(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】実況画像表示支援装置、ゲームシステム、および実況画像表示支援方法
(51)【国際特許分類】
A63F 13/86 20140101AFI20240820BHJP
A63F 13/5258 20140101ALI20240820BHJP
A63F 13/5372 20140101ALI20240820BHJP
A63F 13/30 20140101ALI20240820BHJP
【FI】
A63F13/86
A63F13/5258
A63F13/5372
A63F13/30
(21)【出願番号】P 2022569426
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2020047156
(87)【国際公開番号】W WO2022130568
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】310021766
【氏名又は名称】株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 晃洋
【審査官】進藤 利哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-215433(JP,A)
【文献】特開2017-225509(JP,A)
【文献】特開平11-253659(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2020-0074817(KR,A)
【文献】特開2001-000749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 13/86
A63F 13/5258
A63F 13/5372
A63F 13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ゲームの実況画像の表示を支援する装置であって、
各プレイヤの操作に基づくゲーム処理において取得される所定のゲームパラメータを抽出するデータ取得部と、
前記ゲームパラメータを集約することにより、実況画像の好適な視野に係る制御用情報を生成し出力する制御用情報生成部と、
を備え、
前記制御用情報生成部は前記制御用情報として、ゲーム上で設定されている仮想世界の地面
における斜面の法線ベクトルを取得し、実況画像に対する仮想カメラの
光軸と前記法線ベクトルが一致するような前記仮想カメラの姿勢を求めることにより、前記仮想カメラの状態情報を生成することを特徴とする実況画像表示支援装置。
【請求項2】
電子ゲームの実況画像の表示を支援する装置であって、
各プレイヤの操作に基づくゲーム処理において取得される所定のゲームパラメータを抽出するデータ取得部と、
前記ゲームパラメータを集約することにより、実況画像の好適な視野に係る制御用情報を生成し出力する制御用情報生成部と、
を備え、
前記制御用情報生成部は前記制御用情報として、ゲーム上で設定されている仮想世界の地面の傾斜に基づき、
地形の種類を前記仮想世界の領域に対応づけた地形マップを生成し、当該地形の種類に応じて実況画像に対する仮想カメラの設定ポリシーを切り替えて、前記仮想カメラの状態情報を生成することを特徴とする実況画像表示支援装置。
【請求項3】
前記制御用情報生成部は、前記地面の傾斜に基づき、表示対象の領域を決定したうえ前記仮想カメラの高さを求めることを特徴とする請求項1または2に記載の実況画像表示支援装置。
【請求項4】
前記状態情報に従い前記仮想カメラを設定したうえ、前記実況画像を生成する実況画像取得部をさらに備えたことを特徴とする請求項1から
3のいずれかに記載の実況画像表示支援装置。
【請求項5】
電子ゲームの実況画像の表示を支援する装置であって、
各プレイヤの操作に基づくゲーム処理において取得される所定のゲームパラメータを抽出するデータ取得部と、
前記ゲームパラメータを集約することにより、実況画像の好適な視野に係る制御用情報を生成し出力する制御用情報生成部と、
を備え、
前記制御用情報生成部は、ゲームの仮想世界における、各プレイヤが操作するキャラクタの位置情報に基づきクラスタリングを行い、検出されたクラスタを表示対象とすることを特徴とする実況画像表示支援装置。
【請求項6】
前記制御用情報生成部は、前記クラスタに属する前記キャラクタに対応する前記ゲームパラメータに基づき、検出された複数のクラスタから1つを選択することを特徴とする請求項
5に記載の実況画像表示支援装置。
【請求項7】
前記制御用情報生成部は、ゲーム上で設定されている仮想世界の3次元構造に基づき、前記クラスタにおける表示対象の領域を限定することを特徴とする請求項
5または
6に記載の実況画像表示支援装置。
【請求項8】
前記制御用情報生成部は、ゲーム上で設定されている仮想世界の3次元構造に基づき、構造の種類を領域に対応づけた地形マップを生成し、当該構造の種類に応じて、前記クラスタを実況画像に表すための仮想カメラの設定ポリシーを切り替えることを特徴とする請求項
5から
7のいずれかに記載の実況画像表示支援装置。
【請求項9】
電子ゲームの実況画像の表示を支援する装置であって、
各プレイヤの操作に基づくゲーム処理において取得される所定のゲームパラメータを抽出するデータ取得部と、
前記ゲームパラメータを集約することにより、実況画像の好適な視野に係る制御用情報を生成し出力する制御用情報生成部と、
前記制御用情報を、実況画像管理者が見る管理者用ディスプレイに表示させ、ゲーム上で設定されている仮想世界における表示対象を決定する入力を当該実況画像管理者から受け付けるデータ出力部と、
を備えたことを特徴とする実況画像表示支援装置。
【請求項10】
前記データ出力部は、前記仮想世界においてプレイヤが操作するキャラクタのうち、次に表示対象とすべきキャラクタを強調表示し、実況画像管理者による確定入力を受け付けるすることを特徴とする請求項
9に記載の実況画像表示支援装置。
【請求項11】
前記データ出力部は、前記仮想世界においてプレイヤが操作するキャラクタのうち、次に表示対象とすべきキャラクタ候補の近傍に、当該キャラクタを表示対象とすべき根拠となる前記ゲームパラメータを表示し、実況画像管理者によるキャラクタの選択入力を受け付けることを特徴とする請求項
9に記載の実況画像表示支援装置。
【請求項12】
前記データ取得部は前記ゲームパラメータとして、プレイヤごとの戦況、ゲームの仮想世界における位置、および、行っている動作の種類の少なくともいずれかを取得することを特徴とする請求項1から
11のいずれかに記載の実況画像表示支援装置。
【請求項13】
前記制御用情報生成部は前記制御用情報として、前記ゲームパラメータを用いて所定の規則により表示対象に優先順位をつけることを特徴とする請求項1から
12のいずれかに記載の実況画像表示支援装置。
【請求項14】
プレイヤ用デバイスとの協働により電子ゲームを処理するとともに、各プレイヤの操作に基づくゲーム処理において取得される所定のゲームパラメータを出力するゲームサーバと、
前記ゲームパラメータを集約することにより、前記電子ゲームの実況画像の好適な視野に係る制御用情報を生成し出力する実況画像表示支援装置と、
を含み、
前記実況画像表示支援装置は前記制御用情報として、
ゲーム上で設定されている仮想世界の地面
における斜面の法線ベクトルを取得し、実況画像に対する仮想カメラの
光軸と前記法線ベクトルが一致するような前記仮想カメラの姿勢を求めることにより、または、
前記地面の傾斜に基づき、地形の種類を前記仮想世界の領域に対応づけた地形マップを生成し、当該地形の種類に応じて前記仮想カメラの設定ポリシーを切り替えて、
前記仮想カメラの状態情報を生成することを特徴とするゲームシステム。
【請求項15】
電子ゲームの実況画像の表示を支援する装置が、
各プレイヤの操作に基づくゲーム処理において取得される所定のゲームパラメータを抽出するステップと、
前記ゲームパラメータを集約することにより、実況画像の好適な視野に係る制御用情報を生成し出力するステップと、
を含み、
前記制御用情報を生成し出力するステップは、前記制御用情報として、
ゲーム上で設定されている仮想世界の地面
における斜面の法線ベクトルを取得し、実況画像に対する仮想カメラの
光軸と前記法線ベクトルが一致するような前記仮想カメラの姿勢を求めることにより、または、
前記地面の傾斜に基づき、地形の種類を前記仮想世界の領域に対応づけた地形マップを生成し、当該地形の種類に応じて前記仮想カメラの設定ポリシーを切り替えて、
前記仮想カメラの状態情報を生成することを特徴とする実況画像表示支援方法。
【請求項16】
電子ゲームの実況画像の表示を支援するコンピュータに、
各プレイヤの操作に基づくゲーム処理において取得される所定のゲームパラメータを抽出する機能と、
前記ゲームパラメータを集約することにより、実況画像の好適な視野に係る制御用情報を生成し出力する機能と、
を実現させ、
前記制御用情報を生成し出力する機能は、前記制御用情報として、
ゲーム上で設定されている仮想世界の地面
における斜面の法線ベクトルを取得し、実況画像に対する仮想カメラの
光軸と前記法線ベクトルが一致するような前記仮想カメラの姿勢を求めることにより、または、
前記地面の傾斜に基づき、地形の種類を前記仮想世界の領域に対応づけた地形マップを生成し、当該地形の種類に応じて前記仮想カメラの設定ポリシーを切り替えて、
前記仮想カメラの状態情報を生成することを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ゲームの実況画像の表示を支援する実況画像表示支援装置、ゲームシステム、および実況画像表示支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータゲームは個人で楽しむばかりでなく、複数のプレイヤがネットワークを介して一つのゲームに参加したり、その様子を別のユーザが観戦したりする態様が一般的になっている。なかでも、コンピュータゲームを競技と位置づけ、大会形式で行うeスポーツ(Electronic Sports)の発展は著しく、大勢の観客が見守るなか、多額の賞金を掛けて個人またはチームで競い合うイベントも多く開催されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
eスポーツなど観戦を伴うオンラインゲームでは、観戦者に実況映像をどのように見せるかが重要な課題となる。特にプレイヤが操作するキャラクタが仮想世界を自由に動き回ったり、プレイヤの視点を自由に移動させたりできる形式のゲームの場合、各プレイヤが見ているゲーム画面は様々となる。このため別途、観戦者用の実況映像を適切に選択したり生成したりする作業が必要となる。この作業が適切でないと、面白い場面や重要な局面を見せることができず、観戦者がストレスを感じたり盛り上がりに欠けたイベントとなったりする。
【0004】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電子ゲームの実況映像を適切な内容で容易に表示させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様は実況画像表示支援装置に関する。この実況画像表示支援装置は、電子ゲームの実況画像の表示を支援する装置であって、各プレイヤの操作に基づくゲーム処理において取得される所定のゲームパラメータを抽出するデータ取得部と、当該ゲームパラメータを集約することにより、実況画像の好適な視野に係る制御用情報を生成し出力する制御用情報生成部と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
本発明の別の態様はゲームシステムに関する。このゲームシステムは、プレイヤ用デバイスとの協働により電子ゲームを処理するとともに、各プレイヤの操作に基づくゲーム処理において取得される所定のゲームパラメータを出力するゲームサーバと、前記ゲームパラメータを集約することにより、電子ゲームの実況画像の好適な視野に係る制御用情報を生成し出力する実況画像表示支援装置と、を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明のさらに別の態様は実況画像表示支援方法に関する。この実況画像表示支援方法は電子ゲームの実況画像の表示を支援する装置が、各プレイヤの操作に基づくゲーム処理において取得される所定のゲームパラメータを抽出するステップと、当該ゲームパラメータを集約することにより、実況画像の好適な視野に係る制御用情報を生成し出力するステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムを記録した記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、電子ゲームの実況映像を適切な内容で容易に表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態を適用できるゲームシステムを例示する図である。
【
図2】プレイヤ用画像と観戦用の実況画像の例を模式的に示す図である。
【
図3】本実施の形態における実況画像表示支援装置の内部回路構成を示す図である。
【
図4】本実施の形態におけるゲームサーバと実況画像表示支援装置の機能ブロックの構成を示す図である。
【
図5】本実施の形態において実況画像を制御する処理手順とデータの変遷を示す図である。
【
図6】本実施の形態においてクラスタリングにより仮想カメラの好適な位置を決定する例を説明するための図である。
【
図7】本実施の形態において、仮想世界の3次元構造を考慮して仮想カメラの姿勢を決定する例を説明するための図である。
【
図8】本実施の形態において、仮想世界の3次元構造を考慮して仮想カメラの位置および姿勢を決定する例を説明するための図である。
【
図9】本実施の形態における、制御用情報生成部による地形マップの生成手法を説明するための図である。
【
図10】本実施の形態における、実況画像管理者が実況画像を制御する態様において、実況画像表示支援装置が管理者用ディスプレイに表示させる管理者用の画面を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本実施の形態を適用できるゲームシステムを例示している。ゲームシステムは代表的にはeスポーツのイベントに利用できるが、複数のプレイヤが参加している電子ゲームの実況映像を他者に見せる状況であれば規模や場所は限定されない。ゲームシステムは、複数のプレイヤ用デバイス13a、13b、13c、・・・がLAN(Local Area Network)などのネットワーク6を介してゲームサーバ12に接続した構成を含む。
【0012】
プレイヤ用デバイス12a、12b、12c、・・・はそれぞれ、プレイヤが操作する端末であり、入力装置14a、14b、14c・・・と、プレイヤ用ディスプレイ16a、16b、16c、・・・が有線または無線で接続される。以後、プレイヤ用デバイス13a、13b、13c、・・・をプレイヤ用デバイス13、入力装置14a、14b、14c・・・を入力装置14、プレイヤ用ディスプレイ16a、16b、16c、・・・をプレイヤ用ディスプレイ16と総称する。
【0013】
システムに含まれるプレイヤ用デバイス13、入力装置14、プレイヤ用ディスプレイ16の数は特に限定されない。プレイヤ用デバイス13は、パーソナルコンピュータ、ゲーム専用機、コンテンツ処理装置などのいずれでもよい。入力装置14は、ゲームに対するユーザ操作を受け付ける一般的なコントローラでよい。プレイヤ用ディスプレイ16は一般的な平板型ディスプレイでもよいし、ヘッドマウントディスプレイなどのウェアラブルディスレプレイでもよい。
【0014】
なおプレイヤ用デバイス13、入力装置14、プレイヤ用ディスプレイ16は、図示するようにそれぞれが別の筐体を有していてもよいし、それらの2つ以上が一体的に設けられていてもよい。例えばプレイヤ用デバイス13、入力装置14、プレイヤ用ディスプレイ16を一体的に備える携帯端末などでもよい。
【0015】
ゲームサーバ12は各プレイヤ用デバイス13と通信を確立し、クライアントサーバ方式によりゲームを実行する。すなわちゲームサーバ12は、各プレイヤ用デバイス13からプレイヤの操作に基づくゲームデータを収集してゲームを進捗させる。そして他のプレイヤによる操作結果も含めたデータを返すことにより、プレイヤ用ディスプレイ16におけるゲーム画面に反映させるようにする。このようなプレイヤ用デバイス13とゲームサーバ12の動作は一般的なものでよい。
【0016】
本実施の形態のゲームシステムではさらに、実況画像表示支援装置10がゲームサーバ12等に接続されている。実況画像表示支援装置10は、各プレイヤの操作によって進捗するゲーム世界の様子を表した実況画像を観戦者用ディスプレイ8に表示させる。観戦者用ディスプレイ8は例えば、eスポーツのイベント会場に設置された大型スクリーンなど、複数の観戦者が一緒に見ることのできる平板型のディスプレイである。実況画像表示支援装置10には観戦者用ディスプレイ8のほか、実況画像の管理者のための入力装置18と管理者用ディスプレイ20を接続してよい。
【0017】
実況画像表示支援装置10はまた、実況画像のデータを、ネットワーク22を介して観戦者の端末24a、24bに送信してもよい。ネットワーク22はWAN(Wide Area Network)やLANなど、その規模は限定されない。したがって端末24a、24bを使用する観戦者は、イベント会場などプレイヤと同じ空間にいてもよいし、遠隔地など別の場所にいてもよい。
【0018】
図示するように観戦者用の端末24a、24bは、ディスプレイを備えた携帯端末であってもよいし、接続されたディスプレイ26に画像を表示させる情報処理装置やコンテンツ再生装置などでもよい。ディスプレイ26は平板型ディスプレイでもよいし、ヘッドマウントディスプレイなどのウェアラブルディスレプレイでもよい。また観戦者用の端末24a、24bの数は限定されない。以後、観戦者用の端末24a、24bを端末24と総称する。
【0019】
いずれにしろ本実施の形態において実況画像表示支援装置10は、ゲームサーバ12からゲームの状況に係る所定の情報を収集し、それに基づき、実況画像の視野の決定に利用できる情報を生成する。実況画像表示支援装置10は、生成した情報を用いて自らが実況画像を制御してもよいし、管理者用ディスプレイ20に当該情報を表示させ、最終的には実況画像管理者が入力装置18を用いて実況画像を制御してもよい。この態様において入力装置18は、一般的なコントローラ、キーボード、操作盤、スイッチなどであり、管理者が実況画像を制御する際に用いることができる。
【0020】
管理者用ディスプレイ20は、管理者が各種情報や実況画像を見るためのモニタとして機能する。なお実況画像表示支援装置10はゲームサーバ12の一部であってもよい。例えば実況画像を制御するための情報を生成する機能や、実況画像を生成する機能を、ゲームサーバ12が実行するゲームソフトウェアの一部として実装することで、ゲームデータの外部への露出を抑えてもよい。また実況画像表示支援装置10は、プレイヤ用デバイス13と通信を確立し、ゲームに係るデータをプレイヤ用デバイス13から取得してもよい。
【0021】
ここで本実施の形態の効果を明らかにするため、一般的なeスポーツにおいて表示される実況画像について説明する。
図2は、プレイヤ用画像と観戦用の実況画像の例を模式的に示している。この例では、プレイヤが操作するキャラクタが仮想世界を動き回り、遭遇した敵キャラクタと対戦するゲームを想定している。(a)は、各プレイヤがそれぞれのディスプレイで見るプレイヤ用画像を例示している。この例でプレイヤ用画像170a、170b、170cは、それぞれのプレイヤが操作するキャラクタ(例えばキャラクタ171)の後ろ姿を中央下寄りに据え置き、その周囲の仮想世界を所定の画角で表している。
【0022】
プレイヤが入力装置14を介して各自のキャラクタを移動させる操作を行うと、キャラクタの背後に固定された仮想カメラがそれに追随することで、プレイヤ用画像170a、170b、170cに表される周囲の風景が変化する。このような表示形式のゲームはTPS(Third Person Shooting)と呼ばれる一般的なものである。ただし本実施の形態が対象とするゲームの種類をこれに限定する主旨ではない。
【0023】
プレイヤ用画像170a、170b、170cには多くの場合、ゲームプレイに必要な個別の情報も重畳表示される。図示する例では、各キャラクタの残りの体力を表すヒットポイント(HP)のゲージ(例えばゲージ172)、保有している武器を示すアイコン(例えばアイコン174)、仮想世界における現在地を示す地図(例えば地
図76)などが表示されている。図示するように各キャラクタが仮想世界の別の場所にいれば、当然、プレイヤ用画像170a、170b、170cに表される場所も異なる。複数のキャラクタが同じ場所にいたり戦ったりしている状況においては、プレイヤ用画像170a、170b、170cに表される場所も重複するが、キャラクタの向きやプレイヤの操作によって視野は様々となり得る。
【0024】
(b)は、会場内の大型スクリーンや観戦者の端末などに表示される実況画像の一例を示している。この例では、あるプレイヤ用画像170cを選択し、そのまま実況画像に利用している。この場合、実況画像を別途生成する必要がなく、処理を簡素化できる。一方、プレイヤ用画像の本来の用途はゲームプレイそのものにあるため、観戦者が見て楽しめるとは限らない。そのためどのプレイヤ用画像を選択するかによって、会場の盛り上がりに差が出てしまうことがあり得る。
【0025】
例えば選択したプレイヤ用画像のキャラクタがすぐに敗北してしまえば、次の表示対象を選択し直す必要が生じる。このようなことが頻繁に起こると、観戦者は脈絡のないシーンを次々見せられることになり、ゲーム世界に没頭しにくくなる。複数のプレイヤ用画像170a、170b、170cを定期的に切り替えて表示させる場合も同様である。また、選択したプレイヤ用画像のキャラクタが、戦闘を避け有利なポジションに滞在し続けたり、周囲に他のキャラクタがおらず意図せず戦闘が発生しない状態が続いたりしても盛り上がりを阻害する。
【0026】
そこで、実況画像としてプレイヤ用画像170a、170b、170cを用いず、独立した仮想カメラを設定して別途画像を生成することが考えられる。この場合、仮想カメラの位置や姿勢を自由に動かしたり切り替えたりできるため、盛り上がりが期待できる面白い場面や重要な局面を観戦者に見せることが可能となる。しかしながら全てのキャラクタの状況を把握したうえ、適切に画面を切り替えたり視野を変化させたりするには、多くの人員や高い技量が必要となりコストが増大する。このため資金が潤沢でない小規模なイベントほど、実況画像が貧弱となり盛り上がりに欠ける結果となってしまう。
【0027】
そこで本実施の形態の実況画像表示支援装置10は、各キャラクタの状況などを収集して実況画像の制御に利用できるようにする。すなわち実況画像表示支援装置10は、ゲーム上で取得/生成される所定のパラメータをゲームサーバ12から取得し、それを用いて、実況画像制御の拠り所となる所定の情報を生成する。以後、収集されるゲーム上のパラメータを「ゲームパラメータ」、実況画像表示支援装置10が生成する実況画像制御のための情報を「制御用情報」と呼ぶ。ただし制御用情報にゲームパラメータ自体が含まれていてもよい。
【0028】
典型的な例として、ゲームパラメータはプレイヤごと、キャラクタごとの情報であり、各プレイヤの操作に基づいてゲームのプログラムにより取得される、ゲーム処理に必要なデータである。制御用情報は、それらを集約させることにより得られ、実況画像の好適な視野に係る情報、例えば表示するのが望ましいキャラクタや場所を示唆する情報である。例えば実況画像表示支援装置10は、ゲームパラメータとして各キャラクタの仮想世界での位置情報を取得する。そしてキャラクタの集まり、すなわちクラスタが形成されている場所を、制御用情報として生成する。
【0029】
さらに実況画像表示支援装置10は、当該場所でのキャラクタの分散の仕方や、仮想世界での地形などに基づき、仮想カメラの好適な位置や姿勢(視点の位置や視線の方向)を制御用情報として生成してもよい。なお制御用情報は、プレイヤ画像と独立した実況画像の生成に用いるのに限らず、実況画像として利用するプレイヤ用画像の選択に利用してもよい。すなわち本実施の形態の実況画像は、プレイヤ用画像と独立に生成した画像であってもよいし、いずれかのプレイヤ用画像であってもよい。あるいはそれらを切り替えて表示してもよい。
【0030】
上述のとおり実況画像表示支援装置10は、制御用情報に基づき自らが実況画像を生成したり画面を切り替えたりしてもよいし、最終的な操作は実況画像管理者に行わせるようにしてもよい。後者の場合、実況画像表示支援装置10は、制御用情報を管理者用ディスプレイ20に表示することにより、実況画像管理者による作業を支援する。いずれにしろ実況画像表示支援装置10が、実況画像の制御に有用なゲームパラメータをリアルタイムで収集することにより、格段に少ない労力で適切な実況画像を容易に表示できる。
【0031】
図3は、実況画像表示支援装置10の内部回路構成を示している。実況画像表示支援装置10は、CPU(Central Processing Unit)30、GPU(Graphics Processing Unit)32、メインメモリ34を含む。これらの各部は、バス36を介して相互に接続されている。バス36にはさらに入出力インターフェース38が接続されている。入出力インターフェース38には、USBやIEEE1394などの周辺機器インターフェースや、有線又は無線LANのネットワークインターフェースからなり、ゲームサーバ12や端末24と通信を確立する通信部40、ハードディスクドライブや不揮発性メモリなどの記憶部42、観戦者用ディスプレイ8や管理者用ディスプレイ20へデータを出力する出力部44、入力装置18からデータを入力する入力部46、磁気ディスク、光ディスクまたは半導体メモリなどのリムーバブル記録媒体を駆動する記録媒体駆動部48が接続される。
【0032】
CPU30は、記憶部42に記憶されているオペレーティングシステムを実行することにより実況画像表示支援装置10の全体を制御する。CPU30はまた、リムーバブル記録媒体から読み出されてメインメモリ34にロードされた、あるいは通信部40を介してダウンロードされた各種プログラムを実行する。GPU32は、ジオメトリエンジンの機能とレンダリングプロセッサの機能とを有し、CPU30からの描画命令に従って描画処理を行い、出力部44に出力する。メインメモリ34はRAM(Random Access Memory)により構成され、処理に必要なプログラムやデータを記憶する。なおゲームサーバ12、プレイヤ用デバイス13、端末24も同様の回路構成としてよい。
【0033】
図4は、ゲームサーバ12と実況画像表示支援装置10の機能ブロックの構成を示している。同図に示す各機能ブロックは、ハードウェア的には
図3で示したCPU30、GPU32、メインメモリ34などで実現でき、ソフトウェア的には、記録媒体からメモリにロードした、情報処理機能、画像描画機能、データ入出力機能、通信機能などの諸機能を発揮するプログラムで実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。
【0034】
ゲームサーバ12は、各プレイヤ用デバイス13とゲーム上のデータをやりとりするゲームデータ送受信部50、ゲームを処理するゲーム処理部52、ゲーム上のデータを記憶するゲームデータ記憶部54、および、ゲームパラメータを実況画像表示支援装置10に送信するパラメータ送信部56を含む。
【0035】
ゲームデータ送受信部50は、各プレイヤによる操作内容や、プレイヤ用デバイス13におけるローカルでのゲーム処理の結果として生成された各種データを即時受信する。ゲームデータ送受信部50はまた、ゲーム処理部52による処理の結果として生成された各種データを、プレイヤ用デバイス13に即時送信する。当該データは例えば、全プレイヤによる操作内容をゲーム世界に反映させたものである。プレイヤ用デバイス13は、当該データを用い、ローカルでのゲーム処理に反映させる。
【0036】
ゲーム処理部52は、プレイヤ用デバイス13から送信された操作内容などのデータに基づきゲームを進捗させる。すなわち全てのプレイヤによる操作を反映させた、統一されたゲーム世界を形成していく。ゲーム処理部52は、その結果をゲームデータ送受信部50に供給するとともに、プレイヤ用デバイス13から送信されたデータを含め、ゲームデータ記憶部54に順次格納していく。
【0037】
パラメータ送信部56は、ゲームデータ記憶部54に格納されたゲームデータのうち所定のものを、本実施の形態のゲームパラメータとして読み出し、実況画像表示支援装置10に送信する。例えばパラメータ送信部56は、次のような情報の少なくともいずれかを取得、送信する。
戦況:スコア、倒した敵の数(キル数)、保有する武器など
場所:仮想世界でのキャラクタの位置
動作:キャラクタの動作の種類や他のキャラクタとのインタラクションの種類(戦闘など)
【0038】
なおプレイヤ用画像として自分のキャラクタを表さず、プレイヤの視野を表示させるFPS(First Person Shooting)の場合、上述した「キャラクタ」を「プレイヤ」と読み替えればよい。以後の説明でも同様である。ただし本実施の形態を適用できるゲームの種類は特に限定されず、ゲームの内容に応じて上記以外の情報も収集できることは、当業者には理解されるところである。
【0039】
パラメータ送信部56は、所定の時間間隔で状況情報を送信してもよいし、変化があったときに随時、その変化分の情報を送信してもよい。送信のタイミングはゲームパラメータの種類によって様々であってよい。なおパラメータ送信部56は実際には、ゲーム処理部52が実行しているゲームソフトウェアのAPI(Application Programming Interface)を呼び出すことにより実現してもよい。
【0040】
実況画像表示支援装置10は、ゲームパラメータを取得するデータ取得部58、制御用情報を生成する制御用情報生成部60、実況画像を取得する実況画像取得部62、および実況画像のデータを観戦者用ディスプレイ8などに出力するデータ出力部64を含む。データ取得部58は、ゲームサーバ12から送信されるゲームパラメータを随時取得する。なお実況画像としてプレイヤ用画像を利用する場合、データ取得部58は、対応するプレイヤ用デバイス13からプレイヤ用画像のフレームデータを取得してよい。
【0041】
この際、データ取得部58は実況画像取得部62から、表示対象のプレイヤ用画像やキャラクタなどの指定を受け、対応するプレイヤ用デバイス13を識別したうえ、当該プレイヤ用デバイス13にプレイヤ用画像の送信を要求する。制御用情報生成部60は、データ取得部58からゲームパラメータを取得し、それを集約することにより制御用情報を生成する。ここで制御用情報生成部60は、所定のレート、またはゲームパラメータに変化が生じたときなどに随時、制御用情報を更新する。
【0042】
制御用情報は例えば、実況画像として表示するのに好適なキャラクタ、場所、場面の少なくともいずれかを示す情報、または、それらの少なくともいずれかの、表示における優先順位を示す情報などである。例えば制御用情報生成部60は、各カテゴリに次のような観点で点数をつけ、総合点が高い順にソーティングすることで優先順位とする。
キャラクタ:スコア、キル数、保有する武器の数や重要度、動作の大きさ
場所:クラスタを形成しているか否か、クラスタの規模
場面:戦闘中か否かなど場面の重要度
【0043】
例えば、強いキャラクタほど、規模が大きいクラスタほど、重要度の高い場面ほど、優先順位が高くなるような点数の付与規則をあらかじめ設定し、制御用情報生成部60の内部に格納しておく。なお制御用情報生成部60は、上記の観点を複数組み合わせ、表示対象として順位づけを行ってもよい。例えば同じ規模のクラスタが形成されている複数の場所がある場合、スコアが高いキャラクタがいる方の優先順位を高くする。スコアが同位のキャラクタが複数いる場合、戦闘中のキャラクタの優先順位を高くする。このように多角的な観点で表示における重要性を評価することにより、高い精度で容易に好適な場面を表示できる。
【0044】
制御用情報生成部60はまた、仮想カメラの好適な位置や姿勢の情報を制御用情報として生成してもよい。例えばクラスタが形成されている場所を表示対象とする場合、制御用情報生成部60は、当該クラスタ全体が視野に収まるような仮想カメラの位置や姿勢を取得してもよい。これにより、観戦者は当該クラスタの全体像を把握しやすくなる。ただしこの場合、クラスタの範囲が広すぎると、各キャラクタの像が小さくなり動きが見づらくなったり、実況画像が迫力に欠けたりすることが考えられる。
【0045】
そこで制御用情報生成部60は、所定の規則に従い視野を限定してもよい。この場合も、上述したような観点でクラスタ内の領域に優先順位をつけることにより、視野に含める対象を取捨選択してよい。また制御用情報生成部60は、ゲームパラメータ以外の情報を利用して制御用情報を生成してもよい。例えば制御用情報生成部60は仮想世界の3次元構造を、表示対象の優先順位づけや仮想カメラの位置、姿勢の決定に利用してもよい。
【0046】
ここで仮想世界の3次元構造とは、地面の傾斜角度や高さ、建造物の配置や高さなどである。例えばクラスタを形成しているキャラクタが山の斜面や断崖に分布している場合、スクリーンが斜面や断崖に正対するような仮想カメラの姿勢を導出することにより、キャラクタがいる位置の上下関係を一見して把握できるようになる。また地面の傾斜と仮想カメラの姿勢の関係に依存して見えづらくなる領域については、クラスタの範囲であっても視野から除外することにより、上述した視野の限定を適切に実現できる。
【0047】
制御用情報生成部60は、最適な表示対象の決定あるいは優先順位づけと、仮想カメラの好適な位置や姿勢の導出のどちらか一方を実施してもよいし、双方を実施してもよい。例えばゲームの性質上、表示対象が固定とされている場合であっても、制御用情報生成部60の機能により好適なアングルで実況画像を表すことができる。あるいは実況画像にプレイヤ用画像を利用する場合であっても、最適な表示対象が写る画像を容易に選択できる。当然、制御用情報生成部60が、最適な表示対象を定めたうえで、それに対する仮想カメラの好適な位置や姿勢を決定してもよい。
【0048】
実況画像取得部62は、制御用情報に基づき実況画像を取得する。例えば実況画像取得部62は、制御用情報に従い仮想カメラの位置や姿勢を設定したうえ、ゲームの仮想世界を描画することにより実況画像を生成する。あるいは実況画像取得部62は、制御用情報が示す好適な表示対象や優先順位に基づき、実況画像として利用するプレイヤ用画像を選択する。この場合、実況画像取得部62は、決定した表示対象が写るプレイヤ用画像をデータ取得部58に要求し、対応するプレイヤ用デバイス13から送信されたプレイヤ用画像を取得する。
【0049】
実況画像取得部62は、自らが実況画像を生成し続けてもよいし、選択したプレイヤ用画像を取得し続けてもよい。後者の場合、制御用情報に基づき、取得対象のプレイヤ用画像を適宜切り替えてもよい。あるいは実況画像取得部62は、実況画像として、自らが生成した画像とプレイヤ用画像を切り替えてもよい。なお上述のとおり実況画像取得部62は、実況画像管理者による仮想カメラの制御や画面の切り替え操作を、入力装置18を介して受け付け、それに従い実況画像を生成したりプレイヤ用画像を取得したりしてもよい。
【0050】
いずれの態様においても、実況画像取得部62は、プレイヤ用ディスプレイ16には表示されない各種情報を、実況画像に重畳表示させてもよい。例えば実況画像取得部62は、実況画像中の各キャラクタがどのプレイヤに対応するかを文字や図形で表したり、各キャラクタのスコア、ヒットポイント、保有する武器などの一覧、暫定ランキングなどを示したりしてよい。これにより観戦者は、実況画像が表す場面やゲームの状況を理解しやすくなる。
【0051】
データ出力部64は、実況画像取得部62が取得した実況画像のフレームデータを順次出力することにより、観戦者用ディスプレイ8、端末24、および管理者用ディスプレイ20に表示させる。実況画像管理者が実況画像の視野制御や切り替え操作を行う態様においては、データ出力部64はさらに、制御用情報を管理者用ディスプレイ20に表示させる。例えばデータ出力部64は、表示対象の優先順位や、好適な仮想カメラの位置や姿勢などの情報を、文字や図で表す。あるいはデータ出力部64は、表示中の実況画像において、次に中心に据え置くべきキャラクタを強調表示するよう加工してもよい。
【0052】
次に、以上の構成により実現できるゲームシステムの動作について説明する。
図5は、本実施の形態において実況画像を制御する処理手順とデータの変遷を示している。ここでプレイヤ用デバイス13とゲームサーバ12は協働により、プレイヤの操作に応じたゲーム処理を継続しているとする。この過程において、ゲームサーバ12のゲームデータ記憶部54には、本実施の形態のゲームパラメータを含む各種ゲームデータが格納され続ける(S10)。
【0053】
ゲームサーバ12のパラメータ送信部56は、例えばゲームソフトウェアが提供するAPIにより、ゲームデータ記憶部54から所定のゲームパラメータを抽出する(S12)。図示する例では、ゲームパラメータとして、各キャラクタ(プレイヤ)のスコアと位置が抽出される。この例ではさらに、仮想世界の3次元構造を表すデータもAPIによって提供される。それらのデータは、パラメータ送信部56から実況画像表示支援装置10に送信される。なお仮想世界の3次元構造を表すデータは、実況画像表示支援装置10が事前に取得しておいてもよい。
【0054】
実況画像表示支援装置10の制御用情報生成部60は、送信されたゲームパラメータや3次元構造のデータを用いて制御用情報を生成する。この例ではまず、それらのデータから直接得られる中間情報を生成したうえ(S14)、仮想カメラの位置、姿勢を導出している(S16)。具体的には、スコアを単純ソーティングすることにより、キャラクタに表示の優先順位をつける(S14a)。またキャラクタの位置情報に基づきクラスタリングを行い、表示対象候補の領域を抽出する(S14b)。
【0055】
これらの情報を総合評価することにより、例えば最強のキャラクタが属するクラスタが形成されている場所など、最適な表示対象を導出できる。そのような表示対象、ひいては仮想カメラのおよその位置が決定したら、制御用情報生成部60はさらに、当該場所の3次元構造のデータを用いて地形などの法線を計算し、仮想カメラの好適な姿勢を導出する(S14c)。制御用情報生成部60はこの際、3次元構造を踏まえて好適な視野となるよう仮想カメラの位置を調整してもよい。
【0056】
以上の処理により導出された仮想カメラの位置や姿勢に従い、実況画像取得部62は対応する視野でゲーム世界を描画するなどして実況画像を取得し、観戦者用ディスプレイ8などに出力する(S18)。図示する処理を所定の頻度、または必要に応じて繰り返すことにより、ゲームの状況の変化に対応するように、好適な実況画像を表示させ続けることができる。ただし図示する手順や用いるデータは一例であり、本実施の形態を限定するものではない。
【0057】
図6は、クラスタリングにより仮想カメラの好適な位置を決定する例を説明するための図である。(a)は、仮想世界におけるキャラクタの分布を示している。制御用情報生成部60は、同図に矩形で示す各キャラクタの位置座標に基づき、k-means法など一般的なアルゴリズムによりクラスタリングを行う。図示する例では、3つのクラスタ70a、70b、70cが検出されている。このように複数のクラスタが形成されている場合、制御用情報生成部60は所定の規則により、そのうち1つのクラスタを表示対象として選択する。
【0058】
例えば制御用情報生成部60は、スコアやキル数が最高のキャラクタが属するクラスタ、あるいは、属するキャラクタのスコアやキル数の合計や平均値が最高のクラスタを選択する。スコアやキル数のほか、動きの大きさや動作の種類など、クラスタの選択に用いるゲームパラメータは特に限定されない。例えば上述同様、複数の観点でクラスタに点数を与え、最高点のクラスタを選択してもよい。この際、プレイヤ用ディスプレイ16には示されない(プレイヤには知らされない)ような各種パラメータを加味してもよい。
【0059】
例えば事前に、プレイヤの属性や契約などに応じた表示の優先順位をキャラクタに設定しておき、当該優先順位をクラスタの点数に反映させてもよい。あるいは点数による比較を行わず、所定の条件を満たしたクラスタは即時選択されるようにしてもよい。例えば、表示させ続けることが事前に決まっているキャラクタや、ゲーム内で重要な所定のオブジェクトを保持しているキャラクタが属するクラスタは、他のクラスタとの比較なしに選択するようにしてもよい。
【0060】
また、クラスタの面積や属するキャラクタの人数に上限や下限を設け、それらを逸脱するクラスタは選択肢から除外したり優先順位を下げたりしてもよい。これにより、例えば面積が広すぎて個々のキャラクタが見づらくなるクラスタや、人数が少なくシーンの盛り上がりに欠けそうなクラスタを、なるべく表示させないようにできる。以上のような選択処理を経て、1つのクラスタ70bを選択したら、制御用情報生成部60は、当該クラスタ70bの位置および面積に応じて仮想カメラの好適な位置を導出する。
【0061】
例えば制御用情報生成部60は、仮想カメラの光軸がクラスタ70bの重心に一致するように位置合わせする。またクラスタ70bの直径が画面の短手方向のサイズの90%など、所定割合を占めるように、地面に対する仮想カメラの高さを決定する。図の(b)は、そのように仮想カメラを設定することにより、実況画像取得部62が取得する実況画像を模式的に示している。この例は、屋外の駐車場などにキャラクタが分散している様子を示している。ここで仮想カメラの姿勢は、水平面である地面に対し撮像面(ビュースクリーン)を正対させた状態としている。
【0062】
なお仮想カメラの位置や姿勢は、そのまま固定とするのに限らず、その状態を中心として所定の範囲内で時間変化させることにより映像に躍動感を与えてもよい。当該操作は、実況画像取得部62があらかじめ設定された規則に従い自動で行ってもよいし、実況画像管理者が手動で行ってもよい。また上述のとおり実況画像取得部62は、キャラクタに対応するプレイヤの名前、チームの識別、スコアの一覧などの付加情報を実況画像に重畳表示させてよい。図示するような実況画像により、観戦者は、キャラクタが集まって戦っている様子などを、見やすい倍率で全体的に見渡すことができる。
【0063】
図7は、仮想世界の3次元構造を考慮して仮想カメラの姿勢を決定する例を説明するための図である。(a)、(b)の上段は、仮想世界における地面の高さを図の縦方向に表している。この例では、仮想世界の山80の斜面に、矩形で表したキャラクタ(例えばキャラクタ82)がクラスタを形成している様子を示している。
図6で説明したように当該クラスタを検出し、(a)の上段に示すように仮想カメラ84aを垂直下向きに設定すると、その下段に示すような実況画像86aが生成される。
【0064】
この場合、キャラクタ同士の距離が傾斜に応じて縮小され、実際の位置関係が把握しづらくなる。山80の傾斜が急になり断崖に近づくほど、実況画像におけるキャラクタが重なり合い、さらに見づらくなる。そこで制御用情報生成部60は、表示対象の仮想世界の3次元構造に基づき仮想カメラの姿勢を調整する。具体的には(b)の上段に示すように、表示対象の地面の法線ベクトルnを取得し、光軸oが法線ベクトルnと一致するような仮想カメラ84bの姿勢を導出する。
【0065】
ここで法線ベクトルnは、例えば実況画像の中心に表される地点について求めればよく、
図6のようにクラスタを表示対象とする場合、クラスタの重心がこれに対応する。この場合、
図6と同様、クラスタ全体が画角に入るように仮想カメラ84bの高さを調整する。このようにすると、(b)の下段に示すように、キャラクタ同士の実際の距離を表した実況画像86bを表示できる。この場合も仮想カメラの位置や姿勢を所定の範囲内で時間変化させることにより、キャラクタと斜面の関係をよりわかりやすくしてもよい。
【0066】
図8は、仮想世界の3次元構造を考慮して仮想カメラの位置および姿勢を決定する例を説明するための図である。上段は、仮想世界における地面の高さを図の縦方向に表している。この例も仮想世界の山90の斜面に、矩形で表したキャラクタがクラスタを形成している様子を示している。ただしこの場合、キャラクタ(例えばキャラクタ92a、92b)は、山90の片側の斜面のみならず、頂上Aを越えた反対側の斜面にも分布している。
図6で説明したように当該クラスタを検出し、垂直下向きに仮想カメラ94aを設定すると、下段の(a)に示すような実況画像が生成される。
【0067】
図7で説明したように、クラスタの重心における法線ベクトルnを基準に仮想カメラの姿勢を導出してもおよそ同様の結果となる。その結果、
図7のケースと同様、キャラクタ同士の距離が縮小され、実際の位置関係が把握しづらくなる。またこの場合、頂上Aの位置がわからなければ、キャラクタの上下の位置関係も把握しづらい。そこで制御用情報生成部60は、例えば図の矢印のように、クラスタ内またはそれを含む表示範囲において、所定の間隔で地面の法線ベクトルを取得する。
【0068】
そしてそれらの角度の関係に基づき、クラスタのうち表示対象とする範囲を限定する。例えば制御用情報生成部60は、法線ベクトルの角度の範囲によってクラスタを領域分割する。そして、そのうち最も大きい領域の重心における法線ベクトル(例えば法線ベクトルn’)に対し、90°など所定値以上の角度をなす法線ベクトルを有する領域を表示対象から除外する。法線ベクトル同士の角度は内積などにより算出できる。図の例では、頂上Aを境に逆側の斜面の領域が、法線ベクトルn’’を根拠に除外される。
【0069】
そして残りのキャラクタ(例えばキャラクタ92a)で形成される新たなクラスタに対し、
図7で説明したように仮想カメラ94bの位置や姿勢を導出する。すなわち仮想カメラ94bの光軸oを、新たなクラスタの重心における法線ベクトル(例えば法線ベクトルn’)と一致させたうえ、当該クラスタ全体が画角に入るように仮想カメラ94bの高さを調整する。このようにすると、(b)に示すように、キャラクタ同士の実際の距離や上下関係を表した実況画像を表示できる。
【0070】
また、仮想カメラ94bから見えない領域が表示対象のクラスタから除外されているため、残りのキャラクタのみを高い倍率で表示させることができる。なお図では仮想世界の山を例示したが、建造物や海の底などでも同様に、仮想カメラの好適な位置や姿勢を導出できる。またこの説明では、制御用情報生成部60は、クラスタを検出した場所に対し、その場で法線ベクトルを求め、傾斜を考慮した制御用情報を生成した。一方、制御用情報生成部60は、事前に仮想世界の全ての領域について法線ベクトルの分布を取得するなどして、地面の傾斜角度の範囲で領域分割を行っておいてもよい。
【0071】
例えば制御用情報生成部60は、仮想世界の3次元モデルを用い、平野、山、谷、建物など3次元構造の種類によって、領域にタグを付与した地形マップを準備してもよい。この場合、図示する山90のように、ある斜面に正対するように仮想カメラを設定した場合に写らなくなるような角度を有する斜面が隣接している地形では、最初からそれらの境界を跨がない条件でクラスタリングを行ってもよい。
【0072】
図9は、制御用情報生成部60による地形マップの生成手法を説明するための図である。まず制御用情報生成部60は、所定の間隔で取得した法線ベクトルの分布を用い、その角度範囲に基づき仮想世界を領域分割する。例えば所定間隔の法線ベクトルの内積が、正の所定値以上の状態が続く領域は、平野あるいはなだらかな斜面と判定する。それ以外の領域は、山または谷であるため、制御用情報生成部60はそのいずれであるかを図の(a)に示すように判別する。
【0073】
すなわち内積が所定値以下、ひいては急激な角度変化を有する2面100、102に着目し、それらの面の重心の中点104から各面100、102の重心へ向かうベクトルh、h’を設定する。そして当該ベクトルh、h’と、それらの到達点における面100、102の法線ベクトルN、N’との内積をそれぞれ算出する。内積が正の場合、(a)の左側に示すように、面100、102は山を形成していると判定する。内積が負の場合、(a)の右側に示すように、面100、102は谷を形成していると判定する。
【0074】
ベクトルh、h’の方位を変化させれば、方位による山や谷の変化も取得できる。このような計算により、制御用情報生成部60は、図の(b)に示す地形マップのように、仮想世界の場所に対し「平野」、「山」、「谷」といったタグを付与できる。ただし上記計算手法は一例であり、仮想世界の3次元モデルを用い、3次元構造の種類を特定する手法として様々に考えられることは当業者には理解されるところである。
【0075】
いずれにしろ制御用情報生成部60は、事前に地形マップを取得しておくことで、制御用情報を効率的に生成できる。例えば上述のとおり、山の頂上や尾根を跨がないようにクラスタリングを行える。また地形の種類によって、仮想カメラの位置や姿勢の決定ポリシーを切り替えることもできる。例えば
図7、8で示したように、山に形成されたクラスタであれば片側の斜面に正対するような仮想カメラの姿勢とする一方、谷に形成されたクラスタであれば、両斜面が写るような水平方向を向く姿勢としてもよい。
【0076】
図10は、実況画像管理者が実況画像を制御する態様において、実況画像表示支援装置10が管理者用ディスプレイ20に表示させる管理者用の画面を例示している。この例では、表示対象をキャラクタ単位で設定することを想定している。この場合、表示対象のキャラクタに対応するプレイヤ用画像を実況画像に利用することが考えられる。ただしそれに限る主旨ではない。
【0077】
図の(a)、(b)に示す例はいずれも、表示中の実況画像をベースとした管理者用画像を示している。すなわちこの時点での表示対象はキャラクタ110であり、実況画像には、その後ろ姿が中央下寄りに据え置かれ、周囲の仮想世界が所定の画角で表されている。ここで例えば、キャラクタ110のHPが所定値を下回るなどした場合、表示対象を別のキャラクタに変更することが考えられる。制御用情報生成部60はHPに限らず、上述したようなゲームパラメータによりキャラクタに与えた表示の優先順位を更新しつづけ、最高位のキャラクタが入れ替わったら表示対象の変更を勧告してよい。
【0078】
なお制御用情報生成部60は、表示対象を変更する時間の間隔に下限を設けることにより、あまりに頻繁に表示対象が入れ替わらないようにしてもよい。表示対象をキャラクタ112に変更する条件が満たされたら、制御用情報生成部60は、(a)に示すように当該キャラクタ112を強調表示することで、実況画像管理者にその旨を勧告する。この例では、キャラクタ112を指示する矢印114を重畳表示している。
【0079】
矢印114により、表示対象をキャラクタ112に変更するのが望ましいことを認識した実況画像管理者は、例えば入力装置18を介して表示対象の変更を確定させる入力を行う。すると実況画像取得部62は、当該キャラクタ112を中央下寄りに据え置いた実況画像の取得を開始する。当該画像は、キャラクタ112を操作しているプレイヤのプレイヤ用画像でもよいし、実況画像取得部62が仮想カメラをキャラクタ112に寄せて別途生成した画像でもよい。
【0080】
これらの処理により、実況画像においてメインで表示されるキャラクタが、キャラクタ110からキャラクタ112に切り替えられる。なお管理者用の画面において次の表示対象候補を示す手段は矢印114に限らない。例えば、キャラクタの輪郭を別の色で表したり、シルエット全体に所定色のマスクをかけたりしてもよい。
【0081】
一方、制御用情報生成部60は、次の表示対象を明示せず、実況画像管理者が最終的に判断するための参考となる情報を表示させてもよい。例えば(b)に示すように、候補となるキャラクタ112、116のゲームパラメータのうち、表示対象にできる根拠となるゲームパラメータを表示させる。この例では、HPを表すゲージ118a、118bと、保有している武器を示すアイコン(例えばアイコン120a、120b)を、各キャラクタ112、116の近傍に表している。
【0082】
このうちキャラクタ112を選択する根拠となるのは、100%近いHPにあるため、そのゲージ118aを太線で囲んで強調している。一方、キャラクタ116を選択する根拠となるのは、保有している武器にあるため、そのアイコン120bを太線で囲んで強調している。実況画像管理者は、どちらの根拠を有効とするかを自分で判断し、図示しないカーソルなどで一方のキャラクタを選択することにより、次の表示対象の確定入力を行う。その後の実況画像取得部62の処理は(a)のケースと同様である。
【0083】
なおこの場合も、管理者が容易に認識できる限り、ゲージや武器などのゲームパラメータの強調のさせ方は特に限定されない。また、武器が希少価値である度合い、HP、対応するプレイヤの過去の戦績など、定量的な比較が可能なゲームパラメータを利用する場合、カテゴリごとにソートした結果を一覧で示したり、キャラクタの近傍に順位を示したりして、管理者に優先順位がわかるようにしてもよい。また実況画像に含まれない、別の場所にいるキャラクタやクラスタを次の表示対象の候補とする場合は、別途、仮想世界を俯瞰した画像や地図を表示させることにより、それらを選択できるようにしてもよい。
【0084】
なお実況画像管理者に提示する情報は図示するものに限らず、制御用情報のいずれであってもよい。例えば制御用情報生成部60は、仮想カメラの好適な位置姿勢の情報や、その優先順位を表示させ、管理者がそのいずれかを選択できるようにしてもよい。この際、仮想カメラの位置や姿勢の微修正を実況画像管理者からさらに受け付けてもよい。あるいは制御用情報生成部60は、表示中でない場所で戦闘が開始された旨を実況画像管理者に通知し、表示対象の切り替えを受け付けてもよい。そのうえで、当該場所に対する仮想カメラの状態や、メインで表示させるキャラクタの選択など、詳細な指定を実況画像管理者からさらに受け付けてもよい。
【0085】
以上述べた本実施の形態によれば、eスポーツなどの電子ゲームにおいて、ゲーム処理の過程で取得されるデータのうち所定のゲームパラメータを抽出し、それを用いて実況画像の好適な視野に係る制御用情報を生成する。これにより、ゲームの進捗に合わせて実況画像を生成したりプレイヤ用画像から選択したりする作業が容易になる。結果として、スタッフの技量や人数を問わず好適な実況画像を表示でき、盛り上がりのあるイベントを低コストで実現できる。
【0086】
実況画像の表示対象として個々のキャラクタのほか、キャラクタのクラスタも候補とする。これにより、チームでの戦闘など規模の大きい場面の全体をわかりやすく伝えることができる。一方、所定の規則により表示対象を絞り込んだり、仮想世界の3次元構造を加味して仮想カメラの位置や姿勢を調整したりすることにより、ゲーム上で重要な部分を効率的かつ見やすく表すことができる。実況画像の制御用情報として仮想カメラの好適な位置や姿勢まで導出することにより、実況画像の制御を人手で行うのに限らず、完全に自動化することも可能であり、イベントの規模や資金、ゲームの内容、装置の処理能力などによって実施形態を臨機応変に設定できる。
【0087】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。上記実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上のように本発明は、実況画像表示装置、ゲームサーバ、パーソナルコンピュータなど各種情報処理装置と、それを含むゲームシステムなどに利用可能である。
【符号の説明】
【0089】
8 観戦者用ディスプレイ、 10 実況画像表示支援装置、 12 ゲームサーバ、 13 プレイヤ用デバイス、 14 入力装置、 16 プレイヤ用ディスプレイ、 18 入力装置、 20 管理者用ディスプレイ、 22 ネットワーク、 24 端末、 30 CPU、 32 GPU、 34 メインメモリ、 40 通信部、 42 記憶部、 44 出力部、 46 入力部、 48 記録媒体駆動部、 50 ゲームデータ送受信部、 52 ゲーム処理部、 54 ゲームデータ記憶部、 56 パラメータ送信部、 58 データ取得部、 60 制御用情報生成部、 62 実況画像取得部、 64 データ出力部。