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特許7541081タイヤを装着したリムに対するタイヤのずれを測定するための装置及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】タイヤを装着したリムに対するタイヤのずれを測定するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/00 20060101AFI20240820BHJP
   B60C 23/08 20060101ALI20240820BHJP
   G01M 17/02 20060101ALI20240820BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G01B21/00 G
B60C23/08
G01M17/02
B60C19/00 H
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022520056
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-12
(86)【国際出願番号】 IT2020050238
(87)【国際公開番号】W WO2021064760
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】102019000017498
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】520363410
【氏名又は名称】トレルボルグ ホイール システムズ イタリア ソチエタ ペル アチオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【弁理士】
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【弁理士】
【氏名又は名称】比企野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100161997
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 大一郎
(72)【発明者】
【氏名】マンチネッリ ピエロ
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンジェリスティ アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ピエラリーチェ エンリコ
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-073048(JP,A)
【文献】特開2018-176817(JP,A)
【文献】特開2018-004418(JP,A)
【文献】特開2005-193711(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0088005(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/00
B60C 23/00
G01M 17/00
B60C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ(10)と前記タイヤ(10)を装着したリム(20)との間のずれを測定するためのシステムであって、
-使用時に前記タイヤ(10)の内面(10A)に接触して位置決めされる第1の電子装置(1)と、
-使用時に前記リム(20)に接触して位置決めされる第2の電子装置(2)と、
-これらの電子装置(1,2)の外部にある処理装置(3)と、を備えたシステムにおいて、
第1の参照系x,y,zは、軸xが、前記タイヤ(10)における前記第1の電子装置(1)の取付点である第1の点の回転に接し、軸zが、軸xに直交するように、前記第1の電子装置(1)に関連付けられ、
第2の参照系x,y,zは、軸xが、前記リム(20)における前記第2の電子装置(2)の取付点である第2の点の回転に接し、軸zが、軸xに直交するように、前記第2の電子装置(2)に関連付けられ、
前記第1の電子装置(1)は、少なくとも、前記処理装置(3)にデータを送信するように構成されるとともに、前記第1の電子装置(1)は、その内部に、
-第1のジャイロスコープ(121)と第1の加速度計(122)とを備えた第1の慣性測定ユニット(12)であって、
○前記第1のジャイロスコープ(121)を通じて、少なくとも1つのy軸周りの角速度(ω1y)の値を取得し、且つ、前記第1の加速度計(122)を通じて、少なくとも1つのx軸に沿った直線加速度(A1x)の値を取得するように構成された、第1の慣性測定ユニット(12)と、
-データを記憶するための第1の記憶手段(15)と、
-前記第1の慣性測定ユニット(12)と前記第1の記憶手段(15)とに接続された第1の論理制御ユニット(11)であって、
○前記第1の慣性測定ユニット(12)から、前記少なくとも1つのy軸周りの角速度(ω1y)の値と前記少なくとも1つのx軸に沿った直線加速度(A1x)の値とを受信し、
○第1のデジタルフィルタを用いて、前記少なくとも1つのy軸周りの角速度(ω1y)の値をフィルタリングして、少なくとも1つのフィルタリング後のy軸周りの角速度(ω1y’)を求め、且つ、前記少なくとも1つのx軸に沿った直線加速度(A1x)の値をフィルタリングして、少なくとも1つのフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度(A1x’)を求め、
○前記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度(A1x’)の値が、所定値に等しくなる各時刻を特定し、
○前記第1の記憶手段(15)に、
■前記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度(A1x’)の値が、前記所定値に等しくなる各時刻と、
■前記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度(A1x’)の値が、前記所定値に等しくなる各時刻における、前記フィルタリング後のy軸周りの角速度(ω1y’)の値と、を記憶し、
○前記処理装置(3)に対して、
■前記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度(A1x’)の値が、前記所定値に等しくなる時刻と、
■それらの時刻における前記フィルタリング後のy軸周りの角速度(ω1y’)の値と、を送信するように構成された、第1の論理制御ユニット(11)と、を備え、
前記第2の電子装置(2)は、少なくとも、前記処理装置(3)にデータを送信するように構成されるとともに、前記第2の電子装置(2)は、その内部に、
-第2のジャイロスコープ(221)と第2の加速度計(222)とを備えた第2の慣性測定ユニット(22)であって、
○前記第2のジャイロスコープ(221)を通じて、少なくとも1つのy軸周りの角速度(ω2y)の値を取得し、且つ、前記第2の加速度計(222)を通じて、少なくとも1つのx軸に沿った直線加速度(A2x)の値を取得するように構成された、第2の慣性測定ユニット(22)と、
-データを記憶するための第2の記憶手段(25)と、
-前記第2の慣性測定ユニット(22)と前記第2の記憶手段(25)とに接続された第2の論理制御ユニット(21)であって、
○前記第2の電子装置(2)の第2の慣性測定ユニット(22)から、前記少なくとも1つのy軸周りの角速度(ω2y)の値と前記少なくとも1つのx軸に沿った直線加速度(A2x)の値とを受信し、
○第2のデジタルフィルタを用いて、前記少なくとも1つのy軸周りの角速度(ω2y)の値をフィルタリングして、少なくとも1つのフィルタリング後のy軸周りの角速度(ω2y’)を求め、且つ、前記少なくとも1つのx軸に沿った直線加速度(A2x)の値をフィルタリングして、少なくとも1つのフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度(A2x’)を求め、
○前記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度(A2x’)の値が、前記所定値に等しくなる各別時刻を特定し、
○前記第2の記憶手段(25)に、
■前記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度(A2x’)の値が、前記所定値に等しくなる各別時刻と、
■前記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度(A2x’)の値が、前記所定値に等しくなる各別時刻における、前記フィルタリング後のy軸周りの角速度(ω2y’)の値と、を記憶し、
○前記処理装置(3)に対して、
■前記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度(A2x’)の値が、前記所定値に等しくなる別時刻と、
■それらの別時刻における前記フィルタリング後のy軸周りの角速度(ω2y’)の値と、を送信するように構成された、第2の論理制御ユニット(21)と、を備え、
前記処理装置(3)は、少なくとも、前記第1の電子装置(1)からのデータと前記第2の電子装置(2)からのデータとを受信するように構成されるとともに、前記処理装置(3)は、その内部に、
-基準角度αrefの値を記憶した第3の記憶手段(35)と、
-前記第3の記憶手段(35)に接続された第3の論理制御ユニット(31)であって、
○前記第1の電子装置(1)に関連する前記フィルタリング後の少なくとも1つのy軸周りの角速度(ω1y’)の値と、前記第1の電子装置(1)に関連する前記少なくとも1つのフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度(A1x’)の値が前記所定値に等しくなる各時刻とを受信し、
○前記第2の電子装置(2)に関連する前記少なくとも1つのフィルタリング後のy軸周りの角速度(ω2y’)の値と、前記第2の電子装置(2)に関連する前記少なくとも1つのフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度(A2x’)の値が前記所定値に等しくなる別時刻とを受信し、
○前記タイヤ(10)の中心と前記第1の点とを通る軸線である第1の軸線(A1)と前記タイヤ(10)の中心と前記第2の点とを通る軸線である第2の軸線(A2)との間の角度(α)を下記の式に従って算出し、
【数13】
(式中、
Nは、時間間隔Δtの数であり、
【数14】
は、それぞれの時間間隔Δt内の、それぞれのフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度(A1x’)が所定値に等しくなる時刻における、フィルタリング後のy軸周りの角速度(ω1y’)の値と、前記時間間隔Δt内の、それぞれのフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度(A2x’)が前記所定値に等しくなる別時刻における、フィルタリング後のy軸周りの角速度(ω2y’)の値とによって決まる、フィルタリング後のy軸周りの角速度の平均値であり、
Δtは、フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度(A1x’)がそれぞれの所定値に等しくなる時刻t1,1,t1,2,・・・,t1,Nと、フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度(A2x’)が前記所定値に等しくなる別時刻t2,1,t2,2,・・・,t2,Nとによって決まる、それぞれの時間間隔Δt,Δt,・・・,Δtであって、各時刻t1,1,t1,2,・・・,t1,Nは、前記タイヤ(10)の一部が地面に接触してから地面から離れる時間間隔Δtの外にある。)、
○前記算出された角度(α)の値を前記第3の記憶手段(35)に記憶された基準角度αrefの値と比較し、
○前記角度(α)の値が前記基準角度αrefの値と異なっていれば、前記リム(20)に対する前記タイヤ(10)のずれを測定するために、前記角度(α)の値と前記角度αrefの値との差を算出するように構成された、第3の論理制御ユニット(31)と、を備える、システム。
【請求項2】
前記処理装置(3)の第3の論理制御ユニット(31)は、前記算出された角度(α)が、所定の回数連続して、前記基準角度αrefの値を中心とする所定の値の範囲から外れる値を有している場合に、アラーム信号を生成するように構成されたことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第3の論理制御ユニット(31)は、
-2つ以上の算出された角度の値が、前記所定の値の範囲から外れているかどうかを確認し、
-前記2つ以上の算出された角度の値の平均値を算出し、
-前記値が、所定の回数連続して、最後に算出された角度値を中心とする所定の値の範囲に入っている場合に、前記平均値に基づいて前記基準角度αrefの値を修正するように構成されたことを特徴とする、請求項に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の電子装置(1)の第1の論理制御ユニット(11)は、前記タイヤ(10)が、所定の第1の回数回転したときに、前記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度(A1x’)の値が前記所定値に等しくなる前記時刻と、それらの時刻における、前記少なくとも1つのフィルタリング後のy軸周りの角速度(ω1y’)の値とを前記処理装置(3)に送信するように構成され、
前記第2の電子装置(2)の第2の論理制御ユニット(21)は、前記タイヤ(10)が、所定の第2の回数回転したときに、前記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度(A2x’)の値が前記所定値に等しくなる前記別時刻と、それらの時刻における、前記少なくとも1つのフィルタリング後のy軸周りの角速度(ω2y’)の値とを前記処理装置(3)に送信するように構成されたことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1のデジタルフィルタは、0.1Hzから1Hzの間の周波数を有する、第1のフィルタIIRであり、
前記第2のデジタルフィルタは、0.1Hzから1Hzの間の周波数を有する、第2のフィルタIIRであることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の電子装置(1)は、前記処理装置(3)から1つ以上の信号を受信するように構成されるとともに、前記第1の論理制御ユニット(11)に接続された第1のクロック源(16)を備えられ、
前記第2の電子装置(2)は、前記処理装置(3)から1つ以上の信号を受信するように構成されるとともに、前記第2の論理制御ユニット(21)に接続された第2のクロック源(26)を備えられ、
前記処理装置(3)は、前記電子装置(1,2)のそれぞれに1つ以上の信号を送信するように構成されるとともに、前記第3の論理御ユニット(31)に接続された第3のクロック源(36)を備えられ、
前記第3の論理御ユニット(31)は、
-前記第1のクロック源(16)と前記第2のクロック源(26)とを第3のクロック源(36)に同期させるために、前記第1の電子装置(1)と前記第2の電子装置(2)とに同期信号を送信するように構成されたことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記処理装置(3)の第3の論理制御ユニット(31)は、前記タイヤ(10)が、所定の回数回転したときに前記同期信号を送信するように構成されたことを特徴とする、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記処理装置(3)の第3の論理制御ユニット(31)は、
○前記第3のクロック源(36)によって設定された時間に基づいて、前記第1の電子装置(1)に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度(ω1y’)の値と前記第2の電子装置(2)に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度(ω2y’)の値とを前記第3の論理制御ユニット(31)が受信したそれぞれの受信時刻を記憶し、
○■前記受信時刻から、前記第1の電子装置(1)に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度(ω1y’)の値が取得されてから前記処理装置(3)に送信されるまでの時間を指す第1の時間間隔Δt1ATと、前記第1の電子装置(1)に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度(ω1y’)が前記処理装置(3)に到達するのに要する時間によって生じる第2の時間間隔Δt1Vとを減算して、前記第1の電子装置(1)が、前記第1の電子装置(1)に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度(ω1y’)の値を記憶した時刻を求め、且つ、
■前記受信時刻から、前記第2の電子装置(2)に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度(ω2y’)の値が取得されてから前記処理装置(3)に送信されるまでの時間を指すさらなる第1の時間間隔Δt2ATと、前記第2の電子装置(2)に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度(ω2y’)が前記処理装置(3)に到達するのに要する時間によって生じるさらなる第2の時間間隔Δt2Vとを減算して、前記第2の電子装置(2)が、前記第2の電子装置(2)に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度(ω2y’)の値を記憶した時刻を求め、
前記第1の電子装置(1)が前記第1の電子装置(1)に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度(ω 1y ’)の値を記憶した時刻と、前記第2の電子装置(2)に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度(ω 2y ’)の値を記憶した時刻の2つの時刻間の時間間隔を算出するように構成されたことを特徴とする、請求項に記載のシステム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のシステムを用いて、タイヤ(10)と前記タイヤ(10)を装着したリム(20)との間のずれを測定するための方法であって、
A)前記第1の電子装置(1)に関連する、少なくとも1つのy軸周りの角速度(ω1y)の値と少なくとも1つのx軸に沿った直線加速度(A1x)の値とを取得することと、
B)第1のデジタルフィルタを用いて、前記少なくとも1つのy軸周りの角速度(ω1y)の値をフィルタリングして少なくとも1つのフィルタリング後のy軸周りの角速度(ω1y’)を求め、且つ、前記少なくとも1つのx軸に沿った直線加速度(A1x)の値をフィルタリングして少なくとも1つのフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度(A1x’)を求めることと、
C)前記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度(A1x’)の値が、所定値に等しくなる各時刻を特定することと、
D)■前記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度(A1x’)の値が、前記所定値に等しくなる各時刻と、
■前記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度(A1x’)の値が、前記所定値に等しくなる各時刻における、前記フィルタリング後のy軸周りの角速度(ω1y’)の値と、を記憶することと、
E)前記第2の電子装置(2)に関連する、前記少なくとも1つのy軸周りの角速度(ω2y)の値と前記少なくとも1つのx軸に沿った直線加速度(A2x)の値とを取得することと、
F)第2のデジタルフィルタを用いて、前記少なくとも1つのy軸周りの角速度(ω2y)の値をフィルタリングして、少なくとも1つのフィルタリング後のy軸周りの角速度(ω2y’)を求め、且つ、前記少なくとも1つのx軸に沿った直線加速度(A2x)の値をフィルタリングして、少なくとも1つのフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度(A2x’)を求めることと、
G)前記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度(A2x’)の値が前記所定値に等しくなる各別時刻を特定することと、
H)■前記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度(A2x’)の値が前記所定値に等しくなる各別時刻と、
■前記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度(A2x’)の値が前記所定値に等しくなる各別時刻における、前記フィルタリング後のy軸周りの角速度(ω2y’)の値と、を記憶することと、
I)角度(α)を下記の式に従って算出することと、
【数15】
(式中、
Nは、時間間隔Δtの数であり、
【数16】
は、それぞれの時間間隔Δt内の、それぞれのフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度(A1x’)が所定値に等しくなる時刻における、フィルタリング後のy軸周りの角速度(ω1y’)の値と、前記時間間隔Δt内の、それぞれのフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度(A2x’)が前記所定値に等しくなる別時刻における、フィルタリング後のy軸周りの角速度(ω2y’)の値とによって決まる、フィルタリング後のy軸周りの角速度の平均値であり、
Δtは、前記第1の電子装置(1)に関連するフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度(A1x’)が、それぞれの所定値に等しくなる時刻t1,1,t2,1,・・・,t1,Nと、前記第2の電子装置(2)に関連するフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度(A2x’)が、前記所定値に等しくなる別時刻t2,1,t2,2,・・・,t2,Nとによって決まる、それぞれの時間間隔Δt,Δt,・・・,Δtであって、各時刻t1,1,t2,1,・・・,t1,Nは、前記タイヤ(10)の一部が地面に接触してから地面から離れる時間間隔Δtの外にある。)
J)前記算出された角度(α)の値を基準角度αrefの値と比較することと、
K)前記角度(α)の値が前記基準角度αrefの値と異なっていれば、前記リム(20)に対する前記タイヤ(10)のずれを測定するために、前記角度(α)の値と前記角度αrefの値との差を算出することと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤを装着したリムに対するタイヤのずれを測定するためのシステムに関する。
【0002】
特に、本システムは、使用時にタイヤの内面に取り付けられる第1の電子装置と、使用時にリム、例えばリム溝に取り付けられる第2の電子装置と、処理装置(これらの電子装置の外部にある)とを備え、タイヤの使用時に、リムに対するタイヤの経時的なずれを、第1の軸線(タイヤの中心とタイヤにおける第1の電子装置の取付点とを通る)と第2の軸線(タイヤの中心とリムにおける第2の電子装置の取付点とを通る)とがなす角度の基準角度に対する変化に基づいて、測定するように構成されたシステムである。
【0003】
したがって、ずれの測定は、動的な測定である。
【0004】
各電子装置は、少なくとも、データを取得し、取得したデータをフィルタリングして記憶し、上記処理装置に送信するように構成されており、上記処理装置は、少なくとも、上記各電子装置によって送信されたデータを取得し、取得したデータを処理してタイヤとリムとの間のずれを測定するように構成されている。
【0005】
「ずれ」とは、タイヤの中心とタイヤの内面における第1の電子装置の取付点に一致する第1の点とを通る第1の軸線とタイヤの中心とリムにおける第2の電子装置の取付点に一致する第2の点とを通る第2の軸線とがなす角度の、基準角度に対する変化をいう。
【0006】
本発明はまた、タイヤを装着したリムに対するタイヤのずれを測定する方法にも関する。
【背景技術】
【0007】
知られているように、自動車分野、特に、農業用車両分野では、1つ以上のタイヤが、それぞれのリム(各タイヤを装着)に対してずれると、タイヤに重大な損傷が引き起こされ、使用中にタイヤの完全性が損なわれる可能性がある。
【0008】
そのため、リムに対するタイヤのずれは、使用者の安全を脅かす危険要因である。
【0009】
農業用車両分野では、リムに対するタイヤのずれは、タイヤ及び/又はリムに不可逆的な損傷を引き起こさない範囲内で、ある限度までは許容され得る。
【0010】
したがって、タイヤ交換を必要とするようなタイヤの損傷を回避するために、リムに対するタイヤのずれを監視する必要がある。
【0011】
現在、ずれ検出装置を備えた、タイヤの動作を監視するための装置が知られている。
【0012】
この検出装置は、
○照明器と、
○測色センサと、
○多数のセクタからなる環状面であって、連続するセクタは異なる色を有し、各セクタは所定のずれ角度分解能に等しい所定の角に向かい合って対する長さを有している環状面と、を備えるものである。
【0013】
測色センサは、空洞内に配置され、照明器によって発せられて環状面のセクタのうちの1つから反射された光の色を検出できる。
【0014】
測色センサと照明器とがリムと一体で、環状面がタイヤと一体であってもよく、その逆であってもよい。
【0015】
いずれにしても、リムに対するタイヤのずれがあれば、測色センサが、1つのセクタから反射された光の色を検出し、ずれの度合いを測定することになる。
【0016】
しかしながら、上記の測定装置には、いくつかの欠点がある。
【0017】
上記の検出装置の第1の欠点は、上記空洞に侵入し得る汚れ、塵埃、又は水の存在の残留物が、測色センサの検出に影響を与え得ることによるものである。
【0018】
汚れ、塵埃、又は水滴の残留物の存在と関係がある第2の欠点は、着色されたセクタの特性が影響を受け得ることによるものである。
【0019】
さらなる欠点は、タイヤの内面を照明するための照明器と、この照明器に電力を供給するための給電手段とを設ける必要があり、そのために検出装置の構造が複雑な構造になることによるものである。
この他の、タイヤを装着したリムに対するタイヤのずれを測定するためのシステムは、例えば、国際公開第2016/151544号、日本国特許公開第2007-278801号、及びフランス特許公開第3042281号に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目標は、上記の欠点を克服し、特に、タイヤビード(すなわち、リムとタイヤとの接触領域)に対応した、タイヤの早期摩耗を回避できるように、タイヤの使用時にタイヤを装着したリムに対するタイヤの経時的なずれを測定するためのシステム及び方法を提供することである。
【0021】
実際に、時間の経過に伴うリムに対するタイヤのずれは、タイヤビードの摩耗を引き起こし、それによってタイヤの損傷が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
よって、本発明の目的は、タイヤと当該タイヤを装着したリムとの間のずれを測定するためのシステムであって、
-使用時に上記タイヤの内面に接触して位置決めされる第1の電子装置と、
-使用時に上記リムに接触して位置決めされる第2の電子装置と、
-これらの電子装置の外部にある処理装置と、を備えたシステムにおいて、
第1の参照系x,y,zは、軸xが、上記タイヤにおける上記第1の電子装置の取付点である第1の点の回転に接し、軸zが、当該軸xに直交するように、上記第1の電子装置に関連付けられ、
第2の参照系x,y,zは、軸xが、上記リムにおける上記第2の電子装置の取付点である第2の点の回転に接し、軸zが、当該軸xに直交するように、上記第2の電子装置に関連付けられる。
上記第1の電子装置は、少なくとも、上記処理装置にデータを送信するように構成されるとともに、その内部に、
-第1のジャイロスコープと第1の加速度計とを備えた第1の慣性測定ユニットであって、
○上記第1のジャイロスコープを通じて、少なくとも1つのy軸周りの角速度の値を取得し、且つ、上記第1の加速度計を通じて、少なくとも1つのx軸に沿った直線加速度の値を取得するように構成された、第1の慣性測定ユニットと、
-データを記憶するための第1の記憶手段と、
-上記第1の慣性測定と上記第1の記憶手段とに接続された第1の論理制御ユニットであって、
○上記第1の慣性測定ユニットから、上記少なくとも1つのy軸周りの角速度の値と上記少なくとも1つのx軸に沿った直線加速度の値とを受信し、
○第1のデジタルフィルタを用いて、上記少なくとも1つのy軸周りの角速度の値をフィルタリングして、少なくとも1つのフィルタリング後のy軸周りの角速度を求め、且つ、上記少なくとも1つのx軸に沿った直線加速度の値をフィルタリングして、少なくとも1つのフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度を求め、
○上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度の値が、所定値に等しくなる各時刻を特定し、
○上記第1の記憶手段に、
■上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度の値が、上記所定値に等しくなる各時刻と、
■上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度の値が、上記所定値に等しくなる各時刻における、上記フィルタリング後のy軸周りの角速度の値と、を記憶し、
○上記処理装置に対して、
■上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度の値が、上記所定値に等しくなる時刻と、
■それらの時刻における、上記フィルタリング後のy軸周りの角速度の値と、を送信するように構成された、第1の論理制御ユニットと、を備える。
上記第2の電子装置は、少なくとも、上記処理ユニットにデータを送信するように構成されるとともに、その内部に、
-第2のジャイロスコープと第2の加速度計とを備えた第2の慣性測定ユニットであって、
○上記第2のジャイロスコープを通じて、少なくとも1つの軸周りの角速度の値を取得し、且つ、上記第2の加速度計を通じて、少なくとも1つのx軸に沿った直線加速度の値を取得するように構成された、第2の慣性測定ユニットと、
-データを記憶するための第2の記憶手段と、
-上記第2の慣性測定ユニットと上記第2の記憶手段とに接続された第2の論理制御ユニットであって、
○上記第2の電子装置の第2の慣性測定ユニットから、上記少なくとも1つのy軸周りの角速度の値と上記少なくとも1つのx軸に沿った直線加速度の値とを受信し、
○第2のデジタルフィルタを用いて、上記少なくとも1つのy軸周りの角速度の値をフィルタリングして、少なくとも1つのフィルタリング後のy軸周りの角速度を求め、且つ、上記少なくとも1つのx軸に沿った直線加速度の値をフィルタリングして、少なくとも1つのフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度を求め、
○上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度の値が上記所定値に等しくなる各別時刻を特定し、
○上記第2の記憶手段に、
■上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度の値が、上記所定値に等しくなる各別時刻と、
■上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度の値が、上記所定値に等しくなる各別時刻における、上記フィルタリング後のy軸周りの角速度の値と、を記憶し、
○上記処理装置に対して、
■上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度の値が、上記所定値に等しくなる別時刻と、
■それらの別時刻における、上記フィルタリング後のy軸周りの角速度の値と、を送信するように構成された、第2の論理制御ユニットと、を備える。
上記処理装置は、少なくとも、上記第1の電子装置と上記第2の電子装置とからデータを受信するように構成されるとともに、その内部に、
-基準角度αrefの値を記憶した第3の記憶手段と、
-上記第3の記憶手段に接続された第3の論理制御ユニットであって、
○上記第1の電子装置に関連する上記フィルタリング後の少なくとも1つのy軸周りの角速度の値と、上記第1の電子装置に関連する上記少なくとも1つのフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度の値が上記所定値に等しくなる各時刻と、を受信し、
○上記第2の電子装置に関連する上記少なくとも1つのフィルタリング後のy軸周りの角速度の値と、上記第2の電子装置に関連する上記少なくとも1つのフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度の値が上記所定値に等しくなる各別時刻と、を受信し、
○上記タイヤの中心と上記第1の点とを通る軸線である第1の軸線と、上記タイヤの中心と上記第2の点とを通る軸線である第2の軸線との間の角度を、下記の式に従って算出し、
【数1】
(式中、
Nは、時間間隔Δtの数であり、
【数2】
は、それぞれの時間間隔Δt内の、それぞれのフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度が所定値に等しくなる時刻における、フィルタリング後のy軸周りの角速度の値と、上記時間間隔Δt内の、それぞれのフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度が上記所定値に等しくなる別時刻における、フィルタリング後のy軸周りの角速度の値とによって決まる、フィルタリング後のy軸周りの角速度の平均値であり、
Δtは、フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度がそれぞれの所定値に等しくなる時刻t1,1,t1,2,・・・,t1,Nと、フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度が上記所定値に等しくなる別時刻t2,1,t2,2,・・・,t2,Nとによって決まる、それぞれの時間間隔Δt,Δt,・・・,Δtであって、各時刻t1,1,t1,2,・・・,t1,Nは、上記タイヤの一部が地面に接触してから地面から離れる時間間隔Δtの外にある。)、
○上記算出された角度の値を上記第3の記憶手段に記憶された基準角度αrefの値と比較し、
○上記角度の値が、上記基準角度αrefの値と異なっていれば、リムに対するタイヤのずれを測定するために、上記角度の値と上記角度αrefの値との差を算出するように構成された、第3の論理制御ユニットと、を備える、システムを提供することである。
【0023】
上記システムのさらなる好適な実施形態は、従属請求項に開示されている。
【0024】
本発明はまた、システムを用いて上述のシステムによって、タイヤと当該タイヤを装着したリムとの間のずれを測定するための方法にも関する。
【0025】
本方法は、以下のステップを含む。
A)上記第1の電子装置に関連する、少なくとも1つのy軸周りの角速度の値と少なくとも1つのx軸に沿った直線加速度の値とを取得するステップと、
B)第1のデジタルフィルタを用いて、上記少なくとも1つのy軸周りの角速度の値をフィルタリングして、少なくとも1つのフィルタリング後のy軸周りの角速度を求め、且つ、上記少なくとも1つのx軸に沿った直線加速度の値をフィルタリングして少なくとも1つのフィルタリング後のx軸に沿った角加速度を求めるステップと、
C)上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度の値が、所定値に等しくなる各時刻を特定するステップと、
D)■上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度の値が、上記所定値に等しくなる各時刻と、
■上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度の値が、上記所定値に等しくなる各時刻における、上記フィルタリング後のy軸周りの角速度の値と、を記憶するステップと、
E)上記第2の電子装置に関連する、上記少なくとも1つのy軸周りの角速度の値と上記少なくとも1つのx軸に沿った直線加速度の値とを取得するステップと、
F)第2のデジタルフィルタを用いて、上記少なくとも1つのy軸周りの角速度の値をフィルタリングして、少なくとも1つのフィルタリング後のy軸周りの角速度を求め、且つ、上記少なくとも1つのx軸に沿った直線加速度の値をフィルタリングして、少なくとも1つのフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度を求めるステップと、
G)上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度の値が、上記所定値に等しくなる各別時刻を特定するステップと、
H)■上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度の値が、上記所定値に等しくなる各別時刻と、
■上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度の値が、上記所定値に等しくなる各別時刻における、上記フィルタリング後のy軸周りの角速度の値と、を記憶するステップと、
度(α)を下記の式に従って算出するステップと、
【数3】
(式中、
Nは、時間間隔Δtの数であり、
【数4】
は、それぞれの時間間隔Δt内の、それぞれのフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度が所定値に等しくなる時刻における、フィルタリング後のy軸周りの角速度の値と、上記時間間隔Δt内の、それぞれのフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度が上記所定値に等しくなる別時刻における、フィルタリング後のy軸周りの角速度の値とによって決まる、フィルタリング後のy軸周りの角速度の平均値であり、
Δtは、上記第1の電子装置に関連するフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度がそれぞれの所定値に等しくなる時刻t1,1,t1,2,・・・,t1,Nと、上記第2の電子装置に関連するフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度が上記所定値に等しくなる別時刻t2,1,t2,2,・・・,t2,Nとによって決まる、それぞれの時間間隔Δt,Δt,・・・,Δtであって、各時刻t1,1,t1,2,・・・,t1,Nは、上記タイヤの一部が地面に接触してから地面から離れる時間間隔Δtの外にある。)
)上記算出された角度の値を基準角度αrefの値と比較するステップと、
)上記角度の値が上記基準角度αrefの値と異なっていれば、リムに対するタイヤのずれを測定するために、上記角度の値と上記角度αrefの値との差を算出するステップ。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明について、限定ではなく例示を目的として、その実施形態により、特に、以下の添付図面を参照しながら、説明する。
図1図1は、第1の電子装置と第2の電子装置とこれらの電子装置の外部にある処理装置とを備えた、本発明が目的とするシステムの構成要素の概略図である。
図2図2Aは、タイヤと当該タイヤを装着したリムとを含む車輪の概略斜視図であって、タイヤの内側にタイヤ自体の内面に接触するように配置された第1の電子装置と、リムの溝に配置された第2の電子装置と、処理装置とを示す図であり、図2Bは、図2Aの車輪の側面図であり、図2Cは、図2Aの車輪の部分断面正面図である。
図3A図3Aは、第1の電子装置の使用時の、第1のIIRフィルタの利用前及び利用後それぞれの、第1の電子装置に関連するx軸に沿った直線加速度を経時的に表す2つの正弦曲線と、第2の電子装置の使用時の、第2のIIRフィルタの利用前及び利用後それぞれの、第2の電子装置に関連するx軸に沿った直線加速度を経時的に表すさらなる2つの正弦曲線とを、デカルト平面上に示す。
図3B図3Bは、第1の電子装置に関連するフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度を表す正弦曲線と、第2の電子装置に関連するフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度を表す正弦曲線とを、デカルト平面上に詳細に示す。
図4A図4Aは、第1の電子装置の使用時の、第1のIIRフィルタの利用前及び利用後それぞれの、時間間隔Δtにおける、第1の電子装置に関連するy軸周りの角速度を表す正弦曲線の2つの部分を示す。
図4B図4Bは、上記時間間隔Δtにおける、第1の電子装置に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度を表す正弦曲線をデカルト平面上に示す。
図5A図5Aは、第2の電子装置の使用時の、第2のIIRフィルタの利用前及び利用後それぞれの、時間間隔Δtにおける、第2の電子装置に関連するy軸周りの角速度を表す正弦曲線の2つの部分を示す。
図5B図5Bは、上記時間間隔Δtにおける、第2の電子装置に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度を表す正弦曲線部分をデカルト平面上に示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1図2A図2B及び図2Cを参照して、タイヤ10と当該タイヤ10を装着したリム20との間のずれを測定するためのシステムについて説明する。
【0028】
本システムは、
-使用時にタイヤ10の内面10Aに接触して位置決めされる第1の電子装置1と、
-使用時にリム20、特に、開示する実施形態においてはリム20の溝20Aに位置決めされる第2の電子装置2と、
-上記電子装置1及び2の外部にある処理装置3と、を備える。
【0029】
開示する実施形態において、第1の参照系x,y,zは、軸xが、タイヤ10における第1の電子装置1の取付点である第1の点の回転に接し、軸zが、軸xに直交するように、第1の電子装置1に関連付けられ、第2の参照系x,y,zは、軸xが、リム20における第2の電子装置2の取付点である第2の点の回転に接し、軸zが、軸xに直交するように、第2の電子装置2に関連付けられる。
【0030】
第1の参照系の軸xと軸zは、第1の平面を規定する。
【0031】
第2の参照系の軸xと軸zは、第2の平面を規定する。
【0032】
開示する実施形態において、第2の平面は、第1の平面と平行又は実質的に平行である。
【0033】
但し、図示されてはいないが、第1の平面と第2の平面とが一致していてもよい。
【0034】
タイヤ10とリム20との間のずれは、角度αの基準角度αrefに対する変化によって測定され、ここで、角度αは、タイヤ10の中心とタイヤ10の内面10A上の第1の電子装置1の取付点である第1の点とを通る第1の軸線A1と、タイヤ10の中心とリム20の溝20A上の第2の電子装置2の取付点である第2の点とを通る第2の軸線A2とがなす角度である。
【0035】
第1の電子装置1及び第2の電子装置2が、タイヤ10の内面10A及びリム20の溝20Aにそれぞれ位置決めされている場合の基準角度αrefの値に、所定値が関連付けられる。
【0036】
この角度の値の経時的変化は、リム20に対するタイヤ10の経時的なずれを表す。
【0037】
第1の電子装置1に関して、第1の電子装置1は、その内部に、
-第1の電子装置1に電力を供給するための第1の電力供給手段14と、
-処理装置3との間で信号/データを送受信するための第1の無線トランシーバモジュール13と、
-第1のジャイロスコープ121と第1の加速度計122とを備えた第1の慣性測定ユニット12であって、
○上記第1のジャイロスコープ121を通じて、少なくとも1つのy軸周りの角速度ω1yの値を取得し、且つ、
○上記第1の加速度計122を通じて、少なくとも1つのx軸に沿った直線加速度A1xの値を取得する(開示する実施形態においては、上記x軸に沿った直線加速度A1xの値は、単位値に対して正規化された値である。(すなわち、x軸に沿った直線加速度A1xの値は-1から+1の間である。))ように構成された、第1の慣性測定ユニット12と、
-データを記憶するための第1の記憶手段15と、
-上記第1の慣性測定ユニット12と上記第1の記憶手段15とに接続された第1の論理制御ユニット11であって、
○第1の慣性測定ユニット12から、上記少なくとも1つのy軸周りの角速度ω1yの値と上記少なくとも1つのx軸に沿った直線加速度A1xの値とを受信し、
○第1のデジタルフィルタを用いて、上記少なくとも1つのy軸周りの角速度ω1yの値をフィルタリングして少なくとも1つのフィルタリング後のy軸周りの角速度ω1y’を求め、且つ、上記少なくとも1つのx軸に沿った直線加速度A1xの値をフィルタリングして少なくとも1つのフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A1x’を求め、
○上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A1x’が、所定値に等しくなる各時刻を特定し、
○第1の記憶手段15に、
■上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A1x’の値が、上記所定値に等しくなる各時刻と、
■上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A1x’の値が、上記所定値に等しくなる各時刻における、上記フィルタリング後のy軸周りの角速度ω1y’の値と、を記憶し、
○処理装置3に対して、
■上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A1x’の値が、上記所定値に等しくなる時刻と、
■それらの時刻における上記フィルタリング後のy軸周りの角速度ω1y’の値と、を送信するように構成された、第1の論理制御ユニット11と、を備える。
【0038】
上記第1のデジタルフィルタに関して、開示する実施形態においては、このデジタルフィルタは第1のIIRフィルタ(無限インパルス応答(Infinite Impulse Response))である。
【0039】
特に、第1のIIRフィルタは、0.1Hzから1Hzの間の周波数を有することが好ましい。
【0040】
第1の論理制御ユニット11は、タイヤ10が所定の第1の回数回転したときに、上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A1x’の値が上記所定値に等しくなる時刻と、それらの時刻における、上記少なくとも1つのフィルタリング後のy軸周りの角速度ω1y’の値とを処理装置3に送信するように構成してよい。
【0041】
所定の第1の回数回転した後に第1の電子装置1が処理装置3に対してデータを送信することによって省エネを達成することができるという利点がある。
【0042】
説明する実施形態において、第1の電子装置1に関連するフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A1x’のための所定値がゼロに等しい場合を例に説明し、後述するように、第2の電子装置2に関しては、第2の電子装置2に関連するフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’のための所定値がゼロに等しい場合を例に説明する(いわゆる「ゼロ交差法(zero-crossing technique)」)。
【0043】
しかしながら、本発明の範囲から逸脱しない範囲内で、ゼロ以外の値(但し、-1から+1の間)に等しい所定値を(第1の電子装置1に関連するフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A1x’と第2の電子装置2に関連するフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’との両方に)選んでよい。
【0044】
上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A1x’の値がゼロとなる各時刻は、(以下に説明する図3A及び図3Bから分かるように)第1の電子装置1の上記少なくとも1つのフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A1x’に関連する第1のフィルタリング後の正弦曲線S’の符号が変わる時刻に対応する。
【0045】
第1の正弦曲線Sと第1のフィルタリング後の正弦曲線S’とは、第1の電子装置1にそれぞれが関連するx軸に沿った直線加速度A1xとフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A1x’とがどのように経時変化するかをそれぞれ示している。
【0046】
第1の正弦曲線Sは、タイヤ10の一部が地面に接触してから地面から離れる時間間隔Δtにおいて不連続性を示している。
【0047】
同様に、第1のフィルタリング後の正弦曲線S’は、第1の正弦曲線S(すなわち、第1のIIRフィルタが利用されない場合の正弦曲線)ほど顕著ではないが、上記時間間隔Δtにおいて不連続性を示している。
【0048】
使用時、タイヤ10は複数回回転する。
【0049】
第1の電子装置1に関して、タイヤ10が1回転するごとに、第1の電子装置1に関連するフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A1x’の値がゼロに等しくなる時刻t1,1を特定して記憶することが可能である。
【0050】
上記時刻t1,1は、第2の電子装置2に関連するフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’に関する第2のフィルタリング後の正弦曲線S’に属する別時刻t2,1(この時刻に対応して、第2の電子装置2に関連するフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’の値がゼロに等しくなる)と共に、上記の2つのフィルタリング後の正弦曲線S’及びS’間の時間間隔Δtを規定する(以下に図3A及び特に図3Bを参照して説明するように)。
【0051】
開示する実施形態において、上記時刻t1,1は上記別時刻t2,1よりも後である。
【0052】
さらに、開示する実施形態において、上記時間間隔Δtは上記時間間隔Δtとは異なる。
【0053】
実際、時間間隔Δtは、第1の正弦曲線Sのうちの-1から+1の間の一部分であり、同じ第1の正弦曲線のうちの+1から-1の間の、時間間隔Δtが存在する部分とは異なる部分である。
【0054】
但し、上記時刻t1,1は、時間間隔Δtの外にあればよい。
【0055】
開示する例において、第1の記憶手段15は、第1の論理制御ユニット11の外部にある。
【0056】
但し、記憶手段15は、本発明の範囲から逸脱しない範囲内で、第1の論理制御ユニット11に含まれていてもよい。
【0057】
特に、第2の電子装置2に関して、既に述べたように、開示する実施形態において、第2の電子装置2は、リム20の溝20Aに配置される。
【0058】
但し、第2の電子装置2は、本発明の範囲から逸脱しない範囲内で、リム20上の任意の位置に、例えば、リムの外面すなわち外側を向いた面や、もしくは、リムのディスクにも、配置することができる。
【0059】
第2の電子装置2は、その内部に、
-第2の電子装置2に電力を供給するための第2の電力供給手段24と、
-処理装置3に対して信号/データを送受信するための第2の無線トランシーバモジュール23と、
-第2のジャイロスコープ221と第2の加速度計222とを備えた第2の慣性測定ユニット22であって、
○上記第2のジャイロスコープ221を通じて、少なくともy軸周りの角速度ω2yの値を取得し、且つ、
○上記第2の加速度計222を通じて、少なくともx軸に沿った直線加速度A2xの値を取得する(開示する実施形態においては、上記x軸に沿った直線加速度A2xの値は、単位値に対して正規化された値である。(すなわち、x軸に沿った直線加速度A2xの値は-1から+1の間である。))ように構成された、第2の慣性測定ユニット22と、
-データを記憶するための第2の記憶手段25と、
-上記第2の慣性測定ユニット22と上記第2の無線トランシーバモジュール23と上記第2の記憶手段25とに接続された第2の論理制御ユニット21であって、
○第2の電子装置2の第2の慣性測定ユニット22から、上記少なくとも1つのy軸周りの角速度ω2yの値と上記少なくとも1つのx軸に沿った直線加速度A2xの値とを受信し、
○第2のデジタルフィルタを用いて、上記少なくとも1つのy軸周りの角速度ω2yの値をフィルタリングして少なくとも1つの別角速度つまりフィルタリング後のy軸周りの角速度ω2y’を求め、且つ、上記少なくとも1つのx軸に沿った直線加速度A2xの値をフィルタリングして少なくとも1つの別直線加速度つまりフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’を求め、
○上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’の値が上記所定値(すなわち、第1の電子装置1に関連するフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A1x’のために選ばれた所定値)に等しくなる各別時刻を特定し、
○第2の記憶手段25に、上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2xの値が上記所定値に等しくなる各別時刻を記憶し、
○第2の記憶手段25に、上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’の値が上記所定値に等しくなる各別時刻における、上記フィルタリング後のy軸周りの角速度ω2y’の値を記憶し、
○処理装置3に対して、
■上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’の値が上記所定値に等しくなる別時刻と、
■それらの別時刻における上記フィルタリング後のy軸周りの角速度ω2y’の値と、を記憶するように構成された、第2の論理制御ユニット21と、を備える。
【0060】
上記第2のデジタルフィルタに関して、開示する実施形態において、上記第2のデジタルフィルタは第2のIIRフィルタである。
【0061】
特に、第2のIIRフィルタは、0.1Hzから1Hzの間の周波数を有することが好ましい。
【0062】
第2の論理制御ユニット21は、タイヤ10が所定の第2の回数回転したときに、上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’の値が上記所定値に等しくなる上記別時刻と、それらの時刻における、上記少なくとも1つのフィルタリング後のy軸周りの角速度ω2y’の値とを処理装置3に送信するように構成することができる。
【0063】
所定の第2の回数回転した後で、第2の電子装置2が処理装置3に対してデータを送信することによって省エネを達成することができるという利点がある。
【0064】
説明する実施形態においては、既に述べたように、第2の電子装置2に関連するフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’のための所定値がゼロに等しい場合を例に説明する。
【0065】
上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’の値がゼロとなる別時刻は、第2の電子装置2のフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’に関連する第2のフィルタリング後の正弦曲線S’の符号が変わる時刻である(図3及び図4)。
【0066】
第2の正弦曲線Sと第2のフィルタリング後の正弦曲線S’とは、第2の電子装置2にそれぞれが関連するx軸に沿った直線加速度A2xとフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’とが、どのように経時変化するかをそれぞれ示している。
【0067】
既に述べたように、使用時、タイヤ10は複数回回転する。したがって、リム20も複数回回転する。
【0068】
第2の電子装置2に関して、1回転毎に、第2の電子装置2に関連するフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’の値が、ゼロに等しくなる別時刻t2,1を特定して記憶することが可能である。
【0069】
デジタルフィルタ、特に、上述のIIRフィルタに関して、これらのIIRフィルタは、主に振動、機械的伝達、及び地面の凹凸に起因するノイズの除去を可能にする。
【0070】
本システムの電子装置1及び2の両方に関して、各電子装置1、2は、塵埃や水に耐性を有するそれぞれの固定装置(図示せず)を用いて、タイヤ10とリム20とにそれぞれ固定される。
【0071】
特に、処理装置3に関して、処理装置3は、その内部に、
-処理装置3に電力を供給するための第3の電力供給手段34と、
-第1の電子装置1及び第2の電子装置2に対して信号/データを送受信するための第3の無線トランシーバモジュール33と、
-基準角度αrefの値を記憶した第3の記憶手段35と、
-上記第3の無線トランシーバモジュール33と上記第3の電力供給手段34と上記第3の記憶手段35とに接続された第3の論理制御ユニット31であって、
○第1の電子装置1に関連する上記フィルタリング後の少なくとも1つのy軸周りの角速度ω1y’の値と、第1の電子装置1に関連する上記少なくとも1つのフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A1x’の値が上記所定値に等しくなる各時刻と、を受信し、
○第2の電子装置2に関連する上記少なくとも1つのフィルタリング後のy軸周りの角速度ω2y’の値と、第2の電子装置2に関連する上記少なくとも1つのフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’の値が、上記所定値に等しくなる各別時刻と、を受信し、
○タイヤの中心10と上記第1の点(すなわち、タイヤ10における第1の電子装置1の取付点)とを通る軸線である第1の軸線A1と、タイヤの中心10と上記第2の点(すなわち、リム20における第2の電子装置2の取付点)とを通る軸線である第2の軸線A2との間の角度αを、下記の式に従って算出し、
【数5】
(式中、
【数6】
は、フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A1x’が上記所定値(すなわち、開示する実施形態においては、ゼロ)に等しくなる時刻t1,1における、第1の電子装置1に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度ω1y’の値と、フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’が上記所定値(すなわち、開示する実施形態においては、ゼロ)に等しくなる別時刻t2,1における、第2の電子装置2に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度ω2y’の値とによって決まる、フィルタリング後のy軸周りの角速度の平均値であり、
Δt=t1,1-t2,1は、第1の電子装置1に関連するフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A1x’が、上記所定値(すなわち、開示する実施形態においては、ゼロ)に等しくなる時刻t1,1と、第2の電子装置2に関連するフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’が、上記所定値(すなわち、開示する実施形態においては、ゼロ)に等しくなる別時刻t2,1との間の時間間隔であり、上記時刻と上記別時刻は連続する時刻である。)
○算出された角度αの値を、第3の記憶手段35に記憶された基準角度αrefの値と比較し、
○角度αの値が基準角度αrefの値と異なっていれば、リム20に対するタイヤ10のずれを測定するために、角度αの値と角度αrefの値との差を算出するように構成された、第3の論理制御ユニット31と、を備える。
【0072】
開示する実施形態においては、角度αの算出のために、1つの時間間隔と、一対のフィルタリング後のy軸周りの角速度と、を考慮したが、この一対のフィルタリング後のy軸周りの角速度は、上記時刻t1,1における第1の電子装置1に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度ω1y’の値と、上記別時刻t2,1における第2の電子装置2に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度ω2y’の値とによって構成される。
【0073】
しかしながら、角度αを算出するために、それぞれが、一対の時刻(すなわち、第1の電子装置1に関連するフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A1x’がそれぞれの所定値に等しくなる時刻と、第2の電子装置2に関連するフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’が上記所定値に等しくなる別時刻とによって構成される対)によって決まる複数の時間間隔Δt,Δt,・・・,Δtを選択し、そのそれぞれの時刻における、第1の電子装置1に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度ω1y’の値と、それぞれの別時刻における第2の電子装置2に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度ω2y’の値とを考慮してもよい。
【0074】
したがって、角度αは、下記の式に従って算出することができる。
【数7】
(式中、
Nは、第1の電子装置1に関連するフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A1x’がそれぞれの所定値に等しくなるそれぞれの時刻と、第2の電子装置2に関連するフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’が上記所定値に等しくなるそれぞれの別時刻とによって決まる時間間隔Δtの数であり、
【数8】
は、それぞれの時間間隔Δt内の、それぞれのフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A1x’が所定値に等しくなる時刻における、第1の電子装置1に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度ω1y’の値と、上記時間間隔Δt内の、それぞれのフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’が上記所定値に等しくなる別時刻における、第2の電子装置2に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度ω2y’の値とによって決まる、フィルタリング後のy軸周りの角速度の平均値であり、
Δtは、第1の電子装置1に関連するフィルタリング後の直線加速度A1x’がそれぞれの所定値に等しくなる時刻と、第2の電子装置2に関連するフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’が上記所定値に等しくなる別時刻とによって決まる、それぞれの時間間隔である。)
【0075】
Nが1に等しい(すなわち、選択された時間間隔が1つである)場合、複数の時間間隔が挙げられる角度の算出式は、前述した時間間隔Δtのみの場合の角度の算出式と同じになる。
【0076】
処理装置3の第3の論理制御ユニット31は、算出された角度が上記基準角度の値を中心とする所定の値の範囲から外れる値を有している場合にアラーム信号(音響信号及び/又は視覚信号でよい)を生成するように構成されることが好ましい。
【0077】
特に、第3の論理制御ユニット31は、算出された角度が所定の値の範囲から外れる値を有していることが所定の回数連続した場合に、上記アラーム信号を生成するように構成されることがさらに好ましい。
【0078】
さらに、第3の論理制御ユニット31は、上記基準角度αrefの値を修正するように構成してもよい。
【0079】
特に、第3の論理制御ユニット31は、算出された角度の値が、最後に算出された角度値を中心とする上記所定の値の範囲に入っていることが一定の回数連続した場合に、それらの算出された角度の値の平均値に基づいて上記基準角度αrefの値を修正するように構成してもよい。
【0080】
この特定の場合においては、第3の論理制御ユニット31は、
-2つ以上の算出された角度の値が、上記所定の値の範囲に入っていることを確認し、
-上記2つ以上の算出された角度の平均値を算出し、
-上記値が、好ましくは所定の回数連続して、最後に算出された角度値を中心とする上記所定の値の範囲に入っている場合に、上記平均値に基づいて上記基準角度αrefの値を修正するように構成される。
【0081】
第3の論理制御ユニット31は、アラーム信号の生成に関係なく、基準角度αrefの値を修正するように構成してもよい。
【0082】
図3Aは、第1の電子装置1(すなわち、タイヤの内面に配置された電子装置)のx軸に沿った直線加速度A1xに関連する第1の正弦曲線S(黒い実線で表す)と、第1のフィルタリング後の正弦曲線S’(白い破線で表す)と、第2の電子装置2(すなわち、リムの溝に配置された電子装置)のx軸に沿った直線加速度A2xに関連する第2の正弦曲線S(別の黒い連続線で表す)と、第2のフィルタリング後の正弦曲線S’(別の白い破線で表す)とを示す。
【0083】
図3Aから分かるように、既に述べたように、第1の正弦曲線S(第1の電子装置1のx軸に沿った直線加速度A1xに関連する)は、タイヤ10の回転の際に、タイヤ10の一部が地面に接触してから地面から離れることに起因する不連続性を有し(時間間隔Δtは、タイヤ10が地面に接触している時間間隔である)、第2の正弦曲線S(第2の電子装置2のx軸に沿った直線加速度A2xに関連する)は、いかなる不連続性も有さない。
【0084】
それほど顕著ではないが、同じ不連続性が第1のフィルタリング後の正弦曲線S’に存在する。
【0085】
時間間隔Δtは、第1の電子装置1に関連するフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A1x’が所定値(すなわち、説明する実施形態においては、空値)に等しくなる時刻と、第2の電子装置2に関連するフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’が所定値(すなわち、開示する実施形態においては、空値)に等しくなる別時刻との間の時間間隔を示している。
【0086】
既に述べたように、図3Aは、第1のフィルタIIRの利用前及び利用後の第1の電子装置1に関連するx軸に沿った直線加速度と、第2のIIRフィルタの利用前及び利用後の第2の電子装置2に関連するx軸に沿った直線加速度とが、どのように経時変化するかを示している。
【0087】
各直線加速度は、それぞれの正弦曲線によって表され、
は、第1の電子装置1に関連するx軸に沿った直線加速度A1xに関する第1の正弦曲線を表し、
’は、第1の電子装置1に関連するフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A1x’に関する第1のフィルタリング後の正弦曲線を表し、
は、第2の電子装置2に関連するx軸に沿った直線加速度A2xに関する第2の正弦曲線を表し、
’は、第2の電子装置2に関連するフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’に関する第2のフィルタリング後の正弦曲線を表す。
【0088】
タイヤ10の回転運動とリム20の回転運動とは、それぞれが第1の電子装置1と第2の電子装置2とに関連する場合、横座標軸を時間とし、縦座標軸をx軸に沿った直線加速度とするデカルト平面上の第1の正弦曲線Sと第2の正弦曲線Sとによってそれぞれ表される。
【0089】
上記正弦曲線S及びSのそれぞれは、各要因(例えば、振動、機械的伝達、地面の凹凸など)に起因するノイズを除去するために、それぞれのIIRフィルタによってフィルタリングされる。
【0090】
時刻t1,1は、第1のフィルタリング後の正弦曲線S’と上記デカルト平面の横座標軸との交点に対応する。
【0091】
時刻t2,1は、第2のフィルタリング後の正弦曲線S’と上記デカルト平面の横座標軸との交点に対応する。
【0092】
既に述べたように、また、図3Aから分かるように、第1の正弦曲線Sは、したがって第1のフィルタリング後の正弦曲線S’も、タイヤ10の一部が地面に接触してから地面から離れる時間間隔Δtに対応して不連続性を示す。
【0093】
各時間間隔Δt,Δt,・・・,Δtは、不連続性が存在する時間間隔Δtから外れており、後者cの時間間隔とは重複していない。
【0094】
図3Bは、より明確にするために、第1のフィルタリング後の正弦曲線S’と、第2のフィルタリング後の正弦波S’と、時間間隔Δt,Δt,・・・,Δtとを詳細に示している。
【0095】
図4Aは、第1の電子装置1の使用時の、同じ時間間隔Δtにおける、第1の電子装置1に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度ω1y’と、y軸周りの角速度ω1y、すなわち第1のフィルタIIRによってフィルタリングされていない角速度とを示している。
【0096】
y軸周りの角速度ω1yは、黒い実線で表され、フィルタリング後のy軸周りの角速度ω1y’は白い実線で表されている。
【0097】
図4Bは、時間間隔Δtにおける、第1のデバイス1に関連するフィルタリング後のフィルタリング後のy軸周りの角速度ω1y’を詳細に示している。
【0098】
図5Aは、第2の電子装置2の使用時の、同じ時間間隔Δtにおける、第2の電子装置2に関連するフィルタリング後のフィルタリング後のy軸周りの角速度ω2y’と、y軸周りの角速度ω2y、すなわち第2のフィルタIIRによってフィルタリングされていない角速度とを示している。
【0099】
フィルタリング後のy軸周りの角速度ω2yは黒い実線で表され、フィルタリング後のy軸周りの角速度ω2y’は白い実線で表されている。
【0100】
図5Bは、時間間隔Δtにおける、第2のデバイス2に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度ω2y’を詳細に示している。
【0101】
さらに、第1の電子装置1には、第1の論理制御ユニット11に接続された第1のクロック源16を備えることができ、第2の電子装置2には、第2の論理制御ユニット21に接続された第2のクロック源26を備えることができ、処理装置3には、第3の論理制御ユニットに接続された第3のクロック源36を備えることができる。
【0102】
特に、処理装置3の第3の論理制御ユニット31は、
-状況に応じて必要とされ得る所定の時間分解能に基づいて、すべてのクロック源が同期するように、第1の電子装置1と第2の電子装置2のクロック源を処理装置3の第3のクロック源36に同期させるために、第1の電子装置1と第2の電子装置2とに同期信号を送信するように構成される。
【0103】
上記同期信号は、例えば、タイヤ10が所定の回数回転したときなどに、周期的に送信されることが好ましい。
【0104】
電子装置のそれぞれが、処理装置3に対してデータを送信するようにのみ構成され、処理装置3が、そのようなデータを受信して処理するように構成されている場合には、同期信号の送信は不要である。
【0105】
各電子装置1、2が、データを取得して(フィルタリングした後に)処理装置3に送信するようにのみ構成され、処理装置3が、リムに対するタイヤのずれを算出するためにそのようなデータを受信して処理するように構成されている変形例においては、第1の無線トランシーバモジュール(第1の電子装置1に配置)の代わりに第1の無線送信モジュールが用いられ、第2の無線トランシーバモジュール(第2の電子装置2に配置)の代わりに第2の無線送信モジュールが用いられ、第3の無線トランシーバモジュール(処理装置3に配置)の代わりに無線受信モジュールが用いられる。
【0106】
さらに、処理装置3の論理制御ユニット、すなわち第3の論理制御ユニット31は、
○第3のクロック源36によって設定された時間に基づいて、第1の電子装置1に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度ω1y’の値と第2の電子装置2に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度ω2y’の値とを、第3の論理制御ユニット31が受信したそれぞれの受信時刻を記憶し、
○■上記受信時刻から、上記第1の電子装置1に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度ω1y’の値が取得されてから処理装置3に送信されるまでの時間を指す第1の時間間隔Δt1ATと上記第1の電子装置1に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度ω1y’が、処理装置3に到達するのに要する時間(すなわち、第1の電子装置1と処理装置3との間の伝送媒体を通過するのにかかる時間)によって生じる第2の時間間隔Δt1Vとを減算して、第1の電子装置1が、上記第1の電子装置1に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度ω1y’の値を記憶した時刻を求め、且つ、
■上記受信時刻から、上記第2の電子装置2に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度ω2y’の値が取得されてから処理装置3に送信されるまでの時間を指す別の第1の時間間隔Δt2ATと上記第2の電子装置2に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度ω2y’が、処理装置3に到達するのに要する時間(すなわち、第2の電子装置2と処理装置3との間の伝送媒体を伝わるのにかかる時間)によって生じるさらなる第2の時間間隔Δt2Vとを減算して、第2の電子装置2が、上記第2の電子装置2に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度ω2y’の値を記憶した時刻を求め、
○上記第1の電子装置1が上記第1の電子装置1に関連するフィルタリング後のy軸周りの角速度ω 1y ’の値を記憶した時刻と、上記第2の電子装置2が、上記第2の電子装置2に関連するy軸周りの角速度ω 2y ’の値を記憶した時刻の2つの時刻間の時間間隔を算出するように構成される。
【0107】
各電子装置1、2と処理装置3との間に存在する伝送媒体を通過するのに要する時間に関して、この時間は、各電子装置1、2と処理装置3との間の距離や伝送媒体自体の種類などのさまざまな要因によって変わり得る。
【0108】
この場合(すなわち、両電子装置が、データを取得して送信するように設計され、処理装置が、当該データを受信して処理するように設計されている場合)、電子装置1及び2が、データ処理装置3から信号を受信しないことにより、省エネが達成される。
【0109】
上記から明らかなように、各電子装置1、2が、データを取得して(フィルタリングした後に)送信するように構成され、処理装置3が、角度を算出して基準角度と比較するために、そのようなデータを受信して処理するように構成されていてもよく、各電子装置が、データを取得して送信するとともに、処理装置から1つ以上の信号(同期信号など)を受信するように構成され、処理装置が、角度を算出して基準角度と比較するために、そのようなデータを受信して処理するとともに、上記電子装置のそれぞれに1つ以上の信号(例えば同期信号など)を送信するように構成されていてもよい。
【0110】
本発明はまた、上記に開示したシステムを用いて、タイヤ10と該タイヤ10を装着したリム20との間のずれを測定するための方法にも関する。
【0111】
本方法は、以下のステップを含む。
A)第1の電子装置1に関連する、少なくとも1つのy軸周りの角速度ω1yの値と少なくとも1つのx軸に沿った直線加速度A1xの値とを取得するステップと、
B)第1のデジタルフィルタを用いて、上記少なくとも1つのy軸周りの角速度ω1yの値をフィルタリングして、少なくとも1つのフィルタリング後のy軸周りの角速度ω1y’を求め、且つ、上記少なくとも1つのx軸に沿った直線加速度A1xの値をフィルタリングして、少なくとも1つのフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A1x’を求めるステップと、
C)上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A1x’の値が、所定値に等しくなる各時刻を特定するステップと、
D)■上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A1x’の値が、上記所定値に等しくなる各時刻と、
■上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A1x’の値が、上記所定値に等しくなる各時刻における、上記フィルタリング後のy軸周りの角速度ω1y’の値と、を記憶するステップと、
E)第2の電子装置2に関連する、上記少なくとも1つのy軸周りの角速度ω2yの値と上記少なくとも1つのx軸に沿った直線加速度A2xの値とを取得するステップと、
F)第2のデジタルフィルタを用いて、上記少なくとも1つのy軸周りの角速度ω2yの値をフィルタリングして、少なくとも1つのフィルタリング後のy軸周りの角速度ω2y’を求め、且つ、上記少なくとも1つのx軸に沿った直線加速度A2xの値をフィルタリングして、少なくとも1つのフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’を求めるステップと、
G)上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’の値が上記所定値に等しくなる各別時刻を特定するステップと、
H)■上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’の値が、上記所定値に等しくなる各別時刻と、
■上記フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’の値が、上記所定値に等しくなる各別時刻における、上記フィルタリング後のy軸周りの角速度ω2y’の値と、を記憶するステップと、
I)角度αを、(考慮するべき時間間隔の数に基づいて)下記の式のうちの1つに従って算出するステップと、
【数9】
(式中、
【数10】
は、フィルタリング後のy軸周りの角速度ω1y’及びω2y’の平均値であり、
Δt=t1,1-t2,1は、フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A1x’が上記所定値に等しくなる時刻t1,1と、フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’が上記所定値に等しくなる別時刻t2,1との間の時間間隔である。)
又は
【数11】
(式中、
Nは、時間間隔Δtの数であり、
【数12】
は、それぞれの時間間隔Δt内の、それぞれのフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A1x’が所定値に等しくなる時刻における、フィルタリング後のy軸周りの角速度ω1y’の値と、上記時間間隔Δt内の、それぞれのフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’が上記所定値に等しくなる別時刻における、フィルタリング後のy軸周りの角速度ω2y’の値とによって決まる、フィルタリング後のy軸周りの角速度の平均値であり、
Δtは、第1の電子装置1に関連するフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A1x’がそれぞれの所定値に等しくなる時刻と第2の電子装置2に関連するフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’が上記所定値に等しくなる別時刻とによって決まる、それぞれの時間間隔であり、
Δt,Δt,・・・,Δtは、フィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A1x’が上記所定値に等しくなるそれぞれの時刻t1,1,t1,2,・・・,t1,Nとフィルタリング後のx軸に沿った直線加速度A2x’が上記所定値に等しくなるそれぞれの別時刻t 2,1,t2,2,・・・,t2,Nとの間の時間間隔である。)
)算出された角度αの値を基準角度αrefの値と比較するステップと、
)角度αの値が基準角度αrefの値と異なっていれば、リム20に対するタイヤ10のずれを測定するために、角度αの値と角度αrefの値との差を算出するステップ。
【0112】
システムについて既に述べたように、上記第1のデジタルフィルタ及び上記第2のデジタルフィルタは、それぞれ、第1のIIRフィルタ及び第2のIIRフィルタである。
【0113】
さらに、Nが1に等しい(すなわち、選択された時間間隔が1つである)場合、複数の時間間隔が挙げられている角度の式は、時間間隔Δtのみが挙げられた角度の式に等しいものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
既に述べたように、本システム及び本方法を用いることによって、本発明が目的とする、タイヤの使用時に、タイヤを装着したリムに対するタイヤの経時的なずれを測定することが可能になるという利点がある。
【0115】
したがって、上述のように、タイヤとリムとの間のずれの測定は、動的な測定である。
【0116】
本発明について、限定ではなく例示を目的として、その好適な実施形態によって説明したが、添付の特許請求項によって定められる本発明の範囲から逸脱しない範囲内で、当業者によって変形及び/又は変更が実施され得ることが理解されるべきである。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B