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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】液体医薬品の品質を特定するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3577 20140101AFI20240821BHJP
   G01N 21/359 20140101ALI20240821BHJP
【FI】
G01N21/3577
G01N21/359
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2022530198
(86)(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2020052043
(87)【国際公開番号】W WO2021144038
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】102020101082.6
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522203145
【氏名又は名称】ロドリゲス ガルシア、ローラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス ガルシア、ローラ
(72)【発明者】
【氏名】マインカ、デイビッド
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5187368(US,A)
【文献】特開平9-236553(JP,A)
【文献】特表2018-509606(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1789981(CN,A)
【文献】特表2018-517912(JP,A)
【文献】特開平8-210973(JP,A)
【文献】特表2006-527358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/01
G01N 21/17-21/74
G01N 21/84-21/958
G01M 3/00- 3/40
G01N 33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体医薬品の品質を特定するための方法であって、
液体医薬品を密封容器に提供する段階と、
前記液体医薬品が前記密封容器の第1部分にサンプル層を形成するように、前記密封容器を配置する段階と、
前記サンプル層を通じて光ビームを方向付ける段階と、
前記サンプル層のスペクトルを測定する段階であって、前記スペクトルはNIRスペクトルまたはラマンスペクトルである、測定する段階と、
前記スペクトルと予想医薬品に対応する基準スペクトルとを比較することにより、前記液体医薬品の前記品質を特定する段階とを備え、
前記密封容器がさらに第2部分を有し、前記第1部分が前記第2部分より小さい断面を有し、前記密封容器がボトルネック部分およびボトル本体部分を有するボトル型であり、前記ボトルネック部分が前記密封容器の前記第1部分を含み、前記ボトル本体部分が前記密封容器の前記第2部分を含み、前記第1部分に形成される前記サンプル層が前記液体医薬品のバルク領域より小さい厚さを有するように前記密封容器が配置され
前記密封容器を配置する段階は、前記サンプル層が、NIR光ビームが通過する気体/液体界面および容器/液体界面を有するように、前記密封容器の長手軸と重力軸との間に容器角度を設ける段階を有する、方法。
【請求項2】
前記スペクトルが、透過NIRスペクトル、透過・反射NIRスペクトル、または反射NIRスペクトルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体医薬品の厚さが前記バルク領域と前記サンプル層との間で連続して減少するように、前記密封容器が配置される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプル層の厚さが10mm以下および/または0.1mm以上となるように、前記密封容器が配置される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
記容器角度が鋭角または垂直角である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記容器角度を設ける段階が、前記予想医薬品に応じて前記容器角度を選択する段階を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記容器角度が90度以下および/または10度以上である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記サンプル層の前記スペクトルを測定する段階が、光源および検出器を有する測定システムによってもたらされ、前記容器角度を設ける段階が、重力軸に対して測定システムを傾斜させる段階を有する、請求項から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記気体/液体界面が重力軸に対して垂直であり、且つ前記容器/液体界面が重力軸に対して非垂直であるように、前記密封容器が配置される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記気体/液体界面が前記容器/液体界面に対して傾斜しているように、前記密封容器が配置される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記サンプル層の第1界面が前記サンプル層の第2界面に対して傾斜しているように、前記密封容器が配置されており、前記第2界面が前記第1界面と向かい合っている、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記光ビームが前記サンプル層を最初に通過した後に、前記光ビームが前記サンプル層を二度目に通過するように、前記光ビームを反射する段階をさらに備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記光ビームを反射する段階が、前記光ビームの光源と比べて、前記密封容器の向かい合った箇所に配置された反射器によってもたらされる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記反射器が、湾曲反射面および/または粗い反射面を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
NIR光ビームが、重力軸に対して非平行な方向に、前記サンプル層を通じて方向付けられる、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
NIR光ビームが気体/液体界面を非垂直に通過するように、前記NIR光ビームが前記サンプル層を通じて方向付けられる、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記密封容器を配置する段階が、前記密封容器を固定するサンプルホルダによってもたらされる、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記サンプルホルダが、前記密封容器の容器表面に対応する成形したホルダ表面を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記成形したホルダ表面が、前記容器表面の凹みに対応する少なくとも1つの突起を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記成形したホルダ表面が反射器を含む、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
液体医薬品の品質を特定するためのシステムであって、
密封容器に含まれる液体医薬品が前記密封容器の第1部分にサンプル層を形成するように、前記密封容器を固定するように構成されたサンプルホルダと、
光源および検出器を有する測定装置とを備え、
前記測定装置が前記サンプル層を通じて光ビームを方向付けするように構成されており、
前記測定装置が前記サンプル層のスペクトルを測定するように構成されており、
前記スペクトルがNIRスペクトルまたはラマンスペクトルであり、
前記密封容器がさらに第2部分を有し、前記第1部分が前記第2部分より小さい断面を有し、前記密封容器がボトルネック部分およびボトル本体部分を有するボトル型であり、前記ボトルネック部分が前記密封容器の前記第1部分を含み、前記ボトル本体部分が前記密封容器の前記第2部分を含み、前記第1部分に形成される前記サンプル層が前記液体医薬品のバルク領域より小さい厚さを有するように前記密封容器が配置され
前記サンプル層が、NIR光ビームが通過する気体/液体界面および容器/液体界面を有するように、前記密封容器の長手軸と重力軸との間に容器角度を設けるように構成された傾斜装置をさらに備える、システム。
【請求項22】
反射器をさらに備え、前記反射器が、前記光源および前記検出器と比べて、前記密封容器の向かい合った箇所に配置されている、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
記容器角度が鋭角または垂直角である、請求項21または22に記載のシステム。
【請求項24】
前記傾斜装置が、予想医薬品に応じて容器角度を設けるように調節可能である、請求項21から23のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の態様は概して、液体医薬品の品質を特定するための方法に関する。本方法は、具体的には、密封容器に入った医薬品を用いて行われる。本願の態様は、液体医薬品の品質を特定するための対応するシステムにも関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品は、病気を治すまたは予防するのに役立つ。医薬品の間違った製造もしくは保管は、治療効果の欠如につながる可能性があり、または医薬品が適用される有機体に悪影響をもたらすことさえあり得る。
【0003】
したがって、医薬品の品質を判断することは重要である。そのような判断は、例えば、サンプル容器に入った医薬品サンプルの分光測定値を評価することにより行われ得る。
【0004】
上記手法の多くは、サンプル準備を必要とするか、またはサンプルの破壊をもたらす。さらに、こうした手法は多くの場合、スペクトルを評価するために、分析実験室だけでなく、例えば、高度な専門知識を有する訓練された人材を必要とする。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、上記課題のうちの少なくとも一部を克服することを目的とする。この目的は、請求項1に記載の方法によって、また請求項25に記載のシステムによって解決される。本発明のさらなる利点、特徴、態様、および詳細は、従属クレーム、本明細書、および図面から明らかである。
【0006】
開示される方法は、密封容器に入った液体医薬品を提供する段階を含む。密封容器は、液体医薬品が密封容器の第1部分にサンプル層を形成するように配置される。光ビームがサンプル層を通じて方向付けられており、サンプル層のスペクトルが測定される。スペクトルは、NIRスペクトルでもラマンスペクトルでもよい。このスペクトルを基準スペクトルと比較することにより、液体医薬品の品質を特定することができる。基準スペクトルは、予想医薬品に対応してよい。
【0007】
本開示による方法は、密封容器、すなわち液体医薬品の密閉(一次)包装で提供された液体医薬品の品質を分光的に特定することを目指している。密封容器に入った医薬品を判断することにより、容器を開封することも、サンプルの準備または抽出を行うことも必要とせずに、迅速且つ容易な測定が可能になる。さらに本方法によって、殺菌した医薬品の品質を、無菌状態を損なわずに判断することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明は、添付図面と併用される本発明の実施形態についての以下の説明を参照することで、より良く理解されるであろう。
【0009】
図1】本開示の一実施形態による方法に用いられるシステムを概略的に示す図である。
【0010】
図2】本開示の一実施形態による方法に用いられる、傾斜した密封容器を有するシステムを概略的に示す図である。
【0011】
図3】本開示の一実施形態による方法に用いられる、傾斜した測定装置を有する測定システムを概略的に示す図である。
【0012】
図4】本開示の一実施形態による方法の結果として生じた例示的スペクトルを示す図である。
図5】本開示の一実施形態による方法の結果として生じた例示的スペクトルを示す図である。
図6】本開示の一実施形態による方法の結果として生じた例示的スペクトルを示す図である。
図7】本開示の一実施形態による方法の結果として生じた例示的スペクトルを示す図である。
【0013】
図8】本開示の一実施形態による方法に用いられるサンプルホルダを概略的に示す図である。
【0014】
図9】本開示の一実施形態による方法に用いられる傾斜した測定装置を概略的に示す図である。
図10】本開示の一実施形態による方法に用いられる傾斜した測定装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、液体医薬品110の品質を特定するためのシステム100を示している。システム100は、液体医薬品110の品質を特定するための、本明細書に開示される方法を行うのに適応し得る。
【0016】
液体医薬品110は、密封容器120に提供される。液体医薬品110は、注射液のようにすぐに使える液体でよい。密封容器120は、液体医薬品110の密閉(一次)包装に対応する。密封容器120は、第1部分122と第2部分124とを有してよい。第1部分122は、第2部分124より小さい断面を有してよい。図1では、密封容器はボトル型であり、ボトルネック部分とボトル本体部分とを有する。密封容器120は他の形状も有してよく、例えば、密封容器は液体医薬品を充填した注射器でも輸液バッグでもよい。
【0017】
密封容器120は、液体医薬品がサンプル層112を形成するように配置される。サンプル層112は、密封容器120の第1部分122に位置してよい。第2部分124は、液体医薬品110のバルク領域114を含んでよい。
【0018】
サンプル層112の厚さが、さらに後述されるスペクトルを測定するのに適した光路長を提供するように構成されてよい。サンプル層112の厚さは、予想医薬品および/または目標スペクトルによって決まり得る。例えば、水性溶媒を含むと予想された液体医薬品の透過・反射NIRスペクトルを測定するには、サンプル層の厚さが約0.5~2mmでよい。
【0019】
図1では、密封容器120は、密封容器の長手軸が重力軸に対して垂直になるように配置されている。そのような配置によって、サンプル層112が提供され得る。
【0020】
図1に示すように、光ビーム130が、密封容器120の第1部分122にあるサンプル層112を通じて方向付けられている。光ビーム130は、光源(不図示)から放射されてよい。光ビーム130は、(例えば、図2図3、および図10に示す)測定窓132を通じて、サンプル層112の方向に方向付けられてよい。光ビーム130は、検出器(不図示)で検出されてよい。光源および検出器は、(例えば、図9および図10に示す)測定装置190、例えば分光計の一部でよい。測定装置も、測定窓132を有してよい。
【0021】
図1に示すように、システム100はさらに、反射器160を備えてよい。反射器160は、光源および/または検出器が設けられている密封容器120の箇所と向かい合った密封容器の箇所に配置されてよい。光ビーム130がサンプル層112を最初に通過した後に、反射器160は光ビーム130を反射し得るので、光ビーム130はサンプル層112を二度目に通過するようになる(すなわち、透過・反射)。サンプル層112を二度通過することで、光路長はサンプル層112の厚さdの2倍の長さになる。
【0022】
図1では、サンプル層112は、密封容器120の第1部分122として、ボトルネック部分に位置している。サンプル層112をボトルネック部分に形成すると、ボトルネック部分には通常、光ビームがサンプル層112を通過するのを妨げる可能性があるラベルがないので有利かもしれない。
【0023】
密封容器の配置は、サンプルホルダ170によって提供され得る。サンプルホルダ170は、密封容器120を固定するように構成されてよい。具体的には、サンプルホルダ170は、光ビーム130および/または反射器160に対して、あらかじめ定められた位置に密封容器を固定するように構成されてよい。サンプルホルダ170は、例えば、図8に示すような反射器を有してよい。サンプルホルダ170は、液体医薬品110が密封容器120の第1部分122にサンプル層112を形成するように、密封容器120を固定するように構成されてよい。
【0024】
図1では、サンプルホルダは、第1サンプルホルダ要素172と第2サンプルホルダ要素174とを有する。第1サンプルホルダ要素172は、光ビーム130に対して、および/または測定装置190に対して、密封容器120の固定位置を提供するように構成されてよい。第2サンプルホルダ要素174は、反射器160に対して密封容器120の固定位置を確保するように構成されてよい。
【0025】
サンプル層112を通じて光ビーム130を方向付けることで、サンプル層112のスペクトルの測定が可能になる。光ビーム130は、光子の非弾性散乱を励起するNIR光ビームでもレーザビームでもよい。測定されるスペクトルは、NIRスペクトルでもラマンスペクトルでもよい。図4図7は、説明される実施形態による開示される方法の結果として生じ得るNIR透過・反射スペクトルを示している。
【0026】
液体医薬品110の品質を特定するために、測定されたスペクトルは基準スペクトルと比較されてよい。基準スペクトルは、液体医薬品110と同じであると予想されている予想医薬品に対応してよい。液体医薬品110の品質の特定は、計量化学に基づいてよい。例えば、スペクトルと基準スペクトルとの間のスペクトル距離(例えば、ユークリッド距離、マハラノビス距離)を求めることができる。スペクトル距離は、測定されたスペクトルと基準との、所与の誤差範囲内の類似性を判断するのに用いられてよい。
【0027】
測定されたスペクトルには密封容器に由来する信号も含まれ得ることが分かるであろう。しかしながら、特定の液体医薬品用の密封容器は通常、標準化されている。したがって、液体医薬品および予想医薬品の密封容器並びにその信号も全く同じであってよい。これらの信号は、例えば計量化学によって最小限にされても、除去されてもよい。
【0028】
上述したように、図1では、密封容器の長手軸が重力軸に対して垂直になるように、密封容器120が配置されている。しかしながら、そのような配置は、例えば、測定されたスペクトル、密封容器120の充填状態、および/または液体医薬品110の吸収係数に応じて、サンプル層112を提供しない場合がある。例えば、そのような配置は、サンプル層112として適していない液体医薬品の層を形成することがある。例えば、厚さd、すなわち、この層の向かい合った2つの界面間の距離が、スペクトルの測定を可能にするには大き過ぎることがある。
【0029】
後者の場合には、密封容器は、密封容器の長手軸と重力軸との間に鋭角の容器角度が設けられるように配置されることがある。容器角度αは、図2および図3に示されている。容器角度αは、重力軸Gと密封容器120の長手軸150との間に設けられている。図2および図3では、容器角度αは鋭角であり、第1部分122が第2部分124に対して持ち上げられている。
【0030】
鋭角の容器角度αで密封容器を配置することで、第1部分における液体医薬品110の厚さが減少し得るので、サンプル層112が厚さdで形成されるようになる。サンプル層の厚さdは、光ビーム130と同じ方向に定められる。サンプル層の厚さdは、サンプル層112の第1界面116Aと第2界面118Aとの間の距離に対応する。図2および図3では、第1界面116Aは気体/液体界面116Bに対応しており、第2界面118Aは容器/液体界面118Bに対応している。しかしながら、第1界面116Aも容器/液体界面を有する場合がある。
【0031】
図2および図3に示すように、密封容器は、サンプル層112の第1界面116Bがサンプル層の第2界面118Bに対して傾斜するように配置されてよい。
【0032】
図2に示すように、容器角度αは、測定装置190に対して密封容器120のみを傾斜させることにより実現され得る。例えば、サンプルホルダ170(不図示)は、容器角度αが設けられるように、測定装置190に対して第1角度β1で密封容器120を固定するように構成されてよい。
【0033】
図4は、FT-NIR分光計で測定された例示的な透過・反射NIRスペクトル(SNV:標準正規確率変数)を示している。灰色のスペクトルは、液体医薬品として10mgのOnkotroneに関するものであり、密封容器を90°の容器角度で配置した。黒色のスペクトルは、液体医薬品として10mgのOnkotroneに関するものであり、密封容器を84°の容器角度で配置した。傾きでサンプル層の厚さが変化した。黒色のスペクトルでは、例えば、灰色のスペクトルには存在しない5500~6500cm-1の領域に信号を示すことが分かるであろう。これらの信号は、液体医薬品の品質を特定するのに必要であるか、または役に立つことがある。
【0034】
図3に示すように、容器角度αは、測定装置190全体を密封容器120と一緒に傾斜させることによっても実現され得る。例えば、測定装置190の下に傾斜装置(不図示)が設けられてよい。傾斜装置は、(例えば、図10に示される)傾斜台180を有してよい。傾斜装置は、容器角度αを設けるように構成されてよい。例えば、傾斜装置は、測定装置190の片方の箇所を、測定装置190のもう一方の箇所に対して持ち上げてよい。例えば、測定装置の角度β2が、測定装置と、測定装置が置いてある平面(例えば、台または地面)との間に設けられてよい。そのような配置が、図9および図10に例示的に示されている。
【0035】
図5は、FT-NIR分光計で測定された例示的な透過・反射NIRスペクトル(SNV)を示している。これらのスペクトルは、液体医薬品としてAvastin 400mg(破線および一点鎖線)とPerjeta 420mg(実線および点線)とに関する。複数の液体医薬品のそれぞれについて、FT-NIR分光計を測定のために、あるときは傾斜させ(破線および実線)、あるときは傾斜させなかった(一点鎖線および点線)。傾きでサンプル層の厚さが変化した。傾斜したFT-NIR分光計で測定されたスペクトルでは、例えば、FT-NIR分光計が傾斜していなかった場合のスペクトルには存在しない4000~7000cm-1の領域に信号を示すことが分かるであろう。
【0036】
図6は、FT-NIR分光計で測定された例示的な透過・反射NIRスペクトル(SNVおよび25個の平滑点を有する一次導関数)を示している。これらのスペクトルは、液体医薬品としてAvastin 100mgに関する。測定のたびに、異なる測定装置角度β2(すなわち、21°、22°、23°、24°、および25°)でFT-NIR分光計を傾斜させた。この例では、最小厚のサンプル層をもたらした25°で、最も良い信号が得られた(破線を参照)。
【0037】
図7は、FT-NIR分光計で測定された例示的な透過・反射NIRスペクトル(生データ)を示している。これらのスペクトルは、液体医薬品としてEylea 4mgに関する。各測定について、FT-NIR分光計を9°(実線)のβ2でまたは10°(破線)のβ2で傾斜させた。両方の測定装置角度でサンプル層を2回測定した。β2=10°の2つのスペクトルは、β2=9°のスペクトルと比べて、互いにより接近していることが分かるであろう。この例では、より大きい厚さのサンプル層をもたらしたより低い値のβ2で、最も良い再現性が得られた。より良い再現性は、気泡のような界面効果による感度の低さにあるのかもしれない。
【0038】
これらの例から分かるように、液体医薬品ごとに異なる容器角度αを設けることが有利になり得る。
【0039】
傾斜装置180は、容器角度αを調節するように調節可能であってよい。図10に示すように、システム100は電子チップ176を備えてよい。電子チップ176は、傾斜装置180と通信するように構成されてよい。電子チップ176は、例えば、傾斜装置が容器角度αを自動的に調節するような傾斜装置180の作用を引き起こすように構成されてよい。
[さらなる態様の説明]
【0040】
次に、本発明のより一般的な様々な態様をより詳細に明示する。そのように明示される各態様は、相反する明確な指示がない限り、任意の他の実施形態または任意の他の態様と組み合わされてよい。各図に言及する参照符号は、説明のみを目的にしており、それぞれの態様をこれらの図に示す実施形態に限定することを意図するものではない。
【0041】
次に、密封容器に入る液体医薬品に関する態様を説明する。
【0042】
一態様によれば、液体医薬品は、すぐに使える液体である。例えば液体医薬品は、注射液、ワクチン、または点眼薬でもよい。例えば、液体医薬品は、Avastin 100mg、Avastin 400mg、Cellcristin、Epirubicin、Eylea、5-FU Baxter、Jevtana、Herceptin、Lucentis、MabThera、Neotaxan、Opdivo、Paclitaxel、Perjeta、RoActemra、Soliris、またはTruximaでもよい。
【0043】
一態様によれば、密封容器は、液体医薬品の未開封の一次包装である。例えば、密封容器は殺菌した一次包装でよい。
【0044】
この態様の利点は、医薬品を汚染することも医薬品の無菌状態を損なうこともなく、医薬品の品質を判断できる点にある。
【0045】
例えば、密封容器は、カプセル、ボトル、注射器、または輸液バッグでもよい。ボトルの一例は、例えば、注射液バイアルである。注射液バイアルは、医療の多くの分野および化学実験室で用いられており、溶液または懸濁液のような液体を含み得る。注射液バイアルは、隔壁(セプタム)または注射プラグで密閉されてよい。
【0046】
一態様によれば、密封容器は、0.05~1000mlの容量を有する。密封容器は、0.3ml~500mlの容量も有してよい。密封容器は、0.5~200mlの容量も有してよい。一態様によれば、密封容器は、0.05~10mlの容量を有する小さい容器である。この小さい容器は、0.2~5mlの容量も有してよい。別の態様によれば、密封容器は、100~1000mlの容量を有する大きい容器である。この大きい容器は、250~1000mlの容量も有してよい。
【0047】
一態様によれば、密封容器は単回投与容器である。別の態様によれば、密封容器は多回投与容器である。
【0048】
一態様によれば、密封容器は、ガラス、プラスチック、および/またはゼラチンを含む。
【0049】
一態様によれば、密封容器は不透明ではない。例えば、密封容器は透明容器でよい。
【0050】
一態様によれば、密封容器の第1部分は不透明ではない。例えば、第1部分は透明でよい。第1部分には、例えば、紙を含むラベルがなくてよい。
【0051】
上記態様の利点は、光ビームのスペクトル領域の少ししか、または何も容器に吸収されないという点にある。
【0052】
次に、密封容器の配置および形成されるサンプル層に関する態様を説明する。
【0053】
一態様によれば、密封容器は、液体医薬品の厚さがバルク領域とサンプル層との間で変化するように配置される。液体医薬品の厚さは、光ビームと同じ方向に定められる。液体医薬品の厚さは、サンプル層および/またはバルク領域の厚さを含む。バルク領域とは、液体医薬品の残りの容量を含む液体医薬品の領域、すなわち、サンプル層の容量を差し引いた液体医薬品の容量を指す。バルク領域は、液体医薬品の主な容量を含む領域を指してもよい。
【0054】
一態様によれば、密封容器は、サンプル層が液体医薬品のバルク領域より小さい厚さを有するように配置される。例えば、液体医薬品の厚さは、バルク領域とサンプル層との間で連続して減少してよい。
【0055】
別の態様によれば、密封容器は、液体医薬品のバルク領域よりサンプル層が大きい厚さになるように配置される。例えば、密封容器に少量の液体医薬品しかない場合、より多くの量の、さらには全量の液体医薬品を密封容器の第1部分にもたらしてサンプル層を形成するように密封容器を配置するのが有利になり得る。
【0056】
サンプル層の厚さは、光ビームの様々なスペクトル領域の種類によって決まってよい。
【0057】
サンプル層の厚さは、測定の種類、例えば、測定するのがサンプル層の反射スペクトルなのか、放射スペクトルなのか、透過スペクトルなのか、透過・反射スペクトルなのかによって決まってよい。例えば、反射スペクトルの場合、光ビームがサンプル層を通過する必要はない。透過スペクトルの場合、光ビームがサンプル層を通過する必要がある。透過・反射の場合、光ビームは、サンプル層を二度通過する必要がある。すなわち、反射した光ビームによる透過も加わる。例えば、一定の厚さを有するサンプル層の光路長が、透過・反射測定の場合は、透過測定の場合より大きい。
【0058】
一態様によれば、サンプル層は、密封容器に入っている液体医薬品のサンプル層に対する透過スペクトルまたは透過・反射NIRスペクトルを測定するのに適した光路長を設けるように構成される。
【0059】
サンプル層の厚さは、予想医薬品によって決まってよい。例えば、溶媒としてアルコールを用いる予想医薬品が、溶媒として水またはオイルを用いる予想医薬品と比べて、例えば異なる吸収係数に起因して、サンプル層の厚さについて別の上限値および/または下限値を有してよい。
【0060】
一態様によれば、密封容器は、サンプル層の厚さが10mm以下になるように配置される。密封容器は、サンプル層の厚さが5mm以下になるように配置されてよい。密封容器は、サンプル層の厚さが2mm以下になるように配置されてよい。密封容器は、サンプル層の厚さが1mm以下になるように配置されてよい。
【0061】
一態様によれば、密封容器は、サンプル層の厚さにより、20mm以下の光路長がもたらされるように配置される。密封容器は、サンプル層の厚さにより、10mm以下の光路長がもたらされるように配置されてよい。密封容器は、サンプル層の厚さにより、5mm以下の光路長がもたらされるように配置されてよい。
【0062】
前述した2つの態様の利点は、測定されるスペクトルの品質を上げることができるという点にある。サンプル層の厚さは、測定されるスペクトルの品質に影響を与えるパラメータになり得る。提案した方法はサンプル層の透過スペクトルまたは透過・反射スペクトルの測定を含むので、光ビームがサンプル層を(透過のために)少なくとも一度、または(透過・反射のために)少なくとも二度通過するのを可能にするために、サンプル層の厚さがあまり大きくなくてもよい。
【0063】
一態様によれば、密封容器は、サンプル層の厚さが0.1mm以上になるように配置される。密封容器は、サンプル層の厚さが0.2mm以上になるように配置されてよい。密封容器は、サンプル層の厚さが0.5mm以上になるように配置されてよい。
【0064】
一態様によれば、密封容器は、サンプル層の厚さにより、3mm以上の光路長がもたらされるように配置される。密封容器は、サンプル層の厚さにより、1mm以上の光路長がもたらされるように配置されてよい。密封容器は、サンプル層の厚さにより、0.5mm以上の光路長がもたらされるように配置されてよい。
【0065】
前述した態様の利点は、測定を再現できる確率が上がるという点にある。サンプル層の厚さが小さ過ぎると、例えば、接着効果または表面効果によって、数回の測定を再現するのが困難になることがある。例えば、サンプル層の主に気体/液体界面に発生する気泡が測定に影響を与えることがある。サンプル層が薄いほど、気泡の影響が大きくなり得る。
【0066】
一態様によれば、密封容器を配置することは、容器角度αをもたらすことを含む。容器角度は、密封容器の長手軸と重力軸との間の角度として定義されてよい。例えば、ボトル型密封容器の長手軸は、本体形状部分の底面とボトルネック部分の(密封された)開口部とを通過する。容器角度は垂直角であってよく、すなわち、長手軸は重力軸に対して垂直でよい。例えば、地面に置いた側壁に置かれたボトル型容器が、垂直の容器角度を有する。容器角度は鋭角でもよい。例えば、ボトル本体部分に対してボトルネック部分を持ち上げたボトル型容器が、鋭角の容器角度を有する。零角、すなわち、長手軸が重力軸に対して平行である状態は、容器角度とみなされない。例えば、底面を下にして置いてあるボトル型容器は、容器角度を示していない。
【0067】
一態様によれば、容器角度をもたらすことは、予想医薬品に応じて容器角度を選択することを含む。例えば、Onkotroneであると予想される液体医薬品の容器角度は、常に84°でよい。
【0068】
この態様の利点は、測定再現性の改善を達成することができるという点にある。通常、特定の液体医薬品の密封容器および充填レベルは常に同じである。特定の液体医薬品の特定の容器角度によって、測定のたびに、確実に同じ厚さのサンプル層、したがって、より似通った測定結果を得ることができる。
【0069】
一態様によれば、容器角度は90°以下である。容器角度は、85°以下でよい。容器角度は、80°以下でよい。
【0070】
一態様によれば、容器角度は10°以上である。容器角度は、20°以上でよい。容器角度は、40°以上でよい。
【0071】
一態様によれば、密封容器は、容器角度を設けるために、重力軸に対して傾斜している。例えば、密封容器は、容器角度を設けるサンプルホルダによって傾斜してよい。
【0072】
一態様によれば、サンプル層のスペクトル測定が、測定システムによってもたらされる。測定システムは、光源と検出器とを有してよい。例えば、測定装置は分光計として具現化されてよい。一態様によれば、測定装置は、容器角度を設けるために、重力軸に対して傾斜している。例えば、密封容器は測定装置に固定されてよく、測定装置の片側が測定装置の別の側に対して持ち上げられてよい。測定装置は、重力軸と測定装置角度β2を設けてよい。
【0073】
この態様の利点は、反射器とサンプル層との間の距離が減少しないという点にある(例えば、図3と比較して図2を参照)。さらに、光ビームは、例えば、ボトル型密封容器の蓋で遮られるというリスクが全くなく、妨げられずにサンプルを通過することが可能になり得る。
【0074】
一態様によれば、サンプル層は、気体/液体界面と容器/液体界面とを有する。容器/液体界面は、気体/液体界面と向かい合ってよい。気体/液体界面と容器/液体界面との間の距離によって、サンプル層の厚さが規定されてよい。容器/液体界面と気体/液体界面とを光ビームが通過してよい。
【0075】
容器/液体界面および気体/液体界面は、理想化された平坦面を示している。例えば、容器の形状に起因する容器/液体界面の湾曲が、容器/液体界面の定義によって無視されてよい。容器/液体界面は、容器と液体との湾曲界面の最下点における接平面であると仮定されてよい。例えば、容器壁への接着により生じる表面張力または周辺効果に起因した気体/液体界面の湾曲は、気体/液体界面の定義によって無視される。気体/液体界面は、気体と液体との湾曲界面の最下点における接平面であると仮定されてよい。
【0076】
別の態様によれば、サンプル層は2つの容器/液体界面を有する。2つの容器/液体界面は、互いに向かい合ってよい。2つの容器/液体界面間の距離によって、サンプル層の厚さが規定されてよい。2つの容器/液体界面を、光ビームが通過してよい。2つの容器/液体界面は、より詳細に上述したように、理想化された平坦面を示してよい。
【0077】
例えば、2つの容器/液体界面を有するサンプル層が、密封容器の第1部分の断面によってもたらされてよい。例えば、密封容器が、第1断面を有する第1部分を有してよい。第1断面の光ビーム方向における長さが、当該長さがサンプル層の厚さに対応するような寸法を有してよい。例えば、サンプル層は、ボトル型容器のボトルネック部分によって形成されてよい。
【0078】
一態様によれば、光ビームは、容器/液体界面および/または気体/液体界面を垂直に通過するように方向付けられてよい。垂直に通過する場合、光ビームの主な方向は、それぞれの界面の面法線の方向にほぼ相当し得る。容器/液体界面および/または気体/液体界面は、光ビームに対して垂直でよい。
【0079】
一態様によれば、密封容器は、容器/液体界面が重力軸に対して非垂直になるように配置される。気体/液体界面が重力軸に対して垂直であるため、気体/液体界面は容器/液体界面に対して傾斜してよい。気体/液体界面は、気体/液体界面および容器/液体界面が密封容器の第1部分の方向に近づくように傾斜してよい。
【0080】
この態様の利点は、密封容器の形状または寸法から比較的独立して、密封容器の第1部分に、サンプル層のどのような厚さも設けることができるという点にある。例えば、大量の液体医薬品を含む大容量の密封容器の場合でも、サンプル層を有する第1部分を実現することができ、サンプル層は、透過または透過・反射の測定を可能にするのに十分な薄さを有する。
【0081】
一態様によれば、光ビームは、重力軸に対して非平行な方向にサンプル層を通じて方向付けられる。具体的には、光ビームは、重力軸に対して非平行な方向にサンプル層の気体/液体界面を通じて方向付けられてよい。光ビームは、NIR光ビームが気体/液体界面を非垂直に通過するように、サンプル層を通じて方向付けされてよい。
【0082】
一態様によれば、密封容器は、気体/液体界面が反射器に対して非平行になるように配置される。
【0083】
上記態様の利点は、(反射した光ビームを含む)光ビームが、重力軸に対して自然に垂直になる気体/液体界面に非垂直な入射角で当たることで、スペクトルの品質を改善できるという点にある。
【0084】
しかしながら、別の態様によれば、光ビームは、重力軸に対して実質的に平行である方向に、サンプル層を通じて方向付けられる。光ビームは、光ビームが気体/液体界面を実質的に垂直に通過するように、サンプル層を通じて方向付けされてよい。
【0085】
一態様によれば、密封容器の配置は、密封容器を固定するサンプルホルダによってもたらされる。サンプルホルダは、あらかじめ定められた容器角度で密封容器を固定するように構成されてよい。サンプルホルダは、光ビームに対してあらかじめ定められた位置に密封容器を固定するように構成されてよい。
【0086】
一態様によれば、サンプルホルダは予想医薬品の特徴を示している。サンプルホルダも、密封容器の形状または充填状態に応じて選択されてよい。
【0087】
上記態様の利点は、測定再現性の改善を達成することができるという点にある。さらに、基準スペクトルとの類似性を高めることができる。例えば、予想医薬品は、通常、試験対象の液体医薬品として類似容器に提供され、類似容器の特定の位置において光ビームの通過をもたらすサンプルホルダを用いて測定されてよい。予想医薬品のサンプル層が、例えば、サンプルホルダにより設けられる容器角度に起因して、特定の位置に一定の厚さを示してよい。特定される液体医薬品は、同じサンプルホルダを用いて測定されてよく、光ビームは、予想医薬品のサンプル層と同じ厚さを有する液体医薬品のサンプル層を通過するようになる。
【0088】
一態様によれば、サンプルホルダは、密封容器の容器表面に対応する成形したホルダ表面を有する。成形したホルダ表面は、容器が移動するのを防ぐように構成されてよい。例えば、成形したホルダ表面は、容器表面の凹みに対応する少なくとも1つの突起を含んでよい。
【0089】
例えば、図8は1つの突起178Aを有する成形したホルダ表面178を有するサンプルホルダ170(または、その少なくとも一部)を示している。成形したホルダ表面178は、ボトル型の密封容器に対応してよい。図8のサンプルホルダは反射器160も含み、反射器は成形した反射面を有する。
【0090】
成形したホルダ表面は、容器表面の2つ、3つ、またはもっと多くの凹みに対応する2つ、3つ、またはもっと多くの突起も含んでよい。成形したホルダ表面は、湾曲した容器表面に対応する湾曲面を有してよい。
【0091】
サンプルホルダは、1つ、2つ、またはもっと多くのサンプルホルダ要素を有してよい。例えば、サンプルホルダは、第1サンプルホルダ要素を有してよい。第1サンプルホルダ要素は、光ビームに対して、および/または測定システム(例えば、分光計)に対して、密封容器の位置を確実に再現できるように構成されてよい。例えば、第1要素は、成形した測定システム表面に対応する第1成形面を有してよい。第1サンプルホルダ要素は、密封容器を収容するように構成されてよい。例えば、第1要素は、第1成形面と向かい合った、第1容器表面に対応する第2成形面を有してよい。第1サンプルホルダ要素は、密封容器を収容するさらなる要素も収容するように構成されてよい。
【0092】
一態様によれば、サンプルホルダは反射器を有してよい。例えば、成形したホルダ表面は反射器を有してよい。
【0093】
一態様によれば、サンプルホルダは第2サンプルホルダ要素を有してよい。例えば、第2サンプルホルダ要素は、反射器に対して密封容器の位置を確実に再現できるように構成されてよい。第2サンプルホルダ要素は、反射器を有してよい。
【0094】
次に、測定に関する態様を説明する。
【0095】
一態様によれば、光ビームは、近赤外(NIR)光ビームとして具現化される。一態様によれば、サンプル層のスペクトルの測定には、サンプル層のNIRスペクトルの測定が含まれてよい。
【0096】
NIR領域は、赤の可視光と中赤外(MIR)との間にある。MIRとNIRとの境界は、IR放射がガラスを通過できないところにある。NIRのスペクトル領域は、780~2500nmの波長、すなわち、13,000~4,000cm-1の波数を含む。
【0097】
この態様の利点は、迅速で容易に、費用効率よく、且つサンプルを破壊せずにNIRを測定できるという点にある。NIRは、ガラス容器内でも測定できる。さらにNIRは、MIRより高いエネルギーおよび低い吸収係数を示す。具体的には、水はNIRにおいてはMIRの場合ほど強い吸収体ではない。その結果として、NIRでは、比較的大きい厚さを有するサンプル層の通過が可能になる。
【0098】
NIR分光法は、重なり合うことがある複数の広い吸収帯域をもたらし得る。しかしながら、NIRスペクトルは、サンプル層に関する複数の化学物理情報をもたらし得る。そのような情報は、数学的方法および/または統計的方法を用いて取得されてよい。こうした方法は通常、計量化学と呼ばれている。計量化学とは数学的/統計的方法を指し、物理/化学分析データの評価に用いられている。
【0099】
一態様によれば、サンプル層のスペクトルの測定には、サンプル層の透過NIRスペクトルの測定が含まれてよい。NIR透過スペクトルの測定では、液体医薬品の吸光度が測定されてよい。
【0100】
この態様の利点は、サンプル層を一度しか通過する必要がないため、光路長が比較的小さいという点にある。比較的大きい吸収係数を示す液体医薬品には、透過NIRスペクトルが有利な場合がある。サンプル層の厚さを比較的大きく設けている液体医薬品には、透過NIRスペクトルが有利な場合がある。
【0101】
一態様によれば、サンプル層のスペクトルの測定には、サンプル層の反射NIRスペクトルの測定が含まれてよい。NIR反射スペクトルの測定では、液体医薬品での光ビームの乱反射が測定されることがある。
【0102】
この態様の利点は、光ビームが透過するには大き過ぎる吸収係数を示す液体医薬品も測定できるという点にある。例えば、不透明ではない液体が反射NIRによって測定されてよい。
【0103】
一態様によれば、サンプル層のスペクトルの測定には、サンプル層の透過・反射NIRスペクトルの測定が含まれてよい。NIR透過スペクトルの測定では、液体医薬品の吸光度が測定されてよい。一態様によれば、サンプル層の透過・反射NIRスペクトルの測定には、光ビームがサンプル層を最初に通過した後に、光ビームがサンプル層を二度目に通過するように光ビームを反射することが含まれる。
【0104】
一態様によれば、光ビームの反射は、反射器によってもたらされる。反射器は、光ビーム源が設けられている密封容器の箇所と向かい合った密封容器の箇所に配置されてよい。
【0105】
一態様によれば、反射器は湾曲した反射面を有する。この態様の利点は、反射した光ビームの強度の減少を最小限に抑えることができるという点にある。強度の減少は、例えば、界面における屈折に起因する場合がある。
【0106】
一態様によれば、反射器は粗い反射面を有する。この態様の利点は、光ビームの乱反射をもたらし得るという点にある。
【0107】
一態様によれば、反射器とサンプル層との間の距離が30mm以下である。反射器とサンプル層との間の距離は、25mm以下でよい。反射器とサンプル層との間の距離は、20mm以下でよい。
【0108】
一態様によれば、反射器とサンプル層との間の距離が15mm以上である。反射器とサンプル層との間の距離は、10mm以上でよい。反射器とサンプル層との間の距離は、8mm以上でよい。反射器とサンプル層との間の距離は、4mm以上でよい。
【0109】
次に、液体医薬品の品質特定に関する態様を説明する。
【0110】
一態様によれば、スペクトルと基準スペクトルとの比較には、スペクトルの前処理が含まれる。前処理とは、測定したスペクトルを補正する数学的操作でよい。前処理は、不要な影響のスペクトルを補正することができる。前処理は、関心のある特性を強調することもできる。前処理は、散乱補正方法を有してよい。例えば、正規化を用いてスペクトルを準備することができる。前処理には、スペクトル導関数が含まれてよい。スペクトルの導関数が、Savitzky-Golayアルゴリズムによって決定されてよい。
【0111】
一態様によれば、液体医薬品の品質特定には、スペクトルの計量化学的評価が含まれる。例えば、スペクトルと基準スペクトルとの間のスペクトル距離を求めることができる。スペクトル距離の計算については、様々な方法が知られている。例えば、ユークリッド距離を求めることができる。代替的に、またはさらに、マハラノビス距離を求めることも意図されてよい。スペクトル距離は、比較されるスペクトルの類似性を所与の誤差範囲内で判断するのに用いられてよい。
【0112】
一態様によれば、本方法はさらに、液体医薬品の有効成分を定量化する段階を含む。例えば、有効成分が、透過NIRまたは透過・反射NIRに特性吸収中心を有してよい。測定されたNIRスペクトルによって、一定の厚さを有するサンプル層の吸収中心に関する情報がもたらされ得る。透過のグレードは、吸収中心の量によって決まる。したがって、サンプル層の厚さと透過のグレードを用いて、有効成分の定量化が実現され得る。
【0113】
一態様によれば、光ビームは、光子の非弾性散乱を励起するレーザビームとして具現化される。一態様によれば、サンプル層のスペクトルの測定には、サンプル層のラマンスペクトルの測定が含まれてよい。
【0114】
一態様によれば、ラマンスペクトルは透過ラマンスペクトルでよい。
【0115】
これらの態様の利点は、ラマン分光法の結果が水分子による干渉を受けないという点にあり、これは、水分子が永久双極子モーメントを有する、すなわち、水分子がラマン散乱を示さないという事実に起因している。ラマン分光法は、NIR分光法と類似した情報および/またはその補足情報を取得するのに用いられてよい。
【0116】
さらなる態様によれば、液体医薬品の品質を特定するためのシステムが提供される。本システムは、サンプルホルダを備える。サンプルホルダは、密封容器を固定するように構成されてよい。上述したように、密封容器には液体医薬品が含まれている。サンプルホルダは、液体医薬品が密封容器の第1部分にサンプル層を形成するように、密封容器を固定するように構成されてよい。
【0117】
本システムはさらに、測定装置を備える。測定装置は、光源と検出器とを有する。測定装置は、サンプル層を通じて光源からの光ビームを方向付けるように構成されてよい。測定装置はさらに、サンプル層のスペクトルを測定するように構成されてよい。スペクトルは、NIRスペクトルでもラマンスペクトルでもよい。
【0118】
本システムはさらに、上述した反射器を備えてよい。反射器は、NIR源および検出器と比べて、密封容器の向かい合った箇所に配置されてよい。
【0119】
本システムはさらに、傾斜装置を備えてよい。傾斜装置は、上述した容器角度を設けるように構成されてよい。傾斜装置は、測定装置の片側を持ち上げるように構成された傾斜台として具現化されてよい。傾斜装置はまた、サンプルホルダに取り付けられても、そこに埋め込まれてもよい。傾斜装置は、予想医薬品に応じて容器角度を調節するように調節可能であってよい。
【0120】
一態様によれば、本システムはさらに、電子チップを備えてよい。例えば、サンプルホルダが電子チップを有してよい。電子チップは、容器角度を伴った密封容器の配置を自動的に引き起こすように構成されてよい。例えば、特定の予想医薬品、充填状態、および/または密封容器の形状の特徴を示しているサンプルホルダによって、予想医薬品、充填状態、および/または密封容器の形状に対する容器角度がもたらされてよい。例えば、電子チップは、測定システム(例えば、分光計)を片側で持ち上げるように構成された傾斜台と通信してよい。
【0121】
さらなる態様によれば、本明細書で説明したシステムは、本明細書で説明した実施形態および態様のいずれかによる方法を行うように適応されている。
【0122】
本明細書において任意の方法、システム、または実施形態とともに示した要素または特徴は、特定の方法またはシステムに対する例示であり、本明細書で開示した他の方法またはシステムに用いられても、それと組み合わせて用いられてもよいことが理解されるであろう。
[参照符号]
100:システム
110:液体医薬品
112:サンプル層
116A:第1界面
116B:気体/液体界面
118A:第2界面
118B:容器/液体界面
120:密封容器
122:第1部分
124:第2部分
130:光ビーム
132:測定窓
150:長手軸
160:反射器
170:サンプルホルダ
172:第1サンプルホルダ要素
174:第2サンプルホルダ要素
176:電子チップ
178:成形したサンプルホルダ表面
178A:サンプルホルダ表面の突起
180:傾斜装置
190:測定装置
d:サンプル層の厚さ
G:重力軸
α:容器角度
β1:第1角度
β2:測定装置角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10