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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】イヤホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20240820BHJP
   H04R 1/00 20060101ALN20240820BHJP
【FI】
H04R1/10 104A
H04R1/00 317
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022577715
(86)(22)【出願日】2021-07-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-19
(86)【国際出願番号】 CN2021109154
(87)【国際公開番号】W WO2022022618
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】202011328519.4
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010743396.4
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521080118
【氏名又は名称】シェンツェン・ショックス・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼ ▲澤▼英
(72)【発明者】
【氏名】徐 江
(72)【発明者】
【氏名】王 永根
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 浩▲鋒▼
(72)【発明者】
【氏名】▲ライ▼ 淦
(72)【発明者】
【氏名】王 冲
(72)【発明者】
【氏名】王 力▲維▼
(72)【発明者】
【氏名】▲韓▼ 瑞欣
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 磊
(72)【発明者】
【氏名】付 峻江
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-070468(JP,A)
【文献】特表2011-525829(JP,A)
【文献】特開2008-017473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
H04R 1/00
H04R 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定アセンブリと、前記固定アセンブリに接続された保持部と、を含み、
前記固定アセンブリは、装着状態で前記保持部をユーザの耳部の前側で前記耳部の対耳輪に接触させ、前記保持部が前記ユーザの外耳道を塞がないように構成され、
前記保持部は、振動膜を有するコアを含み、
前記保持部は、前記振動膜の一側にフロントキャビティが形成され、
前記フロントキャビティは、前記フロントキャビティとイヤホンの外部との連通を可能にする第1の開口を有し、
前記第1の開口は、装着状態で前記耳部の対耳輪と耳の上付け根との間に位置し、
前記コアは、前記第1の開口から前記耳部に伝送される音声を生成する、イヤホン。
【請求項2】
前記保持部は、前記振動膜の前記フロントキャビティに背く他側にバックキャビティが形成され、
前記バックキャビティは、前記バックキャビティと前記イヤホンの外部との連通を可能にする第2の開口を有し、
前記第2の開口は、前記第1の開口よりも前記耳部の耳孔から離れている、ことを特徴とする請求項1に記載のイヤホン。
【請求項3】
前記第1の開口から前記イヤホンの外部に出力される音声の周波数応答曲線は、前記第1の開口により形成された周波数応答曲線の中高周波以上の周波数帯域における全ての共振ピークのうちの周波数が最も低いものである第1の中高周波最低共振ピークを有し、
前記第2の開口から前記イヤホンの外部に出力される音声の周波数応答曲線は、前記第2の開口により形成された周波数応答曲線の中高周波以上の周波数帯域における全ての共振ピークのうちの周波数が最も低いものである第2の中高周波最低共振ピークを有し、
前記第1の中高周波最低共振ピークのピーク共振周波数と前記第2の中高周波最低共振ピークのピーク共振周波数は、それぞれ5kHz以上である、ことを特徴とする請求項2に記載のイヤホン。
【請求項4】
前記第1の中高周波最低共振ピークのピーク共振周波数と前記第2の中高周波最低共振ピークのピーク共振周波数との差は、1kHz以下である、ことを特徴とする請求項3に記載のイヤホン。
【請求項5】
前記バックキャビティは、前記バックキャビティと前記イヤホンの外部との連通を可能にする第3の開口を有し、前記第3の開口の有効面積は、前記第2の開口の有効面積よりも小さく、
前記第3の開口が開状態にある場合の前記第2の中高周波最低共振ピークのピーク共振周波数は、前記第3の開口が閉状態にある場合の前記第2の中高周波最低共振ピークのピーク共振周波数よりも高周波にオフセットしており、かつオフセット量が1kHz以上である、ことを特徴とする請求項3又は4に記載のイヤホン。
【請求項6】
前記第3の開口と前記第2の開口は、前記コアにおける互いに対向する両側に位置し、かつ前記第2の開口よりも前記耳部の耳孔に近接する、ことを特徴とする請求項5に記載のイヤホン。
【請求項7】
前記第1の開口の有効面積は、2mm2以上であり、及び/又は、前記フロントキャビティの体積は、90mm3以下である、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のイヤホン。
【請求項8】
前記第2の開口の開口方向は、ユーザの頭頂部に向かい、前記第2の開口の開口方向とユーザの垂直軸との間の夾角は、0°~10°である、ことを特徴とする請求項2~6のいずれか一項に記載のイヤホン。
【請求項9】
前記固定アセンブリは、フック状部と、前記フック状部及び前記保持部を接続する接続部と、を含み、装着状態で、
前記フック状部は、前記耳部の後側とユーザの頭部との間に掛けられ、
前記保持部は、前記耳部の前側に接触し、それにより、前記保持部と前記フック状部が協働して前記耳部を挟持する、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のイヤホン。
【請求項10】
前記保持部は、互いに直交する厚さ方向、長手方向及び高さ方向を有し、前記厚さ方向は、装着状態で前記保持部が前記耳部に対して接近するか又は離れる方向として定義され、前記高さ方向は、装着状態で前記保持部がユーザの頭頂部に対して接近するか又は離れる方向として定義され、自然状態で観察し、また、前記イヤホンの装着状態でユーザの頭頂部に向かう側から観察すると、前記保持部は、少なくとも前記フック状部の前記接続部に近接するセグメントとは、前記厚さ方向において離隔して設置され、前記接続部は、円弧状に設置され、前記保持部と前記フック状部との間に接続される、ことを特徴とする請求項9に記載のイヤホン。
【請求項11】
前記保持部の前記耳部に向かう側は、第1の領域と、第2の領域と、を含み、前記第1の領域に、放音孔が設置され、前記第2の領域は、前記第1の領域よりも前記接続部から離れており、かつ、装着状態で前記放音孔が前記耳部から離隔するように、前記第1の領域よりも前記耳部に向かって突起している、ことを特徴とする請求項10に記載のイヤホン。
【請求項12】
前記厚さ方向において、前記第2の領域と前記フック状部の前記接続部に近接するセグメントとの間の距離は、1mm~5mmである、ことを特徴とする請求項11に記載のイヤホン。
【請求項13】
前記フック状部の前記接続部に近接するセグメントの前記厚さ方向に沿う正投影は、前記第2の領域と部分的に重なる、ことを特徴とする請求項12に記載のイヤホン。
【請求項14】
前記厚さ方向において、前記第2の領域の前記第1の領域に対する最大突起高さは、1mm以上である、ことを特徴とする請求項11~13のいずれか一項に記載のイヤホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、音響発生機器の技術分野に関し、具体的にはイヤホンに関する。
【0002】
本願は、2020年7月29日に中国国家知識産権局に提出された出願番号2020107433964、発明名称「イヤホン」の中国特許出願の優先権を主張するものであり、その全ての内容を参照により本願に取り込むものとする。
【0003】
本願は、2020年11月24日に中国国家知識産権局に提出された出願番号2020113285194、発明名称「イヤホン」の中国特許出願の優先権を主張するものであり、その全ての内容を参照により本願に取り込むものとする。
【背景技術】
【0004】
イヤホンは、人々の日常生活に広く応用され、携帯電話、コンピュータ等の電子機器と共に使用することにより、ユーザは、聴覚の饗宴を楽しむことができる。イヤホンの動作原理により、一般的に、空気伝導イヤホンと骨伝導イヤホンに分けることができる。ユーザがイヤホンを装着する方式により、一般的に、さらにヘッドホン、耳掛け式イヤホン及びインナーイヤ型イヤホンに分けることができる。イヤホンと電子装置との間のインタラクション方式により、一般的に、有線式イヤホンと無線式イヤホンに分けることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の実施例は、装着状態で、ユーザの耳部の後側と頭部との間に掛けられるフック状部と、耳部の前側に接触する保持部と、フック状部と保持部を接続し、かつ頭部から頭部の外側へ延在し、フック状部と協働して耳部の前側に対する押圧力を保持部に提供する接続部と、を含むイヤホンを提供する。
【発明の効果】
【0006】
本願の有益な効果は、以下のとおりである。本願に係るイヤホンは、フック状部と保持部との間に接続部が設置され、接続部は、耳部の厚さに適合することができるため、イヤホンの装着状態で耳の上付け根及びその付近の組織を迂回して、装着の快適さ及び安定性を向上させることに役立つ。
【0007】
本願の実施例における技術的解決手段をより明確に説明するために、以下に実施例の説明に必要な図面を簡単に紹介し、明らかに、以下の説明における図面は、本願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の図面を得ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本願に記載のユーザの耳部の輪郭の前側概略構成図である。
図2】本願に係るイヤホンの実施例の正面概略構成図である。
図3図2におけるイヤホンの左側面概略構成図である。
図4図2におけるイヤホンが装着状態にある場合の前方から見た概略図である。
図5図2におけるイヤホンが装着状態にある場合の後方から見た概略図である。
図6図2におけるイヤホンが装着状態にある場合の力学モデル概略図である。
図7】本願に係るイヤホンの別の実施例の正面概略構成図である。
図8図7におけるイヤホンの左側面概略構成図である。
図9図7におけるイヤホンが装着状態にある場合の前方から見た概略図である。
図10図7におけるイヤホンが装着状態にある場合の後方から見た概略図である。
図11図7におけるイヤホンが装着状態にある場合の力学モデル概略図である。
図12】本願に係るイヤホンのまた別の実施例の平面概略構成図である。
図13】本願に係るイヤホンのまた別の実施例の正面概略構成図である。
図14】本願に係るイヤホンのさらなる別の実施例の概略構成図である。
図15図14におけるイヤホンが装着状態にある場合の力学モデル概略図である。
図16】本願における電池部の皮膚接触領域の表面概略構成図である。
図17図12における延出部の様々な実施形態の概略構成図である。
図18】本願に係るイヤホンのさらなる別の実施例の概略構成図である。
図19図8におけるフック状部の斜視概略構成図である。
図20図19における弾性ワイヤの、フック状部の延在方向に垂直な基準面に沿った断面概略構成図である。
図21】本願に係るイヤホンのさらなる別の実施例の正面概略構成図である。
図22】本願に係る回転軸アセンブリの実施例の概略構成図である。
図23図22における回転軸アセンブリの組立前後の概略構成図である。
図24】本願に係る回転軸アセンブリの別の実施例の概略構成図である。
図25図24における回転軸アセンブリの実施形態の分解概略構成図である。
図26図25における回転軸アセンブリの断面概略構成図である。
図27図24における回転軸アセンブリの別の実施形態の分解概略構成図である。
図28図27における回転軸アセンブリの断面概略構成図である。
図29】本願に係るイヤホンの任意の実施例のXY平面での断面概略構成図である。
図30】本願に係るイヤホンの実施例の、耳部に背く側の概略構成図である。
図31】本願に係るイヤホンの実施例の、耳部に対向する側の概略構成図である。
図32】本願に係るイヤホンの実施例をユーザの頭頂側から観察した概略構成図である。
図33】本願に係るイヤホンの実施例の分解概略構成図である。
図34】本願に係るイヤホンの実施例の分解概略構成図である。
図35】本願に係るイヤホンの実施例の分解概略構成図である。
図36】本願に係るイヤホンの実施例の断面概略構成図である。
図37】本願に係るイヤホンの実施例の耳部に背く側の概略構成図である。
図38】本願に係るイヤホンの実施例をユーザの頭頂側から観察した概略構成図である。
図39】本願に係るイヤホンの実施例の分解概略構成図である。
図40】本願に係るコアの実施例の、マザーボードに向かう側の概略構成図である。
図41】本願に係るイヤホンの実施例の分解概略構成図である。
図42】本願に係るイヤホンの実施例の、耳部に背く側の概略構成図である。
図43】本願に係るイヤホンの実施例をユーザの頭頂側から観察した概略構成図である。
図44】本願に係るイヤホンの実施例の分解概略構成図である。
図45】本願に係る仕切り板の実施例の、コアに向かう側の概略構成図である。
図46】本願に係るイヤホンの実施例の断面概略構成図である。
図47】本願に係るイヤホンの実施例の断面概略構成図である。
図48】本願に係る音響双極子の音場分布概略図である。
図49】本願に係る音響双極子とバッフルを組み合わせた音場分布概略図である。
図50】本願に係る音響双極子にバッフルがある場合及びない場合の遠方場音圧概略図である。
図51】本願に係る音響双極子とバッフルを組み合わせた場合の理論モデル概略図である。
図52】本願に係るパラメータαと夾角θとの関係概略図である。
図53】本願に係る音響双極子の実施例と耳部との相対関係の概略図である。
図54】本願に係るイヤホンの実施例の、耳部に向かう側の概略構成図である。
図55】本願に係るイヤホンの実施例の概略構成図である。
図56】本願に係るイヤホンの実施例の周波数応答曲線概略図である。
図57】本願に係るイヤホンの実施例のバックキャビティの概略構成図である。
図58】本願に係るイヤホンの実施例の周波数応答曲線概略図である。
図59】本願に係るイヤホンの3つの実施例の、それぞれ装着状態にある場合の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面及び実施例を参照して、本願をさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例は、本願を説明するためのものに過ぎず、本願の範囲を限定するものではない。同様に、以下の実施例は、本願の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではなく、当業者が創造的な労力をしない前提で得る全ての他の実施例は、いずれも本願の保護範囲に含まれる。
【0010】
本願における「実施例」への言及は、実施例に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、本願の少なくとも1つの実施例に含まれることを意味する。当業者であれば、本願で説明される実施例が他の実施例と組み合わせることができることを明示的および暗黙的に理解することができる。
【0011】
図1を参照すると、図1は、本願に記載のユーザの耳部の輪郭の前側概略構成図である。
【0012】
図1に示すように、ユーザの耳部100は、外耳道101及びその付近の耳甲介腔102以外に、耳甲介舟103、三角窩104等の部位も、三次元空間において一定の深さ及び容積を有するため、イヤホンの装着を実現することができる。換言すれば、イヤホンの構造を合理的に設計し、かつユーザの耳部100の外耳道101以外の部位を利用することにより、同様にイヤホンの装着及び機械的振動の伝達を実現することができ、かつユーザの外耳道101を「解放」し、さらにユーザの体の健康を増進させるだけでなく、交通事故の発生確率を低下させることができる。これに基づいて、本願は、主にユーザの耳部100の上半部分(具体的には、耳甲介舟103、三角窩104、対耳輪105、舟状窩106、耳輪107等の部位が位置する領域であってもよい)により、イヤホンの装着及び機械的振動の伝達を実現するイヤホンを創造的に提供する。当然のことながら、イヤホンの装着の快適さ及び信頼性を向上させるために、ユーザの耳たぶ108等の部位をさらに利用してもよい。さらに、説明の便宜上、耳部100上のいくつかの特殊な生理的位置、例えば、耳輪107の前縁と頭部を接続する耳の上付け根LA、耳輪107上のダーウィン結節LB、対耳輪105の耳たぶ108に近接する一端にあり耳甲介腔102に向かう後耳介溝LC、耳甲介腔102の耳たぶ108に近接する一端の珠間切痕LDをさらに示すことができる。当然のことながら、ユーザに個人差が存在するため、例えば、ダーウィン結節等の生理的位置は、いくつかのユーザの耳部に明らかではなく、存在しない可能性もあるが、これは、他のユーザの耳部に当該生理的位置がないことを意味しない。
【0013】
なお、外耳道は、一定の深さを有して鼓膜まで延在するが、説明の便宜上、図1を参照して、本願では特に断らない限り、外耳道とは、具体的には鼓膜から離れた入口、即ち耳孔を指す。さらに、本願に記載の「耳部の前側」は、「耳部の後側」に対する概念であり、前者は、例えば図1のように耳部の頭部に背く側を指し、後者は、耳部の頭部に向かう側を指し、それらは、いずれもユーザの耳部を対象とする。
【0014】
図2図5を共に参照すると、図2は、本願に係るイヤホンの実施例の正面概略構成図であり、図3は、図2におけるイヤホンの左側面概略構成図であり、図4は、図2におけるイヤホンが装着状態にある場合の前方から見た概略図であり、図5は、図2におけるイヤホンが装着状態にある場合の後方から見た概略図である。なお、図2においてイヤホンのX、Y、Zの3つの方向を示すことは、主にXY、XZ、YZの3つの平面を示して、以下に対応する説明を容易にするためである。したがって、本願における全ての方向(例えば上、下、左、右、前、後等)の表現は、主に(図2に示すような)ある特定の姿勢での各部品間の相対的な位置関係、運動状況等を説明するためである。当該特定の姿勢が変化すると、該方向の表現も、対応して変化する。
【0015】
図2及び図3に示すように、イヤホン10は、フック状部11、接続部12及び保持部13を含んでもよい。接続部12は、イヤホン10が非装着状態(即ち、自然状態)にある場合に三次元空間において湾曲状を呈するように、フック状部11と保持部13を接続する。換言すれば、三次元空間において、フック状部11、接続部12、保持部13は、面一ではない。このように設置すると、イヤホン10が装着状態にある場合、図4及び図5に示すように、フック状部11は、主にユーザの耳部の後側と頭部との間に掛けられ、保持部13は、主にユーザの耳部の前側に接触し、それにより、保持部13とフック状部11は、協働して耳部を挟持することができる。例示的には、接続部12は、頭部から頭部の外側へ延在して、フック状部11と協働して耳部の前側に対する押圧力を保持部13に提供することができる。保持部13は、押圧力の作用で、具体的に耳甲介舟、三角窩、対耳輪等の部位が位置する領域に押し当てることができ、それにより、イヤホン10は、装着状態の場合に耳部の外耳道を塞がない。例示的には、イヤホン10が装着状態にある場合、保持部13のユーザの耳部における投影は、主に耳部の耳輪範囲内にある。さらに、保持部13は、耳部の外耳道の、ユーザの頭頂部側に位置し、かつ耳輪及び/又は対耳輪に接触してもよい。このように、保持部13が外耳道を塞ぐことを回避し、さらにユーザの両耳を解放することができる。さらに、保持部13と耳部との間の接触面積を増加させて、イヤホン10の装着の快適さを改善することができる。
【0016】
なお、ANSI:S3.36、S3.25及びIEC:60318-7標準に基づいて、頭部及びその(左、右)耳部を含むGRAS 45BC KEMARのようなシミュレータを製造することができるため、本願における「ユーザがイヤホンを装着する」又は「イヤホンが装着状態にある」という記載は、イヤホンが前述のシミュレータの耳部に装着されることとしてもよい。これに基づいて、本願に記載の「装着状態」は、イヤホンが前述のシミュレータの耳部に装着された後の正常な装着状態としてもよい。説明の便宜上、前述の正常な装着状態は、さらに耳部の前側、後側等の視角から、例えば、図4及び図5に示す正常な装着状態、図9及び図10に示す正常な装着状態で説明することができる。当然のことながら、ユーザに個人差が存在するため、イヤホン10の実際の装着状態は、前述の正常な装着状態と比較して一定の差異が存在する可能性がある。
【0017】
成人男性等のユーザの場合、その耳部の厚さは、常に厚い(「厚い耳」と通称される)ため、接続部12の形状、寸法等の構造パラメータ及びそれとフック状部11、保持部13との間の接続関係の、以下で例示的に説明される合理的な設計により、イヤホン10の装着安定性を向上させるように、イヤホン10が耳部にできるだけ密着することを保証することができ、さらにイヤホン10が耳の上付け根の付近の耳輪を過度に挟持することを回避することができ、即ち、耳の上付け根を自然に迂回して、イヤホン10の装着の快適さを向上させる。さらに、子供、未成年者、成人女性等のユーザの場合、その耳部の厚さは、特に成人男性の耳部の厚さに比べて、常に薄く(「薄い耳」と通称される)ため、イヤホン10が装着状態にある場合にユーザの耳部との密着性を向上させるために、接続部12の寸法を小さくしてもよく、例えば、接続部12を保持部13とフック状部11との間の円弧状遷移部としてもよい。
【0018】
さらに、イヤホン10は、コア14、マザーボード15及び電池16をさらに含んでもよい。コア14は、主に電気信号を対応する機械的振動(即ち「音響発生」)に変換し、対応する導体によりマザーボード15、電池16に電気的に接続することができる。マザーボード15は、主にコア14の音響発生を制御し、電池16は、主にコア14の音響発生に電気エネルギーを提供する。当然のことながら、本願に係るイヤホン10は、マイク、ピックアップのような音響伝達機器をさらに含んでもよく、ブルートゥース(登録商標)、NFC(Near Field Communication、近距離無線通信)のような通信デバイスをさらに含んでもよく、それらは、対応する導体によりマザーボード15、電池16に電気的に接続されて、対応する機能を実現する。
【0019】
例示的には、コア14は、保持部13に固定されてもよく、イヤホン10が装着状態にある場合、コア14は、押圧力の作用でユーザの耳部に密着することができる。さらに、イヤホン10が装着状態にある場合、保持部13は、主にユーザの耳部の前側に位置するため、図4に示すように、保持部13は、コア14を固定することに加え、ユーザとイヤホン10とのインタラクションを容易にするファンクションボタン(図2に示せず)を備えてもよい。これに基づいて、コア14及び他のファンクションボタン等とマザーボード15との間の配線距離を短くするように、マザーボード15は、保持部13に設置されてもよい。なお、保持部13は、コア14、マザーボード15、ファンクションボタン等を備えることができ、イヤホン10が装着状態にある場合にユーザの耳部の前側に位置するため、図5に示すように、電池16は、フック状部11に設置されてもよく、イヤホン10が装着状態にある場合に、主にユーザの耳部の後側と頭部との間に位置する。このように設置すると、電池16の容量を増加させて、イヤホン10のバッテリー駆動時間を改善するだけでなく、イヤホン10の重量を均一にして、イヤホン10の装着の安定性、快適さを向上させることもできる。
【0020】
さらに、本願の発明者は、長期にわたる研究から、保持部13の総重量とフック状部11の電池16に対応する部分(以下、電池部と略称する)の総重量との重量比は、4:1以内であってもよく、好ましくは3:1以内であってもよく、より好ましくは2.5:1以内であってもよい、ということが分かった。図2及び図3に示すように、いくつかの実施形態において、保持部13の総重量は、保持部13の自重及びその中のコア14、マザーボード15等の構造部品の重量であり、上記電池部の総重量は、上記電池部の自重及びその中の電池16等の構造部品の重量である。当然のことながら、当業者であれば容易に理解するように、設計の需要に応じて保持部13における構造部品及び上記電池部における構造部品を変更することができ、各位置における構造部品に対する調整は、いずれも本願の技術的解決手段に含まれ、重量比に影響を与えず、ここで説明を省略する。この時、イヤホン10の重量を両端に均等に分散させることができ、ユーザの耳部は、イヤホン10が装着状態にある場合に、支点としてイヤホン10を支持することができ、それにより、イヤホン10は、装着状態の場合に、少なくとも非運動状態では滑り落ちない。当然のことながら、それに伴い、ユーザの耳部は、イヤホン10の大部分の重量を受け、このように長時間装着すると、不快感を引き起こしやすい。このため、フック状部11、接続部12、保持部13等の構造は、イヤホン10の装着の快適さを向上させるために、軟質材料(例えば、ポリカーボネート、ポリアミド、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、シリカゲル等)で製造してもよい。さらに、イヤホン10の構造強度を向上させるために、フック状部11、接続部12、保持部13等の構造内にバネ鋼、チタン合金、チタンニッケル合金、クロムモリブデン鋼、アルミニウム合金、銅合金等の弾性ワイヤを設置してもよい。
【0021】
なお、イヤホン10の装着の快適さ及び安定性を両立させるために、さらに、以下のように改善することができる。
【0022】
1)接続部12と上記電池部は、硬質材料を選択し、両者の間の中間部分は、上記軟質材料を選択してもよく、又は、中間部分は、「軟質材料が硬質材料を包み込む」構造形式を採用し、例えば、ユーザがイヤホン10を装着する時、フック状部11がユーザに接触する領域は、上記軟質材料を選択し、残りの領域は、上記硬質材料を選択し、異なる材料は、二色成形、手触り塗料の塗装等のプロセスで成形される。上記硬質材料は、ポリカーボネート(Polycarbonate、PC)、ポリアミド(Polyamides、PA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(Acrylonitrile Butadiene Styrene、ABS)、ポリスチレン(Polystyrene、PS)、高衝撃ポリスチレン(High Impact Polystyrene、HIPS)、ポリプロピレン(Polypropylene、PP)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalate、PET)、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl Chloride、PVC)、ポリウレタン(Polyurethanes、PU)、ポリエチレン(Polyethylene、PE)、フェノール樹脂(Phenol Formaldehyde、PF)、ポリエーテルスルホン樹脂(Poly(ester sulfones)、PES)、ポリ塩化ビニリデン(Polyvinylidene chloride、PVDC)、ポリメタクリル酸メチル(Polymethyl Methacrylate、PMMA)、ポリエーテルエーテルケトン(Poly-ether-ether-ketone、PEEK)等、又はそれらのうちの少なくとも2種の混合物、又はそれらとガラス繊維及び炭素繊維等の強化剤との混合物を含むが、それらに限定されない。さらに、上記手触り塗料は、具体的にゴム手触り塗料、弾性手触り塗料、プラスチック弾性塗料等であってもよい。
【0023】
2)イヤホン10がユーザに装着されるため、イヤホン10は、常にユーザの皮膚に接触する一部の領域(以下、皮膚接触領域と略称する)があり、皮膚接触領域の材質は、一般的にユーザがイヤホン10を長時間装着する場合の快適さに影響を与える。このため、皮膚接触領域は、上記軟質材料を選択し、残りの領域は、上記硬質材料を選択してもよく、異なる材料は、二色成形、手触り塗料の塗装等のプロセスで成形される。
【0024】
上記軟質材料のショア硬度は、45-85A、30-60Dであってもよい。当然のことながら、上記軟質材料、上記硬質材料は、いずれも上記弾性ワイヤを被覆することができる。
【0025】
さらに、異なるユーザは、年齢、性別、遺伝子制御の形質発現等の面で大きな差異が存在する可能性があるため、異なるユーザの耳部及び頭部は、大きさが異なり、形状が異なる可能性がある。このため、フック状部11は、接続部12に対して回転可能であり、又は保持部13は、接続部12に対して回転可能であり、又は接続部12の一部は、他の部分に対して回転可能であり、それにより、フック状部11、接続部12、保持部13の三次元空間における相対的な位置関係を調整することができ、イヤホン10が異なるユーザに適合することに役立ち、即ちイヤホン10の装着面で、ユーザに対する適用範囲を拡大する。例えば、接続部12は、軟鋼線等の変形可能な材料で製造され、ユーザは、接続部12を折り曲げてその一部を他の部分に対して回転させることで、フック状部11、接続部12、保持部13の三次元空間における相対位置を調整することができ、さらにその装着需要を満たす。さらに、例えば、接続部12に回転軸機構121が設置され、ユーザは、回転軸機構121により、同様にフック状部11、接続部12、保持部13の三次元空間における相対位置を調整し、その装着需要を満たすことができる。回転軸機構121の詳細な構造は、当業者の理解の範囲内にあり、ここでは詳述しない。さらに、フック状部11と接続部12が回転軸機構121により移動可能に接続されると、フック状部11は、接続部12に対して回転可能であり、保持部13と接続部12が回転軸機構121により移動可能に接続されると、保持部13は、接続部12に対して回転可能であり、接続部12の一部と他の部分が回転軸機構121により移動可能に接続されると、接続部12の一部は、他の部分に対して回転可能である。
【0026】
図6を参照すると、図6は、図2におけるイヤホンが装着状態にある場合の力学モデル概略図である。なお、図6におけるYZ平面は、ユーザの頭部が位置する平面と見なしてもよく、図6におけるABCセグメントは、フック状部と見なし、図6におけるCDセグメントは、接続部と見なし、図6におけるDEFセグメントは、保持部と見なしてもよい。さらに、図6におけるC点は、図1における耳部の頭部に近接する上端部の領域(図1における破線枠Cで示す領域)に対応することができる。
【0027】
図4図6に示すように、イヤホン10が装着状態にある場合、ABCセグメントは、主にユーザの耳部の後側に位置し、DEFは、主にユーザの耳部の前側に位置し、CDセグメントは、主にユーザの耳部の厚さに適合する。この時、BCセグメント、CDセグメント及びDEFセグメントは、イヤホン10がユーザの耳部を挟持して装着の基本的な姿勢になるように、「クリップ」に類似する構造を形成することができる。以下、イヤホン10の装着時の受力状況及びその安定性等を例示的に説明する。
【0028】
図6に示すように、フック状部11と接続部12との間の第1の接続点Cからフック状部11の自由端(例えば、図6におけるA点が位置する一端)までの方向において、フック状部11は、ユーザの頭部に向かって折り曲げられ、頭部は第1の接触点B及び第2の接触点Aで接触する。第1の接触点Bは、第2の接触点Aと第1の接続点Cとの間に位置する。なお、第1の接触点B及び第2の接触点Aは、いずれも力学モデルにおける定義点であり、実際に装着する時に、異なるユーザの頭部、耳部等の生理的構造に差異が存在して、イヤホン10の実際の装着に一定の影響を与えるため、イヤホン10が実際の装着時に頭部に接触する位置は、フック状部11の自由端に対応してもよく、上記自由端と第1の接触点Bとの間の任意の点であってもよい。当然のことながら、ABセグメントは、ユーザの頭部に部分的又は全体的に当接してもよく、その力学モデル及び実際の装着における安定化原理は、上記技術的解決手段と同じであり、当業者が本願の技術的解決手段に基づいて創造的な労力を要することなく容易に分かり、調整できる内容であり、ここでは説明を省略する。このように設置すると、フック状部11は、第1の接触点Bを支点とするレバー構造となる。この時、フック状部11の自由端は、ユーザの頭部に押し当てられ、ユーザの頭部は、第2の接触点Aで頭部の外側へ向ける作用力を提供し、該作用力は、レバー構造により第1の接続点Cから頭部に向ける作用力に変換され、さらに接続部12を介して耳部の前側に対する押圧力を保持部13に提供する。
【0029】
なお、イヤホン10が装着状態にある場合にユーザの頭部に押し当てられ、ユーザの頭部が第2の接触点Aで頭部の外側に向かう作用力を提供することができるように、フック状部11の自由端は、少なくとも以下の条件を満たす必要がある。イヤホン10の非装着状態におけるフック状部11の自由端とYZ平面との夾角は、イヤホン10の装着状態におけるフック状部11の自由端とYZ平面との夾角よりも大きい。イヤホン10の非装着状態におけるフック状部11の自由端とYZ平面との夾角が大きいほど、フック状部11の自由端は、イヤホン10の装着状態ではユーザの頭部にしっかり押し当てられ、それに応じて、ユーザの頭部は、第2の接触点Aで頭部の外側に向けるより大きな作用力を提供することができる。
【0030】
なお、フック状部11の自由端がユーザの頭部に押し当てられる場合、ユーザの頭部が第2の接触点Aで頭部の外側に向かう作用力を提供することに加えて、フック状部11の少なくともBCセグメントは、耳部の後側に対して別の押圧力を提供し、かつ保持部13が耳部の前側に対して提供した押圧力と協働して、ユーザの耳部を「前後から挟持する」押圧効果を得て、イヤホン10の装着の安定性を向上させることができる。
【0031】
さらに、電池16は、主にフック状部11のABセグメントに設置されてもよく、それにより保持部13及びその中のコア14、マザーボード15等の構造の自重に抗して、イヤホン10の装着の安定性を向上させる。当然のことながら、フック状部11のユーザの耳部、頭部に接触する表面をつや消し表面、テクスチャを有する表面等の構造に構成することにより、フック状部11とユーザの耳部、頭部との間の摩擦力を増加させて、保持部13及びその中のコア14、マザーボード15等の構造の自重に抗して、イヤホン10の装着の安定性を向上させる。さらに、フック状部11の自由端(特にA点が位置する領域)は、変形可能であり、イヤホン10が装着状態にある場合、フック状部11の自由端は、ユーザの頭部に押し当てられて変形することにより、フック状部11の自由端とユーザの頭部との接触面積を大きくし、イヤホン10の装着の快適さ、安定性を向上させる。例えば、フック状部11は、二色成形を採用し、その自由端(特にA点が位置する領域)の弾性率を他の領域よりも小さくして、自由端の変形性能を増強させる。さらに、例えば、フック状部11の自由端には、自由端の変形性能を増強させるように、孔111が設置され、透かし彫り構造を呈する。孔111は、貫通孔及び/又は止まり穴であってもよく、その数は、1つ又は複数であってもよく、その軸線方向は、フック状部11の自由端とユーザの頭部との間の接触面に垂直であってもよい。
【0032】
なお、イヤホン10の装着の快適さ及び安定性を両立させるために、さらに、以下のように改善することができる:
【0033】
1)上記電池部の皮膚接触領域にテクスチャ構造が形成され、図16の(a)に示すように、当該テクスチャ構造は、フック状部11の長手方向に沿って離隔して分布する複数の帯状突起112aであってもよく、図16の(b)に示すように、当該テクスチャ構造は、フック状部11の長手方向に沿って離隔して分布する複数の点状突起112bであってもよく、当然のことながら、当該テクスチャ構造は、さらに格子状であってもよい。
【0034】
2)図16の(c)に示すように、上記電池部の皮膚接触領域に、フック状部11の長手方向に沿って延在する半紡錘状突起112cが設置されてもよい。フック状部11の自由端を基準とし、半紡錘状突起112cは、フック状部11の自由端に近接する方向(図16における矢印で示す方向)に沿って、フック状部11に対するその各部分の突起高さが漸増したのち漸減する。このように設置すると、ユーザがイヤホン10を装着する過程において、半紡錘状突起112cとユーザの皮膚との間の抵抗力をできるだけ小さくすることができ、ユーザがイヤホン10を装着した後、イヤホン10の脱落を回避するように、半紡錘状突起112cとユーザの皮膚との間の抵抗力をできるだけ大きくすることができる。
【0035】
3)上記電池部の皮膚接触領域がつや消し表面に構成された場合、肌なじみが良い材質が好ましい。
【0036】
上記様々な突起は、いずれも軟質で、減衰係数が大きく、肌なじみが良い材質を選択してもよい。さらに、上記様々な実施形態により、上記電池部の皮膚接触領域の摩擦係数は、0.1~1.0に達することができる。
【0037】
例示的には、C点のYZ平面における投影とEFセグメントのYZ平面における投影との間の直線距離は、10~17mmであってもよく、好ましくは12~16mmであり、より好ましくは13~15mmである。BCセグメントのXY平面における投影とDEセグメントのXY面における投影との間の夾角は、0~25°であり、好ましくは0~20°であり、より好ましくは2~20°である。さらに、ABセグメントとXY平面におけるB点を通る法線との間の夾角は、0~25°であり、好ましくは0~20°であり、より好ましくは2~20°である。さらに、いくつかの実施形態において、C点のXY平面における投影とEFセグメントのXY平面における投影との間の直線距離は、2~4mmであってもよく、好ましくは2.8mmである。当然のことながら、他のいくつかの実施形態において、C点のXY平面における投影とEFセグメントのXY平面における投影との間の直線距離は、1~4mmであってもよく、好ましくは2.5mmである。このように、接続部12は、装着状態で耳部の耳の上付け根を迂回して、イヤホン10の装着の快適さを向上させることができる。
【0038】
上記詳細な説明に基づいて、本願では、イヤホン10の重量を合理的に均等に配分することにより、ユーザの耳部は、イヤホン10が装着状態にある場合に支点としてイヤホン10を支持することができ、また、イヤホン10のフック状部11と保持部13との間に接続部12を設置することにより、イヤホン10が装着状態にある場合に接続部12とフック状部11を協働して耳部の前側に対する押圧力を保持部13に提供し、さらにイヤホン10が装着状態にある場合にユーザの耳部にしっかりと密着することができる。このように設置すると、イヤホン10の装着の安定性を向上させるだけでなく、イヤホン10の音響発生の信頼性を向上させることもできる。
【0039】
図7図11を共に参照すると、図7は、本願に係るイヤホンの別の実施例の正面概略構成図であり、図8は、図7におけるイヤホンの左側面概略構成図であり、図9は、図7におけるイヤホンが装着状態にある場合の前方から見た概略図であり、図10は、図7におけるイヤホンが装着状態にある場合の後方から見た概略図であり、図11は、図7におけるイヤホンが装着状態にある場合の力学モデル概略図である。なお、図11におけるYZ平面は、ユーザの頭部が位置する平面と見なしてもよい。図11におけるABCセグメントは、フック状部と見なしてもよく、図11におけるCDセグメントは、接続部と見なしてもよく、図11におけるDEFセグメントは、保持部と見なしてもよい。さらに、図11におけるC点は、図1における耳部の頭部に近接する上端部の領域(図1における破線枠Cで示す領域)に対応することができる。
【0040】
図4図6に示すように、イヤホン10が装着状態にある場合、ABCセグメントは、主にユーザの耳部の後側に位置し、DEFは、主にユーザの耳部の前側に位置し、CDセグメントは、主にユーザの耳部の厚さに適合する。この時、BCセグメント、CDセグメント及びDEFセグメントは、イヤホン10がユーザの耳部を挟持して装着の基本的な姿勢になるように、「クリップ」に類似する構造を形成することができる。以下、イヤホン10の装着時の受力状況及びその安定性等を例示的に説明する。
【0041】
上記実施例に比べて、主に、本実施例において、図7及び図8に示すように、フック状部11は、全体的に保持部13により近接し、イヤホン10が装着状態にある場合に、図9及び図10に示すように、フック状部11の、接続部12から離れた自由端は、ユーザの頭部に押し当てられず、ユーザの耳部の後側に作用する、という点で相違する。
【0042】
図11に示すように、フック状部11と接続部12との間の第1の接続点Cからフック状部11の自由端(例えば、図11におけるA点が位置する一端)までの方向において、フック状部11は耳部の後側に向かって折り曲げられ、耳部の後側とは第1の接触点Bで接触し、保持部13は、耳部の前側とは第2の接触点Fで接触する。イヤホン10において、自然状態(即ち、非装着状態)での接続部12の延在方向に沿った第1の接触点Bと第2の接触点Fとの間の距離は、装着状態での接続部12の延在方向に沿った第1の接触点Bと第2の接触点Eとの間の距離よりも小さく、それにより、耳部の前側に対する押圧力が保持部13に提供される。換言すれば、イヤホン10は、自然状態での接続部12の延在方向に沿った第1の接触点Bと第2の接触点Fとの間の距離がユーザの耳部の厚さよりも小さく、それにより、イヤホン10は、装着状態で「クリップ」のようにユーザの耳部を挟持することができる。
【0043】
さらに、第1の接触点Bと第1の接続点Cとの間に第1の接続線BCを有し、第2の接触点Fと保持部13及び接続部12の第2の接続点Eとの間に第2の接続線EFを有する。
【0044】
さらに、フック状部11は、接続部12から離れる方向に沿って延在し、即ち、フック状部11の全体の長さが延長してもよく、それより、イヤホン10が装着状態にある場合に、フック状部11は、さらに耳部の後側と第3の接触点Aで接触することができ、第1の接触点Bは、第1の接続点Cと第3の接触点Aとの間に位置し、かつ第1の接続点Cに近接する。イヤホン10において、自然状態での第1の接触点B及び第3の接触点Aの、接続部12の延在方向に垂直な基準面(図11におけるYZ平面)における投影間の距離は、装着状態での第1の接触点B及び第3の接触点Aの、接続部12の延在方向に垂直な基準面(図11におけるYZ平面)における投影間の距離よりも小さい。このように設置すると、フック状部11の自由端は、ユーザの耳部の後側に押し当てることができるだけでなく、ABCセグメントがC字形を呈することもでき、さらに、第3の接触点Aは、耳部の耳たぶに近接する領域に位置し、フック状部11は、(図11中、矢印Zによって示されるような)垂直方向にユーザの耳部を挟持して、保持部13の自重に抗することができる。加えて、フック状部11は、全体の長さが延長すると、垂直方向にユーザの耳部を挟持することができるだけでなく、フック状部11とユーザの耳部との間の接触面積を増加させることもでき、即ち、フック状部11とユーザの耳部との間の摩擦力を増加させて、イヤホン10の装着の安定性を向上させる。
【0045】
なお、イヤホン10の装着の快適さ及び安定性を両立させるために、さらに、以下のように改善することができる。
【0046】
1)フック状部11は、異なるユーザの耳部に適合する必要があり、異なるユーザの耳部は、大きさが異なり、形状が異なるため、フック状部11の自由端(例えば、上記電池部)は、耳が小さいユーザがイヤホン10を装着する場合に、宙吊り状態になりやすく、即ち、フック状部11は、ユーザの耳部と第1の接触点Bのみで接触する。このため、図7及び図8に示すように、フック状部11において、上記電池部の外径が他の中間部分よりも大きく、即ち段差があり、さらに漸進的なくびれ構造を形成する。このように設置すると、図9及び図10に示すように、ユーザがイヤホン10を装着する場合、フック状部11は、ユーザの耳部と第1の接触点Bで接触することができるだけでなく、その自由端は、ユーザの耳部と第3の接触点Aで接触することもでき、即ち、上記電池部は、いずれの場合でもユーザの耳部と第3の接触点Aで接触することができる。明らかに、より広範なユーザグループに適合するために、上記漸進的なくびれ構造は、フック状部11の長手方向に沿って離隔して複数分布していてもよい。
【0047】
2)同等の場合、上記電池部の長さと外径の長径の比もフック状部11とユーザの耳部との密着性に影響を与える。これに基づいて、本願の発明者は、長期にわたる研究から、図7及び図8に示すように、上記電池部の長さと外径の長径の比は、6:1以内であってもよく、好ましくは4:1以内であってもよい、ということが分かった。この時、フック状部11は、ユーザの耳部と第1の接触点Bで接触することができるだけでなく、その自由端は、ユーザの耳部と第3の接触点Aで接触することもでき、即ち、上記電池部は、ユーザの耳部によく密着することができる。
【0048】
図12を参照すると、図12は、本願に係るイヤホンのまた別の実施例の平面概略構成図である。
【0049】
上記関連説明に基づいて、図1に示すように、ユーザの耳部100は、一般的に耳甲介腔102、耳甲介舟103、三角窩104、舟状窩106等の凹み領域を有し、それに応じて、一般的に対耳輪105、耳輪107、耳輪脚109等の突起領域をも有する。耳部100の凹凸構造に基づいて、イヤホン10を、さらに弾性係止、弾性当接、掛け止め、被覆等の方式で、耳部100の対応する位置にしっかりと密着させ、イヤホン10の装着の快適さ及び信頼性を向上させることができる。
【0050】
さらに、図2図5を参照して、保持部13の各外面を以下のように定義する。1)保持部13のユーザの皮膚に接触する側を内面と定義し、2)保持部13の、X方向に上記内面とは反対する側を外面と定義し、3)保持部13の、Z方向の正の方向に向かう側を上面と定義し、4)保持部13の、Z方向の負の方向に向かう側を下面と定義し、5)保持部13の、Y方向の負の方向に向かう側を後面と定義する。保持部13は、図2及び図3に示すような立方体構造ではなく、円柱体、楕円柱体等のような構造である場合、上記上面、下面及び後面を周面として統一的に定義することができる。
【0051】
上記の実施形態のいずれかに比べて、主に、本実施例において、保持部13は、ユーザの耳部の前側を押し当てるだけでなく、さらに延長して耳部の耳甲介舟及び/又は三角窩内に保持することもできる、という点で相違する。このように設置すると、保持部13は、少なくとも接続部12の延在方向に耳部の耳輪に受け止められて、イヤホン10が装着状態にある場合に保持部13が外側へ折り返すことを回避し、イヤホン10の装着の安定性を向上させる。
【0052】
例示的には、図12に示すように、イヤホン10は、保持部13に接続された延出部17をさらに含む。(図12中、矢印Xによって示されるような)接続部12の延在方向に、延出部17と保持部13とは、耳部の耳輪の厚さ以下である隙間を有する。このように設置すると、イヤホン10が装着状態にある場合、延出部17は、耳部の耳甲介舟及び/又は三角窩内に入り込むことができる。この時、耳甲介舟及び/又は三角窩が三次元空間において一定の深さ及び容積を有するため、延出部17が耳甲介舟及び/又は三角窩内に入り込んだ場合に、保持部13は耳部の耳輪に掛けられ、それにより、イヤホン10が装着状態にある場合に保持部13が外側へ折り返すことを回避し、イヤホン10の装着の安定性を向上させる。それと同時に、保持部13は、上記押圧力の作用で耳部の前側に押し当てられ、両者が互いに協働して、イヤホン10の装着の安定性を向上させることに役立つ。
【0053】
いくつかの実施形態において、図17の(a)に示すように、延出部17は、主に保持部13の内面及び/又は下面に設置され、イヤホン10がユーザに装着された後に耳甲介腔102内に入り込むことができるように構成されてもよい。この時、延出部17は、耳甲介腔102及びその付近の人体組織に、弾性当接の方式でしっかりと密着することができる。
【0054】
他のいくつかの実施形態において、図17の(b)に示すように、延出部17は、主に保持部13の内面に設置され、イヤホン10がユーザに装着された後に耳甲介舟103内に入り込むことができるように構成されてもよい。この時、延出部17は、耳甲介舟103及びその付近の人体組織に、弾性係止及び/又は弾性当接の方式でしっかりと密着することができる。
【0055】
他のいくつかの実施形態において、図17の(c)に示すように、延出部17は、主に保持部13の上面に設置され、イヤホン10がユーザに装着された後に三角窩104内に入り込むことができるように構成されてもよい。この時、延出部17は、三角窩104及びその付近の人体組織に、弾性係止及び/又は弾性当接の方式でしっかりと密着することができる。
【0056】
他のいくつかの実施形態において、図17の(d)又は(e)に示すように、延出部17は、主に保持部13の上面及び/又は後面に設置され、イヤホン10がユーザに装着された後に舟状窩106内に入り込むことができるように構成されてもよい。この時、延出部17は、舟状窩106及びその付近の人体組織に、弾性係止及び/又は弾性当接の方式でしっかりと密着することができる。
【0057】
さらに他のいくつかの実施形態において、図17の(f)に示すように、延出部17は、主に保持部13の後面に設置され、イヤホン10がユーザに装着された後に耳部100の前側から耳部100の後側まで折り曲げられて延在して、耳輪107を引っ掛けることができるように構成されてもよい。この時、延出部17は、耳輪107及びその付近の人体組織に、掛け止め及び被覆の方式でしっかりと密着することができる。
【0058】
さらに他のいくつかの実施形態において、図17の(g)に示すように、延出部17は、主にフック状部11に設置されてもよく、例えば、フック状部11の上記電池部に近接する位置に設置され、イヤホン10がユーザに装着された後に耳部100の後側から耳部100の前側まで折り曲げられて延在して、対耳輪105を引っ掛けることができるように構成されてもよい。この時、延出部17は、対耳輪105及びその付近の人体組織に、掛け止め及び被覆の方式でしっかりと密着することができる。
【0059】
さらに他のいくつかの実施形態において、図17の(h)に示すように、延出部17は、主にフック状部11に設置されてもよく、例えば、上記電池部に設置され、イヤホン10がユーザに装着された後に耳部100の後側から耳部100の前側まで折り曲げられて延在して、耳輪107を引っ掛けることができるように構成されてもよい。この時、延出部17は、耳輪107及びその付近の人体組織に、掛け止め及び被覆の方式でしっかりと密着することができる。
【0060】
なお、延出部17の大きさ、形状等の構造パラメータは、それと耳部100との間の適合要件に応じて倣い設計を行うことができ、ここで限定されない。さらに、延出部17とイヤホン10の対応する構造部品は、一体成形され、即ち、取り外し不能であってもよい。当然のことながら、延出部17とイヤホン10の対応する構造部品は、着脱可能に接続されてもよい。例えば、保持部13又は上記電池部の対応する位置に取付孔が形成され、延出部17は、該取付孔内に嵌め込まれる。さらに、例えば、延出部17は、別の弾性スリーブと一体成形されることにより、延出部17は、弾性スリーブにより保持部13又はフック状部11の対応する位置に嵌設される。
【0061】
さらに、図12を参照すると、保持部13のY方向における寸法は、22~34mmであってもよく、好ましくは24~28mmであってもよく、より好ましくは26mmであってもよく、それにより、保持部13は、耳部100の前側に押圧される。この時、図17を参照すると、延出部17は、Z方向における高さ寸法が4~8mmであってもよく、XY平面に投影すると、その長さが8~15mmであって、幅が2~5mmであってもよい。
【0062】
図13を参照すると、図13は、本願に係るイヤホンのまた別の実施例の平面概略構成図である。
【0063】
上記の実施形態のいずれかに比べて、主に、本実施例において、コア14のイヤホン10の全体構造における相対位置を調整するために、保持部13が多段構造である、という点で相違する。このように設置すると、イヤホン10が装着状態にある場合、耳部の外耳道を塞がないと共に、コア14をできるだけ外耳道に近接させることができる。
【0064】
例示的には、図13の(a)に示すように、保持部13は、順に接続された第1の保持段131a、第2の保持段132a及び第3の保持段133aを含んでもよい。第1の保持段131aの第2の保持段132aから離れた一端は、接続部12に接続され、第3の保持段133aに、主にコア14、マザーボード15等の構造部品が設置される。さらに、第2の保持段132aは、第1の保持段131aに対して間隔をあけながら折り返され、即ち、両者は、U字形構造を呈する。
【0065】
例示的には、図13の(b)に示すように、保持部13は、順に接続された第1の保持段131b、第2の保持段132b及び第3の保持段133bを含んでもよい。第1の保持段131bの第2の保持段132bから離れた一端は、接続部12に接続され、第3の保持段133bに、主にコア14、マザーボード15等の構造部品が設置される。さらに、第2の保持段132bは、第3の保持段133bと第1の保持段131bとの間に間隔をあけたように、第1の保持段131bに対して折り曲げられる。
【0066】
図14及び図15を共に参照すると、図14は、本願に係るイヤホンのさらなる別の実施例の概略構成図であり、図15は、図14におけるイヤホンが装着状態にある場合の力学モデル概略図である。なお、図15におけるYZ平面は、ユーザの頭部が位置する平面と見なしてもよく、図15におけるBCセグメントは、フック状部と見なしてもよく、図15におけるCDセグメントは、接続部と見なしてもよく、図15におけるDEFセグメントは、保持部と見なしてもよく、図15におけるGHセグメントは、延出部と見なしてもよい。さらに、図15におけるC点は、図1における耳部の頭部に近接する上端部の領域(図1における破線枠Cで示す領域)に対応することができる。
【0067】
上記の実施形態のいずれかに比べて、主に、本実施例において、図14に示すように、フック状部11の長さがより短く、フック状部11と接続部12との間の夾角がより小さく、延出部17は、保持部13に接続され、保持部13とは、耳部の耳輪の厚さ以下であってもよい隙間をする、という点で相違する。このように設置すると、イヤホン10が装着状態にある場合、フック状部11及び接続部12により、保持部13がユーザの耳部の前側に掛けられ、延出部17が耳部の耳甲介舟及び/又は三角窩内に入り込むことができ、それにより、保持部13が外側へ折り返すことを回避し、イヤホン10の装着の安定性を向上させる。本実施例は、延出部17が耳部の耳甲介舟内に入り込むことができることを例として例示的に説明される。
【0068】
図15に示すように、B点は、耳部の後側の凹みを引っ掛け、C点を支点とすることにより、フック状部11は、保持部13の自重に抗して、保持部13がユーザの耳部から落下することを回避する。この時、フック状部11と耳部との間の摩擦力を増加させて、イヤホン10の装着の安定性を向上させることができる。さらに、H点は、耳部の耳輪を引っ掛け、G点を別の支点とすることにより、延出部17は、保持部13の自重に抗して、保持部13がユーザの耳部から外側へ折り返すことを回避する。この時、延出部17と耳部との間の摩擦力を増加させて、イヤホン10の装着の安定性を向上させることができる。
【0069】
上記関連説明に基づいて、異なるユーザは、年齢、性別、遺伝子制御の形質発現等の面で大きな差異が存在する可能性があるため、異なるユーザの耳部及び頭部は、大きさが異なり、形状が異なる可能性がある。すると、上記の実施例のいずれかに基づいて、より広範なユーザグループの装着需要を満たすことができ、かつ異なるユーザがイヤホン10を装着する時に良好な快適さ及び安定性を有するように、さらにイヤホン10の関連構造を以下のように改善することができる。
【0070】
図18を参照すると、図18は、本願に係るイヤホンのさらなる別の実施例の概略構成図である。
【0071】
上記の実施形態のいずれかに比べて、主に、本実施例において、図18に示すように、フック状部11の自由端に弾性構造部品18がさらに設置されてもよい、という点で相違する。弾性構造部品18は、上記軟質材料で製造されてもよく、一定の構造強度を有し、かつユーザがイヤホン10を装着する場合の快適さを両立させることができる。さらに、弾性構造部品18は、管状を呈してもよく、フック状部11の自由端に着脱可能に嵌設されてもよい。この時、弾性構造部品18は、イヤホン10の部品として、ユーザが実際の使用需要に応じて取り付けるか又は取り外すことに役立つ。弾性構造部品18のユーザに接触する部分に上記テクスチャ構造、上記つや消し表面が設置されてもよい。
【0072】
例示的には、弾性構造部品18は、一体的に接続された第1の管状部181及び第2の管状部182を含んでもよい。第1の管状部181と第2の管状部182は、屈曲状を呈し、具体的な折り曲げ角度は、実際の使用需要に応じて合理的に設計することができる。当然のことながら、弾性構造部品18は、ユーザが折り曲げ、折り返し等の方式で上記折り曲げ角度を柔軟に調整できるように、少なくともその折り曲げ箇所に一定の記憶特性を有してもよい。このように設置すると、ユーザがイヤホン10を装着する場合、弾性構造部品18は、ユーザの耳部の後側から耳の付け根の凹みを引っ掛けて、イヤホン10の脱落を回避することができる。
【0073】
さらに、第1の管状部181と第2の管状部182は、いずれも中空管状を呈してもよく、両者は、互いに連通してもよく、互いに連通しなくてもよく、いずれもフック状部11の自由端に嵌設されてもよい。本実施例は、第1の管状部181と第2の管状部182が、弾性構造部品18の折り曲げ箇所での構造強度を改善するために互いに連通しない場合を例として例示的に説明する。第1の管状部181の長さ(L1)と第2の管状部182の長さ(L2)を等しくしなくてもよく、それにより、ユーザは、実際の使用需要に応じて第1の管状部181と第2の管状部182のうちの1つをフック状部11の自由端に嵌着するかを選択して、フック状部11と弾性構造部品18の実際の全長を調整する。この時、弾性構造部品18は、上記電池部を部分的又は完全に被覆してもよい。図18を参照して、本実施例は、弾性構造部品18が上記電池部を部分的に被覆し、例えば、弾性構造部品18が上記電池部の半分を被覆する場合を例として例示的に説明する。
【0074】
本願の発明者は、長期にわたる研究から、図18に示すように、第1の管状部181の長さ(L1)と第2の管状部182の長さ(L2)との差が2.0~8.0mmの範囲内にある場合、弾性構造部品18は、異なるユーザがイヤホン10を装着する時に耳の後側の耳の付け根の凹みをしっかり引っ掛けることができる、ということが分かった。好ましくは、上記長さの差は、3.5~7.0mmの範囲内にある。
【0075】
上記詳細な説明に基づいて、フック状部11の自由端に弾性構造部品18が嵌設されると、上記電池部の外径も増加し、即ち、フック状部11の自由端の実際の外径が変更し、このように、異なるユーザグループの外耳介の開き角度、特に「立ち耳」によりよく適合して、イヤホン10の回転及び外側へ折り返す問題を解決することができる。これに基づいて、第1の管状部181及び/又は第2の管状部182の肉厚を設計することにより、弾性構造部品18と上記電池部との間に段差を形成して、上記漸進的なくびれに類似する技術的効果を達成することができる。
【0076】
図19及び図20を共に参照すると、図19は、図8におけるフック状部の斜視概略構成図であり、図20は、図19における弾性ワイヤの、フック状部の延伸方向に垂直な基準面に沿った断面概略構成図である。なお、図19に示す弾性ワイヤは、一般的にフック状部等に内嵌されて見えないが、説明の便宜上、例えば、弾性ワイヤを被覆する一部の材料を除去して、それが外観から見えるように示す。
【0077】
上記関連説明に基づいて、イヤホン10の構造強度を向上させるために、フック状部11、接続部12、保持部13等の構造内にバネ鋼、チタン合金、チタンニッケル合金、クロムモリブデン鋼等のような弾性ワイヤ115をさらに設置してもよい。一般的に、弾性ワイヤ115の断面は、円形であってもよい。
【0078】
図19及び図20に示すように、弾性ワイヤ115は、各方向に異なる変形性能を有するようにフラットシート構造であってもよい。弾性ワイヤ115の断面は、図20の(a)に示すような角丸長方形であってもよく、図20の(b)に示すような楕円形であってもよい。例示的には、弾性ワイヤ115の長辺(又は長軸、L3)とその短辺(又は短軸、L4)との比は、4:1~6:1の範囲内にあり、好ましくは5:1である。さらに、図20の(c)に示すように、弾性ワイヤ115の断面が図20の(a)に示す角丸長方形である場合、弾性ワイヤ115は、プレス、予備曲げ等のプロセスにより短軸方向に円弧状を呈するようにしてもよく、それにより、弾性ワイヤ115は、一定の弾性ポテンシャルエネルギーを貯蔵することができる。例えば、弾性ワイヤ115は、元の状態がカール状態であり、真っ直ぐに伸ばされた後に、プレスプロセスにより短軸方向に円弧状を呈するようになり、それにより、弾性ワイヤ115は、一定の内部応力を貯蔵して平らな形態を維持することができ、「記憶ワイヤ」になり、小さな外力を受けると、捲縮状態に復帰することにより、フック状部11を人の耳に密着して被覆させる。例示的には、弾性ワイヤ115の円弧高さ(L5)とその長辺(L3)との比は、0.1~0.4の範囲内にあってもよい。
【0079】
このようにして、このようなフラットシート構造を有する弾性ワイヤ115の作用で、フック状部11は、X方向に強い剛性を有するだけでなく、フック状部11と保持部13が協働してユーザの耳部100を弾性的に挟持することができ、また、フック状部11は、その長手方向に沿って湾曲して強い弾性を有するため、フック状部11自体は、ユーザの耳部又は頭部に弾性的に押圧することができる。
【0080】
図21を参照すると、図21は、本願に係るイヤホンのさらなる別の実施例の正面概略構成図である。
【0081】
上記の実施形態のいずれかに比べて、主に、本実施例において、図21に示すように、イヤホン10の装着の快適さ及び安定性を向上させるために、接続部12と保持部13との間の接続位置を調整することもでき、例えば、接続部12は、主に保持部13の下縁に接続されることにより、保持部13の上半部分(図21における破線枠で示す)が接続部12に拘束されず、保持部13が耳部100に背く外側への反転モーメントを補償する、という点で相違する。
【0082】
図22及び図23を共に参照すると、図22は、本願に係る回転軸アセンブリの実施例の概略構成図であり、図23は、図22における回転軸アセンブリの組立前後の概略構成図である。なお、図22に示す回転軸アセンブリは、一般的に接続部等に内嵌されて見えないが、説明の便宜上、例えば、回転軸アセンブリを被覆する一部の材料を除去して、それが外観から見えるように示す。
【0083】
図22に示すように、回転軸機構121は、折り曲げ可能なメタルドームに構成されてもよく、その一端がフック状部11に接続され、他端が接続部12の一部としてもよい。例えば、当該メタルドームは、金属インサート射出成形プロセスにより接続部12と一体に接続され、かつフック状部11に接続される。このように設置すると、メタルドームは、外力Fの作用で変形することにより、フック状部11は、保持部13に対して第1の使用状態(例えば図22に実線で示す)と第2の使用状態(例えば図22に破線で示す)との間で切り替えることができ、即ち、フック状部11は、保持部13に対して回転可能である。
【0084】
例示的には、図23に示すように、メタルドームは、第1の変形部1211、第2の変形部1212及び中間接続部1213を含んでもよい。メタルドームを取り付ける前に、図23の(a)に示すように、第1の変形部1211と第2の変形部1212は、それぞれ中間接続部1213の両端に折り曲げて接続される。さらに、メタルドームを取り付けた後、図23の(b)に示すように、第1の変形部1211の中間接続部1213から離れた自由端と第2の変形部1212の中間接続部1213から離れた自由端とは、直接的にヒンジ接続されて、三角形構造を形成し、かつフック状部11の長手方向に沿って湾曲状になり、又は、フック状部11における弾性ワイヤにさらに接続される。このように設置すると、メタルドームは、取り付けられた後に一定の弾性ポテンシャルエネルギーを貯蔵することができ、外力Fの作用で変形しやすくなる。
【0085】
さらに、メタルドームを取り付ける前に、図23の(a)に示すように、第1の変形部1211の長さと第2の変形部1212の長さ(L6と記す)は等しく、かつ中間接続部1213の長さ(L7)よりも大きくてもよい。L3とL4は、以下の関係式を満たすことができる:0.1≦L7/L6≦0.6。当然ながら、メタルドームの厚さは、0.1~0.8mmであってもよい。
【0086】
図24図28を共に参照すると、図24は、本願に係る回転軸アセンブリの別の実施例の概略構成図であり、図25は、図24における回転軸アセンブリの実施形態における分解概略構成図であり、図26は、図25における回転軸アセンブリの断面概略構成図であり、図27は、図24における回転軸アセンブリの別の実施形態の分解概略構成図であり、図28は、図27における回転軸アセンブリの断面概略構成図である。
【0087】
例示的には、図24に示すように、回転軸機構121は、第1の接続ベース1214、第2の接続ベース1215、回転軸1216及び弾性アセンブリ1217を含んでもよい。第1の接続ベース1214は、接続部12の一部としてもよく、第2の接続ベース1215は、フック状部11(又はその中の金属弾性ワイヤ115)に接続されてもよく、当然のことながら、フック状部11の一部としてもよい。さらに、第1の接続ベース1214と第2の接続ベース1215が回転軸1216により接続されることにより、第1の接続ベース1214と第2の接続ベース1215は、相対的に回転することができ、さらにフック状部11は、回転軸機構121により接続部12及び保持部13に対して回転可能である。図25図28に示すように、弾性アセンブリ1217は、フック状部11が保持部13に対して回転した後の状態を維持するために、第1の接続ベース1214と第2の接続ベース1215との間に弾性的に当接するように構成される。このように設置すると、ユーザがイヤホン10を装着する場合、フック状部11を耳部100により密着するよう調整することができ、イヤホン10の装着の快適さと安定性を向上させる。
【0088】
いくつかの実施形態において、図25及び図26に示すように、第2の接続ベース1215は、第1の接続ベース1214内に部分的に挿入することができ、それにより回転軸1216は、第1の接続ベース1214と第2の接続ベース1215内に同時に穿設することができ、さらに回転嵌合を実現する。さらに、第1の接続ベース1214には、一端が開口した収容キャビティ12141が設置されてもよく、弾性アセンブリ1217は、弾性部材12171及び当接部材12172を含んでもよい。弾性部材12171は、収容キャビティ12141内に設置され、当接部材12172の一端は、収容キャビティ12141内に部分的に伸び込んで、弾性部材12171に当接し、当接部材12172の他端は、第2の接続ベース1215に当接する。
【0089】
なお、弾性アセンブリ1217が第1の接続ベース1214と第2の接続ベース1215との間で弾性的に当接するように構成するために、回転軸機構121の組み立てが完了した後、弾性部材12171は、圧縮状態にあってもよい。これに基づいて、ユーザがイヤホン10を装着する場合、特にユーザの耳部100が大きい場合、フック状部11及びその中の弾性ワイヤ115は、力を受けて保持部13に対して回転することができ、又は回転する傾向を有し、さらに第2の接続ベース1215を第1の接続ベース1214に対して回転させ、かつ当接部材12172により弾性部材12171を圧縮する。この時、ニュートンの第3法則に基づいて、弾性部材12171は、当接部材12172に反作用して、第2の接続ベース1215に当接し、少なくともフック状部11をユーザの耳部100にさらに密着させる。
【0090】
他のいくつかの実施形態において、図27及び図28に示すように、当接部材12172の弾性部材12171から離れた一端は、球状体又は柱状体等に構成してもよく、第2の接続ベース1215の弾性ワイヤ115から離れた一端に回転軸1216の周方向に沿って分布する複数の溝が設置されてもよい。当接部材12172は、弾性部材12171の弾性力の作用で上記溝内に部分的に係入することができる。換言すれば、フック状部11は、保持部13に対して異なる角度に回転すると、当接部材12172は、それぞれ異なる溝に係入することができ、それにより多段調整の目的を達成する。
【0091】
図29を参照すると、図29は、本願に係るイヤホンの任意の実施例におけるXY平面での断面概略構成図である。
【0092】
いくつかの実施形態において、イヤホン10は、空気伝導イヤホンであってもよく、これを例として、その保持部及びその中のコア、マザーボード等の構造部品を例示的に説明する。
【0093】
図29に示すように、保持部13は、内ケース131c及び外ケース132cを含んでもよく、両者を接続して、コア14、マザーボード15等の構造部品を収容するキャビティ構造を形成する。なお、ユーザがイヤホン10を装着する場合、主に内ケース131cがユーザの耳部100に接触する。この時、マザーボード15に大きさが異なり、形状が異なる大量の電子部品が集積されるため、保持部13のキャビティ内部が極めて複雑になり、このようにイヤホン10の音響性能に影響を与えやすい。このため、本実施例において、保持部13の内部に仕切り板133cを設置することにより、コア14とマザーボード15を仕切ってマザーボード15から独立したキャビティ200cを形成する。キャビティ200cは、より平滑なキャビティ内壁を有してもよい。このように設置すると、キャビティ200cは、マザーボード15及びその上の電子部品の影響を受けないため、イヤホン10の音響性能を効果的に改善することができる。
【0094】
例示的には、仕切り板133cは、コア14に直接接続されてもよく、例えば、両者を接着することにより、両者は、キャビティ200cを直接形成し、仕切り板133cとコア14が取り囲んで形成したキャビティ200cの内壁を、直角、尖角等の鋭い構造からできるだけ回避することができる。さらに、保持部13の内壁と締り嵌めを形成して、音響シールを実現するように、さらに仕切り板133cおよびコア14の縁部を弾性部材(図示せず)で包んでもよい。
【0095】
上記関連説明に基づいて、装着状態で、イヤホン10は、耳部を挟持することができる。装着の安定性及び快適さを向上させるために、イヤホン10は、耳部を弾性的に挟持することができる。
【0096】
例示的には、図30に示すように、フック状部11は、接続部12に接続された弾性部112及びフック状部11の自由端に位置する電池部113を含んでもよい。電池部113に少なくともイヤホン10の電池16が設置され、電池16は、柱状に設置されてもよい。電池16等の構造部品を容易に設置するために、電池部113は、硬質プラスチックなどの硬質材料で製造されてもよい。当然のことながら、装着の快適さを両立させるために、電池部113の少なくともユーザの皮膚に接触する領域に弾性被覆層を設置してもよく、又は弾性塗料をスプレーしてもよい。さらに、電池部113に比べて、弾性部112は一定の弾性変形性能を有するため、フック状部11は、外力作用で変形して、保持部13に対して変位することにより、フック状部11と保持部13を協働して耳部を弾性的に挟持することを可能にする。このように、ユーザはイヤホン10を装着する過程において、耳部を保持部13とフック状部11との間に挿入しやすいように、まず力を少し入れてフック状部11を保持部13からずらしてもよい。適切な位置に装着して手を放すと、イヤホン10は、耳部を弾性的に挟むことができる。当然のことながら、実際の装着状況に応じてイヤホン10の耳部での位置をさらに調整することができる。
【0097】
弾性部112の長さとフック状部11の長さとの比は、48%以上であってもよく、好ましくは前述の比は、60%以上であってもよい。弾性部112の断面における任意の方向の径方向寸法は、5mm以下であってもよく、好ましくは前述の径方向寸法は、4mm以下であってもよい。このように、弾性部112は、より優れた弾性変形性能を有するように細長い構造に構成してもよく、それにより、イヤホン10は、耳部をよりよく弾性的に挟持する。加えて、弾性部112の断面積をできるだけ小さくすることにより、近視、遠視メガネ、又はAR、VR、MR等のスマートグラスに対応する装着空間を残し、さらにユーザの他の装着需要を両立させることができる。さらに、フック状部11は、主にユーザの頭部と耳部との間に掛けられるため、弾性部112の断面を円形又は楕円形にすることにより、少なくとも弾性部112は、耳部及び/又は頭部によりよく接触することができ、耳部と頭部との間の境界線にできるだけ近接することができ、さらに装着の安定性を向上させる。
【0098】
電池部113の少なくとも一部の領域の断面積を弾性部112の最大断面積よりも大きくすることにより、電池部113は、より大容量の電池16を設置して、イヤホン10のバッテリー駆動時間を増加させることができる。いくつかの実施例において、電池部113は、柱状に設置されてもよく、長さと外径との比は、6以下であってもよい。
【0099】
上記関連説明に基づいて、フック状部11において、弾性部112と電池部113が異なる用途を有するため、両者の断面積に大きな差異が存在する可能性がある。このため、フック状部11は、弾性部112と電池部113との間に位置する遷移部114をさらに含んでもよく、遷移部114の断面積は、弾性部112の断面積と電池部113の断面積との間にあり、かつ弾性部112から電池部113へ漸増する。このように、フック状部11の外観上の均一性を向上させるだけでなく、フック状部11を耳部及び/又は頭部によりよく接触させることもできる。さらに、耳部の後側に一般的に、耳甲介舟に対応する耳甲介舟隆起及び耳甲介腔に対応する耳甲介腔隆起等の複数の隆起が存在し、かつ耳甲介腔隆起が一般的に耳甲介舟隆起よりも耳たぶに近接するため、遷移部114の耳部に向かう側に、耳部の後側輪郭に対応する倣い凹みを設置することができ、さらにフック状部11が耳部の後側に効果的に接触することに役立ち、例えば前述の倣い凹みが耳甲介腔隆起に接触する。簡単に言うと、前述の倣い凹みにより耳部の後側の隆起を回避して、耳部の後側の隆起がフック状部11を押し上げることを回避し、さらにフック状部11を耳部によりよく接触させる。いくつかの実施例において、遷移部114について、電池部113の中心軸線に沿った基準断面において、前述の倣い凹みの曲率半径は、遷移部114の耳部に背く他側の曲率半径よりも小さくてもよく、即ち、倣い凹みの湾曲程度がより大きくてもよく、それによりフック状部11が耳部の後側の様々な隆起及び凹みに適応しやすく、遷移部114の他の領域は、主に弾性部112と電池部113との間の遷移をできるだけ早く滑らかにし、さらにフック状部11の外観上の均一性を向上させる。
【0100】
周知のように、医学、解剖学等の分野において、体の矢状面(Sagittal Plane)、冠状面(Coronal Plane)及び水平面(Horizontal Plane)の3つの基本的な切断面と、矢状軸(Sagittal Axis)、冠状軸(Coronal Axis)及び垂直軸(Vertical Axis)の3つの基本的な軸を定義することができる。矢状面は、体の前後方向に沿って切った地面に垂直な切断面を指し、体を左右の2つの部分に分ける面である。冠状面は、体の左右方向に沿って切った地面に垂直な切断面を指し、体を前後の2つの部分に分ける面である。水平面は、体の上下方向に沿って切った地面に平行な切断面であり、体を上下の2つの部分に分ける面である。それに応じて、矢状軸は、体の前後方向に沿って冠状面を垂直に通過する軸を指し、冠状軸は、体の左右方向に沿って矢状面を垂直に通過する軸を指し、垂直軸は、体の上下方向に沿って水平面を垂直に通過する軸を指す。
【0101】
上記関連説明に基づいて、イヤホン10の重量及びその分布は、ある程度で装着の安定性に影響を与える。フック状部11の重量は、主に電池部113に集中してもよい。いくつかの実施例において、保持部13の総重量と電池部113の総重量との重量比は、4以下であってもよい。図31に示すように、装着状態において、保持部13の耳部に背く側から観察すると、電池部113は、少なくとも部分的に第1の参照面(RP1と記す)からユーザの前方側に位置してもよく、第1の参照面は、保持部13の耳部との接触点(CP0と記す)を通過して上記冠状面に平行である。このように、電池部113の重心の例えば耳の上付け根に対するモーメントを低減することに役立ち、それにより装着状態で電池部113が過大な自重や過大なモーメントで反転することを回避し、さらに装着の安定性を向上させる。さらに、電池部113は、弾性部112において上記垂直軸に沿ってユーザの頭頂部に最も近い第1の位置点(CP1と記す)を通過して上記冠状面に平行な第2の参照面(RP2と記す)と交差してもよい。さらに、フック状部11及び接続部12の耳部に向かう内縁は、保持部13の耳部との接触点から最も離れた第2の位置点(CP2と記す)を有し、電池部113は、第2の位置点を通過して上記冠状面に平行な第3の参照面(RP3と記す)と交差してもよい。第2の位置点は、接続部12上にあってもよく、フック状部11と接続部12との間の境界線にあってもよく、以下に例示的に説明する。このように、電池部113の重心と保持部13の重心は、前述の第1の参照面の同じ側に位置し、さらに装着の安定性を向上させる。
【0102】
説明の便宜上、図30に示すように、保持部13は、互いに直交する厚さ方向、長手方向及び高さ方向を有することができ、それぞれ順に「X」、「Y」及び「Z」と表記することができる。前述の厚さ方向は、装着状態で保持部13が耳部に近接するか又は離れる方向として定義され、前述の長手方向は、装着状態で保持部13がユーザの前方に近接するか又は離れる方向として定義され、前述の高さ方向は、装着状態で保持部13がユーザの頭頂部に近接するか又は離れる方向として定義される。装着状態で、前述の高さ方向は、上記垂直軸に平行であってもよく、前述の厚さ方向及び前述の長手方向は、上記水平面に平行であってもよい。
【0103】
いくつかの実施例において、例えば図30図32に示すように、フック状部11の接続部12に近接するセグメントの上記厚さ方向に垂直な基準面(例えばYZが位置する平面)における正投影は、保持部13の前述の基準面における正投影と部分的に重なってもよい。フック状部11の接続部12に近接するセグメントは、弾性変形性能が電池部113よりもはるかに大きい弾性部112であってもよく、電池部113と接続部12との間に位置し、かつ弾性変形性能が電池部113と大きく異ならない硬質構造であってもよい。このように、保持部13とフック状部11は、耳部の前側と耳部の後側から耳部を弾性的に挟持することができるだけでなく、挟持力は、主に圧縮応力として表され、さらに装着の安定性及び快適さを向上させる。加えて、電池部113の重心がユーザの顔に近づくことに役立ち、さらに装着の安定性を向上させる。当然のことながら、他のいくつかの実施例において、例えば図4及び図5に示すイヤホン、さらに、例えば図9及び図10に示すイヤホンのように、フック状部11の上記厚さ方向に垂直な基準面における正投影と保持部13の前述の基準面における正投影は、互いにずれてもよい。
【0104】
例示的に、図30及び図31に示すように、弾性部112の上記基準面における正投影と保持部13の上記基準面における正投影は、部分的に重なってもよく、電池部113の上記基準面における正投影と保持部13の上記基準面における正投影は、互いにずれてもよい。このように、保持部13とフック状部11が前後の2つの方向から耳部を弾性的に挟持することに役立つ。
【0105】
さらに、弾性部112及び遷移部114の上記基準面における正投影の耳部に向かう側の縁部の曲率半径は、接続部12から、フック状部11の電池部113から離れる方向に向かって、漸増したのち漸減してもよい。前述の縁部の曲率半径がまず漸増することにより、フック状部11は、耳部の後側の輪郭形状によりよく密着することができ、さらに漸減することにより、フック状部11の電池部113に近接する一端の湾曲程度は、大きくなり、さらに電池部113は、保持部13に向かって近接し、このようにフック状部11が耳部の後側を引っ掛けることに役立ち、さらに装着の安定性を向上させる。さらに、前述の縁部の曲率半径は、連続的に変化する方式で漸増したのち漸減してもよく、段階的に変化する方式で漸増したのち漸減してもよく、当然のことながら、この2種類の方式を組み合わせてもよい。例えば、前述の縁部は、曲率半径を有する複数のセグメントを含み、接続部12から電池部113への方向において、複数のセグメントの曲率半径は、漸増したのち漸減してもよく、これは、段階的変化と呼ばれてもよい。装着の安定性を向上させるために、複数のセグメントのうちの曲率半径が最大のセグメントは、保持部13の上記基準面における正投影と部分的に重なってもよい。
【0106】
例示的には、弾性部112及び遷移部114の上記基準面における正投影の耳部に向かう側の縁部は、弾性部112と接続部12との間の接続点を始点(CP3と記す)とし、装着状態での弾性部の上記高さ方向における最高点を終点(例えばCP1)とする第1のセグメント(11Aと記す)を有してもよい。第1のセグメントの曲率半径は、8mm~10mmであってもよい。第1のセグメントの起点は、第2の位置点と重なってもよく、第2の位置点よりも接続部12から離れていてもよく、以下に例示的に説明する。さらに、弾性部112と遷移部114の前述の縁部は、第2のセグメント(11Bと記す)をさらに有してもよく、第2のセグメントの始点は、第1のセグメントの終点であり、第2のセグメントの終点(CP4と記す)は、上記長手方向で前述の最高点との距離が8mm~11mmであってもよく、かつ上記高さ方向で前述の最高点との距離が7mm~10mmであってもよい。第2のセグメントの曲率半径は、9mm~12mmであってもよい。さらに、弾性部112と遷移部114の前述の縁部は、第3のセグメント(11Cと記す)をさらに有してもよく、第3のセグメントの始点は、第2のセグメントの終点であり、第3のセグメントの終点(CP5と記す)は、上記長手方向で前述の最高点との距離が9mm~12mmであってもよく、かつ上記高さ方向で前述の最高点との距離が19mm~21mmであってもよい。第3のセグメントの曲率半径は、29mm~36mmであってもよい。さらに、弾性部112と遷移部114の前述の縁部は、第4のセグメント(11Dと記す)をさらに有してもよく、第4のセグメントの始点は、第3のセグメントの終点であり、第4のセグメントの終点(CP6と記す)は、上記長手方向で前述の最高点との距離が7mm~10mmであってもよく、かつ上記高さ方向で前述の最高点との距離が25mm~32mmであってもよい。第4のセグメントの曲率半径は、19mm~25mmであってもよい。さらに、弾性部112と遷移部114の前述の縁部は、第5のセグメント(11Eと記す)をさらに有してもよく、第5のセグメントの始点は、第4のセグメントの終点であり、第5のセグメントの終点(CP7と記す)は、上記長手方向で前述の最高点との距離が2mm以下であってもよく、かつ上記高さ方向で前述の最高点との距離が30mm~38mmであってもよい。第5のセグメントの曲率半径は、9mm~13mmであってもよい。この時、第5のセグメントに上記倣い凹みが設置されてもよく、前述の倣い凹みの曲率半径は、第4のセグメントの曲率半径よりも小さくてもよい。
【0107】
なお、第2のセグメントの終点、即ち第3のセグメントの始点は、弾性部112の上記基準面における正投影と保持部13の上縁との間の交点であってもよい。同様に、第3のセグメントの終点、即ち第4のセグメントの始点は、弾性部112の上記基準面における正投影と保持部13の下縁との間の他の交点であってもよい。この時、第3のセグメントの上記基準面における正投影は、全て保持部13に収まることができる。さらに、図42に示すように、弾性部112と遷移部114との間の境界線は、第4のセグメントに位置してもよい。それに応じて、フック状部11の接続部12に近接するセグメントは、始点がフック状部11と接続部12との間の境界線であって、終点が弾性部112の上記基準面における正投影と保持部13の下縁との間の他の交点であってもよい。
【0108】
図33に示すように、フック状部11は、弾性ワイヤ115、電池収納室1161及びリード線117を含んでもよく、弾性ワイヤ115は、一端が接続部12に接続され、他端が電池収納室1161に接続され、リード線117は、弾性ワイヤ115に伴って電池収納室1161から接続部12及び保持部13まで延在することができる。フック状部11は、弾性ワイヤ115により一定の弾性変形性能を有し、電池収納室1161は、少なくとも電池16を収納し、リード線117は、少なくとも電池収納室1161と保持部13内の電子部品との間の電気的接続を実現する。さらに、フック状部11は、シリカゲルなどの弾性被覆体118をさらに含んでもよく、弾性被覆体118は、少なくとも弾性ワイヤ115及びリード線117を被覆することにより、外観品位及び装着の快適さを向上させる。電池収納室1161の断面積は、弾性ワイヤ115と弾性被覆体118からなる弾性部112の断面積の和よりも大きくてもよく、好ましくは弾性ワイヤ115、リード線117及び弾性被覆体118の断面積の和よりも大きくてもよい。
【0109】
さらに、フック状部11は、弾性ワイヤ115がトランジションピース1162により電池収納室1161に接続されるように、弾性ワイヤ115に接続されたトランジションピース1162をさらに含んでもよい。例えば、トランジションピース1162と弾性ワイヤ115は、金属インサート射出成形プロセスにより成形され、電池収納室1161は、電池16等の構造部品を配置するように、一端が開口した筒状構造に構成され、トランジションピース1162は、電池収納室1161の開口端に係合される。当然のことながら、他のいくつかの実施例において、トランジションピース1162と電池収納室1161は、一体成形されてもよく、電池収納室1161のトランジションピース1162から離れた一端は、開口状に構成されてもよく、かつ蓋板で密封されてもよい。トランジションピース1162の断面積は、フック状部11の長さに沿って接続部12から離れる方向に漸増してもよい。それに応じて、弾性被覆体118は、トランジションピース1162をさらに被覆することができる。上記倣い凹みは、トランジションピース1162に形成され、弾性被覆体118により現れてもよい。換言すれば、トランジションピース1162の耳部に向かう側に、耳部の後側輪郭に対応する倣い凹みが設置されてもよく、電池収納室1161の中心軸線に沿った基準断面において、上記倣い凹みの曲率半径は、トランジションピース1162の耳部に背く他側の曲率半径よりも小さくてもよく、即ち、上記倣い凹みの湾曲程度がより大きく、それにより遷移部114は、耳部の後側の隆起を回避する。
【0110】
上記関連説明に基づいて、図42に示すように、フック状部11において、弾性部112は、弾性ワイヤ115の接続部12及びトランジションピース1162から露出した部分に対応してもよく、主に弾性被覆体118及びその被覆した弾性ワイヤ115とリード線117を含んでもよく、電池部113は、電池収納室1161の部分に対応してもよく、主に電池収納室1161及びその中の電池16を含んでもよく、遷移部114は、トランジションピース1162の部分に対応してもよく、主に弾性被覆体118及びその被覆したトランジションピース1162を含んでもよい。換言すれば、弾性部112の長さは、弾性ワイヤ115の接続部12及びトランジションピース1162から露出して弾性被覆体118に被覆された部分の長さであってもよい。
【0111】
さらに、イヤホン10は、処理回路及び処理回路に結合された検出部品1163をさらに含んでもよく、検出部品1163は、フック状部11が耳部の後側と頭部との間に掛けられたか否かを検出し、処理回路は、検出部品1163の検出結果に基づいてイヤホン10が装着状態にあるか否かを判断する。処理回路は、マザーボード15に集積されてもよく、検出部品1163は、フック状部11(例えば、トランジションピース1162又は電池収納室1161)の耳部に向かう側に設置されたコンデンサ、インダクタンス、抵抗感知素子のうちのいずれか1種又はそれらの組み合わせであってもよい。例示的には、検出部品1163は、静電容量感知素子であってもよく、トランジションピース1162の倣い凹みに設置されてもよい。
【0112】
いくつかの適用シーンにおいて、検出部品1163は、イヤホン10が装着状態にあると検出する場合、処理回路は、イヤホン10を再生状態に切り替えるように制御するための第1の制御信号を生成する。検出部品1163は、イヤホン10が装着状態にあることを検出しない場合、処理回路は、イヤホン10を一時停止状態に切り替えるように制御するための第2の制御信号を生成する。このように、イヤホン10の電気エネルギーを節約するだけでなく、イヤホン10のインタラクティブ性を向上させることができる。
【0113】
他のいくつかの適用シーンにおいて、イヤホン10は、ペアで設置されて通信可能に接続された第1のイヤホン及び第2のイヤホンを含んでもよく、例えば、第1のイヤホン及び第2のイヤホンは、それぞれユーザの左右の耳部に装着され、それらにいずれも検出部品1163が設置される。処理回路は、第1のイヤホン及び第2のイヤホンにおける検出部品1163の検出結果に基づいて判断して、そのうちの1つをオーディオソースデバイス(例えば、携帯電話、タブレット及びスマートウォッチ等)と通信可能に接続されたメインイヤホンとして選択する。このように、ユーザが2つのイヤホンを同時に使用する場合、所定の規則に従って、そのうちの1つをオーディオソースデバイスと通信可能に接続されたメインイヤホンとして選択し、もう1つをメインイヤホンと通信可能に接続されたサブイヤホンとして選択することができる。ユーザが2つのイヤホンのうちの1つのみを使用する場合、使用されたイヤホンをメインイヤホンとする。
【0114】
図30及び図32に示すように、保持部13の耳部に向かう側は、第1の領域13A及び第2の領域13Bを含んでもよく、第2の領域13Bは、第1の領域13Aよりも接続部12から離れていてもよく、即ち、第2の領域13Bは、保持部13の接続部12から離れる自由端に位置してもよい。上記関連説明に基づいて、弾性部112などのフック状部11の接続部12に近接するセグメントの上記厚さ方向に沿った正投影は、第2の領域13Bと部分的に重なってもよい。さらに、第1の領域13Aに放音孔1311が設置され、第2の領域13Bは、装着状態で放音孔1311が耳部から離隔するように、第1の領域13Aよりも耳部に向かって突起し、かつ耳部に接触する。簡単に言うと、保持部13は、その自由端に凸包構造に構成されてもよい。このように、コア14は、放音孔1311を通って耳部に伝送される音を生成することができるため、前述の凸包構造は、耳部が放音孔1311を塞ぐことによりコア14の生成した音が弱くなり、さらに出力できないことを回避することができる。例示的には、上記厚さ方向において、第2の領域13Bの第1の領域13Aに対する最大突起高さは、1mm以上であってもよく、2つの領域の間を滑らかに遷移してもよい。なお、装着状態で放音孔1311が耳部から離隔するようにするためだけであれば、第1の領域13Aに比べて、耳部に向かって突起する第2の領域13Bは、保持部13の他の領域であってもよく、例えば放音孔1311と接続部12との間の領域である。さらに、耳甲介腔と耳甲介舟は、一定の深さを有し、かつ耳孔と連通するため、放音孔1311の上記厚さ方向に沿った耳部における正投影は、耳甲介腔及び/又は耳甲介舟内に少なくとも部分的に収まることができる。例示的には、保持部13は、耳孔のユーザの頭頂部側に位置し、かつ対耳輪に接触することができ、この時、放音孔1311の上記厚さ方向に沿った耳部における正投影は、耳甲介舟内に少なくとも部分的に収まることができる。
【0115】
さらに、図30及び図47に示すように、保持部13において、コア14の背向する両側にそれぞれイヤホン10のフロントキャビティ200とバックキャビティ300が形成されてもよく、放音孔1311は、フロントキャビティ200と連通し、かつ耳部に音を出力する。保持部13には、バックキャビティ300に連通する、放音孔1311よりも耳孔から離れている圧力逃がし孔1312がさらに設置されてもよい。このように、圧力逃がし孔1312は、フロントキャビティ200内の空気圧の変化がバックキャビティ300に阻害されることをできるだけ回避するように、空気が自由にバックキャビティ300に出入りすることを可能にし、放音孔1311を通って耳部に出力された音声の品質を改善する。それだけでなく、放音孔1311及び圧力逃がし孔1312を通ってイヤホン10の外部に出力された音声の位相が逆であるため、耳部から離れた遠方場で逆位相として互いに相殺し、即ち「音響双極子」となって、音漏れを低減する。圧力逃がし孔1312の中心と放音孔1313の中心との間の接続線と上記厚さ方向との間の夾角は、0°~50°であってもよく、好ましくは、前述の夾角は、0°~40°であってもよく。さらに、保持部13には、バックキャビティ300に連通する音調整孔1313がさらに設置されてもよく、音調整孔1313は、バックキャビティ300における音場の高圧領域を破壊してバックキャビティ300における定在波の波長を短くし、それにより、圧力逃がし孔1312を介してイヤホン10の外部に出力される音声の共振周波数をできるだけ高くし、例えば4kHzよりも大きくして、音漏れを低減する。好ましくは、音調整孔1313と圧力逃がし孔1312は、それぞれコア14における互いに対向する両側に位置してもよく、例えば、上記高さ方向に背向して設置することにより、バックキャビティ300における音場の高圧領域を最大限に破壊する。圧力逃がし孔1312の開口方向は、ユーザの頭頂部に向かってもよく、例えば、その開口方向と上記垂直軸との間の夾角は、0°~10°であり、それにより圧力逃がし孔1312は、音調整孔1313よりも耳孔から離れており、さらにユーザは、圧力逃がし孔1312からイヤホン10の外部に出力された音声を聞き取りにくく、それにより音漏れを低減する。これに基づいて、圧力逃がし孔1312は、上記長手方向において第1の中心を有してもよく、音調整孔1313は、上記長手方向において第2の中心を有してもよく、かつ第2の中心は、上記長手方向において第1の中心よりも放音孔1311の中心から離れていてもよく、それにより、音調整孔1313と放音孔1311との間の距離をできるだけ大きくし、さらに音調整孔1313を介してイヤホン10の外部に出力される音声と放音孔1311を通って耳部に伝送される音声との間の逆位相の相殺を減少させる。換言すれば、音調整孔1313の上記高さ方向に沿った正投影は、放音孔1311からできるだけ離れるように、第2の領域13Bの上記厚さ方向に沿った正投影と少なくとも部分的に交差してもよい。
【0116】
簡単に言うと、ユーザは、イヤホン10を装着する場合に、主に放音孔1311を通って耳孔に伝送された音声を聴き、他の圧力逃がし孔1312及び音調整孔1313等の音響孔は、主にできるだけ当該音声を、低音が深く沈み、高音が透徹するという音質が聞こえられるようにする。したがって、圧力逃がし孔1312の出口端の上記長手方向における寸法(例えば、図32におけるL1で示す)とバックキャビティ300の圧力逃がし孔1312に近接する一端の上記長手方向における寸法(例えば図45におけるL2で示す)との比は、0.9以上であってもよく、両者の上記厚さ方向における寸法関係は、同じであるか又は類似してもよく、それによりバックキャビティ300をできるだけ大面積でイヤホン10の外部と連通させ、バックキャビティ300のフロントキャビティ200に対する阻害を最大限に低減し、さらに圧力逃がし孔1312を介してイヤホン10の外部に出力される音声の共振周波数をできるだけ高周波にオフセットすることができる。
【0117】
なお、コアケース131等の構造部品が一定の厚さを有するため、コアケース131に形成された放音孔1311、圧力逃がし孔1312及び音調整孔1312等の孔は、一定の深さを有し、さらにコアケース131に形成された収容空洞に対して、本願に係る孔は、前述の収容空洞に近接する入口端及び前述の収容空洞から離れる出口端を有する。以下に言及する仕切り板137及びその上に形成された連通孔は、それと類似し、ここでは説明を省略する。
【0118】
図30図32に示すように、自然状態で観察し、また、イヤホン10の装着状態でユーザの頭頂部に向かう側から観察すると、例えば、上記高さ方向に沿って観察すると、保持部13と少なくともフック状部11の接続部12に近接するセグメントは、上記厚さ方向に離隔して設置され、接続部12は、円弧状に設置されて保持部13とフック状部11との間に接続されてもよい。このように、接続部12により、上記厚さ方向に、耳部の前側に位置する保持部13と耳部の後側に位置するフック状部11とは、少なくとも接続部12に近接するセグメントでは常に互いに離隔することができ、それによりイヤホン10が装着状態で耳の上付け根及びその付近の組織を迂回して、イヤホン10が耳の上付け根の付近の耳輪を過度に挟持することによる不快感を回避する。
【0119】
例示的には、接続部12と保持部13は、上記長手方向に沿って接続することができる。少なくとも一部の接続部12は、保持部13に接続される一端からフック状部11に接続される他端への方向において、同時に上記長手方向及び上記高さ方向に沿って保持部13の自由端から離れて延在して、全体としてユーザの顔側に向かって前方に突出し、それによりフック状部11と保持部13の上記高さ方向における高さの差が滑らかに遷移することができる。当然のことながら、少なくとも一部の接続部12は、保持部13に接続される一端からフック状部11に接続される他端への方向において、上記長手方向に沿って保持部13の自由端から離れて延在してもよい。それだけでなく、接続部12自体又はそれとフック状部11の接続部12に近接するセグメントは、共に上記厚さ方向に沿って保持部13の自由端から離れて延在してもよく、それにより保持部13とフック状部11の接続部12に近接するセグメントは、上記厚さ方向に離隔して設置される。いくつかの実施例において、図37及び図38に示すように、接続部12は、さらに保持部13に接続される一端からフック状部11に接続される他端への方向において、上記長手方向に沿って保持部13の自由端に近接すると同時に、上記高さ方向に沿って保持部13の自由端から離れて延在してもよく、即ち、接続部12自体は、三次元空間において迂回沿在構造を形成する。他のいくつかの実施例において、図42及び図43に示すように、接続部12は、保持部13に接続される一端からフック状部11に接続される他端への方向において、同時に上記長手方向及び上記高さ方向に沿って保持部13の自由端から離れて延在してもよく、即ち、迂回沿在構造の前半部分を形成し、フック状部11の接続部12に近接するセグメント(例えば、弾性部112)は、接続部12から離れる方向に上記長手方向に沿って保持部13の自由端に近接し続けると同時に、上記高さ方向に沿って保持部13の自由端から離れて延在してもよく、即ち、迂回沿在構造の後半部分を形成し、さらに両者を組み合わせて三次元空間において迂回沿在構造を形成する。当然のことながら、他のいくつかの実施例において、前述の迂回沿在構造は、前半部分又は後半部分のみを有してもよい。
【0120】
いくつかの実施例において、フック状部11の接続部12に近接するセグメント(例えば、弾性部112)、接続部12及び保持部13の耳部に向かう側の縁部は、迂回して延在する円弧状に設置されてもよい。当該円弧状の迂回変曲点(例えば、CP2)を通過しかつ上記長手方向に平行な基準方向において、当該迂回変曲点から3mm離れる位置で、当該円弧の上記厚さ方向に沿った最小幅W1は、1mm~5mmであってもよい。
【0121】
他のいくつかの実施例において、上記厚さ方向において、フック状部11の接続部12に近接するセグメント、例えば弾性部112と、保持部13との間の最小間隔は、0mmよりも大きくかつ5mm以下であってもよい。
【0122】
さらに他のいくつかの実施例において、上記厚さ方向において、放音孔1311の中心(O0と記す)とフック状部11の接続部12に近接するセグメント(例えば弾性部112)との間の距離W2は、3mm~6mmであってもよい。
【0123】
さらに他のいくつかの実施例において、上記厚さ方向において、第2の領域13Bとフック状部11の接続部12に近接する部セグメント(例えば弾性部112)との間の距離W3は、1mm~5mmであってもよい。
【0124】
図34及び図32に示すように、保持部13は、接続部12に接続されたコアケース131を含んでもよく、コア14及びマザーボード15等の構造部品は、いずれもコアケース131の収容空間内に固定されてもよい。例示的には、コアケース131は、上記厚さ方向に対向して設置された第1のケース1314及び第2のケース1315を含んでもよく、第1のケース1314は、第2のケース1315よりも耳部に近接する。当然のことながら、第1のケース1314と第2のケース1315は、コア14の振動方向に対向して設置されてもよく、前述の振動方向は、上記厚さ方向に平行であってもよい。具体的には、コア14は、第1のケース1314の第2のケース1315に向かう側に固定されて、フロントキャビティ200を取り囲んで形成することができ、第2のケース1315は、第1のケース1314に係合されて、コア14とでバックキャビティ300を取り囲んで形成することができる。それに応じて、放音孔1311は、第1のケース1314、例えば耳部に向かう側に設置されてもよい。圧力逃がし孔1312と音調整孔1313は、それぞれ第2のケース1315における互いに対向する両側に設置されてもよく、例えば、両者は、上記高さ方向に対向して設置される。上記関連説明に基づいて、圧力逃がし孔1312の出口端の上記長手方向における寸法と第2のケース1315の上記長手方向における寸法との比は、0.55以上であってもよく、前述の比は、第2のケース1315の構造強度を両立させる前提で、バックキャビティ300をできるだけ大面積でイヤホン10の外部と連通させるために、好ましくは0.8~1である。
【0125】
いくつかの実施例において、図34に示すように、接続部12は、弾性ワイヤ115の電池収納室1161から離れた一端に接続された第3のケース122を含んでもよく、例えば、両者は、金属インサート射出成形プロセスにより成形される。第2のケース1315及び第3のケース122の上記長手方向における寸法は、いずれも第1のケース1314よりも小さく、かつ第2のケース1315の寸法は、第3のケース122の寸法よりもはるかに大きくてもよい。このように、第2のケース1315は、第1のケース1314に係合され、かつ上記厚さ方向における正投影が第1のケース1314と部分的に重なり、第3のケース122は、第1のケース1314の第2のケース1315の正投影の周辺に位置する部分に係合される。簡単に言うと、第3のケース122は、第2のケース1315及び第1のケース1314の同じ側に係合されてもよく、第1のケース1314は、大部分が保持部13のケースとして使用され、小部分が接続部12のケースを兼ねる。具体的な実施例において、第3のケース122の上記長手方向における最大寸法と第2のケース1315の上記長手方向における寸法との比は、0.4以下であってもよい。
【0126】
上記関連説明に基づいて、図37及び図38に示すように、自然状態で観察し、また、イヤホン10の装着状態でユーザの頭頂部に向かう側から、例えば、上記高さ方向に沿って観察すると、第1のケース1314と弾性ワイヤ115は、上記厚さ方向に離隔して設置され、第3のケース122は、円弧状に設置されて第1のケース1314と弾性ワイヤ115を接続することができ、それにより耳部の前側に位置する保持部13と、耳部の後側に位置するフック状部11とは、少なくとも接続部12に近接するセグメントで、上記厚さ方向に互いに離隔する。さらに、第3のケース122は、第1のケース1314に接続される一端から弾性ワイヤ115に接続される他端への方向において、同時に上記長手方向及び上記高さ方向に沿って第2のケース1315から離れて延在してから、上記長手方向に沿って第2のケース1315に近接しかつ上記高さ方向に沿って第2のケース1315から離れて延在してもよく、それによりフック状部11と保持部13の上記高さ方向における高さの差が滑らかに遷移することができる。この時、上記第2の位置点は、接続部12に位置してもよく、上記第1のセグメントの起点は、第2の位置点よりも接続部12から離れていてもよい。第1のケース1314の接続部12のケースを兼ねる部分は、第3のケース122に伴って同じ又は類似する変化傾向を有してもよい。このように、接続部12自体は、三次元空間において迂回沿在構造を形成することができる。したがって、図38に示すように、第3のケース122と第1のケース1314との間にパーティングライン(PL1と記す)を有し、両者は、独立して成形された後に組み合わせられ、接続部12のケースが三次元空間において迂回沿在構造を呈するため離型しにくいという問題を解決し、さらに製造効率を向上させ、製造コストを低減する。
【0127】
いくつかの実施例において、図41に示すように、第3のケース122は、第1のケース1314と一体成形され、かつ差込口が形成される。さらに、接続部12は、一端がフック状部11に接続され、他端が当該差込口内に差し込んで固定されるコネクタ123をさらに含んでもよく、それによりフック状部11と接続部12との間の接続を実現する。具体的には、コネクタ123の第3のケース122から離れた一端は、弾性ワイヤ115の電池収納室1161から離れる他端に接続されてもよく、例えばそれらは、金属インサート射出成形プロセスにより成形される。さらに、接続部12は、ロック部材124をさらに含んでもよく、コネクタ123の第3のケース122内に差し込んだ部分は、ロック部材124により第3のケース122とロックすることにより、組み立てやすいだけでなく、組み立ての信頼性を向上させることができる。ロック部材1224は、柱状又はシート状に設置された楔であってもよい。
【0128】
上記関連説明に基づいて、図42及び図43に示すように、第3のケース122は、第1のケース1314に接続される一端からコネクタ123に接続される他端への方向において、同時に上記長手方向及び上記高さ方向に沿って第2のケース1315から離れて延在してもよく、弾性ワイヤ115がコネクタ123に露出しかつコネクタ123に近接するセグメントは、コネクタ123から離れる方向に、さらに上記長手方向に沿って第2のケース1315に近接すると同時に、上記高さ方向に沿って第2のケース1315から離れて延在してもよい。それに応じて、第3のケース122は、さらに同時に上記厚さ方向に沿って第2のケース1315から離れて延在してもよく、弾性ワイヤ115がコネクタ123に露出しかつコネクタ123に近接するセグメントは、上記厚さ方向に沿って第2のケース1315から離れて延在し続けてもよい。この時、上記第2の位置点は、フック状部11と接続部12との間の境界線に位置してもよく、上記第1のセグメントの起点は、前述の第2の位置点と重なってもよい。第1のケース1314の接続部12のケースを兼ねる部分及びコネクタ123が第3のケース122から露出する部分は、第3のケース122に伴って同じ又は類似する変化傾向を有してもよい。このように、接続部12は、上記迂回沿在構造の前半部分のみを形成することができ、フック状部11は、続いて迂回沿在構造の後半部分を形成し、さらに両者は、協働して三次元空間に迂回沿在構造を形成することができる。したがって、図42に示すように、コネクタ123と第3のケース122及び第1のケース1314との間にパーティングライン(PL2と記す)を有し、両者は、独立して成形された後に差し込んで接続され、接続部12のケースが三次元空間において迂回沿在構造を呈するため離型しにくいという問題を解決し、さらに製造効率を向上させ、製造コストを低減する。
【0129】
なお、接続部12及び保持部13のケースは、さらに他の分割方式を有してもよく、例えば、保持部13のケースは、上記厚さ方向に沿って正投影面積がほぼ等しい2つのケースに分割され、接続部12のケースは、上記迂回変曲点により2つに分割されるか、又は一方のみ有し、他方として弾性ワイヤ115を兼用して、ケース同士をさらに対応して組み立てる。
【0130】
上記関連説明に基づいて、図34及び図32に示すように、保持部13は、耳部の前側に接触する必要があり、特に保持部13の自由端は、耳部の例えば対耳輪と接触点(例えば、CP0)で接触する必要がある。これに基づいて、コアケース131の耳部に向かう側に、少なくとも放音孔1311を避けて可撓性被覆構造132が設置されてもよく、例えば、可撓性被覆構造132に放音孔1311に対応する貫通孔が設置される。可撓性被覆構造132のショア硬度をコアケース131のショア硬度よりも小さくすることにより、保持部13は、可撓性被覆構造132により耳部に接触し、即ち、可撓性被覆構造132は、コアケース131と耳部との間に弾性的に支持され、装着の快適さを向上させる。さらに、接続部12及び保持部13のケースの分割及び接合方式に基づいて、イヤホン10の外観品位を向上させるために、可撓性被覆構造132は、射出成形プロセスにより第1のケース1314及び第3のケース122等に直接的に付着するように成形してもよく、当然のことながら、接着の方式により被覆してもよい。フック状部11に弾性被覆体118が設置されている場合があるため、弾性被覆体118と可撓性被覆構造132は、一回の射出成形プロセスにより成形してもよく、当然のことながら、二回の射出成形プロセスによりそれぞれ成形してもよく、両者の材質は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。これに基づいて、特に断らない限り、本願は、主に可撓性被覆構造132及び弾性被覆体118がユーザの皮膚に接触する部分を考察する。
【0131】
いくつかの実施例において、可撓性被覆構造132は、接続部12の自由端から離れて耳部に向かう保持部13の一側、即ち、第2の領域13Bに少なくとも部分的に設置されてもよい。それに応じて、弾性部112の上記基準面(例えば、YZが位置する平面)における正投影は、可撓性被覆構造132の上記基準面における正投影と部分的に重なってもよい。さらに、可撓性被覆構造132の厚さは、異なるように設計することができ、例えば、第2の領域13Bに対応する可撓性被覆構造132をより厚くすることにより、保持部13の自由端は、耳部に向かって突起し、良好な柔軟性を兼ね備える。当然のことながら、第2の領域13Bを第1の領域13Aよりも耳部に向かって突起させるためだけであれば、第1のケース1314の耳部に向かう側の厚さに対して差異化設計を行ってもよい。これに基づいて、第1のケース1314は、保持部13の耳部に向かう側の第1の領域13A及び第2の領域13Bとそれぞれ一対一に対応するように、第1の領域及び第2の領域を含んでもよい。
【0132】
さらに、可撓性被覆構造132のコアケース131に向かう一面には、互いに離隔している少なくとも1つの止まり穴1321が凹設されてもよく、止まり穴1321は、主に可撓性被覆構造132に変形空間を提供することにより、可撓性被覆構造132が装着状態で圧力を受けてより多く変形することを可能にし、さらに装着の快適さを向上させる。いくつかの実施例において、止まり穴1321の数は、複数であってもよく、例えば少なくとも2つであり、それらは、互いに離隔してビードを形成して、自体の構造を支持し、それにより弾性変形量と構造強度を兼ね備える。当然のことながら、他のいくつかの実施例において、止まり穴1321の数は、1つだけであってもよく、この時に可撓性被覆構造132の弾性率、厚さ及び止まり穴1321の大きさ等のパラメータを制御することにより同様に弾性変形量と構造強度を兼ね備えることができる。可撓性被覆構造132に止まり穴1321を有させるために、コアケース131、具体的には第1のケース1314の第2の領域13Bに対応する部分に、止まり穴1321と一対一に対応して連通する、可撓性被覆構造132の成形コアが挿入される貫通孔13141が設置されてもよい。この時、複数の貫通孔13141により、第1のケース1314の第2の領域13Bに対応する部分は、ハニカム状又は格子状に設置されてもよく、それにより第1のケース1314の当該領域での構造強度と可撓性被覆構造132への支持を両立させる。さらに、第1のケース1314の外側にハニカム状又は格子状構造に沿って貫通孔13141を取り囲む突起が設置されてもよく、当該突起は、可撓性被覆構造132に嵌め込まれてもよく、及び/又は、可撓性被覆構造132を貫通孔13141に部分的に嵌め込んで、可撓性被覆構造132の第2の領域13Bと第1のケース1314との間の接合面積を増加させ、さらに両者の間の接合強度を増加させる。これに基づいて、第1のケース1314の成形過程において対応する貫通孔13141を残してもよく、成形後に可撓性被覆構造132の成形コアを貫通孔13141に挿入してもよく、成形コアは、第1のケース1314から突出してもよく、最大突起高さは、凸包構造の実際の需要に依存してもよい。続いて、射出成形プロセスにより、第1のケース1314に可撓性被覆構造132を直接成形してから、成形コアを引き出せばよい。それに応じて、保持部13は、コアケース131内に設置された蓋板1316をさらに含んでもよく、例えば、蓋板1316は、第1のケース1314の可撓性被覆構造132に背く内側に固定して設置されて、貫通孔13141を密封し、さらに第1のケース1314及び蓋板1316とコア14を取り囲んでフロントキャビティ200を形成することができる。蓋板1316は、第1のケース1314のハニカム状又は格子状構造に支持されてもよい。
【0133】
例示的には、第1のケース1314の可撓性被覆構造132に背く内壁面に第1のフランジ13142が設置されてもよく、蓋板1316の可撓性被覆構造132に背く内壁面に第2のフランジ13161が設置されてもよく、第2のフランジ13161の両端と第1のフランジ13142の両端は、それぞれ対向して延在して接合して環状フランジを形成することができる。この時、コア14は、該環状フランジに当接してフロントキャビティ200を形成することができる。第1のケース1314の第2の領域13Bにザグリ溝が設置されてもよく、蓋板1316は、蓋板1316の内壁面と第1のケース1314の可撓性被覆構造132に背く内壁面とが面一になるように当該ザグリ溝に嵌め込まれてもよく、それによりフロントキャビティ200の内部キャビティ面は、できるだけ平坦になる。さらに、第1のケース1314の可撓性被覆構造132に背く内壁面にディスペンス溝がさらに設置されてもよく、当該ディスペンス溝は、前述のザグリ溝の縁部に位置し、かつ複数の貫通孔13141を取り囲むことができ、蓋板1316は、当該ディスペンス溝内のコロイドにより第1のケース1314に接着することができる。簡単に言うと、第1のフランジ13142及びディスペンス溝は、いずれも第1のケース1314の可撓性被覆構造132に背く内側に設置されるが、前者は、主に第1の領域13Aに対応し、後者は、主に第2の領域13Bに対応する。
【0134】
なお、例えば、可撓性被覆構造132が止まり穴1321を有しない他の実施例において、又は例えば、可撓性被覆構造132が独立して成形された後にコアケース131に例えば接着する他の実施例において、第1のケース1314に貫通孔13141を設置しなくてもよく、対応する蓋板1316を設置しなくてもよい。この時、第1のフランジ13142は、完全な環状フランジであってもよく、コア14は、当該環状フランジに当接してフロントキャビティ200を形成することができる。
【0135】
他のいくつかの実施例において、図41に示すように、可撓性被覆構造132は、コアケース131に設置された内側可撓性体1322と、少なくとも内側可撓性体1322を被覆する外側可撓性体1323とを含んでもよく、内側可撓性体1322は、第2の領域13Bに設置されてもよく、外側可撓性体1323は、内側可撓性体1322、第1のケース1314及び第3のケース122等を被覆することができる。この時、可撓性被覆構造132は、外側可撓性体1323により耳部に接触する。簡単に言うと、可撓性被覆構造132は、可撓性被覆構造132の第2の領域13Bに対応する部分の厚さ及び柔軟性を調整しやすいように、二層構造で構成されてもよい。それに応じて、弾性部112の上記基準面(例えば、YZが位置する平面)における正投影は、内側可撓性体1322の上記基準面における正投影と部分的に重なってもよい。同様に、放音孔1311は、内側可撓性体1322と接続部12との間に位置してもよい。さらに、内側可撓性体1322は、可撓性被覆構造132が上記凸包構造を形成するように、さらに耳部に向かって突出してもよく、即ち、コアケース131(具体的には第1のケース1314)から突出してもよい。
【0136】
例示的には、止まり穴1321は、内側可撓性体1322に設置されてもよく、その作用及び成形方式は、以上に説明したものと同じであるか又は類似することができ、ここでは説明を省略する。止まり穴1321は、複数であってもよく、それにより、内側可撓性体1322は、ハニカム状又は格子状に設置された、又は互いに離隔して設置された複数のビードを有する。当然のことながら、他のいくつかの実施例において、前述の止まり穴1321は、さらに内側可撓性体1322を貫通して貫通孔として設置されてもよい。同様に、前述のビード同士間の隙間、即ち、止まり穴1321は、可撓性被覆構造132に変形空間を提供する。具体的な実施例において、内側可撓性体1322及び外側可撓性体1323の材質は、0度のシリカゲルであってもよい。
【0137】
例示的には、内側可撓性体1322のショア硬度は、可撓性被覆構造132の第2の領域13Bに対応する部分がより柔軟になるように、外側可撓性体1323のショア硬度よりも小さくてもよい。外側可撓性体1323のコアケース131に向かう一面に止まり穴1321が凹設されてもよく、内側可撓性体1322は、止まり穴1321内に設置されてもよく、かつ外側可撓性体1323に接触する。換言すれば、止まり穴1321は、より柔軟な内側可撓性体1322を収容するように、外側可撓性体1323に設置されてもよい。具体的には、第1のケース1314の第2の領域13Bに対応する部分に、外側可撓性体1323の成形コアを挿入するための貫通孔13141が設置されてもよい。この時、外側可撓性体1323は、射出成形プロセスにより第1のケース1314に形成してもよく、外側可撓性体1323の成形後に成形コアを引き出すことにより、外側可撓性体1323に対応する止まり穴1321が形成されることで、収容領域が形成され、内側可撓性体1322は、貫通孔13141を通過して止まり穴1321に設置され、即ち、該収容領域内に設置され、その後、蓋板1316で貫通孔13141を密封することができる。蓋板1316の内側可撓性体1322に向かう側は、前述の収容領域の密封性を向上させるように、部分的に貫通孔13141に嵌め込まれてもよい。さらに、止まり穴1321の数は、1つであってもよく、貫通孔13141の数は、1つであってもよい。この時、貫通孔13141の開口面積が大きい場合、蓋板は、第1のケース1314の蓋板1316に対する支持面積を増加させるように、第1のケース1314と第1の領域13Aで部分的に重なるまで延在する。放音孔1311を塞ぐことを回避するように、蓋板1316には、放音孔1311とフロントキャビティ200を連通する連通孔13162が設置されてもよい。具体的な実施例において、外側可撓性体1323の材質は、30~50度のシリカゲルであってもよく、内側可撓性体1322の材質は、0度のシリカゲルであってもよく、接着剤滴下プロセスにより前述の収容領域内に形成することができる。他の具体的な実施例において、外側可撓性体1323の材質は、30~50度のシリカゲルであってもよく、内側可撓性体1322の材質は、0~10度のシリカゲルであってもよく、ブロック状に予め成形して前述の収容領域内に充填することができる。当然のことながら、内側可撓性体1322が外側可撓性体1323の成形過程における衝撃力を受けることができる場合、第1のケース1314に貫通孔13141を設置しなくてもよく、対応する蓋板1316を設置しなくてもよい。
【0138】
上記詳細な説明に基づいて、第1のケース1314、外側可撓性体1323、内側可撓性体1322及び蓋板1316等の構造部品は、組み立てを容易にするように、ケースアセンブリを形成し、即ち、モジュール化することができる。
【0139】
図30に示すように、イヤホン10は、さらに保持部13及び/又は接続部12に設置されたマイク125及びマイク133を含んでもよく、2つのマイク125、133は、マザーボード15に電気的に接続されてもよい。マイク125とマイク133との間の上記長手方向における距離は、マイク125とマイク133との間の上記高さ方向における距離よりも大きくてもよい。このように、イヤホン10の大きさが相対的に決定される場合に2つのマイク125、133の間の距離をできるだけ大きくすることにより、2つのマイク125、133の間の干渉を回避することができるだけでなく、イヤホン10の集音効果及び/又はノイズ低減効果を向上させることができる。さらに、マイク125の上記基準面(例えば、YZが位置する平面)における正投影とマイク133の上記基準面における正投影との間の接続線は、コア14の上記基準面における正投影を通過することができる。換言すれば、コア14が上記基準面に矩形に設置されると、2つのマイク125、133は、コア14の対角線に沿って実質的に設置されてもよい。
【0140】
いくつかの実施例において、マイク125は、接続部12に設置されてもよく、マイク133は、保持部13の接続部12から離れる自由端に設置されてもよい。この時、マイク125は、主にユーザの音声をピックアップするように、マイク133よりもユーザの口に近接してもよい。イヤホン10は、処理回路をさらに含んでもよく、処理回路は、マザーボード15に集積され、マイク125を主マイクとし、マイク133を補助マイクとし、かつ補助マイクが収集した音声信号により主マイクが収集した音声信号に対してノイズ低減処理を行って、集音効果を向上させる。当然のことながら、2つのマイク125、133のうちの少なくとも1つは、さらにイヤホン10が耳部に出力した音声に対してノイズ低減処理を行ってもよく、集音又はノイズ低減のための1つのマイクのみを設置してもよい。
【0141】
例示的には、マイク125は、第3のケース122と第1のケース1314との間に設置されてもよく、マイク133は、第2のケース1315と第1のケース1314との間に設置されてもよい。第3のケース122と、第2のケース1315の第1のケース1314に背く側にそれぞれマイクが音声を収集するための貫通孔が設置されてもよい。
【0142】
他のいくつかの実施例では、イヤホン10は、さらに保持部13又はフック状部11の接続部12から離れる自由端(即ち、電池部113)に着脱可能に接続されたブームマイク134を含んでもよく、ブームマイク134の自由端にマザーボード15に電気的に接続されたマイク1341が設置されてもよい。このように、マイク125及びマイク133と比較して、ブームマイク134は、マイク1341をユーザの口により近接させることができ、集音効果の増加に役立つ。本願は、ブームマイク134と保持部13が着脱可能に接続されることを例として例示的に説明する。例えば、ブームマイク134のメインロッド1342と第2のケース1315は、係止又は磁気等により着脱可能に接続され、さらに、例えば、メインロッド1342と第2のケース1315は、マイク1341とマザーボード15との間の配線距離を短縮するように、type-Cの挿着により着脱可能に接続される。
【0143】
さらに、ブームマイク134のマイク1341に加えて、イヤホン10にさらに他のマイク、例えばマイク125及び/又はマイク133を設置してもよい。処理回路は、ブームマイク134が保持部13に接続される場合に、マイク1341を主マイクとし、マイク133及びマイク125のうちの少なくとも1つを補助マイクとしてもよく、補助マイクが収集した音声信号により主マイクが収集した音声信号に対してノイズ低減処理を行って、集音効果を向上させることができる。それに応じて、処理回路は、ブームマイク134が保持部13から離れる場合に、マイク133及びマイク125をイネーブル状態に切り替え、かつマイク133及びマイク125のうちの一方を主マイクとし、他方を補助マイクとすることができる。当然のことながら、処理回路は、さらにブームマイク134が保持部13に接続される場合に、マイク133及びマイク125のうちの少なくとも1つをディスエーブル状態に切り替えて、集音及び/又はノイズ低減を考慮しながら電力を節約することができる。
【0144】
図30及び図31に示すように、イヤホン10は、保持部13又は接続部12に設置された第1の充電電極126と、フック状部11に設置された第2の充電電極1164とをさらに含んでもよく、第1の充電電極126及び第2の充電電極1164のうちの一方が充電正極として、他方が充電負極として用いられる。本願は、第1の充電電極126を充電正極とし、第2の充電電極1164を充電負極とすることを例として例示的に説明する。このように、イヤホン10は、2つの充電電極により充電することができるだけでなく、2つの充電電極の間の最短距離を大幅に増加させることができ、このように汗、水滴、塵埃等による充電電極間の短絡を防止することに役立つ。当然のことながら、短絡を防止することができる場合、2つの充電電極は、いずれもフック状部11、接続部12及び保持部13のうちの1つに設置されてもよい。さらに、2つの充電電極は、イヤホン10の外観品位を考慮すると、装着状態では見えないように、例えば、いずれもユーザの皮膚を向くように構成されてもよい。
【0145】
例示的には、第1の充電電極126は、接続部12に設置されてもよく、第2の充電電極1164は、電池部116に設置されてもよい。具体的には、第1の充電電極126は、少なくとも部分的に第2のケース1315の周辺に設置されてもよく、例えば、第3のケース122と第1のケース1314との間に設置されてもよい。それに応じて、第2の充電電極1164は、電池収納室1161に設置されてもよく、例えば、電池収納室1161の開口端から離れた底部に位置してもよい。第1の充電電極126は、柱状に設置されてもよく、第2の充電電極1164は、帯状に設置されてもよく、その長手方向は、電池収納室1161の周方向に沿って延在してもよい。さらに、充電電極が充電ボックスにおける出力電極に接触できるように、第1のケース1314と電池収納室1161にそれぞれ充電電極を露出させる貫通孔が設置されてもよい。このように、柱状電極に比べて、帯状電極は、前述の出力電極との接触可能な面積がより大きいため、充電電極の信頼性を向上させることができる。
【0146】
なお、第1の充電電極126は、接続部12に離隔して複数設置されてもよく、例えば、そのうちの1つが故障するともう1つが依然として利用可能であるように、2つに設置されてもよい。さらに、イヤホン10が磁気吸着により電池ボックス上の出力電極によく接触するように、2つの充電電極の付近にそれぞれ磁性体のような磁気吸着部材が設置されてもよい。充電ボックス上の出力電極の相対位置は、イヤホン10上の充電電極の変化に応じて調整することができる。
【0147】
図35に示すように、第2のケース1315が第1のケース1314よりも耳部から離れているため、ユーザがイヤホン10とインタラクションできるように、第2のケース1315に物理キー、ディスプレイ、タッチ回路基板等のようなインタラクションコンポーネントが設置されてもよい。
【0148】
例示的には、第2のケース1315は、第1のケース1314に対向して設置された底壁13151と、底壁13151に接続された、第1のケース1314に向かって延在する側壁13152とを含んでもよい。底壁13151の第1のケース1314に向かう側にマザーボード15に電気的に接続された可撓性タッチ回路基板135が設置され、可撓性タッチ回路基板135は、静電容量式、抵抗式、感圧式等のうちのいずれか1つに基づくことができ、これに限定されない。このように、イヤホン10のインタラクションを実現することができるだけでなく、コアケース131に追加の貫通孔を設置する必要がなく、さらに防水及び防塵性能を向上させる。具体的には、可撓性タッチ回路基板135は、タッチ操作を受信するためのタッチ部1351と、マザーボード15を接続するための電気接続部1352とを含んでもよく、例えば、可撓性タッチ回路基板135は、BTBコネクタを介してマザーボード15に係合することができる。タッチ部1351の底壁13151に対する面積は、70%以上であってもよい。上記関連説明に基づいて、側壁13152の第3のケース122に近接する側は、第2のケース1315と第3のケース122が組み合わせやすいように、開口して設置されてもよい。圧力逃がし孔1312及び音調整孔1313は、側壁13152に設置されてもよく、それぞれ開口端における互いに対向する両側に位置してもよい。
【0149】
さらに、底壁13151にザグリ溝13153が設置されてもよく、タッチ部1351は、ザグリ溝13153の底部に貼り付けられてもよい。このように、第2のケース1315を局所的に薄くして、可撓性タッチ回路基板135の感度を向上させる。それだけでなく、マザーボード15は、さらに第2のケース1315に接続されて、弾性パッド1353により可撓性タッチ回路基板135を底壁13151に押圧することができ、このようにタッチ部1351を底壁13151に密着させるだけでなく、タッチ部1351が押圧されて壊れることを回避することができる。ザグリ溝13153の深さは、押圧効果を向上させるために、タッチ部1351の厚さ以上であり、かつタッチ部1351と弾性パッド1353の厚さの和よりも小さくてもよい。
【0150】
いくつかの実施例において、底壁13151にザグリ溝13153の周辺に位置してマザーボード15に向かって延在する複数、例えば3つのヒートステーク13154が設置されてもよく、複数のヒートステーク13154のうちの少なくとも2つの、底壁13151における正投影の接続線は、タッチ部1351の底壁13151における正投影を貫通することができる。それに応じて、マザーボード15がその上の接続孔を通してヒートステーク13154に嵌設されて固定されるように、マザーボード15にヒートステーク13154に対応する接続孔が設置されてもよい。簡単に言うと、タッチ部1351が矩形に構成されると、少なくとも2つのヒートステーク13154は、タッチ部の対角線に沿って実質的に設置されてもよい。このように、マザーボード15の応力分布の均一性を向上させる。当然のことながら、他のいくつかの実施例において、ヒートステーク13154は、ネジ、バックル等に置き換えることができ、これに限定されない。
【0151】
上記関連説明に基づいて、マイク133は、SMTプロセスによりマザーボード15の底壁13151に背く側に直接設置されてもよい。それに応じて、底壁13151にザグリ溝13153の周辺に位置するフランジ13155が設置されてもよく、フランジ13155は、マザーボード15に向かって延在し、イヤホン10の外部と連通する集音孔を有する。この時、マザーボード15は、マイク133が集音孔により音声信号を収集するように、フランジ13155に押圧されてもよい。フランジ13155にさらにシリコンスリーブ13156が嵌設されてもよく、それによりマザーボード15は、シリコンスリーブ13156によりフランジ13155に弾性的に支持される。このように、マイク133の音声パスの密封性を向上させることができるだけでなく、マザーボード15の応力分布の均一性を向上させることができる。
【0152】
さらに、第2のケース1315にイヤホン10の通信アンテナとするアンテナ用金属パターンがさらに設置されてもよい。それに応じて、底壁13151にザグリ溝13153の周辺に位置してアンテナ用金属パターンに電気的に接続されたアンテナ接点13157が設置されてもよく、マザーボード15にアンテナ接点13157に弾性的に当接するためのメタルドームが設置されてもよい。簡単に言うと、マザーボード15上のメタルドームとアンテナ接点13157により、不必要な溶接を回避し、さらに組み立ての困難性を低減し、コアケース131の内部空間を節約することができる。
【0153】
以上のように、マザーボード15を第2のケース1315に接続することにより、自身の固定を実現することができるだけでなく、可撓性タッチ回路基板135の押圧、マイク133の音声パスの密封及びマザーボード15とアンテナ用金属パターンとの間の電気的接続を実現することができ、一挙両得と言える。
【0154】
上記関連説明に基づいて、図35及び図41に示すように、フック状部11に設置された電子部品は、リード線117を介してマザーボード15に電気的に接続され、接続部12に設置された電子部品は、マザーボード15に近いため、そのリード線によりマザーボード15に電気的に直接接続される。リード線117は、複数本設置され、電池16の正極リード線及び負極リード線、検出部品1163の信号線及びシールド線、第2の充電電極1164の負極リード線を含んでもよい。当然のことながら、さらに配線を簡略化するために、検出部品1163のシールド線と第2の充電電極1164のリード線が1本のリード線を共用してもよい。さらに、マザーボード15の大きさが限られ、その上に集積された電子部品が多いため、リード線117又は他のリード線を可撓性回路基板136に溶接してから、可撓性回路基板136によりマザーボード15に係合して接続することができ、このようにパッドの大きさ及び2つずつの間の間隔を拡大することに役立ち、さらに溶接の難度を低下させ、溶接の信頼性を向上させる。
【0155】
例示的には、可撓性回路基板136は、少なくとも電池16に電気的に接続するための第1の接続領域1361及びマザーボード15に電気的に接続するための第2の接続領域1362を含んでもよい。第2の接続領域1362は、可撓性回路基板136がマザーボード15に係合して接続されるように、マザーボード15の主面に沿って設置されてもよい。さらに、第1の接続領域1361は、第2の接続領域1362に対してマザーボード15の側方向に向かって折り曲げられてもよく、かつ複数のパッドが設置されてもよく、即ち、上記溶接は、マザーボード15の側方向に行う。このように、マザーボード15の主面上の電子部品の干渉がないため、溶接の難度を低下させることができる。それだけでなく、可撓性回路基板136は、その厚さが薄く、その部分がマザーボード15の側方向に向かって折り曲げられるため、コアケース131の内部空間を節約することができる。上記関連説明に基づいて、第1の接続領域1361に設置された複数のパッドは、それぞれ電池16の正極リード線及び負極リード線に溶接して接続されるための第1のパッド及び第2のパッドを含んでもよく、それぞれ充電電極の正極リード線及び負極リード線に溶接して接続されるための第3のパッド及び第4のパッドをさらに含んでもよく、それぞれ検出部品1163の信号線及びシールド線に溶接して接続するための第5のパッド及び第6のパッドをさらに含んでもよい。検出部品1163のシールド線は、第2の充電電極1164のリード線と共に1本のリード線に多重化することができるため、第4のパッドと第6のパッドのうちの1つを設置すればよく、このように他のパッドの大きさ及び2つずつの間の間隔を拡大することに役立つ。
【0156】
上記関連説明に基づいて、マイク125は、マザーボード15に近いように接続部12に設置されてもよいため、可撓性回路基板136は、さらに接続部12まで延在することができる。これに基づいて、可撓性回路基板136は、第1の接続領域1361に接続された第3の接続領域1363をさらに含んでもよく、第3の接続領域1363は、第1のケース1314及び/又は第3のケース122に貼り付けられるように、第1の接続領域1361に対して、マザーボード15から離れた方向に向かって折り曲げられてもよい。マイク125は、SMTプロセスにより第3の接続領域1363に設置されてもよい。この時、第1の接続領域1361と第3の接続領域1363は、それぞれマザーボード15の主面に垂直であってもよく、第2の接続領域1362は、マザーボード15の主面に平行であってもよい。
【0157】
第1の接続領域1361とは異なり、第2の接続領域1362は、BTBコネクタによりマザーボード15に係合されてもよい。これに基づいて、可撓性回路基板136は、第1の接続領域1361と第2の接続領域1362を接続する遷移領域1364をさらに含んでもよく、遷移領域1364及び第2の接続領域1362は、マザーボード15の同じ側に位置してもよい。遷移領域1364の長さは、第1の接続領域1361とマザーボード15を係合させるように、第1の接続領域1361と第2の接続領域1362との間の最小距離よりも大きい。例示的には、遷移領域1364は、多段屈曲構造に構成されてもよく、マザーボード15の主面に沿って設置されてもよい。
【0158】
図35に示すように、コア14は、磁気回路システム141及びコイル142を含んでもよく、コイル142は、磁気回路システム141の磁気隙間に入り込んで、通電状態で磁気回路システム141により形成された磁界に移動することができる。磁気回路システム141は、永久磁石、ヨーク及びブラケット等の構造部品を含んでもよく、その具体的な構造及び接続関係は、当業者にとって周知であり、ここでは説明を省略する。さらに、コア14が骨伝導イヤホンに適用されると、コイル142は、振動伝達シートの移動を駆動するように構成されてもよい。コア14が空気伝導イヤホンに適用される場合、コイル142は、振動膜の移動を駆動するように構成されてもよい。当然のことながら、コイル142は、さらに振動伝達シート及び振動膜の移動を同時に駆動するように構成されてもよい。本願は、コイル142が振動膜の移動を駆動することを例として例示的に説明する。これに基づいて、コア14は、さらにコイル142と磁気回路システム141との間に接続された振動膜143を含んでもよく、振動膜143が振動する過程で放音孔1311を通って耳部に伝送される音声を生成することができる。
【0159】
さらに、コア14は、磁気回路システム141の周辺に固定されたメタルドーム144をさらに含んでもよく、メタルドーム144は、コイル142に電気的に接続される。この時、コア14は、メタルドーム144によりマザーボード15に弾性的に押圧されて、コイル142をマザーボード15上の接点に電気的に接続させる。このように、メタルドーム144で関連技術におけるボンディングワイヤを代替することにより、不必要な溶接を回避し、さらに組み立ての困難性を低減し、溶接空間をあけておく必要がなく、コアケース131の内部空間が節約される。メタルドーム144の数は、2つであってもよく、それぞれコイル142の正極リード線及び負極リード線としてもよい。
【0160】
例示的には、図40に示すように、メタルドーム144は、固定部1441と、固定部1441の一端に接続された弾性接触部1442とを含んでもよく、固定部1441は、磁気回路システム141に接続され、弾性接触部1442は、固定部1441の磁気回路システム141から離れる方向に向かって延在する。簡単に言うと、メタルドーム144は、マザーボード15上の接点に電気的に接続された部分が磁気回路システム141から突出する。さらに、メタルドーム144は、さらに固定部1441の他端に接続されたストッパ部1443を含んでもよく、ストッパ部1443は、弾性接触部1442と同じ側に延在する。弾性接触部1442は、さらにストッパ部1443に向かって折り曲げて延在し、その自由端がストッパ部1443のストッパ溝内に挿入されることにより、弾性接触部1442は、弾性ポテンシャルエネルギーを予め貯蔵することができ、さらにメタルドーム144とマザーボード15上の接点との接触の良好性を向上させる。この時、マザーボード15上の接点に接触できるように、弾性接触部1442の中部の、固定部1441に対する高さは、弾性接触部1442の自由端の、固定部1441に対する高さよりも大きい。
【0161】
上記関連説明に基づいて、磁気回路システム141は、第1のケース1314の第2のケース1315に向かう側に接続されてもよく、マザーボード15は、第2のケース1315の第1のケース1314に向かう側に接続されてもよい。この時、第2のケース1315を第1のケース1314に係合させることにより、コア14は、そのメタルドーム144をマザーボード15に弾性的に押圧することができ、これは簡単で信頼性が高く、組み立ての効率が高い。磁気回路システム141における互いに対向する両側にそれぞれメタルドーム144を設置することにより、第2のケース1315及びマザーボード15と第1のケース1314が共にコア14を挟持する安定性を向上させることができる。それに応じて、振動膜143は、第1のケース1314と共にフロントキャビティ200を取り囲んで形成することができ、例えば、磁気回路システム141は、第2のフランジ13161と第1のフランジ13142を接合した上記環状フランジに当接する。磁気回路システム141にバックキャビティ300と振動膜143のフロントキャビティ200に背く側とを連通する貫通孔が設置される。換言すれば、コア14(具体的には振動膜143であってもよい)は、コアケース131によって形成された収容空洞を、互いに背向するフロントキャビティ200とバックキャビティ300に分割することができる。この時、放音孔1311のコア14の振動方向に沿った正投影は、少なくとも部分的に振動膜143に収まることができる。さらに、マザーボード15とコア14は、上記厚さ方向に積み重ねて設置され、コア14は、マザーボード15よりも耳部に近接し、それによりマザーボード15に振動膜143のバックキャビティ300に背く側とフロントキャビティ200とを連通する貫通孔を設置することを回避し、さらに構造を簡略化することができる。これに基づいて、コア14の上記基準面(例えば、YZが位置する平面)における正投影とマザーボード15の上記基準面における正投影との間の重なり面積と、マザーボード15の上記基準面における正投影の面積とコア14の上記基準面における正投影の面積とのうちの大きい方との比は、0.8~1であってもよく、例えば、コア14の上記基準面における正投影の面積とマザーボード15の上記基準面における正投影の面積は、ほぼ等しい。具体的には、コア14の上記長手方向における寸法とマザーボード15の上記長手方向における寸法との差の絶対値と、マザーボード15の上記長手方向における寸法とコア14の上記長手方向における寸法とのうちの大きい方との比は、0~0.2であってもよく、両者の上記高さ方向における寸法関係は、同じであってもよく、又は類似してもよい。このように、コアケース131によって形成された収容空洞の容積が一定である場合に、コア14をできるだけ大きくすることにより、イヤホン10の音量を上げ、イヤホン10の周波数応答範囲を広げることに役立つ。
【0162】
なお、図40を参照すると、コア14は、互いに直交してコア14の振動方向(X1と表記する)に垂直な長軸方向(Y1と表記する)及び短軸方向(Z1と表記する)を有してもよいが、説明の便宜上、本願の提供する実施例における前述の振動方向、長軸方向及び短軸方向は、それぞれ上記厚さ方向、長軸方向及び高さ方向に平行であってもよい。当然のことながら、他のいくつかの実施例において、それらの間に夾角が存在してもよい。さらに、コア14のその長軸方向における寸法は、コア14のその短軸方向における寸法以上である。例示的には、コア14のその振動方向に垂直な基準面における正投影が矩形であるように構成してもよく、この場合、前述の長軸方向は、前述の矩形の長辺の方向であってもよく、前述の短軸方向は、前述の矩形の短辺の方向であってもよい。
【0163】
本願の発明者は、長期にわたる研究から、コア14のフロントキャビティ200に背く側にマザーボード15が設置される場合、マザーボード15に設置された大きさが異なり、形状が異なる大量の電子部品は、イヤホン10の音質に影響を与える、ということが分かった。このため、図36又は図46に示すように、保持部13は、コアケース131内に設置された仕切り板137をさらに含んでもよく、仕切り板137は、主にコア14とマザーボード15を隔てて、コア14と共にバックキャビティ300、即ち、独立した音響キャビティを取り囲んで形成することができる。具体的には、仕切り板137は、磁気回路システム141とマザーボード15との間に位置してもよく、磁気回路システム141と共にバックキャビティ300を取り囲んで形成することができる。当然のことながら、他のいくつかの実施例において、マザーボード15のコア14に向かう側をできるだけ平坦にするように、マザーボード15に隔膜を被覆してもよい。
【0164】
例示的には、仕切り板137は、組み立てを容易にするように、コア14に接続され、即ち、モジュール化されてもよい。具体的には、図39及び図44に示すように、仕切り板137は、底壁1371及び底壁1371に接続された側壁1372を含んでもよく、底壁1371は、磁気回路システム141から離隔し、側壁1372は、コア14に向かって延在して、コア14(具体的には磁気回路システム141)に接続され、それにより仕切り板137とコア14がバックキャビティ300を取り囲んで形成することができる。仕切り板137とコア14を正確に組み立てるために、仕切り板137の磁気回路システム141に向かう側にさらにディスペンス溝1373及び磁気回路システム141に適合する位置決めポスト1374が設置されてもよい。それに応じて、メタルドーム144は、仕切り板137の周辺に位置してもよい。
【0165】
上記関連説明に基づいて、側壁1372に、さらにバックキャビティ300とイヤホン10の外部との連通を可能にする連通孔が設置されてもよく、例えば、圧力逃がし孔1312とバックキャビティ300を連通する第1の連通孔1375、及び音調整孔1313とバックキャビティ300を連通する第2の連通孔1376である。バックキャビティ300とイヤホン10の外部を連通する音声パスを密封するために、さらに仕切り板137とコアケース131との間に前述の連通孔の密封部材を弾性的に支持して取り囲む。
【0166】
本願において、コアケース131、コア14等の構造部品は、実質的に立方体構造に構成されてもよく、円柱体構造に構成されてもよく、ここで限定されない。本願は、コア14が立方体構造に構成されることを例として例示的に説明する。これに基づいて、仕切り板137の上記長手方向における寸法は、仕切り板137の上記高さ方向における寸法以上であってもよい。図39に示すように、側壁1372は、上記長手方向に互いに離隔している第1の側壁13721、第3の側壁13723、及び上記高さ方向に互いに離隔している第2の側壁13722、第4の側壁13724を含んでもよい。さらに、第2の側壁13722と第4の側壁13724のうちの1つに第1の連通孔1375が設置されてもよく、もう1つに第2の連通孔1376が設置されてもよい。上記関連説明に基づいて、第1の連通孔1375は、第2の側壁13722に設置されてもよく、第2の連通孔1376は、第4の側壁13724に設置されてもよい。なお、図44及び図45に示すように、第2の側壁13722を省略して、直接的に底壁1371、第1の側壁13721及び第3の側壁13723によって第1の連通孔1375を取り囲んで形成してもよく、以下に例示的に説明する。
【0167】
さらに、第3の側壁13723は、第1の側壁13721よりも放音孔1311から離れていてもよく、即ち、接続部12から離れていて保持部13の自由端に近接する。第1の連通孔1375の上記長手方向における寸法は、第2の連通孔1376の上記長手方向における寸法よりも大きくてもよく、両者の上記厚さ方向における寸法は、等しくてもよく、それにより第1の連通孔1376と第2の連通孔1376をそれぞれ調整してバックキャビティ300とイヤホン10の外部との有効な連通領域の実際の面積を調整する。これに基づいて、第1の側壁13721及び第4の側壁13724は、第1の円弧状遷移壁13725により接続されてもよく、それにより、取り囲んで形成されたバックキャビティ300の内壁に直角、尖角等の鋭い構造が現れることを回避し、さらに定在波を除去することに役立つ。第1の円弧状遷移壁13725は、円弧状に設置されてもよく、かつ円弧半径が2mm以上であってもよい。同様に、第3の側壁13723と第4の側壁13724は、第2の円弧状遷移壁13726により接続されてもよく、第1の円弧状遷移壁13725の内壁面の少なくとも一部のセグメントの曲率半径は、第2の円弧状遷移壁13726の内壁面の対応するセグメントの曲率半径よりも大きくてもよく、それにより、同様に取り囲んで形成されたバックキャビティ300の内壁に直角、尖角等の鋭い構造が現れることを回避することができる。当然のことながら、他のいくつかの実施例において、第2の円弧状遷移壁13726を設置しなくてもよく、例えば、第4の側壁1374の第3の側壁13723に近接する部分に、全て第2の連通孔1376を設置してもよく、それにより第2の連通孔1376は、上記長手方向に沿って第3の側壁13723の内壁面と面一になるまで延在する。
【0168】
なお、上記厚さ方向において、第1の連通孔1375のコア14に背く内壁は、底壁1371のコア14に向かう内壁面と面一になってもよく、第2の連通孔1376のコア14に背く内壁は、底壁1371のコア14に向かう内壁面と面一になってもよく、即ち、第1の連通孔1375及び第2の連通孔1376は、上記厚さ方向に沿って底壁1371の内壁面と面一になるまで延在することができ、それにより、取り囲んで形成されたバックキャビティ300の内壁に直角、尖角等の鋭い構造が現れることを回避し、さらに定在波を除去することに役立つ。さらに、第1の側壁13721及び第3の側壁13723のうちの少なくとも1つの内壁面は、上記高さ方向に沿って観察すると、円弧状に設置されてもよく、それにより、取り囲んで形成されたバックキャビティ300の内壁に直角、尖角等の鋭い構造が現れることを回避する。当然のことながら、側壁1372と底壁1371の内壁面は、全て円弧で接続されてもよい。
【0169】
いくつかの実施例において、図39に示すように、第2の側壁13722及び第4の側壁13724の底壁1371に対する高さをいずれも第1の側壁13721及び第3の側壁13723の底壁1371に対する高さよりも高くすることにより、コア14は、第2の側壁13722と第4の側壁13724との間に嵌設され、第1の側壁13721及び第3の側壁13723は、それぞれコア14の底壁1371に向かう側に当接する。この時、上記厚さ方向において、第1の連通孔1375の寸法は、底壁1371とコア14との間の間隔以上であってもよく、第2の連通孔1376の寸法は、底壁1371とコア14との間の間隔以上であってもよく、それにより、取り囲んで形成されたバックキャビティ300の内壁に直角、尖角等の鋭い構造が現れることを回避し、さらに定在波を除去することに役立つ。さらに、保持部13は、さらに仕切り板137とコアケース131との間に弾性的に支持された第1の密封部材1381及び第2の密封部材1382を含んでもよく、例えば、第1の密封部材1381は、第2の側壁13722と第2のケース1315との間に弾性的に支持されて第1の連通孔1375を取り囲み、さらに、例えば、第2の密封部材1382は、第4の側壁13724と第2のケース1315との間に弾性的に支持されて第2の連通孔1376を取り囲む。さらに、第1の連通孔1375の出口端に第1の音響抵抗メッシュ1383を覆設してもよく、第1の音響抵抗メッシュ1383の側壁1372に背く側にさらに保護カバーを覆設してもよい。同様に、第2の連通孔1376の出口端に第2の音響抵抗メッシュ1384を覆設してもよく、第2の音響抵抗メッシュ1384の側壁1372に背く側にさらに保護カバーを覆設してもよい。音響抵抗メッシュは、防水及び防塵性能を向上させるだけでなく、音漏れを低減することもできる。音響抵抗メッシュが異物に突き破られることを回避するために、保護カバーの構造強度は、音響抵抗メッシュの構造強度よりも高い。さらに、第2の音響抵抗メッシュ1384の空隙率は、第1の音響抵抗メッシュ1383の空隙率以下であってもよい。
【0170】
例示的には、第1の密封部材1381は、第1の延出部13811と、第1の延出部13811に接続された、第1の延出部13811の側方向に沿って延在する第2の延出部13812と、を含んでもよい。第1の延出部13811と第2の延出部13812は、それぞれ側壁1372と底壁1371のバックキャビティ300に背く側に貼り付けて固定されることにより、第1の密封部材1381と仕切り板137との間の接合面積を増大させる。それに応じて、第1の延出部13811は、第1の音響抵抗メッシュ1383の第1の連通孔1375に対応する領域を露出させ、例えば、第1の延出部13811は、第1の連通孔1375及びその上の第1の音響抵抗メッシュ1383を取り囲んで、バックキャビティ300とイヤホン10の外部とを連通させる。さらに、第1の延出部13811は、第1の音響抵抗メッシュ1383と側壁1372との離脱を回避するように、第1の音響抵抗メッシュ1383を側壁1372のバックキャビティ300に背く側に押圧して固定されてもよい。
【0171】
本実施例において、第2の密封部材1382の構造及びそれと仕切り板137との間の接続関係は、第1の密封部材1381と同じであるか又は類似することができ、ここでは説明を省略する。さらに、第1の密封部材1381及び第2の密封部材1382は、射出成形プロセスにより仕切り板137に形成することができる。
【0172】
なお、本実施例において、コア14、仕切り板137及びその上の音響抵抗メッシュ及び密封部材等の構造部品は、組み立てを容易にするように、スピーカーアセンブリを形成し、即ち、モジュール化することができる。
【0173】
他のいくつかの実施例において、図44に示すように、第2の側壁13722を省略することができる。第4の側壁13724の一部に第2の連通孔1376を設置し、かつ底壁1371に対する高さを第1の側壁13721及び第3の側壁13723の底壁1371に対する高さに等しくすることにより、磁気回路システム141に共に当接する。この時、第1の密封部材1381を第1の密封部材1381又は第2のケース1315の予め設定されたザグリ溝内に埋設してから、第2のケース1315に貼り付けて固定し、さらに第2のケース1315と第1の密封部材1381により第1の音響抵抗メッシュ1383を共に挟持して、その後の組み立てを行う。第1の密封部材1381の第2のケース1315に向かう側に第1の音響抵抗メッシュ1383を収容するためのザグリ溝が設置されてもよい。同様に、組み立てを容易にするように、第2の密封部材1382及び第2の音響抵抗メッシュ1384を第2のケース1315に貼り付けて固定して、ケースアセンブリを形成し、即ち、モジュール化することができる。
【0174】
上記詳細な説明に基づいて、説明の便宜上、図47を参照して以下のように定義する。フロントキャビティ200は、フロントキャビティ200とイヤホン10の外部との連通を可能にする第1の開口201を有してもよく、バックキャビティ300は、バックキャビティとイヤホン10の外部との連通を可能にする第2の開口301及び第3の開口302を有してもよい。それに応じて、第2の開口301は、第1の開口201及び第3の開口302よりも耳孔から離れていてもよい。前述の第1の開口~第3の開口は、フロントキャビティ200又はバックキャビティ300とイヤホン10の外部との有効な連通領域を指し、即ち、フロントキャビティ200又はバックキャビティ300からイヤホン10の外部に伝送される過程において音声が通過する断面が最も小さい領域である。例えば、コア14は、第1のケース1314(及び蓋板1316)と嵌合してフロントキャビティ300を形成し、第1の開口201は、放音孔1311に対応する。イヤホン10に仕切り板137が設置され、即ち、仕切り板137とコア14が嵌合してバックキャビティ300を形成した実施例において、圧力逃がし孔1312の実際の面積が第2の連通孔1376の実際の面積よりも大きい場合、第2の開口301は、第2の連通孔1376に対応し、圧力逃がし孔1312の実際の面積が第2の連通孔1376の実際の面積よりも小さい場合、第2の開口301は、圧力逃がし孔1312に対応し、圧力逃がし孔1312と第2の連通孔1376が互いにずれて設置される場合、第2の開口301は、圧力逃がし孔1312と第2の連通孔1376とが互いに塞がれていない部分に対応する。第3の開口302も同様であり、ここでは説明を省略する。イヤホン10に仕切り板137が設置されず、即ち、第2のケース1315とコア14が嵌合してバックキャビティ300を形成する他のいくつかの実施例において、第2の開口301と第3の開口302は、それぞれ圧力逃がし孔1312と音調整孔1313に直接的に対応する。当然のことながら、イヤホン10にフロントキャビティ200及びバックキャビティ300のうちの少なくとも1つが設置されていない場合、対応する開口が存在しなくてもよい。
【0175】
さらに、説明の便宜上、本願に記載の有効面積は、上記有効な連通領域の実際の面積と覆設された音響抵抗メッシュの空隙率との積として定義することができる。例えば、第1の開口201に音響抵抗メッシュが覆設されている場合、第1の開口201の有効面積は、第1の開口201の実際の面積と当該音響抵抗メッシュの空隙率との積である。第1の開口201に音響抵抗メッシュが覆設されていない場合、第1の開口201の有効面積は、第1の開口201の実際の面積である。第2の開口301及び第3の開口302も同様であり、ここでは説明を省略する。本願において、第3の開口302の有効面積は、第2の開口301の有効面積よりも小さくてもよい。
【0176】
いくつかの実施例において、図39及び図44に示すように、第2の連通孔1376の出口端の実際の面積は、第1の連通孔1375の出口端の実際の面積以下であってもよく、それにより音調整孔1313とバックキャビティ300との有効な連通領域の実際の面積は、圧力逃がし孔1312とバックキャビティ300との間の有効な連通領域の実際の面積以下であってもよい。圧力逃がし孔1312の出口端の実際の面積は、第1の連通孔1375の出口端の実際の面積以上であってもよい。この時、音調整孔1313の出口端の上記長手方向における寸法は、圧力逃がし孔1312の出口端の上記長手方向における寸法に等しくてもよく、及び/又は、音調整孔1313の出口端の上記厚さ方向における寸法は、圧力逃がし孔1312の出口端の上記厚さ方向における寸法に等しくてもよい。このように、連通孔の大きさを調整することにより、それぞれ音調整孔1313及び圧力逃がし孔1312におけるバックキャビティ300とイヤホン10の外部との有効な連通領域の実際の面積を調整して、対応する音響設計要件を満たすことができるだけでなく、音調整孔1313と圧力逃がし孔1312の外観上の差異が大きくないようにし、外観上の一致性を向上させ、それらが同じ仕様の音響抵抗メッシュを使用可能にして、材料の種類を減少し、材料の混同を回避することができる。当然のことながら、他のいくつかの実施例において、音調整孔1313の大きさは、圧力逃がし孔1312との外観上の差異を大きくして外観上の識別度を向上させるために、第2の連通孔1376の変化に伴って変化してもよい。さらに、第2の音響抵抗メッシュ1384の空隙率は、第1の音響抵抗メッシュ1383の空隙率以下であってもよく、それにより音調整孔1313とバックキャビティ300との有効な連通領域の有効面積は、圧力逃がし孔1312とバックキャビティ300との間の有効な連通領域の有効面積以下であってもよい。
【0177】
さらに、圧力逃がし孔1312とバックキャビティ300との有効な連通領域(例えば、第1の連通孔1375)は、上記長手方向において第1の中心(O1と記す)を有してもよく、音調整孔1313とバックキャビティ300との有効な連通領域(例えば、第2の連通孔1376)は、上記長手方向において第2の中心(O2と記す)を有してもよく、かつ第2の中心は、上記長手方向において第1の中心よりも放音孔1311の中心(例えば、O0)から離れており、即ち、上記第3の側壁13723により近接していてもよく、それにより、音調整孔1313と放音孔1311との間の距離をできるだけ大きくし、さらに音調整孔1313を介してイヤホン10の外部に出力される音声と放音孔1311を通って耳部に伝送される音声との間の逆位相の相殺を減少させる。
【0178】
なお、本願に記載の孔又は開口の中心は、前述の孔又は開口を取り囲む閉曲線の周囲までの距離が等しい位置を指す。円形、矩形等の規則的な形状に対して、本願に記載の孔又は開口の中心は、その幾何中心であってもよい。他の不規則な形状に対して、本願に記載の孔又は開口の中心は、その重心であってもよい。
【0179】
図48に示すように、第1の開口201を通ってイヤホン10の外部に伝送された音声は、単に、単極子音源A1によって生成された第1の音声と見なしてもよく、第2の開口301を通ってイヤホン10の外部に伝送された音声は、単に、単極子音源A2によって生成された第2の音声と見なしてもよく、第2の音声と第1の音声は、遠方場で逆位相として互いに相殺し、即ち、「音響双極子」となって、音漏れを低減するように、位相が逆であってもよい。好ましくは、装着状態で、2つの単極子音源の接続線は、ユーザが十分に大きい音声を聞き取れるように、ちょうど耳孔(「聴音位置」と記す)に向けてもよい。聴音位置での音圧の大きさ(Pearと記す)は、ユーザが聞き取った音声の強弱を特徴付けてもよい。さらに、ユーザの聴音位置を中心とする球面上の音圧の大きさ(Pfarと記す)を統計して、イヤホン10の遠方場への音漏れの強弱を特徴付けてもよい。様々な統計方式でPfarを取得することができ、例えば、球面の各点での音圧の平均値を求め、さらに、例えば、球面の各点の音圧分布を求めて面積分等を行う。明らかに、イヤホン10からユーザの耳部に伝達された音圧Pearは、聴音効果を向上させるのに十分に大きくすべきである。遠方場の音圧Pfarは、音漏れの低減効果を向上させるのに十分に小さくすべきである。したがって、パラメータαをイヤホン10の音漏れの低減/聴音効果を評価する指標とすることができる:
【0180】
【数1】
【0181】
さらに、イヤホン10が装着状態にある場合、保持部13の耳部における正投影は、主に耳輪の範囲内にあり、例えば、保持部13は、耳孔のユーザの頭頂部側に位置し、耳部の前側で対耳輪に接触する。この時、第1の開口201は、対耳輪と耳の上付け根との間に位置し、耳孔に音声を伝送することができる。さらに、耳甲介腔及び耳甲介舟は、一定の深さを有し、かつ耳孔と連通するため、第1の開口201からイヤホン10の外部に伝送された音声を耳孔に伝送できるように、第1の開口201の耳部における正投影は、耳甲介腔及び/又は耳甲介舟内に少なくとも部分的に収まってもよい。それだけでなく、図49及び図50に示すように、耳部は、さらに聴音位置の付近に設置されたバッフルに相当し、イヤホン10の外部に伝送された音声に対して収束、反射等の作用を有し、さらに音場分布を変更するため、聴音位置の音圧を増加させることに役立つだけでなく、遠方場の音圧を減少させることにも役立つ。具体的には、聴音位置は、バッフルと単極子音源A1との間に設置され、バッフルは、音場分布に歪みを発生させ、さらに聴音位置の音圧を増加させる。同時に、音場全体に依然として面積が大きな逆位相の相殺領域を残して、遠方場の音圧を低下させる。なお、ユーザの頭部は、バッフルの一部としてもよい。さらに、2つの単極子音源から耳部までの距離が耳部の大きさよりもはるかに小さくてもよいため、耳部は、音響ミラーに類似する効果を実現することができる。
【0182】
本願の発明者は、長期にわたる研究から、音響双極子とバッフルの嵌合による理論モデルにおいて、図51に示すように、パラメータαは、主に2つの単極子音源の間の接続線(A1-A2と記す)とバッフルの法線との間の夾角θ、2つの単極子音源の間の間隔d、単極子音源A1と聴音位置との間の距離D、バッフルの長さL、及びその聴音位置との間の距離Bという要因の影響を受ける、ということが分かった。夾角θ及び間隔dが一定である場合、バッフルの長さLが大きく距離Bが小さいほど、パラメータαが小さく、即ち音漏れの低減効果が高い。上記関連説明に基づいて、ユーザの耳部は、バッフルと見なしてもよく、長さLは、比較的に明確であり、例えば約50~80mmであり、距離Bは、約0である。さらに、聴音位置の音圧を大きくして、聴音効果を向上させるために、第1の開口201は、一般的に耳孔にできるだけ近接し、即ち、距離Dは、一般的にできるだけ小さく、例えば、第1の開口201の中心と耳孔の中心との間の距離は、16mm以下であり、例えば、保持部13の耳孔に向かう下縁と上記高さ方向に保持部13から離れたフック状部11の最高点(例えばCP1)との間の距離は、19mm以上である。さらに、間隔dが小さすぎると、聴音位置の音圧が小さくなり、聴音しにくくなる。間隔dが大きすぎると、遠方場の音圧が大きくなり、音漏れが低減しにくくなる。加えて、保持部13の実際の大きさを考慮する必要がある。したがって、第2の開口301の中心と第1の開口201の中心との間の距離は、7mm~15mmであってもよい。具体的な実施例において、第2の開口301と第1の開口201の中心との間の距離は、9mmであってもよい。
【0183】
さらに、図52に示すように、「バッフルなし」を参照にすると、「バッフルあり」は、パラメータαを減少させ、即ち、音漏れ低減効果を向上させることに明らかに役立つ。夾角θ=0°である場合、パラメータαは、最小値に達し、最適な音漏れ低減効果が得られるということである。本願において、夾角θは、±80°の範囲内にあってもよい。好ましくは、夾角θは、±40°の範囲内にあってもよい。より好ましくは、夾角θは、±20°の範囲内にあってもよい。図47を参照すると、第2の開口301が一般的に第1の開口201の耳孔から離れる側に位置することを考慮すると、夾角θは、正の数値のみを取ることができる。
【0184】
例示的には、図53及び図47に示すように、上記人体の基本的な切断面と基本的な軸のうち任意の互いに垂直な3つに基づいて1つの三次元の基準座標系(X’Y’Z’と記す)を確立することができるため、2つの単極子音源の間の接続線とバッフルの法線との間の夾角θは、接続線A1-A2とそれぞれX’、Y’、Z’軸との間の夾角によって決定することができる。上記関連説明に基づいて、2つの単極子音源の間の接続線A1-A2も、第2の開口301の中心(例えば、O1)と第1の開口201の中心(例えば、O0)との間の接続線(O1-O0と記す)と見なしてもよい。これに基づいて、接続線O1-O0と上記矢状面との間の夾角θ1は、10°以上であってもよく、好ましくは夾角θ1は、30°以上であってもよい。上記冠状面との間の夾角θ2は、0°よりも大きくてもよく、好ましくは夾角θ2は、4°以上であってもよい。上記水平面との間の夾角θ3は、80°以下であってもよく、好ましくは夾角θ3は、60°以下であってもよい。具体的な実施例において、3つの夾角θ1、θ2及びθ3は、それぞれ34°、5°及び56°であってもよい。
【0185】
さらに、イヤホン10が装着状態にある場合、保持部13は、耳部の前側に密着することができ、その上の第1の開口201は、耳部に正対することもでき、それにより上記バッフルが第1の開口201の平均法線に垂直であると簡単に見なしてもよい。これに基づいて、接続線O1-O0と第1の開口201の平均法線に垂直な基準面との間の夾角は、25°~55°であってもよい。前述の平均法線の計算式は、以下のとおりである。
【0186】
【数2】
【0187】
式中、
【0188】
【数3】
【0189】
は、上記平均法線であり、
【0190】
【数4】
【0191】
は、表面上の任意の点の法線であり、dsは、微小平面である。
【0192】
明らかに、第1の開口210が平面である場合、上記平均法線に垂直な基準面は、即ち、第1の開口201の接平面である。それに応じて、上記平均法線は、コア14の振動方向及び上記厚さ方向に平行であってもよい。したがって、接続線O1-O0と前述の振動方向との間の夾角は、0°~50°であってもよく、好ましくは0°~40°であってもよい。
【0193】
さらに、上記関連説明に基づいて、耳部は、音響双極子と嵌合するバッフルと簡単に見なしてもよく、耳部の前側にある共線でない少なくとも3つの生理的位置に基づいて基準面を決定することができ、例えば、耳の上付け根、珠間切痕及びダーウィン結節の2つずつの間の接続線は、前述のバッフルを説明するための基準面(LA-LB-LDと記す)を形成することができる。これに基づいて、接続線O1-O0と前述の基準面との間の夾角は、23°~53°であってもよい。具体的な実施例において、接続線O1-O0と前述の基準面との間の夾角は、38°であってもよい。
【0194】
さらに、イヤホン10が装着状態にある場合、耳部と複数の接触点で接触して装着の安定性を保証するため、イヤホン10にもこれらの接触点と一対一に対応する位置が存在する。当然のことながら、それらのフック状部11に弾性部112が設置された実施例において、弾性部112の装着前後の弾性変形により、このような対応関係に一定の偏差が存在する可能性があり、このような偏差は、弾性部112の変形性能により制御することができる。したがって、説明の便宜上、このような偏差が許容できると考えられる。例示的には、図31及び図59に示すように、保持部13の固定アセンブリ20から離れた自由端は、耳部の前側に接触するための第1の基準点(例えば、CP0)を有してもよく、固定アセンブリ20は、耳の上付け根に接触するための第2の基準点(例えば、CP3)及び耳部の後側に耳部に接触するための第3の基準点(例えば、CP6)を有してもよく、第1の基準点、第2の基準点及び第3の基準点の2つずつの間の接続線は、前述のバッフルを説明するための基準面(CP0-CP3-CP6と記す)を形成することができる。これに基づいて、接続線O1-O0と前述の基準面との間の夾角は、15°~45°であってもよい。具体的な実施例において、接続線O1-O0と前述の基準面との間の夾角は、30°であってもよい。
【0195】
なお、上記バッフルに比べて、耳部の前側の表面は、平坦で、規則的な構造ではないため、上記パラメータαに関連する他のパラメータは、いずれも理論的分析及び実際の測定により得られたものである。実際の測定とは、イヤホン10を上記シミュレータ(例えば、GRAS 45BC KEMAR)に装着した後に行われた測定としてもよい。
【0196】
周知のように、健常者の耳に感じられる音声の周波数範囲は、20Hz~20kHzであるが、これらの音声がいずれも聞こえるわけではない。一般的に、健常者の耳は、主に周波数が4kHz以下の音声を聞く。これに基づいて、一方では、第1の音声の周波数応答曲線を中高周波以上の周波数帯域においてできるだけ平坦にさせて、聴音効果を向上させるために、第1の開口201からイヤホン10の外部に伝送された第1の音声の共振周波数を、できるだけ高周波にオフセットしてもよい。他方では、第2の開口301からイヤホン10の外部に伝送された第2の音声の共振周波数をもできるだけ高周波数にオフセットしてもよい。それにより、ユーザの音漏れに対する感度を低下させることができるだけでなく、上記逆位相の相殺を高周波数帯域まで拡張して、聴音効果に影響を与えることなく音漏れを低減する。したがって、第1の音声の周波数応答曲線は、第1の開口201により形成された周波数応答曲線の中高周波以上の周波数帯域における全ての共振ピークのうちの周波数が最も低いものである第1の中高周波最低共振ピークを有してもよい。同様に、第2の音声の周波数応答曲線は、第2の開口301により形成された周波数応答曲線の中高周波以上の周波数帯域における全ての共振ピークのうちの周波数が最も低いものである第2の中高周波最低共振ピークを有してもよい。簡単に言うと、第1の音声の周波数応答曲線は、中高周波以上の周波数帯域において周波数が最も低い第1の共振ピークを有してもよい。同様に、第2の音声の周波数応答曲線は、中高周波以上の周波数帯域において周波数が最も低い第2の共振ピークを有してもよい。第1の中高周波最低共振ピーク及び第2の中高周波最低共振ピークのピーク共振周波数は、5kHz以上であってもよい。好ましくは、第1の中高周波最低共振ピーク及び第2の中高周波最低共振ピークのピーク共振周波数は、いずれも6kHz以上であってもよい。さらに、第1の中高周波最低共振ピークのピーク共振周波数と第2の中高周波最低共振ピークのピーク共振周波数との差を1kHz以下にすることにより、第2の音声と第1の音声は、遠方場でよりうまく逆位相の相殺を実現する。
【0197】
なお、本願において、低周波数帯域に対応する周波数範囲は、20~150Hzであってもよく、中間周波数帯域に対応する周波数範囲は、150~5kHzであってもよく、高周波数帯域に対応する周波数範囲は、5k~20kHzであってもよい。中低周波数帯域に対応する周波数範囲は、150~500Hzであってもよく、中高周波数帯域に対応する周波数範囲は、500~5kHzであってもよい。本願に記載の周波数応答曲線について、横軸は、周波数を表し、その単位は、Hzである。縦軸は、強度を表し、その単位は、dBである。さらに、上記第1の中高周波最低共振ピークは、キャビティの共振による共振ピークを含んでもよく、キャビティのキャビティ面の反射による定在波ピークを含んでもよい。上記第2の中高周波最低共振ピークも同様であり、ここでは説明を省略する。
【0198】
上記詳細な説明に基づいて、ユーザがイヤホン10を装着する場合に主に第1の音声を聴くため、第1の中高周波最低共振ピークのピーク共振周波数の聴音効果への影響が大きい。このため、第1の中高周波最低共振ピークに対して研究を行うことにより、聴音効果を向上させる。第1の音声の周波数応答曲線の中高周波以上の周波数帯域における共振ピークは、主にキャビティの共振に由来してもよく、それは、一般的にヘルムホルツ共振キャビティの共振周波数の計算式を満たす。
【0199】
【数5】
【0200】
式において、f0は、キャビティ共振の共振周波数であり、cは、空気中の音速であり、Sは、第1の開口201の実際の面積であり、Vは、フロントキャビティ200の体積であり、lは、第1の開口201の長さであり、rは、第1の開口201の等価半径である。ここで、lは、一般的にケースの肉厚に依存する。
【0201】
明らかに、第1の開口201の実際の面積が大きく、前フロントキャビティ200の体積が小さいほど、キャビティ共振に対応する共振周波数が高くなり、即ち、第1の中高周波最低共振ピークがより高い周波数にオフセットしやすい。さらに、一般的に、第1の開口201に音響抵抗メッシュをさらに覆設することにより、防水及び防塵性能を向上させ、周波数応答曲線を調整する。例示的には、第1の開口201の有効面積は、2mm以上であってもよい。具体的な実施例において、第1の開口201の実際の面積は、7mm以上であってもよく、その上にカバーされた音響抵抗メッシュの空隙率は、13%以上であってもよく、及び/又は、空隙の寸法は、18μm以上であってもよい。さらに、フロントキャビティ200の体積は、90mm以下であってもよい。ここで、フロントキャビティ200の体積は、振動膜143の面積とフロントキャビティ200のコア14の振動方向における深さとの積であってもよい。これに基づいて、コア14の仕様を選択した後、振動膜143の振動ストロークを満たす前提で、フロントキャビティ200の前述の振動方向における深さが小さいほど好ましい。したがって、フロントキャビティ200の前述の振動方向における最大深さは、3mm以下であってもよく、好ましくは1mm以下である。
【0202】
さらに、図54に示すように、フロントキャビティ200が立方体構造に構成された場合、フロントキャビティ200のキャビティ面は、少なくとも一対の平行又は略平行な反射面を形成し、さらに定在波を形成する。具体的には、音波がキャビティ内で反射すると、入射波と反射波が重なって固定した腹及び節を形成し、それにより特定の周波数で定在波を引き起こす。換言すれば、第1の音声の周波数応答曲線の中高周波以上の周波数帯域における共振ピークは、さらに定在波に由来することができ、それは一般的に計算式を満たす。
【0203】
【数6】
【0204】
nは、正の整数を取る。
【0205】
式において、f0は、定在波ピークの周波数であり、cは、空気中の音速であり、Lは、第1の開口201の中心とフロントキャビティ200のキャビティ面との間の距離である。
【0206】
明らかに、距離Lが小さいほど、定在波ピークに対応する周波数が高くなり、即ち、第1の中高周波最低共振ピークがより高い周波数にオフセットしやすい。例示的には、コア14の振動方向に垂直な基準面(例えば、Y1Z1が位置する平面)において、第1の開口201の中心とフロントキャビティ200のキャビティ面との間の距離は、17.15mm以下であってもよい。
【0207】
上記関連説明に基づいて、フロントキャビティ200は、コア14の長軸方向に互いに離隔している第1のフロントキャビティ面202、第3のフロントキャビティ面204、及びコア14の短軸方向に互いに離隔している第2のフロントキャビティ面203、第4のフロントキャビティ面205を有してもよい。第1のフロントキャビティ面202は、第3のフロントキャビティ面204よりも接続部12に近接し、第4のフロントキャビティ面205は、第2のフロントキャビティ面203よりも耳孔に近接し、第1のフロントキャビティ面202と第3のフロントキャビティ面204との間の間隔は、第2のフロントキャビティ面203と第4のフロントキャビティ面205との間の間隔以上であってもよい。さらに、第1の開口201の中心から第1のフロントキャビティ面202、第2のフロントキャビティ面203、第3のフロントキャビティ面204及び第4のフロントキャビティ面205までの垂直距離は、それぞれ第1の距離L1、第2の距離L2、第3の距離L3及び第4の距離L4と定義することができる。この時、4つの垂直距離が以下の基本的な関係、L1≧L2≧L3≧L4を満たすと仮定すると、対応する定在波ピークに対応する周波数は、以下の関係を満たす:f1≦f2≦f3≦f4。明らかに、第1の音声の中高周波以上の周波数帯域における第1の定在波ピークは、4つの垂直距離のうちの最大のものによって決定され、したがって、L1≦17.15であってもよい。例示的には、第1の距離は、第3の距離以下であってもよく、第4の距離は、第2の距離以下であってもよく、それにより第1の開口201は、耳孔により近接する。
【0208】
なお、第1の開口201は、コア14の振動方向に振動膜143に対向してもよく、第1の開口201のコア14の長軸方向における寸法と第1の開口201のコア14の短軸方向における寸法との比は、3以下であってもよく、例えば、第1の開口201は、円形に構成され、さらに、例えば、第1の開口201は、トラック状に構成される。
【0209】
図55に示すように、イヤホン10は、フロントキャビティ200に連通するヘルムホルツ共振キャビティ400をさらに含んでもよく、ヘルムホルツ共振キャビティ400は、第1の中高周波最低共振ピークのピーク共振強度を弱めるように構成され、即ち、フロントキャビティ200のピーク共振周波数の付近での音響エネルギーを吸収することにより、ピーク共振強度の急増を抑制し、周波数応答曲線をより平坦にし、さらに音質をより平均化させる。例示的には、図56に示すように、ヘルムホルツ共振キャビティ400がフロントキャビティ200に連通する開口が開状態(「HR_Y」と記す)にある場合の第1の中高周波最低共振ピークのピーク共振強度と、ヘルムホルツ共振キャビティ400がフロントキャビティ200に連通する開口が閉状態(「HR_N」と記す)にある場合の第1の中高周波最低共振ピークのピーク共振強度との差は、3dB以上であってもよい。さらに、ヘルムホルツ共振キャビティ400がフロントキャビティ200と連通する開口に音響抵抗メッシュをさらに設置することにより、周波数応答曲線をさらに調整する。音響抵抗メッシュの空隙率は、3%以上であってもよい。
【0210】
さらに、ヘルムホルツ共振キャビティ400の数は、フロントキャビティ200のピーク共振周波数の付近での音響エネルギーをよりよく吸収するように、複数であってもよい。複数のヘルムホルツ共振キャビティ400は、フロントキャビティ200と並列するように構成されてもよく、例えば、それぞれフロントキャビティ200と連通する。又は、複数のヘルムホルツ共振キャビティ400は、フロントキャビティ200に直列接続されるように構成されてもよく、例えば、そのうちの1つによりフロントキャビティ200と連通する。
【0211】
いくつかの実施例において、図36に示すように、ヘルムホルツ共振キャビティ400は、第2の領域13B内に設置されてもよく、例えば、可撓性被覆構造132内に設置される。具体的には、可撓性被覆構造132内の止まり穴1321は、可撓性被覆構造132に変形空間を提供することに加えて、ヘルムホルツ共振キャビティ400を兼ねることができる。それに応じて、蓋板1316にヘルムホルツ共振キャビティ400とフロントキャビティ200を連通する連通孔が残される。
【0212】
他のいくつかの実施例において、図41に示すように、ヘルムホルツ共振キャビティ400は、接続部12内に設置されてもよく、例えば、第3のケース122と第1のケース1314との間に設置される。具体的には、第1のケース1314の第3のケース122に向かう内壁面に第1のフランジが設置され、第3のケース122が第1のフランジに押圧されることにより、ヘルムホルツ共振キャビティ400を取り囲んで形成する。又は、第3のケース122の第1のケース1314に向かう内壁面に第2のフランジが設置され、第1のケース1314が第2のフランジに押圧されることにより、ヘルムホルツ共振キャビティ400を取り囲んで形成する。簡単に言うと、第3のケース122を第1のケース1314と係合することでヘルムホルツ共振キャビティ400を形成することができる。さらに、ヘルムホルツ共振キャビティ400は、ブロー成形プロセスにより形成され、さらに接続部12内に配置されて固定されてもよい。
【0213】
上記詳細な説明に基づいて、第2の音声の共振周波数をもできるだけ高周波数にオフセットするために、バックキャビティ300も、フロントキャビティ200と同じであるか又は類似する技術的解決手段を採用してもよく、ここでは説明を省略する。フロントキャビティ200に比べて、主に、定在波に対して、バックキャビティ300は、さらにバックキャビティ300における音場の高圧領域を破壊することにより、バックキャビティ300における定在波の波長を短くし、さらに第2の中高周波最低共振ピークのピーク共振周波数をできるだけ大きくすることができる、という点で相違する。図47に示すように、第3の開口302は、バックキャビティ300における音場の高圧領域に設置されてもよく、例えば、第3の開口302と第2の開口301は、コア14における互いに対向する両側に位置する。例示的には、図58に示すように、第3の開口302が開状態(「Turn-on」と記す)にある場合の第2の中高周波最低共振ピークのピーク共振周波数は、第3の開口302が閉状態(「Turn-off」と記す)にある場合の第2の中高周波最低共振ピークのピーク共振周波数よりも高周波にオフセットしており、かつオフセット量が1kHz以上であってもよい。さらに、第3の開口302の有効面積は、第2の中高周波最低共振ピークのピーク共振周波数を調整するために、第2の開口301の有効面積よりも小さくてもよい。当然のことながら、第2の開口301のコア14の長軸方向における寸法は、第1の開口201のコア14の長軸方向における寸法よりも大きくてもよい。
【0214】
上記関連説明に基づいて、図57に示すように、バックキャビティ300は、コア14の長軸方向に互いに離隔している第1のバックキャビティ面303及び第2のバックキャビティ面304を有してもよく、第2の開口302及び第3の開口は、コア14の短軸方向に互いに離隔していることができる。第3の開口302の実際の面積は、第2の開口301の実際の面積よりも小さくてもよく、それにより第3の開口302の有効面積は、第2の開口301の有効面積よりも小さくてもよい。この時、第1のバックキャビティ面303及び第2のバックキャビティ面304のうちの少なくとも1つの第3の開口302に近接するセグメントは、コア14の振動方向に沿って観察すると、円弧状に設置されてもよく、それにより、取り囲んで形成されたバックキャビティ300の内壁に直角、尖角等の鋭い構造が現れることを回避し、さらに定在波を除去することに役立つ。さらに、第1のキャビティ面303及び第3のキャビティ面305のうちの少なくとも1つは、前述の短軸方向に沿って観察すると、円弧状に設置されてもよく、同様に定在波を除去することに役立つ。
【0215】
さらに、第2の開口301の開口方向は、ユーザの頭頂部に向かってもよく、例えば、その開口方向と上記垂直軸との間の夾角は、0°~10°であり、それにより第2の開口301は、第3の開口302よりも耳孔から離れおり、さらにユーザ及び周囲環境における他の人は、第2の開口301からイヤホン10の外部に出力された音声を聞き取りにくく、それにより音漏れを低減する。第2の開口301の開口方向は、その平均法線が位置する方向としてもよい。それに応じて、第2の開口301は、コア14の長軸方向において第1の中心(例えば、O1)を有してもよく、第3の開口302は、前述の長軸方向において第2の中心(例えば、O2)を有してもよく、かつ第2の中心は、前述の長軸方向に第1の中心よりも第1の開口201の中心から離れており、それにより、第3の開口302と第1の開口201との間の距離をできるだけ大きくし、さらに第3の開口302からイヤホン10の外部に出力される音声と第1の開口201から耳部に伝送される音声との間の逆位相の相殺を減少させる。第1のバックキャビティ面303は、第2のバックキャビティ面304よりも接続部12に近接し、第1のバックキャビティ面303の少なくとも一部のセグメントの曲率半径は、第2のバックキャビティ面204の対応するセグメントの曲率半径よりも大きくてもよい。
【0216】
例示的には、第1のバックキャビティ面303は、順に接続された第1のサブバックキャビティ面3031、第2のサブバックキャビティ面3032及び第3のサブバックキャビティ面3033を含んでもよく、第1のサブバックキャビティ面3031は、第3のサブバックキャビティ面3033よりも第2の開口301に近接しかつ第2のバックキャビティ面304から離れていてもよい。第2のサブバックキャビティ面3032と第3のサブバックキャビティ面3033のうち、少なくとも第2のサブバックキャビティ面3032が円弧状に設置されてもよい。例えば、第2のサブバックキャビティ面3032は、円弧状に設置され、かつ円弧半径が2mm以上である。この時、第2の開口301から第3の開口302に向ける方向において、第2のサブバックキャビティ面3032の接線とコア14の短軸方向との間の夾角は、徐々に大きくなり、第3のサブバックキャビティ面3033の接線と前述の短軸方向との間の夾角は、不変であるか又は徐々に小さくなる。
【0217】
なお、本願に係る固定アセンブリ20は、保持部13に接続され、主に装着状態で保持部13を耳部の前側に接触させる。これに基づいて、いくつかの実施例において、固定アセンブリ20は、フック状部11と、フック状部11と保持部13を接続する接続部12と、を含んでもよく、関連する構造及びその接続関係は、本願のいずれかの実施例の詳細な説明を参照することができ、ここでは説明を省略する。他のいくつかの実施例において、図59を参照すると、固定アセンブリ20は、例えば、図59の(a)に示すように、環状に設置されて耳部に巻設されてもよい。例えば、図59の(b)に示すように、耳掛け式及び後掛け式構造に構成されて頭部の後側に巻設されてもよい。例えば、図59の(c)に示すように、ヘッドビーム構造に構成されて頭頂部に巻設されてもよい。さらに、本願に係る技術的解決手段は、イヤホンだけでなく、補聴器、オーディオグラス又はAR、VR、MR等のような他のスマートグラスに適用してもよい。
【0218】
以上の説明は、本願の一部の実施例に過ぎず、本願の保護範囲を限定するためのものではなく、本願の明細書及び図面の内容に基づいて行った等価装置又は等価プロセス変換、又は他の関連する技術分野への直接又は間接的応用は、すべて同様に本願の特許保護範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0219】
10 イヤホン
11 フック状部
12 接続部
13 保持部
14 コア
15 マザーボード
16 電池
17 延出部
20 固定アセンブリ
112 弾性部
117 リード線
121 回転軸機構
131 コアケース
132 可撓性被覆構造
133c 仕切り板
134 ブームマイク
1311 放音孔
1312 圧力逃がし孔
1313 音調整孔
1316 蓋板
200 フロントキャビティ
300 バックキャビティ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13(a)】
図13(b)】
図14
図15
図16(a)】
図16(b)】
図16(c)】
図17(a)】
図17(b)】
図17(c)】
図17(d)】
図17(e)】
図17(f)】
図17(g)】
図17(h)】
図18
図19
図20(a)】
図20(b)】
図20(c)】
図21
図22
図23(a)】
図23(b)】
図24
図25
図26
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図28
図29
図30
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図35
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図39
図40
図41
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図45
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図48
図49
図50
図51
図52
図53
図54
図55
図56
図57
図58
図59(a)】
図59(b)】
図59(c)】