(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 647A
H01L21/304 651B
(21)【出願番号】P 2023061903
(22)【出願日】2023-04-06
(62)【分割の表示】P 2019050214の分割
【原出願日】2019-03-18
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2018119092
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 悠太
(72)【発明者】
【氏名】尾辻 正幸
(72)【発明者】
【氏名】藤原 直澄
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 佑
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 弘明
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-243869(JP,A)
【文献】特開2015-050414(JP,A)
【文献】特開2017-139279(JP,A)
【文献】特開2015-185713(JP,A)
【文献】特開2013-016699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を経ずに気体に変化する昇華性物質と前記昇華性物質と溶け合う溶媒とを含む溶液である乾燥前処理液
であって、前記昇華性物質の濃度が初期濃度の前記乾燥前処理液をパターンが形成された基板の表面に供給する乾燥前処理液供給工程と、
前記基板の表面全域が前記乾燥前処理液の液膜で覆われた状態を維持しながら前記基板の表面上の前記乾燥前処理液の一部を除去して前記基板上の前記乾燥前処理液の膜厚を減少させる膜厚減少工程と、
前記基板を凝固体形成速度で回転させることによって、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液から前記溶媒を蒸発させ
、前記溶媒を蒸発させることによって、前記乾燥前処理液中の前記昇華性物質の濃度を増加させながら前記乾燥前処理液の膜厚を減少させることで前記昇華性物質を含む凝固体を前記基板の表面上に形成する凝固体形成工程と、
前記凝固体を昇華させることにより前記基板の表面から除去する昇華工程とを含み、
前記凝固体形成速度の値が同じで、前記初期濃度の値が異なる、複数の処理条件のうちのいずれか1つにしたがって前記乾燥前処理液供給工程および凝固体形成工程を行うことにより、前記凝固体の凝固時の厚みが極薄であり、前記パターンの高さに対する前記凝固体の凝固時の厚みの割合を百倍した値
が76を超え、219未満である
前記凝固体を形成する、基板処理方法。
【請求項2】
前記複数の処理条件は、前記初期濃度以外の全ての条件が同じである、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記複数の処理条件のいずれも、前記値が76を超え、219未満である前記凝固体が形成される条件である、請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
極薄である前記凝固体の凝固時の厚みは、0を超える1μm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板を処理する基板処理方法および基板処理装置と、基板の表面を乾燥させる前に基板の表面に供給される乾燥前処理液とに関する。処理対象の基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板、有機EL(electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel Display)用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程では、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの基板に対して必要に応じた処理が行われる。このような処理には、薬液やリンス液などの処理液を基板に供給することが含まれる。処理液が供給された後は、処理液を基板から除去し、基板を乾燥させる。基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置では、基板の高速回転によって基板に付着している液体を除去することにより、基板を乾燥させるスピンドライが行われる。
【0003】
基板の表面にパターンが形成されている場合、基板を乾燥させるときに、基板に付着している処理液の表面張力に起因する力がパターンに加わり、パターンが倒壊することがある。その対策として、IPA(イソプロピルアルコール)などの表面張力が低い液体を基板に供給したり、パターンに対する液体の接触角を90度に近づける疎水化剤を基板に供給したりする方法が採られる。しかしながら、IPAや疎水化剤を用いたとしても、パターンを倒壊させる倒壊力が零にはならないので、パターンの強度によっては、これらの対策を行ったとしても、十分にパターンの倒壊を防止できない場合がある。
【0004】
近年、パターンの倒壊を防止する技術として昇華乾燥が注目されている。たとえば特許文献1には、昇華乾燥を行う基板処理方法および基板処理装置が開示されている。特許文献1に記載の昇華乾燥では、昇華性物質の溶液が基板の上面に供給され、基板上のDIWが昇華性物質の溶液に置換される。その後、昇華性物質の溶媒を乾燥させて、昇華性物質を析出させる。これにより、固体の昇華性物質からなる膜が基板の上面に形成される。特許文献1の段落0028には、「昇華性物質からなる膜の膜厚「t」は、パターンの凸状部101を十分に覆う限りにおいて、なるべく薄くすることが好ましい。」との記載がある。固体の昇華性物質からなる膜が形成された後は、基板が加熱される。これにより、基板上の昇華性物質が昇華して、基板から除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、昇華乾燥は、基板の高速回転によって液体を除去するスピンドライやIPAを用いるIPA乾燥などの従来の乾燥方法に比べてパターンの倒壊率が低い。しかしながら、パターンの強度が極めて低いと、昇華乾燥を実施したとしても、十分にパターンの倒壊を防止できない場合がある。本発明者らの研究によると、この原因の一つは、昇華性物質を含む凝固体の厚みであることが分かった。特許文献1には、「昇華性物質からなる膜の膜厚「t」は、パターンの凸状部101を十分に覆う限りにおいて、なるべく薄くすることが好ましい。」との記載があるだけで、昇華性物質からなる膜の厚みについては十分に考慮されていない。
【0007】
そこで、本開示の目的の一つは、昇華乾燥で基板を乾燥させたときに発生するパターンの倒壊を減らすことができる基板処理方法、基板処理装置、および乾燥前処理液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための本開示の一実施形態は、液体を経ずに気体に変化する昇華性物質と前記昇華性物質と溶け合う溶媒とを含む溶液である乾燥前処理液をパターンが形成された基板の表面に供給する乾燥前処理液供給工程と、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液から前記溶媒を蒸発させることにより、前記昇華性物質を含む凝固体を前記基板の表面上に形成する凝固体形成工程と、前記凝固体を昇華させることにより前記基板の表面から除去する昇華工程とを含み、前記パターンの高さに対する前記凝固体の厚みの割合を百倍した値は、76を超え、219未満である、基板処理方法を提供する。
【0009】
この方法によれば、溶質に相当する昇華性物質と溶媒とを含む乾燥前処理液を、パターンが形成された基板の表面に供給する。その後、乾燥前処理液から溶媒を蒸発させる。これにより、昇華性物質を含む凝固体が基板の表面上に形成される。その後、基板上の凝固体を液体を経ずに気体に変化させる。これにより、凝固体が基板の表面から除去される。したがって、スピンドライなどの従来の乾燥方法に比べて、パターンの倒壊率を低下させることができる。
【0010】
乾燥前処理液から溶媒を蒸発させると、昇華性物質を含む凝固体が基板の表面上に形成される。パターンの高さに対する凝固体の厚みの割合を百倍した値を埋め込み率と定義すると、凝固体が形成された時点の埋め込み率は、76を超え、219未満である。埋め込み率がこの範囲外のときは、パターンの強度によっては、パターンの倒壊数が増えてしまう。逆に、埋め込み率がこの範囲内であれば、パターンの強度が低くても、パターンの倒壊数を減らすことができる。したがって、パターンの強度が低くても、パターンの倒壊率を低下させることができる。
【0011】
前記実施形態において、以下の特徴の少なくとも1つを、前記基板処理方法に加えてもよい。
前記昇華性物質は、樟脳およびナフタレンの少なくとも一つを含む。
前記溶媒は、IPA(イソプロピルアルコール)、アセトン、およびPGEE(プロピレングリコールモノエチルエーテル)の少なくとも一つを含む。
【0012】
前記溶媒は、IPAであり、前記乾燥前処理液における前記昇華性物質の質量パーセント濃度は、0.62を超え、2.06未満である。
前記溶媒は、アセトンであり、前記乾燥前処理液における前記昇華性物質の質量パーセント濃度は、0.62を超え、0.96以下である。
【0013】
前記溶媒は、PGEEであり、前記乾燥前処理液における前記昇華性物質の質量パーセント濃度は、3.55を超え、6.86以下である。
前記乾燥前処理液供給工程で前記基板の表面に供給される前記乾燥前処理液は、疎水基を含む前記昇華性物質と、前記溶媒と、疎水基と親水基とを含み、前記昇華性物質よりも親水性が高い吸着物質と、を含む溶液である。
【0014】
この方法によれば、昇華性物質および溶媒に加えて吸着物質を含む乾燥前処理液を、パターンが形成された基板の表面に供給する。その後、乾燥前処理液から溶媒を蒸発させる。これにより、昇華性物質を含む凝固体が基板の表面上に形成される。その後、基板上の凝固体を液体を経ずに気体に変化させる。これにより、凝固体が基板の表面から除去される。したがって、スピンドライなどの従来の乾燥方法に比べて、パターンの倒壊率を低下させることができる。
【0015】
昇華性物質は、分子中に疎水基を含む物質である。吸着物質は、分子中に疎水基と親水基とを含む物質である。吸着物質の親水性は、昇華性物質の親水性よりも高い。パターンの表面が親水性および疎水性のいずれであっても、もしくは、親水性の部分と疎水性の部分とがパターンの表面に含まれていても、乾燥前処理液中の吸着物質は、パターンの表面に吸着する。
【0016】
具体的には、パターンの表面が親水性である場合、乾燥前処理液中の吸着物質の親水基はパターンの表面に付着し、乾燥前処理液中の昇華性物質の疎水基は吸着物質の疎水基に付着する。これにより、吸着物質を介して昇華性物質がパターンの表面に保持される。パターンの表面が疎水性である場合は、少なくとも昇華性物質の疎水基がパターンの表面に付着する。したがって、パターンの表面が親水性および疎水性のいずれであっても、もしくは、親水性の部分と疎水性の部分とがパターンの表面に含まれていても、溶媒の蒸発前に昇華性物質がパターンの表面またはその近傍に保持される。
【0017】
昇華性物質が親水性であり、パターンの表面が親水性である場合、昇華性物質が電気的な引力によりパターンの表面に引き寄せられる。その一方で、昇華性物質が疎水性であり、パターンの表面が親水性である場合は、このような引力が弱いもしくは発生しないので、昇華性物質がパターンの表面に付着し難い。さらに、昇華性物質が疎水性であり、パターンの表面が親水性であることに加え、パターンの間隔が極めて狭い場合は、十分な量の昇華性物質がパターンの間に入り込まないことが考えられる。これらの現象は、昇華性物質が親水性であり、パターンの表面が疎水性である場合も発生する。
【0018】
昇華性物質がパターンの表面またはその近傍にない状態で溶媒を蒸発させると、パターンの表面に接する溶媒からパターンに倒壊力が加わり、パターンが倒壊するかもしれない。十分な量の昇華性物質がパターンの間にない状態で溶媒を蒸発させると、パターンの間の隙間が凝固体で埋まらず、パターンが倒壊することも考えられる。溶媒を蒸発させる前に昇華性物質をパターンの表面またはその近傍に配置すれば、このような倒壊を減らすことができる。これにより、パターンの倒壊率を低下させることができる。
【0019】
親水基は、水酸基(ヒドロキシ基、ヒドロキシル基)、カルボキシ基(COOH)、アミノ基(NH2)、およびカルボニル基(CO)のいずれかであってもよいし、これら以外であってもよい。疎水基は、炭化水素基、アルキル基(CnH2n+1)、シクロアルキル基(CnH2n+1)、フェニル基(C6H5)のいずれかであってもよいし、これら以外であってもよい。
【0020】
前記吸着物質は、昇華性を有する物質である。
この方法によれば、昇華性物質だけでなく、吸着物質も昇華性を有している。吸着物質は、常温または常圧で液体を経ずに固体から気体に変化する。パターンの表面の少なくとも一部が親水性である場合、乾燥前処理液中の吸着物質がパターンの表面に吸着した状態で溶媒が蒸発する。吸着物質は、パターンの表面で液体から固体に変化する。これにより、吸着物質および昇華性物質を含む凝固体が形成される。その後、吸着物質の固体は、パターンの表面で液体を経ずに気体に変化する。したがって、パターンの表面で液体を気化させる場合に比べて倒壊力を低下させることができる。
【0021】
前記乾燥前処理液における前記吸着物質の濃度は、前記乾燥前処理液における前記溶媒の濃度よりも低い。
この方法によれば、吸着物質の濃度が低い乾燥前処理液を基板の表面に供給する。パターンの表面の少なくとも一部が親水性である場合、吸着物質の親水基がパターンの表面に付着し、吸着物質の単分子膜がパターンの表面に沿って形成される。吸着物質の濃度が高いと、複数の単分子膜が積み重なり、吸着物質の積層膜がパターンの表面に沿って形成される。この場合、昇華性物質は、吸着物質の積層膜を介してパターンの表面に保持される。吸着物質の積層膜が厚いと、パターンの間に進入する昇華性物質が減少する。したがって、吸着物質の濃度を低下させることにより、より多くの昇華性物質をパターンの間に進入させることができる。
【0022】
前記パターンの表面の少なくとも一部が親水性である場合、前記乾燥前処理液における前記吸着物質の濃度は、前記パターンの表面に前記吸着物質の単分子膜が形成される値であってもよいし、これを超える値であってもよい。前者の場合、昇華性物質は、吸着物質の単分子膜を介してパターンの表面に保持される。したがって、パターンの表面の少なくとも一部が親水性であっても、昇華性物質をパターンの表面の近傍に配置することができる。さらに、最も薄い吸着物質の単分子膜だけが昇華性物質とパターンとの間に介在するので、十分な量の昇華性物質をパターンの間に進入させることができる。
【0023】
前記昇華性物質は、前記吸着物質よりも疎水性が高い。油に対する昇華性物質の溶解度は、油に対する吸着物質の溶解度よりも高い。言い換えると、水に対する昇華性物質の溶解度は、水に対する吸着物質の溶解度よりも低い。
この方法によれば、吸着物質よりも疎水性が高い昇華性物質を含む乾燥前処理液を基板の表面に供給する。昇華性物質および吸着物質のいずれにも疎水基が含まれているので、パターンの表面の少なくとも一部が疎水性である場合、昇華性物質および吸着物質の両方がパターンの表面に付着し得る。しかしながら、昇華性物質とパターンとの親和性が、吸着物質とパターンとの親和性よりも高いので、吸着物質よりも多くの昇華性物質がパターンの表面に付着する。これにより、より多くの昇華性物質をパターンの表面に付着させることができる。
【0024】
本開示の他の実施形態は、液体を経ずに気体に変化する昇華性物質と前記昇華性物質と溶け合う溶媒とを含む溶液である乾燥前処理液をパターンが形成された基板の表面に供給する乾燥前処理液供給手段と、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液から前記溶媒を蒸発させることにより、前記昇華性物質を含む凝固体を前記基板の表面上に形成する凝固体形成手段と、前記凝固体を昇華させることにより前記基板の表面から除去する昇華手段とを含み、前記パターンの高さに対する前記凝固体の厚みの割合を百倍した値は、76を超え、219未満である、基板処理装置を提供する。この構成によれば、前述の基板処理方法と同様の効果を奏することができる。
【0025】
本開示のさらに他の実施形態は、パターンが形成された基板の表面を乾燥させる前に前記基板の表面に供給される乾燥前処理液であって、液体を経ずに気体に変化する昇華性物質と、前記昇華性物質と溶け合う溶媒とを含み、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液から前記溶媒を蒸発させることにより、前記昇華性物質を含む凝固体を前記基板の表面上に形成すると、前記パターンの高さに対する前記凝固体の厚みの割合を百倍した値が、76を超え、219未満であるように、前記昇華性物質の濃度が調整された、乾燥前処理液を提供する。この構成によれば、前述の基板処理方法と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置を上から見た模式図である。
【
図1B】基板処理装置を側方から見た模式図である。
【
図2】基板処理装置に備えられた処理ユニットの内部を水平に見た模式図である。
【
図3】基板処理装置に備えられた乾燥前処理液供給ユニットを示す模式図である。
【
図4】制御装装置のハードウェアを示すブロック図である。
【
図5】第1実施形態に係る基板の処理の一例について説明するための工程図である。
【
図6A】
図5に示す基板の処理が行われているときの基板の状態を示す模式図である。
【
図6B】
図5に示す基板の処理が行われているときの基板の状態を示す模式図である。
【
図6C】
図5に示す基板の処理が行われているときの基板の状態を示す模式図である。
【
図7】溶媒の蒸発により基板上の乾燥前処理液の液膜の厚みが減少するイメージの一例を示すグラフである。
【
図8】昇華性物質の初期濃度と凝固体の厚みとの関係の一例を示すグラフである。
【
図9】形状および強度が同様のパターンが形成された複数のサンプルを樟脳の初期濃度を変えながら処理したときに得られた埋め込み率およびパターンの倒壊率の一例を示す表である。
【
図10】
図9における樟脳の濃度とパターンの倒壊率との関係を示す折れ線グラフである。
【
図11】
図9における埋め込み率とパターンの倒壊率との関係を示す折れ線グラフである。
【
図12】凝固体が厚すぎるとパターンの倒壊率が高くなる現象に対して想定されるメカニズムを説明するための模式図である。
【
図13】凝固体が薄すぎるとパターンの倒壊率が高くなる現象に対して想定されるメカニズムを説明するための模式図である。
【
図14】形状および強度が同様のパターンが形成された複数のサンプルを樟脳の初期濃度を変えながら処理したときに得られたパターンの倒壊率の一例を示す表である。
【
図15】形状および強度が同様のパターンが形成された複数のサンプルを樟脳の初期濃度を変えながら処理したときに得られたパターンの倒壊率の一例を示す表である。
【
図16】形状および強度が同様のパターンが形成された複数のサンプルを樟脳の初期濃度を変えながら処理したときに得られたパターンの倒壊率の一例を示す表である。
【
図17】
図14における樟脳の濃度とパターンの倒壊率との関係を示す折れ線グラフである。
【
図18】
図15における樟脳の濃度とパターンの倒壊率との関係を示す折れ線グラフである。
【
図19】
図16における樟脳の濃度とパターンの倒壊率との関係を示す折れ線グラフである。
【
図21】第2実施形態に係る基板処理装置に備えられた処理ユニットの内部を水平に見た模式図である。
【
図22】第2実施形態に係る基板の処理の一例について説明するための工程図である。
【
図23A】乾燥前処理液が供給されたパターンの表面で発生すると想定される現象について説明するための基板の断面図である。
【
図23B】同現象について説明するための基板の断面図である。
【
図23C】同現象について説明するための基板の断面図である。
【
図23D】同現象について説明するための基板の断面図である。
【
図23E】同現象について説明するための基板の断面図である。
【
図23F】同現象について説明するための基板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
以下の説明において、基板処理装置1内の気圧は、特に断りがない限り、基板処理装置1が設置されるクリーンルーム内の気圧(たとえば1気圧またはその近傍の値)に維持されているものとする。
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1を上から見た模式図である。
図1Bは、基板処理装置1を側方から見た模式図である。
【0028】
図1Aに示すように、基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、基板Wを収容するキャリアCを保持するロードポートLPと、ロードポートLP上のキャリアCから搬送された基板Wを処理液や処理ガスなどの処理流体で処理する複数の処理ユニット2と、ロードポートLP上のキャリアCと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットと、基板処理装置1を制御する制御装置3とを備えている。
【0029】
搬送ロボットは、ロードポートLP上のキャリアCに対して基板Wの搬入および搬出を行うインデクサロボットIRと、複数の処理ユニット2に対して基板Wの搬入および搬出を行うセンターロボットCRとを含む。インデクサロボットIRは、ロードポートLPとセンターロボットCRとの間で基板Wを搬送し、センターロボットCRは、インデクサロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。センターロボットCRは、基板Wを支持するハンドH1を含み、インデクサロボットIRは、基板Wを支持するハンドH2を含む。
【0030】
複数の処理ユニット2は、平面視でセンターロボットCRのまわりに配置された複数のタワーTWを形成している。
図1Aは、4つのタワーTWが形成されている例を示している。センターロボットCRは、いずれのタワーTWにもアクセス可能である。
図1Bに示すように、各タワーTWは、上下に積層された複数(たとえば3つ)の処理ユニット2を含む。
【0031】
図2は、基板処理装置1に備えられた処理ユニット2の内部を水平に見た模式図である。
処理ユニット2は、基板Wに処理液を供給するウェット処理ユニット2wである。処理ユニット2は、内部空間を有する箱型のチャンバー4と、チャンバー4内で1枚の基板Wを水平に保持しながら基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1まわりに回転させるスピンチャック10と、回転軸線A1まわりにスピンチャック10を取り囲む筒状の処理カップ21とを含む。
【0032】
チャンバー4は、基板Wが通過する搬入搬出口5bが設けられた箱型の隔壁5と、搬入搬出口5bを開閉するシャッター7とを含む。FFU6(ファン・フィルター・ユニット)は、隔壁5の上部に設けられた送風口5aの上に配置されている。FFU6は、クリーンエアー(フィルターによってろ過された空気)を送風口5aからチャンバー4内に常時供給する。チャンバー4内の気体は、処理カップ21の底部に接続された排気ダクト8を通じてチャンバー4から排出される。これにより、クリーンエアーのダウンフローがチャンバー4内に常時形成される。排気ダクト8に排出される排気の流量は、排気ダクト8内に配置された排気バルブ9の開度に応じて変更される。
【0033】
スピンチャック10は、水平な姿勢で保持された円板状のスピンベース12と、スピンベース12の上方で基板Wを水平な姿勢で保持する複数のチャックピン11と、スピンベース12の中央部から下方に延びるスピン軸13と、スピン軸13を回転させることによりスピンベース12および複数のチャックピン11を回転させるスピンモータ14とを含む。スピンチャック10は、複数のチャックピン11を基板Wの外周面に接触させる挟持式のチャックに限らず、非デバイス形成面である基板Wの裏面(下面)をスピンベース12の上面12uに吸着させることにより基板Wを水平に保持するバキューム式のチャックであってもよい。
【0034】
処理カップ21は、基板Wから外方に排出された処理液を受け止める複数のガード24と、複数のガード24によって下方に案内された処理液を受け止める複数のカップ23と、複数のガード24および複数のカップ23を取り囲む円筒状の外壁部材22とを含む。
図2は、4つのガード24と3つのカップ23とが設けられており、最も外側のカップ23が上から3番目のガード24と一体である例を示している。
【0035】
ガード24は、スピンチャック10を取り囲む円筒部25と、円筒部25の上端部から回転軸線A1に向かって斜め上に延びる円環状の天井部26とを含む。複数の天井部26は、上下に重なっており、複数の円筒部25は、同心円状に配置されている。天井部26の円環状の上端は、平面視で基板Wおよびスピンベース12を取り囲むガード24の上端24uに相当する。複数のカップ23は、それぞれ、複数の円筒部25の下方に配置されている。カップ23は、ガード24によって下方に案内された処理液を受け止める環状の受液溝を形成している。
【0036】
処理ユニット2は、複数のガード24を個別に昇降させるガード昇降ユニット27を含む。ガード昇降ユニット27は、上位置から下位置までの任意の位置にガード24を位置させる。
図2は、2つのガード24が上位置に配置されており、残り2つのガード24が下位置に配置されている状態を示している。上位置は、ガード24の上端24uがスピンチャック10に保持されている基板Wが配置される保持位置よりも上方に配置される位置である。下位置は、ガード24の上端24uが保持位置よりも下方に配置される位置である。
【0037】
回転している基板Wに処理液を供給するときは、少なくとも一つのガード24が上位置に配置される。この状態で、処理液が基板Wに供給されると、基板Wに供給された処理液が基板Wの周囲に振り切られる。振り切られた処理液は、基板Wに水平に対向するガード24の内面に衝突し、このガード24に対応するカップ23に案内される。これにより、基板Wから排出された処理液が処理カップ21に集められる。
【0038】
処理ユニット2は、スピンチャック10に保持されている基板Wに向けて処理液を吐出する複数のノズルを含む。複数のノズルは、基板Wの上面に向けて薬液を吐出する薬液ノズル31と、基板Wの上面に向けてリンス液を吐出するリンス液ノズル35と、基板Wの上面に向けて乾燥前処理液を吐出する乾燥前処理液ノズル39と、基板Wの上面に向けて置換液を吐出する置換液ノズル43とを含む。
【0039】
薬液ノズル31は、チャンバー4内で水平に移動可能なスキャンノズルであってもよいし、チャンバー4の隔壁5に対して固定された固定ノズルであってもよい。リンス液ノズル35、乾燥前処理液ノズル39、および置換液ノズル43についても同様である。
図2は、薬液ノズル31、リンス液ノズル35、乾燥前処理液ノズル39、および置換液ノズル43が、スキャンノズルであり、これら4つのノズルにそれぞれ対応する4つのノズル移動ユニットが設けられている例を示している。
【0040】
薬液ノズル31は、薬液ノズル31に薬液を案内する薬液配管32に接続されている。薬液配管32に介装された薬液バルブ33が開かれると、薬液が、薬液ノズル31の吐出口から下方に連続的に吐出される。薬液ノズル31から吐出される薬液は、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸、リン酸、酢酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえばクエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(たとえば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、界面活性剤、および腐食防止剤の少なくとも1つを含む液であってもよいし、これ以外の液体であってもよい。
【0041】
図示はしないが、薬液バルブ33は、薬液が流れる内部流路と内部流路を取り囲む環状の弁座とが設けられたバルブボディと、弁座に対して移動可能な弁体と、弁体が弁座に接触する閉位置と弁体が弁座から離れた開位置との間で弁体を移動させるアクチュエータとを含む。他のバルブについても同様である。アクチュエータは、空圧アクチュエータまたは電動アクチュエータであってもよいし、これら以外のアクチュエータであってもよい。制御装置3は、アクチュエータを制御することにより、薬液バルブ33を開閉させる。
【0042】
薬液ノズル31は、鉛直方向および水平方向の少なくとも一方に薬液ノズル31を移動させるノズル移動ユニット34に接続されている。ノズル移動ユニット34は、薬液ノズル31から吐出された薬液が基板Wの上面に供給される処理位置と、薬液ノズル31が平面視で処理カップ21のまわりに位置する待機位置と、の間で薬液ノズル31を水平に移動させる。
【0043】
リンス液ノズル35は、リンス液ノズル35にリンス液を案内するリンス液配管36に接続されている。リンス液配管36に介装されたリンス液バルブ37が開かれると、リンス液が、リンス液ノズル35の吐出口から下方に連続的に吐出される。リンス液ノズル35から吐出されるリンス液は、たとえば、純水(脱イオン水:DIW(Deionized Water))である。リンス液は、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(たとえば、10~100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。
【0044】
リンス液ノズル35は、鉛直方向および水平方向の少なくとも一方にリンス液ノズル35を移動させるノズル移動ユニット38に接続されている。ノズル移動ユニット38は、リンス液ノズル35から吐出されたリンス液が基板Wの上面に供給される処理位置と、リンス液ノズル35が平面視で処理カップ21のまわりに位置する待機位置と、の間でリンス液ノズル35を水平に移動させる。
【0045】
乾燥前処理液ノズル39は、乾燥前処理液ノズル39に処理液を案内する乾燥前処理液配管40に接続されている。乾燥前処理液配管40に介装された乾燥前処理液バルブ41が開かれると、乾燥前処理液が、乾燥前処理液ノズル39の吐出口から下方に連続的に吐出される。同様に、置換液ノズル43は、置換液ノズル43に置換液を案内する置換液配管44に接続されている。置換液配管44に介装された置換液バルブ45が開かれると、置換液が、置換液ノズル43の吐出口から下方に連続的に吐出される。
【0046】
乾燥前処理液は、溶質に相当する昇華性物質と、昇華性物質と溶け合う溶媒と、を含む溶液である。昇華性物質は、常温(室温と同義)または常圧(基板処理装置1内の圧力。たとえば1気圧またはその近傍の値)で液体を経ずに固体から気体に変化する物質であってもよい。溶媒は、このような物質であってもよいし、これ以外の物質であってもよい。つまり、乾燥前処理液は、常温または常圧で液体を経ずに固体から気体に変化する2種類以上の物質を含んでいてもよい。
【0047】
昇華性物質は、たとえば、2-メチル-2-プロパノール(別名:tert-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、ターシャリーブチルアルコール)やシクロヘキサノールなどのアルコール類、フッ化炭化水素化合物、1,3,5-トリオキサン(別名:メタホルムアルデヒド)、樟脳(別名:カンフル、カンファー)、ナフタレン、ヨウ素、およびシクロヘキサンのいずれかであってもよいし、これら以外の物質であってもよい。
【0048】
溶媒は、たとえば、純水、IPA、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、アセトン、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、PGEE(プロピレングリコールモノエチルエーテル、1-エトキシ-2-プロパノール)、エチレングリコール、およびハイドロフルオロカーボン(hydrofluorocarbon)からなる群より選ばれた少なくとも1種であってもよい。
【0049】
以下では、昇華性物質が樟脳であり、溶媒がIPA、アセトン、およびPGEEのいずれかである例について説明する。IPAの蒸気圧は、樟脳の蒸気圧よりも高い。同様に、アセトンおよびPGEEの蒸気圧は、樟脳の蒸気圧よりも高い。アセトンの蒸気圧は、IPAの蒸気圧よりも高く、IPAの蒸気圧は、PGEEの蒸気圧よりも高い。樟脳の凝固点(1気圧での凝固点。以下同様。)は、175~177℃である。溶媒がIPA、アセトン、およびPGEEのいずれであっても、樟脳の凝固点は、溶媒の沸点よりも高い。樟脳の凝固点は、乾燥前処理液の凝固点よりも高い。乾燥前処理液の凝固点は、室温(23℃またはその近傍の値)よりも低い。基板処理装置1は、室温に維持されたクリーンルーム内に配置されている。したがって、乾燥前処理液を加熱しなくても、乾燥前処理液を液体に維持できる。乾燥前処理液の凝固点は、室温以上であってもよい。
【0050】
後述するように、置換液は、リンス液の液膜で覆われた基板Wの上面に供給され、乾燥前処理液は、置換液の液膜で覆われた基板Wの上面に供給される。置換液は、リンス液および乾燥前処理液の両方と溶け合う液体である。置換液は、たとえば、IPAまたはHFEである。置換液は、IPAおよびHFEの混合液であってもよいし、IPAおよびHFEの少なくとも一方とこれら以外の成分とを含んでいてもよい。IPAおよびHFEは、水およびフッ化炭化水素化合物の両方と溶け合う液体である。
【0051】
リンス液の液膜で覆われた基板Wの上面に置換液が供給されると、基板W上の殆どのリンス液は、置換液によって押し流され、基板Wから排出される。残りの微量のリンス液は、置換液に溶け込み、置換液中に拡散する。拡散したリンス液は、置換液とともに基板Wから排出される。したがって、基板W上のリンス液を効率的に置換液に置換できる。同様の理由により、基板W上の置換液を効率的に乾燥前処理液に置換できる。これにより、基板W上の乾燥前処理液に含まれるリンス液を減らすことができる。
【0052】
乾燥前処理液ノズル39は、鉛直方向および水平方向の少なくとも一方に乾燥前処理液ノズル39を移動させるノズル移動ユニット42に接続されている。ノズル移動ユニット42は、乾燥前処理液ノズル39から吐出された乾燥前処理液が基板Wの上面に供給される処理位置と、乾燥前処理液ノズル39が平面視で処理カップ21のまわりに位置する待機位置と、の間で乾燥前処理液ノズル39を水平に移動させる。
【0053】
同様に、置換液ノズル43は、鉛直方向および水平方向の少なくとも一方に置換液ノズル43を移動させるノズル移動ユニット46に接続されている。ノズル移動ユニット46は、置換液ノズル43から吐出された置換液が基板Wの上面に供給される処理位置と、置換液ノズル43が平面視で処理カップ21のまわりに位置する待機位置と、の間で置換液ノズル43を水平に移動させる。
【0054】
処理ユニット2は、スピンチャック10の上方に配置された遮断部材51を含む。
図2は、遮断部材51が円板状の遮断板である例を示している。遮断部材51は、スピンチャック10の上方に水平に配置された円板部52を含む。遮断部材51は、円板部52の中央部から上方に延びる筒状の支軸53によって水平に支持されている。円板部52の中心線は、基板Wの回転軸線A1上に配置されている。円板部52の下面は、遮断部材51の下面51Lに相当する。遮断部材51の下面51Lは、基板Wの上面に対向する対向面である。遮断部材51の下面51Lは、基板Wの上面と平行であり、基板Wの直径以上の外径を有している。
【0055】
遮断部材51は、遮断部材51を鉛直に昇降させる遮断部材昇降ユニット54に接続されている。遮断部材昇降ユニット54は、上位置(
図2に示す位置)から下位置までの任意の位置に遮断部材51を位置させる。下位置は、薬液ノズル31などのスキャンノズルが基板Wと遮断部材51との間に進入できない高さまで遮断部材51の下面51Lが基板Wの上面に近接する近接位置である。上位置は、スキャンノズルが遮断部材51と基板Wとの間に進入可能な高さまで遮断部材51が退避した離間位置である。
【0056】
複数のノズルは、遮断部材51の下面51Lの中央部で開口する上中央開口61を介して処理液や処理ガスなどの処理流体を下方に吐出する中心ノズル55を含む。中心ノズル55は、回転軸線A1に沿って上下に延びている。中心ノズル55は、遮断部材51の中央部を上下に貫通する貫通穴内に配置されている。遮断部材51の内周面は、径方向(回転軸線A1に直交する方向)に間隔を空けて中心ノズル55の外周面を取り囲んでいる。中心ノズル55は、遮断部材51とともに昇降する。処理液を吐出する中心ノズル55の吐出口は、遮断部材51の上中央開口61の上方に配置されている。
【0057】
中心ノズル55は、中心ノズル55に不活性ガスを案内する上気体配管56に接続されている。基板処理装置1は、中心ノズル55から吐出される不活性ガスを加熱または冷却する上温度調節器59を備えていてもよい。上気体配管56に介装された上気体バルブ57が開かれると、不活性ガスの流量を変更する流量調整バルブ58の開度に対応する流量で、不活性ガスが、中心ノズル55の吐出口から下方に連続的に吐出される。中心ノズル55から吐出される不活性ガスは、窒素ガスである。不活性ガスは、ヘリウムガスやアルゴンガスなどの窒素ガス以外のガスであってもよい。
【0058】
遮断部材51の内周面と中心ノズル55の外周面は、上下に延びる筒状の上気体流路62を形成している。上気体流路62は、不活性ガスを遮断部材51の上中央開口61に導く上気体配管63に接続されている。基板処理装置1は、遮断部材51の上中央開口61から吐出される不活性ガスを加熱または冷却する上温度調節器66を備えていてもよい。上気体配管63に介装された上気体バルブ64が開かれると、不活性ガスの流量を変更する流量調整バルブ65の開度に対応する流量で、不活性ガスが、遮断部材51の上中央開口61から下方に連続的に吐出される。遮断部材51の上中央開口61から吐出される不活性ガスは、窒素ガスである。不活性ガスは、ヘリウムガスやアルゴンガスなどの窒素ガス以外のガスであってもよい。
【0059】
複数のノズルは、基板Wの下面中央部に向けて処理液を吐出する下面ノズル71を含む。下面ノズル71は、スピンベース12の上面12uと基板Wの下面との間に配置されたノズル円板部と、ノズル円板部から下方に延びるノズル筒状部とを含む。下面ノズル71の吐出口は、ノズル円板部の上面中央部で開口している。基板Wがスピンチャック10に保持されているときは、下面ノズル71の吐出口が、基板Wの下面中央部に上下に対向する。
【0060】
下面ノズル71は、加熱流体の一例である温水(室温よりも高温の純水)を下面ノズル71に案内する加熱流体配管72に接続されている。下面ノズル71に供給される純水は、加熱流体配管72に介装された下ヒータ75によって加熱される。加熱流体配管72に介装された加熱流体バルブ73が開かれると、温水の流量を変更する流量調整バルブ74の開度に対応する流量で、温水が、下面ノズル71の吐出口から上方に連続的に吐出される。これにより、温水が基板Wの下面に供給される。
【0061】
下面ノズル71は、さらに、冷却流体の一例である冷水(室温よりも低温の純水)を下面ノズル71に案内する冷却流体配管76に接続されている。下面ノズル71に供給される純水は、冷却流体配管76に介装されたクーラー79によって冷却される。冷却流体配管76に介装された冷却流体バルブ77が開かれると、冷水の流量を変更する流量調整バルブ78の開度に対応する流量で、冷水が、下面ノズル71の吐出口から上方に連続的に吐出される。これにより、冷水が基板Wの下面に供給される。
【0062】
下面ノズル71の外周面とスピンベース12の内周面は、上下に延びる筒状の下気体流路82を形成している。下気体流路82は、スピンベース12の上面12uの中央部で開口する下中央開口81を含む。下気体流路82は、不活性ガスをスピンベース12の下中央開口81に導く下気体配管83に接続されている。基板処理装置1は、スピンベース12の下中央開口81から吐出される不活性ガスを加熱または冷却する下温度調節器86を備えていてもよい。下気体配管83に介装された下気体バルブ84が開かれると、不活性ガスの流量を変更する流量調整バルブ85の開度に対応する流量で、不活性ガスが、スピンベース12の下中央開口81から上方に連続的に吐出される。
【0063】
スピンベース12の下中央開口81から吐出される不活性ガスは、窒素ガスである。不活性ガスは、ヘリウムガスやアルゴンガスなどの窒素ガス以外のガスであってもよい。基板Wがスピンチャック10に保持されているときに、スピンベース12の下中央開口81が窒素ガスを吐出すると、窒素ガスは、基板Wの下面とスピンベース12の上面12uとの間をあらゆる方向に放射状に流れる。これにより、基板Wとスピンベース12との間の空間が窒素ガスで満たされる。
【0064】
次に、乾燥前処理液供給ユニットについて説明する。
図3は、基板処理装置1に備えられた乾燥前処理液供給ユニットを示す模式図である。
基板処理装置1は、乾燥前処理液配管40を介して乾燥前処理液ノズル39に乾燥前処理液を供給する乾燥前処理液供給ユニットを備えている。
乾燥前処理液供給ユニットは、乾燥前処理液を貯留する第1タンク87Aと、第1タンク87A内の乾燥前処理液を循環させる第1循環配管88Aと、第1タンク87A内の乾燥前処理液を第1循環配管88Aに送る第1ポンプ89Aと、第1循環配管88A内の乾燥前処理液を乾燥前処理液配管40に案内する第1個別配管90Aとを含む。乾燥前処理液供給ユニットは、さらに、第1個別配管90Aの内部を開閉する第1開閉バルブ91Aと、第1個別配管90Aから乾燥前処理液配管40に供給される乾燥前処理液の流量を変更する第1流量調整バルブ92Aとを含む。
【0065】
乾燥前処理液供給ユニットは、乾燥前処理液を貯留する第2タンク87Bと、第2タンク87B内の乾燥前処理液を循環させる第2循環配管88Bと、第2タンク87B内の乾燥前処理液を第2循環配管88Bに送る第2ポンプ89Bと、第2循環配管88B内の乾燥前処理液を乾燥前処理液配管40に案内する第2個別配管90Bとを含む。乾燥前処理液供給ユニットは、さらに、第2個別配管90Bの内部を開閉する第2開閉バルブ91Bと、第2個別配管90Bから乾燥前処理液配管40に供給される乾燥前処理液の流量を変更する第2流量調整バルブ92Bとを含む。
【0066】
第1タンク87A内の乾燥前処理液の濃度(乾燥前処理液に含まれる昇華性物質の濃度)は、第2タンク87B内の乾燥前処理液の濃度とは異なる。したがって、第1開閉バルブ91Aおよび第2開閉バルブ91Bが開かれると、濃度が互いに異なる乾燥前処理液が乾燥前処理液配管40内で混ざり合い、均一に混合された乾燥前処理液が乾燥前処理液ノズル39から吐出される。さらに、第1流量調整バルブ92Aおよび第2流量調整バルブ92Bの少なくとも一方の開度を変更すると、乾燥前処理液ノズル39から吐出される乾燥前処理液の濃度が変更される。
【0067】
制御装置3は、後述するレシピで指定された乾燥前処理液の濃度に基づいて、第1開閉バルブ91A、第2開閉バルブ91B、第1流量調整バルブ92A、および第2流量調整バルブ92Bの開度を設定する。たとえば、レシピで指定された乾燥前処理液の濃度が、第1タンク87A内の乾燥前処理液の濃度に一致している場合は、第1開閉バルブ91Aが開かれ、第2開閉バルブ91Bが閉じられる。レシピで指定された乾燥前処理液の濃度が、第1タンク87A内の乾燥前処理液の濃度と第2タンク87B内の乾燥前処理液の濃度との間の値である場合は、第1開閉バルブ91Aおよび第2開閉バルブ91Bの両方が開かれ、第1流量調整バルブ92Aおよび第2流量調整バルブ92Bの開度が調整される。これにより、乾燥前処理液ノズル39から吐出される乾燥前処理液の濃度が、レシピで指定された乾燥前処理液の濃度に近づけられる。
【0068】
図4は、制御装置3のハードウェアを示すブロック図である。
制御装置3は、コンピュータ本体3aと、コンピュータ本体3aに接続された周辺装置3bとを含む、コンピュータである。コンピュータ本体3aは、各種の命令を実行するCPU93(central processing unit:中央処理装置)と、情報を記憶する主記憶装置94とを含む。周辺装置3bは、プログラムP等の情報を記憶する補助記憶装置95と、リムーバブルメディアMから情報を読み取る読取装置96と、ホストコンピュータ等の他の装置と通信する通信装置97とを含む。
【0069】
制御装置3は、入力装置98および表示装置99に接続されている。入力装置98は、ユーザーやメンテナンス担当者などの操作者が基板処理装置1に情報を入力するときに操作される。情報は、表示装置99の画面に表示される。入力装置98は、キーボード、ポインティングデバイス、およびタッチパネルのいずれかであってもよいし、これら以外の装置であってもよい。入力装置98および表示装置99を兼ねるタッチパネルディスプレイが基板処理装置1に設けられていてもよい。
【0070】
CPU93は、補助記憶装置95に記憶されたプログラムPを実行する。補助記憶装置95内のプログラムPは、制御装置3に予めインストールされたものであってもよいし、読取装置96を通じてリムーバブルメディアMから補助記憶装置95に送られたものであってもよいし、ホストコンピュータなどの外部装置から通信装置97を通じて補助記憶装置95に送られたものであってもよい。
【0071】
補助記憶装置95およびリムーバブルメディアMは、電力が供給されていなくても記憶を保持する不揮発性メモリーである。補助記憶装置95は、たとえば、ハードディスクドライブ等の磁気記憶装置である。リムーバブルメディアMは、たとえば、コンパクトディスクなどの光ディスクまたはメモリーカードなどの半導体メモリーである。リムーバブルメディアMは、プログラムPが記録されたコンピュータ読取可能な記録媒体の一例である。リムーバブルメディアMは、一時的ではない有形の記録媒体である。
【0072】
補助記憶装置95は、複数のレシピを記憶している。レシピは、基板Wの処理内容、処理条件、および処理手順を規定する情報である。複数のレシピは、基板Wの処理内容、処理条件、および処理手順の少なくとも一つにおいて互いに異なる。制御装置3は、ホストコンピュータによって指定されたレシピにしたがって基板Wが処理されるように基板処理装置1を制御する。以下の各工程は、制御装置3が基板処理装置1を制御することにより実行される。言い換えると、制御装置3は、以下の各工程を実行するようにプログラムされている。
【0073】
次に、第1実施形態に係る基板Wの処理の一例について説明する。
処理される基板Wは、たとえば、シリコンウエハなどの半導体ウエハである。基板Wの表面は、トランジスタやキャパシタ等のデバイスが形成されるデバイス形成面に相当する。基板Wは、パターン形成面である基板Wの表面にパターンP1(
図6A参照)が形成された基板Wであってもよいし、基板Wの表面にパターンP1が形成されていない基板Wであってもよい。後者の場合、後述する薬液供給工程でパターンP1が形成されてもよい。
【0074】
図5は、第1実施形態に係る基板Wの処理の一例について説明するための工程図である。
図6A~
図6Cは、
図5に示す基板Wの処理が行われているときの基板Wの状態を示す模式図である。
以下では、
図2および
図5を参照する。
図6A~
図6Cについては適宜参照する。
基板処理装置1によって基板Wが処理されるときは、チャンバー4内に基板Wを搬入する搬入工程(
図5のステップS1)が行われる。
【0075】
具体的には、遮断部材51が上位置に位置しており、全てのガード24が下位置に位置しており、全てのスキャンノズルが待機位置に位置している状態で、センターロボットCR(
図1参照)が、基板WをハンドH1で支持しながら、ハンドH1をチャンバー4内に進入させる。そして、センターロボットCRは、基板Wの表面が上に向けられた状態でハンドH1上の基板Wを複数のチャックピン11の上に置く。その後、複数のチャックピン11が基板Wの外周面に押し付けられ、基板Wが把持される。センターロボットCRは、基板Wをスピンチャック10の上に置いた後、ハンドH1をチャンバー4の内部から退避させる。
【0076】
次に、上気体バルブ64および下気体バルブ84が開かれ、遮断部材51の上中央開口61およびスピンベース12の下中央開口81が窒素ガスの吐出を開始する。これにより、基板Wと遮断部材51との間の空間が窒素ガスで満たされる。同様に、基板Wとスピンベース12との間の空間とが窒素ガスで満たされる。その一方で、ガード昇降ユニット27が少なくとも一つのガード24を下位置から上位置に上昇させる。その後、スピンモータ14が駆動され、基板Wの回転が開始される(
図5のステップS2)。これにより、基板Wが液体供給速度で回転する。
【0077】
次に、薬液を基板Wの上面に供給し、基板Wの上面全域を覆う薬液の液膜を形成する薬液供給工程(
図5のステップS3)が行われる。
具体的には、遮断部材51が上位置に位置しており、少なくとも一つのガード24が上位置に位置している状態で、ノズル移動ユニット34が薬液ノズル31を待機位置から処理位置に移動させる。その後、薬液バルブ33が開かれ、薬液ノズル31が薬液の吐出を開始する。薬液バルブ33が開かれてから所定時間が経過すると、薬液バルブ33が閉じられ、薬液の吐出が停止される。その後、ノズル移動ユニット34が、薬液ノズル31を待機位置に移動させる。
【0078】
薬液ノズル31から吐出された薬液は、液体供給速度で回転している基板Wの上面に衝突した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。そのため、薬液が基板Wの上面全域に供給され、基板Wの上面全域を覆う薬液の液膜が形成される。薬液ノズル31が薬液を吐出しているとき、ノズル移動ユニット34は、基板Wの上面に対する薬液の着液位置が中央部と外周部とを通るように着液位置を移動させてもよいし、中央部で着液位置を静止させてもよい。
【0079】
次に、リンス液の一例である純水を基板Wの上面に供給して、基板W上の薬液を洗い流すリンス液供給工程(
図5のステップS4)が行われる。
具体的には、遮断部材51が上位置に位置しており、少なくとも一つのガード24が上位置に位置している状態で、ノズル移動ユニット38がリンス液ノズル35を待機位置から処理位置に移動させる。その後、リンス液バルブ37が開かれ、リンス液ノズル35がリンス液の吐出を開始する。純水の吐出が開始される前に、ガード昇降ユニット27は、基板Wから排出された液体を受け止めるガード24を切り替えるために、少なくとも一つのガード24を鉛直に移動させてもよい。リンス液バルブ37が開かれてから所定時間が経過すると、リンス液バルブ37が閉じられ、リンス液の吐出が停止される。その後、ノズル移動ユニット38が、リンス液ノズル35を待機位置に移動させる。
【0080】
リンス液ノズル35から吐出された純水は、液体供給速度で回転している基板Wの上面に衝突した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上の薬液は、リンス液ノズル35から吐出された純水に置換される。これにより、基板Wの上面全域を覆う純水の液膜が形成される。リンス液ノズル35が純水を吐出しているとき、ノズル移動ユニット38は、基板Wの上面に対する純水の着液位置が中央部と外周部とを通るように着液位置を移動させてもよいし、中央部で着液位置を静止させてもよい。
【0081】
次に、リンス液および乾燥前処理液の両方と溶け合う置換液を基板Wの上面に供給し、基板W上の純水を置換液に置換する置換液供給工程(
図5のステップS5)が行われる。
具体的には、遮断部材51が上位置に位置しており、少なくとも一つのガード24が上位置に位置している状態で、ノズル移動ユニット46が置換液ノズル43を待機位置から処理位置に移動させる。その後、置換液バルブ45が開かれ、置換液ノズル43が置換液の吐出を開始する。置換液の吐出が開始される前に、ガード昇降ユニット27は、基板Wから排出された液体を受け止めるガード24を切り替えるために、少なくとも一つのガード24を鉛直に移動させてもよい。置換液バルブ45が開かれてから所定時間が経過すると、置換液バルブ45が閉じられ、置換液の吐出が停止される。その後、ノズル移動ユニット46が、置換液ノズル43を待機位置に移動させる。
【0082】
置換液ノズル43から吐出された置換液は、液体供給速度で回転している基板Wの上面に衝突した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上の純水は、置換液ノズル43から吐出された置換液に置換される。これにより、基板Wの上面全域を覆う置換液の液膜が形成される。置換液ノズル43が置換液を吐出しているとき、ノズル移動ユニット46は、基板Wの上面に対する置換液の着液位置が中央部と外周部とを通るように着液位置を移動させてもよいし、中央部で着液位置を静止させてもよい。また、基板Wの上面全域を覆う置換液の液膜が形成された後、置換液ノズル43に置換液の吐出を停止させながら、基板Wをパドル速度(たとえば、0を超える20rpm以下の速度)で回転させてもよい。
【0083】
次に、乾燥前処理液を基板Wの上面に供給して、乾燥前処理液の液膜を基板W上に形成する乾燥前処理液供給工程(
図5のステップS6)が行われる。
具体的には、遮断部材51が上位置に位置しており、少なくとも一つのガード24が上位置に位置している状態で、ノズル移動ユニット42が乾燥前処理液ノズル39を待機位置から処理位置に移動させる。その後、乾燥前処理液バルブ41が開かれ、乾燥前処理液ノズル39が乾燥前処理液の吐出を開始する。乾燥前処理液の吐出が開始される前に、ガード昇降ユニット27は、基板Wから排出された液体を受け止めるガード24を切り替えるために、少なくとも一つのガード24を鉛直に移動させてもよい。乾燥前処理液バルブ41が開かれてから所定時間が経過すると、乾燥前処理液バルブ41が閉じられ、乾燥前処理液の吐出が停止される。その後、ノズル移動ユニット42が、乾燥前処理液ノズル39を待機位置に移動させる。
【0084】
乾燥前処理液ノズル39から吐出された乾燥前処理液は、液体供給速度で回転している基板Wの上面に衝突した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上の置換液は、乾燥前処理液ノズル39から吐出された乾燥前処理液に置換される。これにより、基板Wの上面全域を覆う乾燥前処理液の液膜が形成される。乾燥前処理液ノズル39が乾燥前処理液を吐出しているとき、ノズル移動ユニット42は、基板Wの上面に対する乾燥前処理液の着液位置が中央部と外周部とを通るように着液位置を移動させてもよいし、中央部で着液位置を静止させてもよい。
【0085】
次に、基板W上の乾燥前処理液の一部を除去して、基板Wの上面全域が乾燥前処理液の液膜で覆われた状態を維持しながら、基板W上の乾燥前処理液の膜厚(液膜の厚み)を減少させる膜厚減少工程(
図5のステップS7)が行われる。
具体的には、遮断部材51が下位置に位置している状態で、スピンモータ14が基板Wの回転速度を膜厚減少速度に維持する。膜厚減少速度は、液体供給速度と等しくてもよいし、異なっていてもよい。基板W上の乾燥前処理液は、乾燥前処理液の吐出が停止された後も、遠心力によって基板Wから外方に排出される。そのため、基板W上の乾燥前処理液の液膜の厚みが減少する。基板W上の乾燥前処理液がある程度排出されると、単位時間当たりの基板Wからの乾燥前処理液の排出量が零または概ね零に減少する。これにより、基板W上の乾燥前処理液の液膜の厚みが基板Wの回転速度に応じた値で安定する。
【0086】
次に、基板W上の乾燥前処理液を凝固させて、昇華性物質を含む凝固体101(
図6B参照)を基板W上に形成する凝固体形成工程(
図5のステップS8)が行われる。
具体的には、遮断部材51が下位置に位置している状態で、スピンモータ14が基板Wの回転速度を凝固体形成速度に維持する。凝固体形成速度は、液体供給速度と等しくてもよいし、異なっていてもよい。さらに、上気体バルブ57を開いて、中心ノズル55に窒素ガスの吐出を開始させる。上気体バルブ57を開くことに加えてまたは代えて、流量調整バルブ65の開度を変更して、遮断部材51の上中央開口61から吐出される窒素ガスの流量を増加させてもよい。
【0087】
凝固体形成速度での基板Wの回転等が開始されると、乾燥前処理液の蒸発が促進され、基板W上の乾燥前処理液の一部が蒸発する。溶媒の蒸気圧が溶質に相当する昇華性物質の蒸気圧よりも高いので、溶媒は、昇華性物質の蒸発速度よりも大きい蒸発速度で蒸発する。したがって、昇華性物質の濃度が徐々に増加しながら、乾燥前処理液の膜厚が徐々に減少していく。乾燥前処理液の凝固点は、昇華性物質の濃度の増加に伴って上昇する。
図6Aおよび
図6Bを比較すると分かるように、乾燥前処理液の凝固点が乾燥前処理液の温度に達すると、乾燥前処理液の凝固が始まり、基板Wの上面全域を覆う固化膜に相当する凝固体101が形成される。
【0088】
次に、基板W上の凝固体101を昇華させて、基板Wの上面から除去する昇華工程(
図5のステップS9)が行われる。
具体的には、遮断部材51が下位置に位置している状態で、スピンモータ14が基板Wの回転速度を昇華速度に維持する。昇華速度は、液体供給速度と等しくてもよいし、異なっていてもよい。さらに、上気体バルブ57が閉じられている場合は、上気体バルブ57を開いて、中心ノズル55に窒素ガスの吐出を開始させる。上気体バルブ57を開くことに加えてまたは代えて、流量調整バルブ65の開度を変更して、遮断部材51の上中央開口61から吐出される窒素ガスの流量を増加させてもよい。昇華速度での基板Wの回転が開始されてから所定時間が経過すると、スピンモータ14が止まり、基板Wの回転が停止される(
図5のステップS10)。
【0089】
昇華速度での基板Wの回転等が開始されると、基板W上の凝固体101の昇華が始まり、昇華性物質を含む気体が、基板W上の凝固体101から発生する。凝固体101から発生した気体(昇華性物質を含む気体)は、基板Wと遮断部材51との間の空間を放射状に流れ、基板Wの上方から排出される。そして、昇華が始まってからある程度の時間が経つと、
図6Cに示すように、全ての凝固体101が基板Wから除去される。
【0090】
次に、基板Wをチャンバー4から搬出する搬出工程(
図5のステップS11)が行われる。
具体的には、遮断部材昇降ユニット54が遮断部材51を上位置まで上昇させ、ガード昇降ユニット27が全てのガード24を下位置まで下降させる。さらに、上気体バルブ64および下気体バルブ84が閉じられ、遮断部材51の上中央開口61とスピンベース12の下中央開口81とが窒素ガスの吐出を停止する。その後、センターロボットCRが、ハンドH1をチャンバー4内に進入させる。センターロボットCRは、複数のチャックピン11が基板Wの把持を解除した後、スピンチャック10上の基板WをハンドH1で支持する。その後、センターロボットCRは、基板WをハンドH1で支持しながら、ハンドH1をチャンバー4の内部から退避させる。これにより、処理済みの基板Wがチャンバー4から搬出される。
【0091】
図7は、溶媒の蒸発により基板W上の乾燥前処理液の液膜の厚みが減少するイメージの一例を示すグラフである。
図7では、昇華性物質の初期濃度が基準濃度のときの液膜の厚みを実線で示しており、昇華性物質の初期濃度が低濃度のときの液膜の厚みを一点鎖線で示しており、昇華性物質の初期濃度が高濃度のときの液膜の厚みを二点鎖線で示している。基準濃度は、低濃度よりも高く、高濃度よりも低い濃度である。昇華性物質の初期濃度は、基板Wに供給される前の乾燥前処理液における昇華性物質の濃度を意味する。
【0092】
乾燥前処理液における昇華性物質の濃度が同じであれば、基板W上に形成される凝固体101の厚みT1(
図6B参照)は、凝固体101を形成する前の乾燥前処理液の膜厚(液膜の厚み)に依存する。つまり、乾燥前処理液の膜厚が大きいと、厚い凝固体101が形成され、乾燥前処理液の膜厚が小さいと、薄い凝固体101が形成される。したがって、乾燥前処理液の膜厚を変化させることで、凝固体101の厚みT1を変化させることができる。
【0093】
基板Wの回転速度を増加させると、乾燥前処理液が遠心力で基板Wから排出され、基板W上の乾燥前処理液の膜厚が減少する。このとき、基板Wの上面に向けて気体を吐出すると、気体の圧力が乾燥前処理液に加わり、基板W上の乾燥前処理液の膜厚がさらに減少する。しかしながら、ある程度まで膜厚が小さくなると、液膜内での流速が極端に低下するので、回転速度や気体の流量を増加させても、膜厚は大きく変わらない。逆に、回転速度や気体の流量を大きくしすぎると、基板Wの上面が部分的に液膜から露出してしまう。
【0094】
したがって、基板Wの回転速度や気体の流量を変更しても、凝固体101を形成する前の乾燥前処理液の膜厚を極端に薄くすることができず、極めて薄い凝固体101を形成することができない。したがって、基板Wの上面全域を覆う極めて薄い凝固体101(たとえば厚みが0を超える1μm以下の凝固体101)を形成したり、極薄範囲(たとえば0を超える1μm以下の範囲)内で凝固体101の厚みT1を変化させる場合は、昇華性物質の初期濃度を変更しなければならない。
【0095】
図7において、溶媒を蒸発させる前の乾燥前処理液の膜厚は、昇華性物質の初期濃度にかかわらず一定である。また、
図7に示すように、乾燥前処理液の温度が等しければ、凝固体101の析出が始まるときの昇華性物質の濃度は、昇華性物質の初期濃度にかかわらず一定である。凝固体101を形成するために溶媒を蒸発させると、昇華性物質の濃度が徐々に増加しながら、乾燥前処理液の膜厚が徐々に減少していく。乾燥前処理液の凝固点は、昇華性物質の濃度の増加に伴って上昇する。乾燥前処理液の凝固点が乾燥前処理液の温度に達すると、乾燥前処理液の凝固が始まり、凝固体101が基板W上に形成される。
【0096】
図7に示すように、昇華性物質の初期濃度が基準濃度のときは、基準厚さTrの凝固体101が形成される。昇華性物質の初期濃度が低濃度のときは、乾燥前処理液に含まれる昇華性物質の量が少ないので、基準厚さTrよりも薄い凝固体101が形成される。昇華性物質の初期濃度が高濃度のときは、乾燥前処理液に含まれる昇華性物質の量が多いので、基準厚さTrよりも厚い凝固体101が形成される。したがって、昇華性物質の初期濃度をコントロールすることにより、極薄範囲内で凝固体101の厚みT1を変化させることができる。
【0097】
図8は、昇華性物質の初期濃度と凝固体101の厚みT1との関係の一例を示すグラフである。
図8中のvol%は、体積パーセント濃度を示している。乾燥前処理液が凝固体101に変化すると、基板W上の物質の色が透明から非透明に変化する。透明な乾燥前処理液の膜厚を分光干渉法により測定しているときに、非透明な凝固体101が形成されると、測定値が変化する。この変化した直前の値が凝固体101の厚みT1として
図8に示されている。
【0098】
図8において、昇華性物質の初期濃度が0.5vol%のときは、凝固体101の厚みT1が100μm程度であり、昇華性物質の初期濃度が1.23vol%のときは、凝固体101の厚みT1が200μm程度であった。昇華性物質の初期濃度と凝固体101の厚みT1とは、概ね正比例の関係にあり、昇華性物質の初期濃度が増加すると、凝固体101の厚みT1は、一定の割合で増加している。したがって、昇華性物質の初期濃度を変更すれば、凝固体101の厚みT1を極薄範囲内で変化させることができる。
【0099】
図9は、形状および強度が同様のパターンP1が形成された複数のサンプルを樟脳の初期濃度を変えながら処理したときに得られた埋め込み率およびパターンP1の倒壊率の一例を示す表である。
図10は、
図9における樟脳の濃度とパターンP1の倒壊率との関係を示す折れ線グラフである。
図9および
図10は、昇華性物質が樟脳であり、溶媒がIPAであるときのパターンP1の倒壊率を示している。
図9および
図10に示す測定条件1-1~測定条件1-13において、樟脳の初期濃度以外の条件は同じである。
図9中のwt%は、質量パーセント濃度を示している。これは
図14などの他の図でも同様である。
【0100】
パターンP1の倒壊率は、パターンP1の全数に対する倒壊したパターンP1の数の割合を百倍した値である。埋め込み率は、パターンP1の高さHp(
図6B参照)に対する凝固体101の厚みT1(
図6B参照)の割合を百倍した値である。つまり、埋め込み率は、((凝固体101の厚みT1/パターンP1の高さHp)×100)の計算式により求められる。
【0101】
図9の測定条件1-1に示すように、樟脳の初期濃度が0.52wt%のとき、パターンP1の倒壊率は、83.5%であった。
図9の測定条件1-2に示すように、樟脳の初期濃度が0.62wt%のとき、パターンP1の倒壊率は、83.1%であった。
図9の測定条件1-3に示すように、樟脳の初期濃度が0.69wt%のとき、パターンP1の倒壊率は、76.2%であった。
【0102】
図9の測定条件1-4に示すように、樟脳の初期濃度が0.78wt%のとき、パターンP1の倒壊率は、36.1%であった。
図9の測定条件1-13に示すように、樟脳の初期濃度が7.76wt%のとき、パターンP1の倒壊率は、91.0%であった。
図9の測定条件1-12に示すように、樟脳の初期濃度が4.03wt%のとき、パターンP1の倒壊率は、91.7%であった。
【0103】
図9の測定条件1-11に示すように、樟脳の初期濃度が2.06wt%のとき、パターンP1の倒壊率は、87.0%であった。
図9の測定条件1-10に示すように、樟脳の初期濃度が1.55wt%のとき、パターンP1の倒壊率は、46.8%であった。
図9および
図10を見ると分かるように、樟脳の初期濃度が0.62wt%から0.69wt%に増加すると、パターンP1の倒壊率が減少している(測定条件1-2→測定条件1-3)。加えて、樟脳の初期濃度が0.69wt%から0.78wt%に増加すると、パターンP1の倒壊率が急激に減少している(測定条件1-3→測定条件1-4)。
【0104】
その一方で、樟脳の初期濃度が2.06wt%から1.55wt%に減少すると、パターンP1の倒壊率が急激に減少している(測定条件1-11→測定条件1-10)。
したがって、樟脳の初期濃度は、0.62wt%を超え、2.06wt%未満であることが好ましく、0.78wt%以上、2.06wt%未満であることがさらに好ましい。
樟脳の初期濃度が0.62wt%を超え、2.06wt%未満の範囲では、パターンP1の倒壊率は、87.0%未満である。
【0105】
樟脳の初期濃度が0.78wt%以上、1.55wt%以下の範囲では、パターンP1の倒壊率は、46.8%以下である。
樟脳の初期濃度が0.89wt%以上、1.24wt%以下の範囲では、パターンP1の倒壊率は、17.6%以下である。パターンP1の倒壊率は、樟脳の初期濃度が0.89wt%のときに最も低く、8.32%であった。
【0106】
したがって、樟脳の初期濃度は、0.78wt%以上、1.55wt%以下であってもよいし、0.89wt%以上、1.24wt%以下であってもよい。
図11は、
図9における埋め込み率とパターンP1の倒壊率との関係を示す折れ線グラフである。
図9の測定条件1-1に示すように、埋め込み率が65%のとき、パターンP1の倒壊率は、83.5%であった。
【0107】
図9の測定条件1-2に示すように、埋め込み率が76%のとき、パターンP1の倒壊率は、83.1%であった。
図9の測定条件1-3に示すように、埋め込み率が83%のとき、パターンP1の倒壊率は、76.2%であった。
図9の測定条件1-4に示すように、埋め込み率が91%のとき、パターンP1の倒壊率は、36.1%であった。
【0108】
図9の測定条件1-13に示すように、埋め込み率が797%のとき、パターンP1の倒壊率は、91.0%であった。
図9の測定条件1-12に示すように、埋め込み率が418%のとき、パターンP1の倒壊率は、91.7%であった。
図9の測定条件1-11に示すように、埋め込み率が219%のとき、パターンP1の倒壊率は、87.0%であった。
【0109】
図9の測定条件1-10に示すように、埋め込み率が168%のとき、パターンP1の倒壊率は、46.8%であった。
図9および
図11を見ると分かるように、埋め込み率が76%から83%に増加すると、パターンP1の倒壊率が減少している(測定条件1-2→測定条件1-3)。加えて、埋め込み率が83%から91%に増加すると、パターンP1の倒壊率が急激に減少している(測定条件1-3→測定条件1-4)。
【0110】
その一方で、埋め込み率が219%から168%に減少すると、パターンP1の倒壊率が急激に減少している(測定条件1-11→測定条件1-10)。
したがって、埋め込み率は、76%を超え、219%未満であることが好ましく、83%以上、219%未満であることがさらに好ましい。
埋め込み率が76%を超え、219%未満の範囲では、パターンP1の倒壊率は、87.0%未満である。
【0111】
埋め込み率が91%以上、168%以下の範囲では、パターンP1の倒壊率は、46.8%以下である。
埋め込み率が102%以上、138%以下の範囲では、パターンP1の倒壊率は、17.6%以下である。パターンP1の倒壊率は、埋め込み率が102%のときに最も低く、8.32%であった。
【0112】
したがって、埋め込み率は、91%以上、168%以下であってもよいし、102%以上、138%以下であってもよい。
前述のように、樟脳の初期濃度は、0.62wt%を超え、2.06wt%未満であることが好ましい。
図9に示すように、樟脳の初期濃度が0.62wt%のとき、埋め込み率は、76%である。樟脳の初期濃度が2.06wt%のとき、埋め込み率は、219%である。したがって、この例では、樟脳の初期濃度を好ましい範囲内の値に設定すると、埋め込み率も自動的に好ましい範囲内の値に設定される。
【0113】
図12は、凝固体101が厚すぎるとパターンP1の倒壊率が高くなる現象に対して想定されるメカニズムを説明するための模式図である。
図13は、凝固体101が薄すぎるとパターンP1の倒壊率が高くなる現象に対して想定されるメカニズムを説明するための模式図である。
図11に示すように、凝固体101が厚すぎると(埋め込み率が高すぎると)、パターンP1の倒壊率が高くなる。また、凝固体101の厚みT1がパターンP1の高さHpより小さくてもパターンP1の倒壊率が低い場合があるが、凝固体101が薄すぎると(埋め込み率が低すぎると)、パターンP1の倒壊率が高くなる。以下では、これらの現象に対して想定されるメカニズムについて説明する。
【0114】
最初に、凝固体101が厚すぎると、パターンP1の倒壊率が高くなる現象に対して想定されるメカニズムについて説明する。
乾燥前処理液に含まれるIPAの蒸発が進むと、乾燥前処理液における樟脳の濃度が徐々に高まり、乾燥前処理液の凝固点が徐々に上昇する。乾燥前処理液の凝固点が乾燥前処理液の温度に達すると、乾燥前処理液の凝固が始まり、樟脳を含む凝固体101が基板W上に形成される。
【0115】
埋め込み率が100%以上の場合、つまり、凝固体101の厚みT1(
図6B参照)がパターンP1の高さHp(
図6B参照)以上である場合、凝固体101が形成される前は、パターンP1の間だけでなく、パターンP1の上方にも乾燥前処理液が存在している。半導体ウエハなどの基板Wでは、隣接する2つの凸状パターンP1の間隔が狭いので、パターンP1の間に位置する乾燥前処理液の凝固点が降下する。したがって、パターンP1の間に位置する乾燥前処理液の凝固点は、パターンP1の上方に位置する乾燥前処理液の凝固点よりも低い。
【0116】
パターンP1の上方に位置する乾燥前処理液の凝固点が、パターンP1の間に位置する乾燥前処理液の凝固点よりも高いと、乾燥前処理液の凝固は、パターンP1の間以外の位置で始まる。具体的には、
図12(a)に示すように、樟脳の結晶核が、乾燥前処理液の表層、つまり、乾燥前処理液の上面(液面)からパターンP1の上面までの範囲に位置する液体層に発生し、この結晶核が徐々に大きくなる。そして、ある程度の時間が経つと、乾燥前処理液の表層の全体が固まり、凝固体101になる。
【0117】
ここで、パターンP1の間に位置する乾燥前処理液の凝固点が、パターンP1の上方に位置する乾燥前処理液の凝固点よりも低いと、
図12(b)に示すように、パターンP1の間に位置する乾燥前処理液が凝固せずに液体のまま残る場合がある。この場合、固体(凝固体101)と液体(乾燥前処理液)の界面がパターンP1の近傍に形成される。
図12(b)は、固体および液体の不明瞭な界面(unclear interface)がパターンP1の間に位置している状態を示している。
【0118】
固体および液体は、表面自由エネルギーが互いに異なる。固体(凝固体101)および液体(乾燥前処理液)の不明瞭な界面がパターンP1の間に位置している場合、ラプラス圧に起因する力がパターンP1に加わる。このとき、パターンP1に加わる力は、凝固体101が厚くなるにしたがって増加する。したがって、凝固体101が厚すぎると、パターンP1を倒壊させる倒壊力がパターンP1の強度を上回り、パターンP1の倒壊率が高くなる。このようなメカニズムにより、パターンP1の倒壊率が上昇すると考えられる。
【0119】
次に、埋め込み率が100%未満でもパターンP1の倒壊率が低くなる現象に対して想定されるメカニズムについて説明する。
凝固体101が形成されるときは、IPAの蒸発が進むにしたがって乾燥前処理液の上面(液面)が徐々にパターンP1の下端に近づく。凝固体101の厚みT1がパターンP1の高さHpよりも大幅に小さい場合は、
図13(a)に示すように、乾燥前処理液の全体が凝固する前に、乾燥前処理液の上面が隣接する2つの凸状パターンP1の間に移動する。つまり、気体と液体(乾燥前処理液)との界面がパターンP1の間に移動する。そのため、乾燥前処理液の表面張力に起因する力がパターンP1に加わり、パターンP1が倒壊すると考えられる。そして、
図13(b)に示すように、パターンP1が倒壊した状態で凝固体101が形成されると考えられる。
【0120】
凝固体101の厚みT1がパターンP1の高さHpよりも僅かに小さい場合も、気体と液体との界面がパターンP1の間に移動し得ると考えられる。しかしながら、この場合は、樟脳の結晶核がパターンP1の間に既に形成されており、この結晶核がある程度大きくなっていると考えられる。この場合、パターンP1の傾きが大きな結晶核によって規制され、パターンP1の倒壊が発生し難くなる。このようなメカニズムにより、凝固体101の厚みT1がパターンP1の高さHpより多少小さくても、パターンP1の倒壊率が低下すると考えられる。
【0121】
以上のように、凝固体101は厚すぎても薄すぎても、パターンP1の倒壊率が低下する。言い換えると、乾燥後の基板WのパターンP1の倒壊率を低下させる上で、凝固体101の厚さには適切な範囲がある。たとえば、
図9を参照して説明した範囲内の値に凝固体101を設定すれば、乾燥後の基板WのパターンP1の倒壊率を低下させることができる。これにより、パターンP1の倒壊率を抑えながら、基板Wを乾燥させることができる。
【0122】
次に、別のサンプルを用いたときの測定結果について説明する。
図14~
図16は、形状および強度が同様のパターンP1が形成された複数のサンプルを樟脳の初期濃度を変えながら処理したときに得られたパターンP1の倒壊率の一例を示す表である。
図14は、昇華性物質が樟脳であり、溶媒がIPAであるときのパターンP1の倒壊率を示しており、
図15は、昇華性物質が樟脳であり、溶媒がアセトンであるときのパターンP1の倒壊率を示しており、
図16は、昇華性物質が樟脳であり、溶媒がPGEEであるときのパターンP1の倒壊率を示している。
【0123】
図14に示す測定条件2-1~測定条件2-5において、樟脳の初期濃度以外の条件は同じである。同様に、
図15に示す測定条件3-1~測定条件3-13において、樟脳の初期濃度以外の条件は同じであり、
図16に示す測定条件4-1~測定条件4-8において、樟脳の初期濃度以外の条件は同じである。
図14~
図16の測定では、同様のサンプルを用いた。
図14~
図16の測定に用いられたサンプルのパターンP1の強度は、
図9の測定に用いられたサンプルのパターンP1の強度とは異なる。したがって、
図9および
図14は、いずれも、昇華性物質が樟脳であり、溶媒がIPAであるときのパターンP1の倒壊率を示しているが、測定に用いられたパターンP1の強度が異なるので、
図9および
図14に示す倒壊率を単純に比較することはできない。
【0124】
図17は、
図14における樟脳の濃度とパターンP1の倒壊率との関係を示す折れ線グラフである。
図18は、
図15における樟脳の濃度とパターンP1の倒壊率との関係を示す折れ線グラフである。
図19は、
図16における樟脳の濃度とパターンP1の倒壊率との関係を示す折れ線グラフである。
最初に、
図14および
図17を参照して、溶媒がIPAであるときの樟脳の初期濃度とパターンP1の倒壊率との関係の一例について説明する。
【0125】
図14の測定条件2-1に示すように、樟脳の初期濃度が0.89wt%のとき、パターンP1の倒壊率は、91.7%であった。
図14の測定条件2-2に示すように、樟脳の初期濃度が0.96wt%のとき、パターンP1の倒壊率は、58.4%であった。
図14の測定条件2-3に示すように、樟脳の初期濃度が1.13wt%のとき、パターンP1の倒壊率は、37.3であった。
【0126】
図14の測定条件2-4に示すように、樟脳の初期濃度が1.38wt%のとき、パターンP1の倒壊率は、50.6%であった。
図14の測定条件2-5に示すように、樟脳の初期濃度が1.55wt%のとき、パターンP1の倒壊率は、95.3%であった。
図14および
図17を見ると分かるように、樟脳の初期濃度が0.89wt%から0.96wt%に増加すると、パターンP1の倒壊率が急激に減少している(測定条件2-1→測定条件2-2)。樟脳の初期濃度が1.55wt%から1.38wt%に減少したときも、パターンP1の倒壊率が急激に減少している(測定条件2-5→測定条件2-4)。
【0127】
樟脳の初期濃度が0.96wt%以上、1.38wt%以下の範囲では、パターンP1の倒壊率は、58.4%以下である。したがって、溶媒がIPAである場合、樟脳の初期濃度は、0.89wt%を超え、1.55wt%未満であることが好ましく、0.96wt%以上、1.38wt%以下であることがさらに好ましい。
次に、
図15および
図18を参照して、溶媒がアセトンであるときの樟脳の初期濃度とパターンP1の倒壊率との関係の一例について説明する。
【0128】
図15の測定条件3-3に示すように、樟脳の初期濃度が0.62wt%のとき、パターンP1の倒壊率は、86.6%であった。
図15の測定条件3-4に示すように、樟脳の初期濃度が0.69wt%のとき、パターンP1の倒壊率は、60.2%であった。
図15の測定条件3-9に示すように、樟脳の初期濃度が1.04wt%のとき、パターンP1の倒壊率は、99.7%であった。
【0129】
図15の測定条件3-8に示すように、樟脳の初期濃度が0.96wt%のとき、パターンP1の倒壊率は、82.2%であった。
図15の測定条件3-7に示すように、樟脳の初期濃度が0.89wt%のとき、パターンP1の倒壊率は、76.4%であった。
図15および
図18を見ると分かるように、樟脳の初期濃度が0.62wt%から0.69wt%に増加すると、パターンP1の倒壊率が急激に減少している(測定条件3-3→測定条件3-4)。樟脳の初期濃度が1.04wt%から0.96wt%に減少したときも、パターンP1の倒壊率が急激に減少している(測定条件3-9→測定条件3-8)。
【0130】
しかし、樟脳の初期濃度が0.96wt%以上、1.04wt%以下の範囲では、パターンP1の倒壊率があまり低くない。樟脳の初期濃度が0.96wt%から0.89wt%に減少したときは(測定条件3-8→測定条件3-7)、パターンP1の倒壊率が急激に減少している上に、パターンP1の倒壊率が比較的低い。したがって、溶媒がアセトンである場合、樟脳の初期濃度は、0.62wt%を超え、0.96wt%以下であることが好ましい。
【0131】
次に、
図16および
図19を参照して、溶媒がPGEEであるときの樟脳の初期濃度とパターンP1の倒壊率との関係の一例について説明する。
図16の測定条件4-3に示すように、樟脳の初期濃度が3.06wt%のとき、パターンP1の倒壊率は、98.9%であった。
図16の測定条件4-4に示すように、樟脳の初期濃度が3.55wt%のとき、パターンP1の倒壊率は、88.3%であった。
【0132】
図16の測定条件4-5に示すように、樟脳の初期濃度が4.23wt%のとき、パターンP1の倒壊率は、79.4%であった。
図16の測定条件4-8に示すように、樟脳の初期濃度が9.95wt%のとき、パターンP1の倒壊率は、99.5%であった。
図16の測定条件4-7に示すように、樟脳の初期濃度が6.86wt%のとき、パターンP1の倒壊率は、62.1%であった。
【0133】
図16の測定条件4-6に示すように、樟脳の初期濃度が5.23wt%のとき、パターンP1の倒壊率は、57.5%であった。
図15および
図18を見ると分かるように、樟脳の初期濃度が3.06wt%から3.55wt%に増加すると(測定条件4-3→測定条件4-4)、パターンP1の倒壊率が急激に減少しているものの、この範囲では、パターンP1の倒壊率があまり低くない。樟脳の初期濃度が3.55wt%から4.23wt%に増加すると(測定条件4-4→測定条件4-5)、パターンP1の倒壊率が急激に減少している上に、パターンP1の倒壊率が比較的低い。
【0134】
また、樟脳の初期濃度が9.95wt%から6.86wt%に減少すると(測定条件4-8→測定条件4-7)、パターンP1の倒壊率が急激に減少しているものの、この範囲では、パターンP1の倒壊率があまり低くない場合が含まれる。つまり、樟脳の初期濃度が6.86wt%付近のときは、パターンP1の倒壊率が低いが、樟脳の初期濃度が9.95wt%%付近のときは、パターンP1の倒壊率が高い。
【0135】
樟脳の初期濃度が6.86wt%から5.23wt%に減少すると(測定条件4-7→測定条件4-6)、パターンP1の倒壊率が緩やかに減少している。したがって、溶媒がPGEEである場合、樟脳の初期濃度は、3.55wt%を超え、6.86wt%以下であることが好ましい。
図20は、
図17~
図19の折れ線を重ね合わせたグラフである。
図20では、
図17の折れ線(IPA)を実線で示し、
図18の折れ線(アセトン)を破線で示し、
図19の折れ線(PGEE)を一点鎖線で示している。
【0136】
溶媒がIPAである場合、樟脳の初期濃度が1.13wt%のときに、パターンP1の倒壊率が最も低く、37.3%であった(測定条件2-3)。
溶媒がアセトンである場合、樟脳の初期濃度が0.78wt%のときに、パターンP1の倒壊率が最も低く、57.6%であった(測定条件3-5)。
溶媒がPGEEである場合、樟脳の初期濃度が5.23wt%のときに、パターンP1の倒壊率が最も低く、57.5%であった(測定条件4-6)。
【0137】
言い換えると、パターンP1の倒壊率が最も低いときの樟脳の初期濃度は、溶媒がアセトンである場合は0.78wt%であり、溶媒がIPAである場合は1.13wt%であり、溶媒がPGEEである場合は5.23wt%であった。これらの溶媒に着目して比較すると、パターンP1の倒壊率が最も低いときの樟脳の初期濃度は、溶媒の蒸気圧が低くなるにつれて高くなる。すなわち、溶媒が蒸発し易ければ、乾燥前処理液に含まれる昇華性物質の濃度は必ずしも高くする必要はない。逆に、溶媒が蒸発し難ければ、乾燥前処理液に含まれる昇華性物質の濃度は高くする必要がある。
【0138】
本発明は乾燥前処理液から溶媒を蒸発させることにより、昇華性物質を含む凝固体101を基板Wの表面上に形成する必要があるため、たとえば昇華性物質の蒸気圧に応じて溶媒を選定する工程を行ってもよい。
前述のように、
図9の測定結果によると、樟脳の初期濃度を好ましい範囲内の値に設定すると、埋め込み率も自動的に好ましい範囲内の値に設定される。したがって、
図14~
図16の測定でも、樟脳の初期濃度を好ましい範囲内の値に設定すると、埋め込み率も自動的に好ましい範囲内の値に設定されると考えられる。これにより、パターンP1の倒壊率が低下したと考えられる。
【0139】
ただし、パターンP1の形状や強度によっては、樟脳の初期濃度を好ましい範囲内の値に設定したからといって、必ずしも埋め込み率が好ましい範囲内の値に設定されるとは限らないと考えられる。同様に、パターンP1の形状や強度によっては、埋め込み率を好ましい範囲内の値に設定したからといって、必ずしも樟脳の初期濃度が好ましい範囲内の値に設定されるとは限らないと考えられる。
【0140】
以上のように第1実施形態では、溶質に相当する昇華性物質と溶媒とを含む乾燥前処理液を、パターンP1が形成された基板Wの表面に供給する。その後、乾燥前処理液から溶媒を蒸発させる。これにより、昇華性物質を含む凝固体101が基板Wの表面上に形成される。その後、基板W上の凝固体101を液体を経ずに気体に変化させる。これにより、凝固体101が基板Wの表面から除去される。したがって、スピンドライなどの従来の乾燥方法に比べて、パターンP1の倒壊率を低下させることができる。
【0141】
乾燥前処理液から溶媒を蒸発させると、昇華性物質を含む凝固体101が基板Wの表面上に形成される。凝固体101が形成された時点の埋め込み率は、76を超え、219未満である。前述のように、埋め込み率がこの範囲外のときは、パターンP1の強度によっては、パターンP1の倒壊数が増えてしまう。逆に、埋め込み率がこの範囲内であれば、パターンP1の強度が低くても、パターンP1の倒壊数を減らすことができる。したがって、パターンP1の強度が低くても、パターンP1の倒壊率を低下させることができる。
【0142】
次に、第2実施形態について説明する。
第1実施形態に対する第2実施形態の主な相違点は、昇華性物質および溶媒に加えて、吸着物質が乾燥前処理液に含まれていることである。
以下の
図21~
図23Fにおいて、
図1~
図20に示された構成と同等の構成については、
図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0143】
図21は、第2実施形態に係る基板処理装置1に備えられた処理ユニット2の内部を水平に見た模式図である。
処理ユニット2の複数のノズルは、第1薬液ノズルに相当する薬液ノズル31から吐出される薬液とは種類が異なる薬液を基板Wの上面に向けて吐出する第2薬液ノズル31Bをさらに備えている。第2薬液ノズル31Bは、チャンバー4内で水平に移動可能なスキャンノズルであってもよいし、チャンバー4の隔壁5に対して固定された固定ノズルであってもよい。
図21は、第2薬液ノズル31Bがスキャンノズルである例を示している。
【0144】
第2薬液ノズル31Bは、第2薬液ノズル31Bに薬液を案内する第2薬液配管32Bに接続されている。第2薬液配管32Bに介装された第2薬液バルブ33Bが開かれると、薬液が、第2薬液ノズル31Bの吐出口から下方に連続的に吐出される。薬液ノズル31から吐出される薬液とは種類が異なるのであれば、第2薬液ノズル31Bから吐出される薬液は、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸、リン酸、酢酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえばクエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(たとえば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、界面活性剤、および腐食防止剤の少なくとも1つを含む液であってもよいし、これ以外の液体であってもよい。
【0145】
第2薬液ノズル31Bは、鉛直方向および水平方向の少なくとも一方に第2薬液ノズル31Bを移動させるノズル移動ユニット34Bに接続されている。ノズル移動ユニット34Bは、第2薬液ノズル31Bから吐出された薬液が基板Wの上面に供給される処理位置と、第2薬液ノズル31Bが平面視で処理カップ21のまわりに位置する待機位置と、の間で第2薬液ノズル31Bを水平に移動させる。
【0146】
前述のように、乾燥前処理液には、昇華性物質および溶媒に加えて、吸着物質が含まれている。乾燥前処理液は、溶質に相当する昇華性物質と、昇華性物質と溶け合う溶媒と、パターンP1(
図23A参照)の表面に吸着する吸着物質と、を含む溶液である。昇華性物質、溶媒、および吸着物質は、互いに種類が異なる物質である。吸着物質は、昇華性物質および溶媒の少なくとも一方と溶け合う物質である。
【0147】
溶媒は、昇華性物質と溶け合う溶解物質の液体である。乾燥前処理液における溶解物質の濃度は、乾燥前処理液における昇華性物質の濃度よりも高く、乾燥前処理液における吸着物質の濃度よりも高い。乾燥前処理液における吸着物質の濃度は、乾燥前処理液における昇華性物質の濃度と等しくてもよいし、乾燥前処理液における昇華性物質の濃度とは異なっていてもよい。
【0148】
吸着物質は、親水基および疎水基の両方を含む両親媒性分子である。吸着物質は、界面活性剤であってもよい。昇華性物質および溶媒とは種類が異なるのであれば、吸着物質は、常温または常圧で液体を経ずに固体から気体に変化する物質(昇華性を有する物質)であってもよいし、これとは異なる物質であってもよい。昇華性物質は、疎水性物質または親水性物質であってもよいし、両親媒性分子であってもよい。同様に、溶媒は、疎水性物質または親水性物質であってもよいし、両親媒性分子であってもよい。
【0149】
昇華性物質が親水性物質または両親媒性分子である場合、吸着物質は、昇華性物質よりも親水性が高くてもよい。言い換えると、水に対する吸着物質の溶解度は、水に対する昇華性物質の溶解度よりも高くてもよい。昇華性物質が疎水性物質または両親媒性分子である場合、昇華性物質は、吸着物質よりも疎水性が高くてもよい。言い換えると、油に対する昇華性物質の溶解度は、油に対する吸着物質の溶解度よりも高くてもよい。これらは、溶媒についても同様である。
【0150】
パターンP1の表面が親水性であり、吸着物質が昇華性物質よりも親水性が高い場合、吸着物質は、昇華性物質よりもパターンP1の表面に吸着し易い。吸着物質の親水基は、パターンP1の表面に付着し、昇華性物質は、パターンP1の表面に付着している吸着物質の疎水基に付着する。パターンP1の表面が疎水性であり、昇華性物質が吸着物質よりも疎水性が高い場合、昇華性物質は、吸着物質よりもパターンP1の表面に吸着し易い。したがって、パターンP1の表面が親水性および疎水性のいずれであっても、パターンP1の表面上またはその近傍に昇華性物質を位置させることができる。
【0151】
昇華性物質の凝固点は、室温よりも高い。昇華性物質の凝固点は、溶媒の沸点より高くてもよい。溶媒の凝固点は、室温よりも低い。吸着物質の凝固点は、室温であってもよいし、室温とは異なっていてもよい。吸着物質の凝固点が室温よりも高い場合、吸着物質の凝固点は、昇華性物質の凝固点と等しくてもよいし、昇華性物質の凝固点とは異なっていてもよい。乾燥前処理液の凝固点は、室温(23℃またはその近傍の値)よりも低い。乾燥前処理液の凝固点は、室温以上であってもよい。
【0152】
溶媒の蒸気圧は、昇華性物質の蒸気圧よりも高く、吸着物質の蒸気圧よりも高い。吸着物質の蒸気圧は、昇華性物質の蒸気圧と等しくてもよいし、昇華性物質の蒸気圧とは異なっていてもよい。溶媒は、昇華性物質および吸着物質の蒸発速度よりも大きい蒸発速度で乾燥前処理液から蒸発する。乾燥前処理液の凝固点は、溶媒の蒸発に伴って低下する。乾燥前処理液の凝固点が室温まで低下すると、乾燥前処理液は、液体から固体に変化する。これにより、昇華性物質を含む凝固体101が形成される。
【0153】
以下では、昇華性物質が樟脳であり、溶媒がIPAであり、吸着物質がターシャリーブチルアルコールである例について説明する。以下の説明において、乾燥前処理液は、樟脳、IPA、およびターシャリーブチルアルコールの溶液である。樟脳の代わりに、ナフタレンが乾燥前処理液に含まれていてもよい。IPAの代わりに、アセトンまたはPGEEが乾燥前処理液に含まれていてもよい。ターシャリーブチルアルコールの代わりに、シクロヘキサノールが乾燥前処理液に含まれていてもよい。
【0154】
樟脳の分子には、疎水基である炭化水素基と、親水基であるカルボニル基とが含まれる。IPAの分子には、疎水基であるアルキル基と、親水基である水酸基とが含まれる。ターシャリーブチルアルコールの分子にも、疎水基であるアルキル基と、親水基である水酸基とが含まれる。IPAおよびターシャリーブチルアルコールは、両親媒性分子である。樟脳は、厳密には両親媒性分子であるが、ターシャリーブチルアルコールと比べると水に対する溶解度が大幅に低いので、疎水性物質とみなす。樟脳は、ターシャリーブチルアルコールよりも疎水性が高い。
【0155】
図3に示す第1タンク87Aおよび第2タンク87Bには、吸着物質の濃度が等しく、昇華性物質の濃度が異なる乾燥前処理液が貯留されている。したがって、第1タンク87Aから供給された乾燥前処理液が、第2タンク87Bから供給された乾燥前処理液と混ざっても、混ざり合った乾燥前処理液における吸着物質の濃度は、第1タンク87Aおよび第2タンク87B内の乾燥前処理液における吸着物質の濃度と変わらない。第1タンク87Aおよび第2タンク87B内の乾燥前処理液における昇華性物質の初期濃度は、第1実施形態と同様の値に設定されていてもよいし、第1実施形態とは異なる値に設定されていてもよい。
【0156】
次に、第2実施形態に係る基板Wの処理の一例について説明する。
図22は、第2実施形態に係る基板Wの処理の一例について説明するための工程図である。以下では、
図21および
図22を参照する。
第2実施形態に係る基板Wの処理の一例では、
図5に示すステップS3~ステップS4に代えて、
図22に示すステップS3-1~ステップS4-2が行われる。これら以外のステップは、
図5に示すステップS1~ステップS2およびステップS5~ステップS11と同様である。したがって、以下では、ステップS3-1~ステップS4-2について説明する。
【0157】
また、以下では、フッ酸およびSC1(アンモニア、過酸化水素、および水の混合液)が、基板Wに相当するシリコンウエハに順次供給される例について説明する。シリコンウエハに形成された自然酸化膜は、フッ酸の供給によってシリコンウエハから除去される。これにより、シリコンがパターンP1の表面で露出する。その後、SC1がシリコンウエハに供給される。パターンP1の表面で露出するシリコンは、SC1との接触により酸化シリコンに変化する。これにより、パターンP1の表面が疎水性から親水性に変化する。したがって、乾燥前処理液は、パターンP1の表面が親水性のときにシリコンウエハに供給される。
【0158】
図22に示すように、基板Wの回転が開始された後は(
図22のステップS2)、薬液の一例であるフッ酸を基板Wの上面に供給し、基板Wの上面全域を覆うフッ酸の液膜を形成する第1薬液供給工程(
図22のステップS3-1)が行われる。
具体的には、遮断部材51が上位置に位置しており、少なくとも一つのガード24が上位置に位置している状態で、ノズル移動ユニット34が薬液ノズル31を待機位置から処理位置に移動させる。その後、薬液バルブ33が開かれ、薬液ノズル31がフッ酸の吐出を開始する。薬液バルブ33が開かれてから所定時間が経過すると、薬液バルブ33が閉じられ、フッ酸の吐出が停止される。その後、ノズル移動ユニット34が、薬液ノズル31を待機位置に移動させる。
【0159】
薬液ノズル31から吐出されたフッ酸は、液体供給速度で回転している基板Wの上面に衝突した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。そのため、フッ酸が基板Wの上面全域に供給され、基板Wの上面全域を覆うフッ酸の液膜が形成される。薬液ノズル31がフッ酸を吐出しているとき、ノズル移動ユニット34は、基板Wの上面に対するフッ酸の着液位置が中央部と外周部とを通るように着液位置を移動させてもよいし、中央部で着液位置を静止させてもよい。
【0160】
次に、リンス液の一例である純水を基板Wの上面に供給して、基板W上のフッ酸を洗い流す第1リンス液供給工程(
図22のステップS4-1)が行われる。
具体的には、遮断部材51が上位置に位置しており、少なくとも一つのガード24が上位置に位置している状態で、ノズル移動ユニット38がリンス液ノズル35を待機位置から処理位置に移動させる。その後、リンス液バルブ37が開かれ、リンス液ノズル35がリンス液の吐出を開始する。純水の吐出が開始される前に、ガード昇降ユニット27は、基板Wから排出された液体を受け止めるガード24を切り替えるために、少なくとも一つのガード24を鉛直に移動させてもよい。リンス液バルブ37が開かれてから所定時間が経過すると、リンス液バルブ37が閉じられ、リンス液の吐出が停止される。その後、ノズル移動ユニット38が、リンス液ノズル35を待機位置に移動させる。
【0161】
リンス液ノズル35から吐出された純水は、液体供給速度で回転している基板Wの上面に衝突した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上のフッ酸は、リンス液ノズル35から吐出された純水に置換される。これにより、基板Wの上面全域を覆う純水の液膜が形成される。リンス液ノズル35が純水を吐出しているとき、ノズル移動ユニット38は、基板Wの上面に対する純水の着液位置が中央部と外周部とを通るように着液位置を移動させてもよいし、中央部で着液位置を静止させてもよい。
【0162】
次に、薬液の一例であるSC1を基板Wの上面に供給し、基板Wの上面全域を覆うSC1の液膜を形成する第2薬液供給工程(
図22のステップS3-2)が行われる。
具体的には、遮断部材51が上位置に位置しており、少なくとも一つのガード24が上位置に位置している状態で、ノズル移動ユニット34Bが第2薬液ノズル31Bを待機位置から処理位置に移動させる。その後、第2薬液バルブ33Bが開かれ、第2薬液ノズル31BがSC1の吐出を開始する。第2薬液バルブ33Bが開かれてから所定時間が経過すると、第2薬液バルブ33Bが閉じられ、SC1の吐出が停止される。その後、ノズル移動ユニット34Bが、第2薬液ノズル31Bを待機位置に移動させる。
【0163】
第2薬液ノズル31Bから吐出されたSC1は、液体供給速度で回転している基板Wの上面に衝突した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上の純水は、第2薬液ノズル31Bから吐出されたSC1に置換される。これにより、基板Wの上面全域を覆うSC1の液膜が形成される。第2薬液ノズル31BがSC1を吐出しているとき、ノズル移動ユニット34Bは、基板Wの上面に対するSC1の着液位置が中央部と外周部とを通るように着液位置を移動させてもよいし、中央部で着液位置を静止させてもよい。
【0164】
次に、リンス液の一例である純水を基板Wの上面に供給して、基板W上のSC1を洗い流す第2リンス液供給工程(
図22のステップS4-2)が行われる。
具体的には、遮断部材51が上位置に位置しており、少なくとも一つのガード24が上位置に位置している状態で、ノズル移動ユニット38がリンス液ノズル35を待機位置から処理位置に移動させる。その後、リンス液バルブ37が開かれ、リンス液ノズル35がリンス液の吐出を開始する。純水の吐出が開始される前に、ガード昇降ユニット27は、基板Wから排出された液体を受け止めるガード24を切り替えるために、少なくとも一つのガード24を鉛直に移動させてもよい。リンス液バルブ37が開かれてから所定時間が経過すると、リンス液バルブ37が閉じられ、リンス液の吐出が停止される。その後、ノズル移動ユニット38が、リンス液ノズル35を待機位置に移動させる。
【0165】
リンス液ノズル35から吐出された純水は、液体供給速度で回転している基板Wの上面に衝突した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上のSC1は、リンス液ノズル35から吐出された純水に置換される。これにより、基板Wの上面全域を覆う純水の液膜が形成される。リンス液ノズル35が純水を吐出しているとき、ノズル移動ユニット38は、基板Wの上面に対する純水の着液位置が中央部と外周部とを通るように着液位置を移動させてもよいし、中央部で着液位置を静止させてもよい。
【0166】
第2リンス液供給工程(
図22のステップS4-2)が行われた後は、
図5に示す第1実施形態に係る基板Wの処理の一例と同様に、置換液および乾燥前処理液を基板Wに順次供給し(
図22のステップS5~ステップS6)、基板Wの表面上の凝固体101(
図23E参照)を昇華させる(
図22のステップS7~ステップS9)。その後、基板Wをチャンバー4から搬出する(
図22のステップS10~ステップS11)。これにより、処理済みの基板Wがチャンバー4から搬出される。
【0167】
次に、乾燥前処理液が供給されたパターンP1の表面で発生すると想定される現象について説明する。
図23A~
図23Fは、同現象について説明するための基板Wの断面図である。
図23A~
図23Eでは、ターシャリーブチルアルコールをTBAと表している。
図23A~
図23Cでは、ターシャリーブチルアルコール分子の親水基を太い直線で表しており、ターシャリーブチルアルコール分子の疎水基を黒丸で表している。
【0168】
前述のように、第2実施形態に係る基板Wの処理の一例では、フッ酸およびSC1が基板Wに相当するシリコンウエハに順次供給される。パターンP1の表面は、フッ酸の供給によって疎水性に変化する。その後、パターンP1の表面は、SC1の供給によって親水性に変化する。したがって、樟脳、IPA、およびターシャリーブチルアルコールを含む乾燥前処理液は、パターンP1の表面が親水性のときにシリコンウエハに供給される。
【0169】
樟脳は、疎水性とみなせる物質であり、ターシャリーブチルアルコールは、親水基と疎水基とを含む両親媒性分子である。
図23Aに示すように、パターンP1の表面が親水性なので、ターシャリーブチルアルコール分子の親水基は、パターンP1の表面に引き寄せられる。これにより、
図23Bに示すように、ターシャリーブチルアルコール分子の親水基がパターンP1の表面に吸着し、ターシャリーブチルアルコールの薄膜が、パターンP1の側面Psおよび上面Puに形成される。
【0170】
図23Bは、ターシャリーブチルアルコールの単分子膜がパターンP1の表面に沿って形成されている例を示している。
図23Cに示すように、この例の場合、樟脳分子の疎水基が、パターンP1の表面に吸着しているターシャリーブチルアルコール分子の疎水基に付着する。ターシャリーブチルアルコールの積層膜がパターンP1の表面に沿って形成される場合は、積層膜の表層で露出するターシャリーブチルアルコール分子の疎水基に樟脳分子の疎水基が付着する。これにより、ターシャリーブチルアルコールの薄膜を介して樟脳がパターンP1の表面に保持される。
【0171】
図23Cに示すように、乾燥前処理液中の樟脳分子は、ターシャリーブチルアルコールの薄膜に保持されている樟脳分子に付着する。この現象により、多くの樟脳分子がターシャリーブチルアルコールの分子層を介してパターンP1の側面Psに保持される。そのため、
図23Dに示すように、十分な量の樟脳分子がパターンP1の間に入り込む。
図23Dでは、パターンP1の側面Psおよび上面Puだけでなく、隣接する2つのパターンP1の間に形成された凹部の底面Pbにも、ターシャリーブチルアルコールの薄膜が形成されている例を示している。
【0172】
溶媒に相当するIPAは、ターシャリーブチルアルコールの薄膜がパターンP1の表面に沿って形成されており、複数の樟脳分子がターシャリーブチルアルコールの薄膜を介してパターンP1の表面に保持されている状態で乾燥前処理液から蒸発する。IPAの蒸発に伴って、乾燥前処理液の凝固点が低下し、樟脳およびターシャリーブチルアルコールの濃度が上昇する。これにより、
図23Eに示すように、樟脳およびターシャリーブチルアルコールを含む凝固体101が基板Wの表面上に形成される。その後、
図23Fに示すように、凝固体101を気化させ、基板Wの表面から除去する。
【0173】
本発明者らの研究によると、パターンP1が形成されたシリコン製の板状のサンプルを基板Wの代わりに用いて第2実施形態に係る基板Wの処理を行うときに、樟脳、IPA、およびターシャリーブチルアルコールの溶液を乾燥前処理液として用いると、樟脳およびIPAの溶液を乾燥前処理液として用いた場合に比べてパターンP1の倒壊率が低下することが確認された。ターシャリーブチルアルコールの濃度(体積パーセント濃度)を0.1vol%~10vol%の範囲で変更したところ、パターンP1の倒壊率に大きな差は見られなかった。したがって、少量であってもターシャリーブチルアルコールを添加すれば、パターンP1の倒壊率が低下する。ターシャリーブチルアルコールの濃度は、前記の範囲内の値であってもよいし、前記の範囲外の値であってもよい。
【0174】
第2実施形態では、第1実施形態に係る効果に加えて、次の効果を奏することができる。具体的には、第2実施形態では、昇華性物質および溶媒に加えて吸着物質を含む乾燥前処理液を、パターンP1が形成された基板Wの表面に供給する。その後、乾燥前処理液から溶媒を蒸発させる。これにより、昇華性物質を含む凝固体101が基板Wの表面上に形成される。その後、基板W上の凝固体101を液体を経ずに気体に変化させる。これにより、凝固体101が基板Wの表面から除去される。したがって、スピンドライなどの従来の乾燥方法に比べて、パターンP1の倒壊率を低下させることができる。
【0175】
昇華性物質は、分子中に疎水基を含む物質である。吸着物質は、分子中に疎水基と親水基とを含む物質である。吸着物質の親水性は、昇華性物質の親水性よりも高い。パターンP1の表面が親水性および疎水性のいずれであっても、もしくは、親水性の部分と疎水性の部分とがパターンP1の表面に含まれていても、乾燥前処理液中の吸着物質は、パターンP1の表面に吸着する。
【0176】
具体的には、パターンP1の表面が親水性である場合、乾燥前処理液中の吸着物質の親水基はパターンP1の表面に付着し、乾燥前処理液中の昇華性物質の疎水基は吸着物質の疎水基に付着する。これにより、吸着物質を介して昇華性物質がパターンP1の表面に保持される。パターンP1の表面が疎水性である場合は、少なくとも昇華性物質の疎水基がパターンP1の表面に付着する。したがって、パターンP1の表面が親水性および疎水性のいずれであっても、もしくは、親水性の部分と疎水性の部分とがパターンP1の表面に含まれていても、溶媒の蒸発前に昇華性物質がパターンP1の表面またはその近傍に保持される。
【0177】
昇華性物質が親水性であり、パターンP1の表面が親水性である場合、昇華性物質が電気的な引力によりパターンP1の表面に引き寄せられる。その一方で、昇華性物質が疎水性であり、パターンP1の表面が親水性である場合は、このような引力が弱いもしくは発生しないので、昇華性物質がパターンP1の表面に付着し難い。さらに、昇華性物質が疎水性であり、パターンP1の表面が親水性であることに加え、パターンP1の間隔が極めて狭い場合は、十分な量の昇華性物質がパターンP1の間に入り込まないことが考えられる。これらの現象は、昇華性物質が親水性であり、パターンP1の表面が疎水性である場合も発生する。
【0178】
昇華性物質がパターンP1の表面またはその近傍にない状態で溶媒を蒸発させると、パターンP1の表面に接する溶媒からパターンP1に倒壊力が加わり、パターンP1が倒壊するかもしれない。十分な量の昇華性物質がパターンP1の間にない状態で溶媒を蒸発させると、パターンP1の間の隙間が凝固体101で埋まらず、パターンP1が倒壊することも考えられる。溶媒を蒸発させる前に昇華性物質をパターンP1の表面またはその近傍に配置すれば、このような倒壊を減らすことができる。これにより、パターンP1の倒壊率を低下させることができる。
【0179】
第2実施形態では、昇華性物質だけでなく、吸着物質も昇華性を有している。吸着物質は、常温または常圧で液体を経ずに固体から気体に変化する。パターンP1の表面の少なくとも一部が親水性である場合、乾燥前処理液中の吸着物質がパターンP1の表面に吸着した状態で溶媒が蒸発する。吸着物質は、パターンP1の表面で液体から固体に変化する。これにより、吸着物質および昇華性物質を含む凝固体101が形成される。その後、吸着物質の固体は、パターンP1の表面で液体を経ずに気体に変化する。したがって、パターンP1の表面で液体を気化させる場合に比べて倒壊力を低下させることができる。
【0180】
第2実施形態では、吸着物質の濃度が低い乾燥前処理液を基板Wの表面に供給する。パターンP1の表面の少なくとも一部が親水性である場合、吸着物質の親水基がパターンP1の表面に付着し、吸着物質の単分子膜がパターンP1の表面に沿って形成される。吸着物質の濃度が高いと、複数の単分子膜が積み重なり、吸着物質の積層膜がパターンP1の表面に沿って形成される。この場合、昇華性物質は、吸着物質の積層膜を介してパターンP1の表面に保持される。吸着物質の積層膜が厚いと、パターンP1の間に進入する昇華性物質が減少する。したがって、吸着物質の濃度を低下させることにより、より多くの昇華性物質をパターンP1の間に進入させることができる。
【0181】
第2実施形態では、吸着物質よりも疎水性が高い昇華性物質を含む乾燥前処理液を基板Wの表面に供給する。昇華性物質および吸着物質のいずれにも疎水基が含まれているので、パターンP1の表面の少なくとも一部が疎水性である場合、昇華性物質および吸着物質の両方がパターンP1の表面に付着し得る。しかしながら、昇華性物質とパターンP1との親和性が、吸着物質とパターンP1との親和性よりも高いので、吸着物質よりも多くの昇華性物質がパターンP1の表面に付着する。これにより、より多くの昇華性物質をパターンP1の表面に付着させることができる。
【0182】
他の実施形態
本発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
たとえば、凝固体101の厚みT1を変更するために、乾燥前処理液の濃度以外の条件を変更してもよい。たとえば、乾燥前処理液の濃度に加えてまたは代えて、乾燥前処理液の温度を変更してもよい。
【0183】
パターンP1は、単層構造に限らず、積層構造であってもよい。パターンP1の少なくとも一部が、シリコン以外の材料で形成されていてもよい。たとえば、パターンP1の少なくとも一部が、金属で形成されていてもよい。
第1および第2実施形態に係る基板Wの処理の一例において、基板W上の乾燥前処理液を液体に維持するために、乾燥前処理液の凝固点よりも高く、乾燥前処理液の沸点よりも低い液体維持温度に、基板W上の乾燥前処理液を維持する温度保持工程を行ってもよい。
【0184】
純水などの基板W上のリンス液を乾燥前処理液で置換できる場合は、基板W上のリンス液を置換液に置換する置換液供給工程を行わずに、乾燥前処理液供給工程を行ってもよい。
第2実施形態に係る基板Wの処理の一例において、パターンP1の表面は、初めから、つまり、基板処理装置1に搬入される前から親水性であってもよい。この場合、第2薬液供給工程(
図22のステップS3-2)および第2リンス液供給工程(
図22のステップS4-2)を省略してもよい。さらに、第1薬液供給工程(
図22のステップS3-1)で基板Wに供給される薬液は、フッ酸以外の薬液であってもよい。
【0185】
第2実施形態に係る基板Wの処理の一例において、乾燥前処理液が基板Wの表面に供給されたとき、パターンP1の表面は、疎水性であってもよい。この場合、パターンP1の表面は、初めから疎水性であってもよいし、基板Wの処理が行われているときに疎水性に変化してもよい。
第2実施形態において、昇華性物質の初期濃度(基板Wに供給される前の乾燥前処理液における昇華性物質の濃度)を変更しないのであれば、
図3に示す第1タンク87Aおよび第2タンク87Bの一方を省略してもよい。
【0186】
第2実施形態において、第1タンク87Aおよび第2タンク87Bの外で昇華性物質および溶媒の溶液に吸着物質を混合してもよい。この場合、吸着物質は、昇華性物質および溶媒の溶液が乾燥前処理液ノズル39から吐出される前に混合されてもよいし、昇華性物質および溶媒の溶液が乾燥前処理液ノズル39から吐出された後に混合されてもよい。後者の場合、吸着物質は、乾燥前処理液ノズル39と基板Wとの間の空間で昇華性物質および溶媒の溶液に混合されてもよいし、基板Wの上面で昇華性物質および溶媒の溶液に混合されてもよい。
【0187】
遮断部材51は、円板部52に加えて、円板部52の外周部から下方に延びる筒状部を含んでいてもよい。この場合、遮断部材51が下位置に配置されると、スピンチャック10に保持されている基板Wは、筒状部に取り囲まれる。
遮断部材51は、スピンチャック10とともに回転軸線A1まわりに回転してもよい。たとえば、遮断部材51が基板Wに接触しないようにスピンベース12上に置かれてもよい。この場合、遮断部材51がスピンベース12に連結されるので、遮断部材51は、スピンベース12と同じ方向に同じ速度で回転する。
【0188】
遮断部材51が省略されてもよい。ただし、基板Wの下面に純水などの液体を供給する場合は、遮断部材51が設けられていることが好ましい。基板Wの外周面を伝って基板Wの下面から基板Wの上面に回り込んだ液滴や、処理カップ21から内側に跳ね返った液滴を遮断部材51で遮断でき、基板W上の乾燥前処理液に混入する液体を減らすことができるからである。
【0189】
基板処理装置1は、円板状の基板Wを処理する装置に限らず、多角形の基板Wを処理する装置であってもよい。
基板処理装置1は、枚葉式の装置に限らず、複数枚の基板Wを一括して処理するバッチ式の装置であってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【0190】
乾燥前処理液ノズル39は、乾燥前処理液供給手段の一例である。中心ノズル55およびスピンモータ14は、凝固体形成手段の一例である。中心ノズル55およびスピンモータ14は、昇華手段の一例でもある。
【符号の説明】
【0191】
1 :基板処理装置
3 :制御装置
10 :スピンチャック
14 :スピンモータ
39 :乾燥前処理液ノズル
55 :中心ノズル
101 :凝固体
Hp :パターンの高さ
P1 :パターン
T1 :凝固体の厚み
W :基板