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特許7541194同心楕円の弦長比に基づく単結晶シリコン直径検出方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】同心楕円の弦長比に基づく単結晶シリコン直径検出方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/08 20060101AFI20240820BHJP
   C30B 15/26 20060101ALI20240820BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G01B11/08 H
C30B15/26
H01L21/66 J
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023542843
(86)(22)【出願日】2023-02-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 CN2023076311
(87)【国際公開番号】W WO2023226481
(87)【国際公開日】2023-11-30
【審査請求日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】202210577992.9
(32)【優先日】2022-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521162399
【氏名又は名称】之江実験室
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【弁理士】
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】▲項▼ 森▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】胡 易人
(72)【発明者】
【氏名】叶 敏翔
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲芸▼菲
(72)【発明者】
【氏名】汪 ▲ティン▼
(72)【発明者】
【氏名】▲門▼ ▲沢▼▲華▼
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102061517(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112381807(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102914270(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114399489(CN,A)
【文献】特開2018-100195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/08
C30B 15/26
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同心楕円の弦長比に基づく単結晶シリコン直径検出方法であって
産業用カメラを引き上げ炉の観察窓に取り付け、防熱ガラスを通して単結晶シリコンの成長過程を撮影するステップS1と
材料溶融段階において、導流筒の倒影による不完全な楕円に対して楕円フィッティングを行って楕円パラメータを取得し、且つ完全な楕円を形成するステップS2と
前記楕円の円心Oを通る直線LをN組予め設定し、且つ直線Lと前記楕円の外楕円との交点をQと記し、楕円方程式と直線方程式を連立して交点Qの座標を求め、各組のOQのユークリッド距離の長さを計算して記録するステップS3と
肩部回転段階に進入する前に、エネルギー解放リング領域に対して関心領域を設定し、前記関心領域が引き上げ過程におけるエネルギー解放リング領域全体を完全に覆うステップS4と
肩部回転、等径段階において、エッジ検出アルゴリズムによって現在フレームのエネルギー解放リング領域のエネルギー解放リング画像を計算して、エネルギー解放リング領域における一部のエネルギー解放リングの楕円エッジを取得するステップS5と
トラバース法によって線分OQと前記エネルギー解放リングの楕円との交点を問い合わせてPと記し、前記エネルギー解放リングの楕円の円心O及び交点Pの座標に基づいて各組のOPのユークリッド距離の長さを計算して記録するステップS6と
同心楕円の弦長比の幾何学的特性に基づいて導流筒の直径と組み合わせて、各組の(OP,OQ)に対応する単結晶シリコンの直径Dを計算して記録するステップS7と
計算して取得されたN組の単結晶シリコンの直径Dに対して中央値フィルタリングを行って、現在フレームに対応する単結晶シリコンの直径を取得するステップS8と
前記ステップS5へジャンプして、次のフレームの単結晶シリコンの直径の計算を開始し、単結晶シリコンの等径プロセスを完了するまで終了するステップS9と、を含む
ことを特徴とする同心楕円の弦長比に基づく単結晶シリコン直径検出方法。
【請求項2】
前記ステップS2において、楕円フィッティングアルゴリズムはハフに基づく楕円フィッティングアルゴリズム、最小二乗楕円フィッティングアルゴリズム又は平行弦に基づく楕円フィッティングアルゴリズムである
ことを特徴とする請求項1に記載の同心楕円の弦長比に基づく単結晶シリコン直径検出方法。
【請求項3】
前記ステップS5において、前記エッジ検出アルゴリズムはSobelアルゴリズム、Robertsアルゴリズム、バイラテラルフィルタリングアルゴリズム又はCannyエッジ検出アルゴリズムである
ことを特徴とする請求項1に記載の同心楕円の弦長比に基づく単結晶シリコン直径検出方法。
【請求項4】
前記ステップS2に記載の導流筒の倒影と前記ステップS5に記載のエネルギー解放リングが画像において1対の同心楕円を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の同心楕円の弦長比に基づく単結晶シリコン直径検出方法。
【請求項5】
前記ステップS7に記載の同心楕円の弦長比の幾何学的特性とは、単結晶シリコンの直径=導流筒の底部直径×(OPのユークリッド距離の長さ/OQのユークリッド距離の長さ)を指す
ことを特徴とする請求項1に記載の同心楕円の弦長比に基づく単結晶シリコン直径検出方法。
【請求項6】
同心楕円の弦長比に基づくチョクラルスキー型単結晶シリコン直径検出装置であって、
防熱ガラス、産業用レンズ、産業用カメラ、メモリ及び1つ又は複数のプロセッサを備え、前記メモリに実行可能コードが記憶され、前記1つ又は複数のプロセッサは前記実行可能コードを実行するとき、請求項1~5のいずれか1項に記載の同心楕円の弦長比に基づく単結晶シリコン直径検出方法を実現するためのものである
ことを特徴とする同心楕円の弦長比に基づくチョクラルスキー型単結晶シリコン直径検出装置。
【請求項7】
コンピュータ可読記憶媒体であって、
プログラムが記憶され、該プログラムがプロセッサにより実行されるとき、請求項1~5のいずれか1項に記載の同心楕円の弦長比に基づく単結晶シリコン直径検出方法を実現する
ことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチョクラルスキー型単結晶シリコン直径検出の技術分野に関し、特に同心楕円の弦長比に基づく単結晶シリコン直径検出方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報及びエネルギーは21世紀の2つの基幹産業である。良好な半導体材料の1種として、単結晶シリコンは一般的に集積回路及び太陽電池の製造に用いられ、情報産業及び新エネルギー産業における最も基本的な原材料であり、軍事用電子機器においても重要な役割を果たしている。チョクラルスキー法は単結晶シリコンを生産する主な方法であり、世界中に70~80%の単結晶シリコンの生産高がチョクラルスキー法により生産したのである。チョクラルスキー法により単結晶シリコンを生産するとき、直径検出は重要なプロセス段階であって、結晶の等径成長を確保するキーポイントである。制御システムは単結晶シリコン棒の直径をリアルタイムに測定することにより加熱電力及び結晶引抜速度を調整し、結晶棒の直径を常に合理的な範囲にし、最終的に表面が滑らかな高品質の単結晶シリコン棒を生産することができる。
【0003】
シリコンの融点が約1450℃であり、単結晶シリコンの生産過程が常に高温・負圧の単結晶製造炉内で行われ、従って、直径検出は一般的に非接触式検出手段を用い、よく使用されている検出方法は3種類ある。第1種類は直径測定装置による方法であり、直径測定装置が機械式変位測定システムの1種であって、光学レンズ、測定読取機構及び装置台座の3つの部分で構成される。使用時に、まず直径測定装置を単結晶製造炉の観察窓に取り付け、操作者が光学レンズを調整して目視により円柱結晶棒の左右エッジを探す。1つのエッジを見つけてそれを狙った後、レンズを移動して他のエッジを探し、レンズの移動距離の読取値が単結晶シリコンの直径である。このような手動測定方法はより正確であるが、リアルタイム、持続的且つ自動的に測定できない。
【0004】
第2種類は重量計算方法であり、結晶棒をプルアップするワイヤロープには1つの重量センサを取り付け、単位長さの結晶棒の増加重量を計算することにより該長さの結晶棒の平均直径を計算する。このような方法はリアルタイムな検出方法ではなく、取得された結果が単結晶シリコン棒の一定長さの平均直径である。
【0005】
第3種類はマシンビジョン方法であり、現在では単結晶シリコンの直径を測定する主流の技術でもある。単結晶シリコンの成長過程において、結晶は液体から固体に転化する際に大量のエネルギーを解放することとなり、それにより結晶棒と溶融シリコン液面との境界にはエネルギー解放リングとも称される1つの明るい円環を形成する。エネルギー解放リングの直径が結晶棒の直径を代表し、すべてのビジョン方法はいずれもエネルギー解放リングの直径の測定について行われる。大多数の単結晶シリコン直径検出システムはいずれもCCD又はCMOSカメラを用いて検出し、カメラが一般的に引き上げ炉の観察窓に取り付けられ、エネルギー解放リングを斜め下向きに撮影し、エネルギー解放リングの直径を計算することにより単結晶シリコン棒の直径を取得する。カメラが斜上方から下向きに撮影するため、元々円形のエネルギー解放リングは撮影角度により楕円に変形することとなる。異なる検出方法の相違は主にエネルギー解放リングの寸法検出段階で体現し、例えば、開示番号CN104990510Aの中国発明特許には直接に楕円形のエネルギー解放リングエッジを円エッジとして見なし、円弧エッジ上の3つの点を選択して円心を計算することにより、更に結晶棒の直径を計算する。この方法は検出速度が速いが、検出精度が不十分である。開示番号CN103046128Aの中国発明特許にはまず最小二乗法によってエネルギー解放リングの楕円エッジをフィッティングし、次にカメラと垂直方向との夾角に基づいて楕円を円エッジに擬似し、円弧上の3つの点の座標によって円心及び直径を計算する。この方法は計算量が多く、且つ擬似変換において誤差を導入及び拡大することとなり、精度も高くない。開示番号CN102914270Aの中国発明特許にはサポートベクターマシン回帰による結晶棒の直径測定方法が提案されており、それは楕円の標準方程式に対して1つのSVRモデルを導出し、SVRモデルにおける重み及びオフセットbを求めることにより楕円フィッティングパラメータを計算し、結晶棒の直径を更に計算する。この方法は検出精度がより高いが、計算量が多く、1つの楕円を決定するために5つのパラメータを必要とするため、実際に応用する際にリアルタイム性がより低い。
【0006】
このために、本発明は上記技術的問題を解決するために、同心楕円の弦長比に基づく単結晶シリコン直径検出方法及び装置を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は同心楕円の弦長比に基づく単結晶シリコン直径検出方法及び装置を提供することにあり、従来技術における直径検出技術での精度が普通で、計算量が多く、リアルタイム性が劣るという問題を解決します。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明が用いる技術案は以下のとおりである。
【0009】
同心楕円の弦長比に基づく単結晶シリコン直径検出方法であって、
産業用カメラを引き上げ炉の観察窓に取り付け、防熱ガラスを通して単結晶シリコンの成長過程を撮影するステップS1と、
材料溶融段階において、導流筒の倒影による不完全な楕円に対して楕円フィッティングを行って楕円パラメータを取得し、且つ完全な楕円を形成するステップS2と、
前記楕円の円心Oを通る直線LをN組予め設定し、且つ直線Lと前記楕円の外楕円との交点をQと記し、楕円方程式と直線方程式を連立して交点Qの座標を求め、各組のOQのユークリッド距離の長さを計算して記録するステップS3と、
肩部回転段階に進入する前に、エネルギー解放リング領域に対して関心領域を設定し、前記関心領域が引き上げ過程におけるエネルギー解放リング領域全体を完全に覆うステップS4と、
肩部回転、等径段階において、エッジ検出アルゴリズムによって現在フレームのエネルギー解放リング領域のエネルギー解放リング画像を計算して、エネルギー解放リング領域における一部のエネルギー解放リングの楕円エッジを取得するステップS5と、
トラバース法によって線分OQと前記エネルギー解放リングの楕円との交点を問い合わせてPと記し、前記エネルギー解放リングの楕円の円心O及び交点Pの座標に基づいて各組のOPのユークリッド距離の長さを計算して記録するステップS6と、
同心楕円の弦長比の幾何学的特性に基づいて導流筒の直径と組み合わせて、各組の(OP,OQ)に対応する単結晶シリコンの直径Dを計算して記録するステップS7と、
計算して取得されたN組の単結晶シリコンの直径Dに対して中央値フィルタリングを行って、現在フレームに対応する単結晶シリコンの直径を取得するステップS8と、
ステップS5へジャンプして、次のフレームの単結晶シリコンの直径の計算を開始し、単結晶シリコンが等径プロセスを完了するまで終了するステップS9と、を含む。
【0010】
更に、前記ステップS2において、楕円フィッティングアルゴリズムはハフに基づく楕円フィッティングアルゴリズム、最小二乗楕円フィッティングアルゴリズム又は平行弦に基づく楕円フィッティングアルゴリズムである。
【0011】
更に、前記ステップS5において、前記エッジ検出アルゴリズムはSobelアルゴリズム、Robertsアルゴリズム、バイラテラルフィルタリングアルゴリズム又はCannyエッジ検出アルゴリズムである。
【0012】
更に、ステップS2に記載の導流筒の倒影とステップS5に記載のエネルギー解放リングが画像において1対の同心楕円を形成する。
【0013】
更に、前記ステップS7に記載の同心楕円の弦長比の幾何学的特性とは、単結晶シリコンの直径=導流筒の底部直径×(OPのユークリッド距離の長さ/OQのユークリッド距離の長さ)を指す。
【0014】
本発明は同心楕円の弦長比に基づくチョクラルスキー型単結晶シリコン直径検出装置を更に提供し、防熱ガラス、産業用レンズ、産業用カメラ、メモリ及び1つ又は複数のプロセッサを備え、前記メモリに実行可能コードが記憶され、前記1つ又は複数のプロセッサは前記実行可能コードを実行するとき、上記実施例のいずれか1項に記載の同心楕円の弦長比に基づく単結晶シリコン直径検出方法を実現するためのものである。
【0015】
本発明はコンピュータ可読記憶媒体を更に提供し、プログラムが記憶され、該プログラムがプロセッサにより実行されるとき、上記実施例のいずれか1項に記載の同心楕円の弦長比に基づく単結晶シリコン直径検出方法を実現する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
【0017】
第1として、従来技術に比べて、本発明に係る同心楕円の弦長比に基づく単結晶シリコン直径検出方法は、導流筒と単結晶シリコン棒が垂直方向に同軸である空間関係を十分に利用して深く分析したところ、導流筒の倒影とエネルギー解放リングがカメラの現像に同心楕円を呈し、更に同心楕円の中心線の弦長比関係を探求して単結晶シリコンの直径及び導流筒の底部直径の線形写像法則を導出し、更に導流筒の底部直径及び同心楕円の弦長比によって単結晶シリコンの直径を計算する。
【0018】
第2として、本発明に係る同心楕円の弦長比に基づく単結晶シリコン直径検出方法は、理論が単純で、操作しやすく、直径検出を行う際にエネルギー解放リングにより形成された楕円エッジ又は円エッジをフィッティングする必要がなく、計算量を大幅に削減し、単結晶シリコンの直径の検出精度及び検出効率を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は本発明に係る同心楕円の弦長比に基づく単結晶シリコン直径検出方法のフローチャートである。
図2図2は本発明の実施例に係るチョクラルスキー型単結晶シリコンの生産過程において、引き上げ炉の内部構造、産業用カメラの取り付け方式、産業用カメラが撮影した導流筒の倒影及びエネルギー解放リングの現像の模式図である。
図3図3は本発明の実施例に係る導流筒の倒影及びエネルギー解放リングが画像に同心楕円関係を呈する模式図である。
図4図4は本発明の実施例に係る同心楕円の弦長比の幾何学的特性の原理模式図である。
図5図5は本発明に係る同心楕円の弦長比に基づく単結晶シリコン直径検出方法の装置模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、少なくとも1つの例示的な実施例についての説明は実際に単に説明的なものであって、本発明及びその応用又は使用を制限するものではない。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的な労力を要することなく取得するすべての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0021】
図1を参照し、同心楕円の弦長比に基づく単結晶シリコン直径検出方法であって、
産業用カメラを引き上げ炉の観察窓に取り付けて、防熱ガラスを通して単結晶シリコンの成長過程を撮影するステップS1と、
材料溶融段階において、導流筒の倒影による不完全な楕円に対して楕円フィッティングを行って楕円パラメータを取得し、且つ完全な楕円を形成し、楕円フィッティングアルゴリズムがハフに基づく楕円フィッティングアルゴリズム、最小二乗楕円フィッティングアルゴリズム又は平行弦に基づく楕円フィッティングアルゴリズムであるステップS2と、
前記楕円の円心Oを通る直線LをN組予め設定し、且つ直線Lと前記楕円の外楕円との交点をQと記し、楕円方程式と直線方程式を連立して交点Qの座標を求め、各組のOQのユークリッド距離の長さを計算して記録するステップS3と、
肩部回転段階に進入する前に、エネルギー解放リング領域に対してROI(関心領域)を設定し、ROI(関心領域)領域が引き上げ過程におけるエネルギー解放リング領域全体を完全に覆うことができるステップS4と、
肩部回転、等径段階において、エッジ検出アルゴリズムによって現在フレームのエネルギー解放リング領域のエネルギー解放リング画像を計算して、エネルギー解放リング領域における一部のエネルギー解放リングの楕円エッジを取得し、前記エッジ検出アルゴリズムがSobelアルゴリズム、Robertsアルゴリズム、バイラテラルフィルタリングアルゴリズム又はCannyエッジ検出アルゴリズムであるステップS5と、
トラバース法によって線分OQと前記エネルギー解放リングの楕円との交点を問い合わせてPと記し、前記エネルギー解放リングの楕円の円心O及び交点Pの座標に基づいて各組のOPのユークリッド距離の長さを計算して記録するステップS6と、
同心楕円の弦長比の幾何学的特性に基づいて導流筒の直径と組み合わせて、各組の(OP,OQ)に対応する単結晶シリコンの直径Dを計算して記録し、前記同心楕円の弦長比の幾何学的特性とは、単結晶シリコンの直径=導流筒の底部直径×(OPのユークリッド距離の長さ/OQのユークリッド距離の長さ)を指すステップS7と、
計算して取得されたN組の単結晶シリコンの直径Dに対して中央値フィルタリングを行って、現在フレームに対応する単結晶シリコンの直径を取得するステップS8と、
ステップS5へジャンプして、次のフレームの単結晶シリコンの直径の計算を開始し、単結晶シリコンが等径プロセスを完了するまで終了するステップS9と、を含む。
【0022】
実施例
図2に示すように、本発明は1つの産業用カメラ1を引き上げ炉2の観察窓3に取り付け、産業用カメラ1が防熱ガラス4を通して単結晶シリコン棒5の成長過程を斜め下向きに撮影する。高温の溶融シリコン液面6はより高い平坦度及びより高い反射性を有するため、鏡面として見なされてもよい。鏡面現像原理に従い、溶融シリコン液面6に掛けられる導流筒7が倒影を映し、導流筒の倒影8とエネルギー解放リング9が産業用カメラ1により同時に撮影して収集される。
【0023】
図3に示すように、本発明は図2における導流筒の倒影8とエネルギー解放リング9との空間関係を丁寧に分析する。産業用カメラ1が垂直方向のZ軸とβ角度をなすように斜め下向きに撮影するため、円柱形の単結晶シリコン棒5と円錐形の導流筒7が画像において2つの楕円になる。チョクラルスキー型単結晶シリコンの組み立て及び生産過程において、導流筒7と単結晶シリコン棒5が垂直方向に関して厳しく同軸であり、従って、導流筒の倒影8とエネルギー解放リング9とが1対の同心楕円を構成する。明らかに、単結晶シリコン棒5の直径Dとエネルギー解放リング9の楕円投影との間には、以下の式1の関係があり、
【数1】
ここで、aとbがエネルギー解放リング9の楕円投影の長半軸及び短半軸を示し、kが係数であって、画素寸法と物理的寸法との間の変換倍率を示す。同様に、導流筒7の底部直径Dとその倒影の楕円画像との間には、以下の式2の関係があり、
【数2】
ここで、aとbが導流筒7の楕円投影の長半軸及び短半軸を示す。
【0024】
式1及び式2を組み合わせて、以下の式3、式4が導出されやすく、
【数3】
【数4】
式3は内楕円と外楕円が同じ同心率を有することを示し、式4は単結晶シリコン棒5の直径と導流筒7の底部直径との比がそれらに対応する楕円投影の長半軸の比(又は、短半軸の比)と同じであることを示す。導流筒の底部直径が既知の定数として予め測定されてもよく、従って、画像における2つの楕円の長軸比(又は、短軸比)を検出すれば、式4に基づいて結晶棒の直径を迅速に計算することができる。
【0025】
楕円はそれぞれ楕円の円心の座標(x,y)、長半軸a、短半軸b、水平方向に対する回転角度θを示す5つのパラメータ(x,y,a,b,θ)がある。長半軸a又は短半軸bを計算するために楕円のパラメータの識別に関わるが、このような問題は計算量が多く、リアルタイム性が劣るという欠点を有する。直径検出の計算量を削減して検出効率を更に向上させるために、本発明は同心楕円の幾何学的特性を深く掘り起こした。
【0026】
図4には回転しない、円心が原点に位置し、代表的な意味を有する1対の同心楕円を示す。楕円Aの5つのパラメータがそれぞれ(0,0,a,b,0)であり、楕円Bの5つのパラメータが(0,0,a,b,0)である。円心を通って任意の傾斜角度αで1本の中心線lを描いて、楕円A及びBとそれぞれ点P及びQで交差させる。楕円A及び楕円Bの方程式はそれぞれ以下の式5に示され、
【数5】
中心線lの方程式は以下の式6に示され、
【数6】
式5及び式6から交点P及びQの位置を取得することが容易であり、更にOP及びOQの弦長はそれぞれ以下の式7に示され、
【数7】
式3に示すように、同心楕円が同じ同心率を有し、そうすると、OP及びOQの弦長比は以下の式8に示され、
【数8】
式4及び式8を組み合わせて、以下の式9が得られ、
【数9】
式9とは、導流筒の底部直径Dが既知のものであり、いずれか1本の中心線と内楕円及び外楕円とが交差して生成した弦長比によって単結晶シリコンの直径を迅速に計算することができる。
【0027】
図5を参照し、上記同心楕円の弦長比に基づく単結晶シリコン直径検出方法の実施例に対応して、本発明は同心楕円の弦長比に基づく単結晶シリコン直径検出装置の実施例を更に提供する。
【0028】
本発明の実施例に係る同心楕円の弦長比に基づく単結晶シリコン直径検出装置は、メモリ及び1つ又は複数のプロセッサを備え、前記メモリに実行可能コードが記憶され、前記1つ又は複数のプロセッサは前記実行可能コードを実行するとき、上記実施例における同心楕円の弦長比に基づく単結晶シリコン直径検出方法を実現するためのものである。
【0029】
本発明に係る同心楕円の弦長比に基づく単結晶シリコン直径検出装置の実施例はデータ処理能力を有するいかなる機器に応用されてもよく、該データ処理能力を有するいかなる機器はコンピュータなどの機器又は装置であってもよい。装置実施例はソフトウェアにより実現されてもよく、ハードウェア又はソフトウェアとハードウェアとを組み合わせる方式により実現されてもよい。ソフトウェアによる実現を例とし、論理的な装置として、その位置する、データ処理能力を有するいかなる機器のプロセッサによって不揮発性メモリにおける対応するコンピュータプログラム命令を内部メモリに読み込んで実行して形成したのである。ハードウェアの側面から言えば、図5は本発明に係るモノのインターネット機器が連携装置の位置するデータ処理能力を有するいかなる機器と連携するハードウェア構造図であり、図5に示されるプロセッサ、内部メモリ、ネットワークインターフェース及び不揮発性メモリ以外に、実施例における装置の位置するデータ処理能力を有するいかなる機器は一般的に該データ処理能力を有するいかなる機器の実際の機能によって、他のハードウェアを更に含んでもよく、ここで詳細な説明は省略する。
【0030】
上記装置における各ユニットの機能及び作用の実現過程は具体的に上記方法における対応ステップの実現過程を参照し、ここで詳細な説明は省略する。
【0031】
装置実施例は、基本的に方法実施例に対応するため、関連箇所が方法実施例の一部の説明を参照すればよい。以上に説明される装置実施例は単に模式的なものであり、分離部材として説明される前記ユニットは物理的に分離してもよく、物理的に分離しなくてもよく、ユニットとして表示される部材は物理ユニットであってもよく、物理ユニットでなくてもよく、即ち、一箇所に位置してもよく、複数のネットワークユニットに配置されてもよい。実際の必要に応じて、その一部又は全部のモジュールを選択して本発明の解決手段の目的を実現してもよい。当業者であれば、創造的な労力を要することなく、理解して実施することができる。
【0032】
本発明の実施例はコンピュータ可読記憶媒体を更に提供し、プログラムが記憶され、該プログラムがプロセッサにより実行されるとき、上記実施例における同心楕円の弦長比に基づく単結晶シリコン直径検出方法を実現する。
【0033】
前記コンピュータ可読記憶媒体は上記いずれか1つの実施例に記載のデータ処理能力を有するいかなる機器の内部記憶ユニット、例えばハードディスク又は内部メモリであってもよい。前記コンピュータ可読記憶媒体はデータ処理能力を有するいかなる機器の外部記憶装置、例えば前記機器に配置される挿着式ハードディスク、スマートメディアカード(SMC、Smart Media Card)、SDカード、フラッシュカード(Flash Card)などであってもよい。更に、前記コンピュータ可読記憶媒体はデータ処理能力を有するいかなる機器の内部記憶ユニットを含むだけでなく、外部記憶装置も含んでもよい。前記コンピュータ可読記憶媒体は前記コンピュータプログラム、並びに前記データ処理能力を有するいかなる機器に必要な他のプログラム及びデータを記憶するためのものであり、更に既に出力した又は出力しようとするデータを一時的に記憶するためのものであってもよい。
【0034】
以上の説明は単に本発明の好適な実施例であり、本発明を制限するためのものではなく、当業者であれば、本発明に対して種々の変更及び変化を行うことができる。本発明の主旨及び原則内に行われるいかなる修正、等価置換、改良などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0035】
1 産業用カメラ
2 引き上げ炉
3 観察窓
4 防熱ガラス
5 単結晶シリコン棒
6 溶融シリコン液面
7 導流筒
8 導流筒の倒影
9 エネルギー解放リング
図1
図2
図3
図4
図5