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特許7541179改善された加水分解安定性を有する難燃性ポリマーのための難燃剤および安定剤の組合せ及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】改善された加水分解安定性を有する難燃性ポリマーのための難燃剤および安定剤の組合せ及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240820BHJP
   C08K 5/5313 20060101ALI20240820BHJP
   C08L 79/00 20060101ALI20240820BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20240820BHJP
   C08K 5/524 20060101ALI20240820BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20240820BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240820BHJP
   C09K 21/12 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/5313
C08L79/00 Z
C08K5/13
C08K5/524
C08K5/3492
C08K3/013
C09K21/12
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2023503415
(86)(22)【出願日】2021-07-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-25
(86)【国際出願番号】 EP2021069839
(87)【国際公開番号】W WO2022023064
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】20188649.6
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596081005
【氏名又は名称】クラリアント・インターナシヨナル・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100145333
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 弓子
(72)【発明者】
【氏名】ヘーロルト・ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ロイシュナー・エーファーマリーア
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02365030(EP,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0128024(KR,A)
【文献】特開2009-215347(JP,A)
【文献】国際公開第2014/021101(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 成分Aとして、10重量%~80重量%の、式(Ia)のホスフィン酸塩、式(Ib)のジホスフィン酸塩、または、それらの2以上のポリマーまたは混合物、
【化1】
[式中、
およびRは、互いに同じかまたは異なり、Hまたは直鎖状または枝分かれしたC~C-アルキルおよび/またはアリールである、
は、直鎖状のまたは枝分かれしたC~C10-アルキレン、C~C10-アリーレン、-アルキルアリーレンまたは-アリールアルキレンであり、
Mは、H,Mg,Ca,Al,Sb,Sn,Ge,Ti,Fe,Zn,Zr,Ce,Bi,Sr,Mn,Li,Na,Kおよび/またはプロトン化窒素塩基であり;
mは、1~4であり;
nは、1~4であり;および
xは、1~4である。]
- 成分Bとして、0.5重量%~20重量%のポリマー性カルボジイミド化合物またはその混合物、
- 成分Cとして、0.5重量%~20重量%の立体障害性フェノールまたはその混合物、
- 成分Dとして、0重量%~20重量%の有機ホスファイトおよび/または有機ホスホナイトまたはそれらの混合物、
- 成分Eとして、10重量%~40重量%のメラミンの縮合生成物、
任意成分Fとして、10重量%~70重量%のフィラーまたは補強材またはそれらの混合物、
- 成分Gとして、1重量%~30重量%の潤滑剤および/または離型剤またはそれらの混合物、
- 成分Hとして、0重量%~40重量%の成分A~G以外の添加剤、
を含む混合物、ここで、上記成分の総重量は100重量%である。
【請求項2】
およびRは、互いに同じかまたは異なり、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチルおよび/またはフェニルである、請求項1の混合物。
【請求項3】
は、メチレン、エチレン、n-プロピレン、イソプロピレン、n-ブチレン、tert-ブチレン、n-ペンチレンまたはn-オクチレン;フェニレンまたはナフチレン;メチルフェニレン、エチルフェニレン、tert-ブチルフェニレン、メチルナフチレン、エチルナフチレンまたはtert-ブチルナフチレン;フェニルメチレン、フェニルエチレン、フェニルプロピレンまたはフェニルブチレンである、請求項1または2の混合物。
【請求項4】
成分Bのポリマー性カルボジイミド化合物は、一般式(II)または(III)の化合物である、請求項1~3のいずれかに記載の混合物。
【化2】
[式中、
は、NCOであり、
、R、R、R、R、R10、R11およびR12は、それぞれ独立に、水素、またはC~C10-アルキル、C~C12-アリール、C~C13-アラルキルまたはC~C13-アルキルアリールの群からの基であり、
gは、0~5の整数であり、
hは、2~100の整数である];
【化3】
[式(III)中、
mは、2~5000の整数である、
は、-N=C=N基を有する芳香族炭素原子に対して、少なくとも1のオルト位に、少なくとも2個の炭素原子を有する脂肪族および/または脂環式置換基を有するアリーレン基である、
R’は、アリール、アラルキル、アリール-NCOまたはアラルキル-NCOである、および、
R’’は、-N=C=N-アリール、-N=C=N-アラルキルまたは-NCOである。]
【請求項5】
成分Bは、式(IV)または(V)のN=C=N含有化合物を含む、請求項4の混合物。
【化4】
[式中、Rは、NCOである、nは、2~200の整数である。]
【請求項6】
成分Cは、アルキル化モノフェノール、立体障害性アルキルチオメチルフェノール、立体障害性ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、立体障害性アルキリデンビスフェノール、立体障害性ベンジルフェノール、立体障害性ヒドロキシベンジル化マロネート、立体障害性ヒドロキシベンジル芳香族、立体障害性フェノールトリアジンコンパウンド、立体障害性フェノールベンジルホスホネート、N-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)カルバミン酸アルキル、β-(35-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸と一価または多価アルコールとのエステル、β-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロピオン酸と一価または多価アルコールとのエステル、β-(3,5-ジシクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸と一価または多価アルコールとのエステル、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル酢酸と一価または多価アルコールとのエステル、β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミドおよびそれらの2以上の混合物からなる群から選択される、請求項1~5のいずれかに記載された混合物。
【請求項7】
成分Dは、一般式P(OR)の有機ホスファイト、ここでRは一価の有機基である、および、一般式PR’(OR)の有機ホスホナイト、ここでRおよびR’は一価の有機基である、からなる群から選択される、請求項1~6のいずれかに記載された混合物。
【請求項8】
成分Fは、タルク、雲母、ケイ酸塩、石英、二酸化チタン、珪灰石、カオリン、非晶質シリカ、炭酸マグネシウム、チョーク、長石および/または硫酸バリウムおよび/またはガラス繊維をベースとする鉱物性粒子状フィラーからなる群から選択される、請求項1~7のいずれかに記載された混合物。
【請求項9】
成分Gは、長鎖脂肪酸、その塩、そのエステル誘導体および/またはアミド誘導体、モンタンワックスおよび/または低分子量ポリエチレンおよび/またはポリプロピレンワックスからなる群から選択される、請求項1~8のいずれかに記載された混合物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載された混合物、および、さらなる成分Iとして、熱可塑性ポリマーまたはその混合物を含む組成物。
【請求項11】
成分Eは、メラミンシアヌレート、メラミンポリホスフェートもしくはメレム、またはこれらの成分の混合物である、請求項10に記載された組成物。
【請求項12】
成分Fは、タルク、雲母、ケイ酸塩、石英、二酸化チタン、珪灰石、カオリン、非晶質シリカ、炭酸マグネシウム、チョーク、長石および/または硫酸バリウムおよび/またはガラス繊維をベースとする鉱物性粒子状フィラーを含む、請求項10~11のいずれかに記載された組成物。
【請求項13】
成分Fは、ガラス繊維を含む、請求項12に記載された組成物。
【請求項14】
成分Iは、PBTまたは熱可塑性エラストマーポリエステルを含む、請求項10~13いずれかに記載された組成物。
【請求項15】
成分Gは、長鎖脂肪酸、その塩、そのエステル誘導体および/またはアミド誘導体、モンタンワックスおよび/または低分子量ポリエチレンおよび/またはポリプロピレンワックスを含む、請求項10~14いずれかに記載された組成物。
【請求項16】
請求項1~9のいずれかに記載された混合物または請求項10~15のいずれかに記載された組成物を、溶融押出により、特定の重量割合で混合する、加水分解安定性および難燃性のポリマーコンパウンドの製造方法。
【請求項17】
請求項10~15いずれかに記載された組成物から作られるファイバー、フィルム、成形品および造形品。
【請求項18】
プラグ、スイッチ、コンデンサ、絶縁システム、ランプソケット、コイルフォーム、ハウジング、制御装置およびその他の物品における、請求項10~15いずれかに記載の組成物から製造されたファイバー、フィルムおよび成形品の使用。
【請求項19】
家庭、産業、医療、自動車、航空機、船舶、宇宙船、およびその他移動手段、オフィス設備、ならびにその他物品および建造物における、請求項10~15いずれかに記載の組成物から製造されたファイバー、フィルムおよび成形品の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された燃焼特性、優れた耐加水分解性および良好な機械的特性を有するポリエステル、ポリウレタンおよびポリアミド化合物などの難燃性ポリマーのための難燃剤、加水分解防止添加剤およびさらなる混和剤の混合物、ならびにそのような難燃剤および添加剤の組み合わせを含むポリマー成形コンパウンドおよび成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのプラスチックは、それらの化学組成のために易燃性である。したがって、プラスチック加工業者によって、場合によっては議会によって作られた高い難燃性要求を達成することができるようにするために、プラスチックは一般に、難燃剤で改質されなければならない。この目的のために、多数の異なる難燃剤および難燃剤相乗剤が知られており、また市販もされている。
【0003】
熱可塑性ポリエステル、ポリアミドおよびポリウレタンはそれらの良好な機械的および電気的特性のために、材料として長く使用されてきた。加水分解安定性はそれらの熱的および化学的特性と同様に、ますます重要になってきている。例えば、電子機器分野(遮断器用例えば蓋)や自動車分野(例えばプラグ、センサ、ハウジング部品)での用途が挙げられる。上述の用途では、湿潤および温かい条件下での貯蔵の場合に、安定性の改善が求められる。
【0004】
さらに、ハロゲンを含まない難燃性を有するポリマー成形コンパウンドに対する市場の関心が高まっている。ここで難燃剤に対する本質的な要求は、光固有色、ポリマー加工中の適切な熱安定性、および補強化および非補強化ポリマーにおける難燃性の有効性である。しかしながら、難燃性熱可塑性ポリエステル成形コンパウンドは、一般に、加水分解安定性が低下しており、その理由は第1に、ポリマーマトリックスの割合が低下し、第2に、水、難燃剤およびポリマーマトリックス間の有害な相互作用、ならびに難燃剤と加水分解防止添加剤との間の相互作用が存在する可能性があるからである。
【0005】
ハロゲンを含まない難燃剤の中で、特にホスフィン酸の塩(ホスフィネート)は、熱可塑性ポリエステルに特に有効であることが見出されている(特許文献1:DE-A-2252258および特許文献2:DE-A-2447727)。カルシウムホスフィネートおよびアルミニウムホスフィネートは、ポリエステルにおいて非常に有効であって、そして例えばアルカリ金属塩に比べて、ポリマー成形品組成物材料の性質に与える障害が少ないと記載されている(特許文献3:EP-A-0699708)。
【0006】
さらに、ホスフィネートと様々な窒素化合物との相乗的組合せが見出されており、当組合せは、ホスフィネート単独よりも一連のポリマー全体において難燃剤としてより効果的であることが見出されている(特許文献4:WO97/39053 A1、特許文献5:DE-A-19734437、特許文献6:DE-A-19737727および特許文献7:US-A-6255371)。
【0007】
難燃性と同様に、本出願によれば、ポリマー材料はまた、その機械的特性の少なくともいくつかを保持しながら、水中または湿潤および暖かい条件下での貯蔵に耐えなければならない。気候制御キャビネットにおける通常の貯蔵条件は、例えば、85℃および85%の相対湿度で40日間である。ポリエステル、ポリウレタンおよびポリアミドの加水分解安定性を改善するための様々な添加剤が記載されているが、これらは難燃剤と共に使用することができないことが多い。
【0008】
特許文献8(DE10359816A1)は、ホスフィネートによって引き起こされる鎖分解を抑えるために、ホスフィネートおよびビスラクタム、ビスオキサゾリン、多塩基性カルボン酸の無水物およびエポキシ化合物のクラスから選択される連鎖延長剤から構成される、ポリエステルおよびポリアミドのための難燃剤-安定剤の組合せを記載している。ここで記載されるコンパウンドは、配合時にポリマー分解の低減を示すが、難燃性ポリマーの加水分解特性のいかなる有意な改善ももたらさない。
【0009】
特許文献9(DE-B-1285747)は、エステル基を含有するプラスチック中の熱および湿気の作用に対する安定剤として、500を超える分子量および3を超えるカルボジイミド基を有するポリカルボジイミドの使用を記載している。難燃剤の添加についての記載はない。
【0010】
特許文献10(DE19920276A1)は、例えば、熱可塑性ポリマー、リン化合物およびカルボジイミド安定剤化合物を含む熱可塑性成形コンパウンドを記載している。
【化5】
【0011】
実施例に記載のリン化合物は、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)であり、当記載の安定剤化合物は、例えば、Stabaxol P(Lanxessから)であり、
【化6】
そして、記載されているポリマーは、PBTおよびPET混合物である。当記載された安定剤化合物の欠点は、それらに毒物学的懸念事項があることである。例えば、単量体カルボジイミドは発癌性があると考えられている。また、ポリマー加工(配合、射出成形、押出)の過程における放出が別の問題となりうる。低銅腐食が有利であると言及されている。記載された組成物の加水分解安定性への指針はない。
【0012】
特許文献11(WO2004/069912A1)および特許文献12(WO2006/120184A1)および特許文献13(US7375167B2)は、加水分解安定性のための添加剤として使用されるエポキシ化天然油を含むポリエステル成形コンパウンドを開示している。
【0013】
特許文献14(JP01/221448)は、ハロゲン化難燃性ポリエステル成形コンパウンドが、エポキ化合物およびポリオレフィンの添加によって加水分解安定化され得ることを開示している。
【0014】
特許文献15(EP2989153B1)は、耐応力亀裂性およびハロゲンフリー難燃性ポリエステル成形コンパウンドの製造のための、熱可塑性ポリエステル、100~400eq/gのDIN EN ISO 3001に従うエポキシ当量を有するエポキシ化天然油、ホスフィネート、およびメラミン化合物から形成されるポリエステル成形コンパウンドの使用を記載している。欠点は、配合の過程における液体エポキシ化油の投与の困難さである。さらに、良好な耐応力亀裂性は、次亜リン酸アルミニウムのみで達成されるが、アルミニウムジエチルホスフェートでは達成されない。しかしながら、次亜リン酸アルミニウムは、ポリエステルにおいて高い防火クラスを達成することができない。
【0015】
特許文献16(DE102010053483A1)は、金属ジアルキルホスフィネート含有ポリアルキレンテレフタレート溶融物の熱分解の防止または低減のための-N=C=N含有化合物の使用、および金属ジアルキルホスフィネート含有ポリアルキレンテレフタレート溶融物の熱分解の防止または低減のための-N=C=N含有化合物の使用方法を記載している。実施例において、メルトインデックス(MVR)は、5分後および20分後に測定され、溶融の熱分解の尺度として用いられる。溶融物中のポリエステルの加水分解特性に対する指針はない。
【0016】
特許文献17(EP2365028)は、溶融物中の金属ジアルキルホスフィネート含有ポリアルキレンテレフタレートの熱分解の防止または低減のための-N=C=N含有化合物の使用を開示している。溶融物中のポリエステルの加水分解特性に対する指針はない。
【0017】
(ポリ)カルボジイミド(特許文献18:EP-A-794974)または(ポリ)エポキシ化合物(特許文献19:DE-T1-69231831)の使用は、溶融安定性の改善をもたらすが、記載されたポリエステル組成物は、特に分子量の増加および結果的な高い溶融粘度の結果として、加工上の欠点を有する。
【0018】
先行技術の方法の欠点は、ポリマーの不十分な加水分解安定性、および毒物学的に懸念されるモノマーカルボジイミドの使用である。エポキシ化合物が、熱可塑性ポリマー中で、特に難燃剤と併せて使用される場合、ポリマー鎖がさらに架橋して、粘度がかなり上昇しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】DE-A-2252258
【文献】DE-A-2447727
【文献】EP-A-0699708
【文献】WO97/39053A1
【文献】DE-A-19734437
【文献】DE-A-19737727
【文献】US-A-6255371
【文献】DE10359816A1
【文献】DE-B-1285747
【文献】DE19920276A1
【文献】WO2004/069912A1
【文献】WO2006/120184A1
【文献】US7375167B2
【文献】JP01/221448
【文献】EP2989153B1
【文献】DE102010053483A1
【文献】EP2365028
【文献】EP-A-794974
【文献】DE-T1-69231831
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本出願によって対処される問題は、難燃性および耐加水分解性ポリマー組成物の改質のための、難燃剤および安定剤の組合せを提供することであり、それはさらに、良好な機械的値、変色なし、加工時のポリマー分解なし、および毒物懸念のある化合物の使用なし、を特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の課題対する解決手段および主題は、ジアルキルホスフィネート含有ポリマーの加水分解安定性を改善するための、選択された安定剤および/または潤滑剤とポリマー性-N=C=N含有化合物との組み合わせの使用である。
【0022】
驚くべきことに、ジアルキルホスフィネートと組み合わせにおける、選択された安定剤および/または潤滑剤およびポリマー性カルボジイミド化合物の混合物の使用は、優れた加水分解安定性を有する難燃性ポリエステル、ポリアミドまたはポリウレタン成形コンパウンドの製造に適していることが見出された。同時に、難燃特性ならびに機械的、光学的および電気的特性は、言及された用途、特に輸送部門ならびに電気およびエレクトロニクス分野の要求プロファイルを満たす。
【0023】
本発明は、- 成分Aとして、5重量%~95重量%の、式(V)のホスフィン酸塩、式(VI)のジホスフィン酸塩、または、それらの2以上のポリマーまたは混合物
【化7】
[式中、
およびRは、互いに同じかまたは異なり、Hまたは直鎖状または枝分かれしたC~C-アルキルおよび/またはアリールであり;
は、直鎖状のまたは枝分かれしたC~C10-アルキレン、C6~C10-アリーレン、-アルキルアリーレンまたは-アリールアルキレンであり;
Mは、H,Mg,Ca,Al,Sb,Sn,Ge,Ti,Fe,Zn,Zr,Ce,Bi,Sr,Mn,Li,Na,Kおよび/またはプロトン化窒素塩基であり;
mは、1~4であり;
nは、1~4であり;および
xは、1~4である。]
- 成分Bとして、0.5重量%~20重量%のポリマー性カルボジイミド化合物またはその混合物、
- 成分Bとして、0.5重量%~20重量%のポリマー性カルボジイミド化合物またはその混合物、
- 成分Cとして、0重量%~20重量%の立体障害性フェノールまたはその混合物、
- 成分Dとして、0重量%~20重量%の有機ホスファイトおよび/または有機ホスホナイトまたはそれらの混合物、
- 成分Eとして、0重量%~50重量%のメラミン塩、メラミンの縮合生成物またはメラミンとリン酸および/または縮合リン酸との反応生成物、またはメラミンの縮合生成物とリン酸および/または縮合リン酸との反応生成物、および/または上記生成物の混合物および/または上記以外の窒素含有難燃剤、
- 成分Fとして、0重量%~90重量%のフィラーまたは補強材またはそれらの混合物、
- 成分Gとして、0重量%~40重量%の潤滑剤および/または離型剤またはそれらの混合物、
- 成分Hとして、0重量%~40重量%の成分A~G以外の添加剤、
を含む混合物に関する、ここで、成分の総重量は100重量%であり、当該混合物は少なくとも成分C、Dおよび/またはGの少なくとも2つならびに成分AおよびBを含む。
【0024】
用語“ホスフィン酸塩”は、以下、ホスフィン酸およびジホスフィン酸およびそれらのポリマーの塩、ならびにホスフィン酸自体を包含する。水性媒体中で製造されるホスフィン酸塩は、実質的にモノマー化合物である。反応条件に応じて、ポリマーのホスフィン酸塩も、いくつかの状況下で生じ得る。
【0025】
ホスフィン酸塩の構成成分として好適なホスフィン酸は、例えば、ジメチルホスフィン酸、エチルメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、メチル-n-プロピルホスフィン酸、メタン-ジ(メチルホスフィン酸)、ベンゼン-1,4-(ジメチルホスフィン酸)、メチルフェニルホスフィン酸およびジフェニルホスフィン酸である。
【0026】
本発明によるホスフィン酸の塩は、例えば、欧州特許出願公開第0699708号に詳細に記載されているように、公知の方法によって製造することができる。
【0027】
上述のホスフィン酸塩は、使用されるポリマーのタイプおよび所望の特性に従って、本発明による難燃剤-安定剤混合物またはポリマーコンパウンドのための様々な物理的形態で使用することができる。例えば、ホスフィン酸塩は、ポリマー中でより良好に分散するために、微粉砕され得る。異なるホスフィン酸塩の混合物を使用することも可能である。
【0028】
本発明において使用されるホスフィン酸塩は熱的に安定であり、配合時にポリマーを破壊せず、また、ポリマー成形コンパウンドの製造方法に影響を及ぼさない。ホスフィン酸塩は、ポリエステル、ポリアミドおよび熱可塑性ポリウレタンなどのポリマーの慣用的な調製および加工条件下では、不揮発性である。
【0029】
本発明に従って好ましく使用される成分Aのホスフィン酸塩は、上記の式(VII)および(VIII)の化合物であって、当式中、RおよびRは、互いに同じかまたは異なり、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチルおよび/またはフェニルである、より好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、および/またはn-ブチル、そして最も好ましくはエチルである。
【0030】
さらに、本発明に従って好ましく使用される成分Aのホスフィン酸塩は、上記の式(VIII)の化合物であって、当式中、Rは、メチレン、エチレン、n-プロピレン、イソプロピレン、n-ブチレン、tert-ブチレン、n-ペンチレン、n-オクチレン、n-ドデシレン、フェニレン、ナフチレン、メチルフェニレン、エチルフェニレン、tert-ブチルフェニレン、メチルナフチレン、エチルナフチレン、tert-ブチルナフチレン、フェニルメチレン、フェニルエチレン、フェニルプロピレン、または、フェニルブチレンであり、最も好ましくはエチレン、n-プロピレン、n-ブチレンまたはフェニレンである。
【0031】
本発明において好ましく使用される成分Aのホスフィン酸塩は、上記の式(VII)および(VIII)の化合物であって、当式中、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、Fe、Zn、Ce、Bi、SrまたはMnである。より好ましくは、Mは、マグネシウム、カルシウム、アルミニウムまたは亜鉛、最も好ましくはアルミニウムまたは亜鉛である。好ましくは、mは2または3であり;nは1または3であり;xは1または2である。
【0032】
添加される成分Aのホスフィン酸塩の好ましい量は、成分A~Bおよび任意でC~Hを含む難燃剤-安定剤混合物に基づいて、10重量%~80重量%である。
【0033】
本明細書の文脈におけるポリマー性カルボジイミド化合物は、1分子当たり少なくとも2個の-N=C=N基、好ましくは1分子当たり少なくとも5個の-N=C=N基、最も好ましくは1分子当たり少なくとも10個の-N=C=N基を有する化合物を意味すると理解される。
【0034】
特に好ましい成分Bは、少なくとも2000、特に少なくとも3000、最も好ましくは少なくとも5000の分子量を有するカルボジイミド化合物である。
【0035】
カルボジイミドの分子量は、例えば、標準としてのポリスチレンに対して、テトラヒドロフラン中40℃でのゲル浸透クロマトグラフィーによって確認することができる。例えば、PSS PolymerStandards Service GmbHからの3つの直列接続カラム(ジビニルベンゼン架橋ポリスチレンからなる)を、粒径は5μm、細孔径は100~500Å、1ml/分の流速で、使用することが可能である。この方法は、例えば、欧州特許第2430062号明細書に記載されている。
【0036】
本発明において好ましく使用される成分Bのポリマー性-N=C=N含有化合物は、一般式(II)または(III)の化合物である。
【0037】
【化8】
[式中、
は、NCOであり、
、R、R、R、R、R10、R11およびR12は、それぞれ独立に、水素、またはC~C10-アルキル、C~C12-アリール、C~C13-アラルキルまたはC~C13-アルキルアリールの群からの基であり、
gは、0~5の整数であり、
hは、2~100の整数である];
【化9】
[式(III)中、
mは、2~5000の整数、好ましくは2~500の整数である、
は、-N=C=N基を有する芳香族炭素原子に対して、少なくとも1のオルト位、好ましくは両オルト位に、少なくとも2個の炭素原子を有する脂肪族および/または脂環式置換基、好ましくは少なくとも3個の炭素原子を有する分岐または環状の脂肪族基を有するアリーレン基、好ましくは4,4’-メチレンビス(2,6-ジアルキルフェニル)基である、
R’は、アリール、アラルキル、アリール-NCOまたはアラルキル-NCOである、および、
R’’は、-N=C=N-アリール、-N=C=N-アラルキルまたは-NCOである。]
【0038】
本発明において、用語“-N=C=N含有化合物”は、二重結合を含有し、少なくとも1つの-N=C=N基を有するモノマーを含むフリーラジカル重合によって得られる-N=C=N含有ポリマーを包含する。
【0039】
成分Bとして特に好ましく用いられる-N=C=N含有化合物は、式(IV)および(V)の化合物である。
【化10】
[式中、Rは、NCOである、nは、2~200の整数である。]
【0040】
別の実施形態において、化合物(II)~(V)の末端-NCO基は、それぞれ独立して、-NCO反応生成物でもある。これは一般式-NHCOOX(式中、-OXはアルキルポリエーテルグリコール、ポリエステルポリオール、1~20個の炭素原子を有するアルコール、または、ポリエステルラジカル)のウレタンを与えるためのアルコールとの反応、一般式-NHCONY(式中、-NYはアルキル、シクロアルキルまたはアラルキルラジカル、およびアミノアルキルトリアルコキシシランを有する第一級および第二級アミンを表す)の尿素誘導体を与えるためのアミンとの反応、およびキサゾリドンを与えるグリシジルエーテルとの反応を含む。本発明によれば、ウレタンを与えるためのアルコールとの反応生成物が好ましい。
【0041】
本発明において、特に好ましいのは、R=NCOである式(IV)の-N=C=N-含有ポリマー化合物を使用することであり、これは、Lanxess社からStabaxol(登録商標)Pとして入手可能であり、50℃以上の融点を有する。
【0042】
本発明において、非常に特に好ましいのは、Lanxess社からStabaxol(登録商標)P100として入手可能な、75℃以上の融点を有し、少なくとも3000g/molの分子量を有する、-N=C=N-含有高分子量ポリマー化合物を使用することである。
【0043】
成分Bの化合物中のカルボジイミド基の含有量は、好ましくは少なくとも10モル%、より好ましくは少なくとも13モル%である。
【0044】
添加される成分Bのポリマー性カルボジイミドの好ましい量は、成分A~Bおよび任意の成分C~Hを含む難燃剤-安定剤混合物に基づいて、5重量%~10重量%である。
【0045】
有機カルボジイミドは知られている。それらの化学的性質は、例えば、Chemical Reviews,Vol.53(1953)およびAngewandte Chemie74(1962)、第145頁、第801頁~第806頁に記載されている。
【0046】
カルボジイミドは、例えば、二酸化炭素の除去を伴う立体障害性ポリイソシアネートに対する塩基性触媒の作用によって製造することができる。好適な塩基性触媒は例えば、GB-A-1083410における結合リンを含有する複素環式化合物、ならびにDE-B-1130594(GB-A-851936)におけるホスホレン(phospholenes)およびホスホリジン(phospholidines)ならびにそれらの酸化物および硫化物である。カルボジイミドは、好ましくは、ポリエステル系プラスチックの加水分解に対する安定剤として使用される。
【0047】
本発明に従って成分Cとして添加される立体障害性フェノールは、それ自体公知の酸化防止剤である。
【0048】
成分Cとして好ましく使用される酸化防止剤は、アルキル化モノフェノール、例えば2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールまたは2,6-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェノール;立体障害性アルキルチオメチルフェノール,例えば2,4-ジ-オクチルチオメチル-6-tert-ブチルフェノール、立体障害性ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル,例えば2,2’-チオビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-2-メチルフェノール)、4,4’-チオビス(3,6-ジ-sec-アミルフェノール)、4,4’-ビス(2,6-ジ-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ジスルフィド;立体障害性アルキリデンビスフェノール、例えば2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール;立体障害性ベンジルフェノール、例えば3,5,3’,5’-テトラ-tert-ブチル-4,4’-ジヒドロキシジベンジルエーテル;立体障害性ヒドロキシベンジル化マロネート,例えばジオクタデシル2,2-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-2-ヒドロキシベンジル)マロネート、立体障害性ヒドロキシベンジル芳香族、例えば1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル)-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、1,4-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,3,5,6-テトラメチルベンゼン、2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)フェノール;立体障害性フェノールトリアジンコンパウンド、例えば2,4-ビス-オクチルメルカプト-6-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニリノ)-1,3,5-トリアジン、立体障害性フェノールベンジルホスホネート,例えばジメチル-2,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート;N-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)カルバミン酸アルキル;β-(3.5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸と一価または多価アルコールとのエステル;β-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロピオン酸と一価または多価アルコールとのエステル;β-(3,5-ジシクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸と一価または多価アルコールとのエステル;3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル酢酸と一価または多価アルコールとのエステル;β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド、例えばN,N’-ビス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヘキサメチレンジアミン、N,N’-ビス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオニル)トリメチレンジアミン、または、N,N’-ビス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヒドラジンである。
【0049】
添加される成分Cの立体障害性フェノールの好ましい量は、成分A~Bおよび任意の成分C~Hを含む難燃剤安定剤混合物に基づいて、0.5重量%~20重量%、特に1重量%~10重量%、最も好ましくは3重量%~5重量%である。
【0050】
本発明において成分Dとして添加される有機ホスファイトおよび/または有機ホスホナイトは、それ自体公知の酸化防止剤のための共安定剤である。
【0051】
当該有機ホスファイトは、一般式P(OR)であり、ここでRは一価の有機基である。
【0052】
当該有機ホスホナイトは、一般式PR’(OR)であり、ここでRおよびR’は一価の有機基である。
【0053】
好適な有機ホスファイトの例は、トリアリールホスファイト、ジアリールアルキルホスファイト、アリールジアルキルホスファイト、トリアルキルホスファイトである。
【0054】
トリアリールホスファイトの例は、トリフェニルホスファイト、特にトリス(ノニルフェニル)ホスファイトまたはトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトである。
【0055】
ジアリールアルキルホスファイトの例は、ジフェニルアルキルホスファイト、特にビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)メチルホスファイトまたはビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチルホスファイトである。
【0056】
アリールジアルキルホスファイトの例は、フェニルジアルキルホスファイトである。
【0057】
トリアルキルホスファイトの実例は、C12~C18-トリアルキルホスファイト、とりわけトリラウリルホスファイトまたはトリオクタデシルホスファイトである。
【0058】
他の適当な有機ホスファイトの例は、ペンタエリトリトールジホスファイト、例えばジステアリルペンタエリトリトールジホスファイト、ジイソデシルペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ジイソデシルオキシペンタエリトリトールジホスファイト、ビス-(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイトまたはビス-(2,4,6-トリス(tert-ブチルフェニル))ペンタエリトリトールジホスファイトである。
【0059】
さらに好適な有機ホスファイトは、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、2,2’、2’’-ニトリロ[トリエチル-トリス(3,3’,5,5’-テトラ-tert-ブチル-1,1’-ビフェニル-2,2’-ジイル)ホスファイト]または2-エチルヘキシル(3,3’,5,5’-テトラ-tert-ブチル-1,1’-ビフェニル-2,2’-ジイル)ホスファイトである。
【0060】
成分Cとして、N,N’-ビス[3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヘキサメチレンジアミン(例えば、Irganox(登録商標)1098、BASF)、および、成分Dとして、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(例えば、Irgafos(登録商標)168、BASF)を使用することが特に好ましい。
【0061】
成分Cとして、N,N’-ビス[3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヘキサメチレンジアミン(例えば、Irganox(登録商標)1098、BASF)、および、成分Dとして、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジイルビスホスホナイト(例えば、Sandostab(登録商標)P-EPQ、クラリアント)を使用することが、特に好ましい。
【0062】
添加される成分Dの有機ホスファイトおよび/または有機ホスホナイトの好ましい量は、成分A~Bおよび任意の成分C~Hを含む難燃剤-安定剤混合物に基づいて、0.5重量%~20重量%、特に1重量%~10重量%、最も好ましくは3重量%~5重量%である。
【0063】
本発明による難燃剤-安定剤の組合せは、好ましくは、成分Eとして、メラミン塩、メラミンの縮合生成物、またはメラミンとリン酸および/または縮合リン酸との反応生成物、またはメラミン縮合生成物とリン酸および/または縮合リン酸との反応生成物、および/または言及された生成物の混合物を含む。
【0064】
より好ましくは、本発明に係る難燃剤―安定剤の組合せは、成分Eとして、20以上の平均縮合度を有するメラミンポリホスフェートを含む。
【0065】
本発明において成分Eとして好ましく使用される、20以上の縮合度を有するメラミンのポリホスフェート誘導体は、難燃剤としての使用が知られている。例えば、DE102005016195A1は、メラミンポリホスフェートおよび予備アルカリ度(reserve alkalinity)を有する1~99重量%の添加剤を含む、安定化された難燃剤を開示している。この文献はまた、この難燃剤をホスフィン酸および/またはホスフィン酸塩と組み合わせることができることも開示している。
【0066】
本発明によるさらに特に好ましい難燃剤-安定剤の組合せは、成分Eとして、20~200、特に40~150の平均縮合度を有するメラミンポリホスフェートを含む。
【0067】
本発明によるさらに好ましい難燃剤-安定剤の組合せは、成分Eとして、320℃以上、特に360℃以上、最も好ましくは400℃以上の分解温度を有するメラミンポリホスフェートを含む。
【0068】
成分Eとして、WO2006/027340A1(EP1789475B1に相当する)およびWO2000/002869A1(EP1095030B1に相当する)から公知のメラミンポリホスフェートを使用することが好ましい。
【0069】
好ましくは、成分Eとして、平均縮合度が20~200、特に40~150であり、メラミン含有量がリン原子1モル当たり1.1~2.0モル、特に1.2~1.8モルであるメラミンポリホスフェートが使用される。
【0070】
同様に好ましくは、平均縮合度(数平均)が>20であり、分解温度が320℃を超え、1,3,5-トリアジン化合物とリンとのモル比が1.1未満、特に0.8~1.0であり、25℃での水中10%スラリーのpHが5以上、好ましくは5.1~6.9であるメラミンポリホスフェートを成分Eとして使用することが好ましい。
【0071】
さらに好ましい実施形態において、本発明による難燃剤安定剤の組み合わせは、成分Eとして、メラミンシアヌレートを含む。
【0072】
本発明において成分Eとして使用されるメラミンシアヌレートは、ポリマー成形コンパウンドのための難燃剤中のジエチルホスフィネートとの相乗剤として、例えばWO97/39053A1から知られている。
【0073】
最も好ましくは、成分Eは、メラミンシアヌレート、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、ジメラミンピロホスフェート、メラミンポリホスフェート、メラムポリホスフェート、メレムポリホスフェートおよび/またはメロンポリホスフェートである。
【0074】
成分Eは、メラム、メレムおよび/またはメロンなどのメラミン縮合生成物、特にメレム、であることが極めて好ましい。
【0075】
添加される成分Eのメラミン(誘導体)の好ましい量は、成分A~Bおよび任意の成分C~Hを含む難燃剤-安定剤混合物に基づいて、10重量%~40重量%である。
【0076】
成分Fの例は、タルク、雲母、ケイ酸塩、石英、二酸化チタン、珪灰石、カオリン、非晶質シリカ、炭酸マグネシウム、白亜、長石および/または硫酸バリウムおよび/またはガラス繊維をベースとする鉱物性粒子状フィラーである。最も好ましくは、ガラスファイバーである。
【0077】
添加される成分Fの充填剤および/または補強材の好ましい量は、成分A~Bおよび任意の成分C~Hを含む難燃剤-安定剤混合物に基づいて、10重量%~70重量%、特に15重量%~50重量%である。
【0078】
成分Gは、潤滑剤および/または離型剤を含む。これらの例は、長鎖脂肪酸、それらの塩、それらのエステル誘導体および/またはアミド誘導体、モンタンワックスおよび/または低分子量ポリエチレンおよび/またはポリプロピレンワックスである。
【0079】
添加される成分Gの好ましい量は、成成分A~Bおよび任意の成分C~Hを含む難燃剤-安定剤混合物に基づいて、1~30重量%、特に5~20重量%である。
【0080】
本発明による難燃剤-安定剤混合物には、必須成分AおよびB、および、成分C、Dおよび/またはGのうち少なくとも2つが含まれる。これらの例は、A、B、CおよびDの組合せ、A、B、CおよびGの組合せ、またはA、B、DおよびGの組合せである。
【0081】
本発明による難燃剤-安定剤混合物は、難燃性ポリマーコンパウンドの製造に使用することができる。
【0082】
したがって、本発明はまた、上記成分A~Bおよび任意の成分C~H、さらなる成分Iとして熱可塑性ポリマーまたはそれらの混合物を含む組成物に関する。
【0083】
成分Iとして好ましいのは、熱可塑性ポリエステル、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性エラストマーポリエステル、熱可塑性エラストマーポリアミドまたは熱可塑性エラストマーポリウレタンである。
【0084】
難燃性ポリマーコンパウンドは、好ましくは、40重量%~94.9重量%の成分I、10重量%~20重量%の成分A、0.3重量%~3重量%の成分B、0重量%~3重量%の成分C、0重量%~3重量%の成分D、0重量%~10重量%の成分E、15重量%~35重量%の成分F、0重量%~2重量%の成分Gおよび0重量%~2重量%の成分Hを含む、ここで、成分の総重量は100重量%であり、成分C、Dおよび/またはGのうち少なくとも2つは存在する。
【0085】
難燃性ポリマーコンパウンドは、特に好ましくは、40重量%~72.9%重量%の成分I、10重量%~15重量%の成分A、0.3重量%~2重量%の成分B、0重量%~3重量%の成分C、0重量%~3重量%の成分D、2重量%~10重量%の成分E、15重量%~30重量%の成分F、0重量%~2重量%の成分Gおよび0.1重量%~2重量%の成分Hを含む、ここで、成分の総重量は100重量%であり、成分C、Dおよび/またはGのうち少なくとも2つは存在する、
【0086】
本発明はまた、成分A~Bおよび任意の成分C~H、または、成分A~Bおよび成分Iおよび任意の成分C~Hを、所定の重量割合で溶融押出によって混合される、本発明による難燃剤-安定剤混合物および難燃剤ポリマーコンパウンドの製造方法に関する。
【0087】
本発明は、さらに本発明に係る難燃性ポリマーコンパウンドから作られるファイバー、フィルム、成形品に関する。
【0088】
本発明は、プラグ、スイッチ、キャパシター、絶縁システム、ランプソケット、コイルフォーム、ハウジング、コントロールおよび他の物品における、本発明に係る難燃性ポリマーコンパウンドから作られるファイバー、フィルム、成形品の使用に関する。
【0089】
本発明は、最終的に、本発明に係る難燃性ポリマーコンパウンドから作られる、防火要求の高いファイバー、フィルム、成形品の使用に関する。
【0090】
熱可塑性ポリマー(成分I)は、好ましくはポリエステルを含む。特に好ましいポリエステルIは、2~6個の炭素原子を有するアルカンジオールから誘導されるポリアルキレンテレフタレートを含む。これらの中で、特に好ましいのは、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレート、またはこれらの混合物である。好ましいのは、1重量%以下、好ましくは0.75重量%以下のヘキサン-1,6-ジオールおよび/または2-メチルペンタン-1,5-ジオールをさらなるモノマーユニットとして含有するPETおよび/またはPBTである。
【0091】
ポリエステルIの粘度は、一般に、ISO1628により、50~220、好ましくは80~160ml/gの範囲(フェノール/o-ジクロロベンゼン混合物中の0.5%水溶液中で測定(25℃で1:1の重量比))である。
【0092】
特に好ましいのは、ポリエステルのカルボキシル末端基含有量が100meq/kg以下、好ましくは40meq/kg以下、より好ましくは20meq/kg未満のポリエステルである。このようなポリエステルは、例えばDE-A4401055のプロセスによって製造することができる。カルボキシル末端基含有量は典型的には滴定法(例えば、電位差測定法)により測る。
【0093】
特に好ましい成形コンパウンドは、成分IとしてPBT以外のポリエステルの混合物、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)を含む。例えば、当混合物中のポリエチレンテレフタレートの割合は、Hの100重量%に対して、好ましくは50重量%以下、特に1.0重量%~35重量%である。
【0094】
PETリサイクル物(スクラップPETとも呼ばれる)を、場合によりPBTなどのポリアルキレンテレフタレートとの混合物中で、使用することも有利である。
【0095】
リサイクル物とは、一般に、以下を意味すると理解される:
1)工業後リサイクル物:これは、重縮合または加工における生産廃棄物、例えば、射出成形による加工の場合にはスプルー、射出成形または押出成形による加工の場合にはスタートアップ材料、または押出シートまたはフィルムからのエッジカットオフ材料を含む。
【0096】
2)消費後リサイクル:これは、エンドユーザによる使用後に回収処理されるプラスチック物品を含む。量の点で圧倒的に多いのは、ミネラルウォーター、ソフトドリンクおよびジュース用のブロー成形PETボトルである。
【0097】
両方のタイプのリサイクル物は、粉砕材またはペレットのいずれかの形態をとることができる。後者の場合、未処理のリサイクル物は分離および洗浄後に、押出機にて溶融およびペレット化される。これは、通常、さらなる加工工程のための取扱い、自由な流れ、および計量可能性を容易にする。
【0098】
ポリエステルIは、好ましくはコポリエーテルエステルでもある。コポリエーテルエステルは、C-Cジオールを芳香族ジカルボン酸およびポリ(アルキレンオキシド)ジオールと反応させることによって得られる重合体である。当C-Cジオールは、好ましくはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールおよびそれらの混合物から選択され、好ましくはブチレングリコールである。当芳香族ジカルボン酸は、テレフタレート、イソフタレート、及びこれらの混合物から選択される。ポリ(アルキレンオキシド)ジオールは、好ましくはポリ(エチレンオキシド)ジオール、ポリ(プロピレンオキシド)ジオール、ポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール(“PTMEG”)、およびこれらの混合物から選択される。
【0099】
成分Iのポリマーは、熱可塑性エラストマーポリエステルであってもよい。これらのポリエステルは、当業者に公知である。
【0100】
ポリマーIは、好ましくはジアミンおよびジカルボン酸から誘導される、および/または、例えばナイロン-2,12、ナイロン-4、ナイロン-4,6、ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6,9、ナイロン-6,10、ナイロン-6,12、ナイロン-6,66、ナイロン-7,7、ナイロン-8,8、ナイロン-9,9、ナイロン-10,9、ナイロン-10,10、ナイロン-11、ナイロン-12などのアミノカルボン酸または対応するラクタムから誘導されるポリアミドおよびコポリアミドである。これらは、例えば、DuPontからのNylon(登録商標)、BASFからのUltramid(登録商標)、DSMからのAkulon(登録商標)K122、DuPontからのZytel(登録商標)7301、BayerからのDurethan(登録商標)B29、およびEmsChemieからのGrillamid(登録商標)の商品名で知られている。
【0101】
また、m-キシレン、ジアミンおよびアジピン酸を原料とする芳香族ポリアミド;ヘキサメチレンジアミンおよびイソおよび/またはテレフタル酸および任意の変性剤としてのエラストマーから製造されるポリアミド、例えばポリ-2,4,4-トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミドもしくはポリ-m-フェニレンイソフタルアミド、前述のポリアミドとポリオレフィン、オレフィンコポリマー、アイオノマーまたは化学的に結合もしくはグラフトしたエラストマーとのブロックコポリマー、またはポリエーテル、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリテトラメチレングリコールとのブロックコポリマーも適している。さらに、EPDM-またはABS-変性ポリアミドまたはコポリアミド;および加工中に縮合したポリアミド(“RIMポリアミド系”)もある。
【0102】
成分Iのポリマーは、熱可塑性エラストマーポリアミドであってもよい。これらのポリアミドは、当業者に公知である。
【0103】
熱可塑性エラストマーポリウレタンは、熱可塑性ウレタン系エラストマー、例えばDesmopan(登録商標)(Bayer)を意味すると理解される。
【0104】
本発明によれば、成分Fとしてタルク、珪灰石、カオリンおよび/またはガラス繊維をベースとする鉱物性粒子状フィラーを使用することが特に好ましい。
【0105】
特に、寸法安定性および高い熱寸法安定性の点で等方性が必要とされる用途、例えば、車体外側部品のための自動車用途では、成分Fとして鉱物充填剤、特にタルク、珪灰石またはカオリンを使用することが好ましい。
【0106】
成分Fは、より好ましくはガラス繊維を含む。繊維状または粒子状充填剤Fは、炭素繊維、ガラス繊維、ガラスビーズ、非晶質シリカ、アスベスト、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、チョーク、粉末石英、雲母、硫酸バリウムおよび長石を含み、これらは組成物の全重量に基づいて、60重量%以下、特に50重量%以下の量で使用される。
【0107】
好ましい繊維充填剤は、炭素繊維およびアラミド繊維を含み、特に好ましいのはEガラスの形態のガラス繊維である。これらは、標準的な市販の形態のすりガラス、ロービング、またはチョップドガラスの形態で使用することができる。
【0108】
繊維充填剤は熱可塑性樹脂とのより良好な相溶性のために、シラン化合物で表面処理されていてもよい。
【0109】
好ましいシラン化合物は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシランおよび置換基Xとしてグリシジル基を含有する相応するシランである。
【0110】
シラン化合物は、一般に、表面コーティングのために、0.05重量%~5重量%、好ましくは0.5重量%~1.5重量%、特に0.8重量%~1重量%(Fに基づいて)の量で使用される。
【0111】
より好ましくは、針状鉱物充填剤が成分Fとしてさらに使用されてもよい。針状鉱物充填剤は、本発明において、著しく顕著な針状特性を有する鉱物充填剤を意味すると理解される。一例は、針状珪灰石である。鉱物の長さ:直径比は、好ましくは2:1~35:1、より好ましくは3:1~19:1、最も好ましくは4:1~12:1である。本発明において好適な針状鉱物の平均粒径は、好ましくは20μm未満、より好ましくは15μm未満、特に好ましくは10μm未満である。
【0112】
充填剤および/または補強材は場合により、例えばシランに基づく接着促進剤または接着促進剤系を用いて表面改質されていてもよい。しかし、前処理は必ずしも必要ではない。特に、ガラス繊維を使用する場合、シランに加えて、ポリマー分散液、フィルム形成剤、分岐剤および/またはガラス繊維加工助剤を使用することも可能である。
【0113】
成形コンパウンドまたは成形品を得るための加工によって、粒子状充填剤は、成形コンパウンドまたは成形品中で、元々使用された充填剤よりも小さいd90またはd50を有することができる。成形コンパウンドまたは成形品を得るための加工によって、ガラス繊維は、成形コンパウンドまたは成形品において、元の長さより短い長さの分布を有することができる。
【0114】
さらなる代替の好ましい実施形態において、成形コンパウンドは、成分A~Fに加えて、さらなる添加剤Gとして少なくとも1種の潤滑剤および離型剤を含んでもよい。
【0115】
この目的のための適切な例は、長鎖脂肪酸(例えば、ステアリン酸またはベヘン酸)、その塩(例えば、ステアリン酸カルシウムまたはステアリン酸亜鉛)およびそのエステル誘導体またはアミド誘導体(例えば、エチレンビスステアリルアミド)、モンタンワックス(28~32個の炭素原子の鎖長を有する直鎖飽和カルボン酸の混合物)、および低分子量ポリエチレンまたはポリプロピレンワックスである。本発明において、低分子量ポリエチレンワックスおよび8~40個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪族カルボン酸と2~40個の炭素原子を有する脂肪族飽和アルコールとのエステルの群からの潤滑剤および/または離型剤を使用することが好ましく、ペンタエリスリトールテトラステアレート(PETS)が非常に特に好ましい。
【0116】
さらなる可能な添加剤Hは、例えば、さらなる安定剤(例えば、UV安定剤)、帯電防止剤、さらなる難燃剤、乳化剤、成核剤、可塑剤、加工助剤、衝撃改質剤、染料および顔料である。さらなる添加剤Hは、単独で、または混合物で、またはマスターバッチの形態で使用されてもよく、または成分Iの前に溶融物中に混合されてもよく、またはその表面に適用されてもよい。
【0117】
使用されるさらなる安定剤は、例えば、ヒドロキノン、ジフェニルアミン、置換レゾルシノール、サリチレート、ベンゾトリアゾールおよびベンゾフェノンなどの芳香族第二級アミン、および、これらの群の種々の置換類似物およびそれらの混合物であってもよい。
【0118】
好適なUV安定剤としては、様々な置換レゾルシノール、サリチレート、ベンゾトリアゾールおよびベンゾフェノンを含む。
【0119】
衝撃改質剤(エラストマー改質剤、改質剤)は、一般的に、次のモノマー:エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブテン、イソプレン、クロロプレン、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、および、アルコール成分中に1~18個の炭素原子を有するアクリルおよびメタクリルエステル、のうちの少なくとも2個から形成されるコポリマーが好ましい。
【0120】
無機顔料、例えば二酸化チタン、ウルトラマリンブルー、酸化鉄、硫化亜鉛およびカーボンブラック、ならびに有機顔料、例えばフタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ならびに染料、例えば着色剤としてのニグロシンおよびアントラキノン、ならびに他の着色剤を添加することが可能である。本発明において、カーボンブラックの使用が好ましい。
【0121】
使用される核形成剤は、例えば、フェニルホスフィン酸ナトリウムまたはフェニルホスフィン酸カルシウム、酸化アルミニウムまたは二酸化ケイ素、好ましくはタルクであり得る。
【0122】
使用される加工助剤は例えば、少なくとも1つのα-オレフィンと、少なくとも1つの脂肪族アルコールのメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルとのコポリマーでありうる。好ましいコポリマーは、当α-オレフィンがエテンおよび/またはプロペンから形成され、当メタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルが、アルコール成分として、4~20個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基を含有する。特に好ましいのは、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルである。
【0123】
可塑剤の例としては、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジル、炭化水素油およびN-(n-ブチル)ベンゼンスルホンアミドが挙げられる。
【0124】
成分A~Bおよび任意の成分C~Hは、熱可塑性ポリマー中に組み込むことができ、例えば、全ての成分を粉末および/またはペレットとしてミキサー中で予備混合し、次いで、コンパウンド装置(例えば、二軸押出機)中でポリマー溶融物中で均質化することによって組み込むことができる。当溶融物は、典型的には押出され、冷却され、ペレット化される。個々の成分は、また、計量ユニットを介して別々にコンパウンド装置に直接導入されてもよい。
【0125】
同様に、A~Bおよび任意の成分C~Hを、最終ポリマーペレットまたは粉末に添加し、射出成形機で直接混合物を加工して成形品を得ることも可能である。
【0126】
当難燃性ポリマーコンパウンドは、成形品、フィルム、フィラメントおよび繊維を、例えば射出成形、押出成形またはプレス成形によって製造するのに適している。
【実施例
【0127】

1.使用成分
熱可塑性ポリマー、成分I:
ポリブチレンテレフタレート(PBT):Ultradur(登録商標)4500(BASF、D)
熱可塑性コポリエーテルエステルエラストマー(TPC):
Riteflex(登録商標)655TPC無充填(セラニーズ、ショアーD硬度55)、TPC-55と称される
Riteflex(登録商標)440TPC無充填(セラニーズ、ショアーD硬度40)
ナイロン-6,6:Ultramid(登録商標)A27、BASF
TPU:Elastollan(登録商標)1185、BASF
【0128】
成分A:
ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、以下DEPALと称される。
【0129】
成分B:
Stabaxol(登録商標)P、ポリマー性カルボジイミド、融点50~60℃、Lanxess
Stabaxol(登録商標)P100、高分子量カルボジイミド、融点75~85℃、Lanxess
Stabaxol(登録商標)P110、高分子量カルボジイミド、融点60~70℃、Lanxess
Stabaxol(登録商標)PLF、モノマー成分を含まないポリマー性カルボジイミドであるLanxess
Lubio(登録商標)AS3、ポリマー性カルボジイミド、シェーファー・アディティブシステム、AS3と称される
Lubio(登録商標)AS18、高分子量ポリマーカルボジイミド、シェーファー・アディティブシステム、AS18と称される
【0130】
成分C:
Irganox(登録商標)1010(ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、BASFから、立体障害性フェノールと称される
Irganox(登録商標)1330(3,3’,3’,5,5’,5’-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール)、BASFから、立体障害性フェノールと称される
Irganox(登録商標)245エチレンビス(オキシエチレン)ビス(3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート)、立体障害性フェノールと称される
【0131】
成分D:
Melapur(登録商標)MC50(メラミンシアヌレート)、BASFから、MCと称される
Melapur(登録商標)200/70(メラミンポリホスフェート=MPP)、BASF、MPPと称される
Delflam20(メレム)、Delamin,UK、メレムと称される
【0132】
成分F:
PPG HP 3610 EC 10 4.5mmガラス繊維
PPG HP 3786 EC 10 4.5mmガラス繊維、日本電気硝子NLから
【0133】
成分G:
潤滑剤:Licowax(登録商標)E、モンタンワックス、クラリアントCHから
【0134】
比較となる成分
AralditeGT7072;HuntsmanCHから、エポキシドと称される
LotaderAX8900、Arkemaから、エチレン-メチルアクリレート-グリシジルメタクリレートターポリマーに基づく耐衝撃性改良剤、AX8900と称される
【0135】
2.難燃性ポリエステル、ポリアミドおよびポリウレタンコンパウンドの製造、加工および試験
【0136】
難燃性成分を、ポリマーペレットおよび任意の添加剤と、表に記載された比率で混合し、240~280℃の温度で二軸スクリュー押出機(Leistritz ZSE 27/HP-44D)に入れた。均質化されたポリマーストランドを取り出し、水浴中で冷却し、次いでペレット化した。
【0137】
十分に乾燥した後、成形コンパウンドを射出成形機(Arburg 320C/KT)において260~280℃の溶融温度で加工して、試験片を得た。成形コンパウンドの難燃性は、UL94V(Underwriters Laboratories Inc.安全規格「デバイスおよびアプライアンスの部品用プラスチック材料の可燃性試験」、14~18ページ、Northbrook 1998)の方法で試験した。
【0138】
燃焼試験は、UL94垂直試験によって行った。UL94燃焼分類は以下の通りである:
【0139】
V-0:残炎時間が10秒以下、10回接炎した場合の全残炎時間が50秒以下、燃焼滴下物無し、試料が完全に消耗しない、試接炎終了後の試験片の残燼時間が30秒を超えない。
【0140】
V-1:接炎終了後残炎時間が30秒を超えない、10回の接炎の残炎時間の合計が250秒以下、接炎終了後の試験片の残燼時間が60秒を超えない、他の基準はV-0に関するとおり。
V-2:綿指示材が燃焼滴下物によって着火する。他の基準はV-1に関するとおり。
【0141】
分類不能(ncl):燃焼分類V-2を満たさない。
【0142】
実施例は、5つの試験片への10回の接炎後の残炎時間を報告する。
【0143】
加水分解安定性の測定は、CertoClav Sterilizer GmbHからのCertoClav MultiControl 2(ラボオートクレーブ)を用いて行った。試料をオートクレーブにかけて、高温および高湿の結果として材料の劣化を試験することを目的とした。試験片は、好ましくは射出成形によって製造される。
【0144】
試験片の数は、必要とされる試験と、もしあれば想定されるサンプリングの数とによる。加水分解安定性はDIN EN 60749-33に従って、すなわち、121℃および1bargで100%相対湿度の圧力下で加熱保管して試験した。
【0145】
さらに、加水分解安定性は、標準的な引張試験片を、85℃および85%相対空気湿度で40日間、気候制御されたキャビネットに保管することによっても測定した。重要な数値は、加水分解試験の前後の機械的値、および%での保存後の値の保持率である。
【0146】
引張特性は、DIN EN ISO 527-1/-2/-3に従って、Z010引張試験機(Zwick製)を用いて測定した。当方法は、試験片の引張変形特性を調べ、固定条件下での引張強度、引張弾性率および引張応力/ひずみの関係の他の特徴を確認するために使用される。
【0147】
試験片は、好ましくは射出成形によって製造される。試験片の数は、必要とされる試験による。試料準備のために、試験片は、23℃/50%相対湿度で、少なくとも16時間、気候制御室内で保管される。ポリアミド試験片及びその他の吸水率の高い試験片は、23℃、湿度50%の気密性の袋に少なくとも24時間入れて保管される。
【0148】
試験片は、破断するまで、または応力(力)または歪み(長さの変化)が規定値に達するまで、一定速度でその最も大きな主軸に沿って延伸され、この操作の間、試験片が負う応力および長さの変化が測定される。測定は、23℃、湿度50%の気候制御室で実施される。
【0149】
ポリエステルエラストマーの例
【0150】
表1:熱可塑性ポリエステルエラストマー:新たに射出成形されたものを、3日間の加圧器試験(121℃、1barg)後に延伸する;B1~2は本発明の実施例である
【0151】
【表1】
【0152】
表1は、難燃性熱可塑性エラストマーがDepAl、MC、ポリマー性カルボジイミド、立体障害性フェノールおよび潤滑剤を使用して得られることを示す。カルボジイミド、立体障害性フェノールおよび潤滑剤の添加は、難燃性を損なわない。オートクレーブ中で3日間曝露(加圧器試験、121℃、1barg)した後でも、破断点伸びの75%までの保持が認められた。配合に際して、圧力の増加およびガスまたは臭気の形成は観察されなかった。
【0153】
PBTの例
表2:PBT GF25コンパウンド:新たに射出成形されたものの延伸および気候制御キャビネット(85℃/85%相対湿度、40日間)での保管後および加圧器試験(PCT、121℃、1barg、3日間)の比較;B3は本発明の実施例である。
【0154】

【表2】
【0155】
表2は、難燃性および加水分解安定性PBTコンパウンドがDepAl、MC、ガラス繊維、立体障害性フェノール、高分子量カルボジイミドおよび潤滑剤を用いて製造され得ることを示す。UL94燃焼分類は、ポリマー性カルボジイミドの添加によって改善される。85℃および85%相対空気湿度で40日間、気候制御キャビネット中で保管後、88%の破断点伸び率は、本発明による難燃性ポリエステルで依然として得られる。当破断点伸び率は、121℃、1bargのオートクレーブ中で2~3日間の難燃性ポリエステルの保管に非常に実質的に匹敵する。したがって、オートクレーブは、PCT条件を用いた迅速な加水分解試験であると考えることができる。配合に際して、圧力の増加およびガスまたは臭気の形成は観察されなかった。
【0156】
表3:加水分解安定化を伴うおよび伴わないPBT GF 25 V-0コンパウンド。オートクレーブ中、121℃で3日間保管の前後の引張試験;B4~7は本発明の実施例である;V4は比較のために再度配合した
【表3】
【0157】
表3は、難燃性熱可塑性ポリエステルがDepAl、MC、ガラス繊維、立体障害性フェノール、異なる分子量を有するカルボジイミドおよび潤滑剤を使用して製造され得ること、最も高い保持率は、分子量>3000g/molのカルボジイミドで達成されることを示す。UL94燃焼分類はカルボジイミド、立体障害性フェノールおよび潤滑剤の添加により、極めて重要な程度まで維持または改善される。3日間、121°C、1bargのオートクレーブで保管後、カルボジイミドをさらに含む難燃性ポリエステルは、ほぼ80%の破断点伸び率が得られた。配合に際して、圧力の増加およびガスまたは臭気の形成は観察されなかった。
【0158】
表4:加水分解安定化を伴うおよび伴わないPBT GF 25 V-0コンパウンド。オートクレーブ中121℃で3日間保存する前後の、射出成形されたばかりの書での引張試験;B8は本発明の例である
【表4】
【0159】
表4は、難燃性熱可塑性ポリエステルがDepAl、メレム、ガラス繊維、立体障害性フェノール、高分子量カルボジイミドおよび潤滑剤を用いて製造され得ることを示す。UL94燃焼分類は、カルボジイミド、立体障害性フェノールおよび潤滑剤の添加によって維持される。3日間、121°C、1bargのオートクレーブで保管後、カルボジイミドおよび立体障害性フェノールをさらに含む難燃性ポリエステルの場合だと、ほぼ60%の破断点伸び率が依然として得られる。配合に際して、圧力の増加およびガスまたは臭気の形成は観察されなかった。
【0160】
ナイロン-6の例
【0161】
表5:PA6GF30:新たに射出成形されたものを、4日間の加圧器試験(121℃、1barg)後に延伸する。B9は本発明の実施例である。
【表5】
【0162】
表5は、難燃性熱可塑性ポリアミドがExolit OP 1400、ガラス繊維、立体障害性フェノール、ポリマー性カルボジイミドおよび潤滑剤を使用して製造され得ることを示す。UL94燃焼分類は、ポリマー性カルボジイミド、立体障害性フェノールおよび潤滑剤の添加によって、十分に維持される。
【0163】
121°Cおよび1barg(PCT)のオートクレーブ中で4日間保管後、77%の破断点伸び率が依然として得られる。ここで、飽和は24時間後にのみ確立されるため、1日目の伸び率のゼロ値は水保管後に取られたことに留意されたい。配合に際して、圧力の増加およびガスまたは臭気の形成は観察されなかった。
【0164】
TPUの例
表6:加水分解安定化を伴うおよび伴わないTPU-V-0コンパウンド。水中85℃で7日間保管後の引張強さ。B10およびB11は本発明の実施例である。
【表6】
【0165】
表6は、DepAl、MC、立体障害性フェノール、高分子量カルボジイミドおよび潤滑剤を用いて、85℃の水中で7日間貯蔵した後でも引張強度の保持率が80%を超える、難燃性熱可塑性ポリウレタンを得ることができることを示している。
【0166】
配合に際してガスの生成及び臭気は観察されず、試験片は変色を示さない。UL94燃焼分類は高分子量カルボジイミド、立体障害性フェノールおよび潤滑剤の添加によって維持され、一方、カルボジイミドの添加なしでは燃焼分類が降下する。