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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/42 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
B29C33/42
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024005930
(22)【出願日】2024-01-18
【審査請求日】2024-02-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】宮下 長武
(72)【発明者】
【氏名】柳谷 有範
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-016782(JP,A)
【文献】特開2014-014980(JP,A)
【文献】特開2004-090579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1成形面を有する第1型と、前記第1成形面に対向する第2成形面を有する第2型と、を備え、前記第1成形面と前記第2成形面との間で、板状のベース部と前記ベース部から突出する複数の突起とを有する樹脂成形品を成形する金型であって、
前記第1成形面および前記第2成形面の少なくとも一方は、前記複数の突起を成形するための複数の形成凹部と、隣合う2つの前記形成凹部を連通するように延びる連通溝と、を備え、
前記ベース部の厚さ方向と前記隣合う2つの前記形成凹部の並び方向との双方に直交する方向を幅方向とするとき、
前記連通溝の前記幅方向における長さは、前記形成凹部の前記幅方向における長さよりも小さくなっており、
前記形成凹部と前記連通溝とが接続される接続部分においては、前記形成凹部の深さと前記連通溝の深さとが同一になっている、金型。
【請求項2】
前記形成凹部の深さ方向と前記連通溝の深さ方向とは異なる方向に設定されている、
請求項1に記載の金型。
【請求項3】
第1成形面を有する第1型と、前記第1成形面に対向する第2成形面を有する第2型と、を備え、前記第1成形面と前記第2成形面との間で、板状のベース部と前記ベース部から突出する複数の突起とを有する樹脂成形品を成形する金型であって、
前記第1成形面および前記第2成形面の少なくとも一方は、前記複数の突起を成形するための複数の形成凹部と、隣合う2つの前記形成凹部を連通するように延びる連通溝と、を備え、
前記ベース部の厚さ方向と前記隣合う2つの前記形成凹部の並び方向との双方に直交する方向を幅方向とするとき、
前記連通溝の前記幅方向における長さは、前記形成凹部の前記幅方向における長さよりも小さくなっており、
前記形成凹部の深さ方向と前記連通溝の深さ方向とは異なる方向に設定されている、金型。
【請求項4】
前記形成凹部は、同形成凹部の深さ方向から見て長手方向と短手方向とを有する形状をなしており、
前記連通溝は、前記長手方向に延びるとともに、前記形成凹部の内面における前記短手方向に延びる部分に接続されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基材と、同基材を覆う表皮材と、基材と表皮材との間に設けられた中間部材とを備える重ね合わせ複合部品が開示されている。この重ね合わせ複合部品では、中間部材が、板状のベース部と同ベース部から基材に向かって突出する複数の突起とを有している。
【0003】
上記重ね合わせ複合部品では、表皮材が基材に向かって押し込まれると、中間部材に設けられた複数の突起の少なくとも一部が基材と接触するとともに撓み変形する。そのため、使用者に対して、発泡ウレタンなどの発泡材が埋め込まれた複合部品に似た感触を提示することができる。
【0004】
特許文献1には、中間部材を成形する金型が開示されている。この金型は、第1成形面を有する固定型と、同第1成形面に対向する第2成形面を有する可動型とを備える。この金型では、固定型の第1成形面と可動型の第2成形面との間で中間部材が成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2022-16782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記重ね合わせ複合部品の中間部材は、複数の突起を有する複雑な形状をなしている。そのため、この中間部材を上記金型を用いて成形する場合には、ショートショットが発生し易くなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための金型は、第1成形面を有する第1型と、前記第1成形面に対向する第2成形面を有する第2型と、を備え、前記第1成形面と前記第2成形面との間で、板状のベース部と前記ベース部から突出する複数の突起とを有する樹脂成形品を成形する金型であって、前記第1成形面および前記第2成形面の少なくとも一方は、前記複数の突起を成形するための複数の形成凹部と、隣合う2つの前記形成凹部を連通するように延びる連通溝と、を備え、前記ベース部の厚さ方向と前記隣合う2つの前記形成凹部の並び方向との双方に直交する方向を幅方向とするとき、前記連通溝の前記幅方向における長さは、前記形成凹部の前記幅方向における長さよりも小さい、金型。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態の金型における第2型の第2成形面の平面構造を示す平面図である。
図2】同金型の成形対象である中間部材を有する重ね合わせ複合部品の側断面図である。
図3】同中間部材の斜視図である。
図4】同中間部材の平面図である。
図5】同実施形態の金型の側面図である。
図6】同実施形態の金型の連通溝に沿った部分側断面図である。
図7】金型内における溶融樹脂の流れを合わせて示す金型の部分側断面図である。
図8】金型内における溶融樹脂の流れを合わせて示す金型の部分側断面図である。
図9】他の実施形態の金型における第2型の部分側断面図である。
図10】他の実施形態の金型における第2型の部分側断面図である。
図11】他の実施形態の金型における第2型の部分側断面図である。
図12】他の実施形態の金型における第2型の第2成形面の平面構造を示す平面図である。
図13】他の実施形態の金型における第2型の第2成形面の平面構造を示す平面図である。
図14】他の実施形態にかかるロール成形用の金型の概略構成を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態の金型について説明する。
先ず、本実施形態の金型の成形対象である中間部材を有する重ね合わせ複合部品について説明する。
【0010】
図2に示すように、重ね合わせ複合部品(以下、内装部品10)は、例えば自動車のドアトリムなどである。
内装部品10は、基材11、表皮材12、および中間部材13を備えている。
【0011】
基材11は板状をなしている。基材11は、ポリプロピレンなどの硬質樹脂材料により形成されている。表皮材12は、上記基材11を覆う板状をなしている。表皮材12は、軟質ポリ塩化ビニルなどの軟質樹脂材料により形成されている。中間部材13は、基材11と表皮材12との間に設けられている。中間部材13は、軟質ポリ塩化ビニルなどの軟質樹脂材料により形成されている。内装部品10は、基材11、中間部材13、および表皮材12が重ね合わされることで形成されている。本実施形態の金型40は、樹脂成形品としての上記中間部材13を成形するためのものである。なお金型40の構造については後に詳述する。
【0012】
<中間部材13>
図2図4に示すように、中間部材13は、ベース部20と複数の突起23と複数のリブ24とを有している。ベース部20、複数の突起23、および複数のリブ24は一体に成形されている。
【0013】
ベース部20は板状をなしている。
<突起23>
複数の突起23は、ベース部20における上記基材11に対向する第2面22から突出している。各突起23は、四角錐体であり、全ての角が丸められている。ここで、突起23における第2面22側の端部である基端部分と同突起23の突端部分とを結ぶ方向を、突起23の突出方向というものとする。突起23は、突出方向から見て長手方向DL1と短手方向DS1とを有する略長方形状をなしている。すなわち、突出方向と直交する方向における突起23の断面形状は略長方形状をなしている。図2に示すように、表皮材12に対して外力が作用していない状態(同図に示す状態)においては、各突起23の先端は基材11に接触している。また、上記状態において、ベース部20における上記表皮材12に対向する第1面21は、同表皮材12の外面に重ね合わされている。
【0014】
ベース部20の第2面22における突起23の配置について、詳しく説明する。
図4に示すように、ベース部20の第2面22には、多角形格子をなす仮想線(以下、第1仮想格子30)が設定される。第1仮想格子30の多角形格子としては、複数の正六角形(以下、仮想六角形31)により構成される正六角形格子が採用される。なお、図4には、複数の仮想六角形31のうちの1つのみを示している。
【0015】
突起23は、上記仮想六角形31の辺(以下、仮想辺32)にあたる位置に設けられる。具体的には、1つの仮想六角形31に対して、6つの仮想辺32に1つずつ、合計6つの突起23が設けられる。各突起23は、第2面22における基端部分が仮想六角形31の仮想辺32の上に位置するように設けられている。
【0016】
突起23の突出方向は、ベース部20に対して傾斜している。詳しくは、複数の突起23の突出方向は、いずれも仮想六角形31の中心に向けて傾斜している。また図2に示すように、各突起23の突出方向は、いずれも第2面22の法線L1に対して所定角度αだけ傾斜している。さらに図4に示すように、同一の仮想六角形31において対向する2つの仮想辺32に設けられる突起23は、同一方向に傾斜した状態で突出している。また、隣合う仮想辺32に設けられる突起23は、互いに異なる方向に傾斜した状態で突出している。
【0017】
<リブ24>
図3および図4に示すように、リブ24は、長手方向DL1において直線状に並ぶように配置される複数の突起23のうち、隣合う2つの突起23を繋ぐように延びている。本実施形態では、長手方向DL1において直線状に並ぶように配置される複数の突起23は、同一方向に傾斜した状態で突出している。リブ24は、同一方向に傾斜した状態で突出する突起23同士を繋ぐように延びている。
【0018】
リブ24は、長手方向DL1に延在する板状をなすように、ベース部20の第2面22から突出している。リブ24は、突起23の外面における同突起23の短手方向DS1に延びる部分、すなわち同突起23を突出方向から見た形状である略長方形状の短辺にあたる部分に接続されている。
【0019】
リブ24の短手方向DS1における長さ、すなわちリブ24の幅は、突起23の短手方向DS1における長さ、すなわち突起23の幅よりも小さくなっている。
リブ24の突出高さは、同リブ24が延びる方向である上記長手方向DL1の両端部分、すなわち突起23に接続される部分においては比較的高くなっており、長手方向DL1における中間部分においては低くなっている。
【0020】
ここで、リブ24における第2面22側の端部である基端部分と同リブ24の突端部分とを結ぶ方向を、リブ24の突出方向というものとする。リブ24の突出方向としては、接続対象の突起23の突出方向と同一の方向(図2参照)が定められている。中間部材13は、突出方向の異なる三種類の突起23を有している。本実施形態では、三種類の突起23のそれぞれに対して、突起23の突出方向とリブ24の突出方向とが同一の方向になるように同リブ24が設けられている。詳しくは、中間部材13には、図4における右上がりの斜め方向に延びるリブ24と、同図4における右下がりの斜め方向に延びるリブ24と、同図4における左右方向に延びるリブ24とが設けられる。
【0021】
<金型40>
以下、本実施形態の金型40について説明する。
図5に示すように、金型40は、第1型50と第2型60とを有する。この金型40では、第1型50の第1成形面51と第2型60の第2成形面61とによって形成されるキャビティに溶融樹脂Rを射出することで、中間部材13(図3参照)が成形される。
【0022】
<第1型50>
第1型50は、金型40における固定型を構成する。第1型50の第1成形面51は、中間部材13におけるベース部20側の部分、具体的にはベース部20における第1面21側の部分を成形するための成形面である。第1成形面51は凹部52を有している。凹部52の内形は、ベース部20における第1面21側の部分の外形と同一の形状になっている。凹部52の内面において上記ベース部20の第1面21を成形する部分は、平面形状をなしている。
【0023】
<第2型60>
第2型60は、金型40における可動型を構成する。第2型60の第2成形面61は、第1型50の第1成形面51に対向する成形面である。第2成形面61は、中間部材13における突起23側の部分、具体的にはベース部20における第2面22側の部分、複数の突起23、および複数のリブ24を成形するための成形面である。
【0024】
<第2成形面61>
図1および図6に示すように、第2成形面61において上記ベース部20の第2面22を成形する部分62は、平面形状をなしている。
【0025】
<形成凹部63>
第2成形面61において、複数の突起23を成形する部分には、それぞれ凹部(以下、形成凹部63)が設けられている。形成凹部63の内形は、突起23の外形と同一の形状になっている。ここで、形成凹部63の第2成形面61における開口部分と同形成凹部63の底部とを結ぶ方向を、形成凹部63の深さ方向というものとする。形成凹部63は、同形成凹部63の深さ方向から見て長手方向DL2と短手方向DS2とを有する略長方形状をなしている。すなわち、深さ方向と直交する方向における形成凹部63の断面形状は略長方形状をなしている。
【0026】
本実施形態では、上述した配置(図4参照)で複数の突起23がベース部20と一体成形されるように、ベース部20に対する複数の突起23の配置と同一の配置で、第2成形面61に対して複数の形成凹部63は配置されている。
【0027】
具体的には、図1に示すように、第2成形面61に、複数の正六角形(以下、仮想六角形71)により構成される正六角形格子をなす仮想線(以下、第2仮想格子70)が設定される。なお図1には、複数の仮想六角形71のうちの1つのみを示している。形成凹部63は、仮想六角形71の辺(以下、仮想辺72)にあたる位置に設けられる。詳しくは、1つの仮想六角形71に対して、6つの仮想辺72に1つずつ、合計6つの形成凹部63が設けられる。各形成凹部63は、第2成形面61における開口部分が上記仮想六角形71の仮想辺72の上に位置するように設けられている。
【0028】
形成凹部63の深さ方向は、第2成形面61における上記ベース部20の第2面22を成形する部分62の法線L2に対して傾斜している。詳しくは、複数の形成凹部63の深さ方向は、いずれも上記法線L2に対して上記仮想六角形71の中心に向けて傾斜している。
【0029】
また各形成凹部63の深さ方向は、いずれも上記法線L2に対して所定角度αだけ傾斜している。さらに、同一の仮想六角形71において対向する2つの仮想辺72に設けられる形成凹部63は、同一方向に傾斜した状態で凹んでいる。また、隣合う上記仮想辺72に設けられる形成凹部63は、互いに異なる方向に傾斜した状態で凹んでいる。
【0030】
<連通溝64>
図1および図6に示すように、第2成形面61において、複数のリブ24(図4参照)に対応する位置には、それぞれ溝(以下、連通溝64)が設けられている。
【0031】
具体的には、連通溝64は、長手方向DL2において直線状に並ぶように配置される複数の形成凹部63のうち、隣合う2つの形成凹部63を繋ぐように延びている。図1に示すように、長手方向DL2において直線状に並ぶように配置される複数の形成凹部63は、同一方向に傾斜した状態で凹んでいる。形成凹部63は、同一方向に傾斜した状態で凹む形成凹部63同士を繋ぐように延びている。
【0032】
連通溝64は、一定の幅および一定の深さで長手方向DL2に延びている。図6に示すように、連通溝64の深さと形成凹部63の深さとは同一になっている。図1に示すように、連通溝64は、形成凹部63の内面における同形成凹部63の短手方向DS2に延びる部分、すなわち同形成凹部63を深さ方向から見た形状である略長方形状の短辺にあたる部分に接続されている。
【0033】
連通溝64の短手方向DS2における長さ、すなわち連通溝64の幅は、形成凹部63の短手方向DS2における長さ、すなわち形成凹部63の幅よりも小さくなっている。なお本実施形態では、前記リブ24の短手方向DS1および連通溝64の短手方向DS2が、前記ベース部20の厚さ方向と前記隣合う2つの形成凹部63の並び方向との双方に直交する方向である幅方向に相当する。連通溝64の幅は、発明者等による各種の実験やシミュレーションの結果をもとに、次のように定められている。すなわち連通溝64の幅としては、連通溝64に空気がスムーズに流入するようになる寸法の幅であって、且つ、同連通溝64に溶融樹脂Rが流入し難くなる寸法の幅が設定されている。
【0034】
ここで、連通溝64の第2成形面61における開口部分と同連通溝64の底部とを結ぶ方向を、連通溝64の深さ方向というものとする。本実施形態では、連通溝64の深さ方向としては、接続対象の形成凹部63の深さ方向と同一の方向が定められている。第2型60の第2成形面61は、深さ方向の異なる三種類の形成凹部63を有している。本実施形態では、三種類の形成凹部63のそれぞれに対して、形成凹部63の深さ方向と連通溝64の深さ方向とが同一の方向になるように同連通溝64が設けられている。詳しくは、図1における右上がりの斜め方向に延びる連通溝64と、同図1における右下がりの斜め方向に延びる連通溝64と、同図1における左右方向に延びる連通溝64とが設けられる。
【0035】
<作用>
以下、本実施形態の金型40による作用を説明する。
図5に示すように、中間部材13の成形に際しては、先ず、型締め工程が実行される。型締め工程では、図示しない駆動装置の作動制御を通じて、金型40の型締めが実行される。これにより、第1型50と第2型60との間に、第1成形面51と第2成形面61とによってキャビティが形成される。このキャビティは、中間部材13に対応する形状をなしている。
【0036】
その後、成形工程が実行される。成形工程では、図示しない射出装置の作動制御を通じて、溶融樹脂Rが金型40のキャビティに射出される。金型40への溶融樹脂Rの射出は、第1型50に設けられた通路を介して行われる。これにより、キャビティ内に中間部材13が成形される。
【0037】
成形工程における金型40内部での溶融樹脂Rの流れについて、図7および図8を参照して説明する。
図7に示すように、溶融樹脂R(同図7中にドットハッチングで示す)は、金型40内におけるベース部20を成形する部分、詳しくは第1成形面51の凹部52と第2成形面61の部分62との間に挟まれた部分に流入する。そして、図7中に矢印Aで示すように、溶融樹脂Rはベース部20を成形する部分の全体に広がる。このようにして広がる溶融樹脂Rが形成凹部63に差し掛かると、図7中に矢印Bで示すように、溶融樹脂Rは形成凹部63に流入する。そして、形成凹部63への溶融樹脂Rの流入に伴って、同形成凹部63の底に空気が押し込まれるようになる。
【0038】
本実施形態では、第2型60の第2成形面61に、2つの形成凹部63を連通する連通溝64が設けられている。そのため、図7中に矢印Cで示すように、形成凹部63への溶融樹脂Rの流入に伴って同形成凹部63の底に押し込まれる空気は、形成凹部63の外部、詳しくは連通溝64に排出されるようになる。このように本実施形態によれば、連通溝64を、形成凹部63内の空気を外部に逃がすための空気逃がし溝として機能させることができる。そして、これにより形成凹部63の内部に空気が溜まり難くなっている。
【0039】
また本実施形態では、形成凹部63の深さと連通溝64の深さとが同一になっている。そのため、形成凹部63の底と連通溝64の底との境界には段差が形成されていない。これにより、形成凹部63への溶融樹脂Rの流入に伴って同形成凹部63の底に押し込まれる空気は、同形成凹部63に連通された連通溝64にスムーズに排出されるようになる。したがって、形成凹部63の底に空気が溜まり難くなっている。
【0040】
さらに本実施形態では、連通溝64は形成凹部63の長手方向DL2に延びるとともに、同形成凹部63の内面における短手方向DS2に延びる部分に連通されている。
そのため、形成凹部63の内面における長手方向DL2に延びる部分に連通溝64が連通される場合と比較して、空気や溶融樹脂Rが形成凹部63の内部において長手方向DL2に、すなわち連通溝64に向かうように流れ易くなる。これにより、形成凹部63から連通溝64に空気が流入し易くなるため、同形成凹部63に空気が溜まり難くなる。
【0041】
本実施形態によれば、このようにして形成凹部63の底に空気が溜まり難くなっているため、図8に一例を示すように、形成凹部63の底まで溶融樹脂Rが流入するようになる。本実施形態によれば、このようにしてショートショットの発生が抑えられる。
【0042】
また本実施形態では、図1に示すように、連通溝64の幅が突起23の幅よりも小さくなっている。このようにして連通溝64の幅を小さくすることで、連通溝64への空気の流入を許容しながら、同連通溝64への溶融樹脂Rの流入を制限して抑えることができる。
【0043】
なお成形工程においては、図8に一例を示すように、連通溝64に対して、空気とともに若干量の溶融樹脂Rが流入する。そして、連通溝64に流入した溶融樹脂Rがリブ24を構成するようになる。ここで、連通溝64に流入する溶融樹脂Rの量は、各連通溝64において同一にはならない。そのため、複数のリブ24の形状は一定にならず、場合によっては2つの突起23の間で途切れた形状になる。図3および図4には、そうしたリブ24の形状の一例を示している。
【0044】
成形工程の後には、型開き工程が実行される。型開き工程では、駆動装置の作動制御を通じて、金型40の型開きが実行される。そして、型開き状態の金型40の内部から中間部材13が取り出される。
【0045】
<本実施形態の作用および効果>
本実施形態の作用および効果について説明する。
(1)金型40は、第1成形面51を有する第1型50と第2成形面61を有する第2型60とを備える。金型40は、第1成形面51と第2成形面61との間で、ベース部20と同ベース部20の第2面22から突出する複数の突起23とを有する中間部材13を成形する。第2成形面61は、複数の突起23を成形するための複数の形成凹部63と、2つの形成凹部63を連通するように形成凹部63の幅よりも小さい幅で延びる連通溝64とを備える。
【0046】
上記構成によれば、形成凹部63への溶融樹脂Rの流入に伴って同形成凹部63の底に押し込まれる空気を、連通溝64に排出することができる。これにより、形成凹部63の内部に空気が溜まり難くなるため、ショートショットの発生を抑えることができる。しかも、連通溝64の幅を小さくすることで、連通溝64への空気の流入を許容しながら、同連通溝64への溶融樹脂Rの流入を制限して抑えることができる。
【0047】
(2)形成凹部63の深さと連通溝64の深さとが同一になっている。そのため、形成凹部63への溶融樹脂Rの流入に伴って同形成凹部63の底に押し込まれる空気を連通溝64にスムーズに排出することができる。これにより、形成凹部63の底に空気が溜まり難くなるため、ショートショットの発生を好適に抑えることができる。
【0048】
(3)連通溝64は形成凹部63の長手方向DL2に延びるとともに、同形成凹部63の内面における短手方向DS2に延びる部分に連通されている。これにより、形成凹部63から連通溝64に空気が流入し易くなるため、同形成凹部63に空気が溜まり難くなる。したがって、ショートショットの発生を好適に抑えることができる。
【0049】
<変更例>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0050】
・連通溝64を、一定の幅を有する形状にすることに限らず、同連通溝64の底に向かうほど幅狭になる形状にしてもよい。
図9に一例を示すように、連通溝84の深さを形成凹部83の深さよりも小さくしてもよい。この場合にも、形成凹部83への溶融樹脂Rの流入に伴って同形成凹部83の底に押し込まれる空気を、連通溝84に排出することができる。
【0051】
・連通溝64の各部の深さを一定にすることに限らず、長手方向DL2の中間部分における連通溝64の深さが長手方向DL2の両端部分における連通溝64の深さよりも小さくなるように、同連通溝64の各部の深さを設定してもよい。
【0052】
この場合には、例えば連通溝64を溶融樹脂Rが満たすことが無いように同連通溝64の形状を定めるなど、連通溝64に流入した溶融樹脂Rによって形成凹部63から連通溝64への空気の流入が妨げられることのないように同連通溝64の形状を定めればよい。
【0053】
この場合、形成凹部63に空気が溜まり難くするうえでは、形成凹部63と連通溝64とが接続される接続部分においては、形成凹部63の深さと連通溝64の深さとが同一になっていることが好ましい。
【0054】
図10に一例を示すように、形成凹部93の深さ方向と連通溝94の深さ方向とを、前記法線L2(図2参照)が延びる方向としてもよい。この場合、金型40によって成形される中間部材13は、突起23の突出方向とリブ24の突出方向とが第2面22の法線L1が延びる方向に一致するものになる。
【0055】
図11に一例を示すように、形成凹部103の深さ方向と連通溝104の深さ方向とを、異なる方向に設定してもよい。この場合にも、形成凹部103への溶融樹脂Rの流入に伴って同形成凹部103の底に押し込まれる空気を、連通溝104に排出することができる。
【0056】
この場合、金型40によって成形される中間部材13では、突起23の突出方向とリブ24の突出方向とが異なる方向に設定される。そのため、突起23の突出方向とリブ24の突出方向とが同一のものと比較して、突起23の突出方向とリブ24の突出方向との関係を高い自由度で設定することができる。これにより、中間部材13の突起23の撓み易さ、ひいては同中間部材13を有する内装部品10の触感を高い自由度で設定することができるようになる。
【0057】
・形成凹部63の深さ方向を、第2成形面61に設定される第2仮想格子70における仮想六角形71の中心に向けて傾斜させることの他、同中心から若干ずれた位置に向けて傾斜させるようにしてもよい。この場合、金型40によって成形される中間部材13は、突起23の突出方向が仮想六角形31の中心から若干ずれた位置に向けて傾斜するものになる。
【0058】
・突起23の外形および形成凹部63の内形は、四角錐形状にすることに限らず、楕円錐形状にしたり円柱形状にしたりするなど、任意に変更することができる。
・第1型50の第1成形面51をベース部20における第2面22以外の部分を成形する成形面とするとともに、第2型60の第2成形面61をベース部20の第2面22、突起23、およびリブ24を成形する成形面としてもよい。第1型50の第1成形面51をベース部20の第1面21を成形する成形面とするとともに、第2型60の第2成形面61をベース部20における第1面21以外の部分、突起23、およびリブ24を成形する成形面とすることなども可能である。
【0059】
・第1型50の第1成形面51を、ベース部20の第1面21に皮革模様や幾何学模様などのいわゆるシボを成形する成形面としてもよい。この場合には、第1成形面51の表面形状を、ベース部20の第1面21の表面形状、すなわち上記シボを構成する凹凸形状と同一の形状にすればよい。上記構成によれば、ベース部20における第1面21側の部分を、基材11を覆う表皮材として機能させることができる。この場合には、表皮材12を省略することが可能になる。
【0060】
・第1仮想格子30および第2仮想格子70の多角形格子としては、正六角形格子を採用することの他、正方形格子や正三角形格子を採用することができる。
第1仮想格子30および第2仮想格子70を正方形格子とする場合には、例えば以下のように第2成形面61を構成すればよい。
【0061】
図12に示す例では、第2型110の第2成形面111には、正方形格子をなす仮想線(以下、第3仮想格子115)が設定される。そして、形成凹部113は、第3仮想格子115において正方形格子を構成する正方形(以下、仮想正方形116)の各辺にあたる位置に設けられる。また連通溝114は、第3仮想格子115と同一の正方形格子をなすように延設される。なお、図12には、複数の仮想正方形116のうちの1つのみを示している。
【0062】
第1仮想格子30および第2仮想格子70を正三角形格子とする場合には、例えば以下のように第2成形面61を構成すればよい。
図13に示す例では、第2型120の第2成形面121には、正三角形格子をなす仮想線(以下、第4仮想格子125)が設定される。そして、形成凹部123は、第4仮想格子125において正三角形格子を構成する三角形(以下、仮想三角形126)の各辺にあたる位置に設けられる。また連通溝124は、第4仮想格子125と同一の正三角形格子をなすように延設される。なお、図13には、複数の仮想三角形126のうちの1つのみを示している。
【0063】
・上記実施形態にかかる金型40は、射出成形機用の金型に適用することの他、ロール成形用の金型などの任意の金型に適用することができる。
上記実施形態にかかる金型40をロール成形用の金型に適用した場合における金型の一例を図14に示す。図14に示すように、金型130は、第1型としての第1加工ロール131、第2型としての第2加工ロール132、および供給部133を有する。各加工ロール131,132は円柱形状をなしている。加工ロール131,132は外周面同士が対向配置される。加工ロール131,132は、各々の中心軸を回転中心に、互いに反対方向に回転駆動される。
【0064】
第1加工ロール131の外周面は、中間部材13(図2参照)におけるベース部20側の部分を成形するための第1成形面を構成する。第1加工ロール131の外周面には、図示しない凹部が設けられている。この凹部により、上記ベース部20における第1面21側の部分が成形されるようになっている。
【0065】
第2加工ロール132の外周面は、中間部材13(図2参照)における突起23側の部分、具体的にはベース部20における第2面22側の部分、複数の突起23、および複数のリブ24を成形するための第2成形面を構成する。第2加工ロール132の外周面には、形成凹部1321および図示しない連通溝が設けられている。そして、この形成凹部1321によって突起23が成形されるとともに、連通溝によってリブ24が成形されるようになっている。
【0066】
供給部133は、第1加工ロール131の外周面と第2加工ロール132の外周面との間に、溶融樹脂Rを送り込むものである。
金型130によって中間部材13を成形する際には、加工ロール131,132を回転駆動した状態で、供給部133から加工ロール131,132の間に溶融樹脂Rが送り込まれる。これにより、突起23およびリブ24を有する中間部材13が押出成形される。
【0067】
上記金型130によれば、上記実施形態と同様に、金型130を用いて中間部材13を成形する際に、ショートショットの発生を抑えることができる。
・上記実施形態にかかる金型は、第1成形面と第2成形面との間で、板状のベース部の両面に突起およびリブが設けられる中間部材を成形する金型にも適用可能である。この場合には、第1成形面と第2成形面との両方に、形成凹部および連通溝を設ければよい。
【0068】
・表皮材12の材料を、エラストマーなどの軟質ポリ塩化ビニル以外の軟質樹脂材料や、織布などに変更することができる。
・中間部材13の材料を、ポリエステル系のエラストマーや、オレフィン系のエラストマー、ポリスチレン系のエラストマーなどの軟質ポリ塩化ビニル以外の軟質樹脂材料に変更することもできる。
【0069】
・上記実施形態にかかる金型は、重ね合わせ複合部品であるドアトリムの中間部材を成形する金型に限らず、車両のインストルメントパネルやグローブボックスなどの他の重ね合わせ複合部品の中間部材を成形する金型にも適用することができる。また、重ね合わせ複合部品の中間部材を成形する金型に適用することに限らず、車両用以外のパネル部品の中間部材を成形する金型などにも、上記実施形態にかかる金型は適用可能である。
【0070】
<付記>
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
[付記1]第1成形面を有する第1型と、前記第1成形面に対向する第2成形面を有する第2型と、を備え、前記第1成形面と前記第2成形面との間で、板状のベース部と前記ベース部から突出する複数の突起とを有する樹脂成形品を成形する金型であって、前記第1成形面および前記第2成形面の少なくとも一方は、前記複数の突起を成形するための複数の形成凹部と、隣合う2つの前記形成凹部を連通するように延びる連通溝と、を備え、前記ベース部の厚さ方向と前記隣合う2つの前記形成凹部の並び方向との双方に直交する方向を幅方向とするとき、前記連通溝の前記幅方向における長さは、前記形成凹部の前記幅方向における長さよりも小さい、金型。
【0071】
[付記2]前記形成凹部と前記連通溝とが接続される接続部分においては、前記形成凹部の深さと前記連通溝の深さとが同一になっている、[付記1]に記載の金型。
[付記3]前記形成凹部は、同形成凹部の深さ方向から見て長手方向と短手方向とを有する形状をなしており、前記連通溝は、前記長手方向に延びるとともに、前記形成凹部の内面における前記短手方向に延びる部分に接続されている、[付記1]または[付記2]に記載の金型。
【0072】
[付記4]前記形成凹部の深さ方向と前記連通溝の深さ方向とは異なる方向に設定されている、[付記1]~[付記3]のいずれか一つに記載の金型。
【符号の説明】
【0073】
10…内装部品
11…基材
12…表皮材
13…中間部材
20…ベース部
21…第1面
22…第2面
23…突起
24…リブ
30…第1仮想格子
31…仮想六角形
32…仮想辺
40,130…金型
50…第1型
51…第1成形面
52…凹部
60,110,120…第2型
61,111,121…第2成形面
62…部分
63,83,93,103,113,123,1321…形成凹部
64,84,94,104,114,124…連通溝
70…第2仮想格子
71…仮想六角形
72…仮想辺
115…第3仮想格子
116…仮想正方形
125…第4仮想格子
126…仮想三角形
131…第1加工ロール
132…第2加工ロール
133…供給部
【要約】
【課題】ショートショットの発生を抑えることのできる金型を提供する。
【解決手段】金型40は、第1成形面を有する第1型と、第1成形面に対向する第2成形面61を有する第2型60と、を備える。金型40は、第1成形面と第2成形面61との間で、板状のベース部と同ベース部から突出する複数の突起とを有する中間部材を成形する。第2成形面61は、複数の突起を成形するための複数の形成凹部63と、隣合う2つの形成凹部63を連通するように延びる連通溝64とを備える。ベース部の厚さ方向と前記隣合う2つの形成凹部63の並び方向との双方に直交する方向を幅方向とするとき、連通溝64の幅方向における長さは、形成凹部63の幅方向における長さよりも小さい。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14