された化粧用活性剤iv)も持続するようである。
【0203】
分散体(A)を適用した後、繊維を放置して乾燥させ得るか、又は例えば30℃を超える温度で乾燥させ得る。特定の実施形態によれば、この温度は、40℃を超える。特定の実施形態によれば、この温度は、45℃を超え、且つ100℃未満である。
【0204】
好ましくは、繊維を乾燥させる場合、熱の供給に加えて、フードドライヤー、ヘアドライヤー、ストレートアイロン、Climazonなどの美容に使用される標準的な器具を使用して、空気流を供給しながら乾燥させる。
【0205】
乾燥中、毛束に対してコーミング、ブラッシング又は手櫛などの機械的な作用を与え得る。この作業は、自然に又は他の方法で繊維を乾燥させた後に同様に行うことができる。
【0206】
乾燥ステップをフードドライヤー又はヘアドライヤーを用いて行う場合、乾燥温度は、40~110℃、好ましくは50~90℃である。
【0207】
本発明のケラチン繊維を処理するための方法の一実施形態によれば、毛髪は、ストレートアイロンを用いて処理される。前記毛髪が乾燥したら、次いでこの処理を実施する。ストレートアイロンで処理する温度は、110~220℃、好ましくは140~200℃である。
【0208】
上に記載した分散体(A)は、濡れた又は乾いたケラチン繊維上で使用することができ、更に、明るい色又は暗い色の、天然の又は染色された、パーマネントウェーブ、脱色又は縮毛矯正が施されたあらゆる種類の繊維上で使用することができる。
【0209】
本発明の方法の特定の実施形態によれば、繊維は、分散体(A)を適用する前に洗浄される。
【0210】
繊維への適用は、任意の標準的な手段を介して、特に櫛、目の細かいブラシ、目の粗いブラシ又は指を用いて行うことができる。
【0211】
本発明の好ましい実施形態によれば、分散体(A)を適用するステップは、乾いたケラチン繊維上で行われる。
【0212】
本発明の方法の他の特定の実施形態によれば、分散体(A)を適用するステップは、湿った又は濡れたケラチン繊維上で行われる。
【0213】
好ましくは、分散体(A)を適用した後の放置時間は、外気中で1分間~6時間、特に10分間~5時間、より具体的には30分間~4時間、好ましくは約3時間である。
【0214】
本発明の他の特定の実施形態によれば、ケラチン繊維、特に毛髪などのヒトのケラチン繊維を処理するための方法は、上記で定義された、h)少なくとも1種の染料、及び/又はj)少なくとも1種の顔料を含む分散体(A)を前記繊維に適用する少なくとも1つのステップに続いて乾燥ステップを含む、前記繊維を染色するための方法である。本発明の分散体(A)をケラチン繊維に適用した後、濯ぎ及び/又はシャンプー洗浄を任意選択的に実施することができる。
【0215】
分散体(A)は、濡れた又は乾いたケラチン繊維、好ましくは自然乾燥させた又は上記で定義された美容に使用される標準的な器具を使用して乾燥させた繊維に適用することができる。
【0216】
本発明の特定の実施形態によれば、ケラチン物質を処理するための方法は、上記で定義された分散体(A)を皮膚及び/又は睫毛若しくは眉毛に適用し、続いて自然に又は上記で定義された美容に使用される標準的な器具を使用して、好ましくは自然に乾燥させるステップを含む、皮膚及び/又は睫毛若しくは眉毛を処理するための方法である。
【0217】
本発明の特定の実施形態によれば、ケラチン物質を処理するための方法は、少なくとも1種の染料及び/又は少なくとも1種の顔料、好ましくは少なくとも1種の顔料を含む分散体(A)を適用するステップを含む、皮膚及び/又は睫毛若しくは眉毛をメークアップするための方法である。
【0218】
本発明による分散体(A)は、香料、防腐剤、充填剤、ワックス、界面活性剤、保湿剤、ビタミン類、セラミド、酸化防止剤、フリーラジカル捕捉剤、a)、b)、c)、d)及びe)以外のポリマー、増粘剤、f)染料及びg)顔料以外の染料から選択される化粧用添加剤も含むことができる。
【0219】
優先的には、本発明の方法の第1のステップは、1種又は複数の無極性溶媒、特にイソドデカン中の分散体(A)を適用することである。
【0220】
キット
本発明の主題は、
- 1つの区画における、上記で定義された成分i)~iii)を含む分散体(A)と、
- 1つ又は複数の異なる区画に分けられた以下の成分:f)染料、g)顔料;h)ケラチン物質、特に皮膚をケアするための活性剤、並びにj)UV(A)及び/又は(B)遮蔽剤と
を含む、幾つかの分離した区画を有するキット又は器具でもある。
【0221】
組成物を包装する組立体は、公知の様式の、化粧用組成物を保存するのに好適な任意の包装(特にボトル、チューブ、スプレーボトル又はエアロゾルボトル)である。
【0222】
本発明を以下の実施例においてより詳細に例示する。
【実施例
【0223】
様々な実施例に示すポリマー粒子の分散体は、1リットルのパイロット反応器で調製した。合成は、イソドデカンなどの無極性非プロトン性有機溶媒中で実施する。
【0224】
合成方法は、得られる全ての分散体において同一である。第1のステップにおいて、安定化用統計ポリマーを、C~C22アルキル(メタ)アクリレートと、少量の1種又は2種の異なる(C~C)アルキル(C~C)(アルキル)アクリレート、好ましくは(C~C)アルキル(メタ)アクリレート、例えばメチルアクリレート又はメチルアクリレート+エチルアクリレートと反応させることにより合成する。
【0225】
反応は、90℃で2時間実施する。第2のステップにおいて、(C~C)アルキル(C~C)(アルキル)アクリレートエチレン系不飽和モノマー、好ましくは(C~C)アルキル(メタ)アクリレート及び任意選択的に(C~C)(アルキル)アクリル酸、好ましくは(メタ)アクリル酸、例えば、アクリル酸を、安定化用ポリマーを含む反応媒体に導入した後、粒子のコアを得る。この第2のステップは、90℃で5時間実施する。
【0226】
合成の終わりに、残存している未反応モノマーを除去するために、数回の精製ステップを、「ストリッピング」としても知られる溶媒(イソドデカン)の蒸留により実施し得る。
【0227】
イソドデカンなどの液体炭化水素系脂肪性物質iii)中の活性物質の比率は、最終的に40%~55%である。それぞれの実施例に使用した全てのモノマー及び重合開始剤を以下の表1及び2にまとめる。
【0228】
【表1】
【0229】
重合開始剤は、Trigonox T21Sである。この開始剤のCAS及び供給業者を表2:様々な実施例に使用した重合開始剤に示す。
【0230】
【表2】
【0231】
様々なケラチン物質基材、特に皮膚及び毛髪上における本発明のポリマーの使用の様々な例を示す。
【0232】
本発明の実施例
~C22アルキル基を有する安定剤を含む油性分散体の合成
~C22アルキル(メタ)アクリレート安定剤を含む油性分散体を製造するための合成実施例を以下に示す。この実施例には、安定化用アーム部にステアリルメタクリレートをメチルアクリレートと組み合わせて使用し、粒子のコア用としてメチルアクリレートを採用した。
【0233】
ステアリルメタクリレート/メチルアクリレート油性分散体の合成実施例 実施例13
全体で(ポリマー粒子i)+高分子安定剤ii))メチルアクリレートを94.5%及びステアリルメタクリレート5.5%を含む油性分散体を生成する。この油性分散体の合成は1リットルのパイロット反応器で実施した。合成は、2ステップで実施する:
- 第1のステップにおいて、ステアリルメタクリレートを少量のメチルアクリレート及びラジカル開始剤(T21S)の存在下においてイソドデカン中で重合させる。第1のステップにおけるステアリルメタクリレート/メチルアクリレートの質量比は、85/15である。
- 第2のステップにおいて、イソドデカン及びラジカル開始剤(T21S)の存在下で残りのメチルアクリレートを注ぎ入れる。
【0234】
ストリッピングを行った後のイソドデカン中のポリマーの固形分を50%とする。
【0235】
安定剤及びコアを得るために用いた比を表3:分散体を得るための安定剤及びコアの具体的な比にまとめる。
【0236】
【表3】
【0237】
[表4]:
実施例10に使用した試薬の量
ステップ1:
【0238】
【表4】
【0239】
この2つのステップ間にイソドデカンを加えた。
【0240】
【表5】
【0241】
ステップ2:
【0242】
【表6】
【0243】
実験手順:
ソドデカン、ステアリルメタクリレート、メチルアクリレート及びT21Sを供給原料として反応器に導入する。アルゴン中で媒体を撹拌しながら90℃(媒体の公称値)に加熱する。この第1のステップの最中の固形分は、22%である。
【0244】
2時間加熱した後、NMRからステアリルメタクリレートが99%消費されたことが示される(メチルアクリレートの消費:98%)。
【0245】
反応から2時間後にイソドデカンを導入する。媒体を90℃に加熱する。
【0246】
媒体が90℃に達したら、メチルアクリレート、イソドデカン及びT21Sを1時間かけて注ぎ入れることにより導入する。導入の終わりに、媒体は、乳白色になる。
【0247】
合成から7時間後、メチルアクリレートが実質的に完全に消費されると共に、ステアリルメタクリレートが定量的な量で消費される。
【0248】
次いで、イソドデカン400mLをストリッピングにより除去する(反応の進行をNMRで監視する)。
【0249】
同じ手順に従って幾つかの合成を実施した。以下では、粒子i)(コア)及び高分子安定剤ii)を構成するモノマーの組成並びに性質のみを以下のそれぞれの表に示す(%m g=g単位の質量百分率)。
【0250】
【表7】
【0251】
【表8】
【0252】
【表9】
【0253】
【表10】
【0254】
【表11】
【0255】
皮膚への適用に関する評価 - メークアップ
本発明の粒子分散体(A)を含む配合物を調製した。
【0256】
この配合物を、Byk社からのビコチャート、黒色スクラブパネルなどの生体外の支持体に塗布し、24時間放置して乾燥させた。24時間乾燥させた後、堆積物の評価を行う:
- 堆積物上にオリーブ油又は皮脂又は水0.5mLを堆積させて5分間待つ。
- 5分間接触させた後、その上を綿で15回拭き取り、堆積物の劣化を観察する。
【0257】
生体外支持体に適用する配合物は、全て以下の組成を有する。
【0258】
【表12】
【0259】
【表13】
【0260】
耐皮脂性、耐オリーブ油性及び耐水性に関する結果
【0261】
【表14】
【0262】
本発明の分散体は、脂肪性物質及び皮脂に対し持続性がなく、基材に塗布した後に不快でべたつく仏国特許第3029786号明細書の分散体と異なり、特に皮脂及びオリーブ油などの液体脂肪性物質に対し持続性を示し、快適且つべたつき感のないコーティングを得ることが可能であることが分かる。
【0263】
毛髪への適用に関する評価 - 毛髪のメークアップ
適用手順:
ケラチン繊維(白色の毛髪90%を含む天然の毛髪、90%NWとしても知られる)に適用するための手順のそれぞれのステップ:
- 組成物Axを、ケラチン繊維(乾いた毛髪)に対して分散体又は組成物0.5g/毛髪gの浴比で適用する;
- 毛束をヘアドライヤーで乾かす。
【0264】
こうして、シャンプー洗浄に対する耐性の評価を適用から24時間後に実施する。使用するシャンプーは、GarnierからのUltra Douxシャンプーである。
【0265】
準備したそれぞれの溶液を以下に示す。
【0266】
【表15】
【0267】
結果:
測色
各毛束の測色データは、Minolta CM-3610d分光測色計で測定する。このL系において、Lは、明度を表し、aは、緑色/赤色軸を示し、bは、青色/黄色軸を示す。Lの値が高いほど、明るくなるか又は色の強度が低くなる。逆に、Lの値が小さいほど、暗くなるか又は色の強度が高くなる。aの値が高いほど色合いがより赤くなり、bの値が高いほど色合いが黄色くなる。
【0268】
したがって、毛髪の色付着は、染色されたNW毛髪の毛束(白色の毛髪を90%含む天然の白髪)及び未染色の(即ち未処理の)NW毛髪の毛束の、以下の式に従って(ΔE)で求められる色の変化に対応する。
[数式1]
【数1】
【0269】
式中、L、a及びbは、NW毛髪を染色した後の測定値を表し、L0、a0及びb0は、NW毛髪の染色前の測定値を表す。ΔE値が高いほど、色の付着が優れている。
【0270】
ケラチン繊維を染色した後及びその後に本発明の油性分散体を1回シャンプー洗浄した後の結果を得た。
【0271】
【表16】
【0272】
ケラチン繊維を顔料で染色することにより、良好な色付着ΔEで濃い有彩色に染色されたことが分かる。
【0273】
毛髪への適用に関する評価 - 繊維へのコシの付与
適用手順:
1.長さ20cmの90%NW毛髪の毛束1gを、カールを作るために円柱形のブラシに巻き付ける。
2.イソドデカン中にポリマーを10%含む分散体2gを毛束に噴霧する。適用前後に毛束の質量を計測する。10%溶液が約0.5g毛束に堆積する。
3.適用から24時間後(毛束を室温下で放置)に毛束を測定する。
4.イソドデカンのみを噴霧した毛束と比較を行った。
【0274】
結果:
【0275】
【表17】
【0276】
結論:
~C22アルキル基を有する安定剤を含む油性分散体は、毛髪繊維にコシを付与する。本発明の分散体でケラチン繊維を処理した後に得られたカールは、非常に目立ち、カールに高さがあり、即ち処理後の巻き髪の長さは、30%から70%低下)する一方、液体炭化水素系脂肪性物質iii)であるイソドデカンを用いて得られたカールは、それほど目立たず、カールの半径が非常に小さく、巻きのピッチが長い(写真から求める)。本発明の実施例の全ては、液体炭化水素脂肪性物質iii)であるイソドデカンのみで処理した毛束と異なり、24時間後でもカールを目立たせる効果を維持している。特に、実施例10の質量比5.5/94.5のステアリルメタクリレート/メチルアクリレート組成物は、24時間後に観察された巻き髪の長さ又はカールの数(3)に変化がなく、カールさせる効果の持続性が高いことから非常に興味深い。24時間後でもカールの数(4)が減らなかった実施例8の毛束も同様である。
【0277】
追加のデータ:本発明の油性分散体及び仏国特許第3014875号明細書の比較用油性分散体の比較
本発明の分散体(A)及び仏国特許第3014875号明細書による比較用粒子分散体の比較を行った。
【0278】
本発明の実施例10を、イソボルニルアクリレートを20%、エチルアクリレートを60%、メチルアクリレートを10%及びアクリル酸を10%から構成される、仏国特許第3014875号明細書(実施例4)の油性分散体と比較した。
【0279】
本発明の分散体(実施例10)が比較用組成物よりも皮脂に対する耐性が高いことが分かる。これは、コントラストカード上で耐皮脂性試験を実施することにより確認した。比較用組成物がFP40上でかなりのべたつきを生じさせたことも、この出発物質が本発明の分散体(実施例10)と比較して皮脂の影響を受けやすいことの証拠である。具体的には、FP40は、皮脂を模擬する可塑剤を含有している。液体炭化水素系脂肪性物質iii)であるイソドデカン中のポリマーによって可塑剤を抽出することにより、ポリマーの皮脂による影響の受けやすさの模擬実験を行うことが可能である。
【0280】
【表18】
【0281】
本発明による分散体及び比較用分散体を適用した後の堆積物の光沢値は、類似しているが、本発明による分散体(A)(実施例10)を乾燥させている間のべたつきは、比較用油性分散体と比較して非常に小さい。
【0282】
他の皮脂であるオリーブ油に対する耐性の結果
滴下試験:
最初に、乾燥後に30μm程度の膜厚が得られるように、堆積させる体積/表面を調整し、原料をイソドデカンで希釈した25%の分散体をコントラストカード上に堆積させることにより、乾燥後に活性物質が約2.7mg/cmとなる。堆積物を25℃及び相対湿度RH45%で24時間乾燥させることにより膜を得た後、評価を行う。皮脂/オリーブ油に対する耐性を、堆積物の表面に攻撃物(皮脂又はオリーブ油10μL)を滴下して堆積させた後に評価を行う。皮脂/油及び堆積物を1時間接触させた後に評価を行う。結果を以下に示す。
【0283】
【表19】
【0284】
本発明の分散体は、脂肪性物質及び皮脂に対し持続性がなく、基材に適用した後に不快でべたつく仏国特許第3014875号明細書の分散体と異なり、特に皮脂及びオリーブ油などの液体脂肪性物質に対し持続性を示し、快適且つべたつき感のないコーティングを得ることが可能であることが分かる。
【0285】
1週間乾燥させた後のべたつき試験:
乾燥後に30μm程度の膜厚が得られるように、堆積させる体積/表面を調整し、原料をイソドデカンで希釈した25%の分散体を基材上に堆積させることにより、乾燥後に活性物質が約2.7mg/cmとなる。2種類の基材:配合物と相互作用しないByko Chart Lenataコントラストカード及びFP40エラストマーを使用する。実際、FP40は皮脂を模擬する可塑剤を含有する。この可塑剤をイソドデカン中のポリマーにより抽出することが、皮脂のポリマーによる影響の受けやすさの模擬試験となる。このエラストマーは、イソドデカンなどの溶媒により抽出される可塑剤を含み、これは、そのような条件下において、形成された堆積物と相互作用する。過去において、本発明者らは、この可塑剤が皮脂と同じように、形成した堆積物の大部分と相互作用することを確認しているため、本発明者らは、皮脂の出現を模擬するためにこれを使用する。本発明による組成物(実施例10)から得られた膜は、先行技術による組成物仏国特許第3014875号明細書から得られた被覆と比較して、皮脂に対する耐性が高い(図1)。仏国特許第3014875号明細書のFP40上に著しいタイツが生じたことは、この原料が、本発明による原料と比較して皮脂による影響を受けやすいことを証明するものである。
【0286】
乾燥時のべたつき
この手順では、イソドデカン中に分散させたポリマー10μLをByko Chart Lenataコントラストカード上に滴下して堆積させ、ストップウォッチを始動した。以下に示す手順を適用することにより、常に同じ位置で一連のべたつきを測定する:垂直力又は荷重:1N、移動速度:5mm・s-1、接触時間:5秒間とし、1分毎に測定が行われるように、測定の各サイクル間に待機時間を設けた。結果(図2)。本発明による組成物の乾燥中のべたつきは、仏国特許第3014875号明細書の組成物と比較して非常に低い。
【0287】
他方では、試験に供した本発明の実施例による粒子は、強い匂いがない(松の匂いもカビ臭さもない)。
図1
図2