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特許7541206情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01W 1/00 20060101AFI20240820BHJP
   F03D 17/00 20160101ALI20240820BHJP
【FI】
G01W1/00 A
F03D17/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024035065
(22)【出願日】2024-03-07
【審査請求日】2024-03-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 開催日 令和5年12月1日 集会名、開催場所 第45回風力エネルギー利用シンポジウム 科学技術館サイエンスホール(東京都千代田区北の丸公園2-1) ウェブサイトの掲載日 令和5年11月24日 ウェブサイトの代表URL http://www.jwea.or.jp/menu6-5.html
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518425612
【氏名又は名称】ENEOSリニューアブル・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 慶一郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼桑 晋
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-072587(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0313650(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第113279907(CN,A)
【文献】渡邊慶一郎 他,観測環境の違いによるDe-trendingの有用性の検証,第44回風力エネルギー利用シンポジウム,2022年12月06日
【文献】Kurt S. Hansen, et. al.,De-trending of turbulence measurements,European Seminar Offshore Wind and Other Marine Renewable Eenergies in Mediterrean an European Seas,OWEMES Association,2006年,55-64
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01W 1/00
F03D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気中を移動する粒子に向けて複数方向に照射したレーザの反射によるドップラー効果を利用して風速を計測可能な風況観測装置により観測された、予め定められた観測位置における予め定められた風向ごとの風速の時間経過を表す第1データを、当該風況観測装置から取得し、さらに、当該観測位置の近傍の風況観測塔にて別途観測された、予め定められた観測位置における前記風向ごとの風速の時間経過を表す第3データを取得する取得手段と、
取得された前記第1データのうち、第1時間ごとに記録された当該第1データから、当該第1時間よりも長い第2時間の単位のトレンド成分を除去した第2データを生成する生成手段と、
取得された前記第1データおよび前記第3データと、生成された前記第2データとの各々における、前記風向ごとの風速の前記第2時間の単位の平均風速に対するばらつきを示す風速標準偏差に基づいて、前記観測位置の乱流強度を、当該第1データおよび当該第2データ各々について算出する算出手段と、
前記風向ごとおよび前記風速ごとに前記観測位置の乱流強度を出力する出力手段と、
を有し、
前記算出手段は、前記第1データに基づく前記観測位置の乱流強度と前記第2データに基づく当該観測位置の乱流強度との差と、前記第3データとに基づいて、当該観測位置の乱流強度をさらに算出することを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
前記生成手段は、前記第1データにおける時間と風速との関係を分析することで前記トレンド成分を抽出し、当該第1データから当該トレンド成分を除去することで前記第2データを生成することを特徴とする、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記生成手段は、前記第1時間としての1秒間または略1秒間ごとに記録された前記第1データから、前記第2時間としての10分間の単位の前記トレンド成分を除去した前記第2データを生成することを特徴とする、
請求項に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記算出手段は、前記観測位置の乱流強度に基づいて、当該観測位置に対応する場所に設置される第1風車の疲労荷重をさらに算出することを特徴とする、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記算出手段は、前記第1風車とその近傍の第n風車(nは2以上の整数値)との位置関係により生じるウエイクを起因とする前記観測位置の乱流強度と、当該第1風車の疲労荷重とをさらに算出することを特徴とする、
請求項に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記算出手段は、前記第1データに基づく前記観測位置の乱流強度と前記第2データに基づく当該観測位置の乱流強度との差に基づいて、前記第1データに対する前記第2データの当該観測位置の乱流強度の低減率をさらに算出し、
前記生成手段は、算出された前記観測位置の乱流強度の低減率を前記第3データに適用した第4データをさらに生成し、
前記算出手段は、前記第4データに基づく前記観測位置の乱流強度をさらに算出することを特徴とする、
請求項に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記生成手段は、前記低減率の統計値と前記第3データとに基づいて前記第4データを補間した第5データをさらに生成し、
前記算出手段は、前記第5データに基づく前記観測位置の乱流強度をさらに算出することを特徴とする、
請求項に記載の情報処理システム。
【請求項8】
大気中を移動する粒子に向けて複数方向に照射したレーザの反射によるドップラー効果を利用して風速を計測可能な風況観測装置により観測された、予め定められた観測位置における予め定められた風向ごとの風速の時間経過を表す第1データを、当該風況観測装置から取得し、さらに、当該観測位置の近傍の風況観測塔にて別途観測された、予め定められた観測位置における前記風向ごとの風速の時間経過を表す第3データを取得する取得手段と、
取得された前記第1データのうち、第1時間ごとに記録された当該第1データから、当該第1時間よりも長い第2時間の単位のトレンド成分を除去した第2データを生成する生成手段と、
取得された前記第1データおよび前記第3データと、生成された前記第2データとの各々における、前記風向ごとの風速の前記第2時間の単位の平均風速に対するばらつきを示す風速標準偏差に基づいて、前記観測位置の乱流強度を、当該第1データおよび当該第2データ各々について算出する算出手段と、
前記風向ごとおよび前記風速ごとに前記観測位置の乱流強度を出力する出力手段と、
を有し、
前記算出手段は、前記第1データに基づく前記観測位置の乱流強度と前記第2データに基づく当該観測位置の乱流強度との差と、前記第3データとに基づいて、当該観測位置の乱流強度をさらに算出することを特徴とする情報処理装置。
【請求項9】
大気中を移動する粒子に向けて複数方向に照射したレーザの反射によるドップラー効果を利用して風速を計測可能な風況観測装置により観測された、予め定められた観測位置における予め定められた風向ごとの風速の時間経過を表す第1データを、当該風況観測装置から取得し、さらに、当該観測位置の近傍の風況観測塔にて別途観測された、予め定められた観測位置における前記風向ごとの風速の時間経過を表す第3データを取得するステップと、
取得された前記第1データのうち、第1時間ごとに記録された当該第1データから、当該第1時間よりも長い第2時間の単位のトレンド成分を除去した第2データを生成するステップと、
取得された前記第1データおよび前記第3データと、生成された前記第2データとの各々における、前記風向ごとの風速の前記第2時間の単位の平均風速に対するばらつきを示す風速標準偏差に基づいて、前記観測位置の乱流強度を、当該第1データおよび当該第2データ各々について算出するステップと、
前記第1データに基づく前記観測位置の乱流強度と前記第2データに基づく当該観測位置の乱流強度との差と、前記第3データとに基づいて、当該観測位置の乱流強度をさらに算出するステップと、
前記風向ごとおよび前記風速ごとに前記観測位置の乱流強度を出力するステップと、
を含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項10】
コンピュータに、
大気中を移動する粒子に向けて複数方向に照射したレーザの反射によるドップラー効果を利用して風速を計測可能な風況観測装置により観測された、予め定められた観測位置における予め定められた風向ごとの風速の時間経過を表す第1データを、当該風況観測装置から取得し、さらに、当該観測位置の近傍の風況観測塔にて別途観測された、予め定められた観測位置における前記風向ごとの風速の時間経過を表す第3データを取得する機能と、
取得された前記第1データのうち、第1時間ごとに記録された当該第1データから、当該第1時間よりも長い第2時間の単位のトレンド成分を除去した第2データを生成する機能と、
取得された前記第1データおよび前記第3データと、生成された前記第2データとの各々における、前記風向ごとの風速の前記第2時間の単位の平均風速に対するばらつきを示す風速標準偏差に基づいて、前記観測位置の乱流強度を、当該第1データおよび当該第2データ各々について算出する機能と、
前記第1データに基づく前記観測位置の乱流強度と前記第2データに基づく当該観測位置の乱流強度との差と、前記第3データとに基づいて、当該観測位置の乱流強度をさらに算出する機能と、
前記風向ごとおよび前記風速ごとに前記観測位置の乱流強度を出力する機能と、
を実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電に用いられる風車に向かって吹く風は一定ではなく、疲労応力を発生させる疲労荷重になることがあるため、風車を設置する際、疲労荷重に対する風車の強さである疲労強度の確認が事前に行われる。風車の疲労強度の確認は、風車の設置予定地の気象や地形により生じる風速の乱れの強さである乱流強度の評価結果に基づいて行われる。乱流強度は、設置予定地またはその近傍にて1年間以上観測された風況(風速や風向等)の観測データに基づいて算出され、関連する技術も存在する(例えば、特許文献1)。風況の観測データは、風況観測塔(マスト)や、大気中を移動する粒子に向けて複数方向にレーザを照射してその反射によるドップラー効果を利用して風況を観測するドップラーライダーなどにより観測されるデータである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2023-072587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドップラーライダーが風況の観測を行う場合、通常、1秒間程度ごとに観測された風向ごとの風速の10分間の単位の平均風速と、その平均風速に対するばらつきを示す風速標準偏差とに基づいて乱流強度が算出される。ここで、瞬間的に生じる風速の変化は、風車が本来的に持つ制御機能による吸収が困難であり、疲労荷重になりやすい。これに対して、瞬間的ではない緩やかな風速の変化は、変化の前後で風速が大きく異なる場合であっても、風車が本来的に持つ制御機能による吸収が困難ではないため、疲労荷重になり難い。例えば、秒単位の風速の変化は、瞬間的な風速の変化であり、疲労荷重になりやすい。これに対して、10分間の単位の風速のトレンドは、瞬間的ではない緩やかな風速の変化であるため、疲労荷重になり難い。
しかしながら、従来の乱流強度の算出手法では、10分間の単位の風速のトレンドが含まれる。このため、10分間の単位の前後で風速が大きく異なる場合には、乱流強度として過剰な予測値が算出されてしまい、風車に対して必要以上の疲労強度が求められることになる。その結果、風車の調達コストの上昇、風車の部分的な運転停止、風車の設置の見送りなどに繋がるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、風力発電に用いられる風車の設置予定地の乱流強度の予測の精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと完成させた本発明は、予め定められた観測位置における予め定められた風向ごとの風速の時間経過を表す第1データから、予め定められた時間の単位のトレンド成分を除去した第2データを生成する生成手段と、前記第2データに基づいて、前記観測位置の乱流強度を算出する算出手段と、前記風向ごとおよび前記風速ごとに前記乱流強度を出力する出力手段と、を有することを特徴とする情報処理システムである。
ここで、前記生成手段は、前記第1データにおける時間と風速との関係を分析することで前記トレンド成分を抽出し、当該第1データから当該トレンド成分を除去することで前記第2データを生成することを特徴としてもよい。
また、前記生成手段は、第1時間ごとに記録された前記観測位置の前記風向ごとの風速を含む前記第1データから、当該第1時間よりも長い第2時間の単位の前記トレンド成分を除去した前記第2データを生成することを特徴としてもよい。
また、前記生成手段は、前記第1時間としての1秒間または略1秒間ごとに記録された前記第1データから、前記第2時間としての10分間の単位の前記トレンド成分を除去した前記第2データを生成することを特徴としてもよい。
また、前記算出手段は、前記第1時間ごとに記録された前記風向ごとの風速の前記第2時間の単位の平均風速に対するばらつきを示す風速標準偏差に基づいて、前記乱流強度を算出することを特徴としてもよい。
また、前記算出手段は、前記観測位置の前記乱流強度に基づいて、当該観測位置に対応する場所に設置される第1風車の疲労荷重をさらに算出することを特徴としてもよい。
また、前記算出手段は、前記第1風車とその近傍の第n風車(nは2以上の整数値)との位置関係により生じるウエイクを起因とする前記観測位置の前記乱流強度と、当該第1風車の疲労荷重とをさらに算出することを特徴としてもよい。
また、前記生成手段は、大気中を移動する粒子に向けて複数方向に照射したレーザの反射によるドップラー効果を利用して風速を計測可能な風況観測装置により観測された前記第1データから前記トレンド成分を除去した前記第2データを生成し、前記算出手段は、前記第1データと、前記第2データと、前記観測位置の近傍の風況観測塔にて別途観測された、予め定められた観測位置における前記風向ごとの風速の時間経過を表す第3データとに基づいて、前記乱流強度を算出することを特徴としてもよい。
また、前記算出手段は、さらに、前記第1データに基づいて、前記観測位置の前記乱流強度を算出し、当該第1データに基づく当該乱流強度と、前記第2データに基づく当該乱流強度との差と、前記第3データとに基づいて、前記乱流強度を算出することを特徴としてもよい。
また、前記生成手段は、前記第1データに対する前記第2データの前記乱流強度の低減率を前記第3データに適用した第4データをさらに生成し、前記算出手段は、前記第4データに基づく前記乱流強度をさらに算出することを特徴としてもよい。
また、前記生成手段は、前記低減率の統計値と前記第3データとに基づいて前記第4データを補間した第5データをさらに生成し、前記算出手段は、前記第5データに基づく前記乱流強度をさらに算出することを特徴としてもよい。
また、本発明は、予め定められた観測位置における予め定められた風向ごとの風速の時間経過を表す第1データから、予め定められた時間の単位のトレンド成分を除去した第2データを生成する生成手段と、前記第2データに基づいて、前記観測位置の乱流強度を算出する算出手段と、前記風向ごとおよび前記風速ごとに前記乱流強度を出力する出力手段と、を有することを特徴とする情報処理装置である。
また、本発明は、予め定められた観測位置における予め定められた風向ごとの風速の時間経過を表す第1データから、予め定められた時間の単位のトレンド成分を除去した第2データを生成するステップと、前記第2データに基づいて、前記観測位置の乱流強度を算出するステップと、前記風向ごとおよび前記風速ごとに前記乱流強度を出力するステップと、を含むことを特徴とする情報処理方法である。
また、本発明は、コンピュータに、予め定められた観測位置における予め定められた風向ごとの風速の時間経過を表す第1データから、予め定められた時間の単位のトレンド成分を除去した第2データを生成する機能と、前記第2データに基づいて、前記観測位置の乱流強度を算出する機能と、前記風向ごとおよび前記風速ごとに前記乱流強度を出力する機能と、を実現させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、風力発電に用いられる風車の設置予定地の乱流強度の予測の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態が適用される情報処理システムの全体構成の一例を示す図である。
図2図1の情報処理システムを構成する管理サーバのハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】管理サーバの制御部の機能構成の一例を示す図である。
図4】管理サーバの処理のうち、第1風車の疲労荷重が算出されるまでの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5】(A)乃至(C)は、第1データからトレンド成分を除去して第2データを生成する処理の具体例を示す図である。
図6】算出された乱流強度の具体例を示す図である。
図7図1の情報処理システムを構成するユーザ端末に出力される、風向ごとおよび風速ごとに乱流強度を一覧化した表の具体例を示す図である。
図8】風車と、マストと、図1の情報処理システムを構成する風況観測装置との各々のサイズの具体例を示す図である。
図9】ウエイクの具体例を示す図である。
図10】(A)は、第1乃至第3データから観測位置の乱流強度を算出する手法の具体例を示す図である。(B)は、(A)の計算式により算出された第2時間の単位の風速標準偏差の具体例を示す図である。
図11】(A)および(B)は、ライダー観測データの欠測の補間の具体例を示す図である。
図12】ライダー観測データの欠測の補間の具体例を示す図である。
図13】第4データの検証結果を示すグラフである。
図14】第5データの検証結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<情報処理システムの構成>
図1は、本実施の形態が適用される情報処理システム1の全体構成の一例を示す図である。
情報処理システム1は、管理サーバ10と、風況を観測する移動可能な装置である風況観測装置30と、風況を観測する建造物である風況観測塔(以下、「マスト」と呼ぶ。)に設置されたマスト端末50と、ユーザ端末70とがネットワーク90を介して接続されることにより構成されている。ネットワーク90は、例えば、LAN(Local Area Network)、インターネット等である。
【0010】
(管理サーバ10)
情報処理システム1を構成する管理サーバ10は、情報処理システム1全体を管理するサーバとしての情報処理装置である。管理サーバ10は、風況の観測が行われる場所(以下、「観測地」と呼ぶ。)に設置された風況観測装置30により観測された風況に関する観測データを取得する。本実施の形態における風況観測装置30は、大気中を移動する粒子に向けて複数方向にレーザを照射してその反射によるドップラー効果を利用して風況を観測するドップラーライダーである。以下、風況観測装置30としてのドップラーライダーにより観測された風況に関する観測データのことを「ライダー観測データ」と呼ぶ。
【0011】
風況観測装置30により観測されたライダー観測データには、観測地の天地方向の風況の観測データが含まれる。具体的には、ライダー観測データには、観測地の地上から上空に向かって予め定められた高度ごとに設定された位置(以下、「観測位置」と呼ぶ。)の各々における風向ごとの風速の時間経過を表すデータ(以下、「第1データ」と呼ぶ。)が含まれる。第1データには、予め定められた第1時間ごとに記録された観測位置の風向ごとの風速が含まれる。本実施の形態における「第1時間」は、1秒間または略1秒間である。なお、観測地と風車の設置予定地とが一致しないことが通常であるため、ライダー観測データは、観測地と風車の設置予定地との距離等に応じて補正される。以下、ライダー観測データは、観測地と風車の設置予定地との不一致を是正するための補正が施されたデータであることを前提として説明する。
【0012】
管理サーバ10は、取得したライダー観測データに含まれる第1データから、予め定められた時間の単位のトレンド成分を除去したデータ(以下、「第2データ」と呼ぶ。)を生成する。本実施の形態における「予め定められた時間の単位」とは、第1時間よりも長い第2時間として予め定められた時間の単位である。本実施の形態において、第1時間は、瞬間的な時間である1秒間または略1秒間であるのに対し、第2時間は、瞬間的ではない10分間の単位である。なお、管理サーバ10が第2データを生成する手法については後述する。
【0013】
管理サーバ10は、生成した第2データに基づいて、観測位置の風速の乱れの強さである乱流強度を風向ごとおよび風速ごとに算出する。観測位置の風速の乱れは、観測地の気象や地形等を起因とするものと、ウエイクを起因とするものとがある。「ウエイク」とは、観測地またはその近傍に設置する予定の風車(以下、「第1風車」と呼ぶ。)の近傍に既に設置され、または設置する予定の第n風車(nは2以上の整数値)のブレードの回転に起因する流入風の風速の減衰および乱れの効果のことをいう。なお、管理サーバ10が観測位置の乱流強度を算出する手法については後述する。
【0014】
管理サーバ10は、ユーザ端末70から送信されてくる、疲労強度の確認の対象となる第1風車に関する情報(以下、「第1風車情報」と呼ぶ。)を取得する。第1風車情報には、第1風車の設置場所、仕様(例えば、高さ、ブレードのサイズ等)、周辺環境などの情報が含まれる。管理サーバ10は、観測位置の乱流強度と、第1風車情報とに基づいて、第1風車の疲労荷重を算出する。
【0015】
また、管理サーバ10は、ユーザ端末70から送信されてくる、第n風車に関する情報(以下、「第n風車情報」と呼ぶ。)を取得する。第n風車情報には、第n風車の設置場所、仕様(例えば、高さ、ブレードのサイズ等)、周辺環境などの情報が含まれる。管理サーバ10は、観測地の気象や地形等を起因とする観測位置の乱流強度と、第1風車と第n風車との位置関係により生じるウエイクを起因とする観測位置の乱流強度とに基づいて、第1風車の疲労荷重を算出する。第1風車と第n風車との位置関係は、第1風車情報および第n風車情報から特定される。
【0016】
また、管理サーバ10は、観測位置の近傍のマストにて観測された風況に関するデータ(以下、「マスト観測データ」と呼ぶ。)を、マスト端末50を介して取得する。マスト観測データには、マストが設置された観測地の天地方向の風況の観測データが含まれる。具体的には、マスト観測データには、観測地の地上から上空に向かって予め定められた高度ごとに設定された観測位置の各々における風向ごとの風速の時間経過を表すデータ(以下、「第3データ」と呼ぶ。)が含まれる。第3データには、第2時間(10分間)の単位の風向ごとの風速のデータが含まれる。なお、マストが設置された観測地と第1風車の設置予定地とが一致しないことが通常であるため、実際には、マストが設置された観測地と第1風車の設置予定地との距離等に応じてマスト観測データが補正される。以下、マスト観測データは、マストが設置された観測地と第1風車の設置予定地との不一致を是正するための補正が施されたデータであることを前提として説明する。
【0017】
第3データを取得した管理サーバ10は、第1乃至第3データに基づいて、観測位置の乱流強度を算出することができる。この場合、管理サーバ10は、第1データに基づき算出した乱流強度と、第2データに基づき算出した乱流強度との差と、第3データとに基づいて、観測位置の乱流強度を算出する。具体的には、例えば、管理サーバ10は、第1データに対する第2データの乱流強度の低減率(以下、「第2データ低減率」と呼ぶ。)を第3データに適用した第4データを生成することで乱流強度を算出する。
【0018】
ライダー観測データは、雨や霧など天候を理由とする欠測が生じやすい。このため、ライダー観測データに欠測がある場合、管理サーバ10は、第2データ低減率の統計値と、第3データとに基づいて、第4データを補間したデータ(以下、「第5データ」と呼ぶ。)を生成することで乱流強度を算出する。第2データ低減率の統計値としては、例えば、第2データ低減率の中央値や平均値などが挙げられる。なお、管理サーバ10の構成や処理の詳細については後述する。
【0019】
(風況観測装置30)
情報処理システム1を構成する風況観測装置30はドップラーライダーである。風況観測装置30により観測されたライダー観測データには第1データが含まれる。上述のように、第1データには、第1時間ごとに記録された観測位置の風向ごとの風速が含まれる。ここで、「風向」とは、例えば、観測位置の360度の方位を16分割した風向(以下、「16風向」と呼ぶ。)などである。16風向とは、N(北)、NNE(北北東)、NE(北東)、ENE(東北東)、E(東)、ESE(東南東)、SE(南東)、SSE(南南東)、S(南)、SSW(南南西)、SW(南西)、WSW(西南西)、W(西)、WNW(西北西)、NW(北西)、およびNNW(北北西)である。
【0020】
風況観測装置30は、第1データを含む観測位置ごとのライダー観測データを管理サーバ10に向けて送信する。風況観測装置30がライダー観測データを管理サーバ10に向けて送信するタイミングは特に限定されない。例えば、リアルタイムでライダー観測データが送信されてもよいし、予め定められた時間(秒、分、日、週、月、年等)ごとにライダー観測データが送信されてもよい。また、管理サーバ10からライダー観測データの提供に関する問い合わせに応じてライダー観測データが送信されてもよい。
【0021】
(マスト端末50)
情報処理システム1を構成するマスト端末50は、マストごとに設置された情報処理装置であり、マストにより観測されたマスト観測データを取得して管理サーバ10に向けて送信する。マスト観測データには、マストに設置された複数のセンサの各々により計測された、第2時間(10分間)の単位の風況の観測データが含まれる。マストに設置されているセンサは、風速センサ、風向センサ、温度センサ、湿度センサ、気圧センサなどであり、これらのセンサにより計測された風速、16風向、温度、湿度、気圧等の計測結果が、マスト観測データとして取得される。マスト観測データには第3データが含まれる。
【0022】
マスト端末50がマスト観測データを管理サーバ10に向けて送信するタイミングは特に限定されない。例えば、リアルタイムでマスト観測データが送信されてもよいし、予め定められた時間(秒、分、日、週、月、年等)ごとにマスト観測データが送信されてもよい。また、管理サーバ10からマスト観測データの提供に関する問い合わせに応じてマスト観測データが送信されてもよい。
【0023】
(ユーザ端末70)
情報処理システム1を構成するユーザ端末70は、情報処理システム1を利用するユーザが操作するパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等の情報処理装置である。ユーザ端末70は、ユーザにより入力された情報を管理サーバ10に向けて送信する。ユーザにより入力され、管理サーバ10に向けて送信される情報としては、例えば、第2データ、観測位置の乱流強度、第1風車の疲労荷重などのデータを管理サーバ10に問い合わせるために入力された問い合わせ情報などが挙げられる。
【0024】
また、ユーザ端末70は、管理サーバ10から送信されてきた各種の情報を取得してディスプレイ等に表示する。例えば、ユーザ端末70は、問い合わせ情報に基づき管理サーバ10から送信されてきた、第2データ、観測位置の乱流強度、第1風車の疲労荷重などのデータを取得して表示する。
【0025】
なお、上述の情報処理システム1の構成は一例であり、情報処理システム1全体として上述の処理を実現させる機能を備えていればよい。このため、上述の処理を実現させる機能のうち、一部または全部を情報処理システム1内の各装置で分担してもよいし協働してもよい。例えば、管理サーバ10の機能の一部または全部を、風況観測装置30、マスト端末50、ユーザ端末70のいずれかの機能としてもよい。さらに、情報処理システム1を構成する管理サーバ10、風況観測装置30、マスト端末50、およびユーザ端末70の各々の機能の一部または全部を、図示せぬ他のサーバ等に移譲してもよい。これにより、情報処理システム1全体としての処理が促進され、また、処理を補完し合うことも可能となる。
【0026】
<管理サーバ10のハードウェア構成>
図2は、図1の情報処理システム1を構成する管理サーバ10のハードウェア構成の一例を示す図である。
管理サーバ10は、制御部11と、メモリ12と、記憶部13と、通信部14と、操作部15と、表示部16とを有している。これらの各部は、データバス、アドレスバス、PCI(Peripheral Component Interconnect)バス等で接続されている。
【0027】
制御部11は、OS(基本ソフトウェア)やアプリケーションソフトウェア(応用ソフトウェア)等の各種ソフトウェアの実行を通じて管理サーバ10の機能の制御を行うプロセッサである。制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)で構成される。メモリ12は、各種ソフトウェアやその実行に用いるデータ等を記憶する記憶領域であり、演算に際して作業エリアとして用いられる。メモリ12は、例えばRAM(Random Access Memory)等で構成される。
【0028】
記憶部13は、各種ソフトウェアに対する入力データや各種ソフトウェアからの出力データ等を記憶する記憶領域である。記憶部13は、例えばプログラムや各種設定データなどの記憶に用いられるHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、半導体メモリ等で構成される。記憶部13には、各種のデータを格納するデータベースが設けられている。例えば、ライダー観測データが格納されたライダーDB131、第2データが格納された第2DB132、マスト観測データが格納されたマストDB133、乱流強度の評価に用いられるデータが格納された評価用DB134、第1風車情報および第n風車情報が格納された風車DB135などが記憶部13に格納されている。
【0029】
通信部14は、ネットワーク90を介して風況観測装置30、マスト端末50、ユーザ端末70、および外部との間でデータの送受信を行う。操作部15は、例えばキーボード、マウス、機械式のボタン、スイッチで構成され、入力操作を受け付ける。操作部15には、表示部16と一体的にタッチパネルを構成するタッチセンサも含まれる。表示部16は、例えば情報の表示に用いられる液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイで構成され、画像やテキストのデータなどを表示する。
【0030】
<風況観測装置30、マスト端末50、ユーザ端末70のハードウェア構成>
風況観測装置30、マスト端末50、およびユーザ端末70は、いずれも図2に示す管理サーバ10のハードウェア構成と同様の構成を備えることができる。すなわち、風況観測装置30、マスト端末50、およびユーザ端末70は、図2に示す管理サーバ10の制御部11、メモリ12、記憶部13、通信部14、操作部15、および表示部16の各々と同様の制御部、メモリ、記憶部、通信部、操作部、および表示部の各々を備えることができる。このため、風況観測装置30、マスト端末50、およびユーザ端末70のハードウェア構成の図示および説明を省略する。
【0031】
<管理サーバ10の制御部11の機能構成>
図3は、管理サーバ10の制御部11の機能構成の一例を示す図である。
管理サーバ10の制御部11では、管理部101と、取得部102と、生成手段としての生成部103と、算出手段としての算出部104と、出力手段としての送信制御部105とが機能する。
【0032】
管理部101は、記憶部13(図2参照)に設けられた各種のデータベースに各種のデータを格納して管理する。例えば、管理部101は、第1データを含むライダー観測データをライダーDB131に格納して管理する。また、管理部101は、第2データを第2DB132に格納して管理する。また、管理部101は、第3データを含むマスト観測データをマストDB133に格納して管理する。また、管理部101は、第4および第5データなど乱流強度の評価に用いられるデータを評価用DB134に格納して管理する。また、管理部101は、第1風車情報および第n風車情報を風車DB135に格納して管理する。
【0033】
取得部102は、管理サーバ10に向けて送信されてきた各種の情報を取得する。例えば、取得部102は、風況観測装置30から送信されてきたライダー観測データを取得する。ライダー観測データの第1データには、第1時間ごとに記録された観測位置の風向ごとの風速が含まれる。
【0034】
また、取得部102は、マスト端末50から送信されてきたマスト観測データを取得する。マスト観測データの第3データには、第2時間ごとに記録された観測位置の風向ごとの風速が含まれる。また、取得部102は、ユーザ端末70から送信されてきた第1風車情報を取得する。また、取得部102は、ユーザ端末70から送信されてきた第n風車情報を取得する。また、取得部102は、ユーザ端末70から送信されてきた各種の問い合わせ情報を取得する。
【0035】
生成部103は、各種の情報を生成する。例えば、生成部103は、管理部101により管理されているライダー観測データに含まれる第1データから、第2時間の単位のトレンド成分を除去した第2データを生成する。第1データからトレンド成分を除去して第2データを生成する手法は特に限定されない。例えば、第1データにおける時間と風速との関係を分析することでトレンド成分を抽出し、第1データからトレンド成分を除去することで第2データを生成してもよい。なお、第1データからトレンド成分を抽出する際に用いる分析の手法は特に限定されず、例えば線形回帰分析などあらゆる分析の手法を用いることができる。
【0036】
算出部104は、生成部103により生成された第2データに基づいて、観測位置の風向ごとおよび風速ごとに乱流強度を算出する。具体的には、算出部104は、第1時間ごとに記録された風向ごとの風速の第2時間の単位の平均風速に対するばらつきを示す風速標準偏差に基づいて、観測位置の乱流強度を算出する。
【0037】
また、算出部104は、管理部101により管理されている第1データに基づいて、観測位置の乱流強度を算出する。そして、算出部104は、第1データに基づき算出した乱流強度と、第2データに基づき算出した乱流強度との差と、管理部101により管理されている第3データとに基づいて、観測位置の乱流強度を算出する。具体的には、算出部104は、第2データ低減率を算出し、第2データ低減率と第3データとに基づいて、観測位置の乱流強度を算出する。
【0038】
また、算出部104は、ライダー観測データに欠測がある場合には、第2データ低減率の統計値と、第3データとに基づいて、ライダー観測データの欠測を補間することで、観測位置の乱流強度を算出する。例えば、算出部104は、ライダー観測データの欠測を補間する際に、第2データ低減率の統計値の一例である中央値を用いることで、算出される乱流強度が低くなり過ぎて疲労荷重が甘く見積もられることが抑制される。
【0039】
また、算出部104は、算出した観測位置の乱流強度と、第1風車情報とに基づいて、第1風車の疲労荷重を算出する。また、第n風車が存在する場合、算出部104は、生成部103により生成された第2データと、第1風車情報および第n風車情報から特定される、第1風車と第n風車との位置関係により生じ得るウエイクを考慮して、観測位置の乱流強度と、第1風車の疲労荷重とを算出する。「第1風車と第n風車との位置関係」は、例えば、第1風車と第n風車との間隔、第n風車の本数、第1風車から見た第n風車の方角などにより定義される。
【0040】
送信制御部105は、通信部14(図2参照)を介して各種の情報を送信する制御を行う。例えば、送信制御部105は、生成部103により生成された第2データ、第4データ、第5データなどをユーザ端末70に向けて送信する制御を行う。また、送信制御部105は、算出部104により算出された、観測位置の乱流強度、第1風車の疲労荷重などの情報をユーザ端末70に向けて送信する制御を行う。
【0041】
<管理サーバの処理の流れ>
図4は、管理サーバ10の処理のうち、第1風車の疲労荷重が算出されるまでの処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図4に示す例では、観測位置の乱流強度の算出にあたり、マスト観測データの利用が求められているものとする。
管理サーバ10は、風況観測装置30から、第1データを含むライダー観測データが送信されてくると(ステップ401でYES)、送信されてきたライダー観測データを取得し(ステップ402)、取得したライダー観測データをデータベース(例えば、図2のライダーDB131)に格納して管理する(ステップ403)。これに対して、風況観測装置30からライダー観測データが送信されてきていない場合(ステップ401でNO)、管理サーバ10は、風況観測装置30からライダー観測データが送信されてくるまでステップ401を繰り返す。
【0042】
管理サーバ10は、取得したライダー観測データに含まれる第1データから、第2時間の単位のトレンド成分を除去した第2データを生成する(ステップ404)。具体的には、管理サーバ10は、第1データから10分間の単位のトレンド成分を除去した第2データを生成する。
【0043】
管理サーバ10は、ユーザ端末70から、第1風車情報が送信されてくると(ステップ405でYES)、送信されてきた第1風車情報を取得し(ステップ406)、取得した第1風車情報をデータベース(例えば、図2の風車DB135)に格納して管理する(ステップ407)。これに対して、ユーザ端末70から第1風車情報が送信されてきていない場合(ステップ405でNO)、管理サーバ10は、ユーザ端末70から第1風車情報が送信されてくるまでステップ405を繰り返す。
【0044】
管理サーバ10は、マスト端末50から、第3データを含むマスト観測データが送信されてくると(ステップ408でYES)、送信されてきたマスト観測データを取得し(ステップ409)、取得したマスト観測データをデータベース(例えば、図2のマストDB133)に格納して管理する(ステップ410)。これに対して、マスト端末50からマスト観測データが送信されてきていない場合(ステップ408でNO)、管理サーバ10は、マスト端末50からマスト観測データが送信されてくるまでステップ408を繰り返す。
【0045】
管理サーバ10は、ユーザ端末70から、第n風車情報が送信されてくると(ステップ411でYES)、送信されてきた第n風車情報を取得し(ステップ412)、取得した第n風車情報をデータベース(例えば、図2の風車DB135)に格納して管理する(ステップ413)。これに対して、ユーザ端末70から第n風車情報が送信されてきていない場合(ステップ411でNO)、管理サーバ10は、ウエイクを生じさせ得る第n風車が存在しないものとしてステップ414に進む。
【0046】
管理サーバ10は、観測位置の乱流強度を算出する(ステップ414)。具体的には、管理サーバ10は、第2データ低減率を算出し、算出した第2データ低減率の統計値と第3データとに基づいて、第2データの欠測を補間することで、観測位置の乱流強度を算出する。また、管理サーバ10は、第n風車が存在する場合には、第1風車と第n風車との位置関係により生じるウエイクを起因とする観測位置の乱流強度をさらに算出する。
【0047】
管理サーバ10は、第1風車の疲労荷重を算出する(ステップ415)。具体的には、管理サーバ10は、観測地の気象や地形等を起因とする観測位置の乱流強度と、第1風車情報とに基づいて、第1風車の疲労荷重を算出する。また、管理サーバ10は、第n風車が存在する場合には、観測地の気象や地形等を起因とする観測位置の乱流強度と、ウエイクを起因とする観測位置の乱流強度と、第1風車情報と、第n風車情報とに基づいて、第1風車の疲労荷重を算出する。
【0048】
<具体例>
図5(A)乃至(C)は、第1データからトレンド成分を除去して第2データを生成する処理の具体例を示す図である。
図5(A)には、第1データの具体例が示されている。図5(A)に示す第1データは、ある観測位置における、ある風向の第1時間(1秒間または略1秒間)ごとの風速(Wind speed(m/s))の時間(Time(s))の経過を第2時間(10分間(600秒間))の単位で表したデータである。実線L1は、第1時間ごとの風速の変化を示している。すなわち、実線L1は、瞬間的に生じる風速の変化を示している。実線L2は、平均風速を示している。破線L3およびL4は、風速標準偏差を示している。
【0049】
図5(B)には、図5(A)の第1データから抽出された、第1時間の単位のトレンド成分の具体例が示されている。実線L5は、図5(A)の第1データにおける時間(Time(s))と風速(Wind speed(m/s))との関係を線形回帰分析することで抽出された、第2時間の単位のトレンド成分である。実線L5は、時間(Time(s))が0(s)のときの風速(Wind speed(m/s))が約12(m/s)であり、時間(Time(s))が600(s)(10分間)のときに風速が約20(m/s)であることを示している。
【0050】
すなわち、実線L5は、瞬間的ではない10分間(600秒間)という時間が経過する間に風速(Wind speed(m/s))が約8(m/s)緩やかに変化したことを示している。上述のように、瞬間的ではない緩やかな風速の変化は、変化の前後で風速が大きく異なる場合であっても、風車が本来的に持つ制御機能で吸収できるため、風車に対する疲労荷重になり難い。図5(B)に示す10分間(600秒間)の単位の風速のトレンドは、瞬間的ではない緩やかな風速の変化であり、疲労荷重になり難い。このため、図5(A)に示す第1データから図5(B)に示すトレンド成分を除去した第2データが生成される。
【0051】
図5(C)には、生成された第2データの具体例が示されている。図5(C)に示す第2データは、図5(A)に示す第1データから図5(B)に示すトレンド成分を除去したものである。すなわち、図5(A)の実線L1から、図5(B)に示すトレンド成分である実線L5を除去すると、図5(C)に示す実線L6になる。図5(C)に示す破線L7およびL8は風速標準偏差である。図5(A)に示す風速標準偏差(破線L3およびL4)と、図5(C)に示す風速標準偏差(破線L7およびL8)とを比較すると、トレンド成分の除去によってばらつきの幅が小さくなっている。トレンド成分である実線L5が除去されることにより、乱流強度として過剰な予測値が算出されることが抑制される。
【0052】
図6は、算出された乱流強度の具体例を示す図である。
図6には、ある観測位置における、風速と、風速標準偏差と、風向と、乱流強度との関係を第2時間(10分間)の単位で表したデータの具体例が示されている。乱流強度は、風速標準偏差を風速で除した値である。例えば、20XX年1月1日の午前0時00分(20XX/1/1 0:00)の風速は「10.5」(m/s)であり、風速標準偏差は「1.5」(m/s)であり、風向は「343」(°)であり、乱流強度は「14.3」(%)である。なお、20XX年1月1日の午前0時00分(20XX/1/1 0:00)の10分後、20分後、30分後の各々の風速と、風速標準偏差と、風向と、乱流強度との関係は図6に示すとおりである。
【0053】
図7は、図1の情報処理システム1を構成するユーザ端末70に出力される、風向ごとおよび風速ごとに乱流強度を一覧化した表の具体例を示す図である。
図7には、ある観測位置における、360度の方位を12分割した30(°)単位の風向ごと、および1(m/s)単位の風速ごとに乱流強度を一覧化した表の具体例が示されている。例えば、風向が「0」(°)、風速が「1」(m/s)であるときの乱流強度は「22.02」(%)であり、風向が「30」(°)、風速が「2」(m/s)であるときの乱流強度は「15.11」(%)である。なお、他の風速および他の風速のときの乱流強度の具体例については、図7に示すとおりである。
【0054】
図7に示す表は、360度の方位を12分割した風向ごとに乱流強度を示した表であり、主に、観測地が平地や洋上など平坦な地形である場合の乱流強度の評価に用いられる表である。これに対して、観測地が山間部など複雑な地形である場合には、風向をより細かく区分した評価が必要になる。このため、図示はしないが、例えば、360度の方位を16分割した風向ごとに乱流強度を示した表や、360度の方位を32分割した風向ごとに乱流強度を示した表などが生成される。
【0055】
図8は、風車200と、マスト500と、図1の情報処理システム1を構成する風況観測装置30との各々のサイズの具体例を示す図である。
マスト500では、天地方向の天側に向かう高さh1に設置された各種のセンサによる風況の観測結果がマスト観測データとして取得される。マスト500の観測位置の一般的な高さh1は58m(メートル)である。ただし、近年の風車200は大型化の傾向にあるため、高さh1のマスト観測データでは風車200の疲労強度を確認するための観測データとして不十分である場合が多い。このため、高さh1よりも高い観測位置の観測を可能とする風況観測装置30のライダー観測データを併用することで、風車200の疲労強度の確認が行われる。
【0056】
例えば、風車200の疲労強度を確認するための観測データとして、風車200のハブ241の高さh2に対する3分の2以上の高さの観測位置の観測データが求められる場合がある。この場合、ハブ241の高さh2が、マスト500の観測位置の高さh1の1.5倍の高さh4を超えると、マスト観測データでは不十分となる。具体的には、高さh1が58m(メートル)である場合には、高さh4は87m(メートル)になる。このため、マスト観測データは、ハブ241の高さh2が87m(メートル)を超える風車200の疲労強度を確認するための観測データとして不十分となる。
【0057】
この場合、高さh4を超える観測位置の風況の観測を可能とする風況観測装置30のライダー観測データを併用した観測データ(すなわち、上述の第4データや第5データ)が、風車200の疲労強度の確認に用いられる。風況観測装置30は、観測地の上空に向かう複数方向のレーザ301の照射により、風車200のブレード242の先端が最も高くなる高さh3の観測位置のライダー観測データの取得を可能とする。また、マスト観測データは、ライダー観測データとは異なり、通常は瞬間的な風況の変化のデータを保持しない。このため、ライダー観測データは、風車200の疲労強度を確認するための必須のデータとなる。
【0058】
図9は、ウエイクの具体例を示す図である。
上述のように、第1風車の近傍に第n風車が設置される場合には、観測位置の乱流強度と、第1風車の疲労荷重とが算出される際、ウエイクを起因とする風速の乱れが考慮される。例えば、図9には、流入風の風上から風下に向かって、風車201乃至203がその順番で設置されている様子が示されている。図9の例において、風車201および202は第n風車であり、風車203は第1風車であるものとする。
【0059】
図9の例では、風車201に流入した流入風は、風車201のブレード211の回転によってウエイクが発生し、そのウエイクを含む流入風が風車202に流入する。さらに、風車202に流入した流入風は、風車202のブレード221の回転によってウエイクが発生し、そのウエイクを含む流入風が風車203に流入する。
【0060】
すなわち、第n風車としての風車202に流入する流入風には、風車201と風車202との間の領域に発生したウエイクが含まれる。また、第1風車としての風車203に流入する流入風には、風車202と風車203との間の領域に発生したウエイクが含まれる。このため、観測位置の乱流強度と風車203の疲労荷重とが算出される際、風車202と風車203との間の領域に発生するウエイクが考慮される。これにより、実態に即した乱流強度と疲労荷重との算出が可能となる。算出された風車203の疲労荷重が大きい場合には、風車203と風車202との距離を広げ、ウエイクの影響を小さくすることで、風車203の疲労荷重を小さくすることができる。
【0061】
図10(A)は、第1乃至第3データから観測位置の乱流強度を算出する手法の具体例を示す図である。
図10(A)には、第1乃至第3データから観測位置の乱流強度を算出するための計算式の一例が示されている。図10(A)に示す計算式において、「σVL,det」は、第2データの第2時間の単位の風速標準偏差である。また、「σVL」は、第1データの第2時間の単位の風速標準偏差である。また、「σmast」は、第1データの第2時間の単位の風速標準偏差である。すなわち、第3データからトレンド成分を除去した第2時間の単位の風速標準偏差である「σmast,det」は、「σVL,det」、「σVL」、および「σmast」から算出することができる。
【0062】
図10(B)は、図10(A)の計算式により算出された第2時間の単位の風速標準偏差の具体例を示す図である。
図10(B)には、ライダー観測データに含まれる第1データの風速標準偏差と、第2データの風速標準偏差と、第2データ低減率とが示されている。また、マスト観測データに含まれる第3データの風速標準偏差と、第3データの風速標準偏差に第2データ低減率を乗じた第4データの風速標準偏差とが、第2時間(10分間)の単位で示されている。
【0063】
例えば、20XX年7月24日の午前0時00分(20XX/7/24 0:00)における、第1データの風速標準偏差は「0.36」(m/s)、第2データの風速標準偏差は「0.354」(m/s)、第2データ低減率は「0.983」(%)である。また、第3データの風速標準偏差は「0.282」(m/s)、第4データの風速標準偏差は「0.277」(m/s)である。なお、他の時間帯における、第1データの風速標準偏差、第2データの風速標準偏差、第2データ低減率、第3データの風速標準偏差、および第4データの風速標準偏差の具体例については、図10(B)に示すとおりである。
【0064】
図11(A)および(B)、並びに図12は、ライダー観測データの欠測の補間の具体例を示す図である。
図11(A)には、第3データとしての風速、風速ビン、風向、風向ビン、および風速標準偏差と、第2データ低減率とを第2時間(10分間)の単位で表したデータが示されている。ここで、「風速ビン」は、風速の区間であり、「風向ビン」は、風向の区分である。例えば、20XX年7月24日午前0時10分(20XX/7/24 0:10)における、第3データの風速は「1.921」(m/s)、風速ビンは「0」(m/s)、風向は「120.85」(°)、風向ビンは「ESE」(東南東)、風速標準偏差は「0.282」(m/s)であり、第2データ低減率は「0.931」(%)である。また、その10分後である午前0時20分(20XX/7/24 0:20)における、第3データの風速は「2.096」(m/s)、風速ビンは「2.5」(m/s)、風向は「118.25」(°)、風向ビンは「ESE」(東南東)、風速標準偏差は「0.326」(m/s)であり、第2データ低減率は「0.841」(%)である。
【0065】
図11(B)には、上述の図11(A)に示す第2データ低減率の中央値を、風速ビンごとおよび風向ビンごとに一覧化した表が示されている。図11(B)に示す表において、風速ビン(風速)は、2.5(m/s)、3.5(m/s)、4.5(m/s)、5.5(m/s)、6.5(m/s)、7.5(m/s)、8.5(m/s)、9.5(m/s)、10.5(m/s)、11.5(m/s)、13(m/s)、15(m/s)、17(m/s)、19(m/s)、21(m/s)、23(m/s)、25(m/s)であり、風向ビン(風向)は16風向である。
【0066】
図11(B)に示す表において、例えば、風速ビンが「2.5」(m/s)、風向ビンが「N」(北)である場合、第2データ低減率の中央値は、「0.945」(%)である。また、風速ビンが「2.5」(m/s)、風向ビンが「NNE」(北北東)である場合、第2データ低減率の中央値は、「0.933」(%)である。
【0067】
上述のように、ライダー観測データが欠測しているために第2データ低減率を算出できない場合には、欠測が補間される。具体的には、例えば、欠測した部分に対応するマスト観測データの風速ビンおよび風向ビンと、図11(B)に示す表の風速ビンおよび風向ビンとが一致する第2データ低減率の中央値が、第2データに代入される。これにより欠測が補間される。
【0068】
図12には、欠測の補間の概念図が示されている。図12に示すデータのうち、白抜きの部分は、欠測のない観測データD1であり、ハッチングされた部分は、欠測のある欠測データDm、および欠測を補間するための補間データD2である。図12に示すように、マスト観測データに含まれる第3データと、ライダー観測データに含まれる第1データとを比較すると、第3データの欠測データDmよりも、第1データの欠測データDmの方が多い。これは、上述のように、第1データは雨や霧など天候の影響を受けやすいからである。第2データは、第1データからトレンド成分を除去したものであるため、観測データD1および欠測データDmの数は第1データと同じである。
【0069】
第4データは、第2データに基づく乱流強度の低減率を第3データに適用したものである。第4データは、第1乃至第3データに基づいて生成される。このため、図12に示すように、第4データは、第1乃至第3データのすべての欠測データDmを包含する。第4データに対しては、上述の図11(A)および(B)に示す補間の手法が用いられる。その結果、第4データの欠測データDmのうち、第1および第2データの欠測データDmの部分が補間された第5データが生成される。
【0070】
<検証>
図13は、第4データの検証結果を示すグラフである。
図13に示すグラフは、横軸を風速(Wind speed(m/s))とし、縦軸を乱流強度(Turbulence intensity)とするグラフである。実線L11は、検証用の正のデータとしてマストにて第1時間(1秒間または略1秒間)ごとに観測された特別なマスト観測データである。破線L12は、本実施の形態にかかる手法により算出された第4データである。点P1は、第2時間である10分間の単位で観測された第3データである。
【0071】
図13に示すように、検証用に第1時間ごとに観測されたマスト観測データ(実線L11)と、本実施の形態にかかる手法により算出された第4データ(破線L12)とが略一致している。ただし、上述のように、ライダー観測データは欠測が生じやすいため、欠測が補間された第5データが生成される。
【0072】
図14は、第5データの検証結果を示すグラフである。
図14に示すグラフは、上述の図13に示すグラフから第3データを示す点P1を削除し、第5データを示す一点鎖線L13を加えたものである。上述のように、第5データは、第2データ低減率の中央値を用いて算出される。これにより、疲労荷重が甘く見積もられることが抑制される。その結果、図14に示すように、欠測が補間された第5データ(一点鎖線L13)は、検証用に1秒間程度ごとに観測されたマスト観測データ(実線L11)に対して僅かに上に位置している。すなわち、図13および図14に示すように、観測位置の乱流強度を評価する際、第5データを用いても安全上特に問題はないといえる。
【0073】
以上まとめると、本実施の形態にかかる情報処理システム1(図1参照)は、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
すなわち、情報処理システム1は、予め定められた観測位置における予め定められた風向ごとの風速の時間経過を表す第1データから、第1時間の単位のトレンド成分を除去した第2データを生成する生成手段としての管理サーバ10の生成部103(図3参照)と、第2データに基づいて、観測位置の乱流強度を算出する算出手段としての管理サーバ10の算出部104(図3参照)と、予め定められた風向ごとおよび風速ごとに観測位置の乱流強度を出力する出力手段としての管理サーバ10の送信制御部105(図3参照)とを有することを特徴とする情報処理システムである。
【0074】
これにより、第1データからトレンド成分を除去した第2データに基づいて、観測位置の乱流強度が算出されて風向ごとおよび風速ごとに出力される。その結果、過剰な乱流強度が算出されることが抑制されるので、風力発電に用いられる第1風車の設置予定地の乱流強度の予測の精度を向上させることができる。
【0075】
ここで、生成部103は、第1データにおける時間と風速との関係を分析することで第1時間の単位のトレンド成分を抽出し、第1データから第1時間の単位のトレンド成分を除去することで第2データを生成することを特徴としてもよい。
これにより、第1データにおける時間と風速との関係を分析することで第1時間の単位のトレンド成分が抽出され、抽出されたトレンド成分が第1データから除去されることで第2データが生成される。その結果、過剰な乱流強度が算出されることが抑制されるので、風力発電に用いられる第1風車の設置予定地の乱流強度の予測の精度を向上させることができる。
【0076】
また、生成部103は、第1時間ごとに記録された観測位置の予め定められた風向ごとの風速を含む第1データから、第1時間よりも長い第2時間の単位のトレンド成分を除去した第2データを生成することを特徴としてもよい。
これにより、第1時間ごとに記録された観測位置の風向ごとの風速を含む第1データから、第1時間よりも長い第2時間の単位のトレンド成分を除去した第2データが生成される。その結果、過剰な乱流強度が算出されることが抑制されるので、風力発電に用いられる第1風車の設置予定地の乱流強度の予測の精度を向上させることができる。
【0077】
また、生成部103は、第1時間としての1秒間または略1秒間ごとに記録された第1データから、第2時間としての10分間の単位のトレンド成分を除去した第2データを生成することを特徴としてもよい。
これにより、第1時間としての1秒間または略1秒間ごとに記録された第1データから、第2時間としての10分間の単位のトレンド成分を除去した第2データが生成される。その結果、過剰な乱流強度が算出されることが抑制されるので、風力発電に用いられる第1風車の設置予定地の乱流強度の予測の精度を向上させることができる。
【0078】
また、算出部104は、第1時間ごとに記録された予め定められた風向ごとの風速の第2時間の単位の平均風速に対するばらつきを示す風速標準偏差に基づいて、観測位置の乱流強度を算出することを特徴としてもよい。
これにより、第1時間ごとに記録された風向ごとの風速の第2時間の単位の平均風速に対するばらつきを示す風速標準偏差に基づいて、観測位置の乱流強度が算出される。その結果、過剰な乱流強度が算出されることが抑制されるので、風力発電に用いられる第1風車の設置予定地の乱流強度の予測の精度を向上させることができる。
【0079】
また、算出部104は、観測位置の乱流強度に基づいて、観測位置に対応する場所に設置される第1風車の疲労荷重をさらに算出することを特徴としてもよい。
これにより、観測位置の乱流強度に基づいて、観測位置に対応する場所に設置される第1風車の疲労荷重が算出される。その結果、過剰な疲労荷重が算出されることが抑制されるので、風力発電に用いられる第1風車の疲労荷重の予測の精度を向上させることができる。
【0080】
また、算出部104は、第1風車とその近傍の第n風車(nは2以上の整数値)との位置関係により生じるウエイクを起因とする観測位置の乱流強度と、第1風車の疲労荷重とをさらに算出することを特徴としてもよい。
これにより、ウエイクを起因とする観測位置の乱流強度と、第1風車の疲労荷重とが算出される。その結果、実態に即した乱流強度と疲労荷重との算出が可能となる。
【0081】
また、生成部103は、大気中を移動する粒子に向けて複数方向に照射したレーザの反射によるドップラー効果を利用して風速を計測可能な風況観測装置30により観測された第1データから第2時間の単位のトレンド成分を除去した第2データを生成し、算出部104は、第1データと、第2データと、観測位置の近傍のマストにて別途観測された、予め定められた観測位置における予め定められた風向ごとの風速の時間経過を表す第3データとに基づいて、観測位置の乱流強度を算出することを特徴としてもよい。
これにより、ライダー観測データに含まれる第1データと、第1データから第2時間の単位のトレンド成分を除去した第2データと、マストにて別途観測された第3データとに基づいて、観測位置の乱流強度が算出される。その結果、制度上、ライダー観測データのみによる第1風車の疲労強度の確認が認められない場合であっても、ライダー観測データとマスト観測データとを用いた第1風車の疲労強度の確認が可能となる。
【0082】
また、算出部104は、さらに、第1データに基づいて、観測位置の乱流強度を算出し、第1データに基づく観測位置の乱流強度と、第2データに基づく観測位置の乱流強度との差と、第3データとに基づいて、観測位置の乱流強度を算出することを特徴としてもよい。
これにより、第1データに基づく乱流強度と、第2データに基づく乱流強度との差に基づいて、第3データからトレンド成分を抽出できる。その結果、トレンド成分が除去されたライダー観測データおよびマスト観測データに基づく乱流強度の算出が可能となる。
【0083】
また、生成部103は、第1データに対する第2データの乱流強度の低減率である第2データ低減率を第3データに適用した第4データをさらに生成し、算出部104は、第4データに基づく乱流強度をさらに算出することを特徴としてもよい。
これにより、第2データ低減率を用いて第3データからトレンド成分を抽出した第4データが生成され、第4データに基づく乱流強度が算出される。その結果、トレンド成分が除去されたライダー観測データおよびマスト観測データに基づく乱流強度の算出が可能となる。
【0084】
また、生成部103は、第2データ低減率の統計値と第3データとに基づいて第4データを補間した第5データをさらに生成し、算出部104は、第5データに基づく乱流強度をさらに算出することを特徴としてもよい。
これにより、第2データ低減率の統計値と第3データとに基づいて第4データを補間した第5データが生成される。その結果、雨や霧など天候の影響でライダー観測データに欠測が生じた場合であっても、マスト観測データで欠測を補間できる。
【0085】
また、本実施の形態にかかる情報処理装置としての管理サーバ10(図3参照)は、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
すなわち、管理サーバ10は、予め定められた観測位置における予め定められた風向ごとの風速の時間経過を表す第1データから、第1時間の単位のトレンド成分を除去した第2データを生成する生成手段としての生成部103と、第2データに基づいて、観測位置の乱流強度を算出する算出手段としての算出部104と、予め定められた風向ごとおよび風速ごとに観測位置の乱流強度を出力する出力手段としての送信制御部105とを有することを特徴とする情報処理装置である。
【0086】
また、本実施の形態にかかる情報処理方法は、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
すなわち、予め定められた観測位置における予め定められた風向ごとの風速の時間経過を表す第1データから、第1時間の単位のトレンド成分を除去した第2データを生成するステップと、第2データに基づいて、観測位置の乱流強度を算出するステップと、予め定められた風向ごとおよび風速ごとに乱流強度を出力するステップと、を含むことを特徴とする情報処理方法である。
【0087】
また、本実施の形態にかかるプログラムは、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
すなわち、コンピュータとしての管理サーバ10に、予め定められた観測位置における予め定められた風向ごとの風速の時間経過を表す第1データから、第1時間の単位のトレンド成分を除去した第2データを生成する機能と、第2データに基づいて、観測位置の乱流強度を算出する機能と、予め定められた風向ごとおよび風速ごとに乱流強度を出力する機能と、を実現させるためのプログラムである。
【0088】
<他の実施の形態>
以上、本実施の形態について説明したが、本発明は上述した本実施の形態に限るものではない。また、本発明による効果も、上述した本実施の形態に記載されたものに限定されない。例えば、図1に示す情報処理システム1の構成、図2に示す管理サーバ10のハードウェア構成、および図3に示す管理サーバ10の制御部11の機能構成は、いずれも本発明の目的を達成するための例示に過ぎず、特に限定されない。上述した処理を全体として実行できる機能が図1の情報処理システム1に備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのようなハードウェア構成および機能構成を用いるかは上述の例に限定されない。
【0089】
また、図4に示す管理サーバ10の処理のステップの順序も例示に過ぎず、特に限定されない。図示されたステップの順序に沿って時系列的に行われる処理だけではなく、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別的に行われてもよい。また、図5乃至図12に示す具体例も一例に過ぎず、特に限定されない。
【0090】
また、上述の実施の形態では、風況観測装置30としてドップラーライダーが採用されているが、これに限定されない。第1時間ごとに観測位置の風況を観測可能な装置であればよいので、特にドップラーライダーに限定されず、他の技術を用いて観測可能な他の装置であってもよい。
【0091】
また、上述の実施の形態では、第1時間が1秒間または略1秒間であり、第2時間が10分間であるとされているが、第1時間および第2時間は特に限定されない。例えば、第1時間は、1秒間未満または1秒間以上の瞬間的といえる時間であってもよい。また、第2時間は、10分間未満または10分間以上の瞬間的ではないといえる時間であってもよい。
【符号の説明】
【0092】
1…情報処理システム、10…管理サーバ、11…制御部、12…メモリ、13…記憶部、14…通信部、15…操作部、16…表示部、30…風況観測装置、50…マスト端末、70…ユーザ端末、101…管理部、102…取得部、103…生成部、104…算出部、105…送信制御部、90…ネットワーク
【要約】
【課題】風力発電に用いられる風車の設置予定地の乱流強度の予測の精度を向上させる。
【解決手段】管理サーバ10の制御部11では、生成部103が、予め定められた観測位置における予め定められた風向ごとの風速の時間経過を表す第1データから、予め定められた時間の単位のトレンド成分を除去した第2データを生成し、算出部104が、第2データに基づいて、観測位置の乱流強度を算出し、送信制御部105が、観測位置における風向ごとおよび風速ごとの乱流強度をユーザ端末に向けて送信する制御を行う。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14