(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】広帯域測定システムおよび広帯域特性の測定方法
(51)【国際特許分類】
G01R 27/28 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
G01R27/28 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022140491
(22)【出願日】2022-09-05
【審査請求日】2022-09-05
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】520307104
【氏名又は名称】稜研科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】TMY TECHNOLOGY INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】陳 為暘
(72)【発明者】
【氏名】劉 思函
(72)【発明者】
【氏名】朱 婉瑜
(72)【発明者】
【氏名】莊 涵迪
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0147500(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0216213(US,A1)
【文献】米国特許第10145930(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0103458(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/00-27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1測定ポートおよび第2測定ポートを含み、前記第1測定ポートまたは前記第2測定ポートから測定信号を送信するよう構成され、前記測定信号の周波数が、第1周波数領域に属する信号測定装置と、
前記信号測定装置の前記第1測定ポートに接続されるために構成された第1ポートと、
第2ポートと、
前記第1ポートと前記第2ポートの間に結合され、双方向に構成された第1パッシブミキサと、
前記信号測定装置の前記第2測定ポートに接続されるために構成された第3ポートと、
第4ポートと、
前記第3ポートと前記第4ポートの間に結合され、双方向に構成された第2パッシブミキサと、
を含む信号変換器と、
前記信号測定装置および前記信号変換器に結合され
、第2周波数領域の範囲を制御して、前記信号測定装置から測定データを読み出すよう構成されたコントローラと、
前記コントローラに結合された記憶媒体と、
を含み、前記第1パッシブミキサおよび前記第2パッシブミキサが、
前記第1ポートから受信した信号および前記第3ポートから受信した信号をそれぞれ
前記第2周波数領域に変換して、前記第2ポートおよび前記第4ポートからそれぞれ出力し、
前記第2ポートから受信した信号および前記第4ポートから受信した信号をそれぞれ前記第1周波数領域に変換して、前記第1ポートおよび前記第3ポートからそれぞれ出力するよう構成され、
校正プロセスにおいて、前記第2ポートおよび前記第4ポートを校正キットに電気接続し、前記コントローラが、前記信号測定装置を介して前記校正キットに関連する1つのグループの校正キット測定値を取得し、前記コントローラが、さらに、前記グループの校正キット測定値に基づいて、誤差モデルを取得し、前記誤差モデルが、前記記憶媒体に保存される広帯域測定システム。
【請求項2】
前記信号変換器が、さらに、前記第1パッシブミキサおよび前記第2パッシブミキサにそれぞれ結合された信号発生器を含む請求項1に記載の広帯域測定システム。
【請求項3】
測定プロセスにおいて、前記第2ポートおよび/または前記第4ポートを被試験デバイス(DUT)に電気接続し、前記コントローラが、前記信号測定装置を制御して、前記被試験デバイスに関連する少なくとも1つのグループの被試験デバイス測定値を取得し、前記記憶媒体に保存された誤差モデルおよび前記少なくとも1つのグループの被試験デバイス測定値に基づいて、前記被試験デバイスに関連する少なくとも1つのグループの前記被試験デバイスの特性値を取得する請求項1に記載の広帯域測定システム。
【請求項4】
請求項1に記載の信号変換器を提供するステップと、
前記信号変換器の一側に接続された信号測定装置を構成するステップと、
前記信号変換器の他側に電気接続された校正キットを構成し、校正プロセスを行うことにより、前記校正キットに関連する少なくとも1つのグループの校正キット測定値を取得するステップと、
前記少なくとも1つのグループの校正キット測定値に基づいて、誤差モデルを確立するステップと、
前記信号変換器を介して前記信号測定装置を被試験デバイス(DUT)に電気接続し、前記被試験デバイスに関連する少なくとも1つのグループの被試験デバイス測定値を取得するステップと、
前記誤差モデルに基づいて、前記少なくとも1つのグループの被試験デバイス測定値を少なくとも1つのグループの前記被試験デバイスの特性値に校正するステップと、
を含む広帯域特性の測定方法。
【請求項5】
前記校正プロセスが、SOLT(short/open/load/through)、SOLR(short open load reciprocal)プロセス、LRM (line reflect match)プロセス、LRM(line reflect match)プロセス、LRRM(line reflect reflect match)プロセス、またはTRL(thru reflect line)プロセスである請求項4に記載の広帯域特性の測定方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのグループの校正キット測定値に基づいて前記誤差モデルを確立するステップにおいて、前記校正キットのパラメータに基づいて、前記少なくとも1つのグループの校正キット測定値のうちのいくつかを設定し、前記誤差モデルを確立する請求項4に記載の広帯域特性の測定方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのグループの校正キット測定値に基づいて前記誤差モデルを確立するステップにおいて、理論モデルに基づいて、前記少なくとも1つのグループの校正キット測定値のうちのいくつかを設定し、前記誤差モデルを確立する請求項4に記載の広帯域特性の測定方法。
【請求項8】
前記信号変換器の他側に接続された前記校正キットを構成し、前記校正プロセスを行うことにより前記校正キットに関連する前記少なくとも1つのグループの校正キット測定値を取得するステップにおいて、
前記信号変換器の周波数変換値を制御するステップと、
前記信号測定装置を制御して周波数をスイープし、前記校正キットおよび前記周波数変換値に関連する複数グループの校正キット測定値を取得すること請求項4に記載の広帯域特性の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定技術に関するものであり、特に、広帯域測定システムおよび広帯域特性の測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線通信が次第にミリ波周波数帯に発展するにつれ、高周波測定に対する要求が高まった。しかしながら、多くの学術機関や産業調査部は、依然として低周波または中間周波ネットワークアナライザしか保持しておらず、高周波測定をサポートすることができない。しかしながら、高周波/広帯域ネットワークアナライザは、広帯域操作(例えば、超広帯域位相同期ループ、超広帯域切替スイッチ)に適した多くの電子デバイスを必要とするため、製造が難しく、それにより、促進が難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上の観点から、本発明の実施形態は、低周波ネットワークアナライザで高周波測定を実施することのできる広帯域測定システムおよび広帯域特性の測定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施形態の広帯域測定システムは、信号測定装置および信号変換器を含む(ただし、本発明はこれに限定されない)。信号測定装置は、第1測定ポートおよび第2測定ポートを含む。信号測定装置は、第1測定ポートまたは第2測定ポートから測定信号を送信するよう構成され、測定信号の周波数は、第1周波数領域に属する。信号変換器は、第1ポート、第2ポート、第3ポート、第4ポート、第1パッシブミキサ(passive mixer)、および第2パッシブミキサを含む。第1ポートは、信号測定装置の第1測定ポートに接続されるために構成される。第3ポートは、信号測定装置の第2測定ポートに接続されるために構成される。第1パッシブミキサは、第1ポートと第2ポートの間に結合され、双方向(bidirectional)に構成される。第2パッシブミキサは、第3ポートと第4ポートの間に結合され、双方向に構成される。
【0005】
本発明の実施形態の広帯域特性の測定方法は、以下のステップを含む(ただし、本発明はこれに限定されない)。上述した信号変換器を提供する。信号変換器の一側に信号測定装置を接続する。信号変換器の他側に校正キット(calibration kit)を電気接続し、校正プロセスを行うことにより、校正キットに関連する少なくとも1つのグループの校正キット測定値を取得する。少なくとも1つのグループの校正キット測定値に基づいて、誤差モデルを確立する。信号変換器を介して信号測定装置を被試験デバイス(device-under-test, DUT)に電気接続し、被試験デバイス(DUT)に関連する少なくとも1つのグループの被試験デバイス測定値を取得する。誤差モデルに基づいて、少なくとも1つのグループの被試験デバイス測定値を少なくとも1つのグループの被試験デバイスの特性値に校正する。
【発明の効果】
【0006】
以上のように、本発明の実施形態の広帯域測定システムおよび広帯域特性の測定方法は、信号変換器と信号測定装置を組み合わせて、異なる周波数領域の測定を実施する。
【0007】
本発明の上記および他の目的、特徴、および利点をより分かり易くするため、図面と併せた幾つかの実施形態を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
添付図面は、本発明の原理がさらに理解されるために含まれており、本明細書に組み込まれ、且つその一部を構成するものである。図面は、本発明の実施形態を例示しており、説明とともに、本発明の原理を説明する役割を果たしている。
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の1つの実施形態に係る広帯域測定システムの構成要素のブロック図である。
【
図2】
図2Aは、本発明の1つの実施形態に係るパッシブミキサの回路図である。
図2Bは、本発明の別の実施形態に係るパッシブミキサの回路図である。
【
図3】
図3は、本発明の1つの実施形態に係る広帯域測定システムの概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の1つの実施形態に係る順方向誤差モデルおよび逆方向誤差モデルの概略図である。
【
図5】
図5Aは、本発明の1つの実施形態に係る順方向誤差モデルのシグナルフロー分析の概略図である。
図5Bは、本発明の1つの実施形態に係る逆方向誤差モデルのシグナルフロー分析の概略図である。
【
図6】
図6Aは、本発明の1つの実施形態に係る単一ポート校正に対する簡素化された順方向モデルの概略図である。
図6Bは、本発明の1つの実施形態に係る単一ポート校正に対する簡素化された逆方向モデルの概略図である。
【
図7】
図7Aは、本発明の1つの実施形態に係るデュアルポート校正に対する簡素化された順方向モデルの概略図である。
図7Bは、本発明の1つの実施形態に係るデュアルポート校正に対する簡素化された逆方向モデルの概略図である。
【
図8】
図8は、本発明の1つの実施形態に係るSOLT校正を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、本発明の1つの実施形態に係る校正基準面の概略図である。
【
図10】
図10は、本発明の1つの実施形態に係る校正基準面の概略図である。
【
図18】
図18は、本発明の1つの実施形態に係る広帯域特性の測定方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の1つの実施形態に係る広帯域測定システム1の構成要素のブロック図である。
図1を参照すると、広帯域測定システム1は、信号測定装置10および信号変換器30を含む(ただし、本発明はこれに限定されない)。1つの実施形態において、広帯域測定システム1は、測定している間、被試験デバイス(DUT)50に電気接続される。
【0011】
信号測定装置10は、ベクトルネットワークアナライザ(vector network analyzer, VNA)またはインピーダンスパラメータ(Zパラメータ)、アドミタンスパラメータ(Yパラメータ)、混合パラメータ(hパラメータ/gパラメータ)、伝送パラメータ(ABCDパラメータ)、散乱パラメータ(Sパラメータ)、または散乱伝送パラメータ(Tパラメータ)等のパラメータを検証する他の機器であってもよい。1つの実施形態において、信号測定装置10は、測定ポートP11およびP13を含み、測定ポートP11または測定ポートP13から測定信号を送信するよう構成される。つまり、信号測定装置10は、単一ポート測定またはデュアルポート測定を提供する。1つの実施形態において、測定信号は、第1周波数領域に属する。例えば、第1周波数領域は、0~8GHzまたは2~6GHzの範囲であるが、本発明はこれに限定されない。
【0012】
信号変換器30は、アップ/ダウンコンバータまたは信号周波数/周波数領域を調整する他の変換器であってもよい。信号変換器30は、信号発生器CGおよびパッシブミキサMIX1およびMIX2を含む。
【0013】
信号発生器CGは、パッシブミキサMIX1およびMIX2に結合され、基準信号を生成するよう構成される。1つの実施形態において、信号発生器CGは、基準信号(またはクロック信号、局部発振(local oscillator, LO)信号)をパッシブミキサMIX1またはパッシブミキサMIX2に提供する。1つの実施形態において、基準信号の周波数は、パッシブミキサMIX1およびMIX2の入力と出力の間の周波数差に関連する。いくつかの実施形態において、基準信号の周波数は、必要に応じて変化してもよく、または固定値であってもよい。
【0014】
1つの実施形態において、信号変換器30は、ポートP31、P32、P33、およびP34を含む。パッシブミキサMIX1は、ポートP31とポートP32の間に結合される。パッシブミキサMIX2は、ポートP33とポートP34の間に結合される。また、ポートP31およびP33は、それぞれ信号測定装置10の測定ポートP11およびP13に接続されるために構成される。ポートP32およびP34は、それぞれDUT50の被試験ポートP52および被試験ポートP54に接続されるために構成される。
【0015】
パッシブミキサMIX1およびMIX2は、回路で実施することができる。例えば、
図2Aは、本発明の1つの実施形態に係るパッシブミキサの回路図である。
図2Aを参照すると、パッシブミキサは、スイッチD1、D2、D3、およびD4を含む。図面において、スイッチD1、D2、D3、およびD4は、ダイオードを例として示されている。終了点LOは、信号発生器CGに接続されるために構成される。終了点RFは、DUT50に接続されるために構成される。また、終了点IFは、信号測定装置10に接続されるために構成される。
【0016】
図2Bは、本発明の別の実施形態に係るパッシブミキサの回路図である。
図2Bを参照すると、
図2Aと異なる点は、パッシブミキサがスイッチT1、T2、T3、およびT4を含むことである。図面において、スイッチT1、T2、T3、およびT4は、トランジスタを例として示されている。また、スイッチT1の制御端末(例えば、ゲート)は、スイッチT3の制御端末に接続され、スイッチT2の制御端末は、スイッチT4の制御端末に接続される。
【0017】
図2Aおよび
図2Bは、スイッチ型ミキサを例として示したものである。しかしながら、他の実施形態において、パッシブミキサMIX1およびMIX2は、他のスイッチ型パッシブミキサまたは他の種類のミキサであってもよい。
【0018】
パッシブミキサMIX1およびMIX2は、いずれも双方向に構成される。例えば、パッシブミキサMIX1は、ポートP31から信号を混合し、ポートP32を介して混合した信号を出力し、パッシブミキサMIX2は、ポートP33から信号を混合し、ポートP34を介して混合した信号を出力する。別の例において、パッシブミキサMIX1は、ポートP32から信号を混合し、ポートP31を介して混合した信号を出力し、パッシブミキサMIX2は、ポートP34から信号を混合し、ポートP33を介して混合した信号を出力する。
【0019】
1つの実施形態において、ポートP31からの信号は、第2周波数領域に変換され、パッシブミキサMIX1によってポートP32から出力される。ポートP31が信号測定装置10の測定ポートP11に接続され、信号測定装置10によって出力された測定信号が第1周波数領域に属する場合、パッシブミキサMIX1は、第1周波数領域から第2周波数領域に信号を変換する。第2周波数領域は、20~30GHzまたは10~30GHzの範囲であるが、本発明はこれに限定されない。
【0020】
1つの実施形態において、ポートP32からの信号は、第1周波数領域に変換され、パッシブミキサMIX1によってポートP31から出力される。ポートP32がDUT50の被試験ポートP52に接続され、DUT50によって出力された信号が第2周波数領域に属する場合、パッシブミキサMIX1は、第2周波数領域から第1周波数領域に信号を変換する。
【0021】
1つの実施形態において、ポートP33からの信号は、第2周波数領域に変換され、パッシブミキサMIX2によってポートP34から出力される。ポートP33が信号測定装置10の測定ポートP13に接続され、信号測定装置10によって出力された信号が第1周波数領域に属する場合、パッシブミキサMIX2は、第1周波数領域から第2周波数領域に信号を変換する。
【0022】
1つの実施形態において、ポートP34からの信号は、第1周波数領域に変換され、パッシブミキサMIX2によってポートP33から出力される。ポートP34がDUT50の被試験ポートP54に接続され、DUT50によって出力された信号が第2周波数領域に属する場合、パッシブミキサMIX2は、第2周波数領域から第1周波数領域に信号を変換する。
【0023】
例えば、ポートP31およびP33は、中間周波数(intermediate frequency, IF)ポートであり、ポートP32およびP34は、無線周波数(radio frequency, RF)ポートである。つまり、ポートP31およびP33からの信号は、中間周波数信号(第1周波数領域に属する)であり、パッシブミキサMIX1およびMIX2は、中間周波数信号をアップコンバート(up-convert)し、ポートP32およびP34を介してRF信号(第2周波数領域に属する)を出力する(すなわち、中間周波数信号を高周波数信号に変換する)。あるいは、ポートP32およびP34からの信号は、無線周波数信号であり、パッシブミキサMIX1およびMIX2は、無線周波数信号をダウンコンバート(down-convert)し、ポートP31およびP33を介して中間周波数信号を出力する(すなわち、高周波数信号を中間周波数信号に変換する)。
【0024】
注意すべきこととして、第1周波数領域および第2周波数領域の範囲は、異なる設計要求に応じて変わることがあるため、本発明はこれに限定されない。
【0025】
DUT50は、任意の種類の無線周波数信号発生装置、マイクロ波信号発生装置、またはアンテナ装置であってもよい。1つの実施形態において、DUT50は、被試験ポートP52および被試験ポートP54を含む。
【0026】
図3は、本発明の1つの実施形態に係る広帯域測定システム1の概略図である。
図3を参照すると、信号変換器30のポートP31およびP33は、それぞれ信号測定装置10の測定ポートP11およびP13に接続され、信号変換器30のポートP32およびP34は、それぞれDUT50の被試験ポートP52および被試験ポートP54に接続される。
【0027】
注意すべきこととして、校正プロセスは、DUT50を測定する前に行う必要がある。例えば、広帯域測定システム1において、信号測定装置10の測定ポートP11およびP13は、それぞれDUT50の被試験ポートP52および被試験ポートP54に接続される。測定面は、それぞれ測定ポートP11およびP13に位置する。一般的に、不測の影響をもたらす要因は、信号測定装置10および/または試験形状(例えば、ケーブル、コネクタ、または治具)の欠陥によってシステムエラーが生じることである。校正プロセスは、信号測定装置10のポート端末からDUT50のポート端末に測定面を平行移動させることである。つまり、校正基準面は、それぞれ被試験ポートP52および被試験ポートP54に位置する。したがって、システムによって生じる不測の影響を取り除くことができ、DUT50の特性(例えば、被試験デバイスの特性値)をより正確に測定することができる。
【0028】
図4は、本発明の1つの実施形態に係る順方向(forward)誤差モデルFWおよび逆方向(reverse)誤差モデルRVの概略図である。
図4を参照すると、DUT50のポート端末に向かう信号測定装置10のポート端末をデュアルポートネットワークとみなす場合、順方向伝搬および逆方向伝搬のデュアルポート誤差モデルFWおよびRVを形成することができる。校正により、測定面MP1およびMP2を信号測定装置10のポート端末からDUT50のポート端末に平行移動させ、DUT50の実際の特性(以下、被試験デバイスの特性値と称す)を測定することができる。つまり、校正基準面CP1およびCP2は、DUT50のポート端末に位置する。システム1の信号漏洩によって生じた誤差は、指向性誤差(directivity error)およびクロストーク誤差(crosstalk error)に集約することができる。様々な誤差が順方向伝搬および逆方向伝搬に分割されるため、4つの誤差項(すなわち、誤差項E
DF、E
DR、E
XF、E
XR)を得ることができる。誤差項の下付き接頭辞Dは、指向性誤差を示し、Xは、クロストーク誤差を示す。誤差項の下付き接尾辞Fは、順方向伝搬を示し、Rは、逆方向伝搬を示す。
【0029】
システム1の信号不整合によって生じた誤差は、信号源整合誤差(source match error)および負荷整合誤差(load match error)に集約することができる。様々な誤差が順方向伝搬および逆方向伝搬に分割されるため、4つの誤差項(すなわち、誤差項ESF、ESR、ELF、ELR)を得ることができる。誤差項の下付き接頭辞Sは、信号源整合誤差を示し、Lは、負荷整合誤差を示す。
【0030】
また、発生した誤差に反応して、信号測定装置10における受信機の周波数は、反射追跡誤差(reflection tracking error)および伝送追跡誤差(transmission tracking error)として集約することができる。様々な誤差が順方向伝搬および逆方向伝搬に分割されるため、4つの誤差項(すなわち、誤差項ERF、ERR、ETF、ETR)を得ることができる。誤差項の下付き接頭辞Rは、反射追跡誤差を示し、Tは、伝送追跡誤差を示す。
【0031】
漏洩、不整合、および周波数反応によって生じた12個の誤差項を使用して、デュアルポート誤差モデルを分析することができる。
【0032】
具体的に説明すると、
図5Aは、本発明の1つの実施形態に係る順方向誤差モデルFWのシグナルフロー分析の概略図である。
図5Aを参照すると、メイソンの法則/メイソンのゲイン公式(Mason’s rule/Mason’s Gain Formula)は、ノード間の関係を示すために使用される法則であり、デュアルポート誤差モデルのシグナルフローを分析するために使用することができる。順方向伝搬の順方向誤差モデルFWに基づいて、校正せずにDUT50を測定することによって得られる反射係数S
11Mおよび伝送係数S
21M(すなわち、校正キット測定値)の式を得ることができる。
【0033】
【0034】
【0035】
図5Bは、本発明の1つの実施形態に係る逆方向誤差モデルRVのシグナルフロー分析の概略図である。
図5Bを参照すると、逆方向伝搬の逆方向誤差モデルRVに基づいて、校正せずにDUT50を測定することによって得られる反射係数S
22Mおよび伝送係数S
12M(すなわち、校正キット測定値)の式を得ることができる
【0036】
【0037】
【0038】
4つの式(1)~(4)に基づいて、SOLT(short-open-load-thru)校正を行うことにより、様々な誤差項を得ることができる。誤差項を4つの式(1)~(4)に置き換えると、DUT50の実際のSパラメータ(すなわち、被試験デバイスの特性値)、つまり、(校正された)パラメータS11A、S22A、S21A、およびS12Aを得ることができる。
【0039】
そして、SOLTの校正プロセスに対し、第1信号ポート校正(短絡回路、開回路、および負荷を含む)を行う。一方、測定ポートは接続されていなため、本実施形態において、パラメータS
21AおよびS
12Aは、0であると仮定する。
図6Aは、本発明の1つの実施形態に係る単一ポート校正に対する簡素化された順方向モデルの概略図であり、
図6Bは、本発明の1つの実施形態に係る単一ポート校正に対する簡素化された逆方向モデルの概略図である。
図6Aおよび
図6Bを参照すると、簡素化されたモデルは、以下の式を得ることができる。
【0040】
【0041】
【0042】
接続されていない測定ポートを校正キット(例えば、短絡回路校正キット、開回路校正キット、および負荷校正キット)に電気接続して、校正プロセスを行うことにより(校正順序は、必要に応じて変更することができる)、1つまたはそれ以上のグループの校正キット測定値を得ることができる。
【0043】
負荷校正に対し、負荷校正キットを接続して完全に整合できた場合、反射係数は、0に近づく(例えば、
)。反射係数が0の条件を式(5)および(6)に置き換えると、誤差項E
DFは、負荷校正キットが接続されているが校正されていない時に測定される反射係数S
11ML(すなわち、E
DF=S
11ML)に等しく、誤差項E
DRは、負荷校正キットが接続されているが校正されていない時に測定される反射係数S
22ML(すなわち、E
RF=S
22ML)(すなわち、校正キット測定値)に等しい。
【0044】
また、負荷校正キットを接続することによって、隔離に関する誤差項EXFおよびEXRを得ることができる。誤差項EXFは、負荷校正キットが接続されているが校正されていない時に測定される反射係数S21ML(すなわち、EXF=S21ML)に等しく、誤差項EXRは、負荷校正キットが接続されているが校正されていない時に測定される反射係数S12ML(すなわち、EXF=S12ML)(すなわち、校正キット測定値)に等しい。浸透係数S21MLおよびS12MLを測定することは、実際には不可能であるため、後続のプロセスにおいて、式に含まれない。
【0045】
1つの実施形態において、誤差モデルを確立するプロセスの間、校正キットのパラメータに基づいて、いくつかの、または1つまたはそれ以上のグループの測定値を設定し、誤差モデルを確立することができる。つまり、特定の種類の校正キットの1つまたはそれ以上の校正キット測定値(例えば、反射係数または伝送係数)(測定境界条件として)を誤差項に置き換えて、誤差モデルを確立することができる。
【0046】
別の実施形態において、誤差モデルを確立するプロセスにおいて、理論モデルに基づいて、いくつかの、または1つまたはそれ以上のグループの測定値を設定し、誤差モデルを確立することができる。理論モデルは、理想的な状態にある特定の校正キットの反射係数および/または浸透係数である。つまり、特定の種類の校正キットの1つまたはそれ以上の理想的な測定値(例えば、反射係数または伝送係数)(測定境界条件として)を誤差項に置き換えて、誤差モデルを確立することができる。
【0047】
例えば、開回路および短絡回路校正に対し、まず、順方向伝搬について考える。式(5)および(6)を同時に解くことによって、誤差項E
RFおよびE
SFを得ることができる(理想モデルの理想的な境界条件が、開回路は
であり、短絡回路は
であると仮定する)。
【0048】
【0049】
【0050】
理想的な開回路の反射係数は、1であり、理想的な短絡回路の反射係数は、-1である。しかしながら、実際の反射係数は、通常、あまり理想的ではない。理想的な値を式(7)および(8)に置き換えた場合、計算結果は、実際の値と誤差がある。計算結果を実際の測定結果に近づけるため、信号測定装置10から取得した、校正後に得られた開回路校正キットおよび短絡回路校正キットの実際に測定した反射係数(すなわち、校正キット測定値)を直接式(7)および(8)のパラメータS11AOおよびS11ASに置き換えて、誤差項ERFおよびESFの値を得ることができる。
【0051】
次に、逆方向伝搬について考える。式(5)および(6)を同時に解くことによって、誤差項E
RRおよびE
SRを得ることができる(理想的な境界条件が、開回路は
であり、短絡回路は
であると仮定する)
【0052】
【0053】
【0054】
同様に、計算結果を実際の測定結果に近づけるため、信号測定装置10から取得した、校正後に得られた開回路校正キットおよび短絡回路校正キットの反射係数(すなわち、校正キット測定値)(測定境界条件として)を直接式(9)および(10)のパラメータS22AOおよびS22ASに置き換えて、誤差項ERRおよびESRの値を得ることができる。
【0055】
そして、貫通接続デュアルポート校正に対し、
図7Aは、本発明の1つの実施形態に係るデュアルポート校正に対する簡素化された順方向モデルの概略図であり、
図7Bは、本発明の1つの実施形態に係るデュアルポート校正に対する簡素化された逆方向モデルの概略図である。
図7Aおよび
図7Bを参照すると、デュアルポート誤差モデルは、貫通接続校正キットをDUT(またはDUT50)として使用すると仮定している。式(1)および(3)から(理想的な境界条件が、貫通接続は
であると仮定する)、誤差項E
LFおよびE
LRを得ることができる。
【0056】
【0057】
【0058】
理想的な貫通接続の反射係数は、0であり、反射係数は、1である。しかしながら、実際に、校正キットは、しばしば理想的な貫通を実現するのが難しい。計算結果を実際の測定結果に近づけるため、信号測定装置10から取得した、校正後に得られた貫通接続校正キットの反射係数および伝送係数(すなわち、校正キット測定値)(測定境界条件として)を直接式(11)および(12)のパラメータS11AT、S22AT、S21AT、およびS12ATに置き換えて、誤差項ELFおよびELRの値を得ることができる。
【0059】
また、式(2)および(4)から(理想的な境界条件が、貫通接続は
であると仮定する)、誤差項E
LFおよびE
TRを得ることができる。
【0060】
【0061】
【0062】
同様に、計算結果を実際の測定結果に近づけるため、信号測定装置10から取得した、校正後に実際に測定された貫通接続校正キットの反射係数および伝送係数(すなわち、校正キット測定値)(測定境界条件として)を直接式(13)および(14)のパラメータS11AT、S22AT、S21AT、およびS12ATに置き換えて、誤差項ETFおよびETRの値を得ることができる。したがって、12個の誤差項を得ることができる。
【0063】
そして、信号測定装置10をDUT50に接続して、被試験デバイスに関連する1つまたはそれ以上のグループの被試験デバイス測定値を取得し、式(1)~(4)を同時に解くことにより、DUT50の真実のSパラメータ(すなわち、被試験デバイスの特性値)を得る。
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
誤差項をそれぞれ式(15)~(18)に置き換えた場合、被試験デバイス(DUT)の特性値を被試験デバイスの実際の特性として得ることができる。
【0069】
図8は、本発明の1つの実施形態に係るSOLT校正を示すフローチャートである。
図8を参照すると、短絡回路校正キット、負荷校正キット、開回路校正キット、および貫通接続校正キットを切り替えて(ステップS810)(すなわち、測定ポートを異なる校正キットに接続する)、各校正キットの1つまたはそれ以上のグループの校正キット測定値(例えば、S
11MS、S
22MS、S
11ML、S
22ML、S
11MO、S
22MO、S
11MT、S
22MT、S
21MT、S
12MT)を取得する(ステップS820)。校正キット測定値および/または理論モデルに基づき、理想的な境界条件を設定した後(ステップS830)、誤差項を得ることができる(ステップS840)。誤差項を使用して、誤差モデルを構築することができる。一方、DUT50を接続することによって(ステップS850)、信号測定装置10は、1つまたはそれ以上のグループの被試験デバイス測定値(S
11MD、S
22MD、S
21MD、S
12MD)を取得することができる(ステップS860)。信号測定装置10は、誤差項を基礎とした誤差モデルに基づいて、被試験デバイス測定値を校正し、被試験デバイスの1つまたはそれ以上のグループの特性値(例えば、S
11AD、S
22AD、S
21AD、S
12AD)を取得することができる(すなわち、被試験デバイス測定値を被試験デバイスの特性値に校正する)(ステップS870)。
【0070】
1つの実施形態において、広帯域測定システム1は、さらに、コントローラ(図示せず)を含むことができる。コントローラは、信号測定装置10および/または信号変換器30に結合することができる。1つの実施形態において、コントローラは、第2周波数領域の範囲を制御して、信号測定装置10から測定データ(例えば、校正キット測定値および/または被試験デバイスの測定値)を読み出すよう構成することができる。
【0071】
1つの実施形態において、コントローラは、さらに、校正キット測定値に基づいて、1つまたはそれ以上の誤差モデルを取得するよう構成することができる。誤差モデルの確立は、式(1)~(14)を参照して導き出すことができるため、ここでは繰り返し説明しない。
【0072】
1つの実施形態において、コントローラは、指示を出して、または信号測定装置10から直接データを出力して、信号測定装置10を制御し、校正キットに関連する校正キット測定値および/またはDUT50に関連する被試験デバイス測定値を取得することができる。
【0073】
1つの実施形態において、コントローラは、誤差項を基礎とした誤差モデルに基づいて、被試験デバイス測定値を被試験デバイスの特性値に校正することができる。例えば、式(15)~(18)に基づいて、実際のSパラメータを取得することができる。
【0074】
1つの実施形態において、コントローラは、校正プロセスに基づいて、信号測定装置10および/または信号変換器30に接続された校正キットを切り替えることができる。例えば、コントローラは、それぞれ各校正キットに接続されたスイッチを提供し、校正項目に基づいて、対応する校正キットに接続された信号測定装置10および/または信号変換器30をオンにし、他の校正キットと信号測定装置10および/または信号変換器30の間の接続を中断することができるが、本発明はこれに限定されない。
【0075】
注意すべきこととして、校正プロセスは、SOLTを例に挙げて説明している。別の実施形態において、校正プロセスは、SOLR(short open load reciprocal)プロセス、LRM (line reflect match)プロセス、LRM(ine reflect match)プロセス、LRRM(line reflect reflect match)プロセス、TRL(thru reflect line)プロセス、他の校正プロセスであってもよい。
【0076】
1つの実施形態において、システム1は、さらに、コントローラに結合された記憶媒体を含む。記憶媒体は、ハードディスク、メモリ、フラッシュドライブ、データベース、またはサーバーであってもよい。1つの実施形態において、記憶媒体は、誤差モデルおよび/または1つまたはそれ以上のグループの被試験デバイス測定値を保存するよう構成され、コントローラまたは他のデバイスは、それらを読み出す、または書き込むことができる。例えば、コントローラは、誤差モデルを記憶媒体に保存し、あるいはコントローラは、記憶媒体から被試験デバイス測定値を読み出す。
【0077】
誤差モデルの分析に基づいて、他の基準面の校正に応用することができる。
【0078】
図9は、本発明の1つの実施形態に係る校正基準面CP3およびCP4の概略図である。
図9を参照すると、校正基準面CP3は、信号変換器30のポートP31に位置し、校正基準面CP4は、信号変換器30のポートP33に位置する。信号測定装置10は、校正基準面CP3およびCP4に基づいて、校正プロセスを実行し、誤差モデルを得ることができる。
【0079】
本実施形態の校正プロセスにおいて、測定ポートP11およびP13を介して、信号測定装置10をそれぞれ信号変換器30の一側(例えば、ポートP31およびP33)に電気接続して、1つまたはそれ以上の校正キットを信号変換器30の一側(例えば、ポートP32およびP34)に電気接続し、校正プロセスを行うことによって、校正キットに関連する1つまたはそれ以上のグループの校正キット測定値を取得する。そして、信号変換器30を介して信号測定装置10をDUT50に電気接続し(
図9に示す)、DUT50に関連する1つまたはそれ以上のグループの被試験デバイス測定値を取得する。最後に、誤差モデルに基づいて、被試験デバイス測定値を1つまたはそれ以上のグループの被試験デバイスの特性値に校正する。
【0080】
図10は、本発明の1つの実施形態に係る校正基準面CP5およびCP6の概略図である。
図10を参照すると、校正基準面CP5は、DUT50のポートP32に接続した被試験ポートP52に位置し、校正基準面CP6は、DUT50のポートP34に接続した別の被試験ポートP54に位置する。信号測定装置10は、校正基準面CP5およびCP6に基づいて、校正プロセスを実行し、誤差モデルを得ることができる
【0081】
本実施形態の校正プロセスにおいて、測定ポートP11およびP13を介して、信号測定装置10をそれぞれ信号変換器30の一側(例えば、ポートP31およびP33)に電気接続して、1つまたはそれ以上の校正キットを信号変換器30の一側(例えば、被試験ポートP52およびP54に接続するために使用される接続線の一端)に電気接続し、校正プロセスを行うことによって、校正キットに関連する1つまたはそれ以上のグループの校正キット測定値を取得する。そして、信号変換器30を介して信号測定装置10をDUT50に電気接続し(
図10に示す)、DUT50に関連する1つまたはそれ以上のグループの被試験デバイス測定値を取得する。最後に、誤差モデルに基づいて、被試験デバイス測定値を1つまたはそれ以上のグループの被試験デバイス(DUT)の特性値に校正する。
【0082】
以下の段落において、
図9および
図10の構造に対し、測定境界条件を設定して式に置き換え、それに基づいてデータ結果を比較する。
【0083】
図11は、
図9の検証結果であり、
図12は、
図9および
図3で測定したDUT50の測定結果であり、
図13は、
図11の部分的拡大図である。
図11~
図13を参照すると、図面において、太線(すなわち、元の校正)は、一般的に、超広帯域ベクトルネットワークアナライザ(VNA)測定の後にそのスペクトルを平行移動させるのに適した曲線であり、薄線(すなわち、提案される校正)は、本発明の実施形態によって提案されるシステムおよび方法の曲線である。図面に基づくと、本発明の実施形態によって提案される校正は、超広帯域ベクトルネットワークアナライザを使用して得られた結果とほぼ重複する。
【0084】
図14は、
図10の測定結果であり、
図15は、
図10の検証結果であり、
図16は、
図10および
図3で測定したDUT50の測定結果であり、
図17は、
図15の部分的拡大図である。
図14~
図17を参照すると、図面において、太線(すなわち、元の校正)は、一般的に、超広帯域ベクトルネットワークアナライザ(VNA)測定の後にそのスペクトルを平行移動させるのに適した曲線であり、薄線(すなわち、提案される校正)は、本発明の実施形態によって提案されるシステムおよび方法の曲線である。図面に基づくと、本発明の実施形態によって提案される校正は、超広帯域ベクトルネットワークアナライザを使用して得られた結果とほぼ重複する。
【0085】
図18は、本発明の1つの実施形態に係る広帯域特性の測定方法を示すフローチャートである。
図18を参照すると、
図1および
図2に示した信号変換器30を提供する(ステップS1810)。信号測定装置10を信号変換器30の一側(例えば、
図1のポートP11およびP13)に電気接続する(ステップS1820)。校正キットを信号変換器30の他側(例えば、
図1のポートP32およびP34)に電気接続し、校正プロセスを行うことによって、校正キットに関連する1つまたはそれ以上のグループの校正キット測定値を取得する(ステップS1830)。校正キット測定値に基づいて、誤差モデルを確立する(ステップS1840)。信号変換器30を介して信号測定装置10をDUT50に電気接続し、DUT50に関連する1つまたはそれ以上のグループの被試験デバイス測定値を取得する(ステップS1850)。誤差モデルに基づいて、被試験デバイス測定値を1つまたはそれ以上のグループの被試験デバイスの特性値に校正する(ステップS1860)。
【0086】
1つの実施形態において、校正基準面CP3は、ポートP31に配置され、校正基準面CP4は、ポートP33に配置され、校正基準面CP3およびCP4に基づいて、校正プロセスを実行する。
【0087】
1つの実施形態において、校正基準面CP5は、DUT50のポートP32の被試験ポートP52に配置され、校正基準面CP6は、DUT50のポートP34の別の被試験ポートP54に配置される。校正基準面CP5およびCP6に基づいて、校正プロセスを実行する。
【0088】
1つの実施形態において、ステップS1840は、理論モデルに基づいて、校正キット測定値を設定し、誤差モデルを確立する。つまり、校正プロセスにおけるSOLの3つのステップにおいて、S
21AおよびS
12Aは、0に設定され、開回路は、
に設定され、短絡回路は、
に設定される。
【0089】
別の実施形態において、ステップS1840は、校正キットのパラメータに基づいて、校正キット測定値のいくつかを設定し、誤差モデルを確立する。つまり、校正キットの信号漏洩またはカップリング効果、あるいは本実施形態の寄生効果、および実質的な開回路または短絡回路を達成できないことにより、いくつかの校正キットは、実際のSOLT測定値または非理想的な効果に対応する周波数のルックアップテーブル(look-up table, LUT)を提供することができる。本実施形態では、このルックアップテーブルが上述した実施形態の理想的な仮定に代わって校正を行う。
【0090】
上述したステップの詳しい説明については、
図1~
図10の説明を参照することができるため、ここでは繰り返し説明しない。
【0091】
1つの実施形態において、信号変換器30によって与えられた周波数基準が異なる時、校正によって得られるDUT50の特性は、ずれる可能性がある。そのため、コントローラまたは信号変換器30によって提供される入力インターフェースを介して、信号変換器30の周波数変換値を制御することができる。例えば、第1周波数領域から第2周波数領域に変換された周波数変換値に、あるいは第2周波数領域から第1周波数領域に変換された周波数変換値に制御する。この周波数変換値は、信号発生器CGによって出力された基準信号の周波数に関連する。そして、信号測定装置10を制御して周波数をスイープ(sweep)し、校正キットおよび周波数変換値に関連する複数グループの校正キット測定値を取得することができる。例えば、基準信号に対して異なる周波数(いくつかの主な安定した周波数であってもよく、あるいは他の要求に応じて変化してもよい)を順番に設定して、1つまたはそれ以上の校正キットに対応する校正キット測定値をそれぞれ取得する。上述したステップは、複数回行ってもよいが、本発明はこれに限定されない。
【0092】
以上のように、本発明の実施形態の広帯域測定システムおよび広帯域特性の測定方法は、周波数アップまたはダウンコンバートを行う信号変換器をシステムに導入する。信号変換器は、信号測定装置に接続されたデュアルポートを提供し、被試験デバイス(DUT)に接続された別のデュアルポートを提供する。パッシブミキサは、双方向に構成される。したがって、低周波数ネットワークアナライザは、高周波数測定を実施することができる。さらに、実施形態に基づき、当業者であれば、本発明によって開示された信号変換器(デュアルチャネル双方向パッシブアップダウン周波数コンバータ)がマルチチャネル双方向パッシブアップダウン周波数コンバータに促進可能であることを理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0093】
広帯域測定システムおよび広帯域特性の測定方法は、測定技術に応用することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 広帯域測定システム
10 信号測定装置
30 信号変換器
50 被試験デバイス
P11 第1測定ポート
P13 第2測定ポート
P31 第1ポート
P32 第2ポート
P33 第3ポート
P34 第4ポート
P52、P54 被試験ポート
CG 信号発生器
MIX1 第1パッシブミキサ
MIX2 第2パッシブミキサ
D1~D4、T1~T4 スイッチ