(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】ブレスレットのクラスプ
(51)【国際特許分類】
A44C 5/18 20060101AFI20240820BHJP
A44C 5/00 20060101ALI20240820BHJP
A44C 5/02 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
A44C5/18 G
A44C5/00 502B
A44C5/02 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023007062
(22)【出願日】2023-01-20
【審査請求日】2023-01-20
(32)【優先日】2022-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】594082512
【氏名又は名称】ブランパン・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ナタン・ロシエ
(72)【発明者】
【氏名】グザビエ・ニデガー
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08789246(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2013/0286797(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102613782(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 5/18
A44C 5/00
A44C 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛体の第1の細長材(1)、第1及び第2の押し部品(320、330)、及びロック機構を備えるブレスレットのクラスプであって、
前記第1の細長材(1)の第1の端(10)は、折畳用の第2の細長材(2)の第1の端(20)にヒンジ接続し、
前記第2の細長材(2)は、前記第2の細長材(2)の第2の端(21)にて前記ブレスレットの第1のストランドを受けるように構成しており、
前記第1の細長材(1)の第2の端(11)は、折畳用の第3の細長材(3)の第1の端(30)にヒンジ接続し、
前記第3の細長材(3)の前記第1の端(30)から第1及び第2のアーム(32、33)が延在しており、
前記第1及び第2のアーム(32、33)にてキャップ(4)がヒンジ接続され、
前記キャップ(4)には、前記キャップ(4)に対して垂直に延在している第1及び第2のフラップ(40、41)と、前記ブレスレットの第2のストランドを保持するための手段があり、
前記第3の細長材(3)は、前記クラスプが閉位置にあるときに前記第2の細長材(2)の前記第2の端(21)を部分的に覆い、
前記第1及び第2の押し部品(320、330)は、前記第1及び第2のアーム(32、33)と一体化しており、
前記ロック機構は、前記押し部品(320、330)に同時に圧力が与えられていないときに、前記第3の細長材(3)を前記第1の細長材(1)上にロックし続けるように構成しており、
前記クラスプには、当接体(23)があり、
前記当接体(23)は、前記クラスプが閉位置にあるときに前記第3の細長材の前記第1及び第2のアーム(32、33)の間に収容されて、前記押し部品(320、330)に同時に圧力が与えられたときに
、前記アーム(32、33)が前記当接体(23)に接触し、それにより前記アーム(32、33)が対称的に離間することを確実にする
ことを特徴とするブレスレットのクラスプ。
【請求項2】
前記当接体(23)は、前記第2の細長材(2)の前記第2の端(21)と剛接続される
ことを特徴とする請求項1に記載のブレスレットのクラスプ。
【請求項3】
前記当接体(23)は、前記第1の細長材(2)と剛接続される
ことを特徴とする請求項1に記載のブレスレットのクラスプ。
【請求項4】
前記当接体(23)は、前記キャップ(4)と剛接続される
ことを特徴とする請求項1に記載のブレスレットのクラスプ。
【請求項5】
前記当接体(23)の幅は、前記押し部品(320、330)のトラベルの長さを定める
ことを特徴とする請求項1に記載のブレスレットのクラスプ。
【請求項6】
前記クラスプが閉位置にあるときに前記第2の細長材(2)を前記第1の細長材(1)に対してロックしたままにするためのロック手段を備え、
前記ロック手段には、フックがある
ことを特徴とする請求項1に記載のブレスレットのクラスプ。
【請求項7】
前記ロック機構は、前記第1の細長材(1)に剛接続される第1のフック対(14、15)と、前記第3の細長材(3)に剛接続される第2のフック対(34、35)と、を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のブレスレットのクラスプ。
【請求項8】
前記第2のフック対(34、35)は、前記アーム(32、33)に剛接続される
ことを特徴とする請求項7に記載のブレスレットのクラスプ。
【請求項9】
前記アーム(32、33)は、その長さの全部又は一部にて横方向にフレキシブルである
ことを特徴とする請求項1に記載のブレスレットのクラスプ。
【請求項10】
請求項1に記載のクラスプを備えるブレスレットを備える
ことを特徴とする腕時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレスレットのクラスプに関し、特に、携行型時計(例、腕時計、懐中時計)のブレスレットに関する。
【背景技術】
【0002】
スイス特許文献CH700356によって、フレキシブルシャフト上の2つのヒンジ接続したアームと一体化された2つの押し部品を備えるクラスプが知られている。このようなクラスプには、加工誤差によってフレキシブルアームが対称的に離間せず、そのために開く機能が適切に行われないことがあるという課題がある。
【0003】
欧州特許文献EP0913106によって、2つの長手方向のメンバーがある剛体のベースと、ブレスレットの1つのストランドに取り付けられるように構成しているキャップと、少なくとも1つの折り畳み用アームと、を備える折り畳み式クラスプが知られており、この折り畳み用アームの後端が第1のヒンジによってベースの片方の端に取り付けられ、前端が第2のヒンジによってキャップに取り付けられる。折り畳み用アームは、押しボタンがある2つの並んで配置されたアームを含み、折り畳み用アームの前端は、弾性要素によって分離される。このようなクラスプには、キャップの遊びが大きすぎてフレキシブルアームの対称的な離間を可能にしないという、上記と同様な課題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、安全上の制約を満たしつつ対称的に離間することを可能にするクラスプを提供することによって、上記課題の全部又は一部を解決することを目的とする。
【0005】
本発明は、さらに、製造が単純で経済的な設計のクラスプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このために、本発明は、剛体の第1の細長材、第1及び第2の押し部品、及びロック機構を備えるブレスレットのクラスプに関し、前記第1の細長材の第1の端は、折畳用の第2の細長材の第1の端にヒンジ接続し、前記第2の細長材は、前記第2の細長材の第2の端にて前記ブレスレットの第1のストランドを受けるように構成しており、前記第1の細長材の第2の端は、折畳用の第3の細長材の第1の端にヒンジ接続し、前記第3の細長材の前記第1の端から第1及び第2のアームが延在しており、この第1及び第2のアームの自由端をシャフトが横断し、前記第1及び第2のアームにてキャップがヒンジ接続され、前記キャップには、前記キャップに対して垂直に延在している第1及び第2のフラップと、前記ブレスレットの第2のストランドを保持するための手段があり、前記第3の細長材は、前記クラスプが閉位置にあるときに前記第2の細長材の前記第2の端を部分的に覆い、前記第1及び第2の押し部品は、前記第3の細長材の前記第1及び第2のアームと一体化しており、前記ロック機構は、前記押し部品に同時に圧力が与えられていないときに、前記第3の細長材を前記第1の細長材上にロックし続けるように構成している。
【0007】
本発明によると、前記クラスプには、当接体があり、前記当接体は、前記クラスプが閉位置にあるときに前記第3の細長材の前記第1及び第2のアームの間に収容されて、前記押し部品に圧力が与えられたときに前記アームが対称的に離間することを確実にする。
【0008】
これらの特徴のおかげで、前記のようなブレスレットのクラスプは、アームの対称的な離間によって、各フレキシブルアームのトラベルを制限して、クラスプの機能を確実にすることができる。
【0009】
本発明の他の有利な代替的実施形態は、以下の特徴を有する。
- 前記当接体は、前記第2の細長材の前記第2の端と剛接続される。
- 前記当接体は、前記第1の細長材と剛接続される。
- 前記当接体は、前記キャップと剛接続される。
- 前記当接体の幅は、前記押し部品のトラベルの長さを定める。
- 前記クラスプは、前記クラスプが閉位置にあるときに前記第2の細長材を前記第1の細長材に対してロックしたままにするためのロック手段を備え、前記ロック手段には、フックがある。
- 前記ロック機構は、前記第1の細長材に剛接続される第1のフック対と、前記第3の細長材に剛接続される第2のフック対と、を含む。
- 前記第2のフック対は、前記アームに剛接続される。
- 前記アームは、その長さの全部又は一部にて横方向にフレキシブルである。
【0010】
本発明は、さらに、本発明に係るクラスプを備えるブレスレットを備える腕時計に関する。
【0011】
添付の図面を参照しながら例として与えられる本発明の特定の実施形態についての以下の説明を読むことによって、本発明の別の特徴及び利点が明らかになる。なお、これに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】開位置にある本発明に係るクラスプを上方から見た斜視図である。
【
図2】閉位置にある本発明に係るクラスプを上方から見た斜視図である。
【
図3】開位置にある本発明に係るクラスプを下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1~5を同時に参照しながらブレスレットのクラスプについて説明する。
【0014】
図1及び4は、ブリッジ16によって互いに接続される2つの長手方向メンバー1a及び1bがある剛体の第1の細長材1を備えるブレスレットのクラスプの斜視図である。この細長材1の第1の端10は、シャフト12を介して折畳用の第2の細長材2の第1の端20にヒンジ接続される。この第2の細長材2は、この第2の細長材2の第2の端21にて、シャフト12を利用してブレスレットの第1のストランドを受けるように構成している。
【0015】
第1の細長材1の他方の端11は、折畳用の第3の細長材3の第1の端30にヒンジ接続され、第3の細長材3は、クラスプが閉位置にあるときに、第2の細長材2の第2の端21を部分的に覆う。
【0016】
第3の細長材3の第1の端30から、互いに並進して動く第1のアーム32と第2のアーム33が延在している。図示していない本発明の代替的実施形態の1つにおいては、第1の細長材1は中実であり、この第1の細長材1には、アーム32及び33を受けるように構成しているロック手段を備える受容体があることができる。
【0017】
また、クラスプには、キャップ4があり、このキャップ4は、アーム32及び33にてヒンジ接続され、キャップ4に対して垂直に延在している第1のフラップ40と第2のフラップ41を備える。フラップ40及び41には、穴42及び43があり、これらの穴42及び43は、押し部品320、330の端を受けるように構成しており、これによって、アーム32、33と、キャップ4の間にヒンジ接続を形成する。
【0018】
キャップ4には、図面に示しているようなスラグ44や棒体のようなブレスレットの第2のストランドを保持するための手段があることができ、これによって、ブレスレットの第2のストランドの始点を定める。
図4は、第1のアーム32と第2のアーム33に接続される第1及び第2の押し部品320、330を示している。
【0019】
ロック機構は、押し部品320と押し部品330に同時に圧力が与えられていないときには、第3の細長材3を第1の細長材1上に保持するように構成している。このために、第1の細長材1の長手方向メンバー1a及び1bにはそれぞれ、アーム32及び33にそれぞれあるフック34及び35と連係するように構成している固定されたフック14及び15がある。
図2及び4において、この連結を観察することができる。
【0020】
本発明によると、このクラスプには、当接体23があり、この当接体23は、クラスプが閉位置にあるときに、第3の細長材の第1及び第2のアーム32、33の間にて、特に、押しボタン320、330を受ける第1及び第2アーム32、33の端の間にて、収容されるように又は配置されるように構成している。
【0021】
第1の実施形態において、当接体23は、第2の細長材2の第2の端21に配置され、この当接体23は、クラスプが閉位置にあるときに、第3の細長材の第1のアーム32と第2のアーム33の間に配置される。
【0022】
第2の実施形態において、当接体23は、第1の細長材1の中央領域にて、2つの長手方向メンバー1a及び1bを接続するブリッジ16上に配置される。
【0023】
図2及び4に示しているようにクラスプが折り畳まれた状態、すなわち、閉位置にあるときに、押し部品320、330を受けるアーム32、33の各端は、押し部品320、330に圧力が与えられたときに、当接体23と接触する。このように、当接体23のおかげで、アーム32及び33の自由端のトラベルを限定することが可能になり、このアーム32、33の端と当接体23の間の距離が、アーム32及び33の自由端のトラベルの長さを定める。このようにして、必要なアーム32、33のトラベルの長さを事前に決めて、アーム32、33の対称的な運動を得るとともに、クラスプが適切に開くことを確実にすることができる。
【0024】
押し部品320及び330に圧力が与えられたときに、アーム32、33が対称的に離間してクラスプがロック解除され、当接体23のおかげで、各アーム32、33のトラベルを制限し、これによって、クラスプが適切に開かれることが確実になる。
【0025】
当接体23がなければ、押し部品320、330に与えられる異なる又は同様な圧力によっては、クラスプを適切に開くことを可能にするためにアームを適切に動かすことができないことがわかる。例えば、着用者が押し部品330に与える圧力よりも大きい圧力を押し部品320に与えるときに、フレキシブルアーム32の自由端が、他方のフレキシブルアーム33の自由端と接触して、クラスプが適切に開くことを妨げることがある。
【0026】
結果的に、本発明に係るクラスプを開くためには、着用者は、フレキシブルアーム32、33の自由端が当接体23と接触するまで、2つの押し部品320、330に対して2つの圧力を同時に与えるだけでよい。そして、アーム32及び33のフック34及び35が長手方向メンバー1a及び1bのフック14及び15から解放され、これによって、第3の細長材3の解放とクラスプを開くことをトリガーさせる。
【0027】
当然、本発明は、示した例に限定されるものではなく、当業者に明らかな様々な代替的形態や改変が可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 剛体の第1の細長材
2 折畳用の第2の細長材
3 折畳用の第3の細長材
4 キャップ
12 シャフト
14、15 第1のフック対
23 当接体
32、33 第1及び第2のアーム
34、35 第2のフック対
40、41 第1及び第2のフラップ
320、330 第1及び第2の押し部品