(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】空気調和システム、床吹出し式空気調和装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/80 20180101AFI20240820BHJP
F24F 11/63 20180101ALI20240820BHJP
F24F 11/89 20180101ALI20240820BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20240820BHJP
F24F 140/00 20180101ALN20240820BHJP
【FI】
F24F11/80
F24F11/63
F24F11/89
F24F110:10
F24F140:00
(21)【出願番号】P 2023512627
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2021015024
(87)【国際公開番号】W WO2022215252
(87)【国際公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-01-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】日本キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】金川 桂子
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-048784(JP,A)
【文献】特開2005-201601(JP,A)
【文献】特開2002-310450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00-13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間の上部から前記空間の内部への温風の吹き出しを制御することで、前記空間の内部の温度を制御する少なくとも1つの第1室内機と、
前記空間の下部の温度に基づいて、前記空間の床下から前記空間の内部への温風の吹き出しを制御する少なくとも1つの第2室内機
であって、自システムの高負荷時と低負荷時とでは互いに異なる動作モードで動作し、前記高負荷時の前記動作モードである高負荷時モードでは、前記空間の下部の温度に対して10度加算された温度以下に設定された第1上限温度に基づいて前記温風の吹出温度を制御し、前記低負荷時の前記動作モードである低負荷時モードでは、前記空間の下部の温度が所定の閾値未満である場合には前記第1上限温度に基づいて前記吹出温度を制御し、前記空間の下部の温度が所定の閾値以上である場合には前記第1上限温度とは異なる温度に設定された第2上限温度に基づいて前記吹出温度を制御する前記第2室内機と、
圧縮機を備える少なくとも1つの室外機と、
少なくとも1つの前記第1室内機と、少なくとも1つの前記第2室内機と、少なくとも1つの前記室外機と、を接続する冷媒配管と、
を備え、
前記冷媒配管は、少なくとも1つの前記第1室内機と少なくとも1つの前記第2室内機とを、並列に接続する
空気調和システム。
【請求項2】
前記第2室内機は、
前記空間の下部の温度ごとに定められた上限温度に基づいて前記温風の吹出温度を制御する吹出温度制御部
を備える請求項1に記載の空気調和システム。
【請求項3】
前記吹出温度制御部は、起動時であるか否かに応じて異なる前記上限温度に基づいて前記吹出温度を制御する
請求項2に記載の空気調和システム。
【請求項4】
前記第1室内機は、指定された設定温度より所定の温度だけ低い温度にするように、前記空間の内部の温度を制御する
請求項1から3のうちいずれか一項に記載の空気調和システム。
【請求項5】
前記空間の下部の温度を計測する温度センサ
をさらに備え、
前記第2室内機は、前記温度センサによって計測された温度に基づいて温風の吹き出しを制御する
請求項1から4のうちいずれか一項に記載の空気調和システム。
【請求項6】
少なくとも1つの天井吹出し式空気調和装置と少なくとも1つの床吹出し式空気調和装置と少なくとも1つの室外機と冷媒配管とを有し、少なくとも1つの前記室外機は圧縮機を備え、前記冷媒配管は、少なくとも1つの前記天井吹出し式空気調和装置と少なくとも1つの前記床吹出し式空気調和装置と少なくとも1つの前記室外機とを接続し、少なくとも1つの前記天井吹出し式空気調和装置と少なくとも1つの前記床吹出し式空気調和装置とを並列に接続する空気調和システムにおける前記床吹出し式空気調和装置であって、
空間の下部の温度と、前記空間の下部の温度ごとに定められた上限温度とに基づいて、前記空間の床下から前記空間の内部へ吹き出される温風の吹出温度を制御する
場合において、前記空気調和システムの高負荷時と低負荷時とでは互いに異なる動作モードで動作し、前記高負荷時の前記動作モードである高負荷時モードでは、前記空間の下部の温度に対して10度加算された温度以下に設定された第1上限温度に基づいて前記温風の吹出温度を制御し、前記低負荷時の前記動作モードである低負荷時モードでは、前記空間の下部の温度が所定の閾値未満である場合には前記第1上限温度に基づいて前記吹出温度を制御し、前記空間の下部の温度が所定の閾値以上である場合には前記第1上限温度とは異なる温度に設定された第2上限温度に基づいて前記吹出温度を制御する吹出温度制御部
を備える床吹出し式空気調和装置。
【請求項7】
少なくとも1つの第1室内機と少なくとも1つの第2室内機と少なくとも1つの室外機と冷媒配管とを有し、少なくとも1つの前記室外機は圧縮機を備え、前記冷媒配管は、少なくとも1つの前記第1室内機と少なくとも1つの前記第2室内機と少なくとも1つの前記室外機とを接続し、少なくとも1つの前記第1室内機と少なくとも1つの前記第2室内機とを並列に接続する空気調和システムの制御方法であって、
少なくとも1つの前記第1室内機が、空間の上部から前記空間の内部への温風の吹き出しを制御することで、前記空間の内部の温度を制御するステップと、
少なくとも1つの前記第2室内機が、前記空間の下部の温度に基づいて、前記空間の床下から前記空間の内部への温風の吹き出しを制御する
場合において、前記空気調和システムの高負荷時と低負荷時とでは互いに異なる動作モードで動作し、前記高負荷時の前記動作モードである高負荷時モードでは、前記空間の下部の温度に対して10度加算された温度以下に設定された第1上限温度に基づいて前記温風の吹出温度を制御し、前記低負荷時の前記動作モードである低負荷時モードでは、前記空間の下部の温度が所定の閾値未満である場合には前記第1上限温度に基づいて前記吹出温度を制御し、前記空間の下部の温度が所定の閾値以上である場合には前記第1上限温度とは異なる温度に設定された第2上限温度に基づいて前記吹出温度を制御するステップと、
を有する制御方法。
【請求項8】
少なくとも1つの第1室内機と少なくとも1つの第2室内機と少なくとも1つの室外機と冷媒配管とを有し、少なくとも1つの前記室外機は圧縮機を備え、前記冷媒配管は、少なくとも1つの前記第1室内機と少なくとも1つの前記第2室内機と少なくとも1つの前記室外機とを接続し、少なくとも1つの前記第1室内機と少なくとも1つの前記第2室内機とを並列に接続する空気調和システムのコンピュータに、
少なくとも1つの前記第1室内機に、空間の上部から前記空間の内部への温風の吹き出しを制御させることで、前記空間の内部の温度を制御させるステップと、
少なくとも1つの前記第2室内機に、前記空間の下部の温度に基づいて、前記空間の床下から前記空間の内部への温風の吹き出しを制御させる
場合において、前記空気調和システムの高負荷時と低負荷時とでは互いに異なる動作モードで動作させ、前記高負荷時の前記動作モードである高負荷時モードでは、前記空間の下部の温度に対して10度加算された温度以下に設定された第1上限温度に基づいて前記温風の吹出温度を制御させ、前記低負荷時の前記動作モードである低負荷時モードでは、前記空間の下部の温度が所定の閾値未満である場合には前記第1上限温度に基づいて前記吹出温度を制御させ、前記空間の下部の温度が所定の閾値以上である場合には前記第1上限温度とは異なる温度に設定された第2上限温度に基づいて前記吹出温度を制御させるステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和システム、床吹出し式空気調和装置、制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
快適な温熱環境条件として、ISO(International Organization for Standardization)及びASHREA(American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers)では、足元周辺の温度が頭部周辺の温度より3[℃]を超えて低い温度にならない環境にすることが推奨されている。しかしながら実際の住空間及びオフィス空間等では、頭部周辺と足元周辺との温度差(以下、「上下温度差」という。)が、推奨範囲である3[℃]を超えていることも少なくない。例えば冬期のオフィス空間において、上下温度差が大きく足元周辺の温度が相対的に低すぎることで、在室者が寒さで不快と感じることがある。このような場合、在室者は、空気調和装置の設定温度をより高い温度に変更することがある。こうした環境での、より高い設定温度への変更は、過剰な暖房運転の状態を生じさせ、エネルギーを浪費させる要因となる。
【0003】
従来、空間内の上下温度差を小さくすることで快適性の向上を図る技術として、例えば特許文献1に記載の技術がある。特許文献1に記載の空調システムは、居室の床面に設けられた複数の床吹出口から上部へ空調空気を吹き出す床吹出空調機と、側壁に設けられた窓に沿って空調空気を吹き出すペリメータ空調機とを、制御装置によって連携させて制御する。このような構成によって、特許文献1に記載の空調システムは、居室内の温度の上昇に応じてペリメータ空調機の冷房出力を増大させることで、床吹出空調機の冷房出力を減少させ、居室内の上下温度差を小さくする。
【0004】
上記のように特許文献1に記載の空調システムは、居室内の冷房を目的とした空調システムである。しかしながら、例えば空間全体の温度を制御する空気調和装置に加えて床吹出し式空気調和装置を併用することでより大きな快適性の改善効果が得られるのは、冷房時ではなく暖房時である。なぜならば、冷房時、冷気は空間の上部から吹き出されても空間の下部へ自然に流れていくため、床吹出し式空気調和装置が用いられなくても空間内での大きな上下温度差の発生が、ある程度は抑制されるからである。
【0005】
また、特許文献1に記載の空調システムでは、床吹出空調機としてセントラル空調方式(中央熱源方式)の空気調和装置の使用が想定されており、ペリメータ空調機として冷温水式循環方式又はヒートポンプ内臓方式の空気調和装置の使用が想定されている。このような、互いに異なる空調方式の空気調和装置が組み合わされたシステムは、大掛かりなシステム構築を必要とするため、容易にシステムを導入することができないことがあるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、より簡単なシステム構成で快適性の向上を図ることができる空気調和システム、床吹出し式空気調和装置、制御方法、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の空気調和システムは、第1室内機と、第2室内機と、を持つ。第1室内機は、空間の上部から前記空間の内部への温風の吹き出しを制御することで、前記空間の内部の温度を制御する。第2室内機は、前記空間の下部の温度に基づいて、前記空間の床下から前記空間の内部への温風の吹き出しを制御する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態における空気調和システム1による空気調和制御の概要を説明するための模式図。
【
図2】実施形態の空気調和システム1の全体構成を示すブロック図。
【
図3】高負荷時モードにおける吹出温度の上限温度の一例を表す図。
【
図4】低負荷時モードにおける吹出温度の上限温度の一例を表す図。
【
図5】実施形態における床吹出し式室内機10の動作を示すフローチャート。
【
図6】実施形態における天井吹出し式室内機20-1の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の空気調和システム、床吹出し式空気調和装置、制御方法、及びプログラムを、図面を参照して説明する。
【0011】
以下、実施形態における空気調和システム1の構成について説明する。
図1は、実施形態における空気調和システム1による空気調和制御の概要を説明するための模式図である。
【0012】
図1には、空間Sを含む建築物の一部分の垂直断面図が示されている。建築物は、例えばオフィスビルであり、空間Sは、例えばオフィス空間等の人が活動する空間である。但し、建築物は、例えば住宅であってもよく、空間Sは、例えば住空間等の人が居住する空間であってもよい。実施形態の空気調和システム1は、空間S内の空気を調和するシステムである。空気調和システム1は、床吹出し式空気調和装置と天井吹出し式空気調和装置とが組み合わされたシステムである。
【0013】
空間Sの天井裏には、床吹出し式空気調和装置の室内機(以下、「床吹出し式室内機10」という。)が設置されている。空間S内の側壁には、リモートサーモセンサ15が設置されている。空間Sの天井には、2台の天井吹出し式空気調和装置の室内機(以下、「天井吹出し式室内機20-1」及び「天井吹出し式室内機20-2」という。)が設置されている。以下、天井吹出し式室内機20-1と天井吹出し式室内機20-2とを特に区別して説明する必要がない場合には、単に「天井吹出し式室内機20」という。
【0014】
空間Sの外部には、側壁に沿って垂直ダクト40が設置されている。空間Sの床は、二重床になっており、床下給気チャンバー45として機能する。なお、床下給気チャンバー45の代わりに、水平ダクトが用いられてもよい。空間Sの床面には、3つの吹出し口50が設けられている。床下給気チャンバー45内の空気は、吹出し口50を通って空間S内へ移動可能である。
【0015】
なお、吹出し口50の個数は3つに限られるものではなく、少なくとも1つ以上の任意の個数で構わない。なお、吹出し口50は、空間Sの特に下部の位置における温度が均一化されるように、適切な個数、位置及び間隔で設けられていることが望ましい。なお、空間Sの外部には、後述される
図2に示される、室外機30が設置されている。
【0016】
本実施形態における空気調和システム1は、1台の床吹出し式室内機10及び2台の天井吹出し式室内機20と、1台の室外機30とが、冷媒配管35(渡り配管)を介して接続された、マルチ型の空気調和システムである。なお、床吹出し式室内機10及び天井吹出し式室内機20の台数は、上記の台数に限られるものではなく、それぞれ少なくとも1台以上の任意の台数で構わない。天井吹出し式室内機20は、空間Sの特に上部の位置における温度が均一化されるように、適切な個数、位置及び間隔で設置されていることが望ましい。
【0017】
冷媒配管35は、床吹出し式室内機10及び天井吹出し式室内機20と、室外機30との間で、冷媒を行き来させるためのパイプである。冷媒配管35は、床吹出し式室内機10と、天井吹出し式室内機20-1と、天井吹出し式室内機20-2とを、並列に接続する。床吹出し式室内機10及び天井吹出し式室内機20と、室外機30とは、冷媒配管35によって接続されることによって冷媒を循環させる冷凍サイクルを形成している。
【0018】
このように、空気調和システム1は、床吹出し式室内機10と天井吹出し式室内機20とが共に用いられる構成である。また、床吹出し式室内機10と天井吹出し式室内機20とが同一の室外機30と接続されていることからも明らかなように、床吹出し式室内機10と天井吹出し式室内機20とは、同一の空調方式の空気調和装置の室内機である。但し、床吹出し式室内機10と天井吹出し式室内機20とが同一の室外機30と接続されていることに限定されるものではない。例えば床吹出し式室内機10に接続される室外機30と、天井吹出し式室内機20に接続される室外機30とが、別々に設置されている構成であってもよい。
【0019】
一般的に、天井吹出し式室内機20のみによって暖房が行われる場合には、空間Sの下部の温度は、上部の温度より相対的に低くなる。そのため、在室者が、足元周辺の温度が相対的に低すぎることによる寒さで不快と感じ、空気調和装置の設定温度をより高い温度に変更することがある。こうした環境での、より高い設定温度への変更は、過剰な暖房運転の状態を生じさせ、エネルギーを浪費させる要因となる。
【0020】
本実施形態における空気調和システム1は、天井吹出し式空気調和装置に加えて床吹出し式空気調和装置を併用することで、空間S内の上下温度差をより小さくすることができる。これにより、在室者の足元周辺の温度が相対的により高くなるため、空間S内の上部の温度がより低い温度であっても、在室者は快適であると感じられる。このように、空気調和システム1によれば、快適性を損なうことなく、空気調和システム1の設定温度をより低い温度にすることが可能になり、エネルギー消費量が削減される。
【0021】
図1に示されるように、床吹出し式室内機10から放出される空気は、まず垂直ダクト40へ放出される。垂直ダクト40へ放出された空気は、さらに、当該垂直ダクト40が接続された二重床の空間である床下給気チャンバー45へ放出される。床下給気チャンバー45へ放出された空気は、さらに、空間Sの床面に設けられた3つの吹出し口50から空間S内へ吹き出される。床吹出し式室内機10は、リモートサーモセンサ15によって計測された温度に基づいて、吹出し口50から吹き出される空気の吹出温度を制御する。
【0022】
リモートサーモセンサ15は、空間Sの下部の位置の温度(以下、「下部温度」という。)を計測するセンサである。リモートサーモセンサ15は、空間S内の側壁の下部の位置に設置される。本実施形態では、リモートサーモセンサ15は、床上30[cm]の高さとなる位置に設置される。リモートサーモセンサ15は、床吹出し式室内機10へ信号を伝達可能に構成されている。リモートサーモセンサ15は、計測された下部温度を示す信号を床吹出し式室内機10へ送信する。これにより、床吹出し式室内機10は、空間Sの下部温度を認識し、当該下部温度に基づいて、吹出し口50から空間S内へ吹き出される空気の吹出温度を制御することができる。
【0023】
なお、本実施形態では、リモートサーモセンサ15は、空間S内の側壁に設置されるものとしたが、これに限られるものではない。リモートサーモセンサ15は、空間Sの下部温度を計測可能な位置であるならば、任意の位置に設置可能である。例えば、空間S内の中央に置かれた高さ30[cm]の支柱が設置され、リモートサーモセンサ15が、その支柱の上部に設置された構成であってもよい。
【0024】
また、リモートサーモセンサ15は、空間S内に複数設置されていてもよい。この場合、床吹出し式室内機10は、例えば、複数のリモートサーモセンサ15によってそれぞれ計測された温度の平均値に基づいて、吹出し口50から吹き出される空気の吹出温度を制御するようにしてもよい。
【0025】
複数の天井吹出し式室内機20の各々は、それぞれ後述される吸込温度センサ21を備える。吸込温度センサ21は、空間S内から天井吹出し式室内機20に吸い込まれる空気の温度(以下、「吸込温度」という。)を計測するセンサである。天井吹出し式室内機20は、吸込温度センサ21によって計測された温度に基づいて、空間Sの上部の位置の温度(以下、「上部温度」という。)を推測する。本実施形態では、上部温度は、空間S内の床上120[cm]の高さの位置の温度である。天井吹出し式室内機20は、ユーザによって設定された設定温度に基づいて空間Sの上部温度を制御する。
【0026】
なお、天井吹出し式室内機20は、例えば、上部温度が吸込温度より所定の温度(例えば、2[℃])だけ低くなることを予め認識している。天井吹出し式室内機20は、吸込温度センサ21によって計測された吸込温度から上記の所定の温度の値を減算することによって、上部温度を推測する。
【0027】
なお、天井吹出し式室内機20は、吸込温度センサ21に代えて、空間Sの上部温度を直に計測することが可能なセンサを備えていてもよい。この場合、上部温度を計測するセンサは、例えば、側壁の上部の位置(例えば、床上120[cm]の高さの位置)に設置されてもよい。すなわち、天井吹出し式室内機20に備えられる温度センサは、空間Sの上部温度を計測又は推測できるセンサであるならば、任意のセンサでよい。
【0028】
図2は、実施形態の空気調和システム1の全体構成を示すブロック図である。
図2に示されるように、空気調和システム1は、床吹出し式室内機10と、リモートサーモセンサ15と、天井吹出し式室内機20-1と、天井吹出し式室内機20-2と、リモコン25と、室外機30と、冷媒配管35と、を有する。
【0029】
床吹出し式室内機10及び天井吹出し式室内機20の各々は、例えば不図示の、室内熱交換器と、室内膨張弁と、室内送風機と備える。
【0030】
室内熱交換器は、例えばフィンチューブ式の熱交換器である。室内膨張弁は、例えば電子膨張弁(PMV)である。室内膨張弁は開度を変更(調節)可能である。例えば、室内膨張弁の開度の増加に応じて、冷媒が室内膨張弁内を流れやすくなる。一方、室内膨張弁の開度の減少に応じて、冷媒が室内膨張弁内を流れにくくなる。具体的には、室内熱交換器は、貫通孔が形成された弁本体と、貫通孔に対して進退可能なニードルとを有している。貫通孔をニードルで塞いだときに、室内熱交換器に冷媒が流れなくなる。このとき、室内熱交換器は閉じた状態になり、室内熱交換器の開度は最も小さくなる。一方、貫通孔からニードルが最も離間したときに、室内熱交換器に冷媒が最も流れやすくなる。このとき、室内熱交換器は開いた状態であり、室内熱交換器の開度は最も大きくなる。
【0031】
室内熱交換器と室内膨張弁とは、冷媒配管35によって接続される。なお、冷媒としては、例えばR410A又はR32等が用いられる。冷媒中には、冷凍機油等が含まれる。
【0032】
室内送風機は、遠心式のファンを備える送風機である。なお、室内送風機が備えるファンは、例えば軸流式のファン等の、その他の構造のファンであってもよい。室内送風機が備えるファンは、室内熱交換器に対向するように配置される。室内送風機のファンの稼働によって、空間Sの天井裏の空間内の空気が床吹出し式室内機10に吸入され、空間S内の空気が天井吹出し式室内機20の各々に吸入される。床吹出し式室内機10及び天井吹出し式室内機20の各々に吸入された空気は、室内熱交換器によって冷媒と熱交換され、ファンの稼働によって再び空間S内へ放出される。
【0033】
図2に示されるように、床吹出し式室内機10は、吹出温度制御部11を含んで構成される。吹出温度制御部11は、リモートサーモセンサ15から定期的に(例えば、5秒ごとに)送信される、空間Sの下部温度を示す情報を逐次取得する。吹出温度制御部11は、取得された情報に基づく下部温度に従って、吹出し口50から空間S内へ吹き出される空気の吹出温度を制御する。なお、吹出温度制御部11は、吹出し口50から空間S内へ吹き出される吹出温度を所望の温度に制御することができるように予め構成されている。
【0034】
例えば、吹出温度制御部11は、床吹出し式室内機10から放出された空気が吹出し口50から空間S内へ吹き出されるまでの間に低下する空気の温度を予め記憶している。吹出温度制御部11は、低下する温度の分だけ高い温度で床吹出し式室内機10から垂直ダクト40へ空気が放出されるように、室内熱交換器を制御する。
【0035】
なお、本実施形態では吹出温度制御部11は、床吹出し式室内機10に備えられているものとしたが、これに限られるものではない。例えば、吹出温度制御部11は、室外機30に備えられていてもよいし、不図示の制御装置(外部装置)に備えられていてもよい。
【0036】
吹出温度制御部11は、例えば、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、メモリ、及び補助記憶装置等を備える。吹出温度制御部11は、例えば補助記憶装置からプログラムを読み出して実行する。補助記憶装置は、例えば磁気ハードディスク装置又は半導体記憶装置等の記憶媒体を用いて構成される。例えば、補助記憶装置は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の不揮発性のメモリを用いて構成される。
【0037】
なお、吹出温度制御部11の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0038】
リモートサーモセンサ15は、空間Sの下部温度を定期的に(例えば、5秒ごとに)計測する温度センサである。前述の通り、本実施形態では、リモートサーモセンサ15は、床上30[cm]の高さとなる位置に設置され、空間S内の床上30[cm]の高さの位置の温度を計測する。リモートサーモセンサ15は、計測された下部温度を示す信号を、定期的に(例えば、5秒ごとに)床吹出し式室内機10へ出力する。
【0039】
床吹出し式室内機10は、例えば、不図示の信号入力部を備える。信号入力部は、リモートサーモセンサ15から出力された信号の入力を受け付け、吹出温度制御部11へ出力する。例えば、信号入力部は、RS-232C(Recommended Standard - 232C)、RS-422A(Recommended Standard - 422A)、RS-485(Recommended Standard - 485)又はUSB(Universal Serial Bus)等の通信インタフェースを介して、リモートサーモセンサ15と通信可能に接続される。信号入力部は、この通信インタフェースを介して信号の入力を受け付ける。信号入力部は、不図示の内部バスに接続されており、当該内部バスを介して吹出温度制御部11へ信号を出力する。
【0040】
なお、信号入力部は、リモートサーモセンサ15から出力された信号の入力を受け付け、当該信号に基づく空間Sの下部温度のデータをセンサデータとして例えば補助記憶装置等の記憶媒体に記憶させるようにしてもよい。この場合、吹出温度制御部11は、当該記憶媒体に記憶されたセンサデータに基づいて、空間S内へ吹き出される空気の吹出温度を制御する。
【0041】
リモコン25は、空気調和システム1の設定に関するユーザによる操作入力を受け付ける入力インタフェースである。例えば、リモコン25は、空気調和システム1の電源状態のオンとオフとの切り替えを指示する操作入力を受け付ける。または例えば、リモコン25は、設定温度を指示する操作入力を受け付ける。ユーザは、空間S内を所望の温度にさせるため、リモコン25を操作して設定温度を指示する操作入力を行う。
【0042】
リモコン25は、入力された指示情報を天井吹出し式室内機20-1へ出力する。なお、リモコン25と天井吹出し式室内機20-1とは、有線で接続されてもよいし、無線で接続されてもよい。天井吹出し式室内機20-1に入力された指示情報は、天井吹出し式室内機20-2、室外機30、及び床吹出し式室内機10へもさらに伝達される。これにより、空気調和システム1は、リモコン25から入力された指示情報に基づいて、空間S内の温度の制御、及び空気調和システム1の電源状態のオンとオフとの切り替え制御などを行うことができる。
【0043】
なお、空気調和システム1内における、リモコン25から入力された指示情報の伝達手段については、上記の構成に限られるものではない。例えば、リモコン25から入力された指示情報が、まず不図示の制御装置(外部装置)へ伝達され、当該制御装置から、床吹出し式室内機10、各々の天井吹出し式室内機20、及び室外機30へさらに伝達されるような構成であってもよい。
【0044】
床吹出し式室内機10の吹出温度制御部11は、例えば空気調和システム1の高負荷時と低負荷時とで、互いに異なる運転モードで、吹出し口50から空間S内へ吹き出される空気の吹出温度の制御を行う。なお、運転モードの詳細については、後に詳しく説明する。
【0045】
本実施形態では、説明を簡単にするため、空気調和システム1の高負荷時とは、空気調和システム1のシステム起動時のことをいうものとする。なぜならば、一般的にシステム起動時は、ユーザによって設定された設定温度と実際の空間S内の温度との乖離が大きい状態であることが多く、空気調和システム1にかかる負荷は相対的に高い状態になることが想定されるからである。
【0046】
また、本実施形態では、説明を簡単にするため、空気調和システム1の低負荷時とは、空気調和システム1のシステム起動時以外の時のことをいうものとする。なぜならば、一般的にシステム起動時以外の時は、設定温度と実際の空間S内の温度との乖離が小さい状態であることが多く、空気調和システム1にかかる負荷は相対的に低く、動作が安定した状態になることが想定されるからである。
【0047】
但し、空気調和システム1の高負荷時及び低負荷時とは、上記の場合に限られるものではなく、例えば、高負荷時とは、設定温度と実際の空間S内の温度との乖離が大きい状態である時全般のことであってもよく、低負荷時とは、設定温度と実際の空間S内の温度との乖離が小さい状態である時全般のことであってもよい。
【0048】
床吹出し式室内機10の吹出温度制御部11は、リモートサーモセンサ15によって計測された下部温度が、リモコン25から入力された情報に基づく設定温度になるまで、後述される高負荷時モードで暖房運転を行う。吹出温度制御部11は、計測された下部温度が設定温度になった場合には暖房運転を停止させる。
【0049】
また、吹出温度制御部11は、暖房運転を停止させた後、計測された下部温度が所定の温度だけ下がった場合には後述される低負荷時モードで暖房運転を再開させる。本実施形態では、吹出温度制御部11は、計測された下部温度が設定温度から0.5[℃]下がった場合には暖房運転を再開させる。
【0050】
図2に示されるように、天井吹出し式室内機20は、吸込温度センサ21を含んで構成される。前述の通り、吸込温度センサ21は、空間S内から天井吹出し式室内機20に吸い込まれる空気の吸込温度を計測する。天井吹出し式室内機20は、吸込温度センサ21によって計測された吸込温度に基づいて、空間Sの上部温度を推測する。
【0051】
天井吹出し式室内機20は、推測された上部温度が、リモコン25から入力された情報に基づく設定温度より所定の温度だけ低い温度になるまで暖房運転を行う。天井吹出し式室内機20は、推測された上部温度が設定温度より所定の温度だけ低い温度になった場合には暖房運転を停止させる。また、天井吹出し式室内機20は、暖房運転を停止させた後、推測された上部温度が所定の温度だけ下がった場合には暖房運転を再開させる。
【0052】
本実施形態では、天井吹出し式室内機20は、推測された上部温度が、設定温度より2[℃]低い温度になった場合に暖房運転を停止させる。その後、天井吹出し式室内機20は、推測された上部温度が、設定温度より2[℃]低い温度から0.5[℃]下がった場合(すなわち、上部温度が設定温度より2.5[℃]低い温度になった場合)には暖房運転を再開させる。
【0053】
室外機30は、例えば不図示の、室外熱交換器と、四方弁と、圧縮機と、室外膨張弁と、室外送風機と、アキュムレータとを備える。冷媒配管35は、室外膨張弁と、室外熱交換器と、四方弁と、圧縮機と、アキュムレータとを接続する。
【0054】
室外熱交換器は、例えばフィンチューブ式の熱交換器である。四方弁は、冷媒配管35内で冷媒が流れる方向を切り替えるための弁である。四方弁は、暖房運転時の方向と、当該方向とは逆の方向である冷房運転時(あるいは除霜運転時)の方向とに、冷媒が流れる方向を切り替える。但し、本実施形態における空気調和システム1は、暖房専用の空気調和システムであってもよい。
【0055】
圧縮機は、公知のインバータ制御により運転周波数を変化させることができる。圧縮機は、吸込口から冷媒を吸い込み、内部で冷媒を圧縮する。圧縮機は、圧縮された冷媒を吐出口から外部へ吐出する。圧縮機の吸込口には、アキュムレータが取り付けられている。アキュムレータは、冷媒を液冷媒とガス冷媒とに分離し、液冷媒を蓄える。
【0056】
室外膨張弁は、室内膨張弁と同様に構成される。室外膨張弁は、例えば電子膨張弁(PMV)である。室外膨張弁は、開度を変更(調節)可能である。例えば、室外膨張弁の開度の増加に応じて、冷媒が室外膨張弁内を流れやすくなる。一方、室外膨張弁の開度の減少に応じて、冷媒が室外膨張弁内を流れにくくなる。
【0057】
室外送風機は、室内送風機と同様に構成される。室外送風機は、軸流式のファンを備える送風機である。なお、室内送風機が備えるファンは、例えば遠心式のファン等の、その他の構造のファンであってもよい。室外送風機が備えるファンは、室外熱交換器に対向するように配置される。
【0058】
以下、それぞれの運転モード時における、床吹出し式室内機10の吹出温度制御部11による吹出温度の制御について説明する。
【0059】
吹出温度制御部11は、運転モードに応じて異なる、予め設定された上限温度に基づいて吹出温度を制御する。吹出温度制御部11は、吹出温度が、上限温度を超えないようにしつつ、上限温度により近い温度になるように当該吹出温度を逐次制御する。以下、高負荷時(システム起動時)の運転モードを「高負荷時モード」といい、低負荷時(システム起動時以外の時)の運転モードを「低負荷時モード」という。
【0060】
図3は、高負荷時モードにおける吹出温度の上限温度の一例を表す図である。
図3に示されるグラフにおいて、横軸はリモートサーモセンサ15によって計測される空間Sの下部温度を表し、縦軸は吹出温度制御部11によって制御される、吹出し口50から吹き出される空気の吹出温度を表す。なお、
図3に示される下部温度及び吹出温度の単位は、ともに摂氏(℃)である。
【0061】
図3に示されるように高負荷時モードにおいては、空間Sの下部温度が20[℃]以下である場合には、吹出温度の上限温度は、下部温度に対して10[℃]加算された温度である。また、
図3に示されるように高負荷時モードにおいては、空間Sの下部温度が20[℃]以上である場合には、吹出温度の上限温度は、一定の温度であり、30[℃]である。
【0062】
一般的に、下部温度と吹出温度との関係に基づいて浮力効果が生じ、空間S内の下部にあった暖気が空間Sの上部へ上昇してしまうことがある。これにより、下部温度を高くすることで空間S内の上下温度差を小さくすることが妨げられてしまう。
図3に示される吹出温度の上限温度のラインは、このような浮力効果の影響による暖気の上昇を抑えるために適切に設定されたラインの一例である。
【0063】
すなわち、
図3に示される吹出温度の上限温度のラインは、下部温度が20[℃]以下である場合には、吹出温度が下部温度より10[℃]以上高くなると浮力効果の影響が大きくなるという一般的な調査結果に基づいて予め設定されている。また、当該上限温度のラインは、下部温度が20[℃]以上である場合には、吹出温度が30[℃]を超えると浮力効果の影響が大きくなるという一般的な調査結果に基づいて予め設定されている。
【0064】
吹出温度制御部11は、高負荷時モードでの運転時において、リモートサーモセンサ15から定期的に(例えば、5秒ごとに)出力される、空間Sの下部温度を示す情報を取得する。吹出温度制御部11は、
図3に示される吹出温度の上限温度のラインに基づいて、測定された下部温度に対応する吹出温度の上限温度を特定する。
【0065】
なお、
図3に示される吹出温度の上限温度のラインを示す情報は、例えば前述の補助記憶装置等に予め記憶されている。吹出温度制御部11は、吹出温度が、特定された上限温度を超えないようにしつつ、特定された上限温度により近い温度になるように、当該吹出温度を逐次制御する。
【0066】
吹出温度制御部11は、計測された下部温度が設定温度になった場合には暖房運転を停止させる。その後、吹出温度制御部11は、計測された下部温度が設定温度から所定の温度(本実施形態では0.5[℃])だけ下がった場合に、低負荷時モードで暖房運転を再開させる。
【0067】
図4は、低負荷時モードにおける吹出温度の上限温度の一例を表す図である。
図3と同様に、
図4に示されるグラフにおいて、横軸はリモートサーモセンサ15によって計測される空間Sの下部温度を表し、縦軸は吹出温度制御部11によって制御される、吹出し口50から吹き出される空気の吹出温度を表す。なお、
図4に示される下部温度及び吹出温度の単位は、ともに摂氏(℃)である。
【0068】
図4に示されるように低負荷時モードにおいては、空間Sの下部温度が19[℃]以下である場合には、前述の高負荷時モードと同様に、吹出温度の上限温度は、下部温度に対して10[℃]加算された温度である。一方、低負荷時モードにおいては、空間Sの下部温度が19[℃]以上である場合には、前述の高負荷時モードとは異なる上限温度で制御される。
【0069】
図4に示されるように、空間Sの下部温度が19[℃]以上である場合には、低負荷時モードにおける吹出温度の上限温度は、
図3に示される前述の高負荷時モードにおける吹出温度の上限温度より低い温度である。図示されるように、吹出温度の上限温度のラインは、下部温度19[℃]と吹出温度29[℃]との交点、及び下部温度26[℃]と吹出温度26[℃]との交点が含まれる、曲線状のラインである。この曲線状のラインは、上述した2つの交点をまっすぐ結んだ直線よりも、吹出温度が少し低くなるような緩い曲線を描くラインである。
【0070】
なお、この曲線状の吹出温度の上限温度のラインは、フィールド調査に基づいて導き出されたラインである。当該曲線状のラインは、吹出し口50から吹き上げられる温風によって顔が熱いと在室者に感じさせないようにするように、適切に設定されたラインの一例である。
【0071】
なお、下部温度19[℃]と吹出温度29[℃]との交点は、吹出温度の上限温度が下部温度に対して10[℃]加算された温度のラインと、下部温度19[℃]のラインとの交点に基づいて設定されたものである。なお、下部温度19[℃]は、フィールド調査において導き出された、在室者に寒いと感じさせないための下限の目安となる温度である。
【0072】
なお、下部温度26[℃]と吹出温度26[℃]との交点は、
図4において一点鎖線で示される、下部温度と吹出温度とが等温となるラインと、下部温度26[℃]のラインとの交点に基づいて設定されたものである。なお、下部温度26[℃]は、フィールド調査において導き出された、在室者に暑いと感じさせないための上限の目安となる温度である。
【0073】
吹出温度制御部11は、低負荷時モードでの運転時において、リモートサーモセンサ15から定期的に(例えば、5秒ごとに)出力される、空間Sの下部温度を示す情報を取得する。吹出温度制御部11は、
図4に示される吹出温度の上限温度のラインに基づいて、測定された下部温度に対応する吹出温度の上限温度を特定する。
【0074】
なお、
図4に示される吹出温度の上限温度のラインを示す情報は、例えば前述の補助記憶装置等に予め記憶されている。吹出温度制御部11は、吹出温度が、特定された上限温度を超えないようにしつつ、特定された上限温度により近い温度になるように、当該吹出温度を逐次制御する。
【0075】
吹出温度制御部11は、計測された下部温度が設定温度になった場合には暖房運転を停止させる。その後、吹出温度制御部11は、計測された下部温度が設定温度から所定の温度(本実施形態では0.5[℃])だけ下がった場合に、低負荷時モードで暖房運転を再開させる。
【0076】
以下、床吹出し式室内機10の動作の一例について説明する。
図5は、実施形態における床吹出し式室内機10の動作を示すフローチャートである。
図5のフローチャートが示す床吹出し式室内機10の動作は、例えば、空気調和システム1の電源がオンにされた際に開始される。
【0077】
床吹出し式室内機10の吹出温度制御部11は、設定温度指示を示す情報の入力を待ち受ける(ステップS101)。設定温度指示とは、ユーザによるリモコン25への操作入力によって受け付けられた、空間S内の温度を所望の設定温度に制御させるための指示である。設定温度指示を示す情報は、例えば、リモコン25から出力され、天井吹出し式室内機20-1を介して床吹出し式室内機10へ入力される。
【0078】
吹出温度制御部11は、設定温度指示を示す情報の入力を受け付けた場合(ステップS101・YES)、例えば
図3に示される、高負荷時モードでの暖房運転時における空間Sの下部温度に対応する吹出温度の上限温度と、リモートサーモセンサ15から定期的に(例えば、5秒ごとに)入力される空間Sの下部温度を示す情報とに基づいて吹出温度を逐次制御する、床吹出し制御を開始する(ステップS102)。
【0079】
次に、吹出温度制御部11は、リモートサーモセンサ15から定期的に(例えば、5秒ごとに)入力される空間Sの下部温度が、設定温度指示を示す情報に基づく設定温度になるまで、高負荷時モードでの床吹出し制御を継続する(ステップS104)。
【0080】
その間、吹出温度制御部11は、運転終了指示を示す情報の入力を受け付けた場合には(ステップS103・YES)、床吹出し制御を終了させる(ステップS111)。以上で、
図5のフローチャートが示す床吹出し式室内機10の動作が終了する。運転終了指示とは、例えば、ユーザによるリモコン25への操作入力によって受け付けられた、空気調和システム1の電源をオフにさせるための指示である。
【0081】
吹出温度制御部11は、リモートサーモセンサ15から定期的に(例えば、5秒ごとに)入力される空間Sの下部温度が設定温度になった場合(ステップS104・YES)、床吹出し制御を一時停止させる(ステップS105)。
【0082】
次に、吹出温度制御部11は、リモートサーモセンサ15から定期的に(例えば、5秒ごとに)入力される空間Sの下部温度が、設定温度より0.5[℃]低くなるまで、床吹出し制御を一時停止させた状態を維持する(ステップS107)。
【0083】
その間、吹出温度制御部11は、運転終了指示を示す情報の入力を受け付けた場合には(ステップS106・YES)、床吹出し制御を終了させる(ステップS111)。以上で、
図5のフローチャートが示す床吹出し式室内機10の動作が終了する。
【0084】
吹出温度制御部11は、リモートサーモセンサ15から定期的に(例えば、5秒ごとに)入力される空間Sの下部温度が設定温度より0.5[℃]低くなった場合(ステップS107・YES)、例えば
図4に示される、低負荷時モードでの暖房運転時における空間Sの下部温度に対応する吹出温度の上限温度と、リモートサーモセンサ15から定期的に(例えば、5秒ごとに)入力される空間Sの下部温度を示す情報とに基づいて吹出温度を逐次制御する、床吹出し制御を開始する(ステップS108)。
【0085】
次に、吹出温度制御部11は、リモートサーモセンサ15から定期的に(例えば、5秒ごとに)入力される空間Sの下部温度が、設定温度指示を示す情報に基づく設定温度になるまで、低負荷時モードでの床吹出し制御を継続する(ステップS110)。
【0086】
その間、吹出温度制御部11は、運転終了指示を示す情報の入力を受け付けた場合には(ステップS109・YES)、床吹出し制御を終了させる(ステップS111)。以上で、
図5のフローチャートが示す床吹出し式室内機10の動作が終了する。
【0087】
吹出温度制御部11は、リモートサーモセンサ15から定期的に(例えば、5秒ごとに)入力される空間Sの下部温度が設定温度になった場合(ステップS110・YES)、床吹出し制御を一時停止させる(ステップS105)。吹出温度制御部11は、上記のステップS106以降の動作を繰り返す。
【0088】
次に、以下、天井吹出し式室内機20-1の動作の一例について説明する。
図6は、実施形態における天井吹出し式室内機20-1の動作を示すフローチャートである。
図6のフローチャートが示す天井吹出し式室内機20-1の動作は、例えば、空気調和システム1の電源がオンにされた際に開始される。なお、天井吹出し式室内機20-2の動作は、以下に説明する天井吹出し式室内機20-1の動作と基本的には同様であるため、説明を省略する。
【0089】
天井吹出し式室内機20-1は、設定温度指示を示す情報の入力を待ち受ける(ステップS201)。前述の通り、設定温度指示とは、ユーザによるリモコン25への操作入力によって受け付けられた、空間S内の温度を所望の設定温度に制御させるための指示である。設定温度指示を示す情報は、例えば、リモコン25から入力される。
【0090】
天井吹出し式室内機20-1は、設定温度指示を示す情報の入力を受け付けた場合(ステップS201・YES)、設定温度指示を示す情報を、床吹出し式室内機10、天井吹出し式室内機20-2、及び室外機30へ通知する(ステップS202)。
【0091】
次に、天井吹出し式室内機20-1は、吸込温度センサ21によって計測された温度に基づいて推測される空間Sの上部温度と、ユーザによって設定された設定温度とに基づいて空間Sの上部温度を制御するための、天井吹出し制御を開始する(ステップS203)。
【0092】
次に、天井吹出し式室内機20-1は、吸込温度センサ21によって計測された温度に基づいて推測される空間Sの上部温度が、設定温度指示を示す情報に基づく設定温度より2[℃]低い温度になるまで、天井吹出し制御を継続する(ステップS205)。
【0093】
その間、天井吹出し式室内機20-1は、運転終了指示を示す情報の入力を受け付けた場合には(ステップS204・YES)、天井吹出し制御を終了させる(ステップS209)。以上で、
図6のフローチャートが示す天井吹出し式室内機20-1の動作が終了する。前述の通り、運転終了指示とは、例えば、ユーザによるリモコン25への操作入力によって受け付けられた、空気調和システム1の電源をオフにさせるための指示である。
【0094】
天井吹出し式室内機20-1は、吸込温度センサ21によって計測された温度に基づいて推測される空間Sの上部温度が設定温度より2[℃]低い温度になった場合(ステップS205・YES)、天井吹出し制御を一時停止させる(ステップS206)。
【0095】
次に、天井吹出し式室内機20-1は、吸込温度センサ21によって計測された温度に基づいて推測される空間Sの上部温度が、設定温度より2[℃]低い温度からさらに0.5[℃]低い温度になるまで(すなわち、上部温度が設定温度より2.5[℃]低くなるまで)、天井吹出し制御を一時停止させた状態を維持する(ステップS208)。
【0096】
その間、天井吹出し式室内機20-1は、運転終了指示を示す情報の入力を受け付けた場合には(ステップS207・YES)、天井吹出し制御を終了させる(ステップS209)。以上で、
図6のフローチャートが示す天井吹出し式室内機20-1の動作が終了する。
【0097】
天井吹出し式室内機20-1は、吸込温度センサ21によって計測された温度に基づいて推測される空間Sの上部温度が、設定温度より2[℃]低い温度からさらに0.5[℃]低い温度になった場合(ステップS208・YES)、吸込温度センサ21によって計測された温度に基づいて推測される空間Sの上部温度と、ユーザによって設定された設定温度とに基づいて空間Sの上部温度を制御する、天井吹出し制御を再開する(ステップS203)。天井吹出し式室内機20-1は、上記のステップS204以降の動作を繰り返す。
【0098】
以下、上記説明した床吹出し式室内機10の動作と天井吹出し式室内機20の動作、及びこれらを併用することによる効果をさらに分かり易くするため、具体例を挙げて説明する。
【0099】
例えば、空間S内の上部温度が18[℃]であり、下部温度が16[℃]であったものとする。このような環境において、例えばユーザが、リモコン25を用いて、空気調和システム1の電源をオンに切り替え、設定温度を24[℃]に設定したものとする。
【0100】
この場合、床吹出し式室内機10の吹出温度制御部11は、
図3に示される高負荷時モードにおける吹出温度の上限ラインに基づいて、下部温度が16[℃]である場合に対応する吹出温度が26[℃]であることを認識する。吹出温度制御部11は、吹出し口50から吹き出される空気の吹出温度が26[℃]になるように制御する。
【0101】
また、吹出温度制御部11は、
図3に示される高負荷時モードにおける吹出温度の上限ラインに基づいて、下部温度の変化に応じて吹出温度を変化させるように制御する。すなわち、吹出温度制御部11は、下部温度が20[℃]に到達するまでは、下部温度の上昇に合わせて吹出温度を上昇させていく。
図3に示されるように、下部温度が20[℃]に到達した時点では、吹出温度が30[℃]になるように制御される。
【0102】
その後、吹出温度制御部11は、下部温度が設定温度である24[℃]になるまで、吹出温度が一定の30[℃]になるように制御する。吹出温度制御部11は、下部温度が24[℃]になったところで、床吹出し制御を一時停止させる。
【0103】
その後、下部温度が低下していき、リモートサーモセンサ15によって計測された下部温度が設定温度である24[℃]より0.5[℃]低い23.5[℃]になったところで、吹出温度制御部11は、床吹出し制御を再開させる。
【0104】
このとき、吹出温度制御部11は、
図4に示される低負荷時モードにおける吹出温度の上限ラインに基づいて、下部温度の変化に応じて吹出温度を変化させるように制御する。すなわち、吹出温度制御部11は、床吹出し制御の再開時の最初の時点では、下部温度が23.5[℃]である場合に対応する吹出温度である26.7[℃]になるように、吹出温度を制御する。
【0105】
再び、吹出温度制御部11は、リモートサーモセンサ15によって計測された下部温度が設定温度である24[℃]に、到達するまでは、下部温度の上昇に合わせて吹出温度を変化させていく。
図4に示されるように、下部温度が24[℃]に到達し、再び床面からの吹出しが一時停止される時点では、吹出温度は26.5[℃]になるように制御されている。
【0106】
一方、天井吹出し式室内機20は、空間Sの上部温度を、設定温度の24[℃]より2[℃]低い温度である22[℃]にすることを目標として、天井吹出し制御を開始する。天井吹出し式室内機20は、上部温度が22[℃]になったところで、天井吹出し制御を一時停止させる。その後、上部温度が低下していき、空間Sの上部温度が設定温度の22[℃]よりさらに0.5[℃]低い21.5[℃]になった場合には、天井吹出し式室内機20は、天井吹出し制御を再開させる。
【0107】
なお、一般的に、上部温度が22[℃]に到達した時点では、下部温度は24[℃]にまで到達していないことが予想される。したがって、上部温度が22[℃]になり天井吹出し式室内機20の暖房運転が停止した後は、床吹出し式室内機10による単独での暖房運転が行われている状態となる。
【0108】
このように、本実施形態における空気調和システム1は、システムの起動時には、床吹出し式室内機10及び天井吹出し式室内機20を用いた、全機での暖房運転を実行する。これにより、空間S内の温度が、設定温度に近い温度にまで迅速に高められる。そして、空気調和システム1は、上部温度が設定温度より2[℃]低い温度にまで上昇した時点で天井吹出し式室内機20を停止させ、床吹出し式室内機10のみを用いた暖房運転に切り替わる。その後、床吹出し式室内機10によって制御可能な範囲であるならば、床吹出し式室内機10による暖房運転のみによって空間S内の温度が制御される。
【0109】
また、本実施形態における空気調和システム1は、低付加時(例えば、システム起動時以外の時)には、高付加時と比べて吹出温度をきめ細かく制御するため、快適性をより向上させることができる。
【0110】
以上説明した実施形態によれば、空気調和システムは、第1室内機と、第2室内機と、を持つ。第1室内機は、空間の上部から前記空間の内部への温風の吹き出しを制御することで、前記空間の内部の温度を制御する。第2室内機は、前記空間の下部の温度に基づいて、前記空間の床下から前記空間の内部への温風の吹き出しを制御する。
【0111】
例えば、上記の空気調和システムは実施形態おける空気調和システム1であり、上記の第1室内機は実施形態における天井吹出し式室内機20であり、上記の第2室内機は実施形態における床吹出し式室内機10であり、上記の空間は実施形態における空間Sであり、上記の空間の内部の温度は実施形態における上部温度であり、上記の空間の下部の温度は実施形態における下部温度である。
【0112】
このような構成を備えることで、実施形態の空気調和システムは、空間内の下部の温度と上部の温度との温度差を小さくすることができる。これにより、空気調和システムは、在室者の足元周辺の温度を高くすることができ、空間内の上部の温度がより低い温度にしたうえで、在室者が快適と感じる温熱環境を作り出すことができる。これにより、実施形態の空気調和システムは、快適性を維持しつつ、設定温度をより低い温度(例えば、2[℃]低い温度)にすることができるため、エネルギー消費量を削減することができる。
【0113】
また、実施形態の空気調和システムは、例えば前述の従来技術のように互いに異なる方式の空気調和装置が組み合わされたシステムではないことから、大掛かりなシステム構築を必要とせず、システムの導入が容易である。
【0114】
以上により、実施形態の空気調和システムは、より簡単なシステム構成で快適性の向上を図ることができる。
【0115】
なお、第2室内機は、空間の下部の温度ごとに定められた上限温度に基づいて温風の吹出温度を制御する吹出温度制御部を備えるようにしてもよい。例えば、上記の吹出温度制御部は実施形態における吹出温度制御部11である。
【0116】
なお、吹出温度制御部は、起動時であるか否かに応じて異なる上限温度に基づいて吹出温度を制御するようにしてもよい。例えば、上記の起動時であるか否かに応じて異なる上限温度は、実施形態において
図3及び
図4にそれぞれ示される上限温度のラインである。
【0117】
なお、第1室内機は、指定された設定温度より所定の温度だけ低い温度にするように、空間の内部の温度を制御するようにしてもよい。例えば、上記の所定の温度とは実施形態における2[℃]である。
【0118】
なお、空間の下部の温度を計測する温度センサをさらに備え、第2室内機は、温度センサによって計測された温度に基づいて温風の吹き出しを制御するようにしてもよい。例えば、上記の温度センサは実施形態におけるリモートサーモセンサ15である。
【0119】
上述した実施形態における空気調和システム1の一部を、コンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、PLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されるものであってもよい。
【0120】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0121】
1 空気調和システム
10 床吹出し式室内機
11 吹出温度制御部
15 リモートサーモセンサ
20(20-1,20-2) 天井吹出し式室内機
21 吸込温度センサ
25 リモコン
30 室外機
35 冷媒配管
40 垂直ダクト
45 床下給気チャンバー
50 吹出し口