IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シェンツェン・ヴォックステック・カンパニー・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-イヤホン 図1
  • 特許-イヤホン 図2
  • 特許-イヤホン 図3
  • 特許-イヤホン 図4
  • 特許-イヤホン 図5
  • 特許-イヤホン 図6
  • 特許-イヤホン 図7
  • 特許-イヤホン 図8
  • 特許-イヤホン 図9A
  • 特許-イヤホン 図9B
  • 特許-イヤホン 図10
  • 特許-イヤホン 図11
  • 特許-イヤホン 図12
  • 特許-イヤホン 図13
  • 特許-イヤホン 図14
  • 特許-イヤホン 図15
  • 特許-イヤホン 図16
  • 特許-イヤホン 図17
  • 特許-イヤホン 図18
  • 特許-イヤホン 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】イヤホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20240820BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20240820BHJP
   H04R 1/40 20060101ALI20240820BHJP
   G10K 11/178 20060101ALI20240820BHJP
   H04R 1/00 20060101ALI20240820BHJP
   H04R 1/32 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
H04R1/10 104Z
H04R3/00 320
H04R1/40 320Z
G10K11/178 110
H04R1/00 318Z
H04R1/00 328Z
H04R1/32 310
H04R1/00 327
H04R1/00 317
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022580472
(86)(22)【出願日】2021-11-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 CN2021131927
(87)【国際公開番号】W WO2022227514
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/109154
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/089670
(32)【優先日】2021-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/091652
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521080118
【氏名又は名称】シェンツェン・ショックス・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼ 金波
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 承乾
(72)【発明者】
【氏名】肖 ▲楽▼
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲風▼云
(72)【発明者】
【氏名】▲齊▼ 心
【審査官】川▲崎▼ 博章
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-207956(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0019108(US,A1)
【文献】特開2020-018015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
H04R 3/00
H04R 1/40
G10K 11/178
H04R 1/00
H04R 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヤホンであって、
前記イヤホンを、ユーザの耳部の付近にあるユーザの外耳道を塞がない位置に固定するように構成され、フック状部及び胴体部を含み、前記ユーザが前記イヤホンを装着している場合、前記フック状部が前記ユーザの耳部の第1の側と頭部との間に掛けられ、前記胴体部が前記耳部の第2の側に接触する、固定構造と、
前記胴体部に位置し、環境ノイズをピックアップするように構成された第1のマイクロホンアレイと、
前記フック状部又は前記胴体部に位置し、前記第1のマイクロホンアレイにより、前記第1のマイクロホンアレイ内のいずれのマイクロホンよりも前記ユーザの外耳道に近接している目標空間位置の音場を推定し、前記目標空間位置の音場の推定に基づいて、ノイズ低減信号を生成するように構成されたプロセッサと、
前記胴体部に位置し、前記ノイズ低減信号に基づいて、前記環境ノイズを低減するように放音孔を通して前記イヤホンの外部に伝達される目標信号を出力するように構成されたスピーカーと、を含む、イヤホン。
【請求項2】
前記胴体部は、保持部と、接続部と、を含み、前記ユーザが前記イヤホンを装着している場合、前記保持部は、前記耳部の第2の側に接触し、前記接続部は、前記フック状部と前記保持部を接続する、ことを特徴とする請求項1に記載のイヤホン。
【請求項3】
前記保持部の垂直軸方向に沿って前記ユーザの頭頂部に近接している側に、前記放音孔よりも前記ユーザの外耳道から離れた圧力逃がし孔が設置され、前記圧力逃がし孔と前記放音孔は、音響双極子を形成し、前記第1のマイクロホンアレイは、第1の目標領域に設置され、前記第1の目標領域は、前記音響双極子の放射音場の音響ヌル位置である、ことを特徴とする請求項2に記載のイヤホン。
【請求項4】
前記目標空間位置の音場の推定に基づいてノイズ低減信号を生成することは、
前記ピックアップされた環境ノイズに基づいて前記目標空間位置のノイズを推定することと、
前記目標空間位置のノイズ及び前記目標空間位置の音場の推定に基づいて前記ノイズ低減信号を生成することと、を含む、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のイヤホン。
【請求項5】
前記イヤホンは、前記フック状部及び/又は前記胴体部に位置し、前記イヤホンの運動情報を取得するように構成された1つ以上のセンサを含み、
前記プロセッサは、さらに、
前記運動情報に基づいて前記目標空間位置のノイズ及び前記目標空間位置の音場の推定を更新し、
前記更新された目標空間位置のノイズ及び前記更新された目標空間位置の音場の推定に基づいて前記ノイズ低減信号を生成するように構成されている、ことを特徴とする請求項4に記載のイヤホン。
【請求項6】
前記ピックアップされた環境ノイズに基づいて前記目標空間位置のノイズを推定することは、
前記ピックアップされた環境ノイズに関連する1つ以上の空間ノイズ源を決定することと、
前記空間ノイズ源に基づいて、前記目標空間位置のノイズを推定することと、を含む、ことを特徴とする請求項4又は5に記載のイヤホン。
【請求項7】
前記第1のマイクロホンアレイにより目標空間位置の音場を推定することは、
前記目標空間位置にマイクロホンが存在する場合に前記マイクロホンが収集したオーディオデータを表す、数理モデル又は機械学習モデルを含む仮想マイクロホンを、前記第1のマイクロホンアレイに基づいて構築することと、
前記仮想マイクロホンに基づいて前記目標空間位置の音場を推定することと、を含む、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のイヤホン。
【請求項8】
前記目標空間位置の音場の推定に基づいてノイズ低減信号を生成することは、
前記仮想マイクロホンに基づいて前記目標空間位置のノイズを推定することと、
前記目標空間位置のノイズ及び前記目標空間位置の音場の推定に基づいて前記ノイズ低減信号を生成することと、を含む、ことを特徴とする請求項7に記載のイヤホン。
【請求項9】
前記イヤホンは、前記胴体部に位置し、前記環境ノイズ及び前記目標信号をピックアップするように構成された第2のマイクロホンを含み、
前記プロセッサは、前記第2のマイクロホンによりピックアップされた音声信号に基づいて、前記目標信号を更新するように構成されている、ことを特徴とする請求項2~7のいずれか一項に記載のイヤホン。
【請求項10】
前記第2のマイクロホンは、前記ユーザの外耳道に近接している前記胴体部の保持部上の領域である第2の目標領域に設置される、ことを特徴とする請求項9に記載のイヤホン。
【請求項11】
前記第2のマイクロホンによりピックアップされた音声信号に基づいて前記ノイズ低減信号を更新することは、
前記第2のマイクロホンによりピックアップされた音声信号に基づいて、前記ユーザの外耳道での音場を推定することと、
前記ユーザの外耳道での音場に基づいて、前記ノイズ低減信号を更新することと、を含む、ことを特徴とする請求項9又は10に記載のイヤホン。
【請求項12】
前記目標空間位置の音場の推定に基づいてノイズ低減信号を生成することは、
前記ピックアップされた環境ノイズを異なる周波数範囲に対応する複数の周波数帯域に分割することと、
前記複数の周波数帯域のうちの少なくとも1つに基づいて、前記少なくとも1つの周波数帯域のそれぞれに対応する前記ノイズ低減信号を生成することと、を含む、ことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載のイヤホン。
【請求項13】
前記複数の周波数帯域のうちの少なくとも1つに基づいて、前記少なくとも1つの周波数帯域のそれぞれに対応する前記ノイズ低減信号を生成することは、
前記複数の周波数帯域の音圧レベルを取得することと、
前記複数の周波数帯域の前記音圧レベル及び前記複数の周波数帯域の前記周波数範囲に基づいて、一部の周波数帯域に対応する前記ノイズ低減信号のみを生成することと、を含む、ことを特徴とする請求項12に記載のイヤホン。
【請求項14】
前記イヤホンは、前記胴体部に位置し、前記環境ノイズ及び前記目標信号をピックアップするように構成された第2のマイクロホンを含み、
前記第1のマイクロホンアレイ又は前記第2のマイクロホンは、前記ユーザの発話音声をピックアップするように構成された骨伝導マイクロホンを含み、前記プロセッサが前記ピックアップされた環境ノイズに基づいて前記目標空間位置のノイズを推定することは、
前記ピックアップされた環境ノイズから、前記骨伝導マイクロホンによりピックアップされた信号に関連する成分を除去して前記環境ノイズを更新することと、
前記更新された環境ノイズに基づいて前記目標空間位置のノイズを推定することと、を含む、ことを特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載のイヤホン。
【請求項15】
前記イヤホンは、ユーザの入力を取得するように構成された調整モジュールをさらに含み、
前記プロセッサは、さらに前記ユーザの入力に基づいて前記ノイズ低減信号を調整するように構成されている、ことを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載のイヤホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[参照による援用]
本願は、2021年7月29日に出願された国際出願番号PCT/CN2021/109154の優先権、2021年4月25日に出願された国際出願番号PCT/CN2021/089670の優先権、2021年4月30日に出願された国際出願番号PCT/CN2021/091652の優先権を主張するものであり、その内容は、引用により本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
本願は、音響の分野に関し、特にイヤホンに関する。
【背景技術】
【0003】
能動型ノイズ低減技術は、イヤホンのスピーカーを利用して外部環境ノイズとは逆の音波を出力して環境ノイズを相殺する方法である。イヤホンは、一般的にカナル型イヤホンと開放型イヤホンの2種類に分けることができる。カナル型イヤホンは、使用中にユーザの耳部を塞ぎ、ユーザが長時間装着すると、閉塞感、異物感、圧痛などが生じやすい。開放型イヤホンは、ユーザの耳部を開放することができ、長時間の装着が受け入れやすい一方、外部ノイズが大きい場合、そのノイズ低減効果が明らかではなく、ユーザの聴覚体験を低下させる。
【0004】
したがって、ユーザの両耳を開放してユーザの聴覚体験を向上させることができるイヤホン及びノイズ低減方法を提供することが望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の実施例は、イヤホンを提供し、前記イヤホンは、前記イヤホンを、ユーザの耳部の付近にあるユーザの外耳道を塞がない位置に固定するように構成され、フック状部及び胴体部を含み、前記ユーザが前記イヤホンを装着している場合、前記フック状部が前記ユーザの耳部の第1の側と頭部との間に掛けられ、前記胴体部が前記耳部の第2の側に接触する、固定構造と、前記胴体部に位置し、環境ノイズをピックアップするように構成された第1のマイクロホンアレイと、前記フック状部又は前記胴体部に位置し、前記第1のマイクロホンアレイにより、前記第1のマイクロホンアレイ内のいずれのマイクロホンよりも前記ユーザの外耳道に近接している目標空間位置の音場を推定し、前記目標空間位置の音場の推定に基づいてノイズ低減信号を生成するように構成されたプロセッサと、前記胴体部に位置し、前記ノイズ低減信号に基づいて、前記環境ノイズを低減するように放音孔を通して前記イヤホンの外部に伝達される目標信号を出力するように構成されたスピーカーと、を含む。
【0006】
いくつかの実施例において、前記胴体部は、前記ユーザが前記イヤホンを装着している場合、前記耳部の第2の側に接触する保持部と、前記フック状部と前記保持部を接続する接続部と、を含む。
【0007】
いくつかの実施例において、前記ユーザが前記イヤホンを装着している場合、前記接続部は、前記耳部の第1の側から前記耳部の第2の側へ延在し、前記接続部は、前記フック状部と協働して前記保持部に前記耳部の第2の側に対する押圧力を提供し、また、前記接続部は、前記保持部と協働して前記耳部の第1の側に対する押圧力を前記フック状部に提供する。
【0008】
いくつかの実施例において、前記フック状部と前記接続部との間の第1の接続点から前記フック状部の自由端までの方向において、前記フック状部は、前記耳部の第1の側に向かって折り曲げられ、かつ前記耳部の第1の側と第1の接触点で接触し、前記保持部は、前記耳部の第2の側と第2の接触点で接触し、自然状態での前記接続部の延在方向に沿った前記第1の接触点と前記第2の接触点との間の距離は、装着状態での前記接続部の延在方向に沿った前記第1の接触点と前記第2の接触点との間の距離よりも小さく、それにより、前記耳部の第2の側に対する押圧力を前記保持部に提供し、また、前記耳部の第1の側に対する押圧力を前記フック状部に提供する。
【0009】
いくつかの実施例において、前記フック状部と前記接続部との間の第1の接続点から前記フック状部の自由端までの方向において、前記フック状部は、前記頭部に向かって折り曲げられ、かつ前記頭部と第1の接触点及び第3の接触点で接触し、前記第1の接触点は、前記フック状部が前記第1の接触点を支点とするレバー構造になるように前記第3の接触点と前記第1の接続点との間に位置し、前記頭部が前記第3の接触点で与える前記頭部の外側に向かう作用力は、前記レバー構造により前記第1の接続点での前記頭部に向かう作用力に変換され、それにより、前記接続部が、前記耳部の第2の側に対する押圧力を前記保持部に提供する。
【0010】
いくつかの実施例において、前記スピーカーは、前記保持部に設置され、前記スピーカーの前記イヤホンの全体構造における相対位置を調整するために、前記保持部が多段構造である。
【0011】
いくつかの実施例において、前記保持部は、順に接続された第1の保持段、第2の保持段及び第3の保持段を含み、前記第1の保持段の前記第2の保持段から離れた一端は、前記接続部に接続され、前記第2の保持段は、前記第1の保持段と前記第2の保持段がU字形構造になるように、前記第1の保持段に対して間隔をあけながら折り返され、前記スピーカーは、前記第3の保持段に設置される。
【0012】
いくつかの実施例において、前記保持部は、順に接続された第1の保持段、第2の保持段及び第3の保持段を含み、前記第1の保持段の前記第2の保持段から離れた一端は、前記接続部に接続され、前記第2の保持段は、前記第1の保持段に対して折り曲げられ、前記第3の保持段と前記第1の保持段は、間隔をあけながら互いに並設され、前記スピーカーは、前記第3の保持段に設置される。
【0013】
いくつかの実施例において、前記スピーカーから出力された前記目標信号を前記放音孔を通して前記耳部に伝達するように、前記保持部の前記耳部に向かう側に前記放音孔が設置される。
【0014】
いくつかの実施例において、前記保持部の前記耳部に向かう側は、第1の領域と、第2の領域とを含み、前記第1の領域に、放音孔が設置され、前記第2の領域は、前記第1の領域よりも前記接続部から離れており、かつ、装着状態で前記放音孔が前記耳部から離間するように前記第1の領域よりも前記耳部に向かって突起している。
【0015】
いくつかの実施例において、前記ユーザが前記イヤホンを装着している場合、前記放音孔と前記ユーザの外耳道との間の距離は、10ミリメート未満である。
【0016】
いくつかの実施例において、前記保持部の垂直軸方向に沿って前記ユーザの頭頂部に近接している側に、前記放音孔よりも前記ユーザの外耳道から離れた圧力逃がし孔が設置される。
【0017】
いくつかの実施例において、前記ユーザが前記イヤホンを装着している場合、前記圧力逃がし孔と前記ユーザの外耳道との間の距離は、5ミリメートル~15ミリメートルである。
【0018】
いくつかの実施例において、前記圧力逃がし孔と前記放音孔との間の接続線と前記保持部の厚さ方向との間の夾角は、0°~50°である。
【0019】
いくつかの実施例において、前記圧力逃がし孔と前記放音孔は、音響双極子を形成し、前記第1のマイクロホンアレイは、第1の目標領域に設置され、前記第1の目標領域は、前記双極子放射音場の音響ヌル位置である。
【0020】
いくつかの実施例において、前記第1のマイクロホンアレイは、前記接続部に位置する。
【0021】
いくつかの実施例において、前記第1のマイクロホンアレイと前記放音孔との間の接続線と、前記放音孔と前記圧力逃がし孔との間の接続線は、第1の夾角を有し、前記第1のマイクロホンアレイと前記圧力逃がし孔との間の接続線と、前記放音孔と前記圧力逃がし孔との間の接続線は、第2の夾角を有し、前記第1の夾角と前記第2の夾角との差は、30°以下である。
【0022】
いくつかの実施例において、前記第1のマイクロホンアレイと前記放音孔との間に第1の距離があり、前記第1のマイクロホンアレイと前記圧力逃がし孔との間に第2の距離があり、前記第1の距離と前記第2の距離との差は、6ミリメートル以下である。
【0023】
いくつかの実施例において、前記目標空間位置の音場の推定に基づいて、ノイズ低減信号を生成することは、前記ピックアップされた環境ノイズに基づいて前記目標空間位置のノイズを推定することと、前記目標空間位置のノイズ及び前記目標空間位置の音場の推定に基づいて前記ノイズ低減信号を生成することと、を含む。
【0024】
いくつかの実施例において、前記イヤホンは、前記フック状部及び/又は前記胴体部に位置し、前記イヤホンの運動情報を取得するように構成された1つ以上のセンサを含み、前記プロセッサは、さらに、前記運動情報に基づいて前記目標空間位置のノイズ及び前記目標空間位置の音場の推定を更新し、前記更新された目標空間位置のノイズ及び前記更新された目標空間位置の音場の推定に基づいて前記ノイズ低減信号を生成するように構成されている。
【0025】
いくつかの実施例において、前記ピックアップされた環境ノイズに基づいて前記目標空間位置のノイズを推定することは、前記ピックアップされた環境ノイズに関連する1つ以上の空間ノイズ源を決定することと、前記空間ノイズ源に基づいて、前記目標空間位置のノイズを推定することと、を含む。
【0026】
いくつかの実施例において、前記第1のマイクロホンアレイにより目標空間位置の音場を推定することは、前記目標空間位置にマイクロホンが存在する場合に前記マイクロホンが収集したオーディオデータを表すための、数理モデル又は機械学習モデルを含む仮想マイクロホンを、前記第1のマイクロホンアレイに基づいて構築することと、前記仮想マイクロホンに基づいて前記目標空間位置の音場を推定することと、を含む。
【0027】
いくつかの実施例において、前記目標空間位置の音場の推定に基づいて、ノイズ低減信号を生成することは、前記仮想マイクロホンに基づいて前記目標空間位置のノイズを推定することと、前記目標空間位置のノイズ及び前記目標空間位置の音場の推定に基づいて前記ノイズ低減信号を生成することと、を含む。
【0028】
いくつかの実施例において、前記イヤホンは、前記胴体部に位置し、前記環境ノイズ及び前記目標信号をピックアップするように構成された第2のマイクロホンを含み、前記プロセッサは、前記第2のマイクロホンによりピックアップされた音声信号に基づいて、前記目標信号を更新するように構成されている。
【0029】
いくつかの実施例において、前記第2のマイクロホンは、前記第1のマイクロホンアレイ内のいずれのマイクロホンよりも前記ユーザの外耳道に近接している少なくとも1つのマイクロホンを含む。
【0030】
いくつかの実施例において、前記第2のマイクロホンは、前記ユーザの外耳道に近接している前記保持部上の領域である第2の目標領域に設置される。
【0031】
いくつかの実施例において、前記ユーザが前記イヤホンを装着している場合、前記第2のマイクロホンと前記ユーザの外耳道との間の距離は、10ミリメートル未満である。
【0032】
いくつかの実施例において、前記ユーザの矢状面において、前記第2のマイクロホンと前記放音孔との間の矢状軸方向に沿った距離は、10ミリメートル未満である。
【0033】
いくつかの実施例において、前記ユーザの矢状面において、前記第2のマイクロホンと前記放音孔との間の垂直軸方向に沿った距離は、2ミリメートル~5ミリメートルである。
【0034】
いくつかの実施例において、前記第2のマイクロホンによりピックアップされた音声信号に基づいて前記ノイズ低減信号を更新することは、前記第2のマイクロホンによりピックアップされた音声信号に基づいて、前記ユーザの外耳道での音場を推定することと、前記ユーザの外耳道での音場に基づいて、前記ノイズ低減信号を更新することと、を含む。
【0035】
いくつかの実施例において、前記目標空間位置の音場の推定に基づいてノイズ低減信号を生成することは、前記ピックアップされた環境ノイズを異なる周波数範囲に対応する複数の周波数帯域に分割することと、前記複数の周波数帯域のうちの少なくとも1つに基づいて、前記少なくとも1つの周波数帯域のそれぞれに対応する前記ノイズ低減信号を生成することと、を含む。
【0036】
いくつかの実施例において、前記複数の周波数帯域のうちの少なくとも1つに基づいて、前記少なくとも1つの周波数帯域のそれぞれに対応する前記ノイズ低減信号を生成することは、前記複数の周波数帯域の音圧レベルを取得することと、前記複数の周波数帯域の前記音圧レベル及び前記複数の周波数帯域の前記周波数範囲に基づいて、一部の周波数帯域に対応する前記ノイズ低減信号のみを生成することと、を含む。
【0037】
いくつかの実施例において、前記第1のマイクロホンアレイ又は前記第2のマイクロホンは、前記ユーザの発話音声をピックアップするように構成された骨伝導マイクロホンを含み、前記プロセッサが前記ピックアップされた環境ノイズに基づいて前記目標空間位置のノイズを推定することは、前記ピックアップされた環境ノイズから、前記骨伝導マイクロホンによりピックアップされた信号に関連する成分を除去して前記環境ノイズを更新することと、前記更新された環境ノイズに基づいて前記目標空間位置のノイズを推定することと、を含む。
【0038】
いくつかの実施例において、前記イヤホンは、ユーザの入力を取得するように構成された調整モジュールをさらに含み、前記プロセッサは、さらに前記ユーザの入力に基づいて前記ノイズ低減信号を調整するように構成されている。
【0039】
本願は、例示的な実施例の方式でさらに説明し、これらの例示的な実施例を図面により詳細に説明する。これらの実施例は、限定的なものではなく、これらの実施例では、同じ符号は、同じ構造を示す。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本願のいくつかの実施例に係る例示的なイヤホンのブロック図である。
図2】本願のいくつかの実施例に係る例示的な耳部の概略図である。
図3】本願のいくつかの実施例に係る例示的なイヤホンの構造図である。
図4】本願のいくつかの実施例に係る例示的なイヤホンの装着図である。
図5】本願のいくつかの実施例に係る例示的なイヤホンの構造図である。
図6】本願のいくつかの実施例に係る例示的なイヤホンの装着図である。
図7】本願のいくつかの実施例に係る例示的なイヤホンの構造図である。
図8】本願のいくつかの実施例に係る例示的なイヤホンの装着図である。
図9A】本願のいくつかの実施例に係る例示的なイヤホンの構造図である。
図9B】本願のいくつかの実施例に係る例示的なイヤホンの構造図である。
図10】本願のいくつかの実施例に係る例示的なイヤホンの耳部に向かう側の構造図である。
図11】本願のいくつかの実施例に係る例示的なイヤホンの耳部に背く側の構造図である。
図12】本願のいくつかの実施例に係る例示的なイヤホンの平面図である。
図13】本願のいくつかの実施例に係る例示的なイヤホンの断面構造概略図である。
図14】本願のいくつかの実施例に係るイヤホンの例示的なノイズ低減フローチャートである。
図15】本願のいくつかの実施例に係る目標空間位置のノイズ推定の例示的なフローチャートである。
図16】本願のいくつかの実施例に係る目標空間位置の音場及びノイズの推定の例示的なフローチャートである。
図17】本願のいくつかの実施例に係るノイズ低減信号更新の例示的なフローチャートである。
図18】本願のいくつかの実施例に係るイヤホンの例示的なノイズ低減フローチャートである。
図19】本願のいくつかの実施例に係る目標空間位置のノイズ推定の例示的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本願の実施例の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、実施例の説明に必要な図面を簡単に説明する。明らかに、以下に説明される図面は、単に本願の例又は実施例の一部にすぎず、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて本願を他の類似するシナリオに適用することができる。特に言語環境から明らかではないか又は明記しない限り、図面において同じ符号は同じ構造又は操作を示す。
【0042】
本明細書で使用される「システム」、「装置」、「ユニット」及び/又は「モジュール」は、レベルの異なる様々なアセンブリ、素子、部品、部分又は組立体を区別するための方法であることを理解されたい。しかしながら、他の用語が同じ目的を達成することができれば、上記用語の代わりに他の表現を用いることができる。
【0043】
本願及び特許請求の範囲に示すように、文脈を通して明確に別段の指示をしない限り、「1つ」、「1個」、「1種」及び/又は「該」などの用語は、特に単数形を意味するものではなく、複数形を含んでもよい。一般的に、用語「含む」及び「含有」は、明確に特定されたステップ及び要素を含むことを提示するものに過ぎず、これらのステップ及び要素は、排他的な羅列ではなく、方法又は装置は、また他のステップ又は要素を含む可能性がある。
【0044】
本願では、フローチャートを使用して本願の実施例に係るシステムが実行する操作を説明する。先行及び後続の操作が必ずしも順序に従って正確に実行されるとは限らないことを理解されたい。その代わりに、各ステップを、逆の順序で、又は同時に処理してもよい。また、他の操作をこれらの過程に追加してもよく、これらの過程から1つ以上の操作を除去してもよい。
【0045】
本明細書のいくつかの実施例は、イヤホンを提供する。上記イヤホンは、開放型イヤホンであってもよい。開放型イヤホンは、固定構造により、ユーザの耳部の付近にあるユーザの外耳道を塞がない位置にスピーカーを固定することができる。いくつかの実施例において、イヤホンは、固定構造、第1のマイクロホンアレイ、プロセッサ及びスピーカーを含んでもよい。固定構造は、ユーザの外耳道を塞がないようにイヤホンをユーザの耳部の付近に固定するように構成されてもよい。第1のマイクロホンアレイ、プロセッサ及びスピーカーは、イヤホンの能動的ノイズ低減機能を実現するように固定構造に位置してもよい。いくつかの実施例において、固定構造は、フック状部及び胴体部を含んでもよく、ユーザがイヤホンを装着している場合、フック状部は、ユーザの耳部の第1の側と頭部との間に掛けられ、胴体部は、耳部の第2の側に接触する。いくつかの実施例において、胴体部は、保持部と、接続部とを含んでもよく、ユーザがイヤホンを装着している場合、保持部は、耳部の第2の側に接触する、接続部は、フック状部と保持部を接続する。接続部は、耳部の第1の側から耳部の第2の側へ延在し、接続部は、フック状部と協働して耳部の第2の側に対する押圧力を保持部に提供し、また、接続部は、保持部と協働してフック状部に耳部の第1の側に対する押圧力を提供し、それにより、イヤホンは、ユーザの耳部を挟持し、イヤホンの装着の安定性を保証することができる。いくつかの実施例において、第1のマイクロホンアレイは、環境ノイズをピックアップするように、イヤホンの胴体部に位置してもよい。プロセッサは、目標空間位置の音場を推定するようにイヤホンのフック状部又は胴体部に位置する。目標空間位置は、ユーザの外耳道に所定の距離をもって近接している空間位置を含んでもよく、例えば、目標空間位置は、第1のマイクロホンアレイ内のいずれのマイクロホンよりもユーザの外耳道に近接している。理解されるように、第1のマイクロホンアレイ内の各マイクロホンは、ユーザの外耳道の付近の異なる位置に分布することができ、プロセッサは、第1のマイクロホンアレイ内の各マイクロホンが収集した環境ノイズに基づいてユーザの外耳道の位置(例えば、目標空間位置)に近接している音場を推定することができる。スピーカーは、胴体部(保持部)に位置し、ノイズ低減信号に基づいて目標信号を出力することができる。当該目標信号は、ユーザに聞かれる環境ノイズを低減するように、保持部上の放音孔を通してイヤホンの外部に伝達することができる。
【0046】
いくつかの実施例において、ユーザが聞いた環境ノイズをよりうまく低減するために、胴体部は、第2のマイクロホンを含んでもよい。対照的に、第2のマイクロホンは、第1のマイクロホンアレイよりもユーザの外耳道に近接しており、その収集した音声信号は、ユーザが聞いた音声にはより近く、それを反映することができる。プロセッサは、第2のマイクロホンが収集した音声信号に基づいて、より理想的なノイズ低減効果を達成するように、上記ノイズ低減信号を更新することができる。
【0047】
本明細書の実施例に係るイヤホンは、固定構造によりユーザの耳部の付近にあるユーザの外耳道を塞がない位置に固定することができるため、ユーザの両耳を開放し、イヤホンの装着の安定性及び快適さを向上させると理解されるべきである。同時に、固定構造(例えば、胴体部)に位置する第1のマイクロホンアレイ/第2のマイクロホン、及びプロセッサを利用してユーザの外耳道(例えば、目標空間位置)に近接している音場を推定し、スピーカーから出力された目標信号によりユーザの外耳道での環境ノイズを低減することにより、イヤホンの能動的ノイズ低減を実現し、ユーザが当該イヤホンを使用する過程での聴覚体験を向上させる。
【0048】
図1は、本願のいくつかの実施例に係る例示的なイヤホンのブロック図である。
【0049】
いくつかの実施例において、イヤホン100は、固定構造110、第1のマイクロホンアレイ120、プロセッサ130及びスピーカー140を含んでもよい。第1のマイクロホンアレイ120、プロセッサ130及びスピーカー140は、固定構造110に位置してもよい。イヤホン100は、ユーザの耳部の付近にあるユーザの外耳道を塞がない位置にイヤホン100を固定するように、固定構造110によりユーザの耳部を挟持することができる。いくつかの実施例において、固定構造110(例えば、胴体部)に位置する第1のマイクロホンアレイ120は、外部の環境ノイズをピックアップし、当該環境ノイズを電気信号に変換し、処理のためにプロセッサ130に伝達することができる。プロセッサ130は、第1のマイクロホンアレイ120及びスピーカー140に結合される(例えば、電気的に接続される)。プロセッサ130は、第1のマイクロホンアレイ120から伝達された電気信号を受信し処理してノイズ低減信号を生成し、生成したノイズ低減信号をスピーカー140に伝達することができる。スピーカー140は、ノイズ低減信号に基づいて目標信号を出力することができる。当該目標信号は、固定構造110(例えば、保持部)上の放音孔を通してイヤホン100の外部に伝達されて、ユーザの外耳道の位置(例えば、目標空間位置)での環境ノイズを低減又は相殺することに用いられてもよく、それによりイヤホン100の能動的ノイズ低減を実現し、ユーザがイヤホン100を使用する過程での聴覚体験を向上させる。
【0050】
いくつかの実施例において、固定構造110はフック状部111及び胴体部112を含む。ユーザがイヤホン100を装着している場合、フック状部111は、ユーザの耳部の第1の側と頭部との間に掛けられ、胴体部112は、耳部の第2の側に接触する。耳部の第1の側は、ユーザの耳部の裏側であってもよく、ユーザの耳部の第2の側は、ユーザの耳部の前側であってもよい。ユーザの耳部の前側とは、ユーザの耳部の、耳甲介舟、三角窩、対耳輪、舟状窩、耳輪等の部位が位置する側を指す(耳部の構造について、図2を参照)。ユーザの耳部の裏側とは、ユーザの耳部の前側に背向する側であり、即ち前側とは相反する側である。
【0051】
いくつかの実施例において、胴体部112は、接続部及び保持部を含んでもよい。ユーザがイヤホン100を装着している場合、保持部は、耳部の第2の側に接触し、接続部は、フック状部と保持部を接続する。接続部は、耳部の第1の側から耳部の第2の側へ延在し、接続部は、フック状部と協働して保持部に耳部の第2の側に対する押圧力を提供し、また、接続部は、保持部と協働してフック状部に耳部の第1の側に対する押圧力を提供し、それにより、イヤホン100は、固定構造110によりユーザの耳部の付近で耳部を挟持し、イヤホン100の装着の安定性を保証することができる。
【0052】
いくつかの実施例において、ユーザの耳部に接触するフック状部111及び/又は胴体部112(接続部及び/又は保持部)の部位は、軟質材料、硬質材料等又はそれらの組み合わせで製造されてもよい。軟質材料は、硬度(例えば、ショア硬度)が第1の硬度閾値(例えば、15A、20A、30A、35A、40A等)よりも小さい材料である。例えば、軟質材料のショア硬度は、45~85A、30~60Dであってもよい。硬質材料は、硬度(例えば、ショア硬度)が第2の硬度閾値(例えば、65D、70D、80D、85D、90D等)よりも大きい材料である。軟質材料は、ポリウレタン(Polyurethanes、PU)(例えば、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(Thermoplastic polyurethanes、TPU))、ポリカーボネート(Polycarbonate、PC)、ポリアミド(Polyamides、PA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(Acrylonitrile Butadiene Styrene、ABS)、ポリスチレン(Polystyrene、PS)、高衝撃ポリスチレン(High Impact Polystyrene、HIPS)、ポリプロピレン(Polypropylene、PP)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalate、PET)、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl Chloride、PVC)、ポリウレタン(Polyurethanes、PU)、ポリエチレン(Polyethylene、PE)、フェノール樹脂(Phenol Formaldehyde、PF)、尿素・ホルムアルデヒド樹脂(Urea-Formaldehyde、UF)、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂(Melamine-Formaldehyde、MF)、シリカゲル等又はそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。硬質材料は、)、ポリエーテルスルホン樹脂(Poly(ester sulfones)、PES)、ポリ塩化ビニリデン(Polyvinylidene chloride、PVDC)、ポリメタクリル酸メチル(Polymethyl Methacrylate、PMMA)、ポリエーテルエーテルケトン(Poly-ether-ether-ketone、PEEK)等、又はそれらの組み合わせ、又はそれらとガラス繊維、炭素繊維等の強化剤との混合物を含むが、それらに限定されない。いくつかの実施例において、ユーザの耳部に接触する固定構造110のフック状部111及び/又は胴体部112の部位の材質は、具体的な状況に応じて選択することができる。いくつかの実施例において、軟質材料は、ユーザがイヤホン100を装着する快適さを向上させることができ、硬質材料は、イヤホン100の強度を向上させることができ、イヤホン100の各部材の材質の合理な組み合わせにより、ユーザの快適さを向上させるとともに、イヤホン100の強度を向上させることができる。
【0053】
第1のマイクロホンアレイ120は、環境ノイズをピックアップするように、固定構造110の胴体部112(例えば、接続部又は保持部)に位置してもよい。いくつかの実施例において、環境ノイズとは、ユーザが位置する環境における様々な外部音声の組み合わせを指す。いくつかの実施例において、第1のマイクロホンアレイ120を固定構造110の胴体部112に取り付けることにより、第1のマイクロホンアレイ120をユーザの外耳道の付近に位置させることができる。このようにして取得された環境ノイズを基に、プロセッサ130は、実際にユーザの外耳道に伝達されるノイズをより正確に算出することができ、ユーザに聞かれる環境ノイズに対する後続の能動的ノイズ低減に役立つ。
【0054】
いくつかの実施例において、環境ノイズは、ユーザが話す音声を含んでもよい。例えば、第1のマイクロホンアレイ120は、イヤホン100の動作状態に基づいて環境ノイズをピックアップすることができる。イヤホン100の動作状態とは、ユーザがイヤホン100を装着している場合の使用状態を指す。単に例として、イヤホン100の動作状態は、通話状態、非通話状態(例えば、音楽再生状態)、音声メッセージ送信状態等を含むがこれらに限定されない。イヤホン100が非通話状態にある場合、ユーザ自身の発話による音声を環境ノイズと見なし、第1のマイクロホンアレイ120がユーザ自身が話した音声と他の環境ノイズを同時にピックアップしてもよい。イヤホン100が通話状態にある場合、ユーザ自身の発話による音声を環境ノイズと見なさず、第1のマイクロホンアレイ120がユーザ自身が話した音声以外の環境ノイズをピックアップしてもよい。例えば、第1のマイクロホンアレイ120は、第1のマイクロホンアレイ120から一定の距離(例えば、0.5メートル、1メートル)だけ離れたノイズ源が発するノイズをピックアップしてもよい。
【0055】
いくつかの実施例において、第1のマイクロホンアレイ120は、1つ以上の空気伝導マイクロホンを含んでもよい。例えば、ユーザは、イヤホン100を使用して音楽を聞く場合、空気伝導マイクロホンは、外部環境のノイズとユーザの発話の音声の両方を取得し、取得された外部環境のノイズ及びユーザの発話の音声を共に環境ノイズとしてもよい。いくつかの実施例において、第1のマイクロホンアレイ120は、さらに1つ以上の骨伝導マイクロホンを含んでもよい。骨伝導マイクロホンは、ユーザの皮膚に直接的に接触してもよく、ユーザが話す時に骨格又は筋肉により生成された振動信号は、直接的に骨伝導マイクロホンに伝達されてもよく、さらに、骨伝導マイクロホンは、振動信号を電気信号に変換し、処理のために電気信号を信号プロセッサ130に伝達する。骨伝導マイクロホンは、人体に直接的に接触しなくてもよく、ユーザが話す時に骨格又は筋肉により生成された振動信号をイヤホン100の固定構造110に伝達してから、固定構造110により骨伝導マイクロホンに伝達することができる。いくつかの実施例において、ユーザが通話状態にある場合、プロセッサ130は、空気伝導マイクロホンにより収集された音声信号を環境ノイズとして、当該環境ノイズによりノイズ低減を行い、骨伝導マイクロホンにより収集された音声信号を音声信号として端末装置に伝送することができ、それによりユーザの通話品質を保証する。
【0056】
いくつかの実施例において、プロセッサ130は、イヤホン100の動作状態に基づいて骨伝導マイクロホン及び空気伝導マイクロホンのスイッチ状態を制御することができる。いくつかの実施例において、第1のマイクロホンアレイ120が環境ノイズをピックアップする場合、第1のマイクロホンアレイ120における骨伝導マイクロホンのスイッチ状態及び空気伝導マイクロホンのスイッチ状態は、イヤホン100の動作状態に応じて決定することができる。例えば、ユーザがイヤホン100を装着して音楽を再生する場合、骨伝導マイクロホンのスイッチ状態が待機状態であって、空気伝導マイクロホンのスイッチ状態が動作状態であってもよい。また、例えば、ユーザがイヤホン100を装着して音声メッセージを送信する場合、骨伝導マイクロホンのスイッチ状態が動作状態であって、空気伝導マイクロホンのスイッチ状態が動作状態であってもよい。いくつかの実施例において、プロセッサ130は、制御信号を送信することにより第1のマイクロホンアレイ120におけるマイクロホン(例えば、骨伝導マイクロホン、空気伝導マイクロホン)のスイッチ状態を制御することができる。
【0057】
いくつかの実施例において、マイクロホンの動作原理に基づいて、第1のマイクロホンアレイ120は、可動コイル型マイクロホン、リボンマイクロホン、コンデンサマイクロホン、エレクトレットマイクロホン、電磁型マイクロホン、カーボンマイクロホン等、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施例において、第1のマイクロホンアレイ120の配列方式は、線形アレイ(例えば、直線状、曲線状)、平面アレイ(例えば、十字形、円形、環状、多角形、網状等の規則的な形状及び/又は不規則な形状)、立体アレイ(例えば、円柱状、球状、半球状、多面体等)、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0058】
プロセッサ130は、固定構造110のフック状部111又は胴体部112に位置してもよく、プロセッサ130は、第1のマイクロホンアレイ120により目標空間位置の音場を推定することができる。目標空間位置の音場とは、目標空間位置又は目標空間位置の付近における音波の分布及び変化(例えば、経時変化、位置による変化)を指してもよい。音場を説明するための物理量は、音圧レベル、音声周波数、音声振幅、音声位相、音源振動速度、又は媒質(例えば、空気)密度などを含んでもよい。一般的に、これらの物理量は、位置及び時間の関数であってもよい。目標空間位置は、ユーザの外耳道から所定の距離だけ離れた空間位置であってもよい。ここでの所定の距離は、例えば、2mm、5mm、10mm等の固定距離であってもよい。当該目標空間位置は、第1のマイクロホンアレイ120内のいずれのマイクよりもユーザの外耳道に近接している位置であってもよい。いくつかの実施例において、目標空間位置は、第1のマイクロホンアレイ120内の各マイクロホンの数、ユーザの外耳道に対する分布位置に関連してもよい。第1のマイクロホンアレイ120内の各マイクロホンの数及び/又はユーザの外耳道に対する分布位置を調整することにより、目標空間位置を調整することができる。例えば、第1のマイクロホンアレイ120内のマイクロホンの数を増加させることにより、目標空間位置をユーザの外耳道により近接させることができる。また、例えば、さらに、第1のマイクロホンアレイ120内の各マイクロホンの間隔を減少させることにより、目標空間位置をユーザの外耳道により近接させることができる。また、例えば、さらに、第1のマイクロホンアレイ120内の各マイクロホンの配列方式を変更することにより、目標空間位置をユーザの外耳道により近接させることができる。
【0059】
いくつかの実施例において、プロセッサ130は、さらに目標空間位置の音場の推定に基づいてノイズ低減信号を生成するように構成されてもよい。具体的には、プロセッサ130は、第1のマイクロホンアレイ120により取得された環境ノイズを受信し処理して環境ノイズのパラメータ(例えば、振幅、位相等)を取得し、環境ノイズのパラメータに基づいて目標空間位置の音場を推定することができる。さらに、プロセッサ130は、目標空間位置の音場の推定に基づいてノイズ低減信号を生成する。当該ノイズ低減信号のパラメータ(例えば、振幅、位相等)は、目標空間位置での環境ノイズに関連する。単に例として、ノイズ低減信号の振幅は、目標空間位置での環境ノイズの振幅とほぼ等しくてもよく、ノイズ低減信号の位相は、目標空間位置での環境ノイズの位相とほぼ逆であってもよい。
【0060】
いくつかの実施例において、プロセッサ130は、ハードウェアモジュール及びソフトウェアモジュールを含んでもよい。単に例として、ハードウェアモジュールは、デジタル信号処理(Digital Signal Processor、DSP)、高度なRISCマシン(Advanced RISC Machines、ARM)、中央処理ユニット(CPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)、物理演算ユニット(PPU)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、コントローラ、マイクロプロセッサ等、又はそれらの任意の組み合わせを含むが、それらに限定されない。ソフトウェアモジュールは、アルゴリズムモジュールを含んでもよい。
【0061】
スピーカー140は、固定構造110の保持部に位置してもよく、ユーザがイヤホン100を装着している場合、スピーカー140は、ユーザの耳部付近の位置に位置する。スピーカー140は、ノイズ低減信号に基づいて目標信号を出力することができる。当該目標信号は、ユーザの外耳道に伝達される環境ノイズを低減又は除去するために、保持部の放音孔を通してユーザの耳部に伝達されてもよい。いくつかの実施例において、スピーカーの動作原理に基づいて、スピーカー140は、動電型スピーカー(例えば、可動コイル型スピーカー)、磁気スピーカー、イオンスピーカー、静電式スピーカー(又はコンデンサスピーカー)、圧電式スピーカー等のうちの1種以上を含んでもよい。いくつかの実施例において、スピーカーから出力される音声の伝播方式により、スピーカー140は、空気伝導スピーカー、骨伝導スピーカーを含んでもよい。いくつかの実施例において、スピーカー140の数は、1つ以上であってもよい。スピーカー140の数が1つである場合、当該スピーカーは、環境ノイズを除去するために目標信号を出力すると同時に、ユーザに有効な音声情報(例えば、機器のメディアオーディオ、通話の遠端オーディオ)を伝達することができる。例えば、スピーカー140は、数が1つであり、かつ空気伝導スピーカーである場合、当該空気伝導スピーカーは、環境ノイズを除去するために目標信号を出力することができる。この場合、目標信号は、音波(即ち、空気の振動)であってもよく、当該音波は、空気を介して目標空間位置に伝達されて、目標空間位置で環境ノイズと互いに相殺することができる。同時に、当該空気伝導スピーカーから出力された音波は、有効な音声情報をさらに含む。また、例えば、スピーカー140は、数が1つであり、かつ骨伝導スピーカーである場合、当該骨伝導スピーカーは、環境ノイズを除去するために目標信号を出力することができる。この場合、目標信号は、振動信号であってもよく、当該振動信号は、骨又は組織を介してユーザの基底膜に伝達されて、ユーザの基底膜で環境ノイズと互いに相殺することができる。同時に、当該骨伝導スピーカーから出力された振動信号は、有効な音声情報をさらに含む。いくつかの実施例において、スピーカー140の数が複数である場合、複数のスピーカー140のうちの一部は、環境ノイズを除去するために目標信号を出力し、他の一部は、ユーザに有効な音声情報(例えば、機器のメディアオーディオ、通話の遠端オーディオ)を伝達してもよい。例えば、スピーカー140は、数が複数であり、かつ骨伝導スピーカー及び空気伝導スピーカーを含む場合、空気伝導スピーカーは、環境ノイズを低減又は除去するために音波を出力することができ、骨伝導スピーカーは、有効な音声情報をユーザに伝達することができる。空気伝導スピーカーに比べて、骨伝導スピーカーは、機械的振動を直接的にユーザの身体(例えば、骨格、皮膚組織など)を介してユーザの聴覚神経に伝達することができ、この過程において、環境ノイズをピックアップする空気伝導マイクロホンへの干渉が小さい。
【0062】
いくつかの実施例において、スピーカー340及び第1のマイクロホンアレイ120は、いずれもイヤホン300の胴体部112に位置し、スピーカー340から出力された目標信号も第1のマイクロホンアレイ120にピックアップされる可能性がある。しかし、当該目標信号は、ピックアップされることが望ましくなく、即ち、目標信号は、環境ノイズの一部と見なすべきではない。この場合、スピーカー340から出力された目標信号が第1のマイクロホンアレイ120に与える影響を低減するために、第1のマイクロホンアレイ120は、第1の目標領域に設置されてもよい。第1の目標領域は、スピーカー340が発した音声の空間での強度が小さい領域、さらには最も小さい領域であってもよい。例えば、第1の目標領域は、イヤホン100(例えば、放音孔、圧力逃がし孔)により形成された音響双極子の放射音場の音響ヌル位置、又は音響ヌル位置から一定の閾値範囲内の距離だけ離れた位置であってもよい。
【0063】
なお、図1に関する上記説明は、説明の目的のためのものにすぎず、本願の範囲を限定することを意図するものではない。当業者であれば、本願の説明に基づいて様々な変更及び修正を行うことができる。例えば、イヤホン100の固定構造110は、イヤホン100がユーザの耳の付近に掛けられるように、人の耳に適合する形状(例えば、C字状、半円状等)を有するケース構造に置き換えてもよい。いくつかの実施例において、イヤホン100の1つの部品は、複数のサブ部品に分割されてもよく、複数の部品は、単一の部品となるように統合されてもよい。これらの変更及び修正は、本願の範囲から逸脱するものではない。
【0064】
図2は、本願のいくつかの実施例に係る例示的な耳部の概略図である。
【0065】
図2に示すように、耳部200は、外耳道201、耳甲介腔202、耳甲介舟203、三角窩204、対耳輪205、舟状窩206、耳輪207、耳たぶ208及び耳輪脚209を含んでもよい。いくつかの実施例において、耳部200の1つ以上の部位によりイヤホン(例えば、イヤホン100)の装着及び安定性を実現することができる。いくつかの実施例において、外耳道201、耳甲介腔202、耳甲介舟203、三角窩204などの部位は、三次元空間において一定の深さ及び容積を有し、イヤホンの装着を実現することができる。いくつかの実施例において、開放型イヤホン(例えば、イヤホン100)は、耳甲介舟203、三角窩204、対耳輪205、舟状窩206、耳輪207等の部位又はそれらの組み合わせにより開放型イヤホンの装着を実現することができる。いくつかの実施例において、イヤホンの装着の快適さ及び信頼性を向上させるために、ユーザの耳たぶ208などの部位をさらに利用してもよい。耳部200における外耳道201以外の他の部位により、イヤホンの装着及び音声の伝播を実現し、ユーザの外耳道201を「解放」し、ユーザの耳の健康に対するイヤホンの影響を低減することができる。ユーザが道路でイヤホンを装着している場合、イヤホンは、ユーザの外耳道201を塞がず、ユーザは、イヤホンの音声を受信するとともに、環境からの音声(例えば、クラクション音、自転車のベル音、周りの人の声、交通整理の声など)を受信することができ、それにより交通事故の発生確率を低減することができる。例えば、ユーザがイヤホンを装着している場合、イヤホンの全体又は一部の構造は、耳輪脚209の前側(例えば、図2における破線で囲まれた領域J)に位置してもよい。また、例えば、ユーザがイヤホンを装着している場合、イヤホンの全体又は一部の構造は、外耳道201の上部(例えば、耳輪脚209、耳甲介舟203、三角窩204、対耳輪205、舟状窩206、耳輪207等の1つ以上の部位の位置)に接触してもよい。さらに例えば、ユーザがイヤホンを装着している場合、イヤホンの全体又は一部の構造は、耳部の1つ以上の部位(例えば、耳甲介腔202、耳甲介舟203、三角窩204等)内(例えば、図2における破線で囲まれた領域M)に位置してもよい。
【0066】
上記耳部200についての説明は、説明を目的としたものに過ぎず、本願の範囲を限定することを意図しない。当業者であれば、本願の説明に基づいて様々な変更及び修正を行うことができる。例えば、異なるユーザによって、耳部200における1つ以上の部位の構造、形状、大きさ、厚さ等は、異なってもよい。また、例えば、イヤホンの一部の構造は、外耳道201の一部又は全部を遮蔽することができる。これらの変化及び修正は、依然として本願の保護範囲内にある。
【0067】
図3は、本願のいくつかの実施例に係る例示的なイヤホンの構造図である。図4は、本願のいくつかの実施例に係る例示的なイヤホンの装着図である。
【0068】
図3図4に示すように、イヤホン300は、固定構造310、第1のマイクロホンアレイ320、プロセッサ330及びスピーカー340を含んでもよい。第1のマイクロホンアレイ320、プロセッサ330及びスピーカー340は、固定構造310に位置してもよい。いくつかの実施例において、固定構造310により、ユーザの外耳道を塞がないように、イヤホン300をユーザの耳部の付近に掛けることができる。いくつかの実施例において、固定構造310は、フック状部311及び胴体部312を含んでもよい。いくつかの実施例において、フック状部311は、例えば、C字状、フック状等の、ユーザへの装着に適する任意の形状を含んでもよい。ユーザがイヤホン300を装着している場合、フック状部311は、ユーザの耳部の第1の側と頭部との間に掛けられてもよい。いくつかの実施例において、胴体部312は、接続部3121及び保持部3122を含んでもよく、接続部3121は、フック状部311及び保持部3122を接続する。ユーザがイヤホン300を装着している場合、保持部3122は、耳部の第2の側に接触し、接続部3121は、耳部の第1の側から耳部の第2の側に延在し、接続部3121の両端は、それぞれフック状部311と保持部3122に接続される。接続部3121は、フック状部311と協働して保持部3122に耳部の第2の側に対する押圧力を提供することができ、接続部3121は、保持部3122と協働して接続部3121に耳部の第1の側に対する押圧力を提供することができる。
【0069】
いくつかの実施例において、イヤホン300が非装着状態(即ち、自然状態)にある場合、接続部3121は、固定構造310が三次元空間において湾曲状を呈するように、フック状部311と保持部3122を接続する。三次元空間において、フック状部311、接続部3121、保持部3122は、同一平面上にはないと理解してもよい。このように設置すると、イヤホン300が装着状態にある場合、図4に示すように、フック状部311は、ユーザの耳部100の第1の側と頭部との間に掛けられ、保持部3122は、ユーザの耳部100の第2の側に接触することができ、それにより、保持部3122は、フック状部311と協働して耳部を挟持することができる。いくつかの実施例において、接続部3121は、頭部から頭部の外側(即ち、耳部100の第1の側から耳部の第2の側へ)に延在して、フック状部311と協働して保持部3122に耳部100の第2の側に対する押圧力を提供することができる。同時に、力の相互作用から分かるように、接続部3121は、頭部から頭部の外側に延在する場合、保持部3122と協働してフック状部311に耳部100の第1の側に対する押圧力を提供することもでき、それにより固定構造310は、ユーザの耳部100を挟持し、イヤホン300の装着を実現することができる。
【0070】
いくつかの実施例において、保持部3122は、押圧力の作用で耳部に押し当てられることができ、例えば、耳甲介舟、三角窩、対耳輪等の部位が位置する領域に押し当てることができ、それにより、イヤホン300は、装着状態にある場合に耳部の外耳道を塞がない。例示的な説明のみとして、イヤホン300が装着状態にある場合、保持部3122のユーザの耳部における投影は、耳部の耳輪範囲内にある。さらに、保持部3122は、耳部の外耳道の、ユーザの頭頂部に近接している側に位置し、かつ耳輪及び/又は対耳輪に接触してもよい。このように設置すると、一方では、保持部3122が外耳道を塞ぐことを回避し、ユーザの両耳を解放することができる。同時に、保持部3122と耳部との間の接触面積を増加させて、イヤホン300の装着の快適さを向上させることができる。他方では、保持部3122が耳部の外耳道の、ユーザの頭頂部に近接している側に位置する場合、保持部3122に位置するスピーカー340をユーザの外耳道にさらに近接させ、ユーザがイヤホン300を使用する時の聴覚体験を向上させることができる。
【0071】
いくつかの実施例において、ユーザがイヤホン300を装着する時の安定性及び快適性を向上させるために、イヤホン300は、耳部を弾性的に挟持してもよい。例えば、いくつかの実施例において、イヤホン300のフック状部311は、接続部3121に接続された弾性部(図示せず)を含んでもよい。弾性部は、一定の弾性変形性能を有するため、フック状部311は、外力作用で変形して、保持部3122に対して変位することにより、フック状部311と保持部3122が協働して耳部を弾性的に挟持することができる。具体的には、ユーザは、イヤホン300を装着する過程において、耳部を保持部3122とフック状部311との間に挿入しやすいように、力を入れてフック状部311を保持部3122からずらしてもよい。適切な位置に装着して手を放すと、イヤホン300は、耳部を弾性的に挟持することができる。ユーザは、実際の装着状況に応じてイヤホン300の耳部での位置をさらに調整することができる。
【0072】
いくつかの実施例において、異なるユーザは、年齢、性別、遺伝子制御の形質発現等の面で大きな差異が存在する可能性があるため、異なるユーザの耳部及び頭部は、大きさが異なり、形状が異なる可能性がある。このため、いくつかの実施例において、フック状部311が接続部3121に対して回転可能、又は保持部3122が接続部3121に対して回転可能、又は接続部3121の一部が他の部分に対して回転可能なように構成されてもよく、それにより、フック状部311、接続部3121、及び保持部3122の三次元空間における相対的な位置関係を調整することができ、イヤホン300を異なるユーザに適合させることに役立ち、即ちイヤホン300の装着面でのユーザに対する適用範囲を拡大する。同時に、フック状部311、接続部3121、及び保持部3122の三次元空間における相対的な位置関係を調整可能なように構成することにより、第1のマイクロホンアレイ320及びスピーカー340のユーザの耳部(例えば、外耳道)に対する位置を調整し、それによりイヤホン300の能動的ノイズ低減の効果を向上させることができる。いくつかの実施例において、接続部3121は、軟鋼線等の変形可能な材料で製造されてもよく、ユーザは、その一部が他の部分に対して回転するように接続部3121を折り曲げて、フック状部311、接続部3121、及び保持部3122の三次元空間における相対位置を調整し、その装着の需要を満たす。いくつかの実施例において、接続部3121に回転軸機構31211が設置されてもよく、ユーザは、回転軸機構31211によりフック状部311、接続部3121、及び保持部3122の三次元空間における相対位置を調整し、その装着の需要を満たす。
【0073】
なお、イヤホン300の装着の安定性及び快適さを考慮すると、さらにイヤホン300(固定構造310)に対して様々な変化及び修正を行うことができ、イヤホン300に関するより多くの説明は、出願番号PCT/CN2021/109154の関連出願を参照することができ、その内容は、引用により本明細書に組み込まれるものとする。
【0074】
いくつかの実施例において、イヤホン300は、第1のマイクロホンアレイ320及びプロセッサ330を利用してユーザの外耳道(例えば、目標空間位置)での音場を推定し、スピーカー340から出力された目標信号でユーザの外耳道での環境ノイズを低減することにより、イヤホン300の能動的ノイズ低減を実現する。いくつかの実施例において、第1のマイクロホンアレイ320は、ユーザがイヤホン300を装着している場合、第1のマイクロホンアレイ320がユーザの外耳道の付近に位置するように、固定構造310の胴体部312に位置してもよい。第1のマイクロホンアレイ320は、ユーザの外耳道の付近の環境ノイズをピックアップすることができ、プロセッサ330は、当該ユーザの外耳道の付近の環境ノイズに基づいて、目標空間位置での環境ノイズ、例えば、ユーザの外耳道での環境ノイズをさらに推定することができる。いくつかの実施例において、スピーカー340から出力された目標信号も第1のマイクロホンアレイ320によりピックアップされ、スピーカー340から出力された目標信号が第1のマイクロホンアレイ320によりピックアップされた環境ノイズに与える影響を低減するために、第1のマイクロホンアレイ320は、スピーカー340が発した音声の空間的な強度が小さい領域、さらには最も小さい領域、例えば、イヤホン300(例えば、放音孔及び圧力逃がし孔)により形成された音響双極子の放射音場の音響ヌル位置に位置してもよい。第1のマイクロホンアレイ320の位置に関する具体的な説明は、本明細書の他の箇所、例えば、図10図13及びその関連説明を参照することができる。
【0075】
いくつかの実施例において、プロセッサ330は、固定構造310のフック状部311又は胴体部312に位置してもよい。プロセッサ330は、第1のマイクロホンアレイ320に電気的に接続される。プロセッサ330は、第1のマイクロホンアレイ320によりピックアップされた環境ノイズに基づいて目標空間位置の音場を推定し、目標空間位置の音場の推定に基づいてノイズ低減信号を生成することができる。プロセッサ330が第1のマイクロホンアレイ320により目標空間位置の音場を推定することに関する具体的な説明は、本明細書の図14図16及びその関連説明を参照することができる。
【0076】
いくつかの実施例において、プロセッサ330は、スピーカー340の音響発生を制御することもできる。プロセッサ330は、ユーザにより入力されたコマンドに従ってスピーカー340の音響発生を制御することができる。又は、プロセッサ330は、イヤホン300の1つ以上のコンポーネントの情報に基づいてスピーカー340を制御するコマンドを生成することができる。いくつかの実施例において、プロセッサ330は、イヤホン300の他のコンポーネント(例えば、電池)を制御することができる。いくつかの実施例において、プロセッサ330は、固定構造310のいずれの部位に設置されてもよい。例えば、プロセッサ330は、保持部3122に設置されてもよい。この場合、プロセッサ330と保持部3122に設置された他の部品(例えば、スピーカー340、キースイッチ等)との間の配線距離を短縮することができ、それにより、配線間の信号干渉を低減し、配線間に短絡が発生する可能性を低減する。
【0077】
いくつかの実施例において、スピーカー340は、ユーザがイヤホン300を装着している場合、スピーカー340がユーザの外耳道の付近に位置するように、胴体部312の保持部3122に位置してもよい。スピーカー340は、プロセッサ330により生成されたノイズ低減信号に基づいて、目標信号を出力することができる。目標信号は、ユーザの外耳道での環境ノイズを低減するように、保持部3122上の放音孔(図示せず)によりイヤホン300の外部に伝達することができる。保持部3122上の放音孔は、保持部3122のユーザの耳部に向かう側に位置してもよく、このように、放音孔は、ユーザの外耳道に十分に近接することができ、ユーザがその発した音声をより確実に聞くことができる。
【0078】
いくつかの実施例において、イヤホン300は、電池350等の部品をさらに含んでもよい。電池350は、イヤホン300の他の部品(例えば、第1のマイクロホンアレイ320、スピーカー340等)に電気エネルギーを提供することができる。いくつかの実施例において、第1のマイクロホンアレイ320、プロセッサ330、スピーカー340及び電池350のうちのいずれか2つは、例えば、有線接続、無線接続等、又はそれらの組み合わせの様々な方式で通信することができる。いくつかの実施例において、有線接続は、金属ケーブル、光ケーブル、又は金属光学ハイブリッドケーブルによる接続を含む。上述した例は、説明の便宜上でのみ使用され、有線接続の媒体は、他のタイプ、例えば、他の電気信号又は光信号等の伝送キャリアであってもよい。無線接続は、無線通信、自由空間光通信、音声通信、電磁誘導などを含んでもよい。
【0079】
いくつかの実施例において、電池350は、フック状部311の接続部3121から離れた一端に設置されてもよく、イヤホン300が装着状態にある場合にユーザの耳部の後側と頭部との間に位置する。このように設置すると、電池350の容量を増加させ、イヤホン300のバッテリー駆動時間を改善することができる。同時に、イヤホン300の重量を均等化することにより、保持部3122及びその内部のプロセッサ330、スピーカー340等の構造の自重に抗してイヤホン300の装着の安定性及び快適さを向上させることもできる。いくつかの実施例において、電池350は、自身の状態情報をプロセッサ330に伝送してプロセッサ330のコマンドを受信し、対応する操作を実行することができる。電池350の状態情報は、オン/オフ状態、残量、残量の使用時間、充電時間等、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0080】
イヤホン(例えば、イヤホン300)の各部分の相互関係及びイヤホンとユーザとの関係を容易に説明するために、本明細書において1つ以上の座標系を確立する。いくつかの実施例において、医学分野と同様に、体の矢状面(Sagittal Plane)、冠状面(Coronal Plane)及び水平面(Horizontal Plane)の3つの基本的な切断面と、矢状軸(Sagittal Axis)、冠状軸(Coronal Axis)及び垂直軸(Vertical Axis)の3つの基本的な軸を定義することができる。図2図4における座標軸を参照すると、矢状面は、体の前後方向に沿って切った地面に垂直な切断面を指し、体を左右の2つの部分に分ける面であり、本明細書の実施例において、矢状面は、YZ平面であってもよく、即ち、X軸は、ユーザの矢状面に垂直である。冠状面は、体の左右方向に沿って切った地面に垂直な切断面を指し、体を前後の2つの部分に分ける面であり、本明細書の実施例において、冠状面は、XZ平面であってもよく、即ち、Y軸は、ユーザの冠状面に垂直である。水平面は、体の上下方向に沿って切った地面に平行な切断面であり、体を上下の2つの部分に分ける面であり、本明細書の実施例において、水平面は、XY平面であってもよく、即ち、Z軸は、ユーザの水平面に垂直である。それに応じて、矢状軸は、体の前後方向に沿って冠状面を垂直に通過する軸を指し、本明細書の実施例において、矢状軸は、Y軸を指してもよい。冠状軸は、体の左右方向に沿って矢状面を垂直に通過する軸を指し、本明細書の実施例において、冠状軸は、X軸を指してもよい。垂直軸は、体の上下方向に沿って水平面を垂直に通過する軸を指し、本明細書の実施例において、垂直軸は、Z軸を指してもよい。
【0081】
図5は、本願のいくつかの実施例に係る例示的なイヤホンの構造図である。図6は、本願のいくつかの実施例に係る例示的なイヤホンの装着図である。
【0082】
図5図6に示すように、いくつかの実施例において、フック状部311は、イヤホン300が装着状態にある場合、図6に示すように、フック状部311の接続部3121から離れた自由端がユーザの耳部100の第1の側(後側)に作用するように、保持部3122に近接していてもよい。
【0083】
いくつかの実施例において、図4図6に示すように、接続部3121は、フック状部311に接続され、接続部3121とフック状部311とは第1の接続点Cで接触する。フック状部311と接続部3121との間の第1の接続点Cからフック状部311の自由端までの方向において、フック状部311は、耳部100の後側に向かって折り曲げられ、かつ耳部100の後側と第1の接触点Bで接触し、保持部3122は、耳部100の第2の側(前側)と第2の接触点Fで接触する。自然状態(即ち、非装着状態)での接続部3121の延在方向に沿った第1の接触点Bと第2の接触点Fとの間の距離は、装着状態での接続部3121の延在方向に沿った第1の接触点Bと第2の接触点Fとの間の距離よりも小さく、それにより、保持部3122に耳部100の第2の側(前側)に対する押圧力を提供し、また、フック状部311に耳部100の第1の側(後側)に対する押圧力を提供する。イヤホン300は、自然状態での接続部3121の延在方向に沿った第1の接触点Bと第2の接触点Fとの間の距離がユーザの耳部100の厚さよりも小さく、それにより、イヤホン300は、装着状態で「クリップ」のようにユーザの耳部100を挟持することができる。
【0084】
いくつかの実施例において、フック状部311は、さらに接続部3121から離れた方向に沿って延在し、即ち、フック状部311の全体の長さを延長してもよく、それにより、イヤホン300が装着状態にある場合、フック状部311は、さらに耳部100の後側と第3の接触点Aで接触することができ、第1の接触点Bは、第1の接続点Cと第3の接触点Aとの間に位置し、かつ第1の接続点Cに近接している。自然状態での第1の接触点B及び第3の接触点Aの接続部3121の延在方向に垂直な基準面(例えば、YZ平面)における投影間の距離は、装着状態での第1の接触点B及び第3の接触点Aの接続部3121の延在方向に垂直な基準面(例えば、YZ平面)における投影間の距離よりも小さい。このように設置すると、フック状部311の自由端は、ユーザの耳部100の後側に押し当てられることにより、第3の接触点Aは、耳部100の耳たぶに近接している領域に位置し、さらにフック状部311は、垂直方向(Z軸方向)にユーザの耳部100を挟持して、保持部3122の自重に抗することができる。いくつかの実施例において、フック状部311は、全体の長さが延長すると、垂直方向にユーザの耳部100を挟持すると同時に、フック状部311とユーザの耳部100との間の接触面積を増加させることができ、即ち、フック状部311とユーザの耳部100との間の摩擦力を増加させて、イヤホン300の装着の安定性を向上させる。
【0085】
いくつかの実施例において、イヤホン300のフック状部311と保持部3122との間に接続部3121を設置することにより、イヤホン300が装着状態にある場合、接続部3121とフック状部311を協働して保持部3122に耳部の第1の側に対する押圧力を提供し、さらにイヤホン300を装着状態にある場合にユーザの耳部にしっかりと密着させることができ、それにより、イヤホン300の装着の安定性及びイヤホン300の音響発生の信頼性を向上させる。
【0086】
図7は、本願のいくつかの実施例に係る例示的なイヤホンの構造図である。図8は、本願のいくつかの実施例に係る例示的なイヤホンの装着図である。
【0087】
いくつかの実施例において、図7図8に示すイヤホン300は、図5図6に示すイヤホン300とほぼ同じであり、相違点は、フック状部311の折り曲げ方向が異なることである。いくつかの実施例において、図7図8に示すように、フック状部311と接続部3121との間の第1の接続点Cからフック状部311の自由端(接続部3121から離れた一端)までの方向において、フック状部311は、ユーザの頭部に向かって折り曲げられ、頭部と第1の接触点B及び第3の接触点Aで接触する。第1の接触点Bは、第3の接触点Aと第1の接続点Cとの間に位置する。このように設置すると、フック状部311は、第1の接触点Bを支点とするレバー構造となる。この時、フック状部311の自由端は、ユーザの頭部に押し当てられ、ユーザの頭部は、第3の接触点Aで頭部の外側に向かう作用力を与え、当該作用力は、レバー構造により第1の接続点Cから頭部に向かう作用力に変換され、さらに接続部3121を介して耳部100の第1の側に対する押圧力を保持部3122に提供する。
【0088】
いくつかの実施例において、ユーザの頭部により第3の接触点Aで与えられた頭部の外側に向かう作用力の大きさは、イヤホン300の非装着状態におけるフック状部311の自由端とYZ平面との間の夾角の大きさとは正の相関関係がある。具体的には、イヤホン300の非装着状態におけるフック状部311の自由端とYZ平面との間の夾角が大きいほど、フック状部311の自由端は、イヤホン300の装着状態におけるユーザの頭部に確実に押し当てられ、それに応じて、ユーザの頭部は第3の接触点Aで、頭部の外側に向かうより大きな作用力を与えることができる。いくつかの実施例において、フック状部311の自由端をイヤホン300の装着状態におけるユーザの頭部に押し当てることができ、かつユーザの頭部は第3の接触点Aで頭部の外側に向かう作用力を与えることができるように、イヤホン300の非装着状態におけるフック状部311の自由端とYZ平面との間の夾角を、イヤホン300が装着状態にある場合のフック状部311の自由端とYZ平面との間の夾角よりも大きくすることができる。
【0089】
いくつかの実施例において、フック状部311の自由端がユーザの頭部に押し当てられる場合、ユーザの頭部が第3の接触点Aで頭部の外側に向かう作用力を与えることに加えて、フック状部311は、少なくとも耳部100の第1の側に対して別の押圧力を与え、かつ保持部3122が耳部100の第2の側に与える押圧力と協働して、ユーザの耳部100を「前後から挟持する」押圧効果を得て、イヤホン300の装着の安定性を向上させる。
【0090】
なお、実際に装着する時に、異なるユーザの頭部、耳部等の生理的構造に差異が存在して、イヤホン300の実際の装着に一定の影響を与えるため、イヤホン300とユーザの頭部又は耳部との接触点(例えば、第1の接触点B、第2の接触点F、第3の接触点A等)の位置は、それに応じて変更する場合がある。
【0091】
いくつかの実施例において、スピーカー340が保持部3122に位置する場合、異なるユーザの頭部、耳部等の生理的構造に差異が存在して、イヤホン300の実際の装着に一定の影響を与えるため、異なるユーザがイヤホン300を装着している場合、スピーカー340とユーザの耳部との相対位置が変化する場合がある。いくつかの実施例において、保持部3122の構造を設置することにより、イヤホン300の全体構造におけるスピーカー340の位置を調整し、さらにスピーカー340とユーザの外耳道との間の距離を調整することができる。
【0092】
図9Aは、本願のいくつかの実施例に係る例示的なイヤホンの構造図である。図9Bは、本願のいくつかの実施例に係る例示的なイヤホンの構造図である。
【0093】
図9A及び図9Bに示すように、保持部3122を多段構造に設計することにより、イヤホン300の全体構造におけるスピーカー340の相対位置を調整することができる。いくつかの実施例において、保持部3122は、多段構造であるため、イヤホン300が装着状態にある場合、耳部の外耳道を塞がないと同時に、スピーカー340を、外耳道にできるだけ近接させ、ユーザがイヤホン300を使用する時の聴覚体験を向上させることができる。
【0094】
図9Aに示すように、いくつかの実施例において、保持部3122は、順に接続された第1の保持段3122-1、第2の保持段3122-2及び第3の保持段3122-3を含んでもよい。第1の保持段3122-1の第2の保持段3122-2から離れた一端は、接続部3121に接続され、第2の保持段3122-2は、第1の保持段3122-1に対して折り返されて、第2の保持段3122-2と第1の保持段3122-1との間に間隔を有する。いくつかの実施例において、第2の保持段3122-2と第1の保持段3122-1との間にU字形構造を形成することができる。第3の保持段3122-3は、第2の保持段3122-2の第1の保持段3122-1から離れた一端に接続され、第3の保持段3122-3にスピーカー340等の構造部材を設置することができる。
【0095】
いくつかの実施例において、図9Aに示すように、このように設置する場合、第2の保持段3122-2と第1の保持段3122-1との間の距離、第2の保持段3122-2の第1の保持段3122-1に対する折り返しの長さ(第2の保持段3122-2のY軸方向に沿った長さ)等を調整することにより、イヤホン300の全体構造における第3の保持段3122-3の位置を調整し、さらに第3の保持段3122-3に位置するスピーカー340の、ユーザの外耳道に対する位置又は距離を調整することができる。いくつかの実施例において、第2の保持段3122-2と第1の保持段3122-1との間の距離、第2の保持段3122-2の第1の保持段3122-1に対する折り返しの長さは、異なるユーザの耳部の特徴(例えば、形状、大きさ等)に応じて設定されてもよく、ここでは具体的に限定しない。
【0096】
図9Bに示すように、いくつかの実施例において、保持部3122は、順に接続された第1の保持段3122-1、第2の保持段3122-2及び第3の保持段3122-3を含んでもよい。第1の保持段3122-1の第2の保持段3122-2から離れた一端は、接続部3121に接続され、第2の保持段3122-2は、第1の保持段3122-1に対して折り曲げられて、第3の保持段3122-3と第1の保持段3122-1との間に間隔を有する。第3の保持段3122-3にスピーカー340等の構造部材を設置することができる。
【0097】
いくつかの実施例において、図9Bに示すように、このように設置する場合、第3の保持段3122-3と第1の保持段3122-1との間の距離、第2の保持段3122-2の第1の保持段3122-1に対する折り曲げの長さ(第2の保持段3122-2のZ軸方向に沿った長さ)等を調整することにより、イヤホン300の全体構造における第3の保持段3122-3の位置を調整し、さらに第3の保持段3122-3に位置するスピーカー340の、ユーザの外耳道に対する位置又は距離を調整することができる。いくつかの実施例において、第3の保持段3122-3と第1の保持段3122-1との間の距離、第2の保持段3122-2の第1の保持段3122-1に対する折り曲げの長さは、異なるユーザの耳部の特徴(例えば、形状、大きさ等)に応じて設定されてもよく、ここでは具体的に限定しない。
【0098】
図10は、本願のいくつかの実施例に係る例示的なイヤホンの耳部に向かう側の構造図である。
【0099】
いくつかの実施例において、図10に示すように、保持部3122の耳部に向かう側に放音孔301が設置されてもよく、スピーカー340から出力された目標信号を放音孔301を通して耳部に伝達する。いくつかの実施例において、保持部3122の耳部に向かう側は、第1の領域3122A及び第2の領域3122Bを含んでもよく、第2の領域3122Bは、第1の領域3122Aよりも接続部3121から離れていてもよく、即ち、第2の領域3122Bは、保持部3122の接続部3121から離れた自由端に位置してもよい。いくつかの実施例において、第1の領域3122Aと第2の領域3122Bとの間を滑らかに遷移してもよい。いくつかの実施例において、第1の領域3122Aに放音孔301が設置され、第2の領域3122Bは、装着状態で放音孔301が耳部から離間するように、第1の領域3122Aよりも耳部に向かって突起し、かつ耳部に接触する。
【0100】
いくつかの実施例において、保持部3122の自由端は、保持部3122のユーザの耳部に近接している側面で当該側面に対して外向きに(即ち、ユーザの耳部の方向に向かって)突起する凸起構造に構成されてもよい。スピーカー340は、放音孔301を通して耳部に伝送された音声(例えば、目標信号)を生成することができるため、凸起構造は、耳部が放音孔301を塞ぎ、スピーカー340の生成した音声が弱くなり、さらには出力できないことを回避することができる。いくつかの実施例において、保持部3122の厚さ方向(X軸方向)で、凸起構造の突起高さは、第2の領域3122Bの第1の領域3122Aに対する最大突起高さで表すことができる。いくつかの実施例において、第2の領域3122Bの第1の領域3122Aに対する最大突起高さは、1mm以上であってもよい。いくつかの実施例において、保持部3122の厚さ方向で、第2の領域3122Bの第1の領域3122Aに対する最大突起高さは、0.8mm以上であってもよい。いくつかの実施例において、保持部3122の厚さ方向で、第2の領域3122Bの第1の領域3122Aに対する最大突起高さは、0.5mm以上であってもよい。
【0101】
いくつかの実施例において、保持部3122の構造を設置することにより、ユーザがイヤホン300を装着している場合、放音孔301とユーザの外耳道との間の距離は、10ミリメートル未満である。いくつかの実施例において、保持部3122の構造を設置することにより、ユーザがイヤホン300を装着している場合、放音孔301とユーザの外耳道との間の距離は、8ミリメートル未満である。いくつかの実施例において、保持部3122の構造を設置することにより、ユーザがイヤホン300を装着している場合、放音孔301とユーザの外耳道との間の距離は、7ミリメートル未満である。いくつかの実施例において、保持部3122の構造を設置することにより、ユーザがイヤホン300を装着している場合、放音孔301とユーザの外耳道との間の距離は、6ミリメートル未満である。
【0102】
なお、装着状態で放音孔301が耳部から離間するようにするためだけであれば、第1の領域3122Aに比べて、耳部に向かって突起する領域は、保持部3122の他の領域、例えば放音孔301と接続部3121との間の領域であってもよい。いくつかの実施例において、耳甲介腔及び耳甲介舟は、一定の深さを有し、かつ耳孔と連通するため、保持部3122の上記厚さ方向に沿って耳部上の放音孔301の正投影は、耳甲介腔及び/又は耳甲介舟内に少なくとも部分的に収まることができる。例示的な説明のみとして、ユーザがイヤホン300を装着している場合、保持部3122は、耳孔のユーザの頭頂部に近接している側に位置し、かつ対耳輪に接触し、この場合、保持部3122の厚さ方向に沿って耳部上の放音孔301の正投影は、耳甲介舟内に少なくとも部分的に収まることができる。
【0103】
図11は、本願のいくつかの実施例に係る例示的なイヤホンの耳部に背く側の構造図である。図12は、本願のいくつかの実施例に係る例示的なイヤホンの平面図である。
【0104】
図11図12に示すように、保持部3122の垂直軸(Z軸)方向に沿ってユーザの頭頂部に近接している側に、放音孔301よりもユーザの外耳道から離れた圧力逃がし孔302が設置されてもよい。いくつかの実施例において、圧力逃がし孔302の開口方向は、ユーザの頭頂部に向かってもよく、圧力逃がし孔302の開口方向と垂直軸(Z軸)との間に特定の夾角を有するように構成することにより、圧力逃がし孔302は、ユーザの外耳道からさらに離れ、さらにユーザは、圧力逃がし孔302を通して出力されてユーザの耳部に伝達された音声を聞き取りにくくなる。いくつかの実施例において、圧力逃がし孔302の開口方向と垂直軸(Z軸)との間の夾角は、0°~10°であってもよい。いくつかの実施例において、圧力逃がし孔302の開口方向と垂直軸(Z軸)との間の夾角は、0°~8°であってもよい。いくつかの実施例において、圧力逃がし孔302の開口方向と垂直軸(Z軸)との間の夾角は、0°~5°であってもよい。
【0105】
いくつかの実施例において、保持部3122の構造及び圧力逃がし孔302の開口方向と垂直軸(Z軸)との間の夾角の角度を設定することにより、ユーザがイヤホン300を装着している場合の圧力逃がし孔302とユーザの外耳道との間の距離を適切な範囲内にしてもよい。いくつかの実施例において、ユーザがイヤホン300を装着している場合、圧力逃がし孔302とユーザの外耳道との間の距離は、5ミリメートル~20ミリメートルであってもよい。いくつかの実施例において、ユーザがイヤホン300を装着している場合、圧力逃がし孔302とユーザの外耳道との間の距離は、5ミリメートル~18ミリメートルであってもよい。いくつかの実施例において、ユーザがイヤホン300を装着している場合、圧力逃がし孔302とユーザの外耳道との間の距離は、5ミリメートル~15ミリメートルであってもよい。いくつかの実施例において、ユーザがイヤホン300を装着している場合、圧力逃がし孔302とユーザの外耳道との間の距離は、6ミリメートル~14ミリメートルであってもよい。いくつかの実施例において、ユーザがイヤホン300を装着している場合、圧力逃がし孔302とユーザの外耳道との間の距離は、8ミリメートル~10ミリメートルであってもよい。
【0106】
図13は、本願のいくつかの実施例に係る例示的なイヤホンの断面構造概略図である。
【0107】
図13は、イヤホン(例えば、イヤホン300)の保持部(例えば、保持部3122)で形成された、放音孔301、圧力逃がし孔302、音調整孔303、フロントキャビティ304及びバックキャビティ305を含む音響構造を示す。
【0108】
いくつかの実施例において、図11及び図13に示すように、保持部3122は、スピーカー340の背向する両側にそれぞれフロントキャビティ304及びバックキャビティ305を形成することができる。フロントキャビティ304は、放音孔301を通してイヤホン300の外部と連通し、かつ耳部に音声(例えば、目標信号、オーディオ信号等)を出力する。バックキャビティ305は、圧力逃がし孔302を通してイヤホン300の外部と連通し、圧力逃がし孔302は、放音孔301よりもユーザの外耳道から離れている。いくつかの実施例において、圧力逃がし孔302は、フロントキャビティ304内の空気圧の変化ができるだけバックキャビティ305に阻害されないように、空気が自由にバックキャビティ305に出入りすることを可能にし、さらに放音孔301を通して耳部に出力された音声の品質を改善する。
【0109】
いくつかの実施例において、圧力逃がし孔302と放音孔301との間の接続線と保持部3122の厚さ方向(X軸方向)との間の夾角は、0°~50°であってもよい。いくつかの実施例において、圧力逃がし孔302と放音孔301との間の接続線と保持部3122の厚さ方向との間の夾角は、5°~45°であってもよい。いくつかの実施例において、圧力逃がし孔302と放音孔301との間の接続線と保持部3122の厚さ方向との間の夾角は、10°~40°であってもよい。いくつかの実施例において、圧力逃がし孔302と放音孔301との間の接続線と保持部3122の厚さ方向との間の夾角は、15°~35°であってもよい。なお、圧力逃がし孔302と放音孔301との間の接続線と保持部3122の厚さ方向との間の夾角は、圧力逃がし孔302の中心と放音孔301の中心との間の接続線と保持部3122の厚さ方向との間の夾角であってもよい。
【0110】
いくつかの実施例において、図11及び図13に示すように、放音孔301及び圧力逃がし孔302は、音声を外部に放射する2つの音源と見なされてもよく、その音声を放射する振幅は、同じであり、位相は、逆である。2つの音源は、音響双極子を近似的に構成するか又は音響双極子に類似してもよく、外部へ放射されたその音声は、明らかな指向性を有し、「8」字形の音声放射領域を形成する。2つの音源の接続線が位置する直線方向で、2つの音源から放射された音声が最も大きく、他の方向から放射された音声が明らかに減少し、2つの音源の接続線の垂直二等分線から放射された音声が最も小さい。即ち、圧力逃がし孔302と放音孔301の接続線が位置する直線方向で、圧力逃がし孔302と放音孔301から放射された音声が最も大きく、他の方向から放射された音声が明らかに減少し、圧力逃がし孔302と放音孔301の接続線の垂直二等分線から放射された音声が最も小さい。いくつかの実施例において、圧力逃がし孔302と放音孔301で形成された音響双極子は、スピーカー340の音漏れを低減することができる。
【0111】
いくつかの実施例において、図11及び図13に示すように、保持部3122には、バックキャビティ305に連通する、バックキャビティ305における音場の高圧領域を破壊してバックキャビティ305における定在波の波長を短くする音調整孔303がさらに設置されてもよく、それにより、圧力逃がし孔302によりイヤホン300の外部に出力された音声の共振周波数をできるだけ高くし、例えば4kHzよりも高くして、スピーカー340の音漏れを低減する。いくつかの実施例において、音調整孔303と圧力逃がし孔302は、それぞれスピーカー340における対向する両側に位置してもよく、例えば、Z軸方向において背向するように設置することにより、バックキャビティ305における音場の高圧領域を最大限に破壊する。いくつかの実施例において、音調整孔303は、圧力逃がし孔302よりも放音孔301から離れていることにより、音調整孔303と放音孔301との間の距離をできるだけ大きくし、さらに音調整孔303を通してイヤホン300の外部に出力された音声と放音孔301を通して耳部に伝送された音声との間の逆位相の相殺を減少させる。
【0112】
いくつかの実施例において、スピーカー340が放音孔301及び/又は圧力逃がし孔302を通じて出力した目標信号も第1のマイクロホンアレイ320によりピックアップされ、当該目標信号は、プロセッサ330の目標空間位置の音場に対する推定に影響を与え、即ち、スピーカー340により出力された目標信号は、ピックアップされることが望ましくない。この場合、スピーカー340から出力された目標信号が第1のマイクロホンアレイ320に与える影響を低減するために、第1のマイクロホンアレイ320は、できるだけスピーカー340から出力される音声が小さい第1の目標領域に設置されてもよい。いくつかの実施例において、第1の目標領域は、圧力逃がし孔302と放音孔301で形成された音響双極子の放射音場の音響ヌル位置又はその付近の位置であってもよい。いくつかの実施例において、第1の目標領域は、図10に示す領域Gであってもよい。ユーザがイヤホン300を装着している場合、領域Gは、放音孔301及び/又は圧力逃がし孔302の前方(ここでの前方とは、ユーザが向いている方向を指す)に位置し、即ち、領域Gは、ユーザの目にさらに近接している。好ましくは、領域Gは、固定構造310の接続部3121上の一部の領域であってもよい。即ち、第1のマイクロホンアレイ320は、接続部3121に位置してもよい。例えば、第1のマイクロホンアレイ320は、接続部3121の保持部3122に近接している部分に位置してもよい。いくつかの代替的な実施例において、領域Gは、放音孔301及び/又は圧力逃がし孔302の後方(ここでの後方とは、ユーザが向いている方向とは反対の方向を指す)に位置してもよい。例えば、領域Gは、保持部3122の接続部3121から離れた端部に位置してもよい。
【0113】
いくつかの実施例において、図10図11に示すように、スピーカー340から出力された目標信号が第1のマイクロホンアレイ320に与える影響を低減し、イヤホン300の能動的ノイズ低減の効果を向上させるために、第1のマイクロホンアレイ320と放音孔301及び圧力逃がし孔302との間の相対位置を合理的に設定することができる。第1のマイクロホンアレイ320の位置は、第1のマイクロホンアレイ320内のいずれか1つのマイクロホンの位置であってもよい。いくつかの実施例において、第1のマイクロホンアレイ320と放音孔301との間の接続線と、放音孔301と圧力逃がし孔302との間の接続線は、第1の夾角を形成し、第1のマイクロホンアレイ320と圧力逃がし孔302との間の接続線と、放音孔301と圧力逃がし孔302との間の接続線は、第2の夾角を形成する。いくつかの実施例において、第1の夾角と第2の夾角との差は、30°以下であってもよい。いくつかの実施例において、第1の夾角と第2の夾角との差は、25°以下であってもよい。いくつかの実施例において、第1の夾角と第2の夾角との差は、20°以下であってもよい。いくつかの実施例において、第1の夾角と第2の夾角との差は、15°以下であってもよい。いくつかの実施例において、第1の夾角と第2の夾角との差は、10°以下であってもよい。
【0114】
いくつかの実施例において、第1のマイクロホンアレイ320と放音孔301との間に第1の距離を有し、第1のマイクロホンアレイ320と圧力逃がし孔302との間に第2の距離を有する。スピーカー340から出力された目標信号が第1のマイクロホンアレイ320に小さい影響を与えることを保証するために、第1の距離と第2の距離との差は、6ミリメートル以下であってもよい。いくつかの実施例において、第1の距離と第2の距離との差は、5ミリメートル以下であってもよい。いくつかの実施例において、第1の距離と第2の距離との差は、4ミリメートル以下であってもよい。いくつかの実施例において、第1の距離と第2の距離との差は、3ミリメートル以下であってもよい。
【0115】
理解されるように、本明細書に記載の第1のマイクロホンアレイ320と放音孔301及び圧力逃がし孔302との位置関係は、第1のマイクロホンアレイ320内のいずれか1つのマイクロホンと放音孔301の中心及び圧力逃がし孔302の中心との位置関係を指してもよい。例えば、第1のマイクロホンアレイ320と放音孔301との間の接続線と、放音孔301と圧力逃がし孔302との間の接続線が第1の夾角を形成することは、第1のマイクロホンアレイ320内のいずれか1つのマイクロホンと放音孔301の中心との接続線と、放音孔301の中心と圧力逃がし孔302の中心との接続線とが第1の夾角を形成することを指してもよい。また、例えば、第1のマイクロホンアレイ320と放音孔301との間に第1の距離を有することは、第1のマイクロホンアレイ320内のいずれか1つのマイクロホンと放音孔301の中心との間に第1の距離を有することを指してもよい。
【0116】
いくつかの実施例において、第1のマイクロホンアレイ320が放音孔301と圧力逃がし孔302により形成された音響双極子の音響ヌル位置に位置することにより、スピーカー340から出力された目標信号が第1のマイクロホンアレイ320に与える影響は、最小に抑えられ、さらに第1のマイクロホンアレイ320は、ユーザの外耳道の付近の環境ノイズをより正確にピックアップすることができる。さらに、プロセッサ330は、第1のマイクロホンアレイ320がピックアップした環境ノイズに基づいてユーザの外耳道での環境ノイズをより正確に推定してノイズ低減信号を生成することができ、それによりイヤホン300の能動的ノイズ低減をよりうまく実現する。第1のマイクロホンアレイ320によりイヤホン300の能動的ノイズ低減を実現することに関する具体的な説明は、図14図16及びその関連説明を参照することができる。
【0117】
図14は、本願のいくつかの実施例に係るイヤホンの例示的なノイズ低減フローチャートである。いくつかの実施例において、フロー1400は、イヤホン300により実行されてもよい。図14に示すように、フロー1400は、以下のステップを含む。
【0118】
ステップ1410において、環境ノイズをピックアップする。いくつかの実施例において、当該ステップは、第1のマイクロホンアレイ320により実行されてもよい。
【0119】
いくつかの実施例において、環境ノイズとは、ユーザが位置する環境における様々な外部音声(例えば、交通ノイズ、工業ノイズ、建築工事ノイズ、生活ノイズ)の組み合わせを指してもよい。いくつかの実施例において、第1のマイクロホンアレイ320は、ユーザの外耳道付近の位置での環境ノイズをピックアップするように、イヤホン300の胴体部312に位置し、かつユーザの外耳道の付近の位置に近接していてもよい。さらに、第1のマイクロホンアレイ320は、ピックアップされた環境ノイズ信号を電気信号に変換して、処理のためにプロセッサ330に伝達することができる。
【0120】
ステップ1420において、ピックアップされた環境ノイズに基づいて目標空間位置のノイズを推定する。いくつかの実施例において、当該ステップは、プロセッサ330により実行されてもよい。
【0121】
いくつかの実施例において、プロセッサ330は、ピックアップされた環境ノイズに対して信号分離を行うことができる。いくつかの実施例において、第1のマイクロホンアレイ320によりピックアップされた環境ノイズは、様々な音声を含んでもよい。プロセッサ330は、第1のマイクロホンアレイ320によりピックアップされた環境ノイズに対して信号分析を行って、様々な音声を分離することができる。具体的には、プロセッサ330は、様々な音声の空間、時間領域、周波数領域などの様々な属性に関する統計的分布特性及び構造的特徴に基づいて、フィルタのパラメータに対して自己適応調整を行い、環境ノイズにおける各音声信号のパラメータ情報を推定し、各音声信号のパラメータ情報に基づいて信号分離プロセスを完了することができる。いくつかの実施例において、ノイズの統計的分布特性は、確率分布密度、パワースペクトル密度、自己相関関数、確率密度関数、分散、数学的期待などを含んでもよい。いくつかの実施例において、ノイズの構造的特徴は、ノイズ分布、ノイズ強度、グローバルノイズ強度、ノイズ率等、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。グローバルノイズ強度とは、平均ノイズ強度又は加重平均ノイズ強度を指してもよい。ノイズ率とは、ノイズ分布の分散度合いであってもよい。単に例として、第1のマイクロホンアレイ320によりピックアップされた環境ノイズは、第1の信号、第2の信号、及び第3の信号を含んでもよい。プロセッサ330は、第1の信号、第2の信号、及び第3の信号の空間(例えば、信号の位置)、時間領域(例えば、遅延)、及び周波数領域(例えば、振幅、位相)での差異を取得し、3つの属性に関する差異に基づいて第1の信号、第2の信号、及び第3の信号を分離して、相対的に純粋な第1の信号、第2の信号、及び第3の信号を取得する。さらに、プロセッサ330は、分離した信号のパラメータ情報(例えば、周波数情報、位相情報、振幅情報)に基づいて環境ノイズを更新することができる。例えば、プロセッサ330は、第1の信号のパラメータ情報に基づいて第1の信号がユーザの通話音声であると判定し、環境ノイズから第1の信号を除去して環境ノイズを更新することができる。いくつかの実施例において、除去された第1の信号は、通話の遠端に伝送されてもよい。例えば、ユーザがイヤホン300を装着した状態で音声通話を行う場合、第1の信号は、通話の遠端に伝送されてもよい。
【0122】
目標空間位置は、第1のマイクロホンアレイ320に基づいて決定された、ユーザの外耳道又はユーザの外耳道の付近にある位置である。目標空間位置は、ユーザの外耳道(例えば、耳孔)から所定の距離(例えば、2mm、3mm、5mm等)だけ離れた空間位置を指してもよい。いくつかの実施例において、目標空間位置は、第1のマイクロホンアレイ320内のいずれのマイクロホンよりもユーザの外耳道に近接している。いくつかの実施例において、目標空間位置は、第1のマイクロホンアレイ320内の各マイクロホンの数、ユーザの外耳道に対する分布位置に関連し、第1のマイクロホンアレイ320内の各マイクロホンの数及び/又はユーザの外耳道に対する分布位置を調整することにより、目標空間位置を調整することができる。いくつかの実施例において、ピックアップされた環境ノイズ(又は更新された環境ノイズ)に基づいて目標空間位置のノイズを推定することは、1つ以上のピックアップされた環境ノイズに関連する空間ノイズ源を決定し、空間ノイズ源に基づいて目標空間位置のノイズを推定することをさらに含んでもよい。第1のマイクロホンアレイ320によりピックアップされた環境ノイズは、異なる方位からの異なる種類の空間ノイズ源であってもよい。各空間ノイズ源に対応するパラメータ情報(例えば、周波数情報、位相情報、振幅情報)は、異なる。いくつかの実施例において、プロセッサ330は、異なる種類のノイズの様々な属性(例えば、空間領域、時間領域、周波数領域等)に関する統計的分布及び構造的特徴に基づいて、目標空間位置のノイズに対して信号の分離及び抽出を行うことにより、異なる種類(例えば、異なる周波数、異なる位相等)のノイズを取得し、各ノイズに対応するパラメータ情報(例えば、振幅情報、位相情報等)を推定することができる。いくつかの実施例において、プロセッサ330は、目標空間位置での異なる種類のノイズに対応するパラメータ情報に基づいて、目標空間位置のノイズの全体パラメータ情報を決定することもできる。1つ以上の空間ノイズ源に基づいて目標空間位置のノイズを推定することに関するより多くの説明は、本明細書の他の箇所、例えば、図15及びその対応する説明を参照することができる。
【0123】
いくつかの実施例において、ピックアップされた環境ノイズ(又は更新された環境ノイズ)に基づいて目標空間位置のノイズを推定することは、第1のマイクロホンアレイ320に基づいて仮想マイクロホンを構築し、仮想マイクロホンに基づいて目標空間位置のノイズを推定することをさらに含んでもよい。仮想マイクロホンに基づいて目標空間位置のノイズを推定することに関するより多くの説明は、本明細書の他の箇所、例えば、図16及びその対応する説明を参照することができる。
【0124】
ステップ1430において、目標空間位置のノイズに基づいてノイズ低減信号を生成する。いくつかの実施例において、当該ステップは、プロセッサ330により実行されてもよい。
【0125】
いくつかの実施例において、プロセッサ330は、ステップ1420において取得された目標空間位置のノイズのパラメータ情報(例えば、振幅情報、位相情報等)に基づいてノイズ低減信号を生成することができる。いくつかの実施例において、ノイズ低減信号の位相と目標空間位置のノイズの位相との位相差は、所定の位相閾値以下であってもよい。当該所定の位相閾値は、90~180度の範囲内にあってもよい。当該所定の位相閾値は、ユーザの需要に応じて該範囲内で調整されてもよい。例えば、ユーザは、周囲環境の音声によって妨害されたくない場合、当該所定の位相閾値は、大きな値であってもよく、例えば、180度であり、即ち、ノイズ低減信号の位相は、目標空間位置のノイズの位相と逆である。また、例えば、ユーザは、周囲環境に対して高い感受性を保ちたい場合、当該所定の位相閾値は、90度などの小さな値であってもよい。なお、ユーザが多くの周囲環境の音声を聞き取りたいほど、当該所定の位相閾値を90度に近いようにし、ユーザが少ない周囲環境の音声を聞き取りたいほど、当該所定の位相閾値を180度に近いようにする。いくつかの実施例において、ノイズ低減信号の位相と目標空間位置のノイズの位相が一定である(例えば、位相が逆である)場合、目標空間位置のノイズの振幅と当該ノイズ低減信号の振幅との振幅差は、所定の振幅閾値以下であってもよい。例えば、ユーザは、周囲環境の音声によって妨害されたくない場合、当該所定の振幅閾値は、小さな値であってもよく、例えば、0dBであり、即ち、ノイズ低減信号の振幅は、目標空間位置のノイズの振幅と等しい。また、例えば、ユーザは、周囲環境に対して高い感受性を保ちたい場合、当該所定の振幅閾値は、大きな値であってもよく、例えば、目標空間位置のノイズの振幅とほぼ等しい。なお、ユーザが多くの周囲環境の音声を聞き取りたいほど、当該所定の振幅閾値を目標空間位置のノイズの振幅にいようにし、ユーザが少ない周囲環境の音声を聞き取りたいほど、当該所定の振幅閾値を0dBに近いようにする。
【0126】
いくつかの実施例において、スピーカー340は、プロセッサ330により生成されたノイズ低減信号に基づいて、目標信号を出力することができる。例えば、スピーカー340は、その振動アセンブリによりノイズ低減信号(例えば、電気信号)を目標信号(即ち、振動信号)に変換することができ、当該目標信号は、イヤホン300の放音孔301を通してユーザの耳部に伝達され、かつユーザの外耳道で環境ノイズと互いに相殺する。いくつかの実施例において、目標空間位置のノイズが複数の空間ノイズ源である場合、スピーカー340は、ノイズ低減信号に基づいて複数の空間ノイズ源に対応する目標信号を出力することができる。例えば、複数の空間ノイズ源は、第1の空間ノイズ源及び第2の空間ノイズ源を含み、スピーカー340は、第1の空間ノイズ源のノイズ位相とはほぼ逆であり、その振幅とはほぼ等しい第1の目標信号を出力して第1の空間ノイズ源のノイズを相殺し、第2の空間ノイズ源のノイズ位相とはほぼ逆であり、その振幅とはほぼ等しい第2の目標信号を出力して第2の空間ノイズ源のノイズを相殺することができる。いくつかの実施例において、スピーカー340が空気伝導スピーカーである場合、目標信号が環境ノイズと互いに相殺する位置は、目標空間位置であってもよい。目標空間位置とユーザの外耳道との間の距離が小さく、目標空間位置のノイズは、ユーザの外耳道の位置でのノイズと近似的であると見なされてもよいため、ノイズ低減信号と目標空間位置のノイズとの相殺は、ユーザの外耳道に伝達された環境ノイズが除去され、イヤホン300の能動的ノイズ低減が実現することに近似してもよい。いくつかの実施例において、スピーカー340が骨伝導スピーカーである場合、目標信号が環境ノイズと互いに相殺する位置は、基底膜であってもよい。目標信号がユーザの基底膜で環境ノイズと相殺することにより、イヤホン300の能動的ノイズ低減を実現する。
【0127】
いくつかの実施例において、イヤホン300の位置が変化し、例えば、イヤホン300を装着するユーザの頭部がまわる場合、環境ノイズ(例えば、ノイズ方向、振幅、位相)がそれに伴って変化し、イヤホン300がノイズ低減を行う速度が環境ノイズの変化速度に追いつかず、イヤホン300の能動的ノイズ低減機能が弱くなる。そのため、イヤホン300は、1つ以上のセンサをさらに含んでもよく、1つ以上のセンサは、イヤホン300の任意の位置、例えば、フック状部311及び/又は接続部3121及び/又は保持部3122に位置してもよい。1つ以上のセンサは、イヤホン300の他の部品(例えば、プロセッサ330)に電気的に接続されてもよい。いくつかの実施例において、1つ以上のセンサは、イヤホン300の物理的位置及び/又は運動情報を取得することができる。単なる例として、1つ以上のセンサは、慣性測定ユニット(Inertial Measurement Unit、IMU)、全地球測位システム(Global Position System、GPS)、レーダ等を含んでもよい。運動情報は、運動軌跡、運動方向、運動速度、運動加速度、運動角速度、運動に関連する時間情報(例えば、運動開始時間、終了時間)等、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。IMUを例とすると、IMUは、微小電気機械システム(Micro electro Mechanical System、MEMS)を含んでもよい。当該微小電気機械システムは、多軸加速度計、ジャイロスコープ、磁力計等、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。IMUは、物理的位置及び/又は運動情報に基づくイヤホン300の制御を可能にするように、イヤホン300の物理的位置及び/又は運動情報を計測することができる。
【0128】
いくつかの実施例において、プロセッサ330は、イヤホン300の1つ以上のセンサにより取得されたイヤホン300の運動情報(例えば、運動軌跡、運動方向、運動速度、運動加速度、運動角速度、運動に関連する時間情報)に基づいて目標空間位置のノイズ及び目標空間位置の音場の推定を更新することができる。さらに、更新された目標空間位置のノイズ及び目標空間位置の音場の推定に基づいて、プロセッサ330は、ノイズ低減信号を生成することができる。1つ以上のセンサは、イヤホン300の運動情報を記録することができ、さらにプロセッサ330は、ノイズ低減信号を迅速に更新することができ、それにより、イヤホン300のノイズトラッキング性能を向上させることができ、ノイズ低減信号は、環境ノイズをより正確に除去することができ、ノイズ低減効果及びユーザの聴覚体験をさらに向上させる。
【0129】
なお、上記フロー1400についての説明は、例示及び説明のためのものにすぎず、本願の適用範囲を限定するものではない。当業者であれば、本願の説明に基づいて、フロー1400に対して様々な修正及び変更を行うことができる。例えば、フロー1400におけるステップを追加したり、省略したり、組み合わせたりしてもよい。これらの修正及び変更は、依然として本願の範囲内にある。
【0130】
図15は、本願のいくつかの実施例に係る目標空間位置のノイズ推定の例示的なフローチャートである。図15に示すように、フロー1500は、以下のステップを含む。
【0131】
ステップ1510において、第1のマイクロホンアレイ320によりピックアップされた環境ノイズに関連する1つ以上の空間ノイズ源を決定する。いくつかの実施例において、当該ステップは、プロセッサ330により実行されてもよい。本明細書に記載したように、空間ノイズ源を決定することは、例えば、空間ノイズ源の位置(空間ノイズ源の方位、空間ノイズ源と目標空間位置との間の距離等を含む)、空間ノイズ源の位相、及び空間ノイズ源の振幅等の空間ノイズ源の関連情報を決定することを指す。
【0132】
いくつかの実施例において、環境ノイズに関連する空間ノイズ源は、その音波がユーザの外耳道(例えば、目標空間位置)に伝達されるか又はユーザの外耳道に近接しているノイズ源を指す。いくつかの実施例において、空間ノイズ源は、ユーザの体の異なる方向(例えば、前方、後方等)のノイズ源であってもよい。例えば、ユーザの体の前方に人ごみの騒いでいるノイズが存在し、ユーザの体の左方に車両のクラクション音によるノイズが存在する場合、空間ノイズ源は、ユーザの体の前方にある人ごみの騒いでいるノイズ源とユーザの体の左方にある車両のクラクション音のノイズ源を含む。いくつかの実施例において、第1のマイクロホンアレイ320は、ユーザの体の各方向の空間ノイズをピックアップし、空間ノイズを電気信号に変換してプロセッサ330に伝達することができ、プロセッサ330は、空間ノイズに対応する電気信号を分析し、ピックアップされた各方向の空間ノイズのパラメータ情報(例えば、周波数情報、振幅情報、位相情報等)を取得することができる。プロセッサ330は、各方向の空間ノイズのパラメータ情報に基づいて各方向の空間ノイズ源の情報、例えば、空間ノイズ源の方位、空間ノイズ源の距離、空間ノイズ源の位相及び空間ノイズ源の振幅等を決定する。いくつかの実施例において、プロセッサ330は、第1のマイクロホンアレイ320によりピックアップされた空間ノイズに基づいて、ノイズ位置特定アルゴリズムにより空間ノイズ源を決定することができる。ノイズ位置特定アルゴリズムは、ビームフォーミングアルゴリズム、超解像空間スペクトル推定アルゴリズム、到達時間差アルゴリズム(時間遅延推定アルゴリズムと呼ばれてもよい)等のうちの1種以上を含んでもよい。
【0133】
プロセッサ330は、ピックアップされた環境ノイズを、特定の周波数帯域幅(例えば、500Hz毎に1つの周波数帯域とする)に従って、異なる周波数範囲にそれぞれ対応できる複数の周波数帯域に分割し、かつ少なくとも1つの周波数帯域上で当該周波数帯域に対応する空間ノイズ源を決定してもよい。例えば、プロセッサ330は、環境ノイズを分割した周波数帯域に対して信号分析を行って、各周波数帯域に対応する環境ノイズのパラメータ情報を取得し、パラメータ情報に基づいて各周波数帯域に対応する空間ノイズ源を決定することができる。
【0134】
ステップ1520において、空間ノイズ源に基づいて、目標空間位置のノイズを推定する。いくつかの実施例において、当該ステップは、プロセッサ330により実行されてもよい。本明細書に記載したように、目標空間位置のノイズを推定することは、目標空間位置でのノイズのパラメータ情報、例えば、周波数情報、振幅情報、位相情報等を推定することである。
【0135】
いくつかの実施例において、プロセッサ330は、ステップ1510において取得されたユーザの体の各方向に位置する空間ノイズ源のパラメータ情報(例えば、周波数情報、振幅情報、位相情報等)に基づいて、各空間ノイズ源から目標空間位置にそれぞれ伝達されたノイズのパラメータ情報を推定して、目標空間位置のノイズを推定することができる。例えば、ユーザの体の第1の方位(例えば、前方)と第2の方位(例えば、後方)にそれぞれ1つの空間ノイズ源があり、プロセッサ330は、第1の方位の空間ノイズ源の位置情報、周波数情報、位相情報又は振幅情報に基づいて、第1の方位の空間ノイズ源のノイズが目標空間位置に伝達されるときにおける、第1の方位の空間ノイズ源の周波数情報、位相情報又は振幅情報を推定することができる。プロセッサ330は、第2の方位の空間ノイズ源の位置情報、周波数情報、位相情報又は振幅情報に基づいて、第2の方位の空間ノイズ源のノイズが目標空間位置に伝達されるときにおける、第2の方位の空間ノイズ源の周波数情報、位相情報又は振幅情報を推定することができる。さらに、プロセッサ330は、第1の方位の空間ノイズ源及び第2の方位の空間ノイズ源の周波数情報、位相情報又は振幅情報に基づいて、目標空間位置のノイズ情報を推定して、目標空間位置でのノイズの情報を推定することができる。単に例として、プロセッサ330は、仮想マイクロホン技術又は他の方法により目標空間位置のノイズの情報を推定することができる。いくつかの実施例において、プロセッサ330は、特徴抽出という方法で、マイクロホンアレイによりピックアップされた空間ノイズ源の周波数応答曲線から空間ノイズ源のノイズのパラメータ情報を抽出することができる。いくつかの実施例において、空間ノイズ源のノイズのパラメータ情報を抽出する方法は、主成分分析(Principal Components Analysis、PCA)、独立成分分析(Independent Component Algorithm、ICA)、線形判別分析(Linear Discriminant Analysis、LDA)、特異値分解(Singular Value Decomposition、SVD)などを含むが、それらに限定されない。
【0136】
なお、上記フロー1500についての説明は、例示及び説明のためのものにすぎず、本願の適用範囲を限定するものではない。当業者であれば、本願の説明に基づいて、フロー1500に対して様々な修正及び変更を行うことができる。例えば、フロー1500は、空間ノイズ源を位置決めし、空間ノイズ源のノイズのパラメータ情報を抽出するステップ等をさらに含んでもよい。これらの修正及び変更は、依然として本願の範囲内にある。
【0137】
図16は、本願のいくつかの実施例に係る目標空間位置の音場及びノイズの推定の例示的なフローチャートである。図16に示すように、フロー1600は、以下のステップを含む。
【0138】
ステップ1610において、第1のマイクロホンアレイ320に基づいて仮想マイクロホンを構築する。いくつかの実施例において、当該ステップは、プロセッサ330により実行されてもよい。
【0139】
いくつかの実施例において、仮想マイクロホンは、目標空間位置にマイクロホンが設置されている場合に上記マイクロホンが収集したオーディオデータを表すか又はシミュレーションすることができる。即ち、仮想マイクロホンにより取得されたオーディオデータを、目標空間位置に物理的マイクロホンが配置されている場合に当該物理的マイクロホンが収集したオーディオデータに近似又は同等させてもよい。
【0140】
いくつかの実施例において、仮想マイクロホンは、数理モデルを含んでもよい。当該数理モデルは、目標空間位置のノイズ又は音場の推定とマイクロホンアレイ(例えば、第1のマイクロホンアレイ320)によりピックアップされた環境ノイズのパラメータ情報(例えば、周波数情報、振幅情報、位相情報等)とマイクロホンアレイのパラメータとの間の関係を表すことができる。マイクロホンアレイのパラメータは、マイクロホンアレイの配列方式、各マイクロホンの間の距離、マイクロホンアレイ内のマイクロホンの数及び位置等のうちの1つ以上を含んでもよい。当該数理モデルは、初期の数理モデル及びマイクロホンアレイのパラメータとマイクロホンアレイによりピックアップされた音声(例えば、環境ノイズ)のパラメータ情報(例えば、周波数情報、振幅情報、位相情報等)に基づいて計算して取得されてもよい。例えば、初期の数理モデルは、対応するマイクロホンアレイのパラメータ、マイクロホンアレイによりピックアップされた環境ノイズのパラメータ情報、及びモデルパラメータを含んでもよい。マイクロホンアレイのパラメータ、マイクロホンアレイによりピックアップされた音声のパラメータ情報及びモデルパラメータの初期値を初期の数理モデルに代入して、予測された目標空間位置のノイズ又は音場を取得する。次に、当該予測されたノイズ又は音場と、目標空間位置に設置された物理的マイクロホンにより取得されたデータ(ノイズ及び音場の推定)とを比較して数理モデルのモデルパラメータを調整する。上記調整方法に基づいて、大量のデータ(例えば、マイクロホンアレイのパラメータ及びマイクロホンアレイによりピックアップされた環境ノイズのパラメータ情報)により、複数回調整して、当該数理モデルを取得する。
【0141】
いくつかの実施例において、仮想マイクロホンは、機械学習モデルを含んでもよい。当該機械学習モデルは、マイクロホンアレイのパラメータ及びマイクロホンアレイによりピックアップされた音声(例えば、環境ノイズ)のパラメータ情報(例えば、周波数情報、振幅情報、位相情報等)に基づいてトレーニングして取得されてもよい。例えば、マイクロホンアレイのパラメータ及びマイクロホンアレイによりピックアップされた音声のパラメータ情報をトレーニングサンプルとして初期の機械学習モデル(例えば、ニューラルネットワークモデル)をトレーニングして当該機械学習モデルを取得する。具体的には、マイクロホンアレイのパラメータ及びマイクロホンアレイによりピックアップされた音声のパラメータ情報を初期の機械学習モデルに入力し、予測結果(例えば、目標空間位置のノイズ及び音場の推定)を取得することができる。次に、当該予測結果と目標空間位置に設置された物理的マイクロホンにより取得されたデータ(ノイズ及び音場の推定)とを比較して初期の機械学習モデルのパラメータを調整する。上記調整方法に基づいて、大量のデータ(例えば、マイクロホンアレイのパラメータ及びマイクロホンアレイによりピックアップされた環境ノイズのパラメータ情報)により、複数回の反復を経て、初期の機械学習モデルによる予測結果が目標空間位置に設置された物理的マイクロホンにより取得されたデータと同じになるか又はほぼ同じになるまで、初期の機械学習モデルのパラメータを最適化して、機械学習モデルを取得する。
【0142】
仮想マイクロホン技術は、物理的マイクロホンをマイクロホンを配置しにくい位置(例えば、目標空間位置)から移すことができる。例えば、ユーザの外耳道を塞ぐことなくユーザの両耳を開放するという目的を達成するために、物理的マイクロホンをユーザの耳孔の位置(例えば、目標空間位置)に設置してはいけない。この場合、仮想マイクロホン技術は、マイクロホンアレイをユーザの耳に近いかつ外耳道を塞がない位置に設置し、マイクロホンアレイによりユーザの耳孔の位置にある仮想マイクロホンを構築することができる。仮想マイクロホンは、第1の位置にある物理的マイクロホン(例えば、第1のマイクロホンアレイ320)により第2の位置(例えば、目標空間位置)の音声データ(例えば、振幅、位相、音圧、音場等)を予測することができる。いくつかの実施例において、仮想マイクロホンにより予測された第2の位置(特定の位置と呼ばれてもよく、例えば目標空間位置である)の音声データは、仮想マイクロホンと物理的マイクロホン(第1のマイクロホンアレイ320)との間の距離、仮想マイクロホンのタイプ(例えば、数理モデル型仮想マイクロホン、機械学習型仮想マイクロホン)等に基づいて調整することができる。例えば、仮想マイクロホンと物理的マイクロホンとの間の距離が近いほど、仮想マイクロホンにより予測された第2の位置の音声データが正確になる。また、例えば、いくつかの特定の適用シーンにおいて、機械学習型仮想マイクロホンにより予測された第2の位置の音声データは、数理モデル型仮想マイクロホンよりも正確である。いくつかの実施例において、仮想マイクロホンに対応する位置(即ち、目標空間位置などの第2の位置)は、第1のマイクロホンアレイ320の付近にあってもよく、第1のマイクロホンアレイ320から離れていてもよい。
【0143】
ステップ1620において、仮想マイクロホンに基づいて目標空間位置のノイズ及び音場を推定する。いくつかの実施例において、当該ステップは、プロセッサ330により実行されてもよい。
【0144】
いくつかの実施例において、仮想マイクロホンが数理モデルである場合、プロセッサ330は、第1のマイクロホンアレイ(例えば、第1のマイクロホンアレイ320)によりピックアップされた環境ノイズのパラメータ情報(例えば、周波数情報、振幅情報、位相情報等)及び第1のマイクロホンアレイのパラメータ(例えば、第1のマイクロホンアレイの配列方式、各マイクロホンの間の距離、第1のマイクロホンアレイ内のマイクロホンの数)を数理モデルのパラメータとして数理モデルにリアルタイムに入力して目標空間位置のノイズ及び音場を推定することができる。
【0145】
いくつかの実施例において、仮想マイクロホンが機械学習モデルである場合、プロセッサ330は、第1のマイクロホンアレイによりピックアップされた環境ノイズのパラメータ情報(例えば、周波数情報、振幅情報、位相情報等)及び第1のマイクロホンアレイのパラメータ(例えば、第1のマイクロホンアレイの配列方式、各マイクロホンの間の距離、第1のマイクロホンアレイ内のマイクロホンの数)を機械学習モデルにリアルタイムに入力して機械学習モデルの出力に基づいて目標空間位置のノイズ及び音場を推定することができる。
【0146】
なお、上記フロー1600についての説明は、例示及び説明のためのものにすぎず、本願の適用範囲を限定するものではない。当業者であれば、本願の説明に基づいて、フロー1600に対して様々な修正及び変更を行うことができる。例えば、ステップ1620は、それぞれ目標空間位置のノイズと音場を推定する2つのステップに分けられてもよい。これらの修正及び変更は、依然として本願の範囲内にある。
【0147】
いくつかの実施例において、スピーカー340は、ノイズ低減信号に基づいて目標信号を出力し、当該目標信号が環境ノイズと互いに相殺した後、ユーザの外耳道の付近に依然として一部の相殺されていない音声信号が存在する可能性があり、これらの相殺されていない音声信号は、残りの環境ノイズ及び/又は残りの目標信号であってもよく、そのため、ユーザの外耳道に依然として一定のノイズが存在する。これに基づいて、いくつかの実施例において、図1に示すイヤホン100、図3図12に示すイヤホン300は、第2のマイクロホン360をさらに含んでもよい。第2のマイクロホン360は、胴体部312(例えば、保持部3122)に位置してもよい。第2のマイクロホン360は、環境ノイズ及び目標信号をピックアップするように構成されてもよい。
【0148】
いくつかの実施例において、第2のマイクロホン360の数は、1つ以上であってもよい。第2のマイクロホン360の数が1つである場合、当該第2のマイクロホンは、ユーザの外耳道での環境ノイズ及び目標信号をピックアップすることにより、目標信号と環境ノイズが相殺した後のユーザの外耳道での音場を監視することができる。第2のマイクロホン360の数が複数である場合、複数の第2のマイクロホンは、ユーザの外耳道での環境ノイズ及び目標信号をピックアップすることができ、複数のマイクロホンによりピックアップされたユーザの外耳道での音声信号の関連パラメータ情報に対して平均又は重み付けアルゴリズム等を行ってユーザの外耳道でのノイズを推定することができる。いくつかの実施例において、第2のマイクロホン360の数が複数である場合、複数のマイクロホンのうちの一部のマイクロホンは、ユーザの外耳道での環境ノイズ及び目標信号をピックアップすることができ、その他のマイクロホンは、第1のマイクロホンアレイ320内のマイクロホンとして使用することができ、この場合、第1のマイクロホンアレイ320内のマイクロホンと第2のマイクロホン360内のマイクロホンは、1つ以上の同じマイクロホンを共有し得る。
【0149】
いくつかの実施例において、図10に示すように、第2のマイクロホン360は、保持部3122における、ユーザの外耳道に近接している領域である第2の目標領域に設置されてもよい。いくつかの実施例において、第2の目標領域は、図10における領域Hであってもよい。領域Hは、保持部3122における、ユーザの外耳道に近接している一部の領域であってもよい。即ち、第2のマイクロホン360は、保持部3122に位置してもよい。例えば、領域Hは、保持部3122のユーザの耳部に向かう側の第1の領域3122Aにおける一部の領域であってもよい。第2のマイクロホン360を第2の目標領域Hに設置することにより、第2のマイクロホン360は、ユーザの外耳道の付近に位置し、かつ第1のマイクロホンアレイ320よりもユーザの外耳道に近接しており、それにより、第2のマイクロホン360によりピックアップされた音声信号(例えば、残りの環境ノイズ、残りの目標信号等)がユーザの聞いた音声により近いように保証し、プロセッサ330は、さらに第2のマイクロホン360によりピックアップされた音声信号に基づいてノイズ低減信号を更新することにより、より理想的なノイズ低減効果を実現する。
【0150】
いくつかの実施例において、第2のマイクロホン360がユーザの外耳道での残りの環境ノイズをより正確にピックアップすることを保証するために、第2のマイクロホン360の保持部3122における位置を調整することにより、第2のマイクロホン360とユーザの外耳道との間の距離を適切な範囲内にすることができる。いくつかの実施例において、ユーザがイヤホン300を装着している場合、第2のマイクロホン360とユーザの外耳道との間の距離は、10ミリメートル未満であってもよい。いくつかの実施例において、ユーザがイヤホン300を装着している場合、第2のマイクロホン360とユーザの外耳道との間の距離は、9ミリメートル未満であってもよい。いくつかの実施例において、ユーザがイヤホン300を装着している場合、第2のマイクロホン360とユーザの外耳道との間の距離は、8ミリメートル未満であってもよい。いくつかの実施例において、ユーザがイヤホン300を装着している場合、第2のマイクロホン360とユーザの外耳道との間の距離は、7ミリメートル未満であってもよい。
【0151】
いくつかの実施例において、第2のマイクロホン360は、スピーカー340が放音孔301を通して出力した目標信号と環境ノイズとが相殺した後の残りの目標信号をピックアップする必要がある。第2のマイクロホン360が残りの目標信号をより正確にピックアップできることを保証するために、第2のマイクロホン360と放音孔301との間の距離を合理的に設定することができる。いくつかの実施例において、ユーザの矢状面(YZ平面)において、第2のマイクロホン360と放音孔301との間の矢状軸(Y軸)方向に沿った距離は、10ミリメートル未満であってもよい。いくつかの実施例において、ユーザの矢状面(YZ平面)において、第2のマイクロホン360と放音孔301との間の矢状軸(Y軸)方向に沿った距離は、9ミリメートル未満であってもよい。いくつかの実施例において、ユーザの矢状面(YZ平面)において、第2のマイクロホン360と放音孔301との間の矢状軸(Y軸)方向に沿った距離は、8ミリメートル未満であってもよい。いくつかの実施例において、ユーザの矢状面(YZ平面)において、第2のマイクロホン360と放音孔301との間の矢状軸(Y軸)方向に沿った距離は、7ミリメートル未満であってもよい。
【0152】
いくつかの実施例において、ユーザの矢状面において、第2のマイクロホン360と放音孔301との間の垂直軸(Z軸)方向に沿った距離は、3ミリメートル~6ミリメートルであってもよい。いくつかの実施例において、ユーザの矢状面において、第2のマイクロホン360と放音孔301との間の垂直軸(Z軸)方向に沿った距離は、2.5ミリメートル~5.5ミリメートルであってもよい。いくつかの実施例において、ユーザの矢状面において、第2のマイクロホン360と放音孔301との間の垂直軸(Z軸)方向に沿った距離は、3ミリメートル~5ミリメートルであってもよい。いくつかの実施例において、ユーザの矢状面において、第2のマイクロホン360と放音孔301との間の垂直軸(Z軸)方向に沿った距離は、3.5ミリメートル~4.5ミリメートルであってもよい。
【0153】
いくつかの実施例において、イヤホン300の能動的ノイズ低減効果を保証するために、ユーザの矢状面において、第2のマイクロホン360と第1のマイクロホンアレイ320との間の垂直軸(Z軸)方向に沿った距離は、2ミリメートル~8ミリメートルであってもよい。いくつかの実施例において、ユーザの矢状面において、第2のマイクロホン360と第1のマイクロホンアレイ320との間の垂直軸(Z軸)方向に沿った距離は、3ミリメートル~7ミリメートルであってもよい。いくつかの実施例において、ユーザの矢状面において、第2のマイクロホン360と第1のマイクロホンアレイ320との間の垂直軸(Z軸)方向に沿った距離は、4ミリメートル~6ミリメートルであってもよい。
【0154】
いくつかの実施例において、ユーザの矢状面において、第2のマイクロホン360と第1のマイクロホンアレイ320との間の矢状軸(Y軸)方向に沿った距離は、2ミリメートル~20ミリメートルであってもよい。いくつかの実施例において、ユーザの矢状面において、第2のマイクロホン360と第1のマイクロホンアレイ320との間の矢状軸(Y軸)方向に沿った距離は、4ミリメートル~18ミリメートルであってもよい。いくつかの実施例において、ユーザの矢状面において、第2のマイクロホン360と第1のマイクロホンアレイ320との間の矢状軸(Y軸)方向に沿った距離は、5ミリメートル~15ミリメートルであってもよい。いくつかの実施例において、ユーザの矢状面において、第2のマイクロホン360と第1のマイクロホンアレイ320との間の矢状軸(Y軸)方向に沿った距離は、6ミリメートル~12ミリメートルであってもよい。いくつかの実施例において、ユーザの矢状面において、第2のマイクロホン360と第1のマイクロホンアレイ320との間の矢状軸(Y軸)方向に沿った距離は、8ミリメートル~10ミリメートルであってもよい。
【0155】
いくつかの実施例において、ユーザの水平面(XY平面)において、第2のマイクロホン360と第1のマイクロホンアレイ320との間の冠状軸(X軸)方向に沿った距離は、3ミリメートル未満であってもよい。いくつかの実施例において、ユーザの水平面(XY平面)において、第2のマイクロホン360と第1のマイクロホンアレイ320との間の冠状軸(X軸)方向に沿った距離は、2.5ミリメートル未満であってもよい。いくつかの実施例において、ユーザの水平面(XY平面)において、第2のマイクロホン360と第1のマイクロホンアレイ320との間の冠状軸(X軸)方向に沿った距離は、2ミリメートル未満であってもよい。理解されるように、上記第2のマイクロホン360と第1のマイクロホンアレイ320との間の距離は、第2のマイクロホン360と第1のマイクロホンアレイ320内のいずれか1つのマイクロホンとの間の距離であってもよい。
【0156】
いくつかの実施例において、第2のマイクロホン360は、環境ノイズ及び目標信号をピックアップするように構成され、さらに、プロセッサ330は、第2のマイクロホン360によりピックアップされた音声信号に基づいてノイズ低減信号を更新することにより、イヤホン300の能動的ノイズ低減効果をさらに向上させることができる。第2のマイクロホン360によりノイズ低減信号を更新することに関する具体的な説明は、図17及びその関連説明を参照することができる。
【0157】
図17は、本願のいくつかの実施例に係るノイズ低減信号更新の例示的なフローチャートである。図17に示すように、フロー1700は、以下のステップを含む。
【0158】
ステップ1710において、第2のマイクロホン360によりピックアップされた音声信号に基づいて、ユーザの外耳道での音場を推定する。
【0159】
いくつかの実施例において、当該ステップは、プロセッサ330により実行されてもよい。いくつかの実施例において、第2のマイクロホン360によりピックアップされた音声信号は、環境ノイズ及びスピーカー340から出力された目標信号を含む。いくつかの実施例において、環境ノイズがスピーカー340から出力された目標信号と互いに相殺した後、ユーザの外耳道の付近に依然として一部の相殺されていない音声信号が存在する可能性があり、これらの相殺されていない音声信号は、残りの環境ノイズ及び/又は残りの目標信号であってもよく、そのため、環境ノイズが目標信号と相殺した後、ユーザの外耳道に依然として一定のノイズが存在する。プロセッサ330は、第2のマイクロホン360によりピックアップされた音声信号(例えば、環境ノイズ、目標信号)に基づいて処理して、ユーザの外耳道での音場のパラメータ情報、例えば、周波数情報、振幅情報及び位相情報等を取得することにより、ユーザの外耳道での音場の推定を実現することができる。
【0160】
ステップ1720において、ユーザの外耳道での音場に基づいて、上記ノイズ低減信号を更新する。
【0161】
いくつかの実施例において、ステップ1720は、プロセッサ330により実行されてもよい。いくつかの実施例において、プロセッサ330は、ステップ1710において取得されたユーザの外耳道での音場のパラメータ情報に基づいて、更新されたノイズ低減信号の振幅情報及び周波数情報がユーザの外耳道での環境ノイズの振幅情報及び周波数情報により合致し、かつ更新されたノイズ低減信号の位相情報がユーザの外耳道での環境ノイズの逆位相情報により合致するように、ノイズ低減信号のパラメータ情報(例えば、周波数情報、振幅情報及び/又は位相情報)を調整することにより、更新されたノイズ低減信号で環境ノイズをより正確に除去することができる。
【0162】
なお、上記フロー1700についての説明は、例示及び説明のためのものにすぎず、本明細書の適用範囲を限定するものではない。当業者であれば、本明細書の説明に基づいて、フロー1700に対して様々な修正及び変更を行うことができる。しかしながら、これらの修正及び変更は、依然として本明細書の範囲内にある。例えば、ユーザの外耳道での音場をピックアップするマイクロホンは、第2のマイクロホン360に限定されず、さらに他のマイクロホン、例えば、第3のマイクロホン、第4のマイクロホン等を含んでもよく、複数のマイクロホンによりピックアップされたユーザの外耳道での音場の関連パラメータ情報に対して平均又は重み付けアルゴリズム等を行ってユーザの外耳道での音場を推定することができる。
【0163】
いくつかの実施例において、ユーザの外耳道での音場をより正確に取得するために、第2のマイクロホン360は、第1のマイクロホンアレイ320内のいずれのマイクロホンよりもユーザの外耳道に近接している1つのマイクロホンを含んでもよい。いくつかの実施例において、第1のマイクロホンアレイ320によりピックアップされた音声信号は、環境ノイズであり、第2のマイクロホン360によりピックアップされた音声信号は、環境ノイズ及び目標信号である。いくつかの実施例において、プロセッサ330は、第2のマイクロホン360によりピックアップされた音声信号に基づいてユーザの外耳道での音場を推定して、ノイズ低減信号を更新することができる。第2のマイクロホン360は、ノイズ低減信号と環境ノイズが相殺した後のユーザの外耳道での音場を監視する必要があり、第2のマイクロホン360は、ユーザが聞いた音声信号をより正確に特徴付けるように、第1のマイクロホンアレイ320内のいずれのマイクロホンよりもユーザの外耳道に近接しているマイクロホンを含んでもよく、第2のマイクロホン360の音場に基づいて推定してノイズ低減信号を更新することにより、ノイズ低減効果及びユーザの聴覚体験をさらに向上させることができる。
【0164】
いくつかの実施例において、イヤホン300は、上記第1のマイクロホンアレイを含まず、第2のマイクロホン360のみを利用して能動的ノイズ低減を行ってもよい。この場合、プロセッサ330は、第2のマイクロホン360によりピックアップされた環境ノイズをユーザの外耳道でのノイズとして、フィードバック信号を生成してノイズ低減信号を調整することにより、ユーザの外耳道での環境ノイズを相殺又は低減することができる。また、例えば、第2のマイクロホン360の数が複数である場合、複数のマイクロホンのうちの一部のマイクロホンは、ユーザの外耳道の付近での環境ノイズをピックアップし、他のマイクロホンは、ユーザの外耳道での環境ノイズ及び目標信号をピックアップすることにより、プロセッサ330は、目標信号と環境ノイズが相殺した後のユーザの外耳道での音声信号に基づいてノイズ低減信号を更新し、さらにイヤホン300の能動的ノイズ低減効果を向上させることができる。
【0165】
図18は、本願のいくつかの実施例に係るイヤホンの例示的なノイズ低減フローチャートである。図18に示すように、フロー1800は、以下のステップを含む。
【0166】
ステップ1810において、ピックアップされた環境ノイズを異なる周波数範囲に対応する複数の周波数帯域に分割する。
【0167】
いくつかの実施例において、当該ステップは、プロセッサ330により実行されてもよい。マイクロホンアレイ(例えば、第1のマイクロホンアレイ320)によりピックアップされた環境ノイズは、異なる周波数成分を含む。いくつかの実施例において、プロセッサ330は、環境ノイズ信号を処理する場合、環境ノイズの周波数帯域を異なる周波数範囲に対応する複数の周波数帯域に分割することができる。各周波数帯域に対応する周波数範囲は、例えば、20~100Hz、100Hz~1000Hz、3000Hz~6000Hz、9000Hz~20000Hz等の予め設定された周波数範囲であってもよい。
【0168】
ステップ1820において、上記複数の周波数帯域のうちの少なくとも1つに基づいて、上記少なくとも1つの周波数帯域のそれぞれに対応するノイズ低減信号を生成する。
【0169】
いくつかの実施例において、当該ステップは、プロセッサ330により実行されてもよい。プロセッサ330は、環境ノイズを分割した周波数帯域を分析して、各周波数帯域に対応する環境ノイズのパラメータ情報(例えば、周波数情報、振幅情報、位相情報等)を取得することができる。プロセッサ330は、パラメータ情報に基づいて、少なくとも1つの周波数帯域のそれぞれに対応するノイズ低減信号を生成する。例えば、20Hz~100Hzの周波数帯域で、プロセッサ330は、周波数帯域20Hz~100Hzに対応する環境ノイズのパラメータ情報(例えば、周波数情報、振幅情報、位相情報等)に基づいて20Hz~100Hzの周波数帯域に対応するノイズ低減信号を生成することができる。さらに、スピーカー340は、20Hz~100Hzの周波数帯域のノイズ低減信号に基づいて目標信号を出力する。例えば、スピーカー340は、20Hz~100Hzの周波数帯域のノイズとは位相がほぼ逆であり、振幅がほぼ等しい目標信号を出力して、当該周波数帯域のノイズを相殺することができる。
【0170】
いくつかの実施例において、上記複数の周波数帯域のうちの少なくとも1つに基づいて、上記少なくとも1つの周波数帯域のそれぞれに対応するノイズ低減信号を生成することは、複数の周波数帯域に対応する音圧レベルを取得することと、複数の周波数帯域に対応する音圧レベル及び複数の周波数帯域に対応する周波数範囲に基づいて、一部の周波数帯域に対応するノイズ低減信号のみを生成することと、を含んでもよい。いくつかの実施例において、マイクロホンアレイ(例えば、第1のマイクロホンアレイ320)によりピックアップされた異なる周波数帯域の環境ノイズの音圧レベルは、異なってもよい。プロセッサ330は、環境ノイズを分割した周波数帯域を分析して、各周波数帯域に対応する音圧レベルを取得することができる。いくつかの実施例において、開放型イヤホン(例えば、イヤホン300)の構造上の差異性、及びユーザの耳部構造の差異によるイヤホンの装着位置の違いによる伝達関数の変化を考慮すると、イヤホン300は、環境ノイズの周波数帯域における一部の周波数帯域を選択して能動的ノイズ低減を行うことができる。プロセッサ330は、複数の周波数帯域の音圧レベル及び周波数範囲に基づいて、一部の周波数帯域に対応するノイズ低減信号のみを生成する。例えば、環境ノイズにおける低周波(例えば、20Hz~100Hz)のノイズが大きい(例えば、音圧レベルが60dBより大きい)場合、開放型イヤホンは、当該低周波のノイズを相殺するのに十分に大きいノイズ低減信号を発することができない可能性がある。この場合、プロセッサ330は、環境ノイズの周波数帯域における周波数が高い一部の周波数帯域(例えば、100Hz~1000Hz、3000Hz~6000Hz)に対応するノイズ低減信号のみを生成してもよい。また、例えば、ユーザの耳部構造の差異によるイヤホンの装着位置の違いは、伝達関数の変化をもたらすため、開放型イヤホンは、高周波信号(例えば、2000Hz超)の環境ノイズに対して能動的ノイズ低減を行うことが困難になる場合があり、この場合、プロセッサ330は、環境ノイズの周波数帯域における周波数が低い一部の周波数帯域(例えば、20Hz-100Hz)に対応するノイズ低減信号のみを生成してもよい。
【0171】
なお、上記フロー1800についての説明は、例示及び説明のためのものにすぎず、本明細書の適用範囲を限定するものではない。当業者であれば、本明細書の説明に基づいて、フロー1800に対して様々な修正及び変更を行うことができる。例えば、ステップ1810とステップ1820を合併する。また、例えば、フロー1800に他のステップを追加する。しかしながら、これらの修正及び変更は、依然として本明細書の範囲内にある。
【0172】
図19は、本願のいくつかの実施例に係る目標空間位置のノイズ推定の例示的なフローチャートである。図19に示すように、フロー1900は、以下のステップを含む。
【0173】
ステップ1910において、ピックアップされた環境ノイズから、骨伝導マイクロホンによりピックアップされた信号に関連する成分を除去して環境ノイズを更新する。
【0174】
いくつかの実施例において、当該ステップは、プロセッサ330により実行されてもよい。いくつかの実施例において、マイクロホンアレイ(例えば、第1のマイクロホンアレイ320)が、環境ノイズをピックアップする場合、ユーザ自身の発話音声もマイクロホンアレイにピックアップされ、即ち、ユーザ自身の発話音声も環境ノイズの一部と見なされる。この場合、スピーカー(例えば、スピーカー340)から出力された目標信号は、ユーザ自身の発話音声を相殺する。いくつかの実施例において、特定のシーン、例えば、ユーザが音声通話を行い、音声メッセージを送信するなどのシーンでは、ユーザ自身の発話音声を保留する必要がある。いくつかの実施例において、イヤホン(例えば、イヤホン300)は、骨伝導マイクロホンを含んでもよく、ユーザがイヤホンを装着した状態で音声通話を行うか又は音声情報を録音する場合、骨伝導マイクロホンは、ユーザの発話時に顔面の骨格又は筋肉による振動信号をピックアップすることにより、ユーザの発話の音声信号をピックアップし、かつプロセッサ330に伝達することができる。プロセッサ330は、骨伝導マイクロホンによりピックアップされた音声信号のパラメータ情報を取得し、マイクロホンアレイによりピックアップされた環境ノイズから、骨伝導マイクロホンによりピックアップされた音声信号に関連する音声信号成分を除去する。プロセッサ330は、残りの環境ノイズのパラメータ情報に基づいて環境ノイズを更新する。更新された環境ノイズにユーザ自身の発話の音声信号が含まれず、即ち、ユーザが音声通話を行う場合、ユーザは、ユーザ自身の発話の音声信号を聞くことができる。
【0175】
ステップ1920において、更新された環境ノイズに基づいて目標空間位置のノイズを推定する。
【0176】
いくつかの実施例において、当該ステップは、プロセッサ330により実行されてもよい。ステップ1420と同様の方式でステップ1920を実行することができ、ここでは関連する説明を繰り返さない。
【0177】
なお、上記フロー1900についての説明は、例示及び説明のためのものにすぎず、本願の適用範囲を限定するものではない。当業者であれば、本願の説明に基づいて、フロー1900に対して様々な修正及び変更を行うことができる。例えば、骨伝導マイクロホンによりピックアップされた信号に関連する成分を前処理し、かつ骨伝導マイクロホンによりピックアップされた信号をオーディオ信号として端末装置に伝送してもよい。これらの修正及び変更は、依然として本願の範囲内にある。
【0178】
いくつかの実施例において、ユーザの手動入力に基づいてノイズ低減信号を更新してもよい。例えば、いくつかの実施例において、異なるユーザでは、耳部構造の差異又はイヤホン300の装着状態が異なるため、イヤホン300の能動的ノイズ低減の効果が異なり、聴覚体験効果が理想的ではない場合がある。この時、ユーザは、自身の聴覚効果に基づいてノイズ低減信号のパラメータ情報(例えば、周波数情報、位相情報又は振幅情報)を手動で調整することで、異なるユーザのイヤホン300の装着位置に適合させ、イヤホン300の能動的ノイズ低減性能を向上させることができる。また、例えば、特殊ユーザ(例えば、聴力が損傷したユーザ又は年齢が高いユーザ)がイヤホン300を使用する過程において、聴力能力は、一般的なユーザの聴力能力と差異があり、イヤホン300自体が生成したノイズ低減信号は、特殊ユーザの聴力能力に適合しないため、特殊ユーザの聴覚体験が低い。この場合、特殊ユーザは、自身の聴覚効果に基づいてノイズ低減信号の周波数情報、位相情報又は振幅情報を手動で調整することにより、ノイズ低減信号を更新して特殊ユーザの聴覚体験を向上させることができる。いくつかの実施例において、ユーザがノイズ低減信号を手動で調整する方式は、イヤホン300上のキーにより手動で調整することであってもよい。いくつかの実施例において、イヤホン300の固定構造310の任意の位置(例えば、保持部3122の耳部に背く側面)にユーザが調整するためのキーが設置されてもよく、それによりイヤホン300の能動的ノイズ低減の効果を調整し、さらにユーザがイヤホン300を使用する聴覚体験を向上させる。いくつかの実施例において、ユーザがノイズ低減信号を手動で調整する方式は、端末装置により手動入力調整を行うことであってもよい。いくつかの実施例において、イヤホン300又はイヤホン300と通信接続された携帯電話、タブレットコンピュータ、コンピュータなどの電子製品は、ユーザの外耳道での音場を表示し、かつ推奨のノイズ低減信号の周波数情報範囲、振幅情報範囲又は位相情報範囲をユーザにフィードバックすることができ、ユーザは、推奨のノイズ低減信号のパラメータ情報に基づいて手動入力を行い、その後に自身の聴覚体験状況に応じてパラメータ情報の微調整を行うことができる。
【0179】
以上、基本概念を説明してきたが、当業者にとっては、上記詳細な開示は、単なる例として提示されているに過ぎず、本願を限定するものではないことは明らかである。本明細書において明確に記載されていないが、当業者は、本願に対して様々な変更、改良及び修正を行うことができる。これらの変更、改良及び修正は、本願によって示唆されることが意図されているため、本願の例示的な実施例の趣旨及び範囲内にある。
【0180】
さらに、本願の実施例を説明するために、本願において特定の用語が使用されている。例えば、「1つの実施例」、「一実施例」、及び/又は「いくつかの実施例」は、本願の少なくとも1つの実施例に関連した特定の特徴、構造又は特性を意味する。したがって、本明細書の様々な部分における「一実施例」又は「1つの実施例」又は「1つの代替的な実施例」の2つ以上の言及は、必ずしもすべてが同一の実施例を指すとは限らないことを強調し、理解されたい。また、本願の1つ以上の実施例における特定の特徴、構造、又は特性は、適切に組み合わせられてもよい。
【0181】
また、当業者には理解されるように、本願の各態様は、任意の新規かつ有用なプロセス、機械、製品又は物質の組み合わせ、又はそれらへの任意の新規かつ有用な改善を含む、いくつかの特許可能なクラス又はコンテキストで、例示及び説明され得る。よって、本願の各態様は、完全にハードウェアによって実行されてもよく、完全にソフトウェア(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)によって実行されてもよく、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって実行されてもよい。以上のハードウェア又はソフトウェアは、いずれも「データブロック」、「モジュール」、「エンジン」、「ユニット」、「アセンブリ」又は「システム」と呼ばれてもよい。また、本願の各態様は、コンピュータ読み取り可能なプログラムコードを含む1つ以上のコンピュータ読み取り可能な媒体に具現化されたコンピュータプログラム製品の形態を取ることができる。
【0182】
コンピュータ記憶媒体は、コンピュータプログラムコードを搬送するための、ベースバンド上で伝播されるか又は搬送波の一部として伝播される伝播データ信号を含んでもよい。該伝播信号は、電磁気信号、光信号又は適切な組み合わせ形態などの様々な形態を含んでもよい。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読記憶媒体以外の任意のコンピュータ可読媒体であってもよく、該媒体は、命令実行システム、装置又は機器に接続されることにより、使用されるプログラムの通信、伝播又は伝送を実現することができる。コンピュータ記憶媒体上のプログラムコードは、無線、ケーブル、光ファイバケーブル、RF若しくは類似の媒体、又は上記媒体の任意の組み合わせを含む任意の適切な媒体を介して伝送することができる。
【0183】
本願の各部分の操作に必要なコンピュータプログラムコードは、Java、Scala、Smalltalk、Eiffel、JADE、Emerald、C++、C#、VB.NET、Pythonなどのオブジェクト指向プログラミング言語、C言語、Visual Basic、Fortran 2003、Perl、COBOL 2002、PHP、ABAPなどの従来の手続き型プログラミング言語、Python、Ruby及びGroovyなどの動的プログラミング言語、又は他のプログラミング言語などを含む1つ以上のプログラミング言語でコーディングしてもよい。該プログラムコードは、完全にユーザコンピュータ上で実行されてもよく、独立したソフトウェアパッケージとしてユーザコンピュータ上で実行されてもよく、部分的にユーザコンピュータ上で部分的にリモートコンピュータ上で実行されてもよく、完全にリモートコンピュータ又はサーバ上で実行されてもよい。後者の場合、リモートコンピュータは、ローカルエリアネットワーク(LAN)又はワイドエリアネットワーク(WAN)などの任意のネットワーク形態でユーザコンピュータに接続されてもよく、(例えば、インターネットを介して)外部コンピュータに接続されてもよく、クラウドコンピューティング環境にあってもよく、ソフトウェア・アズ・ア・サービス(SaaS)などのサービスとして使用されてもよい。
【0184】
また、特許請求の範囲に明確に記載されていない限り、本願に係る処理要素又はシーケンスの列挙した順序、英数字の使用、又は他の名称の使用は、本願の手順及び方法の順序を限定するものではない。上記開示において、発明の様々な有用な実施例であると現在考えられるものを様々な例を通して説明しているが、そのような詳細は、単にその目的のためであり、添付の特許請求の範囲は、開示される実施例に限定されないが、反対に、本願の実施例の趣旨及び範囲内にある全ての修正及び等価な組み合わせをカバーするように意図されることが理解されよう。例えば、上述したシステムコンポーネントは、ハードウェアデバイスにより実装されてもよいが、ソフトウェアのみのソリューション、例えば、既存のサーバ又は移動装置に説明されたシステムをインストールすることにより実装されてもよい。
【0185】
同様に、本願の実施例の前述の説明では、本開示を簡略化して、1つ以上の発明の実施例への理解を助ける目的で、様々な特徴が1つの実施例、図面又はその説明にまとめられることがあることを理解されたい。しかしながら、このような開示方法は、特許請求される主題が各請求項で列挙されるより多くの特徴を必要とするという意図を反映するものと解釈すべきではない。実際に、実施例の特徴は、上記開示された単一の実施例のすべての特徴より少ない場合がある。
【0186】
いくつかの実施例において、成分及び属性の数を説明する数字が使用されており、このような実施例を説明するための数字は、いくつかの例において修飾語「約」、「ほぼ」又は「実質的」によって修飾されるものであることを理解されたい。特に明記しない限り、「約」、「ほぼ」又は「実質的」は、上記数字の±20%の変動が許容されることを意味する。よって、いくつかの実施例において、明細書及び特許請求の範囲に使用されている数値パラメータは、いずれも個別の実施例に必要な特性に応じて変化し得る近似値である。いくつかの実施例において、数値パラメータについては、規定された有効桁数を考慮すると共に、通常の丸め手法を適用するべきである。本願のいくつかの実施例において、その範囲を決定するための数値範囲及びパラメータは近似値であるが、具体的な実施例において、このような数値は可能な限り正確に設定される。
【0187】
本願において参照されているすべての特許、特許出願、公開特許公報、及び、論文、書籍、仕様書、刊行物、文書などの他の資料は、その全ての内容が参照により本願に組み込まれる。本願の内容と一致しないか又は矛盾する出願経過文書、及び(現在又は後に本願に関連する)本願の請求項の最も広い範囲に関して限定的な影響を有し得る文書を除いて、その全体が参照により本願に組み込まれる。なお、本願の添付資料における説明、定義、及び/又は用語の使用が本願に係る内容と一致しないか又は矛盾する場合、本願における説明、定義、及び/又は用語の使用を優先するものとする。
【0188】
最後に、本願に係る実施例は、単に本願の実施例の原理を説明するものであることを理解されたい。他の変形例も本願の範囲内にある可能性がある。したがって、限定するものではなく、例として、本願の実施例の代替構成は、本願の教示と一致するように見なされてもよい。よって、本願の実施例は、本願において明確に紹介して説明された実施例に限定されない。
【符号の説明】
【0189】
100 イヤホン
110 固定構造
120 第1のマイクロホンアレイ
130 プロセッサ
111 フック状部
112 胴体部
200 耳部
201 外耳道
202 耳甲介腔
203 耳甲介舟
204 三角窩
205 対耳輪
206 舟状窩
207 耳輪
208 耳たぶ
209 耳輪脚
302 圧力逃がし孔
304 フロントキャビティ
305 バックキャビティ
3121 接続部
3122 保持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19