(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】熱間圧延熱処理鋼板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20240820BHJP
C22C 38/38 20060101ALI20240820BHJP
C21D 9/46 20060101ALN20240820BHJP
【FI】
C22C38/00 302A
C22C38/38
C21D9/46 Z
(21)【出願番号】P 2022575976
(86)(22)【出願日】2021-07-12
(86)【国際出願番号】 IB2021056247
(87)【国際公開番号】W WO2022018571
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2020/057009
(32)【優先日】2020-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペルラド,アストリッド
(72)【発明者】
【氏名】ジュウ,カンイン
(72)【発明者】
【氏名】レミー,ブランディーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ケーゲル,フレデリク
【審査官】河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/122961(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/026125(WO,A1)
【文献】特開平05-230530(JP,A)
【文献】特表2020-500262(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108546812(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110066964(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00
C22C 38/38
C21D 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間圧延熱処理鋼板であって、
質量パーセントで:
C:0.03~0.18%
Mn:6.0~11.0%
Mo:0.05~0.5%
B:0.0005~0.005%
S≦0.010%
P≦0.020%
N≦0.008%
を含む組成を有する鋼で作製され、任意選択的に、以下の元素のうちの1つ以上を
質量百分率で含み:
Al<3%
Si≦1.20%
Ti≦0.050%
Nb≦0.050%
Cr≦0.5%
組成の残りが、鉄及び精錬から生じる不可避不純物であり、
前記鋼板が、表面分率で、
-10%~60%の残留オーステナイト、
-40%~90%のフェライト、
-5%未満のマルテンサイト、
-0.8%を下回るカーバイド、及び
--40以上の勾配を有するマンガン分布を特徴とする、マンガンの不均質な再分配
を含む微細構造を有する、熱間圧延熱処理鋼板。
【請求項2】
鋼板が、0.6%以下のカーバイドを含む、請求項1に記載の熱間圧延熱処理鋼板。
【請求項3】
鋼板が、0.5%以下のカーバイドを含む、請求項2に記載の熱間圧延熱処理鋼板。
【請求項4】
炭素含有量が、0.05%~0.15%である、請求項1又は3に記載の熱間圧延熱処理鋼板。
【請求項5】
マンガン含有量が、6.0%~9.0%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱間圧延熱処理鋼板。
【請求項6】
アルミニウム含有量が、0.2%~2.5%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱間圧延熱処理鋼板。
【請求項7】
20℃におけるシャルピー衝撃エネルギーが0.4J/mm
2より高い、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱間圧延熱処理鋼板。
【請求項8】
以下の式で定義されるLME指数が、0.36以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱間圧延熱処理鋼板。
LME指数=C%+Si%/4
(式中、C%及びSi%は、それぞれ鋼中の炭素及びケイ素の質量百分率を表す。)
【請求項9】
鋼が、0.4未満の炭素当量Ceqを有し、前記炭素当量が、
Ceq=C%+Si%/55+Cr%/20+Mn%/19-Al%/18+2.2P%-3.24B%-0.133
*Mn%
*Mo%として定義され、元素が
質量パーセントで表される、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱間圧延熱処理鋼板。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の熱間圧延熱処理鋼板で作製された2つの鋼部品の抵抗スポット溶接部であって、前記抵抗スポット溶接部が、少なくとも30daN/mm
2の
、以下で定義されるα値を有する、抵抗スポット溶接部。
α=十字引張強度(CTS)/(溶接点の直系×基材の厚さ)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な溶接性を有する高強度鋼板及びそのような鋼板を得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用車体構造部材の部品及び車体パネルなどの様々な品目を製造するために、DP(デュアルフェーズ)鋼又はTRIP(変態誘起塑性)鋼で作製された薄板を使用することが知られている。
【0003】
自動車産業における主要な課題のうちの1つは、安全要件を無視することなく、地球環境保全の観点から車両の燃費を改善するために車両の重量を減少させることである。これらの要件を満たすために、降伏強度及び引張強度が改善され、延性及び成形性が良好な鋼板を有する新しい高強度鋼が製鋼産業によって継続的に開発されている。
【0004】
機械的特性を改善するために行われた開発のうちの1つは、鋼中のマンガン含有量を増加させることである。マンガンの存在は、オーステナイトの安定化のおかげで鋼の延性を増加させるのに役立つ。しかし、これらの鋼は、脆性の弱さを呈する。この問題を克服するために、ホウ素としての元素が添加される。これらのホウ素添加化学作用は、熱間圧延段階では非常に強靭であるが、ホットバンドは、硬すぎてさらに加工することができない。ホットバンドを軟化させる最も効率的な方法は、バッチ焼鈍であるが、それは、靭性の損失につながる。
【0005】
これらの機械的要件に加えて、そのような鋼板は、液体金属脆化(LME)に対する良好な耐性を示さなければならない。亜鉛又は亜鉛合金コーティングされた鋼板は、耐食性に非常に効果的であり、したがって自動車産業において広く使用されている。しかしながら、特定の鋼のアーク溶接又は抵抗溶接が、液体金属脆化(「LME」)又は液体金属助長割れ(「LMAC」)と呼ばれる現象に起因する特定の割れの発生を引き起こす可能性があることを経験してきている。この現象は、拘束、熱膨張又は相変態から生じる印加応力又は内部応力下で、下にある鋼基材の粒界に沿った液体Znの浸透を特徴とする。炭素又はケイ素のような元素の添加は、LME耐性に有害であることが知られている。
【0006】
自動車産業は通常、以下の式:
LME指数=C%+Si%/4、
に従って計算されるいわゆるLME指数の上限値を制限することによって、そのような抵抗性を評価し、式中、C%及びSi%は、それぞれ鋼中の炭素及びケイ素の質量百分率を表す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、良好な溶接性特性と共に、20℃におけるシャルピー衝撃エネルギーが0.4J/mm2を超える高い靭性を有する熱間圧延焼鈍鋼板を提供することである。
【0008】
好ましくは、本発明による熱間圧延焼鈍鋼板は、0.36以下のLME指数を有する。
【0009】
好ましくは、本発明による熱間圧延焼鈍鋼は、0.4未満の炭素当量Ceqを有し、炭素当量は、
Ceq=C%+Si%/55+Cr%/20+Mn%/19-Al%/18+2.2P%-3.24B%-0.133*Mn%*Mo%
として定義され、元素は質量パーセントで表される。
【0010】
本発明の目的は、請求項1に記載の鋼板を提供することによって達成される。鋼板はまた、請求項2~9のいずれか一項に記載の特性を含むことができる。
【0011】
本発明の別の目的は、請求項10に記載の2つの鋼部品の抵抗スポット溶接である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】試験1及び試験4の熱間圧延熱処理鋼板の断面を表す図である。
【
図2】試験1及び試験4について、マンガン量の関数として3つのマップの累積面積分率を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を、制限を導入することなく、詳細に説明し、実施例によって説明する。
【0014】
次に、本発明による鋼の組成を説明するが、含有量は、質量パーセントで表される。
【0015】
本発明によれば、満足のいく強度及び良好な溶接性を確保するために、炭素含有量は、0.03%~0.18%である。炭素が0.18%を上回ると、鋼板の溶接性及びLMEに対する耐性が低下する場合がある。均熱の温度は、特に炭素含有量に依存する:炭素含有量が高いほど、オーステナイトを安定化するための均熱温度は低くなる。炭素含有量が0.03%未満である場合、オーステナイト分率は、均熱後に所望の引張強度及び伸びを得るのに十分に安定化されない。本発明の好ましい実施形態では、炭素含有量は、0.05%~0.15%である。本発明の別の好ましい実施形態では、炭素含有量は、0.07%~0.12%である。
【0016】
マンガン含有量は、6.0%~11.0%である。添加量が11.0%を上回ると、鋼板の溶接性が低下し、部品組立の生産性が低下する可能性がある。さらに、中心偏析のリスクは、機械的特性を損なうほど増加する。均熱の温度は、マンガン含有量にも依存するので、均熱後に目標とする微細構造及び特性を得るために、オーステナイトを安定化するためにマンガンの最小値が規定される。好ましくは、マンガン含有量は、6%~9.0%である。
【0017】
本発明によれば、鋳造中のマンガン偏析を低減するために、アルミニウム含有量は、3%を下回る。アルミニウムは、精錬中に液相で鋼を脱酸するのに非常に効果的な元素である。添加量が3%を上回ると、鋼板の溶接性が低下し、鋳造性が低下する場合がある。さらに、アルミニウム含有量が高いほど、オーステナイトを安定化するための均熱温度が高くなる。アルミニウムは、好ましくは、変態区間を拡大することによって製品の堅牢性を改善し、溶接性を改善するために、少なくとも0.2%まで添加される。さらに、介在物及び酸化の問題の発生を回避するためにアルミニウムを添加することができる。本発明の好ましい実施形態では、アルミニウム含有量は、0.2%~2.5%、より好ましくは0.5~2.2%である。
【0018】
モリブデン含有量は、鋳造中のマンガン偏析を低減するために、0.05%~0.5%である。さらに、モリブデンの少なくとも0.05%の添加は、脆性に対する耐性を提供する。0.5%を上回ると、モリブデンの添加は、コストがかかり、必要とされる特性を考慮すると効果的ではない。本発明の好ましい実施形態では、モリブデン含有量は、0.1%~0.3%である。
【0019】
本発明によれば、ホウ素含有量は、熱間圧延鋼板の靭性及びスポット溶接性を改善するために、0.0005%~0.005%である。0.005%を上回ると、旧オーステナイト粒界でのボロンカーバイドの形成が促進され、鋼がより脆くなる。本発明の好ましい実施形態では、ホウ素含有量は、0.001%~0.003%である。
【0020】
任意選択的に、いくつかの元素を本発明による鋼の組成に添加することができる。
【0021】
LMEに対する耐性を改善するために、ケイ素含有量の最大添加は、1.20%に制限される。加えて、この低いケイ素含有量は、ホットバンド焼鈍の前に熱間圧延鋼板を酸洗するステップを排除することによって工程を単純化することを可能にする。好ましくは、添加される最大ケイ素含有量は、1.0%である。
【0022】
析出強化を提供するために、チタンを0.050%まで添加することができる。
【0023】
好ましくは、BNの形成からホウ素を保護するために、ホウ素に加えて最低0.010%のチタンが添加される。
【0024】
ニオブは、任意選択的に、熱間圧延中にオーステナイト粒を精製し、析出強化を提供するために0.050%まで添加することができる。好ましくは、添加されるニオブの最小量は、0.010%である。
【0025】
任意選択的に、クロム及びバナジウムをそれぞれ0.5%及び0.2%まで添加して、強度を改善させることができる。
【0026】
鋼の残りの組成は、鉄及び製錬に起因する不純物である。この点において、P、S及びNは、少なくとも不可避不純物である残留元素とみなされる。それらの含有量は、Sについては0.010%以下、Pについては0.020%以下、Nについては0.008%以下である。
【0027】
次に、本発明による熱間圧延熱処理鋼板の微細構造について説明する。
【0028】
本発明による組成を有する熱間圧延鋼板は、10~60%のオーステナイト、40~90%のフェライト、0.8%を下回るカーバイドの分率及び5%未満のマルテンサイトを含む微細構造が形成される変態区間焼鈍を受ける。
【0029】
そのような変態区間焼鈍中に形成されるオーステナイトは、炭素及びマンガンが豊富である。より正確には、マンガン含有量が公称値より高い領域及びマンガン含有量が公称値より低い領域が形成され、マンガンの不均質な分布が生じる。したがって、炭素は、マンガンと共偏析する。このマンガン不均質性は、
図2に示し後述するように、-40以上でなければならないマンガン分布の勾配のおかげで測定される。
【0030】
フェライトは、40~90%の量で存在し、変態区間焼鈍中に形成される。
【0031】
フレッシュマルテンサイトは、炭素及びマンガンにあまり富んでいないオーステナイトの一部の不安定化から、変態区間焼鈍後の冷却中に形成することができる。しかしながら、微細構造のこの構成要素は、望ましくなく、その分率は、5%を下回ったままでなければならない。
【0032】
最後に、熱間圧延鋼熱処理鋼板は、0.8%未満のカーバイドを含有し、これにより、良好な靭性、すなわち、ISO規格148-1:2006(F)及びISO148-1:2017(F)に従って測定された、0.4J/mm2より高い20℃でのシャルピー衝撃エネルギーを得ることが可能になる。好ましい実施形態では、カーバイドの量は、0.6%以下、又はさらに好ましいのは0.5%以下である。
【0033】
本発明によれば、熱間圧延焼鈍鋼板は、溶接性を改善するために0.4未満の炭素当量Ceqを有する。炭素当量は、Ceq=C%+Si%/55+Cr%/20+Mn%/19-Al%/18+2.2P%-3.24B%-0.133*Mn%*Mo%として定義され、元素は質量パーセントで表される。
【0034】
本発明による熱間圧延鋼板は、任意の適切な製造方法によって生成することができ、当業者は、それを定義することができる。しかしながら、以下のステップを含む本発明による方法を使用することが好ましい:
【0035】
さらに熱間圧延することができる半製品には、上述の鋼組成が提供される。半製品は、熱間圧延を容易にするために、1150℃~1300℃の温度に加熱され、最終熱間圧延温度FRTは、800℃~1000℃である。好ましくは、FRTは、850℃~950℃である。
【0036】
次いで、熱間圧延鋼は、冷却され、20℃~600℃の温度Tcoilで巻き取られる。次いで、熱間圧延鋼板を室温まで冷却し、酸洗することができる。
【0037】
次いで、熱間圧延鋼板は、Tc~680℃の間の焼鈍温度THBAまで加熱する。Tcは、以下の式によって計算され、これは4質量%を上回るマンガン含有量に有効である:
Tc=Tec-(Mn%-4)/C%
Tecは、Thermo-Calc(R)のようなソフトウェアを使用して行われる熱力学的計算によって決定することができる平衡状態でのカーバイド溶解温度であり、Mn%及びC%は、鋼のマンガン及び炭素における質量公称組成である。
【0038】
好ましくは、温度THBAは、580℃~680℃である。鋼板は、マンガン拡散及び不均質なマンガン分布の形成を促進するために、0.1~120時間の保持時間tHBAの間、前記温度THBAに維持される。
【0039】
THBAは、冷却後に10~60%のオーステナイト、40~90%のフェライト及び5%未満のマルテンサイトを得るように選定され、カーバイドの分率は、0.8%を下回り維持される。特に、そのような変態区間焼鈍の適切な時間及び温度の選択は、THBAの増加がカーバイド析出を制限することに留意しながら、本発明に従って許容され得る最大カーバイド分率を考慮しなければならない。
【0040】
化学組成に関して、鋼中の炭素及びアルミニウムの量が多いほど、所与の温度に対するカーバイドの濃度は高くなる。これは、主張範囲の上部の炭素及びアルミニウム含有量の場合、それに応じてカーバイドの析出を制限するためにTHBAを増加させなければならないことを意味する。
【0041】
さらに、鋼中のマンガンの量が少ないほど、所与の温度でのカーバイド濃度が高くなる。これは、主張範囲の下部のマンガン含有量の場合、それに応じてカーバイドの析出を制限するためにTHBAを増加させなければならないことを意味する。
【0042】
次いで、熱間圧延熱処理鋼板を室温に冷却し、酸洗して酸化を除去することができる。
【0043】
本発明を以下の実施例によって説明するが、これらは決して限定的なものではない。
【実施例】
【0044】
表1に組成をまとめた11個のグレードを半製品に鋳造し、鋼板に加工した。
【0045】
表1-組成
テストした組成を以下の表にまとめ、元素含有量を質量パーセントで表す。
【0046】
【0047】
Ae1、Ae3及びTec温度は、Thermo-Calc(R)のようなソフトウェアを使用して行われた熱力学的計算によって決定されている。
【0048】
表2-熱間圧延熱処理鋼板の工程パラメータ
鋳造されたままの鋼半製品を1200℃で再加熱し、熱間圧延し、次いで巻き取った。次いで、熱間圧延熱処理鋼板を温度THBAで熱処理し、保持時間tHBAの間、前記温度に維持される。熱間圧延熱処理鋼板を得るための以下の特定の条件を適用した:
【0049】
【0050】
熱間圧延熱処理鋼板を分析し、対応する特性を表3にまとめる。
【0051】
表3-熱間圧延熱処理鋼板の微細構造及び特性
微細構造中の相の表面分率は、以下の方法によって決定される:試験片を熱間圧延焼鈍鋼板から切断し、研磨し、それ自体知られた試薬でエッチングして、微細構造を明らかにする。その後、断面は、走査型電子顕微鏡、例えば電界放出電子銃を備えた走査型電子顕微鏡(「FEG-SEM」)を用いて、二次電子モードで5000倍を超える倍率で検査される。
【0052】
フェライトの表面分率の決定は、Nital又はPicral/Nital試薬エッチング後のSEM観察のおかげで実行される。
【0053】
残留オーステナイトの体積分率の測定は、X線回折のおかげで実行される。
【0054】
カーバイドの分率は、電界放出電子銃を備えた走査型電子顕微鏡(「FEG-SEM」)及び15000倍を超える倍率での画像分析によって検査された薄板の断面のおかげで決定される。
【0055】
【0056】
20℃におけるマンガン分布の勾配及びシャルピー衝撃エネルギーを決定した。
【0057】
シャルピー衝撃エネルギーは、ISO規格148-1:2006(F)及びISO規格148-1:2017(F)に従って測定される。
【0058】
熱間圧延鋼板の熱処理は、マンガンがオーステナイト中に拡散することを可能にする:マンガンの再分配は、低マンガン含有量の領域及び高マンガン含有量の領域で不均質である。このマンガン不均質性は、機械的特性を達成するのに役立ち、マンガン分布のおかげで測定することができる。
【0059】
図1は、試験1及び試験4の熱間圧延熱処理鋼板の断面を表す。黒色領域は、マンガン量が少ない領域に対応し、灰色領域は、マンガン量が多い領域に対応する。
【0060】
この図は、以下の方法によって得られる:試験片を熱間圧延熱処理鋼板から厚さ1/4で切断し、研磨する。
【0061】
その後、マンガン量を決定するために10000倍を超える倍率で電界放出電子銃(「FEG」)を備えた電子プローブマイクロアナライザによって断面を特性評価する。断面の異なる部分の10μm×10μmの3つのマップを取得した。これらのマップは、0.01μm2の画素で構成されている。質量パーセントでのマンガン量を各ピクセルで計算し、次いで、マンガン量の関数として3つのマップの累積面積分率を表す曲線上にプロットする。
【0062】
この曲線は、試験1及び試験4について
図2にプロットされている:薄板断面の100%が1%を超えるマンガンを含有する。試験1では、薄板断面の20%が10%を超えるマンガンを含有する。
【0063】
次いで、得られた曲線の勾配が、累積面積分率の80%を表す点と累積面積分率の20%を表す点との間で計算される。試験1では、この勾配は、-40より高く、これは、マンガンの再分配が不均質であり、マンガン含有量が低い領域及びマンガン含有量が高い領域を有することを示している。
【0064】
対照的に、試験4では、熱間圧延後の熱処理がないことは、マンガンの再分配が不均質ではないことを含意し、これは-40未満のマンガン分布の勾配の値によって見ることができる。
【0065】
【0066】
試験6及び7では、THBA温度は、Tcよりも著しく低く、これは過剰なカーバイドの形成をもたらし、強度の増加をもたらすが延性の低下が生じる。さらに、オーステナイトの小さな体積分率(<10%)は、マンガンに非常に富むすべての粒界を覆うのに十分ではなく、これは粒界脆化、したがって靭性の低下をもたらす。
【0067】
比率較的高いTHBA温度(ただしTcよりも依然として低い)で実行された試験8では、カーバイドは、旧オーステナイト粒界に沿って成長する傾向があり、これは靭性に有害である。
【0068】
試験13、14、15、19、20、21、22、27、28、33、34、35、36は、同様の傾向を示し、過剰なカーバイドも含む。
【0069】
表4-熱間圧延熱処理鋼板の溶接性特性
得られた熱間圧延熱処理鋼板の溶接性特性を決定し、以下の表にまとめた。
【0070】
ISO規格18278-2条件のスポット溶接は、溶接前に酸洗された熱間圧延焼鈍鋼板に対して行われている。
【0071】
使用されるテストでは、サンプルは、2枚の鋼板で構成され、同等の十字溶接の形態である。溶接点を破断するように力を加える。この力は、十字引張強度(CTS)として知られており、daNで表される。それは、溶接点の直径及び金属の厚さ、すなわち鋼及び金属コーティングの厚さに依存する。それにより、溶接点の直径と基材の厚さとの積に対するCTSの値の比である係数αを計算することが可能になる。この係数は、daN/mm2で表される。
【0072】
第1の薄板を第2の薄板に接合する抵抗スポット溶接部は、少なくとも30daN/mm2のα値によって定義される十字引張試験における高い抵抗を特徴とする。
【0073】
【0074】
LME指数=C%+Si%/4。
【0075】
試験19、20、21、33、34、35及び36では、化学組成は、本発明の目標とする溶接性特性を得ることを可能にしない。