IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ガタン インコーポレイテッドの特許一覧

特許7541175カソードルミネッセンス光学部品の軸合わせのための系および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】カソードルミネッセンス光学部品の軸合わせのための系および方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/04 20060101AFI20240820BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20240820BHJP
   G02B 21/00 20060101ALI20240820BHJP
   H01J 37/21 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
H01J37/04 B
H01J37/28 B
G02B21/00
H01J37/21 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023206630
(22)【出願日】2023-12-07
(62)【分割の表示】P 2022082814の分割
【原出願日】2020-10-22
(65)【公開番号】P2024037815
(43)【公開日】2024-03-19
【審査請求日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】62/924,891
(32)【優先日】2019-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511314887
【氏名又は名称】ガタン インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】GATAN,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン アンドリュー ハント
(72)【発明者】
【氏名】マイケル バーティルソン
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-029537(JP,A)
【文献】特開平10-010046(JP,A)
【文献】特開平11-096956(JP,A)
【文献】特開2007-071646(JP,A)
【文献】米国特許第4900932(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0198288(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/04
H01J 37/28
G02B 21/00
H01J 37/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子顕微鏡系内で生成される電子ビームと一致する垂直軸を有する前記電子顕微鏡系内のカソードルミネッセンス(CL)ミラーの焦点に対する、電子顕微鏡(EM)光軸のXY平面での自動水平軸合わせのための方法であって、
前記EMを用いて、CLミラー組立体上検査領域(MROI)の画像を記録することであって、前記MROIが、前記CLミラーの前記焦点への第1のXY距離を有する、記録することと、
前記画像に記録された前記MROIにおける、特定の点と前記EM光軸との間の測定されたXY距離、および前記MROIと前記CLミラー焦点との間の前記第1のXY距離に基づいて、CLミラー位置または前記EM光軸のいずれかを変更するための、前記XY平面における第2の距離を計算することと、
前記XY平面上において前記CLミラー焦点と前記電子顕微鏡光軸とを互いに軸合わせするために、前記CLミラーの水平位置を、前記XY平面において前記第2の距離だけ変更すること、または前記電子顕微鏡光軸を、前記XY平面において前記第2の距離だけ変更することとを含む方法。
【請求項2】
前記MROIが前記CLミラー組立体の上面にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記MROIが前記CLミラー組立体上に機械加工されたフィーチャである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記MROIと前記CLミラー焦点との間の前記第1の距離が、
較正試料部分を前記CLミラー焦点に配置してCL焦点を最適化するために、前記EM内の試料ステージを調整することと、
前記EMを用いて、前記較正試料部分の第1の画像を記録することと、
前記MROIを前記EMによって撮像することができるように前記CLミラーを移動することと、
前記EMを用いて、前記MROIの第2の画像を記録することと、前記第1のEM画像と前記第2のEM画像との間で、前記CLミラーが移動された距離、および前記第1のEM画像と前記第2のEM画像との間で、前記MROIが移動した距離を用いて、前記MROIと前記CLミラー焦点との間の距離を計算することとによって判断される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
電子顕微鏡系内で生成される電子ビームと一致する垂直軸を有する前記電子顕微鏡系内のカソードルミネッセンス(CL)ミラーの焦点に対する、可動試料ステージに載置された試料の自動垂直軸合わせのための方法であって、
前記試料の表面に前記EMの焦点を合わせることと、
EM光学部品から前記試料表面までの第1の作動距離を記録することと、
前記試料ステージのZ軸位置を記録することと、
前記CLミラー上の参照マークに前記EMの焦点を合わせることと、
前記EM光学部品から前記CLミラー上の前記参照マークまでの第2の作動距離を記録することと、
前記試料の表面と前記CLミラー焦点とを軸合わせするために、前記試料ステージを前記Z軸において移動するための距離を計算することであって、前記計算が、前記第1の作動距離、前記第2の作動距離、および前記CLミラー焦点から前記CLミラー上の前記参照マークまでの前記Z軸における所定距離に部分的に基づいていることとを含む方法。
【請求項6】
前記CLミラーが放物面ミラーまたは楕円面ミラーである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記Z軸における、前記試料および前記CLミラーの所定の測定値に基づいて、前記試料の前記CLミラーとの衝突を防止するために、前記試料ステージを動かすことを前記計算された距離未満に制限することをさらに含む請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
高エネルギーの電子ビームまたはイオンビーム(eビーム)が試料に当たると、試料の材料に応じて光子を放出することができる。放出された光子は、カソードルミネッセンス(CL)としても知られている。紫外線から可視光線、さらに赤外線までの波長範囲でこれらの光子を集光および検出することで、調査中の試料に関する豊富な情報を得ることができる。CLは、通常、電子顕微鏡(EM)内の試料を用いて検査され、CLを、例えば、光センサ、画像アレイ、または分光装置、に向けることによって集光され、これらの装置のいずれか、またはすべては、顕微鏡電子ビームカラムの外側に配置されてもよい。CLを集光する1つの方法は、集光ミラーを用いたものである。この集光ミラーは多くの場合、放物面または楕円面の形で、eビームの軸上にあり、試料の上(より一般的)もしく試料の下のいずれか、またはその両方に配置される。集光ミラーが試料の上に配置され、eビームの軸上にある場合、ミラーには、eビームが遮られることなく通過できるようにするための穴がある。
【0002】
eビームが当たる試料上の位置、したがってCLが放出される位置は、理想的には3次元空間の集光ミラーの焦点にある。いずれの軸においても、1~10ミクロン(μm)ほどと小さくても、位置ずれがあると、反射して光センサに戻るCL光の量が大幅に減少する場合があり、CLの放出角度に関する情報の忠実度が制限されることとなる。
【発明の概要】
【0003】
eビームに対してCLミラーの軸合わせすることが可能である。例えば、CL機器には、ミラーをXY平面で(eビーム軸に対して相対的および垂直に)移動できる軸合わせ機構があり、これらの機構は、通常、軸合わせ手順中に、CL焦点をeビームの軸上に移動するために使用される。eビームは、軸合わせの目的で、XY平面で数10ミクロンまたは数100ミクロン移動することもできるが、EM対物レンズ光軸からの大きな動きは、eビームの焦点の質を低下させる可能性があるため、この移動はあまり望ましくないことが多い。1~数10ミクロンのオーダーのより小さな動きは、軸合わせ機構の、ミクロンレベルでの信頼性が高くない場合に、軸合わせ中の微調整に役立つことができる。
【0004】
また、Z軸に沿って、CLミラーに対して、試料を軸合わせする必要がある。これを実現するための最も柔軟な方法は、試料が置かれている試料ステージと共に試料をZ軸に移動することである。CL機器には、通常、ミラーをZ軸において移動することを可能にする軸合わせ機構があるが、CL分光器光軸からの大きな動きは、CL光パターンの結合および強度の質を低下させる可能性があるため、試料への軸合わせにはあまり望ましくない。
【0005】
しかしながら、XY平面での試料の移動は実験でよく行われており、試料表面が傾いているか均一でない場合、Z軸の軸合わせを乱す可能性があることに留意されたい。手動調整は、当然時間がかかるものであり、研究者ができること、例えば、試料上の複数の場所を調べること、または複数のeビーム電圧の下で試料を調べることなどを制限する。これらの手動調整には、実行する軸合わせの質によって、数分~数10分かかることも珍しくない。
【0006】
軸合わせ方法では、通常、XY軸合わせまたはZ軸合わせを変更しながら、試料からのCLの強度を最大化する必要があった。この方法は、時間とともに変化しないCLを強く放出する試料に対して、またはeビームが近くのXY位置に移動するときに適している。しかしながら、これらの方法は、時間および空間で異なるCL特性を持つ、より一般的な試料で試行すると失敗することがよくある。したがって、調査中の試料のCL特性に依存しない軸合わせの方法で作業することが望ましい。
【0007】
限られた範囲のeビームの条件では、CLの強度が、時間とともに変化せず、XY位置で変化しないが、Z位置の関数として変化するようなCLを放出する試料を作成することが可能であることに留意されたい。これらの特性を持つ試料は、前述のCL強度最大化方法を使用してCLミラーをXY軸およびZ軸において軸合わせするのに役立つ。このような試料の例は、厚さ1~10ミクロンのイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)、イットリウムアルミニウムペロブスカイト(YAP)、またはゲルマニウム酸ビスマス(BGO)のフィルムであり、これらのフィルムは無反射導電性基板上にコーティングされ、炭素またはインジウムスズ酸化物(ITO)などの導電性フィルムでコーティングされている。CLミラーの初期軸合わせには役立つが、Z軸の軸合わせは、新しい試料を検査するとすぐに失われ、XY軸およびZ軸の軸合わせは、eビームの加速電圧を変更すると失われる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電子顕微鏡内で試料によって放出されたカソードルミネッセンス光(CL)を集光するための装置の図である。
図2】例示的なCLミラーアクチュエータの等角図である。
図3】例示的なCL光学系のブロック図である。
図4A】例示的なCLミラーの等角図である。
図4B】XY平面での軸合わせの前の、図1の装置の一部のXY平面における図である。
図4C】XY平面での軸合わせ中の、図1の装置の一部のXY平面における図である。
図4D図1の系のXY平面での軸合わせのための例示的なプロセスのフローチャートである。
図4E】Z軸における軸合わせの前の、図1の系の一部の垂直面における概略図である。
図4F】Z軸における軸合わせ中の、図1の系の一部の垂直面における概略図である。
図4G】Z軸における軸合わせの後の、図1の系の一部の垂直面における概略図である。
図4H】Z軸における図1の系の軸合わせのための例示的なプロセスのフローチャートである。
図5A】例示的なCL光学系の概略図である。
図5B】電子顕微鏡チャンバに取り付けられた例示的なCL光学系の等角断面図である。
図6A】Z軸に沿って異なる位置に移動されたCLミラーを介して、光源に露光された試料からの戻り光の例示的な画像である。
図6B】Z軸に沿って異なる位置に移動されたCLミラーを介して、光源に露光された試料からの戻り光の例示的な画像である。
図6C】Z軸に沿って異なる位置に移動されたCLミラーを介して、光源に露光された試料からの戻り光の例示的な画像である。
図6D】Z軸に沿って異なる位置に移動されたCLミラーを介して、光源に露光された試料からの戻り光の例示的な画像である。
図6E】Z軸に沿って異なる位置に移動されたCLミラーを介して、光源に露光された試料からの戻り光の例示的な画像である。
図6F】Z軸に沿って異なる位置に移動されたCLミラーを介して、光源に露光された試料からの戻り光の例示的な画像である。
図6G】Z軸に沿って異なる位置に移動されたCLミラーを介して、光源に露光された試料からの戻り光の例示的な画像である。
図7】CLミラーに対する、Z軸に沿って、試料を自動軸合わせするための例示的なプロセスのフロー図である。
図8A】Z軸に沿った軸合わせの前の、図1の系の一部の垂直面における概略図である。
図8B】Z軸に沿った軸合わせの後の、図1の系の一部の垂直面における概略図である。
図9】CLミラーに対する、Z軸に沿って、試料を自動軸合わせするための例示的なプロセスのフロー図である。
図10】例示的な処理システムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
当業者は、本発明の教示を使用して開発することができる他の詳細な設計および方法を認識するであろう。本明細書に提供される例は例示的なものであり、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものではない。以下の詳細な説明では、添付の図面を参照している。異なる図面の同じ参照符号は、同じまたは類似の要素を識別する場合がある。
【0010】
本発明の一態様では、図1に示されるように、電子顕微鏡100は、ポールピース12を出て、試料30に向けられる電子ビーム(eビーム)10を発生させる。eビーム10が試料に当たる点(図1の数字32で識別される)で、カソードルミネッセンス(CL)光が生成され得る。放物面ミラーであってもよいミラー20が、CL光34を電子顕微鏡100の外側に配置されてもよい検出器に反射するために提供される。ミラー20は、開口がなければ、eビームを妨害する材料(例えば、ダイヤモンド研磨されたアルミニウム)で作られる場合があるので、開口22を有することで、eビーム10が通過することを可能にする。
【0011】
図2に示される本発明の一態様では、CLミラー20は、CL光学系200の一部(部分図)である。CL光学系200は、取り付けハブ210で電子顕微鏡に取り付けられる。CL光学系200は、ミラー挿入スライド212を含み、このミラー挿入スライド212は、(図に符号が付されているように)X軸上を電気機械的に作動されて、ミラー20をeビーム10の軌道の内外に移動させることができる。ミラー挿入スライド212はまた、ミラー20を、細かく繰り返し可能な方法で調整して、eビーム10に対して、X軸において軸合わせすることができる。試料(不図示)は試料ステージ31上に置かれ、電子顕微鏡内のアクチュエータによってZ軸に沿って上下させることができる。CL系200は、電子顕微鏡インタフェース組立体220を含んでもよく、この電子顕微鏡インタフェース組立体220は、取り付けハブ210を、ミラー挿入スライド212に内部的に取り付けられたCL系230の残りの部分に接続する。電子顕微鏡インタフェース組立体220は、ハブ210に対してCL系230を動かすように配置された1つ以上の線形アクチュエータを含んでもよい。例示的な実施形態では、電子顕微鏡インタフェース組立体220は、2つの線形アクチュエータを含み、1つは、eビームに対し、Y軸に沿ってCL系を移動させ、もう1つは、試料ステージ31に対し、Z軸においてCL系を移動させる。したがって、CLミラーは、ミラースライド212(X軸)、および電子顕微鏡インタフェース組立体220内の2つのアクチュエータを介して、X、Y、およびZ軸において、試料およびeビームに対して移動することができる。試料は、電子顕微鏡内のアクチュエータによって、Z軸においてCLミラーに対して相対的に移動することもできる。
【0012】
前述の例示的な系200は、X、Y、およびZ軸において、eビームおよび試料に対して、CLミラーを作動させるための1つの方法にすぎない。説明された例示的な作動機構は、本発明のいかなる態様をも限定することを意図するものではない。
【0013】
図3は、前述のアクチュエータを制御するため、および本明細書で説明される実施形態と一致する他の機能を実行するための例示的な制御系を示す。この制御系は、系コントローラ310を含む。系コントローラ310は、電子顕微鏡の一部である単一のプロセッサであってもよく、または電子顕微鏡の外部の光学系の一部であっても、互いに通信する複数のプロセッサを含むことができる単一のプロセッサであってもよい。例えば、電子顕微鏡プロセッサおよび光学系プロセッサがあってもよい。系コントローラは、CLミラーX軸アクチュエータ322、試料ホルダZ軸アクチュエータ324、光学系Z軸アクチュエータ326、および光学系Y軸アクチュエータ328を制御することができる。系コントローラは、1つ以上のカメラ340および1つ以上の光強度センサ350からの入力を受信することができる。系コントローラ310は、例えば、以下に説明するZ軸の軸合わせプロセスにおいて、CLミラーを介して試料を照明するための光源360を制御することができる。系コントローラ310はまた、外部コンピュータ330と通信することができる。
【0014】
本発明のさらなる態様では、eビーム10軸とCLミラー20焦点とを一致するように高速に設定するための、本明細書で「ミラーフィーチャXY」と呼ぶ軸合わせ手順が、図4A、4B、および4Cに示されている。較正情報を取得した後、ミラーフィーチャXY軸合わせ手順は、数10秒で実行できるため、CLミラー20がeビーム軸10の周りの定位置に精密でなく挿入された後、またはEMの加速電圧もしくは開口軸合わせが調整された後に、系を迅速に調整するのに役立つ。この手順はCLを使用せずに実行できるため、すべての位置でCL光の放出が確実ではない試料を検査する場合の軸合わせに特に適している。
【0015】
図4Aは、eビーム10(不図示)が試料(不図示)を通過することを可能にするために、開口22を有する集光ミラー20の例示的な実施形態を示す。ミラー識別文字24は、ミラー20の物理的特性および光学特性に関する情報のために参照することができ、電子顕微鏡内で読むことができるように、開口22の近くに配置することができる。
【0016】
図4Bは、eビーム10が試料(不図示)を通過することを可能にするために、開口22を有する集光ミラー20の上部の一部の例示的な概略図を示す。本発明の一態様では、図4A図4B、および図4Cに示されるようなミラー20上の1つ以上のフィーチャ23は、CLミラー20の焦点26からの距離ベクトル27が、ミラー20の固定特性である位置参照マークとして機能することができる。距離ベクトル27は、CLミラーの製造時に判断してもよいし、製造後に光学顕微鏡または電子顕微鏡を使用して1つ以上のフィーチャ23を撮像し、CLミラー20の焦点26までの距離を測定することによって、判断してもよい。この較正手順のためにCLミラー20の焦点26を配置することは、通常、最良の焦点を見つけるために、光がミラーを通過することを必要とする。
【0017】
図4Dは、図4A図4B、および図4Cを参照して実行される、例示的なミラーフィーチャXY手順のフローチャートである。図4Bは、ミラーフィーチャXY手順を開始する前に示され、eビーム10軸は位置34にあり、したがって、CLミラー20は、eビーム10のX軸およびY軸に軸合わせされていない。フローチャートのステップ402において、CLミラー20は、表現、検査領域である位置参照マーク23がEM内で撮像されることを可能にするように、移動される。図4Cは、ステップ402が完了した後に示される。ステップ404において、EMは、位置参照マーク23に焦点を合わせ、EM画像は、位置参照マーク23を撮像するのに十分な大きさの視野36で取得される。ステップ406において、取得された画像は、(通常、画像視野36の中心でもある)eビーム軸35から位置参照マーク23までの距離ベクトル37を判断するために分析される。ステップ408において、eビーム軸35とCLミラー20焦点との間の距離ベクトル38は、距離ベクトル27から距離ベクトル37を差し引くことによって計算される。ステップ409において、CLミラー20は、位置26にあるミラー焦点を移動してeビーム軸35と一致させるために、距離ベクトル38によって移動される。代替的に、ステップ409において、eビーム軸35を移動して位置26にあるミラー焦点と一致させるために、eビーム軸が負の距離ベクトル38によって移動されてもよい。eビーム軸をEM対物レンズの中心から遠ざけると、EM画像の解像度が低下するため、通常、eビーム軸の移動はミラー位置の移動よりも望ましくない。
【0018】
本発明のさらなる態様では、観察中の試料部分をCL用の正しい高さに高速で設定するための、本明細書で「ミラーフィーチャZ」と呼ばれる軸合わせ手順が、図4A図4E図4F図4G、および図4Hに示されている。較正情報を取得した後、ミラーフィーチャZ軸合わせ手順は、数10秒で実行できるため、CL実験で多くの異なる試料部分同士の間を迅速に移動するのに役立つ。この手順はCLを使用せずに実行できるため、すべての位置でCL光の放出が確実ではない試料の軸合わせに特に適している。
【0019】
図4Eは、CLミラー20の焦点を含む水平面51から遠い位置にある試料30の表面を示す。例示的なミラーフィーチャZ方法のフローチャートが、図4Hに概略で示されている。軸合わせ手順410の開始時に、EMは、試料30の表面に焦点を合わせ、ステップ420において、試料30の表面の作動距離(WD_s)42が計算される。ステップ430において、試料ステージ31の位置53が記録される。
【0020】
ステップ432および図4Fにおいて、CLミラー20は、位置参照マーク23がEM内で撮像されることを可能にするように、移動される。ステップ434において、EMは、(水平面55上に位置する)位置参照マーク23に焦点を合わせ、ステップ436において、位置参照マーク23の作動距離56が計算される。
【0021】
ステップ440において、試料ステージ31を調整するための距離ΔS 52が計算される。この計算は、CLミラー20の焦点を含む水平面51と位置参照マーク23を含む水平面55との間の距離として記憶されてもよい、事前に測定された較正情報を必要とする。ステップ450において、試料ステージ31が全距離52の分上げられる場合に、試料ステージ31の寸法、試料30の寸法、およびミラー20位置に関する情報を使用して、試料ステージ31または試料30とミラー20との衝突の可能性があるか否かを判断することができる。この情報は、手動で入力してもよいし、系によって事前に測定されてもよい。衝突の可能性がある場合は、ステップ460で、移動することができる距離52の安全な部分が計算される。ステップ470において、試料ステージは、距離52のすべてまたは一部だけ移動される。ステップ450およびステップ460は任意選択であり、そのため、ステップ440からステップ470に直接進むことができることに留意されたい。図4Gは、ミラーフィーチャZ方法が実行され、距離52が制限されなかった後の、試料30および試料ステージ31の位置を示す。試料ステージ31は、試料30の表面が、CLミラー20の焦点を含む水平面51に移動された位置54にある。ミラーフィーチャZの後、EMの焦点を、CLミラー20の焦点および試料30の表面の作動距離WD_f 41と等しい、作動距離43に自動的に設定すると便利である。このプロセスは480で終了する。ステップ470において、試料ステージの移動が制限される場合、最終的な軸合わせの品質が低下することに留意されたい。
【0022】
機械加工されたフィーチャ23は例示的な位置参照マークであり、図4Aに示されるこの実施形態では、電子顕微鏡100の焦点設定が、試料の撮像と機械化されたフィーチャ23との間で変化が最小限であるように、ミラー20の底面に実用的にできるだけ近く配置される。ミラー20には、位置参照マークとして使用することができる他のフィーチャがあり、他のフィーチャには、開口22と、ミラー識別文字24と、ミラー20の水平面上の表面欠陥または結晶粒組織とが含まれるがこれらに限定されない。位置参照マークは、CLミラー20上に直接ある必要はなく、CLミラー20にしっかりと取り付けられた組立体上にあってもよいことに留意されたい。
【0023】
本発明のさらなる態様では、観察中の試料部分をCL用の正しい高さに高速で設定するための、本明細書で「レーザフォーカスZ」と呼ばれる軸合わせ手順が、図5A図5B図6、および図7に示されている。
【0024】
図5Aおよび図5Bは、CL光の分析のための光学系500を示す。図示されたモードでは、系は、レーザであってもよい光源510を使用して、CLミラー20を介して電子顕微鏡の外部から試料30を照明するように配置されている。 レーザ光の一部は試料によって反射される。図5Bは、試料チャンバ555を含む電子顕微鏡550の一部を示す。この例では、レーザ510とCLミラー20との間の光の軌道には、折り返しミラー520が含まれる。ビームスプリッタ530は、試料から反射された戻り光の一部を、2次元カメラ540を含む光学部分系に戻す。試料20からの戻り光からカメラ540で受信された画像を分析して、試料が、Z軸に対してCLミラーの焦点にあるか否かを判断することができる。
【0025】
図6A図6Gは、前述のようにCLミラーを介して光源に露光された試料からの戻り光の例示的な画像である。図6Aは、CLミラー焦点より100μm下に試料がある場合の戻り光を示す。図6Bは、CLミラー焦点より20μm下に試料がある場合の戻り光を示す。図6Cは、CLミラー焦点より10μm下に試料がある場合の戻り光を示す。図6Dは、CLミラー焦点に試料がある場合の戻り光を示す。図6Eは、CLミラー焦点から10μm上に試料がある場合の戻り光を示す。図6Fは、CLミラー焦点から20μm上に試料がある場合の戻り光を示す。図6Gは、CLミラー焦点から70μm上に試料がある場合の戻り光を示す。これらの例示的な画像に見られるように、戻り光は、試料がCLミラー焦点に精密に配置されている場合にのみ、試料上の小さなスポットに焦点が合う。10μm未満のわずかなオフセットでも、戻り光スポットの画像がぼやける。光パターンの強度は、試料がCLミラー焦点にあるときに最も高く、試料がCLミラー焦点から離れるにつれて、光パターンの強度は連続的に減少する。結果として、光パターンの形状または光パターンの強度のいずれかを、Z方向の軸合わせの測定基準として使用できる。さらなる結果として、光パターンの強度は、カメラまたは単一チャネル光検出器のいずれかによって分析することができる。
【0026】
図5A図5B図6A図6G、および図7のフロー図を参照して本明細書で説明した本発明の一態様では、ステップ710で、CLミラー20は、Z軸に対して、試料に対して相対的に、初期位置に移動される。ステップ720で、光は、CLミラー20を介して試料に投射される。ステップ730で、試料によって反射された光は、検出器540に向けられる。ステップ740で、検出器によって受け取られた光が分析され、検出器によって受け取られた光に関する情報が記憶されてもよい。ステップ750で、試料ステージまたはCLミラーのいずれかがZ軸に沿って再調整されて、試料30とCLミラー20との間の距離が変更される。ほとんどの実施形態では、CLミラー20の動きが光学部分系内の後続の光学部品の軸合わせに影響を及ぼす可能性があるので、試料ステージを動かすことが好ましいであろう。ステップ760で、検出器によって受け取られた光は分析され、検出器によって受け取られた光に関する情報が記憶されてもよい。決定点770で、事前に分析/記憶された検出器のデータに基づいて、試料がZ軸においてCLミラー焦点にあるか否かの決定が行われる。試料がZ軸においてCLミラー焦点になければ、プロセスはステップ750に戻り、CLミラーが再び移動される。試料がCLミラー焦点にあると判断された場合、このプロセスはステップ780で終了する。Z軸上において、ミラー20に対しての試料の軸合わせは、CLを使用せずに実行できるため、すべての位置でCL光の放出が確実ではない試料を検査する場合の軸合わせに特に適している。
【0027】
本発明の一態様では、試料ホルダを動かすことまたはCLミラーを動かすことは、連続的な閉ループ制御下で、または図7において説明されるように段階的に実行されてもよい。本発明のさらなる態様では、CLミラー20または試料30のいずれかが、上述のように移動されるが、限られた数のステップでのみ移動される。この態様では、2次元画像または光強度測定値が各ステップで取得され、分析されて、正しい焦点がどこにあるかを予測する。このとき、試料をCLミラー焦点に対して、軸合わせするために、CLミラー20または試料30を連続的な動きで回転させる必要がない。この分析は、焦点が合っている試料の事前に取得した画像と、焦点が合っていない試料の事前に取得した画像との比較に基づいてもよいし、画像から抽出されたデータのカーブフィット、例えば、各画像の総光量の積分のカーブフィットに基づいてもよい。
【0028】
本発明のさらなる態様では、観察中の試料部分をCL用の正しい高さに高速で設定するための、本明細書で「クイックフォーカスZ」と呼ばれる軸合わせ手順が、図8A図8B、および図9に示されている。本明細書で説明するように較正情報を取得した後、クイックフォーカスZ軸合わせ手順は、数10秒で実行できるため、CL実験で多くの異なる試料部分同士の間を迅速に移動するのに役立つ。この手順はCLを使用せずに実行できるため、すべての位置でCL光の放出が確実ではない試料の軸合わせに特に適している。
【0029】
図8Aは、CLミラー20の焦点を含む水平面51から遠い位置にある試料30の表面を示す。例示的なクイックフォーカスZ方法のフローチャートが、図9に概略で示されている。軸合わせ手順910の開始時に、EMは、試料30の表面に焦点を合わせ、ステップ920において、試料30の表面の作動距離WD_s 62が計算される。ステップ930において、試料ステージ31の位置S_1 71が記録される。ステップ940において、試料ステージ31を調整するための距離ΔS 72が計算される。この計算は、CLミラー20の焦点を含む水平面51の作動距離WD_f 61として記憶されてもよい、事前に測定された較正情報を必要とする。ステップ950において、試料ステージ31が全距離ΔS 72の分上げられる場合に、試料ステージ31の寸法、試料30の寸法、およびミラー20の位置に関する情報を使用して、試料ステージ31または試料30とミラー20との衝突がある可能性があるか否かを判断することができる。この情報は、事前に手動で入力したものでもよく、または系によって測定されたものでもよい。衝突の危険性がある場合、ステップ960で、系は、移動することができる距離72の安全な部分を計算する。ステップ970において、試料ステージは、距離72のすべてまたは一部だけ移動される。ステップ950および960は任意選択であり、そのため、ステップ940からステップ970に直接進むことができる。図8Bは、距離72が制限されていない場合に、クイックフォーカスZ方法が実行された後の試料30および試料ステージ31の位置を示す。試料ステージ31は、試料30の表面が、CLミラー20の焦点を含む水平面51に移動された位置73にある。クイックフォーカスZの後、EMの焦点を、CLミラー20の焦点および試料30の表面の作動距離WD_f 61と等しい作動距離62に自動的に設定すると便利である。ステップ970において、試料ステージの移動が制限される場合、最終的な軸合わせの品質が低下することに留意されたい。
【0030】
説明された軸合わせ方法の各々は単独で使用できるが、これらの方法を組み合わせると、CL系が迅速かつ精密に軸合わせすることが可能になる。一実施形態では、ミラーフィーチャXY軸合わせ方法は、10~20秒かかり、EMの加速電圧または開口軸合わせが変更されたときはいつでも実行することができる。本明細書で説明されたZ軸における軸合わせ方法の1つは、ミラーフィーチャXY軸合わせの後に実行することもできるが、試料位置が数ミクロンを超えて変更された後に実行することもできる。Zにおける最適な軸合わせ方法を選択することは、実験の精度要件およびEMタイプによって異なる。レーザフォーカスZ方法はZにおいて最も精密な焦点を提供するが、試料ステージは何度も移動する必要があり、通常は5~30回移動し、各移動が完了するのに0.5~3秒かかる。クイックフォーカスZ手法は非常に高速で、数秒しかかからないが、その焦点精度は、一部の非常に精密な実験には不十分な場合がある。ミラーフィーチャZはクイックフォーカスZの代わりに使用でき、EM条件が変更されたときに精度がより高いという利点があるが、ミラーフィーチャZの実行時間はクイックフォーカスZの実行時間の数倍である。
【0031】
図10は、デバイス1000の例示的な物理的構成要素を示す。デバイス1000は、系コントローラ310など、前述の系内の様々なデバイスに相当してもよい。デバイス1000は、バス1010、プロセッサ1020、メモリ1030、入力構成要素1040、出力構成要素1050、および通信インタフェース1060を含んでもよい。
【0032】
バス1010は、デバイス1000の構成要素同士の間の通信を可能にするパスを含んでもよい。プロセッサ1020は、命令を解釈および実行することができる、プロセッサ、マイクロプロセッサ、または処理ロジックを含んでもよい。メモリ1030は、プロセッサ1020によって実行するために情報および命令を記憶することができる任意のタイプの動的記憶デバイス、および/またはプロセッサ1020によって使用するために情報を記憶することができる任意のタイプの不揮発性記憶デバイスを含んでもよい。
【0033】
ソフトウェア1035は、機能および/またはプロセスを提供するアプリケーションまたはプログラムを含む。ソフトウェア1035はまた、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語(HDL)、および/または他の形式の命令を含むことを意図している。例示として、プルーフオブワーク認証を提供するロジックを含むネットワーク要素に対し、これらのネットワーク要素は、ソフトウェア1035を含むように実装されてもよい。追加的に、例えば、デバイス1100は、図4c、図4G図7および図9関して先に説明したプロセスを実行するためのソフトウェア1035を含んでもよい。
【0034】
入力構成要素1040は、ユーザが、キーボード、キーパッド、ボタン、スイッチなどの、情報をデバイス1000に入力することを可能にする機構を有してもよい。出力構成要素1050は、ディスプレイ、スピーカ、1つ以上の発光ダイオード(LED)などの情報をユーザに出力する機構を有してもよい。
【0035】
通信インタフェース1060は、デバイス1000が、無線通信、有線通信、または無線通信と有線通信との組み合わせを介して、他のデバイスおよび/または系と通信することを可能にするトランシーバを含んでもよい。例えば、通信インタフェース1060は、ネットワークを介して別のデバイスまたは系と通信するための機構を有してもよい。通信インタフェース1060は、RF信号の送信および/または受信のためのアンテナ組立体を含んでもよい。一実施形態では、例えば、通信インタフェース1060は、ネットワークおよび/またはネットワークに接続されたデバイスと通信することができる。代替的に、もしくは追加的に、通信インタフェース1060は、入力および出力ポート、入力および出力系、および/または他のデバイスへのデータの送信を容易にする他の入力および出力構成要素を含む論理構成要素であってもよい。
【0036】
デバイス1000は、メモリ1030などのコンピュータ可読媒体に含まれるソフトウェア命令(例えば、ソフトウェア1035)を実行するプロセッサ1020に応答して、特定の動作を実行することができる。コンピュータ可読媒体は、非一時的なメモリデバイスとして定義されてもよい。非一時的メモリデバイスは、単一の物理メモリデバイス内のメモリ空間を含んでもよいし、複数の物理メモリデバイスに分散してもよい。ソフトウェア命令は、別のコンピュータ可読媒体または別のデバイスからメモリ1030に読み込まれてもよい。メモリ1030に含まれるソフトウェア命令は、プロセッサ1020に、本明細書で説明されるプロセスを実行させることができる。代替的に、ハードワイヤード回路をソフトウェア命令の代わりに、またはソフトウェア命令と組み合わせて使用して、本明細書で説明されるプロセスを実装することができる。したがって、本明細書で説明される実装形態は、ハードウェア回路とソフトウェアとのいかなる特定の組み合わせにも限定されない。
【0037】
デバイス1000は、図11に示されているものに比べて、より少ない構成要素、追加の構成要素、異なる構成要素、および/または異なって配置された構成要素を含んでもよい。一例として、いくつかの実装形態では、ディスプレイはデバイス1000に含まれない場合がある。これらの状況では、デバイス1000は、入力構成要素1040を含まない「ヘッドレス」デバイスであってもよい。追加的に、もしくは代替的に、デバイス1000の1つ以上の構成要素が、デバイス1000の他の1つ以上の構成要素によって実行されると説明される1つ以上のタスクを実行してもよい。
【0038】
本発明は前述のように詳細に説明されてきたが、本発明の精神から逸脱することなく本発明を修正することができることは、当業者には明らかとなるであろうことは明白に理解される。プロセスステップの実行の順序を含む、形態、設計、または配置の様々な変更を、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明に対して行うことができる。したがって、前述の説明は、限定的ではなく例示的であると見なされるべきであり、本発明の真の範囲は、以下の特許請求の範囲で定義されるものである。
【0039】
本出願の説明において使用される要素、行為、または指示は、そのように明示的に説明されない限り、本発明にとって重要または必須であると解釈されるべきではない。また、本明細書で使用される場合、冠詞「a」は、その要素を1つ以上含むことを意図している。さらに、「に基づく」という語句は、特に明記しない限り、「に少なくとも部分的には基づく」を意味することを意図している。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図7
図8A
図8B
図9
図10