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特許7541141長尺製品を冷却するための装置を使用して長尺製品を冷却する方法
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  • 特許-長尺製品を冷却するための装置を使用して長尺製品を冷却する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】長尺製品を冷却するための装置を使用して長尺製品を冷却する方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 45/02 20060101AFI20240820BHJP
   B21B 37/76 20060101ALI20240820BHJP
   C21D 11/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B21B45/02 320M
B21B37/76 B
B21B37/76 C
B21B45/02 320Z
C21D11/00 104
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023026453
(22)【出願日】2023-02-22
(62)【分割の表示】P 2021073313の分割
【原出願日】2021-04-23
(65)【公開番号】P2023093419
(43)【公開日】2023-07-04
【審査請求日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】10 2020 205 252.2
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521177751
【氏名又は名称】コックス・テヒニク・ゲーエムベーハー・ウント・コ・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アリ・ビンダーナゲル
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ・デデケン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・クルーゼ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・シュック
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2003/012151(WO,A1)
【文献】特開2004-218953(JP,A)
【文献】特開平02-104458(JP,A)
【文献】特開昭58-090314(JP,A)
【文献】特開昭62-093021(JP,A)
【文献】特開平11-197729(JP,A)
【文献】特開2011-156575(JP,A)
【文献】特開平06-122015(JP,A)
【文献】特開昭61-249562(JP,A)
【文献】特開昭57-120624(JP,A)
【文献】米国特許第05907967(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 1/00-99/00
C21D 9/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間圧延されたロッド、ワイヤ、チューブ、またはプロファイルを、装置(100)を使用して冷却するための方法であって、該装置(100)が、
- 冷却剤を供給するための冷却剤供給ライン(42)と、
- 個々に調節可能な制御バルブ(90)を介して前記冷却剤供給ライン(42)に各々接続された複数の冷却デバイス(70)であって、前記冷却デバイス(70)の冷却剤送達が、それぞれの前記制御バルブ(90)の開放の程度にそれぞれ依存する、複数の冷却デバイス(70)と、
- 前記熱間圧延されたロッド、ワイヤ、チューブ、またはプロファイルの表面温度を中心温度と均一にするために前記複数の冷却デバイスにおける各2つのもの同士間に設けられた均一化セクションと、
を備え、
さらに、前記冷却剤供給ライン(42)が、前記冷却剤供給ライン(42)から前記冷却デバイス(70)への冷却剤を開放するか又はシャットオフするためにシャットオフバルブ(102)を備えており、
移動方向に沿った前記冷却剤送達の分配が、前記制御バルブ(90)の開放の前記程度を個々に設定することによって柔軟に調節され
前記冷却剤送達が、前記冷却剤供給ライン(42)において測定された圧力、および、前記制御バルブ(90)の一つと該制御バルブによって制御される前記冷却デバイス(70)との間において測定された圧力を用いて調節されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記制御バルブ(90)の開放の前記程度が、継続的に調節可能であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記冷却剤供給ライン(42)から供給される前記冷却剤が、完全に前記冷却デバイス(70)によって送達されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記冷却剤供給ライン(42)から供給される前記冷却剤の総量が前記冷却デバイス間で分けられることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記装置(100)が、前記冷却剤供給ライン(42)内での前記冷却剤の圧力を測定するための測定デバイス(104)及び/又は前記制御バルブ(90)の1つとそれぞれの前記冷却デバイス(70)との間の前記冷却剤の圧力を測定するための測定デバイス(106)及び/又は前記装置(100)内での前記熱間圧延されたロッド、ワイヤ、チューブ、またはプロファイルの1つの温度を測定するための測定デバイスをさらに備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
複数の冷却デバイス(70)が、前記移動方向に沿って前記熱間圧延されたロッド、ワイヤ、チューブ、またはプロファイルのエリアを各々冷却するために、前記移動方向において順々に配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記装置(100)が、前記装置(100)内で長尺製品の位置を決定するための測定デバイスをさらに備えていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法において、
- 前記移動方向に沿った所定位置で長尺製品の温度を指定するステップと;
- 前記移動方向に沿った所定位置で前記長尺製品の温度を測定するステップと;
- 前記長尺製品の所定エリアでの冷却状態を設定するために、前記指定された温度と前記測定された温度との間の比較に基づいて冷却デバイス(70)の冷却剤送達を設定するステップと;
を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
前記冷却剤送達を調節するステップが、前記制御バルブ(90)の1つ以上の開放の程度を調節するステップを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記冷却剤送達が、前記制御バルブ(90)の特性曲線を使用して調節されることを特徴とする請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記冷却剤送達が、前記冷却剤供給ライン(42)内で測定された圧力及び/又は前記制御バルブ(90)の1つと前記制御バルブ(90)の1つによって制御される前記冷却デバイス(70)との間で測定された圧力を使用して調節されることを特徴とする請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記冷却剤送達が、前記冷却デバイス(70)の前の前記長尺製品の温度及び/又は前記冷却デバイス(70)の後の前記長尺製品の温度を使用して調節されることを特徴とする請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記冷却剤送達が、リアルタイムで調節されることを特徴とする請求項8から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記冷却剤送達が、制御デバイスによって調節されることを特徴とする請求項8から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記冷却剤送達が、前記移動方向に沿った前記長尺製品の特定された位置に基づいて調節されることを特徴とする請求項8から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺製品を冷却するための装置、長尺製品を冷却するための方法及び冷却デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ロッド、ワイヤ及びチューブを熱間圧延するときには、いわゆる冷却セクションが使用される。これら冷却セクションは、熱間圧延された製品の冷却を通じて特定の方式で金属の微細構造に影響を与えるために働く。圧延ミルでは、このような冷却セクションが、圧延トレインの個々の圧延スタンドの前又は後のさまざまな位置に配置され、通常、ウォーターボックス及び続く均一化セクションから成る。ウォーターボックスは、長尺製品を冷却するために働く。冷却が、圧延された製品の表面を冷却することによって達成されるので、均一化セクションは、標準的に、ウォーターボックスの後に配置され、均一化セクションでは、減少した表面温度が、製品の内部の温度と等しくなる。
【0003】
この開示のために、長尺製品は、それら製品の長さにわたって一定の断面を有する、圧延、絞り又は鍛造によって製造された半完成の金属製品であり、これら製品は、それら製品の長さが厚さ/高さ及び幅よりも非常に大きいので、フラットな製品ではない。特に、これは、ロッド、ワイヤ、チューブ及びプロファイルを含む。
【0004】
この開示のために、処理ライン又は圧延ラインは、実質的に直線の経路又は経路の実質的に直線のセクションであると理解され、この経路に沿って、長尺製品は、処理装置内で移動することができる。
【0005】
冷却セクションを通る途中で、長尺製品は、異なる冷却及び均一化セクションを通過する。均一化セクションを提供することなく表面を過度に冷却することは、材料の内部は高温のままである一方で表面をいわば“凍結”させ、これは、最終製品が不適切な微細構造を有することにつながる可能性がある。
【0006】
従って、最終製品の微細構造は、特に冷却レジームによって影響を与えられる。これは、第1に、前記均一化セクションが、各冷却デバイスの後に設けられなければならないことと、第2に、複数の冷却デバイスには、それら冷却デバイスの間に配置された均一化セクションが設けられる必要がある可能性があることと、を意味する。これは、冷却セクション内での長尺製品の冷却が、所望の冷却プロセスを実現するために、長尺製品が装置を通過するときに細かく制御されなければならないことをさらに意味する。必要とされる冷却は、最終製品にかけられた要件に応じて異なる。
【0007】
この理由のために、冷却セクションは、複数の冷却デバイスを備え、これら冷却デバイスの各々には、冷却剤が供給され、冷却デバイスは、複数の冷却デバイスを通過する長尺製品の表面に冷却剤を送達し、長尺製品を冷却する。
【0008】
例えば、特許文献1は、複数の冷却デバイスによる、熱間圧延されたシート又は金属ストリップの制御された冷却のための装置を開示している。しかしながら、特許文献1は、一方では、制御された方式で長尺製品を冷却するいかなる可能性も開示していない。他方では、圧延された製品の移動方向に沿って個々のエリアの冷却状態を個々に制御する先行技術における可能性が開示されていない。
【0009】
しかしながら、個々のエリアの冷却状態のこのような制御又は調整は、例えば制御されたかつ/又は調整された冷却レジームを通じて所望の方式で微細構造に影響を与えるために、必要である。
【0010】
さらに、長尺製品の場合には、長尺製品の全範囲にわたって一様な冷却状態を提供することが特に望ましい。本出願の発明者らは、長尺製品の範囲に沿った非一様な冷却が、先行技術には示されていない異なる微細構造をもたらすことを認識した。
【0011】
最適な冷却結果を得るために、冷却セクションが、冷却されるべき長尺製品に適合されることが重要である:冷却セクションには、通常、順々に同軸上に配置された複数の環状冷却デバイス、例えば冷却ノズルと、1つ以上の水除去ノズルと、があり、熱間圧延材が、これらを中心で通過する。従って、非常に多くの水が、冷却チューブが完全に充填する環状間隙を通じて、これら冷却ノズル内に噴射される。水量は、通常、50m3/hのオーダーである。圧延材は、圧延材の全周にわたって一様な冷却結果を得るために、冷却チューブを通って可能な限り中心でガイドされることが不可欠である。
【0012】
圧延材と冷却チューブとの間において冷却剤で充填された環状間隙が、所定のサイズよりも大きくないこと又は小さくないことも重要である。この理由のために、異なる内径を有する複数の冷却デバイスを使用し、これら冷却デバイスの各々が、異なる圧延材の断面に適していることが必要である。例えば、3つの異なる冷却チューブの直径は、許容可能な品質で直径が20mmから100mmに及ぶ圧延材のための製品範囲をカバーするために必要とされる。
【0013】
特定の圧延材断面に各々適した複数の冷却セクションであって、複数の冷却セクションが、製品を変更する場合に処理ライン上で迅速に据え付けられかつ取り外されるように相互交換可能である、冷却セクションを提供すると都合がよいことが分かった。製品の変更は、1日に数回行われる可能性があるので、このような変更プロセスの速度は、この時間の間に圧延トレインがシャットダウンされなければならないので、圧延トレインの効率のために決定的に重要である。
【0014】
異なる製品要件に起因して、長尺製品のための熱間圧延トレインでは、インライン熱処理の全製品プログラムが、常に適用されるわけではない。例えば、冷却セクションに設けられた冷却デバイスの一部のみが、長尺製品を冷却するために必要とされることもある。
【0015】
さらに、異なる長尺製品の直径のために異なる冷却剤流量を設定し、長尺製品の寸法及び熱容量に配慮することが必要であることもある。これは、冷却デバイスによって送達される冷却剤体積の相当細かい調節を要求する。しかしながら、このようなバルブの調節機能は、バルブの動作点に依存する。例えば、小さい体積範囲内で体積流れを制御することは、複数のDN65バルブよりも1つのDN200バルブでは安定性が乏しい。
【0016】
先行技術の別の問題は、長尺製品の直径にわたる長尺製品の非一様な冷却である。冷却剤は、通常、長尺製品を冷却するために、ノズル間隙を通じて長尺製品に適用される。しかしながら、これは、冷却水が長尺製品に衝突するポイントでは強力な冷却が行われ、衝突ポイントにおいて硬化構造の形成につながる可能性がある一方で、長尺製品の範囲に沿った他のポイントでは、より小さい冷却が行われ、このため長尺製品の範囲に沿って冷却状態が非一様になるという影響を有する。本出願の発明者らの考えによれば、このような非一様さは、望ましくない微細構造状態、従って、最終製品の望ましくない金属特性につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】欧州特許第2274113号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
この背景に対抗して、本発明の課題は、熱間圧延された長尺製品の微細構造を可能な限り柔軟に設定することができる、長尺製品を冷却するための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この課題は、請求項1に記載の装置及び請求項8に記載の方法によって解決される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項からもたらされる。
【0020】
本発明の第1の側面によれば、移動方向に沿って長尺製品を冷却するための装置が提供される。装置は、冷却剤を供給するための冷却剤供給ラインと、個々に調節可能な制御バルブを介して冷却剤供給ラインに各々接続された複数の冷却デバイスであって、冷却デバイスの冷却剤送達が、それぞれの制御バルブの開放の程度にそれぞれ依存する、冷却デバイスと、を有し、移動方向に沿った冷却剤送達の分配が、制御バルブの開放の程度を個々に設定することによって柔軟に調節され得る。
【0021】
冷却剤は、好ましくは水である。
【0022】
冷却デバイスは、冷却されるべき長尺製品に冷却剤を適用するために働く。冷却デバイスの各々が、個々に調節可能な制御バルブを介して冷却剤供給ラインに接続されているので、このような接続された各々の冷却デバイスによる長尺製品への冷却剤送達は、それぞれの制御バルブの開放の程度を調節することによって調節され得る。
【0023】
これに関連して、用語“冷却剤送達”は、冷却剤流量、すなわち単位時間当たりの冷却剤体積を意味する。
【0024】
これに関連して、制御バルブは、動作点付近の範囲において、バルブの開放の程度を変更することによってバルブを通過する冷却剤体積を調節することができるバルブを意味する。
【0025】
これに関連して、“冷却剤送達の分配”は、冷却剤供給ラインによって供給される所与の冷却剤送達について、個々の冷却デバイスに割り当てられた送達される冷却剤送達の割合が、それぞれの制御バルブの個々の設定によって決定されることを意味する。
【0026】
従って、冷却デバイスが、長尺製品の移動方向に沿って配置される場合、長尺製品における要求される微細構造に適合された冷却レジームは、長尺製品の異なるエリア又は冷却装置の異なるエリアで制御バルブを制御又は調整することによって、設定され得る。
【0027】
複数の調節可能又は制御可能なバルブを提供することは、単一の中央バルブで可能とされるものよりも、冷却状態をより細かく調節することを可能にする。従来の装置では、冷却デバイスの冷却剤送達は、単一のバルブによって中央で制御される一方で、個々の冷却デバイス上に複数の制御バルブを提供することによって、冷却状態は、正確に調節され得る:例えば複数の冷却デバイスによって冷却セクションにわたって総冷却剤送達を制御する中央制御バルブが、必然的に、最大冷却剤流れ及び最小冷却剤流れ双方を全ての冷却デバイスに供給するのに十分な体積流れ範囲内での動作範囲のために設計される。しかしながら、このような大きい動作範囲は、冷却剤比率の細かい調節が、最小冷却剤流れから最大冷却剤流れまでの全体的な体積範囲にわたって可能ではないことを意味する。対照的に、各々が単一の冷却デバイスに供給される冷却剤の比率にのみ作用する複数の制御バルブを提供することは、個々の制御バルブの各々が、より狭い動作範囲を有し、供給される冷却剤の量が、この動作範囲内で、より正確に調節されるという利点を有する。言い換えると、移動方向に沿った冷却状態のより良好な制御は、より広い動作範囲を有する中央バルブよりも狭い動作範囲を各々有する複数の個々の制御バルブを有することによって達成され得る。
【0028】
好ましくは、少なくとも1つの制御バルブ、好ましくは複数の制御バルブの開放の程度は、継続的に調節可能である。
【0029】
これに関連する継続的な調節機能は、通常の製造許容範囲及び制御許容範囲内での任意の種類の継続的な調節を意味する。
【0030】
特に、これは、制御バルブが、完全に閉鎖された設定及び完全に開放した設定に加えて、少なくとも1つの範囲であって、制御バルブの開放の程度を変更することが、この範囲内で、もたらされる流量の継続的な変化を引き起こす、範囲を有するバルブであることを意味する。
【0031】
好ましくは、冷却デバイスからの総冷却剤送達は、冷却剤供給ラインから供給される総冷却剤と同じである。
【0032】
これは、冷却剤供給ラインによって供給された冷却剤の総量が、冷却デバイス間で分けられることを意味する。一方では、これは、個々の冷却デバイスへの総冷却剤流れの分配が、冷却デバイスの制御バルブの開放の程度を設定することによって調節されるという効果を有する。他方では、これは、冷却装置の全体的な冷却容量が、冷却剤供給ライン内で総冷却剤流れを調節することによって定義され、個々のエリアへの正しい分配が、冷却デバイス上の制御バルブによって決定されるという効果を有する。
【0033】
冷却剤供給ラインは、好ましくは、規定された冷却剤比率で冷却剤供給ラインを通って冷却デバイスへ冷却剤を供給することを可能にするか又は防止するために、シャットオフバルブを有する。
【0034】
シャットオフバルブは、特に、“オンオフバルブ”、すなわち2つの設定、すなわち規定された流量がバルブを通過することを可能にされる開放設定と、体積流れが完全に防止されるシャットオフ設定と、を厳密に有するバルブを意味する。
【0035】
特に、用語“シャットオフバルブ”は、ここではシャットオフバルブを用語“制御バルブ”と区別するために使用され:バルブを非常にゆっくりと開放させることによって、シャットオフバルブは、上述した規定された流量に相当せずかつシャットオフ状態でのゼロ流れにも相当しない流量が通過することを可能にする一方で、完全開放と完全閉鎖との間の中間状態が定義されないので、このようなバルブは、それにもかかわらず、本開示の意味では制御バルブではないことは当業者には明らかである。
【0036】
装置は、好ましくは、冷却剤供給ライン内での冷却剤の圧力を測定するための測定デバイス及び/又は制御バルブとそれぞれの冷却デバイスとの間の冷却剤の圧力を測定するための測定デバイス及び/又は通過中の、すなわち装置内での長尺製品の温度を測定するための測定デバイスをさらに備えている。
【0037】
制御バルブの上流及び/又は下流でこのような測定デバイスにより冷却剤圧力を測定することによって、特に制御バルブの特性曲線及び/又は制御バルブの開放の程度が分かっている場合、制御バルブによって設定された冷却剤送達に関する結果が引き出され、この結果が、冷却状態を調整、制御又は設定するために使用され得る。
【0038】
温度測定デバイスによって測定されたワークピースの温度、特に冷却デバイスの冷却によって影響を与えられるポイントでの温度は、冷却デバイスに供給される冷却剤の量を設定するための基礎として働き得る。
【0039】
冷却デバイスは、好ましくは、移動方向に沿って一度に長尺製品の1エリアを冷却するために、移動方向において順々に配置される。
【0040】
複数の冷却デバイスを順々に配置することによって、ワークピースは、例えば第1冷却デバイスによって第1表面温度に冷却され、その後、その表面温度が、均一化セクションにおいて中心温度と均一化され、その後、第2冷却デバイスによって第2表面温度に冷却され得るなどとなる。このように複数の冷却デバイスを順々に配置することを通じて、強い熱消散が、望ましくない微細構造が生じる程度まで個々の冷却デバイスによって長尺製品の表面が冷却されることなく、実現され得る。
【0041】
装置は、好ましくは、通過中に、すなわち装置内で長尺製品の位置を決定するための測定デバイスをさらに備える。
【0042】
長尺製品の位置を決定することによって、冷却レジームは、長尺製品の寸法が分かっている場合に、ワークピースに適合させられ得る。さらに、位置を決定することによって、例えば、長尺製品が現在冷却されない、これら冷却デバイスをオフにすることが可能であり、それにより、装置をよりエネルギー効率よくしかつ環境にやさしくすることを支援する。
【0043】
本発明の別の側面によれば、上述した装置を使用して長尺製品を冷却するための方法であって、
- 移動方向に沿った所定位置で長尺製品の温度を指定するステップと;
- 移動方向に沿った所定位置で長尺製品の温度を測定するステップと;
- 長尺製品の所定エリアでの冷却状態を設定するために、指定された温度と測定された温度との間の比較に基づいて冷却デバイスの冷却剤送達比率を設定するステップと;
を含む方法が提供される。
【0044】
温度が指定及び測定される、移動方向に沿った2つの位置は、好ましくは同じ位置である。しかしながら、これは、必ずしも要求されない。例えば、材料特性を知ることによって、第1位置で測定された温度から別の位置での温度を推定することが可能である。
【0045】
冷却状態は、例えば、単位時間当たりに長尺製品の所定エリアに適用される冷却剤の量である。しかしながら、冷却状態は、例えば長尺製品の規定された熱消散量に基づいて又は長尺製品の所定エリアもしくは体積に対して規格化された冷却剤量もしくは熱消散量に基づいて、別の方式でも定義され得る。
【0046】
温度が測定される位置は、長尺製品の移動方向において冷却デバイスの前及び後の双方に配置され得る。冷却デバイスの前での測定により、方法は制御方法と解釈される一方で、冷却デバイスの後での測定により、方法は調整(フィードバック制御)方法と解釈され、特定の位置において指定された温度と測定された温度との間の差は、制御ループの制御のずれと解釈され、このずれに基づいて、冷却デバイスと関連付けられた制御バルブによる冷却剤送達が調節され、冷却剤送達の調節は、好ましくは、それぞれの制御バルブの開放の程度の調節を含む。
【0047】
冷却剤送達は、好ましくは、制御バルブの特性曲線を使用して調節される。特性曲線の正しい知識は、上記方法による調整又は制御のためには完全には必要ではないが、制御バルブの特性曲線の知識は、開放の程度のより正確な調節を可能にする。しかしながら、制御バルブの正しい特性曲線が分からない場合、推定された特性曲線又は推定された応答挙動が制御バルブを調節するために使用され得る。
【0048】
冷却剤送達は、好ましくは、冷却剤ライン内で測定された圧力及び/又は制御バルブと冷却デバイスとの間で測定された圧力を使用して調節される。
【0049】
これらのパラメータの1つを使用することで、特に制御バルブの特性曲線が分かっている場合に、冷却状態設定の精度を増大させる。
【0050】
冷却剤送達比率は、好ましくは、冷却デバイスの前の長尺製品の温度及び/又は冷却デバイスの後の長尺製品の温度を使用して調節される。
【0051】
上述したように、このような調節は、冷却剤送達が制御又は調整されることを可能にする。特に、冷却デバイスの前及び後の温度を使用する場合、冷却剤送達は、冷却デバイスを横切る温度差に基づいて冷却デバイスの冷却容量に関して結論が引き出され得るので、特に正確に設定され得る。
【0052】
冷却剤送達は、好ましくはリアルタイムで調節される。これは、所望の冷却状態からのずれに対する迅速かつタイムリーな反応を可能にする。
【0053】
冷却剤送達は、好ましくは、制御又は調整デバイス、特に電子制御又は調整デバイスによって調節される。電子制御又は調整デバイスは、例えば測定データを処理するコンピュータであって、コンピュータ内に前もって格納されていたデータとともにこの処理データに基づいて制御バルブを調節する、コンピュータによって提供され得る。
【0054】
冷却剤送達は、好ましくは、移動方向に沿った長尺製品の特定の位置に基づいて調節される。
【0055】
上述したように、冷却剤送達における位置に依存する調節は、一方では、長尺製品の寸法及び最終製品にかけられる要件に対して冷却状態をより正確に調節することを可能にし、他方では、冷却デバイスのエリアに長尺製品がない場合には冷却剤を節約する。
【0056】
本発明のさらなる利点及びさらなる発展は、図の以下の説明及び特許請求の範囲の全体から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】本発明の一実施形態による冷却装置の概略的な回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は、本発明の一実施形態による冷却装置の回路図を概略的に示す。
【0059】
本発明の一実施形態による、長尺製品を冷却するための装置100は、複数の冷却デバイス70を備えている。冷却デバイスは、例えば、装置を通過する長尺製品の移動方向に沿って順々に配置され得る。しかしながら、本発明は、このような形態に限定されない。例えば、冷却デバイス70は、異なる長尺製品を冷却するために、いくつかの独立した処理ライン上にも配置され得る。
【0060】
図1に示される長尺製品を冷却するための装置100では、長尺製品のための移動方向は、装置100によって定義される。装置は、冷却剤を供給するための冷却剤供給ライン42と、個々に調節可能な制御バルブ90を介して冷却剤ライン42に各々接続された複数の冷却デバイス70と、を有し、複数の冷却デバイス70の各々の冷却剤送達比率は、それぞれの制御バルブ90の開放の程度に依存し、このため、冷却剤比率は、制御バルブ90の開放の程度を調節することによって移動方向に沿って柔軟に分配され得る。
【0061】
冷却デバイス70は、制御バルブ90を介して冷却剤ライン42に各々接続されている。各制御バルブ90は、冷却剤ライン42から冷却デバイス70へ送達される冷却剤比率を、その制御範囲で継続的に制御するように構成される。
【0062】
示される実施形態では、3つの冷却デバイス70が、移動方向に順々に配置される。しかしながら、本発明は、これに限定されない:第1に、冷却デバイス70の数が変更され得る。例えば、7つの冷却デバイス70を有する実施形態がうまくいくとこが分かっている。第2に、1つの冷却剤供給ライン42によって供給される冷却デバイス70の全てが、同じ処理ライン上に配置される必要はない;むしろ、冷却剤供給ライン42は、長尺製品のための複数の異なる処理ライン上に冷却デバイス70を配置することによって、複数の処理ラインに冷却剤を供給することも可能であり、この場合、異なる処理ラインに冷却剤供給ライン42によって供給される冷却剤は、制御バルブ90の開放の程度を調節することによって分配される。
【0063】
冷却剤供給ライン42への冷却剤供給は、シャットオフバルブ102によって可能とされかつ防止され得る。シャットオフバルブ102は、例えば、ボールバルブ又は冷却剤の体積流れを可能にするか又は防止する他のバルブであってもよい。
【0064】
冷却剤供給ライン42内での冷却剤の圧力は、圧力測定デバイス104によって測定され得る。
【0065】
圧力測定デバイス106は、各制御バルブ90の後の冷却剤のそれぞれの圧力を測定することができる。これに関連して、各制御バルブ90の“後”は、冷却剤の流れ方向において制御バルブ90の下流にある位置を意味する。図1に示される実施形態では、この位置は、制御バルブ90とそれぞれの冷却デバイス70との間である。しかしながら、同時に、圧力測定デバイス106の配置の他の形態も可能であり;例えば、圧力測定デバイス106は、冷却デバイス70内に配置され得る。
【0066】
従って、各圧力測定デバイス106は、長尺製品に向かって冷却デバイス70によって送達されるべき冷却剤の圧力を測定することができる。圧力測定デバイス104は、冷却剤供給ライン42内で、すなわち各制御バルブ90の前に広がる圧力を測定することができる。圧力測定デバイス104によって測定された圧力と圧力測定デバイス106の1つによって測定された圧力との間の差を計算することによって、それぞれの制御バルブ90を横切る圧力の減少を決定することが可能である。圧力測定デバイス106によって測定された圧力は、冷却デバイス70によって送達される冷却剤比率と相関し、このため、冷却剤比率は、圧力差から決定され得る。
【0067】
従って、個々の各制御バルブ90の開放の程度を個々に調節することによって、個々の冷却デバイス70への冷却剤比率の分配が、冷却剤供給ライン42を通る所与の冷却剤比率に対して設定され得る。結果として、移動方向に沿って装置100を通過する長尺製品は、異なる冷却比率で装置100の異なるエリアで冷却され得る。例えば、長尺製品は、移動方向における第1冷却デバイス70では、前記第1冷却デバイス70によって送達される冷却剤の低い比率によって弱く冷却され、その後、移動方向における次の冷却デバイス70では、前記次の冷却デバイス70によって送達される冷却剤のより高い比率によってより強く冷却されてもよい。長尺製品は、移動方向に沿って動くので、冷却比率は、通過する長尺製品に関する装置100内での冷却剤比率の局所的に細かい調節を通じて経時的に調節され得る。このような調節は、実際には動作パラメータに基づいても推定され得るが、装置を通過する長尺製品の位置を測定又は決定するためのデバイスを提供することが好ましく、それにより長尺製品の位置を決定し、経時的な長尺製品の温度変化は、より細かく調節され得る。
【0068】
経時的な温度変化の特定の設定は、最終製品にかけられる要件に依存する。
【符号の説明】
【0069】
42 冷却剤供給ライン、70 冷却デバイス、90 制御バルブ、100 装置、102 シャットオフバルブ、104 圧力測定デバイス、106 圧力測定デバイス
図1