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特許7541221可塑剤組成物及び物品塗布用可塑剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】可塑剤組成物及び物品塗布用可塑剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20240821BHJP
   C08K 5/101 20060101ALI20240821BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20240821BHJP
   A63B 37/00 20060101ALN20240821BHJP
【FI】
C09K3/00 R
C08K5/101
C08L71/00 Y
A63B37/00 710
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019145450
(22)【出願日】2019-08-07
(65)【公開番号】P2020041134
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2018151376
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018168558
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518287814
【氏名又は名称】山田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特許第5603075(JP,B2)
【文献】特開2000-144038(JP,A)
【文献】特開2014-224275(JP,A)
【文献】特表2013-543917(JP,A)
【文献】特表2017-530996(JP,A)
【文献】特開2003-105150(JP,A)
【文献】特開2009-221292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C08K 5/101
C08L 71/00
A63B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(1)で表される化合物の1種以上と:
【化1】
[前記式中、Rはそれぞれ独立して炭素原子数1~10の炭化水素基であり、Rはそれぞれ独立してヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~30の炭化水素基又はハロゲン原子である。nは繰り返し数であって、1以上の整数を表し、pはそれぞれ0~5の整数を表す。]
(B)一般式(2)で表される化合物の1種以上と:
【化2】
[前記式中、Rはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、Rはそれぞれ独立してヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~30の炭化水素基又はハロゲン原子を、mは0~5の整数を表す。]
(C)一般式(3)で表される化合物の1種以上:
【化3】
[前記式中、R、Rはそれぞれ独立して水素原子、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を表す。]を含有することを特徴とする、ポリウレタンの浸透用可塑剤組成物。
【請求項2】
前記(A)成分において、nは2~10の整数であることを特徴とする、請求項に記載の可塑剤組成物。
【請求項3】
前記(A)成分において、Rはそれぞれ独立して炭素原子数2~3の炭化水素基であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の可塑剤組成物。
【請求項4】
前記可塑剤組成物は、ポリウレタン塗布用であることを特徴とする、請求項1~の何れか一項に記載の可塑剤組成物。
【請求項5】
前記可塑剤組成物が、ボーリングボールの補修用であることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の可塑剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可塑剤組成物に関する。特に革製品、又は、樹脂製品に塗布するために用いられる可塑剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
可塑剤とは、ある材料に柔軟性を付与したり、加工をしやすくするために添加する物質の総称である。一般的には、塩化ビニル系樹脂等に代表される樹脂中に微分散させて、樹脂の成形性や柔軟性を制御するために使用されている(特許文献1~2参照。)。樹脂中に微分散させる方法としては、溶融混練法や、溶剤に溶解させて樹脂と混合させる方法等が知られている。
【0003】
一方、可塑剤をシート表面に塗布して接着剤の代わりとし、シートの積層体を形成させる方法も知られている(特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-226788号公報
【文献】特開2005-75857号公報
【文献】特開平2-252225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
可塑剤を含有する樹脂は、時間の経過とともに樹脂の内部から可塑剤が揮発又はしみ出す(ブリード現象)ことで、樹脂の柔軟性が失われる等、樹脂の劣化が進行することが知られている。また、革製品についても、油分がしみ出し、革そのものが劣化することが知られている。
これまでは、可塑剤の揮発又はしみ出し等によって、劣化が進行した樹脂製品、油分がしみ出して乾燥した革製品は、その製品の寿命として廃棄されていた。
しかしながら、樹脂等の製品を廃棄することは、マイクロプラスチック問題等の環境汚染を引き起こすという問題が生じている。
【0006】
本発明の課題は、可塑剤の揮発又はしみ出し等によって劣化が進行した樹脂等の物品に対して、可塑剤組成物を浸透させ、劣化の進行を抑制し、未使用品と同程度まで回復させる可塑剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題に対して鋭意検討した結果、特定の成分を含有する可塑剤組成物を、可塑剤の揮発又はしみ出し等によって劣化が進行した樹脂等の物品に対して浸透させることで、劣化の進行を抑制し、未使用品と同程度まで回復することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の可塑剤組成物である。
【0008】
上記課題を解決するための本発明の可塑剤組成物は、(A)一般式(1)で表される化合物の1種以上と:
【化1】
[前記式中、Rはそれぞれ独立して炭素原子数1~10の炭化水素基であり、Rはそれぞれ独立してヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~30の炭化水素基又はハロゲン原子である。nは繰り返し数であって、1以上の整数を表し、pはそれぞれ0~5の整数を表す。]
(B)一般式(2)で表される化合物の1種以上:
【化2】
[前記式中、Rはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、Rはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~30の炭化水素基又はハロゲン原子を、mは0~5の整数を表す。]を含有することを特徴とする。
この特定の成分を含有する可塑剤組成物によれば、可塑剤の揮発又はしみ出し等によって劣化が進行した樹脂等に対して、可塑剤組成物を浸透させることができ、樹脂等の劣化の進行を抑制することができるという効果を発揮することができる。
【0009】
また、本発明の可塑剤組成物の一実施態様としては、前記(A)成分を80~99.99質量%と、前記(B)成分を0.01~20質量%含有することを特徴とする。
この特徴によれば、可塑剤組成物をより内部に浸透させることができ、更に内部からの可塑剤の揮発又はしみ出し等を抑制することができるという効果を発揮することができる。
【0010】
上記課題を解決するための本発明の可塑剤組成物は、(A)一般式(1)で表される化合物の1種以上と:
【化3】
[前記式中、Rはそれぞれ独立して炭素原子数1~10の炭化水素基であり、Rはそれぞれ独立してヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~30の炭化水素基又はハロゲン原子である。nは繰り返し数であって、1以上の整数を表し、pはそれぞれ0~5の整数を表す。]
(C)一般式(3)で表される化合物の1種以上:
【化4】
[前記式中、R、Rはそれぞれ独立して水素原子、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を表す。]を含有することを特徴とする。
この特定の成分を含有する可塑剤組成物によれば、可塑剤の揮発又はしみ出し等によって劣化が進行した樹脂等に対して、可塑剤組成物を浸透させることができ、樹脂等の劣化の進行を抑制することができるという効果を発揮することができる。
【0011】
また、本発明の可塑剤組成物の一実施態様としては、前記(A)成分を80~99.99質量%と、前記(C)成分を0.01~20質量%含有することを特徴とする。
この特徴によれば、可塑剤組成物をより内部に浸透させることができ、更に内部からの可塑剤の揮発又はしみ出し等を抑制することができるという効果を発揮することができる。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の可塑剤組成物は、(B)一般式(2)で表される化合物の1種以上と:
【化5】
[前記式中、Rはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、Rはそれぞれ独立してヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~30の炭化水素基又はハロゲン原子を、mは0~5の整数を表す。]
(C)一般式(3)で表される化合物の1種以上:
【化6】
[前記式中、R、Rはそれぞれ独立して水素原子、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を表す。]を含有することを特徴とする。
この特定の成分を含有する可塑剤組成物によれば、可塑剤の揮発又はしみ出し等によって劣化が進行した樹脂等に対して、可塑剤組成物を浸透させることができ、樹脂等の劣化の進行を抑制することができるという効果を発揮することができる。
【0013】
上記課題を解決するための本発明の可塑剤組成物は、(A)一般式(1)で表される化合物の1種以上と:
【化7】
[前記式中、Rはそれぞれ独立して炭素原子数1~10の炭化水素基であり、Rはそれぞれ独立してヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~30の炭化水素基又はハロゲン原子である。nは繰り返し数であって、1以上の整数を表し、pはそれぞれ0~5の整数を表す。]
(B)一般式(2)で表される化合物の1種以上と:
【化8】
[前記式中、Rはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、Rはそれぞれ独立してヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~30の炭化水素基又はハロゲン原子を、mは0~5の整数を表す。]
(C)一般式(3)で表される化合物の1種以上:
【化9】
[前記式中、R、Rはそれぞれ独立して水素原子、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を表す。]を含有することを特徴とする。
この特定の成分を含有する可塑剤組成物によれば、可塑剤の揮発又はしみ出し等によって劣化が進行した樹脂等に対して、可塑剤組成物を浸透させることができ、樹脂等の劣化の進行を抑制することができるという効果を発揮することができる。
【0014】
また、本発明の可塑剤組成物の一実施態様としては、前記(A)成分において、nは2~10の整数であることを特徴とする。
この特徴によれば、樹脂表面等の微細な空孔より効率的に可塑剤組成物を浸透させることができ、樹脂等の劣化の進行を抑制することができるという効果を発揮することができる。
【0015】
また、本発明の可塑剤組成物の一実施態様としては、前記(A)成分において、Rはそれぞれ独立して炭素原子数2~3の直鎖状又は分岐状の炭化水素基であることを特徴とする。
この特徴によれば、樹脂表面の微細空孔より効率的に可塑剤組成物を浸透させることができ、樹脂等の劣化の進行を抑制することができるという効果を発揮することができる。
【0016】
また、本発明の可塑剤組成物の一実施態様としては、物品塗布用であることを特徴とする。
この特徴によれば、物品に直接塗布することで、物品の表面層から内部に可塑剤組成物を浸透させることができ、劣化した物品の柔軟性や艶等を未使用品と同程度まで回復することができる。
【0017】
また、本発明の可塑剤組成物の一実施態様としては、前記物品が、革製品、又は、樹脂製品であることを特徴とする。
この特徴によれば、可塑剤等が揮発又はしみ出して劣化した物品に対して、内部に可塑剤組成物を侵入させることができるため、未使用品と同程度まで回復させることができる。更に、樹脂等製造時に用いられている可塑剤の揮発又はしみ出しを抑制し、樹脂本来の寿命を延ばすことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、可塑剤の揮発又はしみ出し等によって劣化が進行した樹脂等の物品に対して、可塑剤組成物を浸透させることができ、樹脂劣化の進行を抑制し、未使用品と同程度まで回復させる可塑剤組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の可塑剤組成物を塗布する前のボウリングボールの画像である。
図2】本発明の可塑剤組成物を塗布した後のボウリングボールの画像である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明を実施するための最良の形態を含めて説明する。
[可塑剤組成物]
本発明の可塑剤組成物は、下記(A)~(C)成分のうち、2種以上の成分を含有するものであり、樹脂等の物品に塗布、浸透させることで樹脂劣化の進行を抑制し、未使用品と同程度まで回復させるものである。
(A)一般式(1)で表される化合物の1種以上:
【化10】
[前記式中、Rはそれぞれ独立して炭素原子数1~10の炭化水素基であり、Rはそれぞれ独立してヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~30の炭化水素基又はハロゲン原子である。nは繰り返し数であって、1以上の整数を表し、pはそれぞれ0~5の整数を表す。]
(B)一般式(2)で表される化合物の1種以上:
【化11】
[前記式中、Rはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、Rはそれぞれ独立してヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~30の炭化水素基又はハロゲン原子を、mは0~5の整数を表す。]、
(C)一般式(3)で表される化合物の1種以上:
【化12】
[前記式中、R、Rはそれぞれ独立して水素原子、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を表す。]
【0021】
<(A)一般式(1)で表される化合物>
本発明の可塑剤組成物において、(A)成分は、下記一般式(1)で表される化合物の1種以上である。
【化13】
【0022】
式(1)中のRは、それぞれ独立して「炭素原子数1~10の炭化水素基」を表しているが、「炭化水素基」は、直鎖構造、分岐構造、及び環状構造のそれぞれを有していてもよく、飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基等の何れであってもよいものとする。
【0023】
式(1)において、Rの炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1~10である。Rの炭素原子数の下限値としては、好ましくは2以上であり、より好ましくは3以上である。上限値としては、好ましくは8以下であり、より好ましくは6以下であり、特に好ましくは4以下である。Rが芳香族炭化水素基の場合の炭素原子数は、通常6以上である。Rの炭化水素基の炭素原子数が10より大きくなると、物品への浸透性が悪化し、可塑化作用を十分発揮することができない。
【0024】
としては、メチレン基(-CH-)、エチレン基(-C-)、n-プロピレン基(--)、i-プロピレン基(--)、n-ブチレン基(--)、n-ペンチレン基(-10-)、n-ヘキシレン基(-12-)、シクロへキシレン基、フェニレン基(-C-)等が挙げられ、好ましくは、エチレン基、n-プロピレン基、i-プロピレン基である。
【0025】
式(1)において、「n」は、(-R-O-)単位の繰り返し単位数を表し、好ましくは1以上の整数を表す。下限値としては、好ましくは2以上であり、より好ましくは3以上である。上限値として、好ましくは100以下であり、より好ましくは50以下であり、更に好ましくは30以下であり、特に好ましくは20以下である。
「n」が100以上であると、物品への浸透性が悪化し、物品に対して良好な浸透性を発揮することができない。
【0026】
式(1)においてRは、「ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~30の炭化水素基又はハロゲン原子」を表しているが、「炭化水素基」は、直鎖構造、分岐構造、環状構造、及び炭素-炭素不飽和結合(炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合)のそれぞれを有していてもよく、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基等の何れであってもよいものとする。
また、「ヘテロ原子を含んでいてもよい」とは、炭化水素基の水素原子がヘテロ原子、即ち、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子等を含む1価の官能基で置換されていてもよいほか、炭化水素基の炭素骨格内部の炭素原子が窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子等を含む2価以上の官能基(連結基)で置換されていてもよいことを意味する。
【0027】
式(1)において、Rの炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1~30である。Rの炭素原子数の下限値としては、好ましくは4以上であり、より好ましくは6以上である。上限値としては、好ましくは20以下であり、より好ましくは10以下であり、特に好ましくは8以下である。Rが芳香族炭化水素基の場合の炭素原子数は、通常6以上である。Rの炭化水素基の炭素原子数が30より大きくなると、物品への浸透性が悪化し、可塑化作用を十分発揮することができない。
【0028】
に含まれる官能基や連結基としては、アミノ基(-N<)、イソシアネート基(-NCO)、オキサ基(-O-)、カルボニル基(-C(=O)-)、オキシカルボニル基(-OC(=O)-)、カルボニルオキシ基(-C(=O)O-)、エポキシ基、メルカプト基(チオール基、-SH)、チア基(-S-)、フルオロ基(フッ素原子,-F)、クロロ基(塩素原子,-Cl)、ブロモ基(臭素原子,-Br)、ヨード基(ヨウ素原子,-I)等が挙げられる。
【0029】
としては、メチル基(-CH,-Me)、エチル基(-C,-Et)、n-プロピル基(-,-Pr)、i-プロピル基(-,-Pr)、n-ブチル基(-,-Bu)、t-ブチル基(-,-Bu)、n-ペンチル基(-11)、n-ヘキシル基(-13,-Hex)、シクロヘキシル基(-11,-Cy)、エチルヘキシル基、アリル基(-CHCH=CH)、ビニル基(-CH=CH)、フェニル基(-C,-Ph)、ベンジル基(-CH-C,-Bn)、ビフェニル基、ナフチル基等の炭化水素基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等のハロゲン原子が挙げられる。
【0030】
式(1)において、「p」は、ベンゼン環に置換する置換基「R」の個数に該当し、それぞれ0~5の整数である。下限値としては、好ましくは1以上であり、より好ましくは2以上である。上限値としては、好ましくは4以下であり、より好ましくは3以下である。
【0031】
(A)成分の具体例としては、例えば、下記式(1-1)~(1-10)等の何れかで表される化合物が挙げられ、好ましくは下記化合物の混合物である。
【化14】
【化15】
【0032】
(A)成分は、例えば、安息香酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、及び、1,3-プロパンジオール等のジオール化合物をエステル交換することで製造することができる。市販品としては、安息香酸グリコールエステル(JP120:株式会社ジェイプラス)等が挙げられる。
【0033】
<(B)一般式(2)で表される化合物>
本発明の可塑剤組成物において、(B)成分で表される化合物は、下記一般式(2)で表される化合物の1種以上である。
【化16】
【0034】
式(2)においてRは、「ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基」を表しているが、「ヘテロ原子を含んでいてもよい」、「炭化水素基」は、前述のものと同義である。
【0035】
式(2)において、Rの炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1~20である。Rの炭素原子数の下限値としては、好ましくは4以上であり、より好ましくは6以上である。上限値としては、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下であり、特に好ましくは8以下である。Rが芳香族炭化水素基の場合の炭素原子数は、通常6以上である。Rの炭化水素基の炭素原子数が20より大きくなると、物品への浸透性が悪化し、可塑化作用を十分発揮することができない。
【0036】
に含まれる官能基や連結基としては、アミノ基(-N<)、イソシアネート基(-NCO)、オキサ基(-O-)、カルボニル基(-C(=O)-)、オキシカルボニル基(-OC(=O)-)、カルボニルオキシ基(-C(=O)O-)、エポキシ基、メルカプト基(チオール基、-SH)、チア基(-S-)、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等が挙げられる。
【0037】
としては、メチル基(-CH,-Me)、エチル基(-C,-Et)、n-プロピル基(-,-Pr)、i-プロピル基(-,-Pr)、n-ブチル基(-,-Bu)、t-ブチル基(-,-Bu)、n-ペンチル基(-11)、n-ヘキシル基(-13,-Hex)、シクロヘキシル基(-11,-Cy)、エチルヘキシル基、アリル基(-CHCH=CH)、ビニル基(-CH=CH)、フェニル基(-C,-Ph)、ベンジル基(-CH-C,-Bn)、ビフェニル基、ナフチル基、3-グリシドキシプロピル基、3-メタクリロキシプロピル基、3-アクリロキシプロピル基、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピル基等が挙げられる。
【0038】
式(2)においてRは、「ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~30の炭化水素基又はハロゲン基」を表しているが、「ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~30の炭化水素基又はハロゲン基」は前述のものと同義である。
【0039】
式(2)において、Rの炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1~30である。Rの炭素原子数の下限値としては、好ましくは4以上であり、より好ましくは6以上である。上限値としては、好ましくは20以下であり、より好ましくは10以下であり、特に好ましくは8以下である。Rが芳香族炭化水素基の場合の炭素原子数は、通常6以上である。Rの炭化水素基の炭素原子数が30より大きくなると、物品への浸透性が悪化し、可塑化作用を十分発揮することができない。
【0040】
に含まれる官能基や連結基としては、アミノ基(-N<)、イソシアネート基(-NCO)、オキサ基(-O-)、カルボニル基(-C(=O)-)、オキシカルボニル基(-OC(=O)-)、カルボニルオキシ基(-C(=O)O-)、エポキシ基、メルカプト基(チオール基、-SH)、チア基(-S-)、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等が挙げられる。
【0041】
としては、メチル基(-CH,-Me)、エチル基(-C,-Et)、n-プロピル基(-,-Pr)、i-プロピル基(-,-Pr)、n-ブチル基(-,-Bu)、t-ブチル基(-,-Bu)、n-ペンチル基(-11)、n-ヘキシル基(-13,-Hex)、シクロヘキシル基(-11,-Cy)、エチルヘキシル基、アリル基(-CHCH=CH)、ビニル基(-CH=CH)、フェニル基(-C,-Ph)、ベンジル基(-CH-C,-Bn)、ビフェニル基、ナフチル基、3-グリシドキシプロピル基、3-メタクリロキシプロピル基、3-アクリロキシプロピル基、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピル基、カルボニルオキシメチル基、カルボニルオキシエチル基、カルボニルメチルプロピル基、カルボニルオキシブチル基、カルボニルオキシペンチル基、カルボニルオキシヘキシル基、カルボニルオキシオクチル基、カルボニルオキシ-2-エチルヘキシル基、カルボニルオキシフェニル基、カルボニルオキシベンジル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0042】
がカルボニルオキシ基を含む場合は、オルト位置換又はメタ位置換であることが好ましく、オルト位置換であることがより好ましい。
【0043】
式(2)において、「m」は、ベンゼン環に置換する置換基「R」の個数に該当し、0~5の整数である。下限値としては、好ましくは1以上であり、より好ましくは2以上である。上限値としては、好ましくは4以下であり、より好ましくは3以下である。
【0044】
(B)成分で表される化合物としては、下記式(2-1)で表される化合物でもよく、具体例としては、例えば、下記式(2-2)~(2-11)等の何れかで表される化合物が挙げられる。
【化17】
【0045】
【化18】
【0046】
【化19】
【0047】
(B)成分は、例えば、フタル酸等の芳香族カルボン酸と、2-エチルヘキサノール等のアルコールをエステル交換することで製造することができる。市販品としては、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOP:株式会社ジェイプラス)やジブチルフタレート(DBP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)等が挙げられる。
【0048】
<(C)一般式(3)で表される化合物>
本発明の可塑剤組成物において、(C)成分で表される化合物は、下記一般式(3)で表される化合物の1種以上である。
【化20】
【0049】
式(3)においてR、Rは、それぞれ独立して水素原子、「ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基」を表しているが、「ヘテロ原子を含んでいてもよい」、「炭化水素基」は、前述のものと同義である。
【0050】
式(3)において、R、Rの炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1~20である。R、Rの炭素原子数の下限値としては、好ましくは1以上であり、より好ましくは2以上である。上限値としては、好ましくは10以下であり、より好ましくは6以下であり、特に好ましくは4以下である。R、Rが芳香族炭化水素基の場合の炭素原子数は、通常6以上である。R、Rの炭化水素基の炭素原子数が20より大きくなると、物品への浸透性が悪化し、可塑化作用を十分発揮することができない。
【0051】
、Rに含まれる官能基や連結基としては、アミノ基(-N<)、イソシアネート基(-NCO)、オキサ基(-O-)、カルボニル基(-C(=O)-)、オキシカルボニル基(-OC(=O)-)、カルボニルオキシ基(-C(=O)O-)、エポキシ基、メルカプト基(チオール基、-SH)、チア基(-S-)、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等が挙げられる。
【0052】
、Rとしては、メチル基(-CH,-Me)、エチル基(-C,-Et)、n-プロピル基(-,-Pr)、i-プロピル基(-,-Pr)、n-ブチル基(-,-Bu)、t-ブチル基(-,-Bu)、n-ペンチル基(-11)、n-ヘキシル基(-13,-Hex)、シクロヘキシル基(-11,-Cy)、エチルヘキシル基、アセチル基(-C(=O)-CH)、アリル基(-CHCH=CH)、ビニル基(-CH=CH)、フェニル基(-C,-Ph)、ベンジル基(-CH-C,-Bn)、アセチル基ビフェニル基、ナフチル基、3-グリシドキシプロピル基、3-メタクリロキシプロピル基、3-アクリロキシプロピル基、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピル基等が挙げられ、好ましくは、Rがアセチル基であり、Rがn-ブチル基である。
【0053】
(C)成分の具体例としては、例えば、下記式(3-1)で表される化合物が挙げられる。
【化21】
【0054】
(C)成分は、例えば、クエン酸をエステル交換することで製造することができる。市販品としては、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC:株式会社ジェイプラス)等が挙げられる。
【0055】
本発明の可塑剤組成物において、(A)成分、(B)成分、(C)成分の含有量は、特に制限されず、物品の表面層に用いられる材料に応じて、適宜設計されるものである。
本発明の可塑剤組成物において、(A)成分の含有量の下限値は、例えば5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上であり、上限値は、例えば95%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下である。
本発明の可塑剤組成物において、(A)成分は物品の表面層に用いられる材料と、相互作用を奏することができるため、可塑剤をより物品の内部に浸透させることができる。
本発明の可塑剤組成物において、(B)成分の含有量の下限値は、例えば5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上であり、上限値は、例えば95%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下である。
本発明の可塑剤組成物において、(B)成分を含有することで、表面層に残留していた可塑剤や、塗布した可塑剤が、より揮発や溶出しにくいという効果を発揮することができる。
本発明の可塑剤組成物において、(C)成分の含有量下限値は、例えば、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上であり、上限値は、例えば95%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下である。 本発明の可塑剤組成物において、(C)成分を含有することで、表面層に残留していた可塑剤や、塗布した可塑剤が、より揮発や溶出しにくいという効果を発揮することができる。
【0056】
本発明の可塑剤組成物((A)成分及び(B)成分の組成物、又は、(A)成分及び(C)成分の組成物において)は、前記(A)成分を80~99.99質量%と、前記(B)成分又は(C)成分を0.01~20質量%含有することが好ましい。(A)成分の下限値としては、好ましくは85質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上である。上限値としては、好ましくは99質量%以下であり、より好ましくは96質量%以下であり、さらに好ましくは、94質量%以下であり、特に好ましくは92質量%以下である。(B)成分又は(C)成分の下限値としては、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは4質量%以上であり、更に好ましくは6質量%以上である。上限値としては、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。
可塑剤組成物の含有量を上記範囲とすることで、可塑剤組成物をより内部に浸透させることができ、更に樹脂製造時に用いられている可塑剤の揮発又はしみ出し等を抑制することができる。
【0057】
本発明の可塑剤組成物は、上記(A)成分、(B)成分、又は(C)成分に加えて、特性を阻害しない範囲で酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、他の可塑剤、帯電防止剤、顔料、染料、充填材等の公知の添加剤を加えることができる。
【0058】
酸化防止剤としては、チオエーテル系化合物[ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート(DLTDP)等]、フェノール系化合物[2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)等]、アミン系化合物[オクチル化ジフェニルアミン等]、リン系化合物[トリフェニルホスファイト(TPP)等]等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、サリチル酸系化合物[フェニルサリシレート等]、アクリレート系化合物[2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート等]、ベンゾトリアゾール系化合物[2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等]、ベンゾフェノン系化合物[2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン等]等が挙げられる。
【0059】
難燃剤としては、含臭素系化合物(ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモベンゼン等)、含塩素系化合物(塩素化パラフィン等〕、リン酸トリエステル系化合物[トリフェニルホスフェート等]、無機系化合物〔三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、水酸化アルミニウム、赤リン、水酸化マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム等〕等が挙げられる。
【0060】
他の可塑剤としては、芳香族カルボン酸エステル系化合物[テレフタル酸エステル(テレフタル酸メチル、テレフタル酸エチル、テレフタル酸ブチル、テレフタル酸2-エチルヘキシル、テレフタル酸イソノニル、テレフタル酸イソデシル、テレフタル酸ウンデシル、テレフタル酸ブチルベンジル等)、脂肪族モノカルボン酸エステル系化合物[メチルアセチルリシノレート等]、脂肪族ジカルボン酸エステル系化合物[ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ(2-エチルヘキシル)アジペート、ジイソノニルアジペート、ビス[2-(2-ブトキシエトキシ)エチル]アジペート、ビス(2-エチルヘキシル)アゼレート、ジブチルセバケート、ビス(2-エチルヘキシル)セバケート、ジエチルサクシネート等]、トリカルボン酸エステル系化合物[トリス(2-エチルヘキシル)トリメリテート、トリメリット酸イソノニルエステル、トリメリット酸混合直鎖アルキルエステル、ジペンタエリスリトールエステル、テトラカルボン酸エステル化合物[ピロメリット酸2-エチルヘキシル、ピロメリット酸混合直鎖アルキルエステル等]、リン酸エステル化合物[トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート等]、リシレノール酸エステル[メチルアセチルリシレノール等]、ポリエステル[アジピン酸-プロピレングリコール系ポリエステル(分子量約800~2200)、アジピン酸-1,3-ブチレングリコール系ポリエステル(分子量約800~2200)、フタル酸系ポリエステル(分子量約650)、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸等の二塩基酸と1,2-プロパンジオール、ブタンジオール等のグリコール酸との重合物等]、酢酸エステル[グリセリルトリアセテート等]、スルホンアミド[N-ブチルベンゼンスルホンアミド等]、エポキシ系化合物[エポキシ化アマニ油、エポキシ化脂肪酸オクチルエステル、エポキシ化脂肪酸アルキルエステル]等が挙げられる。
【0061】
帯電防止剤としては、イオン性帯電防止剤〔アニオン界面活性剤[スルホン酸塩型(脂肪族スルホン酸塩等)、硫酸エステル塩型(高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物硫酸エステル塩等)、リン酸エステル塩型(高級アルコールエチレンオキシド付加物リン酸エステル塩等)等]、カチオン界面活性剤[第4級アンモニウム塩型等]、両性界面活性剤[ベタイン型界面活性剤等]等〕、非イオン性帯電防止剤〔非イオン性界面活性剤[ポリエチレングリコール型(高級アルコールエチレンオキシド付加物、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等)、多価アルコール型(多価アルコール脂肪酸エステル等)等]、高分子型[ポリエーテルエステルアミド等]等〕等が挙げられる。
顔料としては、無機顔料(ベンガラ、酸化チタン、キレートアゾ系、黄鉛、カドミウム顔料、群青等)、有機顔料(アゾキレート系、モノアゾ系、ジスアゾ系、縮合ジスアゾ、ベンジイミダゾリン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、チオインジゴ系、ペリレン系、アントラキノン系、キノフタロン系等)が挙げられる。
染料としては、アントラキノン系インジゴ系、アゾ系、硫化系、トリフェニルメタン系、ピラゾロン系、スチルベン系、アリザリン系、ジフェニルメタン系、キサンテン系、アクリジン系、キノンイミン系、チアゾール系、メチン系、ニトロ系、ニトロソ系、アニリン系等が挙げられる。
【0062】
充填材としては、炭酸カルシウム、クレー、タルク、けい酸、ケイ酸塩、スベスト、マイカ、ガラス繊維、カーボン繊維、金属(アルミニウム等)繊維、ガラスバルーン、セラミックウイスカ、チタンウイスカ等が挙げられる。
【0063】
本発明の可塑剤組成物は、無溶媒でもよいが、有機溶媒等を含有することができる。有機溶媒としては、特に限定されないが、上記(A)成分と(B)成分及び/又は(C)成分を溶解できる溶媒が好ましい。有機溶媒として、例えば、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒等が挙げられ、溶媒は2種類以上の混合溶媒であってもよい。
【0064】
本発明の可塑剤組成物は、物品に塗布することを特徴とする。
本発明の可塑剤組成物は、可塑剤が揮発又はしみ出して表面層の柔軟性が失われてしまった樹脂製品や、油分がしみ出し劣化した革製品等に塗布することにより、劣化の進行を抑制し、未使用品と同程度まで回復させることができる。
【0065】
本発明において、物品塗布用可塑剤組成物は、(A)一般式(1)で表される化合物の1種以上:及び/又は:
【化22】
[前記式中、Rはそれぞれ独立して炭素原子数1~10の炭化水素基であり、Rはそれぞれ独立してヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~30の炭化水素基又はハロゲン原子である。nは繰り返し数であって、1以上の整数を表し、pはそれぞれ0~5の整数を表す。]
(B)一般式(2)で表される化合物の1種以上:及び/又は
【化23】
[前記式中、Rはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を、Rはそれぞれ独立してヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~30の炭化水素基又はハロゲン原子を、mは0~5の整数を表す。]
(C)一般式(3)で表される化合物の1種以上:及び/又は、
【化24】
[前記式中、R、Rはそれぞれ独立して水素原子、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を表す。]、上記で示した他の可塑剤から選択される1種以上を含有することを特徴とする。
【0066】
物品としては、例えば、革製品、及び、樹脂製品等が挙げられる。
本発明の可塑剤組成物が使用できる革製品としては、牛、豚、蛇、ワニ、羊、ヤギ、鹿、ダチョウ、サメ、エイ、カンガルー、トカゲ又は馬等の動物から得られる革を用いた製品である。
具体的には、財布、鞄、靴、キーケース、コインケース、スマートフォンケース、メガネケース、名刺入れ、ブックカバー、ベルト、帽子、コート、ジャンバー、ズボン(パンツ)、ソファー等が挙げられる。
革製品は、時間の経過と共に油分がしみ出し、革そのものが劣化することが知られており、そのような劣化した製品に対して本発明の可塑剤組成物を塗布することで、劣化した物品の表面状態や艶等を未使用品と同程度まで回復させることができる。また、本発明の可塑剤組成物を塗布すること、内部からの油分のしみ出し等を抑制することもできる。
【0067】
樹脂製品としては、人工皮革製品、ボウリングボール、車のバンパー、車の内装部品、携帯電話のカバー、スマートフォンケース、ゴミ箱等が挙げられる。樹脂として、エボナイト等の硬質ラバー、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリ乳酸、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ブタジエン、イソプレン等のゴム成分及び、エポキシ樹脂等が挙げられる。
紫外線の影響により、例えば白っぽく色あせた車のバンパーや内装部品等に対して、本発明の可塑剤組成物を塗布することで、劣化した物品の表面状態や艶等を未使用品と同程度まで回復させることができる。また、本発明の可塑剤組成物を塗布することで、樹脂製造時に用いられている可塑剤の揮発又はしみ出し等を抑制し、樹脂本来の寿命を延ばすことができる。
【0068】
人工皮革製品としては、上記革製品と同様の用途の製品が挙げられる。人工皮革製品についても、時間の経過と共に可塑剤が揮発又はしみ出し、製品が劣化することが知られている。そのような劣化した製品に対して本発明の可塑剤組成物を塗布することで、劣化した物品の表面状態や艶等を未使用品と同程度まで回復させることができる。また、本発明の可塑剤組成物を塗布すること、内部からの可塑剤の揮発又はしみ出し等を抑制することもできる。
【0069】
ボウリングボールとしては、例えば、その表面層が可塑剤を含む樹脂等からなるものが好ましく、表面層の樹脂として、エボナイト等の硬質ラバー、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリ乳酸、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、及び、エポキシ樹脂等であることが好ましく、特に、ポリエステル、ポリウレタンからなる樹脂が好ましい。
表面層の樹脂部分から可塑剤が揮発又は溶出して表面層の柔軟性が失われしまったボウリングボールに対して、本発明の可塑剤組成物を塗布することで、ボウリングボールの柔軟性を、未使用品に近い程度まで回復させることできる。また、本発明の可塑剤組成物を塗布することで、製造時に用いられている可塑剤の揮発又は溶出等を抑制することもできる。
ボウリングボールに本発明の可塑剤組成物を塗布する場合には、例えばマイクロファーバーからなるタオルで表面の汚れを落としたボールか、オイル抜き処理を施したボールを用いることが好ましい。
【0070】
[可塑剤組成物を物品に塗布する方法]
更に、本発明の方法は、前記可塑剤組成物を物品に塗布する方法であって、下記の工程を含むことが好ましい。但し、工程3及び工程4については任意の工程であるが、両方の工程を含むことが好ましく、どちらか一方の工程だけを含むこともできる。
[工程1]:物品を準備する工程
[工程2]:物品に可塑剤組成物を塗布する工程
[工程3]:可塑剤が塗布された物品を密封する工程
[工程4]:可塑剤組成物が塗布された物品を調温しつつ、一定時間保持する工程
【0071】
工程1における物品としては、上記で示す革製品、及び、樹脂製品等が挙げられる。更に、可塑剤組成物を塗布する前処理として、物品を加熱して、物品内部に浸透した汚染物質を除去する操作や、物品の表面のほこり等のゴミをブラシやタオル等を用いて除去する操作を行ってもよい。加熱の方法としては、ヒーターや乾燥機等で加熱する方法や、温水中に浸漬させる方法が挙げられる。
物品内部に浸透した汚染物質や物品表面のゴミを除去することにより、可塑剤組成物を物品の内部に効率良く浸透させることができる。
【0072】
汚染物質を加熱により除去する温度としては特に限定されず、例えば、40℃~90℃であることが好ましい。下限値としては、好ましくは50℃以上であり、より好ましくは60℃以上である。上限としては、好ましくは80℃以下であり、より好ましくは70℃以下である。
汚染物質を加熱により除去する温度を40℃~90℃とすることで、効率良く物品内部に浸透した汚染物質を除去することができる。
【0073】
工程2における、塗布する方法としては、特に限定されないが、袋等に物品を入れておき直接接触させる方法、はけ、筆、ガーゼ、塗布容器等で直接塗布する方法、可塑剤組成物を貯めた容器に対して、物品そのものをディップする方法、コンマコータやグラビアコータ等のコーティング機を用いて塗布する方法等が挙げられる。
上記方法により塗布することにより、物品の表面層に効率良く可塑剤組成物を浸透させることができる。
【0074】
可塑剤組成物の塗布量としては特に限定されず、物品の大きさや表面積等により、適宜選択することが好ましい。例えば、ボウリングボールに塗布する場合は、好ましくは1~50mlであり、下限値としては、好ましくは2ml以上であり、より好ましくは3ml以上であり、更に好ましくは4ml以上である。上限値としては、好ましくは25ml以下であり、より好ましくは10ml以下であり、更に好ましくは、8ml以下である。
【0075】
工程2において、可塑剤組成物を塗布する際の温度については特に限定されないが、好ましくは0℃以上、150℃以下である。塗布する際の温度の下限値として、好ましくは20℃以上であり、より好ましくは40℃以上であり、更に好ましくは50℃以上であり、特に好ましくは60℃以上である。上限値としては、好ましくは140℃以下であり、より好ましくは120℃以下であり、さらに好ましくは100℃以下であり、特に好ましくは80℃以下である。
上記温度に調整する手段としては、特に制限されないが、例えば、物品を加熱する手段や工程1における前処理時の余熱を利用する手段が挙げられる。
物品に塗布する際の温度を上記範囲とすることで、物品の表面層に効率良く可塑剤組成物を浸透させることができる。
【0076】
工程3として、可塑剤組成物が塗布された物品を密封することが好ましい。密封方法としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチックの袋や、透明なフィルム等で密封することが好ましい。また、密封後は静置させるか、シリコン等の弾力性のある部材に対して前記密封した物品を数回弾ませる操作を行ってもよい。また、加圧装置等を用いて、前記密封した物品を加圧してもよい。
可塑剤組成物が塗布された物品を密封することにより、物品の表面層に効率良く可塑剤組成物を浸透させることができる。
【0077】
工程4として、可塑剤組成物が塗布された物品を調温しつつ、一定時間保持することが好ましい。調温する温度としては、好ましくは150℃以下である。調温する温度の下限値として、好ましくは40℃以上であり、より好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60℃以上であり、特に好ましくは70℃以上である。上限値としては、好ましくは140℃以下であり、より好ましくは120℃以下であり、更に好ましくは100℃以下であり、特に好ましくは80℃以下である。更に、下記保持時間の間、一定の温度で保持しても、昇温させつつ、又は、降温させつつ保持してもよい。また、高温から低温にし、更に高温に戻す、もしくは、低温から高温にし、更に低温に戻すなど、時間の経過と共に温度を変化させてもよい。
【0078】
更に、調温して保持する時間は特に限定されないが、好ましくは10秒以上72時間以下である。調温して保持する時間の下限値としては、好ましくは1分以上、より好ましくは1時間以上、更に好ましくは12時間以上である。上限値としては、好ましくは36時間以下であり、より好ましくは24時間以下である。
調温する温度、及び、保持する時間を上記範囲とすることで、物品の表面層に効率良く可塑剤組成物を浸透させることができる。
なお、工程4は任意の工程であるため、必ずしも調温して保持する必要はなく、塗布する際の温度で保持してもよく、また、塗布した後に自然に室温まで下げてもよい。
【0079】
また、工程4を経ない場合、可塑剤組成物を塗布後、可塑剤組成物を物品に浸透させる時間(浸透時間)を設けることが好ましい。時間については特に限定されないが、好ましくは10秒以上72時間以下である。浸透時間の下限値としては、好ましくは1分以上、より好ましくは1時間以上、更に好ましくは12時間以上である。上限値としては、好ましくは36時間以下であり、より好ましくは24時間以下である。
浸透時間を上記範囲とすることで、物品の表面層に効率良く可塑剤組成物を浸透させることができる。
【実施例
【0080】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
実施例に用いた可塑剤組成物及び塗布物品は以下のものである。
【0081】
[可塑剤組成物]
(A):安息香酸グリコールエステル JP120(株式会社ジェイプラス)
(B):フタル酸ビス(2-エチルヘキシル) DOP(株式会社ジェイプラス)
(A)成分を90g、(B)成分を10g計り取り、容器に加えて市販のミキサーを用いて室温(25℃)混合した。混合物は、25℃、24時間経っても分離が観測されなかった。
<ボウリングボール>
オイル抜き処理を施した、表面層樹脂がポリウレタンのボウリングボール(シリアルナンバー:6G280539C)を使用した。
【0082】
<塗布方法>
塗布方法としては、ボウリングボールの表面に、直接可塑剤組成物を60℃で塗布し、室温(25℃)まで放置した後、透明フィルムで密封して一晩(12時間)静置させた。
可塑剤を塗布した直後は、ボウリングボールの表面は可塑剤組成物により表面がべたついていたが、一晩静置後は、表面のべたつきは解消され、可塑剤組成物がボウリングボールの表面樹脂に浸透したことがわかった。本発明の可塑剤組成物を塗布する前のボウリングボールを図1に、塗布した後の前のボウリングボールを図2に示す。
可塑剤塗布前と塗布後のボウリングボールの硬度変化、表面の感触及び目視による表面状態の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。ボウリングボールの硬度は、摂氏25度の環境で、デュローメーターDの硬度計(REX DUROMETER、TYPE D、Model:1700、REX GAUGE 社製)により測定した。
【0083】
<ボウリングボールの硬度測定結果>
【表1】
【0084】
表1の結果より、本発明の可塑剤組成物を塗布したボウリングボールは、硬度が低下し未使用品と同程度の硬度となることがわかった。このことは、ボウリングボール表面層の樹脂に対して、可塑剤組成物が浸透することで、表面層の柔軟性が回復していることを意味している。
【0085】
<ボウリングボール表面の感触及び目視による表面状態の評価>
【表2】
【0086】
表2の結果より、本発明の可塑剤組成物は、ボウリングボール表面の樹脂に対して、浸透することができ、樹脂劣化の進行を抑制し、未使用品と同程度の状態まで回復することがわかった。
【0087】
さらに、上記実施例において、(B)成分を下記(C)成分に変更し、可塑剤塗布前と塗布後のボウリングボールの硬度変化、表面の感触及び目視による表面状態の評価を行った。
(C):アセチルクエン酸トリブチル ATBC(株式会社ジェイプラス)
【0088】
上記(B)成分であるフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)に代えて、(C)成分のアセチルクエン酸トリブチルを用いても、上記表1、表2に記載された結果と同様の結果が得られることを確認した。
次いで、上記(A)成分90gに加えて、上記(B)成分と上記(C)成分を5gずつ用いて同様の評価を行ったが、これについても上記と同様の結果が得られた。
【0089】
また、上記実施例において、上記(A)成分である安息香酸グリコールエステル JP120を含まず、上記(B)成分であるフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)及び(C)成分のアセチルクエン酸トリブチルを含有する組成物を用いて、同様の評価を行った。
この例においても、上記表1、表2に記載された結果と同様の結果が得られることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の可塑剤組成物は、可塑剤の揮発又はしみ出し等によって劣化が進行した樹脂や、油分がしみ出した革製品等の物品に対して、可塑剤組成物を浸透させることができ、樹脂や革の劣化の進行を抑制し、未使用品と同程度まで回復することができる。

図1
図2