(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】半導体構造
(51)【国際特許分類】
H01L 21/20 20060101AFI20240820BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20240820BHJP
C30B 29/38 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
H01L21/20
H01L21/205
C30B29/38 D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022205790
(22)【出願日】2022-12-22
【審査請求日】2023-01-17
(32)【優先日】2022-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】515087558
【氏名又は名称】環球晶圓股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Global Wafers Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.8 Industrial East Road 2,Science Park,Hsinchu City, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】林 伯融
(72)【発明者】
【氏名】施 英汝
(72)【発明者】
【氏名】曹 正翰
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-134122(JP,A)
【文献】特開2010-182872(JP,A)
【文献】特開2015-201574(JP,A)
【文献】国際公開第2011/016219(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/156121(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/20
H01L 21/205
C30B 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設置された第1の窒化物層と、
前記第1の窒化物層の表面上に配置され、前記第1の窒化物層の非金属極性表面を
金属極性表面に変換する極性反転層と、
前記極性反転層上に設置される第2の窒化物層と、
前記第2の窒化物層上に設置される第3の窒化物層と、を含み、
前記基板、前記第1の窒化物層、前記極性反転層、及び前記第2の窒化物層は鉄元素を含
み、
前記第1の窒化物層は、鉄元素を含むアルミニウムシリコン窒化物を含み、前記第1の窒化物層中の鉄濃度は5E16#/cm
3
よりも大きい、半導体構造。
【請求項2】
前記第3の窒化物層は鉄元素を含む、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項3】
前記基板は、下部ベースと、前記下部ベースと前記第1の窒化物層との間の上部ベースとを含み、前記上部ベースの厚さは25μmから200μmである、請求項1に記載の半導体構造
。
【請求項4】
前記上部ベースの酸素濃度は、前記下部ベースの酸素濃度よりも低い、請求項3に記載の半導体構造。
【請求項5】
前記上部ベースの抵抗率は、前記下部ベースの抵抗率よりも高い、請求項3に記載の半導体構造。
【請求項6】
前記上部ベースの鉄濃度は、前記下部ベースの鉄濃度よりも高い、請求項3に記載の半導体構造。
【請求項7】
前記上部ベースにおいて、前記上部ベースと前記第1の窒化物層との間の界面から2μmの深さまでのアルミニウム濃度が1E17#/cm
3未満である、請求項3に記載の半導体構造。
【請求項8】
前記上部ベースにおいて、前記上部ベースと前記第1の窒化物層との間の界面から2μmの深さまでの鉄濃度が1E14#/cm
3よりも大きい、請求項3に記載の半導体構造。
【請求項9】
前記極性反転層が鉄元素
を含み、前記極性反転層の鉄濃度が5E17 #/cm
3よりも大きい、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項10】
前記第2の窒化物層が鉄元素を含む窒化アルミニウムを含み、前記第2の窒化物層中の鉄濃度が5E17 #/cm
3よりも大きい、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項11】
前記第2の窒化物層は、
両者の成長温度の温度差が50℃よりも大きい低温窒化アルミニウム層及び高温窒化アルミニウム層を含み、前記高温窒化アルミニウム層は前記低温窒化アルミニウム層上に配置される、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項12】
前記低温窒化アルミニウム層は鉄元素を含み、前記高温窒化アルミニウム層は鉄元素を含まない、請求項
11に記載の半導体構造。
【請求項13】
前記基板表面内のキャリア濃度が1E15 #/cm
3以下である、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項14】
基板と、
前記基板上に配置された第1の窒化物層であって、前記基板は、下部ベースと、前記下部ベースと前記第1の窒化物層との間の上部ベースとを含み、前記上部ベースにおいて、前記上部ベースと前記第1の窒化物層との間の界面から2μmの深さまでのアルミニウム濃度が1E17 #/cm
3未満であり、前記上部ベースと前記第1の窒化物層との間の界面から2μmの深さまでの鉄濃度が1E14 #/cm
3より大きい第1の窒化物層と、
前記第1の窒化物層の表面上に配置され、前記第1の窒化物層の非金属極性表面を
金属極性表面に変換する
極性反転層と、
前記
極性反転層上に配置される第2の窒化物層と、
前記第2の窒化物層上に配置される第3の窒化物層と、を含み、
前記基板、前記第1の窒化物層、前記
極性反転層、及び前記第2の窒化物層は鉄元素を含む、半導体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体構造に関し、特に鉄元素を含む半導体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)素子は、高周波と高出力という利点を有する。
【0003】
高周波パワー素子の用途において、ガン・オン・シリコン(GaN-on-Si)に用いられるシリコン基板の抵抗率は比較的高いため、寄生チャネル(parasitic channel)の発生により、シリコン基板内の素子の高周波特性の挿入損失(Insertion Loss)が発生しやすくなる。挿入損失を抑制するには、通常、シリコン窒化膜や深準位ドーパント(deep-level dopant)を用いて挿入損失を抑制する。窒化シリコン層が存在すると、GANエピタキシャル層を平坦に成長させることができないという問題が生じやすい。さらに、過度の深準位ドーパントは、GANエピタキシャルの表面を粗くし、それによって GANのエピタキシャル品質を損なわせる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、寄生チャネルの発生を抑制することができる半導体構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基板と、第1の窒化物層と、極性反転層と、第2の窒化物層と、第3の窒化物層と、を含む半導体構造を提供する。第1の窒化物層は基板上に配置される。極性反転層は、第1の窒化物層の表面上に配置され、第1の窒化物層の非金属極性表面を極性反転層の金属極性表面に変換する。第2の窒化物層は、極性反転層上に配置される。第3の窒化物層は、第2の窒化物層上に配置される。基板、第1の窒化物層、極性反転層、第2の窒化物層は、鉄元素を含む。
【0006】
本発明の一実施形態において、第3の窒化物層は鉄元素を含む。
【0007】
本発明の一実施形態において、基板は、下部ベースと、下部ベースと第1の窒化物層との間の上部ベースを含む。上部ベースの厚さは、25μm~200μmである。
【0008】
本発明の一実施形態において、上部ベースの酸素濃度は、下部ベースの酸素濃度より低い。
【0009】
本発明の一実施形態において、上部ベースの抵抗率は、下部ベースの抵抗率よりも高い。
【0010】
本発明の一実施形態において、上部ベースの鉄濃度は、下底の下部ベースよりも高い。
【0011】
本発明の一実施形態において、上部ベースにおいて、上部ベースと第1の窒化物層との間の界面から2μmの深さまでのアルミニウム濃度は、1E17 #/cm3未満である。
【0012】
本発明の一実施形態において、上部ベースにおいて、上部ベースと第1の窒化物層との間の界面から2μmの深さまでの鉄濃度は、1E14 #/cm3よりも大きい。
【0013】
本発明の一実施形態において、第1の窒化物層は鉄元素を含むアルミニウムシリコン窒化物を含み、第1の窒化物層中の鉄濃度は、5E16 #/cm3よりも大きい。
【0014】
本発明の一実施形態において、極性反転層は鉄元素を含む金属層を含み、極性反転層の鉄濃度は5E17 #/cm3よりも大きい。
【0015】
本発明の一実施形態において、第2の窒化物層は鉄元素を含む窒化アルミニウムを含み、第2の窒化物層中の鉄濃度は、5E17 #/cm3よりも大きい。
【0016】
本発明の一実施形態において、第2の窒化物層は、低温窒素窒化アルミニウム層と、低温窒素窒化アルミニウム層上に配置される高温窒素窒化アルミニウム層とを含み、高温窒化アルミニウム層の成長温度と、低温窒化アルミニウム層の成長温度との温度差は、約50℃を超える。
【0017】
本発明の一実施形態において、基板表面内のキャリア濃度は、1E15 #/cm3以下である。
【0018】
本発明は、基板と、第1の窒化物層と、金属層と、第2の窒化物層と、第3の窒化物層と、を含む半導体構造を提供する。第1の窒化物層は、基板上に配置される。基板は、下部ベースと、下部ベースと第1の窒化物層との間の上部ベースとを含む。上部ベースにおいて、上部ベースと第1の窒化物層との間の界面から2μmの深さまでのアルミニウム濃度は、1E17 #/cm3未満であり、上部ベースと第1の窒化物層との間の界面から2μmの深さまでの鉄濃度は、1E14#/cm3より大きい。金属層は、第1の窒化物層の表面上に配置され、第1の窒化物層の非金属極性表面を金属層の金属極性表面に変換する。第2の窒化物層は、金属層上に配置される。第3の窒化物層は第2の窒化物層上に配置される。基板、第1の窒化物層、金属層及び第2の窒化物層は、鉄元素を含む。
【発明の効果】
【0019】
以上により、本発明の半導体構造における基板と、第1の窒化物層と、極性反転層と、第2の窒化物層は、鉄元素を含む。したがって、鉄元素は、構造において深準位ドーパントを生成し、寄生チャネルの生成を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態による半導体構造の断面概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態による半導体構造の断面概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態による半導体構造の断面概略図である。
【
図4】異なる構造による基板キャリア濃度と深さのグラフである。
【
図5】本発明の比較例による半導体構造の断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の一実施形態による半導体構造の断面概略図である。
【0022】
図1を参照されたい。本実施形態の半導体構造は、基板100と、第1の窒化物層102と、極性反転層104と、第2の窒化物層106と、第3の窒化物層108と、を含む。
【0023】
前記基板100は、例えばシリコン基板である。本実施形態において、基板100は、下部ベースS1と、下部ベースS1と第1の窒化物層102との間の上部ベースS2を含む。上部ベースS2の厚さは、25μm~200μmであり、好ましくは25μm~100μmであり、より好ましくは45μm~55μmである。本実施形態において、下部ベースSS1と上部ベースS2は異なる特性を有する。例えば、下部ベースS1の曲げ強度は上部ベースS2の曲げ強度より高く、上部ベースS2の酸素濃度は下部ベースS1の酸素濃度よりも低く、上部ベースS2の抵抗率は下部ベースS1の抵抗率よりも高い。いくつかの実施形態において、下部ベースS1の曲げ強度は20Nから200Nであり、それにより製造工程中に前記基板100が変形するのを防止する。いくつかの実施形態において、前記上部ベースS2の酸素濃度は5ppma未満であり、前記上部ベースS2の抵抗率は1,000オーム・cmよりも大きい。
【0024】
いくつかの実施形態において、上部ベースS2と下部ベースS1は、それぞれ別の工程で形成され、その後、上部ベースS2と下部ベースS1は接着またはプレスされる。いくつかの実施形態において、上部ベースS2の形成方法としては、例えば、横磁場印加チョクラルスキー(Magnetic field applied Czochralski,MCZ)法、フローティングゾーン(Floating Zone,FZ)法等が挙げられ、下部ベースS1の形成方法としては、例えば、チョクラルスキー(Czochralski,CZ)法またはその他の方法が挙げられる。特性の異なる下部ベースS1と上部ベースS2を組み合わせることにより、半導体構造の強度とその後の薄膜プロセスの歩留まりを維持することを前提として、半導体構造の製造コストを削減することができる。
【0025】
その他の実施形態において、まず、下部ベースS1を形成し、次いで薄膜蒸着プロセスによって下部ベースS1上に上部ベースS2を形成する。例えば、上部ベースS2は、化学気相蒸着法によって下部ベースS1上に形成される。
【0026】
本実施形態において、基板100は、意図しない方法により鉄元素を含む。いくつかの実施形態において、鉄元素は上部ベースS2に存在し、下部ベースS1に選択的に存在する。上部ベースS2の鉄濃度は、下部ベースS1の鉄濃度より高く、下部ベースS1は選択的に鉄元素を含むか含まない。いくつかの実施形態において、上部ベースS2において、上部ベースS2と第1の窒化物層102との間の界面から2μmの深さまでの鉄濃度は、1E14#/cm3より大きく、例えば、1E14#/cm3超1E19#/cm3未満、1E14#/cm3超1E18#/cm3未満、1E14#/cm3超1E17#/cm3未満である。上部ベースS2と第1の窒化物層102との間の界面から2μmの深さまでの鉄濃度が1E14#/cm3未満である場合、基板100中の鉄元素は寄生チャネルを抑制する能力を十分に有していない。上部ベースS2と前記第1の窒化物層102との間の界面から2μmの深さまでの鉄濃度が1E19#/cm3を超えると、GaNエピタキシャル表面が粗くなり、その後のエピタキシャル品質が損なわれる。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記基板100は、意図しない方法によりアルミニウム元素を含む。いくつかの実施形態において、上部ベースS2において、上部ベースS2と第1の窒化物層102との間の界面から2μmの深さまでのアルミニウム濃度は、1E17#/cm3未満であり、例えば、1E17#/cm3未満1E13#/cm3超、または、1E16#/cm3未満1E13#/cm3超である。上部ベースS2と第1の窒化物層102との間の界面から2μmの深さまでのアルミニウム濃度が1E17#/cm3よりも大きい場合、寄生チャネルが形成されるので、基板100内のアルミニウム濃度が小さいほど、より好ましい。いくつかの実施形態において、基板100の表面内のキャリア濃度は1E15#/cm3以下である。
【0028】
第1の窒化物層102は、基板100上に設置される。例えば、第1の窒化物層102は、基板100上に直接形成される。前記第1の窒化物層102の厚さは、0.1nmから5nmの間であり、好ましくは0.1nmから3nmの間である。
【0029】
本実施形態において、第1の窒化物層102は鉄元素を含む。例えば、第1の窒化物層102は、鉄元素を含むアルミニウムシリコン窒化物を含む。第1の窒化物層の鉄濃度は、5E16#/cm3よりも大きく、例えば、5E16#/cm3超1E19#/cm3未満、5E16#/cm3超1E18#/cm3未満、または5E16#/cm3超1E17#/cm3未満である。いくつかの実施形態において、第1の窒化物層102を形成する方法は、基板100上に窒化ケイ素を生成し、次に、極性反転層104及び第2の窒化物層106中のアルミニウム元素および鉄元素を窒化ケイ素中に拡散させて、鉄元素を含むアルミニウムケイ素窒化物、すなわち第1の窒化物層102を形成することを含む。
【0030】
図1を参照されたい。極性反転層104は、第1の窒化物層102の表面上に設置される。例えば、極性反転層104は、第1の窒化物層102の表面上に直接形成され、第1の窒化物層102の非金属極性表面を極性反転層104の金属極性表面に変換する。いくつかの実施形態において、極性反転層104の厚さは、約1nm未満であり、好ましくは、0.7nm、0.6nm、0.5nm、0.4nmなど、0.8nm未満である。いくつかの実施形態において、極性反転層104中の金属元素が第1の窒化物層102に拡散し、1の窒化物層102の非金属極性表面が金属極性表面に変換され、これにより、その後に成長する窒化物層の表面平坦性が向上される。
【0031】
いくつかの実施形態において、極性反転層104は金属層である。例えば、極性反転層104を形成する方法は、第1の窒化物層102の表面に金属材料を直接蒸着(deposite)することを含む。いくつかの実施形態において、極性反転層104は、鉄元素を含む金属層を含む。例えば、極性反転層104は、鉄元素、アルミニウム、インジウム、及びガリウムなどの他の金属元素を含む。いくつかの実施形態において、極性反転層104内の鉄濃度は、5E17 #/cm3よりも大きく、例えば、5E17 #/cm3超1E19 #/cm3未満である。本実施形態において、極性反転層104中の鉄元素は、極性反転層104の蒸着中または後続する熱処理工程中に基板100などの他のフィルム層に拡散し、深準位ドーパントを生成し、寄生チャネルの生成を抑制する。
【0032】
いくつかの実施形態において、極性反転層104中の鉄元素は、第1の窒化物層102及び基板100に拡散する。言い換えれば、極性反転層104を蒸着する前に、第1の窒化物層102及び基板100は鉄元素を含まないが、本発明はこれに限定されない。その他の実施形態において、極性反転層104を形成する前に、第1の窒化物層102及び基板100は鉄元素を含む。例えば、鉄元素を含む第1の窒化物層102は、基板100上に直接蒸着される。
【0033】
引き続き、
図1を参照されたい。第2の窒化物層106は極性反転層104上に配置され、第3の窒化物層108は第2の窒化物層106上に配置される。一実施形態では、第2の窒化物層106は窒化アルミニウムの単層または多層であってもよい。一実施形態では、第2の窒化物層106の厚さは100nm未満であり、好ましくは50nm未満、例えば25nm未満である。
【0034】
本実施形態において、第2の窒化物層106は鉄元素を含む。例えば、第2の窒化物層106は鉄元素を含む窒化アルミニウムを含み、第2の窒化物層106中の鉄濃度は5E17#/cm3よりも大きく、例えば、5E17#/cm3超1E19#/cm3未満、8E17#/cm3超1E19#/cm3未満、1E18#/cm3超1E19#/cm3未満である。いくつかの実施形態において、第2の窒化物層106中の鉄元素は、極性反転層104に由来するが、本発明はこれに限定されない。その他の実施形態において、鉄元素を含む第2の窒化物層106は、極性反転層104上に直接蒸着される。
【0035】
第3の窒化物層108は多層構造を含み、第3の窒化物層108の厚さは、例えば、0.1μmから10μmの間であり、好ましくは1μmから8μmの間である。本実施形態において、第3の窒化物層108は、窒化アルミニウムガリウム、窒化アルミニウム、および窒化ガリウムのすべての組み合わせを含む。例えば、
図1の第3の窒化物層108は、窒化アルミニウムガリウム層114と窒化ガリウム層116との組み合わせであり、窒化アルミニウムガリウム層114のガリウム濃度は、第2の窒化物層106から窒化ガリウム層116まで段階的に増加するか、または連続的に増加することができる。しかしながら、本発明はこれに限定されない。その他の実施形態において、本発明の第3の窒化物層は、超格子構造、傾斜層構造、挿入層構造、または上記構造の組み合わせをさらに含むことができる。
【0036】
いくつかの実施形態において、第3の窒化物層108は鉄元素を選択的に含む。
【0037】
本実施形態において、基板100、第1の窒化物層102、極性反転層104、第2の窒化物層106、及び第3の窒化物層108は、連続または不連続な鉄元素分布を含む。具体的には、「連続的な鉄元素分布」は、フィルム層全体が同じ鉄元素濃度を有するドープ領域であること、またはフィルム層において異なる鉄元素濃度のドープ領域が接続され、ただし、異なる鉄元素濃度のドープ領域は、傾斜または非傾斜濃度の鉄元素ドープ領域であり得ることを意味し得る。加えて、「不連続な鉄元素分布」とは、フィルム層が鉄元素を含まない領域と鉄元素を含む領域を含むことを意味する。
【0038】
図2は、本発明の一実施形態による半導体構造の断面概略図である。留意すべき点として、
図2の実施形態では、
図1の実施形態の符号およびいくつかの内容を引き続き使用する。ここで、同一または類似の要素には同一または類似の符号を使用し、同一または類似の技術的内容についての説明は省略する。省略された部分の説明については、上記の実施形態を参照することができ、ここでは繰り返さない。
【0039】
図1と
図2の半導体構造の違いは、
図2の半導体構造において、第2の窒化物層106は二重層構造であり、第1の窒化アルミニウム層110及び第2の窒化アルミニウム層112を含むことである。
【0040】
図2を参照されたい。第1の窒化アルミニウム層110は、極性反転層104上に設置され、第2の窒化アルミニウム層112は、第1の窒化アルミニウム層110と第3の窒化層108との間に設置される。本実施形態において、挿入損失及び界面キャリア濃度を抑制する観点から、第1の窒化アルミニウム層110は低温窒化アルミニウム(LT AlN)層であることが好ましく、第2の窒化アルミニウム層112は高温窒化アルミニウム(HT AlN)層であることが好ましい。ここで、高温窒化アルミニウム層の成長温度と低温窒化アルミニウム層の成長温度との温度差は、50℃を超え、好ましくは100℃を超える。加えて、本実施形態において、低温窒化アルミニウム層を用いることにより、寄生チャネルの発生をさらに抑制することができる。
【0041】
本実施形態において、低温窒化アルミニウム層の厚さは、高温窒化アルミニウム層の厚さよりも小さいことが好ましく、低温窒化アルミニウム層の厚さは、例えば、1nmから50nmの間であり、好ましくは5nmから25nmの間である。そして、高温窒化アルミニウム層の厚さは、例えば、1nmから50nmの間であり、好ましくは10nmから35nmの間である。
【0042】
本実施形態において、第1の窒化アルミニウム層110及び第2の窒化アルミニウム層112は、連続的または不連続な鉄元素分布を含む。
【0043】
図3は、本発明の一実施形態による半導体構造の断面概略図である。留意すべき点として、
図3の実施形態では、
図2の実施形態の符号およびいくつかの内容を引き続き使用する。ここで、同一または類似の要素には同一または類似の符号を使用し、同一または類似の技術的内容についての説明は省略する。省略された部分の説明については、上記の実施形態を参照することができ、ここでは繰り返さない。
【0044】
図2と
図3の半導体構造の違いは、
図3の実施形態において、前記第2の窒化アルミニウム層112及び前記第3の窒化層108は、鉄元素を含まないことである。
【0045】
図3を参照されたい。いくつかの実施形態において、第1の窒化アルミニウム層110は低温窒化アルミニウム層であり、第2の窒化アルミニウム層112は高温窒化アルミニウム層であり、低温窒化アルミニウム層は鉄元素を含み、高温窒化アルミニウム層は鉄元素を含まないが、本発明はこれに限定されない。その他の実施形態において、第1の窒化アルミニウム層110及び第2の窒化アルミニウム層112は同じプロセス温度で形成され(例えば、両方とも高温窒化アルミニウム層である)、第1の窒化アルミニウム層110は鉄元素を含み、第2の窒化アルミニウム層112は鉄元素を含まない。
【0046】
図4は、異なる構造による基板キャリア濃度と深さのグラフである。
図4において、縦軸は基板キャリア濃度を表し、横軸は深さを表す。
【0047】
図4は、3つの異なる半導体構造の基板キャリア濃度及び深さの曲線を含む。
図4において、構造1および構造2は、構造3の実施形態によってもたらされる効果を比較するために使用されるが、これは、本発明が構造3の実施形態に限定されることを意味しない。
【0048】
図2に示されるように、構造1は、上から下に、基板100(シリコン基板)、第1の窒化層102(アルミニウムシリコン窒化物)、極性反転層104、第2の窒化物層106(低温窒化アルミニウム及び高温窒化アルミニウムを含む)、及び第3の窒化物層108を含む。ただし、
図2に関する前の説明と異なる点は、構造1の基板100、第1の窒化層102、極性反転層104、第2の窒化層106、及び第3の窒化層108が鉄元素を含まないことである。
図4より分かるように、構造1において、基板表面(深さ0)のキャリア濃度は2.5E14#/cm
3である。
【0049】
図5に示されるように、構造2は、上から下に、基板100(シリコン基板)、第2の窒化物層106(低温窒化アルミニウム及び高温窒化アルミニウムを含む)、及び第3の窒化物層108を含む。構造2と構造1との差は、構造2は、第1の窒化層102及び極性反転層104を有さず、且つ構造2のシリコン基板及び第2の窒化層106は鉄元素を含むことにある。
図4より分かるように、構造2において、基板表面(深さ0)のキャリア濃度は、4.4E14#/cm
3である。
【0050】
なお、
図2に示されるように、構造3は、上から下に、基板100(シリコン基板)、第1の窒化物層102(アルミニウムシリコン窒化物)、極性反転層104、第2の窒化物層106(低温窒化アルミニウム及び高温窒化アルミニウムを含む)、及び第3の窒化物層108を含む。構造3と構造1との差は、構造3の基板100、第1の窒化物層102、極性反転層104、及び第2の窒化物層106は、鉄元素を含むことである。
【0051】
図4より分かるように、構造3においては、シリコン基板へのアルミニウム元素の拡散をブロックするために窒化アルミニウムを使用することに加えて、鉄元素によって形成される深準位ドーパントを使用して、キャリア濃度を低減することもできる。したがって、構造3のシリコン基板表面のキャリア濃度は、構造2及び構造1よりも低く、寄生チャネルの発生を抑制することができる。構造3では、基板表面内のキャリア濃度は1E15#/cm
3以下である。具体的には、構造3において、基板表面(深さ0)のキャリア濃度は7.6E13#/cm
3であり、構造1及び構造2の基板表面のキャリア濃度よりも低くなっている。
【0052】
以上をまとめると、本発明の半導体構造において、基板、第1の窒化物層、極性反転層、及び第2の窒化物層は、連続的または不連続な鉄元素分布を含むので、鉄元素により寄生チャネルの発生を抑制することができる。また、低温窒素アルミニウム窒化物層と高温窒素アルミニウム窒化物層とからなる第2の窒化物層によって、界面キャリア濃度を抑制し、挿入損失を低減することができる。 本発明の半導体構造は、半導体エピタキシーの分野で使用することができ、本発明によって製造されるガン・オン・シリコンは、無線周波数(RF)素子に応用することができる。
【0053】
本発明を上記の実施形態により開示したが、実施形態は本発明を限定することを意図したものではない。当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、いくつかの変更および修正を行うことができる。したがって、開示の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義されるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の半導体構造は、高周波パワー素子に応用することができる。
【符号の説明】
【0055】
100: 基板
102:第1の窒化層
104:極性反転層
106:第2の窒化層
108:第3の窒化物層
110:第1の窒化アルミニウム層
112:第2の窒化アルミニウム層
114:窒化アルミニウムガリウム層
116:窒化ガリウム層
S1:下部ベース
S2:上部ベース