(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】熱硬化性封止シートおよび実装構造体の封止体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/29 20060101AFI20240820BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20240820BHJP
H03H 3/08 20060101ALI20240820BHJP
H03H 9/25 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
H01L23/30 R
H03H3/08
H03H9/25 A
(21)【出願番号】P 2023205640
(22)【出願日】2023-12-05
【審査請求日】2024-01-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000214250
【氏名又は名称】ナガセケムテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石橋 卓也
(72)【発明者】
【氏名】清水 章皓
(72)【発明者】
【氏名】田渕 千裕
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-097206(JP,A)
【文献】特開2008-177432(JP,A)
【文献】国際公開第2019/194160(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
H03H 3/08
H03H 9/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1層を具備し、
第1回路部材と、前記第1回路部材に搭載された複数の第2回路部材と、を備える実装構造体を封止するために用いられる熱硬化性封止シートであって、
前記第1層は、第1熱硬化性樹脂組成物で構成され、
前記第1熱硬化性樹脂組成物は、第1充填剤を含み、
前記第1充填剤は、非球状粒子を含み、
前記第1回路部材と前記第2回路部材との間に隙間が介在しており、
前記第1回路部材と前記第2回路部材との平均距離Lと、前記非球状粒子の最大径Dmの平均値Dmaとが、Dma/L≧0.1を満た
し、
前記実装構造体を封止する際に、2以上の前記非球状粒子の平坦面を前記熱硬化性封止シートの前記隙間への浸入方向と交差するように配向させて前記熱硬化性封止シートの前記隙間への浸入を制限する、熱硬化性封止シート。
【請求項2】
前記非球状粒子の平均アスペクト比が、1.5以上である、請求項1に記載の熱硬化性封止シート。
【請求項3】
前記非球状粒子が、板状粒子である、請求項1に記載の熱硬化性封止シート。
【請求項4】
前記第1充填剤に含まれる前記非球状粒子の含有率が、1体積%~50体積%である、請求項1に記載の熱硬化性封止シート。
【請求項5】
第1回路部材と、前記第1回路部材に搭載された複数の第2回路部材と、を備え、前記第1回路部材と前記第2回路部材との間に隙間が介在している実装構造体を準備する工程と、
少なくとも第1層を具備し、前記第1層は第1熱硬化性樹脂組成物で構成され、第1熱硬化性樹脂組成物は第1充填剤を含み、前記第1充填剤は非球状粒子を含む、熱硬化性封止シート
を準備する工程と、
前記第1層が前記第2回路部材と対向するように、前記熱硬化性封止シートを前記実装構造体に配置する配置工程と、
前記熱硬化性封止シートを前記第1回路部材に対して押圧するとともに加熱して前記第2回路部材を封止する封止工程と、を具備し、
前記第1回路部材と前記第2回路部材との平均距離Lと、前記非球状粒子の最大径Dmの平均値Dmaとが、Dma/L≧0.1を満た
し、
前記実装構造体を封止する際に、2以上の前記非球状粒子の平坦面を前記熱硬化性封止シートの前記隙間への浸入方向と交差するように配向させて前記熱硬化性封止シートの前記隙間への浸入を制限する、実装構造体の封止体の製造方法。
【請求項6】
前記非球状粒子の平均アスペクト比が、1.5以上である、請求項5に記載の実装構造体の封止体の製造方法。
【請求項7】
前記非球状粒子が、板状粒子である、請求項5に記載の実装構造体の封止体の製造方法。
【請求項8】
前記第1充填剤に含まれる前記非球状粒子の含有率が、1体積%~50体積%である、請求項5に記載の実装構造体の封止体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性封止シートおよび実装構造体の封止体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、「液状の熱硬化型樹脂と非導電性フィラーを必須成分とする樹脂組成物から形成される封止用熱硬化型樹脂シートであって、前記樹脂組成物が、前記非導電性フィラーを10~90質量%含み、前記封止用熱硬化型樹脂シートが、常温で外力により塑性変形することを特徴とする粘土状の封止用熱硬化型樹脂シート」を提案している。
【0003】
特許文献2は、「熱硬化性樹脂、層状ケイ酸塩化合物および熱可塑性樹脂を含有し、素子を封止するための封止用樹脂シートであり、前記熱可塑性樹脂は、アクリル樹脂を含み、前記アクリル樹脂は、カルボキシル基を有し、前記アクリル樹脂の酸価は、18以上であることを特徴とする、封止用樹脂シート」を提案している。
【0004】
一方、特許文献3は、「珪素を、原子及び/又は無機化合物として含む板状アルミナ(A)と、樹脂(B)とを必須成分として含有してなる樹脂組成物」を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-177432号公報
【文献】特開2021-97206号公報
【文献】国際公開第2019/194160号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
回路基板(第1回路部材)と、回路基板に搭載される電子部品(第2回路部材)との間に隙間を設ける場合がある。例えばノイズ除去に用いられるSAWチップは、圧電基板(圧電体)上を伝搬する表面波を利用して所望の周波数をフィルタリングする。そのため、SAWチップが搭載される回路基板と圧電体上の電極との間に空間が必要である。このような回路部材を封止する際、封止剤は、上記隙間を埋めることなく回路部材を封止する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、少なくとも第1層を具備し、第1回路部材と、前記第1回路部材に搭載された複数の第2回路部材と、を備える実装構造体を封止するために用いられる熱硬化性封止シートであって、前記第1層は、第1熱硬化性樹脂組成物で構成され、前記第1熱硬化性樹脂組成物は、第1充填剤を含み、前記第1充填剤は、非球状粒子を含み、前記第1回路部材と前記第2回路部材との間に隙間が介在しており、前記第1回路部材と前記第2回路部材との平均距離Lと、前記非球状粒子の最大径Dmの平均値Dmaとが、Dma/L≧0.1を満たす、熱硬化性封止シートに関する。
【0008】
本発明の他の一側面は、第1回路部材と、前記第1回路部材に搭載された複数の第2回路部材と、を備え、前記第1回路部材と前記第2回路部材との間に隙間が介在している実装構造体を準備する工程と、少なくとも第1層を具備し、前記第1層は第1熱硬化性樹脂組成物で構成され、前記第1熱硬化性樹脂組成物は第1充填剤を含み、前記第1充填剤は非球状粒子を含む、熱硬化性封止シート準備する工程と、前記第1層が前記第2回路部材と対向するように、前記熱硬化性封止シートを前記実装構造体に配置する配置工程と、前記熱硬化性封止シートを前記第1回路部材に対して押圧するとともに加熱して前記第2回路部材を封止する封止工程と、を具備し、前記第1回路部材と前記第2回路部材との平均距離Lと、前記非球状粒子の最大径Dmの平均値Dmaとが、Dma/L≧0.1を満たす、実装構造体の封止体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る熱硬化性封止シートは、第1回路部材と第2回路部材との間の空間がある場合に空間に浸入しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る実装構造体を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る熱硬化性封止シートを模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る実装構造体の製造方法を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本開示の実施形態について例を挙げて説明するが、本開示は以下で説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。この明細書において、「数値A~数値B」という記載は、数値Aおよび数値Bを含み、「数値A以上で数値B以下」と読み替えることが可能である。以下の説明において、特定の物性や条件などに関する数値の下限と上限とを例示した場合、下限が上限以上とならない限り、例示した下限のいずれかと例示した上限のいずれかを任意に組み合わせることができる。
【0012】
この明細書において、「XがYで構成される」という記載は、限定的ではなく、XがY以外の要素を含んでもよく、含まなくてもよい。つまり、「XがYで構成される」という記載は、「XがYを含む」、「XがYからなる」などの表現に置き換えることが可能である。Xの50質量%以上がYであってもよい。
【0013】
本開示は、以下に関する。
[技術1]
少なくとも第1層を具備し、
第1回路部材と、前記第1回路部材に搭載された複数の第2回路部材と、を備える実装構造体を封止するために用いられる熱硬化性封止シートであって、
前記第1層は、第1熱硬化性樹脂組成物で構成され、
前記第1熱硬化性樹脂組成物は、第1充填剤を含み、
前記第1充填剤は、非球状粒子を含み、
前記第1回路部材と前記第2回路部材との間に隙間が介在しており、
前記第1回路部材と前記第2回路部材との平均距離Lと、前記非球状粒子の最大径Dmの平均値Dmaとが、Dma/L≧0.1を満たす、熱硬化性封止シート。
[技術2]
前記非球状粒子の平均アスペクト比が、1.5以上である、技術1に記載の熱硬化性封止シート。
[技術3]
前記非球状粒子が、板状粒子である、技術1または2に記載の熱硬化性封止シート。
[技術4]
前記板状粒子の平均厚みが、3μm以下または1μm以下である技術3に記載の熱硬化性封止シート。
[技術5]
前記第1層に含まれる前記第1充填剤の含有率が、35体積%~91体積%である、技術1~4のいずれか1つに記載の熱硬化性封止シート。
[技術6]
前記第1充填剤が、更に、第1球状粒子を含む、技術1~5のいずれか1つに記載の熱硬化性封止シート。
[技術7]
前記第1球状粒子の平均アスペクト比が、1.1以下である、技術6に記載の熱硬化性封止シート。
[技術8]
前記第1充填剤に含まれる前記非球状粒子の含有率が、1体積%~50体積%である、技術6または7に記載の熱硬化性封止シート。
[技術9]
前記熱硬化性封止シートが、前記第1層と、前記第1層に積層された第2層と、を有し、
前記第2層は、第2熱硬化性樹脂組成物で構成され、
前記第2熱硬化性樹脂組成物は、第2充填剤を含み、
前記第2充填剤は、第2球状粒子を含む、技術1~8のいずれか1つに記載の熱硬化性封止シート。
[技術10]
第1回路部材と、前記第1回路部材に搭載された複数の第2回路部材と、を備え、前記第1回路部材と前記第2回路部材との間に隙間が介在している実装構造体を準備する工程と、
少なくとも第1層を具備し、前記第1層は第1熱硬化性樹脂組成物で構成され、第1熱硬化性樹脂組成物は第1充填剤を含み、前記第1充填剤は非球状粒子を含む、熱硬化性封止シート準備する工程と、
前記第1層が前記第2回路部材と対向するように、前記熱硬化性封止シートを前記実装構造体に配置する配置工程と、
前記熱硬化性封止シートを前記第1回路部材に対して押圧するとともに加熱して前記第2回路部材を封止する封止工程と、を具備し、前記第1回路部材と前記第2回路部材との平均距離Lと、前記非球状粒子の最大径Dmの平均値Dmaとが、Dma/L≧0.1を満たす、実装構造体の封止体の製造方法。
[技術11]
前記非球状粒子の平均アスペクト比が、1.5以上である、技術10に記載の実装構造体の封止体の製造方法。
[技術12]
前記非球状粒子が、板状粒子である、技術10または11に記載の実装構造体の封止体の製造方法。
[技術13]
前記板状粒子の平均厚みが、3μm以下または1μm以下である、技術12に記載の実装構造体の封止体の製造方法。
[技術14]
前記第1層に含まれる前記第1充填剤の含有率が、35体積%~91体積%である、技術10~13のいずれか1つに記載の実装構造体の封止体の製造方法。
[技術15]
前記第1充填剤が、更に、第1球状粒子を含む、技術10~14のいずれか1つに記載の実装構造体の封止体の製造方法。
[技術16]
前記第1球状粒子の平均アスペクト比が、1.1以下である、技術15に記載の実装構造体の封止体の製造方法。
[技術17]
前記第1充填剤に含まれる前記非球状粒子の含有率が、1体積%~50体積%である、技術15または16に記載の実装構造体の封止体の製造方法。
[技術18]
前記熱硬化性封止シートが、前記第1層と、前記第1層に積層された第2層と、を有し、
前記第2層は、第2熱硬化性樹脂組成物で構成され、
前記第2熱硬化性樹脂組成物は、第2充填剤を含み、
前記第2充填剤は、第2球状粒子を含む、技術10~17のいずれか1つに記載の実装構造体の封止体の製造方法。
【0014】
(熱硬化性封止シート)
本開示に係る熱硬化性封止シート(以下、「熱硬化性封止シート(S)」とも称する。)は、少なくとも第1層を具備する。第1層は、第1熱硬化性樹脂組成物で構成される。熱硬化性封止シート(S)は、単層構造でもよく、2層以上の積層構造を有してもよい。熱硬化性封止シート(S)が、第1層のみを具備する場合、熱硬化性封止シート(S)は単層構造である。熱硬化性封止シート(S)が3層以上の積層構造を有する場合、第1層は、第1層の作用を大きくする観点から、最外層に配置されることが好ましい。
【0015】
第1熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(以下、「第1熱硬化性樹脂」とも称する。)を含む。第1熱硬化性樹脂の少なくとも一部は未硬化状態である。第1熱硬化性樹脂は、三次元架橋構造の発達が不十分な半硬化状態(いわゆるBステージ状態)でもよい。未硬化状態の第1熱硬化性樹脂を含む第1層が加熱されると、溶融状態の第1熱硬化性樹脂組成物となり、流動性を有する状態になる。その後、第1熱硬化性樹脂の硬化反応が進行する。
【0016】
熱硬化性封止シート(S)は、例えば電子部品などの回路部材の封止材として用いられる。熱硬化性封止シート(S)は、実装構造体を封止するための封止材として用いられてもよい。実装構造体は、回路基板などの第1回路部材と、第1回路部材に搭載された複数の第2回路部材(例えば電子部品)を備えてもよい。
【0017】
第1熱硬化性樹脂組成物は、第1充填剤を含み、第1充填剤は、非球状粒子を含む。非球状粒子には、球状以外の形状の粒子が広く包含される。第1回路部材と第2回路部材との間に隙間があり、かつ、その隙間を維持したまま実装構造体を熱硬化性封止シート(S)によって封止する場合、非球状粒子を含む第1層は有効に作用する。
【0018】
球状粒子の場合、粒子に方向性(異方性)がないため、外力によって一方向に配向する性質を有さない。一方、非球状粒子の場合、外力が付与されると、粒子形状に応じて一方向に配向する性質(異方性)を有する。熱硬化性封止シート(S)が加熱され、第1層が溶融状態の第1熱硬化性樹脂組成物になったときに、その流動性は、非球状粒子の配向によって影響を受ける。例えば、非球状粒子が平坦面を有する場合、非球状粒子の平坦面が配向する方向へ第1熱硬化性樹脂組成物の流動性を増大させ、それ以外の方向への第1熱硬化性樹脂組成物の流動性を減少させる。このような作用により、第1回路部材と第2回路部材との間に隙間がある場合には、溶融状態の第1熱硬化性樹脂組成物の当該隙間への浸入が制限される。
【0019】
非球状粒子の平均アスペクト比Raは、1.5以上でもよく、3以上でもよく、4以上でもよく、4.5以上でもよい。このように大きなアスペクト比を有する非球状粒子は、溶融状態の第1熱硬化性樹脂組成物中で特に配向しやすいと考えられる。非球状粒子のアスペクト比Rとは、非球状粒子の最大径Dmの、当該最大径Dmに垂直な方向における非球状粒子の最大寸法に対する比をいう。非球状粒子の平均アスペクト比Raは、後述の走査電子顕微鏡(SEM)を用いる方法により、10個の非球状粒子のアスペクト比Rの平均値として求めればよい。また、非球状粒子の平均の最大径Dmaは、10個の非球状粒子の最大径Dmの平均値として求めればよい。
【0020】
非球状粒子は、板状粒子であってもよい。板状とは、平坦な形状であればよく、例えば鱗片状もしくはフレーク状でもよい。
【0021】
板状粒子の平均厚みは3μm以下でもよく、1μm以下でもよい。このように薄い板状粒子は、溶融状態の第1熱硬化性樹脂組成物中で特に配向しやすいと考えられる。板状粒子の厚みとは、板状粒子の2つの平坦面のどちらか一方に対して垂直な方向の最大寸法をいう。板状粒子の平均厚みは、後述の走査電子顕微鏡(SEM)を用いる方法により、10個の板状粒子の厚みの平均値として求めればよい。
【0022】
板状粒子の平均アスペクト比Raは、1.5以上でもよく、3以上でもよく、4以上でもよく、4.5以上でもよい。このように大きなアスペクト比を有する板状粒子は、溶融状態の第1熱硬化性樹脂組成物中で特に配向しやすいと考えられる。板状粒子のアスペクト比Rとは、板状粒子の厚みに対する、板状粒子の最大径Dmの比をいう。板状粒子の平均アスペクト比Raは、以下のSEM像を用いる方法により、10個の板状粒子のアスペクト比Rの平均値として求めればよい。また、板状粒子の平均の最大径Dmaは、10個の板状粒子の最大径Dmの平均値として求めればよい。板状粒子の厚みとは、当該粒子の最大径Dmに垂直な方向における当該粒子の最大寸法Dwである(すなわちアスペクト比R=Dm/Dw)。板状粒子のDmaは、例えば0.1μm~50μmであり、1μm~30μmでもよい。
【0023】
以下、非球状粒子(もしくは板状粒子)の最大径Dmaおよび平均アスペクト比Raの求め方について説明する。例えば、下記(1)から(5)の操作を番号順に行ってDmaおよびRaを求めることができる。
【0024】
(1)熱硬化性封止シート(S)の硬化物を準備する。熱硬化性封止シート(S)の硬化物は、熱硬化性封止シート(S)を150℃で1時間以上硬化させれば得ることができる。また、硬化物として、熱硬化性封止シート(S)で封止された実装構造体の封止体の封止材の部分を用いてもよい。封止体は市販品であってもよい。なお、硬化条件は特に限定されず、後述の断面を取得可能な硬化物が得られる条件であればよい。
【0025】
(2)硬化物もしくは封止体を、熱硬化性封止シート(S)の厚さ方向(または、封止体における第1回路部材と第2回路部材の積層方向)と平行に切断し、断面を研磨装置で研磨する。封止体の断面には、第1回路部材と、第2回路部材と、これらの間の隙間とが観測できる。
【0026】
(3)研磨面を走査電子顕微鏡(SEM)により、倍率2000倍で観察する。一例として、観察は、研磨面の3箇所、すなわち3つの視野で行ってもよい。
【0027】
(4)非球状粒子のサイズが大きいほど、溶融状態の第1熱硬化性樹脂組成物の流動性に与える影響は大きくなる。そこで、1つの視野像(SEM像)中において、最大径Dmが最大の粒子から大きい順に10個(最大径Dmの上位10個)の粒子を選定し、それらの粒子の外周形状を取得する。例えば、画像処理ソフト等を用いて自動的に、最大径Dmの上位10個を選定してもよい。
【0028】
(5)外周形状から画像処理ソフト等により、各粒子の最大径Dmと、当該最大径Dmに垂直な方向における当該粒子の最大寸法Dwを求め、アスペクト比R(=Dm/Dw)を求める。10(N個の視野で測定した場合は10×N)個の粒子の最大径Dmの平均値をDmaとして算出し、当該10(または10×N)個の粒子のアスペクト比Rの平均値を平均アスペクト比Raとして算出する。
【0029】
非球状粒子は、多面体粒子であってもよい。すなわち、非球状とは、多面体状でもよい。多面体の面数は、例えば4~19であり、4~15でもよい。多面体状とは、例えば、四面体状、キューブ状(六面体状)、八面体状、十面体状、十二面体などであってもよい。
【0030】
多面体粒子の平均粒径は、0.1μm~50μmでもよく、1μm~30μmでもよい。多面体粒子の粒径とは、多面体粒子の最大径Dmをいう。多面体粒子の平均粒径Dmaは、既述のSEM像を用いる方法により、10個の多面体粒子の最大径Dmの平均値として求めればよい。
【0031】
多面体粒子の平均アスペクト比は、例えば1.5以上でもよく、3以上でもよい。多面体粒子のアスペクト比とは、多面体粒子の最大径Dmの、当該最大径Dmに垂直な方向における多面体粒子の最大寸法に対する比をいう。多面体粒子の平均アスペクト比は、既述のSEM像を用いる方法により、10個の多面体粒子のアスペクト比の平均値として求めればよい。
【0032】
非球状粒子は、針状粒子であってもよい。なお、針状粒子は、棒状粒子、短繊維状粒子を包含するものとする。
【0033】
針状粒子の平均長さは、0.1μm~50μmでもよく、1μm~30μmでもよい。針状粒子の平均長さは、既述のSEM像を用いる方法により、10個の針状粒子の長さの平均値として求めればよい。なお、針状粒子の長さは、針状粒子の最大寸法であり、最大径Dmに対応する。針状粒子の平均太さは、3μm以下でもよく、1μm以下でもよい。針状粒子の太さは、針状粒子の長さ方向に垂直な方向の最大寸法をいう。針状粒子の平均太さは、既述のSEM像を用いる方法により、10個の針状粒子の太さの平均値として求めればよい。
【0034】
第1粒子が針状粒子である場合、針状粒子の平均アスペクト比は、1.5以上でもよく、3以上でもよく、4以上でもよく、4.5以上でもよい。針状粒子のアスペクト比は、針状粒子の太さに対する長さの比である。針状粒子の平均アスペクト比は、既述のSEM像を用いる方法により、10個の針状粒子のアスペクト比の平均値として求めればよい。
【0035】
なお、多面体粒子や針状粒子は、板状粒子に比べて、使用量を多くしてもよい。その場合、第1回路部材と第2回路部材との間の空間への封止材の侵入を制御しやすくなる。
【0036】
第1回路部材と第2回路部材との間に隙間がある場合、例えば、第1回路部材と第2回路部材との間にバンプが介在している場合、第1回路部材と第2回路部材との平均距離Lと、非球状粒子の最大径Dmの平均値Dmaとが、Dma/L≧0.1を満たす必要があり、Dma/L≧0.2を満たすことが好ましい。この場合、溶融状態の第1熱硬化性樹脂組成物の当該隙間への浸入が顕著に制限される。なお、平均距離Lは、第1回路部材と第2回路部材の積層方向と平行な平面で、第1回路部材と第2回路部材を同時に切断する断面において測定することができる。当該断面において、第1回路部材と第2回路部材との離間距離を複数の断面(5断面以上)で測定し、それらの平均値をLとすればよい。ただし、離間距離は、第2回路部材の外周のエッジと第1回路部材との最短距離とする。
【0037】
非球状粒子の材料は、無機材料でもよく、有機材料でもよく、有機無機ハイブリッド材料でもよく、導電性材料でもよく、非導電性材料でもよい。
【0038】
無機材料は、金、銀、銅、ニッケルなどの金属、金属酸化物(酸化ケイ素(特にシリカ)、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等)、金属炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等)、金属ケイ酸塩(ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等)、金属窒化物(窒化ホウ素、窒化アルミニウム等)、金属炭化物(炭化ケイ素等)、タルク、マイカ、カオリン等であり得る。ただし、無機材料はこれらに限定されない。
【0039】
有機材料は、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリエステル、セルロース、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、液晶ポリマーなどの樹脂であり得る。ただし、有機材料はこれらに限定されない。
【0040】
第1層に含まれる第1充填剤の体積含有率は、例えば35体積%~91体積%であり、好ましくは45体積%~83体積%であり、より好ましくは56体積%~76体積%である。第1層に含まれる第1充填剤の体積含有率は、材料の比重を用いて「質量%」に換算できる。例えばシリカ粒子の比重は2.2g/cm3である。よって、第1層に含まれる第1充填剤としてのシリカの質量含有率は、例えば50質量%~95質量%であり、好ましくは60質量%~90質量%であり、より好ましくは70質量%~85質量%である。
【0041】
第1充填剤に含まれる非球状粒子の体積含有率は、100体積%でもよいが、第1充填剤の一部が球状粒子(第1球状粒子)であってもよい。第1充填剤が、更に第1球状粒子を含む場合、第1充填剤に含まれる非球状粒子の体積含有率Cnsが、1体積%~50体積%であり、第1充填剤に含まれる第1球状粒子の体積含有率Csが、50体積%~99体積%であってもよい。第1熱硬化性樹脂組成物の流動性(第1回路部材と第2回路部材との間の隙間以外での流動性)を高める観点から、非球状粒子の体積含有率Cnsと第1球状粒子の体積含有率Csは、Cns≦Csを満たすことが好ましく、1.5≦Cs/Cnsを満たしてもよい。
【0042】
第1層に含まれる第1充填剤の体積含有率は、既述の硬化物もしくは封止体の研磨面のSEM像から求めてもよい。SEM像の視野の面積は、充填剤の断面が占める面積Sfと、充填剤以外(樹脂成分)の断面が占める面積Srとに区別できる。面積Sfと断面Srの合計における面積Sfの割合を、第1層に含まれる第1充填剤の体積含有率と見なすことができる。
【0043】
また、第1充填剤に含まれる非球状粒子の体積含有率は、既述の硬化物もしくは封止体の研磨面のSEM像から求めてもよい。面積Sfは、非球状粒子の断面が占める面積Sfnsと、第1球状粒子の断面が占める面積Sfsとに区別できる。面積Sfnsと断面Sfsの合計における面積Sfnsの割合を、第1充填剤に含まれる非球状粒子の体積含有率と見なすことができる。
【0044】
第1球状粒子は、真球状の粒子である必要はなく、粒子表面の大半が曲面で構成されている粒子であればよい。粒子表面の曲面には微小な凹凸があってもよい。例えば、楕円球状でもよい。二十面体以上の多面体粒子は、第1球状粒子と見なしてもよい。
【0045】
第1球状粒子の平均粒径Daは、0.05μm~100μmでもよく、0.1μm~30μmでもよい。第1球状粒子の粒径とは、第1球状粒子の最大径をいう。第1球状粒子の平均粒径Daは、Dmaと同様に既述のSEM像を用いる方法に準じて、100個の第1球状粒子の最大径の平均値として求めればよい。
【0046】
第1球状粒子の平均アスペクト比は、例えば1.2以下でもよく、1.1以下でもよい。第1球状粒子のアスペクト比とは、第1球状粒子の最大径の第1球状粒子の最小径に対する比をいう。第1球状粒子の最小径とは、当該粒子の最大径に垂直な方向における当該粒子の最大寸法である。第1球状粒子の平均アスペクト比は、平均アスペクト比Raと同様に既述のSEM像を用いる方法に準じて、100個の第1球状粒子のアスペクト比の平均値として求めればよい。
【0047】
非球状粒子の最大径Dmの平均値Dmaと、第1球状粒子の平均粒径Daとの比(Dma/Da)は、0.01~1000を満たすことが好ましく、0.01~100を満たすことがより好ましい。
【0048】
なお、第1熱硬化性樹脂組成物から非球状粒子を分離できる場合、レーザ回折散乱式の粒度分布測定装置で測定される非球状粒子の体積基準の粒度分布における最頻値のモード径D50Aは、1μm~30μmであることが好ましい。
【0049】
また、第1熱硬化性樹脂組成物から第1球状粒子を分離できる場合、レーザ回折散乱式の粒度分布測定装置で測定される第1球状粒子の体積基準の粒度分布における最頻値のモード径D50Bは、0.1μm~30μmであることが好ましい。
【0050】
モード径D50Aとモード径D50Bとの比(D50A/D50B)は0.01~1000を満たすことが好ましく、0.01~100を満たすことがより好ましい。また、Dma/D50Bが0.01~1000、さらには0.01~100を満たしてもよく、D50A/Daが0.01~1000、さらには0.01~100を満たしてもよい。
【0051】
第1球状粒子の材料は、無機材料でもよく、有機材料でもよく、有機無機ハイブリッド材料でもよく、導電性材料でもよく、非導電性材料でもよい。第1球状粒子の材料は、非球状粒子の材料として例示した材料の中から、任意に選択してもよい。中でも、無機材料が好ましく、金属酸化物(酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素(特にシリカ)等)、金属炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等)、金属ケイ酸塩(ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等)、金属窒化物(窒化アルミニウム等)、金属炭化物(炭化ケイ素等)、タルク、マイカ、カオリン等であってもよい。典型的には、第1球状粒子は、球状シリカであってもよい。
【0052】
熱硬化性封止シートは、第1層と、第1層に積層された第2層とを有してもよい。第2層は、第2熱硬化性樹脂組成物で構成される。第2熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(以下、「第2熱硬化性樹脂」とも称する。)を含む。第2層の少なくとも一部は、未硬化状態である。第2層は、三次元架橋構造の発達が不十分な半硬化状態(いわゆるBステージ状態)でもよい。未硬化状態の第2層が加熱されると、溶融状態となり、流動性を有する状態になる。その後、第2層の硬化反応が進行する。第2熱硬化性樹脂は、第1熱硬化性樹脂と同じでもよく、異なってもよい。
【0053】
第2熱硬化性樹脂組成物は、第2充填剤を含み、第2充填剤は、球状粒子(第2球状粒子)を含む。第2球状粒子は、第1球状粒子として説明した球状粒子から任意に選択してもよい。第2球状粒子は第1球状粒子と同じでもよく、異なってもよい。
【0054】
第1層の厚さT1は、第1回路部材と第2回路部材との間の空間への封止材の浸入を制限するための十分な厚さを有すればよく、第1回路部材と第2回路部材との平均距離Lより大きいことが好ましい(例えば、T1>1.1L)。第1層の厚さT1は、例えば、20μm~300μmであり、40μm~240μmでもよい。
【0055】
T1とT2の合計の厚さは、例えば、40μm≦T1+T2≦500μmであり、50μm≦T1+T2≦350μm、更には100μm≦T1+T2≦300μmでもよい。
【0056】
第1および第2熱硬化性樹脂組成物の組成は、既述の構成を有する点以外、特に限定されない。第1および第2熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、それぞれ独立に、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ユリア樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂などを用い得る。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでもエポキシ樹脂が好ましい。
【0057】
エポキシ樹脂は、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、脂環式脂肪族エポキシ樹脂、有機カルボン酸類のグリシジルエーテルなどを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。エポキシ樹脂は、プレポリマーであってもよく、ポリエーテル変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂のようなエポキシ樹脂と他のポリマーとの共重合体であってもよい。なかでも、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂および/またはビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。特に、耐熱性および耐水性に優れ、かつ安価である点で、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。
【0058】
エポキシ樹脂は、第1および第2熱硬化性樹脂組成物の粘度調節のために、エポキシ基を分子中に1つ有する1官能エポキシ樹脂を、エポキシ樹脂全体に対して0.1~30質量%程度含むことができる。このような1官能エポキシ樹脂としては、フェニルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、エチルジエチレングリコールグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエングリシジルエーテル、2-ヒドロキシエチルグリシジルエーテルなどを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
第1および第2熱硬化性樹脂組成物は、硬化剤を含む。硬化剤は、特に限定されないが、例えば、フェノール系硬化剤(フェノール樹脂等)、ジシアンジアミド系硬化剤(ジシアンジアミド等)、尿素系硬化剤、有機酸ヒドラジド系硬化剤、ポリアミン塩系硬化剤、アミンアダクト系硬化剤、酸無水物系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、アミン系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、マレイミド系硬化剤などを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。硬化剤の種類は、熱硬化性樹脂に応じて適宜選択される。なかでも、硬化時の低アウトガス性、耐湿性、耐ヒートサイクル性などの点から、フェノール系硬化剤を用いることが好ましい。
【0060】
硬化剤の量は、硬化剤の種類によって異なる。エポキシ樹脂を用いる場合、例えば、エポキシ基1当量あたり、硬化剤の官能基の当量数が0.001~2当量、さらには0.005~1.5当量となる量の硬化剤を用いることが好ましい。
【0061】
なお、ジシアンジアミド系硬化剤、尿素系硬化剤、有機酸ヒドラジド系硬化剤、ポリアミン塩系硬化剤、アミンアダクト系硬化剤は、潜在性硬化剤である。潜在性硬化剤の活性温度は、60℃以上、更には80℃以上であるのが好ましい。また、活性温度は、250℃以下、更には180℃以下であるのが好ましい。これにより、活性温度以上で迅速に硬化する樹脂組成物を得ることができる。
【0062】
第1および第2熱硬化性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含んでもよい。熱可塑性樹脂は、第1層を具備する熱硬化性封止シート(S)、および第1層と第2層を具備する熱硬化性封止シート(S)がシートの形態を維持することを補助する作用を有してもよい。すなわち、熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂組成物のシート化剤として配合され得る。熱硬化性樹脂組成物がシート化されることにより、封止工程における取り扱い性が向上する。
【0063】
熱可塑性樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリオレフィン、ポリウレタン、ブロックイソシアネート、ポリエーテル、ポリエステル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ブチラール樹脂、ポリアミド、塩化ビニル、セルロース、熱可塑性エポキシ樹脂、熱可塑性フェノール樹脂などが挙げられる。なかでも、シート化剤としての機能に優れる点で、アクリル樹脂が好ましい。第1および第2熱硬化性樹脂組成物における熱可塑性樹脂の含有率は、例えば2~50質量%が好ましく、4~25質量%が特に好ましい。
【0064】
第1および第2熱硬化性樹脂組成物に添加する際の熱可塑性樹脂の形態は、特に限定されない。熱可塑性樹脂は、例えば、重量平均粒子径0.01~200μm、好ましくは0.01~100μmの粒子であってもよい。上記粒子は、コアシェル構造を有していてもよい。この場合、コアは、例えば、n-、i-およびt-ブチル(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも1つのモノマー由来のユニットを含む重合体であってもよいし、その他の(メタ)アクリレート由来のユニットを含む重合体であってもよい。シェル層は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、n-、i-またはt-ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等の単官能モノマーと1,6-ヘキサンジオールジアクリレート等の多官能モノマーとの共重合体であってもよい。
【0065】
第1および第2熱硬化性樹脂組成物は、上記以外の第三成分を含んでもよい。第三成分としては、硬化促進剤、重合開始剤、イオンキャッチャー、難燃剤、顔料、シランカップリング剤、チキソ性付与剤などを挙げることができる。
【0066】
図1は、一実施形態に係る実装構造体の一例を模式的に示す断面図である。実装構造体10は、第1回路部材1(回路基板)と、第1回路部材1に搭載される複数の第2回路部材2(電子部品)と、第2回路部材2を封止する封止材4とを備える。第1回路部材1と第2回路部材2との間には、隙間Sが形成されている。
【0067】
封止材4は、第1層と、第1層に積層された第2層とを有する2層構造の熱硬化性封止シートの硬化物である。封止材4は、第1層(すなわち第1熱硬化性樹脂組成物)の硬化物41と、第2層(すなわち第2熱硬化性樹脂組成物)の硬化物42とで構成されている。封止材4は、隙間Sを維持しながら第2回路部材2を封止している。
【0068】
なお、本実施形態では、第2回路部材2がバンプ3を介して第1回路部材1に搭載されているが、第1回路部材1への第2回路部材2の搭載方法は、これに限定されない。
【0069】
図2は、
図1の実装構造体の一部の拡大図である。第1充填剤は、非球状粒子である板状粒子Fを含んでいる。平坦な形状を有する板状粒子Fは、2つの互いに対向する平坦面を有し、外力が付与されると一方向に配向する異方性を有する。第1回路部材1と第2回路部材2との平均距離Lと、板状粒子Fの最大径Dmは、Dma/L≧0.1を満たしている。
【0070】
溶融状態の第1熱硬化性樹脂組成物が、封止に必要な外力を受けると、第1熱硬化性樹脂組成物は、第2回路部材2の表面に沿って流動する。板状粒子Fの2つの平坦面は、第1熱硬化性樹脂組成物の流動方向に配向する。結果として、板状粒子Fは、隙間Sの少なくとも一部を塞ぐように配向する。また、板状粒子は、その平坦面が配向する方向と交差する方向への第1熱硬化性樹脂組成物の流動性を減少させる。よって、溶融状態の第1熱硬化性樹脂組成物は、第1回路部材と第2回路部材との間の隙間Sに浸入しにくくなる。
【0071】
図3は、第1層41Pと第2層42Pを有する2層構造の熱硬化性封止シート(S)4Pの構造を模式的に示す断面図である。封止工程では、熱硬化性封止シート(S)4Pは、第1層41Pが第2回路部材2に接するように配置される。よって、第2回路部材2の第1回路部材1との対向面以外は、第1層の硬化物41で覆われている。
【0072】
第1層41Pと第2層42Pを有する熱硬化性封止シート(S)4P(以下、「積層シート4P」とも称する。)の製造方法は、特に限定されない。積層シート4Pは、各層を別途製造した後、それらを積層するラミネート法で形成してもよいし、各層の材料を順次、コーティングするコーティング法で形成してもよい。
【0073】
ラミネート法において、各層は、例えば、第1または第2熱硬化性樹脂組成物と溶剤を含む溶剤ペースト、もしくは溶剤を含まない無溶剤ペースト(以下、単に「ペースト」と称する。)をそれぞれ調製する工程と、各ペーストから各層を形成する層形成工程を含む方法により形成される。層形成工程は、特に限定されないが、例えば、各ペーストをフィルム上に塗布して乾燥してもよく、溶融混練した熱硬化性樹脂組成物を熱プレスもしくは圧延ロールなどで規定厚みに成型してもよい。このような方法により、第1層41Pおよび第2層42Pをそれぞれ形成した後、この順に積層する。その際、ペーストがシート化剤として熱可塑性樹脂を含む場合、シート化剤をゲル化させてもよい。ゲル化(シート化)は、ペーストを薄膜化した後、薄膜を第1または第2熱硬化性樹脂組成物の硬化温度未満(例えば、70~150℃)で、1~10分間加熱することにより行ってもよい。
【0074】
コーティング法では、上記方法により、例えば第1層41Pを形成した後、第1層41Pの表面に、第2熱硬化性樹脂組成物を含むペーストをコーティングして第2層42Pを形成する。ペーストがシート化剤として熱可塑性樹脂を含む場合、シート化剤をゲル化させてもよい。ゲル化は、各ペーストからそれぞれの薄膜を形成した後、逐次実施されてもよく、薄膜の積層体を形成した後に実施されてもよい。
【0075】
各層(薄膜)は、例えば、ダイコータ、ロールコータ、ドクターブレードなどを用いて形成され得る。この場合、ペーストの粘度を、10~10000mPa・sとなるように調整することが好ましい。溶剤ペーストを用いた場合、その後、70~150℃で、1~10分間乾燥して溶剤を除去してもよい。
【0076】
図4は、一実施形態に係る実装構造体の製造方法(以下、「製造方法(M)」とも称する。)を模式的に示す説明図である。製造方法(M)は、第1準備工程と、第2準備工程と、配置工程と、封止工程を有する。封止工程の後、個片化工程が行われてもよい。
【0077】
(第1準備工程)
第1準備工程は、封止前の実装構造体を準備する工程である。封止前の実装構造体は、第1回路部材1と、第1回路部材1に搭載された複数の第2回路部材2を備え、第1回路部材1と第2回路部材2との間に隙間Sが介在している。隙間Sの高さは、概ねバンプ3の高さに対応する。
【0078】
第1回路部材1は、例えば、半導体素子、半導体パッケージ、ガラス基板、樹脂基板、セラミック基板、シリコン基板などであり得る。第1回路部材は、その表面に、ACF(異方性導電フィルム)、ACP(異方性導電ペースト)のような導電材料層を有してもよい。樹脂基板は、リジッド樹脂基板でもよく、フレキシブル樹脂基板でもよい。樹脂基板として、例えば、エポキシ樹脂基板(例えば、ガラスエポキシ基板)、ビスマレイミドトリアジン基板、ポリイミド樹脂基板、フッ素樹脂基板などが挙げられる。第1回路部材1は、内部に半導体チップ等を備える部品内蔵基板であってもよい。
【0079】
第2回路部材2は、第1回路部材1に、例えばバンプ3を介して搭載されている。これにより、第1回路部材1と第2回路部材2との間には隙間Sが形成される。第2回路部材2は、空間Sを維持した状態で封止されることを要する電子部品であってもよい。第2回路部材2としては、例えば、センサーチップ(加速度センサー等)、圧電振動子チップ、水晶振動子チップ、MEMSデバイス、RFIC、SAWフィルターなどが挙げられる。
【0080】
バンプ3は、導電性を有しており、第1回路部材1と第2回路部材2はバンプ3を介して電気的に接続されている。バンプ3の高さは、特に限定されないが、例えば、5μm~150μmでもよい。バンプ3の材料は、導電性を有する限り特に限定されず、例えば、銅、金、はんだ等が挙げられる。
【0081】
すなわち、実装構造体は、第1回路部材1上に第2回路部材2が搭載されたチップ・オン・ボード(CoB)構造(チップ・オン・ウエハ(CoW)、チップ・オン・フィルム(CoF)、チップ・オン・グラス(CoG)を含む)、チップ・オン・チップ(CoC)構造、チップ・オン・パッケージ(CoP)構造およびパッケージ・オン・パッケージ(PoP)構造などを有し得る。実装構造体は、第2回路部材2が搭載された第1回路部材1に、さらに第1回路部材1および/または第2回路部材2を積層した多層実装構造体であってもよい。
【0082】
(第2準備工程)
第2準備工程は、熱硬化性封止シート(S)4Pを準備する工程である。熱硬化性封止シート(S)4Pは、少なくとも第1層41Pを具備すればよい。第1層41Pは、第1熱硬化性樹脂組成物で構成される。
【0083】
熱硬化性封止シート(S)4Pは、第1層41Pに積層された第2層42Pを有してもよい。第2層42Pは、第2熱硬化性樹脂組成物で構成される。
【0084】
(配置工程)
配置工程は、熱硬化性封止シート(S)4Pを実装構造体に配置する工程である(
図3(a))。配置工程では、例えば、熱硬化性封止シート(S)4Pによって第2回路部材2が覆われるように、実装構造体に熱硬化性封止シート(S)4Pを配置する。その際、第1層41Pを第2回路部材2に対向させる。
【0085】
(封止工程)
封止工程は、熱硬化性封止シート(S)4Pを第1回路部材1に対して押圧するとともに加熱して硬化させ、第2回路部材2を封止する工程である(
図4(b)、(c))。第1層41Pが第2回路部材2に対向している場合、隙間Sを維持しながら第2回路部材2が封止される。
【0086】
熱硬化性封止シート(S)4Pの第1回路部材1に対する押圧は、熱プレス工程(圧縮成形工程)であってもよい。熱プレス工程は、例えば、熱硬化性封止シート(S)4Pを、熱硬化性封止シート(S)4Pに含まれる第1(および第2)熱硬化性樹脂組成物の硬化温度未満で加熱しながら行われる。熱プレスにより、第1層41Pを第2回路部材2の表面に密着させるとともに、第2回路部材2同士の間では第1回路部材1の表面に達するまで第1層を伸展させて、第2回路部材2の封止の信頼性を高めてもよい。
【0087】
熱プレス工程は、大気圧下で行ってもよいし、減圧雰囲気(例えば0.001~0.05MPa)で行ってもよい。押圧時の加熱の条件は、特に限定されず、押圧方法や熱硬化性樹脂組成物の組成に応じて適宜設定すればよい。上記加熱は、例えば、40~200℃(好ましくは50~180℃)で、1秒~300分間(好ましくは3秒~300分間)行われる。
【0088】
続いて、溶融状態の熱硬化性樹脂組成物を硬化温度で加熱して、熱硬化性樹脂組成物を硬化させて、封止材4を形成する。これにより、第2回路部材2が封止される。熱硬化性樹脂組成物の硬化の条件は、熱硬化性樹脂組成物の組成に応じて適宜設定すればよい。熱硬化性樹脂組成物の硬化は、例えば、50~200℃(好ましくは120~180℃)で、1秒~300分間(好ましくは60分~300分間)行われる。
【0089】
熱プレス工程と熱硬化性樹脂組成物の硬化を別々に実施してもよく、同時に実施してもよい。例えば、減圧雰囲気下で、熱硬化性封止シート(S)4Pに含まれる熱硬化性樹脂組成物を硬化温度未満で熱プレスした後、減圧を解除して、大気圧下で更に高温で加熱して、熱硬化性樹脂組成物を硬化させてもよい。あるいは、大気圧下で、熱硬化性封止シート(S)4Pに含まれる熱硬化性樹脂組成物の硬化温度未満で熱プレスした後、さらに高温で加熱して、熱硬化性樹脂組成物を硬化させてもよい。また、減圧雰囲気下、硬化温度で熱プレスすることにより、減圧中に熱硬化性樹脂組成物を硬化させてもよい。
【0090】
(個片化工程)
得られた実装構造体10を、第2回路部材2ごとにダイシングする個片化工程を行ってもよい(
図4(d))。これにより、チップレベルの実装構造体(実装チップ20)が得られる。また、複数の第2回路部材2が1つのパッケージに含まれるようにダイシングする個片化工程を行ってもよい。これにより、マルチチップパッケージやモジュールのような複数チップを搭載した実装構造体が得られる。
【0091】
次に、本発明に係る熱硬化性封止シートおよび実装構造体の製造方法について、実施例に基づいて更に詳細に説明するが、以下の実施例は本発明を制限するものではない。
【0092】
《実施例1》
(熱硬化性樹脂組成物の調製)
下記に示す成分を表1に記載の組成で配合して、第1樹脂組成物または第2樹脂組成物として、調製例1~15の樹脂組成物を調製した。表1の数値は質量部を示す。よって、例えば調製例1では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂100質量部に、フェノールノボラック樹脂60質量部、アクリル樹脂25質量部、硬化促進剤3質量部、カーボンブラック3質量部、球状粒子(球状シリカ粒子1)780質量部が配合されている。
【0093】
また、充填剤の物性を表2に示す。
【0094】
【0095】
【0096】
(熱硬化性シート(S)の作成)
次に、溶剤としてメチルエチルケトンを含む第1樹脂組成物および第2樹脂組成物を、それぞれ表3に示す所定の厚さで離型フィルム上に順次コーティングし、乾燥により溶剤を揮散させるコーティング法で成形し、第1層および第2層を具備する2層構造の熱硬化性封止シートB1およびA1~A22を作成した。
【0097】
【0098】
(評価用実装構造体の作製)
次に、ガラス基板(第1回路部材、50mm角、厚み1mm)上に、等間隔で縦4個×横4個=16個の同サイズのダミーチップ(第2回路部材、1mm×1mm、高さ0.2mm)を、バンプを介して配置した。チップ同士の間隔は300um、チップ配列は4列×4行である。所定のバンプにより、チップと基板との間には表3に示す間隔(L)を設けた。
【0099】
(評価用実装構造体の封止)
各熱硬化性封止シートで評価用実装構造体を圧縮成形により封止した。具体的には、2hPaの減圧雰囲気中で、第1層がチップ(第2回路部材)と対向するように、熱硬化性封止シートを実装構造体上に配置し、熱硬化性封止シートを第1回路部材に対して0.7MPaで押圧しながら100℃で加熱して第2回路部材を封止し、その後、150℃の熱風オーブンで1時間加熱して硬化させた。
【0100】
各チップの縁から、チップと基板との間へ浸入した封止剤の浸入距離(各チップのエッジからの封止剤の最大到達点)を測定した。表3に以下の評価を示す。なお、下記評価の浸入距離は、16個のチップについての平均値であり、浸入距離バラツキは、16個のチップの中で、浸入距離が最大のチップの浸入距離と浸入距離が最小のチップの浸入距離との差である。
【0101】
(浸入距離)
◎ … 0um以上かつ20um以下
〇 … 20um超過かつ35um以下
△ … 35um超過かつ50um以下
× … 50um超過
【0102】
(浸入距離バラツキ)
◎ … 0um以上かつ15um以下
〇 … 15um超過かつ20um以下
× … 20um超過
【0103】
実施例の熱硬化性封止シートA1~A22を用いた場合には、比較例の熱硬化性封止シートB1を用いた場合に比べ、浸入距離が小さくなっている。これは、第1充填剤の一部に非球状粒子を用いたことによる効果であると考えられる。実際、封止された評価用実装構造体の断面を観察すると、非球状粒子の平坦面が封止材の浸入方向と交差するように配向していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、実装構造体の封止の分野に適している。本発明に係る熱硬化性封止シートによれば、回路部材と基板との間の空間への封止剤の浸入を抑制することができる。
【符号の説明】
【0105】
10:実装構造体
1:第1回路部材
2:第2回路部材
3:バンプ
4:封止剤(熱硬化性封止シートの硬化物)
4P:シート
41P:第1層
42P:第2層
20:実装チップ
【要約】 (修正有)
【課題】第1回路部材と第2回路部材との間の空間がある場合に空間への封止剤の浸入を抑制する。
【解決手段】少なくとも第1層41Pを具備し、第1回路部材1と、第1回路部材に搭載された複数の第2回路部材2と、を備える実装構造体10を封止するために用いられる熱硬化性封止シート4Pであって、第1層は、第1熱硬化性樹脂組成物で構成され、第1熱硬化性樹脂組成物は、第1充填剤を含み、第1充填剤は、非球状粒子を含み、第1回路部材と第2回路部材との間に隙間が介在しており、第1回路部材と第2回路部材との平均距離Lと、非球状粒子の最大径Dmの平均値Dmaとが、Dma/L≧0.1を満たす。
【選択図】
図4