(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】溶接治具及び挟持方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/70 20140101AFI20240820BHJP
B29C 65/16 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B23K26/70
B29C65/16
(21)【出願番号】P 2022574252
(86)(22)【出願日】2022-06-17
(86)【国際出願番号】 CN2022099291
(87)【国際公開番号】W WO2023134118
(87)【国際公開日】2023-07-20
【審査請求日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】202210040324.2
(32)【優先日】2022-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522468364
【氏名又は名称】日銘電脳配件(上海)有限公司
【氏名又は名称原語表記】RI MING COMPUTER ACCESSORY(SHANGHAI) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 88, Tinghua Road, Tinglin Town, Jinshan District, Shanghai 201505 China
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】馮 程
(72)【発明者】
【氏名】潘 氷
(72)【発明者】
【氏名】劉 強
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第206717300(CN,U)
【文献】中国実用新案第215239491(CN,U)
【文献】中国実用新案第212398619(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第110842382(CN,A)
【文献】特開平05-161994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/70
B29C 65/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース(1)とベース(1)上に取り付けられる部品位置固定金型(10)を含む溶接治具であって、前記溶接治具は、上部加圧板(2)、溶接回避槽(20)及び側方向加圧構造(3)を更に含み、
前記上部加圧板(2)は
、前記ベース(1)に加圧方向または昇降方向にスライドするように連結され、
かつ前記部品位置固定金型(10)に搭載された部品の上面
に押圧力を与え、
前記溶接回避槽(20)は
、前記上部加圧板(2)上に形成され、か
つ所定の部品位置固定金型(10)の上方に位置し、
前記側方向加圧構造(3)は
、前記ベース(1)上に取り付けられ、
かつ前記部品の側方向加圧と側方向加圧の取消しを担当
し、
前記側方向加圧構造(3)は、X軸方向とY軸方向の加圧をする多方向の側方向加圧構造であることを特徴とする溶接治具。
【請求項2】
前記側方向加圧構造(3)は側方向自動加圧スライディングブロック(30)と側方向加圧制御モジュール(32)を含み、
前記側方向自動加圧スライディングブロック(30)の数量は8つであり、
8つの側方向自動加圧スライディングブロック(30)は2つが一組を組み、各組の2つの側方向自動加圧スライディングブロック(30)は横方向弾性部品(31)により側方向加圧方向にスライドするようにベース(1)に連結され、横方向弾性部品(31)の弾力により各組の側方向自動加圧スライディングブロック(30)は相反の方向に移動するとともに部品を側方向に押し、
前記側方向加圧制御モジュール(32)は、各組の2つの側方向自動加圧スライディングブロック(30)が接近の方向に移動するように駆動することにより、側方向自動加圧スライディングブロック(30)が部品に当接することを取り消すことを特徴とする請求項1に記載の溶接治具。
【請求項3】
前記側方向加圧制御モジュール(32)は十字昇降板(320)を含み、
前記十字昇降板(320)の中心は加圧方向に取り付けられた縦方向弾性モジュールによりベース(1)に弾性状態に連結され、
前記十字昇降板(320)は4つの端部を具備し、各端部は各組の2つの側方向自動加圧スライディングブロック(30)にそれぞれ対応し、端部と側方向自動加圧スライディングブロック(30)との間にはウエッジ結合構造が形成され、十字昇降板(320)が下降するとき、ウエッジ結合構造の作用により各組の2つの側方向自動加圧スライディングブロック(30)は接近の方向に移動することを特徴とする請求項
2に記載の溶接治具。
【請求項4】
前記ウエッジ結合構造はウエッジ型槽(300)を含み、
前記ウエッジ型槽(300)は各側方向自動加圧スライディングブロック(30)に形成され、
各端部の長手方向の両側には八字に配置される傾斜部(322)がそれぞれ形成され、各端部上の2つの傾斜部(322)が所定のウエッジ型槽(300)に挿入されることにより各組の2つの側方向自動加圧スライディングブロック(30)は接近の方向に移動することを特徴とする請求項
3に記載の溶接治具。
【請求項5】
前記側方向加圧制御モジュール(32)は、回避孔(323)、制御取っ手(324)、側方向加圧平面(325)及び側方向加圧取消し円弧面(326)を含み、
前記回避孔(323)は十字昇降板(320)の中央に形成され、
前記制御取っ手(324)は回避孔(323)のヒンジ構造を通過した後ベース(1)に結合され、かつ制御取っ手(324)は十字昇降板(320)の上表面に結合され、
前記側方向加圧平面(325)は制御取っ手(324)上に形成され、側方向加圧平面(325)と十字昇降板(320)の上表面が同一の平面になるとき、前記縦方向弾性モジュールは十字昇降板(320)が上部の位置に復位するように駆動し、横方向弾性部品(31)は側方向自動加圧スライディングブロック(30)が部品を側方向に押すように駆動し、
前記側方向加圧取消し円弧面(326)は制御取っ手(324)上に形成され、制御取っ手(324)を回転させることにより側方向加圧取消し円弧面(326)が十字昇降板(320)の上表面に当接するとき、ウエッジ結合構造の作用により横方向弾性部品(31)は圧縮されかつ部品を側方向に押すことがなくなることを特徴とする請求項
3に記載の溶接治具。
【請求項6】
前記ベース(1)には各端部の下部に位置するウエッジ位置決め部(33)が形成され、ウエッジ位置決め部(33)は各端部上の2つの傾斜部(322)が過度に下降することを防止することを特徴とする請求項
4に記載の溶接治具。
【請求項7】
前記上部加圧板(2)の下表面には十字案内槽(21)が形成され、前記十字昇降板(320)は前記十字案内槽(21)内に位置し、上部加圧板(2)の中心区域には取っ手回避貫通孔(22)が形成され、前記制御取っ手(324)は取っ手回避貫通孔(22)を貫通することを特徴とする請求項
5に記載の溶接治具。
【請求項8】
前記縦方向弾性モジュール(321)は2組
があり、2組の縦方向弾性モジュール(321)はX軸またはY軸に配列されることを特徴とする請求項
3に記載の溶接治具。
【請求項9】
上部加圧板(2)の対角線の2つの隅部とベース(1)との間には縦方向案内構造(4)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の溶接治具。
【請求項10】
ベース(1)上には上部加圧板(2)の長手方向の両端に位置する2つのロック制御部(5)が回転可能(ヒンジ状態)に取り付けられ、2つのロック制御部(5)は上部加圧板(2)の長手方向の両端に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の溶接治具。
【請求項11】
請求項1に記載の溶接治具を採用する溶接挟持方法であって、前記溶接挟持方法は、
部品を部品位置固定金型(10)に搭載するステップS1と、
上部加圧板(2)を下へ移動させることにより部品の上部を押し、
前記側方向加圧構造(3)
で部品を側方向に押すステップS2とを含
み、
前記側方向加圧構造(3)で部品を側方向に押すステップS2は、
制御取っ手(324)を回転させることにより、制御取っ手(324)の側方向加圧平面(325)と十字昇降板(320)の上表面が同一の平面になるとき、縦方向弾性モジュール(321)は十字昇降板(320)が上部の位置に復位するように駆動し、横方向弾性部品(31)は側方向自動加圧スライディングブロック(30)が部品を側方向に押すように駆動するステップS20と、
制御取っ手(324)を回転させることにより制御取っ手(324)の側方向加圧取消し円弧面(326)が十字昇降板(320)の上表面に当接するとき、ウエッジ結合構造の作用により横方向弾性部品(31)は圧縮されかつ部品を側方向に押すことがなくなるステップS21とを含むことを特徴とする溶接挟持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の部品を溶接するレーザ溶接の技術分野に属し、特に、溶接治具及び挟持方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、3C産業の迅速な発展に伴い、多数の装置のサイズはだんだん小さくなり、その装置を構成する部品のサイズもだんだん小さくなっている。各部品を組み立てるとき、レーザ溶接装置を多く使用する。レーザ溶接装置は、溶接装置本体、溶接治具及び溶接製品を含む。
【0003】
溶接作業をするとき、組み立てられた装置の各機能の安定性、位置の正確度を確保するため、組み立てられる各部品の間の位置を正確に制御し、溶接された製品と製品との間の隙間を正確に制御する必要がある。
【0004】
従来の組み立て方法において、2つの部品の位置を決めた後それらを一体に組み立てる。その組み立て方法により、誤差の累計が増加し、溶接された製品のサイズの変化が大きくなり、部品の間の隙間を有効に制御することができない。したがって、組み立てられた装置の機能の安定性が悪くなり、誤差が大きくなるおそれがある。従来の問題を解決するため、発明者は、発明の名称が「電極セルのレーザ溶接治具」であり、出願番号が「CN201521106978.2」である中国特許を出願した。前記電極セルのレーザ溶接治具は治具本体と固定部を含み、前記治具本体の上端には固定部が設けられ、前記治具本体の上端には凹型槽が形成され、前記凹型槽内にはセルが取り付けられ、前記凹型槽内にはセルを結合させる複数の結合槽が形成され、対向している前記凹型槽の両側の中心には円型柱がそれぞれ形成され、前記固定部は十字形状に形成され、1つの直線の両端に位置している前記固定部の両端には円型柱固定孔が形成され、他の1つの直線の両端に位置している前記固定部の両端には電極固定孔が形成され、前記電極は前記電極固定孔内に挿入され、前記円型柱が前記円型柱固定孔内に取り付けられることにより電極はセルの所定の位置に固定される。前記方法により、溶接の位置を正確に決め、溶接の品質と生産の効率を向上させることができる。
【0005】
前記方法により溶接の位置を正確に決めかつ溶接の品質と生産の効率を向上させることができるが、前記方法は依然として、部品の位置を決める作業と原料を送入送出する作業が複雑であり、効率がよくないとの欠点を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、前記従来の技術の問題を解決することができる、溶接治具及び挟持方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は下記技術的事項を採用する。
本発明の溶接治具はベースとベース上に取り付けられる部品位置固定金型を含む。前記溶接治具は、上部加圧板、溶接回避槽及び側方向加圧構造を更に含む。
上部加圧板は加圧方向方向または昇降方向にスライドするようにベースに連結され、上部加圧板により部品位置固定金型に搭載された部品の上面を押し、
溶接回避槽は上部加圧板上に形成され、かつ溶接回避槽は所定の部品位置固定金型の上方に位置し、
側方向加圧構造はベース上に取り付けられ、側方向加圧構造は前記部品の側方向加圧と側方向加圧の取消しを担当する。部品位置固定金型は造形金型である。
【0008】
前記溶接治具において、前記側方向加圧構造はX軸方向とY軸方向の加圧をする多方向の側方向加圧構造である。
【0009】
前記溶接治具において、前記側方向加圧構造は側方向自動加圧スライディングブロックと側方向加圧制御モジュールを含み、
側方向自動加圧スライディングブロックの数量は8つであり、
8つの側方向自動加圧スライディングブロックは2つが一組を組み、各組の2つの側方向自動加圧スライディングブロックは横方向弾性部品により側方向加圧方向にスライドするようにベースに連結され、横方向弾性部品の弾力により各組の側方向自動加圧スライディングブロックは相反の方向に移動するとともに部品を側方向に押し、
側方向加圧制御モジュールは、各組の2つの側方向自動加圧スライディングブロックが接近の方向に移動するように駆動することにより、側方向自動加圧スライディングブロックが部品に当接することを取り消す。
【0010】
前記溶接治具において、前記側方向加圧制御モジュールは十字昇降板を含み、
前記十字昇降板の中心は加圧方向に取り付けられた縦方向弾性モジュールによりベースに弾性状態に連結され、
前記十字昇降板は4つの端部を具備し、各端部は各組の2つの側方向自動加圧スライディングブロックにそれぞれ対応し、端部と側方向自動加圧スライディングブロックとの間にはウエッジ結合構造が形成され、十字昇降板が下降するとき、ウエッジ結合構造の作用により各組の2つの側方向自動加圧スライディングブロックは接近の方向に移動する。
【0011】
前記溶接治具において、前記ウエッジ結合構造はウエッジ型槽を含み、
前記ウエッジ型槽は各側方向自動加圧スライディングブロックに形成され、
各端部の長手方向の両側には八字に配置される傾斜部がそれぞれ形成され、各端部上の2つの傾斜部が所定のウエッジ型槽に挿入されることにより各組の2つの側方向自動加圧スライディングブロックは接近の方向に移動する。
【0012】
前記溶接治具において、前記側方向加圧制御モジュールは、回避孔、制御取っ手、側方向加圧平面及び側方向加圧取消し円弧面を含み、
回避孔は十字昇降板の中央に形成され、
制御取っ手は回避孔のヒンジ構造を通過した後ベースに結合され、かつ制御取っ手は十字昇降板の上表面に結合され、
側方向加圧平面は制御取っ手上に形成され、側方向加圧平面と十字昇降板の上表面が同一の平面になるとき、前記縦方向弾性モジュールは十字昇降板が上部の位置に復位するように駆動し、横方向弾性部品は側方向自動加圧スライディングブロックが部品を側方向に押すように駆動し、
側方向加圧取消し円弧面は制御取っ手上に形成され、制御取っ手を回転させることにより側方向加圧取消し円弧面が十字昇降板の上表面に当接するとき、ウエッジ結合構造の作用により横方向弾性部品は圧縮されかつ部品を側方向に押すことがなくなる。
【0013】
前記溶接治具において、前記ベースには各端部の下部に位置するウエッジ位置決め部が形成され、ウエッジ位置決め部は各端部上の2つの傾斜部が過度に下降することを防止する。
【0014】
前記溶接治具において、前記上部加圧板の下表面には十字案内槽が形成され、前記十字昇降板は前記十字案内槽内に位置し、上部加圧板の中心区域には取っ手回避貫通孔が形成され、前記制御取っ手は取っ手回避貫通孔を貫通する。
【0015】
前記溶接治具において、前記縦方向弾性モジュールは2組であり、2組の縦方向弾性モジュールはX軸またはY軸に配列される。
【0016】
前記溶接治具において、上部加圧板の対角線の2つの隅部とベースとの間には縦方向案内構造が設けられている。
【0017】
前記溶接治具において、ベース上には上部加圧板の長手方向の両端に位置する2つのロック制御部が回転可能(ヒンジ状態)に取り付けられ、2つのロック制御部は上部加圧板の長手方向の両端に取り付けられる。
【0018】
本発明は前記溶接治具を採用する溶接挟持方法を更に提供する。前記溶接挟持方法は、
部品を部品位置固定金型に搭載するステップS1と、
上部加圧板を下へ移動させることにより部品の上部を押し、側方向加圧構造により部品を側方向に押すステップS2とを含む。
【0019】
前記溶接挟持方法において、前記側方向加圧構造で部品を側方向に押す前記ステップS2は、
制御取っ手を回転させることにより、制御取っ手の側方向加圧平面と十字昇降板の上表面が同一の平面になるとき、縦方向弾性モジュールは十字昇降板が上部の位置に復位するように駆動し、横方向弾性部品は側方向自動加圧スライディングブロックが部品を側方向に押すように駆動するステップS20と、
制御取っ手を回転させることにより制御取っ手の側方向加圧取消し円弧面が十字昇降板の上表面に当接するとき、ウエッジ結合構造の作用により横方向弾性部品は圧縮されかつ部品を側方向に押すことがなくなるステップS21とを含む。
【発明の効果】
【0020】
従来の技術と比較してみると、本発明の技術的事項により下記発明の効果を奏することができる。
上部加圧板と側方向加圧構造により部品を多方向(多次元)に挟持することにより、溶接された部品の間の位置精度と溶接の品質を向上させることができる。
側方向加圧構造により複数の部品を側方向に同時に押すことができる。また、溶接が終わると、側方向加圧構造を撤去することにより側方向加圧構造で複数の部品を側方向に押すことを同時に取り消すことができる。それにより挟持の効率とリクレーマの効率を大幅に向上させることができる。
側方向加圧構造は側方向加圧取っ手を回転させることにより部品を挟持することを確保し、かつ辺部の位置決め機能により誤差の累計を減少させ、部品のサイズの変化を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図4】
図3のA―A線に沿う断面の構造を示す断面図である。
【
図5】
図3のB―B線に沿う断面の構造を示す断面図である。
【
図6】
図3のC―C線に沿う断面の構造を示す断面図である。
【
図8】本発明の治具のベースの構造を示す図である。
【
図9】本発明の側方向加圧制御モジュールの構造を示す図である。
【
図10】本発明の制御取っ手が加圧位置から加圧取消し位置に回転する過程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の具体的な実施例と図面により本発明の技術的事項をより詳細に説明するが、本発明は下記実施例にのみ限定されるものでない。
【0023】
(第一実施例)
図1に示すとおり、本実施例において溶接治具を提供する。前記溶接治具はレーザ溶接装置において部品の複数の穴を同時に固定させることに使用される。固定方法として上部を下に押す挟持方法と側方向に押す挟持方法を採用することができる。すなわち、多次元の挟持方法を採用することにより溶接の品質を確保することができる。
【0024】
具体的に、
図1~
図3及び
図7に示すとおり、本実施例の溶接治具は、ベース1、部品位置固定金型10、上部加圧板2、溶接回避槽(Avoidance trough)20及び側方向加圧構造3を含む。
【0025】
上部加圧板2と側方向加圧構造3により前記部品をいろいろな方向に固定させ、レーザ溶接をするとき溶接回避槽20が形成されることにより溶接チップ(welding tip)の移動を確保することができる。
【0026】
側方向加圧構造3により複数の部品を側方向に同時に押すことができる。また、溶接が終わると、側方向加圧構造3を撤去することにより側方向加圧構造3で複数の部品を側方向に押すことを同時に取り消すことができる。それにより挟持の効率とリクレーマ(reclaimer)の効率を大幅に向上させることができる。前記溶接回避槽20は上部加圧板2上に形成され、かつ溶接回避槽20は所定の部品位置固定金型10の上方に位置する。
【0027】
部品位置固定金型10はベース1上に取り付けられ、部品位置固定金型10の数量は1~4であるが、より多い部品位置固定金型10を取り付けてもよい。本発明はそれを一つ一つ説明しない。
【0028】
上部加圧板2とベース1は加圧方向または昇降方向にスライドするように連結され、上部加圧板2により部品位置固定金型10に搭載された部品の上面を押すことができる。上部加圧板2を下へ移動させることは手動方法または機械的駆動方法により実施されることができる。本実施例において手動方法を採用する。ベース1上には上部加圧板2の長手方向の両端に位置する2つのロック制御部5が回転可能(ヒンジ状態)に取り付けられ、2つのロック制御部5は上部加圧板2の長手方向の両端に取り付けられる。ロック制御部5はベース1上にヒンジ状態に取り付けられ、ロック制御部5を回転させることにより上部加圧板2の両端をロックする(押す)ことができる。それにより、上部加圧板2を下へ移動させ、部品を押すことができる。
【0029】
上部加圧板2が昇降移動をする順調性と安定性を向上させるため、上部加圧板2の対角線の2つの隅部とベース1との間に縦方向案内構造4を設けることができる。具体的に、本実施例の縦方向案内構造4は案内管とその内部に挿入される案内柱で構成されるか或いは案内孔とその内部に挿入される案内柱で構成されることができる。例えば、ベース1に案内柱を固定させ、上部加圧板2の対角線の2つの隅部に2つの案内管をそれぞれ取り付けた後、案内柱を案内管に挿入することにより縦方向案内構造4を構成することができる。
【0030】
以下、4つの部品位置固定金型10が取り付けられることを例として本発明の実施例をより詳細に説明する。
【0031】
具体的に、
図1~
図7に示すとおり、本実施例の側方向加圧構造3は側方向自動加圧スライディングブロック30と側方向加圧制御モジュール32を含む。
【0032】
本実施例の側方向自動加圧スライディングブロック30の数量は8つである。
【0033】
8つの側方向自動加圧スライディングブロック30は2つが一組を組み、各組の2つの側方向自動加圧スライディングブロック30は横方向弾性部品31により側方向加圧方向にスライドするようにベース1に連結される(以下、スライド可能な連結構造と略称)。横方向弾性部品31の弾力により各組の側方向自動加圧スライディングブロック30は相反の方向に移動するとともに部品を側方向に押すことができる。スライド可能な連結構造はスライド槽とそのスライド槽にスライド可能に結合されるスライド部で構成されることができる。例えば、側方向自動加圧スライディングブロック30の両側にスライド部を設け、ベース上にスライド部と対応するスライド槽を設けることにより、スライド案内構造を構成し、かつスライド部が上へ移動することによりスライド槽から離脱することを防止することができる。
【0034】
各組の2つの側方向自動加圧スライディングブロック30が対向している対向面には第一スプリング位置決め穴が形成され、ベースには前記第一スプリング位置決め穴と1つずつ対向する第二スプリング位置決め穴が形成されている。横方向弾性部品31が圧縮型スプリングであり、横方向弾性部品31の一端は第一スプリング位置決め穴の底面に当接し、横方向弾性部品31の他端は第二スプリング位置決め穴の底面に当接する。側方向自動加圧スライディングブロック30は横方向弾性部品31の弾力により相反の方向に移動するとともに部品を側方向に押すことができる。それにより部品を側方向に押す目的を実現することができる。
【0035】
好ましくは、本実施例の第一スプリング位置決め穴の軸線と第二スプリング位置決め穴の軸線は同一の直線上に位置し、かつ各組の2つの側方向自動加圧スライディングブロック30は対称状態に配置されることにより、側方向加圧力の均等性を確保することができる。
【0036】
側方向加圧制御モジュール32は、各組の2つの側方向自動加圧スライディングブロック30が接近の方向に移動するように駆動することにより、側方向自動加圧スライディングブロック30が部品に当接することを取り消す。その状態において、部品の取り出しをすることにより生産の効率を向上させることができる。
【0037】
図1~
図7に示すとおり、ロックの実施とロックの取消しの利便性を向上させるため、本実施例の側方向加圧制御モジュール32は十字昇降板320を含む。十字昇降板320の中心は加圧方向に取り付けられた縦方向弾性モジュール321によりベース1に弾性状態に連結される。縦方向弾性モジュール321は縦方向スプリングを含み、縦方向スプリングの上端は十字昇降板320に取り付けられ、十字昇降板320の下端はベース1に取り付けられることにより、十字昇降板320の復位を迅速に実施し、側方向自動加圧スライディングブロック30を側方向加圧位置まで迅速に移動させることができる。
【0038】
好ましくは、本実施例の縦方向弾性モジュール321は2組であり、2組の縦方向弾性モジュール321はX軸に配列される。例えば十字昇降板320のX軸に配列されることができる。
【0039】
図6~
図8に示すとおり、前記十字昇降板320は4つの端部を具備し、各端部は各組の2つの側方向自動加圧スライディングブロック30にそれぞれ対応する。端部と側方向自動加圧スライディングブロック30との間にはウエッジ結合構造が形成され、十字昇降板320が下降するとき、ウエッジ結合構造の作用により各組の2つの側方向自動加圧スライディングブロック30は接近の方向に移動することができる。前記構造により8つの側方向自動加圧スライディングブロック30の側方向加圧を同時に取り消すことができる。各組の2つの側方向自動加圧スライディングブロック30が接近の方向に移動することにより、操作の効率と生産の効率を向上させることができる。本実施例のウエッジ結合構造はウエッジ型槽300を含み、ウエッジ型槽300は各側方向自動加圧スライディングブロック30に形成され、ウエッジ型槽300の開口は上に向いている。各端部の長手方向の両側には八字に配置される傾斜部322がそれぞれ形成され、各端部上の2つの傾斜部322が所定のウエッジ型槽300に挿入されることにより各組の2つの側方向自動加圧スライディングブロック30は接近の方向に移動することができる。側方向自動加圧スライディングブロック30が側方向加圧位置に位置しているとき、各組の2つの組む側方向自動加圧スライディングブロック30のウエッジ型槽300のウエッジ型傾斜面の間の距離は2つの傾斜部322の間の距離より大きい。十字昇降板320が下降するとき、内傾斜面とウエッジ型傾斜面の接触面積がだんだん増加するので、傾斜部322の作用により両側の側方向自動加圧スライディングブロック30は接近の方向に移動することができる。それにより横方向弾性部品31は圧縮され、圧縮される横方向弾性部品31は側方向自動加圧スライディングブロック30が復位するとき弾力を提供することができる。
【0040】
他の実施例において、ウエッジ結合構造は側方向自動加圧スライディングブロック30上に形成される下傾斜面を含み、各端部の長手方向の両側には八字に配置される傾斜部322がそれぞれ形成されることができる。その場合、傾斜部322と下傾斜面の協力により対向の側方向自動加圧スライディングブロック30は接近の方向に移動することができる。
【0041】
下降の位置を決めるため、各端部の下部に位置するウエッジ位置決め部33をベース1に形成することができる。ウエッジ位置決め部33は各端部上の2つの傾斜部322が過度に下降することを防止する。ウエッジ位置決め部33は八字に配置される2つの傾斜位置決め面を具備し、傾斜部322と傾斜位置決め面が同一の平面になるとき、傾斜位置決め面は傾斜部322の下降を制限することができる。
【0042】
好ましくは、
図6、
図7、
図9及び
図10に示すとおり、側方向加圧制御モジュール32は、回避孔323、制御取っ手324、側方向加圧平面325及び側方向加圧取消し円弧面326を含む。回避孔323は十字昇降板320の中央に形成され、十字昇降板320の形状は円形または多角形のうちいずれか一種であることができる。
【0043】
制御取っ手324は回避孔323のヒンジ構造を通過した後ベース1に結合され、かつ制御取っ手324は十字昇降板320の上表面に結合される。ヒンジ構造はヒンジ軸327とヒンジ軸327を挿入させるヒンジ孔を含む。例えば、ベース上にはヒンジベース328が設けられ、制御取っ手324上にはヒンジベース328の上端を挿入させる結合槽が形成され、ヒンジベース328の上端にはヒンジ軸挿入孔が形成され、結合槽内にはヒンジ軸が取り付けられ、ヒンジ軸を前記ヒンジ軸挿入孔に挿入することによりヒンジ連結を構成することができる。制御取っ手324の回転を確保するためヒンジベースの上部はベアリングにより回転ベースに取り付けられ、前記ヒンジ軸挿入孔が回転ベース上に形成されることにより制御取っ手324の円周方向の回転角度を制御することができる。ヒンジベースとベースはベアリング329により連結されることもできる。
【0044】
図1~
図7に示すとおり、側方向加圧と側方向加圧の取消しを実施するため、本実施例の側方向加圧平面325を制御取っ手324上に形成することができる。側方向加圧平面325と十字昇降板320の上表面が同一の平面になるとき、前記縦方向弾性モジュール321は十字昇降板320が上部の位置に復位するように駆動し、横方向弾性部品31は側方向自動加圧スライディングブロック30が部品を側方向に押すように駆動する。
【0045】
側方向加圧取消し円弧面326は制御取っ手324上に形成され、制御取っ手を回転させることにより側方向加圧取消し円弧面326が十字昇降板320の上表面に当接するとき、ウエッジ結合構造の作用により横方向弾性部品31は圧縮されかつ部品を側方向に押すことがなくなる。
【0046】
側方向加圧平面325は側方向加圧取消し円弧面326に連結されることによりいろいろな状態を切り替えることができる。例えば、本実施例の側方向加圧取消し円弧面326は2つの箇所に対称状態に形成されることができる。その場合、制御取っ手324が任意の角度まで回転しても、側方向加圧取消し円弧面326が十字昇降板320の上表面に当接するとき、側方向加圧操作を随時に取り消すことができる。側方向加圧取消し円弧面326の上部円弧部が十字昇降板320の上表面に当接するとき、側方向加圧操作を完全に取り消すことができる。
【0047】
好ましくは、上部加圧板2の下表面には十字案内槽21が形成され、十字昇降板320は十字案内槽21内に位置し、上部加圧板2の中心区域には取っ手回避貫通孔22が形成され、制御取っ手324は取っ手回避貫通孔22を貫通する。十字案内槽21と十字昇降板320の協力により十字昇降板320の昇降の安定性を向上させることができる。また、十字案内槽21が形成されることにより十字昇降板320の位置を決め、治具の精度を更に向上させることができる。
【0048】
十字案内槽21の4つの端部には縦方向貫通孔がそれぞれ形成されていることにより、十字昇降板320の位置を随時に観察することができる。
【0049】
本実施例の作動原理はつぎのとおりである。
【0050】
部品を各部品位置固定金型10に搭載するとき、制御取っ手324の側方向加圧取消し円弧面326は十字昇降板320の上表面に当接する。その場合、側方向自動加圧スライディングブロック30は非側方向加圧位置に位置するので、部品を容易に挟持することができる。
【0051】
つぎに、ロック制御部5で上部加圧板2をロックするとき、上部加圧板2は部品の上部を押す。上部加圧板2の装着と、上部加圧板2と部品位置固定金型10の当接を確保するため、上部加圧板2の下表面と各部品位置固定金型10との間にスペーサーブロックを取り付けることができる。スペーサーブロックは部品位置固定金型10の外周に当接するか或いはベースに当接することができる。部品を各部品位置固定金型10に搭載するとき、スペーサーブロックが部品位置固定金型10またはベースに当接しないことにより干渉を防止することができる。
【0052】
制御取っ手324を90°回転させることにより側方向加圧平面325と十字昇降板320の上表面が同一の平面になるとき、縦方向弾性モジュール321は十字昇降板320が上部の位置に復位するように駆動し、横方向弾性部品31は所定の側方向自動加圧スライディングブロック30が相反の方向に移動するように駆動する。それにより、側方向自動加圧スライディングブロック30で部品を側方向に押し、部品を側方向に押す目的を実現することができる。
【0053】
複数の穴の側方向加圧を同時に実施するとともに側方向加圧の取消しを同時に実施することにより生産の効率と部品の溶接精度を大幅に向上させることができる。
【0054】
(第二実施例)
第二実施例の構造及び原理は第一実施例と類似している。
図6に示すとおり、両者の相違点は、第二実施例の縦方向弾性モジュール321は2組であり、2組の縦方向弾性モジュール321はY軸に配置されることにある。例えば、2組の縦方向弾性モジュール321は十字昇降板320のY軸に配置されることができる。
【0055】
(第三実施例)
図1~
図10に示すとおり、本発明の第三実施例において第一実施例と第二実施例に基づく溶接挟持方法を提供する。その溶接挟持方法は、第一実施例または第二実施例の溶接治具を採用し、かつ下記ステップを含む。
【0056】
ステップS1において、部品を部品位置固定金型10に搭載する。
【0057】
ステップS2において、上部加圧板2を下へ移動させることにより部品の上部を押し、かつ側方向加圧構造3により部品を側方向に押す。
【0058】
前記溶接挟持方法において、前記側方向加圧構造3により部品を側方向に押す前記ステップS2は下記ステップを含む。
【0059】
ステップS20において、制御取っ手324を回転させることにより、制御取っ手324の側方向加圧平面325と十字昇降板320の上表面が同一の平面になるとき、前記縦方向弾性モジュール321は十字昇降板320が上部の位置に復位するように駆動し、横方向弾性部品31は側方向自動加圧スライディングブロック30が部品を側方向に押すように駆動する。
【0060】
ステップS21において、制御取っ手324を回転させることにより制御取っ手324の側方向加圧取消し円弧面326が十字昇降板320の上表面に当接するとき、ウエッジ結合構造の作用により横方向弾性部品31は圧縮されかつ部品を側方向に押すことがなくなる。
【0061】
(第四実施例)
第四実施例の構造及び原理は第一実施例と類似している。両者の相違点は第四実施例の側方向加圧構造(
図7を参照)が4つの側方向自動加圧スライディングブロックと側方向加圧制御モジュールを含むことにある。
【0062】
側方向自動加圧スライディングブロックの数量が4つである場合、一対の側方向自動加圧スライディングブロックはX軸に取り付けられ、他の一対の側方向自動加圧スライディングブロックはY軸に取り付けられることができる。
【0063】
4つの側方向自動加圧スライディングブロックは2つが一組を組み、各組の2つの側方向自動加圧スライディングブロックは横方向弾性部品により側方向加圧方向にスライドするようにベースに連結される。横方向弾性部品の弾力により各組の側方向自動加圧スライディングブロックは相反の方向に移動するとともに部品を側方向に押すことができる。
【0064】
側方向加圧制御モジュールは、一組の側方向自動加圧スライディングブロックが接近の方向に移動するように駆動することにより、側方向自動加圧スライディングブロックが部品に当接することを取り消すことができる。
【0065】
(第五実施例)
第五実施例の構造及び原理は第一実施例と類似している。両者の相違点は第五実施例の側方向加圧構造(
図7を参照)が6つの側方向自動加圧スライディングブロックと側方向加圧制御モジュールを含むことにある。
【0066】
側方向自動加圧スライディングブロックの数量は6つである。
【0067】
その場合、二対の側方向自動加圧スライディングブロックはX軸に取り付けられ、他の一対の側方向自動加圧スライディングブロックはY軸に取り付けられることができる。二対の側方向自動加圧スライディングブロックをY軸に取り付け、他の一対の側方向自動加圧スライディングブロックをX軸に取り付けてもよい。
【0068】
6つの側方向自動加圧スライディングブロックは2つが一組を組み、各組の2つの側方向自動加圧スライディングブロックは横方向弾性部品により側方向加圧方向にスライドするようにベースに連結される。横方向弾性部品の弾力により各組の側方向自動加圧スライディングブロックは相反の方向に移動するとともに部品を側方向に押すことができる。
【0069】
側方向加圧制御モジュールは、一組の側方向自動加圧スライディングブロックが接近の方向に移動するように駆動することにより、側方向自動加圧スライディングブロックが部品に当接することを取り消すことができる。
【0070】
以上、本発明の具体的な実施例を詳述してきたが、前記実施例は本発明の例示にしか過ぎないものであるため、本発明は前記実施例の構成にのみ限定されない。この技術分野の技術者は本発明の要旨を逸脱しない範囲内において設計の変更、代替等をすることができ、そのような設計の変更、代替等があっても本発明の特許請求の範囲が定めた範囲に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0071】
1 ベース
10 部品位置固定金型
2 上部加圧板
20 溶接回避槽
3 側方向加圧構造
30 側方向自動加圧スライディングブロック
300 ウエッジ型槽
31 横方向弾性部品
32 側方向加圧制御モジュール
320 十字昇降板
321 縦方向弾性モジュール
322 傾斜部
323 回避孔
324 制御取っ手
325 側方向加圧平面
326 側方向加圧取消し円弧面
327 ヒンジ軸
328 ヒンジベース
329 ベアリング
4 縦方向案内構造
5 ロック制御部