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  • 特許-鉛蓄電池用セパレータ、および鉛蓄電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】鉛蓄電池用セパレータ、および鉛蓄電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/463 20210101AFI20240820BHJP
   H01M 50/44 20210101ALI20240820BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20240820BHJP
   H01M 10/06 20060101ALI20240820BHJP
   H01M 10/08 20060101ALI20240820BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20240820BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20240820BHJP
   H01M 50/454 20210101ALI20240820BHJP
【FI】
H01M50/463 A
H01M50/44
H01M50/489
H01M10/06 L
H01M10/08
H01M50/434
H01M50/451
H01M50/454
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023505551
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(86)【国際出願番号】 JP2022009803
(87)【国際公開番号】W WO2022191145
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2021038245
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】岩間 珠莉
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 康史
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-329391(JP,A)
【文献】特開平03-203158(JP,A)
【文献】特表2017-515284(JP,A)
【文献】国際公開第2022/034918(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-497
H01M 10/06-22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の少なくとも片面に積層された導電層とを備える、鉛蓄電池用セパレータであって、
前記導電層はクラックを有し、前記導電層は、第一の導電性材料と、前記クラックの平均クラック幅の1%以上30%以下の平均繊維径を有する繊維状の第二の導電性材料とを含む、鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項2】
前記繊維状の第二の導電性材料が、繊維状の炭素材料である、請求項1に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項3】
前記導電層の表面全体のうち、前記クラックが占める面積の割合が0.1%以上30%以下である、請求項1又は2に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項4】
前記繊維状の第二の導電性材料の少なくとも一部は、前記導電層から、前記クラックの空隙に向けて伸びている、請求項1~3のいずれか一項に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項5】
前記クラックの平均クラック幅が1.0μm以上20.0μm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項6】
前記導電層の厚みが0.1μm以上30μm以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項7】
前記クラックが、前記導電層の表面から層-基材界面に到達している、請求項1~6のいずれか一項に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項8】
前記繊維状の第二の導電性材料がカーボンナノチューブである、請求項1~7のいずれか一項に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項9】
前記第一の導電性材料が炭素材料を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項10】
前記第一の導電性材料がファーネスブラック、アセチレンブラック及びケッチェンブラックからなる群から選択される少なくとも一つを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項11】
正極と、負極と、電解液と、前記正極及び前記負極の間に請求項1~10のいずれか一項に記載の鉛蓄電池用セパレータとを含む、鉛蓄電池。
【請求項12】
前記電解液は、標準電極電位が-0.7V以下の金属、又は、前記金属からなる金属化合物の少なくとも一つを含む、請求項11に記載の鉛蓄電池。
【請求項13】
前記電解液は、亜鉛または亜鉛化合物の少なくとも一つを含む、請求項11又は12に記載の鉛蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉛蓄電池用セパレータ、およびこれを用いた鉛蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は、車載用途、例えば、乗用車、バス、トラック、二輪車、及びゴルフカート、並びに産業用途、例えば、フォークリフト、耕作機械、鉄道、UPS、及び通信機器等において、世界的に広く使用されている。特に、近年の車載用途では、ハイブリッド式電気自動車(HEV)や、アイドリングスタートアンドストップ(ISS)車などの、約50%~80%の部分充電状態(PSoC)での動作に対応できる性能が求められている。
【0003】
鉛蓄電池への主な要求性能は、充電受入性、サイクル特性、及び減液特性(water loss性能)である。環境性能及び燃費向上のために充電制御機能や回生充電機能を搭載した鉛蓄電池は、充電機会が短く限られている。そのため、効率よく多くのエネルギーを電池へ充電する為に充電受入性が求められる。電池が長くPSoCで維持されるとサイクル特性は低下しやすくなる。その理由は、PSoCの電池では、電極表面に結晶性の高い硫酸塩が形成されやすく、形成された硫酸塩結晶が蓄積すると、電極の充電受入性能が劇的に減少し(サルフェーション)、最終的に寿命に至るからである。また、負極が水素発生電位に達すると、水が分解され、減液が起こる。そのため、メンテナンス性の観点から、減液特性の向上及び維持が求められる。
【0004】
鉛蓄電池用セパレータは、一般に耐電圧特性を有する微多孔構造を持つ膜体であり、正極と負極の短絡を防止するために、両極表面に密着した状態で配置される。従来、セパレータ表面(x軸y軸平面)方向において、電極の補助的な導電パスとして機能することで電極表面反応を促進し、充電受入性およびサイクル特性を向上させること等を目的として、鉛蓄電池用セパレータの基材の表面に構造体(単に「層」又は「塗工層」ともいう。)を設けることが行われている。しかしながら、上記構造体によって電解液中におけるセパレータの電気抵抗(ER)が増加するため、電池の内部抵抗が上がり鉛蓄電池の初期放電容量低下が発生する問題があった。
【0005】
特許文献1には、カーボンナノチューブを塗布または添加した電池セパレータによって、電荷受容性の向上、表面伝導率の向上、耐酸化性の向上、酸層化の低減、金属汚染誘導酸化耐性の向上、黒い残留物の低減、湿潤性能向上、剛性の向上を得られる技術が公開されている。
【0006】
特許文献2には、工学炭素材料を塗布または添加した電池セパレータによって、鉛蓄電池の充電受入性およびサイクル寿命を改善する技術が公開されている。
【0007】
特許文献3には、カーボンナノチューブを塗布または添加した電池セパレータによって、鉛蓄電池のデンドライトの形成を軽減し、電荷受容を改良し、サイクル性能を改良する技術が公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2017/062461号
【文献】国際公開第2015/171595号
【文献】特表2020-533741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1、2、及び3に記載の電池セパレータは、電解液中の電気抵抗(以下、「ER」とも言う。)を低減させること及びその手段について記載していない。また、表面抵抗を低減させること及びその手段について記載していない。
【0010】
本開示は、表面抵抗が低く、且つ電解液中のERが低いことを兼ね備えた鉛蓄電池用セパレータ、およびこれを用いた鉛蓄電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、本開示の実施形態の例を列記する。
[1]
基材と、上記基材の少なくとも片面に積層された導電層とを備える、鉛蓄電池用セパレータであって、
上記導電層はクラックを有し、上記導電層は、第一の導電性材料と、上記クラックの平均クラック幅の1%以上30%以下の平均繊維径を有する繊維状の第二の導電性材料とを含む、鉛蓄電池用セパレータ。
[2]
上記繊維状の第二の導電性材料が、繊維状の炭素材料である、項目1に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
[3]
上記導電層の表面全体のうち、上記クラックが占める面積の割合が0.1%以上30%以下である、項目1又は2に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
[4]
上記繊維状の第二の導電性材料の少なくとも一部は、上記導電層から、上記クラックの空隙に向けて伸びている、項目1~3のいずれか一項に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
[5]
上記クラックの平均クラック幅が1.0μm以上20.0μm以下である、項目1~4のいずれか一項に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
[6]
上記導電層の厚みが0.1μm以上30μm以下である、項目1~5のいずれか一項に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
[7]
上記クラックが、上記導電層の表面から層-基材界面に到達している、項目1~6のいずれか一項に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
[8]
上記繊維状の第二の導電性材料がカーボンナノチューブである、項目1~7のいずれか一項に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
[9]
上記第一の導電性材料が炭素材料を含む、項目1~8のいずれか一項に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
[10]
上記第一の導電性材料がファーネスブラック、アセチレンブラック及びケッチェンブラックからなる群から選択される少なくとも一つを含む、項目1~9のいずれか一項に記載の鉛蓄電池用セパレータ。
[11]
正極と、負極と、電解液と、上記正極及び上記負極の間に項目1~10のいずれか一項に記載の鉛蓄電池用セパレータとを含む、鉛蓄電池。
[12]
上記電解液は、標準電極電位が-0.7V以下の金属、又は、上記金属からなる金属化合物の少なくとも一つを含む、項目11に記載の鉛蓄電池。
[13]
上記電解液は、亜鉛または亜鉛化合物の少なくとも一つを含む、項目11又は12に記載の鉛蓄電池。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、表面抵抗が低く、且つ電解液中のERが低いことを兼ね備えた鉛蓄電池用セパレータ、およびこれを用いた鉛蓄電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1の導電層を備える鉛蓄電池用セパレータの走査電子顕微鏡(SEM)による表面画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
《鉛蓄電池用セパレータ》
本開示の鉛蓄電池用セパレータ(以下、単に「セパレータ」ともいう。)は、基材と、該基材の少なくとも片面に積層された導電層とを有する。導電層はクラックを有し、導電層は、第一の導電性材料と、繊維状の第二の導電性材料とを含む。そして、クラックによる空隙に、繊維状の第二の導電性材料が存在することが好ましい。本開示のセパレータは、正極と負極の間に配置され、正極と負極との電気的短絡を防止する。導電層は、基材の両面に積層されていてもよく、基材の片面又は両面の全体に積層されていても部分的に積層されていてもよい。本願明細書において、基材の片面又は両面に導電層が「積層され」というときは、基材に導電層が直接積層されている場合と、他の層を介して間接的に積層されている場合とを包含する。イオンが透過し得るように、セパレータは通常微多孔質である。セパレータの最大孔径は、好ましくは500nm以下、400nm以下、300nm以下、200nm以下、又は150nm以下である。
【0015】
〈導電層〉
「クラック」とは、基材上に導電層を備えるセパレータにおいて、当該導電層の表面の連続性を断つ空間的隔たりであって、導電層の表面(x軸y軸平面)から厚み方向(z軸方向)へ形成された溝状構造を指す。溝状構造は、当該導電層の表面から層-基材界面(セパレータ表面)まで必ずしも到達する必要はないが、電解液中のERを低減する観点から、層-基材界面に到達していることが好ましい。
【0016】
導電層は、表面抵抗を低く、且つ電解液中のERを低くすることができる。その理由としては、理論に限定されないが、以下のように推定している。従来、セパレータ表面(x軸y軸平面)方向において、電極の補助的な導電パスとして機能することで電極表面反応を促進し、充電受入性およびサイクル特性を向上させること等を目的として、鉛蓄電池用セパレータの基材の表面に構造体(単に「層」又は「塗工層」ともいう。)を設けることが行われている。該構造体の材料としては、無機物、有機物または有機物と無機物の混合物が挙げられる。しかしながら、該構造体は、電解液中において厚さ方向の電荷の移動を阻害するため、電解液中におけるセパレータのERの増加を招き、電池の内部抵抗が上がり鉛蓄電池の初期放電容量低下が発生する問題があった。そこで、本開示では、意図的にクラックを当該導電層へ形成し、且つクラックによる空隙に繊維状の第二の導電性材料を存在させ導電パスとすることによって、表面抵抗を低く、且つ電解液中のERを低くすることができると考えられる。
【0017】
導電層は、電解液中のERを低減する観点から、後述の方法により測定される平均クラック幅は、好ましくは1μm以上20μm以下、1μm以上10μm以下、又は5μm以上10μm以下である。クラックのパターンは、特に限定されないが、具体例として、導電層の表面上に縞状、格子状、分岐(ひび割れ)状等のパターン(模様)を有してもよい。表面抵抗を低減し、電解液中のERを低減する観点から、導電層の表面全体のうち、クラックが占める面積の割合は、好ましくは0.1%以上30%以下、1%以上20%以下、又は4%以上15%以下である。
【0018】
〈導電層の厚み〉
導電層の厚みは、導電層の剥離やセパレータからの脱落を抑制し、基材表面に均一に導電層を形成する観点から、好ましくは0.1μm以上30μm以下、1μm以上30μm以下、1μm以上25μm以下、1μm以上20μm以下、又は1μm以上15μm以下である。
【0019】
〈第二の導電性材料〉
導電層は、表面抵抗を低減し、電解液中のERを低減する観点から、クラックの空隙に繊維状の第二の導電性材料が存在することが好ましい。表面抵抗を低減し、電解液中のERを低減する観点から、繊維状の第二の導電性材料の少なくとも一部は、導電層から、クラックの空隙に向けて伸びている状態が好ましい。繊維状の第二の導電性材料が、クラックの複数個所を架橋するように存在することが更に好ましい。一つの架橋は、一本の繊維状導電性材料又は複数本の繊維状導電性材料の束で形成されてもよい。
【0020】
後述の方法により測定される繊維状の第二の導電性材料の平均繊維径は、上記平均クラック幅の1%以上30%以下、好ましくは2%以上20%以下、又は3%以上10%以下である。繊維状の第二の導電性材料の平均繊維径の絶対値は、好ましくは1nm以上1500nm以下、5nm以上1000nm以下、又は10nm以上750nm以下である。
【0021】
導電層に含まれる繊維状の第二の導電性材料は、電池性能に影響を及ぼさないよう、繊維状の炭素材料が好ましい。繊維状の炭素材料としては、例えば、炭素繊維、カーボンナノファイバー、及びカーボンナノチューブが挙げられる。繊維状の第二の導電性材料は、表面抵抗を低減し、且つERを低減する観点から、カーボンナノファイバー、又はカーボンナノチューブがより好ましい。上記の中でも、カーボンナノチューブが更に好ましい。
【0022】
導電層全体に含まれる繊維状の第二の導電性材料の量は、表面抵抗を低減し、電解液中のERを低減する観点から、導電層の全質量を基準として、好ましくは0.001質量%以上10質量%以下、0.005質量%以上5質量%以下、又は0.01質量%以上3質量%以下である。
【0023】
〈第一の導電性材料〉
導電層は、導電性の観点から、繊維状の第二の導電性材料以外に、第一の導電性材料を含む。導電層は、導電層の全質量を基準として、第一の導電性材料を、好ましくは50質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上含んでもよい。これらの下限値と組み合わせることのできる第一の導電性材料の量の上限値は、特に限定されないが、例えば、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、又は80質量%以下であってよい。繊維状の第二導電性材料以外の第一の導電性材料としては、炭素材料を含むことが好ましい。例えば、第一の導電性材料としては、黒鉛、活性炭、カーボンブラック、グラフェン、及びフラーレン等の炭素クラスター、炭素モノリシック材料、並びにそれらの混合物が挙げられる。上記炭素材料の中でも、導電性の観点から、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛がより好ましく、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックがより好ましい。
【0024】
第一の導電性材料としての炭素材料の中心粒径(d50)は、均一な層厚みの形成が容易である観点から、好ましくは0.01μm以上50μm以下、0.01μm以上30μm以下、又は0.01μm以上10μm以下である。
【0025】
〈界面活性剤〉
導電層は、導電層の第一の導電性材料を均一に分散させる観点から、界面活性剤を含んでもよい。導電層の第一の導電性材料が炭素材料である場合、界面活性剤によって炭素材料が導電層全体にわたって均一に分布し、均一な導電パスを形成することができるため、より好ましい。界面活性剤としては、硫酸エステル型、リン酸エステル型、カルボン酸型、及びスルホン酸型などのアニオン系界面活性剤、第4級アンモニウム塩型、及びアミドアミン型などのカチオン系界面活性剤、アルキルベタイン型、アミドベタイン型、及びアミンオキサイド型などの両性界面活性剤、エーテル型、脂肪酸エステル型、及びアルキルグルコキシドなどの非イオン系界面活性剤、並びにポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリスルホン酸塩、ポリナフタレンスルホン酸塩、ポリアルキレンポリアミンアルキレンオキシド、ポリアルキレンポリイミンアルキレンオキシド、ポリビニルピ口リドン、及びセルロース型などの高分子型界面活性剤など、各種界面活性剤を用いることができる。フィラ一同士の凝集を防ぐ目的で、これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。導電層の第一の導電性材料を均一に分散させる効果が得られるものであれば、これらに限定されるものではない。界面活性剤としては、イオン性界面活性剤、すなわちアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、及び両性界面活性剤からなる群から選択される少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0026】
界面活性剤の量は、導電層の第一の導電性材料の合計を100質量部として、好ましくは1質量部以上100質量部以下、又は10質量部以上60質量部以下である。
【0027】
〈樹脂〉
導電層は、第一の導電性材料の結着性を高め、導電層の剥離や基材からの脱落を抑制する観点から、樹脂を含むことが好ましい。樹脂としては、スチレン系樹脂、アクリル・ウレタン系樹脂、アクリル・スチレン系樹脂、酢酸ビニル・アクリル系樹脂、スチレン・ブタジエン系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン系樹脂、天然ゴム系樹脂、ポリブタジエン系樹脂(BR樹脂)、メチルメタクリレート・ブタジエン系樹脂、2-ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン系樹脂(VP樹脂)、クロロプレン樹脂(CR樹脂)、ポリエチレン又はポリプロピレン又はポリブテン又はそれらの共重合体等のポリオレフィン系樹脂、該ポリオレフィン系樹脂を塩素化又は酸変性した変性ポリオレフィン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン又はポリテトラフルオロエチレン等の含フッ素樹脂、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体又はエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等の含フッ素ゴムバインダー、(メタ)アクリル酸-スチレン-ブタジエン共重合体樹脂及びその水素化物、ポリビニルアルコール樹脂、及びポリビニルアルコール・ポリアセテート共重合体樹脂等が挙げられる。
【0028】
上記樹脂の中でも、結着性と耐熱性とを向上させる観点から、アクリル系樹脂、又はスチレン系樹脂がより好ましく、アクリル系樹脂が更に好ましい。本明細書で「アクリル系樹脂」は、アクリル系共重合樹脂、例えばアクリル・ウレタン系樹脂、アクリル・スチレン系樹脂、アクリル・スチレン・ブタジエン系樹脂、及び酢酸ビニル・アクリル系樹脂、並びにアクリル樹脂等の重合体を包含する。本明細書で「スチレン系樹脂」は、スチレン系共重合樹脂、例えばアクリル・スチレン系樹脂、スチレン・ブタジエン系樹脂、アクリル・スチレン・ブタジエン系樹脂、及び2-ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン系樹脂、並びにスチレン樹脂等の重合体を包含する。
【0029】
樹脂の量は、導電層の第一の導電性材料の合計を100質量部として、好ましくは1質量部以上100質量部以下、又は10質量部以上40質量部以下である。
【0030】
これらの樹脂は、上記例示した組成に、その他の成分が1種以上含まれていてもよい。樹脂は、1種に限定されず、複数種を併用することができる。例えば、アクリル系樹脂とスチレン系樹脂の組み合わせ等が例示できる。
【0031】
〈増粘剤〉
導電層は、導電層の剥離や基材からの脱落を抑制し、基材表面に均一に導電層を形成する観点から、増粘剤を含むことが好ましい。増粘剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ウレタン変性ポリエーテル、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ビニルメチルエーテル-無水マレイン酸共重合体などの合成高分子、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボメトキシセルロース、ヒド口キシエチルセルロース、ヒド口キシフ口ピルセルロースなどのセルロース誘導体、キサンタンガム、ダイユータンガム、ウェランガム、ジェランガム、グアーガム、カラギーナンガム、ペクチンなどの天然多糖類、デキス卜リン、アルファ化でんぷんなどのでんぷん類が挙げられる。増粘剤は、スラリーの粘度、ポットライフ及び粒度分布の観点から適宜選択される。これらは1種を単独で文は2種以上を組み合わせても用いられる。
【0032】
増粘剤の量は、導電層の第一の導電性材料の合計を100質量部として、好ましくは0.1質量部以上50質量部以下、又は1質量部以上20質量部以下である。
【0033】
〈基材〉
基材としては、イオンが透過し得るように微多孔質であれば特に限定されず、好ましくはポリビニル、及びポリオレフィン等の熱可塑性ポリマー、フェノール樹脂等の熱硬化性ポリマー、天然又は合成ゴム、及びラテックス等のゴム材料、合成木材パルプ(SWP)、ガラス繊維、合成繊維、及びセルロース繊維等の繊維材料、並びにこれらの組合せ等の天然又は合成材料から製造された多孔質膜が挙げられ、より好ましくは、熱可塑性ポリマーから製造された微多孔膜である。熱可塑性ポリマーとしては、基本的には、鉛蓄電池の用途に適したあらゆる酸耐性熱可塑性材料が挙げられ、好ましい熱可塑性ポリマーとしては、例えばポリビニル、及びポリオレフィン等が挙げられる。ポリビニルとしては、例えばポリ塩化ビニル(PVC)が挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えばポリエチレン、及びポリプロピレン等が挙げられる。ポリエチレンとしては、例えば超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)が挙げられる。
【0034】
《鉛蓄電池》
本開示の鉛蓄電池は、本開示の鉛蓄電池用セパレータを備える。該鉛蓄電池は、正極と、負極と、該正極及び該負極の間に配置された本開示のセパレータとを有する鉛蓄電池である。電解液としては希硫酸を含む電解液を使用することができる。正極を構成する正極格子は鉛又は鉛合金でよく、正極活物質は、酸化鉛、例えば二酸化鉛でよい。負極を構成する負極格子は鉛又は鉛合金でよく、負極活物質は鉛でよく、鉛負極そのものは、例えば海綿状の形態でよい。これらの正極及び負極の活物質は、鉛又は鉛合金以外のその他の金属元素を50質量%以下含んでもよい。希硫酸とは、比重1.1~1.4の硫酸であり、電解液は添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、サルフェーションの抑制の観点から、例えば、アルミニウムイオンを含むことができる。その他の添加剤としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン等の金属イオンが挙げられる。
【0035】
正極と負極の間に本開示のセパレータを設けることで、充電受入性およびサイクル特性を向上させ、且つ初期放電容量低下が発生しない鉛蓄電池が得られる。本開示の鉛蓄電池用セパレータは、開放式鉛蓄電池、及び制御弁式鉛蓄電池のいずれにおいても使用可能である。
【0036】
《鉛蓄電池用セパレータの製造方法》
〈基材の作製〉
以下、基材がポリオレフィン、例えば超高分子量ポリエチレンからなる基材を例に挙げて、その製造方法を説明するが、基材は、その上に導電層を形成することができる限り、以下の製造方法によって得られる基材に限定されない。
【0037】
基材を製造する方法は、以下:熱可塑性ポリマー、例えば超高分子量ポリエチレン(以後、「UHMWPE」と呼ぶ)を用意する工程と;粒子状充填剤を用意する工程と;室温(25℃)において液状物である加工用可塑剤を用意する工程と;UHMWPE、粒子状充填剤、および加工用可塑剤を混合して、混合物を形成する工程と;該混合物を、ダイ、たとえばスロットダイまたはインフレーションダイ等を通して押出し加工して、シートを形成する工程と;該シートから部分的または全面的に可塑剤を除去し、それによって微孔質マトリックスを形成する抽出工程とを含む。上記シートを形成する工程の後、抽出工程の前に、該シートを、冷却ローラー上へのキャスト法、カレンダー法、またはインフレーション法によって、さらに加工してもよい。そのキャスト法またはカレンダー法等で処理されたシートを、次いで、上記抽出工程にかけて部分的または全面的に可塑剤を除去し、それにより微孔質マトリックスを形成することができる。
【0038】
上記方法で得られる該微孔質マトリックスは、UHMWPE、可塑剤(部分的に抽出した場合)、およびマトリックス全体に分散された粒子状充填剤を含む。その粒子状充填剤は、微孔質マトリックスの5質量%以上95質量%以下を占めていることが好ましい。本願明細書において、「微孔質マトリックス」とは、相互に連通している細孔のネットワークを有し、上記構成材料によって微孔質マトリックス全体が連結されている構造をいう。それらの細孔が、微孔質マトリックスの容積の25%以上90%以下を占めていることが好ましい。基材の製造方法は、抽出工程の後、該微孔質マトリックスを延伸する工程と;その延伸された微孔質マトリックスをカレンダー加工して最終的な微孔質材料を製造する工程を更に含んでもよい。上記カレンダー加工を行うことで、高温においても、寸法安定性に優れる基材が形成できる。
【0039】
〈導電層の形成〉
導電層は、基材表面に直接積層する場合と、単層または複数の層からなる積層体を備えた基材の積層体中間層または積層体表面層として、間接的に積層する場合とがある。後者の場合、基材へ単層または複数層を積層していく工程の中間工程として導電層を導入してもよいし、積層材料の一部へ導電層を導入した後に、基材と導電層を含む積層体とを重ね合わせて導入してもよい。
【0040】
基材に積層される導電層を形成する方法は、以下:導電層を形成する材料を溶媒と混合する工程と;基材または積層体の表面に材料の混合物を導入する工程と;混合物を乾燥させて溶媒を除去する工程とを含む。材料は、溶媒中で均一化し、混合物とすることが好ましい。溶媒は、水系溶媒でもよいし、有機溶媒でもよい。導入の方法としては、混合物を、例えばダイコート法やグラビアコート法を用いて、基材または積層体の表面へ湿潤状態で塗布することが挙げられる。混合物を塗布した基材または積層体は、プレス等の更なる加工を行ってもよい。積層体の中間層として導電層を有する場合には、導電層上に更に他の層を形成してもよい。
【0041】
クラックの形成は、上記乾燥工程で行ってもよく、他の又は追加の工程において導電層の表面を物理的に破壊することによって行ってもよい。例えば、クラックを形成しやすく工程数を低減する観点から、上記乾燥工程でクラックを形成することが好ましい。基材または積層体の表面上に導入された湿潤状態の混合物は、85℃の雰囲気にて一定以上の乾燥速度と一定以上の乾燥時間で乾燥させることがより好ましい。乾燥方法は、例えば、熱風乾燥が挙げられる。
【0042】
クラックは、乾燥速度と乾燥時間をコントロールすることで選択的に形成することが可能である。混合物は、溶媒を一定以上の乾燥速度で蒸発させることで、クラックを伴って固形分が層として残留する。乾燥速度を上げ、急激に乾燥を完了させた場合、平均クラック幅が大きいクラックを形成することができる。一方で、一定以下の乾燥速度と一定以上の乾燥時間をかけて乾燥させることで、微小な幅のクラックを形成することができる。すなわち、一定範囲の乾燥速度と、一定範囲の乾燥時間で混合物を乾燥させることで、好ましい平均クラック幅を形成することができる。導電層を形成する材料として、上述した中心粒径(d50)を有する第一の導電性材料を用いることにより、クラックの形成並びに、平均クラック幅及び面積割合の調整をしてもよい。
【0043】
《鉛蓄電池の製造方法》
本開示のセパレータを備える鉛蓄電池は、正極と、負極と、該正極及び該負極の間に本開示のセパレータとを備える。鉛蓄電池用セパレータの形態は、鉛蓄電池の各構成部材と適合するように、決定されることができる。本開示の鉛蓄電池は、好ましくは、電槽、正極、負極、及び電解液として希硫酸を含み、該正極と該負極の間に本開示のセパレータを配置した鉛蓄電池である。正極を構成する正極格子は鉛又は鉛合金でよく、正極活物質は、酸化鉛、例えば二酸化鉛でよい。負極を構成する負極格子は鉛又は鉛合金でよく、負極活物質は鉛でよく、鉛負極そのものは、例えば海綿状の形態でよい。これらの正極及び負極の活物質については、上記組成にその他の金属元素が30質量%以下で含まれていてよい。上記希硫酸とは、比重1.1~1.4の硫酸であり、さらに添加剤を含むことができる。導電層を有するセパレータを鉛蓄電池に使用することで、セパレータ表面での導電パスの形成を部分的に制限し、その結果、電解液中のERを低減させることができる。その為、鉛蓄電池の上記正極と上記負極の間に本開示のセパレータを配置することが好ましい。特に限定されないが、セパレータは、負極の充電受入性を向上させる観点から、上記導電層を負極側に配置することが好ましい。本開示の鉛蓄電池用セパレータは、開放式鉛蓄電池、及び制御弁式鉛蓄電池のいずれにおいても使用可能である。
【0044】
〈標準電極電位が-0.7V以下の金属又は金属化合物〉
本開示のセパレータを備える鉛蓄電池は、減液特性の悪化を抑制する観点から、電解液に標準電極電位が-0.7V以下の金属、又は、標準電極電位が-0.7V以下の金属からなる金属化合物(以下、単に「金属又は金属化合物」ともいう。)を含んでもよい。金属又は金属化合物は、電池性能に影響を及ぼさないよう、標準電極電位が-0.7Vより大きい金属又は金属化合物を含まないものが良い。
【0045】
標準電極電位が-0.7V以下の金属としては、例えば、亜鉛、バナジウム、クロム、マンガン、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、ベリリウム、マグネシウム、ナトリウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、カリウム、ルビジウム、及びリチウム等が挙げられる。標準電極電位が-0.7V以下の金属からなる金属化合物としては、例えば、水素化合物、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、窒素化物、オキソ酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、金属錯体(配位化合物)、及び有機金属化合物等が挙げられる。
【0046】
〈亜鉛又は亜鉛化合物〉
金属又は金属化合物は、減液特性の悪化を抑制する観点から、亜鉛または亜鉛化合物を含むことが好ましい。例えば、亜鉛、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、フッ化亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、硫化亜鉛、硝酸亜鉛、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛、リン化亜鉛、リン酸亜鉛、二リン酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、ヒ酸亜鉛、炭酸亜鉛、チオシアン酸亜鉛、ピロリン酸亜鉛、過酸化亜鉛、過塩素酸亜鉛、酢酸亜鉛、ジエトキシ亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛等、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトナート、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、リシノレイン酸亜鉛、ウンデシレン酸亜鉛、アスパラギン酸亜鉛、アセチルメチオニン亜鉛、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、ポリピロリドンカルボン酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛等が挙げられる。上記亜鉛又は亜鉛化合物の中でも、減液特性の悪化を抑制するため、亜鉛、酸化亜鉛、硫酸亜鉛がより好ましく、酸化亜鉛が更に好ましい。
【実施例
【0047】
《平均クラック幅》
クラック幅の観察及び測定には、HITACHI社製TM3000Miniscopeを用いた。セパレータの表面をTM3000Miniscopeで観察し(倍率5000倍)、セパレータの導電層について、クラック幅を任意の10点で測定し、概10点の相加平均値を算出した。
【0048】
《繊維状の第二の導電性材料の平均繊維径》
繊維状の第二の導電性材料の平均繊維径の観察及び測定には、HITACHI社製TM3000Miniscopeを用いた。セパレータの表面をTM3000Miniscopeで観察し(倍率5000倍)、セパレータの導電層について、平均繊維径を任意の10点で測定し、概10点の相加平均値を算出した。
【0049】
《平均繊維径と平均クラック幅の関係》
上記繊維状の第二の導電性材料の平均繊維径と、上記クラックの平均クラック幅の関係は、平均繊維径÷平均クラック幅×100により算出し、表1に記載した。
【0050】
《導電層の表面全体のうちクラックが占める面積の割合》
導電層の表面全体のうちクラックが占める面積の割合の観察及び測定には、KEYENCE社製デジタルマイクロスコープVHX-6000を用いた。完成された鉛蓄電池から取り出したセパレータのクラックを観察する場合には、光学顕微鏡で観察する前に以下の操作を行う。(1)取り出したセパレータを蒸留水で洗浄する。(2)洗浄水のpHを測定し、中性から弱酸性域になったら洗浄を終了する。ただし、(1)及び(2)では物理的な擦り洗い等は行わない。(3)自然乾燥でセパレータを乾燥させる。ただし、熱風乾燥等の急速な乾燥処理は行わない。
【0051】
マイクロスコープのレンズはZS200を使用した。該マイクロスコープの撮影モードを標準モード(200万画素 [1600×1200])に設定し、導電層表面の500倍観察画像について、自動面積計測機能を用いて観察領域の面積当たりのクラック面積の比をクラック率として測定した。測定は、計測モード:粒子カウント、抽出モード:色抽出、抽出領域の指定:数値指定(矩形,400μm×400μm)を選択及び入力し、色公差を調節して導電層表面の平滑面とクラックにそれぞれ色彩コントラストを設定した。クラックに設けられた色彩コントラストの面積を自動計測し、クラック面積及びクラック率を求めた。クラック率の測定結果を表1に記載した。単位は%である。以下、撮影条件をまとめる。
[撮影条件]
撮影倍率: 500倍
撮影条件: 200万画素[1600×1200]
落射照明: 同軸落射
撮影範囲: 400μm×400μm
上記撮影条件において、導電層の表面と溝状構造にはコントラストが発生し、区別することができる。典型的には、溝状構造は導電層の表面に細く筋状に観察される。
【0052】
《導電層の膜厚》
導電層の膜厚の観察及び測定には、KEYENCE社製デジタルマイクロスコープVHX-6000を用いた。セパレータの断面をデジタルマイクロスコープで観察し(倍率200倍)、セパレータの導電層について、断面厚みを任意の3点で測定し、該3点の相加平均値を算出した。
【0053】
《表面電気抵抗》
表面電気抵抗の測定には、HIOKI社製 抵抗計 RM3545 RESISTANCE METERを用い、該抵抗計の探針は4探針プローブ(5.0mmピッチ)を用いた。完成された鉛蓄電池から取り出したセパレータの表面電気抵抗を測定する場合には、該抵抗計で測定する前に以下の操作を行った。(1)取り出したセパレータを蒸留水で洗浄する。(2)洗浄水のpHを測定し、中性から弱酸性域になったら洗浄を終了する。ただし、(1)及び(2)では物理的な擦り洗い等は行わない。(3)自然乾燥でセパレータを乾燥させる。ただし、熱風乾燥等の急速な乾燥処理は行わない。
【0054】
該抵抗計の測定用ソフトウェアは、4探針法抵抗率計‐PCアプリを使用した。測定モードは「通常測定」、測定単位は「抵抗[Ω]」を選択した。測定条件は、以下の通りとした。
[測定条件]
試料の長辺 : 100 mm
試料の短辺 : 100 mm
試料の厚さ : 10 μm
x座標 : 50 mm
y座標 : 50 mm
使用プローブ: 5.0 mm
上記測定条件にて、サンプルの導電層の抵抗を6点測定し平均値を求めたものを、該サンプルの表面電気抵抗とした。単位はΩである。求められた表面電気抵抗について、300Ω以下であればAA、300Ω超800Ω以下であればA、800Ω超3000Ω以下であればB、3000Ω超であればCとした。
【0055】
《電解液中の電気抵抗(ER)》
ERの測定には、Caltronics社製Palico測定システムを用い、硫酸浴には、比重1.28の希硫酸を用い、硫酸浴の温度は27℃とした。測定前にセパレータを24時間、比重1.28、温度25℃の希硫酸に浸漬した。上記測定条件にて、セパレータのERを3点測定し、平均値を求めた。単位はΩ・cmである。求められたERについて、基材のERの1.20倍以下であればA、1.20倍超1.30倍以下であればB、1.30倍超であればCとした。
【0056】
《実施例1》
基材には、ポリエチレン製セパレータ(Daramic社製RipTide C)を用いた。導電層の形成のために、まずスラリーの調製を行った。固形分としてカーボンブラック、カーボンナノチューブ、イオン性界面活性剤、アクリル系共重合体ラテックスおよび増粘剤を、水に分散及び混合し、スラリーを調製した。この時、カーボンブラックはスラリー中の固形分全体の質量に基づいて64.6質量%とし、カーボンナノチューブと増粘剤の混合物をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて2.5質量%の楠本化成社製とし、イオン性界面活性剤はスラリー中の固形分全体の質量に基づいて19.7質量%のライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製とし、アクリル系共重合体ラテックスはスラリー中の固形分全体の質量に基づいて13.2質量%の旭化成社製とした。アプリケーターを用い、該スラリーを基材のバックウェブを有する面へ手動塗工(ハンドコート)し、80℃のオーブンで5分間乾燥することによって導電層にクラックを形成し、導電層を備えたセパレータを得た。この時アプリケーターのギャップ(セパレータとアプリケーターとの間に形成されるクリアランス)は、45μmであった。基材、得られた導電層について、上記の評価方法に従って評価した結果を表1に記載する。
【0057】
《実施例2》
スラリーについて、カーボンブラックをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて65.7質量%とし、カーボンナノチューブと増粘剤の混合物をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて0.1質量%の楠本化成社製とし、イオン性界面活性剤はスラリー中の固形分全体の質量に基づいて19.7質量%のライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製とし、アクリル系共重合体ラテックスはスラリー中の固形分全体の質量に基づいて13.2質量%の旭化成社製とし、増粘剤をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて1.3質量%のカルボキシメチルセルロース(CMC)とした点を除き、実施例1と同様に実施した。
【0058】
《実施例3》
アプリケーターのギャップを、15μmにした点を除き、実施例1と同様に実施した。
【0059】
《実施例4》
アプリケーターのギャップを、15μmにした点を除き、実施例2と同様に実施した。
【0060】
《実施例5》
スラリーについて、カーボンブラックをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて44.6質量%のキャボット社製とし、酸化亜鉛をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて20質量%の堺化学工業社製酸化亜鉛とし、カーボンナノチューブと増粘剤の混合物をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて2.5質量%の楠本化成社製とし、イオン性界面活性剤をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて19.7質量%のライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製とし、アクリル系共重合体ラテックスをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて13.2質量%の旭化成社製とした点を除き、実施例1と同様に実施した。
【0061】
《実施例6》
スラリーについて、カーボンブラックをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて45.7質量%とし、酸化亜鉛をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて20質量%の堺化学工業社製酸化亜鉛とし、カーボンナノチューブと増粘剤の混合物をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて0.1質量%の楠本化成社製とし、イオン性界面活性剤はスラリー中の固形分全体の質量に基づいて19.7質量%のライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製とし、アクリル系共重合体ラテックスはスラリー中の固形分全体の質量に基づいて13.2質量%の旭化成社製とし、増粘剤をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて1.3質量%のカルボキシメチルセルロース(CMC)とした点を除き、実施例1と同様に実施した。
【0062】
《実施例7》
スラリーについて、カーボンブラックをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて32.3質量%のキャボット社製と、スラリー中の固形分全体の質量に基づいて32.3質量%のデンカ社製とし、カーボンナノチューブと増粘剤の混合物をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて2.5質量%の楠本化成社製とし、イオン性界面活性剤をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて19.7質量%のライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製とし、アクリル系共重合体ラテックスをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて13.2質量%の旭化成社製とした点を除き、実施例1と同様に実施した。
【0063】
《実施例8》
スラリーについて、カーボンブラックをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて32.9質量%と、スラリー中の固形分全体の質量に基づいて32.8質量%のデンカ社製とし、カーボンナノチューブと増粘剤の混合物をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて0.1質量%の楠本化成社製とし、イオン性界面活性剤はスラリー中の固形分全体の質量に基づいて19.7質量%のライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製とし、アクリル系共重合体ラテックスはスラリー中の固形分全体の質量に基づいて13.2質量%の旭化成社製とし、増粘剤をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて1.3質量%のカルボキシメチルセルロース(CMC)とした点を除き、実施例1と同様に実施した。
【0064】
《実施例9》
アプリケーターのギャップを、135μmにした点を除き、実施例1と同様に実施した。
【0065】
《実施例10》
アプリケーターのギャップを、135μmにした点を除き、実施例2と同様に実施した。
【0066】
《実施例11》
スラリーについて、カーボンブラックをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて65.7質量%とし、カーボンナノチューブをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて0.1質量%のナノシル社製とし、イオン性界面活性剤はスラリー中の固形分全体の質量に基づいて19.7質量%のライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製とし、アクリル系共重合体ラテックスはスラリー中の固形分全体の質量に基づいて13.2質量%の旭化成社製とし、増粘剤をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて1.3質量%のカルボキシメチルセルロース(CMC)とした点を除き、実施例1と同様に実施した。
【0067】
《実施例12》
スラリーについて、カーボンブラックをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて64.8質量%とし、カーボンナノチューブをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて1.0質量%の昭和電工社製とし、イオン性界面活性剤はスラリー中の固形分全体の質量に基づいて19.7質量%のライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製とし、アクリル系共重合体ラテックスはスラリー中の固形分全体の質量に基づいて13.2質量%の旭化成社製とし、増粘剤をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて1.3質量%のカルボキシメチルセルロース(CMC)とした点を除き、実施例1と同様に実施した。
【0068】
《実施例13》
スラリーについて、カーボンブラックをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて65.7質量%とし、カーボンナノチューブをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて0.1質量%の昭和電工社製とし、イオン性界面活性剤はスラリー中の固形分全体の質量に基づいて19.7質量%のライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製とし、アクリル系共重合体ラテックスはスラリー中の固形分全体の質量に基づいて13.2質量%の旭化成社製とし、増粘剤をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて13質量%のカルボキシメチルセルロース(CMC)とした点を除き、実施例1と同様に実施した。
【0069】
《実施例14》
スラリーの固形分としてカーボンブラック、カーボンナノチューブ、イオン性界面活性剤、アクリル系共重合体ラテックスおよび増粘剤を、水および非プロトン性極性溶媒からなる水系溶媒に分散及び混合し、スラリーを調製した。カーボンブラックをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて64.6質量%とし、カーボンナノチューブと増粘剤の混合物をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて2.5質量%の楠本化成社製とし、イオン性界面活性剤はスラリー中の固形分全体の質量に基づいて19.7質量%のライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製とし、アクリル系共重合体ラテックスはスラリー中の固形分全体の質量に基づいて13.2質量%の旭化成社製とし、非プロトン性極性溶媒は、スラリー全体の質量に基づいて2質量%のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)とした点を除き、実施例1と同様に実施した。
【0070】
《実施例15》
スラリーについて、カーボンブラックをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて69.6質量%とし、カーボンナノチューブと増粘剤の混合物をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて2.5質量%の楠本化成社製とし、イオン性界面活性剤はスラリー中の固形分全体の質量に基づいて20.9質量%のライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製とし、アクリル系共重合体ラテックスはスラリー中の固形分全体の質量に基づいて7.0質量%の旭化成社製とした点を除き、実施例1と同様に実施した。
【0071】
《実施例16》
スラリーについて、カーボンブラックをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて69.4質量%とし、カーボンナノチューブをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて1.0質量%の昭和電工社製とし、イオン性界面活性剤はスラリー中の固形分全体の質量に基づいて21.1質量%のライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製とし、アクリル系共重合体ラテックスはスラリー中の固形分全体の質量に基づいて7.1質量%の旭化成社製とし、増粘剤をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて1.4質量%のカルボキシメチルセルロース(CMC)とした点を除き、実施例1と同様に実施した。
【0072】
《実施例17》
スラリーについて、カーボンブラックをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて70.3質量%とし、カーボンナノチューブをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて0.1質量%のナノシル社製とし、イオン性界面活性剤はスラリー中の固形分全体の質量に基づいて21.1質量%のライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製とし、アクリル系共重合体ラテックスはスラリー中の固形分全体の質量に基づいて7.1質量%の旭化成社製とし、増粘剤をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて1.4質量%のカルボキシメチルセルロース(CMC)とした点を除き、実施例1と同様に実施した。
【0073】
《実施例18》
スラリーの固形分としてカーボンブラック、カーボンナノチューブ、イオン性界面活性剤、アクリル系共重合体ラテックスおよび増粘剤を、水および非プロトン性極性溶媒からなる水系溶媒に分散及び混合し、スラリーを調製した。カーボンブラックをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて64.8質量%とし、カーボンナノチューブをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて1.0質量%の昭和電工社製とし、イオン性界面活性剤はスラリー中の固形分全体の質量に基づいて19.7質量%のライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製とし、アクリル系共重合体ラテックスはスラリー中の固形分全体の質量に基づいて13.2質量%の旭化成社製とし、増粘剤をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて1.3質量%のカルボキシメチルセルロース(CMC)とし、非プロトン性極性溶媒は、スラリー全体の質量に基づいて2質量%のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)とした点を除き、実施例1と同様に実施した。
【0074】
《実施例19》
スラリーについて、カーボンブラックをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて67.9質量%とし、カーボンナノチューブをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて0.1質量%のナノシル社製とし、イオン性界面活性剤はスラリー中の固形分全体の質量に基づいて20.4質量%のライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製とし、アクリル系共重合体ラテックスはスラリー中の固形分全体の質量に基づいて10.2質量%の旭化成社製とし、増粘剤をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて1.4質量%のカルボキシメチルセルロース(CMC)とした点を除き、実施例1と同様に実施した。
【0075】
《実施例20》
スラリーの固形分としてカーボンブラック、カーボンナノチューブ、イオン性界面活性剤、アクリル系共重合体ラテックスおよび増粘剤を、水および非プロトン性極性溶媒からなる水系溶媒に分散及び混合し、スラリーを調製した。カーボンブラックをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて65.6質量%とし、カーボンナノチューブと増粘剤の混合物をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて0.8質量%の楠本化成社製とし、イオン性界面活性剤はスラリー中の固形分全体の質量に基づいて19.7質量%のライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製とし、アクリル系共重合体ラテックスはスラリー中の固形分全体の質量に基づいて13.1質量%の旭化成社製とし、増粘剤をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて0.8質量%のカルボキシメチルセルロース(CMC)とし、非プロトン性極性溶媒は、スラリー全体の質量に基づいて2質量%のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)とした点を除き、実施例1と同様に実施した。
【0076】
《実施例21》
スラリーについて、カーボンブラックをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて65.6質量%とし、カーボンナノチューブと増粘剤の混合物をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて0.8質量%の楠本化成社製とし、イオン性界面活性剤はスラリー中の固形分全体の質量に基づいて19.7質量%のライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製とし、アクリル系共重合体ラテックスはスラリー中の固形分全体の質量に基づいて13.1質量%の旭化成社製とし、増粘剤をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて0.8質量%のカルボキシメチルセルロース(CMC)とし、アプリケーターのギャップを、15μmにした点を除き、実施例1と同様に実施した。
【0077】
《比較例1》
スラリーの固形分としてカーボンブラック、カーボンナノチューブ、イオン性界面活性剤、アクリル系共重合体ラテックスおよび増粘剤を、水および非プロトン性極性溶媒からなる水系溶媒に分散及び混合し、スラリーを調製した。カーボンブラックをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて64.6質量%とし、カーボンナノチューブと増粘剤の混合物をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて2.5質量%の楠本化成社製とし、イオン性界面活性剤はスラリー中の固形分全体の質量に基づいて19.7質量%のライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製とし、アクリル系共重合体ラテックスはスラリー中の固形分全体の質量に基づいて13.2質量%の旭化成社製とし、非プロトン性極性溶媒は、スラリー全体の質量に基づいて5質量%のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)とした点を除き、実施例1と同様に実施した。
【0078】
《比較例2》
スラリーについて、カーボンブラックをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて65.8質量%とし、カーボンナノチューブと増粘剤の混合物をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて0.03質量%の楠本化成社製とし、イオン性界面活性剤はスラリー中の固形分全体の質量に基づいて19.7質量%のライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製とし、アクリル系共重合体ラテックスはスラリー中の固形分全体の質量に基づいて13.2質量%の旭化成社製とし、増粘剤をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて1.27質量%のカルボキシメチルセルロース(CMC)とした点を除き、実施例1と同様に実施した。
【0079】
《比較例3》
スラリーについて、カーボンブラックをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて65.8質量%とし、カーボンナノチューブを非含有とし、イオン性界面活性剤はスラリー中の固形分全体の質量に基づいて19.7質量%のライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製とし、アクリル系共重合体ラテックスはスラリー中の固形分全体の質量に基づいて13.2質量%の旭化成社製とし、増粘剤をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて1.3質量%のカルボキシメチルセルロース(CMC)とした点を除き、実施例1と同様に実施した。
【0080】
《比較例4》
スラリーについて、カーボンブラックをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて62.8質量%とし、カーボンナノチューブをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて3.0質量%の昭和電工社製とし、イオン性界面活性剤はスラリー中の固形分全体の質量に基づいて19.7質量%のライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製とし、アクリル系共重合体ラテックスはスラリー中の固形分全体の質量に基づいて13.2質量%の旭化成社製とし、増粘剤をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて1.3質量%のカルボキシメチルセルロース(CMC)とした点を除き、実施例1と同様に実施した。
【0081】
《比較例5》
スラリーについて、カーボンブラックをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて72.0質量%とし、カーボンナノチューブをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて1.0質量%の昭和電工社製とし、イオン性界面活性剤はスラリー中の固形分全体の質量に基づいて21.9質量%のライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製とし、アクリル系共重合体ラテックスはスラリー中の固形分全体の質量に基づいて3.6質量%の旭化成社製とし、増粘剤をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて1.5質量%のカルボキシメチルセルロース(CMC)とした点を除き、実施例1と同様に実施した。
【0082】
《比較例6》
スラリーについて、カーボンブラックをスラリー中の固形分全体の質量に基づいて73.0質量%とし、カーボンナノチューブと増粘剤の混合物をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて0.03質量%の楠本化成社製とし、イオン性界面活性剤はスラリー中の固形分全体の質量に基づいて21.9質量%のライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製とし、アクリル系共重合体ラテックスはスラリー中の固形分全体の質量に基づいて3.6質量%の旭化成社製とし、増粘剤をスラリー中の固形分全体の質量に基づいて1.47質量%のカルボキシメチルセルロース(CMC)とした点を除き、実施例1と同様に実施した。
【0083】
【表1】
【0084】
図1は、実施例1の導電層を備える鉛蓄電池用セパレータの走査電子顕微鏡(SEM)による表面画像の一例である。図1において、平均クラック幅は5μm、クラックの空隙に存在する繊維状炭素繊維の平均繊維径は約170nmであり、クラックの幅の約3.4%であった。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本開示の鉛蓄電池用セパレータは、鉛蓄電池、例えば液式バッテリー(Flooded Battery(FB))用として有用であり、特に強化型液式バッテリー(Enhanced Flooded Battery(EFB))のセパレータとして適している。
図1