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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】循環型の下水汚泥資源化システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/02 20060101AFI20240821BHJP
   C05F 7/00 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
C02F11/02 ZAB
C05F7/00
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023145734
(22)【出願日】2023-09-08
【審査請求日】2023-11-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524032541
【氏名又は名称】株式会社杜と水技研
(74)【代理人】
【識別番号】100074734
【弁理士】
【氏名又は名称】中里 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100086265
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100076451
【弁理士】
【氏名又は名称】三嶋 景治
(72)【発明者】
【氏名】田巻 成友
(72)【発明者】
【氏名】大山 光俊
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-102898(JP,A)
【文献】特開2002-037685(JP,A)
【文献】特開2007-229638(JP,A)
【文献】特開2007-001778(JP,A)
【文献】特開2005-279610(JP,A)
【文献】特開2005-238103(JP,A)
【文献】特開2020-192521(JP,A)
【文献】特開2005-320182(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111747625(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104154546(CN,A)
【文献】中国実用新案第212894400(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00-11/20
C02F 3/12
B09B 1/00- 5/00
B09C 1/00- 1/10
C05B 1/00-21/00
C05C 1/00-13/00
C05D 1/00-11/00
C05F 1/00-17/993
C05G 1/00- 5/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物である下水汚泥を有用資源への資源化を行う循環型の下水汚泥資源化システムであって、
下水汚泥の含水率を予め設定された所定の原料含水率値まで脱水して原料を形成する脱水手段、
横型円筒形状で中心軸の周りに回転する発酵処理容器を有し、この発酵処理容器を中心軸周りに回転させつつ、所定日数かけて原料を前記発酵処理容器内の一端側から他端側に向けて徐々に移動させ、好気性好熱菌により、前記原料を発酵処理して、第1設定含水率値以下の一次製品を製造する一次製品製造手段、
前記発酵処理容器の一端側に設けられ、前記脱水手段からの原料を受け、この原料を前記発酵処理容器内に供給する原料供給手段、および
前記発酵処理容器の他端側に設けられ、前記一次製品を、前記発酵処理容器外に排出するための一次製品排出手段を備える
循環型の下水汚泥資源化システムにおいて、この下水汚泥資源化システムが、
前記一次製品製造手段からの前記一次製品を受け、該一次製品を乾燥処理して、前記一次製品より含水率の低い第2設定含水率値以下の二次製品を製造する二次製品製造手段、
前記一次製品排出手段から排出される前記一次製品の含水率値を測定する第1含水率測定手段、および
この第1含水率測定手段で測定した前記一次製品の含水率値が前記第1設定含水率値以下の通常時には、前記一次製品の所定量を前記二次製品製造手段に、残量を堆肥・肥料である第1有用資源に加工する第1有用資源加工手段にそれぞれ配分し、前記含水率値が前記第1設定含水率値を超える非常時には、前記一次製品の全量を前記二次製品製造手段に供給する第1配分手段を備え、
前記二次製品製造手段は、前記第1配分手段から供給されてきた前記一次製品を乾燥手段により乾燥して、該一次製品の前記第1設定含水率値より低い値の第2設定含水率値の二次製品を製造する製造部、およびこの製造部で製造された前記二次製品を貯蔵する貯蔵部、並びにこの貯蔵部から前記二次製品を所定量排出する二次製品排出手段を備え、
前記下水汚泥資源化システムは、さらに前記二次製品排出手段からの前記二次製品の所定量を前記原料供給手段に搬送する原料調整用資材搬送経路を備えている、
ことを特徴とする下水汚泥資源化システム。
【請求項2】
前記非常時における前記二次製品の前記原料供給手段へ搬送する量が、前記通常時の量より増大される請求項1の下水汚泥資源化システム。
【請求項3】
前記二次製品の前記原料供給手段へ搬送する量は、前記非常時の量が前記通常時の量に比べて、2~10倍である請求項2の下水汚泥資源化システム。
【請求項4】
前記前記二次製品製造手段は、前記第1配分手段から供給されてきた前記一次製品を前記製造部に供給する供給コンベアを備えている請求項1の下水汚泥資源化システム。
【請求項5】
前記二次製品製造手段は、製造部で製造した前記二次製品を、該製造部から前記貯蔵部に向けて移送する移送手段を備えている請求項1の下水汚泥資源化システム。
【請求項6】
前記二次製品製造手段の製造部は、製造した二次製品の含水率値を測定する第2含水率測定手段、この製造部内部のほぼ全長に渡って設けられ、前記一次製品の上流側から下流側への搬送を行う搬送状態と前記二次製品の下流側から上流側への戻しを行う戻し状態で切り換えが可能な搬送兼戻し手段、および前記第2含水率測定手段により測定された前記二次製品の含水率値に応じて、前記搬送兼戻し手段の搬送状態・戻し状態の切り換えの制御を行う作動制御手段を備えている請求項1の下水汚泥資源化システム。
【請求項7】
前記作動制御手段は、前記第2含水率測定手段により測定された前記二次製品の含水率値が前記第2設定含水率値を超えているとき、前記搬送兼戻し手段を戻し状態に切り換える制御を行う請求項6の下水汚泥資源化システム。
【請求項8】
前記第1設定含水率値が、35%以下の値であり、そして前記第2設定含水率値が、前記第1設定含水率値より2~15%低く設定されている請求項1の下水汚泥資源化システム。
【請求項9】
前記乾燥手段が送風機である請求項1の下水汚泥資源化システム。
【請求項10】
下水汚泥資源化システムが、前記二次製品を、前記第1有用資源である堆肥・肥料より含水率が低い堆肥・肥料である第2有用資源に加工する第2有用資源加工手段を備え、前記原料調整用資材搬送経路には、前記二次製品製造手段からの二次製品を前記第2有用資源加工手段へも供給できるようにする第2配分手段を配した請求項1の下水汚泥資源化システム。
【請求項11】
前記発酵処理容器に、内部の原料を撹拌するための撹拌手段を設けた請求項1の下水汚泥資源化システム。
【請求項12】
前記撹拌手段が、前記発酵処理容器を回転させるための回転作動手段である請求項11の下水汚泥資源化システム。
【請求項13】
前記原料供給手段は、前記脱水手段からの原料を一時的に貯蔵する原料ホッパーを有し、この原料ホッパーの周囲を、該原料ホッパーの外壁との間に間隔を持った状態でジャケットにより包囲して、前記原料ホッパー内の原料を加温するための加温ガスを通す加温ガス用空間を形成し、そして
前記発酵処理容器の他端から前記加温ガス用空間に延び、前記発酵処理容器内での発酵に伴って発生した排出ガスを該発酵処理容器から前記加温ガス用空間に加温ガスとして供給する加温ガス通路
を備えている請求項1の下水汚泥資源化システム。
【請求項14】
前記加温ガス通路に、内部を通る排出ガスを加温するための加温手段を設けた請求項13の下水汚泥資源化システム。
【請求項15】
前記加温手段を作動する加温手段作動制御手段を備えており、この加温手段作動制御手段は、前記第1含水率測定手段で測定した前記一次製品の含水率値が前記第1設定含水率値を超えるとき、前記加温手段を作動して、前記加温ガス通路を流れる排出ガスの温度を上昇させるようになっている請求項14の下水汚泥資源化システム。
【請求項16】
前記原料ホッパーに、該原料ホッパー内の原料の温度を監視する原料温度監視手段を設けるとともに、原料の温度が所定値未満となったとき、前記加温手段作動制御手段は、前記加温手段を作動して、前記加温ガス通路を流れる排出ガスの温度を上昇させるようになっている請求項15の下水汚泥資源化システム。
【請求項17】
前記加温ガス通路に、該加温ガス通路内を流れる排出ガスの温度を監視する排出ガス温度監視手段を設けるとともに、排出ガスの温度が所定値未満のとき、前記加温手段作動制御手段が、前記加温手段を作動して、前記加温ガス通路を流れる排出ガスの温度を上昇させるようになっている請求項15の下水汚泥資源化システム。
【請求項18】
前記加温ガス用空間内の加温ガスを、前記発酵処理容器内に導入する第1加温ガス導入管路を設けた請求項13の下水汚泥資源化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環型の下水汚泥資源化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
国土交通省は、令和5年3月17日の国水下企第99号において、各都道府県下水道担当部局長および各政令都市下水道担当部局長宛に次のような通知をなしている。
『 発生汚泥等の処理に関する基本的考え方について
下水道法第 21 条の 2 第 2 項において、「発生汚泥等の処理に当たつては、脱水、焼却等により その減量に努めるとともに、発生汚泥等が燃料又は肥料として再生利用されるよう努めなければな らない」と規定しているところ、我が国における 2050 年カーボンニュートラルの実現、さらに は、食料安全保障の強化に向けた生産資材の国内代替転換等が重要課題となっている中で、下水汚 泥のエネルギー・肥料としての利用に対する必要性が一層高まっているところである。
特に、肥料としての利用については、「食料安全保障強化政策大綱」(令和4年 12 月 27 日 食 料安定供給・農林水産業基盤強化本部決定)において、2030 年までに、下水汚泥資源・堆肥の肥料 利用量を倍増し、肥料の使用量(リンベース)に占める国内資源の利用割合を 40%まで拡大する旨 が示された。
このような背景を踏まえ、下水道事業を通じた循環型社会の実現への貢献を更に拡大するべく、 今後の発生汚泥等の処理に関する基本的考え方を下記の通り定めたところ、本方針を十分に御了知 の上、下水道事業の実施に努めていただくようお願いする。
各都道府県におかれては、貴管内市町村(政令指定都市を除く。)にもこの旨周知されたい。
本通知は、地方自治法(昭和 22 年法律第 67 号)第 245 条の4第1項の規定に基づく技術的助言 であることを申し添える。』
【0003】
下水汚泥のような有機性廃棄物を資源化装置としては、横型円筒形状で、好気性超好熱菌(以下、超高温菌と称することがある)により、原料である有機性廃棄物を発酵処理する発酵処理容器、この発酵処理容器の一端に設けられ、原料である有機性廃棄物を一時的に貯蔵する原料ホッパーを有し、この原料ホッパーに一時的に貯蔵された原料を前記発酵処理容器内に供給する原料供給手段、および前記発酵処理容器の他端に設けられ、発酵処理された処理済み原料を、前記発酵処理容器外に排出するための排出手段を備え、前記発酵処理容器を中心軸周りに回転させることにより、所定日数かけて原料を前記発酵処理容器内の一端側から他端側に向けて徐々に移動させつつ発酵処理を行い、有機性廃棄物の資源化、すなわち堆肥化・肥料化を行う下水汚泥資源化システム、すなわち密閉型下水汚泥資源化システム(以下、密閉型堆肥化装置という)が知られている。
【0004】
また、特開2005-320182号公報では、有機性廃棄物から堆肥を生成し、その堆肥を循環させて新たな液肥や堆肥を生成するとともに、エネルギー効率に優れ、環境保全にも寄与する技術を提供することを目的とし、この目的を達成するため、その請求項1では、、『固体ゴミと液体ゴミの有機性廃棄物を堆肥および液肥として生成するための有機性廃棄物堆肥化処理システムに係る。すなわち、前記固体ゴミを破砕する破砕機構および破砕または破砕段階の固体ゴミに対し、微生物を抽入して混合する微生物抽入機構を備えた破砕混合装置と、前記破砕混合装置によって破砕混合された固体ゴミを、微生物の活動によって分解発酵する分解発酵機構に送入し、固体ゴミから完熟堆肥へと生成する分解発酵装置と、分解発酵装置によって生成された完熟堆肥の一部と、前記液体ゴミとを原料として液肥を生成する液肥製造装置と、を備えた有機性廃棄物堆肥化処理システム』を提供し、また請求項2では、請求項1記載の有機性廃棄物堆肥化処理システムを限定したものであり、前記破砕混合装置は、破砕された固体ゴミに対し、前記完熟堆肥を抽入して混合させる循環機構を備えたことを特徴とする有機性廃棄物堆肥化処理システムを提案している。
【0005】
上記請求項2記載の有機性廃棄物堆肥化処理システムによれば、破砕混合装置の循環機構が完熟堆肥の一部を装置内に取り入れる。破砕混合装置は、固体ゴミおよび完熟堆肥を混合させる。したがって、循環機構による完熟堆肥の戻しが行われるので、培養材などの微生物抽入機構を必要としないでも分解発酵を促進させることができる。このため、微生物抽入機構で使用する微生物の使用率を減少させることができ、コスト低減に寄与する。
【0006】
前記請求項2記載の有機性廃棄物堆肥化処理システムによれば、破砕混合装置の循環機構が完熟堆肥の一部を装置内に取り入れる。破砕混合装置は、固体ゴミおよび完熟堆肥を混合させる。したがって、循環機構による完熟堆肥の戻しが行われるので、培養材などの微生物抽入機構を必要としないでも分解発酵を促進させることができる。このため、微生物抽入機構で使用する微生物の使用率を減少させることができ、コスト低減に寄与するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-320182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、前記請求項2記載の有機性廃棄物堆肥化処理システムによれば、循環機構による完熟堆肥の戻しが行われるので、培養材などの微生物抽入機構を必要としないでも分解発酵を促進させることができ、微生物抽入機構で使用する微生物の使用率を減少させることができ、コスト低減に寄与するという効果が見込まれるが、当該明細書にも記載があるとおり、用いる完熟堆肥となるまでに、30日から90日かかってしまう。
【0009】
これに対して、最初に述べた密閉型堆肥化装置においては、20日前後で完熟堆肥を製造することができるが、原料の状態等によっては、未熟のまま該装置から排出されてしまうことがある。
【0010】
そこで本発明は、前記密閉型堆肥化装置の構造を土台として、その利点を生かしつつ、上記特開2005-320182号公報の有機性廃棄物堆肥化処理システムの利点を取り入れ、更に改良して、該密閉型堆肥化装置の上記したような問題点を解消した下水汚泥資源化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、下記(1)~(18)の構成の下水汚泥資源化システムにより解決される。
(1)
有機性廃棄物である下水汚泥を有用資源への資源化を行う循環型の下水汚泥資源化システムであって、
下水汚泥の含水率を予め設定された所定の原料含水率値まで脱水して原料を形成する脱水手段、
横型円筒形状で中心軸の周りに回転する発酵処理容器を有し、この発酵処理容器を中心軸周りに回転させつつ、所定日数かけて原料を前記発酵処理容器内の一端側から他端側に向けて徐々に移動させ、好気性好熱菌により、前記原料を発酵処理して、第1設定含水率値以下の一次製品を製造する一次製品製造手段、
前記発酵処理容器の一端側に設けられ、前記脱水手段からの原料を受け、この原料を前記発酵処理容器内に供給する原料供給手段、および
前記発酵処理容器の他端側に設けられ、前記一次製品を、前記発酵処理容器外に排出するための一次製品排出手段を備える
循環型の下水汚泥資源化システムにおいて、この下水汚泥資源化システムが、
前記一次製品製造手段からの前記一次製品を受け、該一次製品を乾燥処理して、前記一次製品より含水率の低い第2設定含水率値以下の二次製品を製造する二次製品製造手段、
前記一次製品排出手段から排出される前記一次製品の含水率値を測定する第1含水率測定手段、および
この第1含水率測定手段で測定した前記一次製品の含水率値が前記第1設定含水率値以下の正常時には、前記一次製品の第1所定量を前記二次製品製造手段に、残量を第1形態の第1有用資源に加工する第1有用資源加工手段にそれぞれ配分し、前記含水率値が前記所定の一次製品含水率値を超える非常時には、前記一次製品の全量を前記二次製品製造手段に供給する第1配分手段を備え、
前記二次製品製造手段は、一端側に設けられた前記一次製品を受け入れる受け入れ部と、少なくともこの受け入れ部近傍に設けられ、前記一次製品を乾燥手段により乾燥して、該一次製品の前記第1設定含水率値より低い値の第2設定含水率値の二次製品を製造する乾燥手段を有する製造部、および他端側に設けられ、前記製造部で製造された前記二次製品を貯蔵する貯蔵部、並びにこの貯蔵部から前記二次製品を所定量排出する二次製品排出手段を備え、
前記下水汚泥資源化システムは、さらに前記二次製品排出手段からの前記二次製品の所定量を前記原料供給手段に搬送する二次製品搬送通路を備えている、
ことを特徴とする下水汚泥資源化システム。
(2)
前記二次製品排出手段で排出される前記二次製品の排出量が、前記正常時の第1排出量と、前記非常時の第2排出量の間で切り換えが可能となっており、前記第2排出量が前記第2排出量の1~5倍である前記(1)の下水汚泥資源化システム。
(3)
前記製造時において、前記二次製品の前記原料供給手段へ搬送する前記所定量(時間当たりの重量)が、前記脱水機から前記原料供給手段へ搬送する脱水汚泥の時間当たりの量を100質量部とした場合、2~10質量部である前記(1)または(2)の下水汚泥資源化システム。
(4)
前記前記二次製品製造手段の製造部は、前記一次製品を前記受け入れ部から前記貯蔵部に向けて移送する製造部移送手段を備えている前記(1)の下水汚泥資源化システム。
(5)
前記二次製品製造手段は、前記製造部で製造した前記二次製品を、該製造部から前記貯蔵部に向けて移送する二次製品移送手段を備えている前記(1)の下水汚泥資源化システム。
(6)
前記二次製品製造手段の製造部は、製造した二次製品の含水率値を測定する第2含水率測定手段、およびこの第2含水率測定手段により測定された含水率値が前記第2設定含水率値以下となるまで、前記一次製品を該製造部に滞留させておく滞留手段を備えている前記(1)の下水汚泥資源化システム。
(7)
前記製造部移送手段が、その作動を切り換えることにより、前記滞留手段としても機能することができる前記(6)の下水汚泥資源化システム。
(8)
前記第1設定含水率値が、35%以下の値であり、そして前記第2設定含水率値が、前記第1設定含水率値より2~15%低く設定されている前記(1)の下水汚泥資源化システム。
(9)
前記乾燥手段が送風機である前記(1)の下水汚泥資源化システム。
(10)
下水汚泥資源化システムが、第2形態の第2有用資源に加工する第2有用資源加工手段を備え、前記二次製品搬送通路には、前記二次製品製造手段からの二次製品を前記第2有用資源加工手段へも供給できるようにする第2配分手段を廃した前記(1)の下水汚泥資源化システム。
(11)
前記発酵処理容器に、内部の原料を撹拌するための撹拌手段を設けた前記(1)の下水汚泥資源化システム。
(12)
前記撹拌手段が、前記発酵処理容器を回転させるための回転作動手段である前記(1)の下水汚泥資源化システム。
(13)
前記原料ホッパーの周囲を、該原料ホッパーの外壁との間に間隔を持った状態でジャケットにより包囲して、前記原料ホッパー内の原料を加温するための加温ガスを通す加温ガス用空間を形成し、そして
前記発酵処理容器の他端から前記加温ガス用空間に延び、前記発酵処理容器内での発酵に伴って発生した排出ガスを該発酵処理容器から前記加温空気用空間に加温ガスとして供給する加温ガス通路
を備えている前記(1)の下水汚泥資源化システム。
(14)
前記加温ガス通路に、内部を通る排出ガスを加温するための加温手段を設けた前記(13)の下水汚泥資源化システム。
(15)
前記第1含水率測定手段で測定した前記一次製品の含水率値が前記第1設定含水率値を超える時、前記加温手段を作動する加温手段作動制御手段を備えている前記(14)の下水汚泥資源化システム。
(16)
前記原料ホッパーに、該原料ホッパー内の原料の温度を監視する原料温度監視手段を設けるとともに、原料の温度が所定値未満となったとき、前記加温手段作動制御手段が、前記加温手段を作動して、前記加温ガス通路を流れる排出ガスの温度を上昇させるようになっている前記(13)の下水汚泥資源化システム。
(17)
前記加温ガス通路に、該加温ガス通路内を流れる排出ガスの温度を監視する排出ガス温度監視手段を設けるとともに、排出ガスの温度が所定値未満のとき、前記加温手段作動制御手段が、前記加温手段を作動して、前記加温ガス通路を流れる排出ガスの温度を上昇させるようになっている前記(14)の下水汚泥資源化システム。
(18)
前記加温ガス用空間内の加温ガスを、前記発酵処理容器内に導入する第1加温ガス導入管路を設けた前記(13)の下水汚泥資源化システム。
【発明の効果】
【0012】
本発明の下水汚泥資源化システムは、堆肥(肥料)の完熟状態は、通常、その含水率に比例し、この含水率値が所定値(通常、35%)以下であれば、その堆肥(肥料)は、完熟堆肥(肥料)であるといえることに着目したもので、一次製品製造手段から排出される一次製品の含水率が所定値より低いとき、すなわち一次製品(堆肥)が完熟状態であると判断して、前記第1配分手段をして、当該一次製品を有用資源(堆肥・肥料)と原料調整用資材(前記の特開2005-320182号公報でいう完熟戻し堆肥)に分割して、それぞれ有効に用いる。
本発明においては、更に、二次製品製造手段を設けて、上記完熟堆肥をさらに乾燥して、一次製品の含水率をより低下させた二次製品を製造し、この二次製品を原料調整用資材として用いるようにしたので、原料の発酵化が促進される。この二次製品は、もちろん堆肥・肥料としても用いることができる。
堆肥・肥料の観点からは、一次製品は二次製品よりは含水率が高いので、ペレット状肥料等に加工しやすく、一方、二次製品は、含水率が低く、粉状であることが多いので、粉状肥料として商業化するのに都合がよい。
【0013】
本発明はまた、前記第1配分手段を利用し、一次製品の含水率が前記所定値を超えるときには、一次製品を有用資源(堆肥・肥料)としては全く使用せず、全量を二次製品製造用として用いるようにしたので、原料調整(含水率調整)用資材の備蓄を増加することができ、非常時において、原料と混合する原料調整(含水率調整)用資材の量を増加して、より原料の含水率を低下させ、発酵を促進して、正常化の促進を行うことができる。
【0014】
なお、本発明の下水汚泥資源化システムにおいては、発酵処理容器および二次製品製造手段の処理容器として、密閉型のものを用いることができるので、原料、一次製品、二次製品の舞い上がりや臭気の拡散による周辺環境の汚染の防止に効果があるものである。
したがって、本発明の下水汚泥資源化システムは、肥料の製造を農地内で行うような都市型農業に用いて特に効果を発するものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例による下水汚泥資源化システムを概念的に示す垂直断面図である。
図2図1に示した下水汚泥資源化システムの変形例を概念的に示す垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施の形態による下水汚泥資源化システムを説明する。
【0017】
下水汚泥資源化システム10は、横型円筒形状で、好気性好熱菌により、原料である有機性廃棄物を発酵処理する発酵処理容器12を備えた一次製品製造装置11、この発酵処理容器の一端12aに設けられた原料供給手段20、および前記発酵処理容器12の他端12bに設けられ、原料mを発酵処理してできた一次製品を、前記発酵処理容器外に排出するための排出ゲートである排出手段30を備えている。これら原料供給手段20と排出手段30は、作動同期手段140により、それらの作動が同期するように制御されるようになっている。
【0018】
前記原料供給手段20は、有機性廃棄物である下水汚泥の含水率を予め設定された所定の原料含水率値まで脱水して原料mを形成する脱水手段15からの原料mを一時的に貯蔵する原料ホッパー22を有し、この原料ホッパー22には、その内部に一時的に貯蔵された原料を前記発酵処理容器12内に供給するためのコンベア24が設けられている。
【0019】
図2に示したように、前記原料ホッパー22には、垂直に該原料ホッパー内に延びる回転軸26aと、この回転軸26aに取り付けられ水平に延びる撹拌羽根等の撹拌部材26bが設けられた回転型の撹拌手段26が設けられており、原料の舞い上がりや臭気の拡散が起こらない程度の周速(例えば、0.1~0.5m/s程度)で回転して、原料の撹拌を行うようになっている。この原料の撹拌により、原料に含水率の分布の均一化が図れる。
【0020】
前記発酵処理容器12は、図2に示したように固定の一対の端板14および16と、これらの間に中心軸の周りに回転可能に取り付けられた円筒形の発酵処理ドラム18を有している。この発酵処理ドラム18の内壁には、推進羽根(図示せず)が設けられていてもよい。この発酵処理ドラム18は、回転駆動装置(図示せず)によって回転駆動され、その一端12aに投入された原料を推進羽根により、所定日数(例えば、21日程度)かけて他端12b側に向けて徐々に移動させつつ発酵処理を行い、有機性廃棄物の資源化、すなわち堆肥化・肥料化を行うものである。なお、上記した原料の発酵処理容器12の移動は、前記コンベア24の原料の押し出しによるものであってもよい。
【0021】
また、上記発酵は、好気性好熱菌によって行われる。好熱菌とは、株式会社東京化学同人発行の「生化学辞典(第4版)によれば、通常55℃以上で生育できる菌を指し、75℃以上でも生育できる好熱菌を高度好熱菌、90℃以上で生育できる菌を超好熱菌というとしている。本発明においては、高度好熱菌以上の菌(微生物)を用いることが望ましい。この好気性高度好熱菌としては、例えば、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)等を用いることができる。このような、好気性高度好熱菌を用いて有機性廃棄物の発酵を行うことにより、例えば、資源化が堆肥化・肥料化である場合、植物の育成に害となる原料中の植物種子や病原菌等を分解死滅させることができる。
【0022】
下水汚泥資源化システム10は、前記一次製品製造装置11からの一次製品を受けて、これを更に乾燥させて、前記一次製品より含水率値が低い二次製品を製造する二次製品製造装置80を備えている。この二次製品は、主目的は原料の含水率値を調整するための原料含水率調整用資材として機能するよう用いられるものであるが、その二次目的は、上記とは異なった形態(態様)の堆肥または肥料用とすることである。前記二次製品製造装置80は、一次製品受け入れ側に配置され、受け入れた一次製品を処理して二次製品を製造する製造部82と、この製造部82で製造された二次製品を貯蔵する貯蔵部84を備えている。構造の詳細は後述する。
【0023】
前記排出ゲート30には、一次製品のための排出通路32が接続されており、この排出通路32の下流端には、配分装置34が設けられている。この配分装置34は、3方弁36とその制御を行うための作動制御手段38を備えている。そして、前記3方弁36の一つの排出口は、前記一次製品を前記二次製品に加工する前記二次製品製造装置80に前記一次製品を第1設定量供給する第1供給通路40に接続されており、他方の排出口は、前記一次製品を第1有用資源に加工する第1有用資源加工手段(図示せず)に前記一次製品を第2設定量供給する第2供給通路42に接続されている。なお、前記二次製品製造装置80は、供給コンベア86を備えていて、前記第1供給通路42からの一次製品は、この供給コンベア86により二次製品製造装置80の製造部82に供給される。
【0024】
前記作動制御手段38には、操作者が操作をして、該作動制御手段38に指令を出す操作パネル70が接続されている。操作者は、この操作パネル70を操作して、前記作動制御手段38をして、前記一次製品製造装置11が正常に機能しているときの3方弁36によって配分される一次製品の配分率(配分量)を調整する。この配分率(配分量)は、例えば、前記第1供給通路40側に1/5,前記第2供給通路42側に4/5と設定する。
【0025】
前記一次製品製造装置11の一次製品排出部分、例えば、図1に示したように、発酵処理容器12の排出ゲート30が設けられた端部には、含水率センサ44が配置されており、この含水率センサ44は、発酵処理容器12から排出される一次製品の含水率を測定して、その値を示す信号S1を前記作動制御手段38に出力する。
【0026】
前記作動制御手段38は、受信した、一次製品の含水率値を示す前記信号S1を所定の含水率値(例えば、所定の肥料完熟度を示す35%)に照らして、それ以下(正常時)か、それを越える(非常時)かを判断し、正常時には、前記3方弁36をして一次製品を上記の比率で配分するよう制御し、他方、非常時には、前記3方弁36の前記第2供給通路42側を閉鎖し、一次製品の全量を前記第1供給通路40側に供給するようにする。これにより、一次製品を、それが第1有用資源として望ましい状態で無い場合には、第1有用資源加工手段に供給しない。したがって、本実施の形態の下水汚泥資源化システムによれば、不良品の有用資源が外部に出回ることがない。
【0027】
前記二次製品製造装置80の製造部82の供給コンベア86が設けられた側(一次製品受け入れ側)には、例えば送風ファンで構成される乾燥機88が、また、製造部82内部のほぼ全長(一次製品の受け入れ側から二次製品の排出側まで)に渡って、コンベア等で構成された搬送兼戻し手段90が設けられており、二次製品製造装置80に供給された一次製品は、前記搬送兼戻し手段90により搬送されつつ、乾燥機88からの送風により徐々に乾燥されて、所定の第2設定含水率値(一次製品の含水率より低い所定の含水率以下の含水率、前記第1設定含水率値より2~15%、特に5%低く設定され、したがって、具体的には、第1設定含水率値が35%のとき、この第2設定含水率値は30%が好ましい)の二次製品とされる。
前記搬送兼戻し手段90には、その搬送・戻しの切り換えや、搬送速度の設定等の制御を行うため、作動制御手段92が設けられている。
【0028】
前記二次製品製造装置80は、その製造部82の排出側に、製造された二次製品を製造部82から貯蔵部84に移送するための移送手段94が設けられており、この移送手段94は、作動制御手段96により、その作動が制御されるようになっている。
【0029】
二次製品製造装置80の製造部82の貯蔵部84に隣接した部分(下流端)には、含水率センサ93が設けられている。この含水率センサ93は、製造部82の下流端に乾燥されつつ搬送されて来た一次製品が目的の二次製品としての所定の含水率になっているかを監視するためのものであり、前記製造部82の下流端における一次製品(二次製品)の含水率を測定して、その含水率値を示す信号S2を作動制御手段92、96に送信する。
【0030】
信号S2を受信した作動制御手段92は、この信号S2が示す含水率値が前記二次製品としての所定の含水率値(30%)以下かを判定し、その判定がYESのとき、搬送兼戻し手段90をそのまま搬送状態で保つ。一方、前記判定がNOのとき、その作動を戻し状態に切り換えて一次製品を上流側に戻し、再び前記乾燥機88の作用を受けるようにするとともに、搬送兼戻し手段90を搬送状態に切り換える。以上は一次製品の含水率が二次製品としての前記所定の含水率を下回るまで繰り返えされる。
【0031】
一方、信号S2を受信した作動制御手段96は、この信号S2が示す含水率値が前記二次製品としての所定の含水率値(30%)以下かを判定し、その判定がYESのとき、移送手段94を作動して、製造された二次製品を貯蔵部84に移送する。一方、前記判定がNOのときには、前記移送手段94の作動は行わず、したがって、不完全な製品の貯蔵部84への移送は行われない。
【0032】
前記貯蔵部84に貯蔵された二次製品は、上述のように、主に、原料の含水率値を調整するための原料含水率調整用資材として機能するよう用いられるものであるが、その固体分に担持され、発酵処理のために機能する好気性好熱菌を原料に添加する作用をもなすものである。そのため、この貯蔵部84には、貯蔵された二次製品を排出するための排出手段99およびその作動を制御する作動制御手段99aが設けられている。この排出手段99は、同期手段142により、作動制御手段99aを介して、前記脱水手段15と同期して作動されるようなっている。なお、この排出手段99による二次製品の排出量は、操作パネル108により設定された量が作動制御手段99aを介して設定される。
上記の二次製品の搬送のため、本下水汚泥資源化システム10は、前記二次製品製造装置80から前記原料供給手段20に前記二次製品(原料調整用資材)を搬送するための原料調整用資材搬送経路100が設けられている。
【0033】
この原料調整用資材搬送経路100は、その途中に配分装置102が設けられている。この配分装置102は、3方弁104とその制御を行うための作動制御手段106を備えている。そして、前記3方弁36の一つの排出口は、前記二次製品を原料調整用資材として前記原料調整用資材搬送経路100の下流部分に接続されており、他方の排出口は、前記二次製品を第2有用資源に加工する第2有用資源加工手段(図示せず)に前記二次製品を第2設定量供給する供給通路110に接続されている。なお、ここで、第2有用資源とは、原料となる二次製品の含水率が一次製品のそれより低く設定されていることから、より乾燥した粉体状の肥料(堆肥)等を指すものである。
【0034】
ここで、前記した通常時(信号S1が示す含水率が所定値以下)と、非常時(信号S1が示す含水率が所定値を越える場合)における排出手段99と配分装置102の作動について説明する。
【0035】
先ず、前提として、脱水機15から含水率85%の脱水汚泥(原料)mを1時間当たり200kg、1日当たり5時間排出するものとする。したがって、原料供給手段20には、1日当たり1000kgの原料が供給される。
【0036】
通常時
上記原料(脱水汚泥)100質量部に対して、5質量部の二次製品(原料調整用資材(含水率30%))を原料供給手段20に供給するとすると、前記配分装置102から原料供給手段20に供給される二次製品は、1時間当たり10kg、そして、脱水機15と同期して、1日当たり5時間供給されるので、1日当たり50kgとなる。
したがって、排出手段99からの二次製品の排出量は、1時間当たり10kg以上、そして、脱水機15と同期して、1日当たり5時間供給されるので、1日当たり50kg以上が必要である。すなわち、排出手段99からの二次製品の排出のトータル量は、原料調整用資材としての必要分と余剰分を加算した量となる。
前記余剰分は、供給通路110を経て、前記二次製品を第2有用資源に加工する第2有用資源加工手段(図示せず)に供給される。
【0037】
前記必要分および余剰分に基づいてのトータル量の設定、ならびに上記同期のためのこのトータル量の時間当たりの排出量の設定、および3方弁104の配分量を決定するための2つの排出口の開度の指示は、操作パネル108によって行われる。
【0038】
したがって、操作パネル108により作動制御手段99aに前記トータル量の時間当たりの排出量が指示されると、この作動制御手段99aは、前記排出手段99をして、二次製品を上記時間当たりの排出量で排出させる。
一方、3方弁104の作動を制御する作動制御手段106は、操作パネル108により、前記配分量(配分比率)が指示されると、前記排出手段99から上記時間当たりの排出量で供給されてくる二次製品を、上記の分量で配分して、原料供給手段20と第2有用資源加工手段に供給する。
【0039】
上記を具体的数値をもって以下説明する。以下の説明では、二次製品を、原料供給手段20に1時間当たり10kg、第2有用資源加工手段に1時間当たり5kg供給するものとする。すなわち、3方弁104の原料供給手段20への供給量:第2有用資源加工手段への供給量は、2:1である。
【0040】
すると、通常時においては、排出手段99から1時間当たり15kgの二次製品が排出され、これが3方弁104で上記の2:1に配分され、「2」が原料供給手段20に、「1」が第2有用資源加工手段に供給される。
【0041】
非常時
この非常時(一次製品の含水率が所定値(35%)を超えた状態)には、原料供給手段20への二次製品の供給量を前記の通常時より増大するが、ここでは、1時間当たりの供給量を5倍である50kgとする場合を考える。この非常時には、第2有用資源加工手段への二次製品の供給量を0とすると、前記3方弁104の第2有用資源加工手段側への排出口側は閉ざされ、原料供給手段20への供給量を100%とする。したがって、原料供給手段20へは、二次製品が1時間当たり50kg、1日当たり5時間の作動であるから、トータルで1日当たり250kg供給される。
その結果、この非常時においては、1日当たり原料mが1000kg、二次製品(原料調整用資材)が250kgとなり、コンベア24で供給される原料の含水率は、74%と通常の場合の8%減となるとともに、固形分が約2.2倍となるため、発酵に寄与する微生物量も約2.2倍となる(微生物は通常固形分に担持されており、固形分量にほぼ比例するため)。
非常時においては、このように、二次製品(原料調整用資材)の原料供給手段20への供給量を、通常時より増大することにより、一次製品製造装置11に供給される原料の含水率を下げる一方で、発酵に寄与する微生物の量を増大させることにより、通常時より、発酵を促進させ、一次製品製造装置11から排出される一次製品の発酵状態(含水率値で示される)を徐々に正常(正規:35%以下)に戻す。
二次製品(原料調整用資材)の原料供給手段20への供給量の増大は、通常時を1とすると、2倍から10倍とすることが好ましい。この増大の上限は、通常時における一次製品製造装置11の発酵処理容器12の余裕分(原料の発酵処理容器12内への投入量は、70~80%であるので、30~20%の空間がある)を考慮して決定される。
【0042】
前記貯蔵部84には、そこに貯蔵された二次製品の量(上面高さで判定する)が適正であるかを監視するため、上限センサ86および下限センサ88が設けられている。
前記上限センサ86は、排出手段99の作動制御手段99aおよび3方弁104の作動制御手段106に接続されており、貯蔵部84に貯蔵された二次製品の量が所定上限量を超えたとき(貯蔵二次製品の上面が上限レベルを超えたとき)、信号S3を前記作動制御手段99aおよび作動制御手段106に送信する。
【0043】
前記作動制御手段99aは、前記信号S3を受信すると、排出手段99を作動して、前記貯蔵部84から貯蔵二次製品を排出する。そして、前記作動制御手段106は、前記信号S1を受信すると、3方弁104を、二次製品が供給通路110側にのみ配分されるように設定して、このときは、第2有用資源加工手段のみに二次製品を供給する。
【0044】
前記下限センサ88は、3方弁36の作動制御手段38に接続されており、貯蔵部84に貯蔵された二次製品の量が所定下限量を下回ったとき(貯蔵二次製品の上面が下限レベルより下がったとき)、信号S4を前記作動制御手段38に送信する。前記作動制御手段36は、前記信号S4を受信すると、前記3方弁36を、第1供給通路40側へ供給される一次製品の量が増大するように設定し、これにより、前記貯蔵部84に貯蔵される二次製品の量が増大するように設計されている。
【0045】
上記した発酵の促進のためには、一次製品製造装置11に供給される原料の加温も有効である。その例を、図2を参照して、以下説明する。なお、この図2に示した下水汚泥資源化システムにおいては、上記の加温についての機構を重点的に説明する。したがって、この図2においては、二次製品製造装置およびそれのみに関連する部材部品については図示せず、また明細書におけるその文章も省略する。
【0046】
前記原料ホッパー22の周囲には、該原料ホッパーの外壁との間に間隔を持った状態で、該原料ホッパーを包囲するようにジャケット150が配置されており、該原料ホッパー内の原料である有機性廃棄物を加温するための加温ガスを通す加温ガス用空間152が形成されている。
【0047】
前記発酵処理容器12の他端12bから前記加温ガス用空間152に延びるように、前記発酵処理容器内での発酵に伴って発生した排出ガスを該発酵処理容器から前記加温空気用空間に加温ガスとして供給する加温ガス通路160が設けられている。この加温ガス通路160の前記発酵処理容器12の他端12b側には、発酵処理容器12内に発酵に伴って発生する排出ガスを装置外に排出するための排気ファン162が設けられている。
【0048】
前記加温ガス通路160には、内部を通る排出ガスを加温するための加温手段170が設けられている。上記したように、本発明の下水汚泥資源化システムにおいては、有機性廃棄物の発酵に超好熱菌を用いるので、原料である脱水汚泥の発酵促進のために加温するためと、脱水汚泥の含水率を更に低減にする目的で、加温ガスを加温するために、この加温手段170が設けられている。
【0049】
この加温手段170の作動を制御するため、加温手段制御手段172が設けられている。また、この加温手段制御手段172により前記加温手段170を目的に沿って制御するため、前記加温ガス通路160には、排出ガス温度監視手段174が設けられて、その中を流れる加温ガスの温度を検出・監視している。また、前記原料ホッパー22内には、原料温度監視手段176が設けられて、該原料ホッパー内の原料の温度を検出・監視している。
【0050】
前記発酵処理容器12内に設けられた含水率センサ44は、前記加温手段制御手段172にも接続されており、一次製品の含水率が所定値(35%)を越えた非常時に発せられる信号S1は、前記加温手段制御手段172にも送信される。
信号S1を受信した加温手段制御手段172は、加温手段170を作動して、加温ガス通路160を流れる排出ガス(加温ガス)を40℃以上に加温し、前記加温ガス用空間152に供給する。
以上により、非常時には、脱水汚泥である原料は、増量された原料調整用資材(二次製品)の供給を受けて、その含水率が低下されるとともに、発酵に用いられる微生物の量が増大し、さらには、上記の加温を受けて、前記微生物の活性が向上され、以上により、発酵が促進されることから、更に高速で、一次製品の発酵状態(含水率値で示される)を正常(正規:35%以下)に戻すことができる。
【0051】
前記加温ガス用空間152には、該加温ガス用空間152から排出される加温ガスを前記発酵処理容器12の上部空間に導入するための加温ガス導入管路154が接続されていることが好ましい。この加温ガス導入管路154により、加温ガスを前記発酵処理容器12の上部空間に導入し、加温して発酵の促進を図ることができる。
【0052】
前記原料ホッパー22内には、供給されてきた原料の温度を監視する温度センサ156を設けてもよい。この温度センサ156は、一次製品の含水率とは関連なく、原料温度が所定値以下のとき作動制御手段172に信号を送って、加温手段170を作動して、加温ガスの温度を上昇させて、原料の温度を上昇させるものである。この加温によれば、冬場などに、脱水汚泥の温度が極端に下がり、原料の発酵が完全でなく、遅れ、一次製品が上記した非常状態になることの防止の一助となることができる。
【0053】
本発明の下水汚泥資源化システム10においては、上記の構成により、非常時には、脱水汚泥である原料は、増量された原料調整用資材(二次製品)の供給を受けて、その含水率が低下されるとともに、発酵に用いられる微生物の量が増大し、発酵が促進されるのおで、速やかに通常状態に復帰させることができる。
【符号の説明】
【0054】
10 下水汚泥資源化システム
11 一次製品製造装置
12 発酵処理容器
15 脱水機
20 原料供給手段
22 原料ホッパー
24 コンベア
30 排出手段
34 配分手段
80 二次製品製造装置
82 製造部
84 貯蔵部
102 配分手段
【要約】      (修正有)
【課題】短時間で堆肥が可能な密閉型の下水汚泥資源化システムを提供する。
【解決手段】下水汚泥の含水率を予め設定された所定の原料含水率値まで脱水する脱水手段15、横型円筒形状で中心軸の周りに回転する発酵処理容器で所定日数をかけて好気性好熱菌により、発酵処理し第1設定含水率値以下の一次製品を製造する一次製品製造手段11、一次製品を発酵処理容器外に排出するための一次製品排出手段を備える循環型の下水汚泥資源化システムで、一次製品製造手段からの一次製品を乾燥処理し、一次製品より含水率の低い二次製品を製造する二次製品製造手段82を有する装置とする。
【選択図】図1
図1
図2