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特許7541085口クッションおよび鼻クッションを連結させる継手を含むモジュール式患者インターフェース
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】口クッションおよび鼻クッションを連結させる継手を含むモジュール式患者インターフェース
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/06 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
A61M16/06 A
【請求項の数】 37
(21)【出願番号】P 2022525417
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 AU2020051180
(87)【国際公開番号】W WO2021081596
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-10-30
(31)【優先権主張番号】62/928,185
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/928,213
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/928,228
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500046450
【氏名又は名称】レスメド・プロプライエタリー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ルパート・クリスチャン・シェイナー
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第55603548(US,B1)
【文献】特表2018-517504(JP,A)
【文献】特表2017-516593(JP,A)
【文献】特表2013-538632(JP,A)
【文献】国際公開第2013/142909(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/183167(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/201358(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
睡眠時呼吸障害の改善のために、患者の睡眠時において周囲空気圧力に対して陽圧の空気流れを少なくとも前記患者の鼻孔の入口を含む前記患者の気道への入口へ送達する患者インターフェースキットであって、前記患者インターフェースキットは、
治療圧力まで加圧可能な鼻クッションプレナムチャンバのうち少なくとも一部を形成する鼻クッションであって、前記鼻クッションは、患者の顔のうち患者の鼻孔への入口を包囲する領域とシールを形成するように構築および配置された鼻シール形成構造を含み、前記鼻クッションは、鼻クッション開口部を有する、鼻クッション;
前記治療圧力まで加圧可能な口クッションプレナムチャンバのうち少なくとも一部を形成する口クッションであって、前記口クッションは、患者の顔のうち患者の口への入口を包囲する領域とシールを形成するように構築および配置されたシール形成構造を含み、前記口クッションは、口クッション開口部を有し、前記口クッションは、前記鼻クッションを前記口クッションへ選択的に接続させるように前記口クッション開口部の上方に位置決めされた前記口クッション内の別の開口部から延びる可撓性継手を含む、口クッション;および
前記鼻シール形成構造および/または口シール形成構造を患者の頭部上の治療的に有効な位置に保持するための力を提供する位置決めおよび安定化構造であって、前記位置決めおよび安定化構造は、上ストラップまたは導管を含む鼻ヘッドギアと、下ストラップを含む口ヘッドギアとを含み、前記口ヘッドギアは、前記鼻ヘッドギアへ選択的に接続される、位置決めおよび安定化構造、を含み、
前記鼻クッション開口部および前記口クッション開口部はそれぞれ、患者の呼息されたガスの洗い流しを可能にするために前記導管の内部から周囲空気への空気流れを可能にする1つ以上のガス洗い流し口を有する通気インサートを受容するように構成されており
前記鼻クッション開口部は、前記可撓性継手の鼻クッション端部を受容するように構成され、
前記患者インターフェースキットは、前記患者が
鼻クッション治療モード、または
鼻クッションおよび口クッション治療モードの組み合わせ
を選択することを可能にするように構成され、
前記鼻クッション治療モードは、前記鼻クッションおよび前記鼻ヘッドギアを有しかつ前記口クッションまたは前記口ヘッドギアを有さない鼻アセンブリを含み、前記鼻クッションは、前記鼻クッション開口部内に受容された前記通気インサートおよび/または空気送達管へ接続するように適合された管コネクタを含み、
前記鼻クッションおよび口クッション治療モードの組み合わせにおいて、前記鼻クッションおよび前記口クッションは、互いに組み合わせられて口鼻アセンブリを形成し、
前記口鼻アセンブリにおいて、前記鼻クッションおよび前記口クッションは、前記可撓性継手の鼻クッション端部が前記鼻クッション開口部へ挿入されることによって接続され、
前記鼻ヘッドギアは、前記鼻クッションの鼻コネクタへ接続され、前記口ヘッドギアは、前記口クッションの口コネクタへ接続され、前記口ヘッドギアは、前記鼻ヘッドギアへ取り外し可能に接続され、前記口クッションは、前記口クッション開口部内に受容された前記通気インサートまたは前記管コネクタを含む、患者インターフェースキット。
【請求項2】
前記鼻ヘッドギアは、呼吸可能なガスの流れを前記鼻クッションへ送達する上側導管を含む、請求項1の患者インターフェースキット。
【請求項3】
前記鼻クッション治療モードにおいて、前記鼻クッション開口部は前記通気インサートを含み、口鼻クッション治療モードにおいて、前記口クッション開口部は前記通気インサートを含む、請求項1または2の患者インターフェースキット。
【請求項4】
前記鼻ヘッドギアは、前記鼻クッションへの接続のための前記上ストラップを含む、請求項1~3のうちいずれか一項の患者インターフェースキット。
【請求項5】
前記鼻クッション治療モードにおいて、前記鼻クッション開口部は前記管コネクタを含み、口鼻クッション治療モードにおいて、前記口クッション開口部は前記管コネクタを含む、請求項1または2の患者インターフェースキット。
【請求項6】
前記鼻クッションは、加圧ガスを受容するポートを含み、前記鼻クッションは、前記ポートを閉鎖させるプラグを含み、前記プラグは、前記上ストラップへの接続のためのコネクタを含む、請求項1~5のうちいずれか一項の患者インターフェースキット。
【請求項7】
前記管コネクタは、ガス洗い流しのための少なくとも1つの通気穴を含む、請求項1~6のうちいずれか一項の患者インターフェースキット。
【請求項8】
前記可撓性継手は、少なくとも1つの折り目を有するコンチェルティーナセクションを含む、請求項1~7のうちいずれか一項の患者インターフェースキット。
【請求項9】
前記可撓性継手および/または前記口クッションは、前記可撓性継手のバネ付勢ならびに/あるいは前記口クッションおよび/または前記可撓性継手を通じた呼吸可能なガスの流れの導入に起因して、前記患者の下唇中点と軟組織ポゴニオンとの間の下唇の正中線中の最も凹状の点である前記患者のスプラメントンへと移動するように構成される、請求項1~のうちいずれか一項の患者インターフェースキット。
【請求項10】
前記可撓性継手は、中立位置と、前記患者の下唇中点と軟組織ポゴニオンとの間の下唇の正中線中の最も凹状の点である前記患者のスプラメントンへと方向付けられた曲線位置とを有し、前記可撓性継手は、前記前記可撓性継手のコンチェルティーナセクションのバネ付勢に起因して、前記中立位置から前記患者の顔から離隔方向の位置への動きに抵抗する、請求項1~のうちいずれか一項の患者インターフェースキット。
【請求項11】
前記鼻クッション端部は、加圧された呼吸可能なガスの流れを前記患者のフランクフルト水平に対して実質的に平行な方向において鼻プレナムチャンバ内へまたは前記鼻プレナムチャンバから方向付けるか、または受容するように構成される、請求項1~10のうちいずれか一項の患者インターフェースキット。
【請求項12】
前記可撓性継手の口クッション端部は、前記口クッションの前記通気インサートの上方の位置において前記口クッションへ取り付けられる、請求項1~11のうちいずれか一項の患者インターフェースキット。
【請求項13】
前記鼻クッションは、一対の上側ヘッドギアコネクタを含み、前記口クッションは、一対の下側ヘッドギアコネクタを含み、前記鼻ヘッドギアは、前記上側ヘッドギアコネクタへ接続するように構成され、前記口ヘッドギアは、前記下側ヘッドギアコネクタへ接続するように構成される、請求項1~12のうちいずれか一項の患者インターフェースキット。
【請求項14】
前記下側ヘッドギアコネクタはそれぞれ、磁性接続要素を含む、請求項13の患者インターフェースキット。
【請求項15】
前記下側ヘッドギアコネクタはそれぞれ、ウイッシュボーン形状を有する一対のアームを含み、前記下側ヘッドギアコネクタはそれぞれ、上アームと、前記口クッションの前面へ接続された下アームとを有し、前記上アームは、前記下アームから間隔を開けて配置される、請求項13または14の患者インターフェースキット。
【請求項16】
前記上アームおよび前記下アームにより、支持力がそれぞれ前記口クッションの中間ゾーンおよび下側ゾーンへ分配される、請求項15の患者インターフェースキット。
【請求項17】
前記一対のアームはそれぞれ可撓性であり、U字型形状を有する、請求項15または16の患者インターフェースキット。
【請求項18】
前記U字型形状を有する前記一対のアームはそれぞれ、前記口クッションの前面の側方部分に沿って延在するサイズおよび/または形状を有する、請求項17の患者インターフェースキット。
【請求項19】
前記一対のアームはそれぞれ、シリコーンによって構成される、請求項15~18のうちいずれか一項の患者インターフェースキット。
【請求項20】
前記一対のアームはそれぞれ、シリコーン製の前記口クッションの前面へ接続される、請求項15~19のうちいずれか一項の患者インターフェースキット。
【請求項21】
前記アームはそれぞれ、前記口クッションの側方縁部から内方に間隔を開けて配置された位置において前記口クッションの前面へ取り付けられる、請求項15~20のうちいずれか一項の患者インターフェースキット。
【請求項22】
前記アームはそれぞれ、前記患者により着用されかつ前記位置決めおよび安定化構造によって支持された際に前記患者のケイリオンの対向する側部に跨がることにより、前記患者の口の角部へ力を付加するような寸法および構成にされる、請求項15~21のうちいずれか一項の患者インターフェースキット。
【請求項23】
前記アームはそれぞれ、前記口クッションの前面と同一平面に配置されるように移動可能であるかまたは可撓性である、請求項15~22のうちいずれか一項の患者インターフェースキット。
【請求項24】
前記アームから、前記アームへ連結された前記下ストラップへ付加された張力に起因して力が前記口クッションの前面へ付加されて、前記口クッションは、前記患者の口を包囲する角部内へアンカー固定される、請求項15~23のうちいずれか一項の患者インターフェースキット。
【請求項25】
前記口クッションおよび/または前記鼻クッションは、シリコーンボディ上に取り付けられたテキスタイル密閉面を含む、請求項1~24のうちいずれか一項の患者インターフェースキット。
【請求項26】
前記口クッションは、前面と、シーリングリップと、前記前面および前記シーリングリップを接続させる壁とを含み、前記前面、前記シーリングリップおよび前記壁は全てシリコーン製であり、前記壁および/または前記シーリングリップは、前記口クッションの口角部の上部の方が前記口クッションの口角部の下部よりも高剛性である、請求項1~25のうちいずれか一項の患者インターフェースキット。
【請求項27】
前記口クッションの深さは、前記鼻クッションおよび/または前記患者の鼻の鼻尖点を超えて延びないように構成される、請求項1~26のうちいずれか一項の患者インターフェースキット。
【請求項28】
前記口シール形成構造は、前記患者の顎が開いたときに前記口クッションが上方に拡張することを可能にするように構成された上唇膜を含む、請求項1~27のうちいずれか一項の患者インターフェースキット。
【請求項29】
前記上唇膜は、前記口クッションプレナムチャンバへと内方に曲線状にされた中央部を含む、請求項28の患者インターフェースキット。
【請求項30】
前記上唇膜は、前記口クッションプレナムチャンバから離隔方向において外方に実質的に直線状または曲線状の中央部を含む、請求項29の患者インターフェースキット。
【請求項31】
前記口シール形成構造は、前記患者の顎が開いたときに前記口クッションが下方に拡張することを可能にするように構成された下唇膜を含む、請求項1~30のうちいずれか一項の患者インターフェースキット。
【請求項32】
前記口クッションは、加圧ガスの流れに起因して拡張して、前記口クッションの上側部および/または下側部を前記口クッションの側方側から外方に保持するように構成される、請求項1~31のうちいずれか一項の患者インターフェースキット。
【請求項33】
前記可撓性継手は、窒息防止弁を含む、請求項1~32のうちいずれか一項の患者インターフェースキット。
【請求項34】
前記口クッションは、第1の種類の材料によって構成され、前記鼻クッションは、前記第1の種類の材料と異なる第2の種類の材料によって構成される、請求項1~33のうちいずれか一項の患者インターフェースキット。
【請求項35】
前記口クッションは、第1の種類の材料によって構成された密閉面を含み、前記鼻クッションは、前記第1の種類の材料と異なる第2の種類の材料の密閉面を含む、請求項1~34のうちいずれか一項の患者インターフェースキット。
【請求項36】
前記第1の種類の材料および前記第2の種類の材料のうち1つはシリコーンであり、前記第1の種類の材料および前記第2の種類の材料のうち他方はテキスタイルである、請求項34または35の患者インターフェースキット。
【請求項37】
複数の穴を含む一対の通気コネクタをさらに含み、前記一対の通気コネクタは、前記鼻ヘッドギアを前記鼻クッションの鼻コネクタへ連結させるように構成される、請求項1~36のうちいずれか一項の患者インターフェースキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許文書の開示の一部は、著作権保護が与えられる内容を含む。著作権所有者は、何者かが本特許文書または本特許開示をファックスにより再生しても、特許庁の特許ファイルまたは記録に記載されるものであれば目的のものであれば異論は無いが、その他の目的については全ての著作権を保持する。
1 関連出願の相互参照
【0002】
本出願は、米国仮出願第62/928,228号(出願日:2019年10月30日)、米国仮出願第62/928,213号(出願日:2019年10月30日)、および米国仮出願第62/928,185号(出願日:2019年10月30日)に対する優先権を主張する。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。
【背景技術】
【0003】
2 技術の背景
2.1 技術の分野
本技術は、呼吸関連障害のスクリーニング、診断、監視、治療、予防および改善のうち1つ以上に関する。本技術はまた、医療デバイスまたは装置と、その使用とに関する。
【0004】
2.2 関連技術の説明
2.2.1 ヒトの呼吸器系およびその障害
身体の呼吸器系は、ガス交換を促進させる。鼻および口は、患者の気道への入口を形成する。
【0005】
これらの気道は、一連の分岐する管を含み、これらの管は、肺の奥深くに進むほど狭く、短くかつ多数になる。肺の主要な機能はガス交換であり、吸息された空気から酸素を静脈血中へ取り入れさせ、二酸化炭素を退出させる。気管は、右および左の主気管支に分かれ、これらの主気管支はさらに分かれて、最終的に終末細気管支となる。気管支は、誘導気道を構成するものであり、ガス交換には関与しない。気道がさらに分割されると呼吸細気管支となり、最終的には肺胞となる。肺の胞状の領域においてガス交換が行われ、この領域を呼吸ゾーンと呼ぶ。以下を参照されたい:「Respiratory Physiology」, by John B. West, Lippincott Williams & Wilkins, 9th edition published 2012。
【0006】
一定範囲の呼吸障害が存在している。特定の障害は、特定の発症(例えば、無呼吸、呼吸低下および過呼吸)によって特徴付けられ得る。
【0007】
呼吸障害の例には、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)、チェーン・ストークス呼吸(CSR)、呼吸不全、肥満過換気症候群(OHS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、神経筋疾患(NMD)および胸壁障害が含まれる。
【0008】
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、睡眠時呼吸障害(SDB)の1つの形態であり、睡眠時の上通気道の閉鎖または閉塞などの発症によって特徴付けられる。これは異常に小さい上気道と、舌の領域の筋緊張の通常の喪失、睡眠時の軟口蓋および後口咽頭壁の正常損失の組み合わせの結果である。このような疾病に起因して、罹患患者の呼吸停止が典型的には30~120秒にわたり、ときには一晩に200~300回も呼吸が停止する。その結果、日中の眠気が過度になり、心血管疾患および脳損傷の原因になり得る。この症候群は一般的な障害であり、特に中年の過体重の男性に多いが、患者に自覚症状は無い。米国特許第4,944,310号(Sullivan)を参照されたい。
【0009】
チェーン・ストークス呼吸(CSR)は、別の形態の睡眠時呼吸障害である。CSRは、患者の呼吸調節器の障害であり、CSRサイクルとして知られる換気の漸増および漸減が交互に周期的に続く。CSRは、動脈血の脱酸素および再曝気の繰り返しによって特徴付けられる。反復低酸素症のため、CSRは有害であり得る。患者によっては、CCRは、重症不眠、交感神経活動の増加、および後負荷の増加の原因となる、反復性睡眠覚醒を随伴する。米国特許第6,532,959号(Berthon-Jones)を参照されたい。
【0010】
呼吸不全とは、呼吸障害の総称であり、患者の需要を満たすための充分な酸素吸気または充分なCO呼息を肺が行うことができていないことを指す。呼吸不全は、以下の障害のうちいくつかまたは全てを包含し得る。
【0011】
呼吸不全(一種の呼吸不全)の患者は、運動時に異常な息切れを経験することがある。
【0012】
肥満過換気症候群(OHS)は、低換気の原因が他に明確に無い状態における、重症肥満および覚醒時慢性高炭酸ガス血症の組み合わせとして定義される。症状には、呼吸困難、起床時の頭痛と過剰な日中の眠気が含まれる。
【0013】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、特定の共通する特性を有する下気道疾患のグループのうちのいずれも包含する。これには空気の動きに対する抵抗の増加、呼吸の呼気相の延長および肺における正常な弾性の減少が含まれる。COPDの例として、気腫および慢性気管支炎がある。COPDの原因としては、慢性喫煙(第一危険因子)、職業被ばく、空気汚染および遺伝因子がある。症状を挙げると、労作時の呼吸困難、慢性咳および痰生成がある。
【0014】
神経筋疾患(NMD)は、内在筋病理を直接介してまたは神経病理を間接的に介して筋肉機能を損なう多数の疾病および病気を包含する広範な用語である。NMD患者の中には、進行性の筋肉障害によって特徴付けられる者もあり、結果的に歩行不可能、車椅子への束縛、嚥下困難、呼吸筋力低下に繋がり、最終的には呼吸不全による死亡に繋がる。神経筋障害は、急速進行性および緩徐進行性に分けることができる:(i)急速進行性疾患の特徴:数か月にわたって悪化し、数年以内に死に至る筋肉障害(例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)および10代のデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)など)を特徴とする。(ii)変性または緩徐進行性疾患:数年にわたって悪化するものの、予命の短縮は軽度にとどまる筋肉障害(例えば、肢帯型、顔面肩甲上腕型、および筋緊張型筋ジストロフィー)を特徴とする。NMDにおける呼吸不全症状を以下に挙げる:全身衰弱の増加、嚥下障害、労作および安静時の呼吸困難、疲労、眠気、起床時の頭痛、および集中および気分の変化の困難。
【0015】
胸壁障害は、胸郭変形の1つのグループであり、呼吸筋肉と胸郭との間の連結の無効性の原因となる。これらの障害は、拘束性障害によって主に特徴付けられ、長期の炭酸過剰性呼吸不全の可能性を共有する。脊柱側弯症および/または脊柱後側弯症は、重篤な呼吸不全を発症することがある。呼吸不全の症状を以下に挙げる:労作時の呼吸困難、末梢浮腫、起座呼吸、反復性胸部感染症、起床時の頭痛、疲労、睡眠の質の低下、および食欲不振。
【0016】
このような疾病を治療または改善するために、一定範囲の治療が用いられている。さらに、その他の点では健常人も、呼吸障害の予防治療を有利に利用することができる。しかし、これらにおいては、複数の欠陥がある。
【0017】
2.2.2 療法
多様な療法(例えば、持続的気道陽圧(CPAP)療法、非侵襲的換気(NIV)および侵襲的換気(IV))が上記の呼吸障害の1つ以上の治療のために用いられている。
【0018】
持続的気道陽圧(CPAP)療法が、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の治療において用いられている。その作用メカニズムとしては、例えば軟口蓋および舌を押して後口咽頭壁へ前進または後退させることにより、持続的気道陽圧が空気圧スプリントとして機能し、これにより上気道の閉鎖を防止し得る。CPAP治療によるOSAの治療は自発的なものであり得るため、このような患者が治療の提供に用いられるデバイスについて以下のうち1つ以上に気づいた場合、患者が治療を遵守しないことを選択する可能性がある:不快、使用困難、高価、美観的な魅力の無さ。
【0019】
非侵襲的換気(NIV)は、換気補助を上気道を通じて患者へ提供して、呼吸機能の一部または全体を行うことにより患者の呼吸の補助および/または身体中の適切な酸素レベルの維持を提供する。換気補助が、非侵襲的患者インターフェースを介して提供される。NIVは、OHS、COPD、NMD、および胸壁障害などの形態のCSRおよび呼吸不全の治療に用いられている。いくつかの形態において、これらの治療の快適性および有効性が向上し得る。
【0020】
侵襲的換気(IV)は、自身で有効に呼吸することができなくなった患者に対して換気補助を提供し、気管切開管を用いて提供され得る。いくつかの形態において、これらの治療の快適性および有効性が向上し得る。
【0021】
2.2.3 治療システム
これらの治療は、治療法システムまたはデバイスによって提供され得る。このようなシステムおよびデバイスは、疾病を治療することなくスクリーニング、診断、または監視するためにも、用いられ得る。
【0022】
治療法システムは、呼吸圧力治療デバイス(RPTデバイス)、空気回路、加湿器、患者インターフェース、およびデータ管理を含み得る。
【0023】
別の形態の治療法システムとして、下顎再位置決めデバイスがある。
【0024】
2.2.3.1 患者インターフェース
患者インターフェースは、例えば気道入口への空気流れを提供することにより呼吸装具へのインターフェースを装着者へ提供するために、用いられ得る。空気流れは、鼻および/または口へのマスク、口への管、または患者気管への気管切開管を介して提供され得る。適用される療法に応じて、患者インターフェースは、例えば患者の顔の領域とのシールを形成し得、これにより、療法実行のための周囲圧力と共に充分な分散の圧力において(例えば、例えば周囲圧力に対して約10cmHOの陽圧において)ガス送達を促進する。酸素送達などの他の治療形態において、患者インターフェースは、約10cmHOの陽圧において気道へのガス供給の送達を促進するのに充分な密閉を含まない場合がある。
【0025】
特定の他のマスクシステムは、本分野において機能的に不適切であり得る。例えば、純然たる装飾目的のマスクの場合、適切な圧力を維持することができない場合がある。水中水泳またはダイビングに用いられるマスクシステムは、外部からのより高い圧力からの水侵入から保護することと、周囲よりも高い圧力において内部の空気を維持しないこととを行うように、構成され得る。
【0026】
特定のマスクは、本技術において臨床的に好ましく無い場合があり得る(例えば、マスクが鼻を介して気流を遮断し、口を介した気流のみを通過させる場合)。
【0027】
特定のマスクにおいて、患者がマスク構造の一部を口に挿入し、唇を介して密閉状態を生成および維持しなければならない場合、本技術において不快であるかまたは非実際的である場合がある。
【0028】
特定のマスクは、睡眠時(例えば、横向きにベッドに寝て枕の上に頭を置いた状態で睡眠する場合)における使用においては非実際的である場合がある。
【0029】
患者インターフェースの設計においては、複数の課題がある。顔は、複雑な三次元形状を有する。鼻および頭のサイズおよび形状は、個人によって大きく異なる。頭部には骨、軟骨および軟組織が含まれるため、顔の異なる領域は、機械的力に対して異なる反応を示す。すなわち、顎部または下顎骨は、頭蓋骨の他の骨に相対して動き得る。頭部全体は、呼吸治療期間を通じて動き得る。
【0030】
これらの課題に起因して、いくつかのマスクの場合、特に装着時間が長い場合または患者がシステムに不慣れである場合、押しつけがましい、美観的に望ましくない、コストが高い、フィット感が悪い、使用が困難、および不快感があるなどの理由のうち1つ以上がある。誤ったサイズのマスクが用いられた場合、コンプライアンスの低下、快適性の低下および患者予後の低下に繋がり得る。飛行士専用のマスク、個人用保護装具(例えば、フィルターマスク)、SCUBAマスクの一部として設計されたマスク、または麻酔投与用マスクは、その元々の用途には耐えられるものの、このようなマスクの場合、長時間(例えば、数時間)にわたって装着するには望ましくないほど不快な場合がある。このような不快感に起因して、治療に対する患者のコンプライアンスが低下する可能性がある。これは、マスクを睡眠時に装着する必要がある場合、特に当てはまる。
【0031】
CPAP治療は、患者が治療を承諾している場合、特定の呼吸障害の治療においては極めて効果的である。マスクが不快である場合または使用が難しい場合、患者は、治療を承諾しない場合がある。患者はマスクを定期的に洗浄するよう推奨されることが多いため、マスクの清浄が難しい(例えば、組立または分解が困難である場合)、患者は、マスクを清浄することができず、患者のコンプライアンスに影響が出る場合がある。
【0032】
他の用途(例えば、飛行士)用のマスクの場合、睡眠時呼吸障害の治療の使用には不適である場合があるため、睡眠時呼吸障害の治療の使用のために設計されたマスクは、他の用途に適している場合がある。
【0033】
これらの理由のめ、睡眠時のCPAP送達のための患者インターフェースは、明瞭な分野を形成する。
【0034】
2.2.3.1.1 シール形成構造
患者インターフェースは、シール形成構造を含み得る。患者インターフェースは、患者の顔と直接接触するため、シール形成構造の形状および構成は、患者インターフェースの有効性および快適性に直接影響を持ち得る。
【0035】
患者インターフェースは、使用時にシール形成構造を顔と係合させる場所の設計意図に従って、部分的に特徴付けられ得る。患者インターフェースの一形態において、シール形成構造は、左鼻孔の周囲にシールを形成するための第1のサブ部分と、右鼻孔の周囲にシールを形成するための第2のサブ部分とを含み得る。患者インターフェースの一形態において、シール形成構造は、使用時において双方の鼻孔を包囲する単一の要素を含み得る。このような単一の要素は、例えば顔の上唇領域および鼻ブリッジ領域上に載置されるように、設計され得る。患者インターフェースの一形態において、シール形成構造は、使用時に例えば顔の下唇領域上にシールを形成することにより口領域を包囲する要素を含み得る。患者インターフェースの一形態において、シール形成構造は、使用時に双方の鼻孔および口領域を包囲する単一の要素を含み得る。これらの異なる種類の患者インターフェースは、その製造業者によって鼻マスク、フルフェイスマスク、鼻枕、鼻パフおよび口鼻マスクなどの多様な名称によって公知であり得る。
【0036】
患者の顔の一領域において有効であり得るシール形成構造は、例えば患者の顔の異なる形状、構造、変化性および感受性領域に起因して、別の領域において不適切であり得る。例えば、患者の前額上に載置される水泳用ゴーグルのシールは、患者の鼻上における使用には不適切である場合がある。
【0037】
特定のシール形成構造は、広範囲の異なる顔形状およびサイズに対して1つの設計が適合し、快適でありかつ有効になるように、大量製造用に設計され得る。シールを形成するためには、患者の顔の形状と、大量製造された患者インターフェースのシール形成構造との間の不整合がある範囲まで、一方または双方を適合させる必要がある。
【0038】
1つの種類のシール形成構造は、患者インターフェースの周囲を包囲して延び、シール形成構造が患者の顔に対向して係合している状態で力が患者インターフェースへ付加された際、患者の顔を密閉することを意図する。このシール形成構造は、空気または流体充填クッションを含み得るか、または、ゴムなどのエラストマーによって構成された弾力性のある密閉要素の成形されたかまたは形成された表面を含み得る。この種のシール形成構造により、フィット感が不適切である場合、シール形成構造と顔との間に隙間が発生し、密閉を達成するには、患者インターフェースを顔に押しつけるためにさらなる力が必要になる。
【0039】
別の種類のシール形成構造は、陽圧がマスク内に付加された際に患者の顔に対して自己気密作用を提供するように、マスクの周囲の周辺に配置された薄材のフラップシールを使用する。先述の種類のシール形成部分と同様に、顔とマスクとの間の整合が良くない場合、密閉を達成するために必要なさらなる力が必要になり得るか、またはマスクから漏洩が発生し得る。さらに、シール形成構造の形状が患者の形状と整合しない場合、使用時においてシール形成部分に折り目または座屈が発生し、漏洩の原因になる。
【0040】
別の種類のシール形成構造は、例えば鼻孔中へ挿入される摩擦嵌め要素を含み得るが、これらを不快であると感じる患者も存在する。
【0041】
別の形態のシール形成構造は、密閉を達成するために接着部を用い得る。患者の中には、常に接着部を自身の顔に貼り付けるかまたは取り外すことが不便であると感じる患者もいる。
【0042】
一定範囲の患者インターフェースシール形成構造の技術について、(ResMed Limitedへ譲渡された以下の特許出願:WO1998/004,310;WO2006/074,513;WO2010/135,785)に開示がある。
【0043】
鼻枕の一形態が、Puritan Bennettによって製造されたAdam回路において見受けられる。別の鼻枕または鼻パフが、Puritan-Bennett Corporationへ譲渡された米国特許第4、782、832号(Trimbleら)の主題になっている。
【0044】
ResMed Limitedは、鼻枕を用いた以下の製品を製造している:SWIFT(登録商標)鼻枕マスク、SWIFT(登録商標)II鼻枕マスク、SWIFT(登録商標)LT鼻枕マスク、SWIFT(登録商標)FX鼻枕マスクおよびMIRAGELIBERTY(商標)フルフェイスマスク。ResMed Limitedへ譲渡された以下の特許出願において、鼻枕マスクの例についての記載がある:国際特許出願WO2004/073、778号(特に、ResMed LimitedのSWIFT(登録商標)鼻枕の様相を記載)、米国特許出願第2009/0044808号(特に、ResMed LimitedのSWIFT(登録商標)LT鼻枕の様相を記載);国際特許出願WO2005/063、328号およびWO2006/130、903号(特に、ResMed LimitedのMIRAGE LIBERTY(商標)フルフェイスマスクの様相を記載);国際特許出願WO2009/052、560号(特に、ResMed LimitedのSWIFT(登録商標)FX鼻枕の様相を記載)。
【0045】
2.2.3.1.2 位置決めおよび安定化
陽圧空気治療に用いられる患者インターフェースのシール形成構造は、密閉を妨害する空気圧力の対応する力を受ける。そのため、シール形成構造を位置決めすることと、顔の適切な部分に対して密閉を維持することとを行うために、多様な技術が用いられている。
【0046】
1つの技術において、接着部が用いられる。例えば、米国特許出願公開US2010/0000534号を参照されたい。しかし、接着部を用いた場合、不快感がある場合がある。
【0047】
別の技術において、1つ以上のストラップおよび/または安定化ハーネスが用いられる。多数のこのようなハーネスの場合、フィット感が悪い、かさばる、不快および扱いにくいなどの点のうち1つ以上が当てはまる。
【0048】
2.2.3.2 呼吸圧力治療(RPT)デバイス
呼吸圧力治療(RPT)デバイスは、例えばデバイスを作動させて気道へのインターフェースへの空気送達流れを生成することにより、上記した複数の治療のうち1つ以上の送達に個別的に、またはシステムの一部として用いられ得る。この空気流れは、加圧され得る。RPTデバイスの例を挙げると、CPAPデバイスおよび人工呼吸器がある。
【0049】
空気圧力生成器は、広範な用途(例えば、工業規模換気システム)において公知である。しかし、医療用途のための空気圧力生成器は、より一般的な空気圧力生成器(例えば、医療機器の信頼性要件、サイズ要件および重量要件)では満足できない特定の要件を有する。加えて、医療治療向けに設計されたデバイスであっても、以下のうち1つ以上に関連して欠陥を免れない場合がある:快適性、ノイズ、使いやすさ、有効性、サイズ、重量、製造可能性、コストおよび信頼性。
【0050】
特定のRPTデバイスの特殊な要件の一例として、音響ノイズがある。
【0051】
従来のRPTデバイスのノイズ出力レベルの表(試料1個のみをISO3744に指定の試験方法を用いてCPAPモードにおいて10cmHOにて測定)。
【表1】
【0052】
睡眠時呼吸障害の治療に用いられる1つの公知のRPTデバイスとして、S9睡眠治療システム(製造元:ResMed Limited)がある。RPTデバイスの別の例として、人工呼吸器がある。人工呼吸器(例えば、成人および小児用人工呼吸器のResMed Stellar(商標)シリーズ)の場合、複数の疾病(例を非限定的に挙げると、NMD、OHSおよびCOPD)の治療のための一定範囲のための患者のための侵襲的および非侵襲的な非依存的換気のための補助を提供し得る。
【0053】
ResMed Elisアクサンテギュee(登録商標)150人工呼吸器およびResMedVSIII(商標)人工呼吸器は、複数の疾病の治療のための成人患者または小児用患者に適した侵襲的および非侵襲的な依存的換気の補助を提供し得る。これらの人工呼吸器により、単一または二重の肢回路を用いた容積換気モードおよび気圧換気モードが得られる。RPTデバイスは典型的には、圧力生成器(例えば、電動送風機または圧縮ガスリザーバ)を含み、患者の気道へ空気流れを供給するように構成される。場合によっては、空気流れは、患者の気道へ陽圧で供給され得る。RPTデバイスの出口は、空気回路を介して上記したような患者インターフェースへ接続される。
【0054】
デバイスの設計者には、無数の選択肢が提示され得る。設計基準同士が対立することが多くあるため、特定の設計選択肢が慣例からほど遠くなるかあるいは避けられないことがある。さらに、特定の態様の快適性および有効性は、1つ以上のパラメータの些細な変更から大きく影響を受ける可能性もある。
2.2.3.3 加湿器
【0055】
空気流れの送達を加湿無しで行った場合、気道の乾燥に繋がり得る。加湿器をRPTデバイスおよび患者インターフェースと共に用いた場合、加湿ガスが生成されるため、鼻粘膜の乾燥が最小化され、患者気道の快適性が増加する。加えて、より冷涼な気候においては、概して患者インターフェースの周囲の顔領域へ温風を付加すると、冷風の場合よりも快適性が高まる。
【0056】
一定範囲の人工的加湿機器およびシステムが公知であるが、医療加湿器の特殊な要件を満たせていない。
【0057】
医療加湿器は、典型的には患者が(例えば病院において)睡眠時または安静時にあるときに、必要な場合に周囲空気に相対して空気流れの湿度および/または温度を増加させるように、用いられる。枕元に置かれる医療加湿器は、小型である場合がある。医療加湿器は、患者へ送達される空気流れの加湿および/または加熱のみを行うように構成され得、患者の周囲の加湿および/または加熱は行わない。例えば、部屋ベースのシステム(例えば、サウナ、エアコン、または蒸発冷却器)は、呼吸により患者体内に取り込まれる空気も加湿し得るものの、これらのシステムの場合、部屋全体も加湿および/または加熱するため、占有者にとって不快感であり得る。さらに、医療加湿器の場合、工業用加湿器よりも安全面での制約がより厳しい場合もある。
【0058】
多数の医療加湿器が公知であるものの、このような医療加湿器の場合、1つ以上の欠陥を被り得る。すなわち、このような医療加湿器の場合、加湿が不適切なものもあれば、患者にとって使用が困難または不便であるものもある。
【0059】
2.2.3.4 データ管理
臨床的理由により、呼吸治療が処方された患者が「コンプライアンスを遵守している」(例えば、患者が自身のRPTデバイスを1つ以上の「コンプライアンスルール」に則っているか)を決定するためのデータを入手する場合がある。CPAP治療についてのコンプライアンスルールの一例として、患者がコンプライアンスを遵守しているとみなすためには、患者が連続30日間のうち少なくとも21日間にわたってRPTデバイスを一晩あたり少なくとも4時間にわたって使用する必要がある。患者のコンプライアンスを決定するためには、RPTデバイスのプロバイダ(例えば、ヘルスケアプロバイダ)は、RPTデバイスを用いた患者の治療を記述するデータを手作業で入手し、所定期間にわたる使用率を計算し、これをコンプライアンスルールと比較し得る。ヘルスケアプロバイダが患者が自身のRPTデバイスをコンプライアンスルールに則って使用したと決定すると、当該ヘルスケアプロバイダは、患者がコンプライアンスを遵守している旨を第三者に通知し得る。
【0060】
患者の治療において、治療データの第三者または外部システムへの通信から恩恵を受ける他の態様があり得る。
【0061】
このようなデータを通信および管理するための既存のプロセスの場合、高コスト、時間がかかること、エラーの発生し易さのうち1つ以上が発生し得る。
【0062】
2.2.3.5 下顎の再位置決め
下顎再位置決めデバイス(MRD)または下顎前方固定デバイス(MAD)は、睡眠時無呼吸およびいびきの治療選択肢の1つである。これは、歯科医または他の供給業者から利用可能である調節可能な口腔用器具であり、下顎部(下顎骨)を睡眠時に前方位置に保持する。MRDは、取り外し可能なデバイスであり、患者の睡眠前に口内に挿入され、睡眠後に取り外される。そのため、MRDは、常時装着用途を想定した設計はされていない。MRDは、カスタム仕様にしてもよいし、あるいは、標準形態で製造してもよく、患者の歯に適合するように設計された咬合印象部分を含む。この下顎からの機械的突起は、舌の後ろ側の空間を拡張させ、咽頭壁上へ張力を付加して、気道崩壊を低減させ、口蓋振動を低減させる。
【0063】
特定の例において、下顎前方固定デバイスは、上顎または上顎骨上の歯と係合するかまたは嵌め合うように意図された上側スプリントと、上顎または下顎骨上の歯と係合するかまたは嵌め合うように意図された下側スプリントとを含み得る。上側スプリントおよび下側スプリントは、一対の接続ロッドを介して相互に横方向に接続される。この1組の接続ロッドは、上側スプリントおよび下側スプリント上において対称に固定される。
【0064】
このような設計において、接続ロッドの長さは、MRDが患者の口中に配置されたときに下顎骨が前方位置に保持されるように、選択される。接続ロッドの長さは、下顎骨の突起のレベルを変化させるように、調節され得る。歯科医は、突起のレベルを下顎骨に合わせて決定することができ、その結果、接続ロッドの長さが決定される。
【0065】
下顎骨を上顎骨に対して前方に押し出すように構成されているMRDもあれば、ResMed Narval CC(商標)MRDなどの他のMADのように、下顎骨を前方位置に保持するように設計されているものもある。このデバイスにより、歯科的副作用および側頭/下顎間の関節(TMJ)の副作用も低下または最小化される。そのため、このデバイスは、歯のうち1つ以上の任意の動きを最小化または回避するように構成される。
【0066】
2.2.3.6 通気技術
いくつかの形態の治療法システムは、呼息された二酸化炭素を押し出すための通気部を含み得る。この通気部により、患者インターフェースの内部空間(例えば、プレナムチャンバ)から患者インターフェースの外部(例えば、周囲)へのガスの流れが可能になり得る。
【0067】
この通気部は、オリフィスを含み得、マスク使用時において、ガスがオリフィスを通じて流れ得る。多数のこのような通気部の場合、音がうるさい。他の場合、使用時において閉塞し得るため、押し出しが不十分になる。いくつかの通気部の場合、例えば音または気流集中に起因して、患者1000と同床者1100の睡眠を妨げる場合がある。
【0068】
ResMed Limitedは、複数の向上したマスク通気技術を開発している。下記を参照されたい:国際特許出願公開第WO1998/034、665;国際特許出願公開第WO2000/078、381;米国特許第6、581、594号;米国特許出願公開第US2009/0050156;米国特許出願公開第2009/0044808。
【0069】
従来のマスクのノイズの表(ISO17510-2:2007、1mにおける10cmHO圧力)
【表2】
【0070】
(*試料1個のみをISO3744に指定の試験方法を用いてCPAPモードにおいて10cmHOにて測定)
【0071】
多様な対象の音圧値を以下に羅列する。
【表3】
【0072】
2.2.4 スクリーニング、診断、および監視システム
睡眠ポリグラフ(PSG)は、心肺障害の診断および監視のための従来のシステムであり、典型的には、システム適用のために専門家臨床スタッフを必要とすることが多い。PSGにおいては、多様な身体信号(例えば、脳波図(EEG)、心電図記録(ECG)、球電図記録(EOG)、筋電図検査(EMG))を記録するために、典型的には15~20個の接触覚センサを人体上に配置する。睡眠時呼吸障害のPSGのめには、患者を専門病院において二晩にわたって観察する必要があった。すなわち、第一夜は純然たる診断のためであり、第二夜は、臨床医による治療パラメータのタイトレーションのために必要であった。そのため、PSGは高コストであり、利便性も低い。睡眠時呼吸障害のスクリーニング/診断/監視は家庭において特に不向きである。
【0073】
一般に、スクリーニングおよび診断は、疾病の兆候と症状によって疾患を特定することである。通常、スクリーニングは、患者のSDBがさらなる調査を求める程であるかないかを示す真/偽結果を出すいっぽう、診断は、臨床で実行可能な情報を出すことが多い。スクリーニングおよび診断は、一回性手続きになる傾向であることに反して、疾病の経過を監視することは無限定に続けられる。いくつかのスクリーニング/診断システムは、スクリーニング/診断にのみ適合されているが、いくつかは監視にも使用することができる。
【0074】
臨床専門家は、患者のスクリーニング、診断または監視をPSG信号の視覚的観察に基づいて適切に行い得る。しかし、臨床専門家が居ないまたは臨床専門家への支払いができない状況がある。患者の疾病について臨床専門家によって意見が異なる場合がある。さらに、或る臨床専門家は、時期によって異なる基準を適用し得る。
【発明の概要】
【0075】
3 技術の簡単な説明
本技術は、呼吸障害のスクリーニング、診断、監視、改善、治療または予防において用いられる医療機器の提供に関連し、これらの医療機器は、向上した快適性、コスト、有効性、使い易さおよび製造可能性のうち1つ以上を有する。
【0076】
本技術の第1の態様は、呼吸障害のスクリーニング、診断、監視、改善、治療または予防に用いられる装置に関連する。
【0077】
本技術の別の態様は、呼吸障害のスクリーニング、診断、監視、改善、治療または予防において用いられる方法に関連する。
【0078】
本技術の特定の形態の一態様は、呼吸治療についての患者のコンプライアンスを向上させる方法および/または装置を提供することである。
【0079】
本技術の一形態の別の態様は、意図される装着者の形状に対して相補的である周辺形状と共に成形または他の場合に構築された患者インターフェースである。
【0080】
本技術の一形態の一態様は、装置の製造方法である。
【0081】
本技術の特定の形態の一態様は、例えば医療トレーニングを受けたことの無い人、あまり器用ではない人や洞察力の欠いた人、またはこの種の医療デバイスの使用経験が限られた人にとって使い易い医療デバイスである。
【0082】
本技術の一形態の一態様は、患者の家庭において例えば石けん水などによって洗浄することが可能な患者インターフェースであり、特殊な清浄器具は不要である。
【0083】
本技術の態様は、クッションアセンブリおよび位置決めおよび安定化構造を含む患者インターフェースに関する。クッションアセンブリは、患者の鼻および/または口の気道とのシールを形成するように構築および配置されたシール形成構造を含む。位置決めおよび安定化構造により、治療時においてクッションが患者の頭部上の所定位置に維持される。
【0084】
本技術の態様は、呼吸可能なガスの流れを患者の気道へ送達するように構成された患者インターフェースに関する。患者インターフェースは、鼻クッションを含む鼻マスク構成と、(鼻クッションおよび可撓性継手によって鼻クッションへ連結された口クッションを含む)口鼻マスク構成との間において構成可能である。患者インターフェースは、鼻クッションおよび/または口クッションを患者の頭部上の治療的に有効な位置に保持するための力を提供する位置決めおよび安定化構造を含む。
【0085】
本技術の態様は、呼吸可能なガスの流れを患者の気道へ送達するように構成された患者インターフェースに関する。患者インターフェースは、鼻クッション、口クッション、鼻クッションを口クッションへ接続させる可撓性継手と、位置決めおよび安定化構造とを含む。この位置決めおよび安定化構造により、鼻クッションおよび口クッションは、患者の頭部上の治療的に有効な位置に保持される。
【0086】
本技術の態様は、睡眠時呼吸障害の改善のために、呼吸可能なガスの流れを患者の気道へ送達するように構成された患者インターフェースに関連する。患者インターフェースは、治療圧力まで加圧可能な鼻クッションプレナムチャンバのうち少なくとも一部を形成する鼻クッション;治療圧力まで加圧可能な口クッションプレナムチャンバのうち少なくとも一部を形成する口クッション;鼻クッションを口クッションへ接続させる可撓性継手;および鼻シール形成構造および口シール形成構造を患者の頭部上の治療的に有効な位置に保持するための力を提供する位置決めおよび安定化構造を含む。
【0087】
本技術の別の態様は、睡眠時呼吸障害の改善のために、患者の睡眠時において周囲空気圧力に対して陽圧の空気流れを少なくとも患者の鼻孔の入口を含む患者の気道への入口へ送達する患者インターフェースキットに関連する。患者インターフェースは、以下を含む:
治療圧力まで加圧可能な鼻クッションプレナムチャンバのうち少なくとも一部を形成する鼻クッションであって、鼻クッションは、患者の顔のうち患者の鼻孔への入口を包囲する領域とシールを形成するように構築および配置された鼻シール形成構造を含み、鼻クッションは、鼻クッション開口部を有する、鼻クッション;
治療圧力まで加圧可能な口クッションプレナムチャンバのうち少なくとも一部を形成する口クッションであって、口クッションは、患者の顔のうち患者の口への入口を包囲する領域とシールを形成するように構築および配置されたシール形成構造を含み、口クッションは、口クッション開口部を有し、口クッションは、鼻クッションを口クッションへ選択的に接続させるように口開口部の上方に位置決めされた可撓性継手を含む、口クッション;および
鼻シール形成構造および/または口シール形成構造を患者の頭部上の治療的に有効な位置に保持するための力を提供する位置決めおよび安定化構造であって、位置決めおよび安定化構造は、上ストラップまたは導管を含む鼻ヘッドギアと、下ストラップを含む口ヘッドギアとを含み、口ヘッドギアは、鼻ヘッドギアへ選択的に接続される、位置決めおよび安定化構造。
鼻開口部および口開口部はそれぞれ、1つ以上のガス洗い流し口を有する通気インサートを受容するように構成され、代替例において、空気送達管へ接続するように適合された管コネクタ、鼻開口部および口開口部は、同一サイズである。
鼻開口部は、可撓性継手の鼻クッション端部を受容するように追加的にかつ代替的に構成され、
患者インターフェースキットは、患者が鼻クッション治療モードまたは鼻クッションおよび口クッション治療モードの組み合わせを選択することを可能にするように構成され、
鼻クッション治療モードは、(口クッションまたは口ヘッドギアではなく)鼻クッションおよび鼻ヘッドギアを有する鼻アセンブリを含み、鼻クッションは、鼻クッション開口部内に主要された通気インサートおよび/または管接続部を含み、
鼻クッションおよび口クッションを含む口鼻アセンブリを含む鼻クッションおよび口クッション治療モードの組み合わせの接続は、可撓性継手の鼻クッション端部の鼻クッション開口部への挿入により行われ、鼻ヘッドギアは、鼻クッションの鼻コネクタへ接続され、口ヘッドギアは、口クッションの口コネクタへ接続され、口ヘッドギアは、鼻ヘッドギアへ取り外し可能に接続され、口クッションは、口クッション開口部内に受容された通気インサートまたは管コネクタを含む。
【0088】
例において、患者インターフェースキットは、以下の特徴のうち1つ以上を含み得る:(a)鼻ヘッドギアは、呼吸可能なガスの流れを鼻クッションへ送達する上側導管を含み;(b)鼻クッション治療モードにおいて、鼻クッション開口部は、通気インサートを含み、口鼻クッション治療モードにおいて、口クッション開口部は、通気インサートを含み;(c)鼻ヘッドギアは、鼻クッションへの接続のための上ストラップを含み;(d)鼻クッション治療モードにおいて、鼻クッション開口部は、管コネクタを含み、口鼻クッション治療モードにおいて、口クッション開口部は、管コネクタを含み;(e)鼻クッションは、加圧ガスを受容するポートを含み、鼻クッションは、ポートを閉鎖させるプラグを含み、プラグは、上ストラップへの接続のためのコネクタを含み;(f)管コネクタは、ガス洗い流しのための少なくとも1つの通気穴を含み;(g)可撓性継手は、少なくとも1つの折り目を有するコンチェルティーナセクションを含み;(h)コンチェルティーナにより、患者のスプラメントン(supramenton)角度に対応するために、口クッションが鼻クッションに相対して軸方向および曲線方向に移動することが可能になり;(i)可撓性継手および/または口クッションは、可撓性継手のバネ付勢ならびに/あるいは口クッションおよび/または可撓性継手を通じた呼吸可能なガスの流れの導入に起因して患者のスプラメントンへと移動するように構成され;(j)可撓性継手は、中立位置と、患者のスプラメントンへと方向付けられた曲線位置とを有し、可撓性継手は、中立位置から患者の顔から離隔方向の位置への動きに耐え;(k)鼻クッション端部は、加圧された呼吸可能なガスの流れを患者のフランクフルト水平に対して実質的に平行な方向において鼻プレナムチャンバ内へまたは鼻プレナムチャンバから方向付けるか、または受容するように構成され;(l)口クッション端部は、口クッションの水平中間面の上方の位置において口クッションへ取り付けられ;(m)鼻クッションは、一対の上側ヘッドギアコネクタを含み、口クッションは、一対の下側ヘッドギアコネクタを含み、鼻ヘッドギアは、上側ヘッドギアコネクタへ接続するように構成され、口ヘッドギアは、下側ヘッドギアコネクタへ接続するように構成され;(n)下側ヘッドギアコネクタはそれぞれ、磁性接続要素を含み;(o)下側ヘッドギアコネクタはそれぞれ、ウイッシュボーン形状を有する一対のアームを含み、下側ヘッドギアコネクタはおよび、上アームと、口クッションの前面へ接続された下アームとを有し、上アームは、下アームから間隔を開けて配置され;(p)上アームおよび下アームにより、支持力がそれぞれ口クッションの中間ゾーンおよび下側ゾーンへ分配され;(q)一対のアームはそれぞれ可撓性であり、U字型形状を有し;(r)U字型形状は、口クッションの側方部分とサイズおよび/または形状が類似し;(s)一対のアームはそれぞれ、シリコーンまたはシリコーンよりも高剛性の材料によって構成され;(t)一対のアームはそれぞれ、シリコーン製の口クッションの前面へ接続され;(u)アームはそれぞれ、口クッションの側方縁部から内方に間隔を開けて配置された位置において口クッションの前面へ取り付けられ;(v)アームはそれぞれ、患者により着用されかつ位置決めおよび安定化構造によって支持された際に患者のケイリオンの対向する側部に跨がることにより、患者の口の角部へ力を付加するような寸法および構成にされ;(w)アームはそれぞれ、移動可能であるかまたは可撓性であるため、口クッションの前面と同一平面に配置され;(x)アームから、アームへ連結された下ストラップへ付加された張力に起因して力が口クッションの前面へ付加されて、口クッションは、患者の口を包囲する角部内へアンカー固定され;(y)口クッションおよび/または鼻クッションは、シリコーンボディ上に取り付けられたテキスタイル密閉面を含み;(z)口クッションは、前面と、シーリングリップと、前面およびシーリングリップを接続させる壁とを含み、前面、シーリングリップおよび壁は全てシリコーン製であり、壁および/またはシーリングリップは、口クッションの口角部の上部の方が口クッションの口角部の下部よりも高剛性であり;(aa)口クッションの深さは、鼻クッションおよび/または患者の鼻の鼻尖点を超えて延びないように構成され;(ab)口シール形成構造は、患者の顎が開いたときに口クッションが上方に拡張することを可能にするように構成された上唇膜を含み;(ac)上唇膜は、口クッションプレナムチャンバへと内方に曲線状にされた中央部を含み;(ad)上唇膜は、口クッションプレナムチャンバから離隔方向において外方に実質的に直線状または曲線状の中央部を含み;(ae)口シール形成構造は、患者の顎が開いたときに口クッションが下方に拡張することを可能にするように構成された下唇膜を含み;(af)口クッションは、加圧ガスの流れに起因して拡張して、口クッションの上側部および/または下側部を口クッションの側方側から外方に保持するように構成され;(ag)可撓性継手は、窒息防止弁を含み;(ah)口クッションは、第1の種類の材料によって構成され、鼻クッションは、第1の種類の材料と異なる第2の種類の材料によって構成され;(ai)口クッションは、第1の種類の材料によって構成された密閉面を含み、鼻クッションは、第1の種類の材料と異なる第2の種類の材料の密閉面を含み;(aj)第1の種類の材料および第2の種類の材料のうち1つはシリコーンであり、第1の種類の材料および第2の種類の材料のうち他方はテキスタイルであり;かつ/または(ak)複数の穴を含む一対の通気コネクタをさらに含み、一対の通気コネクタは、鼻ヘッドギアを鼻クッションの鼻コネクタへ連結させるように構成される。
【0089】
本技術の別の態様は、睡眠時呼吸障害の改善のために、患者の睡眠時において周囲空気圧力に対して陽圧の空気流れを少なくとも患者の鼻孔の入口を含む患者の気道への入口へ送達する患者インターフェースキットに関連する。患者インターフェースは、以下を含む:
治療圧力まで加圧可能な鼻クッションプレナムチャンバのうち少なくとも一部を形成する鼻クッションであって、鼻クッションは、患者の顔のうち患者の鼻孔への入口を包囲する領域とシールを形成するように構築および配置された鼻シール形成構造を含み、鼻クッションは、鼻クッション開口部を有する、鼻クッション;
治療圧力まで加圧可能な口クッションプレナムチャンバのうち少なくとも一部を形成する口クッションであって、口クッションは、患者の顔のうち患者の口への入口を包囲する領域とシールを形成するように構築および配置されたシール形成構造を含み、口クッションは、口クッション開口部を有し、口クッションは、鼻クッションを口クッションへ選択的に接続させるように口開口部の上方に位置決めされた可撓性継手を含む、口クッション;および
鼻シール形成構造および/または口シール形成構造を患者の頭部上の治療的に有効な位置に保持するための力を提供する位置決めおよび安定化構造であって、位置決めおよび安定化構造は、上側導管を含む鼻ヘッドギアと、下ストラップを含む口ヘッドギアとを含み、口ヘッドギアは、鼻ヘッドギアへ選択的に接続される、位置決めおよび安定化構造。
鼻開口部および口開口部はそれぞれ、1つ以上のガス洗い流し口を有する通気インサートを受容するように構成され、代替例において、空気送達管へ接続するように適合された管コネクタ、鼻開口部および口開口部は、同一サイズであり、
鼻開口部は、可撓性継手の鼻クッション端部を受容するように追加的にかつ代替的に構成され、
患者インターフェースキットは、患者が鼻クッション治療モードまたは鼻クッションおよび口クッション治療モードの組み合わせを選択することを可能にするように構成され、
鼻クッション治療モードは、(口クッションではなく)鼻クッションおよび上側導管を有する鼻アセンブリを含み、口ヘッドギアまたは管コネクタ、鼻クッションは、鼻クッション開口部内に受容された通気インサートを含み、
鼻クッションおよび口クッションを含む口鼻アセンブリを含む鼻クッションおよび口クッション治療モードの組み合わせの接続は、可撓性継手の鼻クッション端部の鼻クッション開口部への挿入によって行われ、上側導管は、鼻クッションの中空の鼻コネクタへ接続され、口ヘッドギアは、口クッションの口コネクタへ接続され、口ヘッドギアは、鼻ヘッドギアへ取り外し可能に接続され、口クッションは、口クッション開口部内に受容された通気インサートを含む。
【0090】
例において、患者インターフェースキットは、以下の特徴のうち1つ以上を含み得る:(a)管コネクタは、ガス洗い流しのための少なくとも1つの通気穴を含み得;(b)可撓性継手は、少なくとも1つの折り目を有するコンチェルティーナセクションを含み;(c)コンチェルティーナにより、患者のスプラメントン角度に対応するために、口クッションが鼻クッションに相対して軸方向および曲線方向に移動することが可能になり;(d)可撓性継手および/または口クッションは、可撓性継手のバネ付勢ならびに/あるいは口クッションおよび/または可撓性継手を通じた呼吸可能なガスの流れの導入に起因して患者のスプラメントンへと移動するように構成され;(e)可撓性継手は、中立位置と、患者のスプラメントンへと方向付けられた曲線位置とを有し、可撓性継手は、中立位置から患者の顔から離隔方向の位置への動きに耐え;(f)鼻クッション端部は、加圧された呼吸可能なガスの流れを患者のフランクフルト水平に対して実質的に平行な方向において鼻プレナムチャンバ内へまたは鼻プレナムチャンバから方向付けるか、または受容するように構成され;(g)口クッション端部は、口クッションの水平中間面の上方の位置において口クッションへ取り付けられ;(h)口コネクタはそれぞれ、ウイッシュボーン形状を有する一対のアームを含み、口コネクタはそれぞれ、上アームと、口クッションの前面へ接続された下アームとを有し、上アームは、下アームから間隔を開けて配置され;(i)上アームおよび下アームにより、支持力がそれぞれ口クッションの中間ゾーンおよび下側ゾーンへ分配され;(j)一対のアームはそれぞれ可撓性であり、U字型形状を有し;(k)U字型形状は、口クッションの側方部分とサイズおよび/または形状が類似し;(m)一対のアームはそれぞれ、シリコーンまたはシリコーンよりも高剛性の材料によって構成され;(n)一対のアームはそれぞれ、シリコーン製の口クッションの前面へ接続され;(o)アームはそれぞれ、口クッションの側方縁部から内方に間隔を開けて配置された位置において口クッションの前面へ取り付けられ;(p)アームはそれぞれ、患者により着用されかつ位置決めおよび安定化構造によって支持された際に患者のケイリオンの対向する側部に跨がることにより、患者の口の角部へ力を付加するような寸法および構成にされ;(q)アームはそれぞれ、移動可能であるかまたは可撓性であるため、口クッションの前面と同一平面に配置され;(r)アームから、アームへ連結された下ストラップへ付加された張力に起因して力が口クッションの前面へ付加されて、口クッションは、患者の口を包囲する角部内へアンカー固定され;(s)口クッションは、前面と、シーリングリップと、前面およびシーリングリップを接続させる壁とを含み、前面、シーリングリップおよび壁は全てシリコーン製であり、壁および/またはシーリングリップは、口クッションの口角部の上部の方が口クッションの口角部の下部よりも高剛性であり;(t)口クッションの深さは、鼻クッションおよび/または患者の鼻の鼻尖点を超えて延びないように構成され;(u)口シール形成構造は、患者の顎が開いたときに口クッションが上方に拡張することを可能にするように構成された上唇膜を含み;(v)上唇膜は、口クッションプレナムチャンバへと内方に曲線状にされた中央部を含み;(w)上唇膜は、口クッションプレナムチャンバから離隔方向において外方に実質的に直線状または曲線状の中央部を含み;(x)口シール形成構造は、患者の顎が開いたときに口クッションが下方に拡張することを可能にするように構成された下唇膜を含み;(y)口クッションは、加圧ガスの流れに起因して拡張して、口クッションの上側部および/または下側部を口クッションの側方側から外方に保持するように構成され;(z)可撓性継手は、窒息防止弁を含み;(aa)口クッションは、第1の種類の材料によって構成された密閉面を含み、鼻クッションは、第1の種類の材料と異なる第2の種類の材料の密閉面を含み;(ab)第1の種類の材料および第2の種類の材料のうち1つは、シリコーンであり、第1の種類の材料および第2の種類の材料のうち他方は、テキスタイルであり;かつ/または(ac)複数の穴を含む一対の通気コネクタをさらに含み、一対の通気コネクタは、上側導管を鼻クッションの中空の鼻コネクタへ連結させるように構成される。
【0091】
本技術の別の態様は、口鼻マスクを患者上にフィットさせる方法に関連する。口鼻マスクは、睡眠時呼吸障害の改善のために、患者の睡眠時に周囲空気圧力に対して陽圧の空気流れを患者へ送達するように構成される。本方法は、以下を含む:治療圧力まで加圧可能な鼻クッションプレナムチャンバのうち少なくとも一部を形成する鼻クッションを提供することであって、鼻クッションは、患者の顔のうち患者の鼻孔への入口を包囲する領域とシールを形成するように構築および配置された鼻シール形成構造を含む、こと;治療圧力まで加圧可能な口クッションプレナムチャンバのうち少なくとも一部を形成する口クッションを提供することであって、口クッションは、患者の顔のうち患者の口への入口を包囲する領域とシールを形成するように構築および配置されたシール形成構造を含む、こと;鼻クッションおよび口クッションを可撓性継手と接続させること;鼻シール形成構造および口シール形成構造を患者の頭部上の治療的に有効な位置に保持することであって、保持することは、口クッションが鼻クッションへ接続されている状態で鼻クッションを患者の鼻の下側に配置することおよび患者の上唇の上部と係合させることによって行われる、こと、上側ヘッドギア導管またはストラップを用いて鼻クッションを患者の頭部上に固定させること、上側ヘッドギア導管またはストラップの長さおよび/または位置を調節すること、鼻クッションの下側において口クッションの上側膜を患者の上唇の下部上に位置決めすることにより、口クッションと鼻クッションとの間の係合を可能にすること、下側ヘッドギアストラップを用いて口クッションを患者の頭部上に固定すること、下側ヘッドギアストラップの長さおよび/または位置を調節することによって行われ、上側ヘッドギア導管またはストラップの調節は、下側ヘッドギアストラップの調節から実質的に独立している、こと。
【0092】
本技術の別の態様は、睡眠時呼吸障害の改善のために、患者の睡眠時において周囲空気圧力に対して陽圧の空気流れを患者の気道への入口へ送達する患者インターフェースに関連する。患者インターフェースは、以下を含む:治療圧力まで加圧可能な口クッションプレナムチャンバのうち少なくとも一部を形成する口クッションであって、口クッションは、患者の顔のうち患者の鼻の下側にありかつ患者の口への入口を包囲する領域とシールを形成するように構築および配置された口シール形成構造と、呼吸可能なガスの流れを口クッションプレナムチャンバにおいて進入および/または退出させるための第1の開口部を含む可撓性前面と、可撓性前面へ取り付けられた一対の下側ヘッドギアコネクタとを含む、口クッション;ならびに一対の下側ヘッドギアコネクタを接続させることと、口シール形成構造を患者の頭部上の治療的に有効な位置に保持するための力を提供することとを行うように構成された位置決めおよび安定化構造。
【0093】
例において、患者インターフェースは、以下の特徴のうち1つ以上を含み得る:(a)口クッションは、シーリングリップと、前面およびシーリングリップを接続させる壁とを含み、シーリングリップおよび壁は全てシリコーン製であり;(b)下側ヘッドギアコネクタはそれぞれ、上アームと、口クッションの側方縁部から内方に間隔を開けて配置された位置において口クッションの前面へ取り付けられた下アームとを含み、上アームは、下アームから間隔を開けて配置され;(c)アームはそれぞれ、患者により着用されかつ位置決めおよび安定化構造によって支持された際に患者のケイリオンの対向する側部に跨がることにより、患者の口の角部へ力を付加するような寸法および構成にされ;(d)下側ヘッドギアコネクタはそれぞれ、磁性接続要素を含み;(e)アームはそれぞれ可撓性前面の対向する側部に跨がり、口シール形成構造の角部へ力を付加するような寸法および構成にされ;(f)上アームおよび下アームは、ウイッシュボーン形状に設けられ;(g)上アームおよび下アームにより、支持力がそれぞれ口クッションの中間ゾーンおよび下側ゾーンへ分配され;(h)上アームおよび下アームは、可撓性であり、U字型形状を有し;(i)U字型形状は、口クッションの側方部分とサイズおよび/または形状が類似し;(j)U字型形状の端部は、口クッションの前面へ接続され、U字型形状の中間部は、磁性接続要素を含み;(k)上アームおよび下アームは、シリコーンまたはシリコーンよりも高剛性の材料によって構成され;(l)アームはそれぞれ、移動可能であるかまたは可撓性であるため、口クッションの前面と同一平面に配置され;(m)アームから、アームへ連結された下側ヘッドギアストラップへ付加された張力に起因して力が口クッションの前面へ付加されて、口クッションは、患者の口を包囲する角部内へアンカー固定され;(n)口クッションは、シーリングリップと、前面およびシーリングリップを接続させる壁とを含み、壁および/またはシーリングリップは、口クッションの口角部の上部の方が口クッションの口角部の下部よりも高剛性であり;(o)口クッションの側方側は可撓性であるため、シールを維持しつつ患者の顎の下降が可能となり;(p)口の上方において患者の顔を密閉するように構成された口シール形成構造の幅は、口の下側において患者の顔を密閉するように構成された口シール形成構造の幅よりも小さく;(g)口クッションおよび/または口シール形成構造は、患者のケイリオンと鼻唇溝との間において口の周囲を密閉するための幅を有し;(r)口クッションおよび/または口シール形成構造は、上唇の下部上の口ならびにスプラメントンと下唇と間の接合部の周囲を密閉するための高さを有し;(s)口クッションの深さは、患者の鼻の鼻尖点を超えて延びないように構成され;(t)口シール形成構造は、患者の顎が開いたときに口クッションが上方に拡張することを可能にするように構成された上唇膜を含み;(u)上唇膜は、口クッションプレナムチャンバへと内方に曲線状にされた中央部を含み;(v)上唇膜は、口クッションプレナムチャンバから離隔方向において外方に実質的に直線状または曲線状の中央部を含み;(w)口シール形成構造は、患者の顎が開いたときに口クッションが下方に拡張することを可能にするように構成された下唇膜を含み;(x)口シール形成構造は、上唇膜および下唇膜を含み、上唇膜の幅は、下唇膜の幅よりも小さく;(y)口クッションは、加圧ガスの流れに起因して拡張して、口クッションの上側部および/または下側部を口クッションの側方側から外方に保持するように構成され;(z)口クッションは、呼吸可能なガスを口クッションへ提供するように構成された管コネクタをさらに含み;(aa)口クッションは、管コネクタまたは取り外し可能な通気部を受容するように構成された第2の開口部をさらに含み;(ab)第2の開口部は、口クッションの前面上に設けられかつ第1の開口部の下側に設けられ;かつ/または(ac)前面のうち第2の開口部の周囲の領域は、口クッションの他の部分よりも高剛性である。
【0094】
本技術の別の態様は、睡眠時呼吸障害の改善のために、患者の睡眠時において周囲空気圧力に対して陽圧の空気流れを患者の気道への入口へ送達する患者インターフェースに関連する。患者インターフェースは、以下を含む:治療圧力まで加圧可能な口クッションプレナムチャンバのうち少なくとも一部を形成する口クッションであって、口クッションは、患者の顔のうち患者の口への入口を包囲する領域とシールを形成するように構築および配置された口シール形成構造を含み、口クッションは、呼吸可能なガスの流れを口クッションプレナムチャンバにおいて進入および/または退出させるために第1の開口部を口クッションの前面に含み、一対の下側ヘッドギアコネクタを含み、下側ヘッドギアコネクタはそれぞれ、上アームと、口クッションの側方縁部から内方に間隔を開けて配置された位置において口クッションの前面へ取り付けられた下アームとを有し、上アームは、下アームから間隔を開けて配置される、口組み合わせクッション;ならびに一対の下側ヘッドギアコネクタを接続させることと、口シール形成構造を患者の頭部上の治療的に有効な位置に保持するための力を提供することとを行うように構成された位置決めおよび安定化構造。
【0095】
例において、患者インターフェースは、以下の特徴のうち1つ以上を含み得る:(a)第1の開口部へ接続する可撓性継手;(b)治療圧力まで加圧可能な鼻クッションプレナムチャンバのうち少なくとも一部を形成する鼻クッションであって、鼻クッションは、患者の顔のうち患者の鼻孔への入口を包囲する領域とシールを形成するように構築および配置された鼻シール形成構造を含む、鼻クッション;(c)鼻クッションは、可撓性継手の一端を受容するように構成された鼻継手開口部を含み、可撓性継手により、鼻クッションは口クッションへ接続され;(d)可撓性継手は、少なくとも1つの折り目を有するコンチェルティーナセクションを含み;(e)コンチェルティーナにより、患者のスプラメントン角度に対応するために、口クッションが鼻クッションに相対して軸方向および曲線方向に移動することが可能になり;(f)可撓性継手は、患者のスプラメントン角度に合わせた調節のために口クッションを鼻クッションに相対して移動させることを可能にするように構成され;(g)口クッションは、患者の顔上における鼻クッションの初期位置決めを妨げないように鼻クッションから離隔方向に撓むように構成され;(h)可撓性継手および/または口クッションは、可撓性継手のバネ付勢ならびに/あるいは口クッションおよび/または可撓性継手を通じた加圧された呼吸可能なガスの流れの導入に起因して患者のスプラメントンへと移動するように構成され;(i)口クッションは、加圧ガスの流れが付加されたときに口クッションを患者の口へと移動させるガセットを含み;(j)可撓性継手は、中立位置と、患者のスプラメントンへと方向付けられた曲線位置とを有し、可撓性継手は、中立位置から患者の顔から離隔方向の位置への動きに耐え;(k)可撓性継手は、楕円形の断面を有し;(l)可撓性継手は、鼻クッションへ取り外し可能に接続された鼻クッション端部と、口クッションへ恒久的に接続された口クッション端部とを有し;(m)可撓性継手および口クッションにより、同一材料のワンピース構造が形成され;(n)鼻クッションは、可撓性継手の鼻クッション端部を受容する鼻クッション開口部を含み、口クッションは、口クッション端部を受容する口クッション開口部を含み、口クッション端部により、口クッションプレナムチャンバ内または口クッションプレナムチャンバ外への加圧ガスの流れが患者のフランクフルト水平に対して実質的に垂直な方向において方向付けられるか、または受容され;(o)鼻クッション端部は、加圧された呼吸可能なガスの流れを患者のフランクフルト水平に対して実質的に平行な方向において鼻プレナムチャンバ内へまたは鼻プレナムチャンバから方向付けるか、または受容するように構成され;(p)口クッション端部は、口クッションの水平中間面の上方の位置において口クッションへ取り付けられ;(q)鼻クッションは、枕、鼻パフまたは鼻クレードルを含み;(r)鼻クッションは、一対の上側ヘッドギアコネクタを含み;(s)位置決めおよび安定化構造は、上側ヘッドギアコネクタへ接続された一対の上側ヘッドギアストラップまたは導管、および下側ヘッドギアコネクタへ接続された一対の下側ヘッドギアストラップを含み;(t)ヘッドギアストラップまたは導管と、鼻クッションとの組み合わせにより、口クッションの支持が得られ;(u)下側ヘッドギアコネクタはそれぞれ、磁性接続要素を含み;(v)上アームおよび下アームは、ウイッシュボーン形状に設けられ;(w)上アームおよび下アームにより、支持力がそれぞれ口クッションの中間ゾーンおよび下側ゾーンへ分配され;(x)上アームおよび下アームは、可撓性であり、U字型形状を有し;(y)U字型形状は、口クッションの側方部分とサイズおよび/または形状が類似し;(z)U字型形状の端部は、口クッションの前面へ接続され、U字型形状の中間部は、磁性接続要素を含み;(aa)上アームおよび下アームは、シリコーンまたはシリコーンよりも高剛性の材料によって構成され;(ab)アームはそれぞれ、取付位置から口クッションの側方縁部へと延び;(ac)アームはそれぞれ、患者により着用されかつ位置決めおよび安定化構造によって支持された際に患者のケイリオンの対向する側部に跨がることにより、患者の口の角部へ力を付加するような寸法および構成にされ;(ad)アームはそれぞれ、移動可能であるかまたは可撓性であるため、口クッションの前面と同一平面に配置され;(ae)アームから、アームへ連結された下側ヘッドギアストラップへ付加された張力に起因して力が口クッションの前面へ付加されて、口クッションは、患者の口を包囲する角部内へアンカー固定され;(af)口クッションおよび/または鼻クッションは、シリコーンボディ上に取り付けられたテキスタイル密閉面を含み;(ag)口クッションは、前面と、シーリングリップと、前面およびシーリングリップを接続させる壁とを含み、前面、シーリングリップおよび壁は全てシリコーン製であり;(ah)壁および/またはシーリングリップは、口クッションの口角部の上部の方が口クッションの口角部の下部よりも高剛性であり;(ai)口クッションの側方側は可撓性であるため、シールを維持しつつ患者の顎の下降が可能となり;(aj)口クッションは、患者のケイリオンと鼻唇溝との間において口の周囲を密閉するための幅を有し;(ak)口クッションは、上唇の下部上の口ならびにスプラメントンと下唇と間の接合部の周囲を密閉するための高さを有し;(al)鼻クッションは、鼻クレードルであり、鼻下点または鼻下点の下側において、患者の上唇の上部上にアンカー固定されるように構成され;(am)口クッションの深さは、鼻クッションおよび/または患者の鼻の鼻尖点を超えて延びないように構成され;(an)口シール形成構造は、患者の顎が開いたときに口クッションが上方に拡張することを可能にするように構成された上唇膜を含み;(ao)上唇膜は、口クッションプレナムチャンバへと内方に曲線状にされた中央部を含み;(ap)上唇膜は、口クッションプレナムチャンバから離隔方向において外方に実質的に直線状または曲線状の中央部を含み;(aq)口シール形成構造は、患者の顎が開いたときに口クッションが下方に拡張することを可能にするように構成された下唇膜を含み;(ar)口クッションは、加圧ガスの流れに起因して拡張して、口クッションの上側部および/または下側部を口クッションの側方側から外方に保持するように構成され;(as)可撓性継手は、窒息防止弁を含み;(at)口クッションは、呼吸可能なガスを口クッションへ提供するように構成された管コネクタをさらに含み;(au)口クッションは、管コネクタを受容するように構成された第2の開口部をさらに含み;(av)第2の開口部は、口クッションの前面上にかつ第1の開口部の下側に設けられ;(aw)および/または(ax)前面のうち第2の開口部の周囲の領域は、口クッションの他の部分よりも高剛性である。
【0096】
本技術の態様は、睡眠時呼吸障害の改善のために、患者の睡眠時において周囲空気圧力に対して陽圧の呼吸可能なガスの流れを少なくとも患者の鼻孔の入口を含む患者の気道への入口へ送達する患者インターフェースに関連する。患者インターフェースは、以下を含む:
治療圧力まで加圧可能な鼻クッションプレナムチャンバのうち少なくとも一部を形成する鼻クッションであって、鼻クッションは、患者の顔のうち患者の鼻孔への入口を包囲する領域とシールを形成するように構築および配置された鼻シール形成構造を含む、鼻クッション;
治療圧力まで加圧可能な口クッションプレナムチャンバのうち少なくとも一部を形成する口クッションであって、口クッションは、患者の顔のうち患者の口への入口を包囲する領域とシールを形成するように構築および配置された口シール形成構造を含む、口クッション;
鼻クッションを口クッションへ接続させる可撓性継手;および
鼻シール形成構造および口シール形成構造へ力を提供することにより鼻シール形成構造および口シール形成構造を患者の頭部上の治療的に有効な位置に保持する位置決めおよび安定化構造。
【0097】
例において、患者インターフェースは、以下の特徴のうち1つ以上を含み得る:(a)可撓性継手は、少なくとも1つの折り目を有するコンチェルティーナセクションを含み;(b)コンチェルティーナにより、患者のスプラメントン角度に対応するために、口クッションが鼻クッションに相対して軸方向および曲線方向に移動することが可能になり;(c)可撓性継手は、患者のスプラメントン角度に合わせた調節のために口クッションを鼻クッションに相対して移動させることを可能にするように構成され;(d)口クッションは、患者の顔上における鼻クッションの初期位置決めを妨げないように鼻クッションから離隔方向に撓むように構成され;(e)可撓性継手および/または口クッションは、可撓性継手のバネ付勢ならびに/あるいは口クッションおよび/または可撓性継手を通じた加圧された呼吸可能なガスの流れの導入に起因して患者のスプラメントンへと移動するように構成され;(f)口クッションは、加圧ガスの流れが付加されたときに口クッションを患者の口へと移動させるガセットを含み;(g)可撓性継手は、中立位置と、患者のスプラメントンへと方向付けられた曲線位置とを有し、可撓性継手は、中立位置から患者の顔から離隔方向の位置への動きに耐え;(h)可撓性継手は、楕円形の断面を有し;(i)可撓性継手は、鼻クッションへ取り外し可能に接続された鼻クッション端部と、口クッションへ恒久的に接続された口クッション端部とを有し;(j)可撓性継手および口クッションにより、同一材料のワンピース構造が形成され;(k)鼻クッションは、可撓性継手の鼻クッション端部を受容する鼻クッション開口部を含み、口クッションは、口クッション端部を受容する口クッション開口部を含み、口クッション端部により、口クッションプレナムチャンバ内または口クッションプレナムチャンバ外への加圧ガスの流れが患者のフランクフルト水平に対して実質的に垂直な方向において方向付けられるか、または受容され;(l)鼻クッション端部は、加圧された呼吸可能なガスの流れを患者のフランクフルト水平に対して実質的に平行な方向において鼻プレナムチャンバ内へまたは鼻プレナムチャンバから方向付けるか、または受容するように構成され;(m)口クッション端部は、口クッションの水平中間面の上方の位置において口クッションへ取り付けられ;(n)鼻クッションは、枕、鼻パフまたは鼻クレードルを含み;(o)鼻クッションは、一対の上側ヘッドギアコネクタを含み、口クッションは、一対の下側ヘッドギアコネクタを含み;(p)位置決めおよび安定化構造は、上側ヘッドギアコネクタへ接続された一対の上側ヘッドギアストラップまたは導管、および下側ヘッドギアコネクタへ接続された一対の下側ヘッドギアストラップを含み;(q)ヘッドギアストラップまたは導管と、鼻クッションとの組み合わせにより、口クッションの支持が得られ;(r)下側ヘッドギアコネクタはそれぞれ、磁性接続要素を含み;(s)下側ヘッドギアコネクタはそれぞれ、ウイッシュボーン形状を有する一対のアームを含み、下側ヘッドギアコネクタはそれぞれ、上アームと、口クッションの前面へ接続された下アームとを有し、上アームは、下アームから間隔を開けて配置され;(t)上アームおよび下アームにより、支持力がそれぞれ口クッションの中間ゾーンおよび下側ゾーンへ分配され;(u)一対のアームはそれぞれ可撓性であり、U字型形状を有し;(v)U字型形状は、口クッションの側方部分とサイズおよび/または形状が類似し;(w)一対のアームはそれぞれ、シリコーンまたはシリコーンよりも高剛性の材料によって構成され;(x)一対のアームはそれぞれ、シリコーン製の口クッションの前面へ接続され;(y)アームはそれぞれ、口クッションの側方縁部から内方に間隔を開けて配置された位置において口クッションの前面へ取り付けられ;(z)アームはそれぞれ、患者により着用されかつ位置決めおよび安定化構造によって支持された際に患者のケイリオンの対向する側部に跨がることにより、患者の口の角部へ力を付加するような寸法および構成にされ;(aa)アームはそれぞれ、移動可能であるかまたは可撓性であるため、口クッションの前面と同一平面に配置され;(ab)アームから、アームへ連結された下側ヘッドギアストラップへ付加された張力に起因して力が口クッションの前面へ付加されて、口クッションは、患者の口を包囲する角部内へアンカー固定され;(ac)口クッションおよび/または鼻クッションは、シリコーンボディ上に取り付けられたテキスタイル密閉面を含み;(ad)口クッションは、前面と、シーリングリップと、前面およびシーリングリップを接続させる壁とを含み、前面、シーリングリップおよび壁は全てシリコーン製であり;(ae)壁および/またはシーリングリップは、口クッションの口角部の上部の方が口クッションの口角部の下部よりも高剛性であり;(af)口クッションの側方側は可撓性であるため、シールを維持しつつ患者の顎の下降が可能となり;(ag)口クッションは、患者のケイリオンと鼻唇溝との間において口の周囲を密閉するための幅を有し;(ah)口クッションは、上唇の下部上の口ならびにスプラメントンと下唇と間の接合部の周囲を密閉するための高さを有し;(ai)鼻クッションは、鼻クレードルであり、鼻下点または鼻下点の下側において、患者の上唇の上部上にアンカー固定されるように構成され;(aj)口クッションの深さは、鼻クッションおよび/または患者の鼻の鼻尖点を超えて延びないように構成され;(ak)口シール形成構造は、患者の顎が開いたときに口クッションが上方に拡張することを可能にするように構成された上唇膜を含み;(al)上唇膜は、口クッションプレナムチャンバへと内方に曲線状にされた中央部を含み;(am)上唇膜は、口クッションプレナムチャンバから離隔方向において外方に実質的に直線状または曲線状の中央部を含み;(an)口シール形成構造は、患者の顎が開いたときに口クッションが下方に拡張することを可能にするように構成された下唇膜を含み;(ao)口クッションは、加圧ガスの流れに起因して拡張して、口クッションの上側部および/または下側部を口クッションの側方側から外方に保持するように構成され;(ap)可撓性継手は、窒息防止弁を含み;(aq)鼻クッションへ呼吸可能なガスを提供することと、使用時において患者が患者の頭部に相対して上方位置または後方位置に管を位置決めすることを可能にすることとを行うように構成された管コネクタをさらに含み;(ar)口クッションは、第1の種類の材料によって構成され、鼻クッションは、第1の種類の材料と異なる第2の種類の材料によって構成され;(as)口クッションは、第1の種類の材料によって構成された密閉面を含み、鼻クッションは、第1の種類の材料と異なる第2の種類の材料の密閉面を含み;第1の種類の材料および第2の種類の材料のうち1つはシリコーンであり、第1の種類の材料および第2の種類の材料のうち他方はテキスタイルであり;かつ/または(at)複数の穴を含む一対の通気コネクタをさらに含み、一対の通気コネクタは、鼻クッション上に配置された一対の鼻コネクタへ鼻ヘッドギアを連結させるように構成される。
【0098】
本技術の別の態様は、口鼻マスクを患者上にフィットさせる方法に関連する。口鼻マスクは、睡眠時呼吸障害の改善のために、患者の睡眠時に周囲空気圧力に対して陽圧の空気流れを患者へ送達するように構成される。本方法は、以下を含む:治療圧力まで加圧可能な鼻クッションプレナムチャンバのうち少なくとも一部を形成する鼻クッションを提供することであって、鼻クッションは、患者の顔のうち患者の鼻孔への入口を包囲する領域とシールを形成するように構築および配置された鼻シール形成構造を含む、こと;治療圧力まで加圧可能な口クッションプレナムチャンバのうち少なくとも一部を形成する口クッションを提供することであって、口クッションは、患者の顔のうち患者の口への入口を包囲する領域とシールを形成するように構築および配置されたシール形成構造を含む、こと;鼻クッションおよび口クッションを可撓性継手と接続させること;および鼻シール形成構造および口シール形成構造を患者の頭部上の治療的に有効な位置に保持することであって、保持することは、口クッションが鼻クッションへ接続されている状態で鼻クッションを患者の鼻の下側に配置することおよび患者の上唇の上部と係合させること;上側ヘッドギア導管またはストラップを用いて鼻クッションを患者の頭部上に固定させること、上側ヘッドギア導管またはストラップの長さおよび/または位置を調節すること、鼻クッションの下側において口クッションの上側膜を患者の上唇の下部上に位置決めすることにより、口クッションと鼻クッションとの間の係合を可能にすること、下側ヘッドギアストラップを用いて口クッションを患者の頭部上に固定すること、下側ヘッドギアストラップの長さおよび/または位置を調節することによって行われる、こと。上側ヘッドギア導管またはストラップの調節は、下側ヘッドギアストラップの調節から実質的に独立している。
【0099】
本技術の態様は、鼻クッションの前面へ接続するように構成された鼻クッション端部および口クッションの前面へ接続するように構成された口クッション端部を含む可撓性継手に関連する。
【0100】
例において、(a)可撓性継手は、少なくとも1つの折り目を有するコンチェルティーナセクションを含み;(b)患者のスプラメントン角度に対応するために、口クッションを鼻クッションに相対して軸方向および曲線方向に移動することを可能にすること;(c)可撓性継手は、患者のスプラメントンに合わせた調節のために、口クッションが鼻クッションに相対して移動することを可能にするように構成され;(d)可撓性継手は、可撓性継手のバネ付勢ならびに/あるいは口クッションおよび/または可撓性継手を通じた加圧された呼吸可能なガスの流れの導入に起因して患者のスプラメントンへと移動するように構成され;(e)可撓性継手は、楕円形の断面を有し;(f)鼻クッション端部は、鼻クッションへ取り外し可能に接続され、口クッション端部は、口クッションへ恒久的に接続され;(g)可撓性継手および口クッションにより、同一材料のワンピース構造が形成され;(h)鼻クッション端部は、は、加圧された呼吸可能なガスの流れを患者のフランクフルト水平に対して実質的に平行な方向において鼻プレナムチャンバ内へまたは鼻プレナムチャンバから方向付けるか、または受容するように構成され;(i)口クッション端部は、口クッションの水平中間面の上方の位置において口クッションへ取り付けられ;(j)可撓性継手は、窒息防止弁を含み;かつ/または(k)窒息防止弁は、可撓性継手の前面上に設けられる。
【0101】
もちろん、上記態様の一部は、本技術の下位態様を形成し得る。また、下位態様および/または態様のうち多様な1つを多様に組み合わせることができ、本技術のさらなる態様または下位態様も構成し得る。
【0102】
本技術の他の特徴は、以下の詳細な説明、要約、図面および特許請求の範囲中に含まれる情報に鑑みれば明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
4 図面の簡単な説明
本技術を、添付図面中に非限定的に一例として例示する。図面中、類似の参照符号は、以下の類似の要素を含む。
【0104】
図1A】4.1 治療法システム:患者インターフェース3000を装着している患者1000を含むシステムを示す。このシステムは、鼻枕の形態をとり、RPTデバイス4000から供給される陽圧の空気を受容する。RPTデバイス4000からの空気は、加湿器5000によって加湿され、空気回路4170に沿って患者1000へと移動する。同床者1100も図示される。患者は、仰臥位睡眠位置において睡眠している。
図1B】患者インターフェース3000を装着している患者1000を含むシステムを示す。このシステムは、鼻マスクの形態をとり、RPTデバイス4000から供給される陽圧の空気を受容する。RPTデバイスからの空気は、加湿器5000によって加湿され、空気回路4170に沿って患者1000へと移動する。
図1C】患者インターフェース3000を装着している患者1000を含むシステムを含む。患者インターフェース3000は、フルフェイスマスクをとり、陽圧の空気供給をRPTデバイス4000から受容する。RPTデバイスからの空気は、加湿器5000によって加湿され、空気回路4170に沿って患者1000へと移動する。患者は、側臥位睡眠位置において睡眠している。4.2 呼吸器系および顔の解剖学的構造
図2A】鼻腔および口腔、喉頭、声帯ひだ、食道、気管、気管支、肺、肺胞嚢、心臓および横隔膜を含むヒト呼吸器系の概要を示す。
図2B】鼻腔、鼻骨、外側鼻軟骨、大鼻翼軟骨、鼻穴、上唇、下唇、喉頭、硬口蓋、軟口蓋、口咽頭、舌、喉頭蓋、声帯ひだ、食道および気管を含むヒトの上気道の図である。
図2C】上唇、上唇紅、下唇紅、下唇、口の幅、内眼角、鼻翼、鼻唇溝およびケイリオンを含む表面解剖学的構造のいくつかの特徴を含む顔の正面図である。上側、下側、ラジアル内方およびラジアル外方の方向も記載される。
図2D】眉間、セリオン、鼻尖点、鼻下点、上唇、下唇、スプラメントン、鼻堤、鼻翼頂上点、上耳底点および下耳底点を含む表面解剖学的構造のいくつかの特徴を含む頭部の側面図である。上側および下側と、前方および後方との方向も記載される。
図2E】頭部のさらなる側面図である。フランクフォート水平および鼻唇角の大まかな位置が記載されている。冠状面も記載される。
図2F】鼻唇溝、下唇、上唇紅、鼻孔、鼻下点、鼻柱、鼻尖点、鼻孔の主軸および正中矢状面を含むいくつかの特徴を含む鼻の底面図である。
図2G】鼻の表面的特徴の側面図である。
図2H】側鼻軟骨、鼻中隔軟骨、大鼻翼軟骨、小鼻翼軟骨、鼻種子軟骨、鼻骨、表皮、脂肪組織、上顎骨の前頭突起および線維性脂肪組織を含む鼻の皮下構造を示す。
図2I】正中矢状面からおよそ数ミリメートルの位置における鼻の中間切開を示し、特に鼻中隔軟骨および大鼻翼軟骨の内側脚を示す。
図2J】前頭骨、鼻骨および頬骨を含む頭蓋骨の骨正面図である。鼻甲介が上顎骨および下顎骨と共に図示されている。
図2K】頭蓋骨を頭部表面の外形およびいくつかの筋肉と共に示す側面図である。以下の骨が図示されている:前頭骨、蝶形骨、鼻骨、頬骨、上顎骨、下顎骨、頭頂骨、側頭骨および後頭骨。オトガイ隆起が図示されている。以下の筋肉が図示されている:顎二腹筋、咬筋、胸鎖乳突筋および僧帽筋。
図2L】鼻の前外側を示す。4.3 患者インターフェース
図3A】本技術の一形態による鼻マスクの形態の患者インターフェースを示す。
図3B】構造を1つの点において切断した模式的断面図である。この点における外向き法線が図示される。この点における曲率は、正の符号と、3Cに示す曲率の大きさと比較して比較的大きな大きさとを有する。
図3C】構造を1つの点において切断した模式的断面図である。この点における外向き法線が図示される。この点における曲率は、正の符号と、図3Bに示す曲率の大きさと比較して比較的小さな大きさとを有する。
図3D】構造を1つの点において切断した模式的断面図である。この点における外向き法線が図示される。この点における曲率の値はゼロである。
図3E】構造を1つの点において切断した模式的断面図である。この点における外向き法線が図示される。この点における曲率は、負の符号と、図3Fに示す曲率の大きさと比較して比較的小さな大きさとを有する。
図3F】構造を1つの点において切断した模式的断面図である。この点における外向き法線が図示される。この点における曲率は、負の符号と、図3Eに示す曲率の大きさと比較して比較的大きな大きさとを有する。
図3G】2つの枕を含むマスク用クッションを示す。クッションの外面が図示される。表面の縁部が図示される。ドーム領域およびサドル領域が図示される。
図3H】マスク用クッションを示す。クッションの外面が図示される。表面の縁部が図示される。点Aと点Bとの間の表面上の経路が図示される。AとBとの間の直線距離が図示される。2つのサドル領域およびドーム領域が図示される。
図3I】構造の表面を示し、この表面中には一次元穴が開いている。図示の平面曲線は、一次元穴の境界を形成する。
図3J図3Iの構造を通じた断面図である。図示の表面は、図3Iの構造中の二次元穴を境界付ける。
図3K】二次元穴および一次元穴を含む図3Iの構造の斜視図である。また、図3Iの構造中の二次元穴を境界付ける表面が図示される。
図3L】クッションとしての可膨張性ブラダーを有するマスクを示す。
図3M図3Lのマスクの断面図であり、ブラダーの内面を示す。内面により、マスク中の二次元穴が境界付けられる。
図3N図3Lのマスクを通じたさらなる断面を示す。内面も図示される。
図3O】左手の法則を示す。
図3P】右手の法則を示す。
図3Q】左耳螺旋を含む左耳を示す。
図3R】右耳螺旋を含む右耳を示す。
図3S】右手螺旋を示す。
図3T】マスクの異なる領域内の密閉膜の縁部によって規定された空間曲線のねじれのサインを含むマスクの図である。
図3U】矢状面および中央接触面を示す、プレナムチャンバ3200の図である。
図3V図3Uのプレナムチャンバの後方の図である。図中の方向は、中央接触面に対して垂直である。図3V中、矢状面により、プレナムチャンバが左手側および右手側に二等分される。
図3W図3Vのプレナムチャンバを通じた断面図であり、この断面は、図3Vに示す矢状面においてとられる。「中央接触」面が図示される。中央接触面は、矢状面に対して垂直である。中央接触面の方向付けは、腱3210の方位に対応する。腱3210は、矢状面上に載置され、矢状面上の2点(すなわち、上点3220および下点3230)においてプレナムチャンバのクッションのみと接触する。この領域におけるクッションのジオメトリに応じて、中央接触面は、上点および下点双方に接し得る。
図3X図3Uのプレナムチャンバ3200が顔面上の使用位置にある状態を示す。プレナムチャンバ3200の矢状面は、プレナムチャンバが使用位置にあるとき、顔の正中矢状面と概して一致する。中央接触面は、プレナムチャンバが使用位置にあるとき、「顔の面」に概して対応する。図3Xにおいて、プレナムチャンバ3200は鼻マスクのものであり、上点3220はほぼセリオン上に載置され、下点3230は上唇上に載置される。4.4 本技術による患者インターフェース
図4A】本技術の例による構成可能な患者インターフェースを示す。
図4B】本技術の例による、呼吸可能なガスを鼻クッションへ提供するために導管を用いた構成可能な患者インターフェースを示す。
図4C】本技術の別の例による構成可能な患者インターフェースを示す。
図4D】本技術の例による口クッションの前面へ連結された管を介して呼吸可能なガスが提供される構成可能な患者インターフェースを示す。
図5A】本技術の例による導管を用いた鼻マスク構成の斜視図である。
図5B】本技術の例による導管を用いた鼻マスク構成の正面図である。
図5C】本技術の例による導管を用いた鼻マスク構成の側面図である。
図5D】本技術の例による導管を用いた鼻マスク構成の背面図である。
図6A】本技術の例による、導管を用いた口鼻マスク構成の斜視図である。
図6B】本技術の例による、導管を用いた口鼻マスク構成の正面図である。
図6C】本技術の例による、導管を用いた口鼻マスク構成の側面図である。
図6D】本技術の例による、導管を用いた口鼻マスク構成の背面図である。
図7A】本技術の例による、鼻クッションの表面へ接続された管を用いた鼻マスク構成の斜視図である。
図7B】本技術の例による、鼻クッションの表面へ接続された管を用いた鼻マスク構成の正面図である。
図7C】本技術の例による、鼻クッションの表面へ接続された管を用いた鼻マスク構成の側面図である。
図7D】本技術の例による、鼻クッションの表面へ接続された管を用いた鼻マスク構成の背面図である。
図8A】本技術の例による、口クッションの表面へ接続された管を用いた口鼻マスク構成の斜視図である。
図8B】本技術の例による、口クッションの表面へ接続された管を用いた口鼻マスク構成の正面図である。
図8C】本技術の例による、口クッションの表面へ接続された管を用いた口鼻マスク構成の側面図である。
図9A】本技術の例による、口クッションを鼻クッションへ接続させる継手の正面図である。
図9B】本技術の例による、口クッションを鼻クッションへ接続させる継手の背面図である。
図9C】本技術の例による、図9Aおよび図9Bに示す口クッションによって患者の顔上に形成されたシールの正面図である。
図9D図9Aおよび図9Bに示す口クッションによって患者の顔上に形成されたシールの側面図である。
図10A】本技術の例による、空気回路用の口クッション開口部を含む口クッションへ鼻クッションを接続させる継手の正面図である。
図10B】本技術の例による、空気回路用の口クッション開口部を含む口クッションへ鼻クッションを接続させる継手の側面図である。
図10C】本技術の例による、空気回路用の口クッション開口部を含む口クッションへ鼻クッションを接続させる継手の背面図である。
図10D】本技術の例による、空気回路へ接続された口クッションへ鼻クッションを接続させる継手の背面図である。
図10E】本技術の例による、患者の顔上の図10A図10Dに示す口クッションの正面図である。
図10F】本技術の例による、口クッションが弛緩位置にある様子の背面図である。
図10G】本技術の例による、図10Fの口クッションが弛緩位置にある様子の断面図である。
図10H】本技術の例による、口クッションが第1の使用位置にある様子の背面図である。
図10I】本技術の例による、図10Hの口クッションが第1の使用位置にある様子の断面図である。
図10J】本技術の例による、口クッションが第2の使用位置にある様子の背面図である。
図10K】本技術の例による、図10Jの口クッションが第2の使用位置にある様子の断面図である。
図10L】本技術の例による、口クッションコネクタによって分配され得る例示的ベクトル力を示す。
図11A】本技術の例による、鼻枕を含む鼻クッションを空気回路用の口クッション開口部を含む口クッションへ接続させる継手の斜視図である。
図11B】本技術の例による、鼻枕を含む鼻クッションを空気回路用の口クッション開口部を含む口クッションへ接続させる継手の側面図である。
図11C】本技術の例による、空気回路へ接続された口クッションへ鼻枕を含む鼻クッションを接続させる継手の背面図である。
図12】本技術の例による、テクスチャ面を含む鼻クッションを口クッションへ接続させる継手の背面図である。
図13A】本技術の例による、口クッションへ接続された継手の斜視図である。
図13B】本技術の例による、口クッションへ接続された継手の側面図である。
図13C】本技術の例による、口クッションへ接続された継手の背面図である。
図13D】本技術の別の例による、口クッションへ接続された継手の背面図である。
図14A】本技術の例による、コンチェルティーナセクションを含む継手の側面図である。
図14B】本技術の例による、コンチェルティーナセクションを含まない継手の側面図である。
図14C】本技術の例による継手の側断面図である。
図14D】本技術の例による継手の水平断面図である。
図14E】本技術の別の例による継手の水平断面図である。
図14F】本技術の例による継手によって提供される可撓性を示す。
図15】本技術の例による通気部を示す。
図16】本技術の例による、通気穴を含む通気コネクタを示す。
【発明を実施するための形態】
【0105】
5 本技術の例の詳細な説明
本技術についてさらに詳細に説明する前に、本技術は、本明細書中に記載される異なり得る特定の例に限定されるのではないことが理解されるべきである。本開示中に用いられる用語は、本明細書中に記載される特定の例を説明する目的のためのものであり、限定的なものではないことも理解されるべきである。
【0106】
以下の記載は、1つ以上の共通の特性および/または特徴を共有し得る多様な例に関連して提供される。任意の1つの例の1つ以上の特徴は、別の例または他の例の1つ以上の特徴と組み合わせることが可能であることが理解されるべきである。加えて、これらの例のうちのいずれかにおける任意の単一の特徴または特徴の組み合わせは、さらなる例を構成し得る。
【0107】
5.1 療法
一形態において、本技術は、呼吸障害の治療方法を含む。本方法は、患者1000の気道の入口へ陽圧を付加するステップを含む。
【0108】
本技術の特定の例において、陽圧における空気供給が鼻孔の片方または双方を介して患者の鼻通路へ提供される。
【0109】
本技術の特定の例において、口呼吸が制限されるか、限定されるか、または妨げられる。
【0110】
5.2 治療法システム
一形態において、本技術は、呼吸障害の治療のための装置またはデバイスを含む。装置またはデバイスは、加圧空気を患者インターフェース3000への空気回路4170を介して患者1000へ供給するRPTデバイス4000を含み得る(例えば、図1A~1Cを参照されたい)。
【0111】
5.3 患者インターフェース
図3Aおよび図4A図12は、本技術の多様な態様による非侵襲的患者インターフェース3000を示す。図3Aを参照すると、本技術の一態様による非侵襲的患者インターフェース3000は、以下の機能様態を含む:シール形成構造3100、プレナムチャンバ3200、位置決めおよび安定化構造3300、通気部3400、空気回路4170への接続のための一形態の接続ポート3600、および前額支持部3700。いくつかの形態において、機能様態が、1つ以上の物理的構成要素によって提供され得る。いくつかの形態において、1つの物理的構成要素は、1つ以上の機能様態を提供し得る。使用時において、シール形成構造3100は、患者1000の気道への入口(単数または複数)において陽圧を維持するように、患者の気道への入口を包囲するように配置される。そのため、密閉された患者インターフェース3000は、陽圧治療の送達に適している。
【0112】
図4A図12は、本技術の態様によるモジュール式構成を提供する患者インターフェース3000を示す。患者インターフェース3000は、鼻用の「鼻下型」のシールマスクと口鼻マスク(例えば、フルフェイスマスク構成)との間において転換可能であり得る。図4Aに示すように、患者インターフェース3000は、安定化構造3300の一部を形成する共通の接続要素3330を含み得る。安定化構造3300に対し、多様な構成要素が取り外し可能に連結され得ることにより、(図5A図5Dおよび図7A図7Dに示す)鼻マスクまたは(図6A図6Dおよび図8A図8Dに示す)口鼻マスクが提供される。
【0113】
患者インターフェースが最低レベルの陽圧を快適に気道へ送達できない場合、患者インターフェースは呼吸圧力治療に不適切であり得る。
【0114】
本技術の一形態による患者インターフェース3000は、周囲に対して少なくとも6cmHOの陽圧で空気供給を提供できるように構築および配置される。
【0115】
本技術の一形態による患者インターフェース3000は、周囲に対して少なくとも10cmHOの陽圧で空気供給を提供できるように構築および配置される。
【0116】
本技術の一形態による患者インターフェース3000は、周囲に対して少なくとも20cmHOの陽圧で空気供給を提供できるように構築および配置される。
【0117】
5.3.1 シール形成構造
本技術の一形態において、シール形成構造3100は、鼻シール形成構造3052および/または口シール形成構造3062を含み得、目標シール形成領域を提供し、緩衝作用機能をさらに提供し得る。目標シール形成領域は、シール形成構造3100において密閉が発生し得る領域である。密閉が実際に発生する領域(すなわち、実際の密閉面)は、一定範囲の要素(例えば、顔面上の患者インターフェースの配置位置、位置決めおよび安定化構造における張力、および患者の顔の形状)に応じて、所与の治療セッションにおいて患者によって日々変化し得る。
【0118】
一形態において、目標シール形成領域が、シール形成構造3100の外面上に配置される。
【0119】
本技術の特定の形態において、シール形成構造3100は、生体適合性材料(例えば、シリコーンゴム)から構成される。
【0120】
本技術によるシール形成構造3100は、柔らかく、可撓性でありかつ弾力性のある材料(例えば、シリコーン)から構成され得る。
【0121】
本技術の特定の形態において、1つよりも多くのシール形成構造3100を含むシステムが提供される。各シール形成構造3100は、異なるサイズおよび/または形状範囲に対応するように構成される。例えば、システムは、小さなサイズの頭ではなく大きなサイズの頭に適したシール形成構造3100の一形態および大きなサイズの頭ではなく小さなサイズの頭に適した別のものを含み得る。
【0122】
5.3.1.1 密閉機構
一形態において、シール形成構造は、圧力アシスト密閉機構を用いる密閉フランジを含む。使用時において、密閉フランジは、プレナムチャンバ3200内のシステム陽圧に容易に応答してその下側上に作用して、面と緊密な密閉係合を形成させ得る。圧力アシスト機構は、位置決めおよび安定化構造における弾性張力と共に作用し得る。
【0123】
一形態において、シール形成構造3100は、密閉フランジおよび支持フランジを含む。密閉フランジは、厚さが約1mm未満(例えば、約0.25mm~約0.45mm)の比較的肉薄の部材を含む。この部材は、プレナムチャンバ3200の縁部長さの周囲に延びる。支持フランジは、密閉フランジよりも比較的肉厚であり得る。支持フランジは、密閉フランジと、プレナムチャンバ3200の周縁部との間に配置され、周辺長さの周囲の少なくとも一部に延びる。支持フランジは、バネ様要素であるかまたはバネ様要素を含み、密閉フランジを使用時に座屈しないように支持するよう機能する。
【0124】
一形態において、シール形成構造は、圧縮密閉部またはガスケット密閉部を含み得る。使用時において、圧縮密閉部またはガスケット密閉部は、例えば位置決めおよび安定化構造における弾性張力に起因して圧縮状態となるように、構築および配置される。
【0125】
一形態において、シール形成構造は、張力部を含む。使用時において、張力部は、例えば密閉フランジの隣接領域により、ぴんと張られた状態で保持される。
【0126】
一形態において、シール形成構造は、粘着面または接着面を有する領域を含む。
【0127】
本技術の特定の形態において、シール形成構造は、圧力アシスト密閉フランジ、圧縮密閉部、ガスケット密閉部、張力部、および粘着面または接着面を有する部分のうち1つ以上を含み得る。
【0128】
5.3.1.2 鼻梁または鼻堤領域
一形態において、非侵襲的患者インターフェース3000は、使用時に患者の顔の鼻梁領域上にまたは鼻堤領域上に密閉を形成するシール形成構造を含む。
【0129】
一形態において、シール形成構造は、使用時において患者の顔の鼻梁領域上または鼻堤領域上にシールを形成するように構築されたサドル状領域を含む。
【0130】
5.3.1.3 上唇領域
一形態において、非侵襲的患者インターフェース3000は、患者の顔の上唇領域(すなわち、上唇)上に使用時に密閉を形成するシール形成構造を含む。
【0131】
一形態において、シール形成構造は、使用時において患者の顔の上唇領域上にシールを形成するように構築されたサドル状領域を含む。
【0132】
5.3.1.4 顎領域
一形態において、非侵襲的患者インターフェース3000は、使用時に患者の顔の顎領域上に密閉を形成するシール形成構造を含む。
【0133】
一形態において、シール形成構造は、使用時において患者の顔の顎領域上にシールを形成するように構築されたサドル状領域を含む。
【0134】
5.3.1.5 前額領域
一形態において、シール形成構造は、シール使用時において患者の顔の前額領域上にシールを形成する。このような形態において、プレナムチャンバは、使用時において眼を被覆し得る。
【0135】
5.3.1.6 鼻枕
一形態において、非侵襲的患者インターフェース3000のシール形成構造は、一対の鼻パフまたは鼻枕を含む。各鼻パフまたは鼻枕は、患者の鼻の各鼻孔とのシールを形成するように構成および配置される。図11Aおよび図11Bに示す鼻クッション3050は、枕クッションモジュールによって提供される鼻シール形成構造3052を有する。枕クッションモジュールは、一対の鼻枕3165を含む。本例において、同じ位置決め構造3300は、枕クッションモジュールと患者の鼻との密閉接触を保持するために用いられ得る。他の構成(例えば、図9Aおよび図9B)に示す同じ口クッション3060が、図11Aおよび図11Bに示す鼻クッション3050へ連結され得る。
【0136】
本技術の一態様による鼻枕3165は、円錐台を含む。円錐台のうち少なくとも一部は、患者の鼻の下側、柄部、円錐台の下側上の可撓性領域上に密閉を形成し、円錐台を柄部へ接続させる。加えて、本技術の鼻枕が接続される構造は、柄部のベースに隣接する可撓性領域を含む。可撓性領域は、自在接合構造を促進するように機能し得る。自在接合構造は、円錐台の変位および角度双方と、鼻枕が接続される構造との相互的な動きに対応する。例えば、円錐台は、柄部が接続された構造に向かって軸方向に変位し得る。
【0137】
5.3.2 鼻クッションおよび口クッション
患者インターフェース3000は、鼻クッション3050および/または口クッション3060がヘッドギアセクションへ連結されているかに応じて鼻用の「鼻下型」シールマスク構成と口鼻マスク構成との間において転換され得る。鼻クッション3050は、患者の顔のうち患者の鼻孔への入口を包囲する領域とシールを形成するように構築および配置された鼻シール形成構造3052を含み得る。口クッション3060は、患者の顔のうち患者の口への入口を包囲する領域とシールを形成するように構築および配置された口シール形成構造3062を含み得る。
【0138】
本技術の例によれば、鼻および口のシーリングを独立的に行うことが可能になる。口シール形成構造3062は、患者の顔のうち患者の口への入口を包囲する領域とのシールを形成および/または調節するように構成され得る。この領域は、患者の顔のうち患者の鼻孔への入口を包囲する領域とシールを形成および/または調節するように構成された鼻シール形成構造3052から独立している。この構成により、(患者間の差異に起因して密閉することが最も困難であり得る)患者の顔の異なる部分(例えば、鼻の角部および患者の上唇上)を有効に密閉し得る1つのクッションのジオメトリの提供に関連する課題が解消され得る。鼻クッション3050および口クッション3060の互換性により、患者が(快適なフィット感および有効なシールが可能な)鼻クッション3050および口クッション3060を選択することが可能になる。加えて、本技術の例により、口シール形成構造3062および鼻シール形成構造3052双方が相互に離隔方向に動くことが可能になるため、快適なフィット感および有効なシールが可能になる。
【0139】
図4A図12は、本技術の異なる例による鼻クッション3050のシール形成構造3052を示す。シール形成構造3052は、鼻クレードルクッションを含み得、(少なくとも患者の鼻の下側を密閉することにより)加圧ガスの流れを患者の鼻孔へ提供し得る。例示的なシール形成構造3052は、鼻梁の下側において患者の顔と係合し、いくつかの例において、患者の鼻のサイズおよび形状に応じて、鼻尖点の下側の患者の鼻と係合し得る。例示的なシール形成構造3052は、上側赤唇の少なくとも上方においても患者の顔と係合し得る。よって、例示的なシール形成構造3052は、使用時において患者の上唇を密閉し得る。さらに、患者の口は、記載の例のシール形成構造3052によって被覆されないままであり得るため、患者が自由に(すなわち雰囲気に対して直接的に)呼吸することが(シール形成構造3052からの干渉無く)可能になり得る。いくつかの例において、鼻シール形成構造3052は、患者の鼻入口に相対してシールを形成するように適合された鼻クレードルクッション、鼻クッションまたは枕を含む。
【0140】
鼻シール形成構造3052の形状は、患者の鼻の下側と整合するかまたは患者の鼻の下側を密接にたどるように構成され得る。すなわち、シール形成構造の外形および角度は、患者の鼻唇角度に対して実質的に平行であり得る。鼻クレードルクッションの一形態において、鼻シール形成構造3052は、2つのオリフィス3054を規定するブリッジ部分3055を含む。これらのオリフィス3054それぞれから、使用時において空気または呼吸可能なガスが患者の鼻孔のうち異なる鼻孔へ供給される。ブリッジ部分は、使用時において患者の鼻柱と接触また患者の鼻柱を密閉するように構成され得る。本技術のいくつかの形態において、鼻シール形成構造3052は、患者の鼻下側上に(患者の鼻の鼻梁領域との接触無しに)シールを形成するように構成される。鼻クレードルは、鼻下点または鼻下点の下側において、患者の上唇の上部上にアンカー固定されるように構成され得る。
【0141】
例示的な鼻クレードルクッションは、クッションにわたって正曲率を有するサドル領域または凹型領域を含み得る。また、鼻クレードルクッションは、単一の目標シール形成領域または表面を有するものとして理解され得る。これは、枕クッションの場合、(各鼻孔へ1つずつ用いられる)目標シール形成領域を2つ有し得るのと対照的である。クレードルクッションは、患者の上唇に接触する後壁も有し得、上側の中央面は、患者の鼻の下側と接触する。患者の顔上のこれらの2つの面により、両者間に鼻唇角度が形成され得る(図2Eを参照)。クレードルクッションは、鼻唇角度を90度~120度の範囲内に有するような形状にされ得る。
【0142】
いくつかの例において、例示的な鼻シール形成構造3052は、使用時において鼻シール形成構造3052のいずれの部分も患者の鼻孔へ進入しないような形状および寸法にもされ得る。
【0143】
図9Aおよび図9Bは、本技術の一形態による例示的な鼻シール形成構造3052を示す。図示のシール形成構造3052に含まれる2つのオリフィス3054は、ブリッジ部分3055として設けられた中間領域を通じて形成される。オリフィス3054は、患者の対応する鼻孔と共に概して整列されるように配置されるため、加圧ガスの流れが患者の鼻孔へ吸気のために提供され、呼息されたガスが通気部3400を介した雰囲気への放出のために鼻シール形成構造3052へ返送される。いくつかの例において、図9Aおよび図9Bに示す鼻シール形成構造3052は、例えば図10Aおよび図10Bに示すような口クッション開口部3072および/または通気部3400を含み得る。
【0144】
本技術の一形態において、鼻シール形成構造3052および/または口シール形成構造3062は、テクスチャ面を含み得る。図12は、本技術の一形態による例示的な鼻シール形成構造3052を示す。図示のシール形成構造3052は、オリフィス3054の周囲に設けられたテクスチャ面3053を含む。
【0145】
図6A図6Dおよび図8A図12は、本技術の異なる例による、鼻クッション3050および口クッション3060それぞれのシール形成構造3052および3062を示す。いくつかの例において、鼻クッション3050および口クッション3060の組み合わせは、フルフェイスクッションまたは口鼻クッションと呼ばれ得る。口クッション3060は、患者のケイリオンと鼻唇溝との間において口の周囲を密閉するための幅と、上唇の下部上の口ならびにスプラメントンおよび下唇間の接合部の周囲を密閉する高さ、ならびに/あるいは鼻クッション3050および/または患者の鼻の鼻尖点を超えて延びないように構成された深さを有し得る。
【0146】
図9C図9Dおよび図10Eは、口クッション3060によって患者の顔上に形成されたシールの例を示す。図9Cおよび図9Dは、図9Aおよび図9Bに示す口クッションの口シール形成構造3062を示す。図10Eは、図10A図10Dに示す口クッションの口シール形成構造3062を示す。簡潔さのために、特定の特徴(例えば、鼻クッション3050、口クッション開口部3072、通気部3400など)は、図9C図9Dおよび図10E中に図示していない。図9C図9Dおよび図10Eに示すように、口シール形成構造3062は、患者のケイリオンと鼻唇溝との間において口の周囲を密閉するための幅、および/または上唇の下部上の口ならびにスプラメントンおよび下唇間の接合部の周囲を密閉する高さを有する。本技術のいくつかの例において、口シール形成構造3062は、スプラメントンに接触し得るかまたは少なくともスプラメントンと重複し得る。口クッション3060の深さが患者の鼻の鼻尖点を超えて延びない様子が図示される。図9C図9Dおよび図10Eに示すように、口シール形成構造3062の上唇膜は、鼻シール形成構造3052に十分な空間を提供するために、上唇と鼻下点との間の領域のうち一部のみを占有する。図示の例において、シール形成構造3062は、患者の口の周囲のうち少なくとも一部をシーリングすることにより、患者の口への加圧ガスの流れの提供を提供し得る。例示的なシール形成構造3062は、患者の顔と口周囲において係合するため、使用時において空気または呼吸可能なガスが別個のオリフィスを通じて患者の鼻孔および患者の口へ供給される。いくつかの例において、シール形成構造は、患者の鼻の下側および/または鼻梁の下側の患者の顔とも係合し得る。例示的なシール形成構造3062は、患者の顔と上唇赤唇の上方および/または下唇赤唇の下方において係合し得る。よって、口クッションの例示的なシール形成構造3062は、使用時において患者の顔を口周囲において密閉し得る。
【0147】
本技術の一形態において、シール形成構造3062は、患者の顔の周囲を(患者の口からの最小変位無く)密閉する形状およびサイズを有し得る。一例において、口クッション3060およびシール形成構造3062は、幅がおよそ78~98mm(例えば、83~93または約88mm)、高さが35~55mm(例えば、40~50mmまたは45mm)であり得、深さが25~45mm(30~40または約35mm)であり得る。
【0148】
図9A図12に示すように、口クッション3060は、前面3074、シーリングリップ(シール形成構造3062として示す)と、前面3074およびシーリングリップを接続させる壁3078とを含む。いくつかの例において、前面3074、シーリングリップおよび壁3078は全てシリコーン製であり得る。口クッション3060は、全体的に可撓性であり得かつ/または同じ可撓性材料によって構成され得る。口クッション3060の口角部の上部の壁3078および/またはシーリングリップは、口クッション3060の口角部の下部よりも高剛性であり得る。口クッションのより高剛性の部分により、(患者の口または顎の動きに起因して)口クッション3060が剛性部分に相対して撓むことが可能になり得る。口クッション3060の側方側3090は可撓性であり得るため、シールを維持しつつ、患者の顎の下降が可能になり得る。
【0149】
本技術のいくつかの形態において、口シール形成構造3062の1つ以上の側部は、患者の顔と口クッション3060との間のシールを患者の口または顎の動きに合わせて維持できる構造を含み得る。例えば、シール形成構造3062は、患者の口または顎の垂直方向の動きに合わせて垂直方向に拡張し得る。
【0150】
口シール形成構造3062に含まれ得る上唇膜3076は、患者の顎が開いたときに口クッションが上方に拡張することを可能にするように構成される。図9Bは、中央部3077を含む上唇膜3076を示す。中央部3077は、口クッション3060のプレナムチャンバ3200へと内方に曲線状にされる。使用時において、曲線中央部3077により、口が開口しているときに上唇膜3076によるシール維持が可能になる。いくつかの例において、曲線中央部3077により、患者の顔と口シール形成構造3062との間の係合を維持しつつ、数ミリメートルの動きが可能になり得る。本例において、患者の口が閉じているときに口クッション3060がセットアップ可能であるため、口が開いているときに口シール形成構造3062が図9Bに示す形状から変化することが可能になる。
【0151】
いくつかの例において、上唇膜3076に含まれる中央部3077は、口クッションプレナムチャンバ3200から離隔方向において外方に実質的に直線状または曲線状である。本例において、口クッション3060は、患者の口が開いているときにセットアップされ得、患者の口が閉じられると、上唇膜3076は、直線状または曲線状の外方への形状から図9Bに示す形状へと変化し得る。
【0152】
口シール形成構造3062に含まれ得る下唇膜3094は、患者の顎が開いたときに口クッションが下方に拡張することを可能にするように構成される。図9Bに示す口シール形成構造3062の下唇膜3094は、口クッション3060のプレナムチャンバ3200へと内方に曲線状にされた部分を含む。使用時において、曲線部分により、口が開いた時または閉じたときに下唇膜3094がシールを維持することが可能になる。いくつかの例において、下唇膜3094は、口クッションプレナムチャンバ3200から離隔方向において外方に実質的に直線状または曲線状の中央部を含む。
【0153】
本技術の例により提供されるのは、口シール形成構造3062の膜が、口シール形成構造3062の周辺(例えば、唇領域)に沿った同一構造または口シール形成構造3062の1つ以上の部分中の異なる構造を有し得ることである。
【0154】
口シール形成構造3062の膜は、口シール形成構造3062の周辺に沿って共通の幅を有し得る。他の例において、シール形成構造3062の幅は、患者の顔の異なる位置において異なり得る。幅は、口シール形成構造3062の外縁から口シール形成構造3062の終端部への距離として規定され得る。異なる幅のシール形成構造は、鼻シール形成構造3052に隣接されて配置された口シール形成構造3062の収容のための空間が必要な場合に用いられ得る。
【0155】
モジュール式マスクがフルフェイスマスク構成をとる場合、顔の上唇領域は、鼻クレードルまたは枕からの「ボディ」ならびに口クッションからのシール双方を収容する必要がある。この構成において、口クッションは、上唇領域を鼻構成要素と共有する必要がある。上唇上の不動産は限られているため、この領域内における口クッションのシールを最小にする必要が出てき得る。
【0156】
上唇上における空きスペースが限られていることと、(鼻クッションの変更が不可能である場合に)既存の鼻クッションの使用が必要になることとに鑑みると、口クッションの設計を、シール達成のために占有する空間をできるだけ小さくするように行う必要があり得る。これは、口クッションの上部に沿って肉薄膜を配置することにより、達成され得る。この肉薄膜により、口クッションが(面積/体積を大きく占有すること無く)任意の顔形状に適合することと、有効なシールを生成することとが可能になり得、その後加圧および/または快適性が得られる。
【0157】
いくつかの例において、口クッションの上部に沿った肉薄膜シールは、口クッションの顎領域上に出現する肉薄膜の量を示し得る。口クッションの上部における肉薄膜シールは、(鼻クッションが使用のために位置決めされた後に)上唇上において利用可能な残留不動産上に十分にシールを形成し得る。
【0158】
いくつかの例において、口の上方において患者の顔を密閉するように構成された口シール形成構造の幅は、口の下側および/または口の側部の患者の顔を密閉するように構成された口シール形成構造3062と同じ幅であり得る。この構成は、口シールが連続する鼻および口シール形成構造の組み合わせによって形成されることに起因して口シールの上方においてより幅広となる従来のシール形成構造と異なる。
【0159】
口シール形成構造3062の上部(および下部)に肉薄膜を設けることにより、口シール形成構造が撓んで(顎の下降し易い)口とのシールを維持することが可能になる。この上部および/または下部の膜可撓性により、口の動きおよびクッションそのものから付加される障害をクッションにより吸収することが可能になる。可撓性膜は、圧力および拡張下において長手方向に「膨張」もし得るため、口がクッションの成形周囲高さよりも大きな場合において当該口へのフィットが支援される。
【0160】
図10F図10Kは、本技術の例による口シール形成構造3062の背面図および断面図である。簡潔さのために、特定の特徴については、簡略化しているかまたは図示を省略している(例えば、図10F図10K中の継手開口部3070および/または口クッション開口部3072)。
【0161】
図10Fおよび図10Gにおいて、口シール形成構造3062が弛緩位置にある様子が図示されている。弛緩位置において、口シール形成構造3062のリップにより、幅Wおよび高さHを有する口クッション開口部が得られる。図10Gに示すように、口クッション3060の上面および下面は、弛緩位置において相互に概ね平行であり得る。
【0162】
図10Hおよび図10Iは、口シール形成構造3062が第1の使用位置にある様子を示す。第1の使用位置は、以下のうち1つ以上に起因して発生し得る:口の動き、顎の下降、加圧空気、より大きな口による伸長、および/またはクッション圧縮および/または顔に当たることによる捻れ。第1の使用位置において、上部(および下部)上の肉薄膜により、開口部が垂直方向において所定の距離だけ伸縮することが可能になり得る。図10Hに示す例において、上膜と下膜との間の距離は、2hだけ増加している。水平方向における口の動きが無いため、第1の使用位置における口クッション開口部の幅は、弛緩位置における幅であり得るかまたは弛緩位置における幅と同等であり得る。図10Iに示すように、口シール形成構造3062は、第1の使用位置において患者の口へと圧縮され得る。
【0163】
図10Jおよび図10Kは、口シール形成構造3062が第2の使用位置にある様子を示す。第2の使用位置において、口シール形成構造3062は、垂直方向に伸長され、シール部は、部分的に反転している。口シール形成構造3062の上部(および下部)上の肉薄膜の可撓性に起因して、口シール形成構造3062の膜が中央領域において伸長および反転可能となり、し得、密閉された状態のままにすることができる。ヘッドギアベクトルが締め付けられて、治療圧力を中和している場合、膜の反転部は継続的に圧力を保持し得る。この膜の可撓性は、膜反転による不快感の原因にならない。第2の使用位置において、垂直方向において口クッション開口部は、H+2hを超えて延び得る一方、幅は、第1の使用位置および/または弛緩位置における幅にほぼ等しくなり得る。
【0164】
口クッションの可撓性により、1つのサイズで全てにフィットする口クッションが得られ得、異なる鼻シール形成構造3052と共に用いられ得る。
【0165】
いくつかの例において、口の上方において患者の顔を密閉するように構成された口シール形成構造の幅は、患者の顔を口の下側および/または口の側部において密閉するように構成された口シール形成構造3062の幅よりも小さくされ得る(例えば、図10C図10Dおよび図11Bを参照)。口の上方の空間が鼻シール形成構造3052および口シール形成構造3062によって共有されるため、口シール形成構造3062の幅は、口の上方よりも小さくする必要があり得る。
【0166】
いくつかの例において、シール形成構造の幅は、3~15mmであり得る(例えば、5~10mmまたは7mm)。いくつかの例において、上唇膜の幅は、下唇膜の幅の半分であり得る。いくつかの例において、上唇膜の幅は、側方側膜および/または下唇膜の幅よりも小さくされ得る。
【0167】
肉薄膜が口クッションの上部および/または下部に設けられた場合、口クッション単独では安定性に欠ける場合がある。以下にさらに詳述するように、1つ以上の肉厚部分(例えば、シリコーンの肉厚部分)をシール形成構造3052および/または3062の1つ以上の領域へ設けることにより、(例えば、クッション安定性およびシール性能の確保のための)1つ以上の領域への支持および安定性の増強に繋がる。いくつかの例において、取り付けられた鼻部分、通気部3400、および/または接続ポート3600から、さらなる安定性を「借りる」ことができ得る。
【0168】
図10Cは、本技術の別の例による口シール形成構造3062を示す。図10Cに示すように、口シール形成構造3062は、直線中央部を含む上唇膜3076および下唇膜3094を含む。上唇膜3076および下唇膜3094上の直線部分は、ほぼ相互に平行であり得る。側方側3090により、上唇膜3076が下唇膜3094へ連結され得る。図10Cに示す例は、図9Bに示す例と比較して、(直線部分に起因して)より基本的な形状であり得る。一般的に、より基本的な形状になるほど、鼻シールが口シールと出会う場所である複雑な領域が迂回されるため、製造がより容易になり、シールがより容易になり、テキスタイルシール膜を(折り目無く)より容易に使用される。
【0169】
図10Cに示す本技術の一形態において、口シール形成構造3062の上半分は、口シール形成構造3062の下半分に対して対称であり得る。いくつかの例において、口シール形成構3062の上角部は、下側角部と比較してより高剛性かつ/またはより肉厚であり得るため、より大きな力が鼻の下側の上唇内へ提供され得る。追加的にまたは代替的に、コネクタのベクトル(例えば、ウイッシュボーンコネクタの上部)は、シール形成構造3062の上角部内へ力を提供するように位置決めされ得る。図9A図10A図10B図11Aおよび図11Cに示すように、上アーム3066-1および下アーム3066-2の接続位置は、使用時においてシール形成構造3062の角部へ力が付加されるように、設けられる。
【0170】
図9Bに示す例と同様に、使用時において、上唇膜3076の直線部分は、口が閉じられたときおよび開いたときにシールを維持し得る。いくつかの例において、直線部分の可撓性により、患者の顔と口シール形成構造3062との間の係合を維持しつつ、数ミリメートルの動きが可能になり得る。
【0171】
本技術のいくつかの例において、シール形成構造と患者の顔との間のグリップの向上のために、鼻シール形成構造3052および/または口シール形成構造3062の一部が研磨され得る。例えば、上唇膜3076および/または上唇膜3076の中央部を研磨することにより、患者の唇に対するグリップが得られ得る。いくつかの例において、上唇膜3076および/または上唇膜3076の中央部のみが、口シール形成構造3062において研磨され得る。
【0172】
いくつかの例において、上唇膜3076および/または上唇膜3076の中央部の膜厚により、この領域における可撓性の大部分が得られ得るため、((例えば、発話に起因して)唇が動いたときに)クッションによりシールを維持することが可能になり得る。例えば、上唇膜3076および/または上唇膜3076の中央部の厚さは、上唇膜3076および/または上唇膜3076bの他の部分よりも薄くされ得る。一例において、上唇膜3076および/または上唇膜3076の中央部の厚さを0.25mmにした場合、大部分の可撓性が得られるため、唇が動いたときにクッションによりシールを維持することができる。
【0173】
本技術のいくつかの形態において、上唇膜3076の一部は、少なくとも鼻シール形成構造3052の一部または鼻クッション3050の外面と隣接し得る。
【0174】
本技術のいくつかの形態において、口クッション3060および鼻クッション3050は、継手3068を介して解放可能に相互に接続される。一形態において、鼻クッション3050および口クッション3060は、別個の構成要素として形成され、継手3068によって連結される。接合構成において、口シール形成構造3062および鼻シール形成構造3052により、患者の顔上に別個に密閉された領域が提供され、継手3068によって接続された共通のプレナムチャンバ3200が提供される。
【0175】
例において、例示的なシール形成構造3052および/または3062は、異なる厚さの領域を少なくとも2つ含み得る。例において、異なる厚さの生成は、異なる厚さおよび異なる距離の領域をシール形成構造3052および/または3062の内部に延ばせることで、シール形成構造3052および3062の外面を相互に隣接させかつほぼ平坦にさせることにより行われ得る。
【0176】
例において、鼻孔開口部は、患者の対応する鼻孔と概して整列されるように形成され得、これにより、加圧ガスの流れが吸気のために患者の鼻孔へ提供される。
【0177】
一形態において、鼻クッション3050および/または口クッション3060は、シリコーンボディ上に取り付けられたテキスタイル密閉面を含む。
【0178】
例において、シール形成構造3052および/または3062は、2つ以上の異なるサイズ/形状を含み得る。例えば、シール形成構造のサイズ寸法および/または外形は、異なる患者に合わせて代替的シール形成表面を提供するように変更され得る。
【0179】
例において、例えば、クッション安定性およびシール性能の確保のために、1つ以上の肉厚部分(例えば、シリコーンの肉厚部分)をシール形成構造3052および/または3062の1つ以上の領域に設けることにより、1つ以上の領域へさらに支持および安定性が提供される。1つ以上の領域内のシール形成構造3052および/または3062の厚さをシール形成構造3052および/または3062の内部へ増加させることにより1つ以上の肉厚部分が生成され得、これにより、シール形成構造3052および/または3062の外面が連続しかつ平滑になる。
【0180】
図4Bおよび図4Dに示す例において、肉厚部分は、下側ヘッドギアコネクタ3066の周囲および/または下側の領域3066-4、口クッション継手開口部3070の周囲の領域3070-1、口クッション開口部3072の周囲の領域3072-1、ならびに/あるいは上アーム3066-1および/または下アーム3066-2の周囲および/または下側の領域3066-4内に設けられ得る。肉厚部分は、側方側3090、下唇膜3094および/または上唇膜3076に隣接してまたは側方側3090、下唇膜3094および/または上唇膜3076に設けられ得る(図9Bを参照)。上唇膜3076に沿った肉厚部分により、構造的支持が得られ得、口クッション3060が鼻クッション3050に対して位置決めされた際の口クッション3060の圧壊が回避され得る。一例において、肉厚部分は、上唇膜3076の対向する側部に沿って設けられるが、中央部3077には沿っていないため、中央部3077の近隣の領域において可撓性が得られる。これらの1つ以上の肉厚部分は、相互に類似の厚さまたは異なる厚さを含み得る。例において、肉厚部分(単数または複数)の厚さならびに/あるいはシール形成構造3052および/または3062に沿った肉厚部分(単数または複数)の特定の位置決めは、シール形成構造3052および/または3062のサイズに少なくとも部分的に依存し得る。
【0181】
いくつかの例において、シール形成構造3052および/または3062は、PCT出願第PCT/AU2018/050289(出願日:2018年3月29日)およびPCT出願公開WO2019/119058(出願日:2018年12月21日)に記載のような鼻クッション(例えば、クレードルクッション)、口クッションおよび/またはシール形成構造を含み得る。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。
【0182】
一形態において、鼻クッション3050および口クッション3060は、単一の構成要素として一体形成される。下記により詳述する他の例において、鼻クッション3050および口クッション3060は、別個の構成要素として形成され、継手3068によって連結される。
【0183】
本技術のいくつかの形態において、口クッション3060は、剛性を有する構造的特徴を含み得ない。その結果、口クッションのシリコーン材料が(口の周囲全体の周辺におけるシールのために)患者の形状に対して容易に歪んで適合することが可能になり得る。上記したように、可撓性および良好なシールを提供しつつ、多様な厚さのシリコーンを構造的目的のために実行することができる。口クッション3060のシリコーン材料により、全体的に可撓性の前部、可撓性の上部および側方膜の支持部が得られ、これらの支持部は、口ならびに肉薄の可撓性の下部および/または上唇の周囲における人の顔に対して位置決めされる。
5.3.3 プレナムチャンバ
【0184】
プレナムチャンバ3200は、使用時に密閉が形成される領域において平均的な人の顔の表面外形に対して相補的である形状の周囲を有する。使用時において、プレナムチャンバ3200の周縁部は、顔の隣接する表面に近接して位置決めされる。顔との実際の接触は、シール形成構造3100によって提供される。シール形成構造3100は、使用時においてプレナムチャンバ3200の周囲全体の周りに延び得る。いくつかの形態において、プレナムチャンバ3200およびシール形成構造3100は、単一の均質的材料ピースから形成される。
【0185】
本技術のいくつかの形態において、共通のプレナムチャンバ3200は、鼻クッション3050内のプレナムチャンバと、口クッション3060内のプレナムチャンバと、鼻クッション3050を口クッション3060へ連結させる継手3068によって形成されたチャンバとによって提供される。
【0186】
本技術のいくつかの形態において、プレナムチャンバ3200は、使用時において患者の眼を被覆しない。換言すると、眼は、プレナムチャンバによって規定される加圧容積外にある。このような形態の場合、押しつけがさが低減しかつ/またはより着用者の快適性が増すことが多いため、治療コンプライアンスが向上し得る。
【0187】
本技術の特定の形態において、プレナムチャンバ3200は、透明材料(例えば、透明ポリカーボネート)から構築される。透明材料の利用により、患者インターフェースの押しつけがましさが低減され得、治療へのコンプライアンスの向上が補助され得る。透明材料の利用により、臨床医が患者インターフェースの配置様態および機能を確認することが補助され得る。
【0188】
本技術の特定の形態において、プレナムチャンバ3200は、半透明材料から構成される。半透明材料を用いることにより、患者インターフェースの押しつけがましさを低減することができ、治療へのコンプライアンスの向上を補助することができる。
【0189】
5.3.4 位置決めおよび安定化構造
本技術の患者インターフェース3000のシール形成構造3100は、使用時において位置決めおよび安定化構造3300によって密閉位置において保持され得る。位置決めおよび安定化構造3300は、患者インターフェース3000を密閉位置において保持するために患者の頭部に係合することから、「ヘッドギア」とも呼ばれることができる。
【0190】
一形態において、位置決めおよび安定化構造3300によって提供される保持力は、鼻クッション3050および/または口クッション3060のプレナムチャンバ3200による(顔から分離方向における)作用に打ち勝つために少なくとも十分である。
【0191】
一形態において、位置決めおよび安定化構造3300により、患者インターフェース3000上への引力に打ち勝つだけの保持力が得られる。
【0192】
一形態において、位置決めおよび安定化構造3300により、患者インターフェース3000上への破壊的作用の可能性(例えば、管引き摺りまたは患者インターフェースとの不慮の干渉に起因するもの)を解消するための安全マージンとして保持力が得られる。
【0193】
本技術の一形態において、患者が睡眠時に装着されるように構成された位置決めおよび安定化構造3300が提供される。一例において、位置決めおよび安定化構造3300は、装置の感知される嵩または実際の嵩を低減するように、目立たない外形または断面厚さを有する。一例において、位置決めおよび安定化構造3300は、矩形の断面を有する少なくとも1つのストラップを含む。一例において、位置決めおよび安定化構造3300は、少なくとも1つの平坦ストラップを含む。
【0194】
本技術の一形態において、患者が患者の頭部の後部領域を枕に載せた状態で仰臥位睡眠位置において寝る際の妨げとなるような過度に大きいまたは嵩張るサイズにならないように構成された位置決めおよび安定化構造3300が提供される。
【0195】
本技術の一形態において、患者が患者の頭部の側部領域を枕に載せた状態で側臥位睡眠位置において寝る際の妨げとなるような過度に大きいまたは嵩張るサイズにならないように構成された位置決めおよび安定化構造3300が提供される。
【0196】
本技術の一形態において、位置決めおよび安定化構造3300は、位置決めおよび安定化構造3300の前方部分と位置決めおよび安定化構造3300の後方部分との間に配置された結合解除部分を備える。この結合解除部分は、圧縮に耐えず、例えば可撓性のまたは柔軟なストラップであり得る。結合解除部分は、患者が頭を枕に載せて横たわったときに結合解除部分の存在により後部への力が位置決めおよび安定化構造3300に沿って伝達されてシールが妨害される事態を回避できるように、構築および配置される。
【0197】
本技術の一形態において、位置決めおよび安定化構造3300は、布地患者接触層、発泡体内側層および布地外側層の積層物から構成されたストラップを含む。一形態において、発泡体は、湿気(例えば、汗)がストラップを通過できるような多孔性である。一形態において、布地外側層は、フック材料部分と係合するループ材料を含む。
【0198】
本技術の特定の形態において、位置決めおよび安定化構造3300は、延長可能である(例えば、弾力性と共に延長可能である)ストラップを含む。例えば、ストラップは、使用時にはピンと張った状態にされて、シール形成構造を患者の顔の一部と密着させる力を方向付けるように、構成され得る。一例において、ストラップは、タイとして構成され得る。
【0199】
本技術の一形態において、位置決めおよび安定化構造は第1のタイを含み、第1のタイは、使用時においてその下縁部の少なくとも一部が上を通過して患者の頭部の上耳底点へ移動し、後頭骨を被覆することなく頭頂骨の一部を被覆するように、構築および配置される。
【0200】
鼻専用マスクまたはフルフェイスマスクに適した本技術の一形態において、位置決めおよび安定化構造は、第2のタイを含む。第2のタイは、使用時においてその上縁部の少なくとも一部が患者の頭部の下側の下耳底点の下側を通過し、患者の頭部の後頭骨を被覆するかまたは患者の頭部の後頭骨の下側に載置されるように、構築および配置される。
【0201】
鼻専用マスクまたはフルフェイスマスクに適した本技術の一形態において、位置決めおよび安定化構造は、第1のタイおよび第2のタイが相違に離隔方向に移動する傾向を低減させるように第1のタイおよび第2のタイを相互接続させるように構築および配置された第3のタイを含む。
【0202】
本技術の特定の形態において、位置決めおよび安定化構造3300は、屈曲可能であり例えば非剛性であるストラップを含む。本態様の利点として、患者が睡眠時に体を横たえたときにストラップがより快適になっている点がある。
【0203】
本技術の特定の形態において、位置決めおよび安定化構造3300は、内部を水蒸気が通過できるように呼吸可能なように構成されたストラップを含む。
【0204】
本技術の特定の形態において、1つよりも多くの位置決めおよび安定化構造3300を含むシステムが提供される。各位置決めおよび安定化構造3300は、異なるサイズおよび/または形状範囲に対応するための保持力を提供するように構成される。例えば、システムは、小さなサイズの頭ではなく大きなサイズの頭に適しかつ大きなサイズの頭ではなく小さなサイズの別の頭に適した位置決めおよび安定化構造3300の一形態を含み得る。
【0205】
5.3.4.1 ヘッドギア導管
本技術のいくつかの形態において、位置決めおよび安定化構造3300は、空気回路4170の一部を形成する導管から受容された加圧ガスを治療圧力において(患者による呼吸のために)鼻クッション3050および/または口クッション3060へ搬送するように構成された1つ以上の中空管を含む。
【0206】
本技術の形態において、位置決めおよび安定化構造3300の共通の接続要素3330は、第1のヘッドギア導管3010(例えば、左ヘッドギア管)および第2のヘッドギア導管3020(例えば、右ヘッドギアセクション)を含み得る。第1のヘッドギア導管3010および第2のヘッドギア導管3020はそれぞれ、患者の眼の下側の患者の頬に沿ってかつ患者の眼および耳の間において患者の頭部の後部における上方位置へ近づく方向に移動するように適合される。第1のヘッドギア導管3010および第2のヘッドギア導管3020はそれぞれ、患者の頭部の近隣の後方から(例えば、患者の頭部の後方の上部(例えば、頭頂骨または頭頂骨においてまたは頭頂骨または頭頂骨に沿って))鼻クッション3050へと延びるように適合される。患者の鼻および口の近隣のヘッドギア導管3010および3020はそれぞれ、(鼻クッション3050を患者の顔上の位置に支持しつつ)加圧ガスを鼻クッション3050へ送るように構成され得る。第1のヘッドギア導管3010および第2のヘッドギア導管3020と、鼻クッション3050との協働により、ループが形成される。
【0207】
例において、第1のヘッドギア導管3010は、左クッションインターフェース3012を含み得、第2のヘッドギア導管3020は、鼻クッション3050への取り外し可能または解放可能な連結ならびに鼻クッション3050の支持のための右クッションインターフェース3022を含み得る。左クッションインターフェース3012および/または右クッションインターフェース3022は、鼻クッション3050のより小型の突出した連結セクション(例えば、上側ヘッドギアコネクタ3056)を受容し得、鼻クッション3050を第1のヘッドギア導管3010と第2のヘッドギア導管3020との間に固定させ得る。
【0208】
鼻クッション3050内におけるプレナムチャンバ3200の各側方側において、プレナムチャンバ側方端3202が中空の通路の形態をとって設けられ得る。プレナムチャンバ3200の各側方側において、上側ヘッドギアコネクタ3056は、プレナムチャンバ側方端3202の外方へ横方向に延びる。上側ヘッドギアコネクタ3056は、位置決めおよび安定化構造3300の第1のヘッドギア導管3010および第2のヘッドギア導管3020の左および右クッションインターフェース3012および3022の各端部へ解放可能に接続し得る。本技術の一形態において、鼻クッションは、プレナムチャンバ側方端3202および上側ヘッドギアコネクタ3056によって提供される開口部を閉鎖させるためのプラグを含み得る。これらのプラグは、鼻ヘッドギアストラップ3310へ接続するコネクタを含み得る。
【0209】
ヘッドギア導管3010および3020は、患者インターフェース3000の鼻クッション3050および/または口クッション3060を患者の顔の適切な部分(例えば、鼻および/または口)に対して位置決めおよび安定化させるための位置決めおよび安定化構造3300の一体部分として設けられる。これにより、(不便であり得かつ/または一部の人からは視認できない場所である)患者の顔の前方以外の位置における患者インターフェースの接続ポート3600への接続のために、空気回路4170の導管から加圧空気の空気が提供される。一対の導管3010および3020においては一定の利点があるものの、いくつかの例において、位置決めおよび安定化構造3300は、患者の頭部の片側に載置されるように構成された単一のヘッドギア導管3010または3020のみを含む。ストラップまたは他の安定化構成要素は、単一のヘッドギア導管3010または3020の上端と鼻クッション3050との間の患者の頭部の他方側に設けられ得、これにより、バランスのとれた力が鼻クッション3050上に提供される。
【0210】
空気回路4170から患者の気道への加圧空気の送達のために、空気がヘッドギア導管3010、3020内に収容し、ヘッドギア導管3010、3020を通じて送られるため位置決めおよび安定化構造3300は、膨張可能であるものとして記述され得る。膨張可能位置決めおよび安定化構造3300は、位置決めおよび安定化構造3300の構成要素全てを膨張可能とさせる必要は無いことが理解される。例えば、図5A図6Dに示す例において、位置決めおよび安定化構造3300は、一部が膨張可能であるヘッドギア導管3010および3020と、膨張不可能である鼻ヘッドギアストラップ3310とを含む。
【0211】
接続ポートが患者の顔の前方に位置決めされていない患者インターフェースは、導管の患者インターフェースへの接続が顔の前方において行われている場合に目障りかつ邪魔になるとみなす患者もいるため、有利であり得る。例えば、顔の前方において患者インターフェースへ接続する導管は、(特に使用時において導管が患者インターフェースから下方に延びる場合に)寝具またはベッドリネンに絡まり易い場合がある。使用時において接続ポートが患者の頭部の上部の近隣に位置決めされた患者インターフェースを用いた技術の形態により、以下の位置のうち1つ以上において患者が横たわるかまたは睡眠をとることがより容易または快適になり得る:側方または横方向の位置;仰臥位置(すなわち、仰向けになって顔を概して上方に向けた位置);および腹臥位置(すなわち、うつぶせになって顔を概して下方に向けた位置)。さらに、導管を患者インターフェースの前方に接続した場合、管引き摺りとして知られる問題が悪化し得、その場合、患者インターフェース治療において導管から発生する望ましく牽引力に起因して、顔からの外れに繋がる。
【0212】
図6A図7Dに示す本技術の形態において、ヘッドギア導管3010および3020は、上端において相互にかつ接続ポート3600へ流体接続される。一実施形態において、2つのヘッドギア導管3010および3020は、一体形成され、他の実施形態において、これらの導管は、別個の構成要素であり、使用時においては共に接続され、例えば清掃または保管のために接続解除され得る。別個の導管が用いられているが、これらの導管は、間接的に接続され得、例えばそれぞれがT字型の導管へ接続され得る。このT字型の導管は、ヘッドギア導管3010および3020へそれぞれ流体接続可能な2つの導管アームと、接続ポート3600として機能する第3の導管アームまたは開口部とを有する。接続ポート3600は、流体接続開口部内に受容されるエルボー3610を2つの一体形成されたヘッドギア導管3010および3020の中央において含み得る。
【0213】
ヘッドギア導管3010および3020は、エラストマー材料(例えば、シリコーン)などの半剛性材料によって形成され得る。例えば、ヘッドギア導管3010および3020は、自然な事前形成された形状を有し得、管へ力が付加された際に屈曲または移動して別の形状をとり得る。例えば、ヘッドギア導管は、頭上部と鼻領域または口領域との間の患者の頭部の外形に近い概して弧状または曲線の形状であり得る。
【0214】
米国特許第6,044,844号(本明細書中、同文献を参考のため援用する)に記載のように、ヘッドギア導管は、耐圧潰性であり得るため、いずれかが使用時において圧壊された場合に(例えば、患者の顔と枕との間において潰れた場合に)管を通じた呼吸可能なガスの流れが回避される。管中の加圧ガスがスプリントとして機能して使用時におけるヘッドギア導管の圧壊を回避するかまたは少なくとも耐えるため、耐圧潰性管は全ての場合において必要なわけではない。耐圧潰性管が有利になり得る場合として、単一の管が使用時に遮断されているのように単一のヘッドギア導管のみが存在する場合があり、その場合、ガスの流れが制限され、治療が停止するかまたは有効性が低下する。
【0215】
本技術の特定の形態において、ヘッドギア導管3010および/または3020の1つ以上の部分は、1つ以上の剛性付与要素または補剛要素によって剛性付与され得る。剛性付与要素の例を右記に挙げる:他のセクションよりも比較的肉厚のヘッドギア導管3010および/または3020のセクション;他のセクションを形成する材料よりも比較的高剛性の材料から形成されたヘッドギア導管3010および/または3020のセクション;および管の一部の内側、外側に取り付けられたかまたは管の一部に埋設された剛性部材。このような剛性付与要素の使用により、例えばヘッドギア導管3010および/または3020が力付与を受けた場合に変形する可能性がより高い場合および力が付与されるとヘッドギア導管3010および/または3020の形状が維持される可能性がより高くなる場合において、使用時において位置決めおよび安定化構造3300が機能する様態の制御が支援される。よって、このような剛性付与要素がヘッドギア導管3010および/または3020内に配置される場所の選択により、患者インターフェース3000の着用時における快適性の促進が支援され得、使用時における鼻シール形成構造3052および/または口シール形成構造3062における良好なシールの維持が支援され得る。剛性付与要素または補剛要素は、比較的高重量のシール形成構造(例えば、フルフェイスまたは口鼻クッションアセンブリ)を支持するよう構成された位置決めおよび安定化構造3300内に設けられ得る。
【0216】
本技術の特定の形態において、ヘッドギア導管3010および/または3020の1つ以上の部分は、延長可能なセクションを含み得る。いくつかの例において、延長可能な管セクションは、延長可能なコンチェルティーナ構造3362を含む。図6A図7Dに示すように、ヘッドギア導管3010および/または3020の上部は、それぞれが延長可能なコンチェルティーナ構造3362の形態をとる延長可能な管セクションを含み得る。各延長可能なコンチェルティーナ構造3362において、ヘッドギア導管の一部は、1つ以上の折り畳み部分、プリーツ、波形構造またはベローズを有して、ヘッドギア導管3010および/または3020の延長可能部分を形成する。
【0217】
5.3.4.2 ヘッドギアストラップ
本技術のいくつかの形態において、位置決めおよび安定化構造3300に含まれる1つ以上のヘッドギアストラップは、口クッション3060および/または鼻クッション3050の位置決めおよび/または支持を行う。1つ以上のヘッドギアストラップは、1つ以上のヘッドギア導管に加えて、患者の気道への入口における密閉位置に鼻クッション3050および/または口クッション3060を位置決めおよび安定化させる機能を行い得る。これら1つ以上のヘッドギアストラップにより、位置決めおよび安定化構造3300の一部が形成される。
【0218】
図4Aおよび図4Cに示すように、異なるストラップが、ヘッドギア導管3010および/または3020または鼻クッション3050へ連結され得る。鼻クッション3050が単独で口クッション無しに用いられる場合、鼻ヘッドギアストラップ3310は、ヘッドギア導管3010および/または3020あるいは鼻クッション350へ連結され得る。鼻クッション3050および口クッション3060がどちらとも用いられる場合、口鼻ヘッドギアストラップ3320は、ヘッドギア導管3010および/または3020あるいは鼻クッションへ連結され得る。
【0219】
鼻ヘッドギアストラップ3310および口鼻ヘッドギアストラップ3320は、治療的に有効な位置およびシールを提供するために異なるストラップ構成を含み得る。図4Aを参照して、鼻ヘッドギアストラップ3310は、ヘッドギア導管3010および/または3020間において取り外し可能に接続された単一のストラップを含み得る。位置決めおよび安定化構造3300の鼻ヘッドギアストラップ3310は、2つのヘッドギア導管3010および/または3020間に接続される。これら2つのヘッドギア導管3010および/または3020は、患者の頭部の各側に位置決めされかつ患者の頭部後部の周囲に送られる(例えば、使用時において患者の頭部の後頭骨の後方に載置または配置される)。鼻ヘッドギアストラップ3310は、患者の耳の上方の各管へ接続する。
【0220】
口鼻ヘッドギアストラップ3320は、上ストラップ3322を含み得る。上ストラップ3322は、鼻ヘッドギアストラップ3310および1つ以上のさらなるストラップに類似し得る。図4Aおよび図4Cに示すように、口鼻ヘッドギアストラップ3320は、ヘッドギア導管3010および/または3020間に取り外し可能に連結された上ストラップ3322と、口クッション3060へ取り外し可能に連結された端部を含む下ストラップ3326と、上ストラップ3322を下ストラップ3326へ連結させる連結ストラップ3324とを含み得る。
【0221】
鼻ヘッドギアストラップ3310および口鼻ヘッドギアストラップ3320は、図示された特定の数のストラップおよび/またはストラップ構成に限定されず、1つ以上のさらなるストラップを含み得る。
【0222】
本技術の特定の形態において、位置決めおよび安定化構造3300は、鼻ヘッドギアストラップ3310および口鼻ヘッドギアストラップ3320をヘッドギア導管3010および/または3020、鼻クッション3050および/または口クッション3060へ接続させる機構を含む。鼻ヘッドギアストラップ3310および/または口鼻ヘッドギアストラップ3320は、ヘッドギア導管3010および/または3020、鼻クッション3050および/または口クッション3060へ直接的または間接的に接続され得る。図4Cに示すように、連結ストラップ3324は、鼻ヘッドギアストラップ3310から取り外し可能であり得る。連結ストラップ3324は、ベルクロ(登録商標)または別の取付機構を介して鼻ヘッドギアストラップ3310へ取り付けられ得る。
【0223】
図4Aおよび図6A図6Dに示す患者インターフェース3000の場合、接続要素3980は、ヘッドギア導管3010および/または3020それぞれに設けられて、鼻ヘッドギアストラップ3310または口鼻ヘッドギアストラップ3320をヘッドギア導管3010および/または3020へ接続させるように構成される。接続要素3980は、各ヘッドギア導管から患者の頭部の後部へ突出するタブを含み得る。接続要素3980はそれぞれ、1つ以上のスロット3982を含み得る。これらの1つ以上のスロット3982は、鼻ヘッドギアストラップ3310または口鼻ヘッドギアストラップ3320の各端部を(長さ調節可能な様態で)ねじ形式で受容する。同じスロットまたは異なるスロット(例えば、異なる位置および/または角度で設けられたもの)が、鼻ヘッドギアストラップ3310および口鼻ヘッドギアストラップ3320のために用いられ得る。いくつかの例において、接続要素3980は、鼻ヘッドギアストラップ3310または口鼻ヘッドギアストラップ3320上に設けられた対応する接続要素と取り外し可能に係合するように構成された磁石および/またはクリップを含み得る。
【0224】
図6A図6Dおよび図8A図8Dに示す例において、口鼻ヘッドギアストラップ3320の下ストラップ3326は、患者の耳の下側と通過することおよび/または口クッション3060へ取付可能な一対の端部を含むように適合され得る。底部ストラップセクション3955の各端部は、(口クッション3060上の対応する下側ヘッドギアコネクタ3066と取り外し可能に係合するように構成された磁石および/またはクリップを含む)コネクタ3328を含み得る。下ストラップ3326および対応する下側ヘッドギアコネクタ3066上のコネクタ3328は、クッションクリップまたは磁性接続要素を含み得るため、口鼻ヘッドギアストラップ3320を口クッション3060へ取り外し可能に取り付けることが可能になる。
【0225】
一例において、下ストラップ3326は、バックル3360をストラップの端部近辺において含み得る。バックル3360を通じて、ストラップの端部をねじ込むことにより、下ストラップ3326の長さ調節が可能になる。
【0226】
いくつかの例において、口鼻ヘッドギアストラップ3320は、(例えば、クリップまたはコネクタを介して)鼻ヘッドギアストラップ3310へ解放可能に接続された鼻ヘッドギアストラップ3310および下ストラップ3326を含む。
【0227】
本技術のいくつかの形態において、鼻ヘッドギアストラップ3310および/または口鼻ヘッドギアストラップ3320は、調節可能である。接続要素3980間の鼻ヘッドギアストラップ3310および/または口鼻ヘッドギアストラップ3320の長さを調節するには、接続要素3980の片方または両方を通じてストラップをより大きくまたはより小さく牽引すればよい。鼻ヘッドギアストラップ3310および/または口鼻ヘッドギアストラップ3320は、例えばフックアンドループ締結手段により接続要素3980中のスロット3982を通過した後に、自身に固定され得る。そのため、これらのストラップは、異なるサイズの頭部の周囲にフィットするように調節することが可能である。本技術のいくつかの形態において、ヘッドギア導管3010および/または3020あるいは患者の頭部に相対するストラップの角度は、異なる位置における患者の頭部の周囲にフィットするように調節可能である。この調節可能性により、位置決めおよび安定化構造3300が異なる形状およびサイズの頭部に対応することが支援される。
【0228】
本技術のいくつかの形態において、鼻ヘッドギアストラップ3310および/または口鼻ヘッドギアストラップ3320から力がヘッドギア導管3010および3020上に付加され得、ヘッドギア導管3010および3020は、接続要素3980の位置において少なくとも部分的に後方(例えば、後の)方向に牽引される。鼻ヘッドギアストラップ3310および/または口鼻ヘッドギアストラップ3320から力がヘッドギア導管3010および3020上に付加され得、ヘッドギア導管3010および3020は、少なくとも部分的に後方(例えば、後ろの)方向に牽引される。この力の大きさは、接続要素間のストラップの長さの変更によって調節され得る。
【0229】
鼻ヘッドギアストラップ3310および/または口鼻ヘッドギアストラップ3320は、矩形の断面を自身の長さの一部または全体に沿って含み得る。さらに、鼻ヘッドギアストラップ3310および/または口鼻ヘッドギアストラップ3320の外形は、1つ以上の曲線状縁部を含み得るため、快適性が増し、ヘッドギアストラップに起因して患者に痕がつくかまたは患者の苛立たせる危険性が低下する。本技術の特定の形態において、位置決めおよび安定化構造3300は、屈曲可能であり例えば非剛性であるストラップを含む。本態様の利点として、患者が睡眠時に体を横たえたときにストラップがより快適になっている点がある。
【0230】
本開示の例と共に用いられ得る構成可能でありかつ/または交換式の鼻および/または口鼻ヘッドギアストラップの例について、国際出願第PCT/AU2020/050959号(出願日:2020年9月10日)に記載がある。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。
【0231】
5.3.4.3 U字型形状のヘッドギアコネクタ
図4D図9A図10A図10Bおよび図11Aに示す本技術の一形態において、口クッション3060上の下側ヘッドギアコネクタ3066はそれぞれ、ウイッシュボーン形状を有する一対のアームを含む。下側ヘッドギアコネクタはそれぞれ、口クッション3060の前面3074へ接続された上アーム3066-1および下アーム3066-2を有し、上アーム3066-1は、下アーム3066-2から間隔を開けて配置される。ヘッドギアコネクタ3066は、口クッション3060の可撓性の一部となる。シリコーンの材料特性は、(ヘッドギア)ベクトル力の移動に適しているため、ヘッドギアコネクタ3066は、シリコーン口クッションの一体部分として設計され得る。
【0232】
上アーム3066-1および下アーム3066-2は、相互に平行な垂直線に沿って接続され得る。一例において、上アーム3066-1の垂直接続および下アーム3066-2の垂直接続は、同じ垂直線に沿って設けられ得る。上アーム3066-1および下アーム3066-2の接続は、口クッション3060の前面と(部分的にまたは全体的に)一体化され得る。
【0233】
上アーム3066-1および下アーム3066-2の配置構成により、支持力が口クッション3060の異なるゾーンへ分配され得る。例えば、上アーム3066-1および下アーム3066-2の配置構成により、支持力それぞれが口クッション3060の中間ゾーンおよび下側ゾーンへ分配され得る。別の例において、上アーム3066-1および下アーム3066-2の配置構成により、支持力がそれぞれ口クッション3060の上側ゾーンおよび下側ゾーンへ分配され得る。
【0234】
図4D図9A図10A図10Bおよび図11Aに示すように、上アーム3066-1は、口クッション3060の中間ゾーンまたはその真上において口クッション3060へ連結され得、下アーム3066-2は、口クッションの下側ゾーンの近隣において口クッション3060へ連結され得る。いくつかの例において、上アーム3066-1は、口クッションの前面の上部へ取り付けられ得、下アーム3066-2は、口クッションの前面の下部へ取り付けられ得る。この構成によれば、ヘッドギアコネクタ3066によりヘッドギアベクトルをクッションの上部および下部へ均等に分割することが可能になり得る。
【0235】
上アーム3066-1および下アーム3066-2は、口クッション3060の側方縁部から内方に間隔を開けて配置された位置において口クッション3060の前面へ取り付けられ得る(例えば、接着され得る)。一例において、一対の上アーム3066-1および下アーム3066-2は、鼻の片側の患者の翼頂点の近隣を交差する垂直線に沿って取り付けられ得、第2の一対の上アーム3066-1および下アーム3066-2は、鼻の他方側の患者の翼頂点の近隣を交差する垂直線に沿って取り付けられ得る。
【0236】
いくつかの例において、上アーム3066-1および下アーム3066-2は、(例えば1mmのシリコーンシートから形成された)均一の厚さを有し得、(例えば、シリコーン接着剤を介して)口クッション3060へ接着され得る。本技術の一形態において、上アーム3066-1および下アーム3066-2は、同一材料のクッションと共に1つの部品として成形され得る。
【0237】
上アーム3066-1および下アーム3066-2は、移動可能および/または可撓性であり得るため、口クッション3060の前面と同一平面に配置される。この一対のアームは、自身の取付ポイントから口クッション3060の各側方縁部へと延びる際に、口クッション3060の形状に適合し得る。上アーム3066-1および下アーム3066-2は、(例えば、患者の口の動きに起因して)口クッション3060へ付加された変形に応答して変形し得る。アームはそれぞれ、患者のケイリオンの対向する側部に跨がるような寸法および構成にされ得るため、口クッション3060が患者によって着用されかつ位置決めおよび安定化構造3300によって支持されたときに力が患者の口の角部へ付加される。
【0238】
上アーム3066-1および下アーム3066-2は、端部が口クッション3060へ連結されたU字型形状またはC字型形状で設けられ得る。クリップまたは磁石を含むコネクタ3066-3が、U字型形状の中間セクションに設けられ得る。コネクタ3066-3は、口鼻ヘッドギアストラップ3320の下ストラップ(例えば、ストラップ3326)へ取り外し可能に連結される。使用時において、下ストラップへ付加された張力に起因して上アーム3066-1および下アーム3066-2から力が口クッション3060の前面へ付加されて、口クッションは、患者の口を包囲する角部内へアンカー固定される。力の付加時において、上アーム3066-1および下アーム3066-2のうちコネクタ3066-3の近隣の一部は、口クッション3060の外面から離隔方向において部分的に移動され得、上アーム3066-1および下アーム3066-2のうち口クッション3060へ連結された端部により近い一部は、口クッション3060に対向して位置決めされたままであり得る。上アーム3066-1および下アーム3066-2の可撓性および弾性により、口クッション3060から十分なシールをシール形成構造3062と患者の顔との間に提供することが可能になる。
【0239】
上アーム3066-1および下アーム3066-2の配置構成により、周囲のヘッドギアベクトル力が口クッションのシールの周囲へ伝達され得る。ヘッドギアベクトル力は、コネクタ3066-3(例えば、磁性結合)を通じて移動し、可撓性コネクタの「翼」を下方に口クッション3060上に牽引させる。その結果、可撓性シリコーンコネクタ3066からの力が可撓性シリコーンコネクタ3066に沿って力が下方方向に口クッション3060の前面を通じてクッションのシーリングインターフェース上へ送られる。ヘッドギアベクトルからの力を可撓性クッションのヘッドギアコネクタの「翼」およびクッションを通じて分配することにより、応答的シールが顔上に生成され得る。図10Lは、上アーム3066-1および下アーム3066-2から口クッション3060上に分配され得る例示的ベクトル力と、患者の顔上に分散される口クッション3060の反力と、ヘッドギア作用張力およびヘッドギア反力とを示す。
【0240】
U字型形状は、口クッション3060の側方部分とサイズおよび/または形状が類似し得る。一対のアームはそれぞれ可撓性であり得、(例えば、口クッション3060の拡張および/または変形に起因する)口クッション3060の形状変化に適合し得る。
【0241】
一対のアームがウイッシュボーン形状を有する様子が図示されているが、コネクタ3066へ付加された力を口クッション3060の異なる部分に分配するために、他の構成の2本のアームが用いられ得る。例えば、上アームおよび下アームは、コネクタ3066-から直線方向に延び得、相互に角度を以て設けられ得る。
【0242】
上アーム3066-1および下アーム3066-2は、シリコーンまたはシリコーンよりも高剛性の材料によって構成され得る。一対のアームのシリコーンは、口クッション3060の前面のシリコーンと同じであり得る。
【0243】
5.3.5 通気部
一形態において、患者インターフェース3000は、呼息されたガス(例えば、二酸化炭素)の押し出しを可能にするように構成および配置された通気部3400を含む。一形態において、通気部3400は、窒息防止弁3059の一部として設けられ得る。
【0244】
特定の形態において、通気部3400は、プレナムチャンバ内の圧力が周囲に対して正であるときにプレナムチャンバ3200の内部から周囲への連続的通気流れを可能にするように構成される。通気部3400は、使用時においてプレナムチャンバ内の治療圧力を維持しつつ、通気流量の大きさが呼息されたCOの患者による再呼吸を低減できるだけの充分な大きさになるように、構成される。通気部3400により、連続するガス通気流れが、患者の呼吸サイクル全体を通じてプレナムチャンバ3200の内部から周囲へ提供され得る。
【0245】
本技術による一形態の通気部3400は、複数の穴(例えば、約20個~約80個の穴または約40個~約60個の穴または約45個~約55個の穴)を含む。
【0246】
通気部3400は、プレナムチャンバ3200内に配置され得る。あるいは、通気部3400は、結合解除構造(例えば、スイベル(例えば、エルボー3610))内に配置される。
【0247】
一例において、患者インターフェース3000は、鼻クッション3050内(例えば、プレナムチャンバ3200内)の少なくとも1つの通気部3400、口クッション3060、および/または継手3068を含む。
【0248】
図4A図8Dに示す例において、患者インターフェース3000は、複数の通気部3400を含む。一例において、患者インターフェース3000は、鼻クッション3050内の少なくとも1つの通気部3400およびエルボー3610内の少なくとも1つの通気部を含む。別の例において、患者インターフェース3000は、口クッション3060内の少なくとも1つの通気部3400およびエルボー3610内の少なくとも1つの通気部を含む。
【0249】
鼻クッション3050、口クッション3060および/またはエルボー3610上の各通気部3400内には、1列の穴が含まれ得る。患者インターフェース3000の通気部3400は、一定範囲の治療圧力全体において十分なガス洗い流しを提供するようなサイズおよび構成にされる。
【0250】
患者インターフェース3000に含まれ得る拡散器は、空気流れを通気部を通じて拡散させることで、通気ノイズの低減および通気穴からの空気噴射の低減を図るように構成される。拡散器は、通気穴を被覆するように設けられ得る。いくつかの例において、通気部3400に含まれ得る通気モジュールは、鼻クッション3050、口クッション3060および/またはエルボー3610から取り外されるように構成される。
【0251】
通気部3400が特定の位置にある様子が図示されているが、通気部3400を含む窒息防止弁3059は、図示の通気部の代わりに設けられ得る。通気部3400または窒息防止弁3059は、特定の構成において好適であり得るが、通気部3400および窒息防止弁3059は、互換的に使用可能であり、かつ/または、窒息防止弁3059は通気部3400を含み得る。本技術のいくつかの例において、患者インターフェースの1つ以上の特徴(例えば、鼻クッション3050、口クッション3060および/または継手3068)は、図示の窒息防止弁3059および/または通気部3400無しに設けられ得る。例えば、図4A図4D図8A図8B図9A図10A図11Aおよび図13Aに示す窒息防止弁3059は、除去してもよいし、あるいは通気部3400の代わりに用いてもよい。別の例において、図6Aおよび図6Bに示す通気部3400のうち1つ以上は、除去され得かつ/または窒息防止弁3059の代わりに用いられ得る。
5.3.6 結合解除構造(複数または単数)
【0252】
一形態において、患者インターフェース3000は、少なくとも1つの結合解除構造(例えば、スイベルまたは球窩)を含む。例えば、図4A図8Dに示す患者インターフェース3000は、位置決めおよび安定化構造3300に対してスイベルとして構成されたエルボー3610を含む。本例においてエルボー3610は、位置決めおよび安定化構造3300内の円形開口部と同心の軸周囲において旋回するように構成される。本技術のいくつかの例において、エルボー3610は、位置決めおよび安定化構造3300に対する玉継ぎ手の一部を形成し得る。例えば、部分的に球状の内面を有するリングが、位置決めおよび安定化構造3300に設けられ得、エルボー3610を受容するように構成され得る。エルボー3610において、リングの部分的に球状の内面に対して相補的な部分的に球状の外面が設けられ得、これにより、エルボー3610がリングに対して複数の軸において旋回することが可能になる。
【0253】
5.3.7 接続ポート
接続ポート3600は、空気回路4170への接続を可能にする。図4D図8Dに示す例示的患者インターフェース3000において、エルボー3610は、接続ポート3600の形態を示す。位置決めおよび安定化構造3300上の管引き摺りの低減のために、エルボー3610は、結合解除構造として空気回路4170の動きを位置決めおよび安定化構造3300から結合解除させる。エルボー3610は、1つ以上の位置において回転可能であり得る。
【0254】
図5A図6Dに示す患者インターフェース3000は、位置決めおよび安定化構造3300のセクションを接続させるクラウンピースと、エルボー3610の受容および接続ポート3600の提供を行う開口部を含むクラウンピースとを含み得る。
【0255】
エルボー3610を受容する接続ポート3600および開口部が図4A図6Dに示され、位置決めおよび安定化構造3300に相対してセンタリングされている。接続ポート3600は、他の位置にも設けられ得る。例えば、接続ポート3600および/または回転可能なエルボー3610は、位置決めおよび安定化構造3300の中央部からオフセットされ得る。図4Cおよび図7A図8Dに示す他の例において、接続ポート3600および/または回転可能なエルボー3610は、鼻クッション3050または口クッション3060へ直接連結され得る。
【0256】
5.3.8 前額支持部
一形態において、患者インターフェース3000は、前額支持部3700を含む。いくつかの例において、患者インターフェース3000は、前額支持部無しに設けられ得る。有利なことに、図4D図8Dに示す例示的患者インターフェース3000は、位置決めおよび安定化構造3300を含む。位置決めおよび安定化構造3300は、(患者の顔の前方において眼の高さで配置された前額支持部または任意のフレームまたはストラップ部材への接続無しに)シール形成構造3052を密閉位置に保持することができる。
【0257】
5.3.9 窒息防止弁
一形態において、患者インターフェース3000は、窒息防止弁3059を含む。いくつかの例において、窒息防止弁3059は、通気部3400を含み得る。いくつかの例において、患者インターフェース3000は、複数の窒息防止弁を含む。本技術の一形態において、口クッション3060を鼻クッション3050へ連結させる継手3068は、継手3068の前面上に設けられた窒息防止弁3059を含む。窒息防止弁3059は、継手3068の鼻端部の近隣の可撓性継手の上部に設けられ得る(図4Aを参照)。通気部3400または窒息防止弁3059は、特定の構成において好適であり得るが、通気部3400および窒息防止弁3059は、互換的に使用可能であり、かつ/または、窒息防止弁3059は通気部3400を含み得る。本技術のいくつかの例において、患者インターフェースの1つ以上の特徴(例えば、鼻クッション3050、口クッション3060、および/または継手3068)は、図示の窒息防止弁3059および/または通気部3400無しに設けられ得る。
【0258】
5.3.10 ポート
本技術の一形態において、患者インターフェース3000は、プレナムチャンバ3200内の量へのアクセスを可能にする1つ以上のポートを含む。一形態において、これにより、臨床医が補充酸素を供給することが可能になる。一形態において、これにより、プレナムチャンバ3200内のガス(例えば、圧力)の特性を直接測定することが可能になる。
【0259】
5.3.11 モジュール式患者インターフェース
本技術の例により、複数のマスク構成が可能なモジュール式マスクシステムが得られる。例えば、マスクシステムはモジュール式であるため、鼻マスク構成からフルフェイスマスク構成への転換が可能になる。これらの構成それぞれの内部において、各マスクの変更例もあり(例えば、サイズ、接続種類および/または材料種類の変更例)。口鼻構成から開始して、鼻構成要素は、クレードルまたは枕シールであり得る。鼻クレードルカテゴリー内において、テキスタイルおよびシリコーンの変更例がある。いくつかの例において、シリコーンおよびテキスタイルの変更例は、口クッションに適用され得る。材料変更例により、患者がシーリングおよび快適性についての自身の選好に基づいてマスク構成をセットアップすることが可能になる。
【0260】
加えて、以下にさらに詳述するように、空気送達は、導管(チューブアップ)またはマスクの前方に接続された管(チューブダウン)として構成され得る。空気送達セットアップがモジュール式であるため、患者が自身のシーリングおよび快適性選好に基づいてマスクシステムをセットアップすることがさらに可能になる。
【0261】
図4A図4Dに示すように、患者インターフェース3000は、鼻の「鼻下型」のシールマスクと口鼻マスクとの間で転換され得る。患者インターフェース3000は、安定化構造3300の一部を形成する共通の接続要素3330を含み得る。安定化構造3300へ多様な構成要素を取り外し可能に連結することにより、(図5A図5Dおよび図7A図7Dに示す)鼻マスクまたは(図6A図6Dおよび図8A図8Dに示す)口鼻マスクが提供され得る。異なるバージョンの鼻マスク、口用マスクおよび/または口鼻マスクを用いて、異なる構成を提供することができる。例として、異なるバージョンを挙げると、クレードル、枕、クリルロー(crillow)、テキスタイルバージョン、または発泡体バージョンがある。
【0262】
使用時において、呼吸可能なガスが接続ポート3600を介して鼻クッション3050および/または口クッション3060へ供給され、鼻シール形成構造3052および/または口シール形成構造3062は、患者の気道への入口を包囲するように配置されるため、患者の気道への呼吸可能なガスの陽圧における供給が促進される。呼吸可能なガスは、空気回路4170から異なる構成(例えば、チューブアップ構成またはチューブダウン構成)において連結された管を介して、鼻クッション3050および/または口クッション3060へ供給され得る。例えば、接続ポート3600は、図4Aおよび図5A図6Dに示すように導管へ連結してもよいし、あるいは、図4Cおよび図7A図8Dに示すように鼻クッション3050または口クッション3060の表面へ連結してもよい。
【0263】
上記したように、モジュール式マスクシステムにより、マスクの交換式の構成要素を(シーリングおよび/または患者の快適性選好に基づいて)異なる材料によって構成することが可能になり得る。いくつかの例において、鼻クッション3050および口クッション3060は、同一材料によって構成され得る。例えば、鼻クッション3050および口クッション3060はどちらとも、全体がシリコーン製であってもよく、あるいは全体がテキスタイルによって構成されてもよい。いくつかの例において、鼻クッション3050および口クッション3060はどちらとも、材料の組み合わせ(例えば、テキスタイルおよびシリコーン)によって構成され得る。
【0264】
他の例において、鼻クッション3050(または鼻クッションのシーリング部分のみ)は、口クッション3060(または口クッションのシーリング部分)において用いられる材料と異なる材料によって構成され得る。例えば、鼻クッション3050全体をシリコーン製であってもよい、口クッション3060全体をテキスタイルによって構成されてもよい。別の例において、鼻クッション3050全体をテキスタイルによって構成されてもよく、口クッション3060全体をシリコーン製であってもよい。別の例において、鼻クッション3050および口クッション3060のうち1つは、材料の組み合わせによって構成され得る一方、鼻クッション3050および口クッション3060の他方は、全体が同一材料によって構成され得る。
【0265】
いくつかの例において、モジュール式マスクシステムによれば、2つ以上の異なるサイズ/形状を用いて鼻クッション3050、口クッション3060、鼻シール形成構造3052および/または口シール形成構造3062が得られ得る。例えば、シール形成構造のサイズ寸法および/または外形は、異なる患者に合わせて代替的シール形成表面を提供するように変更され得る。いくつかの例において、同一口クッション3060は、異なる鼻クッション形成構造および/または鼻シール形成構造と共に用いられ得る。本例において、同一の口クッション3060は、異なる患者に合わせた十分なシールを提供するように設計され得る一方、鼻クッションは、所望のシーリングおよび快適性を提供するように互換され得る。鼻クッションは、以下を含む鼻クッションから選択され得る:異なるサイズおよび/または形状シール形成構造3052、異なるサイズおよび/または形状オリフィス3054、異なるサイズおよび/または形状鼻枕3165、および/または鼻クッションの一部または全体に用いられる異なる材料。上記したように、鼻クッションは、鼻クッション全体または鼻クッションの一部において(例えば、鼻クレードルおよび/または鼻枕において)用いられる異なる種類の材料も含み得る。
【0266】
複数の異なる利点が、モジュール式マスクシステムによって提供され得る。これらの利点を挙げると、個々の構成要素を用いた、顔の特定の領域を目標とするシール設計(シールの統合に起因する妥協無し)および/またはシール構成要素間の結合解除(1つのシーリング構成要素から別のシーリング構成要素への不安定力の伝達無し)がある。これらの利点は、特にフルフェイスマスク構成内に設けられる。
【0267】
シール構成要素を別個の鼻構成要素および口構成要素内に分割することにより、各構成要素を用いて顔の1つの領域を目標とするシール設計を得ることが妥協無く可能になる。鼻シールから口シールへの転換が行われる移行領域を設ける必要は無い。
【0268】
別個のシーリング構成要素を結合解除することも可能であり得、その場合、フィッティングおよび調節時において1つの構成要素から他方の構成要素へ障害はほとんど発生しない。これにより、個々のシーリング構成要素を快適性と共にセットアップすることが可能になる。従来の口鼻フルフェイスマスクの場合、シール構成要素間に結合解除が無いため、十分なシールを達成するために鼻領域または口領域を過度に締め付ける必要が出てくる状況に繋がり得る。
【0269】
これらのシールを結合解除することにより、睡眠時の動きにおいてシーリング構成要素間に障害が伝達され得る量も低下し得る。従来の口鼻フルフェイスマスクにおいて、これらの障害力に起因して、漏洩に繋がり得る。
【0270】
5.3.11.1 ヘッドギア導管を用いたモジュール式患者インターフェース
図4Aに示す例において、モジュール式患者インターフェースが備えるチューブアップ構成において、呼吸可能なガスの供給は、位置決めおよび安定化構造3300の一部として設けられた第1のヘッドギア導管3010および第2のヘッドギア導管3020を介して行われる。第1のヘッドギア導管3010および第2のヘッドギア導管3020は、第1のヘッドギア導管3010および第2のヘッドギア導管3020へ連結された接続ポート3600を介して呼吸可能なガスを受容する。
【0271】
本例において、(図5A図5Dに示す)鼻マスク構成の提供のために、鼻クッション3050は、第1の種類の位置決めおよび安定化構造であり得る位置決めおよび安定化構造3300へ連結される。第1の種類の位置決めおよび安定化構造3300は、鼻ヘッドギアストラップ3310と、1つ以上の導管を含む共通の接続要素3330とを含み得る。
【0272】
図6A図6Dに示す)口鼻マスク構成の提供のために、鼻クッション3050および口クッション3060は、第2の種類の位置決めおよび安定化構造であり得る位置決めおよび安定化構造3300へ連結される。第2の種類の位置決めおよび安定化構造3300は、口鼻ヘッドギアストラップ3320と、1つ以上の導管を含む共通の接続要素3330とを含み得る。継手3068は、口クッション3060を鼻クッション3050へ連結させるために用いられる。口鼻マスク構成において、ヘッドギアストラップおよび/または導管を鼻クッション3050と組み合わせると、口クッション3060の支持が得られる。図6Aおよび図6B中、通気穴3400が継手3068内に設けられた様子が図示されているが、本発明の例はこれに限定されない。いくつかの例において、通気穴3400の代わりに、窒息防止弁3059(通気穴を含むかまたは含まない)用いられ得る。
【0273】
いくつかの例において、位置決めおよび安定化構造3300へ連結されるのが鼻クッション3050単独であるのかまたは鼻クッション3050および口クッション3060双方であるのかに基づいて、同一種類の位置決めおよび安定化構造3300(すなわち、同一の共通の接続要素および/またはヘッドギアストラップ)を用いて鼻マスクまたは口鼻マスクが提供され得る。
【0274】
鼻クッション3050は、鼻マスク構成および口鼻マスク構成のどちらにおいても使用可能である。鼻クッション3050は、患者の顔のうち患者の鼻孔への入口を包囲する領域とシールを形成するように構築および配置された鼻シール形成構造3052を含む。口クッション3060は、口鼻マスクのみにおいて用いられ得る。口クッション3060は、患者の顔のうち患者の口への入口を包囲する領域とシールを形成するように構築および配置された口シール形成構造3062を含む。図4Aにおいては鼻シール形成構造3052を鼻クレードルとして図示しているが、本技術の例は、これに限定されず、他の種類の鼻シール形成構造(例えば、鼻枕3165を含むもの)を含み得る。
【0275】
図9Aおよび図9Bに示す鼻クッション3050および口クッション3060の構成は、継手3068によって連結される。継手3068は、第1のヘッドギア導管3010および第2のヘッドギア導管3020を介して呼吸可能なガスを受容し得る。本例において、呼吸可能なガスは、第1のヘッドギア導管3010および第2のヘッドギア導管3020から鼻クッション3050へ上側ヘッドギアコネクタ3056を介して提供され、鼻クッション3050から口クッション3060へ継手3068を介して提供される。図9Aおよび図9Bに示すように、継手3068は、窒息防止弁3059を継手3068の上部において(鼻端部において)含み得る。
【0276】
図10A図10Cおよび図11A図11Bにおいても、鼻クッション3050および口クッション3060の構成が示される。鼻クッション3050および口クッション3060の構成は、第1のヘッドギア導管3010および第2のヘッドギア導管3020を介して呼吸可能なガスを受容し得る継手3068によって連結される。本例において、通気部3400は、口クッション開口部内に設けられる。図9Aおよび図9Bに示す例において、呼吸可能なガスは、第1のヘッドギア導管3010および第2のヘッドギア導管3020から鼻クッション3050へ上側ヘッドギアコネクタ3056を介して提供され、鼻クッション3050から口クッション3060へ継手3068を介して提供される。
【0277】
図4Aおよび図4Bにおいては、口クッション3060を口クッション継手開口部3070および口クッション開口部3072双方を含むものとして図示しているが、いくつかの例において、口クッション3060を口クッション開口部3072無しに設けてもよい(例えば、図9Aおよび図9Bに示す口クッション3060を参照)。
【0278】
5.3.11.2 接続ポートが口クッションまたは鼻クッションへ連結されたモジュール式患者インターフェース
図4Cに示す例において、モジュール式患者インターフェースが備えるチューブダウン構成において、呼吸可能なガスは、(鼻マスク構成においては鼻クッション3050の表面へ連結され、口鼻マスク構成においては口クッション3060の表面へ連結される)接続ポート3600を介して提供される。図示の例において、接続ポート3600は、鼻クッション3050または口クッション3060の前面へ連結される。
【0279】
鼻マスク構成を提供するには、鼻クッション3050を、鼻ヘッドギアストラップ3310を含む位置決めおよび安定化構造3300へ連結する。鼻クッション3050は、鼻クッション3050を鼻ヘッドギアストラップ3310へ連結させる一対の上側ヘッドギアコネクタ3056を含む。鼻マスク構成において、呼吸可能なガスは、(鼻クッション3050の前面内の鼻クッション開口部3058へ連結された接続ポート3600を介して)患者へ提供される。図4Aにおいては鼻シール形成構造3052を鼻クレードルとして図示しているが、本技術の例は、これに限定されず、他の種類の鼻シール形成構造(例えば、鼻枕3165を含むもの)を含み得る。
【0280】
口鼻マスク構成を提供するには、鼻クッション3050および口クッション3060を、鼻ヘッドギアストラップ3310および口鼻ヘッドギアストラップ3320を含む位置決めおよび安定化構造3300へ連結させる。鼻クッション3050は、鼻クッション3050を鼻ヘッドギアストラップ3310へ連結させる一対の上側ヘッドギアコネクタ3056を含む。口クッション3060は、口クッション3060を口鼻ヘッドギアストラップ3320へ連結させる一対の下側ヘッドギアコネクタ3066を含む。
【0281】
継手3068は、口クッション3060を鼻クッション3050へ連結させるように構成される。口鼻マスク構成において呼吸可能なガスを患者へ提供するには、接続ポート3600を、口クッション3060の前面内の口クッション開口部3072へ連結させる。口クッション3060中の呼吸可能なガスは、継手3068を介して鼻クッション3050へ移動する。
【0282】
図4Cに示す例において、鼻ヘッドギアストラップ3310は、(鼻マスクまたは口鼻マスクの提供のために異なる構成要素が連結される)共通の接続要素3330として提供される。ヘッドギアストラップは、鼻クッション3050と協働して、口クッション3060の支持を提供する。
【0283】
図4Dは、本技術の一形態によるモジュール式患者インターフェースを示す。図4Dにおいて、口クッション3060は、継手3068を介して鼻クッション3050へ連結される。鼻クッションは、導管3010および3020または鼻ヘッドギアストラップ3310への連結のための上側ヘッドギアコネクタを含む。継手3068は、鼻クッション3050の前面中の鼻クッション開口部3058へ連結される。継手3068が鼻クッション開口部3058へ連結されていないとき、通気部3400または接続ポート3600が、鼻クッション開口部3058へ連結され得る。口クッション3060に含まれる口クッション開口部3072は、通気部3400または接続ポート3600が接続され得る。接続ポート3600が口クッション3060へ接続されていないとき、口クッション開口部3072は、1つ以上のガス洗い流し口により通気インサート3400を受容するように構成され得る。通気部3400は、空気が導管3010および3020を介して鼻クッション3050へ提供されかつおよび(導管3010および3020が使用されていないときに)接続ポート3600が接続されているときに、口クッション開口部3072へ接続され得る。鼻クッション開口部3058および口クッション開口部3072のサイズおよび形状を同一にすると、同一の通気部3400および/または接続ポート3600がいずれかの開口部へ接続され得る。
【0284】
図4Dおよび図8A図8Cに示すフルフェイスチューブダウン構成において、空気送達管(例えば、接続ポート3600のエルボー)内の通気部が単一である場合、マスク内(特に鼻腔部内)のCOの蓄積を除去するのには不十分であり得る。本技術のいくつかの例は、1つ以上のさらなる通気部をフルフェイスチューブダウン構成において含み得る。いくつかの例において、COの抽出のために、さらなる通気が鼻腔部の末端において追加され得る。これは、いずれかの鼻クッションへ接続するプラグにおけるチューブダウンヘッドギア上における通気の追加によって実行され得る。
【0285】
図16は、本技術の例による、通気穴6010を含む通気コネクタ6000を示す。通気コネクタ6000は、鼻クッション3050と、鼻ヘッドギアストラップ3310との間に配置され得る。通気コネクタ6000は、全体がシリコーン製であり得る。一例において、通気コネクタ6000は、シリコーンによってオーバモールドされたコネクタであり得る。図16に示すように、通気コネクタ6000は、コネクタの片側に設けられた複数の穴6010を含む。いくつかの例において、通気穴は、通気コネクタ6000のさらなる面上に設けられ得る。
【0286】
通気コネクタ6000の第1の端部6020は、鼻ヘッドギアストラップ3310の端部と係合するように構成され得る。一例において、通気コネクタ6000の第1の端部6020は、鼻ヘッドギアストラップ3310のテキスタイルスリーブと係合するように構成された雄部分を含み得る。本例において、第1の端部6020は、第1の端部6020の1つ以上の側部上にリジダイザを含み得る。通気コネクタ6000の第2の端部6030は、鼻クッション3050の上側ヘッドギアコネクタ3056と係合するように構成され得る。図16に示すように、第2の端部6030は、上側ヘッドギアコネクタ3056を受容するように構成された雌部分を含み得る。
【0287】
図10Dおよび図11Cは、鼻クッション3050および口クッション3060の構成が継手3068によって連結された様子を示す。継手3068は、口クッション3060の前面へ連結された空気回路4170を介して呼吸可能なガスを受容し得る。本例において、呼吸可能なガスは、空気回路4170から口クッション3060へ(口クッション3060へ連結された接続ポート3600を介して)提供され、口クッション3060から鼻クッション3050へ継手3068を介して提供される。本例において、位置決めおよび安定化構造3300内の上側ヘッドギアコネクタ3056または空気入口ポートが遮断される。あるいは、これらの例において、異なる鼻クッション3050(例えば、空気流れを許容する上側ヘッドギアコネクタ3056が無いもの)が用いられ得る。
【0288】
5.3.11.3 口クッションを鼻クッションへ連結させる継手
鼻クッション3050および口クッション3060は、継手3068を用いて取り外し可能に連結され得、鼻および口シール形成構造を形成する口鼻クッションを提供する。継手3068は、鼻クッション3050および/または口クッション3060へ取り外し可能に連結され得る。いくつかの例において、継手3068は、鼻クッション3050のみへ取り外し可能に連結され得る。
【0289】
継手3068により、鼻および口シーリング構成要素を空気圧により接続しつつ、分離された構成要素のシーリングおよび快適性の恩恵の最大化および鼻クッション3050または口クッション3060に起因し得る障害の任意の伝達の最小化が可能になる。
【0290】
従来の口鼻フルフェイスマスクの場合、鼻シールを口クッションの上に「積層」させて、プレナムチャンバを単一の大型チャンバとしている。その結果、1つの構成要素からの任意の力または変位の他方への伝達が(両者間に緩衝体が無いため)より容易になる。本技術の例によって提供される継手3068により、構成要素を物理的に共に連結させかつこれらの構成要素をセットアップ活動およびシーリングの活動を支援する連結部が得られる。継手3068により、これらの構成要素の結合解除も十分に行われるため、使用時において1つの構成要素が他方の構成要素をシャントすることが無くなる。継手3068により、シーリング構成要素を延長経路を通じて共に接合しつつ、有効な結合解除機構が可能になる。
【0291】
継手3068によりマスクの前方に得られる空気圧ブリッジにより、鼻クッションチャンバが口クッションチャンバへ接続されて、空気流れのための延長経路が得られる。いくつかの例において、継手3068により、鼻クッションへと上方に延びる口クッションの一定の特徴が得られる。継手3068の可撓性により、鼻クッションが口クッションに対して複数の方向において移動することが可能になる。例えば、継手3068によって得られる可撓性ブリッジにより、鼻シール側方間および前後に撓むことと、回転すること(ヨー回転)とが可能になりつつ、口クッションへの力伝達が最小になる(継手3068の中央軸の周囲のヨー回転を示す図14Fを参照)。逆に、可撓性ブリッジ接続の力吸収特性に起因して、口クッションからの力の鼻シールに対する作用は最小になる。
【0292】
従来、鼻マスクが所望される場合、ユーザは、鼻クッション3050を位置決めおよび安定化構造3300へ取り付け、口鼻マスクが所望される場合、ユーザは、鼻クッション3050の代わりにフルフェイスマスククッションまたは口鼻マスククッションを用いる。継手3068により、同一の鼻クッション3050を鼻マスク構成および口鼻マスク構成双方において使用することが可能になる。継手3068によれば、(患者の顔のうち患者の鼻孔への入口を包囲する領域とのシールを提供する鼻シール形成構造3052から独立した)患者の顔のうち患者の口への入口を包囲する領域とのシールを提供する口シール形成構造3062により、鼻および口との独立シーリングも可能になる。継手3068により、鼻クッション3050と口クッション3060との間の相対的位置決めの調節も可能になり、患者の顔と、鼻クッション3050および/または口クッション3060との間のフィット感向上に繋がる。
【0293】
口鼻マスク構成において、口クッション3060は、継手3068により鼻クッション3050へ取り付けられる。本技術による継手3068により、鼻クッション3050と口クッション3060との間の相対的位置決めを調節可能となり、これにより、鼻および口クッションとユーザの顔との間の良好なシールの入手および/または鼻および/または口クッションのより快適な位置決めの入手が可能になる。本技術による鼻クッション3050および口クッション3060を位置決めおよび調節する能力により、別個のサイズ(例えば、小型、中型および大型)を有するフルフェイスマスククッションまたは口鼻マスクを使用する必要が低減する。別個のサイズを患者に強制的に選択させた場合、患者によっては、「完全な」フィット感を達成することができくなり得る。
【0294】
図13A図13Dは、本技術の異なる例による、口クッション3060へ連結された継手3068を示す。図13A図13Dにおいて、本技術の一形態による口クッション3060が、通気部3400または接続ポート3600を受容する口クッション開口部3072を含む様子が図示される。図13Cおよび図13Dにおいては、口クッション開口部3072を含む口クッション3060を示しているが、本技術の一形態による口クッション3060は、口クッション開口部3072無しに設けてもよい。図13Dにおいて、口クッション3060が、プレナムチャンバ3200へと方向において曲線状に内方に設けられた中央部3077を有する様子が図示される。
【0295】
継手3068は、中空内部を有し得、鼻クッション端部3082上の鼻クッション3050および口クッション端部3084上の口クッション3060へ接続し得る。一例において、継手3068は、鼻クッション3050および口クッション3060へ取り外し可能に接続され得る。別の例において、継手3068は、鼻クッション3050へ取り外し可能に接続され得、口クッション3060へ恒久的に接続され得る。図14A図14Bは、鼻クッション3050および口クッション3060へ連結されていない継手3068を示す。口クッション3060および継手3068は、同一材料のワンピース構造を形成し得る。継手3068は、鼻クッション3050および口クッション3060の位置の独立的調節を可能にする可撓性構造を含み得る。可撓性構造により、フランジ3096を含む継手3068の端部が側方および前後に撓むことと回転する(ヨー回転)こととが可能になり得、口クッションへの力伝達は最小になる(継手3068の中央軸の周囲のヨー回転を示す図14Fを参照)。
【0296】
図14Aおよび図14B中の矢印によって示されるように、呼吸可能なガスは、継手3068の鼻クッション端部3082および口クッション端部3084の内外に流入および流出し得る。呼吸可能なガスは、鼻クッション端部3082の内外において水平方向に流入および流出し得、口クッション端部3084の内外において垂直方向において流入および流出し得得る。一例において、呼吸可能なガスは、口クッション端部3084の内外において患者の口への角度のある方向においてかつ/または水平方向において流入および流出し得る。
【0297】
鼻クッション3050は、患者の顔のうち患者の鼻孔への入口を包囲する領域とシールを形成するように構築および配置された鼻シール形成構造3052と、可撓性継手3068の鼻クッション端部3082を受容するように構成された鼻クッション開口部3058とを含む。鼻クッション開口部3058は、鼻シール形成構造3052を含む側部の反対側の鼻クッション3050の側部に設けられ得る。継手3068が鼻クッション3050へ接続されていない場合、鼻クッション開口部3058は、通気インサート3400を1つ以上のガス洗い流し口または接続ポート3600により受容するように構成され得る。
【0298】
口クッション3060は、患者の顔のうち患者の口への入口を包囲する領域とシールを形成するように構築および配置された口シール形成構造3062と、継手3068の口クッション端部3084を受容する口クッション継手開口部3070とを含む。口クッション継手開口部3070は、口シール形成構造3062(例えば、前面3074)を含む側部と反対側の口クッション3060の側部上に設けられ得る。口クッション端部3084は、口クッションの水平中間面またはその上方の位置において口クッション3060へ取り付けられ得る。
【0299】
鼻クッション開口部3058および口クッション継手開口部3070は、同一の形状および/またはサイズを有し得るため、同一の通気インサートおよび/または接続ポートをいずれかの開口部において使用することが可能になる。鼻クッション治療モードにおいて、鼻クッション開口部3058は、通気インサートを含み得、口鼻クッション治療モードにおいて、鼻クッション開口部3058は継手3068へ連結され得、他方の口クッション開口部(例えば、開口部3072)は通気インサートを含み得る。いくつかの例において、窒息防止弁3059および/または通気部3400は、継手3068の面内に設けられ得る。例として、窒息防止弁3059および/または通気部3400は、継手3068の前面または前面とフランジ3096との間の継手3068の表面内に設けられ得る(例えば、図14Aおよび図14Bに示す傾斜面を参照)。
【0300】
継手3068は、鼻クッション開口部3058または口クッション開口部3072中の対応する接続部分と係合する接続部分(例えば、円形または楕円形のフランジ3096)を鼻クッション端部3082において含み得る。いくつかの例において、フランジ3096により、鼻クッション開口部または口クッション開口部中の対応する接続部分(例えば、雄部分)と係合するように構成されたu字型形状の保持機構が提供され得る。いくつかの例において、フランジ3096は、鼻クッションまたは口クッション中の開口部中に設けられたu字型形状の保持機構と係合するように構成され得る。
【0301】
鼻クッション開口部または口クッション開口部中のフランジ3096と溝部との係合により、気密シールが得られ得る。いくつかの例において、フランジ3096は、口クッション開口部3072の内側に挿入され得、口クッション開口部3072の周囲において肉厚部分に隣接し得る。
【0302】
図10A図13Cに示すように、口クッション継手開口部3070は、口クッション開口部3072に隣接して設けられ得る。口クッション開口部3072は、肉厚部分を口クッション開口部3072の周辺に沿って含み得る。口クッション継手開口部3070は、クッション開口部3072および/または口クッション開口部3072の肉厚部分に隣接し得る。一例において、口クッション継手開口部3070および口クッション開口部3072は、口クッション継手開口部3070が口クッション3060の水平中央面の上方に設けられるように前面3074上に設けられ得、口クッション開口部3072は、口クッション3060の水平中央面の下側に設けられる(例えば、図10Cを参照)。
【0303】
いくつかの例において、鼻クッション開口部3058、口クッション継手開口部3070および/または口クッション開口部3072は、同一の形状および/またはサイズを有し得るため、同一の通気部または管コネクタ(例えば、空気回路4170へ連結された接続ポート3600)の接続が可能になる。鼻クッション治療モードにおいて、鼻クッション開口部3058は管コネクタを含み得、口鼻クッション治療モードにおいて、口クッション開口部3072は管コネクタを含み得る。
【0304】
いくつかの例において、継手3068、接続ポート3600および/または通気部3400の1つ以上の端部において、同一の形状および/またはサイズを有する連結機構が設けられ得る。いくつかの例において、継手3068、接続ポート3600および/または通気部3400の1つ以上の端部は、同一であり得る。連結機構は、鼻クッション開口部3058、口クッション継手開口部3070および/または口クッション開口部3072と係合するように構成され得る。図15は、通気部3400の一例であり、通気部3400は、継手3068および/または接続ポート3600内に設けられた連結機構に対応し得る連結機構3410を含む。
【0305】
図15に示すように、通気部3400の連結機構は、通気部3400の周辺の少なくとも一部の周囲に延びるU字型形状のチャネルを含み得る。いくつかの例において、連結機構は、連続するuセクションを通気部3400の周辺全体の周囲において含み得る。連結機構により、可撓性口または鼻クッション上の雄係合部分と係合するように構成された雌係合部分が剛性通気部3400上に設けられ得る。これら2つの部分の係合より、気密シールが得られ得る。さらに、可撓性口または鼻クッションにおける剛性連結機構の位置決めにより、口クッションまたは鼻クッションの安定性の増加に繋がり得る。図13A図14Bおよび図15は、フランジ3096を含む継手3068の連結機構に対応する通気部3400の連結機構3410を示す。
【0306】
鼻クッションおよび口クッション中の共通の連結機構により、通気部3400および/または接続ポート3600を構成またはモジュール式マスクシステムに応じて再利用することが可能になる。鼻部分上の通気部3400を(フルフェイスマスク内に構成された場合に)口クッションコネクタ内において再利用することができ、マスクの別の領域へ配置することができる。同様に、通気部3400を鼻クッション上に再利用した場合、(チューブアップ位置の)口クッション上の通気部3400を、チューブダウンフルフェイスマスク構成における空気管のためのコネクタとして再利用することができる。チューブダウン構成における空気管は、連結機構の雌部分を含み得るため、口クッションへ確実に取り付けることが可能になる。チューブダウンフルフェイスマスク内に構成された場合、口クッションコネクタ上に再利用された通気部3400を、接続ポート3600のエルボー領域へ再配置することができる。
【0307】
本開示の例と共に用いられ得る通気部の例について、国際出願PCT/AU2020/050959号(出願日:2020年9月10日)に記載がある。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。
【0308】
使用時において、加圧空気は、(例えば、ヘッドギア導管3010および3020を介して)鼻クッション3050へ提供されるか、または(例えば、口クッション3060へ連結された空気回路4170を介して)口クッション3060へ提供される。継手3068により、加圧空気が鼻クッション3050のプレナムチャンバと口クッション3060のプレナムチャンバとの間において移動する経路が得られる。いくつかの例において、継手3068の口クッション端部3084は、口クッションプレナムチャンバ内または口クッションプレナムチャンバ外への加圧ガスの流れを患者のフランクフルト水平に対して実質的に垂直な方向において方向付けるか、または受容し得る。いくつかの例において、鼻クッション端部3082は、加圧された呼吸可能なガスの流れを患者のフランクフルト水平に対して実質的に平行な方向において鼻プレナムチャンバ内へまたは鼻プレナムチャンバから方向付けるか、または受容し得る。
【0309】
継手3068の断面形状は、円形、楕円形、卵形、D字型形状または曲線状矩形であり得る。継手3068のうち患者の顔に対向する側部の形状は、鼻クッション3050および/または口クッション3060の形状に近密に適合し得る。図14Dおよび図14Eは、継手3068の例示的断面形状を示す。
【0310】
継手3068は、口クッション3060を鼻クッション3050へ接続させる可撓性継手であり得る。継手3068の可撓性により、患者が口クッション3060の位置調節を鼻クッション3050に相対する1つ以上の方向において行うことが可能になり得る。いくつかの例において、可撓性継手は、口クッション3060を鼻クッション3050に相対して移動させて、患者のスプラメントン角度に合わせて調節するように構成される(図14Fを参照)。継手3068は、軟性、可撓性の弾力材料(例えば、シリコーン)から全体的にまたは部分的に構築され得、材料は、鼻クッション3050および口クッション3060の材料と同じであってもよいし、あるいは異なっていてもよい。継手3068は、平滑な内面および/または外面を含み得る。いくつかの例において、継手3068の内面および/または外面に含まれ得る1つ以上の隆起部3092は、継手3068の周囲を少なくとも部分的に延びて、継手3068へ構造的支持を提供する。図13Aおよび図13Bに示すように、1つ以上の隆起部3092は、継手3068の前面および側面上に設けられ得、継手3068の後側は平滑な表面を含む。
【0311】
いくつかの例において、継手3068に含まれ得るコンチェルティーナセクション3080は、1つ以上の折り目、プリーツ、波形構造またはベローズを含むため、継手3068の可撓性および/または延長可能部分を継手3068の一端3082と継手3068の反対側端部3084との間の継手3068の一部において形成する。いくつかの例において、継手3068は、コンチェルティーナセクション3080無しに設けてもよい。コンチェルティーナセクション3080により、口クッション3060の位置決めを鼻クッション3050に相対する1つ以上の方向において調節可能とすることが可能になり得る。いくつかの例において、コンチェルティーナセクション3080により、(患者のスプラメントン角度への対応のために)口クッション3060が鼻クッション3050に相対して軸方向においてかつ/または曲線方向として移動することが可能になる。コンチェルティーナセクション3080により、継手3068の長さを継手3068の軸方向において調節することが可能になり得る。
【0312】
コンチェルティーナセクション3080は、図14Aおよび図14Cに示すように複数の隆起部3086および/または複数の溝部3088を含み得る。図14Bは、本技術の一形態による複数の隆起部3086および/または複数の溝部3088を含まない継手3068を示す。隆起部3086および溝部3088は、コンチェルティーナセクション3080の壁内に交互に形成され得る。一連の交互に設けられる隆起部および溝部は、溝部が各一対の隆起部間に設けられかつおよび隆起部が各一対の溝部間に設けられる(例えば、隆起部、溝部、隆起部、溝部など)の一連の配列を指すものとして理解される。
【0313】
交互に設けられた隆起部3086および溝部3088は、独立してまたは協働して折り畳まれかつ展開されることが可能な折り目またはベローズのように機能し得るため、コンチェルティーナセクション3080を短尺化または長尺化させ得る。溝部深さ(または隆起部高さ)が大きい場合、より延長可能な継手3068が得られ得る。継手3068への張力付加時において、コンチェルティーナセクション3080の隆起部3086および溝部3088は、相互に離隔方向に牽引され得、その結果、継手壁が直線状になり、継手3068が長尺化する。コンチェルティーナセクション3080は付勢されて、元々の(例えば、非延長時の)長さになり得る。
【0314】
隆起部3086および溝部3088を用いると、長さの変化の促進に加えて、コンチェルティーナセクション3080の形状変化も促進され得る。本技術のいくつかの例において、第1の一連の交互に設けられた隆起部3086および溝部3088は、継手3068の第1の側部(例えば、患者の顔と接触する側)に設けられる一方、第2の一連の交互に設けられた隆起部3087および溝部3089は、継手3068の第2の反対側(例えば、非接触側)に設けられる。コンチェルティーナセクション3080により、隆起部および溝部は継手3068の異なる側部において異なる度だけ相互に移動することが可能になるため、継手3068の屈曲が促進され得る。例えば、継手3068の第1の側部においては隆起部3086および溝部3088が接触し得る一方、継手3068の第2の側部においては隆起部3087および溝部3089が拡張し得る結果、継手3068はコンチェルティーナセクション3080において屈曲する。コンチェルティーナセクション3080のこの構成により、同一の口クッション3060を多数のサイズおよび形状の顔に合わせて適合させることが可能になり得る。
【0315】
いくつかの例において、第1の交互に設けられた一連の隆起部3086および溝部3088は、第2の交互に設けられた一連の隆起部3087および溝部3089よりも延長剛性が低く(例えば、単位長さの変化の達成のために必要な力が低く)され得る。コンチェルティーナセクション3080の非患者接触側の延長剛性の低下により、継手3068の屈曲/曲率が有利に促進され得る。
【0316】
いくつかの例において、コンチェルティーナセクション3080を形成する折り目によっても、(例えば、継手3068の波状形状(例えば、正弦形状、方形波または他の波形)を形成する折り目により)継手3068の内部の隆起部および溝部が形成され得る。図14Bは、継手壁内に形成された特定の波状形状を示す。図14Bに示すように、コンチェルティーナセクション3080は、内部隆起部および内部溝部を形成する折り目を含む。
【0317】
本技術により、口クッション3060が(患者の顔上における鼻クッション3050の初期位置決めを妨げないように)鼻クッション3050から離隔方向に撓むことが可能になる。セットアップのために自由懸下された際、可撓性継手3068は、口クッションを鼻クッション3050に対して正しい方向付けにおいて保持するための十分な剛性を有し得る。この構成により、(口クッション3060の患者の顔上への位置決めの前に)鼻クッション3050により快適かつおよび良好なシールが得られるように、鼻クッション3050を患者の顔上に位置決めすることが可能になる。鼻クッション3050を患者の顔上に位置決めした後、患者は、口クッション3060により快適かつ良好なシールが得られるように、口クッション3060を患者の顔上に位置決めし得る。
【0318】
一例において、可撓性継手3068および/または口クッション3060は、可撓性継手のバネ付勢3068および/または加圧された呼吸可能なガスの流れの(口クッションおよび/または可撓性継手を通じた)導入に起因して患者のスプラメントンへと移動するように構成される。
【0319】
可撓性継手3068のバネ付勢は、コンチェルティーナセクション3080によって提供され得る。例えば、コンチェルティーナの1つ以上の折り目は、患者の顔により近接する継手3068の面上に設けられ得、継手3068の反対側において省略され得る。本例において、1つ以上の折り目が継手3068の周囲に延び得、1つ以上の折り目が継手3068を部分的に包囲し得る。
【0320】
いくつかの例において、口クッション3060は、加圧ガスの流れが付加されたときに口クッションを患者の口へと移動させるガセットを含み得る。使用時において、ガセットは、拡張/圧縮/傾斜し得るため、口クッション3060の調節可能範囲が向上し得る。いくつかの例において、継手3068は、加圧ガスの流れが付加されたときに口クッションを患者の口へと移動させるガセットを含み得る。
【0321】
可撓性継手3068は、中立位置と、患者のスプラメントンへと方向付けられた曲線位置とを有し得る。可撓性継手は、中立位置から患者の顔から離隔方向の位置への動きに耐えるように、構成され得る。中立位置の提供は、継手3068が(鼻クッション3050および/または口クッション3060へ供給される加圧ガスの流れ無しに)鼻クッション3050および口クッション3060に対して結合解除または連結された際に、行われ得る。曲線位置の提供は、継手3068が(鼻クッション3050および/または口クッション3060へ供給される加圧ガスの流れと共に)鼻クッション3050および口クッション3060へ連結された際に、行われ得る。加圧ガスの流れを継手3068および/または口クッション3060内に供給させることにより、継手3068および/または口クッション3060の部分(例えば、ガセット部分)が拡張され得、これにより、継手3068は、中立位置から(患者のスプラメントンへと方向付けられた)曲線位置へ移動する。いくつかの例において、コンチェルティーナセクション3080における折り目により、加圧ガス無しに中立部分が提供され得、(継手3068の内面上の1つ以上の折り目への加圧ガスの充填時において)曲線位置が提供され得る。
【0322】
本技術の一形態において、継手3068および/または口クッション3060における加圧ガスの流れにより、口クッション3060と患者の顔との間のシールの提供および維持が支援される。口クッション3060は、(口クッション3060中の加圧ガスの流れに起因して)1つ以上の方向において拡張するように構成され得る。例えば、口クッション3060中の加圧ガスにより、口クッション3060の一部が外方、上方および/または下方に拡張され得る。いくつかの例において、口クッション3060中の加圧ガスにより、口クッション3060の上側部および下側部が外方に拡張され得る。上側部および下側部の外方拡張により、口クッション3060から継手3068へ付加される外方力が増加し得、その結果、口クッション3060は継手3068に相対して内方移動して、口シール形成構造3062を患者の顔へと移動させ、シール形成構造3062と患者の顔との間のシールを提供する。
【0323】
シール形成構造3062の拡張、口クッション3060の拡張および/または可撓性継手3068のうち1つ以上により、継手3068を介して鼻クッション3050へ連結された口クッション3060によるシール形成構造3062と患者の顔との間の十分なシールの提供および維持が可能になる。
【0324】
5.3.11.4 口クッションおよび鼻クッションを連結させる継手と共に患者インターフェースを用いる方法
本技術の一形態による、口鼻マスクを患者上にフィットさせることは、先ず鼻クッション3050をフィットさせた後に、口クッション3060を継手3068を介して鼻クッション3050に取り付けることを含み得る。鼻クッション3050を適切に調節した後に、口クッション3060の取り付けを行うことができる。セットアップ時において、口クッション3060は鼻クッション3050から離隔方向に撓み得るため、鼻クッション3050の初期位置決めを妨げない。
【0325】
継手3068は可撓性であるため、口クッション3060の取り付けおよび調節を(鼻クッション3050をさらに調節する必要性から独立して)行うことが可能になる。継手3068の可撓性および/または口シール形成構造3062の構成により、口が閉じられているときに口鼻マスクのセットアップを行うことが可能になり、口が開いているときも、使用時において良好なシールが提供される。上記したように、口シール形成構造3062の上部上の軟性膜により、口が開いたときに口クッション3060が上方に拡張することが可能になり、口シール形成構造3062の下部上の軟性膜により、口が開いたときに口クッション3060が下方に拡張することが可能になる。
【0326】
鼻クッション3050および口クッション3060をフィットさせることにより、口クッション3060の自動位置決めが可能になり得る。先ず鼻クッション3050が位置決めされ得、その後、(口クッション3060の上部が鼻クッション3050の下側セクションと隣接するまで)口クッション3060を上昇させる。いくつかの例において、(少なくとも口シール形成構造3062の一部を含み得る)口クッション3060の上部は、少なくとも鼻シール形成構造3052の一部および/または鼻クッション3050のうち鼻シール形成構造3052に隣接する一部に隣接し得る。口クッション3060の上部の形状は、鼻クッション3050の下側セクションの形状に対して相補的であり得る。口クッション3060が鼻クッション3050に接近するにつれて、鼻クッション下側セクションの相補的形状により、口クッション3060の所定位置へのセンタリングおよび誘導が支援され得る。可撓性継手3068を鼻クッション3050へ取り付けられた後、口クッション3060は鼻クッション3050に隣接し、(口クッション3060が鼻クッション3050に対する所定位置に誘導される際に)サイズおよび/または形状が調節され得る。
【0327】
本技術の一形態によれば、口鼻マスクを患者上にフィットさせる方法は、以下を含む:治療圧力まで加圧可能な鼻クッションプレナムチャンバのうち少なくとも一部を形成する鼻クッション3050を提供することであって、鼻クッション3050は、患者の顔のうち患者の鼻孔への入口を包囲する領域とシールを形成するように構築および配置された鼻シール形成構造3052を含む、ことと、治療圧力まで加圧可能な口クッションプレナムチャンバのうち少なくとも一部を形成する口クッション3060を提供することであって、口クッション3060は、シール形成構造3062は、患者の顔のうち患者の口への入口を包囲する領域とシールを形成するように構築および配置される、こと。鼻クッション3050および口クッション3060は、可撓性継手3068へ接続される。
【0328】
鼻シール形成構造および口シール形成構造は、患者の頭部上の治療的に有効な位置において以下によって保持される:口クッション3060が鼻クッション3050へ接続されている状態で鼻クッション3050を患者の鼻の下側に配置し、患者の上唇の上部と係合させることと、上側ヘッドギア導管またはストラップを用いて鼻クッション3050を患者の頭部上に固定すること、上側ヘッドギア導管またはストラップの長さおよび/または位置を調節すること、口クッション3060の上側膜を鼻クッション3050の下側の患者の上唇の下部上に位置決めして、口クッション3060と鼻クッション3050との間の係合を可能にすること、下側ヘッドギアストラップを用いて口クッション3060を患者の頭部上に固定することと、下側ヘッドギアストラップの長さおよび/または位置を調節すること。上側ヘッドギア導管またはストラップの調節は、下側ヘッドギアストラップの調節から実質的に独立し得る。
【0329】
5.4 空気回路
本技術の態様による空気回路4170は、2つの構成要素(例えば、RPTデバイス4000および患者インターフェース3000)間の空気流の移動を可能にするように構築および配置された導管または管である。
【0330】
詳細には、空気回路4170は、RPTデバイス4000の空気圧ブロックの出口と患者インターフェースと流体接続し得る。空気回路は、空気送達管と呼ばれ得る。いくつかの場合において、吸息および呼息のための回路の別個の肢があり得る。他の場合において、単一の脚部が用いられる。
【0331】
いくつかの形態において、空気回路4170は、(例えば空気の温度の維持または上昇のために)空気回路中の空気を加熱するように構成された1つ以上の加熱要素を含み得る。加熱要素は、加熱有線回路の形態をとり得、1つ以上の変換器(例えば、温度センサ)を含み得る。一形態において、加熱有線回路は、空気回路4170の軸周囲においてらせん状に巻かれ得る。加熱要素は、コントローラ(例えば、中央コントローラ)と通信し得る。加熱有線回路を含む空気回路4170の一例について、米国特許8,733,349号に記載がある。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。
【0332】
5.4.1 酸素送達
本技術の一形態において、補充用酸素が、空気圧経路内の1つ以上のポイント(例えば、空気圧ブロックの上流)、空気回路4170および/または患者インターフェース3000へ送達され得る。
【0333】
5.5 用語集
本技術の開示目的のため、本技術の特定の形態において、以下の定義のうち1つ以上が適用され得る。本技術の他の形態において、別の定義も適用され得る。
【0334】
5.5.1 一般
空気:本技術の特定の形態において、空気は大気を意味し得、本技術の他の形態において、空気は、他の呼吸可能なガスの組み合わせ(例えば、酸素を豊富に含む大気)を意味し得る。
【0335】
周囲:本技術のいくつかの形態において、「周囲」という用語は、以下を意味するものとしてとられる:(i)治療法システム真患者の外部、および(ii)治療法システムまたは患者を直接周囲するもの。
【0336】
例えば、加湿器に対する周囲湿度とは、加湿器を直接包囲する空気の湿度であり得る(例えば、患者が睡眠をとっている部屋の内部の湿度)。このような周囲湿度は、患者が睡眠をとっている部屋の外部の湿度と異なる場合がある。
【0337】
別の例において、周囲圧力は、身体の直接周囲または外部の圧力であり得る。
【0338】
特定の形態において、周囲(例えば、音響)ノイズは、例えばRPTデバイスから発生するかまたはマスクまたは患者インターフェースから発生するノイズ以外の、患者の居る部屋の中の背景ノイズレベルとみなすことができる。周囲ノイズは、部屋の外の発生源から発生し得る。
【0339】
自動的な気道陽圧(APAP)療法:SDB発症の兆候の存在または不在に応じて、例えば、呼吸間に最小限界と最大限界との間で治療圧力を自動的に調節することが可能なCPAP療法。
【0340】
持続的気道陽圧(CPAP)療法:治療圧力が患者の呼吸サイクルを通じてほぼ一定である呼吸圧力治療。いくつかの形態において、気道への入口における圧力は、呼息時において若干上昇し、吸息時において若干低下する。いくつかの形態において、圧力は、患者の異なる呼吸サイクル間において変動する(例えば、部分的な上気道閉塞の兆候の検出に応答して増加され、部分的な上気道閉塞の通知の不在時において低減される)。
【0341】
流量:単位時間あたりに送出される空気の瞬時の量(または質量)。流量とは、瞬間の量を指し得る。場合によっては、流量について言及した場合、スカラー量(すなわち、大きさのみを有する量)を指す。他の場合において、流量について言及した場合、ベクトル量(すなわち、大きさおよび方向両方を持つ量)を指す。流量には、符号Qが付与され得る。「流量」を簡略的に「流れ」もしくは「気流」と呼ぶ場合もある。
【0342】
患者の呼吸の例において、流量は、患者の呼吸サイクルの吸気部分に対してノミナルに陽圧であり得るため、患者の呼吸サイクルの呼気部分に対して負であり得る。合計流量Qtは、RPTデバイスから退出する空気の流量である。通気流量Qvは、呼息されたガスの流出を可能にするために通気部から退出する空気の流量である。漏洩流量Qlは、患者インターフェースシステムまたは他の場所からの漏洩の流量である。呼吸流量Qrは、患者の呼吸器系中に受容される空気の流量である。
【0343】
加湿器:「加湿器」という単語は、患者の医療呼吸器疾病を改善するために治療上有益な量の水(HO)蒸気を空気流れへ提供することが可能な物理的構造を備えて構築、配置または構成された加湿装置を意味するものとして解釈される。
【0344】
漏洩:「漏洩」という用語は、意図しない空気流れとしてとられる。一例において、漏洩は、マスクと患者の顔との間のシールが不完全であることに起因して発生し得る。別の例において、漏洩は、周囲に対するスイベルエルボーにおいて発生し得る。
【0345】
ノイズ伝導(音響):本文書において、伝導ノイズとは、空気圧経路(例えば、空気回路および患者インターフェースおよびその内部の空気)によって患者へ搬送されるノイズを指す。一形態において、伝導ノイズは、空気回路の端部における音圧レベルを測定することにより、定量化され得る。
【0346】
ノイズ放射(音響):本文書において、放射ノイズとは、周囲空気によって患者へ搬送されるノイズを指す。一形態において、放射ノイズは、当該対象の音響パワー/圧力レベルをISO3744に従って測定することにより、定量化され得る。
【0347】
ノイズ通気(音響):本文書において、通気ノイズとは、任意の通気部(例えば、患者インターフェース中の通気穴)を通じた空気流れにより生成されるノイズを指す。
【0348】
患者:呼吸器疾病に罹患しているかまたはしていない人。
【0349】
圧力:単位面積あたりの力。圧力は、多様な単位で表現され得る(例えば、cmHO、g-f/cm、及びヘクトパスカル)。1cmHOは、1g-f/cmに等しく、およそ0.98ヘクトパスカルである。本明細書において、他に明記無き限り、圧力はcmHOの単位で付与される。
【0350】
患者インターフェース中の圧力には記号Pmが付与され、現時点においてマスク圧力Pmが達成すべき目標値を表す治療圧力には記号Ptが付与される。
【0351】
呼吸圧力治療(RPT):雰囲気に対して典型的には陽圧である治療圧力における空気供給の気道入口への付加。
【0352】
人工呼吸器:患者が呼吸動作の一部または全てを行い際に圧力補助を提供する機械的デバイス。
【0353】
5.5.1.1 材料
シリコーンまたはシリコーンエラストマー:合成ゴム。本明細書において、シリコーンについて言及される場合、液体シリコーンゴム(LSR)または圧縮成形シリコーンゴム(CMSR)を指す。市販のLSRの一形態として、Dow Corningによって製造されるSILASTIC(この商標下において販売される製品群に含まれる)がある。別のLSR製造業者として、Wackerがある。他に逆の明記無き限り、例示的形態のLSRのASTMD2240によって測定した場合のショアA(またはタイプA)押込み硬さは、約35~約45である。
【0354】
ポリカーボネート:ビスフェノールAカーボネートの熱可塑性ポリマーである。
【0355】
5.5.1.2 機械的特性
弾力性:弾性変形時にエネルギーを吸収することおよび除荷時にエネルギーを解放することが可能な材料の能力。
【0356】
弾力性のある:除荷時に実質的に全てのエネルギーを解放する。例えば特定のシリコーンおよび熱可塑性エラストマーを含む。
【0357】
硬度:材料自体の変形に抵抗する能力(例えば、ヤング係数または規格化されたサンプルサイズ上において測定された押込硬さスケールによって記述されたもの)。
● 「軟性」材料は、シリコーンまたは熱可塑性エラストマー(TPE)を含み得、例えば指圧力下において容易に変形し得る。
● 「硬質」材料は、ポリカーボネート、ポリプロピレン、鋼またはアルミニウムを含み得、例えば指圧力下において容易に変形し得ない。
【0358】
構造または構成要素の剛度(または剛性):構造または構成要素が負荷を受けたときに変形に抵抗する能力。負荷は、力またはモーメントであり得る(例えば、圧縮、伸張、屈曲またはねじれ)。構造または構成要素は、異なる方向において異なる抵抗を提供し得る。
【0359】
柔軟な構造または構成要素:自重を支持させられた際に比較的短期間(例えば、1秒)以内に形状を変化させる(例えば、屈曲する)構造または構成要素。
【0360】
剛性の構造または構成要素:使用時において典型的に遭遇する負荷を受けた際に実質的に形状変化の無い構造または構成要素。このような用途の例として、患者インターフェースを例えばおよそ20~30cmHOの圧力の負荷において患者の気道への入口に対して密閉した様態でセットアップおよび維持することがあり得る。
【0361】
一例として、I形ばりは、第2の直交方向と比較した第1の方向において、異なる曲げ剛性(曲げ負荷に対する抵抗)を含み得る。別の例において、構造または構成要素は、第1の方向においては柔軟であり得、第2の方向においては剛性であり得る。
【0362】
5.5.2 呼吸サイクル
無呼吸:いくつかの定義によれば、無呼吸とは、所定の閾値を下回った流れが例えば10秒間の継続期間にわたって継続した場合に発生したと言われる。閉塞性無呼吸とは、患者の労作にもかかわらず、何らかの気道閉塞により空気流れが許されないときに発生すると言われる。中枢性無呼吸とは、気道が開通しているにも関わらず呼吸努力の低下または呼吸努力の不在に起因して無呼吸が検出された状態を指すと言われる。混合型無呼吸とは、呼吸努力の低下または不在が気道閉塞と同時発生した状態を指すと言われる。
【0363】
呼吸速度:患者の自発呼吸速度であり、通常は毎分あたりの呼吸回数で測定される。
【0364】
デューティサイクル:吸息時間Tiの合計呼吸時間Ttotに対する比。
【0365】
労作(呼吸):呼吸努力は、呼吸しようとしている人の自発呼吸によって行われる動きを指すと言われる。
【0366】
呼吸サイクルの呼気部分:呼気流れの開始から吸気流れの開始までの期間。
【0367】
流れ制限:流れ制限は、患者による労作の増大が流量の対応する増大を引き起こさない患者の呼吸における状況であると解釈される。呼吸サイクルの吸気部分において流れ制限が発生した場合、当該流れ制限は吸気流れ制限と称することができる。呼吸サイクルの呼気部分において流れ制限が発生した場合、当該流れ制限は呼気流れ制限と称することができる。
【0368】
流れ制限吸気の波形の種類:
(3072) 平坦化:上昇の後に比較的平坦な部分が続いた後、下降が発生すること。
(ii) M字型:前縁において1つおよび後縁において1つの2つの局所的ピークを持ち、これら2つのピークの間に比較的平坦な部分がある。
(iii) 椅子状:単一の局所的ピークを持ち、このピークが前縁に発生した後、比較的平坦な部分が続く。
(iv) 逆椅子状:比較的平坦な部分の後に単一の局所的ピークが続き、このピークが後縁に発生する。
【0369】
呼吸低下:一部の定義によれば、呼吸低下は、流れの中断ではなく、流れの低下を意味する。一形態において、閾値速度を下回った流れ低下が継続期間にわたって続いた場合、呼吸低下が発生したと言われる。呼吸努力の低下に起因して呼吸低下が検出された場合、中枢性呼吸低下が発生したと言われる。成人の一形態において以下のうちいずれかが発生した場合、呼吸低下と見なされ得る:
(3072) 患者呼吸の30%の低下が少なくとも10秒+関連する4%の脱飽和、または、
(ii) 患者呼吸の(50%未満の)低下が少なくとも10秒間継続し、関連して脱飽和が少なくとも3%であるかまたは覚醒が発生する。
【0370】
過呼吸:流れが通常の流量よりも高いレベルまで増加すること。
【0371】
呼吸サイクルの吸気部分:吸気流れの開始から呼気流れの開始までの期間が、呼吸サイクルの吸気部分としてとられる。
【0372】
開通性(気道):気道が開いている度合いまたは気道が開いている範囲。気道開通性とは、開口である。気道開通性の定量化は、例えば、開通性を示す値(1)と、閉鎖(閉塞)を示す値(0)で行われ得る。
【0373】
呼気終末陽圧(PEEP):肺中の雰囲気を越える圧力であり、呼気終了時に存在する。
【0374】
ピーク流量(Qpeak):呼吸流れ波形の吸気部分における流量最大値。
【0375】
呼吸気流量、空気流量、患者の空気流量、呼吸気空気流量(Qr):これらの用語は、RPTデバイスの呼吸空気流量の推定を指すものとして理解され得、通常リットル/分で表される患者の実際の呼吸流量である「真の呼吸流量」または「真の呼吸気流量」と対照的に用いられる。
【0376】
一回換気量(Vt):余分な努力をせずに通常の呼吸時に吸い込まれたかまたは呼息された空気の量である。原則的に、吸気量Vi(吸息された空気の量)は、呼気量Ve(呼息された空気の量)に等しいため、単一の一回換気量Vtは、いずれかの量に等しいものとして規定され得る。実際には、一回換気量Vtは、何らかの組み合わせ(例えば、吸気量Viと呼気量Veの平均)として推定される。
【0377】
(吸息)時間(Ti):呼吸流量波形の吸気部分の継続期間。
【0378】
(呼息)時間(Te):呼吸流量波形の呼気部分の継続期間。
【0379】
(合計)時間(Ttot):呼吸流量波形の一つの吸気部分の開始と呼吸流量波形の次の吸気部分の開始との間の合計継続期間。
【0380】
典型的な最近の換気:所定の時間スケールにわたる換気Ventの直近値が密集する傾向となる換気値(すなわち、換気の直近値の中心の傾向の度合い)。
【0381】
上気道閉塞(UAO):部分的な上気道閉塞および合計上気道閉塞両方を含む。上気道上の圧力差の増加(スターリングレジスタ挙動)と共に流量がわずかに増加するかまたは低下し得る流れ制限の状態と関連し得る。
【0382】
換気(Vent):患者の呼吸器系によって行われるガス交換率の測定。換気の測定は、単位時間あたりの吸気および呼気流れのうち片方または双方を含み得る。1分あたりの体積として表される場合、この量は、「分換気」と呼ばれることが多い。分換気は、単に体積として付与されることもあり、1分あたりの体積として理解される。
【0383】
5.5.3 換気
適応サーボ人工呼吸器(ASV):一定の目標換気を持つのではなく変更が可能なサーボ人工呼吸器。変更可能な目標換気は、患者の何らかの特性(例えば、患者の呼吸特性)から学習され得る。
【0384】
バックアップレート:人工呼吸器のパラメータであり、(自発呼吸努力によってトリガされない場合に)人工呼吸器から患者へ送達される最小呼吸速度(典型的には、1分あたりの呼吸数)を確立させる。
【0385】
サイクル:人工呼吸器の吸気フェーズの終了。自発呼吸をしている患者へ人工呼吸器から呼吸を送達する場合、呼吸サイクルの吸気部分の終了時において、当該人工呼吸器は、呼吸送達を停止するようサイクルされると言われる。
【0386】
呼気の気道陽圧(EPAP):、人工呼吸器が所与の時期に達成しようとする所望のマスク圧力の生成のために、呼吸内において変化する圧力が付加されるベース圧力。
【0387】
終了時呼気圧力(EEP):呼吸の呼気部分の終了時において人工呼吸器が達成しようとする所望のマスク圧力。圧力波形テンプレートΠ(Φ)の値が呼気終了時においてゼロである(すなわち、Φ=1のときにΠ(Φ)=0)場合、EEPは、EPAPに等しい。
【0388】
吸気の気道陽圧(IPAP):呼吸の吸気部分時に人工呼吸器が達成しようとする最大の所望のマスク圧力。
【0389】
圧力補助:人工呼吸器吸気時における当該人工呼吸器呼気時における圧力増加を示す数であり、吸気時の最大値と、ベース圧力との間の圧力差を主に意味する(例えば、PS=IPAP-EPAP)。いくつかの文脈において、圧力補助とは、(人工呼吸器が実際に達成する差ではなく)人工呼吸器が達成しようとする差を意味する。
【0390】
サーボ人工呼吸器:患者換気を有しかつ目標換気を有する人工呼吸器であり、患者換気を目標換気に近づけるために圧力補助レベルを調節する。
【0391】
自発/タイミング(S/T):自発呼吸している患者の呼吸の開始を検出しようとする、人工呼吸器または他のデバイスのモード。しかし、デバイスが所定期間の間に呼吸を検出できない場合、デバイスは、呼吸送達を自動的に開始する。
【0392】
スイング:圧力補助に相当する用語。
【0393】
トリガ:人工呼吸器が自発呼吸する患者へ空気の呼吸を送達する場合、患者自身が呼吸サイクルの呼吸部分を開始したとき、当該人工呼吸器が呼吸送達を行うようトリガされたと言う。
【0394】
5.5.4 解剖学的構造
5.5.4.1 顔の解剖学的構造
翼:各鼻孔の外部の外壁または「翼」(複数形:alar)
【0395】
鼻翼角度:
【0396】
Alare:鼻翼上の最外側の点。
【0397】
翼曲率(または鼻翼頂上)点:各翼の曲線状基準線における最後方点であり、翼および頬の結合によって形成される折り目において見受けられる。
【0398】
耳介:耳の視認できる部分全体。
【0399】
(鼻)骨格:鼻の骨格は、鼻骨、上顎骨の前頭突起および前頭骨の鼻部分を含む。
【0400】
(鼻)軟骨格:鼻の軟骨格は、中隔軟骨、外側軟骨、大軟骨および小軟骨を含む。
【0401】
鼻柱:鼻孔を分離する皮膚片であり、鼻尖点から上唇へ延びる。
【0402】
鼻柱角度:鼻穴の中点を通じて引かれる線と、鼻下点と交差しつつフランクフォート水平に対して垂直に引かれる線との間の角度。
【0403】
フランクフォート水平面:眼窩縁の最下側点から左耳点へ延びる線。耳点は、ノッチ上側から耳介の耳珠への最も深い点である。
【0404】
眉間:軟組織中に配置され、前額部の正中矢状面において最も顕著な点。
【0405】
外側鼻軟骨:軟骨の概して三角形の板。その上側周縁は鼻骨および上顎骨の前頭突起へ取り付けられ、その下側周縁は大鼻翼軟骨へ接続される。
【0406】
唇、下側(下唇:labrale inferius):
【0407】
唇、上側(上唇:labrale superius):
【0408】
大鼻翼軟骨:軟骨の板であり、外側鼻軟骨の下側に配置される。これは、鼻孔の前方部分の周囲において曲線状になる。その後方端は、3つまたは4つの翼の小軟骨を含む強靱な線維膜により、上顎骨の前頭突起へ接続される。
【0409】
鼻孔(小鼻):概して楕円体の穴であり、鼻腔への入口を形成する。鼻孔(nares)の単数形は鼻孔(naris)(鼻穴)である。これらの鼻孔は、鼻中隔によって分離される。
【0410】
鼻唇溝または鼻唇折り目:皮膚の折り目または溝であり、鼻の各側から口の角部へ延びて、頬を上唇から分離させる。
【0411】
鼻唇角:鼻柱と上唇との間の角度であり、鼻下点と交差する。
【0412】
下耳底点:耳介の顔の皮膚への取り付けの最低点。
【0413】
上耳底点:耳介の顔の皮膚への取り付けの最高点。
【0414】
鼻尖点:鼻の最も突出した点または先端であり、頭部の部分の残り部分の側面図中に確認され得る。
【0415】
人中:鼻中隔の下側境界から上唇領域中の唇の上部へ延びる正中線溝。
【0416】
ポゴニオン:軟組織上に配置された、顎の最前方中点。
【0417】
(鼻)堤:鼻堤は、鼻の正中線隆起であり、セリオンから鼻尖点へ延びる。
【0418】
矢状面:前方(前)から後方(後)へ続く垂直面である。正中矢状面は、右半分および左半分に分割する矢状面である。
【0419】
セリオン:軟組織上に配置された、前頭鼻骨縫合の領域上の最も凹状の点である。
【0420】
中隔軟骨(鼻):鼻中隔軟骨は、隔膜の一部を形成し、鼻腔の前部分を分割する。
【0421】
鼻翼最下点:翼ベースの下側周縁における点であり、翼ベースは上(上)唇の皮膚と接合する。
【0422】
鼻下点:軟組織上に配置され、鼻柱が正中矢状面における上唇と合体する点。
【0423】
スプラメントン:下唇中点と軟組織ポゴニオンとの間の下唇の正中線中の最も凹状の点。
5.5.4.2 頭蓋骨の解剖学的構造
【0424】
前頭骨:前頭骨は、前額部として知られる領域に対応する大型垂直部分である前頭鱗を含む。
【0425】
下顎骨:下顎骨は、下側顎部を形成する。オトガイ隆起は、顎部の骨隆起であり、顎を形成する。
【0426】
上顎骨:上顎骨は、上側顎部を形成し、下顎骨の下側および眼窩の下側に配置される。上顎骨の前頭突起は、鼻の側部によって上方に突出し、その外側境界の部分を形成する。
【0427】
鼻骨:鼻骨は、2つの小さな長方形骨であり、個人によってサイズおよび形態が異なる。鼻骨は、顔の中間部分および上部分に並んで配置され、その接合により鼻の「ブリッジ」を形成する。
【0428】
鼻根点:前頭骨および2本の鼻骨の交差であり、眼と鼻のブリッジの上側との間に直接設けられた凹領域である。
【0429】
後頭骨:後頭骨は、頭蓋の裏および下側部分に配置される。後頭骨は、楕円穴である大後頭孔を含み、この穴を通じて、頭蓋内腔が椎管と連痛する。大後頭孔の後側の曲面板は、後頭鱗である。
【0430】
眼窩:頭蓋骨中の骨空洞であり、眼球を含む。
【0431】
頭頂骨:頭頂骨は、相互に接合されると頭蓋の頂部および側部を形成する骨である。
【0432】
側頭骨:側頭骨は、頭蓋骨のベースおよび側部上に配置され、こめかみとして知られる顔の部分を支持する。
【0433】
頬骨:顔に含まれる2つの頬骨は、顔の上側部分および外側部分中に配置され、頬の隆起を形成する。
【0434】
5.5.4.3 呼吸器系の解剖学的構造
横隔膜:シート状の筋肉であり、胸郭底部上に延びる。横隔膜は、心臓、肺および肋骨を含む胸腔を腹腔から分離させる。横隔膜が収縮すると、胸腔の容量が増加し、肺中に空気が引き込まれる。
【0435】
喉頭:声帯ひだを収容する喉頭または発声器であり、咽頭の下部(下咽頭)を気管へ接続させる。
【0436】
肺:ヒトにおける呼吸臓器。肺の伝導性ゾーンは、気管、気管支、気管支、および終末細気管支を含む。呼吸ゾーンは、呼吸細気管支、肺胞管および肺胞を含む。
【0437】
鼻腔:鼻腔(または鼻窩)は、顔の中央の鼻の上方および後方の空気が充填された大きな空間である。鼻腔は、鼻中隔と呼ばれる垂直フィンによって2つに分割される。鼻腔の側部には、鼻甲介(nasal conchae)(単数形「concha」)または鼻介骨と呼ばれる3つの水平伸長物がある。鼻腔の前方には鼻があり、後方は後鼻孔を介して鼻咽頭内に繋がる。
【0438】
咽頭:鼻腔の直接下側(下方)に配置されかつ食道および喉頭の上方に配置された咽喉の部分。咽頭は、従来から以下の3つのセクションへ区分される:鼻咽頭(上咽頭)(咽頭の鼻部分)、口咽頭(中咽頭)(咽頭の口部分)、および咽喉(下咽頭)。
5.5.5 患者インターフェース
【0439】
窒息防止弁(AAV):マスクシステムの構成要素またはサブアセンブリであり、フェールセーフ様態での雰囲気中への開口により、患者による過度のCOの再呼吸の危険性を低減させる。
【0440】
エルボー:エルボーは、内部を移動する空気流れの軸を方向付けて、角度を通じて方向を変化させる構造の例である。一形態において、角度はおよそ90度であり得る。別の形態において、角度は、90度超過または未満であり得る。エルボーは、ほぼ円形の断面を持ち得る。別の形態において、エルボーは、楕円または矩形の断面を持ち得る。特定の形態において、エルボーは、噛み合い構成要素に対して例えば約360度で回転可能であり得る。特定の形態において、エルボーは、噛み合い構成要素から例えばスナップ接続を介して取り外すことが可能であり得る。特定の形態において、エルボーは、製造時にワンタイムスナップを介して噛み合い構成要素へ組み付けることが可能である一方、患者が取り外すことはできない。
【0441】
フレーム:フレームは、ヘッドギアを接続する2つ以上の点間の引張荷重を支持するマスク構造を意味するものとしてとられる。マスクフレームは、マスク中の非気密負荷支持構造であり得る。しかし、いくつかの形態のマスクフレームは、気密であってもよい。
【0442】
ヘッドギア:ヘッドギアは、頭部上において使用されるように設計された、一形態の位置決めおよび安定化構造を意味するものとしてとられる。例えば、ヘッドギアは、患者インターフェースを呼吸治療の送達のために患者の顔上の所定位置に配置および保持するように構成された1つ以上の支柱、タイおよび補剛材の集合を含み得る。いくつかのタイは、柔らかい可撓性の弾性材料(例えば、発泡体および布地の層状複合材)によって形成される。
【0443】
膜:膜は、典型的には肉薄の要素を意味するものとしてとられ、好適には屈曲に対して実質的に抵抗せずかつ伸縮に対しては抵抗する。
【0444】
プレナムチャンバ:マスクプレナムチャンバは、空間の容積を少なくとも部分的に封入する壁を有する患者インターフェースの一部を意味するものとしてとられ、容積中の空気は、加圧されて使用時において気圧を超える。シェルは、マスクプレナムチャンバの壁の一部を形成し得る。
【0445】
シール:名詞(「シール」)として用いられる場合は構造を指し得、動詞(「密閉(する)」)として用いられる場合はその効果を指し得る。2つの要素は、別個の「シール」要素自体を必要とすることなく両者間において「シール」するかまたは「密閉」効果を得るように、構築および/または配置され得る。
【0446】
シェル:シェルは、屈曲、引っ張りおよび圧縮剛性を有する曲線状の比較的肉薄構造を意味するものとしてとられる。例えば、マスクの曲線状構造壁は、シェルであり得る。いくつかの形態において、シェルはファセットされ得る。いくつかの形態において、シェルは気密であり得る。いくつかの形態において、シェルは気密でない場合もある。
【0447】
補剛材:補剛材は、別の構成要素の剛軟度を少なくとも1つの方向において増加させるように設計された構造構成要素を意味するものとしてとられる。
【0448】
支柱:支柱は、別の構成要素の圧縮抵抗を少なくとも1つの方向において増加させるように設計された構造構成要素を意味するものとしてとられる。
【0449】
スイベル(名詞):構成要素のサブアセンブリであり、共通軸の周囲において好適には独立して好適には低トルク下において回転するように構成される。一形態において、スイベルは、少なくとも360度の角度で回転するように構成され得る。別の形態において、スイベルは、360度未満の角度で回転するように構成され得る。空気送達導管の文脈において用いられる場合、構成要素のサブアセンブリは好適には、一対組み合わせの円筒導管を含む。使用時において、スイベルからの空気流れの漏れはほとんど無い。
【0450】
タイ(名詞):張力に抵抗するように設計された構造。
【0451】
通気部:(名詞):マスクまたは導管の内部の周囲空気への空気流れを可能にする構造であり、呼息されたガスの臨床的に有効な洗い流しを可能にする。例えば、臨床的に有効な洗い流しにおいては、約10リットル/分~約100リットル/分の流量がマスク設計および治療圧力に応じて用いられ得る。
【0452】
5.5.6 構造の形状
本技術による製品は、1つ以上の三次元機械構造(例えば、マスククッションまたはインペラ)を含み得る。三次元構造は、二次元表面によって境界付けられ得る。これらの表面は、関連付けられた表面の方向付け、位置、機能または他の何らかの特性を記述するためのラベルを用いて区別され得る。例えば、構造は、前面、後面、内面および外面のうち1つ以上を含み得る。別の例において、シール形成構造は、顔接触(例えば、外側の)表面と、別個の非顔接触(例えば、下側または内側の)表面を含み得る。別の例において、構造は、第1の表面および第2の表面を含み得る。
【0453】
三次元構造の形状および表面の説明を容易にするために、構造の表面を通じた点pにおける断面について先ず検討する。図3B図3Fを参照されたい。図3B図3Fは、表面上における点pにおける断面例と、その結果得られる平面曲線の例とを示す。図3B図3Fは、pにおける外向き法線ベクトルも示す。pにおける外向き法線ベクトルは、表面から離隔方向に延びる。いくつかの例において、架空の小さな人が表面上に直立している観点から、この表面について説明する。
5.5.6.1 一次元における曲率
【0454】
pにおける平面曲線の曲率は、符号(例えば、正、負)および大きさ(例えば、pにおいて曲線に接する円形の1/半径)を持つものとして記述され得る。
【0455】
正の曲率:pにおける曲線が外向き法線に向かって曲がる場合、その点における曲率は、正の値を持つものとしてとられる(この架空の小さな人が点pから立ち去る場合、上り坂を歩行する必要がある)。図3B図3Cと比較して比較的大きな正の曲率)および図3C図3Bと比較して比較的小さな正の曲率)を参照されたい。このような曲線を、凹状と呼ぶことが多い。
【0456】
ゼロ曲率:pにおける曲線が直線である場合、曲率はゼロとしてとられる(この架空の小さな人が点pから立ち去る場合、上向きでも下向きでもない水平面を歩行することができる)。図3Dを参照されたい。
【0457】
負の曲率:pにおける曲線が外向き法線から離隔方向に曲がる場合、その点およびその方向における曲率は、負の値を持つものとしてとられる(この架空の小さな人が点pから立ち去る場合、下り坂を歩行する必要がある)。図3E図3Fと比較して比較的小さな負の曲率)および図3F図3Eと比較して比較的大きな負の曲率)を参照されたい。このような曲線は、凸状と呼ばれることが多い。
5.5.6.2 二次元表面の曲率
【0458】
本技術による二次元表面上の所与の点における形状の記述は、複数の垂直断面を含み得る。複数の断面は、外向き法線(「法平面」)を含む面において表面を切断し得、各断面は、異なる方向においてとられ得る。各断面の結果、対応する曲率を有する平面曲線が得られる。その点における異なる曲率は、同一符号または異なる符号を持ち得る。その点における曲率はそれぞれ、(例えば、比較的小さな)大きさを有する。図3B図3F中の平面曲線は、特定の点におけるこのような複数の断面の例であり得る。
【0459】
主要な曲率および方向:曲線の曲率が最大値および最小値をとる法平面の方向を主要な方向と呼ぶ。図3B図3Fの例において、最大曲率は図3Bにおいて発生し、最小は図3Fにおいて発生するため、図3Bおよび図3Fは、主要な方向における断面である。pにおける主要な曲率は、主要な方向における曲率である。
【0460】
表面の領域:表面上の連結された点の集合。領域内のこの1組の点は、類似の特性(例えば、曲率または符号)を持ち得る。
【0461】
サドル領域:(上り坂または下り坂を歩行し得る架空の人が向く方向に応じて)各点において主要な曲率が反対の符号(すなわち、片方が正の符号および他方が負の符号)を有する領域。
【0462】
ドーム領域:各点において主要な曲率が同一符号(双方とも正(「凹状ドーム」)または双方とも負(「凸状ドーム」))を持つ領域。
【0463】
円筒型の領域:1つの主要な曲率がゼロ(または、例えば製造公差内のゼロ)をとり、他方の主要な曲率が非ゼロである領域。
【0464】
平面領域:主要な曲率双方がゼロであるか(または例えば製造交差内のゼロである)表面の領域。
【0465】
表面の縁部:表面または領域の境界または限界。
【0466】
経路:本技術の特定の形態において、「経路」は、数学的-トポロジー的意味合いにおける経路(例えば、表面上におけるf(0)からf(1)への連続空間曲線)を意味するものとしてとられる。本技術の特定の形態において、「経路」は、例えば表面上の1組の点を含むルートまたはコースとして記述され得る。(架空の人の経路は、表面上において歩行する場所であり、庭の経路に類似する)。
【0467】
経路長さ:本技術の特定の形態において、「経路長さ」とは、表面に沿ったf(0)からf(1)への距離(すなわち、表面上の経路に沿った距離)を指すものとしてとられる。表面上の2つの点間において1つよりも多くの経路があり得、このような経路は、異なる経路長さを持ち得る。(架空の人の経路長さは、表面上を経路に沿って歩行する距離である)。
【0468】
直線距離:直線距離は、表面上の2つの点間の距離であるが、表面は考慮しない。平面領域上において、表面上の2つの点間の直線距離と同一の経路長さを有する表縁上の距離がある。非平面表面上において、2つの点間の直線距離と同一の経路長さを有する経路は存在し得ない。(架空の人にとって、直線距離は、「カラスが飛ぶ」距離に対応する)。
5.5.6.3 空間曲線
【0469】
空間曲線:平面曲線と異なり、空間曲線は、任意の特定の平面内に必ずしも存在しない。空間曲線は閉鎖され得る。すなわち、終点を有さない。空間曲線は、三次元空間の一次元ピースとみなされ得る。DNA螺旋の鎖上を歩行している架空の人物は、空間曲線に沿って歩行する。典型的なヒトの左耳は、左手螺旋を含む(図3Qを参照)。典型的なヒトの右耳は、右手螺旋を含む(図3Rを参照)。図3Sは、右手螺旋を示す。構造の縁部(例えば、膜またはインペラの縁部)は、空間曲線をたどり得る。一般的に、空間曲線は、空間曲線上の各点における曲率およびねじれによって記述され得る。ねじれとは、平面から発生する曲線の様態の尺度である。ねじれは、符号および大きさを有する。空間曲線上の点におけるねじれは、当該点における接線ベクトル、法線ベクトルおよび従法線ベクトルに対して特徴付けられ得る。
【0470】
接線単位ベクトル(または単位接線ベクトル):曲線上の各点について、当該点におけるベクトルは、当該点からの方向および大きさを指定する。接線単位ベクトルとは、当該点における曲線と同じ方向を向く単位ベクトルである。架空の人物が曲線に沿って飛行しており、特定の点において自身の車両から落ちた場合、接線ベクトルの方向は、その人物が移動しているはずの方向である。
【0471】
単位法線ベクトル:架空の人物が曲線に沿って移動している場合、この接線ベクトルそのものが変化する。接線ベクトルが変化している方向と同じ方向を向く単位ベクトルは、単位主法線ベクトルと呼ばれる。これは、接線ベクトルに対して垂直である。
【0472】
従法線単位ベクトル:従法線単位ベクトルは、接線ベクトルおよび主法線ベクトル双方に対して垂直である。その方向は、右手の法則(例えば図3Pを参照)または表すあるいは左手の法則(図3O)によって決定され得る。
【0473】
接触平面:単位接線ベクトルおよび単位主法線ベクトルを含む平面。図3Oおよび図3Pを参照されたい。
【0474】
空間曲線のねじれ:空間曲線の点におけるねじれとは、当該点における従法線単位ベクトルの変化速度の大きさである。これは、曲線の接触平面からの逸脱の程度を測定する。平面内にある空間曲線のねじれはゼロである。空間曲線の接触平面からの逸脱が比較的少量である場合、その空間曲線のねじれの大きさは比較的小さい(例えば、緩やかに傾斜する螺旋状経路)。空間曲線の接触平面からの逸脱が比較的大量である場合、その空間曲線のねじれの大きさは比較的大きい(例えば、急勾配に傾斜する螺旋状経路)。図3Sを参照して、T2>T1であるため、図3Sの螺旋の最上部コイルの近隣のねじれの大きさは、図3Sの螺旋の底部コイルのねじれの大きさよりも大きい。
【0475】
図3Pの右手の法則を参照して、右手従法線の方向に向かって曲がる空間曲線は、右手方向に正のねじれとしてみなされ得る(例えば、図3Sに示すような右手螺旋)。右手従法線方向から離隔方向を向く空間曲線は、右手の負のねじれを持つものとしてみなされ得る(例えば、左手螺旋)。
【0476】
同様に、左手の法則(図3Oを参照)を参照して、左手従法線方向を向く空間曲線は、左手の正のねじれ(例えば、左手螺旋)を持つものとしてみなされ得る。よって、左手の正の方向は、右手の負の方向に相当する。図3Tを参照されたい。
5.5.6.4 穴
【0477】
表面は、一次元穴を持ち得る(例えば、平面曲線または空間曲線によって境界付けられた穴)。穴を含む肉薄構造(例えば、膜)の場合、この構造は、一次元穴を有するものとして記述され得る。例えば、図3Iに示す構造の表面中の一次元穴が平面曲線によって境界付けられる様子を参照されたい。
【0478】
構造は、二次元穴(例えば、表面によって境界付けられた穴)を持ち得る。例えば、可膨張性タイヤは、タイヤ内面によって境界付けられた二次元穴を有する。別の例において、空気またはゲルのための空洞を備えたブラダーは、二次元穴を持ち得る。例えば図3Lのクッション、および二次元穴を境界付ける内面が示される図3Mおよび図3Nにおける図3Lの例示的断面を参照されたい。さらに別の例において、導管は、(例えばその入口またはその出口において)一次元穴を含み得、導管の内面によって境界付けられた二次元穴を含み得る。図3Kに示す構造を通じておりかつ図示のように表面によって境界付けられた二次元穴も参照されたい。
【0479】
5.6 他の注意事項
他に文脈から明確に分かる場合および一定の範囲の値が提供されていない限り、下限の単位の1/10、当該範囲の上限と下限の間、および記載の範囲の他の任意の記載の値または介入値に対する各介入値は本技術に包含されることが理解される。介入範囲中に独立的に含まれるこれらの介入範囲の上限および下限が記載の範囲における制限を特に超えた場合も、本技術に包含される。記載の範囲がこれらの制限のうち1つまたは双方を含む場合、これらの記載の制限のいずれかまたは双方を超える範囲も、本技術に包含される。
【0480】
さらに、本明細書中に値(単数または複数)が本技術の一部として具現される場合、他に明記無き限り、このような値が近似され得、実際的な技術的実行が許容または要求する範囲まで任意の適切な有効桁までこのような値を用いることが可能であると理解される。
【0481】
他に明記しない限り、本明細書中の全ての技術用語および科学用語は、本技術が属する分野の当業者が一般的に理解するような意味と同じ意味を持つ。本明細書中に記載の方法および材料に類似するかまたは等しい任意の方法および材料を本技術の実践または試験において用いることが可能であるが、限られた数の例示的な方法および材料が本明細書中に記載される。
【0482】
特定の材料が構成要素の構築に好適に用いられるものとして記載されているが、特性が類似する明白な代替的材料が代替物として用いられる。さらに、それとは反対に記載無き限り、本明細書中に記載される任意および全ての構成要素は、製造可能なものとして理解されるため、集合的にまたは別個に製造され得る。
【0483】
本明細書中及び添付の特許請求の範囲において用いられるように、単数形である「a」、「an」および「the」は、文脈から明らかにそうでないことが示されない限り、その複数の均等物を含む点に留意されたい。
【0484】
本明細書中に記載される公開文献は全て、これらの公開文献の対象である方法および/または材料の開示および記載、参考のために援用される。本明細書中に記載の公開文献は、本出願の出願日前のその開示内容のみのために提供するものである。本明細書中のいずれの内容も、本技術が先行特許のためにこのような公開文献に先行していないと認めるものと解釈されるべきではない。さらに、記載の公開文献の日付は、実際の公開文献の日付と異なる場合があり、個別に確認が必要であり得る。
【0485】
「comprises」および「comprising」という用語は、要素、構成要素またはステップを非排他的な意味合いで指すものとして解釈されるべきであり、記載の要素、構成要素またはステップが明記されていない他の要素、構成要素またはステップと共に存在、利用または結合され得ることを示す。
【0486】
詳細な説明において用いられる見出しは、読者の便宜のためのものであり、本開示または特許請求の範囲全体において見受けられる内容を制限するために用いられるべきではない。これらの見出しは、特許請求の範囲または特許請求の範囲の制限の範囲の解釈において用いられるべきではない。
【0487】
本明細書中の技術について、特定の例を参照して述べてきたが、これらの例は本技術の原理および用途を例示したものに過ぎないことが理解されるべきである。いくつかの場合において、用語および記号は、本技術の実施に不要な特定の詳細を示し得る。例えば、「first(第1の)」および「second(第2の)」(など)という用語が用いられるが、他に明記無き限り、これらの用語は任意の順序を示すことを意図しておらず、別個の要素を区別するために用いられる。さらに、本方法におけるプロセスステップについての記載または例示を順序付けて述べる場合があるが、このような順序は不要である。当業者であれば、このような順序が変更可能でありかつ/またはその態様を同時にまたはさらに同期的に行うことが可能であることを認識する。
【0488】
よって、本技術の意図および範囲から逸脱することなく、例示的な例において多数の変更例が可能であり、また、他の配置構成が考案され得ることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0489】
1000 患者
1100 同床者
3000 患者インターフェース
3010 ヘッドギア導管
3012 クッションインターフェース
3020 ヘッドギア導管
3022 クッションインターフェース
3050 鼻クッション
3052 鼻シール形成構造
3053 テクスチャ面
3054 オリフィス
3055 ブリッジ部分
3056 上側ヘッドギアコネクタ
3058 鼻クッション開口部
3060 口クッション
3062 口シール形成構造
3066 下側ヘッドギアコネクタ
3068 継手
3070 口クッション継手開口部
3070-1 領域
3072 口クッション開口部
3072-1 領域
3074 前面
3076 上唇膜
3077 中央部
3078 壁
3080 コンチェルティーナセクション
3082 鼻クッション端部
3084 口クッション端部
3086 隆起部
3087 隆起部
3088 溝部
3089 溝部
3090 側方側
3092 隆起部
3094 リップ膜
3165 鼻枕
3200 プレナムチャンバ
3202 プレナムチャンバ側方端
3210 弦
3220 上方ポイント
3230 後方ポイント
3300 位置決めおよび安定化構造
3310 鼻ヘッドギアストラップ
3320 口鼻ヘッドギアストラップ
3322 上ストラップ
3324 連結ストラップ
3326 ストラップ
3328 コネクタ
3330 共通の接続要素
3360 バックル
3362 延長可能なコンチェルティーナ構造
3400 通気部
3410 連結機構
3600 接続ポート
3610 エルボー
3700 前額支持部
3955 セクション
3980 要素
3982 スロット
3096 フランジ
4170 空気回路
5000 加湿器
6000 通気コネクタ
6010 通気穴
6020 第1の端部
6030 第2の端部
3066 - 1 上アーム
3066 - 2 下アーム
3066 - 3 コネクタ
3066 - 4 領域
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図2K
図2L
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図3K
図3L
図3M
図3N
図3O
図3P
図3Q
図3R
図3S
図3T
図3U
図3V
図3W
図3X
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G
図10H
図10I
図10J
図10K
図10L
図11A
図11B
図11C
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図15
図16