(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】端子装置
(51)【国際特許分類】
H01R 4/48 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
H01R4/48 A
(21)【出願番号】P 2023503695
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 JP2022006094
(87)【国際公開番号】W WO2022185912
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2021033943
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】中西 哲也
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-135809(JP,A)
【文献】独国実用新案第202019101246(DE,U1)
【文献】独国実用新案第202017103185(DE,U1)
【文献】欧州特許出願公開第02768079(EP,A1)
【文献】独国特許出願公開第102008039232(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0071018(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0014354(US,A1)
【文献】特開平11-317249(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第02826978(DE,A1)
【文献】独国特許発明第102018126469(DE,B3)
【文献】西独国特許出願公開第03044134(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/48
H01R 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子と、
前記端子と電気的に接続するための電線が挿入される挿入孔が形成されたハウジングと、
前記挿入孔から挿入された前記電線に弾性接触することで、前記電線と前記端子とを電気的に接続させる弾性部材と、
押圧方向に沿って押圧される押圧部材と、
前記押圧部材と前記弾性部材との間に位置し、前記押圧部材と接触する伝達部材とを備え、
前記押圧部材は、
前記押圧方向と垂直な方向である垂直方向に突出した凸部を有し、
前記挿入孔の開口面と対向するように前記挿入孔及び前記弾性部材を見た場合において、前記押圧方向へ押圧されることにより前記弾性部材を弾性変形させることで、前記挿入孔と重なる前記弾性部材の領域の面積を減少させ、
前記ハウジングは、前記押圧部材が前記弾性部材を弾性変形させた状態で、前記凸部と係合することで前記押圧部材を係止する係止部を有し、
前記弾性部材は、所定方向に沿って並んで配置された接続片と、鎖錠片とを有し、
前記伝達部材は、
前記所定方向に沿って長尺な柱状部材であり、
前記押圧部材が前記押圧方向へ押圧されることにより、前記接続片及び前記鎖錠片を弾性変形させ
、
前記押圧部材に押圧されることで前記弾性部材が弾性変形した状態の場合、前記押圧部材は、第一角度で回転すると、前記凸部が前記ハウジングに設けられた前記係止部に係止される
端子装置。
【請求項2】
前記押圧部材は、押圧軸部と、前記押圧軸部に連結され、押圧されることで前記押圧軸部を前記弾性部材に押圧する頭部とを有し、
前記凸部は、前記頭部よりも前記垂直方向に突出している
請求項1に記載の端子装置。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記伝達部材を介して弾性変形する
請求項1または2に記載の端子装置。
【請求項4】
前記押圧部材は、前記凸部が前記係止部に係止された状態で、前記挿入孔の前記開口面と対向するように前記挿入孔及び前記弾性部材を見た場合において、第二角度で回転すると、前記係止部に係止された状態が解除されることで、前記挿入孔と重なる前記弾性部材の領域の面積を増加させる
請求項1~3のいずれか1項に記載の端子装置。
【請求項5】
前記第一角度で回転して前記凸部が前記係止部に係止される回転方向は、前記第二角度で回転して前記凸部が前記係止部の係止から解除される回転方向と逆方向である
請求項4に記載の端子装置。
【請求項6】
前記押圧部材には、前記弾性部材側と反対側の端部に、工具と係合可能な係合部が形成されている
請求項1から5のいずれか1項に記載の端子装置。
【請求項7】
前記ハウジングは、コンセントのハウジング又はスイッチのハウジングである
請求項1から6のいずれか1項に記載の端子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の特許文献1には、ハウジングに形成された挿入孔から挿入された電線をコンセント刃受けに電気的に接続するためのコンセントの速結端子が開示されている。コンセントの速結端子は、電線に弾性接触して電気的に接続される連結部、及び、電線の抜け止めを図る抜け止め片を有している抜け止め片と、抜け止め片の電線への係止作用を解除する係止解除部材とを有している。コンセントの速結端子では、係止解除部材のリリースボタンが押し込み操作されると、係止解除部材の摺動部が摺動してハウジングの内部へ移動することで、解除片が抜け止め片の電線係止作用を解除し、電線の引き抜きが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のコンセントの速結端子では、作業者がリリースボタンを押し込み操作し続けながら、挿入孔に電線挿抜作業をするため、電線挿抜作業の効率性に課題がある。
【0005】
そこで、本開示は、簡単な手順で挿抜作業を実現することができる端子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る端子装置は、端子と、前記端子と電気的に接続するための電線が挿入される挿入孔が形成されたハウジングと、前記挿入孔から挿入された前記電線に弾性接触することで、前記電線と前記端子とを電気的に接続させる弾性部材と、押圧方向に沿って押圧される押圧部材と、前記押圧部材と前記弾性部材との間に位置し、前記押圧部材と接触する伝達部材とを備え、前記押圧部材は、前記押圧方向と垂直な方向である垂直方向に突出した凸部を有し、前記挿入孔の開口面と対向するように前記挿入孔及び前記弾性部材を見た場合において、前記押圧方向へ押圧されることにより前記弾性部材を弾性変形させることで、前記挿入孔と重なる前記弾性部材の領域の面積を減少させ、前記ハウジングは、前記押圧部材が前記弾性部材を弾性変形させた状態で、前記凸部と係合することで前記押圧部材を係止する係止部を有し、前記弾性部材は、所定方向に沿って並んで配置された接続片と、鎖錠片とを有し、前記伝達部材は、前記所定方向に沿って長尺な柱状部材であり、前記押圧部材が前記押圧方向へ押圧されることにより、前記接続片及び前記鎖錠片を弾性変形させ、前記押圧部材に押圧されることで前記弾性部材が弾性変形した状態の場合、前記押圧部材は、第一角度で回転すると、前記凸部が前記ハウジングに設けられた前記係止部に係止される。
【発明の効果】
【0007】
本開示の端子装置によれば、簡単な手順で挿抜作業を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る配線器具の外観を示す斜視図である。
【
図2A】
図2Aは、実施の形態に係る配線器具の押圧部材を押圧する様子を示す斜視図である。
【
図2B】
図2Bは、実施の形態に係る配線器具の押圧部材を押圧して回転させた後に、電線を第一挿入孔に挿入する様子を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る配線器具を示す分解斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、実施の形態に係る配線器具の押圧部材の係止状態が解除されている場合における本体カバー内部の配線器具を示す斜視図である。
【
図4B】
図4Bは、実施の形態に係る配線器具の押圧部材が係止状態である場合における本体カバー内部の配線器具を示す斜視図である。
【
図5A】
図5Aは、
図1のA-A線において、配線器具の押圧部材の係止状態が解除されている場合を示す断面図である。
【
図5B】
図5Bは、配線器具の押圧部材が係止状態である場合を示す断面図である。
【
図6A】
図6Aは、
図5AのB-B線において、配線器具の押圧部材の係止状態が解除されている場合を示す断面図である。
【
図6B】
図6Bは、配線器具の押圧部材が係止状態である場合を示す断面図である。
【
図7A】
図7Aは、
図5AのC-C線において、配線器具の押圧部材の係止状態が解除されている場合を示す断面図である。
【
図7B】
図7Bは、配線器具の押圧部材が係止状態である場合を示す断面図である。
【
図7C】
図7Cは、配線器具の押圧部材の係止状態が解除されている場合の電線の様子を示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施の形態の変形例に係る配線器具の押圧部材を押圧する様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0010】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。また、以下の実施の形態において、略平行等の表現を用いている。例えば、略平行は、完全に平行であることを意味するだけでなく、実質的に平行である、すなわち、例えば数%程度の誤差を含むことも意味する。また、略平行は、本開示による効果を奏し得る範囲において平行という意味である。他の「略」を用いた表現についても同様である。
【0011】
また、以下の実施の形態では、本体ケース及びカバー支持部の重なる方向をZ軸方向と規定し、配線器具の長手方向をX軸方向とし、Z軸方向及びX軸方向と垂直な方向をY軸方向とする。また、X軸方向において押圧部材を押圧する方向をプラス側の方向とし、Y軸方向において
図1の紙面の奥行側をプラス側の方向とし、Z軸方向において第一挿入孔に電線を挿入する方向をプラス側の方向とする。
【0012】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0013】
(実施の形態)
<構成:配線器具1>
図1は、実施の形態に係る配線器具1の外観を示す斜視図である。
【0014】
図1に示すように、配線器具1は、例えば、施設に設置される照明装置、送風装置等の設備システムに電力を供給したり、供給する電力を遮断したりする接続機器である。配線器具1は、天井、壁等の造営物に埋め込み設置される。配線器具1は、例えば、コンセント又はスイッチである。配線器具1は、Z軸マイナス方向に沿って正面視した場合に、縦長の直方体状に形成されている。
【0015】
図2Aは、実施の形態に係る配線器具1の押圧部材60を押圧する様子を示す斜視図である。
図2Bは、実施の形態に係る配線器具1の押圧部材60を押圧して回転させた後に、電線90を第一挿入孔37aに挿入する様子を示す斜視図である。
【0016】
図2A及び
図2Bに示すように、電線90を配線器具1に接続する際、工具91を押圧部材60に係合させ、X軸プラス方向に押し込み回転させる。すると、押圧部材60は、押し込まれた状態で維持されるため、作業者は、工具91を手放し、配線器具1の第一挿入孔37aに電線90を挿入することで、電線90を配線器具1に電気的に接続することができるようになる。以下、配線器具1について、より具体的に説明する。ここで、工具91は、プラスドライバー、マイナスドライバー、レンチ等である。
【0017】
図3は、実施の形態に係る配線器具1を示す分解斜視図である。
【0018】
図3に示すように、配線器具1は、ハウジング5と、端子装置3とを備えている。
【0019】
[ハウジング5]
ハウジング5は、端子装置3を収容する筐体であり、一部が天井、壁等の造営物に埋め込み設置される。ハウジング5は、コンセントのハウジング又はスイッチのハウジングである。
【0020】
ハウジング5は、本体カバー10と、カバー支持部20と、本体ケース30とを有している。
【0021】
本体カバー10は、扁平な略矩形状をなしており、配線器具1の前面(Z軸プラス方向側の面)であり、カバー支持部20の全体を実質的に覆うように、カバー支持部20のZ軸プラス方向側に配置されている。本体カバー10は、ハウジング5の外郭の一部を構成している。
【0022】
また、本体カバー10は、カバー支持部20と連結することでカバー支持部20に対して回動可能に固定されている。具体的には、本体カバー10は、Y軸プラス方向の側面と、Y軸マイナス方向の側面とのそれぞれに形成された回動軸部11を有している。それぞれの回動軸部11は、本体カバー10のX軸方向における中間部分であり、Y軸方向に沿って並ぶように配置されている。それぞれの回動軸部11は、カバー支持部20に形成された孔部21に挿入されることで、孔部21に対して摺動する。これにより、本体カバー10は、作業者の操作によって、それぞれの回動軸部11を支点として回動する。
【0023】
カバー支持部20は、略矩形状の板状をなしており、本体カバー10と本体ケース30とに挟まれるように配置される。カバー支持部20は、直接的に又は支持枠等を介して造営物に固定される。これにより、配線器具1が造営物に固定される。また、カバー支持部20は、本体ケース30の開口部を覆うように、本体ケース30と連結されて固定されている。具体的には、カバー支持部20は、Y軸プラス方向の側面と、Y軸マイナス方向の側面とのそれぞれに形成された孔部21を有している。それぞれの孔部21は、本体カバー10のX軸方向における中間部分であり、Y軸方向に沿って並ぶように配置されている。それぞれの孔部21には、カバー支持部20に形成されたそれぞれの回動軸部11が一対一で挿入されることで、それぞれの孔部21は、本体カバー10を回動可能に支持している。
【0024】
本体ケース30は、立方体状の外形をなし、Z軸マイナス方向側に底部を有し、Z軸プラス方向側に開口部を有している。
【0025】
また、本体ケース30には、電線90を挿抜するための第一挿入孔37aと、端子装置3の押圧部材60を配置するための第二挿入孔37bとが形成されている。第一挿入孔37aは、端子40と電気的に接続するための電線90が挿入される。第一挿入孔37aは、本体ケース30の底部において、X軸マイナス方向側に形成されている。本実施の形態では、第一挿入孔37aは、複数形成されているが、1つだけ形成されていてもよい。第一挿入孔37aは、挿入孔の一例である。第二挿入孔37bは、本体ケース30の側面において、X軸マイナス方向側の側壁部に形成されている。つまり、第一挿入孔37aと第二挿入孔37bとは、近接するように配置されている。このため、第一挿入孔37a及び第二挿入孔37bは、本体ケース30の底部を含んだ角部分に形成されている。本実施の形態では、第二挿入孔37bは、複数形成されているが、1つだけ形成されていてもよい。
【0026】
図4Aは、実施の形態に係る配線器具1の押圧部材60の係止状態が解除されている場合における本体カバー10内部の配線器具1を示す斜視図である。
図4Bは、実施の形態に係る配線器具1の押圧部材60が係止状態である場合における本体カバー10内部の配線器具1を示す斜視図である。なお、
図4A及び
図4Bでは、端子40の図示を省略している。
【0027】
図3、
図4A及び
図4Bに示すように、本体ケース30には、端子装置3を収容する収容室35が形成されている。収容室35は、第一挿入孔37aと第二挿入孔37bとに連通している。
【0028】
本体ケース30の底部には、複数の突起部が形成されている。複数の突起部は、収容室35を規定し、本体ケース30内に収納された端子装置3等を支持している。具体的には、複数の突起部は、端子装置3の端子40を支持する支持片31と、端子40を支持しかつ押圧部材60と当接する凸壁32とを有している。支持片31は、本体ケース30の底部からZ軸プラス方向に突出する壁部であり、本体ケース30に配置された端子40の姿勢を保持できるように、端子40の周囲に形成されている。凸壁32は、押圧部材60及び伝達部材70との干渉を避けるように、本体ケース30の内壁に沿って形成されている。
【0029】
本体ケース30には、係止部33が設けられている。係止部33は、本体ケース30の第二挿入孔37bを形成する壁部によって形成されている。
図4Bに示すように、押圧部材60が係止状態(係止部33に係止された状態)になった場合に、押圧部材60の凸壁32が係止部33に引っ掛かることで、係止部33は、X軸マイナス方向への押圧部材60の移動を抑制することができる。
【0030】
[端子装置3]
図2B、
図3、
図4A及び
図4Bに示すように端子装置3は、ハウジング5に形成された第一挿入孔37aから挿入された電線90と電気的に接続するためのハウジング5内に配置されている。
【0031】
端子装置3は、端子40と、鎖錠ばね50と、押圧部材60と、伝達部材70とを備えている。
【0032】
端子40は、内部に鎖錠ばね50を収容することが可能な速結端子である。端子40は、端子40の収容室に収納され、電線90と電気的に接続する端子板41と、鎖錠ばね50を介して端子板41とは反対側に配置される対向板42と、端子板41と対向板42とを連結する連結部43とを有している。端子40では、電線90が本体ケース30の第一挿入孔37aから挿入されると、鎖錠ばね50に押し付けられた電線90と端子板41とが電気的に接続される。
【0033】
本実施の形態において、端子40は、一対の端子板41を有している。一対の端子板41の間には、端子40に収容された鎖錠ばね50を露出させることができるスリット44が形成されている。スリット44には、伝達部材70が挿し込まれている。
【0034】
鎖錠ばね50は、第一挿入孔37aから挿入された電線90に弾性接触することで、電線90と端子40とを電気的に接続させる。鎖錠ばね50は、第一挿入孔37aと対向するように配置されている。つまり、Z軸方向に沿って見た場合に、鎖錠ばね50は露出している。鎖錠ばね50は、弾性部材の一例である。
【0035】
図5Aは、
図1のA-A線において、配線器具1の押圧部材60の係止状態が解除されている場合を示す断面図である。
図5Bは、配線器具1の押圧部材60が係止状態である場合を示す断面図である。
【0036】
図5A及び
図5Bに示すように、鎖錠ばね50は、Y軸方向に沿って見た場合におけるS字状の接続片51と、第一挿入孔37aの開口部と対向する位置に配置されるU字状又はV字状の鎖錠片52と、接続片51と鎖錠片52とを連結して、端子40の対向板42に保持される中央片53とを有している。鎖錠片52は、第一挿入孔37aから露出している。接続片51及び鎖錠片52は、端子40の端子板41と対向する又は接触するように配置されている。接続片51及び鎖錠片52は、電線90を介して端子40の端子板41を間接的に押し付けることができる。なお、鎖錠ばね50は、接続片51を有していなくてもよく、接続片51は、鎖錠ばね50の必須の構成要素ではない。
【0037】
鎖錠ばね50は、端子40のスリット44に挿し込まれた伝達部材70が押圧方向(X軸プラス方向)に沿って押圧されることで、弾性変形する。具体的には、鎖錠ばね50の接続片51と鎖錠片52とが伝達部材70と当接しているため、押圧方向に沿って押圧部材60が押圧されることで、押圧部材60及び伝達部材70がX軸プラス方向に移動し、接続片51と鎖錠片52とが弾性変形し(弾性変形した状態)、接続片51及び鎖錠片52が端子40の端子板41から離間することで電線90を挿入可能な隙間が形成される。これにより、第一挿入孔37aから電線90を挿入することで、接続片51及び鎖錠片52と端子板41との間に電線90を配置することができるようになる。言い換えれば、鎖錠ばね50は、弾性変形によって、電線90を端子40と電気的に接続することができるように、電線90を挿入することができる状態に変位することができる。
【0038】
本実施の形態において、
図5A及び
図5Bに示すように、鎖錠ばね50は、一対の接続片51と、一対の鎖錠片52と、一対の中央片53とを有している。一対の接続片51及び一対の鎖錠片52は、一対の端子板41と一対一で対応している。つまり、一対の接続片51及び一対の鎖錠片52が隣り合う2つの第一挿入孔37aと一対一で対応しているため、押圧部材60及び伝達部材70が押圧方向に沿って押圧されると、一対の接続片51及び一対の鎖錠片52が弾性変形する。一対の接続片51及び一対の鎖錠片52が弾性変形すると、隣り合う2つの第一挿入孔37aに対して同時に、電線90を挿抜することができるようになる。
【0039】
なお、鎖錠ばね50は、3つ以上の接続片51と、3つ以上の鎖錠片52と、3つ以上の中央片53とを有していてもよい。また、端子板41も、3つ以上の接続片51及び3つ以上の鎖錠片52と一対一で対応するように3つ以上有していてもよい。また、3つ以上の接続片51及び3つ以上の鎖錠片52は、3つ以上の第一挿入孔37aと一対一で対応していてもよい。このため、1つの押圧部材60を押圧することで、3つ以上の第一挿入孔37aに対して同時に、電線90を挿抜することができてもよい。
【0040】
なお、本実施の形態では、2つの第一挿入孔37aには、1つの鎖錠ばね50が対応しているが、これには限定されない。例えば、3つ以上の第一挿入孔37aに1つの鎖錠ばね50が対応していてもよく、1つの第一挿入孔37aに1つの鎖錠ばね50が対応していてもよい。なお、1つ以上の押圧部材60及び1つ以上の伝達部材70で、1つの鎖錠ばね50を弾性変形させてもよい。
【0041】
図6Aは、
図5AのB-B線において、配線器具1の押圧部材60の係止状態が解除されている場合を示す断面図である。
図6Bは、配線器具1の押圧部材60が係止状態である場合を示す断面図である。
図7Aは、
図5AのC-C線において、配線器具1の押圧部材60の係止状態が解除されている場合を示す断面図である。
図7Bは、配線器具1の押圧部材60が係止状態である場合を示す断面図である。
図7Cは、配線器具1の押圧部材60の係止状態が解除されている場合の電線90の様子を示す断面図である。
【0042】
図6A~
図7Cに示すように、押圧部材60は、本体ケース30の第二挿入孔37bに挿入された状態で本体ケース30に保持されている。押圧部材60は、本体ケース30から頭部62が露出しているため、押圧方向に沿って押圧される。押圧部材60は、押圧方向に押圧されることで鎖錠ばね50が弾性変形した状態の場合、第一角度で回転すると、凸部63がハウジング5に設けられた係止部33に係止される。つまり、押圧部材60は、工具91によって押圧されて第一角度で回転させられることで、本体ケース30の係止部33によって係止され、移動が規制された係止状態になる。このため、凸部63が係止部33に係止されていない状態(係止状態が解除)において、第一挿入孔37aの開口面と対向するように第一挿入孔37a及び鎖錠ばね50を見た場合、押圧部材60が押圧方向へ間接的に又は直接的に押圧されることにより、押圧部材60がX軸プラス方向に移動し、電線90を挿抜することができる状態に鎖錠ばね50が弾性変形することで押圧部材60は、第一挿入孔37aと重なる鎖錠ばね50の領域の面積を減少させる。
【0043】
また、押圧部材60は、凸部63が係止部33に係止されている係止状態の場合、第二角度で回転すると、係止状態が解除される。つまり、工具91によって第二角度で回転させられることで係止状態が解除されると、押圧部材60は、鎖錠ばね50の弾性力によって押圧されることでX軸マイナス方向に移動する。このため、凸部63が係止部33に係止された状態(係止状態)において、第一挿入孔37aの開口面と対向するように第一挿入孔37a及び鎖錠ばね50を見た場合、押圧部材60が第二角度で回転すると、係止状態が解除されることで、鎖錠ばね50が元の状態に戻るとともに、押圧部材60及び伝達部材70がX軸マイナス方向に移動し、第一挿入孔37aと重なる鎖錠ばね50の領域の面積を増加させる。これにより、第一挿入孔37aに電線90が挿入されていれば、端子40と鎖錠ばね50とに挟まれることで、端子40と電気的に接続された状態で電線90が端子装置3に固定される。
【0044】
ここで、第一角度は、第二角度と同一の角度であってもよく、異なっていてもよい。このため、第一角度で回転する回転方向は、第二角度で回転する回転方向と異なっていてもよく、同一であってもよい。
【0045】
図5A~
図6Bに示すように、押圧部材60は、押圧軸部61と、頭部62と、凸部63とを有している。
【0046】
押圧軸部61は、X軸方向に沿って延びる長尺な軸状の部材であり、X軸プラス方向側の端部が伝達部材70に当接している。また、押圧軸部61のX軸マイナス方向側の端部が頭部62と連結している。
【0047】
頭部62は、押圧軸部61に連結され、工具91によって押圧されることで押圧軸部61を鎖錠ばね50に押圧する。つまり、頭部62には、鎖錠ばね50側と反対側の端部に、工具91と係合可能な係合部62aが形成されている。係合部62aは、溝又は穴等の凹部、又は、突出片等の凸部である。
【0048】
これにより、頭部62の係合部62aが工具91と係合することで、押圧部材60は、押圧方向へ押圧されたり、第一角度又は第二角度で回転したりすることができる。つまり、頭部62は、第二挿入孔37bに配置され、工具91によって押圧されることでX軸プラス方向に移動し、第二挿入孔37bの内部に侵入する。また、係止状態が解除されると、頭部62は、鎖錠ばね50の弾性力によってX軸マイナス方向に移動する。
【0049】
凸部63は、押圧方向と垂直な方向である垂直方向に突出している。本実施の形態では、凸部63は、押圧軸部61と頭部62との連結部分から垂直方向に突出している。凸部63は、押圧軸部61又は頭部62に設けられていてもよい。
【0050】
なお、凸部63は、押圧部材60に1以上設けられていてもよい。2つの凸部63が押圧部材60に設けられている場合、凸部63は押圧方向と垂直な方向である垂直方向に突出していればよいため、例えば、押圧軸部61に対して1つの凸部63が押圧軸部61に対して第一規定方向に突出し、もう一つの凸部63が押圧軸部61に対して第一規定方向と異なる第二規定方向に突出していてもよい。なお、規定方向とは、予め設定された方向である。
【0051】
また、凸部63は、頭部62よりも垂直方向に突出している。つまり、
図6Aに示すように、押圧軸部61における中心軸Oから凸部63の先端までの第1距離D1は、当該中心軸Oから頭部62の外周面までの第2距離D2よりも大きい。このため、押圧部材60には、押圧軸部61の中心軸Oと直交する方向に延びる、2つの異なる頭部62及び凸部63が設けられる。
【0052】
このため、押圧部材60が第一角度で回転すると、X軸を中心として凸部63が第一回転方向に回動し、押圧部材60が第二角度で回転すると、X軸を中心として凸部63が第二回転方向に回動する。第一回転方向は、第二回転方向と逆方向である。言い換えれば、第一角度で回転することで凸部63が係止部33に係止される回転方向は、第二角度で回転して凸部63が係止部33の係止から解除される回転方向と逆方向である。なお、第一回転方向は、第二回転方向と同一の方向であってもよい。
【0053】
本実施の形態では、凸部63は、押圧部材60に一対設けられ、押圧軸部61と頭部62との連結部分から互いに遠ざかるように垂直方向に突出している。一対の凸部63は、係止状態の場合にY軸方向に沿って配列される。つまり、押圧部材60が第一角度で回転すると、一対の凸部63も第一角度で回転して、一対の凸部63がハウジング5の本体ケース30に設けられた係止部33に係止される。また、一対の凸部63は、係止状態が解除された場合にZ軸方向に沿って配列される。つまり、押圧部材60が係止状態から第二角度で回転すると、一対の凸部63も第二角度で回転して、一対の凸部63がハウジング5の本体ケース30に設けられた係止部33に係止される。
【0054】
なお、凸部63は、例えば押圧軸部61からZ軸方向に延びた状態のときに係止部33に係止されてもよい。また、凸部63は、例えば押圧軸部61からY軸方向に延びた状態のときに係止部33から係止が解除されてもよい。
【0055】
伝達部材70は、Z軸方向に沿った長尺の柱状部材であり、端子40のスリット44に挿し込まれている。伝達部材70は、押圧部材60と鎖錠ばね50との間に位置し、少なくとも押圧部材60に接触している。つまり、伝達部材70は、押圧部材60と鎖錠ばね50とに挟まれている。具体的には、伝達部材70は、押圧部材60の押圧軸部61におけるX軸プラス方向側の端部と当接し、かつ、鎖錠ばね50における1以上の接続片51及び1以上の鎖錠片52と当接した状態である。このため、伝達部材70は、押圧部材60からの押圧力を鎖錠ばね50に伝達することで、鎖錠ばね50を弾性変形させることができる。また、伝達部材70は、鎖錠ばね50からの弾性力を押圧部材60に伝達したりするため、押圧部材60を押圧方向と反対方向(X軸マイナス方向)に移動させることができる。
【0056】
本実施の形態では、伝達部材70は、一対の接続片51及び一対の鎖錠片52と当接した状態であるがこれには限定されない。例えば、伝達部材70は、3つ以上の接続片51及び3つ以上の鎖錠片52と当接した状態であり、3つ以上の接続片51及び3つ以上の鎖錠片52を同時に弾性変形させることができてもよい。
【0057】
伝達部材70には、押圧部材60と係合する凹状の係合凹部71と、鎖錠ばね50の鎖錠片52と当接する山部72とが形成されている。
【0058】
係合凹部71は、伝達部材70の押圧部材60側の面(X軸マイナス方向側の面)に形成されている。係合凹部71は、押圧部材60の押圧軸部61が挿入されることで、押圧軸部61と係合している。これにより、押圧部材60と伝達部材70との姿勢を維持し易くすることができる。
【0059】
山部72は、伝達部材70の鎖錠ばね50側の面(X軸プラス方向側の面)に形成されている。山部72は、押圧部材60の押圧によって、鎖錠ばね50の鎖錠片52を押圧したり、鎖錠片52が第一挿入孔37a側に移動することを抑制したりすることができてもよい。
【0060】
なお、本実施の形態では、押圧部材60と伝達部材70とは分離可能な別個の構成であるが、押圧部材60と伝達部材70と一体的に構成されていてもよい。
【0061】
<動作>
次に、本実施の形態における端子装置3に電線90を電気的に接続する場合について説明する。
【0062】
まず、作業者は、
図2Aに示すように、工具91の先端を押圧部材60における頭部62の係合部62aに係合させ、工具91をX軸プラス方向に押し込む。これにより、
図7A~
図7Cに示すように、押圧部材60及び伝達部材70が押圧方向に沿って押圧されることで、鎖錠ばね50にその押圧力が伝達されて、鎖錠ばね50が弾性変形する。具体的には、鎖錠ばね50の接続片51及び鎖錠片52が弾性変形し、X軸方向における鎖錠ばね50の幅(厚み)が小さくなる。すると、第一挿入孔37aの開口面と対向するように第一挿入孔37a及び鎖錠ばね50を見た場合、第一挿入孔37aと重なる鎖錠ばね50の領域の面積が減少し、接続片51及び鎖錠片52が端子40の端子板41から離間することで、電線90を挿入可能な隙間が形成される。
【0063】
次に、作業者は、
図2Bに示すように、工具91を第一回転方向に第一角度だけ回転させる。これにより、
図4B、
図5B及び
図6Bに示すように、押圧部材60が伝達部材70に対して第一回転方向に第一角度だけ回転するため、押圧部材60の凸部63も第一回転方向に第一角度だけ回転する。このとき、凸部63が第二挿入孔37bを形成する係止部33と本体ケース30の凸壁32とに間に配置される、言い換えれば凸部63が押圧軸部61に対してY軸方向に沿って延びる姿勢となることで、X軸方向への押圧部材60の移動が規制される。こうして、押圧部材60が係止状態になる。
【0064】
このように、作業者は、工具91を押圧部材60から取り外して手放した後に、電線90を第一挿入孔37aに対して挿抜することができる。
【0065】
例えば、端子装置3に電線90を電気的に接続したい場合、押圧部材60を係止状態にして、接続片51及び鎖錠片52と端子40の端子板41との間に電線90を挿入可能な隙間を形成させ、電線90を第一挿入孔37aに挿入することができる。
【0066】
次に、作業者は、工具91の先端を押圧部材60における頭部62の係合部62aに係合させ、工具91を第二回転方向に第二角度だけ回転させる。これにより、押圧部材60が伝達部材70に対して第二回転方向に第二角度だけ回転するため、押圧部材60の凸部63も第二回転方向に第二角度だけ回転する。このとき、凸部63が押圧軸部61に対してZ軸方向に沿って延びる姿勢となることで、凸部63が第二挿入孔37bを形成する係止部33と本体ケース30の凸壁32とに間から離れ、係止状態が解除される。こうして、X軸方向へ押圧部材60が移動できるようになる。
【0067】
押圧部材60は、鎖錠ばね50の弾性力によってX軸マイナス方向に押圧されているため、係止状態が解除されると、伝達部材70とともにX軸マイナス方向に移動する。押圧部材60の凸部63が第二挿入孔37bを形成する外壁に当接することで、押圧部材60のX軸マイナス方向への移動が抑制される。
【0068】
このとき、電線90は、接続片51及び鎖錠片52によって端子40の端子板41に向けて押し付けられて、接続片51及び鎖錠片52と端子40の端子板41とに挟まれる。これによって、電線90は、端子40と電気的に接続される。
【0069】
そして、作業者は、工具91を押圧部材60から取り外して手放すことで、配線器具1への電線90の取付けを完了することができる。
【0070】
<作用効果>
次に、本実施の形態における端子装置3の作用効果について説明する。
【0071】
上述したように、本実施の形態の端子装置3は、端子40と、端子40と電気的に接続するための電線90が挿入される第一挿入孔37aが形成されたハウジング5と、第一挿入孔37aから挿入された電線90に弾性接触することで、電線90と端子40とを電気的に接続させる鎖錠ばね50と、押圧方向に沿って押圧される押圧部材60とを備える。また、押圧部材60は、押圧方向と垂直な方向である垂直方向に突出した凸部63を有する。また、押圧部材60は、第一挿入孔37aの開口面と対向するように第一挿入孔37a及び鎖錠ばね50を見た場合において、押圧方向へ押圧されることにより鎖錠ばね50を弾性変形させることで、第一挿入孔37aと重なる鎖錠ばね50の領域の面積を減少させる。そして、ハウジング5は、押圧部材60が鎖錠ばね50を弾性変形させた状態で、凸部63と係合することで押圧部材60を係止する係止部33を有する。
【0072】
これによれば、電線90を端子装置3に電気的に接続する際に、押圧部材60を押圧すれば、鎖錠ばね50を弾性変形させることで、第一挿入孔37aの開口面と対向するように第一挿入孔37a及び鎖錠ばね50を見た場合において、第一挿入孔37aと重なる鎖錠ばね50の領域の面積を減少させることができる。また、作業者が押圧部材60を押圧した状態を維持しなくても、凸部63は、ハウジング5に係止されることで、鎖錠ばね50を弾性変形させた状態を維持することができる。このため、作業者は、両手を用いて電線90を端子装置3に電気的に接続する作業を行うことができる。
【0073】
したがって、この端子装置3によれば、簡単な手順で挿抜作業を実現することができる。
【0074】
特に、電線90が柔らかい場合であっても、電線90が鎖錠ばね50で曲げられずに、第一挿入孔37aの奥まで挿入して端子40と電気的に接続することができるようになる。
【0075】
また、本実施の形態の端子装置3において、押圧部材60は、押圧軸部61と、押圧軸部61に連結され、押圧されることで押圧軸部61を鎖錠ばね50に押圧する頭部62とを有する。そして、凸部63は、頭部62よりも垂直方向に突出している。
【0076】
これによれば、垂直方向における突出量は頭部62よりも凸部63の方が大きいため、凸部63がハウジング5の係止部33に引っ掛かることで、押圧部材60を係止部33に係止することができる。このため、鎖錠ばね50を弾性変形させた状態を確実に維持することができる。
【0077】
また、本実施の形態の端子装置3は、押圧部材60と鎖錠ばね50との間に位置し、押圧部材60と接触する伝達部材70を備える。そして、鎖錠ばね50は、伝達部材70を介して弾性変形する。
【0078】
これによれば、伝達部材70によって鎖錠ばね50に対する押圧部材60の位置決めを容易に行うことができるようになる。伝達部材70は、押圧部材60の押圧力を鎖錠ばね50に伝達することができるため、例えば、ハウジング5に複数の鎖錠ばね50が配置されている場合、伝達部材70が同時に複数の鎖錠ばね50を弾性変形させることができる。
【0079】
また、押圧部材60が回転する場合、押圧部材60の端面が伝達部材70上の面で接触して摺動することになるため、鎖錠ばね50に対して押圧部材60の端面が直接的に摺動する場合に比べて、押圧部材60の劣化及び損傷を抑制することができるようなる。
【0080】
また、本実施の形態の端子装置3は、押圧部材60に押圧されることで鎖錠ばね50が弾性変形した状態の場合、押圧部材60は、第一角度で回転すると、凸部63がハウジング5に設けられた係止部33に係止される。
【0081】
これによれば、作業者が押圧部材60を押圧した後に、押圧部材60を第一角度で回転させるだけで、凸部63を係止部33に係止することができる。このとき、電線90が第一挿入孔37aに挿入された状態のときに、押圧部材60を係止状態にした場合、電線90を端子装置3から抜き出すことができる。このため、端子装置3は、作業性に優れている。
【0082】
また、本実施の形態の端子装置3において、押圧部材60は、凸部63が係止部33に係止された状態で、第一挿入孔37aの開口面と対向するように第一挿入孔37a及び鎖錠ばね50を見た場合において、第二角度で回転すると、係止部33に係止された状態が解除されることで、第一挿入孔37aと重なる鎖錠ばね50の領域の面積を増加させる。
【0083】
これによれば、押圧部材60を第二角度で回転するだけで、容易に係止状態を解除することができる。このとき、電線90が第一挿入孔37aに挿入された状態で係止状態を解除した場合、電線90を端子40に電気的に接続することができる。このため、端子装置3は、作業性に優れている。
【0084】
また、本実施の形態の端子装置3において、第一角度で回転して凸部63が係止部33に係止される回転方向は、第二角度で回転して凸部63が係止部33の係止から解除される回転方向と逆方向である。
【0085】
これによれば、作業者が押圧部材60を回転させ続けてしまうことを抑制することができる。このため、端子装置3では、挿抜作業における作業性の低下を抑制することができる。
【0086】
また、本実施の形態の端子装置3において、押圧部材60には、鎖錠ばね50側と反対側の端部に、工具91と係合可能な係合部62aが形成されている。
【0087】
これによれば、工具91を押圧部材60の係合部62aに係合することができるため、押圧部材60に対する工具91の位置合わせをすることが容易になる。このため、工具91を用いて押圧部材60を容易に回転させることができるようになる。
【0088】
また、本実施の形態の端子装置3において、ハウジング5は、コンセントのハウジング又はスイッチのハウジングである。
【0089】
これによれば、端子装置3をコンセント又はスイッチに用いることができる。
【0090】
(実施の形態の変形例)
以下では、
図8に示すように、本変形例における配線器具1の基本的な構成は、実施の形態の配線器具と基本的な構成と同様であるため、本変形例における配線器具1の基本的な構成については同一の符号を付して適宜説明を省略する。本変形例では、ハウジング5に位置合わせ凹部39aが形成されている点で実施の形態と相違する。
図8は、実施の形態の変形例に係る配線器具1を示す斜視図である。
図8のaは、配線器具1の押圧部材60の係止状態が解除されている場合を示した図である。
図8のbは、
図8のaにおける押圧部材60及び位置合わせ凹部39aを拡大した図である。
図8のcは、配線器具1の押圧部材60が工具91によって押圧されて係止状態となった場合を示した図である。
図8のdは、配線器具1の押圧部材60を押圧して回転させた後に、電線90を第一挿入孔37aに挿入した様子を示す図である。
図8のeは、
図8のdにおける押圧部材60及び位置合わせ凹部39aを拡大した図である。
【0091】
本変形例において、本体ケース30には、2つの位置合わせ凹部39aが形成されている。本変形例では、一方の位置合わせ凹部39aは、本体ケース30の第二挿入孔37bからZ軸プラス方向に沿って形成されている。また、他方の位置合わせ凹部39aは、本体ケース30の第二挿入孔37bからZ軸マイナス方向に沿って形成されている。それぞれの位置合わせ凹部39aは、溝状であってもよく、切り欠きであってもよく、単なる窪みであってもよい。このため、位置合わせ凹部39aは、溝状には限定されない。また、本変形例では、2つの位置合わせ凹部39aが形成されているが、1つでもよく、3つ以上でもよい。
【0092】
頭部62の係合部62aは、第一方向に沿って延びる第一係合凹部62a1と、第一方向と交差し、第二方向に沿って延びる第二係合凹部62a2とを有している。本変形例では、第一係合凹部62a1の延びる方向は、第二係合凹部62a2の延びる方向と直交している。また、第一係合凹部62a1は、円板状の頭部62において、押圧軸部61の軸心を含み、頭部62の所定の外周端縁から軸心を挟んで反対側の外周端縁まで横断するように延びている。
【0093】
押圧部材60の係止状態が解除されている場合、
図8のa及びbに示すように、第一係合凹部62a1の延びる方向である第一方向は、Z軸方向と略平行となるように配置され、第二係合凹部62a2の延びる方向である第二方向は、Y軸方向と略平行となるように配置される。つまり、押圧部材60の係止状態が解除されている場合、第一係合凹部62a1と位置合わせ凹部39aとの凹部同士が合う(同一ラインになる)ように押圧部材60が設けられる。これにより、作業者は、押圧部材60の係止状態が解除されていることを容易に認識することができる。
【0094】
また、押圧部材60の係止状態の場合、
図8のc~
図8のeに示すように、第一係合凹部62a1の延びる方向である第一方向は、Z軸方向と交差するように配置され、第二係合凹部62a2の延びる方向である第二方向は、Y軸方向と交差するように配置される。つまり、押圧部材60の係止状態の場合、第一係合凹部62a1と位置合わせ凹部39aと合わない(同一ラインにならない)ように、押圧部材60が設けられる。これにより、作業者は、押圧部材60の係止状態であることを容易に認識することができる。
【0095】
なお、本変形例では、押圧部材60の係止状態が解除されている場合、第一係合凹部62a1と位置合わせ凹部39aとの凹部同士が合う場合を例示しているが、これには限定されない。押圧部材60の係止状態の場合、第一係合凹部62a1と位置合わせ凹部39aとの凹部同士が合う構成であってもよい。
【0096】
(その他の変形例)
以上、本開示に係る端子装置について、上記各実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思い付く各種変形を実施の形態に施したものも、本開示の範囲内に含まれてもよい。
【0097】
例えば、本実施の形態に係る端子装置は、伝達部材を有していなくてもよい。この場合、押圧部材の押圧軸部は、端子のスリットに配置され、鎖錠ばねに当接することで、直接的に押圧して鎖状ばねを弾性変形させてもよい。つまり、本実施の形態に係る端子装置のように、押圧部材に加えられた押圧力が、伝達部材を介して間接的に鎖錠ばねを押圧して弾性変形させることに限定されない。このため、伝達部材は、端子装置の必須の構成要素ではない。
【0098】
また、本実施の形態に係る端子装置において、弾性部材が弾性変形した状態の場合、第一挿入孔の開口面と直交するY軸方向において、伝達部材及び押圧部材が開口面と重なっていなくてもよい。この場合、押圧部材が係止状態であれば、電線を第一挿入孔にスムーズに挿入することができる。
【0099】
なお、上記の各実施の形態に対して当業者が思い付く各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【符号の説明】
【0100】
3 端子装置
5 ハウジング
33 係止部
37a 第一挿入孔(挿入孔)
40 端子
50 鎖錠ばね(弾性部材)
60 押圧部材
61 押圧軸部
62 頭部
62a 係合部
63 凸部
70 伝達部材
90 電線
91 工具