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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】水電解システム
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20210101AFI20240820BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20240820BHJP
   C25B 15/023 20210101ALI20240820BHJP
   C25B 15/027 20210101ALI20240820BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B15/023
C25B15/027
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024015572
(22)【出願日】2024-02-05
【審査請求日】2024-02-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂野 亮太
【審査官】隅川 佳星
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-173788(JP,A)
【文献】特表2020-518724(JP,A)
【文献】特開2021-063244(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0068975(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2023/0287584(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03647468(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第04108808(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第116497399(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00 - 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水電解セルスタックと、
前記水電解セルスタックと接続され、前記水電解セルスタックから排出された水を気体から分離する水分離器と、
水循環ポンプが設けられ、前記水分離器で分離された水を循環させる水循環路と、
前記水循環路と別経路とされて水供給ポンプが設けられ、前記水電解セルスタックへ水を供給する水供給路と、
前記水循環路に設けられたイオン交換樹脂と、
前記水循環路の前記イオン交換樹脂よりも上流側に設けられ、前記水供給路から前記水電解セルスタックへ供給される水の温度に基づいて、前記水循環路の水を冷却する熱交換器と、
を備え、
前記水供給ポンプで前記水電解セルスタックへ供給する水の流量を一定とし、前記イオン交換樹脂へ供給される水の温度がイオン交換樹脂適温となるように前記水循環ポンプで前記水循環路を循環させる水の流量を制御する、
水電解システム。
【請求項2】
水電解セルスタックと、
前記水電解セルスタックと接続され、前記水電解セルスタックから排出された水を気体から分離する水分離器と、
水循環ポンプが設けられ、前記水分離器で分離された水を循環させる水循環路と、
前記水循環路と別経路とされて水供給ポンプが設けられ、前記水電解セルスタックへ水を供給する水供給路と、
前記水循環路に設けられたイオン交換樹脂と、
前記水循環路の前記イオン交換樹脂よりも上流側に設けられ、前記水供給路から前記水電解セルスタックへ供給される水の温度に基づいて、前記水循環路の水を冷却する熱交換器と、
を備え、
前記水電解セルスタックで生成される水素の流量に応じて前記水供給ポンプで前記水電解セルスタックへ供給する水の流量を制御し、前記イオン交換樹脂へ供給される水の温度がイオン交換樹脂適温となるように前記水循環ポンプで前記水循環路を循環させる水の流量を制御する、
水電解システム。
【請求項3】
水電解セルスタックと、
前記水電解セルスタックと接続され、前記水電解セルスタックから排出された水を気体から分離する水分離器と、
水循環ポンプが設けられ、前記水分離器で分離された水を循環させる水循環路と、
前記水循環路と別経路とされて水供給ポンプが設けられ、前記水電解セルスタックへ水を供給する水供給路と、
前記水循環路に設けられたイオン交換樹脂と、
前記水循環路の前記イオン交換樹脂よりも上流側に設けられ、前記水供給路から前記水電解セルスタックへ供給される水の温度に基づいて、前記水循環路の水を冷却する熱交換器と、
を備え、
前記水電解セルスタックへ供給される水の温度と前記水電解セルスタックから排出された水の温度差に応じて前記水供給ポンプで前記水電解セルスタックへ供給する水の流量を制御し、前記イオン交換樹脂へ供給される水の温度がイオン交換樹脂適温となるように前記水循環ポンプで前記水循環路を循環させる水の流量を制御する、
水電解システム。
【請求項4】
水電解セルスタックと、
前記水電解セルスタックと接続され、前記水電解セルスタックから排出された水を気体から分離する水分離器と、
水循環ポンプが設けられ、前記水分離器で分離された水を循環させる水循環路と、
前記水循環路と別経路とされて水供給ポンプが設けられ、前記水電解セルスタックへ水を供給する水供給路と、
前記水循環路に設けられたイオン交換樹脂と、
前記水循環路の前記イオン交換樹脂よりも上流側に設けられ、前記水供給路から前記水電解セルスタックへ供給される水の温度に基づいて、前記水循環路の水を冷却する熱交換器と、
を備え、
前記水電解セルスタックへ供給される水の温度と前記水電解セルスタックから排出された水の温度差に応じて前記水供給ポンプで前記水電解セルスタックへ供給する水の流量を制御し、前記水循環路を循環する流量と前記水供給路における流量との比が一定になるように前記水循環ポンプで前記水循環路を循環させる水の流量を制御する、
水電解システム。
【請求項5】
水電解セルスタックと、
前記水電解セルスタックと接続され、前記水電解セルスタックから排出された水を気体から分離する水分離器と、
水循環ポンプが設けられ、前記水分離器で分離された水を循環させる水循環路と、
前記水循環路と別経路とされて水供給ポンプが設けられ、前記水電解セルスタックへ水を供給する水供給路と、
前記水循環路に設けられたイオン交換樹脂と、
前記水循環路の前記イオン交換樹脂よりも上流側に設けられ、前記水供給路から前記水電解セルスタックへ供給される水の温度に基づいて、前記水循環路の水を冷却する熱交換器と、
を備え、
前記水循環路を循環する流量と前記水供給路における流量との比が一定になるように前記水供給ポンプで前記水電解セルスタックへ供給する水の流量を制御し、前記イオン交換樹脂へ供給される水の温度がイオン交換樹脂適温となるように前記水循環路を循環する水の流量を制御する、
水電解システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を電気分解して水素と酸素を発生させる水電解システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体高分子電解質膜を使用した水電解セルスタックで水を水素と酸素に電気分解する水分解システムが提案されている。当該水分解システムでは、水電解セルスタックから排出される水を循環させて利用する場合、純度の高い水を維持するために、イオン交換樹脂を用いて循環水中のイオンが除去される。
【0003】
一般的に、イオン交換樹脂を効率的に機能させる温度は、水電解セルスタックの効率的な作動温度よりも低く、水温について工夫が求められる。例えば、特許文献1では、常温の純水を供給して一部の循環水を排出することにより、イオン交換樹脂を用いることなく循環水の純度を維持している。
【0004】
しかしながら、循環水を一部排出するため、無駄が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許4347972号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事実を考慮してなされたものであり、循環水を無駄にすることなく、効率よく水電解セルスタックを作動させることが可能な水電解システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様の水電解システムは、水電解セルスタックと、前記水電解セルスタックと接続され、前記水電解セルスタックから排出された水を気体から分離する水分離器と、水循環ポンプが設けられ、前記水分離器で分離された水を循環させる水循環路と、前記水循環路と別経路とされて水供給ポンプが設けられ、前記水電解セルスタックへ水を供給する水供給路と、前記水循環路に設けられたイオン交換樹脂と、前記水循環路の前記イオン交換樹脂よりも上流側に設けられ、前記水供給路から前記水電解セルスタックへ供給される水の温度に基づいて、前記水循環路の水を冷却する熱交換器と、を備えている。
【0008】
第1の態様の水電解システムでは、水分離器により水電解セルスタックから排出された水を気体から分離する。水分離器で分離された水を循環させる水循環路と、水電解セルスタックへ水を供給する水供給路とは別経路とされ、水循環路にイオン交換樹脂が設けられている。そして、水循環路のイオン交換樹脂よりも上流側に熱交換器が設けられ、熱交換器により、水供給路から水電解セルスタックへ供給される水の温度に基づいて、水循環路の水が冷却される。このように、水電解セルスタックへ水を供給する水供給路とイオン交換樹脂が設けられた水循環路を別経路とし、熱交換器により水循環路の水を冷却することにより、水供給路と水循環路の水温を異ならせることができる。そして、水供給路から水電解セルスタックへ供給される水の温度に基づいて、水循環路の水を冷却することにより、水電解セルスタックを効率的に作動させる水温に調整することができると共に、イオン交換樹脂へ供給される水を冷却することができる。これにより、循環水を排出せずにイオン交換を行いつつ、効率よく水電解セルスタックを作動させることができる。
【0009】
第2の態様の水電解システムは、前記水供給ポンプで前記水電解セルスタックへ供給する水の流量を一定とし、前記イオン交換樹脂へ供給される水の温度がイオン交換樹脂適温となるように前記水循環ポンプで前記水循環路を循環させる水の流量を制御する。
【0010】
第2の態様の水電解システムによれば、水供給ポンプを一定流量となるように作動させ、水循環ポンプをイオン交換樹脂へ供給される水の温度がイオン交換樹脂適温となるように流量制御することにより、簡易な制御で水電解セルスタックへ安定して水の供給を行うことができる。
【0011】
第3の態様の水電解システムは、前記水電解セルスタックで生成される水素の流量に応じて前記水供給ポンプで前記水電解セルスタックへ供給する水の流量を制御し、前記イオン交換樹脂へ供給される水の温度がイオン交換樹脂適温となるように前記水循環ポンプで前記水循環路を循環させる水の流量を制御する。
【0012】
第3の態様の水電解システムによれば、水供給ポンプを水電解セルスタックで生成される水素の流量に応じて流量制御し、水循環ポンプをイオン交換樹脂へ供給される水の温度がイオン交換樹脂適温となるように流量制御することにより、簡易な制御でイオン交換樹脂を効率的に機能させることができる。
【0013】
第4の態様の水電解システムは、前記水電解セルスタックへ供給される水の温度と前記水電解セルスタックから排出された水の温度差に応じて前記水供給ポンプで前記水電解セルスタックへ供給する水の流量を制御し、前記イオン交換樹脂へ供給される水の温度がイオン交換樹脂適温となるように前記水循環ポンプで前記水循環路を循環させる水の流量を制御する。
【0014】
第4の態様の水電解システムによれば、水供給ポンプを水電解セルスタックへ供給される水の温度と水電解セルスタックから排出された水の温度差に応じて流量制御し、水循環ポンプをイオン交換樹脂へ供給される水の温度がイオン交換樹脂適温となるように流量制御することにより、簡易な制御でイオン交換樹脂を効率的に機能させることができる。
【0015】
第5の態様の水電解システムは、前記水電解セルスタックへ供給される水の温度と前記水電解セルスタックから排出された水の温度差に応じて前記水供給ポンプで前記水電解セルスタックへ供給する水の流量を制御し、前記水循環路を循環する流量と前記水供給路における流量との比が一定になるように前記水循環ポンプで前記水循環路を循環させる水の流量を制御する。
【0016】
第5の態様の水電解システムによれば、水供給ポンプを水電解セルスタックへ供給される水の温度と水電解セルスタックから排出された水の温度差に応じて流量制御し、水循環ポンプを水循環路を循環する流量と水供給路における流量との比が一定になるように流量制御する。これにより、水電解セルスタックへ安定して水を供給することができる。
【0017】
第6の態様の水電解システムは、前記水循環路を循環する流量と前記水供給路における流量との比が一定になるように前記水供給ポンプで前記水電解セルスタックへ供給する水の流量を制御し、前記イオン交換樹脂へ供給される水の温度がイオン交換樹脂適温となるように前記水循環路を循環する水の流量を制御する。
【0018】
第6の態様の水電解システムによれば、水供給ポンプを水循環路を循環する流量と水供給路における流量との比が一定になるように流量制御し、水循環ポンプをイオン交換樹脂へ供給される水の温度がイオン交換樹脂適温となるように流量制御する。これにより、水電解セルスタックへ安定して水を供給することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る水電解システムによれば、循環水を無駄にすることなく、効率よく水電解セルスタックを作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態に係る水電解システムの構成を模式的に示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係る水電解システムの制御部との接続を示すブロック図である。
図3】第2実施形態に係る水電解システムの構成を模式的に示すブロック図である。
図4】第2実施形態に係る水電解システムの制御部との接続を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。
【0022】
[第1実施形態]
図1には、本発明の第1実施形態に係る水電解システム10Aが示されている。水電解システム10Aは、水電解セルスタック12、水分離器14、イオン交換樹脂16、及び熱交換器24を備えている。なお、図1、3における点線は、実際の接続関係と異なる機能的な関係を示す場合を含んでいる。
【0023】
水電解セルスタック12は、電解質膜を挟んでアノードとカソードを形成する水電解セルを積層して形成されている。水電解セルスタック12では、通電により、アノードに供給された水が電気分解され、アノードに酸素が発生し、カソードに水素が発生する。水電解セルスタック12は、DC電源装置DCを介して制御部40と接続されており、制御部40により通電量が制御され、水電解量が制御されている。水電解セルスタック12のアノード側入口には、水供給路32の一端が接続され、水供給路32から水が供給される。水電解セルスタック12のカソード側出口には、水素送出路12Aが接続されており、水素送出路12Aから水素が送出される。水電解セルスタック12のアノード側出口には、水酸素送出路12Bの一端が接続されており、水酸素送出路12Bから酸素と水が送出される。水酸素送出路12Bの他端は、水分離器14に接続されている。
【0024】
水分離器14は、水酸素送出路12Bからの酸素と水を分離すると共に、分離された水を貯留する。水分離器14には、酸素送出路14Aが接続されており、酸素送出路14Aから酸素が送出される。水分離器14には、水供給路32の他端が接続されており、水供給路32には、水供給ポンプ38が設けられている。水供給ポンプ38により、水分離器14から水電解セルスタック12へ水が供給される。水供給ポンプ38は、制御部40と接続され、制御部40により出力が制御されている。本実施形態では、水供給ポンプ38は一定流量を流すように設定されている。以下、水供給ポンプ38で送出する水の流量を「水供給流量F2」と称する。
【0025】
水分離器14には、純水供給路22を介して純水供給装置20が接続されている。純水供給路22には調整バルブ21が設けられている。水分離器14には水位計23が設けられており、水位計23により検知された水位が所定以下となった場合に、調整バルブ21が開放され、純水供給装置20から水分離器14へ純水が供給される。
【0026】
水分離器14には、水循環路30の一端及び他端が接続されており、水循環路30には、水循環ポンプ36が設けられている。水循環ポンプ36により、水分離器14から水が送出され、後述する熱交換器24、イオン交換樹脂16を経て、水分離器14へ水が戻される。以下、水循環ポンプ36で循環させる水の流量を「水循環流量F1」と称する。水循環ポンプ36は、制御部40と接続され、制御部40により出力が制御されている。
【0027】
なお、水循環路30の他端(下流端)は、後述する水供給路32の水供給ポンプ38よりも上流側に接続してもよい。
【0028】
水循環路30の水循環ポンプ36よりも下流側には、イオン交換樹脂16が設けられている。イオン交換樹脂16は、水をイオン交換処理して循環水中の不純物を除去し、電気抵抗率を理論純水の電気抵抗率に近い値に維持する。
【0029】
水循環路30のイオン交換樹脂16よりも上流側、且つ、水循環ポンプ36よりも下流側には、熱交換器24が設けられている。熱交換器24は、内部に供給される熱媒体により水循環路30を流れる水を冷却する。熱交換器24内へ供給される熱媒体の流量は、流量調整弁26により調整される。
【0030】
なお、熱交換器24としては、冷却水を用いる場合だけでなく、ラジエーターのように空気を用いて冷却してもよい。この場合には、ファンの回転数を変えることにより、冷却度を調整することができる。
【0031】
水供給路32の水供給ポンプ38よりも下流側には、スタック温度センサ32Tが設けられている。スタック温度センサ32Tは、水電解セルスタック12へ供給される直前の水供給路32を流れる水の温度を検知する。スタック温度センサ32Tは、流量調整弁26と接続されている。流量調整弁26は、スタック温度センサ32Tで検知された温度に基づいて、熱交換器24へ供給する熱媒体の流量を制御する。
【0032】
なお、水電解セルスタック12へ供給される水の温度は、水電解セルスタック12から排出される水の温度から推定することもできる。
【0033】
具体的には、熱交換器24内へ供給される熱媒体の流量は、スタック温度センサ32Tで検知される温度を常時フィードバックし、水電解セルスタック12へ供給される水の温度が水電解適温T2となるように設定されている。水電解適温T2は、水電解セルスタック12の効率的な作動温度(水電解時におけるエネルギー効率を高める温度)として設定されており、70℃~100℃の範囲で設定される。スタック温度センサ32Tで検知された温度が水電解適温T2よりも高ければ、流量調整弁26の開度を上げて熱交換器24での熱交換量を増やして循環水をより冷却する。スタック温度センサ32Tで検知された温度が水電解適温T2よりも低ければ、流量調整弁26の開度を下げて熱交換器24での熱交換量を減じて循環水の冷却度を制限する。
【0034】
水循環路30のイオン交換樹脂16よりも上流側、且つ熱交換器24よりも下流側には、イオン交換温度センサ30Tが設けられている。イオン交換温度センサ30Tは、イオン交換樹脂16へ供給される直前の水循環路30を流れる水の温度を検知する。イオン交換温度センサ30Tは、水循環ポンプ36と接続されている。水循環ポンプ36は、制御部40からの指示と共に、イオン交換温度センサ30Tで検知された温度に基づいて、水循環ポンプ36の出力が制御され、水循環路30を循環する水の流量(水循環流量F1)を制御する。
【0035】
なお、イオン交換樹脂16へ供給される水の温度は、イオン交換樹脂16の下流側での水の温度から推定することもできる。
【0036】
具体的には、イオン交換樹脂16へ供給される水の温度が、イオン交換樹脂16での適温であるイオン交換樹脂適温T1となるように、水循環流量F1を調整する。イオン交換樹脂適温T1は、イオン交換樹脂16を効率的に機能させる温度(イオン交換を促進できる温度)として設定されており、40℃~70℃の範囲で設定される。イオン交換温度センサ30Tで検知された温度がイオン交換樹脂適温T1よりも高ければ、水循環ポンプ36の出力を下げて、循環水が熱交換器24内を通過する時間を長くし、熱交換器24で循環水をより冷却して送出させる。イオン交換温度センサ30Tで検知された温度がイオン交換樹脂適温T1よりも低ければ、水循環ポンプ36の出力を上げて、循環水が熱交換器24内を通過する時間を短くし、熱交換器24での循環水の冷却度を制限して送出させる。
【0037】
イオン交換樹脂適温T1は、水電解適温T2よりも低温とされており、水循環ポンプ36で水循環路30を循環させる水の流量(水循環流量F1)は、水供給ポンプ38で水電解セルスタック12へ供給する水の流量(水供給流量F2)よりも少なく設定されている。一例として、水電解セルスタック12へ供給される水の電気抵抗率を、許容範囲内である7MΩ・cm以上とする場合、水電解適温T2を70℃~80℃に設定し、イオン交換樹脂適温T1を50℃~60℃程度に設定すると、水循環流量F1は、水供給流量F2の10%~20%に設定することができる。
【0038】
制御部40は、図2に示されるように、DC電源装置DC、調整バルブ21、水位計23、流量調整弁26、イオン交換温度センサ30T、スタック温度センサ32T、水循環ポンプ36、水供給ポンプ38と接続されている。制御部40は、DC電源装置DCを介して水電解セルスタック12と接続されている。制御部40は、CPU(Central Processing Unit)41と、ROM(Read Only Memory)42と、RAM(Random Access Memory)43と、入出力インターフェース(I/O)44と、記憶部45と、を備えている。
【0039】
CPU41、ROM42、RAM43、及びI/O44は、バス46を介して各々接続されている。I/O44には、記憶部45を含む各機能部が接続されている。これらの各機能部は、I/O44を介して、CPU41と相互に通信可能とされる。
【0040】
記憶部45としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等が用いられる。記憶部45には、水電解システム10Aの各部を制御するための制御プログラムや、各種のデータ(一例としてイオン交換樹脂適温T1、水電解適温T2、水循環流量F1、水供給流量F2)が記憶される。なお、この制御プログラム、各種データは、ROM42に記憶されていてもよい。
【0041】
本実施形態の水電解システム10Aによれば、水電解セルスタック12へ水を供給する水供給路32とイオン交換樹脂16が設けられた水循環路30を別経路とし、熱交換器24により水循環路の水を冷却している。したがって、水供給路32と水循環路30の水温を異ならせることができ、イオン交換樹脂適温T1を水電解適温T2よりも低温として、イオン交換樹脂16を効率的に機能させると共に、水電解セルスタック12も効率的に作動させることができる。
【0042】
また、本実施形態では、水電解セルスタック12から排出された水を循環させてイオン交換樹脂16で不純物を除去しつつ用いるので、水を廃棄する必要がなく、循環水を無駄なく使用することができる。
【0043】
また、本実施形態では、水供給ポンプ38で送出する水供給流量F2を一定流量に設定しているので、簡易に安定して水電解セルスタック12へ水を供給することができる。
【0044】
なお、本実施形態では、水供給ポンプ38で送出する水供給流量F2を一定流量に設定したが、水電解セルスタック12の負荷に応じて水供給流量F2を変動させてもよい。この場合には、制御部40に入力された水素発生量に応じて、水供給ポンプ38で送出する水供給流量F2を変動させる。
【0045】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態では第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付して図示し、その詳細な説明は省略する。
【0046】
本実施形態の水電解システム10Bは、図3に示されるように、水酸素送出路12Bに、スタック排出温度センサ33Tが設けられている。スタック排出温度センサ33Tは、水電解セルスタック12から水酸素送出路12Bへ送出された水及び酸素の混合流体の温度を検知する。スタック排出温度センサ33Tは、スタック温度センサ32T及び水供給ポンプ38と接続されている。スタック排出温度センサ33Tで検知された温度とスタック温度センサ32Tで検知された温度との差分に基づいて、制御部40からの指示と共に水供給ポンプ38の出力が制御される。具体的には、スタック排出温度センサ33Tで検知された温度とスタック温度センサ32Tで検知された温度との差分が所定の昇温範囲に維持されるように、水供給流量F2を変動させる。
【0047】
一例として、水電解セルスタック12へ供給される水の電気抵抗率を、許容範囲内である7MΩ・cm以上とする場合、水電解適温T2を70℃~80℃に設定し、イオン交換樹脂適温T1を50℃~60℃程度に設定すると、水循環流量F1は、水供給流量F2の10%~20%に設定することができる。
【0048】
水循環ポンプ36で水循環路30を循環させる水の流量(水循環流量F1)は、第1実施形態と同様に、イオン交換温度センサ30Tで検知された温度に基づいて、イオン交換樹脂16へ供給される水の温度が、イオン交換樹脂適温T1となるように制御される。また、熱交換器24内へ供給される熱媒体の流量も、第1実施形態と同様に、スタック温度センサ32Tで検知される温度に基づいて、水電解セルスタック12へ供給される水の温度が水電解適温T2となるように制御される。
【0049】
制御部40は、図4に示されるように、DC電源装置DC、調整バルブ21、水位計23、流量調整弁26、イオン交換温度センサ30T、スタック温度センサ32T、スタック排出温度センサ33T、水循環ポンプ36、水供給ポンプ38と接続されている。
【0050】
本実施形態の水電解システム10Bによれば、スタック排出温度センサ33Tで検知された温度とスタック温度センサ32Tで検知された温度との差分に基づいて、水供給ポンプ38の出力を制御して水供給流量F2を変動させるので、供給水で安定して水電解セルスタック12を冷却して作動させることができる。
【0051】
なお、本実施形態では、第1実施形態と同様に、イオン交換温度センサ30Tで検知された温度に基づいて、水循環ポンプ36の出力を制御したが、水循環ポンプ36の出力を、水循環流量F1と水供給流量F2の比が一定となるように制御してもよい。
【0052】
また、第1実施形態と同様に、イオン交換温度センサ30Tで検知された温度に基づいて、イオン交換樹脂16へ供給される水の温度が、イオン交換樹脂適温T1となるように水循環ポンプ36の出力を制御しつつ、水供給ポンプ38の出力を、水循環流量F1と水供給流量F2の比が一定となるように制御してもよい。
【符号の説明】
【0053】
10A、10B 水電解システム
12 水電解セルスタック
14 水分離器
16 イオン交換樹脂
24 熱交換器
30 水循環路
32 水供給路
36 水循環ポンプ
38 水供給ポンプ
40 制御部
T1 イオン交換樹脂適温
T2 水電解適温
【要約】
【課題】循環水を無駄にすることなく、効率よく水電解セルスタックを作動させる。
【解決手段】水電解システム10Aは、水電解セルスタック12と、水電解セルスタック12と接続され、水電解セルスタック12から排出された水を気体から分離する水分離器14と、水循環ポンプ36が設けられ、水分離器14で分離された水を循環させる水循環路30と、水循環路30と別経路とされて水供給ポンプ38が設けられ、水電解セルスタック12へ水を供給する水供給路32と、水循環路30に設けられたイオン交換樹脂16と、水循環路30のイオン交換樹脂16よりも上流側に設けられ、水供給路32から水電解セルスタック12へ供給される水の温度に基づいて、水循環路30の水を冷却する熱交換器24と、を備えている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4